第 16回日本口腔顔面痛学会

第
16 回日本
口腔顔面痛
学会
プログラム・抄録集
会期:平成 23 年 10 月 8 日(土)・9 日(日)
会場:神戸国際会議場(神戸市中央区港島中町 6-9-1)
会長:佐久間泰司(大阪歯科大学大学院准教授)
Oct. 8 Sat
第1会場
第16回日本口腔顔面痛学会
日程表
第2会場
第3会場
委員会会場
ポスタ-会場
4階
1階
展示会場
3階
8:00
9:00
理事会
日本歯科麻酔学会 口演発表
10:00
ポスター
掲示
日本歯科麻酔学会宿題報告
歯科領域における小児麻酔の臨床的研究
-鎮静・気道管理・挿管困難の観点から-
評議員会
FADAS
教育講演
11:00
日本歯科麻酔学会
久保田康耶記念講演
私の歯科麻酔人生
総会
12:00
ランチョンセミナーⅡ
ランチョンセミナーⅠ
医療事故を予知・予防するた
浮腫みでHAE( 遺伝性血管性
めの最新の知見
浮腫) を疑うか?
-特に血圧の正確な測定・評価法を中
心として-
13:00
教育講演1
日本歯科麻酔学会 総会
14:00
企業
展示
MRIによる口腔顔面の神経
障害の臨床から研究
演者 照光 真(新潟大歯)
司会 和嶋浩一(慶応大医)
FADAS
ポスター
発表
日本歯科麻酔学会
特別講演
時間の生命科学
演者 上田 泰己 (理化研)
司会 小谷順一郎(大阪歯大)
15:00
特別講演
タカラジェンヌの少女期の舞台教育が高
齢期の認知機能に及ぼす影響
演者 桝谷多紀子(ますたにDC)
司会 柿木隆介(生理研)
16:00
FADAS
特別講演
教育講演2
顎口腔系のシステム神経科学
-難治性神経疾患に対する治療戦略-
演者 成田紀之(日本大松戸歯)
司会 佐々木啓一(東北大歯)
17:00
18:30- 会員懇親会(神戸ポートピアホテル地下1階 偕楽)
日本歯科麻酔学会
ポスター発表
疼痛関連演題は
16:10-17:30
8-P2-05~12
Oct. 9 Sun
第1会場
第2会場
第16回日本口腔顔面痛学会
日程表
第3会場
4階
1階
ポスタ-会場
展示会場
3階
8:00
9:00
10:00
日本歯科麻酔学会 口演発表
日本口腔顔面痛学会
口演発表
(口腔顔面痛1)
11:00
日本歯科麻酔学会
教育講演
JRC(日本版)ガイドライン2010
日本口腔顔面痛学会
ポスター発表
(口腔顔面痛2~8)
教育講演3
咀嚼障害が脳機能に
及ぼす影響
演者 奥田恵司(大阪歯大)
司会 窪木拓男(岡山大歯)
企業
展示
12:00
ランチョンセミナーⅢ
ランチョンセミナーⅣ
歯科における連続測定型耳式体 手術ストレス・心筋保護を考慮した
温計 CE サーモの有用性
麻酔管理
13:00
シンポジウム
非歯原性歯痛
ガイドライン
日本歯科麻酔学会シンポジウム
14:00
矢谷博文(大阪大歯)
和嶋浩一(慶応大医)
松香芳三(岡山大歯)
村岡 渡(日野市病院)
小見山道(日本大松戸歯)
井川雅子(市立清水病院)
新しい歯科麻酔科医のあり方
出張鎮静管理の現状と問題点
シンポジウムの終了時刻は遅れることがあります
15:00
16:00
17:00
日本歯科麻酔学会
日本歯科麻酔学会特別企画
社会講座
震災関連シンポジウム
日本歯科麻酔学会
ポスター発表
ポスター撤去
16:10-16:40
ご
挨
拶
第 16 回日本口腔顔面痛学会会長
佐久間 泰司
(大阪歯科大学大学院准教授)
はじめに、平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災により亡くなられた 1 万有余名
の方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災された皆様、そのご家族の方々
に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。
まだまだ復興は緒に就いたばかりのこの時期ですが、第 16 回日本口腔顔面痛学会を予定
通り、神戸の地で開催いたします。
神戸市は、ご案内のように国内有数の港町・観光地です。旧居留地であることより明治
初期より開発が進み、国内発祥の地とされているものには、パン、ワッフル、バームクー
ヘン、バレンタインデー、ジャズ、ゴルフ場などがあり、学問だけでなく観光やナイトラ
イフもご堪能いただけると思います。
しかしそれ以前に神戸市は、17 年前の大震災を乗り越え、不死鳥のように蘇った街です。
会場である神戸国際会議場は埋め立て地のため液状化被害が甚大でしたが、今や、その痕
跡を見つけることも困難です。東日本大震災からの復興を目指す今の日本にとって、ふさ
わしい会場設定の場であると信じます。
今回は日本歯科麻酔学会、FADAS(アジア歯科麻酔学連合)の学術集会と同一会場で行
います。3学会は別々に開催されますが、会場内に敷居は一切なく、日本口腔顔面痛学会
受付で当日会費をお支払い頂くと、3学会の行事に何の制限もなく自由に参加できます。
多くの好学の士が参加されることを楽しみにしています。
日本口腔顔面痛学会は、歯科領域・口腔領域の疼痛治療に関する唯一の学会です。扱う
疼痛は、三叉神経痛や神経因性疼痛などペインクリニック固有の疼痛だけでなく、顎関節
症・歯髄炎・歯周炎など歯科特有の疼痛、さらには身体表現性疼痛障害など過去に心因性
疼痛と呼ばれていた疼痛まで、広範囲に及びます。学会には臨床のみならず基礎の研究者
も多く参加しており、確固たる基礎知識に裏付けられた臨床を目指しています。
会員の皆様の熱心な討論を通じて、一人でも多くの患者さんが痛みの苦しみから解放さ
れることを期待しています。
開催案内
第 16 回日本口腔顔面痛学会に出席される皆様へ
1.参加資格
主演者は日本口腔顔面痛学会の会員に限ります。未入会の方は入会手続きを
お取りください。
2.受付
参加受付は 10 月 8 日(土)午前 8 時 15 分から、1 階で行います。
※ 3 学会がそれぞれ受付を出しています。
「日本口腔顔面痛学会受付」にお
越しください。
※日本歯科麻酔学会認定医等、日本歯科麻酔学会の参加履歴の必要な方は、
「日本歯科麻酔学会受付」(総合受付)でお手続きください。
3.会費
当日会費 9,000 円を受付にてお支払いください。当日会費と引き換えに、
参加証をお渡しします。参加証には所属・氏名をご記入のうえ、会場内で
は必ずご着用ください。参加証をつけていない方の入場はお断りします。
4.会員懇親会
会員懇親会の会費は当日会費に含まれています。10 月 8 日(土)午後 6 時
30 分から、会場に隣接している神戸ポートピアホテル地下の「偕楽」にて
開催します。入口で参加証をご提示ください(ご提示いただけない場合は会
費 3,000 円を申し受けます)。
5.抄録集
抄録集は当日配布しませんので、各自ご持参ください。
6.学会運営について
今回は 3 学会が同時に開催されます。このため、日本口腔顔面痛学会の運
営に多少の混乱が予想されますが、どうかご容赦ください。
いずれの学会の参加証でも、全ての学術行事に自由に参加できます。
7.一般演題について
一般演題は、日本歯科麻酔学会の一般演題と同一会場で一体化して発表時
間が組まれており、すこし分かり辛くなっています。8 ページからの一般演
題プログラムを見ていただければ全体像がつかめると思います。
なお日本歯科麻酔学会の発表抄録は、本抄録集には掲載されていません。
ご容赦ください。
開催案内
第 16 回日本口腔顔面痛学会に出席される皆様へ
8.座長へのご案内
一般演題の発表時間は、発表 7 分 討論 3 分ですが、予定時間内にセッシ
ョンが終了する範囲で配分はお任せします。なお時間厳守でお願いいたし
ます。
ご担当セッションの開始 30 分前までに、座長受付(地下 1 階ロビー)にお
越しください。また口演の場合は担当セッション開始 15 分前までに、会場
前方右手の次座長席へお着き下さい。ポスター発表の場合、担当セッショ
ン開始 10 分前までに発表会場までお越しください。
9.演者へのご案内
演者の方は、別にお渡しする発表案内を必ずご参照のうえ、ご準備くださ
い。
ポスターは、縦 210cm、横 90cm で、左上に 20cm 角の演題番号を学会側が用
意いたします。
ポスター掲示 10 月 8 日(土)8:30-12:00
ポスター発表 10 月 9 日(日)9:00-11:00
ポスター撤去 10 月 9 日(日)16:10-16:40
撤去されなかったポスターは、学会による処分希望と判断し、廃棄処分い
たします。
10.ランチョンセミナー
会場内や会場周辺の食事設備が不十分であり、ランチョンセミナーへの参
加をお勧めします。日本歯科麻酔学会主催で、口腔顔面痛に直結する講演
でなく申し訳ないのですが、セミナー会場では昼食(お弁当)をご用意い
たします。
お弁当はチケット(整理券)制度となっており、当日、1階にて午前 8 時
15 分から配布いたします。チケットは数に限りがありますので、お早めに
お越しください。
なお、セミナー開始 5 分を過ぎましたら、チケットは無効となります。
11.日本歯科医師会生涯研修登録
日本歯科医師会生涯研修登録は、1 階にICカード登録機を準備しておりま
す。3学会の登録が同時に行えます。日本歯科医師会員の先生は、ICカ
ードをご準備ください。
開催案内
会場案内
地下 1 階
PCセンター
座長受付
クローク
1階
第1会場
学会受付
日本歯科医師会生涯研修登録
ランチョンチケット配布場
3階
ポスター会場
4階
第2会場
第3会場
委員会会場
学会本部
神戸国際会議場へのアクセス
神戸国際会議場は、日本一空港に近く、交通アクセスに優れた立地となってい
ます。神戸の中心地・三宮駅(三ノ宮駅)と神戸空港をつなぐポートライナー
で市民広場駅下車すぐ。周辺は駐車場も充実し、車でのご来場にも便利です。
〒650-0046 神戸市中央区港島中町 6-9-1
TEL:078-302-5200 FAX:078-302-6485
ご宿泊
会場に近いホテルをお望みでしたら、会場に隣接する神戸ポートピアホテルが
便利です。
神戸観光・ナイトライフをお望みでしたら、三宮界隈のホテルがお勧めです。
会場は三宮からポートライナーで約 10 分です。
アクセス概要図
阪神高速道路 名神高速道路
大阪(伊丹)空港
JR新幹線
豊中
新神戸
新大阪
市営地下鉄
至
博 JR神戸線
多
方
面
リムジンバス
三宮
京橋
生田川
2号線
摩耶
国道
線
号神戸
3
速
阪神高
大阪
私鉄
阪急
西宮
住吉浜
ポ
神戸大橋
ハーバーハイウェイ
港島トンネル
阪神高速5号
湾岸線
ポートアイランド
展示場
市民広場
神戸コンベンションセンター
会議場
六甲アイランド
リ
ム
ジ
ン
バ
ス
関西国際空港
ポートピアホテル
神戸空港
神戸ー 関空
ベイ・シャトル
(高速 艇)
至
東
京
方
面
プログラム
Oct.8 Sat
8:30
11:30
ポスター掲示開始(~12:00
3階ポスター会場)
総 会(4階第3会場)
12:00 ランチョンセミナー(1階第1会場、4階第2会場)
ランチョンセミナーⅠ(1階第1会場)
浮腫みで HAE( 遺伝性血管性浮腫) を疑うか?
