セダン型乗用車とオフロード車の 衝突相互安全性 2008 年 度 関根 康史 目次 目次 1 緒 言 1 1.1 研究の背景 1 1.2 研究の目的 3 1.3 本論文の構成 6 1.4 記号 9 1.4.1 交通事故統計分析に係る記号 9 1.4.2 模型車両による衝突試験に係る記号 9 1.5 本論文の用語 11 1.5.1 分析対象とした車種の定義 11 1.5.2 人身損傷程度の定義 11 2 交通事故統合データによるSUVとセダンの前面対前面衝突事故の分析 12 2.1 交通事故統合データについて 12 2.2 セダンとSUVの新たな分類手法 14 2.3 車両重量が同程度のセダンとSUVの衝突事故の分析 21 2.3.1 分析対象の決定 21 2.3.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率 21 2.3.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成 23 2.3.4 傷害種別の詳細について 25 2.4 車両重量の差が大きいセダンとSUVの衝突との比較 30 i 目次 ii 2.4.1 比較対象の選定 30 2.4.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率 30 2.4.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成 31 2.5 考 察 32 2.6 事故例との照合 34 2.7 第2章の結論 36 3 セダンとSUVの衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 38 3.1 分析対象の検討 38 3.2 対SUV衝突におけるセダン運転者の傷害分析 40 3.2.1 本章における分析 40 3.2.2 SUV-MとSdn-Sの衝突 42 3.2.3 SUV-MとSdn-Lの衝突 42 3.2.4 SUV-LとSdn-Mの衝突 45 3.2.5 SUV-LとSdn-Sの衝突 45 3.3 考 察 47 3.4 事故例との照合 48 3.5 バリア換算速度を指標に用いた車体の潰れ程度の分析 50 3.5.1 車体の潰れ程度の分析 50 3.5.2 バリア換算速度計算値と実際の実測値の比較 54 3.6 衝突速度と乗員傷害の関係についての分析 58 3.6.1 衝突相手による運転者の人身損傷度の実態 58 3.6.2 危険認知相対速度と死亡重傷者率の関係式の推定 62 3.6.3 乗員傷害に影響をおよぼす重量比以外の要因について 66 3.7 軽SUVと軽セダン前面対前面衝突事故の分析 68 3.7.1 本節における分析対象車種 68 3.7.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率 69 3.7.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成 70 目次 iii 3.7.4 軽セダンと軽SUVの衝突についての考察 72 3.8 第3章の結論 74 4 セダン模型を用いた衝突試験によるSUVとの衝突時の客室入力の検討 75 4.1 コンパティビリティー性能の評価手法の検討 75 4.2 客室入力の評価 77 4.3 衝突実験用模型 79 4.3.1 相似則の適用 79 4.3.2 模型用材料 81 4.3.3 セダン模型の製作 83 4.3.4 衝突実験用バリア 94 4.3.5 模型車両の衝突実験条件 94 4.4 衝突実験結果 97 4.4.1 模型車両の衝突特性 97 4.4.2 衝突による車体骨格部への入力荷重と車体変形 98 4.5 衝突実験結果 99 4.5.1 客室入力分布による防護性の評価 99 4.5.2 客室入力の2次元等高線表示 104 4.6 第4章の結論 104 5 セダン模型とSUV模型のCar-to-Car衝突試験による客室入力の検討 106 5.1 セダン模型とSUV模型のCar-to-Car衝突試験の意義 106 5.2 衝突実験用模型 108 5.2.1 模型の製作 108 5.2.2 衝突試験装置の製作 109 5.3 衝突実験結果 112 5.4 客室入力分布による防護性の評価 115 5.4.1 客室入力の垂直分布 115 iv 目次 5.4.2 客室入力の2次元等高線表示 117 5.5 第5章の結論 119 6 結 言 120 6.1 本研究の結論 120 6.1.1 セダンとSUVの前面対前面衝突の事故統計分析について 120 6.1.2 模型による衝突試験について 121 6.2 本研究の今後の展開 122 謝 辞 124 参考文献 125 追補1 従来のコンパティビリティー対策および評価法について 138 A1.1 荷重伝達部材の取り付けによる対策 138 A1.2 AHOFについて 139 A1.3 AHOFの問題点 140 追補2 衝突試験の結果について 141 A2.1 バリア衝突試験の荷重-変位曲線について 141 A2.2 143 セダン対SUVのCar-to-Car衝突試験の荷重-時間曲線について 追補3 国内における交通事故の統計分析についての補足 146 A3.1 車両の衝突部位について 146 A3.2 自動車乗員の損傷主部位について 148 A3.3 自動車の各部位の名称について 149 v 目次 追補4 大型乗用車同士(SUV-LとSdn-L)の衝突事故の分析 151 A4.1 分析対象について 151 A4.2 衝突速度と死亡重傷者率の関係 152 A4.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成 152 追補5 交通事故統計の分析結果の有意性について 155 A5.1 重量が同じ程度のSUVとセダンの衝突 155 A5.2 160 重量の異なるSUVとセダンの衝突 追補6 荷重の垂直分布図DCFおよび客室荷重中心CCF 165 A6.1 荷重の垂直分布図DCFおよびその導出について 165 A6.2 168 客室荷重中心CCFの導出について 第 1 章.緒言 1 第1章 緒 1.1 言 研究の背景 道路上を走行している自動車には,軽自動車から大型トラックに至るまで 様々な大きさや形状の車両が存在する.したがって,実際の衝突事故では,必 ずしも自車両と同じ大きさ,同じ形状の車両との衝突のみが起きるとは限らな い.国内の自動車事故についても,四輪車乗車中の死亡事故の約 4 割が車両重 量 の 異 な る 相 手 と の 衝 突 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る ( 1 ).す な わ ち ,自 動 車 の 衝突安全性をより向上させ,衝突事故による乗員の被害低減を進めていくため には,車両重量が軽い車両と重い車両の衝突,あるいはボンネット付き車両と キャブオーバ型の車両との衝突等のような,サイズや形状の異なる車両による 衝突に対しての相互安全性(コンパティビリティー)について考慮することが 重要である. 大 人 数 で 乗 車 し て も 広 い 居 住 空 間 が と れ る SUV(Sport Utility Vehic le , ス ポ ー ツ 用 多 目 的 車 )は ,使 い 勝 手 の 良 さ か ら ,1 990 年 代 以 降 ,国 内 や 欧 米 で 台 数 が 増 加 し た . 例 え ば , 国 内 に お け る 世 帯 が 保 有 す る 乗 用 車 の う ち , SUV の 占 め る 割 合 は , 1995 年 で は 僅 か 6.5% に す ぎ な か っ た が , 2005 年 に な る と 26.2% と 10 年 間 に 約 4 倍 も 増 加 し て い る ( 2 ) .こ の よ う な SUV の 急 増 に 伴 っ て ,SUV が 従 来 の乗用車(セダン・タイプの乗用車,以下セダンと略記する)と衝突した際の 攻 撃 性 (agg ressiveness) が 問 題 視 さ れ る よ う に な っ た ( 3 ) - ( 5 ) . こ れ に 伴 い , 米 国 の 1 第 1 章.緒言 2 道 路 交 通 安 全 局 ( Na tional High wa y Tra ffic Safet y Ad min istration , 以 下 NHTSA と 略 記 す る ) で は , S UV と セ ダ ン の 衝 突 時 に お け る そ れ ぞ れ の 乗 員 の 死 亡 率 を 比 較 し ,数 値 に よ っ て SUV の 攻 撃 性 を 示 し た ( 6 ) - ( 8 ) .SUV は バ ン パ 高 さ や サ イ ド メ ン バ 高 さ 等 と い っ た 車 体 構 造 が セ ダ ン と 異 な る 場 合 が 多 い . こ の た め , SUV がセダンと衝突した場合には,上述のような車体構造の違いが,攻撃性をもた ら す 要 因 と な り , SU V が セ ダ ン の 車 体 の 潰 れ 量 や 乗 員 の 傷 害 値 を 悪 化 さ せ る 等 の 影 響 を お よ ぼ す と 考 え ら れ る . な お , S UV と オ フ ロ ー ド 車 あ る い は 4 輪 駆 動 車 は , い ず れ も 厳 密 に は 同 義 で は な い が , こ こ で は , SUV に 対 し て 検 討 を 行 っ た .一 般 的 に は オ フ ロ ー ド 車 の 語 の 方 が 分 か り 易 い が ,本 論 文 中 で は SUV は オ フロード車のことを指した語として使った. 重量や車体の形状が異なる車両の衝突に着目した研究は,以前より行われて きた.重量の重い乗用車と軽い乗用車の衝突や大型トラックと乗用車の衝突に つ い て は ,今 ま で に も 多 く の 研 究 が 報 告 さ れ て い る ( 9 ) - ( 2 8 ) .な お ,SUV と セ ダ ン の 衝 突 に つ い て も , S UV の 攻 撃 性 が 問 題 視 さ れ る よ う に な っ た 1990 年 代 以 降 か ら , 事 故 実 態 の 調 査 ・ 分 析 , 衝 突 時 に お け る 乗 員 の 被 害 軽 減 対 策 お よ び SUV のコンパティビリティー性能を評価するための試験法等,詳細な検討が行われ る よ う に な っ て き て お り ( 2 9 ) - ( 4 0 ) , 例 え ば , SUV の サ イ ド メ ン バ の 下 に サ ブ フ レ ーム等といった部材を装着することによって,セダンへの攻撃性を緩和させる と い っ た 対 策 も 提 案 さ れ る よ う に な っ て き た (41)-(44). 上 述 の 通 り , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー に つ い て 取 り組んだ研究は,近年になってから取り組まれるようになったものが多い.そ し て , こ れ ら の 多 く が 着 目 し て い る の は , SUV の 攻 撃 性 で あ り , そ の 評 価 法 や 低減については,今までにも多く論じられてきている. しかしながら,衝突に係わる 2 台の車両のうち片方だけの対策を論ずるだけ で は , コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー は 成 り 立 た な い . す な わ ち , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 考 え て い く た め に は , SUV の セ ダ ン へ の 攻 撃 性 に つ い て 論 ず る だ け で な く ,セ ダ ン の S UV に 対 す る 防 護 性 に 着 目 し た 検 討 を 行 う こ と も 重 要 で あ る . こ の た め に は , S UV に 衝 突 さ れ た セ ダ ン 乗 員 の 傷 害 程 度の実態や車体損壊のメカニズムを明らかにすることが重要となってくるが, 第 1 章.緒言 3 これらについては,今まで詳細な検討は行われてこなかった.そこで,本研究 で は セ ダ ン の 防 護 性 の 観 点 か ら , SUV と セ ダ ン の 前 面 衝 突 に 関 す る コ ン パ テ ィ ビリティーについて検討を行うべく,詳細な統計データに基づく事故実態の分 析および精密な模型を用いた衝突実験が必須と考えられる. 1.2 研究の目的 本 研 究 の 目 的 は , 前 節 で 述 べ た 通 り , SU V と セ ダ ン の 前 面 衝 突 に 関 す る コ ン パティビリティーをセダンの防護性の観点から検討していくことである.衝突 事故による被害軽減の対策を考えていくためには,事故の実態をよく把握した 上で,実験もしくはコンピュータによるシミュレーションによって適切に事故 を再現し,車両の損壊や乗員傷害のメカニズムを明らかにしていくことが重要 である.したがって,本研究においても,セダンの防護性の観点からコンパテ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る た め , 第 1 段 階 と し て 交 通 事 故 の 統 計 デ ー タ か ら SUV とセダンの衝突事故を分析し,セダン乗員が被る傷害の特徴を明らかにした上 で,第 2 段階として精密な模型を用いた衝突試験を行い,セダンの防護性を評 価する手法を見出すことによって,車両損壊のメカニズムの解明を試みた. まず,第 1 段階について述べる. 自動車の衝突時における乗員保護性能の良し悪しは,乗員の傷害程度や損傷 部位に映し出される.すなわち,衝突事故によって死亡や重傷になる率が高け れば,その車両の乗員保護性能は芳しくないものと評価できる.また,衝突時 の車体変形は,乗員の損傷部位に影響を与える.例えば,車体上部が変形する ことが多ければ,頭部や胸部等,上半身の傷害が多くなり,車体下部が変形す る こ と が 多 け れ ば , 脚 部 等 , 下 半 身 の 傷 害 が 多 く な る . し た が っ て , SUV と セ ダンの衝突におけるセダン乗員の傷害程度や損傷部位の傾向を把握することで, セ ダ ン の SUV に 対 す る 防 護 性 が 評 価 で き る . 衝突時における乗員傷害の傾向を把握するためには,衝突事故の統計データ を 分 析 す る 必 要 が あ る . し か し な が ら , 我 が 国 に お け る 従 来 の 交 通 事 故 統 計 (45) では,車両形状がボンネット付き車両とキャブオーバ型車両の分類までは可能 第 1 章.緒言 4 で あ っ た が ,ど ち ら も 同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ る SUV と セ ダ ン に つ い ては,事故データ中にこれらの区分が存在しないため,両者を区別して統計的 に 分 析 す る こ と が で き な か っ た .す な わ ち ,従 来 の 交 通 事 故 統 計 ( 4 5 ) は ,SUV と セダンの衝突事故の統計的な分析が不可能なので,これだけでは,セダンの防 護性の評価は行えない. 国内で唯一の公的な交通事故分析機関である財団法人交通事故総合分析セン タ ー ( Institute fo r Tra ffic Accid ent Rese arch and Data Analysis, 以 下 ITARDA と 略記する)では,交通事故統計データに車両のデータ(全長,全幅,全高およ び車両総重量)を組み合わせて事故統計分析を行うことができる交通事故統合 データを保有している.そこで,この交通事故統合データを利用することによ っ て SUV と セ ダ ン を 分 離 し た ,全 国 統 計 的 な 分 析 を 可 能 と す る よ う ,新 た な 分 析 手 法 を 試 み た (46)-(51). この分析手法によって,セダンの防護性を統計的に評価できるようになる. す な わ ち , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る 乗 員 傷 害 と , セ ダ ン 同 士 で の 衝 突 に お ける乗員傷害を比較することによって,これまで推測によって語られてきた, SUV と セ ダ ン と の 衝 突 事 故 の 実 状 が 統 計 的 な 側 面 か ら 明 ら か に な る . こ の よ う にして,セダンの乗員防護性を評価し,コンパティビリティーについて検討を 行うことが,第 1 段階での本研究の目的である. 次に,第 2 段階について述べる. SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 議 論 で は , 上 述 し た 通 り ,し ば し ば SUV の 攻 撃 性 と い う 概 念 が 使 用 さ れ る .し か し な が ら 衝 突 の 直 後 において,2 台の車両が接触を開始した瞬間から,両車のフロントエンドは一 体となってエネルギーを吸収する.また,どちらの客室にも等しく荷重が加わ ることに注意しなくてはならない.むしろバンパ高さやサイドメンバ高さの違 い 等 と い っ た , SUV と セ ダ ン 両 車 に お け る 車 体 前 面 構 造 の ジ オ メ ト リ ー の 違 い から,衝突時の荷重入力を予期していない部分に力が加わることで,セダンの 客室強度が不足することを避けるべきである. 第 1 章.緒言 5 し た が っ て ,SUV と セ ダ ン の 衝 突 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る 上 で は , セダン客室部に加わる荷重分布の変化を把握し,客室変形のメカニズムを理解 することによってコンパティビリティーを検討しようとする客室入力の評価, すなわちセダンの客室防護性を評価することが重要となるであろう. 本研究では,衝突が開始されてから終了するまでの間に,客室に加わる荷重 の 分 布 状 況 の 変 化 を 把 握 す る こ と に よ っ て , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン に つ い て , 新たに客室入力の観点からコンパティビリティーの検討を行った.すなわち, 客室内部に加わる荷重の分布をコンパティビリティー性能の指標と捉え,その 新たな表現方法を提案することを試みた. 客室内部に加わる荷重の分布は,実車による衝突試験から計測することは難 しい.なぜならば,客室内部に加わる荷重を測定するためには,実車をセンタ ーピラーの部分で前後に切り離すような大掛かりな加工をしなければロードセ ル 等 荷 重 を 計 測 す る 機 器 を 取 り 付 け る こ と が 不 可 能 で あ る か ら で あ る .そ こ で , 本研究では,客室内部に加わる荷重を実測するために,精密な模型を用いた衝 突実験を行った.模型ならば,実車とは異なり,大掛かりな加工をすること無 く客室内部に加わる荷重を実測できる.本研究では模型のセンターピラー部に ロードセルを装着,衝突による車体骨格部(フロアメンバ,フロアトンネル, サイドシル,ドアベルトラインメンバ,ルーフレール)への入力を計測するこ と に よ っ て ,客 室 内 部 に 加 わ る 荷 重 の 分 布 を 明 ら か に し た .な お ,模 型 実 験 は , 以前より乗員の挙動や人体傷害発生のメカニズムを解明するための研究に用い ら れ て お り (52)-(67), 樹 脂 製 模 型 を 用 い た 衝 突 実 験 が , 衝 突 時 の 車 体 変 形 を 把 握 す る た め に 有 効 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る (68)-(73). な お , シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 計算によっても同様な検討が可能であるが,計算値と実験値との精密な合わせ 込みが完了していない場合に関しては,模型実験の利用が効果的であると言え る. し た が っ て , 本 研 究 に お け る 第 2 段 階 の 目 的 は , SUV に 見 立 て た 突 起 バ リ ア に 樹 脂 製 の セ ダ ン の 1 /10 ス ケ ー ル 精 密 模 型 を 衝 突 さ せ る 試 験 を 実 施 す る こ と に よって,セダン客室内部に加わる荷重の分布を測定,これによりコンパティビ リ テ ィ ー 性 能 の 新 た な る 評 価 方 法 を 求 め る と 共 に , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン の 乗 第 1 章.緒言 6 員防護性を検討することである. 1.3 本論文の構成 本 研 究 で は ,第 1 段 階 に て SUV と セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 時 に お け る セ ダ ン の 乗 員 傷 害 の 特 徴 を 事 故 統 計 分 析 に よ っ て , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 乗 員 防 護 性 能の実態の把握を行い,第 2 段階にて精密な相似模型による衝突試験を行うこ とによって,客室内部に加わる荷重の分布を明らかにすることを試みた.すな わ ち , こ れ ら 二 つ の 段 階 を 経 る こ と に よ っ て , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ンパティビリティーの検討を行った. なお,本論文における以下の各章の構成は次の通りである.第 1 段階に相当 する事故統計分析は,第 2 章と第 3 章にて論じ,第 2 段階に相当する模型によ る衝突実験は第 4 章にて論ずる. 第 2 章 で は ,ITARDA の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ に よ る SUV と セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 事 故 の 全 国 統 計 に よ る 分 析 の 試 み ,お よ び 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と セ ダ ンの衝突事故の分析について論ずる.車高と車両総重量の二つの条件による SUV と セ ダ ン の 区 分 の 可 能 性 に つ い て 検 討 を 行 い , セ ダ ン を 排 気 量 が 15 00cc 以 下 の 車 種 を Sdn -S,排 気 量 が 1500cc 超 20 00cc 以 下 の 車 種 を Sd n -M,排 気 量 が 2000cc 超 の 車 種 を Sd n -L の 3 ク ラ ス に 区 分 ,SUV を オ フ ロ ー ド で の 走 行 を 目 的 と し な い ミ ニ バ ン や 軽 快 な 車 種 を SUV-M ,従 来 か ら の 本 格 的 な オ フ ロ ー ド 車 種 を SUV-L の 2 ク ラ ス に 区 分 の 上 , ITARDA の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 利 用 す る こ と に よ っ て 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と セ ダ ン で あ る SUV-M と Sd n -M の 前 面 対 前 面衝突事故の全国統計分析を行った.そして,車両重量に大きな差がない場合 で あ っ て も , SUV 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が セ ダ ン 運 転 者 よ り も 低 く な っ て いること.また,その差は衝突速度の増大と共に拡がっていくこと.さらに, SUV , セ ダ ン 共 に 衝 突 相 手 に よ っ て 死 亡 あ る い は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 傷 害 部 位の構成や症状の度合い等が異なるなど,コンパティビリティーを論ずる上で の特徴があることを明らかにした. 第 1 章.緒言 7 第 3 章 で は ,事 故 統 計 分 析 の 対 象 を 車 両 重 量 の 異 な る SUV と セ ダ ン の 衝 突 に 拡 げ , SUV と セ ダ ン の 衝 突 の 全 般 的 な 状 況 に つ い て 論 ず る . ま ず , 第 2 章 で 分 類 し た SUV と セ ダ ン 全 5 車 種 を 対 象 に , 本 章 で は SUV と セ ダ ン の 衝 突 全 般 に おけるセダン運転者の傷害の特徴を明らかにすべく,対象を車両重量の異なる SUV と セ ダ ン の 衝 突 , す な わ ち , 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 あ る い は 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 等 に 拡 げ て 事 故 統 計 分 析 を 行 っ た . そ し て , 衝 突 相 手 と な る SUV が 自 車 よ り も 軽 け れ ば 上 半 身 の 傷 害 の 構 成 率 が 多 く ,反 対 に 自 車 よ りも重くなるほど,脚部傷害が多くなる傾向があることを確認,その理由が, SUV と の 前 部 サ イ ド メ ン バ の 上 下 の す れ 違 い に よ り , セ ダ ン は 弱 点 の あ る 車 両 上部に変形が生じ易くなるためと推測した. 次に,自動車が剛壁に衝突した際の速度を示すバリア換算速度を衝突による 車体変形の程度を示す指標とみなし,衝突現象を 1 次元衝突・質量,ばねモデ ルと仮定した場合のバリア換算速度計算値と衝突による車体の損壊量から実測 したバリア換算速度事故値を比較,セダン同士衝突では計算値と実測値がほぼ 同 じ と な る の に 対 し , SUV と セ ダ ン の 衝 突 で は , バ リ ア 換 算 速 度 の 計 算 値 と 実 測値が異なることを確認,上述前部サイドメンバの上下のすれ違いなど車両重 量以外の影響をバリア換算速度の計算値と実測値の差として定量的な数値とし て示した.また,乗員の傷害程度と衝突速度の関係を分析することによって, SUV や 1BOX 車 な ど と セ ダ ン の 衝 突 を セ ダ ン 同 士 の 衝 突 に 換 算 し , 乗 員 が 被 る 傷 害 に つ い て 比 較 を 行 っ た .更 に ,軽 乗 用 車 で あ る 軽 SUV と 軽 セ ダ ン の 衝 突 に お い て も ,乗 員 傷 害 の 特 徴 に お い て ,普 通 乗 用 車 で あ る SUV と セ ダ ン の 衝 突 と 同様な傾向が表れることを確認した. 第 4 章 で は ,精 密 な 模 型 に よ る 衝 突 実 験 の 結 果 か ら SUV と 衝 突 時 し た セ ダ ン 客室の乗員防護性について論ずる.本章では,衝突が開始されてから最大変形 に達するまでの間に,客室に加わる荷重の分布状況の変化を把握することによ っ て , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン に つ い て , 新 た に 客 室 入 力 の 観 点 か ら コ ン パ テ ィ ビリティーの検討を行った.特に客室内部に加わる力の分布をコンパティビリ ティー性能の指標と捉え,2 種類の新たな表現方法を提案した.第 1 の表現方 法として,客室に入る荷重の垂直方向分布およびその荷重中心の推移を示す手 第 1 章.緒言 8 法を導入した.荷重の垂直方向分布やその荷重中心の車両変形のストローク量 毎での変化を示すことにより,客室入力の評価を試みた.第 2 の表現方法とし て,センターピラー部での車体断面を 2 次元表示し,客室へ入る荷重の分布を 等高線で表示し,客室入力を表現する手法を導入した.車両変形のストローク 量毎で客室へ入る荷重分布の変化の評価を試みた.これらの表現法を用いるこ とによって,客室入力を検討した結果,平面バリア衝突では,荷重を客室下部 で 受 け て い る が , SU V を 模 し た バ リ ア と の 衝 突 で は , 荷 重 を 主 と し て ド ア ベ ル トライン部で受け持つことを明らかにした. 第 5 章 で は , SUV を 模 し た 模 型 と セ ダ ン 模 型 を 衝 突 さ せ る Car-to -C ar 衝 突 試 験 に つ い て 述 べ た .な お ,本 章 に お け る S UV 模 型 は ,車 体 構 造 お よ び 質 量 は セ ダンと全く同じとし,車高だけを変えて衝突時にサイドメンバが上下にオフセ ッ ト す る 高 さ に 設 計 し た . SUV , セ ダ ン そ れ ぞ れ の 客 室 へ の 荷 重 の 分 布 を 計 測 し た 結 果 , SUV 客 室 で は , 荷 重 を 主 と し て 客 室 下 部 で 受 け 持 ち , セ ダ ン 客 室 で は,荷重を主としてドアベルトライン部で受け持つことを確認した.したがっ て , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る 相 互 安 全 性 を 検 討 し , 乗 員 傷 害 を 軽 減 し て い くためには,平面バリア衝突の場合とは異なり,それぞれの客室における衝突 時の入力が大きい領域を補強することの重要性を示した. 第 6 章では,各章で論じた内容をまとめ,本研究の成果を要約した. 第 1 章.緒言 1.4 記号 1.4.1 交通事故統計分析に係る記号 R: 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 Nf: 死 亡 者 数 と 重 傷 者 数 の 和 N0: 軽 傷 者 数 と 無 傷 者 数 の 和 ΔV: 前 面 対 前 面 衝 突 に お け る 相 対 衝 突 速 度 |VSUV|: SUV 側 の 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値 |VSdn|: セ ダ ン 側 の 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値 | V S U V - M | : S U V- M 側 の 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値 |VSdn-M|: Sdn-M 側 の 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値 1.4.2 模型車両による衝突試験に係る記号 e: 単 位 体 積 あ た り の 吸 収 エ ネ ル ギ ー ρ: 密 度 l: 長 さ P: 荷 重 σ: 応 力 δ: 衝 突 に よ る 車 体 変 形 量 m: 質 量 t: 時 間 v: 速 さ α: 加 速 度 E: 運 動 エ ネ ル ギ ー I: 慣 性 モ ー メ ン ト ν: ポ ア ソ ン 比 ε: ひ ず み 9 第 1 章.緒言 P1: ダ ミ ー 接 触 時 内 圧 P2: 大 気 圧 v1: ダ ミ ー 接 触 時 の ガ ス の 比 重 量 q1: エ ア バ ッ グ 内 の 初 期 比 体 積 κ: 比 熱 比 w: 排 気 穴 出 口 速 度 g: 重 力 加 速 度 R: ガ ス 定 数 T: エ ア バ ッ グ 内 の 絶 対 温 度 10 第 1 章.緒言 1.5 本論文の用語 1.5.1 分析対象とした車種の定義 Sdn-S: 排 気 量 が 1500cc 以 下 の セ ダ ン Sdn-M: 排 気 量 が 1500cc 超 2000cc 以 下 の セ ダ ン Sdn-L: 排 気 量 が 2000cc 超 の セ ダ ン S U V- M : オ フ ロ ー ド で の 走 行 を 目 的 と し な い 軽 快 な S U V や ミ ニ バ ン と 呼 ば れ る ク ラ ス の SUV S U V- L : 本 格 的 な オ フ ロ ー ド 用 S U V 1.5.2 人身損傷程度の定義 死 亡 : 事 故 発 生 後 24 時 間 以 内 の 死 亡 重 傷 : 全 治 30 日 以 上 の 治 療 を 要 す る 損 傷 軽 傷 : 全 治 30 日 未 満 の 治 療 を 要 す る 損 傷 無傷:治療を必要としない場合 11 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 12 第 2章 交 通 事 故 統 合 デ ー タ に よ る SUV と セ ダ ン の 前面対前面衝突事故の分析 2.1 交通事故統合データについて 第 1 章で述べた通り,自動車の衝突安全性をより向上させ,衝突事故に よる乗員の被害低減を進めていくためには,大きさや形状の異なる車両に よる衝突に対しての相互安全性(コンパティビリティー)について考慮す る こ と が 重 要 で あ る . 本 章 お よ び 次 章 で は , SUV と セ ダ ン の 前 面 衝 突 に 関 するコンパティビリティーについて検討を行うため,その第1段階として 詳細な統計データに基づく事故実態の分析を行った. 国 内 に お け る 従 来 の 交 通 事 故 統 計 ( 4 5 ) で は ,車 両 形 状 が ボ ン ネ ッ ト 付 き 車 両とキャブオーバ型車両の分類までは可能であった.しかし,どちらも同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ る S U V と セ ダ ン に つ い て は ,事 故 統 計 デ ー タ中にこれらの区分が存在しないため,両者を区別して統計的に分析する ことは不可能であった. 警 察 庁 が 定 め た 交 通 事 故 統 計 原 票( 本 票 )中 の 車 種 分 類 を 表 2 . 1 に 示 す . 死傷事故を起こした四輪自動車は,当事者種別と車両形状の組合せによっ て分類された状態で,警察庁の交通事故統計データベースに記録される. 12 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 13 例 え ば , 1BOX タ イ プ の 軽 乗 用 車 の 場 合 は , 当 事 者 種 別 の 欄 で 「 軽 サ イ ズ の 乗 用 車 」, 車 両 形 状 の 欄 で 「 1 B O X タ イ プ の 乗 用 車 」 に 分 類 さ れ る こ と に なる.しかしながら,この事故統計ではボンネットタイプの乗用車は,す べ て 「 セ ダ ン タ イ プ 」 に 一 括 さ れ て 記 録 さ れ て し ま う の で , SUV と セ ダ ン を分離して分析することは不可能である. Ta b l e 2 . 1 Ve h i c l e C l a s s i f i c a t i o n s ( J a p a n e s e N a t i o n a l P o l i c e A g e n c y ) Speciation Passenger Vehicle Specific Heavy Heavy Sized Sized Vehicle Vehicle Standard Sized Vehicle Light Motor Vehicle Special Light Motor Vehicle Commercial Vehicle Specific Heavy Heavy Sized Sized Vehicle Vehicle Standard Sized Vehicle Light Motor Vehicle Vehicle Shape Passenger Vehicle Commercial Vehicle Bus Micro 1BOX Trailer Sedan Refrigerator Dump Cement Tank Dust Panel Van, 1BOX Light Trailer Other Bus Type Van Truck Mixer Truck Cart Container Van Trucks Truck Carrier 交通事故発生時に際して,事故の処理を担当する警察官は,事故に関与 した自動車に関する情報を前節にて述べた交通事故統計原票に記入するが, このとき,車両の登録番号も記入することになっている. I TA R D A の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ は , こ の 登 録 番 号 を 車 検 の 登 録 デ ー タ に リンクさせることによって,事故に関与した車両の製造メーカや型式,通 称名などといった登録上の情報を検索することが可能なシステムとしてつ く ら れ て い る . す な わ ち , I TA R D A の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 利 用 す る こ と で,事故に関与した車両の登録番号から,その製造メーカや型式,通称名 が照会されるため,車高や車両総重量が明らかになるので,車高や車両総 重量毎にクラス区分した状態で事故データを抽出することが可能となる. し た が っ て ,通 常 の 交 通 事 故 統 計 で は 分 析 す る こ と が 困 難 で あ っ た S U V と セダンの衝突事故も,車高や車両総重量でクラス区分する定義さえ決める ことができれば,統計的な分析ができるようになる. すなわち,交通事故統合データでは,同じくボンネット付き乗用車であ 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 14 っても,自動車の全高や車両総重量によって,事故統計データをクラス区 分して抽出することが可能となる.そこで,この交通事故統合データを利 用し,ボンネット付き乗用車の事故統計データを全高や車両総重量でクラ ス 区 分 す る こ と に よ っ て , SUV と セ ダ ン を 分 離 し , 全 国 統 計 的 な 分 析 を 可 能とするよう,新たな分析手法を試みた. こ の 比 較 デ ー タ に 基 づ き ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る 人 体 傷 害 程 度 と , セダン同士での衝突における人体傷害程度の比較が可能となる.これによ り , こ れ ま で 推 測 に よ っ て 語 ら れ て き た , SUV と セ ダ ン と の 衝 突 事 故 の 実 状を統計的な側面から明らかにし,コンパティビリティーについて検討を 行うことができるようになった. 2.2 セ ダ ン と SUV の 新 た な 分 類 手 法 前 述 し た よ う に ,こ れ ま で は 事 故 統 計 デ ー タ か ら S U V と セ ダ ン を 分 離 す る こ と は 困 難 で あ っ た .オ フ ロ ー ド を 走 行 す る 目 的 で 開 発 さ れ た S U V の 車 体構造は強固であり,セダンに比べて重量は重く,車高は高い.そこで, 交通事故統合データを用いて事故統計の分析を行うに当たって,車高と車 両 総 重 量 の 2 種 類 の 条 件 に よ る S U V と セ ダ ン の 区 分 の 可 能 性 に つ い て ,検 討を行った. 本 研 究 で は ,車 高 や 車 両 総 重 量 で S U V と セ ダ ン の ク ラ ス 区 分 を 定 義 す る こ と を 試 み , 1991 年 か ら 1998 年 に か け て 国 内 で 登 録 さ れ た , 軽 自 動 車 を 除く主なボンネット付き乗用車の車高および車両総重量での車種毎の分布 状況を調べることとし,次のような検討を行った. セ ダ ン に つ い て は ,排 気 量 が 1 5 0 0 c c 以 下 の 車 種( S d n - S ),排 気 量 が 1 5 0 0 c c 超 2 0 0 0 c c 以 下 の 車 種 ( S d n - M ), 排 気 量 が 2 0 0 0 c c 超 の 車 種 ( S d n - L ) の 3 ク ラ ス に ,SUV に つ い て は , オ フ ロ ー ド で の 走 行 を 目 的 と し な い ミ ニ バ ン や 軽 快 な 車 種 ( S U V- M ), 従 来 か ら の 本 格 的 な オ フ ロ ー ド 用 車 種 ( S U V- L ) の 2 ク ラ ス に 区 分 す る こ と を 試 み ,そ れ ぞ れ を 構 成 す る 車 種 の 寸 法( 車 長 , 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 15 車 幅 , 車 高 ) お よ び 車 両 総 重 量 に つ い て 一 覧 表 に ま と め た ( 表 2 . 2 – 2 . 