日本語教育における日本語の扱い方

日本語教育における日本語の扱い方
2009年4月24日
東京女子大学
松尾 慎
国語文法と日本語教育(文法)の対照
形容詞
形容動詞
(イ形容詞)
(ナ形容詞)
形容詞)
形容詞)
「飲む」の活用 「高い」の活用 「静か」の活用
飲まない
高くない
静かではない
飲みます
高くに
静かに
飲んで
高くて
静かではない
飲む
高い
静か(だ)
飲む
高い
静かな
飲めば
高ければ
静かならば
飲もう
飲め
飲んだ
高かった
静かだった
飲める
飲ませる
飲まれる
飲ませられる
動詞
国語文法の
国語文法の名称 日本語教育の
日本語教育の名称
未然形
ない形
連用形
ます形
連用形
(に形)
連用形
て形
終止形
辞書形、普通体
連体形
仮定形
(ば形)
未然形
意志形
命令形
命令形
過去形
た形
可能の助動詞
可能形
使役の助動詞
使役
受身の助動詞
受身
使役受身の助動詞 使役受身
『はじめての日本語教育』 アスク講談社 p91(ハント蔭山裕子)を参考にしました。
イ形容詞とナ形容詞
イ形容詞
ナ形容詞
赤い、かわいい、寒い、広い
など国語文法で形容詞と呼ば
れているもの。終止形(辞書
形)の語尾が i で終わるの
便利、危険、元気、静かなど
国語文法で形容動詞と呼ば
れているもの。「便利な町、元
気な子ども」など「な」を挿入す
るためナ形容詞と呼ばれてい
る。
でイ形容詞と呼ばれている。
日本語の教科書の特徴
初級の教科書は構造シラバスの教科書が多い。
※ シラバス=教授項目
構造シラバス= 教えるべき項目を「~は~です」、「~てください」
といった文型で提示したシラバス。
その他のシラバス:場面シラバス、話題シラバス、機能シラバス etc
第18課
1.ミラーさんは 漢字を 読む ことが できます。
V辞書形 + ことができます。
2.わたしの 趣味は 映画を 見る ことです。
V辞書形 + ことです。
第21課
1.あした 雨が 降ると 思います。
辞書形 + と思います
2.首相は 来月 アメリカへ 行くと 言いました。
辞書形 + と言いました。
第26課
1.頭が 痛いんです。
2.バスが 遅れたんです。
3.新しいパソコンを買ったんですか。
4.東京女子大学へ行きたいんですが、どの駅で降
りればいいですか。
V辞書形・イ形容詞の辞書形 + んです
ナ形容詞・N + なんです
動詞に関して
五段動詞 ⇒ グループ1動詞
一段動詞(上一段、下一段) ⇒ グループ2動詞
する(サ行変格活用動詞)、来る(カ行変格活用
動詞) ⇒ グループ3動詞
最初に導入される動詞は?
『みんなの日本語』では4課で動詞が初めて導入され
ます。どんな動詞でしょう?
働きます
起きます
寝ます
勉強します
終わります
休みます
どのような例文や会話になっていると思いますか?
疑問
どうして辞書形(働く、起きる)ではなく、ます形(働きま
す、起きます)で導入されるのでしょうか?
ヒント:形として提示されるのは、「ます」・「ません」・
「ました」・「ませんでした」の4種類です。
どちらが覚えやすいでしょうか?
はたらきます
はたらきません
はたらきました
はたらきませんでした
はたらく
はたらかない
はたらいた
はたらかなかった
よみます(読みます)
よみません
よみました
よみませんでした
よむ
よまない
よんだ
よまなかった
どちらが汎用性が高いでしょうか?
グループの提示は14課
『みんなの日本語』
提示される理由 ⇒ 「て形」を導入するため
逆に言えば、ここまではグループ分けをする必
要がなかった。
「て形」は日本語学習の生命線
て形 フォーム
て形 います
て形 ください
て形 いただきます
て形 しまいます
て形 あります
て形 おきます
て形 みます
例文
毎朝、テニスをしています。
ドアが閉まっています。
ここに名前を書いてください。
先生に英語作文を直していただきました。
電車に傘を忘れてしまいました。
そこに説明書が貼ってあります。
私が予約を入れておきます。
新しい先生の授業を取ってみます。
⇒ て形を知らなければ、
らなければ、どう伝
どう伝えればいいでしょうか?
えればいいでしょうか?
て形の作り方はグループによって異なる
2グループは簡単です。
「ます」を省いて「て」をつけるだけ。
食べます → 食べて
見ます → 見て
寝ます → 寝て
起きます → 起きて
います → いて
借ります → 借りて
て形の作り方はグループによって異なる
1グループは複雑です
ます形
ます形
かきます(カ行)
て形
かいて
いそぎます(ガ行)
のみます(マ行)
いそいで
のんで
よびます(バ行)
よんで
かえります(ラ行)
かえって
かいます(ワ行)
かって
まちます(タ行)
まって
かします(サ行)
かして
いきます(例外)
いって(例外)
「ます形」の赤い部分に注意しながら、他の動詞を挙げて、「て形」を確
認してみましょう
学習者体験
次の架空の1グループの動詞のて形を作りましょう。
ます形
ます形
ぬみます
きします
へきます
たけります
こちます
ちらぎます
せいます
みびます
まります
て形
使役形の作り方
1グループと2グループの動詞それぞれについて使役
形(飲ませる・見させる など)の作り方を説明しましょう。
1グループ
nomimas + aseru ⇒ nomaseru
matimas + aseru ⇒ mataseru
kaerimas + aseru ⇒ kaeraseru
2グループ
mimas + saseru ⇒ misaseru
tabemas + saseru ⇒ tabesaseru
主な参考文献
『みんなの日本語』 初級Ⅰ・Ⅱ 本冊、スリーエーネットワーク(1998年)
『はじめての日本語教育 基本用語事典』、高見沢孟監修、
アスク講談社(1997年)