ランチョンセミナーⅡ(4階第2会場)
医療事故を予知・予防するための最新の知見
-特に血圧の正確な測定・評価法を中心として-
13:00 教育講演1(4階第2会場)
MRIによる口腔顔面の神経障害の臨床から研究
演者 照光
真(新潟大学大学院医歯学総合研究科歯科麻酔学分野准教授)
座長 和嶋浩一(慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室専任講師)
14:00 日本歯科麻酔学会特別講演(1階第1会場)
時間の生命科学
演者 上田泰己(独立行政法人理化学研究所発生・再生科学総合研究センターチームリーダ-)
座長 小谷順一郎(大阪歯科大学歯科麻酔学講座教授)
15:00 特別講演(4階第2会場)
タカラジェンヌの少女期の舞台教育が高齢期の認知機能に及ぼす影響
―私の研究、私の人生、私の思い―
演者 桝谷多紀子(ますたにデンタルクリニック院長)
司会 柿木隆介(自然科学研究機構生理学研究所教授)
16:00 教育講演2(4階第2会場)
顎口腔系のシステム神経科学-難治性神経疾患に対する治療戦略-
演者 成田紀之(日本大学松戸歯学部付属病院顎脳機能センター痛み歯科/神経歯科 診療教授)
司会 佐々木啓一(東北大学大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野教授)
18:30 会員懇親会(神戸ポートピアホテル地下1階
偕楽)
プログラム
Oct.9 Sun
一般演題(4階第3会場、3階ポスター会場)詳細目次は p8 以降
9:00
教育講演3(4階第2会場)
11:00
咀嚼障害が脳機能に及ぼす影響
演者 奥田恵司(大阪歯科大学欠損歯列補綴咬合学講座助教)
司会 窪木拓男(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野教授)
12:00 ランチョンセミナー(1階第1会場、4階第2会場)
ランチョンセミナーⅢ(1階第1会場)
歯科における連続測定型耳式体温計 CE サーモの有用性
ランチョンセミナーⅣ(4階第2会場)
手術ストレス・心筋保護を考慮した麻酔管理
13:00 シンポジウム(4階第3会場)
非歯原性歯痛ガイドライン
司会
矢谷博文(大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座クラウンブリッジ補綴学分野教授)
和嶋浩一(慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室専任講師)
シンポジスト
松香芳三(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野准教授)
小見山道(日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座准教授)
村岡
渡(日野市立病院歯科口腔外科医長)
井川雅子(静岡市立清水病院口腔外科非常勤歯科医師)
16:10
ポスター撤去(~16:40
3階ポスター会場)
一般演題プログラム
10 月 8 日
土曜日
ポスター発表
<<このページは日本歯科麻酔学会の疼痛関連演題のうち、8 日に発表するものを掲示しています>>
16:10-16:50
疼痛1
座長
椎葉俊司(九州歯大)
8-P2-05 口腔外科手術術後痛の主観的な痛みと客観的な痛みの関連性-Pain Vision を用いて-
市川 絢 東京歯科大学口腔健康臨床科学講座歯科麻酔学分野
8-P2-06 舌痛症の病態解明―第 2 報-心理テストとの関連について―
新美知子 東京医科歯科大学歯学部付属病院ペインクリニック
8-P2-07 神経損傷の温度感覚障害検査のためのフィードバック制御付き温度刺激装置とその測定法
近藤由記 新潟大学医歯学総合病院歯科麻酔科診療室
8-P2-08 星状神経節ブロックは三叉神経体性感覚誘発脳電位の潜時を延長させる
川口潤 東京歯科大学歯科麻酔学講座
16:50-17:30
疼痛2
座長
小長谷光(医歯大歯)
8-P2-09 星状神経節ブロックと Perfusion index との関係について
下坂典立 日本大学松戸歯学部歯科麻酔学講座
8-P2-10 下顎孔伝達麻酔注射トレーナーの開発と改良:複合型トレーナーに関するアンケート調査
工藤 勝 北海道医療大学歯学部歯科麻酔科学分野
8-P2-11 知覚痛覚定量分析装置(Pain VisionR)を応用した口腔内局所麻酔効果の評価
山根彩加 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯科麻酔・特別支援歯学分野
8-P2-12 当科における末梢性三叉神経損傷後の知覚障害としびれに対する治療効果の検討
倉田行伸 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻顎顔面再建学講座歯科麻酔
学分野
黒字は日本口腔顔面痛学会の演題、青字は日本歯科麻酔学会の演題です
日本歯科麻酔学会の演題抄録は、本誌には掲載していません
一般演題プログラム
10 月 9 日
10:00-11:00
日曜日
口演
口腔顔面痛1
座長
4階第 3 会場
今村佳樹(日本大歯)
9-O3-07 歯の移動に伴う疼痛への超短時間高出力レーザーによるペインコントロール、及び低出力レーザ
ーとの比較
陳明裕 めいゆう矯正歯科
9-O3-08 損傷末梢神経の異常再生に対する高磁場 MRI による水分子の拡散画像解析
照光 真 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻顎顔面再建学講座歯科麻酔
学分野
9-O3-09 精神疾患簡易構造化面接法を用いた口腔顔面痛患者の心身医学的診断の試み
田中 裕 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻顎顔面再建学講座歯科麻酔
学分野
9-O3-10 持続性神経障害性疼痛に三叉神経痛を併発した 2 例
西須大徳 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
9-O3-11 糖尿病性末梢神経障害が原因と考えられる突発性 First bite syndrome の一症例
布巻昌仁 九州歯科大学生体制御学講座歯科侵襲制御学分野
9-O3-12 痛みの診断にコーンビーム CT が有用であった外傷によるフェネストレーションの 1 症例
土井 充 広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻病態制御医科学講座(歯科麻
酔学)
黒字は日本口腔顔面痛学会の演題、青字は日本歯科麻酔学会の演題です
日本歯科麻酔学会の演題抄録は、本誌には掲載していません
一般演題プログラム
10 月 9 日
9:00-10:00
日曜日
ポスター発表(第 3 系列)
口腔顔面痛2
座長
岡田明子(日本大歯)
9-P3-01 Burning Mouth Syndrome の特徴に関する説明ならびに痛みに対する患者の疑問と不安の解消
に焦点を置いた治療経験
鈴木長明 医療法人歯周会西堀歯科・豊田歯科
9-P3-02 咬筋筋筋膜痛からの関連痛を原因とした激しい歯痛に対し星状神経節ブロックと咬筋トリガーポイ
ント注射にて除痛を行った一例
半田俊之 東京歯科大学口腔健康臨床科学講座歯科麻酔学分野
9-P3-03 歯科領域での神経障害性疼痛に対するプレガバリンの使用経験
野上堅太郎 福岡歯科大学診断・全身管理学講座麻酔管理学分野
9-P3-04 卵巣摘出ラットの口腔顔面領域の神経因性疼痛による行動学的変化
杉村光隆 大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座(歯科麻酔)
9-P3-05 当科におけるプレガバリンの使用状況
半田俊之 東京歯科大学水道橋病院口腔健康臨床科学講座歯科麻酔科口腔顔面痛みセンター
9-P3-06 慢性根尖性歯周炎に起因した口腔顔面領域における疼痛異常の神経機構
清水康平 日本大学歯学部保存学教室歯内療法学講座
10:00-11:00
口腔顔面痛3
座長
杉村光隆(大阪大歯)
9-P3-07 診断に苦慮した超高齢者における舌咽神経痛の1例
田山秀策 東京都立広尾病院歯科口腔外科
9-P3-08 下顎枝矢状分割術後の下歯槽神経知覚閾値の経時的変化の検討~第 2 報~
瓜生和貴 鶴見大学歯学部歯科麻酔学講座
9-P3-09 東京歯科大学市川総合病院緩和ケアチームに依頼された口腔癌患者の特徴
縣秀栄 東京歯科大学市川総合病院麻酔科
9-P3-10 咬合調整が有効であった咬合違和感2例
野田隆夫 野田矯正歯科クリニック
9-P3-11 保存療法にて改善した非定型歯痛と思われる2症例について
島田 淳 医療法人社団グリーンデンタルクリニック
9-P3-12 咬筋痛の自覚強度と眼窩前頭皮質の活動性
成田紀之 日本大学松戸歯学部付属病院顎関節・咬合科/口・顔・頭の痛み外来
黒字は日本口腔顔面痛学会の演題、青字は日本歯科麻酔学会の演題です
日本歯科麻酔学会の演題抄録は、本誌には掲載していません
一般演題プログラム
10 月 9 日
9:00-10:00
9-P4-01
日曜日
ポスター発表(第 4 系列)
口腔顔面痛4
座長
金銅英二(松本歯大)
Pentobarbital が引き起こす麻酔要素における GABA ,グリシン,神経性コリン作動性,グルタミ
ン酸およびサブスタンス P 各神経の役割
向井明里 広島大学大学院医歯薬総合研究科展開医科学専攻病態制御医科学講座 (歯科麻
酔学)
9-P4-02 ラット三叉神経節細胞における Na+-Ca2+交換輸送体発現の検索
黒田英孝 東京歯科大学口腔科学研究センター
9-P4-03 星状神経節ブロックラットの作製
久保田和利 日本歯科大学生命歯学部歯科麻酔学講座
9-P4-04 ナノバブルとエスモロール脊髄腔内投与の術後疼痛モデルラットにおける抗侵害作用
小野 瞳 東北大学大学院歯学研究科歯科口腔麻酔学分野
9-P4-05 神経障害性疼痛モデルにおける IL-17 の関与
野間 昇 日本大学歯学部口腔診断学講座
9-P4-06 慢性疼痛による情動変化の統合的理解:神経障害性疼痛による扁桃体領域の機能変化
西須大徳 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室/星薬科大学薬理学教室
10:00-11:00
口腔顔面痛5
座長
岩田幸一(日本大歯)
9-P4-07 片頭痛動物モデルに対する麻酔関連薬物の作用の比較
工藤千穂 大阪大学大学院歯学研究科統合機能口腔科学専攻高次脳口腔機能学講座
9-P4-08 パーキンソン病モデルラットにおける顔面領域の疼痛刺激に対する行動学的反応と Fos 発現
前川博治 大阪大学大学院歯学研究科統合機能口腔科学専攻高次脳口腔機能学講座
9-P4-09 プレガバリンは顎顔面領域の疼痛に効きにくい?
三浦美英 北海道医療大学歯学部歯科麻酔科学分野
9-P4-10 TRPV1 高発現時のカプサイシン刺激によるカスパーゼ 2 の活性化
佐藤 仁 慶應義塾大学医学部神経内科学教室/慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
9-P4-11 三叉神経節神経細胞の侵害刺激に伴う非翻訳領域転写産物の発現上昇の解析
大木絵美 松本歯科大学大学院顎口腔機能制御学講座生体調節制御学
9-P4-12 実験的低強度噛みしめが疼痛感覚に及ぼす影響
多田浩晃 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯科補綴学分野
黒字は日本口腔顔面痛学会の演題、青字は日本歯科麻酔学会の演題です
日本歯科麻酔学会の演題抄録は、本誌には掲載していません
一般演題プログラム
10 月 9 日
9:00-10:00
日曜日
ポスター発表(第 5 系列)
口腔顔面痛6
座長
築山能大(九州大歯)
9-P5-01 日本大学松戸歯学部付属病院に新設された「神経歯科外来」の診療状況
成田紀之 日本大学松戸歯学部付属病院顎関節・咬合科/口・顔・頭の痛み外来
9-P5-02 大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科ペインクリニック外来患者における心因性因子の検討
吉田好紀 大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座
9-P5-03 顎関節症の疼痛症状に影響を与える因子 ―企業就労者を対象とした調査から―
西山 暁 東京医科歯科大学歯学部附属病院顎関節治療部
9-P5-04 喫煙と顎関節痛との関連について
宮城摩里子 奈良県立医科大学口腔外科学講座
9-P5-05 感染根管治療時の術後疼痛発症頻度および非歯原性疼痛との関連についての検討
永吉雅人 九州歯科大学口腔機能科学専攻口腔治療学講座齲蝕歯髄疾患制御学分野
9-P5-06 三環系抗うつ薬が奏効した、中枢性感作による治療抵抗性顎関節症2例
井上裕梨 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
10:00-11:00
口腔顔面痛7
座長
小山なつ(滋賀医大)
9-P5-07 口腔顔面領域における神経障害性疼痛に対するプレガバリンの有効性の臨床的検討
村岡 渡 日野市立病院歯科口腔外科
9-P5-08 QST を用いた侵害刺激と認知される痛みの関連性-健常成人について-
福田修二 大阪大学大学院歯学研究科統合機能口腔科学専攻顎口腔機能再建学講座
9-P5-09 加速度脈波計を用いた脈拍変動計測による自律神経機能評価の試み
石橋賢治 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯科補綴学分野
9-P5-10 Burning mouth syndrome 患者における熱刺激時の脳活動-functional-MRI による研究-
篠崎貴弘 日本大学歯学部口腔診断学講座
9-P5-11 抜歯を余儀なくされた非定型歯痛の一例
金銅英二 松本歯科大学口腔解剖学第一講座
9-P5-12 ラット下歯槽神経切断による神経障害性疼痛に対する GABA 介在ニューロンの関与
岡田明子 日本大学歯学部口腔診断学講座
黒字は日本口腔顔面痛学会の演題、青字は日本歯科麻酔学会の演題です
日本歯科麻酔学会の演題抄録は、本誌には掲載していません
一般演題プログラム
10 月 9 日
日曜日
9:00-9:40 口腔顔面痛8
ポスター発表(第 6 系列)
座長
福田謙一(東京歯大)
9-P6-01 睡眠時ブラキシズム頻度と末梢セロトニントランスポーターの機能との関連
三木春奈 岡山大学大学院インプラント再生補綴学分野
9-P6-02 鉄欠乏性貧血、口腔カンジダ症および口腔乾燥症を併発した口腔領域の痛みに立効散が奏効
した一症例
安藤祐子 東京医科歯科大学歯学部附属病院ペインクリニック
9-P6-03 顔面皮膚の触覚の鈍麻を併発した筋筋膜痛の1例
臼田 頌 (財)東京都保険医療公社多摩北部医療センター歯科口腔外科
9-P6-04 “口・顔・頭の痛み外来”における慢性疼痛を有する顎関節症患者の特徴
永田綾子 日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座
黒字は日本口腔顔面痛学会の演題、青字は日本歯科麻酔学会の演題です
日本歯科麻酔学会の演題抄録は、本誌には掲載していません
特別講演
タカラジェンヌの少女期の舞台教育が高齢期の認知機能に及ぼす影響
―私の研究、私の人生、私の思いー
ますたにデンタルクリニック
桝谷多紀子
略歴
宝塚音楽学校卒、大阪歯科大学卒、神戸大学大学院(精神神経科学)修了 博士(医学)
講演概要
宝塚音楽学校卒業後、舞台で活躍されたのちに大阪歯科大学に入学し、現在は宝塚駅前
で開業されている桝谷多紀子先生にご講演を頂きます。
桝谷先生は女優から歯科医師に転身、歯科開業の傍ら神戸大学大学院に入学し、老年精
神医学を専攻されました。大学院ではタカラジェンヌが高齢になっても健康で生き生きし
ているのは、かつての厳しいけいこが影響しているのではないか、という問題意識から研
究をされました。その結果、平均年齢 80 歳の「宝塚 OG 群」と「対照群」を比較し、タカ
ラジェンヌは年を取っても認知能力が高いことを明らかにされ、平成 22 年に大学院修了、
博士(医学)を授与されました。芸術活動が健康や生きがいにも役立っているという興味
深い知見をご講演いただけるものと思います。
歯科クリニックには多くの宝塚音楽学校の生徒さんが患者で来られますが、桝谷先生は
タカラジェンヌ目線で診療に当たられています。臼歯の噛みしめや歯並びが 発音に非常に
大切なことなど、舞台と歯科との関係を常に意識されています。今回のご講演では、認知
症研究についてだけでなく、舞台と歯科のことなど幅広くお話いただく予定です。
(佐久間記)
教育講演1
MRIによる口腔顔面痛の神経障害の臨床から研究
新潟大学歯科麻酔学分野准教授
照光
真
今回は口腔顔面の神経画像に何らかのかたちで携わるための MRI レクチャーです。例え
ば神経障害性疼痛を疑う患者さんを目の前にしたとしましょう。
画像検査のオーダーを
する場合、何をどう撮影して欲しいと伝えたらよいでしょうか?
もし知覚障害のメカニ
ズムを非侵襲的に調べたいとしたら MRI をどのように使ったらよいのでしょうか? 実は
いまのところいずれも研究レベルと言っても過言ではないでしょう。しかしながら本稿に
興味をもたれその荒波に乗り出そう、というみなさんの一助になれましたら幸いです。
とりあえず水!
一日の仕事が終わり仲間とお店に入るなり注文す
成人
%
男
女
全水分量
60
50
細胞内水
40
30
細胞外水
20
20
るのは“とりあえずビール!”ですが、神経の MR
イメージングでは“とりあえず水!”が欠かせま
せん。生体反応は水を媒体に行われ、表 1 に示す
ように生体は水にあふれています。特に神経系で
は脳の白質で 70.6~71.6%、灰白質には 81.9~
84.3%が水分量です(Mathur 1984)。さらに生体内の水の状態は、さまざまな生体反応(病的
状態や代謝など)や、水の物理状態(水分子の熱運動や高分子の結合など)
、水の移動が相
互作用して変化して、機能的にも異なったものとなります。核磁気共鳴(MRI)はこうし
た水の状態変化に敏感な手法といえます。
イオン・低分子・生体高分子との水和
みそすり運動 (歳差運動:precession)
MRI のテキストで必ず登場しますが、その先
まではなかなか完読しにくいのが実際のとこ
水の移動
生体反応
ろかもしれませんが、これは重要な式です。
プロトン (H1) の歳差運動の周波数 (ω0) は
静磁場 (B0) に比例し,その比例定数は
磁気回転比 (γ)である。
生体内の水の状態
(水の分子生理
上平/多田羅より改変)
ω0 =γB0
ω0(角周波数):ラジアン/秒、γ:42.58MHz/T (テスラ) = 267.5Mrad/T 秒
H1 のマスゲーム
MRI を分かりにくくしているのは、カメラや単純 X 線撮影とは異なった原理で画像が構成
されてゆくことにあるでしょう。プロトンの発した信号源部位を特定するために、“静磁場
教育講演1
を意図的に不均一に”します。上式に基づいて共鳴周波数が変化することを利用していわ
ばプロントンのマスゲームを波の情報として受信して数学的に変換して核磁化の分布を濃
淡でマス目状に配列することを行っています。高い分解能を必要とする口腔顔面の神経描
出にはそのマス目の数を増やすと同時に濃淡の差をつけなくてはいけません。
じゃまものは消せ
正常神経線維の MRI 信号強度は T1 強調画像では
筋肉や結合組織とほぼ同等、T2 強調画像ではそ
fat
water
れらと比べてやや High となりますが、周囲の脂
肪組織は描出の妨げとなり、特に骨内を走行す
oil
chicken
る神経が多い口腔顔面領域は骨髄の信号を消す
必要があります。これにはいくつかの方法があ
りますが、左図のように一つは水と脂肪の共鳴
周波数の差に伴う位相のずれを利用する“追かけっこ”ともいえる方法。脂肪のメチレン
基 (-CH2-) は H2O と 3.5ppm の周波数差があり、同位相と逆位相
を繰り返します。その位相画像の差と加算により水、脂肪をそれ
ぞれ求めることができます。また、直接脂肪の周波数に合わせた
電磁波を照射して信号をばらけさせる方法も一般的です。
右図は核磁気共鳴の高度な臨床応用、高分解能 MR Neurogaphy
(3DVR-MRN)による障害された下歯槽神経 (IAN)。
神経線維と水分子の移動
コップの水に一滴インクをたらしたらランダムな方向にインクの色が広がってゆきますが、
神経線維のように筒状の構造物内の水分子が拡散する方向はコップとは違って制限されて
います。これを検出するために前出の“意図的な静磁場の不均一”
赤
をある方向に強くした逆向きの 1 ペアの傾斜磁場を与えると、その
方向に拡散する水分子の位相は動いた分だけずれて、最終的には画
像の信号強度が低下するという方法があります。さらに拡散の方向
青
緑
性を色のコントラストとして表す神経画像法や、見かけの拡散係数
(mm2/sec) を算出することも可能です。これらが神経の病的な状態
を反映していることが明らかになりつつあります。右図は 3 次元拡
散異方性コントラスト画像(3DAC)による智歯歯根間を走行する IAN。
略歴
新潟大学歯科麻酔学分野入局後、世界的にも有数な核磁気共鳴実験施設をもつ新潟大学脳
研究所 統合脳機能研究センターで大学院~助教~准教授を経て 2010 年以降、現職。
教育講演2
顎口腔系のシステム神経科学-難治性の神経疾患に対する治療戦略-
日本大学松戸歯学部付属病院顎脳機能センタ- 痛み歯科/神経歯科
成
田
1.顎口腔系のシステム神経科学の概要につ
いて
顎口腔系のシステム神経科学(神経歯科学)
は,顎口腔領域における感覚機能と運動機能,
ならびに認知機能にかかわる神経機構の基礎的
かつ臨床的解明を目的とする歯科医学の一分野
と考えている.