6 ). Table 2.2 Specifications of Sdn-S Class Vehicles Manufacturer NISSAN MAZDA SUBARU SUZUKI TOYOTA MITSUBISHI HONDA ISUZU DAIHATSU Model Code Vehicle size Gross Vehicle Weight Model Name Length Width Height E-FN15 4140 1690 1385 1335 LUCINO E-JN15 4140 1690 1385 1080 PULSAR E-K10 3735 1590 1395 945 MARCH E-HK11 3720 1585 1425 1105 MARCH E-FB13 4220 1670 1375 1225 SUNNY E-B14 4295 1690 1385 1265 SUNNY E-JB14 4285 1690 1375 1385 LUCINO E-FN14 4243 1670 1385 1285 PULSAR E-FN15 4340 1690 1385 1355 PULSAR E-BHA3S 4035 1695 1405 1225 FAMILIA E-EC5SA 4215 1695 1310 1270 AZ-3 E-EC5S 4215 1695 1310 1270 EUNOS E-BHA5PSF 4410 1695 1420 1385 FORD LAZER E-D23PF 3825 1655 1440 1115 FORD FESTIVA E-BG5P 4250 1690 1385 1315 FAMILIA E-BHA3P 4335 1695 1420 1295 FAMILIA E-BHA6R 4400 1695 1440 1465 FAMILIA E-DB3PA 3800 1655 1470 1115 REVUE E-BHALPF 4420 1695 1420 1355 FORD LAZER E-KA7 3695 1535 1420 1045 JUSTY E-AA2 4370 1660 1385 1225 REONE E-AA44S 3745 1575 1350 1035 CULTUS E-GA11S 3870 1680 1395 1175 CULTUS E-GS21S 4195 1690 1380 1225 CULTUS HK-NHW10 4275 1695 1490 1515 PRIUS E-AE101 4270 1685 1380 1255 COROLLA E-AE111 4315 1690 1385 1275 COROLLA E-AE100 4385 1695 1315 1285 COROLLA E-AE101 4275 1695 1305 1330 COROLLA LEVIN E-AE110 4305 1695 1305 1210 COROLLA LEVIN E-AE100 4290 1685 1375 1265 SPRINTER E-AE110 4315 1690 1385 1335 SPRINTER E-AE110 4305 1695 1305 1210 SPRINTER E-EL55 4125 1660 1385 1295 TERCEL E-EL53 4125 1660 1370 1225 CORSA F-EL41 3930 1645 1365 1095 TERCEL E-EL51 3915 1600 1370 1175 TERCEL E-EL53 3915 1660 1370 1205 CORSA E-EL45 3930 1645 1365 1195 COROLLAⅡ E-EL53 3915 1660 1370 1165 COROLLAⅡ E-EL51 3915 1660 1370 1115 COROLLAⅡ E-EP82 3800 1600 1380 1025 STARLET E-EP91 3790 1625 1400 1085 STARLET E-CJ1A 3890 1680 1365 1225 MIRAGE E-CM5A 4290 1690 1405 1515 MIRAGE E-CK2A 4290 1690 1395 1265 MIRAGE E-CJ4J 4230 1690 1365 1245 MIRAGE E-CM5A 4290 1690 1405 1535 LANCER E-CB3A 4270 1690 1385 1265 LANCER E-CK1A 4290 1690 1395 1265 LANCER E-MB3 4480 1695 1390 1305 DMANI E-MB5 4480 1695 1405 1425 DMANI E-EK2 4450 1695 1390 1255 CIVIC E-EK5 4450 1695 1405 1405 CIVIC 4WD E-EK2 4180 1695 1375 1245 CIVIC E-JT151F 4195 1680 1390 1285 GEMINI E-MJ4 4480 1695 1390 1305 GEMINI E-MJ6 4480 1695 1405 1425 GEMINI 4WD E-GC1E43G 4340 1690 1405 1335 IMPREZA E-A101S 4340 1660 1375 1325 APPLAUSE E-G203S 4085 1620 1385 1195 CHARADE E-G200S 3750 1620 1385 1095 CHARADE E-G201S 3750 1620 1420 1195 CHARADE 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 16 Table 2.3 Specifications of Sdn-M Class Vehicles Manufacturer TOYATA NISSAN MITSUBISHI MAZDA HONDA ISUZU SUBARU Model Code Vehicle size Gross Vehicle Length Width Height E-SV30 4670 1695 1395 E-SV40 4625 1695 1410 E-CX81 4690 1695 1375 E-SV40 4650 1695 1390 E-AT212 4455 1695 1410 E-AT170 4480 1690 1370 E-AT210 4520 1695 1410 E-TJG00 4600 1740 1355 E-TJG00 4595 1735 1395 E-HK30 4595 1695 1460 E-UF31 4805 1695 1370 E-A31 4690 1695 1375 E-FC33 4690 1695 1365 E-HR32 4580 1695 1340 E-EU13 4585 1695 1370 E-EU14 4565 1695 1395 E-P11 4430 1695 1400 E-R11 4490 1695 1325 E-HC35 4745 1730 1400 E-HR33 4640 1720 1340 E-HR33 4720 1720 1360 E-S11A 4690 1695 1440 E-DA2A 4450 1695 1405 E-E32A 4560 1695 1430 E-E39A 4560 1695 1440 E-E33A 4560 1695 1405 E-E39A 4560 1695 1415 E-E35A 4560 1695 1405 E-EC5A 4680 1740 1420 E-EC1A 4620 1740 1420 E-E52A 4625 1730 1400 E-E53A 4610 1730 1370 E-GF8P 4575 1695 1440 E-GFER 4575 1695 1455 E-MAEP 4550 1695 1335 E-MAEPE 4550 1695 1335 GF-GF8OF 4575 1695 1440 E-MBEP 4695 1750 1340 E-CF3 4635 1695 1420 E-CF5 4635 1695 1440 E-CB5 4690 1695 1355 E-DC1 4380 1695 1335 E-EK3 4525 1695 1370 E-BB5 4520 1750 1315 E-CJ2 4635 1695 1420 E-BC3 4545 1690 1395 E-BD5C43R 4605 1695 1405 Weight Model Name 1425 1465 1635 1485 1405 1295 1385 1585 1575 1565 1735 1565 1475 1535 1435 1465 1465 1335 1625 1555 1595 1755 1425 1375 1685 1585 1755 1455 1755 1515 1435 1525 1455 1300 1535 1555 1455 1555 1535 1645 1585 1270 1285 1470 1535 1485 1565 CAMRY CAMRY MARK Ⅱ VISTA CARINA CORONA CORONA CAVALIER CAVALIER CREW LEOPARD CEFIRO LAUREL SKYLINE BLUEBIRD BLUEBIRD PRIMERA PRESEA LAUREL SKYLINE SKYLINE DEVONAIR V2000 CHARISMA GALLANT GALLANT VR4 ETERNA ETERNA ZR4 ETERNA SAVA GALLANT VR-4 GALLANT VR-G GALLANT EMERAUDE CAPELLA CAPELLA 4WD PERSONA EUNOS 300 FORD TELSTER ENFINI MS-8 ACCORD ACCORD 4WD ACCORD INTEGRA INTEGRA PRELUDE ASKA LEGACY LEGACY 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 Table 2.4 Specifications of Sdn-L Class Vehicles Manufacturer TOYOTA NISSAN MITSUBISHI MAZDA HONDA TOYATA NISSAN Model Code Vehicle size Length Width Gross Vehicle Weight Model Name Height E-JZS155 4900 1795 1420 1885 CROWN E-JZS155 4820 1760 1425 1805 CROWN E-JZS160 4805 1800 1435 1875 ARIST E-MCV21 4845 1790 1395 1745 WINDOM E-MCX10 4845 1785 1435 1745 AVALON E-SXV20 4760 1785 1420 1390 CAMRY E-JZX100 4760 1755 1400 1410 MARK Ⅱ E-GZG50 5270 1890 1475 2265 CENTURY E-VG45 5770 1890 1460 2365 CENTURY E-Y33 4870 1765 1425 1825 CEDRIC E-ENY33 4875 1765 1445 1975 GLORIA E-JMY33 4895 1765 1425 1825 LEOPARD E-BCNR32 4675 1780 1360 1760 SKYLINE GT-R E-PA32 4760 1770 1410 1585 CEFIRO E-F36A 4805 1785 1435 1785 DIAMANTE E-F13A 4740 1775 1435 1715 SIGMA E-S22A 4975 1815 1440 1875 DEVONAIR E-TA5P 4825 1770 1395 1705 MILLENIA E-HEEP 4895 1805 1420 1815 SENTIA E-UA1 4840 1785 1405 1655 INSPIRE E-UA1 4840 1785 1405 1655 SABER E-KA9 4955 1810 1435 1905 LEGEND E-UCF21 4995 1830 1415 2045 CELSIOR E-JZZ30 4900 1805 1350 1835 SOARER E-JHG50 5225 1830 1425 2265 PRESIDENT E-PHG50 5075 1830 1425 2215 PRESIDENT E-FHY33 4970 1820 1445 1915 CIMA 17 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 Table 2.5 Specifications of SUV-M Class Vehicles Manufacturer MITSUBISHI NISSAN HONDA TOYOTA MAZDA DAIHATSU SUZUKI Model Code Vehicle size Length Width Gross Vehicle Weight Model Name Height E-N23WG 4460 1740 1730 1760 RVR E-N23WG 4375 1740 1690 1710 RVR E-N23W 4360 1695 1680 1600 RVR E-N23W 4360 1695 1680 1595 RVR E-N84W 4585 1775 1650 1895 CHARIOT GRANDIS E-N84W 4585 1775 1650 1840 CHARIOT GRANDIS E-H57A 3500 1545 1660 1200 PAJERO Jr. E-N30 4680 1765 1675 1725 RNESSA E-NN30 4680 1765 1690 1915 RNESSA 4WD E-PM11 4545 1690 1680 1795 PRAIRIE E-PM11 4545 1690 1680 1805 PRAIRIE E-N30 4680 1765 1675 1735 RNESSA E-RA4 4765 1790 1690 1985 ODYSSEY E-RA4 4765 1770 1660 1975 ODYSSEY E-RH1 3950 1695 1750 1560 S-MX E-RD1 4470 1750 1705 1665 CR-V E-AE111 4135 1690 1660 1550 COROLLA SPACIO E-AE111 4135 1690 1660 1415 COROLLA SPACIO E-TJ51W 4100 1695 1720 1585 PROCEED E-TF51W 3720 1695 1700 1470 PROCEED Q-F71G 3715 1670 1840 1775 RAGAR E-J100G 3865 1555 1760 1335 TERIOS E-J100G 3785 1555 1715 1325 TERIOS E-F300S 3705 1635 1725 1470 ROCKY E-F300S 3705 1580 1725 1450 ROCKY E-TD61W 4100 1695 1720 1625 ESCUDO E-TA51W 3720 1695 1700 1430 ESCUDO E-TA01W 3570 1635 1705 1330 ESCUDO E-JB32W 3510 1545 1670 1200 JIMNY SIERRA E-TA01R 3560 1635 1665 1260 ESCUDO E-TA01R 3560 1635 1695 1290 ESCUDO E-TD01W 3975 1635 1700 1465 ESCUDO 18 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 19 Table 2.6 Specifications of SUV-L Class Vehicles Manufacturer TOYOTA NISSAN MITSUBISHI MAZDA HONDA SUBARU ISUZU Model Code Vehicle size Gross Vehicle Length Width Height 4240 1730 1865 KD-KZJ90W 4815 1790 1935 KD-KZJ95W Q-LJ78W 4585 1790 1900 KD-KZN185W 4850 1800 1805 4540 1800 1765 E-RZN185W KD-KZJ95W 4675 1820 1880 E-FJ80G 4970 1900 1900 5090 2170 2075 KC-BXD20V 4980 1930 1860 KC-HDJ81V E-FZJ80G 4970 1930 1860 MIKD-R20 4580 1755 1805 MIKD-KR20 4105 1755 1805 KD-WYY61 4340 1840 1855 E-LR50 4530 1840 1730 KD-PR50 4530 1840 1790 KD-JRR50 4670 1840 1750 E-JLR50 4670 1840 1730 E-WGY61 4910 1930 1865 KD-V26C 4030 1695 1880 E-V23C 4030 1695 1850 KB-J55FF 3455 1665 1910 E-H57A 3500 1545 1660 Q-V24W 4030 1695 1825 Q-V44W 4650 1695 1945 KD-V46W 4650 1695 1975 E-V25W 4060 1785 1890 KD-V26WG 4060 1785 1845 E-V21W 4060 1785 1860 KD-V46WG 4680 1775 1900 E-K99W 4530 1775 1730 E-UV66R 4950 1720 1800 KD-UVL6R 4990 1810 1815 KD-UBS69GWH 4660 1745 1840 Q-UBS55FWS 4550 1650 1820 Q-UBS55FW4KLT 4470 1650 1815 4120 1650 1820 Q-UBS55CWK1 4660 1745 1840 E-UBS25GW KD-UCS69GW 4585 1765 1750 KD-UCS69DWM 4165 1780 1670 4130 1790 1710 E-UGS25DW E-UBS25DW 4230 1835 1835 KD-UBS69GW 4660 1835 1840 Weight Model Name 2025 2860 2400 2125 2005 2235 2660 3395 2770 2670 2305 2055 2315 2095 2175 2185 2105 2635 2080 1920 1730 1200 2005 2325 2525 2175 2225 2035 2485 2185 2145 2215 2315 2075 2075 1910 2355 2175 1980 1970 2115 2475 LANDCRUISER PRADO LANDCRUISER LANDCRUISER PRADO HILUXSURF HILUXSURF LANDCRUISER PRADO LANDCRUISER MEGA CRUISER LANDCRUISER LANDCRUISER MISTRAL MISTRAL SAFARI TERRANO V6 TERRANO TERRANO TERRANO SAFARI PAJERO PAJERO JEEP PAJERO Jr. PAJERO PAJERO PAJERO PAJERO PAJERO PAJERO PAJERO CHALLENGER PROCEED PROCEED HORISON BIGHORN BIGHORN BIGHORN BIGHORN MU MU VEHICROSS BIGHORN BIGHORN 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 20 こ の 結 果 に 基 づ き , 図 2.1 に 示 し た よ う に , SUV と セ ダ ン を 車 高 お よ び 車 両総重量でクラス区分する定義を決定し,事故統計分析を行った. 図 2 . 1 を み る と ,細 線 で 区 分 し た よ う に ,S d n - S の 多 く は 車 両 総 重 量 1 . 4 t o n 以 下 に , Sdn-M の 多 く は 車 両 総 重 量 1.4ton か ら 1.7ton の 間 に , Sdn-L の 多 く は 車 両 総 重 量 1.7ton 超 に 分 布 し て お り , い ず れ も 車 高 1500mm 以 下 で あ る .ま た ,S U V- M の 多 く が 車 両 総 重 量 2 . 0 t o n 未 満 に ,S U V- L の 多 く が 車 両 総 重 量 2.0ton 以 上 に 分 布 し て お り , い ず れ も 車 高 1650mm 以 上 で あ る . 以 上 の こ と か ら , 同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ る SUV と セ ダ ン は , 車両総重量と車高を組み合わせて判別することにより,交通事故統合デー タベース上での区分が可能であると言える.このようにして,従来の事故 統 計 上 で は 区 分 が 不 可 能 で あ っ た S U V と セ ダ ン を ,初 め て 区 分 す る こ と が 可 能 と な っ た . さ ら に 本 研 究 で は , 図 2.1 中 に 示 し た 細 線 で 区 切 っ た 範 囲 で セ ダ ン を 3 種 類 , SUV を 2 種 類 に 分 類 し , そ れ ぞ れ の 種 類 を 交 通 事 故 統 合データ中から区分した上で,全国統計的な視点から事故分析を行った. Vehicle Height (mm) 2000 1800 1600 1400 1200 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 Gross Vehicle Weight (ton) Sdn-S △ Sdn-M ○ Sdn-L ◇ ▲ SUV-M ● SUV-L Fig.2.1 Gross Vehicle Weight and Height (1991-1998,Japan) 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 21 2.3 車両重量が同程度のセダンと SUV の衝突事故の分析 2.3.1 分析対象の決定 図 2 . 1 で 分 類 し た 車 種 の う ち ,S U V- M と S d n - M の 前 面 対 前 面 衝 突 に 着 目 し た 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 用 い た 事 故 統 計 分 析 を 行 っ た . 図 2.1 の 車 種 別 分 布 状 態 の 通 り ,S U V- M と S d n - M の 車 両 総 重 量 自 体 に は ,大 き な 差 異 は 存 在しない.したがって,衝突における乗員の傷害程度や傷害部位に異なる 特徴があるとすれば,バンパ高さやサイドメンバ高さの違い等の重量以外 の要因,すなわち前面形状や車体構造の相違が影響をおよぼしたものと考 えることができる.そこで,以下のように,運転者の死亡重傷者率および 運転者の傷害部位の構成について両車種同士の衝突事故を抜き出し,解析 を行った. 2.3.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率 ま ず , 前 面 対 前 面 衝 突 事 故 に お け る S U V- M お よ び S d n - M の 運 転 者 の 衝 突速度別死亡重傷者率についての分析を行った.運転者の死亡重傷者率 R は , 式 (2.1)に よ っ て 定 義 し た . R= Nf ´ 100 N f + N0 (2.1) N f: 死 亡 者 数 と 重 傷 者 数 の 和 N 0: 軽 傷 者 数 と 無 傷 者 数 の 和 また,前面対前面衝突における相対衝突速度ΔV は,車両速度の絶対値の 和 ( 図 2.2) で あ り , 式 (2.2)の よ う に 表 さ れ る . Δ V = | V S U V- M | + | V S d n - M | | V S U V - M | : S U V- M 側 の 危 険 認 知 速 度 |VSdn-M|: Sdn-M 側 の 危 険 認 知 速 度 (2.2) 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 22 I TA R D A が 保 有 す る 危 険 認 知 速 度 の デ ー タ を , 衝 突 速 度 に 近 似 し た も の と み な し , そ の 和 を 相 対 衝 突 速 度 と し て 式 (2.2)に 従 い 算 出 し た . な お , 危 険 認知速度とは,運転者が衝突相手の存在を認識し,危険を認知した時の速 度のことであり,厳密には実際の衝突速度ではない.ただし,危険認知速 度と実際の衝突速度には相関性があり,近似できるものであるという報告 が な さ れ て お り (74)(75), 本 研 究 で は , 危 険 認 知 速 度 を 衝 突 速 度 と み な し て 扱うこととする. | V SUV-M | | V Sdn-M | Fig.2.2 Front-to-Front Collision (SUV-M to Sdn-M) 図 2.3 に 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 と し て 求 め た 危 険 認 知 相 対 速 度 Δ V と 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 R の 関 係 を 示 す .相 対 速 度 Δ V が 6 0 k m / h 以 下 の 速 度 域 に つ い て は ,S U V- M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と S d n - M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 に あ ま り 大 き な 差 は み ら れ な い が , 相 対 速 度 Δ V が 70km/h 以 上 に な る と ,S U V- M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と S d n - M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率の差は開いていく.この傾向は重量が同程度の車両同士に関して得られ た も の で あ り , 注 目 す べ き 結 果 と 考 え ら れ る . こ の 理 由 は , 図 2.1 で 示 し た 通 り ,S U V- M の 車 高 が S d n - M に 比 し て 高 く ,バ ン パ 高 さ や サ イ ド メ ン バ 高さに上下のオフセットが存在するためと考えられる.したがって,衝突 エネルギーの大きい速度域になると,後述するように,この上下方向のオ フセットが車両重量以外の要因として効いてくるため,運転者の死亡重傷 者率の差が大きくなっていくと推測することができる. Fatal or Serious Injury Rate R (%) 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 23 16 14 Sdn-M SUV-M 12 10 8 6 4 2 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity ΔV (km/h) Fig.2.3 Fatal or Serious Injury Rate R and Relative Velocity Δ V 2.3.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成 次 に , 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 に , 死 亡 ま た は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構 成 に つ い て 分 析 を 行 っ た .S U V- M と S d n - M の 衝 突 に お け る Sdn-M の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 81 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 2 . 4 に , S U V- M の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 5 7 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 2.5 に 示 す . 頸 部 お よ び 胸 部 損 傷 の 構 成 率 に 関 し て は , Sdn-M 運 転 者 ( 図 2.4) の 方 が , S U V- M の 運 転 者 ( 図 2 . 5 ) よ り 若 干 高 い . 反 対 に S U V- M 運 転 者 は 脚 部 損傷の構成率が高い.このように運転者の損傷主部位の構成についても S U V- M と S d n - M の 間 に 異 な る 傾 向 が み ら れ る .以 上 の よ う に ,傷 害 部 位 の 構成が異なる理由として,衝突時における車両の潰れ方に相違のあること が 推 測 さ れ る .す な わ ち ,車 高 の 低 い Sdn-M 側 で は 乗 員 空 間 の う ち 比 較 的 上の部分が主に潰されることとなるので,運転者の頸部や胸部が傷害部位 と な る 割 合 が 高 く な り ,一 方 ,車 高 の 高 い S U V- M 側 で は 乗 員 空 間 の う ち 下 の部分が主に潰されることとなるので,運転者の脚部が傷害部位となる割 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 24 合が高くなっていると考えられる. 比 較 の た め Sdn-M 同 士 の 衝 突 に よ る 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 807 人 ) の 傷 害 部 位 別 構 成 を 図 2 . 6 に , S U V- M 同 士 の 衝 突 に よ る 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 13 人 ) の 傷 害 部 位 別 構 成 を 図 2.7 に 示 す . Sdn-M 同 士 で の 衝 突 ( 図 2.6) は 図 2 . 4 に 比 べ 頸 部 あ る い は 胸 部 損 傷 の 構 成 率 が 少 な く な っ て い る .ま た , S U V- M 同 士 で の 衝 突 ( 図 2 . 7 ) で は , 図 2 . 5 に 比 べ 頸 部 あ る い は 胸 部 損 傷 の構成率が多くなっている.このことからも車両重量自体には差が少ない 車両同士の衝突であっても,車体構造が異なる車両との衝突では乗員の傷 害部位の構成に相違のあることが,このことからも明らかである.なお, 上 述 の 事 故 統 計 分 析 結 果 を 有 意 水 準 0.05 で 検 定( 片 側 検 定 )し ,Sdn-M 運 転者の頸部傷害について有意であることを確認した. Injuries of Drivers (%) 35 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig.2.4 Injuries of Sdn-M Drivers (SUV-M to Sdn-M) 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face 0 Head Injuries of Drivers (%) 35 Fig.2.5 Injuries of SUV-M Drivers (SUV-M to Sdn-M) 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 25 Injuries of Drivers (%) 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig. 2.6 Injuries of Sdn-M Drivers (Sdn-M to Sdn-M) Injuries of Drivers (%) 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig.2.7 Injuries of SUV-M Drivers (SUV-M to SUV-M) 2.3.4 傷害種別の詳細について 次に,死亡もしくは重傷を負った運転者の各損傷主部位の傷害種別の構 成についても分析を行った. 図 2.8 に , Sdn-M 同 士 の 前 面 対 前 面 衝 突 で 死 亡 も し く は 重 傷 を 負 っ た 運 転者の各損傷主部位の傷害内容の構成を示す. ・ 頭 部 : 裂 擦 過 お よ び 打 撲 傷 が 約 60%を , 骨 折 が 約 30%を 占 め る . ・ 頸 部 : 頚 椎 捻 挫 が 約 65%を 占 め る . ・ 胸 部 : 骨 折 が 約 75%. (c) Chest 10 0 0 30 20 (a) Head 80 70 70 60 50 40 30 10 0 0 Neck, Others 50 Neck, Bruise or Cuts, Abrasions 50 Neck, Sprain 60 Injuries of Drivers (%) 40 Neck, Fracture Head, Others Head, Bruise or Cuts, Abrasions 60 Abdomen, Others 10 Head, Ruptured 70 Abdomen, Bruise or Cuts, Abrasions 60 Injuries of Drivers (%) Head, Fracture Injuries of Drivers (%) 70 Abdomen, Ruptured Chest, Others Chest, Bruise or Cuts, Abrasions Chest, Ruptured Chest, Fracture Injuries of Drivers (%) 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 26 40 30 20 (b) Neck 50 40 30 20 20 10 (d) Abdomen 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 80 27 100 90 70 80 Injuries of Drivers (%) Injuries of Drivers (%) 60 50 40 30 70 60 50 40 30 20 20 10 (e) Pelvis Legs, Others Legs, Bruise or Cuts, Abrasions Legs, Sprain Legs, Fracture Legs, Amputation 0 Pelvis, Others Pelvis, Bbruise or Cuts, Abrasions Pelvis, Fracture 0 Pelvis, Ruptured 10 (f) Legs Fig.2.8 Injuries of Sdn-M Drivers (Sdn-M to Sdn-M) ・ 腹 部 : 内 臓 破 裂 が 約 60%. ・ 腰 部 : 骨 折 が 約 70%. ・ 脚 部 : 骨 折 が 約 90%. 図 2 . 9 に ,S U V- M と S d n - M の 前 面 対 前 面 衝 突 に お い て ,死 亡 も し く は 重 傷 を 負 っ た Sdn-M 側 運 転 者 の 各 損 傷 主 部 位 の 傷 害 内 容 の 構 成 を 示 す . ・ 頭 部 : 裂 擦 過 お よ び 打 撲 傷 は 約 45%, 骨 折 は 約 40%. Sdn-M 同 士 で の 衝突に比べ,裂擦過および打撲傷の構成率が減少し,骨折が増 加している. ・ 頸 部 : 頚 椎 捻 挫 が 約 60% 弱 と Sdn-M 同 士 で の 衝 突 に 比 べ , や や 減少している.その代わりに裂擦過および打撲傷がやや増加し ている. ・ 胸 部 : 骨 折 が 約 75%. Sdn-M 同 士 で の 衝 突 と 同 じ 程 度 . (c) Chest 0 (a) Head 80 70 70 60 50 40 30 0 0 Neck, Others 5 Abdomen, Others 15 Neck, Bruise or Cuts, Abrasions 20 Neck, Sprain 25 Neck, Fracture 30 Injuries of Drivers (%) 35 Abdomen, Bruise or Cuts, Abrasions 60 Injuries of Drivers (%) Head, Others Head, Bruise or Cuts, Abrasions Head, Ruptured Head, Fracture Injuries of Drivers (%) 50 Abdomen, Ruptured Chest, Others Chest, Bruise or Cuts, Abrasions Chest, Ruptured Chest, Fracture Injuries of Drivers (%) 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 28 70 45 40 60 50 40 30 20 10 10 0 (b) Neck 50 40 30 20 20 10 10 (d) Abdomen 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 90 100 80 90 80 40 30 10 0 0 Pelvis, Fracture (e) Pelvis Pelvis, Others 10 Pelvis, Bruise or Cuts, Abrasions 20 Pelvis, Ruptured 20 Legs, Others 30 50 Legs, Bruise or Cuts, Abrasions 40 60 Legs, Sprain 50 70 Legs, Fracture 60 Legs, Amputation Injuries of Drivers (%) 70 Injuries of Drivers (%) 29 (f) Legs Fig.2.9 Injuries of Sdn-M Drivers (SUV-M to Sdn-M) ・ 腹 部 : 内 臓 破 裂 が 約 65%. Sdn-M 同 士 で の 衝 突 に 比 べ , や や 増 加 し て いる. ・ 腰 部 : 骨 折 が 約 85%. Sdn-M 同 士 で の 衝 突 に 比 べ , 増 加 し て い る . そ の代わりに裂擦過および打撲傷が減少している. ・ 脚 部: 骨 折 が 約 9 5 % .S d n - M 同 士 で の 衝 突 に 比 べ ,や や 増 加 し て い る . 前 節 に て ,SUV と 衝 突 し た セ ダ ン の 運 転 者 は , セ ダ ン 同 士 の 衝 突 の 場 合 に比べ,頭部や胸部といった上半身の傷害の構成率が多くなっていること を確認した.しかしながら,傷害の内容について分析したところ,同じく 頭 部 傷 害 と い っ て も , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン の 運 転 者 と セ ダ ン 同 士 で は , 傷害種別の構成が異なっていることを確認した.すなわち,セダン同士の 衝 突 で の 頭 部 傷 害 で は ,裂 擦 過 お よ び 打 撲 傷 の 構 成 率 が 多 か っ た の が ,S U V と 衝 突 し た セ ダ ン で は ,骨 折 が 裂 擦 過 お よ び 打 撲 傷 よ り も 多 く な っ て い る . ま た , 頸 部 傷 害 に つ い て も , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 の 方 が , セ ダ ン 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 30 同士の衝突に比べ,捻挫が少なくなり,代わりに裂擦過および打撲傷の構 成 率 が 増 え て い る .そ の 他 の 損 傷 主 部 位 に つ い て も ,そ れ ぞ れ S U V と 衝 突 したセダン運転者の傷害の方が,重い被害を負う傾向である. 2.4 車両重量の差が大きいセダンと SUV の衝突との比較 2.4.1 比較対象の選定 2 . 3 節 で は ,車 両 重 量 が ほ ぼ 同 程 度 の S U V- M と S d n - M の 衝 突 に 着 目 し た 事故統計分析を行い,乗員の人体損傷程度や傷害部位の構成に違いがみら れ る こ と を 確 認 し た . こ の こ と か ら , SUV と セ ダ ン の 車 両 重 量 に 極 め て 大 きな差異が存在する場合については,乗員の人体傷害程度や傷害部位の構 成 に ,前 述 の S U V- M と S d n - M の 衝 突 以 上 の 極 端 な 違 い が 表 れ る と 考 え る . そ こ で 本 節 で は , 図 2.1 に 示 し た 車 種 別 分 布 に て 車 両 重 量 に 最 も 大 き な 差 異 が 存 在 す る S U V- L と S d n - S の 衝 突 を 比 較 対 象 に 選 定 ,両 車 の 衝 突 に お け る衝突速度と運転者の死亡重傷者率の関係,運転者の傷害部位の構成につ いて考察する. 2.4.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率 前 面 対 前 面 衝 突 事 故 に お け る S U V- L お よ び S d n - S の 運 転 者 の 衝 突 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 に つ い て の 分 析 を 行 っ た . 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対象として求めた危険認知相対速度ΔV と運転者の死亡重傷者率Rの関係 を 図 2 . 1 0 に 示 す .S U V- L の 運 転 者 と S d n - S の 運 転 者 に お け る 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は , 図 2 . 