No.9 HIV 感染症と AIDS について

No.9
HIV 感染症と AIDS について
HIV 感染症とは性交渉などで HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が感染した状態を
いいます。
HIV はヒトの体液、特に血液・精液・膣分泌液・母乳に多く含まれます。
HIV は感染力の非常に弱いウイルスで、熱や消毒にも弱いため、家庭や学校、
職場での日常生活では感染しません。主な感染経路は性交渉によるものです。
セット
ポイント
HIV はヒトの体内で免疫の司令塔の役割を持つ細胞(CD4 陽性リンパ球)に感染し、その
細胞内で増殖し、その細胞を破壊します。
【感染初期】
HIV に感染後1~2週間程度で HIV が CD4 陽性リンパ球の中で急速に増殖し、一時的
にウイルス量が多くなる時期があります。 この時期に発熱、発疹、リンパ節腫脹などの
インフルエンザ様の症状が出ることがありますが、多くの場合 HIV 感染に気付かず無症候
期へ移行します。
【無症候期】
ヒトの体内で HIV が増えると特異的な免疫反応が起こり、一定の量まで HIV が抑え込
まれます(セットポイント)。CD4 陽性リンパ球の生産が追いついている間は HIV の増
殖もある程度抑えられています。無症候期は一年以内~十年以上と個人差がありますが、
セットポイントでのウイルス量が無症候期の長さに影響するといわれています。
【AIDS 発症期】
HIV の持続感染が続き CD4 陽性リンパ球の数が減ってくると細菌やウイルスを攻撃す
る細胞への指令が不十分になり、免疫機能が弱まります。
免疫機能が弱まると、免疫機能が正常な時には抑えこまれていた体内の細菌やウイルスが
暴れ出し、いろいろな感染症や腫瘍(日和見疾患:ひよりみしっかん)を起こします。
HIV に感染した後、免疫機能が低下し、23種類の指定された日和見疾患を発症した状態
が AIDS(後天性免疫不全症候群)です。
HIV 感染症治療について
現在の HIV 感染症治療は、複数の抗 HIV 薬を1日1回又は2回、毎日
服用して HIV の増殖を抑え続けます。
そうすることで免疫機能を回復・維持して AIDS 発症を防ぎ、長期間に
わたって良い体調を維持することが可能です。
しかし、薬をのんだりのまなかったりすると、薬の
効かない HIV(薬剤耐性 HIV)が発生し、治療に失敗してしまう
ことがあります。
抗 HIV 薬は必ず毎日服用し続けることが重要です。
HIV 感染症治療は月20万円程度と高額になるため、治療を受ける際
にはさまざまな医療費助成を受けることができます。
HIV 感染症・AIDS の動向と検査について
日本での HIV 感染症及び AIDS の新規発生件数は年々増加傾向にあり、日本人における
HIV 感染が拡大しています。
また、AIDS を発症して初めて HIV 感染が判明する、いわゆる「いきなり AIDS」も多い
のが現状です。
HIV 感染のリスクが高い状況としては
① 不特定の者とのコンドーム非着用による性交渉
② 他の性感染症(梅毒・淋病・クラミジアなど)の発症
などがあげられます。
HIV 感染を疑うことがあったら…
保健所・保健センターなどで、無料・匿名で HIV 検査を受けることができます。
HIV 感染後3ヵ月程度経つまでは迅速検査などでは検出されない(ウインドウピリオド
といいます)ことがありますので、気になることがあれば事前に検査機関にご相談され
ることをおすすめします。