顎口腔系のシステム神経科学を臨床の観点
から捉えると,
顎口腔系の主に感覚障害として,
舌痛,
神経障害性疼痛,
外傷性神経障害性疼痛,
帯状疱疹後神経痛などの難治性の神経疾患が挙
げられる.
一方,
これらの感覚障害に対峙する,
顎口腔系の主に運動機能の障害としては,口顎
ジストニアやオーラルジスキネジアが挙げられ
る.これら感覚機能と運動機能の障害のいずれ
も,本学松戸歯学部付属病院では,頭頸部外科
ならびに脳神経外科との医療連携による集学的
に治療している.したがって,顎口腔系の感覚
機能と運動機能の障害を対象とする集学的医療
の確立は,換言すれば,中枢神経系をも包含し
た歯科臨床の構築であり,さらに口腔機能と認
知機能との関連を考え合わせると,高齢化する
日本の社会事情に相応した歯科医学の一つの方
向性を示唆していると考えている. また,この
ような神経疾患は,前述したように,脳神経外
Pre-treatment
紀
之
科ならびに頭頸部外科との医療連携を基本とす
ることから,本学松戸歯学部付属病院神経歯科
では一般歯科治療も併せて行なうことで,顎口
腔系の機能治療を一つの診療ユニットとして包
括化させている.
これまで,本学付属病院の顎関節・咬合科/
痛み外来/神経歯科では,年間約 1200 名の来
院患者があり,その 20%~30%が舌痛症,非歯
原性歯痛,神経障害性疼痛,精神疾患(疼痛性
障害,口腔感覚異常)
,不随意運動症などの難治
性の神経疾患で占められている.この現状に鑑
みて,難治性の神経疾患への習熟は歯科医学の
教育に不可欠と考える.具体的には,顎口腔系
の感覚機能と運動機能ならびに認知機能の障害
に関する以下Ⅰ~Ⅳの内容を教授することによ
り,神経科学(神経歯科学)に関する理解は深
まると考えている.
Ⅰ.顎口腔系の感覚機能,運動機能ならびに認
知機能に関する神経メカニズムの理解
Ⅱ.口腔顔面痛の病態メカニズムならびに診断
と治療に関する習得
Ⅲ.口顎不随意運動症の病態メカニズムならび
に診断と治療に関する習得
Ⅳ.精神疾患にともなう顎口腔の障害メカニズ
ムならびに診断と治療に関する習得
Post-treatment
図 1 .口顎ジストニア症例における顎筋活動ならびに下顎運動の様相
教育講演2
2.顎口腔系の感覚機能と運動機能の評価と
治療について
高等霊長類における顎口腔機能に関する脳研
究では,脳幹ならびに感覚運動皮質での微小電
気刺激や可逆的冷却,さらには神経活動の記録
をもとに,顎口腔系の感覚と運動に関する機能
局在が明らかとされてきた.
近年,f-MRI や PET によるヒトの脳機能研
究では,感覚と運動,認知に関する生理学的な
らびに機能病理学的な解明がなされつつある.
また,f-NIRS は,空間分解能などに問題を有
するものの,日常的空間での計測が可能で,他
の計測機器との併用に制限がないという優位性
から,その臨床的有用性は高い.
現在,本学神経歯科では,口顎ジストニアの
治療に際して,筋電図ならびに顎運動検査をも
とに,薬剤管理ならびに Botox 治療を行なって
いる.
図 1 に示した口顎ジストニアの症例では,
来院時に咀嚼の困難さを訴えており,術前所見
に開口筋(AD)の過剰な筋放電を認めた.
(Mm:咬筋, Ta:側頭筋, AD:顎二腹筋, R/L:
右/左, VERT:顎運動の垂直成分, A/P:前後成分,
LAT:側方成分, VER:速度)
.そこで,開口筋
(AD)ならびに外側翼突筋へ Botox 注射を施
行したところ,咀嚼時の開口筋(AD)活動の
明らかな減弱と咀嚼リズムの向上を認めた.ま
た,このような口顎不随意運動症の治療では,
これら筋電図学的ならびに運動学的検査に併せ
て,前述したように,感覚機能と運動機能にか
かわる皮質活動性も同時に評価することで,そ
の診断と治療の精度はさらに高まり,顎口腔系
の神経リハビリテーションの解明に繋がると考
えている.
近年,慢性疼痛患者,不随意運動症,さらに
は精神疾患といった難治性神経疾患に対する
経 頭 蓋 磁 気 刺 激 法 ( TMS: Transcranial
Magnetic Stimulation)の臨床応用が報告され
ている(図 2)
.この TMS は,先行研究に照ら
して,とても有効な先進的治療法であり,本学
医学部脳神経外科においても,その臨床応用を
目的として検討がなされている.
今後,TMS が歯科臨床に応用されることと
なれば,顎口腔系の難治性神経疾患に対する,
より高度な医療が実践できると考えている.
図 2 .慢性疼痛患者,不随意運動症ならびに精
神疾患の治療に応用可能な経頭蓋磁気刺激
法
〈略 歴〉
1981 年 日本大学松戸歯学部歯学科卒業
1983 年 東京医科歯科大学大学院歯学研究科(顎口腔総合研究施設構造研究部門)
1993 年 トロント大学歯学部生理学教室客員助教授
2000 年 日本大学松戸歯学部補綴学第Ⅲ講座助教授
2007 年 日本大学松戸歯学部補綴学第Ⅲ講座准教授
2010 年 トロント大学歯学部生理学教室客員教授
2010 年 日本大学松戸歯学部付属病院診療教授
現在に至る
日本疼痛学会評議員
日本口腔顔面痛学会評議員・倫理委員会委員
日本顎関節学会代議員・専門医・指導医・研修施設代表指導者
日本補綴歯科学会代議員・専門医・指導医
日本咀嚼学会評議員・編集委員会委員
教育講演3
咀嚼障害が脳機能に及ぼす影響
大阪歯科大学欠損歯列補綴咬合学講座
奥田恵司
近年,咀嚼障害と全身の健康との関係が
注目されるようになってきている.咀嚼は
口腔顔面領域の様々な求心性の感覚情報を
基に中枢神経機構により調整されている.
この咀嚼が障害されると中枢神経系に影
響を及ぼすことは十分考えられ,最近では
歯の喪失がアルツハイマー型認知症の危険
因子の一つであると考えられるようにまで
なってきている
補綴臨床別冊 図解・咬合採得より引用
演者が脳と咀嚼との関係に興味をもったのは、学生時
代に聞いた授業がきっかけである.それは,訪問診療で
かなり認知症の進んだ患者さんに義歯を入れて噛めるよ
うにしたところ,その患者の認知症が一時ではあるが、
ずいぶん良くなったと家族から報告を受けたという話で
あった.それまで義歯というものにあまり興味はなかっ
たが,義歯が認知症の治療に寄与する可能性にすごく興
ラット脳図譜
味をもったことを覚えている.
学生実習や病院実習で実際に義歯に触れる
ようになると、補綴治療の難しさや奥深さに
悩むようになり、現講座の大学院へ進むこと
となった。そして入学当初に教授からどんな
研究に興味があるか聞かれたときに脳につい
て全く知識がないにも関わらず,脳研究に興
味があると答えてしまったばっかりに、与え
られた課題はラットの咀嚼障害と脳機能との
関係についての研究であった.
ラット脳切片
当時は動物実験についても脳研究についても右も左も
わからない状態であったが、当時の教授からの紹介で本
大会長の佐久間先生の脳研究グループに入ることができ,
動物実験の基礎から教えて頂くことができたので 4 年間
で無事に学位を取得することができた.
ラット抜歯歯牙
教育講演3
演者が行ってきた研究は,脳内マイクロダ
イアリス法とテレメトリーバイオセンサーに
よる脳内神経伝達物質の測定と変動について
である.マイクロダイアリシス法は微小透析
プローブの半透膜を介して、物質を連続的に
回収する方法で高圧液体クロマトグラフィー
によって脳内物質を分離検出する.またテレ
メトリーバイオセンサーは脳内にバイオセン
サーを直接装着して測定する方法で脳内物質
を無線で連続モニタリングすることができる.
テレメトリーバイオセンサー
上顎臼歯を抜歯したラットと正常なラットでは,
機能時の海馬の神経伝達物質であるグルタミン酸の
変動に有意な差が認められ、臼歯の喪失が海馬の機
能に影響を与える可能性が明らかとなった.
ここでは演者が大学院時代から現在まで行ってき
た研究について,動物実験の結果から咀嚼障害が脳
機能へ与える影響と,さらに大学病院における義歯
の補綴臨床について,特に悩んだものを紹介させて
ラット口腔内写真
頂く.
義歯使用時の疼痛がなかなか消失しなかった症例
実験中のラット
略歴
2002 年 大阪歯科大学卒業
同年 大阪歯科大学大学院歯学研究科博士課程入学
2006 年 大阪歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了
2007 年 大阪歯科大学欠損歯列補綴咬合学講座助教
シンポジウム「非歯原性歯痛ガイドライン」
非歯原性歯痛ガイドラインの概要
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野
松香芳三
非歯原性歯痛のガイドライン作成に当たっては、日本口腔顔面痛学会のメーリングリス
トを利用してアンケートを募ることにより臨床上の疑問(クリニカルクエスチョン
CQ)
を収集したところ、非歯原性歯痛に関する疑問が多く寄せられた。同じ CQ や同じカテゴ
リーに入る CQ を整理し,臨床的重要性も加味して 15 個に絞り込んだ。
CQ1 :非歯原性歯痛の原疾患にはどのようなものがあるか?
CQ2 :非歯原性歯痛はなぜ起こるのか?
CQ3 :非歯原性歯痛を疑う臨床症状は何か?
CQ4 :歯原性歯痛との鑑別に有効な診察・検査法は何か?
CQ5 :非歯原性歯痛診断のセカンドステップは何か?
CQ6 :非歯原性歯痛の発生頻度はどのくらいか?
CQ7 :非歯原性歯痛の予防法は何か?
CQ8 :非歯原性歯痛に有効な薬物療法は何か?
CQ9 :非歯原性歯痛に有効な理学療法は何か?
CQ10:非歯原性歯痛に抜髄・抜歯は有効か?
CQ11:非歯原性歯痛に神経ブロックは有効か?
CQ12:非歯原性歯痛にスプリント療法は有効か?
CQ13:非歯原性歯痛に鍼灸治療は有効か?
CQ14:非歯原性歯痛に認知行動療法は有効か?
CQ15:非歯原性歯痛にカウンセリングは有効か?