3 に 示 し た S U V- M と S d n - M に 対 す る 同 様 な 比 較 図 よ り も 特 徴 が 極 端 に 強 く 出 て い る .す な わ ち ,圧 倒 的 に S U V- L の 死 亡 重 傷 者 数 が 少 なくなっている.これは,車体構造の差に加えて,車両重量が異なるため であることは明らかではあるが,定量的なデータとして注目すべきことと 考える. Fatal or Serious Injury Rate R (%) 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 31 30 SUV-L Sdn-S 25 20 15 10 5 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity Δ V (km/h) Fig.2.10 Fatal or Serious Rate R and Relative Velocity ΔV 2.4.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成 死 亡 ま た は 重 傷 と な っ た S d n - S と S U V- L に 関 す る 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構 成 に つ い て 1995 年 か ら 1999 年 に 発 生 し た 死 傷 事 故 を 対 象 と し て 分 析 を 行 っ た . 図 2 . 1 1 に S U V- L と 衝 突 し た S d n - S の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 2 3 4 人 ) に つ い て の 損 傷 主 部 位 部 位 別 構 成 率 を 示 す . Sdn-S の 運 転 者 に つ い て は , 胸部および脚部が傷害部位となっている割合が多い.この傾向は前節の結 果 ( 図 2.4) と 類 似 し て い る . 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face 0 Head Injuries of Drivers (%) 30 Fig.2.11 Injuries of Sdn-S Drivers (SUV-L to Sdn-S) 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 32 Injuries of Drivers (%) Injuries of Drivers (%) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig.2.12 Injuries of SUV-L Drivers (SUV-L to Sdn-S) 一 方 , S U V- L の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 4 2 人 ) に つ い て の 損 傷 主 部 位 部 位 別 死 傷 者 の 構 成 率 を 図 2 . 1 2 に 示 す .S U V- L の 運 転 者 に つ い て は ,頸 部 が 傷 害 部 位 と な っ て い る 割 合 が 多 い . こ の こ と は 前 節 の 図 2.5 の 傾 向 と は や や 異 な っ て い る . 重 量 が 軽 く , 車 高 も 低 い Sdn-S の 車 両 前 面 と 衝 突 し た 場 合 , S U V- L の 車 両 は 前 面 部 分 が 破 損 す る も の の , 乗 員 空 間 は ほ と ん ど 潰 れ ることはないので,このケースでの死亡重傷者は少なく,通常,死亡ある いは重傷に至る損傷は脚部より頸部の方に多いという一般的特徴がそのま ま比率として表れたためではないかと推測される. この点については,2 次衝突の有無に関する裏付けが本来は必要と思わ れ る が , I TA R D A が 保 有 す る 交 通 事 故 統 合 デ ー タ だ け か ら は , 2 次 衝 突 の 有無を判別することは出来ない.この観点からの詳細な分析は今後の課題 である. 2.5 考察 セ ダ ン と S U V の 前 面 対 前 面 衝 突 に つ い て ,第 2 . 3 節 で は 車 両 重 量 の 差 が 少 な い S U V- M と S d n - M の 衝 突 ,第 2 . 4 節 で は 車 両 重 量 の 差 が 大 き い S U V- L と S d n - S の 衝 突 の 事 故 統 計 分 析 を 行 い ,以 下 の こ と を 確 認 し た .す な わ ち , 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 33 全 般 的 に SUV 側 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が セ ダ ン 側 運 転 者 よ り も 低 く なっていること.そして,その差が衝突速度の増大と共に拡がっていくこ と . ま た , SUV, セ ダ ン 共 に 衝 突 相 手 に よ っ て 死 亡 あ る い は 重 傷 と な っ た 運転者の傷害部位の構成が異なっていることが明らかになった.本節では その理由について以下のような考察を行う. SUV と セ ダ ン は 通 常 バ ン パ 高 さ や サ イ ド メ ン バ の 高 さ が 異 な っ て い る ( 図 2 . 1 3 ). こ の た め , S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お い て は , 両 車 の サ イ ド メ ンバは上下方向にオフセットした状態で衝突するものと考えられる. 衝 突 に よ る 荷 重 の 考 察 に , 荷 重 の 伝 達 経 路 の 考 え 方 (76)-(81)を 用 い れ ば , セダン同士の前面対前面衝突において,衝突による入力は,車両前部につ いては主としてサイドメンバを通じて伝達され,客室部への入力はフロア 下部のフロアメンバを伝わる経路とサイドシルおよびトンネル部に伝わる 経 路 と に 分 か れ て 後 方 に 伝 え ら れ る ( 図 2 . 1 4 ). 一 方 , エ ン ジ ン の 客 室 へ の侵入は,フロア部のトンネルが主として反力を受け持っている.客室保 護対策を考慮して設計されたセダンでは,このような客室に加わる力の伝 達 経 路 に 沿 っ た 客 室 の 補 強 が な さ れ て い る ( 7 6 ) .そ の た め ,客 室 を 保 護 す る ために,衝突によるサイドメンバの付け根部分(トーボード周り)を力の 受け手としてうまく利用し,衝突による入力を力の伝達経路に沿わせ,効 果的に後方に伝達させていく構造法が採られている. SUV Sedan Side-Member Side-Member Fig. 2.13 Heights of Side-Members 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 Front Dash-Panel 34 Floor-Tunnel Floor-Member Cross-Member Side-Member Side-Sill Fig.2.14 Load Transfer Courses in Plain View (Sedan) し か し な が ら ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 に お い て は ,先 述 の 通 り ,S U V のサイドメンバがセダンのサイドメンバと上下にオフセットしているため, セダン側は衝突の力の受け手である客室下部を有効に利用することができ ない.したがって,セダン客室には,補強されている荷重の伝達経路以外 の 部 位 に 大 き な 入 力 が 加 わ る こ と に な る . 衝 突 時 に SUV, セ ダ ン 両 車 に 加 わる衝撃力自体は等しいのであるが,セダン側では効果的な荷重の受け方 が で き な い こ と か ら ,セ ダ ン の 客 室 構 造 の 方 が 強 度 面 で 不 利 と な る .特 に , 高い速度域での衝突においては,客室が入力に耐えきれず変形は大きくな る.それに伴って運転者の死亡重傷者率も高くなってしまっているものと 考 え る こ と が で き る . こ の こ と は 図 2.4 お よ び 図 2.5 の 傷 害 部 位 の 相 違 と も符合している. 2.6 事故例との照合 本章では,以上の分析に関する具体例を参考のため記載しておきたい. 上 記 分 析 に 対 応 す る 具 体 的 事 故 例 は 多 く 存 在 す る が (82)(83), こ こ で は 2.4 節 で 述 べ た S U V- L と S d n - S に 関 し , 公 表 し 得 る 一 例 を 示 す . な お , こ こ で 紹介する事故例での事故車両それぞれの重量,衝突速度,最大変形量およ び サ イ ド メ ン バ の 地 上 高 は 表 2.7 に 示 し た 通 り で あ る . 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 35 Table 2.7 Collision of SUV-L to Sdn-S SUV-L Sdn-S Total Vehicle Weight with Occupants (ton) 1.90 0.88 Collision Relative Side-Member Velocity (km/h) Lower Height (mm) 460 100 340 ( a ) S U V- L (b) Sdn-S Fig.2.15 Deformation of SUV-L and Sdn-S Crash Stroke (mm) 400 1000 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 36 こ の 事 故 例 に お け る S U V- L 車 両 と S d n - S 車 両 の サ イ ド メ ン バ 地 上 高 の 差 は 1 2 0 m m あ る こ と か ら ,衝 突 時 に お い て サ イ ド メ ン バ が オ ー バ ー ラ ッ プ し ている部分はかなり少ないとみなすことができる.車両の潰れ状況を図 2.15 に 示 す . Sdn-S の 車 両 に つ い て は フ ェ ン ダ ー 部 分 も 含 め た ボ ン ネ ッ ト 部分だけでなく,前席部分の乗員空間も大きく潰れており,それによって ステアリング部分や計器盤は後退し,運転席シート背面部との距離が狭ま っている.この事故例は重量の差が大きく,必ずしも同重量の場合と同一 視はできないが,上下のオフセットにより客室変形が問題となる場合の, より強調されたケースと見ることができる. 2.7 第 2 章の結論 (1) ど ち ら も 同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ る た め , SUV と セ ダ ン の 衝 突事故については,従来の交通事故統計では分析することが不可能で あ っ た .そ こ で ,I TA R D A が 保 有 す る 交 通 事 故 統 合 デ ー タ 上 で ,S U V と セ ダ ン を 分 類 す る 手 法 を 開 発 し た .こ の 手 法 を 用 い る こ と に よ り ,S U V とセダンのコンパティビリティーを全国統計的に論ずることが可能と なった. (2) セ ダ ン と SUV の 前 面 対 前 面 衝 突 で は , 車 両 重 量 に 大 き な 差 が な い 場 合 で あ っ て も , SUV 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が セ ダ ン 運 転 者 よ り も 低 くなっている.また,その差は衝突速度の増大と共に拡がっていく. さ ら に ,S U V ,セ ダ ン 共 に 衝 突 相 手 に よ っ て 死 亡 あ る い は 重 傷 と な っ た 運転者の傷害部位の構成が異なるなど,コンパティビリティーを論ず る上での特徴が明らかとなった. (3) 上 記 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー 上 の 特 徴 は , SUV の サ イ ド メ ン バ が セ ダ ンのサイドメンバと上下にオフセットして衝突するためと考えられる. このため,セダンはサイドメンバ取付部を衝突の力の受け手として有 効に利用することができない.したがって,客室変形が増大する傾向 第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析 37 にあり,それに伴って運転者の死亡重傷者率も高くなっていると考え ることができる. 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 38 第 3章 セ ダ ン と SUV の 衝 突 全 般 に お け る セダン運転者の傷害の分析 3.1 分析対象の検討 前 章 で は , I TA R D A が 保 有 す る 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 活 用 す る こ と に よ っ て ,重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 前 面 衝 突 に お け る 事 故 統 計 分 析 を 行った.そして,車両重量に大きな差がない場合であっても,乗員傷害の 程度や部位に差異のあること等,コンパティビリティーを論ずる上での特 徴を明らかにした. 本 章 で は ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 全 般 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る た め ,重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る 乗 員 傷 害 の 特 徴 に ついての分析を試みた. セ ダ ン と SUV の 衝 突 全 般 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 検 討 を 行 う に当たって,ボンネット付き乗用車の分類は,前章と同様に,セダンにつ い て は , S d n - S , S d n - M , S d n - L の 3 ク ラ ス に , S U V に つ い て は , S U V- M , S U V- L の 2 ク ラ ス の 計 5 車 種 に 分 類 し た . こ れ ら は , 車 高 と 車 両 総 重 量 に よ っ て 区 分 す る こ と が で き る ( 図 2 . 1 ). I TA R D A が 保 有 す る 交 通 事 故 統 合 デ ー タ は , 車 高 お よ び 車 両 総 重 量 毎 に 区 38 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 39 分されたデータを抽出できるので,これを利用することにより車高と車両 総重量によって区分された車種の全国統計的な事故データの抽出を行うこ とが可能となる. 次に,本章における分析対象の選定を行った.前章では,車両総重量自 体 に は 大 き な 差 異 が 存 在 し な い S U V- M と S d n - M の 衝 突 分 析 を 行 い , バ ン パ高さやサイドメンバ高さの違い等,前面形状や車体構造の相違といった 重量以外の要因が,衝突における乗員の傷害程度や傷害部位に影響をおよ ぼ し て い る こ と を 確 認 し た が ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る た め に は ,車 両 重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 の 全 般的な状況も把握しておく必要がある. そ こ で 上 述 5 車 種 を 対 象 に , 図 3.1 中 に 矢 印 で 示 し た 衝 突 し た 組 み 合 わ せについて事故統計分析を行った. SDN-S Sdn-S SUV-M SDN-M Sdn-M SUV-L SDN-L Sdn-L Fig.3.1 Car-to-Car Collisions 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 3.2 3.2.1 40 対 SUV 衝 突 に お け る セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 分 析 本章における分析 自動車同士の衝突事故において,乗員の安全は最優先に保護すべきもの である.したがって,効果的な衝突安全対策を考えていくためには,乗員 傷 害 の 傾 向 や 特 徴 を よ く 捉 え て お く こ と が 重 要 で あ る . そ こ で , SUV と 衝 突したセダン運転者の傷害程度および損傷主部位の構成について,傾向や 特徴の分析を行うこととした. 前 章 で 述 べ た S U V- M と S d n - M の 衝 突 で は , 重 量 が 同 じ 程 度 で あ っ て も 衝 突 速 度 が 高 く な る と S d n - M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と S U V- M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 が 増 え て い く こ と( 図 2 . 3 ),お よ び 死 亡 重 傷 を 負 っ た S d n - M 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 ( 図 2.4) は Sdn-M 同 士 の 衝 突 に お け る 損 傷 主 部 位 の 構 成 ( 図 2.6) に 比 べ , 胸 部 や 頸 部 と い っ た 上 半 身 の 傷 害 が 多 い , と い っ た 特 徴 を 確 認 し た . そ し て , こ れ ら の 特 徴 は , SUV と セ ダ ン の 車 両 前面構造の違いからもたらされるものと推測した. そ こ で ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 全 般 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 検 討 を試みるため,運転者の傷害程度や損傷主部位の構成についての事故統計 分 析 を 実 施 す る こ と と し た . 本 章 に お け る 分 析 対 象 も 前 章 と 同 じ く , 1995 年 か ら 1 9 9 9 年 の 死 傷 事 故 と し た .ま た ,本 章 で の 衝 突 速 度 Δ V は ,I TA R D A が 保 有 す る 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値 の 和 で あ り , 式 (3.1) の よ う に 表 さ れ る ( 図 3 . 2 ).危 険 認 知 速 度 は ,実 際 の 衝 突 速 度 に 近 似 で き る ( 7 4 ) ( 7 5 ) こ と か ら , 本章においても危険認知速度を衝突速度とみなして扱った.なお,セダン の 死 亡 重 傷 運 転 者 数 の 詳 細 は 表 3.1 に 示 し た 通 り で あ る . 本 章 で は ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 全 般 に お け る セ ダ ン 運 転 者 の 乗 員 傷 害 の 特 徴 を 明 ら か に す べ く ,対 象 を 車 両 重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 ,す な わ ち , 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 あ る い は 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝突等に拡げて事故統計分析を行った. 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 41 (3.1) Δ V= |VSUV|+|VSdn| |VSUV|: SUV 側 の 危 険 認 知 速 度 |VSdn|: セ ダ ン 側 の 危 険 認 知 速 度 |VSUV| |VSdn| Fig.3.2 Front-to-Front Collision (SUV to Sedan) Table 3.1 Number of Fatal or Serious Drivers Sdn-S Sdn-M Sdn-L SUV-M SUV-L Number of Fatal or Serious Drivers Sdn-S Sdn-M Sdn-L 1079 655 243 1156 807 292 631 460 186 124 81 32 234 170 65 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 3.2.2 42 S U V- M と S d n - S の 衝 突 図 3 . 3 に S U V- M と S d n - S の 衝 突 に お け る そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 危 険 認 知 相 対速度別死亡重傷者率を示す.なお,本章における運転者の死亡重傷者率 R も , 前 章 の 式 (2.1)に よ っ て 算 出 し た も の で あ る . こ れ は 車 両 重 量 が 重 い S U V と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 で あ る .S U V- M 運 転 者 と S d n - S 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は 速 度 の 増 加 と 共 に 拡 大 し て い る . Sdn-S 同 士 の 衝 突 お よ び S U V- M と 衝 突 し た S d n - S 運 転 者 そ れ ぞ れ に お け る 死 亡 重 傷 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 3 . 4 , 図 3 . 5 に 示 す . S U V- M と 衝 突 し た S d n - S 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 は , Sdn-S 同 士 の 衝 突 の 場 合 に 比 べ 頭 部 や 腹 部 , 脚 部 の 傷 害 が 多 い . S U V- M と S d n - S の 衝 突 に お け る S d n - S 運 転 者 の 傷 害 は S U V- M と S d n - M の 衝 突 に お け る Sdn-M 運 転 者 の 傷 害 ( 図 2.4) と 全 般 的 な 傾 向 は 似 て い る が,次のような特徴がみられる. ・ Sdn-S 運 転 者 の 方 が Sdn-M よ り も 死 亡 重 傷 者 率 が 高 い . ・ 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 率 に つ い て み る と , Sdn-S 運 転 者 は Sdn-M 運 転 者 に 比 べ 脚 部 傷 害 が 多 い . こ れ は ,車 両 重 量 が 重 い S U V- M と 軽 い S d n - S の 衝 突 に お い て ,セ ダ ン 側 の 車 体 の 損 壊 量 は , 車 両 重 量 が 同 じ 程 度 の S U V- M と S d n - M の 衝 突 の 場 合 と 比べて大きくなるためと考える. 3.2.3 S U V- M と S d n - L の 衝 突 図 3 . 6 に S U V- M と S d n - L の 衝 突 に お け る そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 危 険 認 知 相 対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 を 示 す .こ れ は 車 両 重 量 が 軽 い S U V と 重 い セ ダ ン の 衝 突 で あ る . 速 度 が 9 0 k m / h 以 下 で は S d n - L 運 転 者 の 方 が S U V- M 運 転 者 よ り も 死 亡 重 傷 者 率 が 高 い .S d n - L 同 士 の 衝 突 お よ び S U V- M と 衝 突 し た S d n - L 運 転 者 そ れ ぞ れ に つ い て の 死 亡 重 傷 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 を 図 3 . 7 ,図 3 . 8 に 示 す . S U V- M と 衝 突 し た S d n - L 運 転 者 は , S d n - L 同 士 の 衝 突 に 比 べ , 頭 部 や頸部,胸部といった上半身の傷害が多い. Fatal or Serious Injury Rate R (%) 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 43 20 Sdn-S SUV-M 15 10 5 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity ΔV (km/h) Fig.3.3 Fatal or Serious Injury rate R and Relative Velocity Δ V, SUV-M to Sdn-S Collision 25 20 15 10 Legs Arms Pelvis Back Chest Neck Face 0 Abdomen 5 Head Injuries of Drivers (%) Injuries of drivers (%) 30 Fig.3.4Injuries InjuriesofofSdn-S Sdn - Drivers S drivers(Sdn-S (Sdn-StotoSdn-S) Sdn- S) Fig.3.4 25 20 15 10 Legs Arms Pelvis Back Chest Neck Face 0 Abdomen 5 Head InjuriesofofDrivers (%) drivers (%) Injuries 30 Fig.3.5 Injuries of Sdn-S Drivers (SUV-M to Sdn-S) Fatal or Serious Injury Rate R (%) 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 44 25 Sdn-L SUV-M 20 15 10 5 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity ΔV (km/h) Fig.3.6 Fatal or Serious Injury Rate R and Relative Velocity Δ V, SUV-M to Sdn -L Collision 25 20 15 10 Legs Arms Pelvis Back Chest Neck Face 0 Abdomen 5 Head Injuries of of Drivers (%) Injuries drivers (%) 30 Fig.3.7 Injuries of Sdn-L Drivers (Sdn-L to Sdn- L) 25 20 15 10 Legs Arms Pelvis Back Chest Neck Face 0 Abdomen 5 Head InjuriesofofDrivers (%) drivers (%) Injuries 30 Fig.3.8 Injuries of Sdn-L Drivers (SUV-M to Sdn-L) 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 45 以 上 の こ と か ら ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お い て ,S U V は 自 車 よ り も 車 両 重量が重いセダンに対しても攻撃性を有していると考えることができる. そして,その攻撃性は,セダン運転者の上半身の傷害が多くなるという特 徴 を も っ て い る . こ れ は , SUV と セ ダ ン の 衝 突 で は , 車 両 重 量 の 差 以 外 の 要因,例えば車両前面構造の違い等からもたらされる攻撃性が効いている ためと考える. 3.2.4 S U V- L と S d n - M の 衝 突 図 3 . 9 に S U V- L と S d n - M の 衝 突 に お け る そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 危 険 認 知 相 対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 を 示 す . こ の 衝 突 は , 3 . 2 . 2 節 で 述 べ た S U V- M と Sdn-S の 衝 突 と 同 様 , 車 両 重 量 の 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 で あ る . S U V- L 運 転 者 と S d n - M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は ,速 度 の 増 加 と 共 に 拡 大 し て い る .S U V- L と 衝 突 し た S d n - M で 死 亡 も し く は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 は Sdn-M 同 士 の 衝 突 ( 図 2.6) の 場 合 に 比 べ , 胸 部 の 傷 害 が 多 く ( 図 3 . 1 0 ), 全 般 的 に S U V- M と S d n - S の 衝 突 ( 図 3 . 5 ) と 似 た 傾向となった. 3.2.5 S U V- L と S d n - S の 衝 突 前 節 の S U V- L と S d n - M の 衝 突 よ り も 車 両 重 量 の 差 が 大 き い S U V と セ ダ ン の 衝 突 で あ る S U V- L と S d n - S の 衝 突 に お け る ,そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 危 険 認 知 相 対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 は ,図 2 . 1 0 に 示 し た 通 り で あ る .S U V- L 運 転 者 と S d n - S 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は ,S U V- L と S d n - M の 衝 突 で の そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 ( 図 3 . 9 ) 以 上 に 著 し い . S U V- L と 衝 突 し た Sdn-S で 死 亡 も し く は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 は , 図 2 . 11 に 示 し た 通 り で あ る .S U V- L と 衝 突 し た S d n - S 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 は , 胸部と脚部の傷害が目立っている. な お , 前 述 し た S U V- M と S d n - S の 衝 突 ( 図 3 . 5 ) や S U V- L と S d n - M の 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 46 衝 突 の 衝 突 ( 図 3.10) で も , 共 通 し て 脚 部 の 傷 害 が 多 く な っ て い る こ と か ら ,重 量 が 自 車 よ り も 重 い S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 は ,車 両 前 面 形 状 の違いと車両重量の差の両方 からもたらされる攻撃性によって,上半身 だけでなく,脚部にも傷害を負うケースが多くなるのではないかと推測す Fatal or Serious Injury Rate R (%) る. 40 Sdn-M 35 30 25 SUV-L 20 15 10 5 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity ΔV (km/h) Fig.3.9 Fatal or Serious Injury Rate R and Relative Velocity Δ V, SUV-L to Sdn-M Collision 25 20 15 10 Fig.3.10 Injuries of Sdn-M Drivers (SUV-L to Sdn-M) Legs Arms Pelvis Back Chest Neck Face 0 Abdomen 5 Head Injuriesof ofDrivers (%) drivers (%) Injuries 30 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 3.3 47 考察 第 2 章 に て ,重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 事 故 デ ー タ を 統 計 的 に 分 析 す る こ と に よ っ て , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 は , セ ダ ン 同 士 の 衝突の場合に比べ,頭部や胸部といった上半身の傷害が多くなることを確 認 し た (84). 本 章 に お い て , 分 析 対 象 を 拡 げ , 重 量 の 異 な る SUV と セ ダ ン の衝突事故についての事故統計データを分析し,セダン運転者の傷害に次 のような特徴が見られることを確認した.なお,前節で述べた事故統計分 析 結 果 を 有 意 水 準 0.05 で 検 定( 片 側 検 定 )し ,複 数 の 損 傷 主 部 位 に つ い て 有意であることを確認した. ・ 衝 突 相 手 の SUV の 重 量 が , 自 車 よ り も 重 い 場 合 で も 軽 い 場 合 で も , セ ダ ン 運 転 者 の 胸 部 傷 害 は 20% 以 上 で あ る . ・ セ ダ ン よ り SUV の 方 が 重 い 場 合 , セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 は 頭 部 や 胸 部 等 上半身だけでなく,脚部の傷害も多い. ・ セ ダ ン よ り SUV の 方 が 軽 い 場 合 も , セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 は 上 半 身 に 多 い が , こ れ は 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と の 衝 突 で セ ダ ン 運 転 者 が 被 る 上 半身の傷害よりも多い. これらの特徴は,次のような理由のため生じるものと考えられる. ・ セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ と SUV の サ イ ド メ ン バ は , 上 下 に オ フ セ ッ ト し て い る ( 図 2 . 1 3 ). こ の た め , S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お い て は , セ ダ ン は 効 果 的 な 荷 重 の 受 け 方 が で き な い こ と か ら ,車 体 上 部 に 大 き な 荷 重 が 入 力 さ れ る .し た が っ て ,S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 で は 胸 部 の 傷 害 が多くなる. ・ セ ダ ン よ り も SUV の 方 が 車 両 重 量 が 重 い 場 合 に は , 重 量 の 差 も 効 い て く る の で ,セ ダ ン は 客 室 全 体 が 潰 れ る か た ち と な り ,セ ダ ン 運 転 者 は 胸 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 48 部等上半身の傷害が多くなるばかりでなく,脚部の傷害も多くなる. ・ 反 対 に , セ ダ ン よ り も SUV の 方 が 車 両 重 量 が 軽 い 場 合 に は , SUV の 攻 撃性を決定する要因はサイドメンバのオフセット等の車両前面構造の 違 い で あ る . し た が っ て , こ の 種 の 衝 突 で は , 同 重 量 の SUV と セ ダ ン の衝突以上に,セダン運転者の上半身の傷害が多くなる. 以 上 ,重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 で も ,セ ダ ン 乗 員 を 効 果 的 に 保 護 するためには,車体上部への荷重入力を受け止めるための対策が有効と考 える. 3.4 事故例との照合 セ ダ ン と SUV の 衝 突 に 関 す る 具 体 的 事 故 例 は 多 く 存 在 す る (82)(83). こ こ で は S U V- L と S d n - M の 衝 突 の う ち 公 表 し 得 る 例 を 紹 介 す る . 図 3 . 1 1 は , S U V- L と S d n - M の 衝 突 の 事 例 で あ る . こ れ は , 車 両 重 量 の 重 い S U V と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 で あ り ,セ ダ ン 車 体 上 部 の 損 壊 が 著 し い こ と か ら ,第 2 章 で 述 べ た サ イ ド メ ン バ の オ フ セ ッ ト に よ る S U V の 攻 撃 性 の 存 在 を 確 認 で き る . ま た , SUV と セ ダ ン の 重 量 に 差 が あ る こ と か ら , セ ダ ン の客室は全体的に大きく変形している.すなわち,これらの事例における セダンの損壊状況からは,セダン運転者に上半身と脚部双方の傷害が生じ ていることを容易に推測することができる.したがって,この事例は,第 2 章 で の 車 両 重 量 の 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 に つ い て の 考 察 を 裏 付 け ている. 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 49 ( a ) S U V- L (b) Sdn-M Fig. 3.11 Deformation of SUV-L and Sdn-M Table 3.2 Collision of SUV-L to Sdn-M SUV-L Sdn-M Total Vehicle Weight with Occupants (ton) 2.16 1.64 Collision Relative Side-Member Velocity (km/h) Lower Height (mm) 455 90 300 Crash Stroke (mm) 500 1200 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 50 3.5 バリア換算速度を指標に用いた車体の潰れ程度の分析 3.5.1 車体の潰れ程度の分析 バリア換算速度とは,当該車両の変形量が等価となるバリア(剛体壁) に衝突させたときの衝突速度のことであり,本研究では車両の損壊程度の 大 小 を 示 す 指 標 と し て 用 い る こ と と し た . す な わ ち , SUV と セ ダ ン の 車 体 構造上の違いが,前面衝突事故における車両損壊程度や乗員傷害程度にお よぼす影響をみるため,衝突を 1 次元衝突・質量,線形ばねモデルとみな して計算したバリア換算速度計算値と事故例データから求めた実測値の差 を求めることにより車体構造の違いが車体の損壊程度におよぼす影響を定 量的に明らかにした. ま ず , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る , 車 体 構 造 の 違 い が , 車 両 の 損 壊 程 度におよぼす影響の寄与度を確認するため,セダン同士の衝突事故および SUV 対 セ ダ ン の 衝 突 事 故 に お け る バ リ ア 換 算 速 度 の 比 較 を 行 っ た . 自動車の衝突安全性を論ずるために従来から用いられてきたバリア換算 速度を導出する手法には,以下の 2 種類の方法がある.ひとつは,自動車 の衝突を 1 次元衝突・質量,線形ばねモデルとみなし,車体構造の違いに よる影響は全く考慮しないで導出したバリア換算速度計算値である.