セダン型乗用車とオフロード車の 衝突相互安全性

セダン型乗用車とオフロード車の
衝突相互安全性
2008 年 度
関根
康史
目次
目次
1 緒 言
1
1.1 研究の背景
1
1.2 研究の目的
3
1.3 本論文の構成
6
1.4 記号
9
1.4.1 交通事故統計分析に係る記号
9
1.4.2 模型車両による衝突試験に係る記号
9
1.5 本論文の用語
11
1.5.1 分析対象とした車種の定義
11
1.5.2 人身損傷程度の定義
11
2 交通事故統合データによるSUVとセダンの前面対前面衝突事故の分析
12
2.1 交通事故統合データについて
12
2.2 セダンとSUVの新たな分類手法
14
2.3 車両重量が同程度のセダンとSUVの衝突事故の分析
21
2.3.1 分析対象の決定
21
2.3.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率
21
2.3.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成
23
2.3.4 傷害種別の詳細について
25
2.4 車両重量の差が大きいセダンとSUVの衝突との比較
30
i
目次
ii
2.4.1 比較対象の選定
30
2.4.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率
30
2.4.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成
31
2.5 考 察
32
2.6 事故例との照合
34
2.7 第2章の結論
36
3 セダンとSUVの衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
38
3.1 分析対象の検討
38
3.2 対SUV衝突におけるセダン運転者の傷害分析
40
3.2.1 本章における分析
40
3.2.2 SUV-MとSdn-Sの衝突
42
3.2.3 SUV-MとSdn-Lの衝突
42
3.2.4 SUV-LとSdn-Mの衝突
45
3.2.5 SUV-LとSdn-Sの衝突
45
3.3 考 察
47
3.4 事故例との照合
48
3.5 バリア換算速度を指標に用いた車体の潰れ程度の分析
50
3.5.1 車体の潰れ程度の分析
50
3.5.2 バリア換算速度計算値と実際の実測値の比較
54
3.6 衝突速度と乗員傷害の関係についての分析
58
3.6.1 衝突相手による運転者の人身損傷度の実態
58
3.6.2 危険認知相対速度と死亡重傷者率の関係式の推定
62
3.6.3 乗員傷害に影響をおよぼす重量比以外の要因について
66
3.7 軽SUVと軽セダン前面対前面衝突事故の分析
68
3.7.1 本節における分析対象車種
68
3.7.2 衝突速度による運転者の死亡重傷者率
69
3.7.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成
70
目次
iii
3.7.4 軽セダンと軽SUVの衝突についての考察
72
3.8 第3章の結論
74
4 セダン模型を用いた衝突試験によるSUVとの衝突時の客室入力の検討
75
4.1 コンパティビリティー性能の評価手法の検討
75
4.2 客室入力の評価
77
4.3 衝突実験用模型
79
4.3.1 相似則の適用
79
4.3.2 模型用材料
81
4.3.3 セダン模型の製作
83
4.3.4 衝突実験用バリア
94
4.3.5 模型車両の衝突実験条件
94
4.4 衝突実験結果
97
4.4.1 模型車両の衝突特性
97
4.4.2 衝突による車体骨格部への入力荷重と車体変形
98
4.5 衝突実験結果
99
4.5.1 客室入力分布による防護性の評価
99
4.5.2 客室入力の2次元等高線表示
104
4.6 第4章の結論
104
5 セダン模型とSUV模型のCar-to-Car衝突試験による客室入力の検討
106
5.1 セダン模型とSUV模型のCar-to-Car衝突試験の意義
106
5.2 衝突実験用模型
108
5.2.1 模型の製作
108
5.2.2 衝突試験装置の製作
109
5.3 衝突実験結果
112
5.4 客室入力分布による防護性の評価
115
5.4.1 客室入力の垂直分布
115
iv
目次
5.4.2 客室入力の2次元等高線表示
117
5.5 第5章の結論
119
6 結 言
120
6.1 本研究の結論
120
6.1.1 セダンとSUVの前面対前面衝突の事故統計分析について
120
6.1.2 模型による衝突試験について
121
6.2 本研究の今後の展開
122
謝 辞
124
参考文献
125
追補1 従来のコンパティビリティー対策および評価法について 138
A1.1 荷重伝達部材の取り付けによる対策
138
A1.2 AHOFについて
139
A1.3 AHOFの問題点
140
追補2 衝突試験の結果について
141
A2.1 バリア衝突試験の荷重-変位曲線について
141
A2.2
143
セダン対SUVのCar-to-Car衝突試験の荷重-時間曲線について
追補3 国内における交通事故の統計分析についての補足
146
A3.1 車両の衝突部位について
146
A3.2 自動車乗員の損傷主部位について
148
A3.3 自動車の各部位の名称について
149
v
目次
追補4 大型乗用車同士(SUV-LとSdn-L)の衝突事故の分析 151
A4.1 分析対象について
151
A4.2 衝突速度と死亡重傷者率の関係
152
A4.3 死亡または重傷運転者の傷害部位の構成
152
追補5 交通事故統計の分析結果の有意性について 155
A5.1 重量が同じ程度のSUVとセダンの衝突
155
A5.2
160
重量の異なるSUVとセダンの衝突
追補6 荷重の垂直分布図DCFおよび客室荷重中心CCF 165
A6.1 荷重の垂直分布図DCFおよびその導出について
165
A6.2
168
客室荷重中心CCFの導出について
第 1 章.緒言
1
第1章
緒
1.1
言
研究の背景
道路上を走行している自動車には,軽自動車から大型トラックに至るまで
様々な大きさや形状の車両が存在する.したがって,実際の衝突事故では,必
ずしも自車両と同じ大きさ,同じ形状の車両との衝突のみが起きるとは限らな
い.国内の自動車事故についても,四輪車乗車中の死亡事故の約 4 割が車両重
量 の 異 な る 相 手 と の 衝 突 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る ( 1 ).す な わ ち ,自 動 車 の
衝突安全性をより向上させ,衝突事故による乗員の被害低減を進めていくため
には,車両重量が軽い車両と重い車両の衝突,あるいはボンネット付き車両と
キャブオーバ型の車両との衝突等のような,サイズや形状の異なる車両による
衝突に対しての相互安全性(コンパティビリティー)について考慮することが
重要である.
大 人 数 で 乗 車 し て も 広 い 居 住 空 間 が と れ る SUV(Sport Utility Vehic le , ス ポ ー
ツ 用 多 目 的 車 )は ,使 い 勝 手 の 良 さ か ら ,1 990 年 代 以 降 ,国 内 や 欧 米 で 台 数 が 増
加 し た . 例 え ば , 国 内 に お け る 世 帯 が 保 有 す る 乗 用 車 の う ち , SUV の 占 め る 割
合 は , 1995 年 で は 僅 か 6.5% に す ぎ な か っ た が , 2005 年 に な る と 26.2% と 10
年 間 に 約 4 倍 も 増 加 し て い る ( 2 ) .こ の よ う な SUV の 急 増 に 伴 っ て ,SUV が 従 来
の乗用車(セダン・タイプの乗用車,以下セダンと略記する)と衝突した際の
攻 撃 性 (agg ressiveness) が 問 題 視 さ れ る よ う に な っ た ( 3 ) - ( 5 ) . こ れ に 伴 い , 米 国 の
1
第 1 章.緒言
2
道 路 交 通 安 全 局 ( Na tional High wa y Tra ffic Safet y Ad min istration , 以 下 NHTSA
と 略 記 す る ) で は , S UV と セ ダ ン の 衝 突 時 に お け る そ れ ぞ れ の 乗 員 の 死 亡 率 を
比 較 し ,数 値 に よ っ て SUV の 攻 撃 性 を 示 し た ( 6 ) - ( 8 ) .SUV は バ ン パ 高 さ や サ イ ド
メ ン バ 高 さ 等 と い っ た 車 体 構 造 が セ ダ ン と 異 な る 場 合 が 多 い . こ の た め , SUV
がセダンと衝突した場合には,上述のような車体構造の違いが,攻撃性をもた
ら す 要 因 と な り , SU V が セ ダ ン の 車 体 の 潰 れ 量 や 乗 員 の 傷 害 値 を 悪 化 さ せ る 等
の 影 響 を お よ ぼ す と 考 え ら れ る . な お , S UV と オ フ ロ ー ド 車 あ る い は 4 輪 駆 動
車 は , い ず れ も 厳 密 に は 同 義 で は な い が , こ こ で は , SUV に 対 し て 検 討 を 行 っ
た .一 般 的 に は オ フ ロ ー ド 車 の 語 の 方 が 分 か り 易 い が ,本 論 文 中 で は SUV は オ
フロード車のことを指した語として使った.
重量や車体の形状が異なる車両の衝突に着目した研究は,以前より行われて
きた.重量の重い乗用車と軽い乗用車の衝突や大型トラックと乗用車の衝突に
つ い て は ,今 ま で に も 多 く の 研 究 が 報 告 さ れ て い る ( 9 ) - ( 2 8 ) .な お ,SUV と セ ダ ン
の 衝 突 に つ い て も , S UV の 攻 撃 性 が 問 題 視 さ れ る よ う に な っ た 1990 年 代 以 降
か ら , 事 故 実 態 の 調 査 ・ 分 析 , 衝 突 時 に お け る 乗 員 の 被 害 軽 減 対 策 お よ び SUV
のコンパティビリティー性能を評価するための試験法等,詳細な検討が行われ
る よ う に な っ て き て お り ( 2 9 ) - ( 4 0 ) , 例 え ば , SUV の サ イ ド メ ン バ の 下 に サ ブ フ レ
ーム等といった部材を装着することによって,セダンへの攻撃性を緩和させる
と い っ た 対 策 も 提 案 さ れ る よ う に な っ て き た (41)-(44).
上 述 の 通 り , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー に つ い て 取
り組んだ研究は,近年になってから取り組まれるようになったものが多い.そ
し て , こ れ ら の 多 く が 着 目 し て い る の は , SUV の 攻 撃 性 で あ り , そ の 評 価 法 や
低減については,今までにも多く論じられてきている.
しかしながら,衝突に係わる 2 台の車両のうち片方だけの対策を論ずるだけ
で は , コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー は 成 り 立 た な い . す な わ ち , SUV と セ ダ ン の 衝 突
に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 考 え て い く た め に は , SUV の セ ダ ン へ の 攻 撃
性 に つ い て 論 ず る だ け で な く ,セ ダ ン の S UV に 対 す る 防 護 性 に 着 目 し た 検 討 を
行 う こ と も 重 要 で あ る . こ の た め に は , S UV に 衝 突 さ れ た セ ダ ン 乗 員 の 傷 害 程
度の実態や車体損壊のメカニズムを明らかにすることが重要となってくるが,
第 1 章.緒言
3
これらについては,今まで詳細な検討は行われてこなかった.そこで,本研究
で は セ ダ ン の 防 護 性 の 観 点 か ら , SUV と セ ダ ン の 前 面 衝 突 に 関 す る コ ン パ テ ィ
ビリティーについて検討を行うべく,詳細な統計データに基づく事故実態の分
析および精密な模型を用いた衝突実験が必須と考えられる.
1.2
研究の目的
本 研 究 の 目 的 は , 前 節 で 述 べ た 通 り , SU V と セ ダ ン の 前 面 衝 突 に 関 す る コ ン
パティビリティーをセダンの防護性の観点から検討していくことである.衝突
事故による被害軽減の対策を考えていくためには,事故の実態をよく把握した
上で,実験もしくはコンピュータによるシミュレーションによって適切に事故
を再現し,車両の損壊や乗員傷害のメカニズムを明らかにしていくことが重要
である.したがって,本研究においても,セダンの防護性の観点からコンパテ
ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る た め , 第 1 段 階 と し て 交 通 事 故 の 統 計 デ ー タ か ら SUV
とセダンの衝突事故を分析し,セダン乗員が被る傷害の特徴を明らかにした上
で,第 2 段階として精密な模型を用いた衝突試験を行い,セダンの防護性を評
価する手法を見出すことによって,車両損壊のメカニズムの解明を試みた.
まず,第 1 段階について述べる.
自動車の衝突時における乗員保護性能の良し悪しは,乗員の傷害程度や損傷
部位に映し出される.すなわち,衝突事故によって死亡や重傷になる率が高け
れば,その車両の乗員保護性能は芳しくないものと評価できる.また,衝突時
の車体変形は,乗員の損傷部位に影響を与える.例えば,車体上部が変形する
ことが多ければ,頭部や胸部等,上半身の傷害が多くなり,車体下部が変形す
る こ と が 多 け れ ば , 脚 部 等 , 下 半 身 の 傷 害 が 多 く な る . し た が っ て , SUV と セ
ダンの衝突におけるセダン乗員の傷害程度や損傷部位の傾向を把握することで,
セ ダ ン の SUV に 対 す る 防 護 性 が 評 価 で き る .
衝突時における乗員傷害の傾向を把握するためには,衝突事故の統計データ
を 分 析 す る 必 要 が あ る . し か し な が ら , 我 が 国 に お け る 従 来 の 交 通 事 故 統 計 (45)
では,車両形状がボンネット付き車両とキャブオーバ型車両の分類までは可能
第 1 章.緒言
4
で あ っ た が ,ど ち ら も 同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ る SUV と セ ダ ン に つ い
ては,事故データ中にこれらの区分が存在しないため,両者を区別して統計的
に 分 析 す る こ と が で き な か っ た .す な わ ち ,従 来 の 交 通 事 故 統 計 ( 4 5 ) は ,SUV と
セダンの衝突事故の統計的な分析が不可能なので,これだけでは,セダンの防
護性の評価は行えない.
国内で唯一の公的な交通事故分析機関である財団法人交通事故総合分析セン
タ ー ( Institute fo r Tra ffic Accid ent Rese arch and Data Analysis, 以 下 ITARDA と
略記する)では,交通事故統計データに車両のデータ(全長,全幅,全高およ
び車両総重量)を組み合わせて事故統計分析を行うことができる交通事故統合
データを保有している.そこで,この交通事故統合データを利用することによ
っ て SUV と セ ダ ン を 分 離 し た ,全 国 統 計 的 な 分 析 を 可 能 と す る よ う ,新 た な 分
析 手 法 を 試 み た (46)-(51).
この分析手法によって,セダンの防護性を統計的に評価できるようになる.
す な わ ち , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る 乗 員 傷 害 と , セ ダ ン 同 士 で の 衝 突 に お
ける乗員傷害を比較することによって,これまで推測によって語られてきた,
SUV と セ ダ ン と の 衝 突 事 故 の 実 状 が 統 計 的 な 側 面 か ら 明 ら か に な る . こ の よ う
にして,セダンの乗員防護性を評価し,コンパティビリティーについて検討を
行うことが,第 1 段階での本研究の目的である.
次に,第 2 段階について述べる.
SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 議 論 で は , 上 述 し た 通
り ,し ば し ば SUV の 攻 撃 性 と い う 概 念 が 使 用 さ れ る .し か し な が ら 衝 突 の 直 後
において,2 台の車両が接触を開始した瞬間から,両車のフロントエンドは一
体となってエネルギーを吸収する.また,どちらの客室にも等しく荷重が加わ
ることに注意しなくてはならない.むしろバンパ高さやサイドメンバ高さの違
い 等 と い っ た , SUV と セ ダ ン 両 車 に お け る 車 体 前 面 構 造 の ジ オ メ ト リ ー の 違 い
から,衝突時の荷重入力を予期していない部分に力が加わることで,セダンの
客室強度が不足することを避けるべきである.
第 1 章.緒言
5
し た が っ て ,SUV と セ ダ ン の 衝 突 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る 上 で は ,
セダン客室部に加わる荷重分布の変化を把握し,客室変形のメカニズムを理解
することによってコンパティビリティーを検討しようとする客室入力の評価,
すなわちセダンの客室防護性を評価することが重要となるであろう.
本研究では,衝突が開始されてから終了するまでの間に,客室に加わる荷重
の 分 布 状 況 の 変 化 を 把 握 す る こ と に よ っ て , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン に つ い て ,
新たに客室入力の観点からコンパティビリティーの検討を行った.すなわち,
客室内部に加わる荷重の分布をコンパティビリティー性能の指標と捉え,その
新たな表現方法を提案することを試みた.
客室内部に加わる荷重の分布は,実車による衝突試験から計測することは難
しい.なぜならば,客室内部に加わる荷重を測定するためには,実車をセンタ
ーピラーの部分で前後に切り離すような大掛かりな加工をしなければロードセ
ル 等 荷 重 を 計 測 す る 機 器 を 取 り 付 け る こ と が 不 可 能 で あ る か ら で あ る .そ こ で ,
本研究では,客室内部に加わる荷重を実測するために,精密な模型を用いた衝
突実験を行った.模型ならば,実車とは異なり,大掛かりな加工をすること無
く客室内部に加わる荷重を実測できる.本研究では模型のセンターピラー部に
ロードセルを装着,衝突による車体骨格部(フロアメンバ,フロアトンネル,
サイドシル,ドアベルトラインメンバ,ルーフレール)への入力を計測するこ
と に よ っ て ,客 室 内 部 に 加 わ る 荷 重 の 分 布 を 明 ら か に し た .な お ,模 型 実 験 は ,
以前より乗員の挙動や人体傷害発生のメカニズムを解明するための研究に用い
ら れ て お り (52)-(67), 樹 脂 製 模 型 を 用 い た 衝 突 実 験 が , 衝 突 時 の 車 体 変 形 を 把 握
す る た め に 有 効 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る (68)-(73). な お , シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
計算によっても同様な検討が可能であるが,計算値と実験値との精密な合わせ
込みが完了していない場合に関しては,模型実験の利用が効果的であると言え
る.
し た が っ て , 本 研 究 に お け る 第 2 段 階 の 目 的 は , SUV に 見 立 て た 突 起 バ リ ア
に 樹 脂 製 の セ ダ ン の 1 /10 ス ケ ー ル 精 密 模 型 を 衝 突 さ せ る 試 験 を 実 施 す る こ と に
よって,セダン客室内部に加わる荷重の分布を測定,これによりコンパティビ
リ テ ィ ー 性 能 の 新 た な る 評 価 方 法 を 求 め る と 共 に , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン の 乗
第 1 章.緒言
6
員防護性を検討することである.
1.3
本論文の構成
本 研 究 で は ,第 1 段 階 に て SUV と セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 時 に お け る セ ダ ン
の 乗 員 傷 害 の 特 徴 を 事 故 統 計 分 析 に よ っ て , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 乗 員 防 護 性
能の実態の把握を行い,第 2 段階にて精密な相似模型による衝突試験を行うこ
とによって,客室内部に加わる荷重の分布を明らかにすることを試みた.すな
わ ち , こ れ ら 二 つ の 段 階 を 経 る こ と に よ っ て , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ
ンパティビリティーの検討を行った.
なお,本論文における以下の各章の構成は次の通りである.第 1 段階に相当
する事故統計分析は,第 2 章と第 3 章にて論じ,第 2 段階に相当する模型によ
る衝突実験は第 4 章にて論ずる.
第 2 章 で は ,ITARDA の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ に よ る SUV と セ ダ ン の 前 面 対 前
面 衝 突 事 故 の 全 国 統 計 に よ る 分 析 の 試 み ,お よ び 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と セ ダ
ンの衝突事故の分析について論ずる.車高と車両総重量の二つの条件による
SUV と セ ダ ン の 区 分 の 可 能 性 に つ い て 検 討 を 行 い , セ ダ ン を 排 気 量 が 15 00cc
以 下 の 車 種 を Sdn -S,排 気 量 が 1500cc 超 20 00cc 以 下 の 車 種 を Sd n -M,排 気 量 が
2000cc 超 の 車 種 を Sd n -L の 3 ク ラ ス に 区 分 ,SUV を オ フ ロ ー ド で の 走 行 を 目 的
と し な い ミ ニ バ ン や 軽 快 な 車 種 を SUV-M ,従 来 か ら の 本 格 的 な オ フ ロ ー ド 車 種
を SUV-L の 2 ク ラ ス に 区 分 の 上 , ITARDA の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 利 用 す る こ
と に よ っ て 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と セ ダ ン で あ る SUV-M と Sd n -M の 前 面 対 前
面衝突事故の全国統計分析を行った.そして,車両重量に大きな差がない場合
で あ っ て も , SUV 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が セ ダ ン 運 転 者 よ り も 低 く な っ て
いること.また,その差は衝突速度の増大と共に拡がっていくこと.さらに,
SUV , セ ダ ン 共 に 衝 突 相 手 に よ っ て 死 亡 あ る い は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 傷 害 部
位の構成や症状の度合い等が異なるなど,コンパティビリティーを論ずる上で
の特徴があることを明らかにした.
第 1 章.緒言
7
第 3 章 で は ,事 故 統 計 分 析 の 対 象 を 車 両 重 量 の 異 な る SUV と セ ダ ン の 衝 突 に
拡 げ , SUV と セ ダ ン の 衝 突 の 全 般 的 な 状 況 に つ い て 論 ず る . ま ず , 第 2 章 で 分
類 し た SUV と セ ダ ン 全 5 車 種 を 対 象 に , 本 章 で は SUV と セ ダ ン の 衝 突 全 般 に
おけるセダン運転者の傷害の特徴を明らかにすべく,対象を車両重量の異なる
SUV と セ ダ ン の 衝 突 , す な わ ち , 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 あ る い は 重 い
SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 等 に 拡 げ て 事 故 統 計 分 析 を 行 っ た . そ し て , 衝 突 相 手
と な る SUV が 自 車 よ り も 軽 け れ ば 上 半 身 の 傷 害 の 構 成 率 が 多 く ,反 対 に 自 車 よ
りも重くなるほど,脚部傷害が多くなる傾向があることを確認,その理由が,
SUV と の 前 部 サ イ ド メ ン バ の 上 下 の す れ 違 い に よ り , セ ダ ン は 弱 点 の あ る 車 両
上部に変形が生じ易くなるためと推測した.
次に,自動車が剛壁に衝突した際の速度を示すバリア換算速度を衝突による
車体変形の程度を示す指標とみなし,衝突現象を 1 次元衝突・質量,ばねモデ
ルと仮定した場合のバリア換算速度計算値と衝突による車体の損壊量から実測
したバリア換算速度事故値を比較,セダン同士衝突では計算値と実測値がほぼ
同 じ と な る の に 対 し , SUV と セ ダ ン の 衝 突 で は , バ リ ア 換 算 速 度 の 計 算 値 と 実
測値が異なることを確認,上述前部サイドメンバの上下のすれ違いなど車両重
量以外の影響をバリア換算速度の計算値と実測値の差として定量的な数値とし
て示した.また,乗員の傷害程度と衝突速度の関係を分析することによって,
SUV や 1BOX 車 な ど と セ ダ ン の 衝 突 を セ ダ ン 同 士 の 衝 突 に 換 算 し , 乗 員 が 被 る
傷 害 に つ い て 比 較 を 行 っ た .更 に ,軽 乗 用 車 で あ る 軽 SUV と 軽 セ ダ ン の 衝 突 に
お い て も ,乗 員 傷 害 の 特 徴 に お い て ,普 通 乗 用 車 で あ る SUV と セ ダ ン の 衝 突 と
同様な傾向が表れることを確認した.
第 4 章 で は ,精 密 な 模 型 に よ る 衝 突 実 験 の 結 果 か ら SUV と 衝 突 時 し た セ ダ ン
客室の乗員防護性について論ずる.本章では,衝突が開始されてから最大変形
に達するまでの間に,客室に加わる荷重の分布状況の変化を把握することによ
っ て , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン に つ い て , 新 た に 客 室 入 力 の 観 点 か ら コ ン パ テ ィ
ビリティーの検討を行った.特に客室内部に加わる力の分布をコンパティビリ
ティー性能の指標と捉え,2 種類の新たな表現方法を提案した.第 1 の表現方
法として,客室に入る荷重の垂直方向分布およびその荷重中心の推移を示す手
第 1 章.緒言
8
法を導入した.荷重の垂直方向分布やその荷重中心の車両変形のストローク量
毎での変化を示すことにより,客室入力の評価を試みた.第 2 の表現方法とし
て,センターピラー部での車体断面を 2 次元表示し,客室へ入る荷重の分布を
等高線で表示し,客室入力を表現する手法を導入した.車両変形のストローク
量毎で客室へ入る荷重分布の変化の評価を試みた.これらの表現法を用いるこ
とによって,客室入力を検討した結果,平面バリア衝突では,荷重を客室下部
で 受 け て い る が , SU V を 模 し た バ リ ア と の 衝 突 で は , 荷 重 を 主 と し て ド ア ベ ル
トライン部で受け持つことを明らかにした.
第 5 章 で は , SUV を 模 し た 模 型 と セ ダ ン 模 型 を 衝 突 さ せ る Car-to -C ar 衝 突 試
験 に つ い て 述 べ た .な お ,本 章 に お け る S UV 模 型 は ,車 体 構 造 お よ び 質 量 は セ
ダンと全く同じとし,車高だけを変えて衝突時にサイドメンバが上下にオフセ
ッ ト す る 高 さ に 設 計 し た . SUV , セ ダ ン そ れ ぞ れ の 客 室 へ の 荷 重 の 分 布 を 計 測
し た 結 果 , SUV 客 室 で は , 荷 重 を 主 と し て 客 室 下 部 で 受 け 持 ち , セ ダ ン 客 室 で
は,荷重を主としてドアベルトライン部で受け持つことを確認した.したがっ
て , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る 相 互 安 全 性 を 検 討 し , 乗 員 傷 害 を 軽 減 し て い
くためには,平面バリア衝突の場合とは異なり,それぞれの客室における衝突
時の入力が大きい領域を補強することの重要性を示した.
第 6 章では,各章で論じた内容をまとめ,本研究の成果を要約した.
第 1 章.緒言
1.4
記号
1.4.1
交通事故統計分析に係る記号
R: 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率
Nf: 死 亡 者 数 と 重 傷 者 数 の 和
N0: 軽 傷 者 数 と 無 傷 者 数 の 和
ΔV: 前 面 対 前 面 衝 突 に お け る 相 対 衝 突 速 度
|VSUV|: SUV 側 の 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値
|VSdn|: セ ダ ン 側 の 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値
| V S U V - M | : S U V- M 側 の 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値
|VSdn-M|: Sdn-M 側 の 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値
1.4.2
模型車両による衝突試験に係る記号
e: 単 位 体 積 あ た り の 吸 収 エ ネ ル ギ ー
ρ: 密 度
l: 長 さ
P: 荷 重
σ: 応 力
δ: 衝 突 に よ る 車 体 変 形 量
m: 質 量
t: 時 間
v: 速 さ
α: 加 速 度
E: 運 動 エ ネ ル ギ ー
I: 慣 性 モ ー メ ン ト
ν: ポ ア ソ ン 比
ε: ひ ず み
9
第 1 章.緒言
P1: ダ ミ ー 接 触 時 内 圧
P2: 大 気 圧
v1: ダ ミ ー 接 触 時 の ガ ス の 比 重 量
q1: エ ア バ ッ グ 内 の 初 期 比 体 積
κ: 比 熱 比
w: 排 気 穴 出 口 速 度
g: 重 力 加 速 度
R: ガ ス 定 数
T: エ ア バ ッ グ 内 の 絶 対 温 度
10
第 1 章.緒言
1.5
本論文の用語
1.5.1
分析対象とした車種の定義
Sdn-S: 排 気 量 が 1500cc 以 下 の セ ダ ン
Sdn-M: 排 気 量 が 1500cc 超 2000cc 以 下 の セ ダ ン
Sdn-L: 排 気 量 が 2000cc 超 の セ ダ ン
S U V- M : オ フ ロ ー ド で の 走 行 を 目 的 と し な い 軽 快 な S U V や ミ ニ バ ン
と 呼 ば れ る ク ラ ス の SUV
S U V- L : 本 格 的 な オ フ ロ ー ド 用 S U V
1.5.2
人身損傷程度の定義
死 亡 : 事 故 発 生 後 24 時 間 以 内 の 死 亡
重 傷 : 全 治 30 日 以 上 の 治 療 を 要 す る 損 傷
軽 傷 : 全 治 30 日 未 満 の 治 療 を 要 す る 損 傷
無傷:治療を必要としない場合
11
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
12
第 2章
交 通 事 故 統 合 デ ー タ に よ る SUV と セ ダ ン の
前面対前面衝突事故の分析
2.1
交通事故統合データについて
第 1 章で述べた通り,自動車の衝突安全性をより向上させ,衝突事故に
よる乗員の被害低減を進めていくためには,大きさや形状の異なる車両に
よる衝突に対しての相互安全性(コンパティビリティー)について考慮す
る こ と が 重 要 で あ る . 本 章 お よ び 次 章 で は , SUV と セ ダ ン の 前 面 衝 突 に 関
するコンパティビリティーについて検討を行うため,その第1段階として
詳細な統計データに基づく事故実態の分析を行った.
国 内 に お け る 従 来 の 交 通 事 故 統 計 ( 4 5 ) で は ,車 両 形 状 が ボ ン ネ ッ ト 付 き 車
両とキャブオーバ型車両の分類までは可能であった.しかし,どちらも同
じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ る S U V と セ ダ ン に つ い て は ,事 故 統 計 デ ー
タ中にこれらの区分が存在しないため,両者を区別して統計的に分析する
ことは不可能であった.
警 察 庁 が 定 め た 交 通 事 故 統 計 原 票( 本 票 )中 の 車 種 分 類 を 表 2 . 1 に 示 す .
死傷事故を起こした四輪自動車は,当事者種別と車両形状の組合せによっ
て分類された状態で,警察庁の交通事故統計データベースに記録される.
12
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
13
例 え ば , 1BOX タ イ プ の 軽 乗 用 車 の 場 合 は , 当 事 者 種 別 の 欄 で 「 軽 サ イ ズ
の 乗 用 車 」, 車 両 形 状 の 欄 で 「 1 B O X タ イ プ の 乗 用 車 」 に 分 類 さ れ る こ と に
なる.しかしながら,この事故統計ではボンネットタイプの乗用車は,す
べ て 「 セ ダ ン タ イ プ 」 に 一 括 さ れ て 記 録 さ れ て し ま う の で , SUV と セ ダ ン
を分離して分析することは不可能である.
Ta b l e 2 . 1 Ve h i c l e C l a s s i f i c a t i o n s ( J a p a n e s e N a t i o n a l P o l i c e A g e n c y )
Speciation
Passenger Vehicle
Specific
Heavy
Heavy
Sized
Sized
Vehicle
Vehicle
Standard
Sized
Vehicle
Light
Motor
Vehicle
Special
Light
Motor
Vehicle
Commercial Vehicle
Specific
Heavy
Heavy
Sized
Sized
Vehicle
Vehicle
Standard
Sized
Vehicle
Light
Motor
Vehicle
Vehicle Shape
Passenger Vehicle
Commercial Vehicle
Bus Micro 1BOX Trailer Sedan Refrigerator Dump Cement Tank Dust Panel Van, 1BOX Light Trailer Other
Bus
Type Van
Truck Mixer Truck Cart Container
Van
Trucks
Truck
Carrier
交通事故発生時に際して,事故の処理を担当する警察官は,事故に関与
した自動車に関する情報を前節にて述べた交通事故統計原票に記入するが,
このとき,車両の登録番号も記入することになっている.
I TA R D A の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ は , こ の 登 録 番 号 を 車 検 の 登 録 デ ー タ に
リンクさせることによって,事故に関与した車両の製造メーカや型式,通
称名などといった登録上の情報を検索することが可能なシステムとしてつ
く ら れ て い る . す な わ ち , I TA R D A の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 利 用 す る こ と
で,事故に関与した車両の登録番号から,その製造メーカや型式,通称名
が照会されるため,車高や車両総重量が明らかになるので,車高や車両総
重量毎にクラス区分した状態で事故データを抽出することが可能となる.
し た が っ て ,通 常 の 交 通 事 故 統 計 で は 分 析 す る こ と が 困 難 で あ っ た S U V と
セダンの衝突事故も,車高や車両総重量でクラス区分する定義さえ決める
ことができれば,統計的な分析ができるようになる.
すなわち,交通事故統合データでは,同じくボンネット付き乗用車であ
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
14
っても,自動車の全高や車両総重量によって,事故統計データをクラス区
分して抽出することが可能となる.そこで,この交通事故統合データを利
用し,ボンネット付き乗用車の事故統計データを全高や車両総重量でクラ
ス 区 分 す る こ と に よ っ て , SUV と セ ダ ン を 分 離 し , 全 国 統 計 的 な 分 析 を 可
能とするよう,新たな分析手法を試みた.