非歯原性歯痛に関するランダム化比較試験やコホート研究はほとんど存在しないため、
非歯原性歯痛に関する論文を広くピックアップし、いずれの CQ の回答になりうるのかを
検討した。文献検索は、2010 年 10 月 3 日に医学中央雑誌あるいは MEDLINE に収載され
た論文を以下の検索方法で検索した。
医中誌検索:
非歯原性歯痛 or 非定型歯痛 or (歯痛 and 神経痛) or (歯痛 and 頭痛) or ((歯痛
and(筋筋膜痛 or 筋痛)
) or (歯痛 and 心臓) or (歯痛 and ニューロパシー) or (歯
痛 and 神経因性) or (歯痛 and 上顎洞) or (歯痛 and 鼻粘膜) or (歯痛 and 心
因性) or (歯痛 and 心理的)
検索件数:2171 件
シンポジウム「非歯原性歯痛ガイドライン」
PubMed 検索:
non-odontogenic toothache OR nonodontogenic toothache OR atypical odontalgia OR
toothache non dental OR (toothache AND neuralgia) OR (toothache AND headache) OR
(toothache AND (myofascial pain OR muscle pain OR myalgia)) OR (toothache AND
cardiac) OR (toothache AND neuropathic) OR (toothache AND maxillary sinus) OR
(toothache AND nasal mucosa) OR (toothache AND (psychogenic OR psychologic))
検索件数:692 件
次に論文タイトルと抄録から 2 名の委員が非歯原性歯痛に関するものを選択した。さら
に、これらのうち、商業誌に掲載された非原著論文を排除し、委員会により CQ を考慮し
て作成した文献入力フォームを用いて情報を解析した。その後、各委員は文献データを下
に CQ に対する回答を作成した。推奨度の決定は、非歯原性歯痛に関する論文では質の高
いランダム化比較試験やコホート研究がほとんど観察されなかったことから、Minds 診療
ガイドライン作成の手引き 2007 を参考に評価し、エビデンスのレベル、エビデンスの数と
結論のばらつき、臨床的有効性の大きさ、臨床上の適用性、害やコストを加味して行った。
診療ガイドラインをどのように使用するのかに関してであるが、ガイドラインは科学的
根拠に基づき専門家により作成されるものであり、その中の推奨は医学研究の集積による
科学的判断により作成される。そのため、臨床の現場においてはガイドラインを判断材料
として利用することができる。また、診療ガイドラインは、医療従事者の経験を否定する
ものではなく、ガイドラインに示す治療方法は一般的な治療方法であるため、個々の患者
の状況により当てはまらないこともある。使用にあたっては上記の点を十分に注意するべ
きである。臨床の現場における最終的な判断は、主治医が行わなければならないことを理
解する必要がある。
シンポジウム「非歯原性歯痛ガイドライン」
非歯原性歯痛の病態と原因(CQ1,2)および予防・疫学(CQ6,7)について
日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座
小見山 道
非歯原性歯痛では、歯に原因がないにもかかわらず、患者は歯が痛いと感じている。そ
の訴えが激烈であれば、歯科医師は患者を救いたい一心で、何ら疾患のない歯に不可逆的
な治療を施してしまうことがあり,非歯原性歯痛に対する対応は深刻な問題を孕んでいる。
したがって、喫緊の課題として、非歯原性歯痛のガイドラインが作成された。
非歯原性歯痛のガイドラインの CQ1 は、
「非歯原性歯痛の原疾患にはどのようなものが
あるか?」である。これに対しては、1)筋・筋膜性歯痛,2)神経障害性歯痛(三叉神
経痛、帯状疱疹、求心路遮断痛を含む)
,3)神経血管性歯痛,4)上顎洞性歯痛,5)心
臓性歯痛,6)精神疾患による歯痛(身体表現性障害、統合失調症、大うつ病性障害など),
7)特発性歯痛(非定型歯痛を含む),8)その他の様々な疾患により生じる歯痛、という
8つのグループに分類することとした。
CQ2 は、
「非歯原性歯痛はなぜ起こるのか?」である。非歯原性歯痛の発症機序は、まず、
関連痛としての筋・筋膜性歯痛、神経血管性歯痛、心臓性歯痛、上顎洞性歯痛であり、収
斂、投射、末梢神経の分岐、軸作反射などにより生じる。次いで、神経障害性歯痛の発症
機序であり,末梢神経性疼痛と中枢神経性疼痛に分類される。末梢神経性疼痛は、末梢性
感作、神経腫、エファプス伝達、交感神経の関与、表現形の変化により生じる。一方、中
枢神経性疼痛は、発芽、ワインドアップ、長期増強、中枢性感作、内因性痛覚抑制機構の
失調により生じる。最後に、心因性疼痛であるが、精神疾患による歯痛が含まれ、これに
は不明な点が多いが、身体化による疼痛が多いと考えられる。
CQ6は「非歯原性歯痛の発生頻度はどのくらいか?」である。原疾患別に調べられた非
歯原性歯痛の発症頻度は1~24%であり、原疾患によりその頻度はかなり異なる。一方,
一般歯科患者における非歯原性歯痛の発生頻度は報告が尐ないためはっきりしないが,1~
6%程度であると考えられる。
CQ7は「非歯原性歯痛の予防法は何か?」である。しかしながら、非歯原性歯痛の予防
に関する研究はまったくなく、何が予防になるか、その有効性はどの程度かに関してはま
ったく不明である。ただし、原疾患の素因をもっている場合にはそれに対する予防法を指
導することにより、非歯原性歯痛の発症を予防しうると考えられる。
以上のように、ガイドラインに掲載されている非歯原性歯痛の病因と原因(CQ1、2)お
よび予防・疫学(CQ6,7)の概要を、臨床例の供覧と共に説明する。
シンポジウム「非歯原性歯痛ガイドライン」
診察・検査と診断(CQ3,4,5)について
日野市立病院歯科口腔外科
村岡 渡
「You can not diagnose what you don’t know(知らない病気は診断できない)」とい
われるように、非歯原性歯痛を鑑別診断するためには、従来の歯科疾患だけではなく、歯
痛を生じうるさまざまな疾患に対する知識をもつ必要がある。そして、その原疾患を疑う
あるいは診断するまでには、診察、検査、診断といったいくつかのステップが必要となる。
そこで、まず、CQ3 として「非歯原性歯痛を疑う臨床症状は何か?」を検討した。その基
本は、痛みを訴える歯および歯周組織に画像所見や客観的診査所見によって、訴える痛み
に見合う異常所見を認めないということである。非歯原性歯痛は、臨床症状として歯髄炎
や歯周炎の痛みと類似することがあり、また原疾患による影響で、打診痛などの歯原性歯
痛と同じ症状が出現することもあるので注意が必要となる。多くの場合、当該歯へ麻酔を
行っても歯痛が改善しないことで、その鑑別が可能である。
次に、CQ4 として「歯原性歯痛との鑑別に有効な診察・検査法は何か?」を検討した。
各々の原疾患によって、鑑別に有効と考えられる診察・検査は異なるが、ここではファー
ストステップとして診察時に実施可能な問診や検査をあげた。
筋・筋膜性歯痛は、トリガーポイントを圧迫することによる歯痛の再現の確認が有効で
ある。神経血管性歯痛は、頭痛の診断基準に基づき、検査を行うことが重要である。心臓
性歯痛は、おもに下顎歯に歯痛が生じるが、下顎への局所麻酔では疼痛は消失しない。神
経障害性歯痛は、三叉神経痛では顔面の接触による疼痛の誘発や局所麻酔による誘発発作
の消失を確認する。持続性神経障害性歯痛の診査では、疼痛部位におけるアロディニアな
どの異常感覚の有無を確認する。上顎洞性歯痛は、鼻粘膜に局所麻酔薬を貼付して疼痛の
軽減が観察されることがある。精神疾患による歯痛では、病理所見が疼痛部位に存在しな
いことが特徴である。特発性歯痛のうち非定形歯痛では疼痛部位に器質的障害はなく、打
診、温熱診などの歯髄診断は不明瞭である。鎮痛薬、歯科処置、外科処置による改善は認
められず、局所麻酔薬に対する反応も不明瞭である。その他の様々な疾患により生じる歯
痛として、側頭動脈炎では、発熱、体重減尐が観察され、悪性リンパ腫による歯痛では、
温熱刺激、冷刺激、咬合、運動、発汗により変化はなく、局所麻酔は無効である、などが
あげられる。
さらに、CQ5 として「非歯原性歯痛診断のセカンドステップは何か?」を検討した。こ
れは各々の原疾患に合わせて診断的局所麻酔検査や神経学的検査を追加することや、血液
検査、心電図、筋電図、エコー検査などの生理検査、組織生検による病理組織検査、デン
タル・パノラマX線写真、単純レントゲン、CT、MRI などの画像検査、その他、心理テスト
や精神疾患のスクリーニングテスト、薬剤の有効性の確認などを実施することで、診断の
セカンドステップとすることができる。
以上のように、ガイドラインに掲載されている非歯原性歯痛の診察・検査と診断(CQ3, 4,
5)について、その背景とともに概要を解説する。
シンポジウム「非歯原性歯痛ガイドライン」
非歯原性歯痛の治療(CQ 8,9,10,11,12,13,14,15)について
静岡市立清水病院口腔外科
井川雅子
非歯原性歯痛のうち、筋・筋膜性歯痛、神経障害性歯痛、上顎洞性歯痛、特発性歯痛は、
従来歯科医が主となって診断や治療を行ってきた疾患であり、有効とされている治療法が
存在するため、以下のアンサーが参考になると思われる。一方、神経血管性歯痛、心臓性
歯痛、精神疾患に起因する歯痛、その他の様々な疾患により生じる歯痛は、それぞれの原
疾患に対する標準的な治療法が確立しており、診断が確定ししだい適切な専門科に治療を
依頼すべきものである。
CQ8 :非歯原性歯痛に有効な薬物療法は何か?
・筋・筋膜性歯痛では、局所麻酔薬によるトリガーポイントインジェクションが有効であ
ると考えられる。
・神経障害性歯痛
発作性神経障害性歯痛では、カルバマゼピンなどの抗てんかん薬の有効性が確立している。
持続性神経障害性歯痛には、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン)と三環系抗うつ薬(ア
ミトリプチリンなど)を単独または併用して用いることが推奨される。
・特発性歯痛:本邦では適応症外使用となるが、三環系抗うつ薬が推奨される。
神経血管性歯痛、心臓性歯痛、上顎洞性歯痛、精神疾患による歯痛については、それぞれ
の原疾患に対する標準的な薬物療法が確立されているため、適切な診療科に依頼して治療
を行う必要がある。
CQ9 :非歯原性歯痛に有効な理学療法は何か?
筋・筋膜痛の場合は、マッサージ、ストレッチ、トリガーポイント注射、レーザー療法、
電気療法などが推奨される。その他の非歯原性歯痛の各々の原疾患(病態)に対応した理
学療法の中には、補助療法として有用なものもあり、それに準じた治療が推奨される。
CQ10:非歯原性歯痛に抜髄・抜歯は有効か?
非歯原性歯痛の痛みの発生源は歯ではないため、抜髄、抜歯は無効である。
CQ11:非歯原性歯痛に神経ブロックは有効か?
筋・筋膜痛症由来にトリガーポイントブロック、帯状疱疹由来に星状神経節ブロック、体
性神経ブロックはある一定の効果は認められる。それ以外の非歯原性疼痛に対する神経破
壊薬による神経ブロックの効果は不確実である。
CQ12:非歯原性歯痛にスプリント療法は有効か?
筋・筋膜痛にスプリントが有効だという十分な証拠はないが、スプリントにはブラキシズ
ムを一時的に抑制する効果は期待できるため、ブラキシズムに起因する急性の筋痛には有
効である可能性がある。
CQ13:非歯原性歯痛に鍼灸治療は有効か?
エビデンスは高くないが、元となるそれぞれの病態に対して鍼灸治療の有効性が示されて
シンポジウム「非歯原性歯痛ガイドライン」
いる場合には非歯原性歯痛にも有効の可能性がある。
CQ14:非歯原性歯痛に認知行動療法は有効か?
ほとんど報告がなく、非歯原性歯痛に認知行動療法が有効であるかどうかは不明である。
CQ15:非歯原性歯痛にカウンセリングは有効か?
非歯原性歯痛の発症に心理・社会的要因が強く関与している症例においてはカウンセリン
グが疼痛緩和に有効である可能性は十分にあると考えられる.
一般演題
9-O3-10
9-O3-11
持続性神経障害性疼痛に三叉神経痛を併発した 2 例
糖尿病性末梢神経障害が原因と考えられる突発性
First bite syndrome の一症例
西須大徳 1) 佐藤 仁 1) 村岡渡 1)2) 中川種昭 1)
和嶋浩一 1)
布巻昌仁 日高和美 古田弘之 長畑佐和子
山本 徹 原野 望 吉田充広 椎葉俊司
1) 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
2) 日野市立病院歯科口腔外科
九州歯科大学生体制御学講座歯科侵襲制御学分野
【緒言】
神経障害性疼痛は持続性と発作性に分類され、
三叉神経痛は代表的な発作性神経障害性疼痛である。
我々は、神経障害性疼痛の治療中に、診断に苦慮した
三叉神経痛を経験したので報告する。
【症例 1】69 歳女性 16・48 の疼痛を为訴に 2006 年 7
月に来院した。2005 年 10 月より 16 の歯肉痛を投薬
治療していたが、2006 年 6 月より 16・48 の疼痛を自
覚した。16 には打診痛があり、周囲歯肉に Allodynia
を認めた。このことより繰り返しの炎症による神経障
害性疼痛と診断した。ワクシニアウイルス接種家兎炎
症皮膚抽出液とスプリントによる Neurosensory
Stent 療法を併用し、改善していた。しかしその後
Allodynia の増悪と間歇的自発痛が発現し、触診によ
る発作性疼痛の誘発により三叉神経痛(第Ⅱ枝)と診
断した。持続性疼痛に対し Neurosensory Stent 療法
が、発作性疼痛に対してはカルバマゼピンが有効であ
った。
【症例 2】65 歳女性、上顎左側前歯部の疼痛を为訴に
2008 年 1 月に来院した。2007 年 6 月に 22 の歯根端
切除術を行った後より出現した疼痛で、消炎鎮痛剤は
奏功しなかった。22・23・24 の打診痛のほか、歯肉
に持続性の疼痛、圧痛、Allodynia を認めた。以上よ
り持続性神経障害性疼痛と診断した。三環系抗うつ薬
(TCA)を投与により症状が改善した。同年 3 月より
発作痛を認めるようになった。しかし、2 か月経って
も変化なく、ブラッシングや食事開始時に誘発される
との訴えにより、三叉神経痛(第Ⅱ枝)の併発と診断
した。持続性疼痛に対し TCA が発作性疼痛に対しカ
ルバマゼピンが有効であった。
【考察】2 症例とも、発作性疼痛はカルバマゼピンが
奏効し寛解期が得られたが、再燃も認められた。従っ
て、トリガーゾーンは持続性神経障害性疼痛と同領域
であるが、それぞれは独立した病態であると考えられ
た。
症例の概要:患者は63歳、男性。数カ月前より食事
中に左耳前部の激痛を自覚し、近医より顎関節症疑い
にて当院口腔外科を紹介受診。器質的な問題がなく、
当科受診となった。初診時、自発痛はなく、疼痛は食
事中に限局し、会話など顎運動にて誘発されることは
なかった。既往歴に高血圧、糖尿病があり、生活歴と
