KOE通信 Vol.025

KOE 通信
Vol.025
June. 2014
今号の内容
◆ 中国環境政策・市場の動き
(1) 大気十条25項国家標準を今年中に発表、ダイオキシン90%削減を目指す
(2) 国務院が2014年黄色ラベル車と老朽車の淘汰目標を明確化
◆ 地方環境政策・市場の動き
(1) 北京天津河北省は汚染物排出基準を統一に
中国環境政策・市場の動き
◆ 大気十条25項国家標準を今年中に発表、
ダイオキシン90%削減を目指す
【概要】 史上最も厳しい審査弁法「大気汚染防止行動計画実施状況審査弁法(試行)」の実
施とともに、大気汚染防止に関する国家標準の策定と公布も進められている。環境保護部と
国家質量監督検査検疫総局が共同で発布した「非道路車両・機械のディーゼルエンジン排ガ
ス汚染排出制限値と測定方法(中国第3、4ステップ)」(GB20891-2014)は5月16日に発表さ
れた。同時に発表された「ボイラー大気汚染排出基準」(GB13271-2014)、「生活ゴミ焼却汚
染コントロール基準」(GB18485-2014)、「錫、アンチモン、水銀工業汚染物排出基準」
(GB30770-2014)の3つの国家標準は、今年7月1日から実施する予定。現在までに、「大気
汚染防止行動計画」(即ち「大気十条」)で要求された25項目の大気汚染物特別排出制限基
準のうち20項目が完成されており、残りの5項目は今年中に完成する予定と環境保護部の責
任者は示した。今回新たに発布された4つの国家標準によりエアロゾル(PM)、窒素酸化物
(NOx)、二酸化硫黄(SO2)による汚染は大幅に減少すると思われる。
ボイラー排出制限はエアロゾル66万tを削減
煤塵汚染は大気汚染の主な原因の1つと考えられている。近年、中国における石炭ボイラー数
は増加し続けおり、中でも小容量のボイラー数が比較的に多い。現在、中国は10t/h以下のボ
イラーが27.6万台(60MW)あり、全国石炭ボイラー総量の70%を占め、石炭消費量は1.7億tとい
う。また、小型ボイラーは人口密集地区に集中し、局地の大気環境に多大な影響を与えている。
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7月1日から実施予定の「ボイラー大気汚染物排出基準」(GB 13271—2014)は70%を占める小
型ボイラーの改造について触れている。同基準が実行されれば、10t/h以下の石炭ボイラーか
ら石油と石炭ガスボイラーへの改造、集中暖房配管への加入改造、優質石炭ボイラーとバイオ
燃料ボイラーへの改造が実施される。更に、新基準では石炭ボイラーの窒素酸化物、水銀とそ
の酸化物の排出制限値が上昇した。また、環境アセスメントが同基準或いは地方基準より厳し
く、審査を通過した環境アセスメントには決められた基準の実行を要求した。
環境保護部の推測によると、「ボイラー大気汚染物質排出基準」(GB 13271—2014)の実施によ
って、エアロゾル(PM2.5)66万t、二酸化炭素314万tを削減できるという。
ダイオキシン排出量を90%削減
新基準では、生活ゴミ焼却工場を建設する前の環境アセスメントにより、ゴミ焼却工場の施設か
ら発生し得る有害物資の漏洩、大気汚染物(悪臭物質を含む)の発生と拡散、及び事故リスク
などを考慮し、その所在地区の環境機能区種類によってその周辺環境、住民健康、日常生活と
生産活動への影響を総合的に評価することを定めた。また、生活ゴミ焼却工場と常住居民の住
居場所、農用地、地表水域及び他の影響対象の間の位置関係を確定する。
新基準では制限値を現行基準より30%厳しく設定することで、生活ゴミの焼却による窒素酸化
物25%、二酸化硫黄25%、ダイオキシン90%削減を目指す。
錫、アンチモン、水銀の排出制限が国際基準に迫る
長年中国は錫、アンチモン、水銀の生産大国であり、錫とアンチモンの生産量は世界首位にあ
る。錫、アンチモン、水銀工業などの非鉄冶金業は通常環境汚染物を排出する一方で、重金属
などの有毒有害汚染物も排出し、健康と環境安全に被害を与える。新たな「錫、アンチモン、水
銀工業汚染物排出基準」に要求された新規企業の汚染物排出制限は、先進国水準に近く、特
別排出制限は国際の先端水準に達し、或いは超えている。既存企業の排出量が新基準に定め
られた新規企業の制限値に達した場合、二酸化硫黄、化学的酸素需要量(COD)、アンモニア
態窒素の年間排出量はそれぞれ41%、47%、57%を削減でき、排ガス中の各種重金属の消滅
率は65%以上になるという。
ディーゼルエンジンNOx排出量を45%減少 新環境保護法は政府の環境保護監督管理責任を一層に明確した。第24条では、県レベル以上
の人民政府環境保護主管部門とその委託した環境監査機関、及びその他環境保護監督管理