こ の 比 較 デ ー タ に 基 づ き ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る 人 体 傷 害 程 度 と ,
セダン同士での衝突における人体傷害程度の比較が可能となる.これによ
り , こ れ ま で 推 測 に よ っ て 語 ら れ て き た , SUV と セ ダ ン と の 衝 突 事 故 の 実
状を統計的な側面から明らかにし,コンパティビリティーについて検討を
行うことができるようになった.
2.2
セ ダ ン と SUV の 新 た な 分 類 手 法
前 述 し た よ う に ,こ れ ま で は 事 故 統 計 デ ー タ か ら S U V と セ ダ ン を 分 離 す
る こ と は 困 難 で あ っ た .オ フ ロ ー ド を 走 行 す る 目 的 で 開 発 さ れ た S U V の 車
体構造は強固であり,セダンに比べて重量は重く,車高は高い.そこで,
交通事故統合データを用いて事故統計の分析を行うに当たって,車高と車
両 総 重 量 の 2 種 類 の 条 件 に よ る S U V と セ ダ ン の 区 分 の 可 能 性 に つ い て ,検
討を行った.
本 研 究 で は ,車 高 や 車 両 総 重 量 で S U V と セ ダ ン の ク ラ ス 区 分 を 定 義 す る
こ と を 試 み , 1991 年 か ら 1998 年 に か け て 国 内 で 登 録 さ れ た , 軽 自 動 車 を
除く主なボンネット付き乗用車の車高および車両総重量での車種毎の分布
状況を調べることとし,次のような検討を行った.
セ ダ ン に つ い て は ,排 気 量 が 1 5 0 0 c c 以 下 の 車 種( S d n - S ),排 気 量 が 1 5 0 0 c c
超 2 0 0 0 c c 以 下 の 車 種 ( S d n - M ), 排 気 量 が 2 0 0 0 c c 超 の 車 種 ( S d n - L ) の 3
ク ラ ス に ,SUV に つ い て は , オ フ ロ ー ド で の 走 行 を 目 的 と し な い ミ ニ バ ン
や 軽 快 な 車 種 ( S U V- M ), 従 来 か ら の 本 格 的 な オ フ ロ ー ド 用 車 種 ( S U V- L )
の 2 ク ラ ス に 区 分 す る こ と を 試 み ,そ れ ぞ れ を 構 成 す る 車 種 の 寸 法( 車 長 ,
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
15
車 幅 , 車 高 ) お よ び 車 両 総 重 量 に つ い て 一 覧 表 に ま と め た ( 表 2 . 2 – 2 . 6 ).
Table 2.2 Specifications of Sdn-S Class Vehicles
Manufacturer
NISSAN
MAZDA
SUBARU
SUZUKI
TOYOTA
MITSUBISHI
HONDA
ISUZU
DAIHATSU
Model Code Vehicle size
Gross Vehicle Weight Model Name
Length
Width
Height
E-FN15
4140
1690
1385
1335 LUCINO E-JN15
4140
1690
1385
1080 PULSAR
E-K10
3735
1590
1395
945 MARCH
E-HK11
3720
1585
1425
1105 MARCH
E-FB13
4220
1670
1375
1225 SUNNY
E-B14
4295
1690
1385
1265 SUNNY
E-JB14
4285
1690
1375
1385 LUCINO E-FN14
4243
1670
1385
1285 PULSAR
E-FN15
4340
1690
1385
1355 PULSAR
E-BHA3S
4035
1695
1405
1225 FAMILIA
E-EC5SA
4215
1695
1310
1270 AZ-3
E-EC5S
4215
1695
1310
1270 EUNOS
E-BHA5PSF
4410
1695
1420
1385 FORD LAZER
E-D23PF
3825
1655
1440
1115 FORD FESTIVA
E-BG5P
4250
1690
1385
1315 FAMILIA
E-BHA3P
4335
1695
1420
1295 FAMILIA
E-BHA6R
4400
1695
1440
1465 FAMILIA
E-DB3PA
3800
1655
1470
1115 REVUE
E-BHALPF
4420
1695
1420
1355 FORD LAZER
E-KA7
3695
1535
1420
1045 JUSTY
E-AA2
4370
1660
1385
1225 REONE
E-AA44S
3745
1575
1350
1035 CULTUS
E-GA11S
3870
1680
1395
1175 CULTUS
E-GS21S
4195
1690
1380
1225 CULTUS
HK-NHW10
4275
1695
1490
1515 PRIUS
E-AE101
4270
1685
1380
1255 COROLLA
E-AE111
4315
1690
1385
1275 COROLLA
E-AE100
4385
1695
1315
1285 COROLLA
E-AE101
4275
1695
1305
1330 COROLLA LEVIN
E-AE110
4305
1695
1305
1210 COROLLA LEVIN
E-AE100
4290
1685
1375
1265 SPRINTER
E-AE110
4315
1690
1385
1335 SPRINTER
E-AE110
4305
1695
1305
1210 SPRINTER
E-EL55
4125
1660
1385
1295 TERCEL
E-EL53
4125
1660
1370
1225 CORSA
F-EL41
3930
1645
1365
1095 TERCEL
E-EL51
3915
1600
1370
1175 TERCEL
E-EL53
3915
1660
1370
1205 CORSA
E-EL45
3930
1645
1365
1195 COROLLAⅡ
E-EL53
3915
1660
1370
1165 COROLLAⅡ
E-EL51
3915
1660
1370
1115 COROLLAⅡ
E-EP82
3800
1600
1380
1025 STARLET
E-EP91
3790
1625
1400
1085 STARLET
E-CJ1A
3890
1680
1365
1225 MIRAGE
E-CM5A
4290
1690
1405
1515 MIRAGE
E-CK2A
4290
1690
1395
1265 MIRAGE
E-CJ4J
4230
1690
1365
1245 MIRAGE
E-CM5A
4290
1690
1405
1535 LANCER
E-CB3A
4270
1690
1385
1265 LANCER
E-CK1A
4290
1690
1395
1265 LANCER
E-MB3
4480
1695
1390
1305 DMANI
E-MB5
4480
1695
1405
1425 DMANI
E-EK2
4450
1695
1390
1255 CIVIC
E-EK5
4450
1695
1405
1405 CIVIC 4WD
E-EK2
4180
1695
1375
1245 CIVIC
E-JT151F
4195
1680
1390
1285 GEMINI
E-MJ4
4480
1695
1390
1305 GEMINI
E-MJ6
4480
1695
1405
1425 GEMINI 4WD
E-GC1E43G
4340
1690
1405
1335 IMPREZA
E-A101S
4340
1660
1375
1325 APPLAUSE
E-G203S
4085
1620
1385
1195 CHARADE
E-G200S
3750
1620
1385
1095 CHARADE
E-G201S
3750
1620
1420
1195 CHARADE
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
16
Table 2.3 Specifications of Sdn-M Class Vehicles
Manufacturer
TOYATA
NISSAN
MITSUBISHI
MAZDA
HONDA
ISUZU
SUBARU
Model Code Vehicle size
Gross Vehicle
Length
Width
Height
E-SV30
4670
1695
1395
E-SV40
4625
1695
1410
E-CX81
4690
1695
1375
E-SV40
4650
1695
1390
E-AT212
4455
1695
1410
E-AT170
4480
1690
1370
E-AT210
4520
1695
1410
E-TJG00
4600
1740
1355
E-TJG00
4595
1735
1395
E-HK30
4595
1695
1460
E-UF31
4805
1695
1370
E-A31
4690
1695
1375
E-FC33
4690
1695
1365
E-HR32
4580
1695
1340
E-EU13
4585
1695
1370
E-EU14
4565
1695
1395
E-P11
4430
1695
1400
E-R11
4490
1695
1325
E-HC35
4745
1730
1400
E-HR33
4640
1720
1340
E-HR33
4720
1720
1360
E-S11A
4690
1695
1440
E-DA2A
4450
1695
1405
E-E32A
4560
1695
1430
E-E39A
4560
1695
1440
E-E33A
4560
1695
1405
E-E39A
4560
1695
1415
E-E35A
4560
1695
1405
E-EC5A
4680
1740
1420
E-EC1A
4620
1740
1420
E-E52A
4625
1730
1400
E-E53A
4610
1730
1370
E-GF8P
4575
1695
1440
E-GFER
4575
1695
1455
E-MAEP
4550
1695
1335
E-MAEPE
4550
1695
1335
GF-GF8OF
4575
1695
1440
E-MBEP
4695
1750
1340
E-CF3
4635
1695
1420
E-CF5
4635
1695
1440
E-CB5
4690
1695
1355
E-DC1
4380
1695
1335
E-EK3
4525
1695
1370
E-BB5
4520
1750
1315
E-CJ2
4635
1695
1420
E-BC3
4545
1690
1395
E-BD5C43R
4605
1695
1405
Weight Model Name
1425
1465
1635
1485
1405
1295
1385
1585
1575
1565
1735
1565
1475
1535
1435
1465
1465
1335
1625
1555
1595
1755
1425
1375
1685
1585
1755
1455
1755
1515
1435
1525
1455
1300
1535
1555
1455
1555
1535
1645
1585
1270
1285
1470
1535
1485
1565
CAMRY
CAMRY
MARK Ⅱ
VISTA
CARINA
CORONA
CORONA
CAVALIER
CAVALIER
CREW
LEOPARD
CEFIRO
LAUREL
SKYLINE
BLUEBIRD
BLUEBIRD
PRIMERA
PRESEA
LAUREL
SKYLINE
SKYLINE
DEVONAIR V2000
CHARISMA
GALLANT
GALLANT VR4
ETERNA
ETERNA ZR4
ETERNA SAVA
GALLANT VR-4
GALLANT VR-G
GALLANT
EMERAUDE
CAPELLA
CAPELLA 4WD
PERSONA
EUNOS 300
FORD TELSTER
ENFINI MS-8
ACCORD
ACCORD 4WD
ACCORD
INTEGRA
INTEGRA
PRELUDE
ASKA
LEGACY
LEGACY
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
Table 2.4 Specifications of Sdn-L Class Vehicles
Manufacturer
TOYOTA
NISSAN
MITSUBISHI
MAZDA
HONDA
TOYATA
NISSAN
Model Code Vehicle size
Length
Width
Gross Vehicle Weight Model Name
Height
E-JZS155
4900
1795
1420
1885 CROWN
E-JZS155
4820
1760
1425
1805 CROWN
E-JZS160
4805
1800
1435
1875 ARIST
E-MCV21
4845
1790
1395
1745 WINDOM
E-MCX10
4845
1785
1435
1745 AVALON
E-SXV20
4760
1785
1420
1390 CAMRY
E-JZX100
4760
1755
1400
1410 MARK Ⅱ
E-GZG50
5270
1890
1475
2265 CENTURY
E-VG45
5770
1890
1460
2365 CENTURY
E-Y33
4870
1765
1425
1825 CEDRIC
E-ENY33
4875
1765
1445
1975 GLORIA
E-JMY33
4895
1765
1425
1825 LEOPARD
E-BCNR32
4675
1780
1360
1760 SKYLINE GT-R
E-PA32
4760
1770
1410
1585 CEFIRO
E-F36A
4805
1785
1435
1785 DIAMANTE
E-F13A
4740
1775
1435
1715 SIGMA
E-S22A
4975
1815
1440
1875 DEVONAIR
E-TA5P
4825
1770
1395
1705 MILLENIA
E-HEEP
4895
1805
1420
1815 SENTIA
E-UA1
4840
1785
1405
1655 INSPIRE
E-UA1
4840
1785
1405
1655 SABER
E-KA9
4955
1810
1435
1905 LEGEND
E-UCF21
4995
1830
1415
2045 CELSIOR
E-JZZ30
4900
1805
1350
1835 SOARER
E-JHG50
5225
1830
1425
2265 PRESIDENT
E-PHG50
5075
1830
1425
2215 PRESIDENT
E-FHY33
4970
1820
1445
1915 CIMA
17
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
Table 2.5 Specifications of SUV-M Class Vehicles
Manufacturer
MITSUBISHI
NISSAN
HONDA
TOYOTA
MAZDA
DAIHATSU
SUZUKI
Model Code Vehicle size
Length
Width
Gross Vehicle Weight Model Name
Height
E-N23WG
4460
1740
1730
1760 RVR
E-N23WG
4375
1740
1690
1710 RVR
E-N23W
4360
1695
1680
1600 RVR
E-N23W
4360
1695
1680
1595 RVR
E-N84W
4585
1775
1650
1895 CHARIOT GRANDIS
E-N84W
4585
1775
1650
1840 CHARIOT GRANDIS
E-H57A
3500
1545
1660
1200 PAJERO Jr.
E-N30
4680
1765
1675
1725 RNESSA
E-NN30
4680
1765
1690
1915 RNESSA 4WD
E-PM11
4545
1690
1680
1795 PRAIRIE
E-PM11
4545
1690
1680
1805 PRAIRIE
E-N30
4680
1765
1675
1735 RNESSA
E-RA4
4765
1790
1690
1985 ODYSSEY
E-RA4
4765
1770
1660
1975 ODYSSEY
E-RH1
3950
1695
1750
1560 S-MX
E-RD1
4470
1750
1705
1665 CR-V
E-AE111
4135
1690
1660
1550 COROLLA SPACIO
E-AE111
4135
1690
1660
1415 COROLLA SPACIO
E-TJ51W
4100
1695
1720
1585 PROCEED
E-TF51W
3720
1695
1700
1470 PROCEED
Q-F71G
3715
1670
1840
1775 RAGAR
E-J100G
3865
1555
1760
1335 TERIOS
E-J100G
3785
1555
1715
1325 TERIOS
E-F300S
3705
1635
1725
1470 ROCKY
E-F300S
3705
1580
1725
1450 ROCKY
E-TD61W
4100
1695
1720
1625 ESCUDO
E-TA51W
3720
1695
1700
1430 ESCUDO
E-TA01W
3570
1635
1705
1330 ESCUDO
E-JB32W
3510
1545
1670
1200 JIMNY SIERRA
E-TA01R
3560
1635
1665
1260 ESCUDO
E-TA01R
3560
1635
1695
1290 ESCUDO
E-TD01W
3975
1635
1700
1465 ESCUDO
18
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
19
Table 2.6 Specifications of SUV-L Class Vehicles
Manufacturer
TOYOTA
NISSAN
MITSUBISHI
MAZDA
HONDA
SUBARU
ISUZU
Model Code Vehicle size
Gross Vehicle
Length
Width
Height
4240
1730
1865
KD-KZJ90W
4815
1790
1935
KD-KZJ95W
Q-LJ78W
4585
1790
1900
KD-KZN185W
4850
1800
1805
4540
1800
1765
E-RZN185W
KD-KZJ95W
4675
1820
1880
E-FJ80G
4970
1900
1900
5090
2170
2075
KC-BXD20V
4980
1930
1860
KC-HDJ81V
E-FZJ80G
4970
1930
1860
MIKD-R20
4580
1755
1805
MIKD-KR20
4105
1755
1805
KD-WYY61
4340
1840
1855
E-LR50
4530
1840
1730
KD-PR50
4530
1840
1790
KD-JRR50
4670
1840
1750
E-JLR50
4670
1840
1730
E-WGY61
4910
1930
1865
KD-V26C
4030
1695
1880
E-V23C
4030
1695
1850
KB-J55FF
3455
1665
1910
E-H57A
3500
1545
1660
Q-V24W
4030
1695
1825
Q-V44W
4650
1695
1945
KD-V46W
4650
1695
1975
E-V25W
4060
1785
1890
KD-V26WG
4060
1785
1845
E-V21W
4060
1785
1860
KD-V46WG
4680
1775
1900
E-K99W
4530
1775
1730
E-UV66R
4950
1720
1800
KD-UVL6R
4990
1810
1815
KD-UBS69GWH
4660
1745
1840
Q-UBS55FWS
4550
1650
1820
Q-UBS55FW4KLT
4470
1650
1815
4120
1650
1820
Q-UBS55CWK1
4660
1745
1840
E-UBS25GW
KD-UCS69GW
4585
1765
1750
KD-UCS69DWM
4165
1780
1670
4130
1790
1710
E-UGS25DW
E-UBS25DW
4230
1835
1835
KD-UBS69GW
4660
1835
1840
Weight Model Name
2025
2860
2400
2125
2005
2235
2660
3395
2770
2670
2305
2055
2315
2095
2175
2185
2105
2635
2080
1920
1730
1200
2005
2325
2525
2175
2225
2035
2485
2185
2145
2215
2315
2075
2075
1910
2355
2175
1980
1970
2115
2475
LANDCRUISER PRADO
LANDCRUISER
LANDCRUISER PRADO
HILUXSURF
HILUXSURF
LANDCRUISER PRADO
LANDCRUISER
MEGA CRUISER
LANDCRUISER
LANDCRUISER
MISTRAL
MISTRAL
SAFARI
TERRANO V6
TERRANO
TERRANO
TERRANO
SAFARI
PAJERO
PAJERO
JEEP
PAJERO Jr.
PAJERO
PAJERO
PAJERO
PAJERO
PAJERO
PAJERO
PAJERO
CHALLENGER
PROCEED
PROCEED
HORISON
BIGHORN
BIGHORN
BIGHORN
BIGHORN
MU
MU
VEHICROSS
BIGHORN
BIGHORN
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
20
こ の 結 果 に 基 づ き , 図 2.1 に 示 し た よ う に , SUV と セ ダ ン を 車 高 お よ び 車
両総重量でクラス区分する定義を決定し,事故統計分析を行った.
図 2 . 1 を み る と ,細 線 で 区 分 し た よ う に ,S d n - S の 多 く は 車 両 総 重 量 1 . 4 t o n
以 下 に , Sdn-M の 多 く は 車 両 総 重 量 1.4ton か ら 1.7ton の 間 に , Sdn-L の 多
く は 車 両 総 重 量 1.7ton 超 に 分 布 し て お り , い ず れ も 車 高 1500mm 以 下 で あ
る .ま た ,S U V- M の 多 く が 車 両 総 重 量 2 . 0 t o n 未 満 に ,S U V- L の 多 く が 車 両
総 重 量 2.0ton 以 上 に 分 布 し て お り , い ず れ も 車 高 1650mm 以 上 で あ る .
以 上 の こ と か ら , 同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ る SUV と セ ダ ン は ,
車両総重量と車高を組み合わせて判別することにより,交通事故統合デー
タベース上での区分が可能であると言える.このようにして,従来の事故
統 計 上 で は 区 分 が 不 可 能 で あ っ た S U V と セ ダ ン を ,初 め て 区 分 す る こ と が
可 能 と な っ た . さ ら に 本 研 究 で は , 図 2.1 中 に 示 し た 細 線 で 区 切 っ た 範 囲
で セ ダ ン を 3 種 類 , SUV を 2 種 類 に 分 類 し , そ れ ぞ れ の 種 類 を 交 通 事 故 統
合データ中から区分した上で,全国統計的な視点から事故分析を行った.
Vehicle Height (mm)
2000
1800
1600
1400
1200
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
Gross Vehicle Weight (ton)
Sdn-S
△ Sdn-M
○ Sdn-L
◇
▲ SUV-M
● SUV-L
Fig.2.1 Gross Vehicle Weight and Height (1991-1998,Japan)
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
21
2.3
車両重量が同程度のセダンと SUV の衝突事故の分析
2.3.1
分析対象の決定
図 2 . 1 で 分 類 し た 車 種 の う ち ,S U V- M と S d n - M の 前 面 対 前 面 衝 突 に 着 目
し た 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 用 い た 事 故 統 計 分 析 を 行 っ た . 図 2.1 の 車 種 別
分 布 状 態 の 通 り ,S U V- M と S d n - M の 車 両 総 重 量 自 体 に は ,大 き な 差 異 は 存
在しない.したがって,衝突における乗員の傷害程度や傷害部位に異なる
特徴があるとすれば,バンパ高さやサイドメンバ高さの違い等の重量以外
の要因,すなわち前面形状や車体構造の相違が影響をおよぼしたものと考
えることができる.そこで,以下のように,運転者の死亡重傷者率および
運転者の傷害部位の構成について両車種同士の衝突事故を抜き出し,解析
を行った.
2.3.2
衝突速度による運転者の死亡重傷者率
ま ず , 前 面 対 前 面 衝 突 事 故 に お け る S U V- M お よ び S d n - M の 運 転 者 の 衝
突速度別死亡重傷者率についての分析を行った.運転者の死亡重傷者率 R
は , 式 (2.1)に よ っ て 定 義 し た .
R=
Nf
´ 100
N f + N0
(2.1)
N f: 死 亡 者 数 と 重 傷 者 数 の 和
N 0: 軽 傷 者 数 と 無 傷 者 数 の 和
また,前面対前面衝突における相対衝突速度ΔV は,車両速度の絶対値の
和 ( 図 2.2) で あ り , 式 (2.2)の よ う に 表 さ れ る .
Δ V = | V S U V- M | + | V S d n - M |
| V S U V - M | : S U V- M 側 の 危 険 認 知 速 度
|VSdn-M|: Sdn-M 側 の 危 険 認 知 速 度
(2.2)
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
22
I TA R D A が 保 有 す る 危 険 認 知 速 度 の デ ー タ を , 衝 突 速 度 に 近 似 し た も の と
み な し , そ の 和 を 相 対 衝 突 速 度 と し て 式 (2.2)に 従 い 算 出 し た . な お , 危 険
認知速度とは,運転者が衝突相手の存在を認識し,危険を認知した時の速
度のことであり,厳密には実際の衝突速度ではない.ただし,危険認知速
度と実際の衝突速度には相関性があり,近似できるものであるという報告
が な さ れ て お り (74)(75), 本 研 究 で は , 危 険 認 知 速 度 を 衝 突 速 度 と み な し て
扱うこととする.
| V SUV-M |
| V Sdn-M |
Fig.2.2 Front-to-Front Collision (SUV-M to Sdn-M)
図 2.3 に 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 と し て 求 め た 危 険 認 知 相
対 速 度 Δ V と 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 R の 関 係 を 示 す .相 対 速 度 Δ V が 6 0 k m / h
以 下 の 速 度 域 に つ い て は ,S U V- M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と S d n - M 運 転 者 の
死 亡 重 傷 者 率 に あ ま り 大 き な 差 は み ら れ な い が , 相 対 速 度 Δ V が 70km/h
以 上 に な る と ,S U V- M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と S d n - M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者
率の差は開いていく.この傾向は重量が同程度の車両同士に関して得られ
た も の で あ り , 注 目 す べ き 結 果 と 考 え ら れ る . こ の 理 由 は , 図 2.1 で 示 し
た 通 り ,S U V- M の 車 高 が S d n - M に 比 し て 高 く ,バ ン パ 高 さ や サ イ ド メ ン バ
高さに上下のオフセットが存在するためと考えられる.したがって,衝突
エネルギーの大きい速度域になると,後述するように,この上下方向のオ
フセットが車両重量以外の要因として効いてくるため,運転者の死亡重傷
者率の差が大きくなっていくと推測することができる.
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
23
16
14
Sdn-M
SUV-M
12
10
8
6
4
2
0
0-10 -20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90 -100 -110 -120
Relative Velocity ΔV (km/h)
Fig.2.3 Fatal or Serious Injury Rate R and Relative Velocity Δ V
2.3.3
死亡または重傷運転者の傷害部位の構成
次 に , 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 に , 死 亡 ま た は 重 傷 と な っ
た 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構 成 に つ い て 分 析 を 行 っ た .S U V- M と S d n - M の 衝 突
に お け る Sdn-M の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 81 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図
2 . 4 に , S U V- M の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 5 7 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図
2.5 に 示 す .
頸 部 お よ び 胸 部 損 傷 の 構 成 率 に 関 し て は , Sdn-M 運 転 者 ( 図 2.4) の 方
が , S U V- M の 運 転 者 ( 図 2 . 5 ) よ り 若 干 高 い . 反 対 に S U V- M 運 転 者 は 脚 部
損傷の構成率が高い.このように運転者の損傷主部位の構成についても
S U V- M と S d n - M の 間 に 異 な る 傾 向 が み ら れ る .以 上 の よ う に ,傷 害 部 位 の
構成が異なる理由として,衝突時における車両の潰れ方に相違のあること
が 推 測 さ れ る .す な わ ち ,車 高 の 低 い Sdn-M 側 で は 乗 員 空 間 の う ち 比 較 的
上の部分が主に潰されることとなるので,運転者の頸部や胸部が傷害部位
と な る 割 合 が 高 く な り ,一 方 ,車 高 の 高 い S U V- M 側 で は 乗 員 空 間 の う ち 下
の部分が主に潰されることとなるので,運転者の脚部が傷害部位となる割
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
24
合が高くなっていると考えられる.
比 較 の た め Sdn-M 同 士 の 衝 突 に よ る 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 807 人 ) の 傷
害 部 位 別 構 成 を 図 2 . 6 に , S U V- M 同 士 の 衝 突 に よ る 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数
13 人 ) の 傷 害 部 位 別 構 成 を 図 2.7 に 示 す . Sdn-M 同 士 で の 衝 突 ( 図 2.6)
は 図 2 . 4 に 比 べ 頸 部 あ る い は 胸 部 損 傷 の 構 成 率 が 少 な く な っ て い る .ま た ,
S U V- M 同 士 で の 衝 突 ( 図 2 . 7 ) で は , 図 2 . 5 に 比 べ 頸 部 あ る い は 胸 部 損 傷
の構成率が多くなっている.このことからも車両重量自体には差が少ない
車両同士の衝突であっても,車体構造が異なる車両との衝突では乗員の傷
害部位の構成に相違のあることが,このことからも明らかである.なお,
上 述 の 事 故 統 計 分 析 結 果 を 有 意 水 準 0.05 で 検 定( 片 側 検 定 )し ,Sdn-M 運
転者の頸部傷害について有意であることを確認した.
Injuries of Drivers (%)
35
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig.2.4 Injuries of Sdn-M Drivers (SUV-M to Sdn-M)
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
0
Head
Injuries of Drivers (%)
35
Fig.2.5 Injuries of SUV-M Drivers (SUV-M to Sdn-M)
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
25
Injuries of Drivers (%)
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig. 2.6 Injuries of Sdn-M Drivers (Sdn-M to Sdn-M)
Injuries of Drivers (%)
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig.2.7 Injuries of SUV-M Drivers (SUV-M to SUV-M)
2.3.4
傷害種別の詳細について
次に,死亡もしくは重傷を負った運転者の各損傷主部位の傷害種別の構
成についても分析を行った.
図 2.8 に , Sdn-M 同 士 の 前 面 対 前 面 衝 突 で 死 亡 も し く は 重 傷 を 負 っ た 運
転者の各損傷主部位の傷害内容の構成を示す.
・ 頭 部 : 裂 擦 過 お よ び 打 撲 傷 が 約 60%を , 骨 折 が 約 30%を 占 め る .
・ 頸 部 : 頚 椎 捻 挫 が 約 65%を 占 め る .
・ 胸 部 : 骨 折 が 約 75%.
(c) Chest
10
0
0
30
20
(a) Head
80
70
70
60
50
40
30
10
0
0
Neck, Others
50
Neck, Bruise or
Cuts, Abrasions
50
Neck, Sprain
60
Injuries of Drivers (%)
40
Neck, Fracture
Head, Others
Head, Bruise or
Cuts, Abrasions
60
Abdomen, Others
10
Head, Ruptured
70
Abdomen, Bruise or
Cuts, Abrasions
60
Injuries of Drivers (%)
Head, Fracture
Injuries of Drivers (%)
70
Abdomen, Ruptured
Chest, Others
Chest, Bruise or
Cuts, Abrasions
Chest, Ruptured
Chest, Fracture
Injuries of Drivers (%)
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
26
40
30
20
(b) Neck
50
40
30
20
20
10
(d) Abdomen
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
80
27
100
90
70
80
Injuries of Drivers (%)
Injuries of Drivers (%)
60
50
40
30
70
60
50
40
30
20
20
10
(e) Pelvis
Legs, Others
Legs, Bruise or
Cuts, Abrasions
Legs, Sprain
Legs, Fracture
Legs, Amputation
0
Pelvis, Others
Pelvis, Bbruise or
Cuts, Abrasions
Pelvis, Fracture
0
Pelvis, Ruptured
10
(f) Legs
Fig.2.8 Injuries of Sdn-M Drivers (Sdn-M to Sdn-M)
・ 腹 部 : 内 臓 破 裂 が 約 60%.
・ 腰 部 : 骨 折 が 約 70%.
・ 脚 部 : 骨 折 が 約 90%.
図 2 . 9 に ,S U V- M と S d n - M の 前 面 対 前 面 衝 突 に お い て ,死 亡 も し く は 重
傷 を 負 っ た Sdn-M 側 運 転 者 の 各 損 傷 主 部 位 の 傷 害 内 容 の 構 成 を 示 す .
・ 頭 部 : 裂 擦 過 お よ び 打 撲 傷 は 約 45%, 骨 折 は 約 40%. Sdn-M 同 士 で の
衝突に比べ,裂擦過および打撲傷の構成率が減少し,骨折が増
加している.
・ 頸 部 : 頚 椎 捻 挫 が 約 60% 弱 と Sdn-M 同 士 で の 衝 突 に 比 べ , や や
減少している.その代わりに裂擦過および打撲傷がやや増加し
ている.
・ 胸 部 : 骨 折 が 約 75%. Sdn-M 同 士 で の 衝 突 と 同 じ 程 度 .
(c) Chest
0
(a) Head
80
70
70
60
50
40
30
0
0
Neck, Others
5
Abdomen, Others
15
Neck, Bruise or
Cuts, Abrasions
20
Neck, Sprain
25
Neck, Fracture
30
Injuries of Drivers (%)
35
Abdomen, Bruise or
Cuts, Abrasions
60
Injuries of Drivers (%)
Head, Others
Head, Bruise or
Cuts, Abrasions
Head, Ruptured
Head, Fracture
Injuries of Drivers (%)
50
Abdomen, Ruptured
Chest, Others
Chest, Bruise or
Cuts, Abrasions
Chest, Ruptured
Chest, Fracture
Injuries of Drivers (%)
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
28
70
45
40
60
50
40
30
20
10
10
0
(b) Neck
50
40
30
20
20
10
10
(d) Abdomen
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
90
100
80
90
80
40
30
10
0
0
Pelvis, Fracture
(e) Pelvis
Pelvis, Others
10
Pelvis, Bruise or
Cuts, Abrasions
20
Pelvis, Ruptured
20
Legs, Others
30
50
Legs, Bruise or
Cuts, Abrasions
40
60
Legs, Sprain
50
70
Legs, Fracture
60
Legs, Amputation
Injuries of Drivers (%)
70
Injuries of Drivers (%)
29
(f) Legs
Fig.2.9 Injuries of Sdn-M Drivers (SUV-M to Sdn-M)
・ 腹 部 : 内 臓 破 裂 が 約 65%. Sdn-M 同 士 で の 衝 突 に 比 べ , や や 増 加 し て
いる.
・ 腰 部 : 骨 折 が 約 85%. Sdn-M 同 士 で の 衝 突 に 比 べ , 増 加 し て い る . そ
の代わりに裂擦過および打撲傷が減少している.
・ 脚 部: 骨 折 が 約 9 5 % .S d n - M 同 士 で の 衝 突 に 比 べ ,や や 増 加 し て い る .
前 節 に て ,SUV と 衝 突 し た セ ダ ン の 運 転 者 は , セ ダ ン 同 士 の 衝 突 の 場 合
に比べ,頭部や胸部といった上半身の傷害の構成率が多くなっていること
を確認した.しかしながら,傷害の内容について分析したところ,同じく
頭 部 傷 害 と い っ て も , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン の 運 転 者 と セ ダ ン 同 士 で は ,
傷害種別の構成が異なっていることを確認した.すなわち,セダン同士の
衝 突 で の 頭 部 傷 害 で は ,裂 擦 過 お よ び 打 撲 傷 の 構 成 率 が 多 か っ た の が ,S U V
と 衝 突 し た セ ダ ン で は ,骨 折 が 裂 擦 過 お よ び 打 撲 傷 よ り も 多 く な っ て い る .
ま た , 頸 部 傷 害 に つ い て も , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 の 方 が , セ ダ ン
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
30
同士の衝突に比べ,捻挫が少なくなり,代わりに裂擦過および打撲傷の構
成 率 が 増 え て い る .そ の 他 の 損 傷 主 部 位 に つ い て も ,そ れ ぞ れ S U V と 衝 突
したセダン運転者の傷害の方が,重い被害を負う傾向である.