して1日40本の喫煙があった。食事以外に痛みが出
現しないことから、舌咽神経痛を疑い、カルバマゼピ
ン の 内 服 を 開 始 し た 。 疼 痛 時 の visual analog
scale(VAS)は 100 であった。再診時、疼痛は軽減した
が、特定の食品(みそ汁、コーヒー、柑橘系)に対し
ては激痛が続き、VAS は 50~60 で推移した。
「食後、
唾液が溢れるように出てくる」という訴えがあり、口
腔外科にて精査を行ったが、異常は認められず、アミ
トリプチリンの内服を開始した。食事の一口目のみに
激痛があり、以後、痛みが軽減し、発汗異常がないこ
とから、First bite syndrome(FBS)と診断した。治療
法として、
星状神経節ブロックの説明を行ったところ、
高血圧症と糖尿病のコントロール不良が発覚し、内科
対診を依頼した。疼痛は糖尿病の改善とともに著しく
軽減し、VAS は 5~10 まで低下した。以後、激痛は再
発していない。
考察:FBS は耳下腺部に痛みを生じるもので、その痛
みは食事の一口目が強く、食事を進めるに従い低下す
る。耳下腺手術の既往がないことから、突発性の FBS
と考えられた。糖尿病の改善にて疼痛が消失したこと
から、原因は糖尿病性末梢神経障害であると考えられ
た。口腔以外の感覚・運動神経障害が認められないこ
とから、疼痛は自律神経障害による唾液分泌障害であ
ることが示唆された。
結語:今回、糖尿病性末梢神経障害が原因と考えられ
る、突発性の FBS を経験した。疼痛はカルバマゼピ
ンの内服により軽減され、糖尿病の改善とともに消失
した。
日本歯科麻酔学会の一般演題抄録は収載されていません
一般演題
9-O3-12
9-P3-05
痛みの診断にコーンビーム CT が有用であった外傷に
よるフェネストレーションの 1 症例
当科におけるプレガバリンの使用状況
半田 俊 1) 福田謙一 1) 一戸達也 1)2) 金子 譲 2)
土井 充 石井裕明 大植香菜 福島怜子
西中村亮 宮原岳史 向井明里 吉田啓太
清水慶隆 入舩正浩
広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻
病態制御医科学講座(歯科麻酔学)
フェネストレーションは、歯槽骨壁の欠損による歯根
尖部歯槽骨の開窓をいう。今回、外傷歯のフェネストレ
ーションの1症例を経験したので報告する。
症例は 44 歳、女性。自転車で転倒し中顔面から下顔面
を強打した。受傷直後は下口唇裂傷に対する縫合処置の
みが行われた。受傷 3 週間後、上顎前歯部の痛みが持続
するため近医を受診したところ、両側上顎中切歯、右側
上顎側切歯の歯髄壊死を認め根管治療を開始した。しか
し、根管内は無菌化されても打診痛が残存し、咬合調整、
ナイトガード、T-Fix による患歯固定によっても痛みが寛
解しないため、根管治療開始より 5 カ月経過した時点で
当科を紹介受診した。
現症として、咬合痛、打診痛を認めるが安静時は違和
感程度で自発痛はなかった。側頭筋、咬筋、僧帽筋など
のトリガーポイントで圧痛を認め、もともと緊張型頭痛
を有していたが、上顎前歯部の症状は筋筋膜性疼痛の特
徴ではなかった。また、電気刺激識別閾値なども正常で
hypoesthesia なども認めず、神経障害性疼痛も否定的で
あった。そこで、コーンビーム CT 撮影を行ったところ、
両側上顎中切歯の唇側歯槽骨の欠損が認められフェネス
トレーションの状態になっていることが判明し、これが
打診痛・咬合痛の原因となっていると考えられた。
治療として抜歯を考慮したが、経済的な問題で前装ブ
リッジは望まず、審美的な問題で部分床義歯も希望され
なかったため、根管充填後、口蓋側はレジン充填し、T-Fix
の状態でなるべく前歯部で硬いものを咬合しないように
して経過観察を行っている。また、原因が判明したこと
で、患者の疼痛に対する不安は解消された。
従来の口内法 X 線写真などの診査法では、フェネストレ
ーションの根露出状態を正確に把握することは困難であ
る。診断には状態を 3 次元に構築できるコーンビーム CT
が有用であることが示唆された。
1) 東京歯科大学水道橋病院口腔健康臨床科学講座
歯科麻酔科口腔顔面痛みセンター
2) 東京歯科大学歯科麻酔学講座
【目的】プレガバリンは 2010 年 10 月に末梢性神経障
害性疼痛に対する適応が承認され、様々な難治性の痛
みに対する使用薬剤の選択肢のひとつとなり、痛みを
コントロールできる患者も増加してくるであろう。当
院においても 2010 年 10 月より使用を始め、現在の疼
痛治療には欠かせない薬剤の一つとなってきている。
今回私たちは、当院で採用後 6 ヶ月間のプレガバリ
ンの使用状況について集計したので報告する。
【方法】2010 年 10 月から 2011 年 3 月までに、東京
歯科大学水道橋病院口腔顔面痛みセンターへ来院した
患者から、プレガバリンの投薬を行った患者を診療録
から抽出し対象患者とした。
対象患者は、
疾患の分類、
効果、副作用について検討した。
【結果】対象期間にプレガバリンの投薬をうけた患者
は 65 名であった。
患者の疾病分類は、咀嚼筋の筋筋膜痛は 26 名と最
も多く、次いで神経障害性疼痛(抜歯や嚢胞摘出等の
口腔外科手術、抜髄、歯周外科など)は 25 名、舌痛
は 6 名、
三叉神経痛は 3 名、
帯状疱疹後神経痛は 1 名、
その他 4 名であった。効果は、著効が 16 名、有効が
17名、
やや有効が7名と40名が症状の軽減を認めた。
無効は 19 名、副作用が強く内服を継続できなかった
患者やプレガバリン投薬後来院しなかったため効果判
定出来なかった患者は 6 名いた。副作用を訴えた患者
は 26 名と、40%の患者に副作用が出現した。しかし
一時的なものも多く、内服を継続できなかった患者は
2 名であった。
訴えのあった副作用は、
めまい 14 症例、
眠気 6 症例、
ふらつき 4 症例、
体重増加が 3 例あった。
【考察】今回私たちの結果では、疾病は違えども約
62%が痛みを減尐させ、服用を続ける事が出来ないほ
どの副作用を訴えた患者は 3.1%であり、
鎮痛薬として
の有用性、安全性ともに有効な薬剤であると考えられ
た。しかし、副作用の中には既往疾患の糖尿病が増悪
した患者おり、慎重に投与しなければならないと再確
認した。
日本歯科麻酔学会の一般演題抄録は収載されていません
一般演題
9-P3-06
9-P3-10
慢性根尖性歯周炎に起因した口腔顔面領域における疼
痛異常の神経機構
咬合調整が有効であった咬合違和感2例
野田隆夫 1) 齋藤幸彦 2)
清水康平 1)2)
1) 日本大学歯学部保存学教室歯内療法学講座
2) 日本大学歯学部総合歯学研究所
高度先端医療研究部門
【目的】本研究では、慢性根尖性歯周炎発症時におけ
る顎顔面組織の侵害刺激に対する疼痛変化を検索する
ことにより、異所性疼痛異常の発現機構の一端を解明
し、異所性疼痛発症の中枢処理機構について総合的に
明らかにすることを目的とした。
【材料および方法】SD 系雄性ラットを麻酔した後,
右側上顎第一臼歯歯髄腔に CFA を浸漬したデンタル
ペーパーポイントを刺入し仮封を行った。同様に
saline を用いた群をコントロールとした。その後、von
Frey filament にて同歯相当部の顔面領域における逃
避閾値の変化を経時的に検索した。また、同部位を動
物実験用CTにて断層撮影を行い、ポイント刺入後 6
週で根尖部の骨欠損の大きさがピークに達しているこ
とが確認できた。そこで、再度ラットを麻酔し,化学
的刺激として 3mM カプサイシン 100μl を CFA ポイ
ントの刺入を行った歯髄と同側の咬筋に投与し、同側
顎二腹筋前腹から筋放電量を記録し、顎反射が亢進し
ているかどうかを判定した。
【結果】
逃避閾値は投与後 1 日から 3 日において、
CFA
群にて有意な低下を示していたが、7 日目においては
両群ともほぼ同程度の値まで回復した。また、断層撮
影像から根尖部における骨欠損の拡大は CFA 投与後
6 週付近でピークに達していることが確認された。同
側咬筋へのカプサイシン投与により反射性に誘発され
る顎二腹筋活動は、CFA 群において有意に大きい値を
示していた。
【考察および結論】
ラット臼歯 CFA 投与によって歯髄炎から根尖性歯周
炎が誘導される過程で、CFA 投与後 1 日から 3 日にお
いて顔面領域に異所性の mechanical allodynia が発
症した可能性があると考えられる。一方、同側 CFA
ポイント刺入後 6 週間では、根尖性歯周炎が発症する
ことにより、顔面領域に異所性の hyperalgesia が引き
起こされた可能性があると考えられる。
1)野田矯正歯科クリニック
2)タワーサイド歯科室
【目的】咬合性外傷は、歯周組織の損傷である。この
点に関連して、演者らは 14 回大会において、咬合性
外傷由来の口内炎を、15 回大会において、咬合調整が
有効であった口腔顔面痛2例を報告した。
さらに今回、
咬合違和感を訴え、同時に、随意的グラインディング
により歯冠の頬側変位を呈する症例を経験した。つま
り、咬合性外傷が疑われたので、咬合調整を行い、歯
冠頬側変位を消失させて、咬合違和感を経過観察した
ので報告する。
【症例概要】①17 歳女子。食事の際、左側臼歯に咬合
違和感(咬合痛)が発生した。口腔衛生状態は良好、
齲歯は認められなかった。症状は、咀嚼時の鋭利痛
(2/10:VAS)であった。触診で、グラインディングに
よる左側上顎第二大臼歯歯冠の頬側変位を認めた。変
位は、当該歯の頬側咬頭内斜面の咬合接触によるもの
で、咬合調整を行ったところ、症状は消失した。 ②
22 歳女性。他院で矯正治療中、金属アレルギーのため
装置の撤去を勧められた。
しかし、
咬合違和感があり、
継続治療を希望し来院。症状は、咬合接触時の鈍痛
(1/10:VAS)、疼痛部位は特定できないが、食物を噛
み切れないことであった。触診で、グラインディング
による両側上顎第二大臼歯歯冠の頬側変位を認めた。
口腔衛生状態良好、当該歯に歯周ポケットは認めない
が、易出血性であった。また、前歯部に開咬を認め、
矯正治療を4ヶ月間継続した。変位は、当該歯の機能
咬頭外斜面の咬合接触によるもので、咬合調整を行っ
たところ、症状は消失した。
【まとめ】上顎臼歯は、咬合接触時、口蓋側変位する
ことが報告されている。一方、グラインディングによ
り上顎臼歯歯冠が頬側変位する場合、当該歯に咬合力
が集中する可能性があり、咬合性外傷が発生すること
は否めない。これに対して、咬合調整により歯冠の頬
側変位を除去したところ、咬合違和感が消失した。こ
れらのことより、咬合違和感は、咬合性外傷由来であ
ることが示唆された。
日本歯科麻酔学会の一般演題抄録は収載されていません
一般演題
9-P3-11
9-P3-12
保存療法にて改善した非定型歯痛と思われる2症例に
ついて
咬筋痛の自覚強度と眼窩前頭皮質の活動性
成田紀之 1,)5) 6) 神谷和伸 1)5) 下坂典立 2)5) 6)
小見山道 1)6) 大久保昌和 1)6) 丹羽秀夫 4)6)
牧山康秀 4)5) 平山晃康 3)5)6)
島田 淳
医療法人社団グリーンデンタルクリニック
1) 日本大学松戸歯学部付属病院顎関節・咬合科
【目的】歯科治療後より生じた、客観的所見のない自
発痛を訴える患者に対して、理学療法、セルフケアな
どの保存療法を試みて症状の軽減が見られた2症例か
ら、保存療法の有用性について検討を行った。
【症例】症例は、他院にて診断がつかなかった前歯部
の持続性疼痛を訴え来院した患者2名である。
症例1:42歳女性
为訴:下の前歯がジンジン痛む。
現病歴:1年前に PMTC を行った直後より下顎
前歯部の痛みが生じ、常に気になる。前医では異常な
しと言われる。最近痛みが強くなってくるとともに、
咬み合わせが合わなくなってきた。
現症:下顎左右中切歯に自発痛、咬頭嵌合位にて
上顎中切歯と接触。咬耗あり。打診あり。生活歯。カ
リエスなし。筋の触診による圧痛、関連痛なし。顎関
節症状、頭頸部痛なし。
症例2:52歳女性
为訴:上の前歯が常に痛い。
現病歴:2年前、矯正治療終了後より上顎右側側
切歯に自発痛。開業医、大学病院などで診てもらうが
異常なしと言われる。
現症:生活歯、特にカリエス等問題なし。根尖部
付近に自発痛。咬頭嵌合位、偏心位にて接触。打診あ
り。顎関節症の既往あるが、現在は筋の圧痛、関連痛
なし。
【結果】
症例1,2ともに、日中の TCH(Tooth Contacting
Habit)による持続的な咬合刺激からくる歯根膜炎が考
えられたため、
TCH の是正などのセルフケアを指導。
また TCH などの理由により咬合位の変化が考えられ
たため、顎関節マニピュレーションを行う。これによ
り咬頭嵌合位で患歯が接触しづらくなる。
両症例とも、
マニピュレーション直後より症状軽減。現在も、たま
に症状出現するが、自己牽引およびセルフケアにて自
己管理できており、症状改善に保存療法が有効であっ
たと考えられた。
2) 日本大学松戸歯学部付属病院歯科麻酔科
3) 日本大学松戸歯学部付属病院脳神経外科
4) 日本大学松戸歯学部付属病院頭頸部外科
5) 日本大学松戸歯学部付属病院顎脳機能センター神経歯科外来
6) 日本大学松戸歯学部付属病院顎脳機能センター口・顔・頭の痛み外来
【目的】これまで疼痛発現時の前頭前皮質の活動性は痛みの強度に
応じた変化を示さず,情動的関与と考えられてきた. 近年,Oshiro
らは前頭前皮質が痛みの評価にかかわる構成区画と報告している(J
Neurosci. 2009).そこで,本研究は実験的な咬筋痛の誘発による前
頭前皮質の活動性と痛み自覚強度との対応をもとに,関連する前頭
前皮質の機能的意義について検討を行なった.
【方法】6 名被験者には,片側咬筋に等張性食塩水(0.9 % NaCl)
あるいは高張性食塩水(5 % NaCl)を 0.5ml 注入して,それぞれに
対応した前頭前皮質の活動を f-NIRS(ETG-100, HITACHI, Co)を
用いて計測した.そのとき,各被験者には,注射後にもっとも疼痛
を自覚したとき(最大時)
,痛みが半分になったとき(半減時)
,痛
くなくなったとき(消失時)のそれぞれで人さし指を挙げてもらっ
た.また,実験終了時に疼痛の自覚強度については VAS (100 mm)
を用いて測定した.
【結果】1)疼痛自覚強度 VAS は,等張性食塩水に比べて,高張性
食塩水の咬筋注入によって有意に上昇した.2)等張性食塩水なら
びに高張性食塩水の咬筋注入により, [Hb-Oxy]の上昇を両側の眼
窩前頭皮質に認めた.3)等張性食塩水と高張性食塩水の咬筋注入
による最大疼痛自覚時の眼窩前頭皮質の[Hb-Oxy]には,有意な差異
は示されなかった.4)等張性食塩水ならびに高張性食塩水の咬筋
注入よって自覚される疼痛の最大時,半減時,消失時,それぞれで
示される眼窩前頭皮質の[Hb-Oxy]において,疼痛強度に応じた良好
な[Hb-Oxy]の変化を認め,とくに最大の疼痛自覚時と疼痛消失時と
の[Hb-Oxy]の比較において有意な差異が示された.
【結論】眼窩前頭皮質の活動性は,咬筋への刺激強度に応じて差異
を示さないものの,疼痛の自覚強度とは良好に対応していたことか
ら,眼窩前頭皮質は情動的かつ識別的な痛みの認知にかかわるもの
と推察された.