そし てもうひとつは,衝突により潰れた車体各部の変形量から衝突エネルギー を導くことによって導出したバリア換算速度実測値である.そこで,バリ ア換算速度計算値と実測値の差を求めることによって,車体構造の違いが 車両の損壊におよぼす影響の寄与度の確認を行った. ま ず ,バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 の 概 要 を 述 べ る .自 動 車 の 衝 突 を 図 3 . 1 2 に 示すような 1 次元・衝突質量,線形ばねモデルとみなした場合,この系全 体 の エ ネ ル ギ ー 吸 収 Δ E は 式 (3.2)の よ う に 表 す こ と が で き る . DE = Δ 1 m1 m2 ( V1 + V2 )) 2 ( 2 m1 + m 2 (3.2) 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 51 Fig. 3.12 Simple Mass-Spring Model for Front-to-Front Collision な お , こ の 系 に お け る 衝 突 時 の 反 発 係 数 は e=0 と す る . ま た , 式 (3.2)に お け る m1, V1 は 車 両 1 の 重 量 お よ び 速 度 ,m2,V2 は 車 両 2 の 重 量 お よ び 速 度である. こ の 衝 突 に お い て , そ れ ぞ れ の 車 両 の 剛 性 を k1, k2, 最 大 車 体 変 形 量 を δ 1, δ 2, エ ネ ル ギ ー 損 失 を Δ E1, Δ E2 と す る と , Δ E は 式 (3.3)の よ う に 表すことができる. 1 2 1 2 DEE1 1++DΔ EE ΔDE = k1d 12 + k 2d 22 = Δ 2 2 (3.3) 式 (3.2)お よ び 式 (3.3)よ り , 車 両 2 の 衝 突 に よ る エ ネ ル ギ ー 損 失 Δ E2 は 式 (3.4)の よ う に 表 す こ と が で き る . Δ DE2 = k1 1 m1m2 ( V1 + V2 )) 2 ( 2 m1 + m2 k1 + k 2 (3.4) 一 方 ,車 両 2 が バ リ ア に 衝 突 し た と き( 図 3 . 1 3 )の エ ネ ル ギ ー 損 失 Δ E B は , 式 (3.5)の よ う に 表 す こ と が で き る . Δ DE B = 1 2 m2VB 2 (3.5) 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 52 F i g . 3 . 1 3 Ve h i c l e f o r R i g i d B a r r i e r C r a s h バリア換算速度は,車両 1 と車両 2 の衝突における車両 2 のエネルギー損 失 Δ E 2 と ,車 両 2 が バ リ ア に 衝 突 し た と き の エ ネ ル ギ ー Δ E B が 等 し く な る 速 度 で あ る の で , 式 (3.4)お よ び 式 (3.5)よ り 式 (3.6)を 得 る . こ こ で , 車 両 1 と車両 2 の車体構造が全く同じものであれば,車両 1 と車両 2 の車体の剛 性 は 等 し く ,k 1 = k 2 と な る の で ,車 両 2 の バ リ ア 換 算 速 度 は ,式 ( 3 . 7 ) の よ う に導くことができる. VB1 = ( ( V1 + V2 )) m1 k1 (( m1 + m2 ))((k1 + k 2 )) VB1 = (( V1 + V2 ) ) m1 2( ( m1 + m2 )) (3.6) (3.7) 式 (3.7)に お い て , バ リ ア 換 算 速 度 を 決 定 す る 要 因 は , 車 両 の 重 量 比 だ け で あ る .す な わ ち ,こ の 式 に よ っ て 導 か れ た バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 V B 1 は , 車体構造の違いによる影響を考慮していない値とみなすことができる. 式 (3.7)の バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 と 車 速 の 和 の 比 (VB1/(V1+ V2))を バ リ ア 換 算 速 度 係 数 ( E B 1 ) と お い て ( 式 ( 3 . 8 ) ), 衝 突 す る 2 台 の 車 両 の 重 量 比 ( m 1 / m 2 ) と の 関 係 を 求 め る と ,図 3.14 の よ う に な る .す な わ ち ,車 体 構 造 の 違 い に よる影響を考慮していない衝突においては,バリア換算速度は,衝突する 2 台の車両の重量比に反比例して変化することがわかる. V EB1 = () m1 2( ( m1 + m2 )) (3.8) Equivalent Barrier Speed Coefficient (E B1) 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 53 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0.0 0 2.0 2 4.0 4 6.0 6 8.0 8 10.0 10 m 1/m 2 Fig. 3.14 Equivalent Barrier Speed 次 に ,バ リ ア 換 算 速 度 実 測 値 の 概 要 を 述 べ る .バ リ ア 換 算 速 度 実 測 値 は , 衝 突 に よ り 損 壊 し た 事 故 車 両 の 車 体 変 形 量 ( 図 3.15) を 測 定 す る こ と に よ っ て 得 ら れ た 衝 突 時 に お け る 車 体 の エ ネ ル ギ ー 吸 収 量 か ら 導 出 さ れ る (85). すなわち,車体の変形量には衝突時における車体の変形は車両の重量比だ けでなく,サイドメンバ高さの違いのような構造部材の配置の差や車体剛 性の差等といった,車体構造の違いによる影響も含んでいるので,バリア 換算速度実測値は車両の重量差による影響と車体構造の違いによる影響の 両方の要因を含んだ値であると考えることができる. そこで,バリア換算速度計算値と実測値の差を求めることによって,車 体構造の違いが衝突時における車両の損壊程度におよぼす影響の寄与度に ついて検討を行った.すなわち,車体構造と剛性が同じ車両同士の衝突な らば,車体の変形に影響を与える要因は車両の重量の差だけであるので, バリア換算速度実測値と計算値の間に差は存在しない.反対に,車体構造 が異なる車両による衝突ならば,車両重量比だけでなく車体構造の違いも 車体の変形に影響をおよぼすので,バリア換算速度実測値と計算値の差は 大きくなるはずである.そこで,バリア換算速度計算値と実測値の差の大 き さ が車体構造の違いが車体損壊におよぼす影響の寄与度を示す指標となると考えた. 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 54 : Vehicle Deformation Crash Energy = ΣVehicle Deformation×Each Region’s S t i f f n e s s F i g . 3 . 1 5 Ve h i c l e D e f o r m a t i o n Ta b l e 3 . 3 Equivalent Barrier Speed (Accident Case 1-4) Vehicle Type Case 1 Case 2 Case 3 Case 4 Equivalent Barrier Speed (km/h) Caluculation (1) Practice ((1)-(2))/(2) (2) *100(%) A Sedan 1150 45 40 40 0 B Sedan 1145 35 40 40 0 A SUV 1905 75 40 30 33 B Sedan 875 25 59 70 -16 A Sedan 1635 50 53 60 -12 B 2155 50 47 30 57 6005 50 16 15 7 745 20 47 45 4 A B 3.5.2 Vehicle Weight Velocity with (km/h) Occupants (kg) SUV Middle Sized Truck Light Class Truck バリア換算速度計算値と実際の実測値の比較 式 (3.7)に お い て , バ リ ア 換 算 速 度 を 決 定 す る 要 因 は 車 両 の 重 量 差 だ け で あ り , 車 両 形 状 や 構 造 な ど 他 の 要 因 は 含 ま れ て い な い . そ こ で 式 (3.7)か ら 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 55 求めた計算値と事故車の車体潰れ量から求めた実測値の比較を行い, 重量 以 外 の 要 因 の 寄 与 度 に つ い て の 確 認 を 行 っ た . な お , 表 3.3 中 に 今 回 比 較 を行った 4 つの事例についての実車両総重量,事故時の衝突速度,バリア 換算速度の計算値,実測値および計算値と実測値の差の率を示す.また, 各 事 例 に お け る 車 両 の 損 壊 状 況 に つ い て は , 事 例 (1)は 図 3.16, 事 例 (2)は 図 2 . 1 5( p . 3 5 ), 事 例 ( 3 ) は 図 3 . 1 1( p . 4 9 ), 事 例 ( 4 ) は 図 3 . 1 7 に 示 し た 通 り で ある. (1)セ ダ ン 同 士 の 正 面 衝 突 ( 事 例 (1)) 事 例 ( 1 ) で の 計 算 値 と 実 測 値 は 同 じ で あ っ た ( 図 3 . 1 6 ). こ れ は 同 じ セ ダ ン同士の衝突であるので車体変形によるエネルギー吸収特性が同等な上, 実車両重量も同等であったためである.したがって,この事例では重量以 外の要因は寄与していないと考えられる. Fig. 3.16 Sedan Collision (Case 1) 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 56 (2)セ ダ ン と SUV の 正 面 衝 突 ( 事 例 (2), 事 例 (3)) 事 例 (2), 事 例 (3)共 に SUV で は 計 算 値 の 方 が 実 測 値 よ り も 高 く な り , セ ダ ン で は 計 算 値 の 方 が 事 故 値 よ り も 低 く な っ て お り ,S U V に 比 べ て セ ダ ン の 潰 れ 量 が 非 常 に 大 き い ( 図 2 . 1 5 , 図 3 . 1 1 ). し た が っ て , こ れ ら の 事 例 では重量以外の要因,例えば,車体構造の違いがバリア換算速度を決定す る要因として寄与していると考えられる. す な わ ち , 第 2 章 で 述 べ た 通 り ,SUV の サ イ ド メ ン バ が セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ と 上 下 に オ フ セ ッ ト し て 衝 突 す る た め と 考 え ら れ る ( 図 2 . 1 3 ). こ のため,セダンはサイドメンバの取付け部を衝突の力の受け手として有効 に利用することができない.したがって,セダン側は,セダン同士の衝突 に お い て 客 室 入 力 を 想 定 し て 補 強 さ れ て い る 荷 重 の 伝 達 経 路 ( 図 2.14) 以 外 の 部 位 に 大 き な 入 力 が 加 わ る こ と に な る . 衝 突 時 に は , SUV, セ ダ ン 両 車共に衝撃力が加わるが,セダン側では効果的な荷重の受け方ができない ため,セダン側の客室構造の方が強度面において不利となる. 以上のような理由から,この組み合わせの衝突を 1 次元衝突・質量,線 形 ば ね モ デ ル で 表 す 場 合 , k1≠ k2 と な る た め 式 (3.7)を 適 用 す る こ と は で き な い . す な わ ち , 車 両 の 剛 性 比 ( k1/ k2) を 考 慮 し な け れ ば な ら な い . な お , 事 例 (2)お よ び 事 例 (3)の 車 両 の 剛 性 比 ( kSedan/ kSUV) に つ い て , 表 3.3 に 示 し た バ リ ア 換 算 速 度 実 測 値 お よ び 衝 突 速 度 を 式 (3.6)に 代 入 し て 求 めると以下の通りとなる. ・ 事 例 (2)の 剛 性 比 ( kSedan/ kSUV) =0.4 ・ 事 例 (3)の 剛 性 比 ( KSedan/ kSUV) =0.6 (3)軽 ト ラ ッ ク と 中 型 ト ラ ッ ク の 正 面 衝 突 ( 事 例 (4)) こ の 事 例 (4)で は ,軽 ト ラ ッ ク の キ ャ ブ 全 体 が 大 き く 潰 れ , 中 型 ト ラ ッ ク は バ ン パ や フ ロ ン ト パ ネ ル の 部 分 が 車 体 変 形 し て お り ( 図 3 . 1 7 ), バ リ ア 換算速度の計算値と実測値の差は小さい. 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 57 Fig. 3.17 Truck Collision (Case 4) こ れ は ,軽 ト ラ ッ ク と 中 型 ト ラ ッ ク の 車 両 重 量 比 が 非 常 に 大 き く( m 2 / m 1 = 0 . 1 2 ), そ し て , ど ち ら も キ ャ ブ オ ー バ 型 車 両 で あ り , 中 型 ト ラ ッ ク に つ いてみると,バンパやフロントパネルが損傷しているところから,損傷し た 領 域 で は , 車 両 の 剛 性 が 同 等 に な っ て い た ( k1= k2) の で は な い か と 考 えられる.したがって,この事例については,重量以外の要因は寄与して いないと考えられる.この事例のように車両重量の比が非常に大きく ( m 1 < < m 2 ), 車 両 の 剛 性 比 の 影 響 を あ ま り 受 け な い 正 面 衝 突 を 想 定 し た 場 合 , 式 (3.7)は 式 (3.9)の よ う に 示 す こ と が で き る . 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 VB1 = ( V1 + V2 ) 1 58 (3.9) 2 以上,バリア換算速度計算値と実測値の比較をすることにより,次の結論 を得た. ( 1 ) セ ダ ン 同 士 の 衝 突 に つ い て は ,車 両 重 量 比 か ら 求 め た バ リ ア 換 算 速 度 計 算値と事故車両の車体損壊量から求めた実測値の差がみられなかった. こ れ は ,プ ラ ッ ト フ ォ ー ム や 部 品 の 共 用 化 が 進 ん で い る こ と か ら ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 の よ う に ,車 両 形 状 や 車 体 構 造 が 同 じ 車 両 同 士 の 衝 突 で は , 車 体 剛 性 が 同 じ 車 両 の 衝 突 で あ る と み な す こ と が で き る の で ,車 両 の 重 量 差 が ,衝 突 時 の バ リ ア 換 算 速 度 に 影 響 を 与 え る 主 な 要 因 と な り ,重 量 差以外の要因はあまり働かないためと考えられる. (2) セ ダ ン と SUV の 衝 突 に つ い て は , バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 と 実 測 値 の 間 に 明 ら か な 差 が み ら れ た . こ れ は , SUV と セ ダ ン の 衝 突 の よ う に , 車 両 形 状 や 車 体 構 造 が 異 な る 車 両 同 士 の 衝 突 で は ,バ ン パ 高 さ や サ イ ド メ ン バ 高 さ の 違 い な ど と い っ た ,車 両 の 重 量 差 以 外 の 要 因( 剛 性 等 )が バ リア換算速度に影響をおよぼしているためと考えられる. ( 3 ) 軽 ト ラ ッ ク と 中 型 ト ラ ッ ク の 衝 突 に つ い て は ,バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 と 実 測 値 の 間 に あ ま り 大 き な 差 は み ら れ な か っ た .こ れ は ,同 じ く キ ャ ブ オ ー バ 型 の 車 両 同 士 の 衝 突 で あ る た め , 事 例 (4)の よ う に バ ン パ や フ ロ ン ト パ ネ ル 部 分 に 限 れ ば ,重 量 差 以 外 の 要 因 は あ ま り 働 か な い も の と 推 測する. 3.6 衝突速度と乗員傷害の関係についての分析 3.6.1 衝突相手による運転者の人身損傷度の実態 本節では,乗員の傷害程度と衝突速度の関係を分析することによって, SUV や 1BOX 車 な ど と セ ダ ン の 衝 突 を セ ダ ン 同 士 の 衝 突 に 換 算 し ,乗 員 が 被る傷害について比較を行った. 図 3 . 1 8 は S d n - S の 乗 員 に 関 し て ,衝 突 相 手 の 相 違 に よ る 運 転 者 の 死 亡 重 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 59 傷 者 率 に つ い て 示 し た も の で あ る .な お ,図 3 . 1 8 に お け る 衝 突 相 手 の ク ラ ス名称は,第 2 章でのクラス分類名称を踏襲したが,上述で定義しなかっ た ク ラ ス 名 称 に つ い て は , 軽 セ ダ ン を C P T- S d n , 軽 S U V を C P T- S U V , 軽 1 B O X 車 を C P T- 1 B O X , 軽 ト ラ ッ ク を C P T- Tr u c k , ス ポ ー テ ィ 系 自 動 車 を S p o r t y ,1 B O X 車 を 1 B O X と そ れ ぞ れ の 名 称 を 定 め 表 記 し た .な お ,上 述 ク ラ ス 名 称 中 の 軽 自 動 車 を 示 す C P T は C o m p a c t の 略 で あ る .衝 突 相 手 が 自 車 両 よ り も 重 量 が 軽 く 小 さ い 車 種 の 場 合 で は ,運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 は 低 く , その反対に衝突相手が自車両よりも重量が重く大きい車種の場合では,運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 は 高 く な っ て い る . 特 に , 衝 突 相 手 が S d n - L , S U V- M お よ び 1BOX 車 で あ る 場 合 の 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 は , Sdn-S 同 士 で の 衝 突 に お け る 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 約 1 . 7 か ら 2 . 0 倍 と 高 い .な お , 本 論 に お け る 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 R は 式 (2.1)に よ り 求 め た も の で あ る . 6.006 5.005 4.004 3.003 2.002 Fig.3.18 Fatal or Serious Injury Rate R for Sdn-S 1BOX SUV-L Sdn-L Sdn-M Sdn-S Sporty CPT-Truck (Compact-Truck) CPT-1BOX (Compact-1BOX) CPT-SUV (Compact-SUV) CPT-Sdn 0.000 SUV-M 1.001 (Compact-Sedan) Fatal Serious Drivers Rate Fatal or or Serious Drivers Rate R R (%) (%) 7.007 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 60 衝突事故による乗員の被害軽減を効果的に考えていくためには, 事故が 多 い 衝 突 速 度 領 域 を 明 ら か に し て お く こ と が 大 切 で あ る . そ こ で , 図 3.18 で Sdn-S 運 転 者 の 他 同 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 高 い 衝 突 相 手 で あ る Sdn-L, S U V- M お よ び 1 B O X 車 に つ い て , 危 険 認 知 速 度 と 死 傷 者 数 の 関 係 に つ い て の分析を行った.なお, ここで扱う速度は, 前面対前面衝突における相対 速度となるので, 危険認知速度についても衝突に関与した 2 台の車両の危 険 認 知 速 度 の 和 を 基 に し た 分 析 , す な わ ち ,危 険 認 知 速 度 V 1 0 と V 2 0 の 前 面 対 前 面 衝 突 で の 危 険 認 知 相 対 速 度 の 和 Δ Vdg( 式 (3.10)) に つ い て 分 析 を す すめた. (3.10) Δ V d g = |V 1 0 |+ |V 2 0 | 25 Frequency (%) 20 15 10 5 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity ΔV dg (km/h) Sdn-S Sdn-L SUV-L 1BOX F i g . 3 . 1 9 R e l a t i v e Ve l o c i t y a n d F r e q u e n c y 4 車 種 運 転 者 の 危 険 認 知 相 対 速 度 と 死 傷 事 故 の 頻 度 の 関 係 を 図 3.19 に 示 す . ど の 衝 突 相 手 に つ い て も ,Δ Vdg=50km/h で の 頻 度 が 高 く な っ て い る . 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 61 次 に ,危 険 認 知 相 対 速 度 と 死 傷 事 故 の 累 積 頻 度 の 関 係 を 図 3 . 2 0 に 示 す .累 積 頻 度 の 50%が , Δ Vdg=50km/h, 累 積 頻 度 の 90%が Δ Vdg=80km/h で 発 生 し て お り , 衝 突 相 手 の 種 別 に よ る 違 い は ほ と ん ど み ら れ な い .こ の こ と か ら , 乗員の被害軽減のためには, 上述の速度領域での衝突安全対策を考えてい くことが効果的といえる. Cumulative Frequency (%) 100 80 60 40 20 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity ΔV dg (km/h) Sdn-S Sdn-L SUV-L 1BOX F i g . 3 . 2 0 C u m u l a t i v e F r e q u e n c y o f R e l a t i v e Ve l o c i t y Δ V d g しかしながら, 同じ衝突速度であっても, 衝突相手となる車両の種別に よって, 運転者の死亡重傷者率は異なってくると考えられる.そこで, Sdn-S 運 転 者 の 危 険 認 知 相 対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 を 衝 突 相 手 毎 に つ い て 分 析した. 衝 突 相 手 毎 で の 危 険 認 知 相 対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 を 図 3 . 2 1 に 示 す .Δ V d g が 30km/h 以 下 の 速 度 領 域 に つ い て は , 衝 突 相 手 車 種 に よ る 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は , あ ま り 顕 著 に は 表 れ て い な い . し か し な が ら , Δ Vdg が 40km/h 以 上 11 0 k m 以 下 の 速 度 域 で は ,衝 突 相 手 が 重 量 の 大 き い 車 種 で あ る 場 合 の 死 亡 重 傷 者 率 と , Sdn-S 同 士 で の 衝 突 に お け る 死 亡 重 傷 者 率 と の 差 は , 速 度 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 62 が 速 く な る に し た が っ て , 大 き く 拡 が る . な お , Δ Vdg= 120km/h の 速 度 に お け る Sd n -S 同 士 で の 衝 突 以 外 の 死 亡 重 傷 者 率 は , Δ V d g= 110k m/h の と き の 死 亡 重 傷 者 率 よ り も 低 く な っ て し ま っ て い る が , こ れ は Δ Vdg= 120km/h 以上の高い速度域では死傷者数自体の構成率が極端に少なくなるため, ば Fatal or Serious Drivers Rate R (%) らつきが大きく表れてしまっていると考えられる. 35 30 25 20 15 10 5 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity ΔV dg (km/h) Sdn-S Sdn-L SUV-L 1BOX Fig.3.21 Relative Velocity and Fatal or Serious Injury Rate 3.6.2 危険認知相対速度と死亡重傷者率の関係式の推定 前 節 で 述 べ た 通 り , 危 険 認 知 相 対 速 度 が 4 0 ≦ Δ V dg ≦ 11 0 k m / h の 速 度 領 域 で は , 重 量 の 大 き い 衝 突 相 手 車 種 に 関 し て , 速 度 が 速 く な る に 従 い , Sdn-S 運転者の死亡重傷者率は,正比例的に高くなる傾向がある.そこで, 衝突 相 手 車 種 毎 に つ い て , 速 度 領 域 4 0 ≦ Δ V dg ≦ 1 1 0 k m / h に お け る 危 険 認 知 相 対 速度と死亡重傷者率の関係を 1 次式にて近似することを試みた. 図 3 . 2 2 か ら 図 3 . 2 5 は 衝 突 相 手 そ れ ぞ れ に つ い て の 危 険 認 知 速 度 Δ Vdg と 死亡重傷者率 R の関係を示したものである.いずれの場合についても,危 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 63 険 認 知 相 対 速 度 に 対 す る 死 亡 重 傷 者 率 の 増 加 は , 危 険 認 知 相 対 速 度 が Δ V dg = 40( km/h) の 場 合 の 死 亡 重 傷 者 率 R を 「 0」 と お い て 導 出 し た 1 次 式 に 近 似 す る こ と が で き る ( 式 ( 3 . 1 1 ) か ら 式 ( 3 . 1 4 ) ). な お , 衝 突 速 度 と 車 体 変 形 量 に 正 比 例 的 な 関 係 が あ る こ と が 以 前 に 報 告 さ れ て い る (85)こ と か ら , 1 次式で近似することを試みた. ・ 衝 突 相 手 が Sdn-S の 場 合 : R = 0 . 1 7 Δ V dg - 7.00 ( 3 . 11 ) R = 0 . 2 8 Δ V dg - 1 2 . 0 0 (3.12) ・ 衝 突 相 手 が Sdn-L の 場 合 : ・ 衝 突 相 手 が S U V- L の 場 合 : R = 0 . 3 0 Δ V dg - 1 2 . 0 0 (3.13) ・ 衝 突 相 手 が 1BOX の 場 合 : R = 0 . 3 6 Δ V dg - 1 5 . 0 0 (3.14) また, それぞれについての相関の強さを示す決定係数も高いことからも, その相関性は強いものと考えることができる. Fatal or Serious Injury Rate R (%) 35 R = 0.17ΔV dg-7.00 30 Coefficient of Determination:0.90 25 20 15 10 5 0 40 50 60 70 80 90 100 110 120 Relative Velocity ΔV dg (km/h) Fig. 3 . 2 2 Relationship between Δ V dg and Fatal or Serious Injury Rate R, Sdn-S to Sdn-S 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 64 Fatal or Serious Injury Rate R (%) 35 R = 0.28ΔV dg-12.00 30 Coefficient of Determination:0.92 25 20 15 10 5 0 40 50 60 70 80 90 100 110 120 Relative Velocity ΔV dg (km/h) Fig. 3 . 2 3 Relationship between Δ V dg and Fatal or Serious Injury Rate R, Sdn-S to Sdn-L 式 (3.11 ) か ら 式 (3 .1 4 ) を 用 い る こ と に よ っ て , 自 車 と 異 な る 車 種 と の 衝 突 を 式 (3.15) か ら 式 (3.17) の よ う に 自 車 と 同 じ 車 種 同 士 の 衝 突 速 度 に 換 算 し て 評価する式を導くことができる. ・ 衝 突 相 手 が Sdn-L の 場 合 : Δ V dgSdn-S =1.65 Δ V dgSdn-L- 29.41 (3.15) ・ 衝 突 相 手 が S U V- L の 場 合 : Δ V dgSdn-S =1.76 Δ V dgSUV-L- 29.41 (3.16) ・ 衝 突 相 手 が 1BOX の 場 合 : Δ V dgSdn-S =2.12 Δ V dg1BOX - 47.06 (3.17) 先 述 し た 通 り , 死 傷 事 故 の 累 積 頻 度 の 9 0 % が 危 険 認 知 相 対 速 度 Δ V dg =80km/h ま で に 発 生 し て い る . Sdn-S 側 に と っ て , 自 車 と 異 な る 衝 突 相 手 と の Δ V dg = 8 0 k m / h で の 衝 突 を S d n - S 同 士 の 衝 突 に 換 算 し た . 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 65 ・ Sdn-L と の 衝 突 を Sdn-S 同 士 の 衝 突 に 換 算 し た 速 度 : Δ V dgSdn-S = 1 0 2 k m / h (3.18) ・ S U V- L と の 衝 突 を S d n - S 同 士 の 衝 突 に 換 算 し た 速 度 : Δ V dgSdn-S = 11 2 k m / h (3.19) ・ 1BOX と の 衝 突 を Sdn-S 同 士 の 衝 突 に 換 算 し た 速 度 : Δ V dgSdn-S = 1 2 2 k m / h Fatal or Serious Injury Rate R (%) 35 (3.20) R = 0.30ΔV dg-12.00 30 Coefficient of Determination:0.86 25 20 15 10 5 0 40 50 60 70 80 90 100 110 120 Relative Velocity ΔV dg (km/h) Fig. 3 . 2 4 Relationship between Δ V dg and Fatal or Serious Injury Rate R, Sdn-S to SUV-L Fatal or Serious Injury Rate R (%) 35 R = 0.36ΔV dg-15.00 30 Coefficient of Determination:0.89 25 20 15 10 5 0 40 50 60 70 80 90 100 110 120 Relative Velocity ΔV dg (km/h) Fig. 3 . 2 5 Relationship between Δ V dg and Fatal or Serious Injury Rate R, Sdn-S to 1BOX 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 66 これら式 ( 3 . 1 8 ) か ら 式 ( 3 . 2 0 ) の衝突換算速度は,車両の重量比から求めたものでは なく,乗員の傷害程度に合わせるように換算されていることに注意することが必要であ る. 本節に おい て分 析対 象 とした 各ク ラス につ い ての車 高と 車両 総重 量 の車種 毎の 分布 状況を図 3.26 に示す.車両総重量の分布については,Sdn-L と SUV-L,1BOX 車の間に 大きな差は無い.しかしながら,SUV-L や 1BOX 車との衝突での衝突換算速度の方が Sdn-L との衝突の場合より高くなっている.このことからも,自車と異なる車両との衝 突では,車両の重量比以外の要因が乗員の傷害程度に影響を与えていると推測すること ができる. Vehicle height (mm) Vehicle Height (mm) 2000 1900 1800 1700 1600 1500 1400 1300 1.0 1.5 2.0 2.5 Gross Vehicle GVWWeight (ton) (ton) ○SDN-S ●SDN-L ▲SUV-L □1BOX F i g . 3 . 2 6 Gross Vehicle Weight and Height (1991-1998,Japan) 3.6.3 乗員傷害に影響をおよぼす重量比以外の要因について 上述のように,自車と異なる車両との衝突では車両の重量比以外の要因 も 乗 員 の 傷 害 程 度 に 影 響 を お よ ぼ し て い る と 考 え る こ と が で き る .そ こ で , その理由について考察した. 図 3.26 よ り , Sdn-L の 車 高 は Sdn-S の 車 高 と 大 差 な い こ と が わ か る . こ のことから両クラスのサイドメンバ高さもほぼ同じ程度と推測することが できる.さらに,両クラス共セダンであることから車両前面を構成する車 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 67 体 構 造 も 類 似 し て い る と み な す こ と が で き る の で , Sdn-S と Sdn-L の 衝 突 ( 図 3.27) で は , 主 に 車 両 重 量 比 が Sdn-S 側 乗 員 の 死 亡 重 傷 者 率 に 影 響 を およぼしていると考えることができる. Sdn-L Sdn-S Side-Member Side- Member Fig. 3.27 Sdn-L to Sdn-S Collision S U V- L Sdn-S Side-Member Side-Member F i g . 3 . 2 8 S U V- L t o S d n - S C o l l i s i o n 1BOX Sdn-S Side-Member Side-Member Fig. 3.29 Sdn-S to 1BOX Collision 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 68 一 方 , S d n - L や 1 B O X 車 の 車 高 は , S d n - S の 車 高 に 比 べ 高 い ( 図 3 . 2 6 ). また,衝突時に主にエネルギーを吸収するサイドメンバ高さが異なる(図 3.28, 図 3.29) た め , Sdn-S 側 に 入 る 荷 重 が 主 要 部 材 で あ る サ イ ド メ ン バ に 入 力 さ れ な い . そ の 結 果 , Sdn-S の 客 室 が サ イ ド メ ン バ 以 外 か ら の 入 力 に 耐 え き れ な く な る . こ れ に よ り , Sdn-S 側 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 は 高 く な る . す な わ ち , 車 両 総 重 量 に 大 き な 差 は な く て も , Sdn-L や 1BOX 車 の 衝 突 換 算 速 度 は , Sdn-L よ り も 高 く な る と 考 え ら れ る . 以上,自車両と異なる大きさ,形状の車両との前面対前面衝突事故を分 析し, 以下のことを明らかにした. (1 ) 危 険 認 知 相 対 速 度 4 0≦ Δ Vd g≦ 110 k m/h の 速 度 域 で の 衝 突 に お け る 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と 危 険 認 知 速 度 の 関 係 は ,1 次 式 で 近 似 す る こ と が で きる. ( 2 ) 自 車 量 と 異 な る 車 両 と の 衝 突 を ,従 来 の よ う に 車 両 の 重 量 比 か ら 評 価 す る の で は な く ,乗 員 の 傷 害 程 度 と 衝 突 速 度 の 関 係 か ら ,自 車 両 と 同 じ 車 種同士での衝突に換算して評価する手法を見出した. ( 3 ) 車 体 構 造 の 異 な る 車 両 と の 衝 突 で は ,車 両 の 重 量 比 以 外 の 要 因 が 乗 員 の 傷害程度に影響をおよぼしている. 3.7 軽 SUV と 軽 セ ダ ン 前 面 対 前 面 衝 突 事 故 の 分 析 3.7.1 本節における分析対象車種 近年における軽自動車の増加は著しく,これを無視するわけにはいかな い.そこで,軽自動車の前面対前面衝突事故の分析も試みた.なお,国内 に お け る 軽 自 動 車 に つ い て も ,同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ り な が ら , 軽 セ ダ ン ,と 軽 S U V の 2 車 種 が 存 在 す る .し た が っ て ,両 車 の 衝 突 に つ い て も 事 故 統 計 分 析 を 試 み た .な お ,本 節 に お い て は ,軽 セ ダ ン を C P T- S d n , 軽 S U V を C P T- S U V と 表 記 す る . 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 69 国 内 で 登 録 さ れ た 1991 年 か ら 1998 年 に か け て の ボ ン ネ ッ ト 付 き 軽 乗 用 車 の 車 高 お よ び 車 両 総 重 量 の 車 種 毎 の 分 布 状 況 を 図 3.30 に 示 す . 図 3.30 を み る と , ど ち ら も 車 両 重 量 は 同 じ 程 度 で あ り な が ら も , C P T- S d n の 車 高 は 1 6 0 0 m m 未 満 に , C P T- S U V の 車 高 は 1 6 0 0 m m 以 上 に 分 布 し て い る . 以 上 の こ と か ら , 同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 軽 乗 用 車 で あ る C P T- S U V と C P T- S d n は , 車 高 に よ っ て 判 別 す る こ と に よ り , 交 通 事 故 統 合 デ ー タ ベ ー ス上での区分が可能であるので,それぞれの種類を交通事故統合データ中 から区分した上で,これら 2 車種の衝突について,全国統計的な視点から 事故分析を行った. Vehicle Height (mm) 2000 ▲ CPT-SUV ○ CPT-SDN 1900 1800 1700 1600 1500 1400 1300 0.5 1.0 1.5 2.0 Gross Vehicle Weight (ton) Fig.3.30 Gross Vehicle Weight and Height (1991-1998,Japan) 3.7.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率 ま ず , 前 面 対 前 面 衝 突 事 故 に お け る S U V- M お よ び S d n - M の 運 転 者 の 衝 突速度別死亡重傷者率についての分析を行った.運転者の死亡重傷者率R は , 式 (2.1)に て 定 義 し た 通 り . ま た , 前 面 対 前 面 衝 突 に お け る 相 対 衝 突 速 度 Δ V は , 式 (2.2)に 示 し た 通 り . 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 と し て 求 め た 危 険 認 知 相 対 速 度 Δ V 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 70 と 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 R の 関 係 を 図 3 . 