2.4
車両重量の差が大きいセダンと SUV の衝突との比較
2.4.1
比較対象の選定
2 . 3 節 で は ,車 両 重 量 が ほ ぼ 同 程 度 の S U V- M と S d n - M の 衝 突 に 着 目 し た
事故統計分析を行い,乗員の人体損傷程度や傷害部位の構成に違いがみら
れ る こ と を 確 認 し た . こ の こ と か ら , SUV と セ ダ ン の 車 両 重 量 に 極 め て 大
きな差異が存在する場合については,乗員の人体傷害程度や傷害部位の構
成 に ,前 述 の S U V- M と S d n - M の 衝 突 以 上 の 極 端 な 違 い が 表 れ る と 考 え る .
そ こ で 本 節 で は , 図 2.1 に 示 し た 車 種 別 分 布 に て 車 両 重 量 に 最 も 大 き な 差
異 が 存 在 す る S U V- L と S d n - S の 衝 突 を 比 較 対 象 に 選 定 ,両 車 の 衝 突 に お け
る衝突速度と運転者の死亡重傷者率の関係,運転者の傷害部位の構成につ
いて考察する.
2.4.2
衝突速度による運転者の死亡重傷者率
前 面 対 前 面 衝 突 事 故 に お け る S U V- L お よ び S d n - S の 運 転 者 の 衝 突 速 度 別
死 亡 重 傷 者 率 に つ い て の 分 析 を 行 っ た . 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を
対象として求めた危険認知相対速度ΔV と運転者の死亡重傷者率Rの関係
を 図 2 . 1 0 に 示 す .S U V- L の 運 転 者 と S d n - S の 運 転 者 に お け る 死 亡 重 傷 者 率
の 差 は , 図 2 . 3 に 示 し た S U V- M と S d n - M に 対 す る 同 様 な 比 較 図 よ り も 特
徴 が 極 端 に 強 く 出 て い る .す な わ ち ,圧 倒 的 に S U V- L の 死 亡 重 傷 者 数 が 少
なくなっている.これは,車体構造の差に加えて,車両重量が異なるため
であることは明らかではあるが,定量的なデータとして注目すべきことと
考える.
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
31
30
SUV-L
Sdn-S
25
20
15
10
5
0
0-10 -20
-30
-40
-50
-60
-70 -80 -90 -100 -110 -120
Relative Velocity Δ V (km/h)
Fig.2.10 Fatal or Serious Rate R and Relative Velocity ΔV
2.4.3
死亡または重傷運転者の傷害部位の構成
死 亡 ま た は 重 傷 と な っ た S d n - S と S U V- L に 関 す る 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構
成 に つ い て 1995 年 か ら 1999 年 に 発 生 し た 死 傷 事 故 を 対 象 と し て 分 析 を 行
っ た . 図 2 . 1 1 に S U V- L と 衝 突 し た S d n - S の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 2 3 4 人 )
に つ い て の 損 傷 主 部 位 部 位 別 構 成 率 を 示 す . Sdn-S の 運 転 者 に つ い て は ,
胸部および脚部が傷害部位となっている割合が多い.この傾向は前節の結
果 ( 図 2.4) と 類 似 し て い る .
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
0
Head
Injuries of Drivers (%)
30
Fig.2.11 Injuries of Sdn-S Drivers (SUV-L to Sdn-S)
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
32
Injuries of Drivers (%)
Injuries of Drivers (%)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig.2.12 Injuries of SUV-L Drivers (SUV-L to Sdn-S)
一 方 , S U V- L の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 4 2 人 ) に つ い て の 損 傷 主 部 位 部
位 別 死 傷 者 の 構 成 率 を 図 2 . 1 2 に 示 す .S U V- L の 運 転 者 に つ い て は ,頸 部 が
傷 害 部 位 と な っ て い る 割 合 が 多 い . こ の こ と は 前 節 の 図 2.5 の 傾 向 と は や
や 異 な っ て い る . 重 量 が 軽 く , 車 高 も 低 い Sdn-S の 車 両 前 面 と 衝 突 し た 場
合 , S U V- L の 車 両 は 前 面 部 分 が 破 損 す る も の の , 乗 員 空 間 は ほ と ん ど 潰 れ
ることはないので,このケースでの死亡重傷者は少なく,通常,死亡ある
いは重傷に至る損傷は脚部より頸部の方に多いという一般的特徴がそのま
ま比率として表れたためではないかと推測される.
この点については,2 次衝突の有無に関する裏付けが本来は必要と思わ
れ る が , I TA R D A が 保 有 す る 交 通 事 故 統 合 デ ー タ だ け か ら は , 2 次 衝 突 の
有無を判別することは出来ない.この観点からの詳細な分析は今後の課題
である.
2.5
考察
セ ダ ン と S U V の 前 面 対 前 面 衝 突 に つ い て ,第 2 . 3 節 で は 車 両 重 量 の 差 が
少 な い S U V- M と S d n - M の 衝 突 ,第 2 . 4 節 で は 車 両 重 量 の 差 が 大 き い S U V- L
と S d n - S の 衝 突 の 事 故 統 計 分 析 を 行 い ,以 下 の こ と を 確 認 し た .す な わ ち ,
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
33
全 般 的 に SUV 側 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が セ ダ ン 側 運 転 者 よ り も 低 く
なっていること.そして,その差が衝突速度の増大と共に拡がっていくこ
と . ま た , SUV, セ ダ ン 共 に 衝 突 相 手 に よ っ て 死 亡 あ る い は 重 傷 と な っ た
運転者の傷害部位の構成が異なっていることが明らかになった.本節では
その理由について以下のような考察を行う.
SUV と セ ダ ン は 通 常 バ ン パ 高 さ や サ イ ド メ ン バ の 高 さ が 異 な っ て い る
( 図 2 . 1 3 ). こ の た め , S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お い て は , 両 車 の サ イ ド メ
ンバは上下方向にオフセットした状態で衝突するものと考えられる.
衝 突 に よ る 荷 重 の 考 察 に , 荷 重 の 伝 達 経 路 の 考 え 方 (76)-(81)を 用 い れ ば ,
セダン同士の前面対前面衝突において,衝突による入力は,車両前部につ
いては主としてサイドメンバを通じて伝達され,客室部への入力はフロア
下部のフロアメンバを伝わる経路とサイドシルおよびトンネル部に伝わる
経 路 と に 分 か れ て 後 方 に 伝 え ら れ る ( 図 2 . 1 4 ). 一 方 , エ ン ジ ン の 客 室 へ
の侵入は,フロア部のトンネルが主として反力を受け持っている.客室保
護対策を考慮して設計されたセダンでは,このような客室に加わる力の伝
達 経 路 に 沿 っ た 客 室 の 補 強 が な さ れ て い る ( 7 6 ) .そ の た め ,客 室 を 保 護 す る
ために,衝突によるサイドメンバの付け根部分(トーボード周り)を力の
受け手としてうまく利用し,衝突による入力を力の伝達経路に沿わせ,効
果的に後方に伝達させていく構造法が採られている.
SUV
Sedan
Side-Member
Side-Member
Fig. 2.13 Heights of Side-Members
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
Front
Dash-Panel
34
Floor-Tunnel
Floor-Member
Cross-Member
Side-Member
Side-Sill
Fig.2.14 Load Transfer Courses in Plain View (Sedan)
し か し な が ら ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 に お い て は ,先 述 の 通 り ,S U V
のサイドメンバがセダンのサイドメンバと上下にオフセットしているため,
セダン側は衝突の力の受け手である客室下部を有効に利用することができ
ない.したがって,セダン客室には,補強されている荷重の伝達経路以外
の 部 位 に 大 き な 入 力 が 加 わ る こ と に な る . 衝 突 時 に SUV, セ ダ ン 両 車 に 加
わる衝撃力自体は等しいのであるが,セダン側では効果的な荷重の受け方
が で き な い こ と か ら ,セ ダ ン の 客 室 構 造 の 方 が 強 度 面 で 不 利 と な る .特 に ,
高い速度域での衝突においては,客室が入力に耐えきれず変形は大きくな
る.それに伴って運転者の死亡重傷者率も高くなってしまっているものと
考 え る こ と が で き る . こ の こ と は 図 2.4 お よ び 図 2.5 の 傷 害 部 位 の 相 違 と
も符合している.
2.6
事故例との照合
本章では,以上の分析に関する具体例を参考のため記載しておきたい.
上 記 分 析 に 対 応 す る 具 体 的 事 故 例 は 多 く 存 在 す る が (82)(83), こ こ で は 2.4
節 で 述 べ た S U V- L と S d n - S に 関 し , 公 表 し 得 る 一 例 を 示 す . な お , こ こ で
紹介する事故例での事故車両それぞれの重量,衝突速度,最大変形量およ
び サ イ ド メ ン バ の 地 上 高 は 表 2.7 に 示 し た 通 り で あ る .
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
35
Table 2.7 Collision of SUV-L to Sdn-S
SUV-L
Sdn-S
Total Vehicle
Weight with
Occupants (ton)
1.90
0.88
Collision Relative Side-Member
Velocity (km/h) Lower Height
(mm)
460
100
340
( a ) S U V- L
(b) Sdn-S
Fig.2.15 Deformation of SUV-L and Sdn-S
Crash
Stroke
(mm)
400
1000
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
36
こ の 事 故 例 に お け る S U V- L 車 両 と S d n - S 車 両 の サ イ ド メ ン バ 地 上 高 の 差
は 1 2 0 m m あ る こ と か ら ,衝 突 時 に お い て サ イ ド メ ン バ が オ ー バ ー ラ ッ プ し
ている部分はかなり少ないとみなすことができる.車両の潰れ状況を図
2.15 に 示 す . Sdn-S の 車 両 に つ い て は フ ェ ン ダ ー 部 分 も 含 め た ボ ン ネ ッ ト
部分だけでなく,前席部分の乗員空間も大きく潰れており,それによって
ステアリング部分や計器盤は後退し,運転席シート背面部との距離が狭ま
っている.この事故例は重量の差が大きく,必ずしも同重量の場合と同一
視はできないが,上下のオフセットにより客室変形が問題となる場合の,
より強調されたケースと見ることができる.
2.7
第 2 章の結論
(1) ど ち ら も 同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ る た め , SUV と セ ダ ン の 衝
突事故については,従来の交通事故統計では分析することが不可能で
あ っ た .そ こ で ,I TA R D A が 保 有 す る 交 通 事 故 統 合 デ ー タ 上 で ,S U V と
セ ダ ン を 分 類 す る 手 法 を 開 発 し た .こ の 手 法 を 用 い る こ と に よ り ,S U V
とセダンのコンパティビリティーを全国統計的に論ずることが可能と
なった.
(2) セ ダ ン と SUV の 前 面 対 前 面 衝 突 で は , 車 両 重 量 に 大 き な 差 が な い 場 合
で あ っ て も , SUV 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が セ ダ ン 運 転 者 よ り も 低
くなっている.また,その差は衝突速度の増大と共に拡がっていく.
さ ら に ,S U V ,セ ダ ン 共 に 衝 突 相 手 に よ っ て 死 亡 あ る い は 重 傷 と な っ た
運転者の傷害部位の構成が異なるなど,コンパティビリティーを論ず
る上での特徴が明らかとなった.
(3) 上 記 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー 上 の 特 徴 は , SUV の サ イ ド メ ン バ が セ ダ
ンのサイドメンバと上下にオフセットして衝突するためと考えられる.
このため,セダンはサイドメンバ取付部を衝突の力の受け手として有
効に利用することができない.したがって,客室変形が増大する傾向
第 2 章 .交通事故統合データによるSUV とセダンの前面対前面衝突事故の分析
37
にあり,それに伴って運転者の死亡重傷者率も高くなっていると考え
ることができる.
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
38
第 3章
セ ダ ン と SUV の 衝 突 全 般 に お け る
セダン運転者の傷害の分析
3.1
分析対象の検討
前 章 で は , I TA R D A が 保 有 す る 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 活 用 す る こ と に よ
っ て ,重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 前 面 衝 突 に お け る 事 故 統 計 分 析 を
行った.そして,車両重量に大きな差がない場合であっても,乗員傷害の
程度や部位に差異のあること等,コンパティビリティーを論ずる上での特
徴を明らかにした.
本 章 で は ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 全 般 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検
討 す る た め ,重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る 乗 員 傷 害 の 特 徴 に
ついての分析を試みた.
セ ダ ン と SUV の 衝 突 全 般 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 検 討 を 行 う
に当たって,ボンネット付き乗用車の分類は,前章と同様に,セダンにつ
い て は , S d n - S , S d n - M , S d n - L の 3 ク ラ ス に , S U V に つ い て は , S U V- M ,
S U V- L の 2 ク ラ ス の 計 5 車 種 に 分 類 し た .
こ れ ら は , 車 高 と 車 両 総 重 量 に よ っ て 区 分 す る こ と が で き る ( 図 2 . 1 ).
I TA R D A が 保 有 す る 交 通 事 故 統 合 デ ー タ は , 車 高 お よ び 車 両 総 重 量 毎 に 区
38
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
39
分されたデータを抽出できるので,これを利用することにより車高と車両
総重量によって区分された車種の全国統計的な事故データの抽出を行うこ
とが可能となる.
次に,本章における分析対象の選定を行った.前章では,車両総重量自
体 に は 大 き な 差 異 が 存 在 し な い S U V- M と S d n - M の 衝 突 分 析 を 行 い , バ ン
パ高さやサイドメンバ高さの違い等,前面形状や車体構造の相違といった
重量以外の要因が,衝突における乗員の傷害程度や傷害部位に影響をおよ
ぼ し て い る こ と を 確 認 し た が ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ
リ テ ィ ー を 検 討 す る た め に は ,車 両 重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 の 全
般的な状況も把握しておく必要がある.
そ こ で 上 述 5 車 種 を 対 象 に , 図 3.1 中 に 矢 印 で 示 し た 衝 突 し た 組 み 合 わ
せについて事故統計分析を行った.
SDN-S
Sdn-S
SUV-M
SDN-M
Sdn-M
SUV-L
SDN-L
Sdn-L
Fig.3.1 Car-to-Car Collisions
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
3.2
3.2.1
40
対 SUV 衝 突 に お け る セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 分 析
本章における分析
自動車同士の衝突事故において,乗員の安全は最優先に保護すべきもの
である.したがって,効果的な衝突安全対策を考えていくためには,乗員
傷 害 の 傾 向 や 特 徴 を よ く 捉 え て お く こ と が 重 要 で あ る . そ こ で , SUV と 衝
突したセダン運転者の傷害程度および損傷主部位の構成について,傾向や
特徴の分析を行うこととした.
前 章 で 述 べ た S U V- M と S d n - M の 衝 突 で は , 重 量 が 同 じ 程 度 で あ っ て も
衝 突 速 度 が 高 く な る と S d n - M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と S U V- M 運 転 者 の 死
亡 重 傷 者 率 の 差 が 増 え て い く こ と( 図 2 . 3 ),お よ び 死 亡 重 傷 を 負 っ た S d n - M
運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 ( 図 2.4) は Sdn-M 同 士 の 衝 突 に お け る 損 傷 主
部 位 の 構 成 ( 図 2.6) に 比 べ , 胸 部 や 頸 部 と い っ た 上 半 身 の 傷 害 が 多 い ,
と い っ た 特 徴 を 確 認 し た . そ し て , こ れ ら の 特 徴 は , SUV と セ ダ ン の 車 両
前面構造の違いからもたらされるものと推測した.
そ こ で ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 全 般 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 検 討
を試みるため,運転者の傷害程度や損傷主部位の構成についての事故統計
分 析 を 実 施 す る こ と と し た . 本 章 に お け る 分 析 対 象 も 前 章 と 同 じ く , 1995
年 か ら 1 9 9 9 年 の 死 傷 事 故 と し た .ま た ,本 章 で の 衝 突 速 度 Δ V は ,I TA R D A
が 保 有 す る 危 険 認 知 速 度 の 絶 対 値 の 和 で あ り , 式 (3.1) の よ う に 表 さ れ る
( 図 3 . 2 ).危 険 認 知 速 度 は ,実 際 の 衝 突 速 度 に 近 似 で き る ( 7 4 ) ( 7 5 ) こ と か ら ,
本章においても危険認知速度を衝突速度とみなして扱った.なお,セダン
の 死 亡 重 傷 運 転 者 数 の 詳 細 は 表 3.1 に 示 し た 通 り で あ る .
本 章 で は ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 全 般 に お け る セ ダ ン 運 転 者 の 乗 員 傷 害 の
特 徴 を 明 ら か に す べ く ,対 象 を 車 両 重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 ,す
な わ ち , 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 あ る い は 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の
衝突等に拡げて事故統計分析を行った.
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
41
(3.1)
Δ V= |VSUV|+|VSdn|
|VSUV|: SUV 側 の 危 険 認 知 速 度
|VSdn|: セ ダ ン 側 の 危 険 認 知 速 度
|VSUV|
|VSdn|
Fig.3.2 Front-to-Front Collision (SUV to Sedan)
Table 3.1 Number of Fatal or Serious Drivers
Sdn-S
Sdn-M
Sdn-L
SUV-M
SUV-L
Number of Fatal or Serious Drivers
Sdn-S
Sdn-M
Sdn-L
1079
655
243
1156
807
292
631
460
186
124
81
32
234
170
65
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
3.2.2
42
S U V- M と S d n - S の 衝 突
図 3 . 3 に S U V- M と S d n - S の 衝 突 に お け る そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 危 険 認 知 相
対速度別死亡重傷者率を示す.なお,本章における運転者の死亡重傷者率
R も , 前 章 の 式 (2.1)に よ っ て 算 出 し た も の で あ る . こ れ は 車 両 重 量 が 重 い
S U V と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 で あ る .S U V- M 運 転 者 と S d n - S 運 転 者 の 死 亡 重 傷
者 率 の 差 は 速 度 の 増 加 と 共 に 拡 大 し て い る . Sdn-S 同 士 の 衝 突 お よ び
S U V- M と 衝 突 し た S d n - S 運 転 者 そ れ ぞ れ に お け る 死 亡 重 傷 者 の 損 傷 主 部 位
の 構 成 を 図 3 . 4 , 図 3 . 5 に 示 す . S U V- M と 衝 突 し た S d n - S 運 転 者 の 損 傷 主
部 位 は , Sdn-S 同 士 の 衝 突 の 場 合 に 比 べ 頭 部 や 腹 部 , 脚 部 の 傷 害 が 多 い .
S U V- M と S d n - S の 衝 突 に お け る S d n - S 運 転 者 の 傷 害 は S U V- M と S d n - M
の 衝 突 に お け る Sdn-M 運 転 者 の 傷 害 ( 図 2.4) と 全 般 的 な 傾 向 は 似 て い る
が,次のような特徴がみられる.
・ Sdn-S 運 転 者 の 方 が Sdn-M よ り も 死 亡 重 傷 者 率 が 高 い .
・ 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 率 に つ い て み る と , Sdn-S 運 転 者 は
Sdn-M 運 転 者 に 比 べ 脚 部 傷 害 が 多 い .
こ れ は ,車 両 重 量 が 重 い S U V- M と 軽 い S d n - S の 衝 突 に お い て ,セ ダ ン 側 の
車 体 の 損 壊 量 は , 車 両 重 量 が 同 じ 程 度 の S U V- M と S d n - M の 衝 突 の 場 合 と
比べて大きくなるためと考える.
3.2.3
S U V- M と S d n - L の 衝 突
図 3 . 6 に S U V- M と S d n - L の 衝 突 に お け る そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 危 険 認 知 相
対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 を 示 す .こ れ は 車 両 重 量 が 軽 い S U V と 重 い セ ダ ン の
衝 突 で あ る . 速 度 が 9 0 k m / h 以 下 で は S d n - L 運 転 者 の 方 が S U V- M 運 転 者 よ
り も 死 亡 重 傷 者 率 が 高 い .S d n - L 同 士 の 衝 突 お よ び S U V- M と 衝 突 し た S d n - L
運 転 者 そ れ ぞ れ に つ い て の 死 亡 重 傷 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 を 図 3 . 7 ,図 3 . 8 に
示 す . S U V- M と 衝 突 し た S d n - L 運 転 者 は , S d n - L 同 士 の 衝 突 に 比 べ , 頭 部
や頸部,胸部といった上半身の傷害が多い.
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
43
20
Sdn-S
SUV-M
15
10
5
0
0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120
Relative Velocity ΔV (km/h)
Fig.3.3 Fatal or Serious Injury rate R and Relative Velocity Δ V, SUV-M to Sdn-S Collision
25
20
15
10
Legs
Arms
Pelvis
Back
Chest
Neck
Face
0
Abdomen
5
Head
Injuries
of Drivers (%)
Injuries
of drivers (%)
30
Fig.3.4Injuries
InjuriesofofSdn-S
Sdn - Drivers
S drivers(Sdn-S
(Sdn-StotoSdn-S)
Sdn- S)
Fig.3.4
25
20
15
10
Legs
Arms
Pelvis
Back
Chest
Neck
Face
0
Abdomen
5
Head
InjuriesofofDrivers (%)
drivers (%)
Injuries
30
Fig.3.5 Injuries of Sdn-S Drivers (SUV-M to Sdn-S)
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
44
25
Sdn-L
SUV-M
20
15
10
5
0
0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120
Relative Velocity ΔV (km/h)
Fig.3.6 Fatal or Serious Injury Rate R and Relative Velocity Δ V, SUV-M to Sdn -L Collision
25
20
15
10
Legs
Arms
Pelvis
Back
Chest
Neck
Face
0
Abdomen
5
Head
Injuries
of of
Drivers (%)
Injuries
drivers (%)
30
Fig.3.7 Injuries of Sdn-L Drivers (Sdn-L to Sdn- L)
25
20
15
10
Legs
Arms
Pelvis
Back
Chest
Neck
Face
0
Abdomen
5
Head
InjuriesofofDrivers (%)
drivers (%)
Injuries
30
Fig.3.8 Injuries of Sdn-L Drivers (SUV-M to Sdn-L)
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
45
以 上 の こ と か ら ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お い て ,S U V は 自 車 よ り も 車 両
重量が重いセダンに対しても攻撃性を有していると考えることができる.
そして,その攻撃性は,セダン運転者の上半身の傷害が多くなるという特
徴 を も っ て い る . こ れ は , SUV と セ ダ ン の 衝 突 で は , 車 両 重 量 の 差 以 外 の
要因,例えば車両前面構造の違い等からもたらされる攻撃性が効いている
ためと考える.
3.2.4
S U V- L と S d n - M の 衝 突
図 3 . 9 に S U V- L と S d n - M の 衝 突 に お け る そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 危 険 認 知 相
対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 を 示 す . こ の 衝 突 は , 3 . 2 . 2 節 で 述 べ た S U V- M と
Sdn-S の 衝 突 と 同 様 , 車 両 重 量 の 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 で あ る .
S U V- L 運 転 者 と S d n - M 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は ,速 度 の 増 加 と 共 に 拡
大 し て い る .S U V- L と 衝 突 し た S d n - M で 死 亡 も し く は 重 傷 と な っ た 運 転 者
の 損 傷 主 部 位 の 構 成 は Sdn-M 同 士 の 衝 突 ( 図 2.6) の 場 合 に 比 べ , 胸 部 の
傷 害 が 多 く ( 図 3 . 1 0 ), 全 般 的 に S U V- M と S d n - S の 衝 突 ( 図 3 . 5 ) と 似 た
傾向となった.
3.2.5
S U V- L と S d n - S の 衝 突
前 節 の S U V- L と S d n - M の 衝 突 よ り も 車 両 重 量 の 差 が 大 き い S U V と セ ダ
ン の 衝 突 で あ る S U V- L と S d n - S の 衝 突 に お け る ,そ れ ぞ れ の 運 転 者 の 危 険
認 知 相 対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 は ,図 2 . 1 0 に 示 し た 通 り で あ る .S U V- L 運 転
者 と S d n - S 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は ,S U V- L と S d n - M の 衝 突 で の そ れ
ぞ れ の 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 ( 図 3 . 9 ) 以 上 に 著 し い . S U V- L と 衝 突
し た Sdn-S で 死 亡 も し く は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 は , 図
2 . 11 に 示 し た 通 り で あ る .S U V- L と 衝 突 し た S d n - S 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 は ,
胸部と脚部の傷害が目立っている.
な お , 前 述 し た S U V- M と S d n - S の 衝 突 ( 図 3 . 5 ) や S U V- L と S d n - M の
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
46
衝 突 の 衝 突 ( 図 3.10) で も , 共 通 し て 脚 部 の 傷 害 が 多 く な っ て い る こ と か
ら ,重 量 が 自 車 よ り も 重 い S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 は ,車 両 前 面 形 状
の違いと車両重量の差の両方
からもたらされる攻撃性によって,上半身
だけでなく,脚部にも傷害を負うケースが多くなるのではないかと推測す
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
る.
40
Sdn-M
35
30
25
SUV-L
20
15
10
5
0
0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120
Relative Velocity ΔV (km/h)
Fig.3.9 Fatal or Serious Injury Rate R and Relative Velocity Δ V, SUV-L to Sdn-M Collision
25
20
15
10
Fig.3.10 Injuries of Sdn-M Drivers (SUV-L to Sdn-M)
Legs
Arms
Pelvis
Back
Chest
Neck
Face
0
Abdomen
5
Head
Injuriesof
ofDrivers (%)
drivers (%)
Injuries
30
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
3.3
47
考察
第 2 章 に て ,重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 事 故 デ ー タ を 統 計 的
に 分 析 す る こ と に よ っ て , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 は , セ ダ ン 同 士 の
衝突の場合に比べ,頭部や胸部といった上半身の傷害が多くなることを確
認 し た (84). 本 章 に お い て , 分 析 対 象 を 拡 げ , 重 量 の 異 な る SUV と セ ダ ン
の衝突事故についての事故統計データを分析し,セダン運転者の傷害に次
のような特徴が見られることを確認した.なお,前節で述べた事故統計分
析 結 果 を 有 意 水 準 0.05 で 検 定( 片 側 検 定 )し ,複 数 の 損 傷 主 部 位 に つ い て
有意であることを確認した.
・ 衝 突 相 手 の SUV の 重 量 が , 自 車 よ り も 重 い 場 合 で も 軽 い 場 合 で も , セ
ダ ン 運 転 者 の 胸 部 傷 害 は 20% 以 上 で あ る .
・ セ ダ ン よ り SUV の 方 が 重 い 場 合 , セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 は 頭 部 や 胸 部 等
上半身だけでなく,脚部の傷害も多い.
・ セ ダ ン よ り SUV の 方 が 軽 い 場 合 も , セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 は 上 半 身 に 多
い が , こ れ は 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と の 衝 突 で セ ダ ン 運 転 者 が 被 る 上
半身の傷害よりも多い.
これらの特徴は,次のような理由のため生じるものと考えられる.
・ セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ と SUV の サ イ ド メ ン バ は , 上 下 に オ フ セ ッ ト し
て い る ( 図 2 . 1 3 ). こ の た め , S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お い て は , セ ダ ン
は 効 果 的 な 荷 重 の 受 け 方 が で き な い こ と か ら ,車 体 上 部 に 大 き な 荷 重 が
入 力 さ れ る .し た が っ て ,S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 で は 胸 部 の 傷 害
が多くなる.
・ セ ダ ン よ り も SUV の 方 が 車 両 重 量 が 重 い 場 合 に は , 重 量 の 差 も 効 い て
く る の で ,セ ダ ン は 客 室 全 体 が 潰 れ る か た ち と な り ,セ ダ ン 運 転 者 は 胸
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
48
部等上半身の傷害が多くなるばかりでなく,脚部の傷害も多くなる.
・ 反 対 に , セ ダ ン よ り も SUV の 方 が 車 両 重 量 が 軽 い 場 合 に は , SUV の 攻
撃性を決定する要因はサイドメンバのオフセット等の車両前面構造の
違 い で あ る . し た が っ て , こ の 種 の 衝 突 で は , 同 重 量 の SUV と セ ダ ン
の衝突以上に,セダン運転者の上半身の傷害が多くなる.
以 上 ,重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 で も ,セ ダ ン 乗 員 を 効 果 的 に 保 護
するためには,車体上部への荷重入力を受け止めるための対策が有効と考
える.
3.4
事故例との照合
セ ダ ン と SUV の 衝 突 に 関 す る 具 体 的 事 故 例 は 多 く 存 在 す る (82)(83). こ こ
で は S U V- L と S d n - M の 衝 突 の う ち 公 表 し 得 る 例 を 紹 介 す る .
図 3 . 1 1 は , S U V- L と S d n - M の 衝 突 の 事 例 で あ る . こ れ は , 車 両 重 量 の
重 い S U V と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 で あ り ,セ ダ ン 車 体 上 部 の 損 壊 が 著 し い こ と
か ら ,第 2 章 で 述 べ た サ イ ド メ ン バ の オ フ セ ッ ト に よ る S U V の 攻 撃 性 の 存
在 を 確 認 で き る . ま た , SUV と セ ダ ン の 重 量 に 差 が あ る こ と か ら , セ ダ ン
の客室は全体的に大きく変形している.すなわち,これらの事例における
セダンの損壊状況からは,セダン運転者に上半身と脚部双方の傷害が生じ
ていることを容易に推測することができる.したがって,この事例は,第
2 章 で の 車 両 重 量 の 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 に つ い て の 考 察 を 裏 付 け
ている.
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
49
( a ) S U V- L
(b) Sdn-M
Fig. 3.11
Deformation of SUV-L and Sdn-M
Table 3.2 Collision of SUV-L to Sdn-M
SUV-L
Sdn-M
Total Vehicle
Weight with
Occupants (ton)
2.16
1.64
Collision Relative Side-Member
Velocity (km/h) Lower Height
(mm)
455
90
300
Crash
Stroke
(mm)
500
1200
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
50
3.5
バリア換算速度を指標に用いた車体の潰れ程度の分析
3.5.1
車体の潰れ程度の分析
バリア換算速度とは,当該車両の変形量が等価となるバリア(剛体壁)
に衝突させたときの衝突速度のことであり,本研究では車両の損壊程度の
大 小 を 示 す 指 標 と し て 用 い る こ と と し た . す な わ ち , SUV と セ ダ ン の 車 体
構造上の違いが,前面衝突事故における車両損壊程度や乗員傷害程度にお
よぼす影響をみるため,衝突を 1 次元衝突・質量,線形ばねモデルとみな
して計算したバリア換算速度計算値と事故例データから求めた実測値の差
を求めることにより車体構造の違いが車体の損壊程度におよぼす影響を定
量的に明らかにした.
ま ず , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る , 車 体 構 造 の 違 い が , 車 両 の 損 壊 程
度におよぼす影響の寄与度を確認するため,セダン同士の衝突事故および
SUV 対 セ ダ ン の 衝 突 事 故 に お け る バ リ ア 換 算 速 度 の 比 較 を 行 っ た .
自動車の衝突安全性を論ずるために従来から用いられてきたバリア換算
速度を導出する手法には,以下の 2 種類の方法がある.ひとつは,自動車
の衝突を 1 次元衝突・質量,線形ばねモデルとみなし,車体構造の違いに
よる影響は全く考慮しないで導出したバリア換算速度計算値である.そし
てもうひとつは,衝突により潰れた車体各部の変形量から衝突エネルギー
を導くことによって導出したバリア換算速度実測値である.そこで,バリ
ア換算速度計算値と実測値の差を求めることによって,車体構造の違いが
車両の損壊におよぼす影響の寄与度の確認を行った.
ま ず ,バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 の 概 要 を 述 べ る .自 動 車 の 衝 突 を 図 3 . 1 2 に
示すような 1 次元・衝突質量,線形ばねモデルとみなした場合,この系全
体 の エ ネ ル ギ ー 吸 収 Δ E は 式 (3.2)の よ う に 表 す こ と が で き る .
DE =
Δ
1 m1 m2
( V1 + V2 )) 2
(
2 m1 + m 2
(3.2)
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
51
Fig. 3.12 Simple Mass-Spring Model for Front-to-Front Collision
な お , こ の 系 に お け る 衝 突 時 の 反 発 係 数 は e=0 と す る . ま た , 式 (3.2)に
お け る m1, V1 は 車 両 1 の 重 量 お よ び 速 度 ,m2,V2 は 車 両 2 の 重 量 お よ び 速
度である.
こ の 衝 突 に お い て , そ れ ぞ れ の 車 両 の 剛 性 を k1, k2, 最 大 車 体 変 形 量 を
δ 1, δ 2, エ ネ ル ギ ー 損 失 を Δ E1, Δ E2 と す る と , Δ E は 式 (3.3)の よ う に
表すことができる.
1
2
1
2
DEE1 1++DΔ
EE
ΔDE = k1d 12 + k 2d 22 = Δ
2 2
(3.3)
式 (3.2)お よ び 式 (3.3)よ り , 車 両 2 の 衝 突 に よ る エ ネ ル ギ ー 損 失 Δ E2 は 式
(3.4)の よ う に 表 す こ と が で き る .