日本歯科麻酔学会の一般演題抄録は収載されていません
一般演題
9-P4-05
9-P4-06
神経障害性疼痛モデルにおける IL-17 の関与
慢性疼痛による情動変化の統合的理解:神経障害性疼
痛による扁桃体領域の機能変化
野間 昇 1) Eli Eliav2) 今村佳樹 1)
1) 日本大学歯学部口腔診断学講座
2) University of Medicine&Dentistry of New
Jersey, Department of Diagnostic science
【目的】インターロイキン(IL)‐17 は宿为防御と炎症性疾患
西須大徳 1)2) 堀内 浩 1) 成田 年 1) 佐藤 仁 2)
村岡 渡 2)3) 中川種昭 2) 和嶋浩一 2)
1) 星薬科大学薬理学教室
2) 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
3) 日野市立病院歯科口腔外科
において重要な役割を果たし、関節性リウマチ、多発性硬化症、
炎症性大腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、気管支喘息など
の自己免疫疾患に関与している。最近、IL -17 が神経障害性疼
痛モデル(chronic constriction injury モデル及び partial
ligation of the sciatic nerve モデル)においても免疫細胞浸
潤調節に関与していると報告された。そこで今回我々は、さま
ざまな神経損傷モデルラット4種類 chronic constriction
injury(CCI モデル)
、partial tight ligation of the sciatic
nerve(PSL モデル)、complete transection of the nerve(CST
モデル)、a perineural inflammation (Neuritis モデル)を使用
し、それぞれのモデルにおいて疼痛行動学的実験を行った後、
IL-17を測定し神経障害性疼痛モデルにおけるIL-17の関与を調
査することを目的として研究を企画した。
【方法】行動学的実験;神経障害性疼痛モデル(坐骨神経)を
作製後、
機械的刺激および熱刺激においてCCI, PSL, Neuritis,
CST すべてのモデルラットに対してフォンフライフィラメント
(4g, 8g, 15g)、radiant heat source を用いて、ラット後ろ足
の疼痛逃避行動テスト(3 日、5 日、8 日)を行った。行動学的
実験後、ELISA 法を用いて神経損傷手術後 3 日目、8 日目で左側
坐骨神経を取り出し IL-17 レベルをそれぞれ測定した。
【結果】機械的アロデニア;CCI、Neuritis、PSL モデルにおい
て、すべてのフォンフライフィラメントに対して、baseline と
比較し有意に逃避行動は増加した。熱痛覚過敏;CCI、PSL モデ
ルにおいて、熱刺激に対する逃避行動は 3 日後、5 日後、8 日後
と経時的に増加傾向であった。CST モデルにおいては、機械刺激、
熱刺激に対して逃避行動はみられなかった。
【目的】一般的に、持続性の疼痛が情動に影響を及ぼ
すこと知られている。しかしながら、そのメカニズム
はほとんど分かっておらず、生じた情動変化を心因性
疼痛と診断されるケースが多い。そのため適切な疼痛
管理が行われないこととなる。神経障害性疼痛は
IASP によると「体性感覚系に対する損傷や疾患によ
って直接的に引き起こされる疼痛」と定義され、情動
への影響が尐なくないと考えられる。そこでわれわれ
は、神経障害性疼痛と情動の関与について、記憶・情
動・認知をつかさどる扁桃体に着目し、疼痛モデルマ
ウスにおける遺伝子発現変化を検討した。
【方法】坐骨神経結紮による神経障害性疼痛のモデル
マウスを作製し、結紮群と非結紮群の 2 群に分けた。
手術 1 週間後に摘出した脳の扁桃体領域での遺伝子発
現の変化を比較した。
【結果】PCR 法により測定したところ、いくつかのケ
モカイン遺伝子の変動を認めたため、さらに詳しい解
析を行った。
【考察】
慢性の疼痛と情動における関わりについては、
未知な点が多いことが現状である。今回われわれは神
経障害性疼痛モデルで、疼痛と情動の関わりについて
検討した。こうした研究により、今まで解明されてい
なかった謎の一端をひも解くきっかけとなり得ると考
えられる。それにより、臨床においての正しい診断・
治療法の確立へとつながっていくことが期待される。
【結論】すべての神経障害性疼痛モデルにおいて IL-17 レベル
は神経損傷後 8 日でピークに達した。このことから IL-17 は神
経障害性疼痛の遅い段階に関与していることが示された。また
CST モデルにおいても 8 日目で IL-17 が増加していたことから、
IL-17 は神経障害性疼痛よりも神経炎症により関与しているこ
とが推測された。
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一般演題
9-P4-10
9-P4-11
TRPV1 高発現時のカプサイシン刺激によるカスパー
ゼ 2 の活性化
三叉神経節神経細胞の侵害刺激に伴う非翻訳領域転写
産物の発現上昇の解析
佐藤 仁 1)2) 柴田 護 1) 清水利彦 1)) 西須大徳 2)
村岡 渡 2) 中川種昭 2) 和嶋浩一 2) 鈴木則宏 1)
大木絵美 1) 奥村雅代 2) 岡本 望 1) 金銅英二 1) 2)3)
1) 慶應義塾大学医学部神経内科学教室
2) 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
【目的】TRPV1 は感覚神経特異的に発現し,カプサ
イシン、プロトン,熱によって活性化される多刺激痛
み受容体である。三叉神経終末や三叉神経節にも豊富
に発現し、TMD、Burning Mouth Syndrome といっ
た慢性疼痛疾患では末梢組織の TRPV1 高発現が関与
する可能性が報告されている。我々は TRPV1 高発現
時にカプサイシン刺激を加えるとカスパーゼ依存性ア
ポトーシスが生ずることを既に報告している。このア
ポトーシス誘導の過程でいずれのカスパーゼが为要な
役割を果たしているかについては不明であり、本研究
では、カスパーゼ-2(C2)の関与の可能性につき解析を
行った。
【方法】PC12 細胞にて TRPV1 を安定発現する株化
細胞を樹立した。C2 は分子内切断のプロセシングに
よって活性化を受けることが知られている。このプロ
セシングを明確に調べるため、本研究では C2 の N 末
端側に HA エピトープを、C 末端側には V5 エピトー
プをそれぞれ付与した全長 C2 の発現ベクターを作成
し、上記細胞への形質転換を行った。カプサイシン投
与後、C2 のプロセシングを HA と V5 抗体を用いたウ
ェスタンブロットにて経時的に検討した。また、アポ
トーシスの検出には TUNEL 染色を用いた。
【結果】TRPV1 高発現細胞ではカプサイシン 100μ
M 投与 3 時間後、TUNEL 染色によってアポトーシス
の誘導が明らかになると共に C2 活性化を示すプロセ
シングの亢進が確認された。一方、TRPV1 低発現細
胞ではカプサイシン 100μM 投与 3 時間後、アポトー
シスの誘導は起こらず、C2 プロセシングも認められ
なかった。
【結論】TRPV1 高発現下にアゴニスト刺激を行う事
で急速に誘導されるアポトーシスにおいて、C2 の活
性化が関与する可能性を明らかにした。これは疼痛の
慢性化において三叉神経節ニューロンの C2 依存性ア
ポトーシスが関与する可能性を示す知見と考えられた。
1) 松本歯科大学大学院 顎口腔機能制御学講座
生体調節制御学
2) 松本歯科大学総合歯科医学研究所
顎口腔機能制御顎部門生体調節制御学ユニット
3) 松本歯科大学口腔解剖学第一講座
【目的】神経細胞は、外部刺激に応答してタンパク質
の発現量や修飾を変化させ、それにより神経伝達効率
等を変化させる。我々のマイクロアレイを用いた解析
では、顎顔面領域における炎症部位に与えた圧刺激に
よる機械的侵害刺激、もしくはカプサイシン注入によ
る C 線維刺激では、いずれも刺激後に非翻訳領域の配
列に相当する転写産物の発現量増加が多数確認された。
この発現上昇する非翻訳領域相当の転写産物について、
その役割を明らかにすることを目的とし実験を行なっ
た。
【方法】侵害刺激後の発現増加の経時的変動を調べる
ため、マイクロアレイにて増加が確認された非翻訳領
域相当の配列 46 種を抽出し GenBank のゲノム情報
より解析を行なった。さらに、これらを検出できるプ
ライマーを設計し発現の有無を確認した。
【結果】GenBank のゲノム情報により発現上昇をみ
た非翻訳領域転写産物の情報を詳細に調べると、今回
の解析対象である 46 種の配列は、特定遺伝子の転写
領域中のイントロンもしくは 5’3’の非翻訳領域に相
当する配列 24 種と、遺伝子をコードしていない遺伝
子間領域に相当する配列 22 種に分類された。遺伝子
間領域の配列については、1 番染色体と 6 番染色体に
それぞれ 1 か所、解析対象の配列が集中しているホッ
トスポットが存在した。
【考察およびまとめ】炎症や刺激による発現上昇する
非翻訳領域転写産物は各種刺激に応答し,三叉神経節
の神経細胞で発現していた。これら非翻訳領域転写産
物の発現変動は、炎症や刺激により、新規の選択的ス
プライシングが起こっている可能性、また microRNA
を含む低分子 non-codingRNA の活性化が起きている
可能性を示唆している。
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一般演題
9-P4-12
9-P5-01
実験的低強度噛みしめが疼痛感覚に及ぼす影響
日本大学松戸歯学部付属病院に新設された「神経歯科
外来」の診療状況
多田浩晃 1) 石橋賢治 1) 田中美保子 1) 鳥巣哲朗 2)
村田比呂司 1)
1) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
歯科補綴学分野
2) 長崎大学病院総合歯科
成田紀之 1)2)3) 神谷和伸 1)2) 下坂典立 2)3)6)
荻野暁義 2)4) 牧山康秀 3)5) 平山晃康 2)3)4)
1) 日本大学松戸歯学部付属病院顎関節・咬合科
2) 日本大学松戸歯学部付属病院顎脳機能センター神経歯科外来
3) 日本大学松戸歯学部付属病院顎脳機能センター口・顔・頭の痛み外来
【目的】近年、顎関節症の増悪因子の1つとして上下
歯列接触癖(Tooth Contacting Habit; TCH)が注目さ
れている。しかし現時点ではこれが顎機能や疼痛感受
性にどのような影響を及ぼしているのか十分にわかっ
ていない。本研究では軽い噛みしめの前後での咬筋に
おける疼痛感受性を比較し、軽い噛みしめによる疼痛
感覚への影響を検討した。
【方法】被験者はTMD症状のない健常成人 15 名
(男:女=8:7 平均年齢 23.7 歳)である。为咀嚼側の
咬筋に刺激電極を固定し、誘発電位検査装置
(Neuropack Four mini, 日本光電)を用いて電気刺激
を行った。刺激電極には同心円電極(ユニークメディカ
ル)を使用し、刺激頻度は 0.3Hz, 2Hz の 2 通りで 4 連
続刺激を行った。噛みしめ運動は 10%MVC で 5 分間
を 1 単位とし、1 分間隔で 3 単位行わせた。運動負荷
の比較として、同一被験者で別の日にガム咀嚼、運動
負荷なし(下顎安静位)の条件でも同様に測定を行っ
た。
運動負荷の前後で咬筋における痛みの強度を Visual
Analogue Scale (VAS)を用いて被験者に評価させた。
VAS 評価は①運動負荷前、②運動負荷直後、③運動負
荷終了時点から 30 分経過後の 3 回行った。
4 連続刺激
の第 4 刺激の VAS の値から第 1 刺激の VAS の値を引
いた差を求め、連続刺激による加算効果を比較した。
【結果・考察】刺激頻度 2Hz、電極 L(直径 16mm)
では、運動負荷前と比較して運動負荷後の 4 連続刺激
の VAS 増加量が減尐した。電極 S(直径 6mm)の場
合は噛みしめ運動とガム咀嚼では異なった傾向がみら
れた。
以上のことより、運動負荷が咬筋における疼痛感受
性に影響を及ぼすことが示唆された。
4) 日本大学松戸歯学部付属病院脳神経外科
5) 日本大学松戸歯学部付属病院頭頸部外科
6) 日本大学松戸歯学部付属病院歯科麻酔科
【目的】神経歯科学は,口腔顔面領域における感覚/運動機能にかか
わる神経機構の基礎的かつ臨床的解明を目的とする顎口腔系システ
ム神経科学と位置づけている.
これまで,本学付属病院の顎関節・咬合科ならびに顎脳機能センタ
ー口・顔・頭の痛み外来では年間に約 1200 名の来院患者がおり,
その 20%~30%には,舌痛症,非歯原性歯痛,神経因性疼痛,精神
疾患などの感覚障害,ならびに運動性の神経障害である口顎ジスト
ニアなどの不随意運動症が含まれる.
近年,口顎部の不随意運動症の来院患者数が目立って増えてきたこ
とから,医科診療部の脳神経外科と口腔神経の専門医員が併診する,
不随意運動症に対する集学的治療を目的とした専門外来「神経歯科
外来」を平成 23 年 4 月に顎脳機能センター内に新設した.
【方法】口顎ジストニアならびにオーラルディスキネジアの顎機能
病態の検査には筋電図,下顎運動ならびにビデオを用いている.ま
た,不随意運動症の薬剤治療ならびに Botox 治療による効果につい
ては,術前と術後の顎口腔機能データから比較検討を行なっている.
【結果】1)不随意運動症の検査である筋電図,下顎運動ならびに
ビデオデータには,Botox 注射あるいは運動療法による神経のリハ
ビリテーション効果と考えられる所見がえられている.2)舌突出
ジストニアの症例においては,とくにガムを口腔内に保持すること
によって,感覚トリック様の抑制効果を認め,舌の前方突出回数や
筋放電持続時間に有意な減尐が示された.3)閉口ジストニアにお
ける Botox 治療では,治療後に義歯装着したところ,長期に不随意
運動の再発のない症例を確認している.
【結論】日本大学松戸歯学部付属病院の顎脳機能センター内に新設
された神経歯科外来で展開されている,不随意運動症に対する歯科
と脳神経外科による集学医療は「顎口腔系の神経リハビリテーショ
ン治療」の確立に繋がるものと考えている.
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一般演題
9-P5-02
9-P5-03
大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科ペインクリニック
外来患者における心因性因子の検討
顎関節症の疼痛症状に影響を与える因子
―企業就労者を対象とした調査から―
吉田好紀 杉村光隆 瀧 邦高 河野彰代
大山口藍子 丹羽 均
西山 暁 1) 木野孔司 1) 杉崎正志 2)
1) 東京医科歯科大学歯学部附属病院顎関節治療部
2) 東京慈恵会医科大学歯科
大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座
【目的】ペインクリニック(PC)外来では症状の慢性化
に伴い心理的障害を有する患者が尐なくない。
そこで、
我々は当院 PC 外来患者の痛みを修飾する心因性因子
について調査した。
【対象と方法】2008 年 12 月より当院 PC 外来を受診
した口腔顔面痛患者 102 名(男性 17 名, 女性 85 名、
年齢 56±16.9 歳)を対象とした。初診時および治療
開始 3~6 カ月後に、VAS(Visual Analog Scale)値
にて痛みの程度、SDS(Self-rating Depression Scale)
にて抑うつ傾向、TMI(東邦 Medical Index)にて自律
神経・精神症状を評価した。3 カ月以上持続している
痛みを慢性疼痛とした。
【結果】疾患の内訳は外傷性神経障害性疼痛 29%、非
定型顔面痛 25%、三叉神経痛 16%、舌痛症 14%、三
叉神経感覚障害 11%、心因性疼痛 3%、顎関節症 2%
であった。疼痛発生から初診までの期間は 32.4±36.4
カ月であり、3 カ月未満が 18%、3 カ月以上が 82%を
占めた。初診時、発症から 3 カ月未満の患者の 45%が
抑うつ傾向を示したのに対し、3 カ月以上の患者では
73%に認められ有意に多かった(p=0.032)。また、発症
から 3 カ月未満の患者の 20%で自律神経失調傾向を
認めたのに対し、3 カ月以上の患者では自律神経失調
傾向が 16%、神経症傾向が 12%、これらを合併する
心身症傾向が 18%で何らかの心理的障害を有する患
者が有意に多かった(p=0.035)。なお、抑うつ傾向、自
律神経・精神症状ともに VAS 値との相関はみられず、
治療開始 3~6 カ月後に同様の調査を行った 33 名で
SDS、TMI、VAS 値ともに初診時と比較し有意な変化
はみられなかった。
【考察】当院 PC 外来患者の多くは、慢性化してから
受診していた。口腔顔面領域の慢性疼痛は経時的に心
因性因子を増悪させ、さらにそれが難治性疾患を成立
させる修飾因子にもなっていることが推察される。
【目的】顎関節症は関節雑音,痛み,運動制限を特徴
とする慢性疾患である.これらの症状のうち,痛みは
様々な口腔機能の障害を引き起こす要因となる.今回
は,企業就労者を対象に行った調査結果から,顎関節
症の痛みに影響を与える因子の検討を行った.
【方法】同一企業の就労者 2723 名に対し,質問票を
用いたアンケート調査を行った.質問票は社内健康診
断時に記入,回収を行った.質問票の内容は顎関節症
の機能時痛(Functional pain)に関する質問(2問)
と寄与因子関する質問(8問)から構成されている.
欠損値などを除去して残った 2203 名をランダムに2
群にわけ,探索的データ分析(因子分析)と検証的デ
ータ分析(構造方程式モデリング,P<0.05)を行い,
機能時痛に影響を与える因子の検討を行った.
【結果】寄与因子について探索的データ分析を行った
結果,
寄与因子に関する質問項目は2因子に分類され,
それぞれの因子を “Psychosocial factors”と
“Habitual behavioral factors”と名付けた.
