レタスヒゲナガアブラムシ

22農病防第15545-1号
平成22年6月15日
各関係機関長 殿
香川県農業試験場病害虫防除所長
( 公 印 省 略 )
平成22年度病害虫発生予察特殊報第1号の発表について
このことについて、次のとおり発表したので送付します。
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平成22年度 香川県病害虫発生予察特殊報第1号
平 成 2 2 年 6 月 1 5 日
香川県農業試験場病害虫防除所
1. 病害虫名: レタスヒゲナガアブラムシ Nasonovia ribisnigri (Mosley)
2.発生作物: レタス
3.発生地域: 観音寺市、善通寺市
4.発生経過
平成 22 年 3 月に、
植物防疫所で実施した輸出検査に
おいて、香川県産レタスからレタスヒゲナガアブラム
シが発見された。
これを受けて、神戸植物防疫所坂出支所と合同で現
地調査を行ったところ、観音寺市、善通寺市のほ場で
本虫が発見された。
現在までに国内における本虫の発生の報告はない。
レタスヒゲナガアブラムシの無翅成虫
5.形
態
無翅胎生雌成虫の体形は紡錘形、体長は約 2.5 ㎜で、体色は淡緑色から緑色で腹部背面に暗色の
斑紋を有する。ジャガイモヒゲナガアブラムシやチューリップヒゲナガアブラムシは、この部分が
ほぼ一様に淡緑色から黄緑色で斑紋を欠く点により、肉眼でも識別できる。ただし、幼虫ではこの
斑紋は現れない。
6.生態と被害
本虫の発生国での報告によれば、レタス等の寄主植物を吸汁加害するほか、他のアブラムシ類と
同様に植物病原性ウイルスを媒介するとされている。また、レタスでは結球内部に入り込んでコロ
ニーを作りやすいとされ、在来のヒゲナガアブラムシ類と同様に、防除時期を逸すると防除が難し
くなるとされている。
7.寄主植物
本虫の発生国での報告によれば、一次寄主はセイヨウスグリ、アカフサスグリ、クロフサスグリ
などのスグリ属、二次寄主はレタス、チコリ、エンダイブ、ベロニカ、コゴメグサ、ペチュニア、
タバコなどといわれている。
8.防除上の注意等
1)定植時に薬剤処理を行う。
2)結球期前の定期的な防除を行うことにより、結球内部に入り込まないようにする。
3)大部分のアブラムシ類の防除薬剤は効果があると考えられるが、ネオニコチノイド系のジノ
テフラン剤については効果がやや劣るので注意する。
4)抵抗性の発達回避のため、同一系統の薬剤を連用しない。
5)非結球レタス、リーフレタスなどでは薬剤によって登録内容が異なるので、必ず登録のある
農薬を使用する。
9.殺虫剤の効果試験結果(試験実施期間:平成 22 年3月 18 日~6月5日)
1)食餌浸漬法による試験では、ネオニコチノイド系薬剤では、アドマイヤー水和剤、モスピラ
ン水溶剤、ベストガード水溶剤、ダントツ水溶剤およびアクタラ顆粒水溶剤の補正死虫率は高
かったが、アルバリン顆粒水溶剤はやや低かった。その他の薬剤では、トレボン乳剤、アグロ
スリン乳剤およびランネート 45DF の補正死虫率は高かった(表1)。
2)セルトレイ処理による試験では、モスピラン粒剤、アドマイヤー1粒剤、ダントツ粒剤およ
びジュリボフロアブルは、処理当日および 7 日後の接種ともに、5 日後の補正死虫率は 100%と
高かった。アルバリン顆粒水溶剤は、処理当日接種の 5 日後の補正死虫率が 100%であったが、
処理 7 日後接種の 5 日後では 85.7%とやや低くなった(表 2)。
表1 各種薬剤の殺虫効果(食餌浸漬法)
薬剤名
アドマイヤー水和剤注)
モスピラン水溶剤
ベストガード水溶剤
アルバリン顆粒水溶剤
ダントツ水溶剤
アクタラ顆粒水溶剤
トレボン乳剤
アグロスリン乳剤
ランネート 45DF
倍率
2,000 倍
4,000 倍
2,000 倍
2,000 倍
2,000 倍
2,000 倍
1,000 倍
2,000 倍
1,000 倍
補正死虫率
善通寺市
100%
100%
100%
64.5%
100%
100%
100%
96.7%
100%
観音寺市
100%
100%
100%
70.5%
100%
100%
100%
100%
検定方法:所定濃度の薬液にレタス「シスコ」の葉を10秒間浸漬し、風乾後50mlス
チロール瓶にいれレタスヒゲナガアブラムシの有翅成虫を約10頭接種
し、室温20℃で72時間後の死亡率を調査した。3反復で行った。
注)アドマイヤー水和剤は登録がないが、登録のあるアドマイヤー顆粒水和剤
10,000 倍あるいはアドマイヤーフロアブル 4,000 倍と成分投下量が同一である。
表2 セルトレイ処理剤の殺虫効果
薬剤名
モスピラン粒剤
アドマイヤー1粒剤
ダントツ粒剤
アルバリン顆粒水溶剤
ジュリボフロアブル
倍率および処理量
0.5g/株(粒剤処理)
0.5g/株(粒剤処理)
0.5g/株(粒剤処理)
50 倍(500ml/200 株)
200 倍(500ml/200 株)
処理当日接種の
補正死虫率
3 日後
5 日後
100%
100%
100%
100%
96.3%
100%
66.7%
100%
100%
100%
処理 7 日後接種の
補正死虫率
3 日後
5 日後
100%
100%
100%
100%
100%
100%
66.7%
85.7%
93.3%
100%
検定方法:200 穴のセルトレイで育苗したレタス「シスコ」苗に所定量の薬剤を施用し、ポリポッ
ト(径 7.5cm)に定植して充分量灌水した。ポットを円筒形のケース内に静置し、処理
当日および 7 日後に、レタスヒゲナガアブラムシの有翅成虫 10 頭(善通寺市)を接種し、
室温 20℃で、接種3、5日後に死亡率を調査した。3 反復で行った。
10.参
考
植物防疫所病害虫情報 No.86(2008)「輸入検疫で発見された主な重要病害虫」
農薬は使用基準を遵守し、ラベルをよく見て使いましょう。
香川県農業試験場病害虫防除所ホームページ http://www.jppn.ne.jp/kagawa/