Δ
DE2 =
k1
1 m1m2
( V1 + V2 )) 2
(
2 m1 + m2 k1 + k 2
(3.4)
一 方 ,車 両 2 が バ リ ア に 衝 突 し た と き( 図 3 . 1 3 )の エ ネ ル ギ ー 損 失 Δ E B は ,
式 (3.5)の よ う に 表 す こ と が で き る .
Δ
DE B =
1
2
m2VB
2
(3.5)
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
52
F i g . 3 . 1 3 Ve h i c l e f o r R i g i d B a r r i e r C r a s h
バリア換算速度は,車両 1 と車両 2 の衝突における車両 2 のエネルギー損
失 Δ E 2 と ,車 両 2 が バ リ ア に 衝 突 し た と き の エ ネ ル ギ ー Δ E B が 等 し く な る
速 度 で あ る の で , 式 (3.4)お よ び 式 (3.5)よ り 式 (3.6)を 得 る . こ こ で , 車 両 1
と車両 2 の車体構造が全く同じものであれば,車両 1 と車両 2 の車体の剛
性 は 等 し く ,k 1 = k 2 と な る の で ,車 両 2 の バ リ ア 換 算 速 度 は ,式 ( 3 . 7 ) の よ う
に導くことができる.
VB1 = (
( V1 + V2 ))
m1 k1
(( m1 + m2 ))((k1 + k 2 ))
VB1 = (( V1 + V2 )
)
m1
2(
( m1 + m2 ))
(3.6)
(3.7)
式 (3.7)に お い て , バ リ ア 換 算 速 度 を 決 定 す る 要 因 は , 車 両 の 重 量 比 だ け
で あ る .す な わ ち ,こ の 式 に よ っ て 導 か れ た バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 V B 1 は ,
車体構造の違いによる影響を考慮していない値とみなすことができる.
式 (3.7)の バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 と 車 速 の 和 の 比 (VB1/(V1+ V2))を バ リ ア 換
算 速 度 係 数 ( E B 1 ) と お い て ( 式 ( 3 . 8 ) ), 衝 突 す る 2 台 の 車 両 の 重 量 比 ( m 1 / m 2 )
と の 関 係 を 求 め る と ,図 3.14 の よ う に な る .す な わ ち ,車 体 構 造 の 違 い に
よる影響を考慮していない衝突においては,バリア換算速度は,衝突する
2 台の車両の重量比に反比例して変化することがわかる.
V
EB1 = ()
m1
2(
( m1 + m2 ))
(3.8)
Equivalent Barrier Speed Coefficient
(E B1)
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
53
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0.0
0
2.0
2
4.0
4
6.0
6
8.0
8
10.0
10
m 1/m 2
Fig. 3.14 Equivalent Barrier Speed
次 に ,バ リ ア 換 算 速 度 実 測 値 の 概 要 を 述 べ る .バ リ ア 換 算 速 度 実 測 値 は ,
衝 突 に よ り 損 壊 し た 事 故 車 両 の 車 体 変 形 量 ( 図 3.15) を 測 定 す る こ と に よ
っ て 得 ら れ た 衝 突 時 に お け る 車 体 の エ ネ ル ギ ー 吸 収 量 か ら 導 出 さ れ る (85).
すなわち,車体の変形量には衝突時における車体の変形は車両の重量比だ
けでなく,サイドメンバ高さの違いのような構造部材の配置の差や車体剛
性の差等といった,車体構造の違いによる影響も含んでいるので,バリア
換算速度実測値は車両の重量差による影響と車体構造の違いによる影響の
両方の要因を含んだ値であると考えることができる.
そこで,バリア換算速度計算値と実測値の差を求めることによって,車
体構造の違いが衝突時における車両の損壊程度におよぼす影響の寄与度に
ついて検討を行った.すなわち,車体構造と剛性が同じ車両同士の衝突な
らば,車体の変形に影響を与える要因は車両の重量の差だけであるので,
バリア換算速度実測値と計算値の間に差は存在しない.反対に,車体構造
が異なる車両による衝突ならば,車両重量比だけでなく車体構造の違いも
車体の変形に影響をおよぼすので,バリア換算速度実測値と計算値の差は
大きくなるはずである.そこで,バリア換算速度計算値と実測値の差の大
き さ が車体構造の違いが車体損壊におよぼす影響の寄与度を示す指標となると考えた.
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
54
: Vehicle Deformation
Crash Energy
= ΣVehicle Deformation×Each Region’s S t i f f n e s s
F i g . 3 . 1 5 Ve h i c l e D e f o r m a t i o n
Ta b l e 3 . 3
Equivalent Barrier Speed (Accident Case 1-4)
Vehicle
Type
Case 1
Case 2
Case 3
Case 4
Equivalent Barrier Speed (km/h)
Caluculation
(1)
Practice ((1)-(2))/(2)
(2)
*100(%)
A Sedan
1150
45
40
40
0
B
Sedan
1145
35
40
40
0
A
SUV
1905
75
40
30
33
B
Sedan
875
25
59
70
-16
A Sedan
1635
50
53
60
-12
B
2155
50
47
30
57
6005
50
16
15
7
745
20
47
45
4
A
B
3.5.2
Vehicle
Weight
Velocity
with
(km/h)
Occupants
(kg)
SUV
Middle
Sized
Truck
Light
Class
Truck
バリア換算速度計算値と実際の実測値の比較
式 (3.7)に お い て , バ リ ア 換 算 速 度 を 決 定 す る 要 因 は 車 両 の 重 量 差 だ け で
あ り , 車 両 形 状 や 構 造 な ど 他 の 要 因 は 含 ま れ て い な い . そ こ で 式 (3.7)か ら
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
55
求めた計算値と事故車の車体潰れ量から求めた実測値の比較を行い, 重量
以 外 の 要 因 の 寄 与 度 に つ い て の 確 認 を 行 っ た . な お , 表 3.3 中 に 今 回 比 較
を行った 4 つの事例についての実車両総重量,事故時の衝突速度,バリア
換算速度の計算値,実測値および計算値と実測値の差の率を示す.また,
各 事 例 に お け る 車 両 の 損 壊 状 況 に つ い て は , 事 例 (1)は 図 3.16, 事 例 (2)は
図 2 . 1 5( p . 3 5 ), 事 例 ( 3 ) は 図 3 . 1 1( p . 4 9 ), 事 例 ( 4 ) は 図 3 . 1 7 に 示 し た 通 り で
ある.
(1)セ ダ ン 同 士 の 正 面 衝 突 ( 事 例 (1))
事 例 ( 1 ) で の 計 算 値 と 実 測 値 は 同 じ で あ っ た ( 図 3 . 1 6 ). こ れ は 同 じ セ ダ
ン同士の衝突であるので車体変形によるエネルギー吸収特性が同等な上,
実車両重量も同等であったためである.したがって,この事例では重量以
外の要因は寄与していないと考えられる.
Fig. 3.16 Sedan Collision (Case 1)
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
56
(2)セ ダ ン と SUV の 正 面 衝 突 ( 事 例 (2), 事 例 (3))
事 例 (2), 事 例 (3)共 に SUV で は 計 算 値 の 方 が 実 測 値 よ り も 高 く な り , セ
ダ ン で は 計 算 値 の 方 が 事 故 値 よ り も 低 く な っ て お り ,S U V に 比 べ て セ ダ ン
の 潰 れ 量 が 非 常 に 大 き い ( 図 2 . 1 5 , 図 3 . 1 1 ). し た が っ て , こ れ ら の 事 例
では重量以外の要因,例えば,車体構造の違いがバリア換算速度を決定す
る要因として寄与していると考えられる.
す な わ ち , 第 2 章 で 述 べ た 通 り ,SUV の サ イ ド メ ン バ が セ ダ ン の サ イ ド
メ ン バ と 上 下 に オ フ セ ッ ト し て 衝 突 す る た め と 考 え ら れ る ( 図 2 . 1 3 ). こ
のため,セダンはサイドメンバの取付け部を衝突の力の受け手として有効
に利用することができない.したがって,セダン側は,セダン同士の衝突
に お い て 客 室 入 力 を 想 定 し て 補 強 さ れ て い る 荷 重 の 伝 達 経 路 ( 図 2.14) 以
外 の 部 位 に 大 き な 入 力 が 加 わ る こ と に な る . 衝 突 時 に は , SUV, セ ダ ン 両
車共に衝撃力が加わるが,セダン側では効果的な荷重の受け方ができない
ため,セダン側の客室構造の方が強度面において不利となる.
以上のような理由から,この組み合わせの衝突を 1 次元衝突・質量,線
形 ば ね モ デ ル で 表 す 場 合 , k1≠ k2 と な る た め 式 (3.7)を 適 用 す る こ と は で き
な い . す な わ ち , 車 両 の 剛 性 比 ( k1/ k2) を 考 慮 し な け れ ば な ら な い .
な お , 事 例 (2)お よ び 事 例 (3)の 車 両 の 剛 性 比 ( kSedan/ kSUV) に つ い て , 表
3.3 に 示 し た バ リ ア 換 算 速 度 実 測 値 お よ び 衝 突 速 度 を 式 (3.6)に 代 入 し て 求
めると以下の通りとなる.
・ 事 例 (2)の 剛 性 比 ( kSedan/ kSUV) =0.4
・ 事 例 (3)の 剛 性 比 ( KSedan/ kSUV) =0.6
(3)軽 ト ラ ッ ク と 中 型 ト ラ ッ ク の 正 面 衝 突 ( 事 例 (4))
こ の 事 例 (4)で は ,軽 ト ラ ッ ク の キ ャ ブ 全 体 が 大 き く 潰 れ , 中 型 ト ラ ッ ク
は バ ン パ や フ ロ ン ト パ ネ ル の 部 分 が 車 体 変 形 し て お り ( 図 3 . 1 7 ), バ リ ア
換算速度の計算値と実測値の差は小さい.
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
57
Fig. 3.17 Truck Collision (Case 4)
こ れ は ,軽 ト ラ ッ ク と 中 型 ト ラ ッ ク の 車 両 重 量 比 が 非 常 に 大 き く( m 2 / m 1
= 0 . 1 2 ), そ し て , ど ち ら も キ ャ ブ オ ー バ 型 車 両 で あ り , 中 型 ト ラ ッ ク に つ
いてみると,バンパやフロントパネルが損傷しているところから,損傷し
た 領 域 で は , 車 両 の 剛 性 が 同 等 に な っ て い た ( k1= k2) の で は な い か と 考
えられる.したがって,この事例については,重量以外の要因は寄与して
いないと考えられる.この事例のように車両重量の比が非常に大きく
( m 1 < < m 2 ), 車 両 の 剛 性 比 の 影 響 を あ ま り 受 け な い 正 面 衝 突 を 想 定 し た 場
合 , 式 (3.7)は 式 (3.9)の よ う に 示 す こ と が で き る .
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
VB1 =
( V1 + V2 )
1
58
(3.9)
2
以上,バリア換算速度計算値と実測値の比較をすることにより,次の結論
を得た.
( 1 ) セ ダ ン 同 士 の 衝 突 に つ い て は ,車 両 重 量 比 か ら 求 め た バ リ ア 換 算 速 度 計
算値と事故車両の車体損壊量から求めた実測値の差がみられなかった.
こ れ は ,プ ラ ッ ト フ ォ ー ム や 部 品 の 共 用 化 が 進 ん で い る こ と か ら ,セ ダ
ン 同 士 の 衝 突 の よ う に ,車 両 形 状 や 車 体 構 造 が 同 じ 車 両 同 士 の 衝 突 で は ,
車 体 剛 性 が 同 じ 車 両 の 衝 突 で あ る と み な す こ と が で き る の で ,車 両 の 重
量 差 が ,衝 突 時 の バ リ ア 換 算 速 度 に 影 響 を 与 え る 主 な 要 因 と な り ,重 量
差以外の要因はあまり働かないためと考えられる.
(2) セ ダ ン と SUV の 衝 突 に つ い て は , バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 と 実 測 値 の 間
に 明 ら か な 差 が み ら れ た . こ れ は , SUV と セ ダ ン の 衝 突 の よ う に , 車
両 形 状 や 車 体 構 造 が 異 な る 車 両 同 士 の 衝 突 で は ,バ ン パ 高 さ や サ イ ド メ
ン バ 高 さ の 違 い な ど と い っ た ,車 両 の 重 量 差 以 外 の 要 因( 剛 性 等 )が バ
リア換算速度に影響をおよぼしているためと考えられる.
( 3 ) 軽 ト ラ ッ ク と 中 型 ト ラ ッ ク の 衝 突 に つ い て は ,バ リ ア 換 算 速 度 計 算 値 と
実 測 値 の 間 に あ ま り 大 き な 差 は み ら れ な か っ た .こ れ は ,同 じ く キ ャ ブ
オ ー バ 型 の 車 両 同 士 の 衝 突 で あ る た め , 事 例 (4)の よ う に バ ン パ や フ ロ
ン ト パ ネ ル 部 分 に 限 れ ば ,重 量 差 以 外 の 要 因 は あ ま り 働 か な い も の と 推
測する.
3.6
衝突速度と乗員傷害の関係についての分析
3.6.1
衝突相手による運転者の人身損傷度の実態
本節では,乗員の傷害程度と衝突速度の関係を分析することによって,
SUV や 1BOX 車 な ど と セ ダ ン の 衝 突 を セ ダ ン 同 士 の 衝 突 に 換 算 し ,乗 員 が
被る傷害について比較を行った.
図 3 . 1 8 は S d n - S の 乗 員 に 関 し て ,衝 突 相 手 の 相 違 に よ る 運 転 者 の 死 亡 重
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
59
傷 者 率 に つ い て 示 し た も の で あ る .な お ,図 3 . 1 8 に お け る 衝 突 相 手 の ク ラ
ス名称は,第 2 章でのクラス分類名称を踏襲したが,上述で定義しなかっ
た ク ラ ス 名 称 に つ い て は , 軽 セ ダ ン を C P T- S d n , 軽 S U V を C P T- S U V , 軽
1 B O X 車 を C P T- 1 B O X , 軽 ト ラ ッ ク を C P T- Tr u c k , ス ポ ー テ ィ 系 自 動 車 を
S p o r t y ,1 B O X 車 を 1 B O X と そ れ ぞ れ の 名 称 を 定 め 表 記 し た .な お ,上 述 ク
ラ ス 名 称 中 の 軽 自 動 車 を 示 す C P T は C o m p a c t の 略 で あ る .衝 突 相 手 が 自 車
両 よ り も 重 量 が 軽 く 小 さ い 車 種 の 場 合 で は ,運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 は 低 く ,
その反対に衝突相手が自車両よりも重量が重く大きい車種の場合では,運
転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 は 高 く な っ て い る . 特 に , 衝 突 相 手 が S d n - L , S U V- M
お よ び 1BOX 車 で あ る 場 合 の 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 は , Sdn-S 同 士 で の 衝
突 に お け る 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 約 1 . 7 か ら 2 . 0 倍 と 高 い .な お , 本 論 に
お け る 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 R は 式 (2.1)に よ り 求 め た も の で あ る .
6.006
5.005
4.004
3.003
2.002
Fig.3.18 Fatal or Serious Injury Rate R for Sdn-S
1BOX
SUV-L
Sdn-L
Sdn-M
Sdn-S
Sporty
CPT-Truck
(Compact-Truck)
CPT-1BOX
(Compact-1BOX)
CPT-SUV
(Compact-SUV)
CPT-Sdn
0.000
SUV-M
1.001
(Compact-Sedan)
Fatal
Serious
Drivers
Rate
Fatal
or or
Serious
Drivers
Rate
R R
(%) (%)
7.007
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
60
衝突事故による乗員の被害軽減を効果的に考えていくためには, 事故が
多 い 衝 突 速 度 領 域 を 明 ら か に し て お く こ と が 大 切 で あ る . そ こ で , 図 3.18
で Sdn-S 運 転 者 の 他 同 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 高 い 衝 突 相 手 で あ る Sdn-L,
S U V- M お よ び 1 B O X 車 に つ い て , 危 険 認 知 速 度 と 死 傷 者 数 の 関 係 に つ い て
の分析を行った.なお, ここで扱う速度は, 前面対前面衝突における相対
速度となるので, 危険認知速度についても衝突に関与した 2 台の車両の危
険 認 知 速 度 の 和 を 基 に し た 分 析 , す な わ ち ,危 険 認 知 速 度 V 1 0 と V 2 0 の 前 面
対 前 面 衝 突 で の 危 険 認 知 相 対 速 度 の 和 Δ Vdg( 式 (3.10)) に つ い て 分 析 を す
すめた.
(3.10)
Δ V d g = |V 1 0 |+ |V 2 0 |
25
Frequency (%)
20
15
10
5
0
0-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90
-100
-110
-120
Relative Velocity ΔV dg (km/h)
Sdn-S
Sdn-L
SUV-L
1BOX
F i g . 3 . 1 9 R e l a t i v e Ve l o c i t y a n d F r e q u e n c y
4 車 種 運 転 者 の 危 険 認 知 相 対 速 度 と 死 傷 事 故 の 頻 度 の 関 係 を 図 3.19 に 示
す . ど の 衝 突 相 手 に つ い て も ,Δ Vdg=50km/h で の 頻 度 が 高 く な っ て い る .
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
61
次 に ,危 険 認 知 相 対 速 度 と 死 傷 事 故 の 累 積 頻 度 の 関 係 を 図 3 . 2 0 に 示 す .累
積 頻 度 の 50%が , Δ Vdg=50km/h, 累 積 頻 度 の 90%が Δ Vdg=80km/h で 発 生 し
て お り , 衝 突 相 手 の 種 別 に よ る 違 い は ほ と ん ど み ら れ な い .こ の こ と か ら ,
乗員の被害軽減のためには, 上述の速度領域での衝突安全対策を考えてい
くことが効果的といえる.
Cumulative Frequency (%)
100
80
60
40
20
0
0-10 -20
-30 -40 -50
-60 -70
-80 -90 -100 -110 -120
Relative Velocity ΔV dg (km/h)
Sdn-S
Sdn-L
SUV-L
1BOX
F i g . 3 . 2 0 C u m u l a t i v e F r e q u e n c y o f R e l a t i v e Ve l o c i t y Δ V d g
しかしながら, 同じ衝突速度であっても, 衝突相手となる車両の種別に
よって, 運転者の死亡重傷者率は異なってくると考えられる.そこで,
Sdn-S 運 転 者 の 危 険 認 知 相 対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 を 衝 突 相 手 毎 に つ い て 分
析した.
衝 突 相 手 毎 で の 危 険 認 知 相 対 速 度 別 死 亡 重 傷 者 率 を 図 3 . 2 1 に 示 す .Δ V d g
が 30km/h 以 下 の 速 度 領 域 に つ い て は , 衝 突 相 手 車 種 に よ る 死 亡 重 傷 者 率
の 差 は , あ ま り 顕 著 に は 表 れ て い な い . し か し な が ら , Δ Vdg が 40km/h 以
上 11 0 k m 以 下 の 速 度 域 で は ,衝 突 相 手 が 重 量 の 大 き い 車 種 で あ る 場 合 の 死
亡 重 傷 者 率 と , Sdn-S 同 士 で の 衝 突 に お け る 死 亡 重 傷 者 率 と の 差 は , 速 度
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
62
が 速 く な る に し た が っ て , 大 き く 拡 が る . な お , Δ Vdg= 120km/h の 速 度 に
お け る Sd n -S 同 士 で の 衝 突 以 外 の 死 亡 重 傷 者 率 は , Δ V d g= 110k m/h の と き
の 死 亡 重 傷 者 率 よ り も 低 く な っ て し ま っ て い る が , こ れ は Δ Vdg= 120km/h
以上の高い速度域では死傷者数自体の構成率が極端に少なくなるため, ば
Fatal or Serious Drivers Rate R (%)
らつきが大きく表れてしまっていると考えられる.
35
30
25
20
15
10
5
0
0-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90
-100 -110 -120
Relative Velocity ΔV dg (km/h)
Sdn-S
Sdn-L
SUV-L
1BOX
Fig.3.21 Relative Velocity and Fatal or Serious Injury Rate
3.6.2
危険認知相対速度と死亡重傷者率の関係式の推定
前 節 で 述 べ た 通 り , 危 険 認 知 相 対 速 度 が 4 0 ≦ Δ V dg ≦ 11 0 k m / h の 速 度 領 域
で は , 重 量 の 大 き い 衝 突 相 手 車 種 に 関 し て , 速 度 が 速 く な る に 従 い , Sdn-S
運転者の死亡重傷者率は,正比例的に高くなる傾向がある.そこで, 衝突
相 手 車 種 毎 に つ い て , 速 度 領 域 4 0 ≦ Δ V dg ≦ 1 1 0 k m / h に お け る 危 険 認 知 相 対
速度と死亡重傷者率の関係を 1 次式にて近似することを試みた.
図 3 . 2 2 か ら 図 3 . 2 5 は 衝 突 相 手 そ れ ぞ れ に つ い て の 危 険 認 知 速 度 Δ Vdg と
死亡重傷者率 R の関係を示したものである.いずれの場合についても,危
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
63
険 認 知 相 対 速 度 に 対 す る 死 亡 重 傷 者 率 の 増 加 は , 危 険 認 知 相 対 速 度 が Δ V dg
= 40( km/h) の 場 合 の 死 亡 重 傷 者 率 R を 「 0」 と お い て 導 出 し た 1 次 式 に
近 似 す る こ と が で き る ( 式 ( 3 . 1 1 ) か ら 式 ( 3 . 1 4 ) ). な お , 衝 突 速 度 と 車 体 変
形 量 に 正 比 例 的 な 関 係 が あ る こ と が 以 前 に 報 告 さ れ て い る (85)こ と か ら , 1
次式で近似することを試みた.
・ 衝 突 相 手 が Sdn-S の 場 合 :
R = 0 . 1 7 Δ V dg -
7.00
( 3 . 11 )
R = 0 . 2 8 Δ V dg - 1 2 . 0 0
(3.12)
・ 衝 突 相 手 が Sdn-L の 場 合 :
・ 衝 突 相 手 が S U V- L の 場 合 :
R = 0 . 3 0 Δ V dg - 1 2 . 0 0
(3.13)
・ 衝 突 相 手 が 1BOX の 場 合 :
R = 0 . 3 6 Δ V dg - 1 5 . 0 0
(3.14)
また, それぞれについての相関の強さを示す決定係数も高いことからも,
その相関性は強いものと考えることができる.
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
35
R = 0.17ΔV dg-7.00
30
Coefficient of Determination:0.90
25
20
15
10
5
0
40
50
60
70
80
90
100
110
120
Relative Velocity ΔV dg (km/h)
Fig. 3 . 2 2 Relationship between Δ V dg and Fatal or Serious Injury Rate R, Sdn-S to Sdn-S
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
64
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
35
R = 0.28ΔV dg-12.00
30
Coefficient of Determination:0.92
25
20
15
10
5
0
40
50
60
70
80
90
100
110
120
Relative Velocity ΔV dg (km/h)
Fig. 3 . 2 3 Relationship between Δ V dg and Fatal or Serious Injury Rate R, Sdn-S to Sdn-L
式 (3.11 ) か ら 式 (3 .1 4 ) を 用 い る こ と に よ っ て , 自 車 と 異 な る 車 種 と の 衝 突 を
式 (3.15) か ら 式 (3.17) の よ う に 自 車 と 同 じ 車 種 同 士 の 衝 突 速 度 に 換 算 し て
評価する式を導くことができる.
・ 衝 突 相 手 が Sdn-L の 場 合 :
Δ V dgSdn-S =1.65 Δ V dgSdn-L- 29.41
(3.15)
・ 衝 突 相 手 が S U V- L の 場 合 :
Δ V dgSdn-S =1.76 Δ V dgSUV-L- 29.41
(3.16)
・ 衝 突 相 手 が 1BOX の 場 合 :
Δ V dgSdn-S =2.12 Δ V dg1BOX - 47.06
(3.17)
先 述 し た 通 り , 死 傷 事 故 の 累 積 頻 度 の 9 0 % が 危 険 認 知 相 対 速 度 Δ V dg
=80km/h ま で に 発 生 し て い る . Sdn-S 側 に と っ て , 自 車 と 異 な る 衝 突 相 手
と の Δ V dg = 8 0 k m / h で の 衝 突 を S d n - S 同 士 の 衝 突 に 換 算 し た .
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
65
・ Sdn-L と の 衝 突 を Sdn-S 同 士 の 衝 突 に 換 算 し た 速 度 :
Δ V dgSdn-S = 1 0 2 k m / h
(3.18)
・ S U V- L と の 衝 突 を S d n - S 同 士 の 衝 突 に 換 算 し た 速 度 :
Δ V dgSdn-S = 11 2 k m / h
(3.19)
・ 1BOX と の 衝 突 を Sdn-S 同 士 の 衝 突 に 換 算 し た 速 度 :
Δ V dgSdn-S = 1 2 2 k m / h
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
35
(3.20)
R = 0.30ΔV dg-12.00
30
Coefficient of Determination:0.86
25
20
15
10
5
0
40
50
60
70
80
90
100
110
120
Relative Velocity ΔV dg (km/h)
Fig. 3 . 2 4 Relationship between Δ V dg and Fatal or Serious Injury Rate R, Sdn-S to SUV-L
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
35
R = 0.36ΔV dg-15.00
30
Coefficient of Determination:0.89
25
20
15
10
5
0
40
50
60
70
80
90
100
110
120
Relative Velocity ΔV dg (km/h)
Fig. 3 . 2 5 Relationship between Δ V dg and Fatal or Serious Injury Rate R, Sdn-S to 1BOX
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
66
これら式 ( 3 . 1 8 ) か ら 式 ( 3 . 2 0 ) の衝突換算速度は,車両の重量比から求めたものでは
なく,乗員の傷害程度に合わせるように換算されていることに注意することが必要であ
る.
本節に おい て分 析対 象 とした 各ク ラス につ い ての車 高と 車両 総重 量 の車種 毎の 分布
状況を図 3.26 に示す.車両総重量の分布については,Sdn-L と SUV-L,1BOX 車の間に
大きな差は無い.しかしながら,SUV-L や 1BOX 車との衝突での衝突換算速度の方が
Sdn-L との衝突の場合より高くなっている.このことからも,自車と異なる車両との衝
突では,車両の重量比以外の要因が乗員の傷害程度に影響を与えていると推測すること
ができる.
Vehicle height
(mm)
Vehicle
Height (mm)
2000
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
1.0
1.5
2.0
2.5
Gross Vehicle
GVWWeight
(ton) (ton)
○SDN-S ●SDN-L ▲SUV-L □1BOX
F i g . 3 . 2 6 Gross Vehicle Weight and Height (1991-1998,Japan)
3.6.3
乗員傷害に影響をおよぼす重量比以外の要因について
上述のように,自車と異なる車両との衝突では車両の重量比以外の要因
も 乗 員 の 傷 害 程 度 に 影 響 を お よ ぼ し て い る と 考 え る こ と が で き る .そ こ で ,
その理由について考察した.
図 3.26 よ り , Sdn-L の 車 高 は Sdn-S の 車 高 と 大 差 な い こ と が わ か る . こ
のことから両クラスのサイドメンバ高さもほぼ同じ程度と推測することが
できる.さらに,両クラス共セダンであることから車両前面を構成する車
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
67
体 構 造 も 類 似 し て い る と み な す こ と が で き る の で , Sdn-S と Sdn-L の 衝 突
( 図 3.27) で は , 主 に 車 両 重 量 比 が Sdn-S 側 乗 員 の 死 亡 重 傷 者 率 に 影 響 を
およぼしていると考えることができる.
Sdn-L
Sdn-S
Side-Member
Side- Member
Fig. 3.27 Sdn-L to Sdn-S Collision
S U V- L
Sdn-S
Side-Member
Side-Member
F i g . 3 . 2 8 S U V- L t o S d n - S C o l l i s i o n
1BOX
Sdn-S
Side-Member
Side-Member
Fig. 3.29 Sdn-S to 1BOX Collision
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
68
一 方 , S d n - L や 1 B O X 車 の 車 高 は , S d n - S の 車 高 に 比 べ 高 い ( 図 3 . 2 6 ).
また,衝突時に主にエネルギーを吸収するサイドメンバ高さが異なる(図
3.28, 図 3.29) た め , Sdn-S 側 に 入 る 荷 重 が 主 要 部 材 で あ る サ イ ド メ ン バ に
入 力 さ れ な い . そ の 結 果 , Sdn-S の 客 室 が サ イ ド メ ン バ 以 外 か ら の 入 力 に
耐 え き れ な く な る . こ れ に よ り , Sdn-S 側 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 は 高 く な
る . す な わ ち , 車 両 総 重 量 に 大 き な 差 は な く て も , Sdn-L や 1BOX 車 の 衝
突 換 算 速 度 は , Sdn-L よ り も 高 く な る と 考 え ら れ る .
以上,自車両と異なる大きさ,形状の車両との前面対前面衝突事故を分
析し, 以下のことを明らかにした.
(1 ) 危 険 認 知 相 対 速 度 4 0≦ Δ Vd g≦ 110 k m/h の 速 度 域 で の 衝 突 に お け る 運 転
者 の 死 亡 重 傷 者 率 と 危 険 認 知 速 度 の 関 係 は ,1 次 式 で 近 似 す る こ と が で
きる.
( 2 ) 自 車 量 と 異 な る 車 両 と の 衝 突 を ,従 来 の よ う に 車 両 の 重 量 比 か ら 評 価 す
る の で は な く ,乗 員 の 傷 害 程 度 と 衝 突 速 度 の 関 係 か ら ,自 車 両 と 同 じ 車
種同士での衝突に換算して評価する手法を見出した.
( 3 ) 車 体 構 造 の 異 な る 車 両 と の 衝 突 で は ,車 両 の 重 量 比 以 外 の 要 因 が 乗 員 の
傷害程度に影響をおよぼしている.
3.7
軽 SUV と 軽 セ ダ ン 前 面 対 前 面 衝 突 事 故 の 分 析
3.7.1
本節における分析対象車種
近年における軽自動車の増加は著しく,これを無視するわけにはいかな
い.そこで,軽自動車の前面対前面衝突事故の分析も試みた.なお,国内
に お け る 軽 自 動 車 に つ い て も ,同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 乗 用 車 で あ り な が ら ,
軽 セ ダ ン ,と 軽 S U V の 2 車 種 が 存 在 す る .し た が っ て ,両 車 の 衝 突 に つ い
て も 事 故 統 計 分 析 を 試 み た .な お ,本 節 に お い て は ,軽 セ ダ ン を C P T- S d n ,
軽 S U V を C P T- S U V と 表 記 す る .
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
69
国 内 で 登 録 さ れ た 1991 年 か ら 1998 年 に か け て の ボ ン ネ ッ ト 付 き 軽 乗 用
車 の 車 高 お よ び 車 両 総 重 量 の 車 種 毎 の 分 布 状 況 を 図 3.30 に 示 す . 図 3.30
を み る と , ど ち ら も 車 両 重 量 は 同 じ 程 度 で あ り な が ら も , C P T- S d n の 車 高
は 1 6 0 0 m m 未 満 に , C P T- S U V の 車 高 は 1 6 0 0 m m 以 上 に 分 布 し て い る .
以 上 の こ と か ら , 同 じ く ボ ン ネ ッ ト 付 き 軽 乗 用 車 で あ る C P T- S U V と
C P T- S d n は , 車 高 に よ っ て 判 別 す る こ と に よ り , 交 通 事 故 統 合 デ ー タ ベ ー
ス上での区分が可能であるので,それぞれの種類を交通事故統合データ中
から区分した上で,これら 2 車種の衝突について,全国統計的な視点から
事故分析を行った.
Vehicle Height (mm)
2000
▲ CPT-SUV
○ CPT-SDN
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
0.5
1.0
1.5
2.0
Gross Vehicle Weight (ton)
Fig.3.30 Gross Vehicle Weight and Height (1991-1998,Japan)
3.7.2
衝突速度による運転者の死亡重傷者率
ま ず , 前 面 対 前 面 衝 突 事 故 に お け る S U V- M お よ び S d n - M の 運 転 者 の 衝
突速度別死亡重傷者率についての分析を行った.運転者の死亡重傷者率R
は , 式 (2.1)に て 定 義 し た 通 り . ま た , 前 面 対 前 面 衝 突 に お け る 相 対 衝 突 速
度 Δ V は , 式 (2.2)に 示 し た 通 り .