この2つの因子に Functional pain を加えた3因子
を潜在変数として構造方程式モデリングを用いて分析
を行った結果,それぞれの潜在変数間に“Psychosocial
factors→Habitual behavioral factors→Functional
pain”という関係性を示すモデルが得られた.GFI=
0.993,AGFI=0.987,RMSEA=0.020 であり,得ら
れたモデルの適合は十分許容できるものであった.
【考察】顎関節症の機能時痛に直接影響を与えるのは
日中の習癖行動などの行動要因であり,ストレスなど
の心理社会的要因はこの行動要因を強める背景要因と
なっている可能性が示唆された.
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一般演題
9-P5-04
9-P5-05
喫煙と顎関節痛との関連について
感染根管治療時の術後疼痛発症頻度および非歯原性疼
痛との関連についての検討
宮城摩里子 川上哲司 岡澤信之 井上智裕
大河内則昌 桐田忠昭
永吉雅人 1) 鷲尾絢子 1) 市丸美希 1) 平田志津 1)
布巻昌仁 2) 椎葉俊司 2) 北村知昭 1)
奈良県立医科大学口腔外科学講座
【目的】喫煙は、関節リウマチの環境危険因子である
ことが示唆されており、膝変形性関節症の軟骨破壊リ
スクを高め、
疼痛を増強させることが報告されている。
今回われわれは、喫煙と顎関節痛との関連について臨
床的検討を行なったのでその概要を報告する。
【対象・方法】対象は、奈良県立医科大学口腔外科を
受診し、顎関節症と診断された 1000 例で、平均年齢
は 43.1 歳であった。内訳は、喫煙者 146 例(14.6%)
で平均年齢 38.7 歳、非喫煙者 854 例(85.4%)で平均年
齢 43.9 歳であった。方法は、初診時に最大開口域の測
定および疼痛 VAS を含むアンケートによる自覚症状
の定量的評価を行なった。アンケート調査項目は、顎
疼痛点数、顎機能障害点数、および日常生活支障度で
ある。また、喫煙者には、ブリンクマン指数を算出し
た。
【結果】疼痛 VASにおいて、喫煙者と非喫煙者間で
有意差が認められた(p<0.05)
。また、アンケートに
よる自覚症状の定量的評価では、顎疼痛点数および顎
機能障害点数において非喫煙者より喫煙者の方が点数
が高く、有意差が認められた(p<0.05)
。喫煙者にお
けるブリンクマン指数は、318.7 であり、ブリンクマ
ン指数と顎疼痛点数間で有意差を認めた(p<0.05)
。
しかし、指数依存的には疼痛は増強しなかった。
【結論】今回、喫煙による顎関節痛と疼痛 VAS およ
びアンケートの顎疼痛点数について臨床的検討を行な
った結果、喫煙は、顎関節痛を増強させる環境危険因
子の一つではないかと考えられた。
1) 九州歯科大学口腔機能科学専攻口腔治療学講座
齲蝕歯髄疾患制御学分野
2) 九州歯科大学生体機能科学専攻生体機能制御学
講座歯科侵襲制御学分野
【目的】一般的に,歯内治療時の根管形成は根尖狭窄部
直前で留めるべきとされているが,感染根管処置におい
ては根尖孔外の感染除去に根尖狭窄部拡大が必要という
考え方もある.しかしながら,根尖狭窄部拡大は術後疼
痛等の不要な疼痛を誘発することが懸念される.一方,
歯の痛みの中に歯に起因しない非歯原性歯痛が存在する
ことが専門医の間でも認識されつつある.長期間根管治
療を行っても症状が改善しない場合,非歯原性疼痛に対
処することで疼痛が軽減・改善することも報告されてい
る.
今回,感染根管処置における根尖狭窄部拡大の有無に
よる術後疼痛の出現頻度とともに,対象症例中にみられ
た非歯原性疼痛併発症例について検討した.
【研究方法】本学附属病院保存治療科を受診し,感染根
管処置を必要とし同意の得られた患者を根尖狭窄部を保
存する「従来法群」と根尖狭窄部を拡大する「意図的拡
大群」に無作為に分け根管治療を行った.根尖狭窄部の
処置法以外は我々が作成した歯内治療用クリティカルパ
スに基づいて処置した.来院ごとに为観的・客観的症状
と非歯原性疼痛治療併用の有無等について記録し,収集
した臨床データから疼痛症状の変化を解析した.
【結果】根尖孔狭窄部の意図的拡大の有無によって術後
疼痛の発生頻度に差は認められなかった.一方,術前の
疼痛が消退するまでの来院回数は「意図的拡大群」のほ
うが多い傾向が認められた.また,全35症例中2症例
は非歯原性疼痛治療を併用した症例であり,他の症例と
比較して来院回数が増加する傾向が認められた.
【考察および結論】以上の結果は,根尖狭窄部の拡大の
みが術後疼痛を誘発する要因ではないことを示している.
今後,症例数を増やしながら解析を続けることで術後疼
痛発症要因を明らかにするとともに,歯原性疼痛と非歯
原性疼痛の鑑別診断に反映していきたいと考えている.
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一般演題
9-P5-06
9-P5-07
三環系抗うつ薬が奏効した、中枢性感作による治療抵
抗性顎関節症2例
口腔顔面領域における神経障害性疼痛に対するプレガ
バリンの有効性の臨床的検討
井上裕梨 笠崎真悟 西須大徳 佐藤 仁
村岡 渡 中川種昭 和嶋浩一
村岡 渡 1)2) 西須大徳 2) 佐藤 仁 2) 大泰司正嗣 1)
中川種昭 2) 和嶋浩一 2)
慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
1) 日野市立病院歯科口腔外科
2) 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
顎関節症の関節痛、筋痛の多くは定型的治療により改
善する。しかし中枢性感作が生じている場合には治療
抵抗性を示すことがある。今回、定型的な治療に抵抗
性を示し、中枢性感作が生じていると判断して三環系
抗うつ薬を投与し、
症状改善を得た 2 症例を報告する。
症例1;40 歳女性。为訴;右側顎関節痛。3 年前から
右側顎関節雑音を自覚。以前からあった下顎運動時痛
が悪化したため当科を受診。
初診時、
開口障害
(20mm)
、
両側咬筋圧痛、右側顎関節圧痛、運動時痛及びマニピ
ュレーションによる関節痛誘発を認めた。右側顎関節
包炎/滑膜炎と診断し負荷軽減指導、ジクロフェナクナ
トリウム処方、歯ぎしりに対してスプリント療法を行
った。開口量はやや改善(30mm)したが関節痛は改
善しなかった。そこで顎関節腔内洗浄とステロイド注
入を行ったが症状に変化はなく、中枢性感作が生じて
いると判断して三環系抗うつ薬(ノルトリプチリン)
を処方した。その 1 週間後から関節痛は徐々に改善し
はじめ、処方から 4 ヶ月で消失し、開口量も改善した
(40mm)
。
症例 2;27 歳女性。为訴;頭痛と噛み合わせの関連性
の精査目的で紹介受診。5 年前から月 15 日以上の片頭
痛発作があり、3 年前から他院神経内科で予防療法(テ
ラナス、デパケン、ガバペンチン等)を受けていたが
改善しなかった。咬合との関連は認められず、体動で
増悪する中程度の拍動痛は慢性片頭痛と診断した。ま
た咬筋・後頸筋群に強い筋筋膜痛があり、関連痛とし
て頭重感、
鈍痛が誘発されることから慢性緊張型頭痛、
筋性顎関節症の併発と診断した。筋緊張緩和のための
認知行動療法を指導すると共に、二つの頭痛の慢性化
には中枢性感作が関与していると考え紹介元に治療を
依頼した。紹介元から当院神経内科に紹介があり予防
療法として三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)を処方
され、その1ヶ月後から筋筋膜痛および頭痛が改善し
現在加療継続中である。
【目的】口腔顔面領域における神経障害性疼痛に対す
るプレガバリンの有効性を臨床的に検討する。
【方法】対象は、日野市立病院歯科口腔外科または慶
應義塾大学病院歯科・口腔外科の顎関節疾患・口腔顔
面痛外来を口腔顔面領域に痛みを訴え受診した患者の
うち、神経障害性疼痛と診断し、プレガバリンによる
薬物療法を実施した 27 名(平均年齢:61.5±13.3 歳、
女性 22 名、男性 5 名)とした。対象となった患者群
に対して、为訴、臨床診断名、プレガバリンの副作用、
有効性、使用量などについて、レトロスペクティブに
調査し臨床的検討をおこなった。
【結果】訴える痛みの为な部位は、歯肉 8 名、下口唇
7 名、顔面 4 名、下顎 3 名(のべ人数)であった。臨
床診断名は、外傷性神経障害性疼痛 17 名、三叉神経
痛 6 名、その他 3 名であった。起因と考えられた外傷
の内訳は、抜歯 7 名、顎骨嚢胞/腫瘍切除術 4 名、イ
ンプラント手術 2 名、脳外科手術 2 名、その他であっ
た。プレガバリンの内服によって症状に著明改善また
はやや改善を認めたのは 27 名のうち 18 名(66.7%)
であった。内服により生じた为な副作用は、傾眠、浮
動性めまい、
浮腫で15名
(55.6%)
に生じ、
7名
(25.9%)
が内服を中断した。内服が継続可能であった 20 名に
おいては、18 名(90%)が症状の改善を認めた。症状
に改善を認めた 18 名のプレガバリンの平均使用用量
は、197±158mg であった。
【考察】プレガバリンは、口腔顔面領域の神経障害性
疼痛においても有効性が高いことが示唆された。ただ
し使用にあたっては副作用に留意しなければならない
と考えられた。
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一般演題
9-P5-08
9-P5-09
QST を用いた侵害刺激と認知される痛みの関連性
-健常成人について-
加速度脈波計を用いた脈拍変動計測による自律神経機
能評価の試み
福田修二 石垣尚一 宮内鉄平 小野清美 高岡亮太
松下 登 宇野浩一郎 矢谷博文
石橋賢治 1) 鳥巣哲朗 2) 多田浩晃 1) 田中美保子 1)
村田比呂司 1)
大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座
(歯科補綴学第一教室)
1) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
歯科補綴学分野
2) 長崎大学病院総合歯科
【目的】定量的感覚検査法(QST)による客観的な疼
痛評価は臨床的に有用であるとされているが,具体的
な測定方法について言及した報告は尐ない。また,閾
値のみではなく,認知される痛みの程度の評価も重要
である。そこで,再現性の高い閾値測定プロトコール
ならびに侵害刺激と認知される痛みの関連性を明らか
にすることを目的とし,健常成人を被験者として検討
を行った。
【方法】被験者として健常成人 39 名(男性 28 名,女
性 11 名,平均年齢 26.2 歳)を選択した。疼痛閾値の
測定にはコンピュータ制御定量的感覚検査装置
(PATHWAY,Medoc 社)を用いた。測定部位は右側
下顎神経領域および前腕部皮膚表面とした。最初に,
毎秒 1.0℃の温度上昇刺激による疼痛閾値測定を 6 回
連続して行い,何回目以降の測定値の再現性が高くな
るのかを級内相関係数(ICC)により検討した。次に,
被験者ごとに測定された疼痛閾値±1.0℃の範囲で,
0.5℃間隔の 5 段階の温度刺激をランダムに 10 回与え
(刺激時間 5 秒,刺激間隔 20 秒)
,各々の温度刺激に
対する認知された痛みの強さを 100 mm スケールの
Visual Analogue Scale(VAS)を用いて記録した。刺
激温度と VAS 値の関連性を Pearson の相関係数によ
り検討した。
【結果】6 回の定量的感覚検査により得られた疼痛閾
値の ICC は,部位にかかわらず 0.51 であったが,2
回目以降では 0.62 であった。また,侵害刺激と認知さ
れる痛みの間には,女性の下顎神経領域を除き,相関
係数 r=0.7 以上の強い正の相関を認めた。
【結論】
温度刺激による疼痛閾値の測定は複数回行い,
2 回目以降の値を採用すべきであること,また,侵害
刺激と認知される痛みの相関関係を調べることにより,
慢性痛患者における疼痛認知の歪みを評価しうる可能
性があることが示唆された。
【目的】精神的ストレスを評価する指標として自律神
経活動が使用されている。自律神経活動の測定には唾
液アミラーゼ濃度、心電図などによる計測が報告され
ているが、今回我々は客観的かつ簡便に自律神経活動
を計測できる装置として加速度脈波計に注目した。手
指および口腔内への刺激に対し加速度脈波がどのよう
に変化するか検討し、自律神経活動への影響の評価を
試みた。
【方法】成人男性 5 名(平均年齢 32.4 歳)を被験者
とした。自律神経活動の評価には指尖加速度脈波計
Artett C(ユメディカ製)を用い、呼吸の状態も同時
に確認した。実験は自律神経活動の日内変動による影
響を考慮し、平日の午後 1 時から午後 9 時の間に行っ
た。刺激条件は、1. CAP: capsaicin 溶液での洗口
(7ppm, 10ml, 30 秒間)の後に空の水槽へ右手を浸漬、
2. CPT: 水で洗口の後に cold pressor test(4℃, 1分
間)とした。コントロールには水での洗口、空の水槽へ
の浸漬を用いた。被験者を 5 分間安静に置いた後、基
点、刺激時、刺激直後、刺激後 10 分後での加速度脈
波計の値でCAP またはCPT とコントロールとを比較
した。加速度脈波の分析項目には LF/HF を用いた。
【結果】加速度脈波の LF/HF は capsaicin や cold
pressor の刺激により変動を受けた。CAP では洗口時
に、CPT では冷水への浸漬時にコントロールと比較し
て LF/HF の増加がみられた。加速度脈波計を用いて
口腔内の刺激や cold pressor 刺激による自律神経活動
への影響が評価できる可能性が示唆された。
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一般演題
9-P5-10
9-P5-11
Burning mouth syndrome 患者における熱刺激時の
脳活動-functional-MRI による研究-
篠崎貴弘 原 和彦 加茂博士 加藤由美子
小池一喜 椎木直人 小林あずさ 清本聖文
阿部 郷 今村佳樹
抜歯を余儀なくされた非定型歯痛の一例
日本大学歯学部口腔診断学講座
背景:Burning mouth syndrome(以下 BMS)はいまだ
病因の不明な頭頸部に発症する疾患のひとつである。
金銅英二 1) 山下秀一郎 2) 丹羽 萌 3) 澁谷 徹 3)
前島信也 4) 窪田裕一 5)
1)
2)
3)
4)
5)
松本歯科大学口腔解剖学第一講座
東京歯科大学口腔健康臨床科学講座
松本歯科大学歯科麻酔学講座
松本歯科大学内科学講座
窪田歯科医院
BMS 患者は舌に灼熱様疼痛を訴えるが、食事中には疼痛
は消失することが特徴である。本研究では BMS 患者群
【緒言】非定型歯痛は歯に器質的障害がないにも関わら
と健常者に熱刺激を与え、その際の脳活動の違いを観察
ず疼痛を発症し、疼痛部位が移動する特徴を有する。患
し、BMS の病態における脳活動と口腔の感覚の相関を調
者は多くの医療機関を転々とし、症状の改善をみないま
べた。
ま慢性化へと移行する。今回、抜歯を余儀なくされた典
方法:対象は18名の女性 BMS 患者と18名の心身共