3 1 に 示 す . 全 般 的 に C P T- S U V 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 よ り も C P T- S d n 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が 高 く , 相 対 速 度 Δ V が 高 く な る ほ ど ,C P T- S U V 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と C P T- S d n 運 転者の死亡重傷者率の差は開いていく.なお,この傾向は重量が同程度の 車両同士に関して得られたものであり,注目すべき結果と考えられる. こ の 理 由 は , 図 3 . 3 0 で 示 し た 通 り , C P T- S U V の 車 高 が C P T- S d n に 比 し て 高 く , 第 2 章 で 述 べ た S U V- M と S d n - M の 衝 突 と 同 様 に , バ ン パ 高 さ や サイドメンバ高さに上下のオフセットが存在するためと考えられる.した がって,衝突エネルギーの大きい速度域になると,この上下方向のオフセ ッオフセットが車両重量以外の要因として効いてくるため,運転者の死亡 重 傷 者 率 の 差 が 大 き く な っ て い く と 推 測 す る . す な わ ち , C P T- S U V と C P T- S d n の 衝 突 で も ,S U V- M と S d n - M の 衝 突 と 同 様 な 現 象 が 起 き て い る も Fatal or Serious Injury Rate R (%) のと推測することができる. 25 CPT-Sdn 20 CPT-SUV 15 10 5 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 Relative Velocity ΔV (km/h) Fig.3.31 Fatal or Serious Injury Rate R and Relative Velocity Δ V 3.7.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成 我 が 国 に お け る 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 に , 死 亡 ま た は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構 成 に つ い て 分 析 を 行 っ た . C P T- S d n 同 士 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 71 の 衝 突 に お け る 運 転 者( 死 亡 重 傷 者 数 3 8 9 人 )の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 3 . 3 2 に , C P T- S U V と C P T- S d n の 衝 突 に お け る C P T- S d n の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 9 0 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 3 . 3 3 に 示 す . C P T- S U V と C P T- S d n の 衝 突 に お け る C P T- S d n の 運 転 者 は ,C P T- S d n 同 士 で の 衝 突 の 場 合 比 べ ,頭 部 や顔部,腰部損傷の構成率が増加している.すなわち,軽乗用車について も車両重量自体に差が少ない車両同士の衝突であっても,車体構造が異な る車両との衝突では乗員の傷害部位の構成に相違のあることを確認した. Injuries of Drivers(%) 35 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig.3.32 Injuries of CPT-Sdn Drivers (CPT-Sdn to CPT-Sdn) Injuries of Drivers(%) 35 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig. 3.33 Injuries of CPT-Sdn Drivers (CPT-SUV to CPT-Sdn) 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 3.7.4 72 軽 セ ダ ン と 軽 SUV の 衝 突 に つ い て の 考 察 軽 S U V と 軽 セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 に つ い て ,事 故 統 計 分 析 を 行 い ,以 下 の こ と を 確 認 し た .す な わ ち ,全 般 的 に 軽 S U V 側 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の方が軽セダン側運転者よりも低くなっていること.そして,その差が衝 突 速 度 の 増 大 と 共 に 拡 が っ て い く こ と .ま た ,衝 突 相 手 が 軽 S U V で あ る 場 合と軽セダン同士の衝突では,死亡あるいは重傷となった軽セダン運転者 の傷害部位の構成が異なっていることを明らかにした.本節では,その理 由について以下の考察を行う. 軽 SUV と 軽 セ ダ ン も , SUV と セ ダ ン の 関 係 ( 図 2.13) と 同 様 に , バ ン パ 高 さ や サ イ ド メ ン バ の 高 さ が 異 な っ て い る も の と 考 え ら れ る .こ の た め , 軽 S U V と 軽 セ ダ ン の 衝 突 に お い て も ,両 車 の サ イ ド メ ン バ は 上 下 方 向 に オ フセットした状態で衝突するものと推測する. 軽 セ ダ ン 同 士 の 前 面 対 前 面 衝 突 に お い て も ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 と 同 様 に , 衝突による入力は,車両前部については主としてサイドメンバを通じて伝 達され,客室部への入力はフロア下部のフロアメンバを伝わる経路とサイ ドシルおよびトンネル部に伝わる経路とに分かれて後方に伝えられる(図 2 . 1 4 ). 一 方 , エ ン ジ ン の 客 室 へ の 侵 入 は , フ ロ ア 部 の ト ン ネ ル が 主 と し て 反力を受け持っている.客室保護対策を考慮して設計された軽セダンにお いても,このような客室に加わる力の伝達経路に沿った客室の補強がなさ れ て い る (76).こ の た め ,客 室 を 保 護 す る た め に ,衝 突 に よ る サ イ ド メ ン バ の付け根部分(トーボード周り)を力の受け手としてうまく利用し,衝突 による入力を力の伝達経路に沿わせ,効果的に後方に伝達させていく構造 法が採られている. し か し な が ら ,軽 S U V と 軽 セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 に お い て は ,先 述 の 通 り , 軽 SUV の サ イ ド メ ン バ が 軽 セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ と 上 下 に オ フ セ ッ ト し ているため,軽セダン側は衝突の力の受け手である客室下部を有効に利用 することができない.したがって,軽セダンの客室には,補強されている 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 73 荷重の伝達経路以外の部位に大きな入力が加わることになる.衝突時に軽 SUV, 軽 セ ダ ン 両 車 に 加 わ る 衝 撃 力 自 体 は 等 し い の で あ る が , 軽 セ ダ ン 側 では効果的な荷重の受け方ができないことから,軽セダンの客室構造の方 が強度面で不利となる.特に,高い速度域での衝突においては,客室が入 力に耐えきれず変形は大きくなる.それに伴って運転者の死亡重傷者率も 高 く な っ て し ま っ て い る も の と 考 え る こ と が で き る .こ の こ と は 図 3 . 3 2 お よ び 図 3.33 の 傷 害 部 位 の 相 違 と も 符 合 し て い る . 以上のことから,次の結論を得た. (1) 軽 SUV と 軽 セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 で は , 車 両 重 量 に 大 き な 差 が な い 場 合 で あ っ て も , 軽 SUV 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が 軽 セ ダ ン 運 転 者 よ り も 低 く な っ て い る . 衝 突 相 手 が 軽 SUV で あ る 場 合 と 軽 セ ダ ン 同 士 の 衝 突 で は ,死 亡 あ る い は 重 傷 と な っ た 軽 セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構 成 が 異 な っ て い る な ど ,コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 論 ず る 上 で の 特 徴 を 確 認した. (2) 上 記 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー 上 の 特 徴 は , 軽 S U V の サ イ ド メ ン バ が 軽 セダンのサイドメンバと上下にオフセットして衝突するためと考えら れ る .こ の た め ,軽 セ ダ ン は サ イ ド メ ン バ 取 付 部 を 衝 突 の 力 の 受 け 手 と し て 有 効 に 利 用 す る こ と が で き な い .し た が っ て ,客 室 変 形 が 増 大 す る 傾 向 に あ り ,そ れ に 伴 っ て 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 も 高 く な っ て い る と 考 えることができる. (3) す な わ ち , 車 両 重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 と 同 じ こ と が , 軽 SUV と 軽 セ ダ ン の 衝 突 に お い て も , 交 通 事 故 統 計 デ ー タ 中 に 表 れ て いることが明らかになった. 第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析 3.8 74 第 3 章の結論 重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 事 故 に お い て ,全 国 統 計 的 な 分 析 を 行 う こ と に よ り ,S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 率 に 次 の 特徴が見られることを確認した. ・ 衝 突 相 手 の SUV の 重 量 が , 自 車 よ り も 重 い 場 合 で も 軽 い 場 合 で も , セ ダ ン 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の う ち ,頭 部 も し く は 胸 部 と い っ た 上 半 身 の 傷 害 の 構 成 率 は ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 で の 上 半 身 の 傷 害 の 構 成 率 よ り も 多 く なる. ・ 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 に お け る セ ダ ン 運 転 者 の 上 半 身 の 傷 害 は , 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 の 構 成 率 よ り も 多くなる. ・ 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 , セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 は , 頭 部 や 胸 部 と い っ た 上 半 身 の 傷 害 だ け で な く ,脚 部 傷 害 の 構 成 率 も 多 く ,傷 害 が全身におよぶ. 以 上 の こ と か ら ,衝 突 相 手 と な る S U V が 自 車 よ り も 軽 け れ ば 上 半 身 の 傷 害の構成率が多く,反対に自車よりも重くなるほど,脚部傷害が多くなる 傾 向 が あ る と 言 え る . そ の 理 由 は , SUV と の 前 部 サ イ ド メ ン バ の 上 下 の す れ違いにより,セダンは弱点のある車体上部に変形が生じ易くなるためと 推測することができる. 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 75 第 4章 セダン模型を用いた衝突試験による SUV と の 衝 突 時 の 客 室 入 力 の 検 討 4.1 コンパティビリティー性能の評価手法の検討 第 2 章 お よ び 第 3 章 に て ,セ ダ ン と S U V の 前 面 衝 突 の よ う に ,バ ン パ 高 さやサイドメンバ高さ等といった,構造部材の配置の違いを有する衝突に おいては,同じ質量の車両同士であっても,衝突時の車両変形状況や乗員 の傷害状況等,衝突により引き起こされる現象に相違の存在することを述 べ た (84)(86). 客室保護対策を考慮して設計されたセダンでは,衝突時に客室に加わる 力 の 伝 達 経 路 に 沿 っ た 客 室 の 補 強 が な さ れ て い る (76).し か し な が ら ,SUV とセダンの衝突においては,それぞれのサイドメンバが上下にオフセット しているため,セダン側はサイドメンバ入力の受け手である客室下部を有 効 に 利 用 す る こ と が で き な い ( 図 2 . 1 3 ). す な わ ち , S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 客 室 に は , 想 定 さ れ た 荷 重 伝 達 経 路 ( 図 2.14) 以 外 の 部 位 に 大 き な 力 が 加わることになる.この場合,セダン客室は入力に耐え切れず変形量が大 きくなり,乗員傷害も高くなる. 75 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 76 し ば し ば コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 議 論 に お い て は 攻 撃 性 (aggressiveness) という概念が使用される.しかしながら衝突の直後において,両車が接触 を開始した瞬間から,両方のフロントエンドは一体となってエネルギーを 吸収する.また,どちらの客室にも等しい荷重が加わることに注意しなく てはならない.むしろ両車の構造部材の配置の違いから,予期していない 客室部分に力が加わり,客室強度が不足することを避けるべきである. し た が っ て ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る 上 では,セダン客室部に加わる荷重分布の変化を把握し,客室変形のメカニ ズムを理解することによってコンパティビリティーを検討しようとする客 室入力の評価も重要となるであろう. 本章では,衝突が開始されてから最大変形に達するまでの間に,客室に 加 わ る 荷 重 の 分 布 状 況 の 変 化 を 把 握 す る こ と に よ っ て ,S U V と 衝 突 し た セ ダンについて,新たに客室入力の観点からコンパティビリティーの検討を 行った.特に客室内部に加わる力の分布をコンパティビリティー性能の指 標と捉え,その新たな表現方法を提案することを試みた. 客室入力を実測するために,精密な模型を用いた衝突実験を行った.模 型実験は,以前より乗員の挙動や人体傷害発生のメカニズムを解明するた め の 研 究 に 用 い ら れ て お り (52)-(67), 樹 脂 製 の 模 型 を 用 い た 衝 突 実 験 が , 衝 突 時 の 車 体 変 形 を 把 握 す る た め に 有 効 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る (68)-(73). なお,シミュレーション計算によっても同様な検討が可能であるが,計算 値と実験値との精密な合わせ込みが完了していない場合に関しては,模型 実験の利用が効果的であると言える. な お ,本 模 型 実 験 に お い て は ,セ ダ ン と S U V の 衝 突 に お け る 大 局 的 な 傾 向が,事故統計から得られた結果と整合性があるか否かを確認することを 目的としている.そのため,測定した数値自体に対しての詳細な統計処理 は行っていない.ただし,追補において詳細を記した通り,本章で述べる バ リ ア 衝 突 に つ い て は 13 回 , 次 章 で 述 べ る 車 対 車 ( Car-to -Car) 衝 突 に つ い て は 5 回 ,計 1 8 回 の 衝 突 実 験 を 実 施 し ,い ず れ の 結 果 か ら も ,上 記 の 目 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 77 的に対して肯定的な結論を確認することができた. 本 章 で は ,平 面 バ リ ア お よ び S U V に 見 立 て た 突 起 バ リ ア そ れ ぞ れ に 対 し て 樹 脂 製 の セ ダ ン 1 / 1 0 精 密 模 型 を 衝 突 さ せ る 試 験 を 実 施 し ,上 記 の 評 価 方 法を適用し検討を行った. 4.2 客室入力の評価 前 節 に て 述 べ た よ う に ,S U V と セ ダ ン の フ ロ ン ト エ ン ド の 構 造 部 材 の 配 置の相違により,予期していない客室部分に力が加わることを検討する必 要 が あ る . こ の 理 由 か ら , セ ダ ン に お い て は , SUV と の 衝 突 で 客 室 変 形 が 大きくなると考えられるため,乗員空間の確保が重要となる.すなわち, 乗 員 空 間 を 確 保 す る た め に 必 要 な 客 室 強 度 は ,S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 客 室 に加わる荷重の入力状況を把握するによって,初めて明らかになることか ら,コンパティビリティーを検討する上では,客室入力の評価,すなわち セ ダ ン の 客 室 の 防 護 性 ( defensiveness) の 評 価 が 重 要 と な る . 防 護 性 の 概 念は本研究において新たに導入した概念である. 以 前 よ り , SUV の 攻 撃 性 ( aggressiveness) を 表 現 す る た め , 固 定 壁 バ リ アに多数のロードセルを配置し,入力荷重を等高線によって示す方法 (87)-(97) , C O F ( 9 8 ) ( C e n t r e o f F o r c e ) あ る い は A H O F ( 9 9 ) - ( 1 0 6 ) ( Av e r a g e H e i g h t o f F o r c e )と い っ た 表 現 法 が 報 告 さ れ て き た( 図 4 . 1 お よ び 式 ( 4 . 1 ) ,式 ( 4 . 2 ) ). しかしながら,これら従来からの手法は,車両の前面部分の荷重分布から コンパティビリティー性を評価するので,車両前面まで伸びてきていない 部材の効果や影響を適正に評価しづらい等,必ずしも正確な評価が行なえ な い ケ ー ス も 発 生 す る . 例 え ば , SUV が セ ダ ン へ の 攻 撃 性 を 緩 和 す る た め S E A S ( S e c o n d a r y E n e rg y A b s o r b i n g S t r u c t u r e ) の よ う な 対 策 部 材 ( 図 4 . 2 ) を 装 着 し て い た と し て も , AHOF の よ う に , 車 両 の 前 面 部 分 の 荷 重 分 布 か らコンパティビリティー性を評価する方法では,その効果を正確に評価す ることは困難である.これに対し,本研究が提案する客室入力の評価,つ 78 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 まり客室入力の垂直分布表示あるいは車体断面における荷重分布の等高線 表示による評価は,客室に入るすべての荷重から車体の衝突安全性を評価 するので,従来の手法よりも正確な評価をすることができる.なお,この 概 念 の 詳 細 は 4 . 5 節 に 示 す .ま た ,A H O F お よ び S E A S に つ い て の 詳 細 は 追 補 1 を参照のこと. tt ∫ ò F (t ) F (t )dt t ∫ ò F (t )dt FAH = (4.1) centre 0 t 00 Fcentre (t ) = å H F (t ) å F (t ) i i (4.2) i F AH : AHOF F centre : COF F i : Force of Load Cell(i) H i : Height of Load Cell(i) i: Number of Load Cell (a) Barrier Crush with Load Cells (b) Distribution of Load Cell Force Fig. 4.1 C o n c e p t o f A H O F S e d a n ’s S i d e - M e m b e r S U V ’s S i d e - M e m b e r SEAS F i g . 4.2 S t r u c t u r e s f o r C o m p a t i b i l i t y S U V t o S e d a n C o l l i s i o n , S E A S 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 79 そこで本研究では,次の新たな表現手法を用いることによって,客室入 力の評価を試みた. ・ 客室に入る荷重の垂直方向分布表示およびその荷重中心の推移を示す ことによる客室入力の評価. ・ センターピラー部での車体断面における荷重分布の等高線表示. なお,客室入力を評価するために実車にロードセルを埋め込むことは, 現在の技術では困難な場合が多い.これに対し,模型では客室断面にロー ドセルを配置することが比較的容易である. 4.3 衝突実験用模型 4.3.1 相似則の適用 衝 突 に お け る 車 体 変 形 状 況 を 再 現 す る た め に ,セ ダ ン の 1 / 1 0 樹 脂 製 精 密 模型の製作に関して,相似則を適用した.なお,本研究における模型は, 車 体 全 体 を 一 つ の 材 料 と し て 見 る こ と と し ,降 伏 点 と か 応 力 - ひ ず み 曲 線 な どといった詳細な検討は一切省き,車体全体で合えば良いという考え方で 相似が成り立つようにした.なぜならば,車体を構成するひとつひとつの 部材の材料特性を明らかにすることによって数理的に相似が成り立つよう にすることは,実際には不可能なためである.すなわち,降伏点,弾性係 数 ,応 力 - ひ ず み 曲 線 等 の す べ て を 鋼 板 に 相 似 則 に 従 っ て 合 わ せ た 材 料 は 存 在しないからである.このため,本研究の模型では,衝突したときに実車 と同様の車体変形が起こるようにすることによって,実車と同じような減 速度および荷重を測れるように設計することとした.従って,単位体積当 たりの吸収エネルギーe についての実車と模型の比を求めることによって, 衝突したときに実車と同様の車体変形を起こすことを狙った. ここで,単位体積あたりの吸収エネルギーとは,模型の車体全体を一つ 80 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 の材料として見ることとし,車体全体としての吸収エネルギーについて相 似の関係が成り立つように定めた量である.これと類似の概念は単体の構 造 部 材 に 関 し て は 既 に 提 案 さ れ て い る が (71)(72), 本 研 究 で は こ れ を フ ロ ン トエンド構造全体に拡張して適用した.本研究では,新たにこの量を「単 位体積あたりの吸収エネルギー」と呼ぶことにしたい. 衝 突 現 象 に 関 す る 諸 量 に つ い て ,B u c k i n g h a m の П 定 理 に 基 づ い た 次 元 解 析から得られたПナンバを模型と実物で等しくする必要がある.本研究で は衝突現象に関する基本的物理量として,上述の単位体積あたりの吸収エ ネルギーe および密度ρ,長さ l を選択した.次元解析から得られたПグ ル ー プ を 式 (4.3)に 示 す . 式 (4.3)で は 次 の よ う に お い た . す な わ ち , P: 荷 重 , σ : 応 力 , δ : 衝 突 に よ る 車 体 変 形 量 , m: 質 量 , t : 時 間 , v: 速 さ , α : 加 速 度 , E: 運 動 エ ネ ル ギ ー , I: 慣 性 モ ー メ ン ト , ν : ポ ア ソ ン 比 , ε:ひずみである. Π1 = Π P el 2 , Π Π5 = t e ρ αρl Π E Π =v Π Π Π7 = Π8 = 3 l ρ, 6 e , el , e , Π Π9 = I Π Π10 =ν ρl 5 , , Π Π2 = σ e , ΠΠ3 = δ l , Π4 = Π m ρl 3 , (4.3) ΠΠ11 =ε また,車体変形を再現する上で乗員および拘束装置の存在を無視するこ と は で き な い . シ ー ト ベ ル ト に つ い て は 先 述 の Buckingham の П 定 理 に 基 づ き 荷 重 -変 位 特 性 の 相 似 則 を 導 き 模 型 化 し た . エアバッグについては,衝突による気体流出量の熱力学的な式を無次元 化 す る こ と に よ り , 排 気 孔 の 面 積 に つ い て の 相 似 則 を 導 い た ( 式 ( 4 . 4 ) ). こ の 過 程 は 4.3.3 の (4)に 示 す . な お , 式 (4.4)で は 次 の よ う に お い た . P1: ダ ミ ー 接 触 時 内 圧 , P2: 大 気 圧 , v 1: ダ ミ ー 接 触 時 の ガ ス の 比 重 量 , κ : 比 熱 比 , w: 排 気 穴 出 口 速 度 . 81 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 κ-1 é ù P1 v1 ê æ P2 ö κ ú Π12 = 1-ç ÷ Π w 2 ê çè P1 ÷ø ú êë úû (4.4) 式 ( 4 . 3 ) の П 5 お よ び 次 節 の 表 4 . 1 よ り ,模 型 で は 時 間 が 5 . 5 9 倍 だ け 加 速 されることになる. 4.3.2 (1) 模型用材料 材料の選定 衝 突 実 験 用 模 型 車 体 に 使 用 す る 樹 脂 に は ,応 力 - ひ ず み 曲 線 の 弾 塑 性 域 に お け る 応 力 - ひ ず み 曲 線 の 形 が 鋼 材 と 似 て い る こ と ,ポ ア ソ ン 比 が 鋼 材 に 近 いこと,さらには真空成形性が良いことが求められる.これらの条件を満 足 す る 樹 脂 に は ,ポ リ 塩 化 ビ ニ ル ( Polyvinylchloride,以 下 P V C と 略 記 す る ) と ポ リ カ ー ボ ネ ー ト ( Polycarbonate, 以 下 PC と 略 記 す る ) が 存 在 す る . 鋼 材 , PVC, PC そ れ ぞ れ の 材 料 特 性 を 表 4.1 に 示 す . 本研究においては,複雑な形状を有する自動車の部品を成形しなければ な ら な い こ と か ら , 成 形 性 の 良 い 材 料 を 選 定 す る 必 要 が あ る . PVC は PC に比べ軟化温度が低く,真空成形性の面で優れている.したがって,本研 究 で は , PVC を 選 定 す る こ と と し た . な お , PVC の ス プ リ ン グ バ ッ ク は 実 車 で 全 く 異 な る . た だ し , 車 体 に 大 きな力が加わるのは,車体が変形していく過程に存在するので,スプリン グバックしていく過程,すなわち車体がバリアから後退していく過程では 客室への大きな入力は発生しない.このため,客室に加わる力を論ずる際 には,変形が進んでいく過程だけを観察すれば十分であるので,スプリン グバック量が実車と異なることは,大きな問題とはならないと考える. 実 際 ,後 述 の 図 4 . 1 7 を 見 る と ,い ず れ の バ リ ア に 対 す る 衝 突 に お い て も , 最大変形に達した後には,荷重は急激に減衰し,スプリングバック時の客 室入力はほとんどゼロとなることを見ることができる. 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 82 Table 4.1 Material Property Poisson's Ratio Young's Modulus (GPa) Ultimate Strength (MPa) Linear Expansion Coefficient Density (g/cm3) (2) PVC 0.36 2.5-4.2 35.3-63.3 5.00-18.50 1.40 PC 0.37 2.1-2.5 56.0-67.0 6.60 1.20 Steel 0.30 210.0 280.0 1.04-1.15 7.86 鋼 材 と PVC の 基 本 量 に 関 す る 比 較 鋼 材 と P V C の 基 本 量 に 関 す る 比 較 を 表 4 . 2 に 示 す .こ こ で 単 位 体 積 あ た り の 吸 収 エ ネ ル ギ ー 比 の 値 に 関 し て , 文 献 (107)で は 静 的 条 件 下 で 14: 1 と いう数値を与えているが,本研究では次のようにして,動的条件下での吸 収エネルギー比の値を求めた. 実車においては,車体変形量を少しでも多くとるように開発がなされて おり,一概に絶対値を規定することはできないが,現在ではバリア換算速 度 55km/h で の 最 大 変 形 量 は お よ そ 850mm で あ る と 言 う こ と が で き る で あ ろ う .本 研 究 で は ,図 4 . 11 に 示 し た 平 面 バ リ ア に 対 し て 模 型 を 衝 突 さ せ る 予 備 実 験 を 行 い , 模 型 の 最 大 変 形 量 が 実 車 換 算 で 850mm( 模 型 で 85mm) と な る 模 型 の 速 度 を 求 め た . そ の 結 果 , 模 型 を 31km/h で 平 面 バ リ ア に 衝 突 さ せ た 場 合 に 最 大 変 形 量 が 85mm と な る こ と を 確 認 し た . そ し て , 相 似 則 に 整 合 さ せ る た め , こ の 模 型 速 度 が 実 車 換 算 で 55km/h に 相 当 す る こ と を 逆 に 条 件 と し て 与 え , 式 (4.3)の П 6 を 用 い て 動 的 条 件 下 で の 吸 収 エ ネ ル ギ ー e の 比 の 値 を 求 め た .そ の 結 果 ,e の 値 の 比 と し て 1 8: 1 が 妥 当 で あ る と判断した. Table 4.2 Fundamental Quantities Steel:PVC Absorbed Energy Density e 18:1 Mass Density ρ 5.6:1 Length l 10:1 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 4.3.3 (1) 83 セダン模型の製作 車両本体部分 前節で設定した相似則に従い,衝突実験用セダン模型の車両本体部分の 設計を行った.プロトタイプとなる車種は,標準的なセダンを想定した. 表 4.3 に 模 型 の 諸 元 お よ び こ れ ら を 実 車 換 算 し た 値 を 示 す . Table 4.3 Vehicle Specifications Length (mm) Height (mm) Width (mm) Weight* Fr. (kg) Rr. Total Side-Member Height (mm) Model 430 140 176 0.172 0.113 0.285 Actual 4300 1400 1760 966 634 1600 45 450 * Including Occupant Dummies and Restraint Systems 模 型 を 図 4.3 に 示 す . セ ダ ン 模 型 は , SUV と 衝 突 し た 際 の 車 体 の 変 形 状 況をみるために,車両本体部分の前半分は実車を忠実に再現した構造とな るように製作した.車両本体部分のうち,ボディー部分については,メイ ンボディー,フロアパネル,ダッシュパネル,サイドメンバ,フロアメン バ ,ク ロ ス メ ン バ 等 の 板 材 に よ っ て 作 ら れ て い る 部 品 を P V C の 板 材 か ら 成 形し,これらの部材を高周波スポット溶接によって組み立てた.上述部品 の 中 で も ,厚 さ 0 . 8 m m か ら 厚 さ 1 . 0 m m 程 度 の 比 較 的 薄 い 板 材 で 組 み 立 て ら れることの多いメインボディーやフロアパネル等のようなボディー外板を 構 成 す る 部 品 に つ い て は 厚 さ 0 . 1 m m の 薄 い 板 材 で ,サ イ ド メ ン バ や フ ロ ア メ ン バ 等 の よ う な ボ デ ィ ー 骨 格 を 構 成 す る 部 品 に つ い て は 厚 さ 0.2mm の 厚 い板材で製作することによって,実車のボディー構造を再現するようにし た.また,ドアについては剛性の高い棒材をドアベルトライン部分に装着 し て い る が ( 図 4 . 3 ( d ) ), 前 部 に ス ラ イ ド 機 構 を 設 け , 空 走 す る よ う に 工 夫 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 84 し た ( 図 4 . 3 ( e ) ). こ の 機 構 に よ り , 実 際 の ド ア の 変 形 お よ び , ド ア と 車 体 と の 隙 間 を 模 擬 し た .な お ,こ れ ら 板 材 に よ る 部 品 数 の 合 計 は 4 7 点 で あ る . 実車の前面対前面衝突において,エンジンルーム内の部品類の存在は, 車体の変形や乗員傷害に対して大きな影響をおよぼす.したがって,エン ジンルーム内についても,実車を忠実に再現するよう,エンジンおよび補 機類,トランスミッション等といったドライブトレイン系部品やフロント サ ス ペ ン シ ョ ン 等 の 走 行 装 置 系 部 品 ,合 計 2 4 点 を 製 作 し ,上 述 の ボ デ ィ ー 部分に組み付けた.これらドライブトレイン系部品や走行装置系部品の多 くは,実車においては鋳物や厚肉材等,剛体とみなしても構わないほど, 剛性の高い材料によって構成されていることから,模型についても,これ を再現するようにした.なお,近年においては,セダンの多くがエンジン を車両進行方向に対して横方向に配置して,前輪を駆動する方式としてい ることから,模型でも横置きエンジン,前輪駆動方式の乗用車のエンジン ルームレイアウトを再現するようにした. 車両本体部分のうち後半部分については,衝突による車体骨格部への入 力を計測するセンサー類を搭載する装置として製作した.フロアメンバ, フロアトンネル,サイドシル,ドアベルトラインメンバ,ルーフレールの それぞれにロードセルを装着し,各骨格部材に入る荷重を個別に計測でき る よ う に し た . ま た , こ の 部 分 に は 加 速 度 計 も 装 着 し た ( 図 4 . 4 ). な お , 車両の後半分については,前面対前面衝突の影響をほとんど受けることが 無い部分であることから,模型では計測装置としての機能だけをもたせる ようにした.したがって,この部分については実車と異なる形状になって いるが,衝突試験の際に各骨格部材への入力を測定するに当たっては,車 体後部の慣性力がロードセルに加わることから,ロードセルや加速度計を 搭載した状態において,実車の重心高さを充分に考慮した.実車セダンの 平 均 値 は 550mm で あ る の で , 模 型 の 重 心 高 さ は 55mm と し た . 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 (2) 85 乗員ダミー 車体変形を正確に再現する上で,乗員の質量は無視できない.なぜなら ば , 平 均 的 な 成 人 男 性 の 体 重 は 70kg か ら 75kg 程 度 で あ る が , こ れ が 2 名 乗 車 し た 場 合 に は , 140kg か ら 150kg と な り , 車 両 総 重 量 の 約 1 割 程 度 に 相 当 す る 重 量 と な る か ら で あ る .こ の た め ,新 設 計 の 乗 員 ダ ミ ー を 製 作 し , 運 転 席 お よ び 助 手 席 そ れ ぞ れ に 搭 載 し た .4 . 3 . 1 節 で 述 べ た 相 似 則 を 乗 員 ダ ミ ー に 適 用 し た 場 合 ,標 準 的 な 成 人 男 性 の 体 重 を 7 3 k g と す る と ,模 型 に お け る 乗 員 ダ ミ ー の 体 重 は 13g と な る . 本 研 究 に お け る 乗 員 ダ ミ ー は , 体 重 を こ れ に 合 わ せ る た め ,模 型 車 両 本 体 部 分 と 同 じ く P V C を 成 形 す る こ と に よ っ て 身 体 を 構 成 す る 各 部 位 を 製 作 し て 組 み 立 て た ( 図 4 . 5 ). なお,本研究ではダミーによる乗員傷害値の計測は考えていないので, 関節挙動など,生体的な特性については簡略化している. (3) シートベルト 本研究では,相似則に従って製作した乗員拘束装置を装着することによ り,衝突時に乗員が車体におよぼす影響についても考慮した衝突条件を整 え た ( 図 4 . 5 ). 図 4 . 6 ( a ) に 実 車 の シ ー ト ベ ル ト の 荷 重 - 伸 び 特 性 を 示 す . し た が っ て ,模 型 の シ ー ト ベ ル ト の 荷 重 - 伸 び 特 性 は 相 似 則 に よ り 図 4 . 6 ( b ) の ようにする必要がある.模型では,これを再現するために,鋼線の塑性曲 げを利用したフレーム構造の装置を相似則に基づいて製作し,ベルトに装 着した.具体的には「く」の字型に曲げた鋼線に引張荷重を与え,伸長さ せ る こ と に よ っ て ,シ ー ト ベ ル ト の 荷 重 - 伸 び 特 性 を 模 し た 性 質 を 得 る こ と とした. す な わ ち , シ ー ト ベ ル ト の 特 性 を 再 現 す る 鋼 線 は , 変 位 20mm で 塑 性 域 に達するように直径を定めなければならない.そこで,次の手順にて鋼線 の 直 径 を 求 め た . 図 4.6(b)よ り , 模 型 の シ ー ト ベ ル ト の 最 大 伸 長 量 が L の 場 合 ,「 く 」 の 字 に 曲 げ た 鋼 線 の 一 辺 の 長 さ は L で あ る . ま た , 鋼 線 の 初 86 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 期 角 度 は ( π / 3 r a d ) と し た ( 図 4 . 7 ( a ) ).「 く 」 の 字 に 曲 げ た 鋼 線 に 荷 重 F i が 加 わ っ た 時 の 変 位 を x i と す る と ,F i と x i の 関 係 は 式 ( 4 . 5 ) の よ う に 表 さ れ る. Fi = k (xi - L ) 2 (4.5) また,このとき鋼線に加わるモーメントは Mi = Fi yi (4.6) と表される. し た が っ て 変 位 が x i か ら x i + 1 と な っ た 場 合 ( 図 4 . 7 ( b ) ), 幾 何 学 的 に 2 2 æ xi ö æx ö 2 2 ç ÷ + yi = ç i +1 ÷ + yi +1 è2ø è 2 ø (4.7) と な り , 式 (4.7)よ り yi+1 が 求 ま る . な お , 本 研 究 の 模 型 の シ ー ト ベ ル ト の 最 大 伸 長 量 に つ い て は , L=60mm で あ る . x i = 5 0 m m ま で こ の 繰 り 返 し 計 算 を 行 っ た 結 果 ,鋼 線 が 塑 性 域 に 達 す る と きの y i =44mm を 得 た . 