1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 と し て 求 め た 危 険 認 知 相 対 速 度 Δ V
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
70
と 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 R の 関 係 を 図 3 . 3 1 に 示 す . 全 般 的 に C P T- S U V 運
転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 よ り も C P T- S d n 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が 高 く , 相
対 速 度 Δ V が 高 く な る ほ ど ,C P T- S U V 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 と C P T- S d n 運
転者の死亡重傷者率の差は開いていく.なお,この傾向は重量が同程度の
車両同士に関して得られたものであり,注目すべき結果と考えられる.
こ の 理 由 は , 図 3 . 3 0 で 示 し た 通 り , C P T- S U V の 車 高 が C P T- S d n に 比 し
て 高 く , 第 2 章 で 述 べ た S U V- M と S d n - M の 衝 突 と 同 様 に , バ ン パ 高 さ や
サイドメンバ高さに上下のオフセットが存在するためと考えられる.した
がって,衝突エネルギーの大きい速度域になると,この上下方向のオフセ
ッオフセットが車両重量以外の要因として効いてくるため,運転者の死亡
重 傷 者 率 の 差 が 大 き く な っ て い く と 推 測 す る . す な わ ち , C P T- S U V と
C P T- S d n の 衝 突 で も ,S U V- M と S d n - M の 衝 突 と 同 様 な 現 象 が 起 き て い る も
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
のと推測することができる.
25
CPT-Sdn
20
CPT-SUV
15
10
5
0
0-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90
-100
Relative Velocity ΔV (km/h)
Fig.3.31 Fatal or Serious Injury Rate R and Relative Velocity Δ V
3.7.3
死亡または重傷運転者の傷害部位の構成
我 が 国 に お け る 1995 年 か ら 1999 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 に , 死 亡 ま た は 重
傷 と な っ た 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構 成 に つ い て 分 析 を 行 っ た . C P T- S d n 同 士
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
71
の 衝 突 に お け る 運 転 者( 死 亡 重 傷 者 数 3 8 9 人 )の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 3 . 3 2
に , C P T- S U V と C P T- S d n の 衝 突 に お け る C P T- S d n の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者
数 9 0 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 3 . 3 3 に 示 す . C P T- S U V と C P T- S d n の 衝
突 に お け る C P T- S d n の 運 転 者 は ,C P T- S d n 同 士 で の 衝 突 の 場 合 比 べ ,頭 部
や顔部,腰部損傷の構成率が増加している.すなわち,軽乗用車について
も車両重量自体に差が少ない車両同士の衝突であっても,車体構造が異な
る車両との衝突では乗員の傷害部位の構成に相違のあることを確認した.
Injuries of Drivers(%)
35
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig.3.32 Injuries of CPT-Sdn Drivers (CPT-Sdn to CPT-Sdn)
Injuries of Drivers(%)
35
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig. 3.33 Injuries of CPT-Sdn Drivers (CPT-SUV to CPT-Sdn)
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
3.7.4
72
軽 セ ダ ン と 軽 SUV の 衝 突 に つ い て の 考 察
軽 S U V と 軽 セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 に つ い て ,事 故 統 計 分 析 を 行 い ,以
下 の こ と を 確 認 し た .す な わ ち ,全 般 的 に 軽 S U V 側 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率
の方が軽セダン側運転者よりも低くなっていること.そして,その差が衝
突 速 度 の 増 大 と 共 に 拡 が っ て い く こ と .ま た ,衝 突 相 手 が 軽 S U V で あ る 場
合と軽セダン同士の衝突では,死亡あるいは重傷となった軽セダン運転者
の傷害部位の構成が異なっていることを明らかにした.本節では,その理
由について以下の考察を行う.
軽 SUV と 軽 セ ダ ン も , SUV と セ ダ ン の 関 係 ( 図 2.13) と 同 様 に , バ ン
パ 高 さ や サ イ ド メ ン バ の 高 さ が 異 な っ て い る も の と 考 え ら れ る .こ の た め ,
軽 S U V と 軽 セ ダ ン の 衝 突 に お い て も ,両 車 の サ イ ド メ ン バ は 上 下 方 向 に オ
フセットした状態で衝突するものと推測する.
軽 セ ダ ン 同 士 の 前 面 対 前 面 衝 突 に お い て も ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 と 同 様 に ,
衝突による入力は,車両前部については主としてサイドメンバを通じて伝
達され,客室部への入力はフロア下部のフロアメンバを伝わる経路とサイ
ドシルおよびトンネル部に伝わる経路とに分かれて後方に伝えられる(図
2 . 1 4 ). 一 方 , エ ン ジ ン の 客 室 へ の 侵 入 は , フ ロ ア 部 の ト ン ネ ル が 主 と し て
反力を受け持っている.客室保護対策を考慮して設計された軽セダンにお
いても,このような客室に加わる力の伝達経路に沿った客室の補強がなさ
れ て い る (76).こ の た め ,客 室 を 保 護 す る た め に ,衝 突 に よ る サ イ ド メ ン バ
の付け根部分(トーボード周り)を力の受け手としてうまく利用し,衝突
による入力を力の伝達経路に沿わせ,効果的に後方に伝達させていく構造
法が採られている.
し か し な が ら ,軽 S U V と 軽 セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 に お い て は ,先 述 の 通 り ,
軽 SUV の サ イ ド メ ン バ が 軽 セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ と 上 下 に オ フ セ ッ ト し
ているため,軽セダン側は衝突の力の受け手である客室下部を有効に利用
することができない.したがって,軽セダンの客室には,補強されている
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
73
荷重の伝達経路以外の部位に大きな入力が加わることになる.衝突時に軽
SUV, 軽 セ ダ ン 両 車 に 加 わ る 衝 撃 力 自 体 は 等 し い の で あ る が , 軽 セ ダ ン 側
では効果的な荷重の受け方ができないことから,軽セダンの客室構造の方
が強度面で不利となる.特に,高い速度域での衝突においては,客室が入
力に耐えきれず変形は大きくなる.それに伴って運転者の死亡重傷者率も
高 く な っ て し ま っ て い る も の と 考 え る こ と が で き る .こ の こ と は 図 3 . 3 2 お
よ び 図 3.33 の 傷 害 部 位 の 相 違 と も 符 合 し て い る .
以上のことから,次の結論を得た.
(1) 軽 SUV と 軽 セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 で は , 車 両 重 量 に 大 き な 差 が な い
場 合 で あ っ て も , 軽 SUV 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が 軽 セ ダ ン 運 転 者
よ り も 低 く な っ て い る . 衝 突 相 手 が 軽 SUV で あ る 場 合 と 軽 セ ダ ン 同 士
の 衝 突 で は ,死 亡 あ る い は 重 傷 と な っ た 軽 セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構
成 が 異 な っ て い る な ど ,コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 論 ず る 上 で の 特 徴 を 確
認した.
(2) 上 記 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー 上 の 特 徴 は , 軽 S U V の サ イ ド メ ン バ が 軽
セダンのサイドメンバと上下にオフセットして衝突するためと考えら
れ る .こ の た め ,軽 セ ダ ン は サ イ ド メ ン バ 取 付 部 を 衝 突 の 力 の 受 け 手 と
し て 有 効 に 利 用 す る こ と が で き な い .し た が っ て ,客 室 変 形 が 増 大 す る
傾 向 に あ り ,そ れ に 伴 っ て 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 も 高 く な っ て い る と 考
えることができる.
(3) す な わ ち , 車 両 重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 と 同 じ こ と が ,
軽 SUV と 軽 セ ダ ン の 衝 突 に お い て も , 交 通 事 故 統 計 デ ー タ 中 に 表 れ て
いることが明らかになった.
第 3 章 . セダンと SUV の衝突全般におけるセダン運転者の傷害の分析
3.8
74
第 3 章の結論
重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 事 故 に お い て ,全 国 統 計 的 な 分 析 を 行
う こ と に よ り ,S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の 構 成 率 に 次 の
特徴が見られることを確認した.
・ 衝 突 相 手 の SUV の 重 量 が , 自 車 よ り も 重 い 場 合 で も 軽 い 場 合 で も , セ
ダ ン 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の う ち ,頭 部 も し く は 胸 部 と い っ た 上 半 身 の 傷
害 の 構 成 率 は ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 で の 上 半 身 の 傷 害 の 構 成 率 よ り も 多 く
なる.
・ 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 に お け る セ ダ ン 運 転 者 の 上 半 身 の 傷 害 は ,
重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 の 構 成 率 よ り も
多くなる.
・ 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 , セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 は , 頭 部 や
胸 部 と い っ た 上 半 身 の 傷 害 だ け で な く ,脚 部 傷 害 の 構 成 率 も 多 く ,傷 害
が全身におよぶ.
以 上 の こ と か ら ,衝 突 相 手 と な る S U V が 自 車 よ り も 軽 け れ ば 上 半 身 の 傷
害の構成率が多く,反対に自車よりも重くなるほど,脚部傷害が多くなる
傾 向 が あ る と 言 え る . そ の 理 由 は , SUV と の 前 部 サ イ ド メ ン バ の 上 下 の す
れ違いにより,セダンは弱点のある車体上部に変形が生じ易くなるためと
推測することができる.
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
75
第 4章
セダン模型を用いた衝突試験による
SUV と の 衝 突 時 の 客 室 入 力 の 検 討
4.1
コンパティビリティー性能の評価手法の検討
第 2 章 お よ び 第 3 章 に て ,セ ダ ン と S U V の 前 面 衝 突 の よ う に ,バ ン パ 高
さやサイドメンバ高さ等といった,構造部材の配置の違いを有する衝突に
おいては,同じ質量の車両同士であっても,衝突時の車両変形状況や乗員
の傷害状況等,衝突により引き起こされる現象に相違の存在することを述
べ た (84)(86).
客室保護対策を考慮して設計されたセダンでは,衝突時に客室に加わる
力 の 伝 達 経 路 に 沿 っ た 客 室 の 補 強 が な さ れ て い る (76).し か し な が ら ,SUV
とセダンの衝突においては,それぞれのサイドメンバが上下にオフセット
しているため,セダン側はサイドメンバ入力の受け手である客室下部を有
効 に 利 用 す る こ と が で き な い ( 図 2 . 1 3 ). す な わ ち , S U V と 衝 突 し た セ ダ
ン 客 室 に は , 想 定 さ れ た 荷 重 伝 達 経 路 ( 図 2.14) 以 外 の 部 位 に 大 き な 力 が
加わることになる.この場合,セダン客室は入力に耐え切れず変形量が大
きくなり,乗員傷害も高くなる.
75
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
76
し ば し ば コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 議 論 に お い て は 攻 撃 性 (aggressiveness)
という概念が使用される.しかしながら衝突の直後において,両車が接触
を開始した瞬間から,両方のフロントエンドは一体となってエネルギーを
吸収する.また,どちらの客室にも等しい荷重が加わることに注意しなく
てはならない.むしろ両車の構造部材の配置の違いから,予期していない
客室部分に力が加わり,客室強度が不足することを避けるべきである.
し た が っ て ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る 上
では,セダン客室部に加わる荷重分布の変化を把握し,客室変形のメカニ
ズムを理解することによってコンパティビリティーを検討しようとする客
室入力の評価も重要となるであろう.
本章では,衝突が開始されてから最大変形に達するまでの間に,客室に
加 わ る 荷 重 の 分 布 状 況 の 変 化 を 把 握 す る こ と に よ っ て ,S U V と 衝 突 し た セ
ダンについて,新たに客室入力の観点からコンパティビリティーの検討を
行った.特に客室内部に加わる力の分布をコンパティビリティー性能の指
標と捉え,その新たな表現方法を提案することを試みた.
客室入力を実測するために,精密な模型を用いた衝突実験を行った.模
型実験は,以前より乗員の挙動や人体傷害発生のメカニズムを解明するた
め の 研 究 に 用 い ら れ て お り (52)-(67), 樹 脂 製 の 模 型 を 用 い た 衝 突 実 験 が , 衝
突 時 の 車 体 変 形 を 把 握 す る た め に 有 効 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る (68)-(73).
なお,シミュレーション計算によっても同様な検討が可能であるが,計算
値と実験値との精密な合わせ込みが完了していない場合に関しては,模型
実験の利用が効果的であると言える.
な お ,本 模 型 実 験 に お い て は ,セ ダ ン と S U V の 衝 突 に お け る 大 局 的 な 傾
向が,事故統計から得られた結果と整合性があるか否かを確認することを
目的としている.そのため,測定した数値自体に対しての詳細な統計処理
は行っていない.ただし,追補において詳細を記した通り,本章で述べる
バ リ ア 衝 突 に つ い て は 13 回 , 次 章 で 述 べ る 車 対 車 ( Car-to -Car) 衝 突 に つ
い て は 5 回 ,計 1 8 回 の 衝 突 実 験 を 実 施 し ,い ず れ の 結 果 か ら も ,上 記 の 目
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
77
的に対して肯定的な結論を確認することができた.
本 章 で は ,平 面 バ リ ア お よ び S U V に 見 立 て た 突 起 バ リ ア そ れ ぞ れ に 対 し
て 樹 脂 製 の セ ダ ン 1 / 1 0 精 密 模 型 を 衝 突 さ せ る 試 験 を 実 施 し ,上 記 の 評 価 方
法を適用し検討を行った.
4.2
客室入力の評価
前 節 に て 述 べ た よ う に ,S U V と セ ダ ン の フ ロ ン ト エ ン ド の 構 造 部 材 の 配
置の相違により,予期していない客室部分に力が加わることを検討する必
要 が あ る . こ の 理 由 か ら , セ ダ ン に お い て は , SUV と の 衝 突 で 客 室 変 形 が
大きくなると考えられるため,乗員空間の確保が重要となる.すなわち,
乗 員 空 間 を 確 保 す る た め に 必 要 な 客 室 強 度 は ,S U V と 衝 突 し た セ ダ ン 客 室
に加わる荷重の入力状況を把握するによって,初めて明らかになることか
ら,コンパティビリティーを検討する上では,客室入力の評価,すなわち
セ ダ ン の 客 室 の 防 護 性 ( defensiveness) の 評 価 が 重 要 と な る . 防 護 性 の 概
念は本研究において新たに導入した概念である.
以 前 よ り , SUV の 攻 撃 性 ( aggressiveness) を 表 現 す る た め , 固 定 壁 バ リ
アに多数のロードセルを配置し,入力荷重を等高線によって示す方法
(87)-(97)
, C O F ( 9 8 ) ( C e n t r e o f F o r c e ) あ る い は A H O F ( 9 9 ) - ( 1 0 6 ) ( Av e r a g e H e i g h t o f
F o r c e )と い っ た 表 現 法 が 報 告 さ れ て き た( 図 4 . 1 お よ び 式 ( 4 . 1 ) ,式 ( 4 . 2 ) ).
しかしながら,これら従来からの手法は,車両の前面部分の荷重分布から
コンパティビリティー性を評価するので,車両前面まで伸びてきていない
部材の効果や影響を適正に評価しづらい等,必ずしも正確な評価が行なえ
な い ケ ー ス も 発 生 す る . 例 え ば , SUV が セ ダ ン へ の 攻 撃 性 を 緩 和 す る た め
S E A S ( S e c o n d a r y E n e rg y A b s o r b i n g S t r u c t u r e ) の よ う な 対 策 部 材 ( 図 4 . 2 )
を 装 着 し て い た と し て も , AHOF の よ う に , 車 両 の 前 面 部 分 の 荷 重 分 布 か
らコンパティビリティー性を評価する方法では,その効果を正確に評価す
ることは困難である.これに対し,本研究が提案する客室入力の評価,つ
78
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
まり客室入力の垂直分布表示あるいは車体断面における荷重分布の等高線
表示による評価は,客室に入るすべての荷重から車体の衝突安全性を評価
するので,従来の手法よりも正確な評価をすることができる.なお,この
概 念 の 詳 細 は 4 . 5 節 に 示 す .ま た ,A H O F お よ び S E A S に つ い て の 詳 細 は 追
補 1 を参照のこと.
tt
∫
ò F (t ) F (t )dt
t
∫
ò F (t )dt
FAH =
(4.1)
centre
0
t
00
Fcentre (t ) =
å H F (t )
å F (t )
i
i
(4.2)
i
F AH : AHOF
F centre : COF
F i : Force of Load Cell(i)
H i : Height of Load Cell(i)
i: Number of Load Cell
(a) Barrier Crush with Load Cells
(b) Distribution of Load Cell Force
Fig. 4.1 C o n c e p t o f A H O F
S e d a n ’s S i d e - M e m b e r
S U V ’s S i d e - M e m b e r
SEAS
F i g . 4.2 S t r u c t u r e s f o r C o m p a t i b i l i t y S U V t o S e d a n C o l l i s i o n , S E A S
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
79
そこで本研究では,次の新たな表現手法を用いることによって,客室入
力の評価を試みた.
・ 客室に入る荷重の垂直方向分布表示およびその荷重中心の推移を示す
ことによる客室入力の評価.
・ センターピラー部での車体断面における荷重分布の等高線表示.
なお,客室入力を評価するために実車にロードセルを埋め込むことは,
現在の技術では困難な場合が多い.これに対し,模型では客室断面にロー
ドセルを配置することが比較的容易である.
4.3
衝突実験用模型
4.3.1
相似則の適用
衝 突 に お け る 車 体 変 形 状 況 を 再 現 す る た め に ,セ ダ ン の 1 / 1 0 樹 脂 製 精 密
模型の製作に関して,相似則を適用した.なお,本研究における模型は,
車 体 全 体 を 一 つ の 材 料 と し て 見 る こ と と し ,降 伏 点 と か 応 力 - ひ ず み 曲 線 な
どといった詳細な検討は一切省き,車体全体で合えば良いという考え方で
相似が成り立つようにした.なぜならば,車体を構成するひとつひとつの
部材の材料特性を明らかにすることによって数理的に相似が成り立つよう
にすることは,実際には不可能なためである.すなわち,降伏点,弾性係
数 ,応 力 - ひ ず み 曲 線 等 の す べ て を 鋼 板 に 相 似 則 に 従 っ て 合 わ せ た 材 料 は 存
在しないからである.このため,本研究の模型では,衝突したときに実車
と同様の車体変形が起こるようにすることによって,実車と同じような減
速度および荷重を測れるように設計することとした.従って,単位体積当
たりの吸収エネルギーe についての実車と模型の比を求めることによって,
衝突したときに実車と同様の車体変形を起こすことを狙った.
ここで,単位体積あたりの吸収エネルギーとは,模型の車体全体を一つ
80
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
の材料として見ることとし,車体全体としての吸収エネルギーについて相
似の関係が成り立つように定めた量である.これと類似の概念は単体の構
造 部 材 に 関 し て は 既 に 提 案 さ れ て い る が (71)(72), 本 研 究 で は こ れ を フ ロ ン
トエンド構造全体に拡張して適用した.本研究では,新たにこの量を「単
位体積あたりの吸収エネルギー」と呼ぶことにしたい.
衝 突 現 象 に 関 す る 諸 量 に つ い て ,B u c k i n g h a m の П 定 理 に 基 づ い た 次 元 解
析から得られたПナンバを模型と実物で等しくする必要がある.本研究で
は衝突現象に関する基本的物理量として,上述の単位体積あたりの吸収エ
ネルギーe および密度ρ,長さ l を選択した.次元解析から得られたПグ
ル ー プ を 式 (4.3)に 示 す . 式 (4.3)で は 次 の よ う に お い た . す な わ ち , P: 荷
重 , σ : 応 力 , δ : 衝 突 に よ る 車 体 変 形 量 , m: 質 量 , t : 時 間 , v: 速 さ ,
α : 加 速 度 , E: 運 動 エ ネ ル ギ ー , I: 慣 性 モ ー メ ン ト , ν : ポ ア ソ ン 比 ,
ε:ひずみである.
Π1 =
Π
P
el 2 ,
Π
Π5 =
t e
ρ
αρl Π
E
Π =v
Π
Π
Π7 =
Π8 = 3
l ρ, 6
e ,
el ,
e ,
Π
Π9 =
I
Π
Π10 =ν
ρl 5 ,
,
Π
Π2 =
σ
e ,
ΠΠ3 =
δ
l ,
Π4 =
Π
m
ρl 3 ,
(4.3)
ΠΠ11 =ε
また,車体変形を再現する上で乗員および拘束装置の存在を無視するこ
と は で き な い . シ ー ト ベ ル ト に つ い て は 先 述 の Buckingham の П 定 理 に 基
づ き 荷 重 -変 位 特 性 の 相 似 則 を 導 き 模 型 化 し た .
エアバッグについては,衝突による気体流出量の熱力学的な式を無次元
化 す る こ と に よ り , 排 気 孔 の 面 積 に つ い て の 相 似 則 を 導 い た ( 式 ( 4 . 4 ) ).
こ の 過 程 は 4.3.3 の (4)に 示 す . な お , 式 (4.4)で は 次 の よ う に お い た . P1:
ダ ミ ー 接 触 時 内 圧 , P2: 大 気 圧 , v 1: ダ ミ ー 接 触 時 の ガ ス の 比 重 量 , κ :
比 熱 比 , w: 排 気 穴 出 口 速 度 .
81
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
κ-1
é
ù
P1 v1 ê æ P2 ö κ ú
Π12 =
1-ç ÷
Π
w 2 ê çè P1 ÷ø ú
êë
úû
(4.4)
式 ( 4 . 3 ) の П 5 お よ び 次 節 の 表 4 . 1 よ り ,模 型 で は 時 間 が 5 . 5 9 倍 だ け 加 速
されることになる.
4.3.2
(1)
模型用材料
材料の選定
衝 突 実 験 用 模 型 車 体 に 使 用 す る 樹 脂 に は ,応 力 - ひ ず み 曲 線 の 弾 塑 性 域 に
お け る 応 力 - ひ ず み 曲 線 の 形 が 鋼 材 と 似 て い る こ と ,ポ ア ソ ン 比 が 鋼 材 に 近
いこと,さらには真空成形性が良いことが求められる.これらの条件を満
足 す る 樹 脂 に は ,ポ リ 塩 化 ビ ニ ル ( Polyvinylchloride,以 下 P V C と 略 記 す る )
と ポ リ カ ー ボ ネ ー ト ( Polycarbonate, 以 下 PC と 略 記 す る ) が 存 在 す る .
鋼 材 , PVC, PC そ れ ぞ れ の 材 料 特 性 を 表 4.1 に 示 す .
本研究においては,複雑な形状を有する自動車の部品を成形しなければ
な ら な い こ と か ら , 成 形 性 の 良 い 材 料 を 選 定 す る 必 要 が あ る . PVC は PC
に比べ軟化温度が低く,真空成形性の面で優れている.したがって,本研
究 で は , PVC を 選 定 す る こ と と し た .
な お , PVC の ス プ リ ン グ バ ッ ク は 実 車 で 全 く 異 な る . た だ し , 車 体 に 大
きな力が加わるのは,車体が変形していく過程に存在するので,スプリン
グバックしていく過程,すなわち車体がバリアから後退していく過程では
客室への大きな入力は発生しない.このため,客室に加わる力を論ずる際
には,変形が進んでいく過程だけを観察すれば十分であるので,スプリン
グバック量が実車と異なることは,大きな問題とはならないと考える.
実 際 ,後 述 の 図 4 . 1 7 を 見 る と ,い ず れ の バ リ ア に 対 す る 衝 突 に お い て も ,
最大変形に達した後には,荷重は急激に減衰し,スプリングバック時の客
室入力はほとんどゼロとなることを見ることができる.
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
82
Table 4.1 Material Property
Poisson's Ratio
Young's Modulus (GPa)
Ultimate Strength (MPa)
Linear Expansion Coefficient
Density (g/cm3)
(2)
PVC
0.36
2.5-4.2
35.3-63.3
5.00-18.50
1.40
PC
0.37
2.1-2.5
56.0-67.0
6.60
1.20
Steel
0.30
210.0
280.0
1.04-1.15
7.86
鋼 材 と PVC の 基 本 量 に 関 す る 比 較
鋼 材 と P V C の 基 本 量 に 関 す る 比 較 を 表 4 . 2 に 示 す .こ こ で 単 位 体 積 あ た
り の 吸 収 エ ネ ル ギ ー 比 の 値 に 関 し て , 文 献 (107)で は 静 的 条 件 下 で 14: 1 と
いう数値を与えているが,本研究では次のようにして,動的条件下での吸
収エネルギー比の値を求めた.
実車においては,車体変形量を少しでも多くとるように開発がなされて
おり,一概に絶対値を規定することはできないが,現在ではバリア換算速
度 55km/h で の 最 大 変 形 量 は お よ そ 850mm で あ る と 言 う こ と が で き る で あ
ろ う .本 研 究 で は ,図 4 . 11 に 示 し た 平 面 バ リ ア に 対 し て 模 型 を 衝 突 さ せ る
予 備 実 験 を 行 い , 模 型 の 最 大 変 形 量 が 実 車 換 算 で 850mm( 模 型 で 85mm)
と な る 模 型 の 速 度 を 求 め た . そ の 結 果 , 模 型 を 31km/h で 平 面 バ リ ア に 衝
突 さ せ た 場 合 に 最 大 変 形 量 が 85mm と な る こ と を 確 認 し た . そ し て , 相 似
則 に 整 合 さ せ る た め , こ の 模 型 速 度 が 実 車 換 算 で 55km/h に 相 当 す る こ と
を 逆 に 条 件 と し て 与 え , 式 (4.3)の П 6 を 用 い て 動 的 条 件 下 で の 吸 収 エ ネ ル
ギ ー e の 比 の 値 を 求 め た .そ の 結 果 ,e の 値 の 比 と し て 1 8: 1 が 妥 当 で あ る
と判断した.
Table 4.2 Fundamental Quantities
Steel:PVC
Absorbed Energy Density e
18:1
Mass Density ρ
5.6:1
Length l
10:1
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
4.3.3
(1)
83
セダン模型の製作
車両本体部分
前節で設定した相似則に従い,衝突実験用セダン模型の車両本体部分の
設計を行った.プロトタイプとなる車種は,標準的なセダンを想定した.
表 4.3 に 模 型 の 諸 元 お よ び こ れ ら を 実 車 換 算 し た 値 を 示 す .
Table 4.3 Vehicle Specifications
Length (mm)
Height (mm)
Width (mm)
Weight* Fr.
(kg)
Rr.
Total
Side-Member
Height (mm)
Model
430
140
176
0.172
0.113
0.285
Actual
4300
1400
1760
966
634
1600
45
450
* Including Occupant Dummies and Restraint Systems
模 型 を 図 4.3 に 示 す . セ ダ ン 模 型 は , SUV と 衝 突 し た 際 の 車 体 の 変 形 状
況をみるために,車両本体部分の前半分は実車を忠実に再現した構造とな
るように製作した.車両本体部分のうち,ボディー部分については,メイ
ンボディー,フロアパネル,ダッシュパネル,サイドメンバ,フロアメン
バ ,ク ロ ス メ ン バ 等 の 板 材 に よ っ て 作 ら れ て い る 部 品 を P V C の 板 材 か ら 成
形し,これらの部材を高周波スポット溶接によって組み立てた.上述部品
の 中 で も ,厚 さ 0 . 8 m m か ら 厚 さ 1 . 0 m m 程 度 の 比 較 的 薄 い 板 材 で 組 み 立 て ら
れることの多いメインボディーやフロアパネル等のようなボディー外板を
構 成 す る 部 品 に つ い て は 厚 さ 0 . 1 m m の 薄 い 板 材 で ,サ イ ド メ ン バ や フ ロ ア
メ ン バ 等 の よ う な ボ デ ィ ー 骨 格 を 構 成 す る 部 品 に つ い て は 厚 さ 0.2mm の 厚
い板材で製作することによって,実車のボディー構造を再現するようにし
た.また,ドアについては剛性の高い棒材をドアベルトライン部分に装着
し て い る が ( 図 4 . 3 ( d ) ), 前 部 に ス ラ イ ド 機 構 を 設 け , 空 走 す る よ う に 工 夫
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
84
し た ( 図 4 . 3 ( e ) ). こ の 機 構 に よ り , 実 際 の ド ア の 変 形 お よ び , ド ア と 車 体
と の 隙 間 を 模 擬 し た .な お ,こ れ ら 板 材 に よ る 部 品 数 の 合 計 は 4 7 点 で あ る .
実車の前面対前面衝突において,エンジンルーム内の部品類の存在は,
車体の変形や乗員傷害に対して大きな影響をおよぼす.したがって,エン
ジンルーム内についても,実車を忠実に再現するよう,エンジンおよび補
機類,トランスミッション等といったドライブトレイン系部品やフロント
サ ス ペ ン シ ョ ン 等 の 走 行 装 置 系 部 品 ,合 計 2 4 点 を 製 作 し ,上 述 の ボ デ ィ ー
部分に組み付けた.これらドライブトレイン系部品や走行装置系部品の多
くは,実車においては鋳物や厚肉材等,剛体とみなしても構わないほど,
剛性の高い材料によって構成されていることから,模型についても,これ
を再現するようにした.なお,近年においては,セダンの多くがエンジン
を車両進行方向に対して横方向に配置して,前輪を駆動する方式としてい
ることから,模型でも横置きエンジン,前輪駆動方式の乗用車のエンジン
ルームレイアウトを再現するようにした.
車両本体部分のうち後半部分については,衝突による車体骨格部への入
力を計測するセンサー類を搭載する装置として製作した.フロアメンバ,
フロアトンネル,サイドシル,ドアベルトラインメンバ,ルーフレールの
それぞれにロードセルを装着し,各骨格部材に入る荷重を個別に計測でき
る よ う に し た . ま た , こ の 部 分 に は 加 速 度 計 も 装 着 し た ( 図 4 . 4 ). な お ,
車両の後半分については,前面対前面衝突の影響をほとんど受けることが
無い部分であることから,模型では計測装置としての機能だけをもたせる
ようにした.したがって,この部分については実車と異なる形状になって
いるが,衝突試験の際に各骨格部材への入力を測定するに当たっては,車
体後部の慣性力がロードセルに加わることから,ロードセルや加速度計を
搭載した状態において,実車の重心高さを充分に考慮した.実車セダンの
平 均 値 は 550mm で あ る の で , 模 型 の 重 心 高 さ は 55mm と し た .
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
(2)
85
乗員ダミー
車体変形を正確に再現する上で,乗員の質量は無視できない.なぜなら
ば , 平 均 的 な 成 人 男 性 の 体 重 は 70kg か ら 75kg 程 度 で あ る が , こ れ が 2 名
乗 車 し た 場 合 に は , 140kg か ら 150kg と な り , 車 両 総 重 量 の 約 1 割 程 度 に
相 当 す る 重 量 と な る か ら で あ る .こ の た め ,新 設 計 の 乗 員 ダ ミ ー を 製 作 し ,
運 転 席 お よ び 助 手 席 そ れ ぞ れ に 搭 載 し た .4 . 3 . 1 節 で 述 べ た 相 似 則 を 乗 員 ダ
ミ ー に 適 用 し た 場 合 ,標 準 的 な 成 人 男 性 の 体 重 を 7 3 k g と す る と ,模 型 に お
け る 乗 員 ダ ミ ー の 体 重 は 13g と な る . 本 研 究 に お け る 乗 員 ダ ミ ー は , 体 重
を こ れ に 合 わ せ る た め ,模 型 車 両 本 体 部 分 と 同 じ く P V C を 成 形 す る こ と に
よ っ て 身 体 を 構 成 す る 各 部 位 を 製 作 し て 組 み 立 て た ( 図 4 . 5 ).
なお,本研究ではダミーによる乗員傷害値の計測は考えていないので,
関節挙動など,生体的な特性については簡略化している.
(3)
シートベルト
本研究では,相似則に従って製作した乗員拘束装置を装着することによ
り,衝突時に乗員が車体におよぼす影響についても考慮した衝突条件を整
え た ( 図 4 . 5 ). 図 4 . 6 ( a ) に 実 車 の シ ー ト ベ ル ト の 荷 重 - 伸 び 特 性 を 示 す . し
た が っ て ,模 型 の シ ー ト ベ ル ト の 荷 重 - 伸 び 特 性 は 相 似 則 に よ り 図 4 . 6 ( b ) の
ようにする必要がある.模型では,これを再現するために,鋼線の塑性曲
げを利用したフレーム構造の装置を相似則に基づいて製作し,ベルトに装
着した.具体的には「く」の字型に曲げた鋼線に引張荷重を与え,伸長さ
せ る こ と に よ っ て ,シ ー ト ベ ル ト の 荷 重 - 伸 び 特 性 を 模 し た 性 質 を 得 る こ と
とした.