型的な非定型歯痛の問題点を考察し報告する。
【症例】38
に健康な女性とした。被験者には右側手掌と右側下口唇
歳、女性【現病歴】6 年前に上顎左側第一および第二大
に熱刺激を与えた。コンピューター制御された10㎜角
臼歯に自発痛出現。某歯科医院にて上顎洞炎の診断の下、
のペルチェ素子を用いて、ベースラインとして30度、
4 日間抗生剤の点滴を受けた。
症状改善については不明。
そして加温時として40度と49度の温熱刺激を加えた。
以降、時々同部の疼痛が出現したが、歯磨きで自然消退。
これらの各時点において functional-MRI(以下f-MRI)
2009 年 2 月同部歯肉根尖部付近に自発痛が出現。根尖性
により脳活動を記録し、SPM により統計処理した。
歯周炎と診断され、抗生剤内服するも痛みは持続。某歯
結果:健常群手掌に刺激を与えたところ、運動野、前視
科医院にてスケーリングなど受けるも改善なし。2009 年
覚野、背側前頭野、島皮質、中側頭回、ウェルニッケ野、
5 月某小児歯科医院にて埋伏智歯の可能性を指摘され、
ブローカ野、下前頭回に賦活が見られた。一方健常群口
某病院歯科口腔外科と某大学医学部歯科口腔外科を紹介
唇では運動野に賦活が見られた。BMS 群手掌では、体性
受診。両施設から智歯の原因を否定され脳神経外科を紹
感覚野、運動野、前視覚野、ウェルニッケ野に賦活がみ
介、受診する。MRI など異常なし。三叉神経痛を疑われ
られ、口唇では体性感覚野、前運動野に賦活が見られた。
同科よりテグレトールとドグマチ―ルを投薬され内服(5
BMS 群と健常群の比較では、BMS 群で手掌では前運動
月-10 月)
。
症状は緩解したが生理が止まり婦人科受診。
野、前視覚野、前帯状皮質、側頭極に顕著に賦活が見ら
ドグマチール内服中止の指示。中止後、激しい頭痛が出
れ、ウェルニッケ野、視床、背側後帯状皮質では、減弱
現し内科受診。漢方薬内服。歯痛は改善せず。また、ペ
した。一方口唇では前運動野、体性感覚野、前視覚野、
インクリニックで SGB 施行受けるも改善なし。2009 年
上側頭回、内嗅皮質、紡錘状回、ウェルニッケ野、前頭
10 月某歯科医院受診、上顎左側第一大臼歯の抜歯と下顎
前皮質が BMS 群で優位に賦活した。しかし、健常群で
左側第一大臼歯の根管治療を受け、症状改善なく本学紹
は特に賦活した部位は認められなかった。
介となる。
【診断名】非定型歯痛【治療経過】3DXなど
結論:BMS 群の手掌に刺激を与えたところ、健常群に比
で精査。患歯髄床底に穿孔様の像を認め根管治療再開。
較して視床等に抑制された部位がみられ、脳の様々な部
根管治療で歯痛改善なし。抜歯となる。抜歯窩治癒後、
位に賦活がみられた。一方口唇では、手掌に比較してさ
上顎右側第一大臼歯の疼痛が出現。三環系抗鬱薬(アミ
らに多くの部位に脳賦活がみられた。手掌では脳賦活の
トリプチリン)内服となる。初回5mg から暫次増量し現
抑制された部位は見られなかった。これらの結果から、
在 50mgで維持。痛みは、ほぼ消失した。
【考察と結果】
BMS 患者は脳の疼痛抑制機能の不全が関与していると
痛みの長期化により「痛みを記憶」している可能性があ
推測される。
るので完全な症状消失には投薬以外のアプローチが必要
と示唆される。
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一般演題
9-P5-12
9-P6-01
ラット下歯槽神経切断による神経障害性疼痛に対する
GABA 介在ニューロンの関与
睡眠時ブラキシズム頻度と末梢セロトニントランスポ
ーターの機能との関連
岡田明子 1) 鈴木郁子 2) 今村佳樹 1) 岩田幸一 2)
三木春奈 1) 水口 一 1) Emilio S. Hara1)
十川千春 2) 大野充昭 1) 藤澤拓生 1) 前川賢治 1)
十川紀夫 2) 松香芳三 1) 北山滋雄 2) 窪木拓男 1)
1) 日本大学歯学部口腔診断学講座
2) 日本大学歯学部生理学教室
三叉神経の障害による神経障害性疼痛の臨床症状は多
岐にわたっており、その正しい診断は難しく、難治性
であることが多い。
最近、
ラット坐骨神経切断により、
脊髄における K+-Cl-外輸送 KCC2 の抑制が生じ、
GABA 様ニューロンの興奮が抑制性から興奮性の作
用を引き起こす報告がなされ注目されている。その結
果、足における神経障害性疼痛を引き起こすことが示
唆されている。よって本研究では、口腔顔面領域にお
ける神経障害性疼痛に GABA 様ニューロンの変化が
関与しているかを調べることにした。
本研究では、蛍光蛋白と GABA トランスポーターA
を共発現させた Venus A ラットを用いて、三叉神経第
3 枝を切断し、第 2 枝領域顔面のアロデニアや痛覚過
敏を生じさせた IANX ラットモデルを作製した。そし
て、三叉神経脊髄路核(Vc)における GABA 様ニューロ
ンの作用変化を調べるために、行動学的観察、蛍光 2
重免疫染色による GABA トランスポーターA の ERK
リン酸化発現、Vc ニューロンにおける細胞外電気記録
の変化を詳細に調べた。その結果、IANX ラットでは
切断 7 日、
21 日ともに三叉神経第 2 枝領域の機械刺激
に対する逃避反応閾値の有意な低下が見られた。
また、
切断 7 日後に Vc 切断側における GABA トランスポー
ターA の有意な減尐が見られ、切断 21、42 日目には
GABA トランスポーターA の ERK リン酸化陽性発現
の有意な増加が認められた。また、切断 21 日目の
IANX ラットの Vc における、高頻度自発放電を有す
るニューロンが、GABA アゴニスト muscimol の Vc
局所投与により増幅することが示された。以上の結果
より、IAN 切断早期には GABA 様抑制ニューロンの
減尐がみられ、後期には GABA 様抑制ニューロンが
興奮性ニューロンに変化する可能性が示唆され、顔面
領域における神経障害性疼痛に GABA 様ニューロン
の変化が関与している可能性が考えられた。
1) 岡山大学大学院インプラント再生補綴学分野
2) 岡山大学大学院歯科薬理学分野
【目的】睡眠時ブラキシズム(SB)は,睡眠障害の一
つとして捉えられてきたが,
その原因は明らかでない.
本研究では,選択的セロトニン再取り込み阻害剤の内
服で SB 頻度が増すという知見から,SB 頻度とセロ
トニン(5-HT)トランスポーター(SERT)機能の関
連について検討した。
【方法】被験者は,岡山大学病院ならびに岡山大学大
学院に勤務し,本研究の趣旨に賛同し,自発的に参加
の意思を示した健常者のうち,SB の自覚がありかつ
連続 3 日間の SB 測定装置(BiteStrip®)による測定
の結果,2 日以上 Score 2 以上を示した者(重度 SB
群)ならびに SB の自覚がなくかつ SB 測定結果が全
て Score 1 以下の者(軽度 SB 群)とした。ただし,
過去 6 ヶ月以内に中枢性向精神薬,抗うつ薬の服用,
喫煙があったもの,実験期間中に飲酒,カフェインの
摂食を中止できないものは対象から除外した。
この適格基準を満たした被検者から最終測定日の翌日
の朝食前の午前 9 時に末梢静脈血を 8 ml 採取し,血
清プロラクチン濃度,血小板上の SERT 数,血小板数
および SERT の 5-HT 取り込み能を測定した(倫理委
員会承認番号:967)
。
【結果】重度 SB 群 13 名(男性/女性:5/8 名,平均年
齢 28.0±4.68 歳)
,軽度 SB 群 7 名(男性/女性:3/4
名,平均年齢 30.2±5.61 歳)を適格被検者とした。こ
れらの男女比,年齢,プロラクチン濃度,5-HT 濃度,
総 SERT 数に有意差は認められなかった(p=0.85:カ
イ二乗検定,0.64,0.29,0.46,0.14,0.76:t-検定)
。
一方,総 SERT ならびに単位 SERT 数あたりの 5-HT
取り込み能は,軽度 SB 群が重度 SB 群に比べ有意に
高かった(p<0.001,0.02,t-検定)
。
【結論】睡眠時 SB のイベント頻度は,SERT 数では
なく,SERT の 5-HT 取り込み能の多寡と関係する可
能性が示唆された。
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一般演題
9-P6-02
9-P6-03
鉄欠乏性貧血、口腔カンジダ症および口腔乾燥症を併
発した口腔領域の痛みに立効散が奏効した一症例
顔面皮膚の触覚の鈍麻を併発した筋筋膜痛の1例
安藤祐子 1) 山﨑陽子 1) 新美知子 1) 冨澤大佑 2)
井村紘子 2) 細田明利 2) 川島正人 1) 嶋田昌彦 1)2)
1) 東京医科歯科大学歯学部附属病院
ペインクリニック
2) 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
疼痛制御学分野
【目的】今回、鉄欠乏性貧血、口腔カンジダ症および口腔乾
燥症を併発した患者の頬粘膜および舌の痛みに対し、立効散
が有効であった症例を経験したので報告する。
【症例】67 歳、女性。口腔内の荒れた感じを自覚するよう
臼田 頌 1)2) 並木修司 1)3) 森下仁史 1) 潮田高志 1)3)
村岡 渡 2)4) 和嶋浩一 2) 中川種昭 2)
1) (財)東京都保険医療公社多摩北部医療センター
歯科口腔外科
2) 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
3) 東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座
4) 日野市立病院歯科口腔外科
【目的】
今回われわれは,左側咬筋の筋筋膜痛と顔面皮膚の触
覚の鈍麻を併発し,筋痛軽快と共に鈍麻の消失もみら
れた症例を経験したので報告する.
になった。翌年、近歯科で上顎義歯装着後、痛みを生じ、含
嗽薬が処方されたが改善しなかった。8年後、本院口腔外科
初診。生検の結果、口腔扁平苔癬の疑いで軟膏が処方され、
症状は次第に軽減した。翌年、細菌検査でカンジダ [3+]
であった。そこで、アムホテリシン B が処方され症状は軽減
した。さらに4年後、当科紹介。左側頬粘膜および舌尖部に
ピリピリした自発痛を訴え、痛みは刺激物で増強した。口腔
内所見では舌乳頭の萎縮が認められた。ガムテストでは
6.8ml/10 分間で、細菌検査ではカンジダ[1+]であった。血
液検査では、軽度の鉄欠乏性貧血が考えられた。以上から、
口腔カンジダ症、口腔乾燥症および鉄欠乏性貧血と診断し、
ミコナゾールを処方したところ症状は軽減し、7日後、カン
ジダは消失したが、頬粘膜と舌の痛みは消失しなかった。そ
こで立効散 7.5g/日を処方したところ、頬粘膜の症状は消失
し、痛みの範囲は舌尖部のみに縮小した。立効散開始2ヶ月
後、自発痛は消失し、症状は刺激物摂取時のみとなった。さ
らに1ヶ月後には、痛みの頻度が減尐した。一方、血液検査
では鉄欠乏性貧血は改善されなかった。その後体調の変化に
より症状の程度に若干の変化はあるが、口腔内の症状は初診
時に比べ軽減した。
【考察】今回の症例は鉄欠乏性貧血であったが、かかりつけ
医の判断で鉄剤の継続投与はなされず、鉄欠乏性貧血は改善
しなかった。しかし、このような器質的病変に由来する口腔
【症例の概要】
症例:38 歳女性,既往歴なし.左側顎関節症および左側
顔面部知覚異常の精査依頼にて来院.初診時,左側咬筋,
胸鎖乳突筋,僧帽筋に著明な筋圧痛及び索状硬結を認
めた.また触診にて左側三叉神経第I枝~第Ⅲ枝領域
の皮膚に VAS:50/100 の触覚の鈍麻を認めた.また皮膚
の知覚異常が左側肩部まで拡大してきたことから,脳
神経外科にて頭部 MRA,MRI を撮像し精査したが神
経学的に異常を認めなかった.以上から筋筋膜痛に由
来する知覚鈍麻と判断して,ストレッチを中心とした
セルフコントロールを指導した.治療開始約1ヶ月で
筋筋膜痛の軽度改善と鈍麻の範囲縮小がみられたため
治療を継続した.その結果,治療開始約 3 ヶ月で筋筋膜
痛はほぼ消失し,触覚の鈍麻も完全に消失した.その後
再発は認めていない.
【まとめ】
いくつかの成書において筋筋膜痛に合併した皮膚触覚
の鈍麻の可能性が指摘されている.しかし,われわれが
渉猟した範囲での報告例は確認されなかった.本症例
は筋筋膜痛と触覚の鈍麻がほぼ同時に発症,改善した
ことから鈍麻の原因に筋筋膜痛が関わっている可能性
が示唆された.
領域の痛みに立効散は有効であると考えられた。
【結語】鉄欠乏性貧血、口腔カンジダ症および口腔乾燥症に
よる口腔領域の痛みに立効散が有効であると考えられた。
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一般演題
9-P6-04
“口・顔・頭の痛み外来”における慢性疼痛を有する
顎関節症患者の特徴
永田綾子 1) 小見山道 2) 牧山康秀 2) 西村 均 2)
大久保昌和 2) 内田貴之 2) 下坂典立 2) 成田紀之 2)
和気裕之 2) 丹羽秀夫 2) 平山晃康 2) 川良美佐雄 1)
1) 日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座
2) 日本大学松戸歯学部付属病院口・顔・頭の痛み外来
【目的】顎関節症は器質的な原因だけでなく心理・社
会的要因で疼痛が長期化する場合がある。今回、当院
の“口・顔・頭の痛み外来”を受診した顎関節症患者
を対象に、慢性疼痛状態である患者の特徴を検討した
ので報告する。
【方法】対象は、2008 年4月~2008 年 12 月に当外
来を受診した患者 767 名のうち顎関節症と診断した
488 名である。このうち、初診時の質問票から疼痛の
持続期間が 3 か月未満を急性疼痛群、3 か月以上を慢
性疼痛群と規定した。この両群間で性、年齢、疼痛部
位、Numerical Rating Scale (NRS)による疼痛強度、
問診票による抑うつ傾向について比較検討した。
【結果】性および年齢は、急性疼痛群は男性 72 例・
女性 150 例(平均年齢 43.4 歳)
、慢性疼痛群は男性 50
例・女性 172 例(平均年齢 39.9 歳)であり、年齢は
両群で有意差を認めなかったが、慢性疼痛群は急性疼
痛群より女性の割合が有意に多かった(P<0.05)
。疼
痛部位では、急性疼痛群は咀嚼筋部 176 例、関節部 41
例、慢性疼痛群は咀嚼筋部 178 例、関節部 36 例であ
り、いずれも咀嚼筋部が多かったが、両群における比
率に有意差は認めなかった。NRS 値は、急性疼痛群は
平均 3.6±0.2、慢性疼痛群は平均 3.8±0.2 であり、有
意差は認められなかった。問診票による抑うつ傾向の
指数では、急性疼痛群は平均 0.36±0.03、慢性疼痛群
は平均 0.53±0.05 であり慢性疼痛群が有意に高かっ
た(P<0.05)
。
【結論】顎関節症患者において疼痛の持続時間が 3 カ
月以上のケースは、女性に多く、また抑うつに留意す
る必要があることが示唆された。しかし、急性群と慢
性群間で疼痛部位および疼痛強度に相違は認められな
かった。
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第 16 回日本口腔顔面痛学会総会・学術大会 プログラム・抄録集
平成 23 年 7 月 1 日 発行
大阪市中央区大手前 1-5-17
大阪歯科大学歯科麻酔学講座