式 (4.4)よ り , こ の と き の Fi= 2.2N で あ る の で , モ ー メ ン ト は Mi=97Nmm. Mi と 塑 性 断 面 係 数 Zp, 降 伏 応 力 σ p の 関 係 は 、 式 (4.8)の よ う に な る . sp = Mp Zp (4.8) 鋼線の断面形状は円形であるので,塑性断面係数は円の半径 r とすると Zp = 4 3 r 3 (4.9) と表される. 軟 鋼 の 降 伏 応 力 σ p=280Mpa, 弾 性 限 界 モ ー メ ン ト Mp=97Nmm を 式 (4.9) 87 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 に 代 入 す る と r=0.6mm と な る . し た が っ て , 鋼 線 の 太 さ は 直 径 1.2 mm と な る が , こ の 径 の 鋼 線 は 存 在 し な い の で , 直 径 0.9 mm の 鋼 線 を 2 本 使 用 した. 腰 用 シ ー ト ベ ル ト に つ い て も ,同 様 の 計 算 を 行 い ,鋼 線 の 直 径 を 求 め た . 腰 用 シ ー ト ベ ル ト の 最 大 伸 長 量 L は 3 0 m m で あ る の で ,「 く 」 の 字 に 曲 げ た 鋼 線 の 一 辺 の 長 さ は 30mm, 鋼 線 の 太 さ は 直 径 1.2mm と な る が , こ の 径 の 鋼 線 は 存 在 し な い の で 直 径 0.9 mm と 直 径 0.8mm の 鋼 線 の 2 本 を 使 用 し た. (4) エアバッグ 本研究においては,衝突時にダミーがエアバッグから受ける反力をエア バッグの排気口の大きさで調節することによって,模型におけるエアバッ グの能力の再現を試みた.すなわち,衝突時に乗員の頭部がエアバッグに 接 触 し た 際 に , 圧 力 P1 の 一 定 内 圧 が 速 度 w で 大 気 圧 内 に 噴 出 す る も の と みなし,模型はこれを相似則に則って再現するものを考えることとした. ノ ズ ル 内 の 流 れ と 摩 擦 の 影 響 は 次 の 式 で 表 現 さ れ る (108). k é ù k ö æ w P -1 k = P1q1 ê1 - çç 2 ÷÷ ú ê è P1 ø ú 2g k -1 êë ûú (4.10) こ こ で P1 は エ ア バ ッ グ 内 の 圧 力 , P2 は 大 気 圧 , q1 は エ ア バ ッ グ 内 の 初 期比体積,g は重力加速度である. な お , 式 (4.10)の 右 辺 の P1, q1 に つ い て は , 空 気 を 理 想 気 体 と 考 え る と P1q1=RT ( 4 . 11 ) である.R および T はそれぞれガス定数,エアバッグ内の絶対温度である ので一定とみなし,変化量を無視するものとする. 実 車 , 模 型 そ れ ぞ れ の 衝 突 直 後 の エ ア バ ッ グ 内 の 圧 力 を P1p, P1m, 衝 突 88 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 現 象 が 終 了 し た と き の エ ア バ ッ グ 内 の 圧 力 を P2p,P2m と お く と ,自 動 車 メ ーカの実車のエアバッグ展開試験時のデータによれば, P1p=0.156MPa (4.12) また,衝突現象終了時のエアバッグ内の圧力は大気圧と等しくなっている とみなせるので, P2p= P2m = 0.101MPa (4.13) ここで,ダミーがエアバッグから受ける荷重の比が,単位体積当たりの吸 収エネルギーの比に等しいことから, P1m - P2 m em = P1 p - P2 p e p (4.14) 式 (4.12), (4.13), (4.14)か ら , P1m=0.104MPa (4.15) が 得 ら れ る . し た が っ て , 式 (4.10)に つ い て の 実 車 と 模 型 の 比 は , æP 1 - çç 2 m è P1m k ö k -1 ÷÷ 2 wwmm2 ø = 2 k wwpp 2 k 1 æ P2 p ö ÷ 1- ç çP ÷ è 1p ø (4.16) で表される.したがって, w m2 w p 2 = 0.073 (4.17) となることから, wm = 0.270 wp が得られる. (4.18) 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 89 噴 出 速 度 w と 排 気 口 の 面 積 F の 積 が 排 出 体 積 と な る の で , 4.3.1 節 で 述 べた相似則により,排気口の面積 F については,実車と模型の間で次の関 係が成り立つ. 1 5.585 wm wp Fm Fp = 1 1000 (4.19) こ の 式 (4.19)に 式 (4.18)を 代 入 す る こ と に よ り , 排 気 口 の 面 積 の 比 は 次 の よ うになる. Fm =0.021 Fp (4.20) 実 車 の 運 転 席 エ ア バ ッ グ に は , 直 径 45.0mm の 排 気 口 が 2 箇 所 空 い て い る の で , 模 型 で は 直 径 6.5mm の 排 気 口 を 2 箇 所 空 け る こ と と し た . な お , 模 型のエアバッグの排気口は,穴あけパンチによって打ち抜いた. 以上の理論的な考察は,新たに行なった検討であり,今後のエアバッグ の模型実験のひとつの基礎を与えると考えられる. (5) タイヤについて 実 車 の タ イ ヤ の 荷 重 -変 位 曲 線 を 図 4.8(a)に 示 す . 実 車 の タ イ ヤ で は , 荷 重 は 変 位 が 70mm に 達 す る ま で は 線 形 的 に 増 加 し て い る . 本 研 究 の 模 型 で は ,タ イ ヤ に つ い て も ,実 車 タ イ ヤ の 荷 重 - 変 位 曲 線 を 忠 実 に 再 現 す る よ う に 設 計 し た .相 似 則 に 則 っ て 模 型 に 装 着 す る タ イ ヤ の 荷 重 - 変 位 曲 線 を 求 め る と 図 4.8(b)に 示 し た 通 り に な る . し た が っ て , 模 型 の タ イ ヤ で は , こ の 荷 重 - 変 位 曲 線 を 再 現 で き る 材 料 を 選 択 す る よ う に し た .具 体 的 に は ,防 水 テ ー プ が ,図 4 . 8 ( b ) に 示 し た 荷 重 - 変 位 曲 線 を 再 現 す る 性 質 を 示 し た こ と か ら,これを模型のタイヤとして使用することとした. 以上,本研究における模型車両を構成する全部品の総数は,前述の車両 本 体 部 分 か ら ダ ミ ー お よ び 拘 束 装 置 を 含 め る と , 総 数 103 点 に お よ ん だ . 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 90 (a) Overview (b) Engine Compartment (d) Door Beltline-Member (c) Chassis and Under-Body (e) Acral-Part of Door Beltline-Member Fig. 4.3 Scale Model (1:10) 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 Floor-Member Floor member Floor-Tunnel Floor tunnel Door Beltline-Member Door-beltline member Side-Sill Side sill Load Transducers transducers Accelerometer Load Side member Side-Member Fig. 4.4 Load Transducers and Accelerometer Seat-Belts Airbag for Driver Seat Dummies Airbag for Passenger Seat Fig. 4.5 Dummies and Restraint Systems 91 92 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 Load (kN) 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 0 200 400 600 800 1000 80 100 Elongation (mm) ( a ) A c t u a l Ve h i c l e 5.0 Load (N) 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 0 20 40 60 Elongation (mm) (b) Scale Model Fig. 4.6 Load Elongation Curve of Seatbelt 93 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 yi Fi Fi xi (a) Displacement: xi yi +1 Fi +1 xi+1 (b) Displacement: xi+1 Load (kN) Fig. 4.7 Plastic Hinge 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 7 8 9 Displacement (mm) ( a ) A c t u a l Ve h i c l e 50 Load (N) 40 30 20 10 0 0 1 2 3 4 5 6 Displacement (mm) (b) Scale Model Fig. 4.8 Load Displacement Curve of Tire Fi +1 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 (6) 94 模型の検証 模型の衝突特性が実車の衝突特性に合致していることを確認するため, 55km/h で の 固 定 壁 バ リ ア へ の 衝 突 に つ い て 実 車 と の 比 較 を 行 っ た ( 図 4 . 9 ).こ の 図 に 示 し た 実 車 の 減 速 度 - 時 間 曲 線 の 通 り ,模 型 の 衝 突 特 性 は ,実 車 の 衝 突 特 性 (109)(110)と 大 き な 違 い が 無 い こ と が わ か る .従 っ て ,模 型の衝突特性は,実車の衝突特性をよく再現できていると判断した. Actual Actual Vehicle vehicle 11 Decelration (G) 40 Actual Actual Vehicle vehicle 22 Scale Scale model Model 30 20 10 0 0 20 40 60 80 100 120 Time Time(msec) (ms) Fig. 4.9 Deceleration Curves 4.3.4 衝突実験用バリア 本 研 究 で は , セ ダ ン 同 士 の 衝 突 を 平 面 バ リ ア 衝 突 ( 図 4 . 1 0 ), S U V と セ ダ ン の 衝 突 を 突 起 バ リ ア 衝 突 ( 図 4 . 11 ) で 表 現 し , こ れ ら の 実 験 結 果 を 比 較 す る こ と に よ り ,S U V に 衝 突 し た セ ダ ン の 車 体 と セ ダ ン 同 士 の 衝 突 で の 車 体の変形状況の違いを観察した. 4.3.5 模型車両の衝突実験条件 セ ダ ン と S U V の 前 面 衝 突 事 故 の 累 積 頻 度 9 9 % は ,相 対 速 度 11 0 k m / h 以 下 で 発 生 し て い る (46)(111) , 質 量 が 同 じ 車 両 同 士 の 衝 突 で は , 相 対 速 度 の 1/2 がバリア衝突速度と等価であるから,本研究における衝突速度は,この事 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 95 故 統 計 を 参 照 し , 55km/h( 実 車 換 算 ) と し た . 模型は,三相誘導モータによりタイミングベルトを用いてレール上を牽 引 す る 衝 突 試 験 装 置( 図 4 . 1 2 )に よ っ て ,バ リ ア に 衝 突 さ せ る よ う に し た . 突 起 バ リ ア の 設 置 高 さ は ,S U V と セ ダ ン そ れ ぞ れ の サ イ ド メ ン バ が 完 全 に 上 下 オ フ セ ッ ト し て い る 衝 突 を 想 定 し ,図 4 . 11 に 示 す よ う に 5 5 m m( 実 車 換 算 5 5 0 m m )と し た .な お ,実 車 の S U V も サ イ ド メ ン バ 地 上 高 は 4 5 0 - 5 5 0 m m 程度であるので,本研究における突起バリアの設置高さは妥当なものと考 える.また,測定には高速度カメラによる撮影結果を併用した. 55 (1/10 Scale) Fig. 4.10 Flat Barrier Fig. 4.11 SUV Barrier 2900 Runway Table Barrier Fig.4.12 Car-to-Barrier Crash Test System Pulley Timing Belt Motor 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 96 220 97 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 4.4 衝突実験結果 4.4.1 模型車両の衝突特性 変 位 と 時 間 の 関 係 を 図 4.13 に , 減 速 度 と 変 位 の 関 係 を 図 4.14 に 示 す . なお,本章で図中に示した値はすべて実車に換算した値である.現実の車 体 に お け る 減 速 度 -変 位 曲 線 は 各 車 各 様 で あ る が , 図 4.14 の 実 線 で 示 し た 平面バリア衝突の曲線は,多くの車体の一般的な傾向に合致している.た だし,最初の立ち上がりは現実の車体に比して遅い.これは樹脂の弾性率 が相似則で与えられる値より低いためである.なお,本節に示した図は, Displacement (mm) いずれも実車のスケールに換算して示してある. 1200 1000 800 600 400 200 0 SUV barrier SUV Barrier Flat barrier Flat Barrier 0 20 40 60 80 100 120 Time (msec) Time (ms) Decelration (G) Fig. 4.13 Vehicle Deformation 35 30 25 20 15 10 5 0 SUV barrier SUV Barrier Flat Flat Barrier barrier 0 200 400 600 800 Displacement (mm) Fig. 4.14 Deceleration Curve 1000 1200 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 98 図 4 . 1 4 の破線は突起バリア衝突の曲線である.サイドメンバの圧壊荷重が発生すべ き 200-300mm ではほとんど荷重が出ていない.主要な衝撃吸収部材であるサイドメン バが突起バリアの下にもぐり込み,エネルギーをほとんど吸収していないためと思われ る. 500-800mm 付近のピークはエンジンのダッシュパネルへの侵入によるものである. 突起バリア衝突では,衝突エネルギーをサイドメンバで吸収できない分,全体変形量は 大きくなっている.平面バリア衝突における最大変形量は 843mm であるが,突起バリ ア衝突では 1078mm 変形しており,約 30%も増加している(図 4.13,図 4.14).この変 形量の増大は,エンジンがダッシュパネルへ侵入する量の増加に結びつく.これらの値 は代表的な実験の結果であるが,実際には平面バリア 7 回,突起バリア 6 回,計 13 回 の衝突実験を行っており,いずれも類似の結果を得ている.その一部を追補 2 に示した. 4.4.2 衝突による車体骨格部への入力荷重と車体変形 高 速 度 カ メ ラ に よ っ て 撮 影 し た 模 型 の 潰 れ 状 況 を 図 4.15 お よ び 図 4.16 に 示 す . 客 室 に 埋 め 込 ん だ ロ ー ド セ ル ( 図 4.4) に よ っ て 測 定 し た 平 面 バ リ ア , 突 起 バ リ ア そ れ ぞ れ へ の 衝 突 に つ い て の 荷 重 -変 位 曲 線 を , 図 4.17 に 示 す .図 4 . 1 4 よ り ,平 面 バ リ ア と 突 起 バ リ ア で は 客 室 へ の 入 力 に 対 し て 車体骨格部が全く異なる力の受け方をしていることが確認できる. 平 面 バ リ ア 衝 突 ( 図 4.17(a)) で は , フ ロ ア メ ン バ , フ ロ ア ト ン ネ ル , サ イドシル等の客室下部構造が受け持つ荷重配分は大きい.通常の客室構造 においては,衝突時の荷重は,主としてサイドメンバ付け根で受け持たれ ている.平面バリアの場合には,客室構造はこれら下部骨格部材で効率よ く力を受けていることが理解できる. 一 方 , 突 起 バ リ ア 衝 突 ( 図 4.17(b)) で は , ド ア ベ ル ト ラ イ ン 部 が 受 け 持 つ荷重配分が他の骨格部材に比べて大きい.突起バリア衝突では,サイド メンバがバリアの下にもぐり込むため,本来の荷重導入部位として想定さ れている客室下部構造への入力が少なく,その代わりにドアベルトライン 部が受け持つ荷重配分が大きくなることを示している. 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 4.5 客室入力分布による防護性の評価 4.5.1 客室入力の垂直分布 99 本研究では,客室入力を評価する方法として,客室(左右方向断面上) に入る荷重の垂直方向分布およびその荷重中心の推移を示す手法を導入し た .車 両 変 形 の ス ト ロ ー ク 量 毎 で の ,荷 重 の 垂 直 方 向 分 布( D C F ( D i a g r a m o f Compartment Force) ) お よ び 客 室 荷 重 中 心 の 変 化 ( CCF (Centre of Compartment Force)) を 図 4.18 の よ う に 示 す こ と に よ っ て , 客 室 入 力 を 評 価することとした. 図 4.19 は , 図 4.17 に 示 し た 客 室 入 力 荷 重 か ら 垂 直 位 置 別 の 平 均 入 力 荷 重をストローク量毎に導出した,衝突過程における荷重の垂直分布および 客室荷重中心の変化を示した図である.なお,本節に示した図は,いずれ も実車のスケールに換算して示したものである. 平面バリアへの衝突では,衝突による車体変形が進行するほど,車体下 部の受ける荷重は大きくなり,荷重中心は全変形過程を通じて車体下部を 通っている.セダン同士の衝突においては,フロアメンバ等,車体下部が 衝 突 時 の 荷 重 を 受 け て い る こ と を 示 し て い る .な お ,図 4.19 の 曲 線 は ,図 4.4 に 示 し た ロ ー ド セ ル で 計 測 し た 荷 重 を 設 置 高 さ 別 に プ ロ ッ ト し た も の をストローク量毎に結んだものである. 一方,突起バリアへの衝突では,衝突直後は車体下部が荷重を受けてい る が ,車 体 変 形 が 進 行 し て い く ほ ど ,ド ア 部 の 受 け る 荷 重 が 増 大 し て い く . また,荷重中心位置は,車体下部からドアベルトライン部への荷重中心へ 移 動 し て い る .セ ダ ン は S U V と の 衝 突 に お い て ,初 期 段 階 で 本 来 の 衝 突 安 全対策がなされた車体下部構造で荷重を受け止めようとするものの,サイ ドメンバが上下にオフセットしているため,ドアベルトライン部で荷重を 受け止めることを示している. 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 55 (1/10 Scale) Fig. 4.15 Crash Test (Flat Barrier, Max Body Deformation) Fig. 4.16 Crash Test (SUV Barrier, Max Body Deformation) 100 101 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 60 Force (kN) 50 40 Floor-Member Side-Sill Floor-Tunnel Door Beltline-Member 30 Roof-Rail 20 10 0 -10 200 400 600 800 1000 Displacement (mm) (a)Flat Barrier 60 Force (kN) 50 Door Beltline-Member 40 30 20 Floor-Member Floor-Tunnel Side-Sill Roof-Rail 10 0 -10 200 400 600 800 1000 Displacement (mm) (b) SUV Barrier Fig. 4.17 Force Displacement Curve (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ) Height ●● ● ●(Ⅰ) ● ● (Ⅲ) ● (Ⅱ) ● ● Centre of Compartment Force Lateral Compartment Force Fig. 4.18 Expression of Defensiveness (D CF (Diagram of Compartment Force)) 102 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 2000 Height (mm) 1500 1000 500 0 10 20 30 40 Force (kN) 50 (a)Flat Barrier 2000 Height (mm) 1500 1000 500 0 10 20 30 Force kN (b) SUV Barrier Front-End Deformation (mm) Front0-200 200-400 400-600 600-800 800-1000 Center of Compartment Force Fig. 4.19 D CF (Diagram of Compartment Force) 40 50 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 0-200mm 200-400mm 400-600mm 600-800mm (a)Flat Barrier 0-200mm 200-400mm 400-600mm - 600-800mm - 800-1000mm (b) SUV Barrier 0 40 (kN) Fig. 4.20 Transition of 2-D Compartment Force Distribution 103 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 104 今回の実験では,模型車両には極めて剛性の高い部材をドアベルトライ ン部分に装着している.もし,実車に近い強度で模型のドアを製作した場 合には,突起バリア衝突ではドアベルトライン部が座屈していた可能性が ある.この場合には,生存空間は大きく減少することになる.ドアベルト ライン構造に関しては,前後荷重に対して他から共同して抵抗すべき部材 が ほ と ん ど な く ,こ の 意 味 か ら も 対 S U V の 衝 突 で は ド ア 強 度 の 検 討 が 重 要 である.なお,ルーフサイドレールに余り力が入っていないことにも注目 すべきであるが,ドア剛性が現実に近いと,より大きな力がルーフレール に入ると思われる. 4.5.2 客室入力の 2 次元等高線表示 上述の客室入力荷重の垂直方向分布による評価法と併せ,センターピラ ー部での車体断面を2次元表示し,客室へ入る荷重の分布を等高線で表示 す る こ と に よ る 客 室 入 力 の 評 価 も 実 施 し た .そ の 分 布 の 変 化 を 図 4 . 2 0 に 示 す.この評価手法からも平面バリア衝突では車体下部,突起バリアではド アベルトライン部で荷重を受けていることを把握できる. す な わ ち , 図 4.19 と 図 4.20 を 併 用 す る こ と に よ っ て , セ ダ ン 客 室 強 度 を表現できるであろう. 4.6 第 4 章の結論 (1) セ ダ ン と SUV の 衝 突 コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 検 討 の た め に は , フ ロ ン ト エ ン ド か ら 客 室 へ の 入 力 経 路 が ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 の 場 合 と は 異 な る ことを把握しておく必要がある. (2) 樹 脂 製 1/10 精 密 模 型 の 客 室 部 に 設 置 し た ロ ー ド セ ル に よ っ て 客 室 入 力 を 測 定 し た .こ の デ ー タ か ら 客 室 入 力 の 垂 直 方 向 分 布 図 ,お よ び 2 次 元 等 高 線 分 布 図 を 作 成 し た .こ れ ら の 表 現 法 は ,客 室 入 力 の 表 現 に 有 用 で ある. 第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討 105 ( 3 ) 新 た な 表 現 法 を 用 い て 客 室 入 力 を 検 討 し た 結 果 ,平 面 バ リ ア と の 衝 突 で は , 荷 重 を 客 室 下 部 で 受 け て い る が , SUV を 模 し た 突 起 バ リ ア と の 衝 突 で は ,荷 重 を 主 と し て ド ア ベ ル ト ラ イ ン 部 で 受 け 持 つ こ と が 明 ら か と なった. ( 4 ) な お ,突 起 バ リ ア と の 衝 突 で 荷 重 が 車 体 上 部 に 多 く 加 わ る こ と が ,S U V と衝突したセダン乗員の上半身に傷害が多く発生することに直ちに結 び 付 く と 結 論 づ け る わ け に は い か な い .た だ し ,現 在 の 衝 突 安 全 対 策 に お い て は ,車 体 上 部 に 力 が 加 わ る 場 合 に つ い て の 対 策 は ,そ れ ほ ど 広 く 施 さ れ て い な い の で ,車 体 上 部 に 力 が 加 わ る と ,車 体 の 上 部 の 変 形 が 設 計 時 の 予 想 外 に 大 き く な る こ と が 考 え ら れ る .そ の 結 果 ,乗 員 の 上 半 身 に傷害が多くみられるようになると考える. 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 106 第 5章 セ ダ ン 模 型 と SUV 模 型 の Car-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 5.1 セダン模型と SUV 模型の Car-to-Car 衝突試験の意義 第 4 章 に お い て ,筆 者 ら は 1 / 1 0 ス ケ ー ル の セ ダ ン を 模 し た 精 密 な 模 型 を 製 作 し ,平 面 バ リ ア お よ び S U V を 模 し た 突 起 バ リ ア と 衝 突 さ せ る 実 験 を 行 い,両実験から得られた結果を比較することによって,客室への荷重分布 の変化の違いを明らかにした.しかしながら,第 4 章での実験は,衝突形 態を理想化した条件での実験であり,必ずしも実際の衝突事故における衝 突を完璧に再現した訳ではない.それは,実車の衝突においては,衝突相 手 の 車 体 に 食 い 込 む 現 象 が 発 生 す る か ら で あ る . そ こ で 本 章 で は , SUV を 模 し た 模 型 と 第 4 章 と 同 じ セ ダ ン 模 型 を 衝 突 さ せ る Car-to -Car 衝 突 試 験 を 行 い , そ れ ぞ れ の 車 両 の 客 室 へ の 荷 重 分 布 の 変 化 を 求 め , SUV, セ ダ ン そ れぞれの車両にとってのコンパティビリティーの検討を試みることとした. 第 2 章 に お い て ,車 両 重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 で 死 亡 も し く は 重 傷 を 負 っ た SUV 運 転 者 お よ び セ ダ ン 運 転 者 そ れ ぞ れ の 損 傷 種 部 位 の 構 成 に つ い て 分 析 を 行 い ,次 の 特 徴 が あ る こ と を 明 ら か に し た( 図 2 . 4 , 図 2 . 5 ). 106 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 107 ( 1 ) S U V- M 運 転 者 は S d n - M 運 転 者 に 比 べ 脚 部 傷 害 の 割 合 が 多 い . (2) こ れ に 対 し , Sdn-M 運 転 者 は 頸 部 や 胸 部 の 傷 害 が 多 い . 第 2 章 で も 述 べ た 通 り ,SUV と セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 に お い て は , 両 車 の サイドメンバが上下方向にオフセットした状態でぶつかることになるため, セダン側は衝突の力の受け手である客室下部を有効に利用することができ ない.このため,セダン客室には,従来セダン同士の衝突安全のために設 けられている荷重の伝達経路以外の部位に大きな入力が加わることになる. 衝 突 時 に SUV, セ ダ ン 両 車 に 加 わ る 衝 撃 力 自 体 は 等 し い の で あ る が , セ ダ ン側では効果的な荷重の受け方ができないことから,セダンの客室構造の 方が強度面で不利となる.客室が入力に耐え切れずに大きな変形をするこ とから,乗員の傷害度も高くなる.特に,フードリッジリンフォースメン トなど車体上部で荷重を受けるので,セダン運転者は頸部や胸部など上半 身の傷害が多くなる. こ れ に 対 し ,S U V で は 入 力 は サ イ ド メ ン バ を 介 し て 車 体 下 部 に 伝 達 さ れ る . そ し て ,SUV 同 士 の 衝 突 安 全 の た め に 設 け ら れ て い る 荷 重 の 伝 達 経 路 に沿って入力が伝達されることから,客室変形はセダンに比べ小さくて済 み,また,入力が車体下部に伝達されることから,乗員の傷害も脚部傷害 の割合が多くなる. こ の 事 故 統 計 分 析 に 関 す る 具 体 例 と し て の S U V- L ク ラ ス の S U V と Sdn-M ク ラ ス の セ ダ ン の 衝 突 は , 第 3 章 の 3.4 節 に て 紹 介 し た が , こ こ で は ,よ り 詳 細 に つ い て 述 べ る .こ の 事 故 例 に お け る S U V- L 車 両 と S d n - M 車 両 の サ イ ド メ ン バ 地 上 高 の 差 は 1 5 5 m m あ る こ と か ら( 表 3 . 2 ),衝 突 時 に お いてサイドメンバがオーバーラップしている部分は少ないとみなすことが で き る . 車 両 の 潰 れ 状 況 は , 図 3 . 11 に 示 し た 通 り , 両 車 助 手 席 側 が オ ー バ ーラップしたかたちの衝突である. Sdn-M の 車 両 に つ い て は フ ェ ン ダ ー 部 分 も 含 め た ボ ン ネ ッ ト 部 分 だ け で なく,助手席側の前席部分の乗員空間も大きく潰れており,それによって インストルメントパネルは後退し,助手席シート背面部との距離が狭まっ 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 108 ている.このため,助手席の乗員は上半身に胸部血管損傷,肺損傷および 頭 蓋 骨 骨 折 を 負 っ て 死 亡 し た . 一 方 , S U V- L の 車 両 に つ い て は グ リ ル よ り 下の部分が損壊,セダンのフロントエンドが衝突した助手席側のグリルと バ ン パ 部 分 が 後 退 し て い る . S U V- L で は 助 手 席 側 に 乗 員 が 乗 車 し て い な か ったため,この車両損壊による乗員傷害について確認することはできない が,位置的関係か,もし助手席に乗員が乗車していれば,脚部になんらか の傷害を負った可能性も推測できる.なお,車両の損壊度合いが少ない運 転席側の乗員については,シートベルト非着用により顔面打撲を負ったも のの軽傷であった. この事故例は重量の差が大きく,必ずしも同重量の場合と同一視はでき ないが,車両の損壊状況と乗員の傷害程度から,衝突事故では乗員空間を 確保できない場合に乗員が大きな傷害を受けることを確認した.したがっ て,衝突時における自動車乗員の傷害程度を軽減するためには,衝突時に お け る 乗 員 空 間 の 確 保 が 重 要 と な る . す な わ ち , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お けるコンパティビリティーについては,両車の客室入力を明らかにし,乗 員 空 間 を 確 保 す る の に 必 要 な 客 室 強 度 を 求 め る こ と が 重 要 と な る .そ こ で , 本 章 で は SUV, セ ダ ン 両 車 の Car-to -Car 衝 突 試 験 を 実 施 し , そ れ ぞ れ の 客 室への荷重の分布を計測することとした. 5.2 衝突実験用模型 5.2.1 模型の製作 第 4 章 の 4.3.1 節 で 設 定 し た 相 似 則 に 従 い , 衝 突 実 験 用 の SUV 模 型 と セ ダ ン 模 型 の 設 計 を 行 っ た . 表 5.1 に 模 型 の 諸 元 お よ び こ れ ら を 実 車 換 算 し た 値 を 示 す . SUV 模 型 お よ び セ ダ ン 模 型 を 図 5.1 に 示 す . セ ダ ン 模 型 に つ いては,第 4 章で使用したものと全く同じ材料にて同じ諸元のものを製作 し た . ま た , SUV 模 型 に つ い て は , 車 体 構 造 お よ び 質 量 は セ ダ ン と 全 く 同 じとし,車高だけを変えて衝突時にサイドメンバが上下にオフセットする 109 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 高 さ に 設 計 し た .車 体 に 搭 載 す る 計 測 装 置 は セ ダ ン 模 型 と 全 く 同 じ と し た . こ れ に よ り , 車 体 構 造 , 質 量 は 同 じ で サ イ ド メ ン バ 高 さ の み が 異 な る SUV とセダンの衝突試験を実施することとした. また,車体変形を正確に再現する上で乗員の質量は無視できないため, 第 4 章 と 同 じ く ダ ミ ー を 製 作 ,運 転 席 お よ び 助 手 席 そ れ ぞ れ に 搭 載 し た( 図 4 . 5 ). ま た , 相 似 則 に 従 っ て 製 作 し た 乗 員 拘 束 装 置 に よ り , 衝 突 時 に 乗 員 が車体におよぼす影響についても考慮した衝突条件を整えた.シートベル ト の 荷 重 - 伸 び 特 性 に つ い て は ,前 章 と 同 じ と し た .な お ,本 章 に お い て も , ダミーによる乗員傷害値の計測は考えていないので,関節挙動など,ダミ ー細部の生体的な特性については簡略化している. Length (mm) Height (mm) Width (mm) Weight* Fr. (kg) Rr. Total Side-Member Height (mm) Ta b l e 5 . 1 Vehicle Specifications SUV (Model) Sedan (Model) SUV (Actual) 430 430 4300 155 140 1550 176 176 1760 0.172 0.172 966 0.113 0.113 634 0.285 0.285 1600 60 45 600 Sedan (Actual) 4300 1400 1760 966 634 1600 450 * Including Occupant Dummies and Restraint Systems 5.2.2 衝突試験装置の製作 本 章 で は ,SUV 模 型 と セ ダ ン 模 型 の Car-to-Car 衝 突 試 験 を す る た め の 専 用 の 衝 突 試 験 装 置 を 製 作 し た ( 図 5 . 2 ). こ の 衝 突 試 験 装 置 で , S U V 模 型 お よびセダン模型は,それぞれ三相誘導モータによって駆動されるタイミン グ ベ ル ト に よ り レ ー ル 上 を 牽 引 さ れ , 本 装 置 の 中 央 部 で Car-to-Car 衝 突 す るようにした. セ ダ ン と SUV の 前 面 衝 突 事 故 の 累 積 頻 度 99% は , 危 険 認 知 相 対 速 度 11 0 k m / h 以 下 で 発 生 し て い る ( 4 6 ) ( 1 1 1 ) , 本 研 究 に お け る 相 対 衝 突 速 度 は , こ の 事 故 統 計 を 参 照 し , 11 0 k m / h ( 実 車 換 算 ) と し た . Sedan Model Fig. 5.1 Scale Models of SUV and Sedan (1:10), (Photographing by Photron Ltd.) SUV Model 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 110 Pulley Timing Belt Gears Motor Timing Belt Fig. 5.2 Car-to-Car Crash Test System Runway Table 5078 Pulley Runway Table 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 111 220 112 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 5.3 衝突実験結果 客 室 に 埋 め 込 ん だ ロ ー ド セ ル ( 図 4.4) に よ っ て 測 定 し た 各 骨 格 部 材 へ の 入 力 の 合 計 に つ い て の 荷 重 -時 間 曲 線 を , 図 5.3 に 示 す . 前 節 で 述 べ た 通 り ,本 章 に お け る S U V 模 型 と セ ダ ン 模 型 は ,サ イ ド メ ン バ 高 さ 以 外 に つ い ては,車両質量も車両前面構造も全く同じである.しかしながら,両車の 荷 重 -時 間 曲 線 に は 明 ら か な 差 異 が み ら れ る . 衝 突 の 前 半 ,0 - 1 0 0 m s で は ,セ ダ ン の 荷 重 の 増 加 率 は S U V に 比 べ て 高 い . S U V と セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ は オ フ セ ッ ト し て い る の で ,セ ダ ン 側 は S U V の 剛 性 の 高 い 部 位 , 例 え ば サ イ ド メ ン バ 等 , と 衝 突 す る の に 対 し , SUV 側 は セ ダ ン の 剛 性 の 低 い 部 位 ,例 え ば フ ェ ン ダ ー 等 ,と 衝 突 す る .こ の た め , 車両質量も車両前面構造も全く同じであるにも係らず,セダン模型の荷重 の 上 が り 方 は SUV 模 型 に 比 べ て 高 い . SUV 模 型 の 荷 重 は 100ms 付 近 に な ってから急激に増加するが,これは,セダンのエンジンがダッシュパネル に 底 付 き し た た め ,そ の 反 力 を S U V が 受 け る か た ち と な っ た も の と 考 え る . 以上のことから,衝突の前半においては,セダンが一方的に荷重を受ける Force (kN) ことになっているとみなすことができる. SUV SUV 100 Sedan Sedan 80 60 40 20 0 -200 -150 -100 -50 -20 0 50 100 Time (msec) Time (ms) Fig. 5.3 Force Time Curve, SUV to Sedan Collision 150 200 Sedan Model Fig. 5.4 Car-to-Car Crash Test (Photographing by Photron Ltd.) SUV Model 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 113 114 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 高 速 度 カ メ ラ に よ っ て 撮 影 し た SUV 模 型 お よ び セ ダ ン 模 型 両 車 が 衝 突 し て い る 様 子 を 図 5.4 に , SUV 模 型 , セ ダ ン 模 型 そ れ ぞ れ の 客 室 骨 格 部 材 の 荷 重 - 時 間 曲 線 を 図 5 . 