す な わ ち , シ ー ト ベ ル ト の 特 性 を 再 現 す る 鋼 線 は , 変 位 20mm で 塑 性 域
に達するように直径を定めなければならない.そこで,次の手順にて鋼線
の 直 径 を 求 め た . 図 4.6(b)よ り , 模 型 の シ ー ト ベ ル ト の 最 大 伸 長 量 が L の
場 合 ,「 く 」 の 字 に 曲 げ た 鋼 線 の 一 辺 の 長 さ は L で あ る . ま た , 鋼 線 の 初
86
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
期 角 度 は ( π / 3 r a d ) と し た ( 図 4 . 7 ( a ) ).「 く 」 の 字 に 曲 げ た 鋼 線 に 荷 重 F i
が 加 わ っ た 時 の 変 位 を x i と す る と ,F i と x i の 関 係 は 式 ( 4 . 5 ) の よ う に 表 さ れ
る.
Fi = k (xi -
L
)
2
(4.5)
また,このとき鋼線に加わるモーメントは
Mi = Fi yi
(4.6)
と表される.
し た が っ て 変 位 が x i か ら x i + 1 と な っ た 場 合 ( 図 4 . 7 ( b ) ), 幾 何 学 的 に
2
2
æ xi ö
æx ö
2
2
ç ÷ + yi = ç i +1 ÷ + yi +1
è2ø
è 2 ø
(4.7)
と な り , 式 (4.7)よ り yi+1 が 求 ま る . な お , 本 研 究 の 模 型 の シ ー ト ベ ル ト の
最 大 伸 長 量 に つ い て は , L=60mm で あ る .
x i = 5 0 m m ま で こ の 繰 り 返 し 計 算 を 行 っ た 結 果 ,鋼 線 が 塑 性 域 に 達 す る と
きの y
i
=44mm を 得 た .
式 (4.4)よ り , こ の と き の Fi= 2.2N で あ る の で , モ ー メ ン ト は Mi=97Nmm.
Mi と 塑 性 断 面 係 数 Zp, 降 伏 応 力 σ p の 関 係 は 、 式 (4.8)の よ う に な る .
sp =
Mp
Zp
(4.8)
鋼線の断面形状は円形であるので,塑性断面係数は円の半径 r とすると
Zp =
4 3
r
3
(4.9)
と表される.
軟 鋼 の 降 伏 応 力 σ p=280Mpa, 弾 性 限 界 モ ー メ ン ト Mp=97Nmm を 式 (4.9)
87
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
に 代 入 す る と r=0.6mm と な る . し た が っ て , 鋼 線 の 太 さ は 直 径 1.2 mm と
な る が , こ の 径 の 鋼 線 は 存 在 し な い の で , 直 径 0.9 mm の 鋼 線 を 2 本 使 用
した.
腰 用 シ ー ト ベ ル ト に つ い て も ,同 様 の 計 算 を 行 い ,鋼 線 の 直 径 を 求 め た .
腰 用 シ ー ト ベ ル ト の 最 大 伸 長 量 L は 3 0 m m で あ る の で ,「 く 」 の 字 に 曲 げ
た 鋼 線 の 一 辺 の 長 さ は 30mm, 鋼 線 の 太 さ は 直 径 1.2mm と な る が , こ の 径
の 鋼 線 は 存 在 し な い の で 直 径 0.9 mm と 直 径 0.8mm の 鋼 線 の 2 本 を 使 用 し
た.
(4)
エアバッグ
本研究においては,衝突時にダミーがエアバッグから受ける反力をエア
バッグの排気口の大きさで調節することによって,模型におけるエアバッ
グの能力の再現を試みた.すなわち,衝突時に乗員の頭部がエアバッグに
接 触 し た 際 に , 圧 力 P1 の 一 定 内 圧 が 速 度 w で 大 気 圧 内 に 噴 出 す る も の と
みなし,模型はこれを相似則に則って再現するものを考えることとした.
ノ ズ ル 内 の 流 れ と 摩 擦 の 影 響 は 次 の 式 で 表 現 さ れ る (108).
k
é
ù
k
ö
æ
w
P -1
k
=
P1q1 ê1 - çç 2 ÷÷ ú
ê è P1 ø ú
2g k -1
êë
ûú
(4.10)
こ こ で P1 は エ ア バ ッ グ 内 の 圧 力 , P2 は 大 気 圧 , q1 は エ ア バ ッ グ 内 の 初
期比体積,g は重力加速度である.
な お , 式 (4.10)の 右 辺 の P1, q1 に つ い て は , 空 気 を 理 想 気 体 と 考 え る と
P1q1=RT
( 4 . 11 )
である.R および T はそれぞれガス定数,エアバッグ内の絶対温度である
ので一定とみなし,変化量を無視するものとする.
実 車 , 模 型 そ れ ぞ れ の 衝 突 直 後 の エ ア バ ッ グ 内 の 圧 力 を P1p, P1m, 衝 突
88
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
現 象 が 終 了 し た と き の エ ア バ ッ グ 内 の 圧 力 を P2p,P2m と お く と ,自 動 車 メ
ーカの実車のエアバッグ展開試験時のデータによれば,
P1p=0.156MPa
(4.12)
また,衝突現象終了時のエアバッグ内の圧力は大気圧と等しくなっている
とみなせるので,
P2p= P2m = 0.101MPa
(4.13)
ここで,ダミーがエアバッグから受ける荷重の比が,単位体積当たりの吸
収エネルギーの比に等しいことから,
P1m - P2 m em
=
P1 p - P2 p e p
(4.14)
式 (4.12), (4.13), (4.14)か ら ,
P1m=0.104MPa
(4.15)
が 得 ら れ る . し た が っ て , 式 (4.10)に つ い て の 実 車 と 模 型 の 比 は ,
æP
1 - çç 2 m
è P1m
k
ö k -1
÷÷
2
wwmm2
ø
= 2
k
wwpp 2
k
1
æ P2 p ö
÷
1- ç
çP ÷
è 1p ø
(4.16)
で表される.したがって,
w m2
w p 2 = 0.073
(4.17)
となることから,
wm
= 0.270
wp
が得られる.
(4.18)
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
89
噴 出 速 度 w と 排 気 口 の 面 積 F の 積 が 排 出 体 積 と な る の で , 4.3.1 節 で 述
べた相似則により,排気口の面積 F については,実車と模型の間で次の関
係が成り立つ.
1
5.585
wm
wp
Fm
Fp
=
1
1000
(4.19)
こ の 式 (4.19)に 式 (4.18)を 代 入 す る こ と に よ り , 排 気 口 の 面 積 の 比 は 次 の よ
うになる.
Fm
=0.021
Fp
(4.20)
実 車 の 運 転 席 エ ア バ ッ グ に は , 直 径 45.0mm の 排 気 口 が 2 箇 所 空 い て い る
の で , 模 型 で は 直 径 6.5mm の 排 気 口 を 2 箇 所 空 け る こ と と し た . な お , 模
型のエアバッグの排気口は,穴あけパンチによって打ち抜いた.
以上の理論的な考察は,新たに行なった検討であり,今後のエアバッグ
の模型実験のひとつの基礎を与えると考えられる.
(5)
タイヤについて
実 車 の タ イ ヤ の 荷 重 -変 位 曲 線 を 図 4.8(a)に 示 す . 実 車 の タ イ ヤ で は , 荷
重 は 変 位 が 70mm に 達 す る ま で は 線 形 的 に 増 加 し て い る . 本 研 究 の 模 型 で
は ,タ イ ヤ に つ い て も ,実 車 タ イ ヤ の 荷 重 - 変 位 曲 線 を 忠 実 に 再 現 す る よ う
に 設 計 し た .相 似 則 に 則 っ て 模 型 に 装 着 す る タ イ ヤ の 荷 重 - 変 位 曲 線 を 求 め
る と 図 4.8(b)に 示 し た 通 り に な る . し た が っ て , 模 型 の タ イ ヤ で は , こ の
荷 重 - 変 位 曲 線 を 再 現 で き る 材 料 を 選 択 す る よ う に し た .具 体 的 に は ,防 水
テ ー プ が ,図 4 . 8 ( b ) に 示 し た 荷 重 - 変 位 曲 線 を 再 現 す る 性 質 を 示 し た こ と か
ら,これを模型のタイヤとして使用することとした.
以上,本研究における模型車両を構成する全部品の総数は,前述の車両
本 体 部 分 か ら ダ ミ ー お よ び 拘 束 装 置 を 含 め る と , 総 数 103 点 に お よ ん だ .
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
90
(a) Overview
(b) Engine Compartment
(d) Door Beltline-Member
(c) Chassis and Under-Body
(e) Acral-Part of Door Beltline-Member
Fig. 4.3 Scale Model (1:10)
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
Floor-Member
Floor member
Floor-Tunnel
Floor tunnel
Door
Beltline-Member
Door-beltline
member
Side-Sill
Side
sill
Load Transducers
transducers Accelerometer
Load
Side member
Side-Member
Fig. 4.4 Load Transducers and Accelerometer
Seat-Belts
Airbag for
Driver Seat
Dummies
Airbag for
Passenger Seat
Fig. 4.5 Dummies and Restraint Systems
91
92
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
Load (kN)
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
0
200
400
600
800
1000
80
100
Elongation (mm)
( a ) A c t u a l Ve h i c l e
5.0
Load (N)
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0
20
40
60
Elongation (mm)
(b) Scale Model
Fig. 4.6 Load Elongation Curve of Seatbelt
93
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
yi
Fi
Fi
xi
(a) Displacement: xi
yi +1
Fi +1
xi+1
(b) Displacement: xi+1
Load (kN)
Fig. 4.7 Plastic Hinge
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
7
8
9
Displacement (mm)
( a ) A c t u a l Ve h i c l e
50
Load (N)
40
30
20
10
0
0
1
2
3
4
5
6
Displacement (mm)
(b) Scale Model
Fig. 4.8 Load Displacement Curve of Tire
Fi +1
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
(6)
94
模型の検証
模型の衝突特性が実車の衝突特性に合致していることを確認するため,
55km/h で の 固 定 壁 バ リ ア へ の 衝 突 に つ い て 実 車 と の 比 較 を 行 っ た
( 図 4 . 9 ).こ の 図 に 示 し た 実 車 の 減 速 度 - 時 間 曲 線 の 通 り ,模 型 の 衝 突 特 性
は ,実 車 の 衝 突 特 性 (109)(110)と 大 き な 違 い が 無 い こ と が わ か る .従 っ て ,模
型の衝突特性は,実車の衝突特性をよく再現できていると判断した.
Actual
Actual Vehicle
vehicle 11
Decelration (G)
40
Actual
Actual Vehicle
vehicle 22
Scale
Scale model
Model
30
20
10
0
0
20
40
60
80
100
120
Time
Time(msec)
(ms)
Fig. 4.9 Deceleration Curves
4.3.4
衝突実験用バリア
本 研 究 で は , セ ダ ン 同 士 の 衝 突 を 平 面 バ リ ア 衝 突 ( 図 4 . 1 0 ), S U V と セ ダ
ン の 衝 突 を 突 起 バ リ ア 衝 突 ( 図 4 . 11 ) で 表 現 し , こ れ ら の 実 験 結 果 を 比 較
す る こ と に よ り ,S U V に 衝 突 し た セ ダ ン の 車 体 と セ ダ ン 同 士 の 衝 突 で の 車
体の変形状況の違いを観察した.
4.3.5
模型車両の衝突実験条件
セ ダ ン と S U V の 前 面 衝 突 事 故 の 累 積 頻 度 9 9 % は ,相 対 速 度 11 0 k m / h 以 下
で 発 生 し て い る (46)(111) , 質 量 が 同 じ 車 両 同 士 の 衝 突 で は , 相 対 速 度 の 1/2
がバリア衝突速度と等価であるから,本研究における衝突速度は,この事
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
95
故 統 計 を 参 照 し , 55km/h( 実 車 換 算 ) と し た .
模型は,三相誘導モータによりタイミングベルトを用いてレール上を牽
引 す る 衝 突 試 験 装 置( 図 4 . 1 2 )に よ っ て ,バ リ ア に 衝 突 さ せ る よ う に し た .
突 起 バ リ ア の 設 置 高 さ は ,S U V と セ ダ ン そ れ ぞ れ の サ イ ド メ ン バ が 完 全 に
上 下 オ フ セ ッ ト し て い る 衝 突 を 想 定 し ,図 4 . 11 に 示 す よ う に 5 5 m m( 実 車
換 算 5 5 0 m m )と し た .な お ,実 車 の S U V も サ イ ド メ ン バ 地 上 高 は 4 5 0 - 5 5 0 m m
程度であるので,本研究における突起バリアの設置高さは妥当なものと考
える.また,測定には高速度カメラによる撮影結果を併用した.
55
(1/10 Scale)
Fig. 4.10 Flat Barrier
Fig. 4.11 SUV Barrier
2900
Runway Table
Barrier
Fig.4.12 Car-to-Barrier Crash Test System
Pulley
Timing Belt
Motor
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
96
220
97
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
4.4
衝突実験結果
4.4.1
模型車両の衝突特性
変 位 と 時 間 の 関 係 を 図 4.13 に , 減 速 度 と 変 位 の 関 係 を 図 4.14 に 示 す .
なお,本章で図中に示した値はすべて実車に換算した値である.現実の車
体 に お け る 減 速 度 -変 位 曲 線 は 各 車 各 様 で あ る が , 図 4.14 の 実 線 で 示 し た
平面バリア衝突の曲線は,多くの車体の一般的な傾向に合致している.た
だし,最初の立ち上がりは現実の車体に比して遅い.これは樹脂の弾性率
が相似則で与えられる値より低いためである.なお,本節に示した図は,
Displacement (mm)
いずれも実車のスケールに換算して示してある.
1200
1000
800
600
400
200
0
SUV barrier
SUV
Barrier
Flat barrier
Flat
Barrier
0
20
40
60
80
100
120
Time
(msec)
Time
(ms)
Decelration (G)
Fig. 4.13 Vehicle Deformation
35
30
25
20
15
10
5
0
SUV
barrier
SUV
Barrier
Flat
Flat Barrier
barrier
0
200
400
600
800
Displacement (mm)
Fig. 4.14 Deceleration Curve
1000
1200
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
98
図 4 . 1 4 の破線は突起バリア衝突の曲線である.サイドメンバの圧壊荷重が発生すべ
き 200-300mm ではほとんど荷重が出ていない.主要な衝撃吸収部材であるサイドメン
バが突起バリアの下にもぐり込み,エネルギーをほとんど吸収していないためと思われ
る. 500-800mm 付近のピークはエンジンのダッシュパネルへの侵入によるものである.
突起バリア衝突では,衝突エネルギーをサイドメンバで吸収できない分,全体変形量は
大きくなっている.平面バリア衝突における最大変形量は 843mm であるが,突起バリ
ア衝突では 1078mm 変形しており,約 30%も増加している(図 4.13,図 4.14).この変
形量の増大は,エンジンがダッシュパネルへ侵入する量の増加に結びつく.これらの値
は代表的な実験の結果であるが,実際には平面バリア 7 回,突起バリア 6 回,計 13 回
の衝突実験を行っており,いずれも類似の結果を得ている.その一部を追補 2 に示した.
4.4.2
衝突による車体骨格部への入力荷重と車体変形
高 速 度 カ メ ラ に よ っ て 撮 影 し た 模 型 の 潰 れ 状 況 を 図 4.15 お よ び 図 4.16
に 示 す . 客 室 に 埋 め 込 ん だ ロ ー ド セ ル ( 図 4.4) に よ っ て 測 定 し た 平 面 バ
リ ア , 突 起 バ リ ア そ れ ぞ れ へ の 衝 突 に つ い て の 荷 重 -変 位 曲 線 を , 図 4.17
に 示 す .図 4 . 1 4 よ り ,平 面 バ リ ア と 突 起 バ リ ア で は 客 室 へ の 入 力 に 対 し て
車体骨格部が全く異なる力の受け方をしていることが確認できる.
平 面 バ リ ア 衝 突 ( 図 4.17(a)) で は , フ ロ ア メ ン バ , フ ロ ア ト ン ネ ル , サ
イドシル等の客室下部構造が受け持つ荷重配分は大きい.通常の客室構造
においては,衝突時の荷重は,主としてサイドメンバ付け根で受け持たれ
ている.平面バリアの場合には,客室構造はこれら下部骨格部材で効率よ
く力を受けていることが理解できる.
一 方 , 突 起 バ リ ア 衝 突 ( 図 4.17(b)) で は , ド ア ベ ル ト ラ イ ン 部 が 受 け 持
つ荷重配分が他の骨格部材に比べて大きい.突起バリア衝突では,サイド
メンバがバリアの下にもぐり込むため,本来の荷重導入部位として想定さ
れている客室下部構造への入力が少なく,その代わりにドアベルトライン
部が受け持つ荷重配分が大きくなることを示している.
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
4.5
客室入力分布による防護性の評価
4.5.1
客室入力の垂直分布
99
本研究では,客室入力を評価する方法として,客室(左右方向断面上)
に入る荷重の垂直方向分布およびその荷重中心の推移を示す手法を導入し
た .車 両 変 形 の ス ト ロ ー ク 量 毎 で の ,荷 重 の 垂 直 方 向 分 布( D C F ( D i a g r a m o f
Compartment
Force) ) お よ び 客 室 荷 重 中 心 の 変 化 ( CCF
(Centre
of
Compartment Force)) を 図 4.18 の よ う に 示 す こ と に よ っ て , 客 室 入 力 を 評
価することとした.
図 4.19 は , 図 4.17 に 示 し た 客 室 入 力 荷 重 か ら 垂 直 位 置 別 の 平 均 入 力 荷
重をストローク量毎に導出した,衝突過程における荷重の垂直分布および
客室荷重中心の変化を示した図である.なお,本節に示した図は,いずれ
も実車のスケールに換算して示したものである.
平面バリアへの衝突では,衝突による車体変形が進行するほど,車体下
部の受ける荷重は大きくなり,荷重中心は全変形過程を通じて車体下部を
通っている.セダン同士の衝突においては,フロアメンバ等,車体下部が
衝 突 時 の 荷 重 を 受 け て い る こ と を 示 し て い る .な お ,図 4.19 の 曲 線 は ,図
4.4 に 示 し た ロ ー ド セ ル で 計 測 し た 荷 重 を 設 置 高 さ 別 に プ ロ ッ ト し た も の
をストローク量毎に結んだものである.
一方,突起バリアへの衝突では,衝突直後は車体下部が荷重を受けてい
る が ,車 体 変 形 が 進 行 し て い く ほ ど ,ド ア 部 の 受 け る 荷 重 が 増 大 し て い く .
また,荷重中心位置は,車体下部からドアベルトライン部への荷重中心へ
移 動 し て い る .セ ダ ン は S U V と の 衝 突 に お い て ,初 期 段 階 で 本 来 の 衝 突 安
全対策がなされた車体下部構造で荷重を受け止めようとするものの,サイ
ドメンバが上下にオフセットしているため,ドアベルトライン部で荷重を
受け止めることを示している.
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
55
(1/10 Scale)
Fig. 4.15 Crash Test (Flat Barrier, Max Body Deformation)
Fig. 4.16 Crash Test (SUV Barrier, Max Body Deformation)
100
101
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
60
Force (kN)
50
40
Floor-Member
Side-Sill
Floor-Tunnel
Door Beltline-Member
30
Roof-Rail
20
10
0
-10
200
400
600
800
1000
Displacement (mm)
(a)Flat Barrier
60
Force (kN)
50
Door Beltline-Member
40
30
20
Floor-Member
Floor-Tunnel
Side-Sill
Roof-Rail
10
0
-10
200
400
600
800
1000
Displacement (mm)
(b) SUV Barrier
Fig. 4.17 Force Displacement Curve
(Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ)
Height
●● ●
●(Ⅰ)
●
●
(Ⅲ)
● (Ⅱ)
●
●
Centre of Compartment Force
Lateral Compartment Force
Fig. 4.18 Expression of Defensiveness (D CF (Diagram of Compartment Force))
102
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
2000
Height (mm)
1500
1000
500
0
10
20 30 40
Force (kN)
50
(a)Flat Barrier
2000
Height (mm)
1500
1000
500
0
10 20 30
Force kN
(b) SUV Barrier
Front-End
Deformation (mm)
Front0-200
200-400
400-600
600-800
800-1000
Center of Compartment Force
Fig. 4.19 D CF (Diagram of Compartment Force)
40
50
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
0-200mm
200-400mm
400-600mm
600-800mm
(a)Flat Barrier
0-200mm
200-400mm
400-600mm
-
600-800mm
-
800-1000mm
(b) SUV Barrier
0
40 (kN)
Fig. 4.20 Transition of 2-D Compartment Force Distribution
103
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
104
今回の実験では,模型車両には極めて剛性の高い部材をドアベルトライ
ン部分に装着している.もし,実車に近い強度で模型のドアを製作した場
合には,突起バリア衝突ではドアベルトライン部が座屈していた可能性が
ある.この場合には,生存空間は大きく減少することになる.ドアベルト
ライン構造に関しては,前後荷重に対して他から共同して抵抗すべき部材
が ほ と ん ど な く ,こ の 意 味 か ら も 対 S U V の 衝 突 で は ド ア 強 度 の 検 討 が 重 要
である.なお,ルーフサイドレールに余り力が入っていないことにも注目
すべきであるが,ドア剛性が現実に近いと,より大きな力がルーフレール
に入ると思われる.
4.5.2
客室入力の 2 次元等高線表示
上述の客室入力荷重の垂直方向分布による評価法と併せ,センターピラ
ー部での車体断面を2次元表示し,客室へ入る荷重の分布を等高線で表示
す る こ と に よ る 客 室 入 力 の 評 価 も 実 施 し た .そ の 分 布 の 変 化 を 図 4 . 2 0 に 示
す.この評価手法からも平面バリア衝突では車体下部,突起バリアではド
アベルトライン部で荷重を受けていることを把握できる.
す な わ ち , 図 4.19 と 図 4.20 を 併 用 す る こ と に よ っ て , セ ダ ン 客 室 強 度
を表現できるであろう.
4.6
第 4 章の結論
(1) セ ダ ン と SUV の 衝 突 コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー の 検 討 の た め に は , フ ロ ン
ト エ ン ド か ら 客 室 へ の 入 力 経 路 が ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 の 場 合 と は 異 な る
ことを把握しておく必要がある.
(2) 樹 脂 製 1/10 精 密 模 型 の 客 室 部 に 設 置 し た ロ ー ド セ ル に よ っ て 客 室 入 力
を 測 定 し た .こ の デ ー タ か ら 客 室 入 力 の 垂 直 方 向 分 布 図 ,お よ び 2 次 元
等 高 線 分 布 図 を 作 成 し た .こ れ ら の 表 現 法 は ,客 室 入 力 の 表 現 に 有 用 で
ある.
第 4 章 . セダン模型を用いた衝突試験によるSUV との衝突時の客室入力の検討
105
( 3 ) 新 た な 表 現 法 を 用 い て 客 室 入 力 を 検 討 し た 結 果 ,平 面 バ リ ア と の 衝 突 で
は , 荷 重 を 客 室 下 部 で 受 け て い る が , SUV を 模 し た 突 起 バ リ ア と の 衝
突 で は ,荷 重 を 主 と し て ド ア ベ ル ト ラ イ ン 部 で 受 け 持 つ こ と が 明 ら か と
なった.
( 4 ) な お ,突 起 バ リ ア と の 衝 突 で 荷 重 が 車 体 上 部 に 多 く 加 わ る こ と が ,S U V
と衝突したセダン乗員の上半身に傷害が多く発生することに直ちに結
び 付 く と 結 論 づ け る わ け に は い か な い .た だ し ,現 在 の 衝 突 安 全 対 策 に
お い て は ,車 体 上 部 に 力 が 加 わ る 場 合 に つ い て の 対 策 は ,そ れ ほ ど 広 く
施 さ れ て い な い の で ,車 体 上 部 に 力 が 加 わ る と ,車 体 の 上 部 の 変 形 が 設
計 時 の 予 想 外 に 大 き く な る こ と が 考 え ら れ る .そ の 結 果 ,乗 員 の 上 半 身
に傷害が多くみられるようになると考える.
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
106
第 5章
セ ダ ン 模 型 と SUV 模 型 の Car-to-Car
衝突試験による客室入力の検討
5.1
セダン模型と SUV 模型の Car-to-Car 衝突試験の意義
第 4 章 に お い て ,筆 者 ら は 1 / 1 0 ス ケ ー ル の セ ダ ン を 模 し た 精 密 な 模 型 を
製 作 し ,平 面 バ リ ア お よ び S U V を 模 し た 突 起 バ リ ア と 衝 突 さ せ る 実 験 を 行
い,両実験から得られた結果を比較することによって,客室への荷重分布
の変化の違いを明らかにした.しかしながら,第 4 章での実験は,衝突形
態を理想化した条件での実験であり,必ずしも実際の衝突事故における衝
突を完璧に再現した訳ではない.それは,実車の衝突においては,衝突相
手 の 車 体 に 食 い 込 む 現 象 が 発 生 す る か ら で あ る . そ こ で 本 章 で は , SUV を
模 し た 模 型 と 第 4 章 と 同 じ セ ダ ン 模 型 を 衝 突 さ せ る Car-to -Car 衝 突 試 験 を
行 い , そ れ ぞ れ の 車 両 の 客 室 へ の 荷 重 分 布 の 変 化 を 求 め , SUV, セ ダ ン そ
れぞれの車両にとってのコンパティビリティーの検討を試みることとした.
第 2 章 に お い て ,車 両 重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 で 死 亡 も し
く は 重 傷 を 負 っ た SUV 運 転 者 お よ び セ ダ ン 運 転 者 そ れ ぞ れ の 損 傷 種 部 位
の 構 成 に つ い て 分 析 を 行 い ,次 の 特 徴 が あ る こ と を 明 ら か に し た( 図 2 . 4 ,
図 2 . 5 ).
106
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
107
( 1 ) S U V- M 運 転 者 は S d n - M 運 転 者 に 比 べ 脚 部 傷 害 の 割 合 が 多 い .
(2) こ れ に 対 し , Sdn-M 運 転 者 は 頸 部 や 胸 部 の 傷 害 が 多 い .
第 2 章 で も 述 べ た 通 り ,SUV と セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 に お い て は , 両 車 の
サイドメンバが上下方向にオフセットした状態でぶつかることになるため,
セダン側は衝突の力の受け手である客室下部を有効に利用することができ
ない.このため,セダン客室には,従来セダン同士の衝突安全のために設
けられている荷重の伝達経路以外の部位に大きな入力が加わることになる.
衝 突 時 に SUV, セ ダ ン 両 車 に 加 わ る 衝 撃 力 自 体 は 等 し い の で あ る が , セ ダ
ン側では効果的な荷重の受け方ができないことから,セダンの客室構造の
方が強度面で不利となる.客室が入力に耐え切れずに大きな変形をするこ
とから,乗員の傷害度も高くなる.特に,フードリッジリンフォースメン
トなど車体上部で荷重を受けるので,セダン運転者は頸部や胸部など上半
身の傷害が多くなる.
こ れ に 対 し ,S U V で は 入 力 は サ イ ド メ ン バ を 介 し て 車 体 下 部 に 伝 達 さ れ
る . そ し て ,SUV 同 士 の 衝 突 安 全 の た め に 設 け ら れ て い る 荷 重 の 伝 達 経 路
に沿って入力が伝達されることから,客室変形はセダンに比べ小さくて済
み,また,入力が車体下部に伝達されることから,乗員の傷害も脚部傷害
の割合が多くなる.
こ の 事 故 統 計 分 析 に 関 す る 具 体 例 と し て の S U V- L ク ラ ス の S U V と
Sdn-M ク ラ ス の セ ダ ン の 衝 突 は , 第 3 章 の 3.4 節 に て 紹 介 し た が , こ こ で
は ,よ り 詳 細 に つ い て 述 べ る .こ の 事 故 例 に お け る S U V- L 車 両 と S d n - M 車
両 の サ イ ド メ ン バ 地 上 高 の 差 は 1 5 5 m m あ る こ と か ら( 表 3 . 2 ),衝 突 時 に お
いてサイドメンバがオーバーラップしている部分は少ないとみなすことが
で き る . 車 両 の 潰 れ 状 況 は , 図 3 . 11 に 示 し た 通 り , 両 車 助 手 席 側 が オ ー バ
ーラップしたかたちの衝突である.
Sdn-M の 車 両 に つ い て は フ ェ ン ダ ー 部 分 も 含 め た ボ ン ネ ッ ト 部 分 だ け で
なく,助手席側の前席部分の乗員空間も大きく潰れており,それによって
インストルメントパネルは後退し,助手席シート背面部との距離が狭まっ
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
108
ている.このため,助手席の乗員は上半身に胸部血管損傷,肺損傷および
頭 蓋 骨 骨 折 を 負 っ て 死 亡 し た . 一 方 , S U V- L の 車 両 に つ い て は グ リ ル よ り
下の部分が損壊,セダンのフロントエンドが衝突した助手席側のグリルと
バ ン パ 部 分 が 後 退 し て い る . S U V- L で は 助 手 席 側 に 乗 員 が 乗 車 し て い な か
ったため,この車両損壊による乗員傷害について確認することはできない
が,位置的関係か,もし助手席に乗員が乗車していれば,脚部になんらか
の傷害を負った可能性も推測できる.なお,車両の損壊度合いが少ない運
転席側の乗員については,シートベルト非着用により顔面打撲を負ったも
のの軽傷であった.
この事故例は重量の差が大きく,必ずしも同重量の場合と同一視はでき
ないが,車両の損壊状況と乗員の傷害程度から,衝突事故では乗員空間を
確保できない場合に乗員が大きな傷害を受けることを確認した.したがっ
て,衝突時における自動車乗員の傷害程度を軽減するためには,衝突時に
お け る 乗 員 空 間 の 確 保 が 重 要 と な る . す な わ ち , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お
けるコンパティビリティーについては,両車の客室入力を明らかにし,乗
員 空 間 を 確 保 す る の に 必 要 な 客 室 強 度 を 求 め る こ と が 重 要 と な る .そ こ で ,
本 章 で は SUV, セ ダ ン 両 車 の Car-to -Car 衝 突 試 験 を 実 施 し , そ れ ぞ れ の 客
室への荷重の分布を計測することとした.
5.2
衝突実験用模型
5.2.1
模型の製作
第 4 章 の 4.3.1 節 で 設 定 し た 相 似 則 に 従 い , 衝 突 実 験 用 の SUV 模 型 と セ
ダ ン 模 型 の 設 計 を 行 っ た . 表 5.1 に 模 型 の 諸 元 お よ び こ れ ら を 実 車 換 算 し
た 値 を 示 す . SUV 模 型 お よ び セ ダ ン 模 型 を 図 5.1 に 示 す . セ ダ ン 模 型 に つ
いては,第 4 章で使用したものと全く同じ材料にて同じ諸元のものを製作
し た . ま た , SUV 模 型 に つ い て は , 車 体 構 造 お よ び 質 量 は セ ダ ン と 全 く 同
じとし,車高だけを変えて衝突時にサイドメンバが上下にオフセットする
109
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
高 さ に 設 計 し た .車 体 に 搭 載 す る 計 測 装 置 は セ ダ ン 模 型 と 全 く 同 じ と し た .
こ れ に よ り , 車 体 構 造 , 質 量 は 同 じ で サ イ ド メ ン バ 高 さ の み が 異 な る SUV
とセダンの衝突試験を実施することとした.
また,車体変形を正確に再現する上で乗員の質量は無視できないため,
第 4 章 と 同 じ く ダ ミ ー を 製 作 ,運 転 席 お よ び 助 手 席 そ れ ぞ れ に 搭 載 し た( 図
4 . 5 ). ま た , 相 似 則 に 従 っ て 製 作 し た 乗 員 拘 束 装 置 に よ り , 衝 突 時 に 乗 員
が車体におよぼす影響についても考慮した衝突条件を整えた.シートベル
ト の 荷 重 - 伸 び 特 性 に つ い て は ,前 章 と 同 じ と し た .な お ,本 章 に お い て も ,
ダミーによる乗員傷害値の計測は考えていないので,関節挙動など,ダミ
ー細部の生体的な特性については簡略化している.
Length (mm)
Height (mm)
Width (mm)
Weight* Fr.
(kg)
Rr.
Total
Side-Member
Height (mm)
Ta b l e 5 . 1 Vehicle Specifications
SUV (Model)
Sedan (Model)
SUV (Actual)
430
430
4300
155
140
1550
176
176
1760
0.172
0.172
966
0.113
0.113
634
0.285
0.285
1600
60
45
600
Sedan (Actual)
4300
1400
1760
966
634
1600
450
* Including Occupant Dummies and Restraint Systems
5.2.2
衝突試験装置の製作
本 章 で は ,SUV 模 型 と セ ダ ン 模 型 の Car-to-Car 衝 突 試 験 を す る た め の 専
用 の 衝 突 試 験 装 置 を 製 作 し た ( 図 5 . 2 ). こ の 衝 突 試 験 装 置 で , S U V 模 型 お
よびセダン模型は,それぞれ三相誘導モータによって駆動されるタイミン
グ ベ ル ト に よ り レ ー ル 上 を 牽 引 さ れ , 本 装 置 の 中 央 部 で Car-to-Car 衝 突 す
るようにした.
セ ダ ン と SUV の 前 面 衝 突 事 故 の 累 積 頻 度 99% は , 危 険 認 知 相 対 速 度
11 0 k m / h 以 下 で 発 生 し て い る ( 4 6 ) ( 1 1 1 ) , 本 研 究 に お け る 相 対 衝 突 速 度 は , こ
の 事 故 統 計 を 参 照 し , 11 0 k m / h ( 実 車 換 算 ) と し た .
Sedan Model
Fig. 5.1 Scale Models of SUV and Sedan (1:10), (Photographing by Photron Ltd.)
SUV Model
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
110
Pulley
Timing Belt
Gears
Motor
Timing Belt
Fig. 5.2 Car-to-Car Crash Test System
Runway Table
5078
Pulley
Runway Table
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
111
220
112
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
5.3
衝突実験結果
客 室 に 埋 め 込 ん だ ロ ー ド セ ル ( 図 4.4) に よ っ て 測 定 し た 各 骨 格 部 材 へ
の 入 力 の 合 計 に つ い て の 荷 重 -時 間 曲 線 を , 図 5.3 に 示 す . 前 節 で 述 べ た 通
り ,本 章 に お け る S U V 模 型 と セ ダ ン 模 型 は ,サ イ ド メ ン バ 高 さ 以 外 に つ い
ては,車両質量も車両前面構造も全く同じである.しかしながら,両車の
荷 重 -時 間 曲 線 に は 明 ら か な 差 異 が み ら れ る .
衝 突 の 前 半 ,0 - 1 0 0 m s で は ,セ ダ ン の 荷 重 の 増 加 率 は S U V に 比 べ て 高 い .
S U V と セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ は オ フ セ ッ ト し て い る の で ,セ ダ ン 側 は S U V
の 剛 性 の 高 い 部 位 , 例 え ば サ イ ド メ ン バ 等 , と 衝 突 す る の に 対 し , SUV 側
は セ ダ ン の 剛 性 の 低 い 部 位 ,例 え ば フ ェ ン ダ ー 等 ,と 衝 突 す る .こ の た め ,
車両質量も車両前面構造も全く同じであるにも係らず,セダン模型の荷重
の 上 が り 方 は SUV 模 型 に 比 べ て 高 い . SUV 模 型 の 荷 重 は 100ms 付 近 に な
ってから急激に増加するが,これは,セダンのエンジンがダッシュパネル
に 底 付 き し た た め ,そ の 反 力 を S U V が 受 け る か た ち と な っ た も の と 考 え る .
以上のことから,衝突の前半においては,セダンが一方的に荷重を受ける
Force (kN)
ことになっているとみなすことができる.
SUV
SUV
100
Sedan
Sedan
80
60
40
20
0
-200
-150
-100
-50
-20
0
50
100
Time
(msec)
Time
(ms)
Fig. 5.3 Force Time Curve, SUV to Sedan Collision
150
200
Sedan Model
Fig. 5.4 Car-to-Car Crash Test (Photographing by Photron Ltd.)
SUV Model
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
113
114
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
高 速 度 カ メ ラ に よ っ て 撮 影 し た SUV 模 型 お よ び セ ダ ン 模 型 両 車 が 衝 突
し て い る 様 子 を 図 5.4 に , SUV 模 型 , セ ダ ン 模 型 そ れ ぞ れ の 客 室 骨 格 部 材
の 荷 重 - 時 間 曲 線 を 図 5 . 5 に 示 す .こ れ ら の 図 か ら ,S U V と セ ダ ン で は 客 室
への入力に対して車体骨格部が全く異なる力の受け方をしていることがわ
かる.
ま ず , SUV で は , フ ロ ア メ ン バ , サ イ ド シ ル と い っ た 客 室 下 部 構 造 が 受
け持つ荷重配分は大きい.通常の客室構造においては,衝突時の荷重は,
主 と し て サ イ ド メ ン バ 付 け 根 で 受 け 持 た れ て い る . こ の こ と か ら , SUV に
ついては,客室構造はこれら下部骨格部材で効率よく力を受けていること
が理解できる.
50
Side-Sill
40
Door Beltline-Member
Floor-Member
Force (kN)
30
20
Floor-Tunnel
10
0
-10
0
50
100
150
200
Roof-Rail
-20
Time (ms)
( a) SUV
50
Door Beltline-Member
40
Force (kN)
30
Side-Sill
Floor-Member
20
10
0
-10
0
50
100
Roof-Rail
150
Floor-Tunnel
-20
Time (ms)
(b) Sedan
Fig. 5.5 Force Time Curve
200
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
115
一方,セダンでは,ドアベルトライン部が受け持つ荷重配分が他の骨格
部 材 に 比 べ て 大 き い .SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お い て , セ ダ ン の サ イ ド メ ン
バ は S U V の サ イ ド メ ン バ の 下 に も ぐ り 込 む た め ,本 来 の 荷 重 導 入 部 位 と し
て想定されている客室下部構造への入力が少なく,その代わりにドアベル
ト ラ イ ン 部 が 受 け 持 つ 荷 重 配 分 が 大 き く な る こ と を 図 5.5(b)は 示 し て い る .
なお,これらの値は代表的な実験の結果であるが,実際には 5 回の衝突
実 験 を 行 っ て お り , いずれも類似の結果を得ている.その一部を追補2に示した.
5.4
客室入力分布による防護性の評価
5.4.1
客室入力の垂直分布
5 . 2 節 で 述 べ た よ う に ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 考
える上では両車の乗員空間の確保を検討する必要がある.両車の乗員空間
を 確 保 す る た め に 必 要 な 客 室 強 度 は ,S U V と セ ダ ン そ れ ぞ れ の 客 室 に 加 わ
る荷重の入力状況を把握するによって,初めて明らかになることから,客
室入力の評価が重要となる.
本章でも,客室入力を評価する方法として,客室に入る荷重の垂直方向
分布およびその荷重中心の推移を示す手法を導入した.なお,第 4 章とは
異なり,衝突現象の進行時間毎での客室(左右方向断面上)に入る荷重の
垂 直 方 向 分 布 ( D C F ( D i a g r a m o f C o mp a r t m e n t Fo r c e ) ) と 客 室 荷 重 中 心 の 変 化
( C C F ( C e n t r e o f C o m p a r t me n t F o r c e ) ) を 示 す こ と に よ っ て , 客 室 入 力 を 評 価
することとした.
図 5.6 に 衝 突 過 程 に お け る 客 室 入 力 の 垂 直 分 布 図 を 示 す . SUV で は , 衝
突による車体変形が進行するほど,車体下部の受ける荷重が大きくなって
いく.荷重中心は全変形過程を通じて車体下部を通っている.衝突直後で
ドアベルトライン部にマイナス荷重が発生しているが,これは,セダンと
の 衝 突 の 際 に S U V の 車 体 が 前 の め り に な っ た た め( 図 5 . 4 ),ド ア ベ ル ト ラ
イン部に引張力が働くのでマイナス荷重が発生すると考える.
116
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
Height (mm)
1500
1000
500
-20
0
20
40
60
80
Force (kN)
( a) SUV
Height (mm)
1500
1000
500
-20
0
20
40
60
Force (kN)
(b)
Sedan
Front-End Deformation (ms)
0- 25
50- 75
100-125
25- 50
75-100
Centre of Compartment Force
Fig. 5.6 D CF (Diagram of Compartment Force)
80
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
117
一方,セダンでは,衝突直後は車体下部が荷重を受けるが,車体変形が
進行していくほど,ドアベルトライン部の受ける荷重が増大していく.ま
た,荷重中心位置は,車体下部からドアベルトライン部への荷重中心へ移
動 し て い る .こ れ は ,セ ダ ン が S U V と の 衝 突 に お い て ,初 期 段 階 で 本 来 の
衝突安全対策がなされた車体下部構造で荷重を受け止めようとするものの,
サイドメンバが上下にオフセットしているため,衝突の進行と共にドアベ
ルトライン部で荷重を受け止めようとすることを示している.
以 上 の 通 り ,SUV 模 型 と セ ダ ン 模 型 の Car-to-Car 衝 突 よ り 得 ら れ た 客 室
入 力 の 垂 直 分 布 は ,第 2 章 に て 述 べ た S U V 対 セ ダ ン の 衝 突 事 故 統 計 デ ー タ
分析による乗員傷害の特徴や事故例で紹介した車両の損壊の特徴を裏付け
る 傾 向 を 示 す も の と な っ た . す な わ ち , 次 の こ と が 言 え る . SUV 客 室 に お
いては,客室下部への入力が大きいことから,客室下部に位置する脚部傷
害が多くなる.また,セダン客室においては,ドアベルトライン部への入
力が大きいことから,客室上部に位置する頸部や胸部の傷害が多くなる.
し た が っ て ,S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 し ,
乗員傷害を軽減していくためには,客室内における衝突時の入力が大きい
領域を補強しておくことが重要となる.
5.4.2
客室入力の 2 次元等高線表示
衝突時に客室にかかる荷重分布は,センターピラー部での車体断面を等
高線で表示することによっても表現することができる.その分布の変化を
図 5.7 に 示 す . こ れ ら は 図 5.5 に 示 し た ロ ー ド セ ル 荷 重 を 基 に , 数 式 処 理
で 補 間 し て 示 し て い る . 前 節 に 示 し た 客 室 入 力 荷 重 の 分 布 と 同 様 , SUV で
は車体下部,セダンではドアベルトライン部で荷重を受けていることが把
握 で き る . 図 5.7 に 示 し た 荷 重 分 布 表 示 に よ っ て , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に
おける,それぞれの客室への入力の分布がより一層明らかになった.
118
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
0-25ms
25-50ms
50-75ms
75-100ms
100-125ms
(a) SUV
0-25ms
25-50ms
50-75ms
75-100ms
100-125ms
(b) Sedan
0
40 (kN)
Fig. 5.7 Transition of 2-D Compartment Force Distribution
第 5 章 . セダン模型とSUV 模型のCar-to-Car 衝突試験による客室入力の検討
5.5
119
第 5 章の結論
( 1 ) 第 4 章 で の 実 験 は ,衝 突 形 態 を 理 想 化 し た 条 件 で の 実 験 で あ り ,衝 突 相
手 に 車 体 が 食 い 込 む 現 象 を 省 い て 検 討 し た .第 5 章 で は ,衝 突 相 手 へ の
食い込みも含めて同じ結論が得られるかどうかを検討した.その結果,
SUV で は 衝 突 に よ る 車 体 変 形 が 進 行 す る ほ ど , 車 体 下 部 の 受 け る 荷 重
が 増 加 し ,一 方 ,セ ダ ン で は 車 体 変 形 が 進 行 し て い く ほ ど ,ド ア ベ ル ト
ライン部の受ける荷重が増大していくことを確認した.
( 2 ) ま た ,S U V ,セ ダ ン 両 車 の 荷 重 分 布 を 比 較 す る こ と に よ り , こ れ が 衝 突
時 に お け る 乗 員 傷 害 の 特 徴 に 影 響 を 与 え て い る こ と を 確 認 し た .す な わ
ち , SUV 客 室 で は , 客 室 下 部 へ の 入 力 が 大 き い の で 脚 部 傷 害 が 多 く な
り,セダン客室では,ドアベルトライン部への入力が大きいことから,
頸部や胸部の傷害が多くなると考えられる.
(3) し た が っ て , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検
討 し ,乗 員 傷 害 を 軽 減 し て い く た め に は ,そ れ ぞ れ の 客 室 内 に お け る 衝
突時の入力が大きい領域の補強が重要である.
120
第6章.結言
第 6章
結
6.1
言
本研究の結論
本 研 究 で は , 第 1 段 階 で I TA R D A の 交 通 事 故 統 合 デ ー タ を 利 用 し た 統 計
的 な 分 析 を 行 う こ と に よ っ て SUV と セ ダ ン の 前 面 対 前 面 衝 突 時 に お け る
乗員傷害の実態を明らかにし,第 2 段階で精密な模型を用いた衝突試験に
より客室内部に加わる荷重の分布を明らかにした.これら 2 段階の検討に
より,次の結論を得た.
6.1.1
セ ダ ン と SUV の 前 面 対 前 面 衝 突 の 事 故 統 計 分 析 に つ い て
(1)車 両 重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と セ ダ ン の 衝 突
・ セ ダ ン と S U V の 前 面 対 前 面 衝 突 で は ,車 両 重 量 に 大 き な 差 が な い 場
合 で あ っ て も ,SUV 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 方 が セ ダ ン 運 転 者 よ り
も 低 い . そ し て , SUV 運 転 者 と セ ダ ン 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は
衝 突 速 度 の 増 大 と 共 に 拡 が っ て い く . ま た , SUV, セ ダ ン 共 に 衝 突
相手によって死亡もしくは重傷となった運転者の損傷主部位の構成
が異なる.
・ 上 記 の 特 徴 は ,SUV の サ イ ド メ ン バ と セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ の 高 さ
が異なるので,両車のサイドメンバが上下方向にオフセットした状
120
第6章.結言
121
態で衝突するためと考えられる.このため,セダンはサイドメンバ
取付け部を衝突の力の受け手として有効に利用することができず,
客室変形が増大する傾向にあり,これに伴って運転者の死亡重傷者
率も高くなると推測する.
(2)重 量 の 異 な る SUV と セ ダ ン の 衝 突
・ 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 で も , 重 い SUV と 軽 い セ ダ ン
の 衝 突 の 場 合 で も , SUV と 衝 突 し た セ ダ ン 運 転 者 の 損 傷 主 部 位 の う
ち,頭部や胸部といった上半身の傷害の構成率は,セダン同士の衝
突での上半身の傷害の構成率に比べると多い.
・ 軽 い SUV と 重 い セ ダ ン の 衝 突 に お け る セ ダ ン 運 転 者 の 上 半 身 の 傷
害 は ,重 量 が 同 じ 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る セ ダ ン 運 転 者
上半身の傷害の構成率よりも多くなる.
・ 重 い S U V と 軽 い セ ダ ン の 衝 突 の 場 合 ,セ ダ ン 運 転 者 の 傷 害 は ,頭 部
や 胸 部 と い っ た 上 半 身 の 傷 害 だ け で な く ,脚 部 傷 害 の 構 成 率 も 多 く ,
傷害が全身におよぶ.
・ 以 上 の こ と か ら ,衝 突 相 手 と な る S U V が 自 車 よ り も 軽 け れ ば 上 半 身
の傷害の構成率が多く,反対に自車よりも重くなるほど,脚部傷害
も 多 く な る 傾 向 が あ る と 言 え る . そ の 理 由 は , SUV と の 前 部 サ イ ド
メンバの上下のすれ違いにより,セダンは弱点のある車両上部に変
形が生じ易くなるためと推測する.
6.1.2
模型による衝突試験について
(1) セ ダ ン と SUV の 衝 突 コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 す る た め に は , フ ロ
ン ト エ ン ド か ら 客 室 へ の 入 力 経 路 が ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 の 場 合 と は 異 な
っていることを把握しておく必要がある.
(2) 樹 脂 製 1/10 相 似 精 密 模 型 の 客 室 部 に 設 置 し た ロ ー ド セ ル に よ っ て 客 室
122
第6章.結言
入 力 を 測 定 し ,得 ら れ た デ ー タ か ら 客 室( 左 右 方 向 断 面 上 )入 力 の 垂 直
方 向 分 布 図 ,お よ び 2 次 元 等 高 線 分 布 図 を 作 成 し た .こ れ ら の 表 現 法 を
用いることは,客室入力を明確にする上で有用である.
( 3 ) 上 述 の 表 現 法 を 用 い て 客 室 入 力 を 検 討 し た 結 果 ,セ ダ ン 同 士 の 衝 突 で は ,
荷 重 を 客 室 下 部 で 受 け て い る が , SUV と の 衝 突 で は , 荷 重 を 主 と し て
ドアベルトライン部で受け持つことを明らかにした.
(4) な お , SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 し て
い く た め に は ,両 車 の 客 室 入 力 を 明 ら か に し ,乗 員 空 間 を 確 保 す る の に
必 要 な 客 室 強 度 を 求 め る こ と が 重 要 で あ る こ と か ら , SUV お よ び セ ダ
ンそれぞれの
1/10 相 似 精 密 模 型 を 製 作 し , こ れ ら を 衝 突 さ せ る
C a r - t o - C a r 衝 突 試 験 を 行 い ,そ れ ぞ れ の 客 室 へ の 荷 重 の 分 布 の 計 測 を 行
った.
(5) セ ダ ン と SUV の 衝 突 に お い て , SUV 客 室 で は , 客 室 下 部 へ の 入 力 が 大
き い の で 脚 部 傷 害 が 多 く な り ,セ ダ ン 客 室 で は ,ド ア ベ ル ト ラ イ ン 部 へ
の入力が大きいことから,頸部や胸部の傷害が多くなる.したがって,
SUV と セ ダ ン の 衝 突 の コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー を 検 討 し , 乗 員 傷 害 を 軽
減 し て い く た め に は ,客 室 内 に お け る 衝 突 時 の 入 力 が 大 き い 領 域 の 補 強
が重要である.
6.2
本研究の今後の展開
本 研 究 に お け る 模 型 に よ る 衝 突 試 験 は ,車 両 重 量 が 同 程 度 の S U V と セ ダ
ン の 衝 突 に 着 目 し た も の で あ っ た が ,今 後 は 重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の
衝 突 を 模 し た Car-to -Car 衝 突 試 験 を 実 施 し , SUV, セ ダ ン 両 車 の 客 室 部 に
加わる荷重分布の変化を明らかにすることが必要と考えている.これによ
り ,重 量 の 異 な る S U V と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー に つ
いても,検討を進め,現実の交通における衝突を再現し,車体の改善を講
じていくことが重要な課題である.
第6章.結言
123
なお,本研究の成果を設計に反映するにあたっては,ドアおよびルーフ
レールに対する巨大な負荷を考慮していくべきである.このことは従来の
車体設計の考え方を根本から変更する必要がある.例えば,ドアのインナ
ー に 補 強 を 入 れ る ,あ る い は A ピ ラ ー を よ り 傾 斜 さ せ る 等 と い っ た 検 討 を
行うことが重要と考える.
また,本研究で明らかになった各部位への荷重分布を基に,新たな衝突
安全対策,例えば,側面衝突や前部衝突におけるエネルギー吸収に関して
検討していくことも重要であろう.更に,車両フロント部分の荷重分布に
ついても今後の課題である.
124
第6章.結言
謝
辞
本研究は,筆者が慶應義塾大学大学院理工学研究科に在籍中,本塾理工
学部
高橋邦弘教授のもとで行ったものであり,同教授には懇切丁寧なる
御指導,御鞭撻,御助言を賜りました.ここに心より感謝の意を表すと共
に,厚く御礼申し上げます.
また,本論文を作成するにあたり,本塾理工学部
理工学部
大宮正毅専任講師,本塾理工学部
に武蔵工業大学理工学部
志澤一之教授,本塾
小檜山雅之専任講師ならび
森澤正旭名誉教授には,御査読いただき,大変
有益な御討論,御助言を賜りました.ここに深く感謝の意を表し,厚く御
礼申し上げます.
三菱自動車工業株式会社
桜井俊明氏,景山恒朗氏,藤井修氏,宇佐美
明氏,小笠原淳氏,上野克己氏,五井美博氏,宇野春美氏には,本研究遂
行の機会および貴重な御助言をいただき,深く感謝致します.
交通事故総合分析センター
佐々木滋氏,辺見竹男氏,村松吉彦氏,金
丸和行氏,山本哲也氏,海老原正義氏,山崎幸浩氏,松井恵子氏,山本俊
雄氏および森健二氏には,本研究のきっかけとなる機会と多大なご支援を
いただき,ここに深く感謝の意を表します.
交通事故予防センター
久保田邦夫理事長には,本研究を遂行する上で
の深い理解と助力をいただき,深く感謝致します.
また,本論文を作成するにあたり,ご協力いただいた当時高橋研究室の
櫻井俊彰氏,速水晴規氏,河本太輔氏,中川大輔氏,佐藤竜也氏,藤村明
彦氏,伊藤沙耶佳氏,桾澤優介氏,菅澤敏明氏,前田健人氏をはじめその
他学生諸君に御礼申し上げます.
筆者
125
参考文献
参
考
文
125
献
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138
追補1
追補1
従来のコンパティビリティー対策
および評価法について
A1.1
荷重伝達部材の取り付けによる対策
本追補では,従来から提案されているコンパティビリティーへの対策お
よび評価法について紹介する.
従 来 か ら 提 案 さ れ て い る 対 策 に ,S U V の サ イ ド メ ン バ に 荷 重 伝 達 が で き
る部材を取り付けることによって,セダンへの攻撃性を緩和しようとする
S E A S( S e c o n d a r y E n e r g y A b s o r b i n g S t r u c t u r e )と い う も の が あ る .S E A S は ,
SUV の サ イ ド メ ン バ 下 部 に セ ダ ン の サ イ ド メ ン バ に 荷 重 を 伝 達 す る た め
の 部 材 を 取 り 付 け る と い う 対 策 ( 図 A1.1) で あ り , 衝 突 時 に お け る SUV
側,セダン側それぞれのサイドメンバとのオーバーラップ量をコンパティ
ビリティー性能の評価に使おうとする動きもある.
S U V ’s S i d e - M e m b e r
S e d a n ’s S i d e - M e m b e r
SEAS
Fig.A1.1 Structures for Compatibility SUV to Sedan Collision, SEAS
138
139
追補1
A1.2
AHOF に つ い て
SUV と セ ダ ン の 衝 突 に お け る コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー 性 能 の 評 価 に つ い
ては,車両前面部をバリアに衝突させ,多分割ロードセルにて測定したバ
リア荷重分布によって様々な指標を導出する評価法が提案されている.本
節 で は ,こ の よ う な 評 価 法 の う ち 代 表 的 な A H O F( Av e r a g e H e i g h t o f F o r c e )
を 紹 介 す る ( 図 A 1 . 2 ).
AHOF は , 高 さ 方 向 の 構 造 的 相 互 作 用 性 ( Structural Interaction) を 定 量
的に評価する指標として提案されているもののひとつであり,フルラップ
バ リ ア 前 面 衝 突 試 験 を 行 い ,多 分 割 ロ ー ド セ ル で 測 定 し た バ リ ア 荷 重 F i ( t )
お よ び ロ ー ド セ ル の 地 上 高 Hi か ら 式 (A1.1)お よ び 式 (A1.2)に よ っ て 導 出 さ
れる.
tt
∫
ò F (t ) F (t )dt
t
∫
ò F (t )dt
FAH =
centre
0
(A1.1)
t
00
Fcentre (t ) =
å H F (t )
å F (t )
i
i
(A1.2)
i
F AH : AHOF
F centre : COF
F i : Force of Load Cell(i)
H i : Height of Load Cell(i)
i: Number of Load Cell
(a) Crush with Load Cell Barrier
(b) Load Cell Force Distribution
Fig.A2.2 C o n c e p t o f A H O F
140
追補1
A1.3
AHOF の 問 題 点
車 両 前 部 の 荷 重 分 布 か ら コ ン パ テ ィ ビ リ テ ィ ー 性 を 評 価 す る AHOF の よ
うな方法については,次のような問題点が考えられる.
・エンジン前スペースによって,エンジン類の慣性力の影響が異なる.
・ ま た ,車 両 前 面 ま で 伸 び て き て い な い 部 材 の 効 果 や 影 響 を 適 正 に 評 価 し
づ ら い ( 図 A 1 . 3 ).
Fig.A1.3 Issue from Load Distribution Measurement of Front-End Load
す な わ ち , AHOF の よ う に , 車 両 の 前 面 部 分 の 荷 重 分 布 か ら コ ン パ テ ィ
ビリティー性を評価する方法だけでは,必ずしも正確な評価が行えないケ
ースが発生する.
これに対して,本研究のように,客室への荷重分布からコンパティビリ
ティー性を評価する方法では,上述のような影響は受けにくい.また,乗
員空間を確保するために必要な強度も明らかにし易いといった長所がある.
し た が っ て ,今 後 は 本 研 究 の 手 法 を 実 車 衝 突 や F E M に よ る 解 析 等 へ も 適 用
できるようにしていくことが大切と考える.
141
追補2
追補2
衝突試験の結果について
A2.1
バ リ ア 衝 突 試 験 の 荷 重 -変 位 曲 線 に つ い て
第 4 章で述べた通り,本研究においては,平面バリア衝突試験を 7 回,
突 起 バ リ ア 衝 突 試 験 を 6 回 ,計 1 3 回 行 っ て お り ,い ず れ も 類 似 の 結 果 を 得
ている.ここでは,平面バリア,突起バリア各 2 回の試験結果について紹
介する.
図 A2 .1 に 試 験 番 号 0 412 10 の 平 面 バ リ ア 試 験 と 試 験 番 号 0 50112 の 平 面 バ
リ ア 試 験 に お け る 各 骨 格 部 材 荷 重 の 合 計 値 の 荷 重 - 変 位 曲 線 を ,図 A 2 . 2 に 試
験 番 号 04 12 21 の 突 起 バ リ ア 試 験 と 試 験 番 号 05 0116 の 突 起 バ リ ア 試 験 に お
け る 各 骨 格 部 材 荷 重 の 合 計 値 の 荷 重 -変 位 曲 線 を 示 す . そ れ ぞ れ 類 似 の 結 果 が 得
られていることがわかる.
160
120
140
100
120
80
80
Load (kN)
Load (kN)
100
60
40
20
60
40
20
0
-20
0
200
400
600
800
1000
0
1200
0
-40
200
400
600
800
1000
-20
Displacement (mm)
Displacement (mm)
(a) Test No. 0 4 1 2 1 0
( b ) Te s t N o . 0 5 0 11 2
Fig.A2.1 Flat Barrier Tests
141
1200
142
追補2
160
120
140
100
120
80
80
Load (kN)
Load (kN)
100
60
40
20
60
40
20
0
-20 0
200
400
600
800
1000
0
1200
0
200
400
600
800
1000
1200
-20
-40
Displacement (mm)
Displacement (mm)
(a) Test No. 0 4 1 2 2 1
( b ) Te s t N o . 0 5 0 11 6
Fig.A2.2 SUV Barrier Tests
図 A 2. 3 に 試 験 番 号 0 412 1 0 の 平 面 バ リ ア 試 験 と 試 験 番 号 0 50 112 の 平 面 バ
リア試験における各骨格部材毎の荷重,変位曲線を,図 A2.4 に試験番号 0 4 1 2 2 1 の 突
起 バ リ ア 試 験 と 試 験 番 号 0 50116 の 突 起 バ リ ア 試 験 に お け る 各 骨 格 部 材 毎
の 荷 重 - 変 位 曲 線 を 示 す .各 部 材 毎 に つ い て も ,そ れ ぞ れ 類 似 の 結 果 が 得 ら
50
50
40
40
30
30
Load (kN)
Load (kN)
れている.
20
10
20
10
0
0
0
200
400
600
800
1000
-10
1200
0
200
400
600
800
1000
-10
Displacement (mm)
Floor-Member-1
Side-Sill-1
Door Beltline-Member-1
Roof-Rail-1
Floor-Tunnel
Displacement (mm)
Floor-Member-2
Side-Sill-2
Door Beltline-Member-2
Roof-Rail-2
(a) Test No. 0 4 1 2 1 0
Floor-Member-1
Side-Sill-1
Door Beltline-Member-1
Roof-Rail-1
Floor-Tunnel
Floor-Member-2
Side-Sill-2
Door Beltline-Member-2
Roof-Rail-2
( b ) Te s t N o . 0 5 0 11 2
Fig.A2.3 Flat Barrier Tests
1200
143
50
50
40
40
30
30
Load (kN)
Load (kN)
追補2
20
20
10
10
0
0
0
200
400
600
800
1000
0
1200
-10
200
400
600
800
1000
1200
-10
Displacement (mm)
Floor-Member-1
Side-Sill-1
Door Beltline-Member-1
Roof-Rail-1
Floor-Tunnel
Displacement (mm)
Floor-Member-2
Side-Sill-2
Door Beltline-Member-2
Roof-Rail-2
Floor-Member-1
Side-Sill-1
Door Beltline-Member-1
Roof-Rail-1
Floor-Tunnel
(a) Test No. 0 4 1 2 2 1
Floor-Member-2
Side-Sill-2
Door Beltline-Member-2
Roof-Rail-2
( b ) Te s t N o . 0 5 0 11 6
Fig.A2.4 SUV Barrier Tests
A2.2
セダンとSUV のCar-to-Car衝突試験の荷重-時間曲線について
本 研 究 に お い て は , Car-to-Car 衝 突 試 験 の 結 果 に つ い て も , 第 5 章 で 述
べた通り,5 回行っており,いずれも類似の結果を得ている.ここでは,
100
100
80
80
60
Load (kN)
Load (kN)
SUV, セ ダ ン 各 2 回 の 試 験 結 果 に つ い て 紹 介 す る .
40
20
60
40
20
0
0
0
50
100
150
200
0
50
Time (ms)
100
150
Time (ms)
(a) Test No. 0 7 0 7 2 6
( b ) Te s t N o . 0 7 1 2 1 8
Fig.A2.5 Car-to-Car Tests (Sedan)
200
144
100
100
80
80
60
Load (kN)
Load (kN)
追補2
40
20
60
40
20
0
0
50
100
150
0
200
0
50
Time (ms)
100
150
200
Time (ms)
(a) Test No. 0 7 0 7 2 6
( b ) Te s t N o . 0 7 1 2 1 8
Fig.A2.6 Car-to-Car Tests (SUV)
図 A2.5 に 試 験 番 号 070726 の Car-to-Car 衝 突 試 験 と 試 験 番 号 071218 の
C a r - t o - c a r 衝 突 試 験 に お け る セ ダ ン の 各 骨 格 部 材 荷 重 の 合 計 値 の 荷 重 -時 間 曲
線を, 図 A2.6 に 試 験 番 号 070726 の Car-to-Car 衝 突 試 験 と 試 験 番 号 071218
の C a r - t o - C a r 衝 突 試 験 に お け る S U V の 各 骨 格 部 材 荷 重 の 合 計 値 の 荷 重 -時 間
曲線を示す.Car-to-Car 衝 突 試 験 に つ い て も , そ れぞれ類似の結果が得られて
50
50
40
40
30
30
Load (kN)
Load (kN)
いることがわかる.
20
10
0
20
10
0
0
50
100
150
-10
200
0
50
100
150
-10
-20
-20
Time (ms)
Floor-Member
Door Beltline-Member
Floor-Tunnnel
Time (ms)
Side-Sill
Roof-Rail
(a) Test No. 0 7 0 7 2 6
Floor-Member
Door Beltline-Member
Floor-Tunnnel
Side-Sill
Roof-Rail
( b ) Te s t N o . 0 7 1 2 1 8
Fig.A2.7 Car-to-Car Tests (Sedan)
200
145
50
50
40
40
30
30
Load (kN)
Load (kN)
追補2
20
10
20
10
0
0
0
50
100
150
-10
0
200
50
100
150
200
-10
-20
-20
Time (ms)
Floor-Member
Door Beltline-Member
Floor-Tunnnel
Time (ms)
Side-Sill
Roof-Rail
(a) Test No. 0 7 0 7 2 6
Floor-Member
Door Beltline-Member
Floor-Tunnnel
Side-Sill
Roof-Rail
( b ) Te s t N o . 0 7 1 2 1 8
Fig.A2.8 Car-to-Car Tests (SUV)
図 A2.7 に 試 験 番 号 070726 の Car-to-Car 衝 突 試 験 と 試 験 番 号 071218 の
C a r - t o - C a r 衝 突 試験におけるセダンの各骨格部材毎の荷重-時 間 曲線を,図 S2.8 に試
験 番 号 070726 の Car-to-Car 衝 突 試 験 と 試 験 番 号 071218 の Car-to-Car 衝 突
試験における SUV の各 骨 格 部 材 毎 の 荷 重 -時 間 曲 線 を 示 す . 各 部 材 毎 に つ い て
も,それぞれ類似の結果が得られている.