5 に 示 す .こ れ ら の 図 か ら ,S U V と セ ダ ン で は 客 室 への入力に対して車体骨格部が全く異なる力の受け方をしていることがわ かる. ま ず , SUV で は , フ ロ ア メ ン バ , サ イ ド シ ル と い っ た 客 室 下 部 構 造 が 受 け持つ荷重配分は大きい.通常の客室構造においては,衝突時の荷重は, 主 と し て サ イ ド メ ン バ 付 け 根 で 受 け 持 た れ て い る . こ の こ と か ら , SUV に ついては,客室構造はこれら下部骨格部材で効率よく力を受けていること が理解できる. 50 Side-Sill 40 Door Beltline-Member Floor-Member Force (kN) 30 20 Floor-Tunnel 10 0 -10 0 50 100 150 200 Roof-Rail -20 Time (ms) ( a) SUV 50 Door Beltline-Member 40 Force (kN) 30 Side-Sill Floor-Member 20 10 0 -10 0 50 100 Roof-Rail 150 Floor-Tunnel -20 Time (ms) (b) Sedan Fig. 5.5 Force Time Curve 200 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 115 一方,セダンでは,ドアベルトライン部が受け持つ荷重配分が他の骨格 部 材 に 比 べ て 大 き い .SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お い て , セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ は S U V の サ イ ド メ ン バ の 下 に も ぐ り 込 む た め ,本 来 の 荷 重 導 入 部 位 と し て想定されている客室下部構造への入力が少なく,その代わりにドアベル ト ラ イ ン 部 が 受 け 持 つ 荷 重 配 分 が 大 き く な る こ と を 図 5.5(b)は 示 し て い る . なお,これらの値は代表的な実験の結果であるが,実際には 5 回の衝突 実 験 を 行 っ て お り , いずれも類似の結果を得ている.その一部を追補2に示した. 5.4 客室入力分布による防護性の評価 5.4.1 客室入力の垂直分布 5 . 2 節 で 述 べ た よ う に ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 考 える上では両車の乗員空間の確保を検討する必要がある.両車の乗員空間 を 確 保 す る た め に 必 要 な 客 室 強 度 は ,S U V と セ ダ ン そ れ ぞ れ の 客 室 に 加 わ る荷重の入力状況を把握するによって,初めて明らかになることから,客 室入力の評価が重要となる. 本章でも,客室入力を評価する方法として,客室に入る荷重の垂直方向 分布およびその荷重中心の推移を示す手法を導入した.なお,第 4 章とは 異なり,衝突現象の進行時間毎での客室(左右方向断面上)に入る荷重の 垂 直 方 向 分 布 ( D C F ( D i a g r a m o f C o mp a r t m e n t Fo r c e ) ) と 客 室 荷 重 中 心 の 変 化 ( C C F ( C e n t r e o f C o m p a r t me n t F o r c e ) ) を 示 す こ と に よ っ て , 客 室 入 力 を 評 価 することとした. 図 5.6 に 衝 突 過 程 に お け る 客 室 入 力 の 垂 直 分 布 図 を 示 す . SUV で は , 衝 突による車体変形が進行するほど,車体下部の受ける荷重が大きくなって いく.荷重中心は全変形過程を通じて車体下部を通っている.衝突直後で ドアベルトライン部にマイナス荷重が発生しているが,これは,セダンと の 衝 突 の 際 に S U V の 車 体 が 前 の め り に な っ た た め( 図 5 . 4 ),ド ア ベ ル ト ラ イン部に引張力が働くのでマイナス荷重が発生すると考える. 116 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 Height (mm) 1500 1000 500 -20 0 20 40 60 80 Force (kN) ( a) SUV Height (mm) 1500 1000 500 -20 0 20 40 60 Force (kN) (b) Sedan Front-End Deformation (ms) 0- 25 50- 75 100-125 25- 50 75-100 Centre of Compartment Force Fig. 5.6 D CF (Diagram of Compartment Force) 80 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 117 一方,セダンでは,衝突直後は車体下部が荷重を受けるが,車体変形が 進行していくほど,ドアベルトライン部の受ける荷重が増大していく.ま た,荷重中心位置は,車体下部からドアベルトライン部への荷重中心へ移 動 し て い る .こ れ は ,セ ダ ン が S U V と の 衝 突 に お い て ,初 期 段 階 で 本 来 の 衝突安全対策がなされた車体下部構造で荷重を受け止めようとするものの, サイドメンバが上下にオフセットしているため,衝突の進行と共にドアベ ルトライン部で荷重を受け止めようとすることを示している. 以 上 の 通 り ,SUV 模 型 と セ ダ ン 模 型 の Car-to-Car 衝 突 よ り 得 ら れ た 客 室 入 力 の 垂 直 分 布 は ,第 2 章 に て 述 べ た S U V 対 セ ダ ン の 衝 突 事 故 統 計 デ ー タ 分析による乗員傷害の特徴や事故例で紹介した車両の損壊の特徴を裏付け る 傾 向 を 示 す も の と な っ た . す な わ ち , 次 の こ と が 言 え る . SUV 客 室 に お いては,客室下部への入力が大きいことから,客室下部に位置する脚部傷 害が多くなる.また,セダン客室においては,ドアベルトライン部への入 力が大きいことから,客室上部に位置する頸部や胸部の傷害が多くなる. し た が っ て ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 し , 乗員傷害を軽減していくためには,客室内における衝突時の入力が大きい 領域を補強しておくことが重要となる. 5.4.2 客室入力の 2 次元等高線表示 衝突時に客室にかかる荷重分布は,センターピラー部での車体断面を等 高線で表示することによっても表現することができる.その分布の変化を 図 5.7 に 示 す . こ れ ら は 図 5.5 に 示 し た ロ ー ド セ ル 荷 重 を 基 に , 数 式 処 理 で 補 間 し て 示 し て い る . 前 節 に 示 し た 客 室 入 力 荷 重 の 分 布 と 同 様 , SUV で は車体下部,セダンではドアベルトライン部で荷重を受けていることが把 握 で き る . 図 5.7 に 示 し た 荷 重 分 布 表 示 に よ っ て , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に おける,それぞれの客室への入力の分布がより一層明らかになった. 118 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 0-25ms 25-50ms 50-75ms 75-100ms 100-125ms (a) SUV 0-25ms 25-50ms 50-75ms 75-100ms 100-125ms (b) Sedan 0 40 (kN) Fig. 5.7 Transition of 2-D Compartment Force Distribution 第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討 5.5 119 第 5 章の結論 ( 1 ) 第 4 章 で の 実 験 は ,衝 突 形 態 を 理 想 化 し た 条 件 で の 実 験 で あ り ,衝 突 相 手 に 車 体 が 食 い 込 む 現 象 を 省 い て 検 討 し た .第 5 章 で は ,衝 突 相 手 へ の 食い込みも含めて同じ結論が得られるかどうかを検討した.その結果, SUV で は 衝 突 に よ る 車 体 変 形 が 進 行 す る ほ ど , 車 体 下 部 の 受 け る 荷 重 が 増 加 し ,一 方 ,セ ダ ン で は 車 体 変 形 が 進 行 し て い く ほ ど ,ド ア ベ ル ト ライン部の受ける荷重が増大していくことを確認した. ( 2 ) ま た ,S U V ,セ ダ ン 両 車 の 荷 重 分 布 を 比 較 す る こ と に よ り , こ れ が 衝 突 時 に お け る 乗 員 傷 害 の 特 徴 に 影 響 を 与 え て い る こ と を 確 認 し た .す な わ ち , SUV 客 室 で は , 客 室 下 部 へ の 入 力 が 大 き い の で 脚 部 傷 害 が 多 く な り,セダン客室では,ドアベルトライン部への入力が大きいことから, 頸部や胸部の傷害が多くなると考えられる. (3) し た が っ て , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 し ,乗 員 傷 害 を 軽 減 し て い く た め に は ,そ れ ぞ れ の 客 室 内 に お け る 衝 突時の入力が大きい領域の補強が重要である. 120 第6章.結言 第 6章 結 6.1 言 本研究の結論 本 研 究 で は , 第 1 段 階 で I TA R D A の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 利 用 し た 統 計 的 な 分 析 を 行 う こ と に よ っ て SUV と セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 時 に お け る 乗員傷害の実態を明らかにし,第 2 段階で精密な模型を用いた衝突試験に より客室内部に加わる荷重の分布を明らかにした.これら 2 段階の検討に より,次の結論を得た. 6.1.1 セ ダ ン と SUV の 前 面 対 前 面 衝 突 の 事 故 統 計 分 析 に つ い て (1)車 両 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と セ ダ ン の 衝 突 ・ セ ダ ン と S U V の 前 面 対 前 面 衝 突 で は ,車 両 重 量 に 大 き な 差 が な い 場 合 で あ っ て も ,SUV 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が セ ダ ン 運 転 者 よ り も 低 い . そ し て , SUV 運 転 者 と セ ダ ン 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は 衝 突 速 度 の 増 大 と 共 に 拡 が っ て い く . ま た , SUV, セ ダ ン 共 に 衝 突 相手によって死亡もしくは重傷となった運転者の損傷主部位の構成 が異なる. ・ 上 記 の 特 徴 は ,SUV の サ イ ド メ ン バ と セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ の 高 さ が異なるので,両車のサイドメンバが上下方向にオフセットした状 120 第6章.結言 121 態で衝突するためと考えられる.このため,セダンはサイドメンバ 取付け部を衝突の力の受け手として有効に利用することができず, 客室変形が増大する傾向にあり,これに伴って運転者の死亡重傷者 率も高くなると推測する. (2)重 量 の 異 な る SUV と セ ダ ン の 衝 突 ・ 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 で も , 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 で も , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の う ち,頭部や胸部といった上半身の傷害の構成率は,セダン同士の衝 突での上半身の傷害の構成率に比べると多い. ・ 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 に お け る セ ダ ン 運 転 者 の 上 半 身 の 傷 害 は ,重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る セ ダ ン 運 転 者 上半身の傷害の構成率よりも多くなる. ・ 重 い S U V と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 ,セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 は ,頭 部 や 胸 部 と い っ た 上 半 身 の 傷 害 だ け で な く ,脚 部 傷 害 の 構 成 率 も 多 く , 傷害が全身におよぶ. ・ 以 上 の こ と か ら ,衝 突 相 手 と な る S U V が 自 車 よ り も 軽 け れ ば 上 半 身 の傷害の構成率が多く,反対に自車よりも重くなるほど,脚部傷害 も 多 く な る 傾 向 が あ る と 言 え る . そ の 理 由 は , SUV と の 前 部 サ イ ド メンバの上下のすれ違いにより,セダンは弱点のある車両上部に変 形が生じ易くなるためと推測する. 6.1.2 模型による衝突試験について (1) セ ダ ン と SUV の 衝 突 コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る た め に は , フ ロ ン ト エ ン ド か ら 客 室 へ の 入 力 経 路 が ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 の 場 合 と は 異 な っていることを把握しておく必要がある. (2) 樹 脂 製 1/10 相 似 精 密 模 型 の 客 室 部 に 設 置 し た ロ ー ド セ ル に よ っ て 客 室 122 第6章.結言 入 力 を 測 定 し ,得 ら れ た デ ー タ か ら 客 室( 左 右 方 向 断 面 上 )入 力 の 垂 直 方 向 分 布 図 ,お よ び 2 次 元 等 高 線 分 布 図 を 作 成 し た .こ れ ら の 表 現 法 を 用いることは,客室入力を明確にする上で有用である. ( 3 ) 上 述 の 表 現 法 を 用 い て 客 室 入 力 を 検 討 し た 結 果 ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 で は , 荷 重 を 客 室 下 部 で 受 け て い る が , SUV と の 衝 突 で は , 荷 重 を 主 と し て ドアベルトライン部で受け持つことを明らかにした. (4) な お , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 し て い く た め に は ,両 車 の 客 室 入 力 を 明 ら か に し ,乗 員 空 間 を 確 保 す る の に 必 要 な 客 室 強 度 を 求 め る こ と が 重 要 で あ る こ と か ら , SUV お よ び セ ダ ンそれぞれの 1/10 相 似 精 密 模 型 を 製 作 し , こ れ ら を 衝 突 さ せ る C a r - t o - C a r 衝 突 試 験 を 行 い ,そ れ ぞ れ の 客 室 へ の 荷 重 の 分 布 の 計 測 を 行 った. (5) セ ダ ン と SUV の 衝 突 に お い て , SUV 客 室 で は , 客 室 下 部 へ の 入 力 が 大 き い の で 脚 部 傷 害 が 多 く な り ,セ ダ ン 客 室 で は ,ド ア ベ ル ト ラ イ ン 部 へ の入力が大きいことから,頸部や胸部の傷害が多くなる.したがって, SUV と セ ダ ン の 衝 突 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 し , 乗 員 傷 害 を 軽 減 し て い く た め に は ,客 室 内 に お け る 衝 突 時 の 入 力 が 大 き い 領 域 の 補 強 が重要である. 6.2 本研究の今後の展開 本 研 究 に お け る 模 型 に よ る 衝 突 試 験 は ,車 両 重 量 が 同 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 に 着 目 し た も の で あ っ た が ,今 後 は 重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 を 模 し た Car-to -Car 衝 突 試 験 を 実 施 し , SUV, セ ダ ン 両 車 の 客 室 部 に 加わる荷重分布の変化を明らかにすることが必要と考えている.これによ り ,重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー に つ いても,検討を進め,現実の交通における衝突を再現し,車体の改善を講 じていくことが重要な課題である. 第6章.結言 123 なお,本研究の成果を設計に反映するにあたっては,ドアおよびルーフ レールに対する巨大な負荷を考慮していくべきである.このことは従来の 車体設計の考え方を根本から変更する必要がある.例えば,ドアのインナ ー に 補 強 を 入 れ る ,あ る い は A ピ ラ ー を よ り 傾 斜 さ せ る 等 と い っ た 検 討 を 行うことが重要と考える. また,本研究で明らかになった各部位への荷重分布を基に,新たな衝突 安全対策,例えば,側面衝突や前部衝突におけるエネルギー吸収に関して 検討していくことも重要であろう.更に,車両フロント部分の荷重分布に ついても今後の課題である. 124 第6章.結言 謝 辞 本研究は,筆者が慶應義塾大学大学院理工学研究科に在籍中,本塾理工 学部 高橋邦弘教授のもとで行ったものであり,同教授には懇切丁寧なる 御指導,御鞭撻,御助言を賜りました.ここに心より感謝の意を表すと共 に,厚く御礼申し上げます. また,本論文を作成するにあたり,本塾理工学部 理工学部 大宮正毅専任講師,本塾理工学部 に武蔵工業大学理工学部 志澤一之教授,本塾 小檜山雅之専任講師ならび 森澤正旭名誉教授には,御査読いただき,大変 有益な御討論,御助言を賜りました.ここに深く感謝の意を表し,厚く御 礼申し上げます. 三菱自動車工業株式会社 桜井俊明氏,景山恒朗氏,藤井修氏,宇佐美 明氏,小笠原淳氏,上野克己氏,五井美博氏,宇野春美氏には,本研究遂 行の機会および貴重な御助言をいただき,深く感謝致します. 交通事故総合分析センター 佐々木滋氏,辺見竹男氏,村松吉彦氏,金 丸和行氏,山本哲也氏,海老原正義氏,山崎幸浩氏,松井恵子氏,山本俊 雄氏および森健二氏には,本研究のきっかけとなる機会と多大なご支援を いただき,ここに深く感謝の意を表します. 交通事故予防センター 久保田邦夫理事長には,本研究を遂行する上で の深い理解と助力をいただき,深く感謝致します. また,本論文を作成するにあたり,ご協力いただいた当時高橋研究室の 櫻井俊彰氏,速水晴規氏,河本太輔氏,中川大輔氏,佐藤竜也氏,藤村明 彦氏,伊藤沙耶佳氏,桾澤優介氏,菅澤敏明氏,前田健人氏をはじめその 他学生諸君に御礼申し上げます. 筆者 125 参考文献 参 考 文 125 献 126 参考文献 (1) 齋藤孟,山中旭,衝突安全性能評価,自動車の基本計画とデザイン, 東 京 , 山 海 堂 (2002), pp.205-208. (2) 保 有 す る 乗 用 車 の 傾 向 ,乗 用 車 市 場 の 変 化 と 保 有 に 関 す る 意 識( 平 成 17 年 度 乗 用 車 市 場 動 向 調 査 よ り ), J A M A レ ポ ー ト , N o . 1 0 0 , 日 本 自 動 車 工 業 会 (2006), pp.3-4. (3) G a b l e r, H . C . , H o l l o w e l l , W. T. , N H T S A ' s Ve h i c l e A g g r e s s i v i t y a n d Compatibility Research Program, Sixteenth International Conference on E n h a n c e d S a f e t y o f Ve h i c l e s , P a p e r N o . 9 8 - S 3 - O - 0 1 , Wi n d s o r, C a n a d a . (1998). (4) H o l l o w e l l , W. T. a n d G a b l e r, H . C , N H T S A ' s Ve h i c l e A g g r e s s i v i t y a n d Compatibility Research Program, Proceedings of the Fifteenth I n t e r n a t i o n a l C o n f e r e n c e o n E n h a n c e d S a f e t y o f Ve h i c l e s , P a p e r N o . 96-S4-O-01. Melbourne, Australia. (1996). (5) G a b l e r, H . C , H o l l o w e l l , W. 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( 1 0 3 ) M i z u n o , K . , A r a i , Y. , N o t s u , M . , F u l l - Wi d t h Te s t a n d O v e r l o a d Te s t t o E v a l u a t e C o m p a t i b i l i t y, S o c i e t y o f A u t o m o t i v e E n g i n e e r s , P a p e r N o . 2005-01-1373 (2005) ( 1 0 4 ) F a e r b e r, E . , E E V C A p p r o a c h t o D e v e l o p Te s t P r o c e d u r e ( s ) f o r t h e Improvement of Crash Compatibility Between Passenger Cars, European E n h a n c e d Ve h i c l e - s a f e t y C o m m i t t e e , E E V C W G 1 5 , E S V 2 0 0 7 , P a p e r N o . 07-331 (2007). ( 1 0 5 ) F a e r b e r, E . , E E V C R e s e a r c h i n t h e F i e l d o f I m p r o v e m e n t o f C r a s h Compatibility Between Passenger Cars, European Enhanced Ve h i c l e - s a f e t y C o m m i t t e e , E E V C W G 1 5 , E S V 2 0 0 1 , P a p e r N o . 4 4 4 ( 2 0 0 1 ) . ( 1 0 6 ) J e r i n s k y, M, Hollowell, W. 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(112) 前 面 衝 突 に 関 す る 分 析 , 交 通 事 故 例 調 査 ・ 分 析 報 告 書 ( 平 成 13 年 度 報 告 書 ), 東 京 , 交 通 事 故 総 合 分 析 セ ン タ ー ( 2 0 0 2 ) , p p . 1 5 7 - 2 0 4 . 138 追補1 追補1 従来のコンパティビリティー対策 および評価法について A1.1 荷重伝達部材の取り付けによる対策 本追補では,従来から提案されているコンパティビリティーへの対策お よび評価法について紹介する. 従 来 か ら 提 案 さ れ て い る 対 策 に ,S U V の サ イ ド メ ン バ に 荷 重 伝 達 が で き る部材を取り付けることによって,セダンへの攻撃性を緩和しようとする S E A S( S e c o n d a r y E n e r g y A b s o r b i n g S t r u c t u r e )と い う も の が あ る .S E A S は , SUV の サ イ ド メ ン バ 下 部 に セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ に 荷 重 を 伝 達 す る た め の 部 材 を 取 り 付 け る と い う 対 策 ( 図 A1.1) で あ り , 衝 突 時 に お け る SUV 側,セダン側それぞれのサイドメンバとのオーバーラップ量をコンパティ ビリティー性能の評価に使おうとする動きもある. S U V ’s S i d e - M e m b e r S e d a n ’s S i d e - M e m b e r SEAS Fig.A1.1 Structures for Compatibility SUV to Sedan Collision, SEAS 138 139 追補1 A1.2 AHOF に つ い て SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー 性 能 の 評 価 に つ い ては,車両前面部をバリアに衝突させ,多分割ロードセルにて測定したバ リア荷重分布によって様々な指標を導出する評価法が提案されている.本 節 で は ,こ の よ う な 評 価 法 の う ち 代 表 的 な A H O F( Av e r a g e H e i g h t o f F o r c e ) を 紹 介 す る ( 図 A 1 . 2 ). AHOF は , 高 さ 方 向 の 構 造 的 相 互 作 用 性 ( Structural Interaction) を 定 量 的に評価する指標として提案されているもののひとつであり,フルラップ バ リ ア 前 面 衝 突 試 験 を 行 い ,多 分 割 ロ ー ド セ ル で 測 定 し た バ リ ア 荷 重 F i ( t ) お よ び ロ ー ド セ ル の 地 上 高 Hi か ら 式 (A1.1)お よ び 式 (A1.2)に よ っ て 導 出 さ れる. tt ∫ ò F (t ) F (t )dt t ∫ ò F (t )dt FAH = centre 0 (A1.1) t 00 Fcentre (t ) = å H F (t ) å F (t ) i i (A1.2) i F AH : AHOF F centre : COF F i : Force of Load Cell(i) H i : Height of Load Cell(i) i: Number of Load Cell (a) Crush with Load Cell Barrier (b) Load Cell Force Distribution Fig.A2.2 C o n c e p t o f A H O F 140 追補1 A1.3 AHOF の 問 題 点 車 両 前 部 の 荷 重 分 布 か ら コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー 性 を 評 価 す る AHOF の よ うな方法については,次のような問題点が考えられる. ・エンジン前スペースによって,エンジン類の慣性力の影響が異なる. ・ ま た ,車 両 前 面 ま で 伸 び て き て い な い 部 材 の 効 果 や 影 響 を 適 正 に 評 価 し づ ら い ( 図 A 1 . 3 ). Fig.A1.3 Issue from Load Distribution Measurement of Front-End Load す な わ ち , AHOF の よ う に , 車 両 の 前 面 部 分 の 荷 重 分 布 か ら コ ン パ テ ィ ビリティー性を評価する方法だけでは,必ずしも正確な評価が行えないケ ースが発生する. これに対して,本研究のように,客室への荷重分布からコンパティビリ ティー性を評価する方法では,上述のような影響は受けにくい.また,乗 員空間を確保するために必要な強度も明らかにし易いといった長所がある. し た が っ て ,今 後 は 本 研 究 の 手 法 を 実 車 衝 突 や F E M に よ る 解 析 等 へ も 適 用 できるようにしていくことが大切と考える. 141 追補2 追補2 衝突試験の結果について A2.1 バ リ ア 衝 突 試 験 の 荷 重 -変 位 曲 線 に つ い て 第 4 章で述べた通り,本研究においては,平面バリア衝突試験を 7 回, 突 起 バ リ ア 衝 突 試 験 を 6 回 ,計 1 3 回 行 っ て お り ,い ず れ も 類 似 の 結 果 を 得 ている.ここでは,平面バリア,突起バリア各 2 回の試験結果について紹 介する. 図 A2 .1 に 試 験 番 号 0 412 10 の 平 面 バ リ ア 試 験 と 試 験 番 号 0 50112 の 平 面 バ リ ア 試 験 に お け る 各 骨 格 部 材 荷 重 の 合 計 値 の 荷 重 - 変 位 曲 線 を ,図 A 2 . 2 に 試 験 番 号 04 12 21 の 突 起 バ リ ア 試 験 と 試 験 番 号 05 0116 の 突 起 バ リ ア 試 験 に お け る 各 骨 格 部 材 荷 重 の 合 計 値 の 荷 重 -変 位 曲 線 を 示 す . そ れ ぞ れ 類 似 の 結 果 が 得 られていることがわかる. 160 120 140 100 120 80 80 Load (kN) Load (kN) 100 60 40 20 60 40 20 0 -20 0 200 400 600 800 1000 0 1200 0 -40 200 400 600 800 1000 -20 Displacement (mm) Displacement (mm) (a) Test No. 0 4 1 2 1 0 ( b ) Te s t N o . 0 5 0 11 2 Fig.A2.1 Flat Barrier Tests 141 1200 142 追補2 160 120 140 100 120 80 80 Load (kN) Load (kN) 100 60 40 20 60 40 20 0 -20 0 200 400 600 800 1000 0 1200 0 200 400 600 800 1000 1200 -20 -40 Displacement (mm) Displacement (mm) (a) Test No. 0 4 1 2 2 1 ( b ) Te s t N o . 0 5 0 11 6 Fig.A2.2 SUV Barrier Tests 図 A 2. 3 に 試 験 番 号 0 412 1 0 の 平 面 バ リ ア 試 験 と 試 験 番 号 0 50 112 の 平 面 バ リア試験における各骨格部材毎の荷重,変位曲線を,図 A2.4 に試験番号 0 4 1 2 2 1 の 突 起 バ リ ア 試 験 と 試 験 番 号 0 50116 の 突 起 バ リ ア 試 験 に お け る 各 骨 格 部 材 毎 の 荷 重 - 変 位 曲 線 を 示 す .各 部 材 毎 に つ い て も ,そ れ ぞ れ 類 似 の 結 果 が 得 ら 50 50 40 40 30 30 Load (kN) Load (kN) れている. 20 10 20 10 0 0 0 200 400 600 800 1000 -10 1200 0 200 400 600 800 1000 -10 Displacement (mm) Floor-Member-1 Side-Sill-1 Door Beltline-Member-1 Roof-Rail-1 Floor-Tunnel Displacement (mm) Floor-Member-2 Side-Sill-2 Door Beltline-Member-2 Roof-Rail-2 (a) Test No. 0 4 1 2 1 0 Floor-Member-1 Side-Sill-1 Door Beltline-Member-1 Roof-Rail-1 Floor-Tunnel Floor-Member-2 Side-Sill-2 Door Beltline-Member-2 Roof-Rail-2 ( b ) Te s t N o . 0 5 0 11 2 Fig.A2.3 Flat Barrier Tests 1200 143 50 50 40 40 30 30 Load (kN) Load (kN) 追補2 20 20 10 10 0 0 0 200 400 600 800 1000 0 1200 -10 200 400 600 800 1000 1200 -10 Displacement (mm) Floor-Member-1 Side-Sill-1 Door Beltline-Member-1 Roof-Rail-1 Floor-Tunnel Displacement (mm) Floor-Member-2 Side-Sill-2 Door Beltline-Member-2 Roof-Rail-2 Floor-Member-1 Side-Sill-1 Door Beltline-Member-1 Roof-Rail-1 Floor-Tunnel (a) Test No. 0 4 1 2 2 1 Floor-Member-2 Side-Sill-2 Door Beltline-Member-2 Roof-Rail-2 ( b ) Te s t N o . 0 5 0 11 6 Fig.A2.4 SUV Barrier Tests A2.2 セダンとSUV のCar-to-Car衝突試験の荷重-時間曲線について 本 研 究 に お い て は , Car-to-Car 衝 突 試 験 の 結 果 に つ い て も , 第 5 章 で 述 べた通り,5 回行っており,いずれも類似の結果を得ている.ここでは, 100 100 80 80 60 Load (kN) Load (kN) SUV, セ ダ ン 各 2 回 の 試 験 結 果 に つ い て 紹 介 す る . 40 20 60 40 20 0 0 0 50 100 150 200 0 50 Time (ms) 100 150 Time (ms) (a) Test No. 0 7 0 7 2 6 ( b ) Te s t N o . 0 7 1 2 1 8 Fig.A2.5 Car-to-Car Tests (Sedan) 200 144 100 100 80 80 60 Load (kN) Load (kN) 追補2 40 20 60 40 20 0 0 50 100 150 0 200 0 50 Time (ms) 100 150 200 Time (ms) (a) Test No. 0 7 0 7 2 6 ( b ) Te s t N o . 0 7 1 2 1 8 Fig.A2.6 Car-to-Car Tests (SUV) 図 A2.5 に 試 験 番 号 070726 の Car-to-Car 衝 突 試 験 と 試 験 番 号 071218 の C a r - t o - c a r 衝 突 試 験 に お け る セ ダ ン の 各 骨 格 部 材 荷 重 の 合 計 値 の 荷 重 -時 間 曲 線を, 図 A2.6 に 試 験 番 号 070726 の Car-to-Car 衝 突 試 験 と 試 験 番 号 071218 の C a r - t o - C a r 衝 突 試 験 に お け る S U V の 各 骨 格 部 材 荷 重 の 合 計 値 の 荷 重 -時 間 曲線を示す.Car-to-Car 衝 突 試 験 に つ い て も , そ れぞれ類似の結果が得られて 50 50 40 40 30 30 Load (kN) Load (kN) いることがわかる. 20 10 0 20 10 0 0 50 100 150 -10 200 0 50 100 150 -10 -20 -20 Time (ms) Floor-Member Door Beltline-Member Floor-Tunnnel Time (ms) Side-Sill Roof-Rail (a) Test No. 0 7 0 7 2 6 Floor-Member Door Beltline-Member Floor-Tunnnel Side-Sill Roof-Rail ( b ) Te s t N o . 0 7 1 2 1 8 Fig.A2.7 Car-to-Car Tests (Sedan) 200 145 50 50 40 40 30 30 Load (kN) Load (kN) 追補2 20 10 20 10 0 0 0 50 100 150 -10 0 200 50 100 150 200 -10 -20 -20 Time (ms) Floor-Member Door Beltline-Member Floor-Tunnnel Time (ms) Side-Sill Roof-Rail (a) Test No. 0 7 0 7 2 6 Floor-Member Door Beltline-Member Floor-Tunnnel Side-Sill Roof-Rail ( b ) Te s t N o . 0 7 1 2 1 8 Fig.A2.8 Car-to-Car Tests (SUV) 図 A2.7 に 試 験 番 号 070726 の Car-to-Car 衝 突 試 験 と 試 験 番 号 071218 の C a r - t o - C a r 衝 突 試験におけるセダンの各骨格部材毎の荷重-時 間 曲線を,図 S2.8 に試 験 番 号 070726 の Car-to-Car 衝 突 試 験 と 試 験 番 号 071218 の Car-to-Car 衝 突 試験における SUV の各 骨 格 部 材 毎 の 荷 重 -時 間 曲 線 を 示 す . 各 部 材 毎 に つ い て も,それぞれ類似の結果が得られている. 146 追補3 追補3 国内における交通事故の統計分析 についての補足 A3.1 車両の衝突部位について 国 内 の 交 通 事 故 の う ち , 警 察 庁 の 交 通 事 故 統 計 デ ー タ や I TA R D A の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ に 蓄 え ら れ る 分 に つ い て は ,A 1 . 1 節 で 述 べ た 交 通 事 故 統 計 原票の記載定義に則ったかたちで蓄えられる. 車 両 の 衝 突 部 位 に つ い て は , 図 A3.1 に 示 さ れ た 番 号 で 蓄 え ら れ て い る . 例えば,第 1 当事者(加害側)の車両の右前部が第 2 当事者(被害側)の 車両の右後部に衝突した事故では,第 1 当事車両の衝突部位が⑤で第 2 当 事 車 両 の 衝 突 部 位 が ⑥ の 衝 突 事 故 と 記 録 さ れ る ( 図 A 3 . 2 ). こ れ は , 同 じ 事故類型に分類される衝突であっても,衝突車両と被衝突車両の衝突部位 の 組 合 せ が 複 数 存 在 す る た め で あ る .上 述 の 側 面 衝 突 に つ い て も ,図 A3.3 ⑧ ① ④ ⑤ ② ⑦ ③ ⑥ Fig.A3.1 Crash Region Number in the Traffic Accident Statistics Vote by Japanese National Police Agency 146 147 追補3 Fig.A3.2 Collision Case of Crash Region Number ⑥ and ⑤ Fig.A3.3 Variation of Side Collision Fig.A3.4 Variation of Front to Front Collision 148 追補3 に示したように 6 種類の組合せが存在する.同様にして,前面対前面衝突 に つ い て も , 3 種 類 の 組 合 せ が 存 在 す る ( 図 A 3 . 4 ). な お , 実 際 の 衝 突 で は オ フ セ ッ ト 衝 突 が 多 い と 報 告 さ れ て い る こ と か ら (112), 本 研 究 で は , 衝 突 の 現 状 を 把 握 す る 目 的 で ,図 A 3 . 4 に 示 し た 3 種 類 す べ て を 分 析 の 対 象 と し た. Head Face Neck Arms Chest Back Abdomen Pelvis Legs Fig.A3.5 Definition of Main Injury Region A3.2 自動車乗員の損傷主部位について 国内の交通事故統計における負傷者の傷害部位は,最も傷害の程度が重 い部位(死亡の場合は致命傷となった部位)が,損傷主部位として記録さ 149 追補3 れ る よ う に な っ て い る .