146
追補3
追補3
国内における交通事故の統計分析
についての補足
A3.1
車両の衝突部位について
国 内 の 交 通 事 故 の う ち , 警 察 庁 の 交 通 事 故 統 計 デ ー タ や I TA R D A の 交 通
事 故 統 合 デ ー タ に 蓄 え ら れ る 分 に つ い て は ,A 1 . 1 節 で 述 べ た 交 通 事 故 統 計
原票の記載定義に則ったかたちで蓄えられる.
車 両 の 衝 突 部 位 に つ い て は , 図 A3.1 に 示 さ れ た 番 号 で 蓄 え ら れ て い る .
例えば,第 1 当事者(加害側)の車両の右前部が第 2 当事者(被害側)の
車両の右後部に衝突した事故では,第 1 当事車両の衝突部位が⑤で第 2 当
事 車 両 の 衝 突 部 位 が ⑥ の 衝 突 事 故 と 記 録 さ れ る ( 図 A 3 . 2 ). こ れ は , 同 じ
事故類型に分類される衝突であっても,衝突車両と被衝突車両の衝突部位
の 組 合 せ が 複 数 存 在 す る た め で あ る .上 述 の 側 面 衝 突 に つ い て も ,図 A3.3
⑧
①
④
⑤
②
⑦
③
⑥
Fig.A3.1 Crash Region Number in the Traffic Accident Statistics Vote by Japanese National Police Agency
146
147
追補3
Fig.A3.2 Collision Case of Crash Region Number ⑥ and ⑤
Fig.A3.3 Variation of Side Collision
Fig.A3.4 Variation of Front to Front Collision
148
追補3
に示したように 6 種類の組合せが存在する.同様にして,前面対前面衝突
に つ い て も , 3 種 類 の 組 合 せ が 存 在 す る ( 図 A 3 . 4 ). な お , 実 際 の 衝 突 で は
オ フ セ ッ ト 衝 突 が 多 い と 報 告 さ れ て い る こ と か ら (112), 本 研 究 で は , 衝 突
の 現 状 を 把 握 す る 目 的 で ,図 A 3 . 4 に 示 し た 3 種 類 す べ て を 分 析 の 対 象 と し
た.
Head
Face
Neck
Arms
Chest Back
Abdomen
Pelvis
Legs
Fig.A3.5 Definition of Main Injury Region
A3.2
自動車乗員の損傷主部位について
国内の交通事故統計における負傷者の傷害部位は,最も傷害の程度が重
い部位(死亡の場合は致命傷となった部位)が,損傷主部位として記録さ
149
追補3
れ る よ う に な っ て い る .各 損 傷 主 部 位 の 定 義 に つ い て は ,図 A 3 . 5 に 示 し た
範囲が基準とされる.なお,死亡者について,損傷箇所が多数ある上に,
致命傷も多数あって損傷主部位を特定できない場合は,全損という用語で
記録される.
A3.3
自動車の各部位の名称について
本研究における模型車両を設計する際に参考にした標準的なセダンの車
体 の 各 部 位 毎 に つ い て の 名 称 を 図 A3.6 か ら 図 A3.8 に 示 す . 標 準 的 な セ ダ
ンは,前面衝突事故の際に乗員の安全を確保するため,車体の前方から順
番に潰すことで衝突エネルギーを吸収し,乗員空間の変形を最小限に抑え
るように設計されている.すなわち,衝突エネルギーはその多くをフロン
トサイドメンバの塑性変形により吸収され,エンジンルームが完全に潰れ
た後は,残りの衝突エネルギーをダッシュパネルの変形とこれを囲む主要
骨格部材とこれを支えるフロントピラー,トルクボックス,サイドシル,
フロアトンネルへ分散,エンジンの乗員空間への侵入が防御されるように
設計されている.
Front Pillar
Side Roof-Rail
Center Pillar
Front Tire House
2nd Cross-Member
Side-Sill
Floor Panel
Front Pillar Lower
1st Cross-Member
Torque Box
Hood Ledge Reinforcement
Side-Member
Fig.A3.6 Members and Structures (Over View)
150
追補3
Side Roof-Rail
Dash Panel
Hood Ledge Reinforcement
Front Pillar
2nd Cross-Member 3rd Cross-Member
Front Tire House
1st Cross-Member
Side-Member
Side sill
Front Pillar Lower
Floor-Member
Fig.A3.7 Members and Structures (Side View)
Floor Panel
Front Tire House
Torque Box
3rd Cross-Member
Dash Panel
Side-Member
Floor-Member
Sill Inner
1st Cross-Member
Hood Ledge Reinforcement
2nd Cross-Member
Fig.A3.8 Members and Structures (Under View)
Side-Sill
151
追補4
追補4
大型乗用車同士の(SUV-L と Sdn-L)の衝突事故の分析
A4.1
分析対象について
第 2 章 で は , 車 両 重 量 が 同 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 で あ る S U V- M と
Sdn-M の 衝 突 の 事 故 統 計 分 析 に つ い て 述 べ た . な お , 車 両 重 量 が 同 程 度 の
S U V と セ ダ ン の 衝 突 と し て は , S U V- L と S d n - L の 衝 突 も 存 在 す る . 本 付 録
Fatal or Serious Injury Rate R (%)
で は , S U V- L と S d n - L の 衝 突 の 事 故 統 計 分 析 に つ い て 述 べ る .
20
Sdn-L
SUV-L
15
10
5
0
0-10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120
Relative Velocity ΔV (km/h)
Fig.A4.1 Fatal or Serious Injury rate R and Relative Velocity Δ V, SUV-L to Sdn–L Collision
151
152
追補4
A4.2
衝突速度と死亡重傷者率の関係
図 A 4 . 1 に S U V- L と S d n - L の 衝 突 に お け る 衝 突 速 度 と 死 亡 重 傷 者 率 の 関
係 を 示 す . S d n - L の 方 が S U V- L に 比 べ 死 亡 重 傷 者 率 が 高 く , 第 2 章 で 述 べ
た 車 両 重 量 が 同 程 度 の S U V と セ ダ ン の 衝 突 で あ る S U V- M と S d n - M の 衝 突
の 場 合 と 同 様 に , 相 対 速 度 Δ V が 高 く な る 程 , S U V- L 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者
率 と S d n - L 運 転 者 の 死 亡 重 傷 者 率 の 差 は 開 い て い く .な お ,S U V- L と S d n - L
の 衝 突 に お け る 死 亡 重 傷 者 数 は , S U V- L 運 転 者 が 3 4 人 , S d n - L 運 転 者 が
65 人 .
A4.3
死亡または重傷運転者の傷害部位の構成
死 亡 ま た は 重 傷 と な っ た 運 転 者 の 傷 害 部 位 の 構 成 に つ い て , 1995 年 か ら
1 9 9 9 年 の 死 傷 事 故 を 対 象 に 分 析 を 行 っ た .S U V- L と S d n - L の 衝 突 に お け る
Sdn-L の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 65 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 A4.2 に ,
S U V- L の 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 3 4 人 ) の 損 傷 主 部 位 の 構 成 を 図 A 4 . 3 に 示
す.
30
25
20
15
10
5
Fig.A4.2 Injuries of Sdn-L Drivers (SUV-L to Sdn-L)
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
0
Head
Injuries of Drivers (%)
35
153
追補4
Injuries of Drivers (%)
35
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig.A4.3 Injuries of SUV-L Drivers (SUV-L to Sdn-L)
Injuries of Drivers (%)
35
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig. A4.4 Injuries of Sdn-L Drivers (Sdn-L to Sdn-L)
頭 部 お よ び 脚 部 損 傷 の 構 成 率 に 関 し て は , Sdn-L 運 転 者 ( 図 A4.2) の 方
が , S U V- L の 運 転 者 ( 図 A 4 . 3 ) よ り 高 い . 反 対 に S U V- L 運 転 者 は 頸 部 お
よび胸部,腕部損傷の構成率が高い.
154
追補4
Injuries of Drivers (%)
35
30
25
20
15
10
5
Legs
Arms
Pelvis
Back
Abdomen
Chest
Neck
Face
Head
0
Fig. A4.5 Injuries of SUV-L Drivers (SUV-L to SUV-L)
比 較 の た め Sdn-L 同 士 の 衝 突 に よ る 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者 数 186 人 ) の 傷
害 部 位 別 構 成 を 図 A 4 . 4 に , S U V- L 同 士 の 衝 突 に よ る 運 転 者 ( 死 亡 重 傷 者
数 2 0 人 ) の 傷 害 部 位 別 構 成 を 図 A 4 . 5 に 示 す . S U V- L と 衝 突 し た S d n - L 運
転 者( 図 A4.2)は Sdn-L 同 士 で の 衝 突( 図 A4.4)に 比 べ 頭 部 あ る い は 脚 部
損傷の構成率が多い.なお,頭部損傷が増えたのは,第 2 章でも述べたよ
う な サ イ ド メ ン バ の 上 下 方 向 の オ フ セ ッ ト ( 図 2.13) の た め と 考 え る が ,
S U V- L , S d n - L 共 に 重 量 が 重 い こ と か ら , 衝 突 に お け る 客 室 変 形 が S U V- M
と Sdn-M の 衝 突 に 比 し て 大 き く な る た め 脚 部 の 損 傷 も 増 え た の で は な い か
と 推 測 す る . ま た , S d n - L と 衝 突 し た S U V- L 運 転 者 ( 図 A 4 . 3 ) は S U V- L
同 士 で の 衝 突( 図 A4.5) に 比 べ 脚 部 損 傷 の 構 成 率 が 少 な い が , こ れ に つ い
て も , S U V- L に と っ て は , S d n - L と の 衝 突 の 場 合 よ り S U V- L 同 士 で の 衝 突
の方が客室変形が大きくなるためと推測する.
155
追補5
追補5
交通事故統計の分析結果の有意性について
A5.1
重 量 が 同 じ 程 度 の SUV と セ ダ ン の 衝 突
( 1 ) S U V- M と S d n - M 衝 突 に つ い て
・ 表 A 5 . 1 に S U V- M と S d n - M の 衝 突 と S d n - M 同 士 の 衝 突 で の S d n - M
運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 1 に お い て ,頚 部 傷
害 の 構 成 率 は ,S U V- M と の 衝 突 に 比 べ S d n - M 同 士 の 衝 突 の 方 が ,有
意 に 小 さ い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ).
・ 表 A 5 . 2 に S U V- M と S d n - M の 衝 突 と S U V- M 同 士 の 衝 突 で の S U V- M
運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 2 に お い て ,有 意 と
認 め ら れ る も の は な い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ).
( 2 ) S U V- L と S d n - L の 衝 突 に つ い て
・ 表 A 5 . 3 に S U V- L と S d n - L の 衝 突 と S d n - L 同 士 の 衝 突 で の S d n - L 運
転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 3 に お い て ,顔 部 傷 害
の 構 成 率 は , S U V- L と の 衝 突 に 比 べ S d n - L 同 士 の 衝 突 の 方 が , 有 意
に 大 き い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ).
・ 表 A 5 . 4 に S U V- L と S d n - L の 衝 突 と S U V- L 同 士 の 衝 突 で の S U V- L
運 転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 4 に お い て , 有 意 と
認 め ら れ る も の は な い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ).
155
156
追補5
Ta b l e A 5 . 1 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - M D r i v e r s )
(1)
Number
of Fatal
or Serious
(Total)
(2)
Number
of Fatal
or Serious
for Injured
Region
(3)
(4)
(5)
n1
=(2)/(1)
^
p :=
åX
i =1
1i
+ å X 2i
i =1
n1 + n2
(6)
(*)
n2
^
^
p1- p 2
z :=
(7)
^
æ^
ö
ç p1- p 2 ÷
è
ø
^æ
^ öæ 1
1
ç
֍
p ç 1 - p ÷ç +
ç
֏ n1 n2
è
ø
z (0.05)
ö
÷÷
ø
a := f (z )
=ò
¥
z
x2
1 -2
e
2p
Head
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-M to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
81 x 2 :
112
9
0.14
0.11
0.14
0.03
0.69
1.64
0.25
50
5
0.06
0.06
0.06
0.00
0.01
1.64
0.50
133
20
0.16
0.25
0.17
-0.08
-1.87
1.64
0.03
150
17
0.19
0.21
0.19
-0.02
-0.53
1.64
0.30
26
3
0.03
0.04
0.03
0.00
-0.23
1.64
0.41
7
1
0.01
0.01
0.01
0.00
-0.33
1.64
0.37
32
1
0.04
0.01
0.04
0.03
1.24
1.64
0.11
86
7
0.11
0.09
0.10
0.02
0.56
1.64
0.29
207
18
0.26
0.22
0.25
0.03
0.68
1.64
0.25
Face
Neck
Chest
Abdomen
Back
Pelvis
Arms
Legs
*:
^p
^
1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2
157
追補5
Ta b l e A 5 . 2 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S U V- M D r i v e r s )
(1)
Number
of Fatal
or Serious
(Total)
(2)
Number
of Fatal
or Serious
for Injured
Region
(3)
(4)
(5)
n1
=(2)/(1)
^
p :=
åX
i =1
1i
+ å X 2i
i =1
n1 + n2
(6)
(*)
n2
^
^
p1- p 2
z :=
(7)
^
ö
æ^
ç p1- p 2 ÷
ø
è
^æ
^ öæ 1
1
ç
֍
p ç 1 - p ÷ç +
ç
֏ n1 n2
è
ø
z (0.05)
ö
÷÷
ø
a := f ( z )
¥
1
z
2p
=ò
e
-
x2
2
Head
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
SUV-M to SUV-M n 1 :
SUV-M to Sdn-M n 2 :
13 x 1 :
57 x 2 :
0
4
0.00
0.07
0.06
-0.07
-0.98
1.64
0.16
0
3
0.00
0.05
0.04
-0.05
-0.85
1.64
0.20
3
13
0.23
0.23
0.23
0.00
0.02
1.64
0.49
3
9
0.23
0.16
0.17
0.07
0.63
1.64
0.26
0
2
0.00
0.04
0.03
-0.04
-0.69
1.64
0.25
1
2
0.08
0.04
0.04
0.04
0.67
1.64
0.25
1
1
0.08
0.02
0.03
0.06
1.16
1.64
0.12
2
4
0.15
0.07
0.09
0.08
0.97
1.64
0.17
3
18
0.23
0.32
0.30
-0.09
-0.60
1.64
0.27
Face
Neck
Chest
Abdomen
Back
Pelvis
Arms
Legs
*:
^p
^
1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2
158
追補5
Ta b l e A 5 . 3 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - L D r i v e r s )
(1)
Number
of Fatal
or Serious
(Total)
(2)
Number
of Fatal
or Serious
for Injured
Region
(3)
(4)
(5)
n1
=(2)/(1)
^
p :=
åX
i =1
1i
+ å X 2i
i =1
n1 + n2
(6)
(*)
n2
^
^
p1- p 2
z :=
(7)
^
ö
æ^
ç p1- p 2 ÷
ø
è
^æ
^ öæ 1
1
ç
֍
p ç 1 - p ÷ç +
ç
֏ n1 n2
è
ø
z (0.05)
ö
÷÷
ø
a := f ( z )
¥
1
z
2p
=ò
e
-
x2
2
Head
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-L to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
65 x 2 :
20
10
0.11
0.15
0.12
-0.05
-0.99
1.64
0.16
13
1
0.07
0.02
0.06
0.05
1.65
1.64
0.05
38
10
0.20
0.15
0.19
0.05
0.89
1.64
0.19
29
11
0.16
0.17
0.16
-0.01
-0.25
1.64
0.40
6
2
0.03
0.03
0.03
0.00
0.06
1.64
0.48
0
0
0.00
0.00
0.00
0.00
-
1.64
-
8
4
0.04
0.06
0.05
-0.02
-0.60
1.64
0.27
25
5
0.13
0.08
0.12
0.06
1.23
1.64
0.11
47
22
0.25
0.34
0.27
-0.09
-1.33
1.64
0.09
Face
Neck
Chest
Abdomen
Back
Pelvis
Arms
Legs
*:
^p
^
1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2
159
追補5
Ta b l e A 5 . 4 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S U V- L D r i v e r s )
(1)
Number
of Fatal
or Serious
(Total)
(2)
Number
of Fatal
or Serious
for Injured
Region
(3)
(4)
(5)
n1
=(2)/(1)
^
p :=
åX
i =1
1i
+ å X 2i
i =1
n1 + n2
(6)
(*)
n2
^
^
p1- p 2
z :=
(7)
^
ö
æ^
ç p1- p 2 ÷
ø
è
^æ
^ öæ 1
1
ç
֍
p ç 1 - p ÷ç +
ç
֏ n1 n2
è
ø
z (0.05)
ö
÷÷
ø
a := f ( z )
¥
1
z
2p
=ò
e
-
x2
2
Head
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
SUV-L to Sdn-L
SUV-L to SUV-L
n1:
n2 :
34 x 1 :
20 x 2 :
3
2
0.09
0.10
0.09
-0.01
-0.14
1.64
0.44
2
1
0.06
0.05
0.06
0.01
0.14
1.64
0.44
7
4
0.21
0.20
0.20
0.01
0.05
1.64
0.48
7
3
0.21
0.15
0.19
0.06
0.51
1.64
0.31
2
0
0.06
0.00
0.04
0.06
1.11
1.64
0.13
0
0
0.00
0.00
0.00
0.00
-
1.64
-
1
2
0.03
0.10
0.06
-0.07
-1.09
1.64
0.14
6
2
0.18
0.10
0.15
0.08
0.76
1.64
0.22
6
6
0.18
0.30
0.22
-0.12
-1.05
1.64
0.15
Face
Neck
Chest
Abdomen
Back
Pelvis
Arms
Legs
*:
^p
^
1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2
160
追補5
A5.2
重 量 の 異 な る SUV と セ ダ ン の 衝 突
( 1 ) S U V- M と S d n - S の 衝 突 に つ い て
・ 表 A 5 . 5 に S U V- M と S d n - S の 衝 突 と S d n - S 同 士 の 衝 突 で の S d n - S 運
転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 5 に お い て ,顔 部 傷 害
の 構 成 率 は ,S U V- M と の 衝 突 に 比 べ S d n - M 同 士 の 衝 突 の 方 が 有 意 に
大 き く ,反 対 に 腹 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S d n - M 同 士 の 衝 突 の 方 が S U V- M
と の 衝 突 に 比 べ 有 意 に 小 さ い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ).
( 2 ) S U V- L と S d n - S の 衝 突 に つ い て
・ 表 A 5 . 6 に S U V- L と S d n - S の 衝 突 と S d n - S 同 士 の 衝 突 で の S d n - S 運
転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 6 に お い て ,頭 部 お よ
び 腹 部 傷 害 の 構 成 率 は , S U V- L と の 衝 突 に 比 べ S d n - S 同 士 の 衝 突 の
方 が 有 意 に 小 さ く , 反 対 に 顔 部 お よ び 頸 部 傷 害 の 構 成 率 は , Sdn-S
同 士 の 衝 突 の 方 が S U V- L と の 衝 突 に 比 べ 有 意 に 大 き い ( 有 意 水 準
0 . 0 5 で 片 側 検 定 ).
( 3 ) S U V- L と S d n - M の 衝 突 に つ い て
・表 A 5 . 7 に S U V- L と S d n - M の 衝 突 と S d n - M 同 士 の 衝 突 で の S d n - M 運
転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 7 に お い て ,胸 部 お よ
び 腹 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S U V- L と の 衝 突 に 比 べ S d n - M 同 士 の 衝 突 の
方 が 有 意 に 小 さ く , 反 対 に 腕 部 傷 害 の 構 成 率 は , Sdn-M 同 士 の 衝 突
の 方 が S U V- L と の 衝 突 に 比 べ 有 意 に 大 き い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側
検 定 ).
( 4 ) S U V- M と S d n - L の 衝 突 に つ い て
・ 表 A 5 . 8 に S U V- M と S d n - L の 衝 突 と S d n - L 同 士 の 衝 突 で の S d n - L 運
転 者 の 損 傷 主 部 位 構 成 率 の 比 較 を 示 す .表 A 5 . 8 に お い て ,胸 部 傷 害
の 構 成 率 は ,S U V- M と の 衝 突 に 比 べ S d n - L 同 士 の 衝 突 の 方 が 有 意 に
小 さ く ,反 対 に 腕 部 傷 害 の 構 成 率 は ,S d n - L 同 士 の 衝 突 の 方 が S U V- M
と の 衝 突 に 比 べ 有 意 に 大 き い ( 有 意 水 準 0 . 0 5 で 片 側 検 定 ).
161
追補5
Ta b l e A 5 . 5 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - S D r i v e r s )
(1)
Number
of Fatal
or Serious
(Total)
(2)
Number
of Fatal
or Serious
for Injured
Region
(3)
(4)
(5)
n1
=(2)/(1)
^
p :=
åX
i =1
1i
+ å X 2i
i =1
n1 + n2
(6)
(*)
n2
^
^
p1- p 2
z :=
(7)
^
ö
æ^
ç p1- p 2 ÷
ø
è
^æ
^ öæ 1
1
ç
֍
p ç 1 - p ÷ç +
ç
֏ n1 n2
è
ø
z (0.05)
ö
÷÷
ø
a := f ( z )
¥
1
z
2p
=ò
e
-
x2
2
Head
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-M to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
124 x 2 :
101
16
0.09
0.13
0.10
-0.04
-1.26
1.64
0.10
81
4
0.08
0.03
0.07
0.04
1.76
1.64
0.04
188
19
0.17
0.15
0.17
0.02
0.59
1.64
0.28
242
25
0.22
0.20
0.22
0.02
0.58
1.64
0.28
38
9
0.04
0.07
0.04
-0.04
-2.03
1.64
0.02
7
0
0.01
0.00
0.01
0.01
0.90
1.64
0.18
34
5
0.03
0.04
0.03
-0.01
-0.52
1.64
0.30
137
12
0.13
0.10
0.12
0.03
0.97
1.64
0.17
246
32
0.23
0.26
0.23
-0.03
-0.75
1.64
0.23
Face
Neck
Chest
Abdomen
Back
Pelvis
Arms
Legs
*:
^p
^
1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2
162
追補5
Ta b l e A 5 . 6 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - S D r i v e r s )
(1)
Number
of Fatal
or Serious
(Total)
(2)
Number
of Fatal
or Serious
for Injured
Region
(3)
(4)
(5)
n1
=(2)/(1)
^
p :=
åX
i =1
1i
+ å X 2i
i =1
n1 + n2
(6)
(*)
n2
^
^
p1- p 2
z :=
(7)
^
ö
æ^
ç p1- p 2 ÷
ø
è
^æ
^ öæ 1
1
ç
֍
p ç 1 - p ÷ç +
ç
֏ n1 n2
è
ø
z (0.05)
ö
÷÷
ø
a := f ( z )
¥
1
z
2p
=ò
e
-
x2
2
Head
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
Sdn-S to Sdn-S
SUV-L to Sdn-S
n1:
n2 :
1079 x 1 :
234 x 2 :
101
31
0.09
0.13
0.10
-0.04
-1.79
1.64
0.04
81
10
0.08
0.04
0.07
0.03
1.77
1.64
0.50
188
24
0.17
0.10
0.16
0.07
2.70
1.64
0.04
242
60
0.22
0.26
0.23
-0.03
-1.06
1.64
0.14
38
16
0.04
0.07
0.04
-0.03
-2.32
1.64
0.01
7
2
0.01
0.01
0.01
0.00
-0.35
1.64
0.36
34
4
0.03
0.02
0.03
0.01
1.19
1.64
0.12
137
23
0.13
0.10
0.12
0.03
1.22
1.64
0.11
246
62
0.23
0.26
0.23
-0.04
-1.21
1.64
0.11
Face
Neck
Chest
Abdomen
Back
Pelvis
Arms
Legs
*:
^p
^
1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2
163
追補5
Ta b l e A 5 . 7 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - M D r i v e r s )
(1)
Number
of Fatal
or Serious
(Total)
(2)
Number
of Fatal
or Serious
for Injured
Region
(3)
(4)
(5)
n1
=(2)/(1)
^
p :=
åX
i =1
1i
+ å X 2i
i =1
n1 + n2
(6)
(*)
n2
^
^
p1- p 2
z :=
(7)
^
ö
æ^
ç p1- p 2 ÷
ø
è
^æ
^ öæ 1
1
ç
֍
p ç 1 - p ÷ç +
ç
֏ n1 n2
è
ø
z (0.05)
ö
÷÷
ø
a := f ( z )
¥
1
z
2p
=ò
e
-
x2
2
Head
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
Sdn-M to Sdn-M
SUV-L to Sdn-M
n1:
n2 :
807 x 1 :
170 x 2 :
112
24
0.14
0.14
0.14
0.00
-0.08
1.64
0.47
50
12
0.06
0.07
0.06
-0.01
-0.42
1.64
0.34
133
22
0.16
0.13
0.16
0.04
1.15
1.64
0.13
150
41
0.19
0.24
0.20
-0.06
-1.65
1.64
0.05
26
12
0.03
0.07
0.04
-0.04
-2.35
1.64
0.01
7
0
0.01
0.00
0.01
0.01
1.22
1.64
0.11
32
7
0.04
0.04
0.04
0.00
-0.09
1.64
0.46
86
11
0.11
0.06
0.10
0.04
1.66
1.64
0.05
207
39
0.26
0.23
0.25
0.03
0.74
1.64
0.23
Face
Neck
Chest
Abdomen
Back
Pelvis
Arms
Legs
*:
^p
^
1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2
164
追補5
Ta b l e A 5 . 8 S i g n i f i c a n c e L e v e l o f D r i v e r s ’ I n j u r i e s ( S d n - L D r i v e r s )
(1)
Number
of Fatal
or Serious
(Total)
(2)
Number
of Fatal
or Serious
for Injured
Region
(3)
(4)
(5)
n1
=(2)/(1)
^
p :=
åX
i =1
1i
+ å X 2i
i =1
n1 + n2
(6)
(*)
n2
^
^
p1- p 2
z :=
(7)
^
ö
æ^
ç p1- p 2 ÷
ø
è
^æ
^ öæ 1
1ö
ç
֍
pç1 - p ÷ç + ÷÷
ç
÷è n1 n 2 ø
è
ø
z (0.05)
a := f (z )
¥
1
z
2p
=ò
e
-
x2
2
Head
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
Sdn-L to Sdn-L
SUV-M to Sdn-L
n1:
n2 :
186 x 1 :
32 x 2 :
20
6
0.11
0.19
0.12
-0.08
-1.29
1.64
0.10
13
0
0.07
0.00
0.06
0.07
1.54
1.64
0.06
38
7
0.20
0.22
0.21
-0.01
-0.19
1.64
0.42
29
9
0.16
0.28
0.17
-0.13
-1.73
1.64
0.04
6
1
0.03
0.03
0.03
0.00
0.03
1.64
0.49
0
0
0.00
0.00
0.00
0.00
-
1.64
-
8
2
0.04
0.06
0.05
-0.02
-0.49
1.64
0.31
25
1
0.13
0.03
0.12
0.10
1.66
1.64
0.05
47
6
0.25
0.19
0.24
0.07
0.79
1.64
0.21
Face
Neck
Chest
Abdomen
Back
Pelvis
Arms
Legs
*:
^p
^
1 ー p2 = x1 / n1 ー x2 / n2
165
追補6
追補6
荷 重 の 垂 直 分 布 図 DCF お よ び 客 室 荷 重 中 心 CCF
A6.1
荷重の垂直分布図 DCF およびその導出について
荷 重 の 垂 直 分 布 図 DCF( Diagram of Compartment Force ) は , 衝 突 時 の 客
室への入力を垂直方向毎に示したもので,衝突の進行毎について「どの高
さ へ の 入 力 が 大 き い か 」を 示 す 図 で あ る .本 研 究 の セ ダ ン 模 型 に つ い て は ,
図 A6.1 中 の (1)か ら (3)に 示 し た 高 さ に 取 り 付 け た ロ ー ド セ ル で 測 定 し た 荷
重 か ら 求 め た .な お ,(1)は サ イ ド シ ル ,フ ロ ア メ ン バ お よ び フ ロ ア ト ン ネ
ル ,( 2 ) は ド ア ベ ル ト ラ イ ン ,( 3 ) は ル ー フ に 取 り 付 け た そ れ ぞ れ の ロ ー ド セ
ルの地上高である.従って,
( 1 ) の 荷 重 : S i d e - S i l l ( L e f t ) + S i d e - S i l l ( R i g h t ) + F l o o r- M e m b e r ( L e f t )
+ F l o o r- M e m b e r ( R i g h t ) + F l o o r- Tu n n e l
(2)の 荷 重 : Door Beltline-Member (Left) + Door Beltline-Member (Right)
(3)の 荷 重 : Roof-Rail (Left) + Roof-Rail (Right)
である.それぞれの高さに設置したロードセルに入力した荷重の和を各高
さ 毎 の 荷 重 と し た . な お , 図 A6.2 お よ び 図 A6.3 に ロ ー ド セ ル の 取 り 付 け
位置を示す.
165
166
追補6
Crash stroke
Stroke
Crash
(Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ)
Height
●● ●
●(Ⅰ)
●
(3):Height 1350(mm)
(Ⅲ)
● (Ⅱ)
●
(2):Height 790(mm)
(1):Height 260(mm)
Centre
Centre of compartment
Compartment force
Force
●
●
Lateral
compartmentForce
force
Lateral Compartment
F i g . A 6 . 1 E x p r e s s i o n o f D e f e n s i v e n e s s ( D CF (Diagram of Compartment Force))
Floor-Member
Floor member
Floor-Tunnel
Floor tunnel
Door
Beltline-Member
Door-beltline
member
Side-Sill
Side
sill
Load Transducers
transducers Accelerometer
Load
Side member
Side-Member
Fig. A6.2 Load Transducer Frame
Fig. A6.3 Location of Load Transducers
高 さ H1 か ら Hj ま で の 各 入 力 に つ い て , そ れ ぞ れ 衝 突 の 進 行 ( 変 位 あ る
い は 時 間 ) 毎 に 平 均 荷 重 ( L A i j ) を 求 め た ( 図 A6.4, 式 ( A 6 . 1 ) ). こ れ ら 各
高 さ 毎 の 平 均 荷 重 LAij を 衝 突 の 進 行 毎 に 結 ん だ も の が DCF で あ る . こ れ に
より,衝突の進行毎について「どの高さへの入力が大きいか」を確認する
ことができる.
L Aij
ò
=
di
d i -1
f (x j )
(d i - d i -1 )
(A6.1)
167
追補6
(1) (2)
( i)
・・・
f(xj)
・・・
f(x2)
f(x1)
0
d1 d2
・・・
di-1 di
di
∫
d d
f(xj)dx
LAij = òd f ( x j )
L Aij = (i -1di - di-1 )
(d i - d i -1 )
i
Crash stroke
Stroke
Crash
・・
Hi
Height
(1) (2) ・・ ( i )
LA1j
LA2j
・・
LAij
Centre of
Centre
ofCompartment
compartmentForce
force
●● ●
●
H1
i-1
●
●
●
LA11
●
●
LA21
・・
LAi1
LongitudinalCompartment
compartmentForce
force
Longitudinal
F i g . A6.4 C o n c e p t o f L A i j ( Av e r a g e L o a d )
168
追補6
A6.2
客室荷重中心 CCF の導出について
衝 突 の 進 行 状 態 毎 に つ い て の 各 高 さ 別 の 平 均 荷 重 LAij の 重 心 位 置 を CCFi
と し た . 例 え ば , 図 A6.5 に 示 し た 衝 突 の 進 行 ( 1 ) , ( 2 ) , ・ ・ ・ ( i ) そ れ ぞ れ に つ
い て の CCFi は , 式 (A6.2)の 通 り と な る .
Crash stroke
Stroke
Crash
LA1j
(1) (2) ・・ ( i )
Hi
・・
LAij
Centre of
Centre
ofCompartment
compartmentForce
force
●● ●
Height
・・
LA2j
●
H1
●
●
●
LA11
●
●
LA21
・・
LAi1
LongitudinalCompartment
compartmentForce
force
Longitudinal
F i g . A6.5 C C F ( C e n t r e o f C o m p a r t m e n t F o r c e ) a n d L A i j ( Av e r a g e L o a d )
j
CCFi =
åH
j =1
j
L Aij
(A6.2)
j
åL
j =1
Aij
な お , 式 (A6.2)中 の Hj は , ロ ー ド セ ル の 地 上 高 ( 本 研 究 の 模 型 の 場 合 ,
H 1 : 2 6 0 m m , H 2 : 7 9 0 m m , H 3 : 1 3 5 0 m m ). L A i j は ロ ー ド セ ル の 地 上 高 別 ・
衝突の進行毎の平均荷重である.