各 損 傷 主 部 位 の 定 義 に つ い て は ,図 A 3 . 5 に 示 し た 範囲が基準とされる.なお,死亡者について,損傷箇所が多数ある上に, 致命傷も多数あって損傷主部位を特定できない場合は,全損という用語で 記録される. A3.3 自動車の各部位の名称について 本研究における模型車両を設計する際に参考にした標準的なセダンの車 体 の 各 部 位 毎 に つ い て の 名 称 を 図 A3.6 か ら 図 A3.8 に 示 す . 標 準 的 な セ ダ ンは,前面衝突事故の際に乗員の安全を確保するため,車体の前方から順 番に潰すことで衝突エネルギーを吸収し,乗員空間の変形を最小限に抑え るように設計されている.すなわち,衝突エネルギーはその多くをフロン トサイドメンバの塑性変形により吸収され,エンジンルームが完全に潰れ た後は,残りの衝突エネルギーをダッシュパネルの変形とこれを囲む主要 骨格部材とこれを支えるフロントピラー,トルクボックス,サイドシル, フロアトンネルへ分散,エンジンの乗員空間への侵入が防御されるように 設計されている. Front Pillar Side Roof-Rail Center Pillar Front Tire House 2nd Cross-Member Side-Sill Floor Panel Front Pillar Lower 1st Cross-Member Torque Box Hood Ledge Reinforcement Side-Member Fig.A3.6 Members and Structures (Over View) 150 追補3 Side Roof-Rail Dash Panel Hood Ledge Reinforcement Front Pillar 2nd Cross-Member 3rd Cross-Member Front Tire House 1st Cross-Member Side-Member Side sill Front Pillar Lower Floor-Member Fig.A3.7 Members and Structures (Side View) Floor Panel Front Tire House Torque Box 3rd Cross-Member Dash Panel Side-Member Floor-Member Sill Inner 1st Cross-Member Hood Ledge Reinforcement 2nd Cross-Member Fig.A3.8 Members and Structures (Under View) Side-Sill 151 追補4 追補4 大型乗用車同士の(SUV-L と Sdn-L)の衝突事故の分析 A4.1 分析対象について 第 2 章 で は , 車 両 重 量 が 同 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 で あ る S U V- M と Sdn-M の 衝 突 の 事 故 統 計 分 析 に つ い て 述 べ た . な お , 車 両 重 量 が 同 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 と し て は , S U V- L と S d n - L の 衝 突 も 存 在 す る . 本 付 録 Fatal or Serious Injury Rate R (%) で は , S U V- L と S d n - L の 衝 突 の 事 故 統 計 分 析 に つ い て 述 べ る . 20 Sdn-L SUV-L 15 10 5 0 0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 Relative Velocity ΔV (km/h) Fig.A4.1 Fatal or Serious Injury rate R and Relative Velocity Δ V, SUV-L to Sdn–L Collision 151 152 追補4 A4.2 衝突速度と死亡重傷者率の関係 図 A 4 . 1 に S U V- L と S d n - L の 衝 突 に お け る 衝 突 速 度 と 死 亡 重 傷 者 率 の 関 係 を 示 す . S d n - L の 方 が S U V- L に 比 べ 死 亡 重 傷 者 率 が 高 く , 第 2 章 で 述 べ た 車 両 重 量 が 同 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 で あ る S U V- M と S d n - M の 衝 突 の 場 合 と 同 様 に , 相 対 速 度 Δ V が 高 く な る 程 , S U V- L 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と S d n - L 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は 開 い て い く .な お ,S U V- L と S d n - L の 衝 突 に お け る 死 亡 重 傷 者 数 は , S U V- L 運 転 者 が 3 4 人 , S d n - L 運 転 者 が 65 人 . A4.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成 死 亡 ま た は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構 成 に つ い て , 1995 年 か ら 1 9 9 9 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 に 分 析 を 行 っ た .S U V- L と S d n - L の 衝 突 に お け る Sdn-L の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 65 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 A4.2 に , S U V- L の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 3 4 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 A 4 . 3 に 示 す. 30 25 20 15 10 5 Fig.A4.2 Injuries of Sdn-L Drivers (SUV-L to Sdn-L) Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face 0 Head Injuries of Drivers (%) 35 153 追補4 Injuries of Drivers (%) 35 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig.A4.3 Injuries of SUV-L Drivers (SUV-L to Sdn-L) Injuries of Drivers (%) 35 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig. A4.4 Injuries of Sdn-L Drivers (Sdn-L to Sdn-L) 頭 部 お よ び 脚 部 損 傷 の 構 成 率 に 関 し て は , Sdn-L 運 転 者 ( 図 A4.2) の 方 が , S U V- L の 運 転 者 ( 図 A 4 . 3 ) よ り 高 い . 反 対 に S U V- L 運 転 者 は 頸 部 お よび胸部,腕部損傷の構成率が高い. 154 追補4 Injuries of Drivers (%) 35 30 25 20 15 10 5 Legs Arms Pelvis Back Abdomen Chest Neck Face Head 0 Fig. A4.5 Injuries of SUV-L Drivers (SUV-L to SUV-L) 比 較 の た め Sdn-L 同 士 の 衝 突 に よ る 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 186 人 ) の 傷 害 部 位 別 構 成 を 図 A 4 . 4 に , S U V- L 同 士 の 衝 突 に よ る 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 2 0 人 ) の 傷 害 部 位 別 構 成 を 図 A 4 . 5 に 示 す . S U V- L と 衝 突 し た S d n - L 運 転 者( 図 A4.2)は Sdn-L 同 士 で の 衝 突( 図 A4.4)に 比 べ 頭 部 あ る い は 脚 部 損傷の構成率が多い.なお,頭部損傷が増えたのは,第 2 章でも述べたよ う な サ イ ド メ ン バ の 上 下 方 向 の オ フ セ ッ ト ( 図 2.13) の た め と 考 え る が , S U V- L , S d n - L 共 に 重 量 が 重 い こ と か ら , 衝 突 に お け る 客 室 変 形 が S U V- M と Sdn-M の 衝 突 に 比 し て 大 き く な る た め 脚 部 の 損 傷 も 増 え た の で は な い か と 推 測 す る . ま た , S d n - L と 衝 突 し た S U V- L 運 転 者 ( 図 A 4 . 3 ) は S U V- L 同 士 で の 衝 突( 図 A4.5) に 比 べ 脚 部 損 傷 の 構 成 率 が 少 な い が , こ れ に つ い て も , S U V- L に と っ て は , S d n - L と の 衝 突 の 場 合 よ り S U V- L 同 士 で の 衝 突 の方が客室変形が大きくなるためと推測する. 155 追補5 追補5 交通事故統計の分析結果の有意性について A5.1 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と セ ダ ン の 衝 突 ( 1 ) S U V- M と S d n - M 衝 突 に つ い て ・ 表 A 5 . 1 に S U V- M と S d n - M の 衝 突 と S d n - M 同 士 の 衝 突 で の S d n - M 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 1 に お い て ,頚 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S U V- M と の 衝 突 に 比 べ S d n - M 同 士 の 衝 突 の 方 が ,有 意 に 小 さ い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ). ・ 表 A 5 . 2 に S U V- M と S d n - M の 衝 突 と S U V- M 同 士 の 衝 突 で の S U V- M 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 2 に お い て ,有 意 と 認 め ら れ る も の は な い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ). ( 2 ) S U V- L と S d n - L の 衝 突 に つ い て ・ 表 A 5 . 3 に S U V- L と S d n - L の 衝 突 と S d n - L 同 士 の 衝 突 で の S d n - L 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 3 に お い て ,顔 部 傷 害 の 構 成 率 は , S U V- L と の 衝 突 に 比 べ S d n - L 同 士 の 衝 突 の 方 が , 有 意 に 大 き い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ). ・ 表 A 5 . 4 に S U V- L と S d n - L の 衝 突 と S U V- L 同 士 の 衝 突 で の S U V- L 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 4 に お い て , 有 意 と 認 め ら れ る も の は な い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ). 155 156 追補5 Ta b l e A 5 . 1 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - M D r i v e r s ) (1) Number of Fatal or Serious (Total) (2) Number of Fatal or Serious for Injured Region (3) (4) (5) n1 =(2)/(1) ^ p := åX i =1 1i + å X 2i i =1 n1 + n2 (6) (*) n2 ^ ^ p1- p 2 z := (7) ^ æ^ ö ç p1- p 2 ÷ è ø ^æ ^ öæ 1 1 ç ÷ç p ç 1 - p ÷ç + ç ÷è n1 n2 è ø z (0.05) ö ÷÷ ø a := f (z ) =ò ¥ z x2 1 -2 e 2p Head Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-M to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 81 x 2 : 112 9 0.14 0.11 0.14 0.03 0.69 1.64 0.25 50 5 0.06 0.06 0.06 0.00 0.01 1.64 0.50 133 20 0.16 0.25 0.17 -0.08 -1.87 1.64 0.03 150 17 0.19 0.21 0.19 -0.02 -0.53 1.64 0.30 26 3 0.03 0.04 0.03 0.00 -0.23 1.64 0.41 7 1 0.01 0.01 0.01 0.00 -0.33 1.64 0.37 32 1 0.04 0.01 0.04 0.03 1.24 1.64 0.11 86 7 0.11 0.09 0.10 0.02 0.56 1.64 0.29 207 18 0.26 0.22 0.25 0.03 0.68 1.64 0.25 Face Neck Chest Abdomen Back Pelvis Arms Legs *: ^p ^ 1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2 157 追補5 Ta b l e A 5 . 2 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S U V- M D r i v e r s ) (1) Number of Fatal or Serious (Total) (2) Number of Fatal or Serious for Injured Region (3) (4) (5) n1 =(2)/(1) ^ p := åX i =1 1i + å X 2i i =1 n1 + n2 (6) (*) n2 ^ ^ p1- p 2 z := (7) ^ ö æ^ ç p1- p 2 ÷ ø è ^æ ^ öæ 1 1 ç ÷ç p ç 1 - p ÷ç + ç ÷è n1 n2 è ø z (0.05) ö ÷÷ ø a := f ( z ) ¥ 1 z 2p =ò e - x2 2 Head SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : SUV-M to SUV-M n 1 : SUV-M to Sdn-M n 2 : 13 x 1 : 57 x 2 : 0 4 0.00 0.07 0.06 -0.07 -0.98 1.64 0.16 0 3 0.00 0.05 0.04 -0.05 -0.85 1.64 0.20 3 13 0.23 0.23 0.23 0.00 0.02 1.64 0.49 3 9 0.23 0.16 0.17 0.07 0.63 1.64 0.26 0 2 0.00 0.04 0.03 -0.04 -0.69 1.64 0.25 1 2 0.08 0.04 0.04 0.04 0.67 1.64 0.25 1 1 0.08 0.02 0.03 0.06 1.16 1.64 0.12 2 4 0.15 0.07 0.09 0.08 0.97 1.64 0.17 3 18 0.23 0.32 0.30 -0.09 -0.60 1.64 0.27 Face Neck Chest Abdomen Back Pelvis Arms Legs *: ^p ^ 1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2 158 追補5 Ta b l e A 5 . 3 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - L D r i v e r s ) (1) Number of Fatal or Serious (Total) (2) Number of Fatal or Serious for Injured Region (3) (4) (5) n1 =(2)/(1) ^ p := åX i =1 1i + å X 2i i =1 n1 + n2 (6) (*) n2 ^ ^ p1- p 2 z := (7) ^ ö æ^ ç p1- p 2 ÷ ø è ^æ ^ öæ 1 1 ç ÷ç p ç 1 - p ÷ç + ç ÷è n1 n2 è ø z (0.05) ö ÷÷ ø a := f ( z ) ¥ 1 z 2p =ò e - x2 2 Head Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-L to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 65 x 2 : 20 10 0.11 0.15 0.12 -0.05 -0.99 1.64 0.16 13 1 0.07 0.02 0.06 0.05 1.65 1.64 0.05 38 10 0.20 0.15 0.19 0.05 0.89 1.64 0.19 29 11 0.16 0.17 0.16 -0.01 -0.25 1.64 0.40 6 2 0.03 0.03 0.03 0.00 0.06 1.64 0.48 0 0 0.00 0.00 0.00 0.00 - 1.64 - 8 4 0.04 0.06 0.05 -0.02 -0.60 1.64 0.27 25 5 0.13 0.08 0.12 0.06 1.23 1.64 0.11 47 22 0.25 0.34 0.27 -0.09 -1.33 1.64 0.09 Face Neck Chest Abdomen Back Pelvis Arms Legs *: ^p ^ 1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2 159 追補5 Ta b l e A 5 . 4 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S U V- L D r i v e r s ) (1) Number of Fatal or Serious (Total) (2) Number of Fatal or Serious for Injured Region (3) (4) (5) n1 =(2)/(1) ^ p := åX i =1 1i + å X 2i i =1 n1 + n2 (6) (*) n2 ^ ^ p1- p 2 z := (7) ^ ö æ^ ç p1- p 2 ÷ ø è ^æ ^ öæ 1 1 ç ÷ç p ç 1 - p ÷ç + ç ÷è n1 n2 è ø z (0.05) ö ÷÷ ø a := f ( z ) ¥ 1 z 2p =ò e - x2 2 Head SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : SUV-L to Sdn-L SUV-L to SUV-L n1: n2 : 34 x 1 : 20 x 2 : 3 2 0.09 0.10 0.09 -0.01 -0.14 1.64 0.44 2 1 0.06 0.05 0.06 0.01 0.14 1.64 0.44 7 4 0.21 0.20 0.20 0.01 0.05 1.64 0.48 7 3 0.21 0.15 0.19 0.06 0.51 1.64 0.31 2 0 0.06 0.00 0.04 0.06 1.11 1.64 0.13 0 0 0.00 0.00 0.00 0.00 - 1.64 - 1 2 0.03 0.10 0.06 -0.07 -1.09 1.64 0.14 6 2 0.18 0.10 0.15 0.08 0.76 1.64 0.22 6 6 0.18 0.30 0.22 -0.12 -1.05 1.64 0.15 Face Neck Chest Abdomen Back Pelvis Arms Legs *: ^p ^ 1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2 160 追補5 A5.2 重 量 の 異 な る SUV と セ ダ ン の 衝 突 ( 1 ) S U V- M と S d n - S の 衝 突 に つ い て ・ 表 A 5 . 5 に S U V- M と S d n - S の 衝 突 と S d n - S 同 士 の 衝 突 で の S d n - S 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 5 に お い て ,顔 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S U V- M と の 衝 突 に 比 べ S d n - M 同 士 の 衝 突 の 方 が 有 意 に 大 き く ,反 対 に 腹 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S d n - M 同 士 の 衝 突 の 方 が S U V- M と の 衝 突 に 比 べ 有 意 に 小 さ い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ). ( 2 ) S U V- L と S d n - S の 衝 突 に つ い て ・ 表 A 5 . 6 に S U V- L と S d n - S の 衝 突 と S d n - S 同 士 の 衝 突 で の S d n - S 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 6 に お い て ,頭 部 お よ び 腹 部 傷 害 の 構 成 率 は , S U V- L と の 衝 突 に 比 べ S d n - S 同 士 の 衝 突 の 方 が 有 意 に 小 さ く , 反 対 に 顔 部 お よ び 頸 部 傷 害 の 構 成 率 は , Sdn-S 同 士 の 衝 突 の 方 が S U V- L と の 衝 突 に 比 べ 有 意 に 大 き い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ). ( 3 ) S U V- L と S d n - M の 衝 突 に つ い て ・表 A 5 . 7 に S U V- L と S d n - M の 衝 突 と S d n - M 同 士 の 衝 突 で の S d n - M 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 7 に お い て ,胸 部 お よ び 腹 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S U V- L と の 衝 突 に 比 べ S d n - M 同 士 の 衝 突 の 方 が 有 意 に 小 さ く , 反 対 に 腕 部 傷 害 の 構 成 率 は , Sdn-M 同 士 の 衝 突 の 方 が S U V- L と の 衝 突 に 比 べ 有 意 に 大 き い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ). ( 4 ) S U V- M と S d n - L の 衝 突 に つ い て ・ 表 A 5 . 8 に S U V- M と S d n - L の 衝 突 と S d n - L 同 士 の 衝 突 で の S d n - L 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 8 に お い て ,胸 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S U V- M と の 衝 突 に 比 べ S d n - L 同 士 の 衝 突 の 方 が 有 意 に 小 さ く ,反 対 に 腕 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S d n - L 同 士 の 衝 突 の 方 が S U V- M と の 衝 突 に 比 べ 有 意 に 大 き い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ). 161 追補5 Ta b l e A 5 . 5 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - S D r i v e r s ) (1) Number of Fatal or Serious (Total) (2) Number of Fatal or Serious for Injured Region (3) (4) (5) n1 =(2)/(1) ^ p := åX i =1 1i + å X 2i i =1 n1 + n2 (6) (*) n2 ^ ^ p1- p 2 z := (7) ^ ö æ^ ç p1- p 2 ÷ ø è ^æ ^ öæ 1 1 ç ÷ç p ç 1 - p ÷ç + ç ÷è n1 n2 è ø z (0.05) ö ÷÷ ø a := f ( z ) ¥ 1 z 2p =ò e - x2 2 Head Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-M to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 124 x 2 : 101 16 0.09 0.13 0.10 -0.04 -1.26 1.64 0.10 81 4 0.08 0.03 0.07 0.04 1.76 1.64 0.04 188 19 0.17 0.15 0.17 0.02 0.59 1.64 0.28 242 25 0.22 0.20 0.22 0.02 0.58 1.64 0.28 38 9 0.04 0.07 0.04 -0.04 -2.03 1.64 0.02 7 0 0.01 0.00 0.01 0.01 0.90 1.64 0.18 34 5 0.03 0.04 0.03 -0.01 -0.52 1.64 0.30 137 12 0.13 0.10 0.12 0.03 0.97 1.64 0.17 246 32 0.23 0.26 0.23 -0.03 -0.75 1.64 0.23 Face Neck Chest Abdomen Back Pelvis Arms Legs *: ^p ^ 1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2 162 追補5 Ta b l e A 5 . 6 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - S D r i v e r s ) (1) Number of Fatal or Serious (Total) (2) Number of Fatal or Serious for Injured Region (3) (4) (5) n1 =(2)/(1) ^ p := åX i =1 1i + å X 2i i =1 n1 + n2 (6) (*) n2 ^ ^ p1- p 2 z := (7) ^ ö æ^ ç p1- p 2 ÷ ø è ^æ ^ öæ 1 1 ç ÷ç p ç 1 - p ÷ç + ç ÷è n1 n2 è ø z (0.05) ö ÷÷ ø a := f ( z ) ¥ 1 z 2p =ò e - x2 2 Head Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : Sdn-S to Sdn-S SUV-L to Sdn-S n1: n2 : 1079 x 1 : 234 x 2 : 101 31 0.09 0.13 0.10 -0.04 -1.79 1.64 0.04 81 10 0.08 0.04 0.07 0.03 1.77 1.64 0.50 188 24 0.17 0.10 0.16 0.07 2.70 1.64 0.04 242 60 0.22 0.26 0.23 -0.03 -1.06 1.64 0.14 38 16 0.04 0.07 0.04 -0.03 -2.32 1.64 0.01 7 2 0.01 0.01 0.01 0.00 -0.35 1.64 0.36 34 4 0.03 0.02 0.03 0.01 1.19 1.64 0.12 137 23 0.13 0.10 0.12 0.03 1.22 1.64 0.11 246 62 0.23 0.26 0.23 -0.04 -1.21 1.64 0.11 Face Neck Chest Abdomen Back Pelvis Arms Legs *: ^p ^ 1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2 163 追補5 Ta b l e A 5 . 7 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - M D r i v e r s ) (1) Number of Fatal or Serious (Total) (2) Number of Fatal or Serious for Injured Region (3) (4) (5) n1 =(2)/(1) ^ p := åX i =1 1i + å X 2i i =1 n1 + n2 (6) (*) n2 ^ ^ p1- p 2 z := (7) ^ ö æ^ ç p1- p 2 ÷ ø è ^æ ^ öæ 1 1 ç ÷ç p ç 1 - p ÷ç + ç ÷è n1 n2 è ø z (0.05) ö ÷÷ ø a := f ( z ) ¥ 1 z 2p =ò e - x2 2 Head Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : Sdn-M to Sdn-M SUV-L to Sdn-M n1: n2 : 807 x 1 : 170 x 2 : 112 24 0.14 0.14 0.14 0.00 -0.08 1.64 0.47 50 12 0.06 0.07 0.06 -0.01 -0.42 1.64 0.34 133 22 0.16 0.13 0.16 0.04 1.15 1.64 0.13 150 41 0.19 0.24 0.20 -0.06 -1.65 1.64 0.05 26 12 0.03 0.07 0.04 -0.04 -2.35 1.64 0.01 7 0 0.01 0.00 0.01 0.01 1.22 1.64 0.11 32 7 0.04 0.04 0.04 0.00 -0.09 1.64 0.46 86 11 0.11 0.06 0.10 0.04 1.66 1.64 0.05 207 39 0.26 0.23 0.25 0.03 0.74 1.64 0.23 Face Neck Chest Abdomen Back Pelvis Arms Legs *: ^p ^ 1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2 164 追補5 Ta b l e A 5 . 8 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - L D r i v e r s ) (1) Number of Fatal or Serious (Total) (2) Number of Fatal or Serious for Injured Region (3) (4) (5) n1 =(2)/(1) ^ p := åX i =1 1i + å X 2i i =1 n1 + n2 (6) (*) n2 ^ ^ p1- p 2 z := (7) ^ ö æ^ ç p1- p 2 ÷ ø è ^æ ^ öæ 1 1ö ç ÷ç pç1 - p ÷ç + ÷÷ ç ÷è n1 n 2 ø è ø z (0.05) a := f (z ) ¥ 1 z 2p =ò e - x2 2 Head Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : Sdn-L to Sdn-L SUV-M to Sdn-L n1: n2 : 186 x 1 : 32 x 2 : 20 6 0.11 0.19 0.12 -0.08 -1.29 1.64 0.10 13 0 0.07 0.00 0.06 0.07 1.54 1.64 0.06 38 7 0.20 0.22 0.21 -0.01 -0.19 1.64 0.42 29 9 0.16 0.28 0.17 -0.13 -1.73 1.64 0.04 6 1 0.03 0.03 0.03 0.00 0.03 1.64 0.49 0 0 0.00 0.00 0.00 0.00 - 1.64 - 8 2 0.04 0.06 0.05 -0.02 -0.49 1.64 0.31 25 1 0.13 0.03 0.12 0.10 1.66 1.64 0.05 47 6 0.25 0.19 0.24 0.07 0.79 1.64 0.21 Face Neck Chest Abdomen Back Pelvis Arms Legs *: ^p ^ 1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2 165 追補6 追補6 荷 重 の 垂 直 分 布 図 DCF お よ び 客 室 荷 重 中 心 CCF A6.1 荷重の垂直分布図 DCF およびその導出について 荷 重 の 垂 直 分 布 図 DCF( Diagram of Compartment Force ) は , 衝 突 時 の 客 室への入力を垂直方向毎に示したもので,衝突の進行毎について「どの高 さ へ の 入 力 が 大 き い か 」を 示 す 図 で あ る .本 研 究 の セ ダ ン 模 型 に つ い て は , 図 A6.1 中 の (1)か ら (3)に 示 し た 高 さ に 取 り 付 け た ロ ー ド セ ル で 測 定 し た 荷 重 か ら 求 め た .な お ,(1)は サ イ ド シ ル ,フ ロ ア メ ン バ お よ び フ ロ ア ト ン ネ ル ,( 2 ) は ド ア ベ ル ト ラ イ ン ,( 3 ) は ル ー フ に 取 り 付 け た そ れ ぞ れ の ロ ー ド セ ルの地上高である.従って, ( 1 ) の 荷 重 : S i d e - S i l l ( L e f t ) + S i d e - S i l l ( R i g h t ) + F l o o r- M e m b e r ( L e f t ) + F l o o r- M e m b e r ( R i g h t ) + F l o o r- Tu n n e l (2)の 荷 重 : Door Beltline-Member (Left) + Door Beltline-Member (Right) (3)の 荷 重 : Roof-Rail (Left) + Roof-Rail (Right) である.それぞれの高さに設置したロードセルに入力した荷重の和を各高 さ 毎 の 荷 重 と し た . な お , 図 A6.2 お よ び 図 A6.3 に ロ ー ド セ ル の 取 り 付 け 位置を示す. 165 166 追補6 Crash stroke Stroke Crash (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ) Height ●● ● ●(Ⅰ) ● (3):Height 1350(mm) (Ⅲ) ● (Ⅱ) ● (2):Height 790(mm) (1):Height 260(mm) Centre Centre of compartment Compartment force Force ● ● Lateral compartmentForce force Lateral Compartment F i g . A 6 . 1 E x p r e s s i o n o f D e f e n s i v e n e s s ( D CF (Diagram of Compartment Force)) Floor-Member Floor member Floor-Tunnel Floor tunnel Door Beltline-Member Door-beltline member Side-Sill Side sill Load Transducers transducers Accelerometer Load Side member Side-Member Fig. A6.2 Load Transducer Frame Fig. A6.3 Location of Load Transducers 高 さ H1 か ら Hj ま で の 各 入 力 に つ い て , そ れ ぞ れ 衝 突 の 進 行 ( 変 位 あ る い は 時 間 ) 毎 に 平 均 荷 重 ( L A i j ) を 求 め た ( 図 A6.4, 式 ( A 6 . 1 ) ). こ れ ら 各 高 さ 毎 の 平 均 荷 重 LAij を 衝 突 の 進 行 毎 に 結 ん だ も の が DCF で あ る . こ れ に より,衝突の進行毎について「どの高さへの入力が大きいか」を確認する ことができる. L Aij ò = di d i -1 f (x j ) (d i - d i -1 ) (A6.1) 167 追補6 (1) (2) ( i) ・・・ f(xj) ・・・ f(x2) f(x1) 0 d1 d2 ・・・ di-1 di di ∫ d d f(xj)dx LAij = òd f ( x j ) L Aij = (i -1di - di-1 ) (d i - d i -1 ) i Crash stroke Stroke Crash ・・ Hi Height (1) (2) ・・ ( i ) LA1j LA2j ・・ LAij Centre of Centre ofCompartment compartmentForce force ●● ● ● H1 i-1 ● ● ● LA11 ● ● LA21 ・・ LAi1 LongitudinalCompartment compartmentForce force Longitudinal F i g . A6.4 C o n c e p t o f L A i j ( Av e r a g e L o a d ) 168 追補6 A6.2 客室荷重中心 CCF の導出について 衝 突 の 進 行 状 態 毎 に つ い て の 各 高 さ 別 の 平 均 荷 重 LAij の 重 心 位 置 を CCFi と し た . 例 え ば , 図 A6.5 に 示 し た 衝 突 の 進 行 ( 1 ) , ( 2 ) , ・ ・ ・ ( i ) そ れ ぞ れ に つ い て の CCFi は , 式 (A6.2)の 通 り と な る . Crash stroke Stroke Crash LA1j (1) (2) ・・ ( i ) Hi ・・ LAij Centre of Centre ofCompartment compartmentForce force ●● ● Height ・・ LA2j ● H1 ● ● ● LA11 ● ● LA21 ・・ LAi1 LongitudinalCompartment compartmentForce force Longitudinal F i g . A6.5 C C F ( C e n t r e o f C o m p a r t m e n t F o r c e ) a n d L A i j ( Av e r a g e L o a d ) j CCFi = åH j =1 j L Aij (A6.2) j åL j =1 Aij な お , 式 (A6.2)中 の Hj は , ロ ー ド セ ル の 地 上 高 ( 本 研 究 の 模 型 の 場 合 , H 1 : 2 6 0 m m , H 2 : 7 9 0 m m , H 3 : 1 3 5 0 m m ). L A i j は ロ ー ド セ ル の 地 上 高 別 ・ 衝突の進行毎の平均荷重である.
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