職能の部門が、汚染物質排出企業や機構に対して現場検査を実施する権利を有する。
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「非道路車両・機械のディーゼルエンジン排ガス汚染物質排出制限値と測定方法(中国第三ス
テップ、第四ステップ)」は建築機械、農業機械、発電ユニットなどディーゼルエンジンを動力と
した各種の移動式機械設備による汚染問題を解決するための規定である。現在、中国は非道
路用ディーゼルエンジンが毎年約200万台増加し、1億tを超えるという重油の年間消費総量の
うち、約20%は各種非道路用移動機械に使用されている。これらの非道路用移動機械は窒素
酸化物の重要な排出源で、毎年ほぼ200万t以上の窒素酸化物を排出しているという。
第2ステップの基準と比べ、「非道路車両・機械のディーゼルエンジン排ガス汚染物質排出制
限値と測定方法(中国第3、4ステップ)」は汚染物質の排出制限値を厳しくし、測定方法をさら
に完全化させる。第3ステップの単体機械の窒素酸化物削減量は30%~45%で、第4ステップ
の単体顆粒物の削減量は50%~94%である。
2014年10月1日から、排ガス汚染物質排出型の非道路車両・機械のディーゼルエンジンは第3
ステップの要求に従わなければならない。同基準によって、審査された非道路車両・機械用デ
ィーゼルエンジンの生産一致性検査は審査通過日から実行される。現在の状況から見ると、
第4ステップ基準に達する重油の供給時間はまだ確定していないため、新基準は第4ステップ
の全国実施時間を決められず、実施可能地区においては実施の繰り上げを推奨するとのこと。
出処:中国環境網
http://www.cenews.com.cn/xwzx2013/wrfz/201406/t20140603_775156.html
◆ 国務院が2014年黄色ラベル車と老朽車の淘汰目標
を明確化
先日、「大気汚染防止行動計画」と「2014年政府工作レポート」の要求を確実なものにさせるた
めに、国務院弁庁は「2014~2015年省エネ削減低炭素発展行動方案」を発表し、2014年黄色ラ
ベル車とフル自動車の淘汰任務を全国31の省(区、市)に割り当てた。
現在、中国の自動車保有台数は1.37億台に達し、年間販売数量は2000万台を超えている。世
界中で自動車販売量の最も多い国になった中国では、大気汚染問題もだんだん深刻化してき
た。最新の中国都市汚染源分析レポートによると、北京と上海の自動車排ガスによるPM2.5へ
の影響度は31.1%と25.8%であり、都市大気汚染の大きな原因となっている。
黄色ラベル自動車とは排出水準が中国の統一排出基準を超えたガソリン車と国三排出基準
(第三段階の排出基準)を超えたディーゼル車のことで、使用期間の長い老朽車や、汚染の多
い自動車を指す。2013年末の段階で、中国全国では黄色ラベル車が合計で1300万台以上あり、
自動車保有量の約10%を占める。これらの黄色ラベル車により排出された汚染物は自動車汚
染物排出総量の50%を占めている。黄色ラベル車と老朽車の淘汰を進めることは都市大気質
の改善において重要な措置と思われる。
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2014年国務院に分配された黄色ラベル車と老朽車の淘汰目標は合わせて600万台。その
うち、北京天津河北省、長江デルタ、珠江三角デルタなどの7省・市の重点地区は243万台
であり、全国目標の40.5%を占める。非重点地区の24省(区、市)の淘汰目標は357万台、
全国目標の59.5%を占めている。黄色ラベル車と老朽車の淘汰活動は地方各レベルの人
民政府が責任を負い、淘汰目標の達成状況は既に国務院により「大気汚染防止行動計
画」の審査に組み込まれた。
出処:環境保護部
http://www.mep.gov.cn/gkml/hbb/qt/201406/t20140610_276685.htm
地方環境政策・市場の動き
◆ 北京天津河北省は汚染物排出基準を統一に
6月14日、国務院発展研究センター資源、環境政策研究所副所長、また京津冀(北京市天
津市河北省)一体化発展計画全体方案に参与した専門家の常紀文は、京津冀一体化の
主要目標が環境保護であり、この二市一省に対する環境保護法案は6月末に頒布される
予定と示した。
常氏によると、方案策定に参与した専門家からは京津冀地区における汚染排出基準の統
一に関する提言もあったようである。現在、北京天津と河北省の環境質量基準は国家基
準と一致しているが、汚染物排出基準は統一されていない。汚染排出基準が違うと、一方
にとって改善とされることが他方にとっては汚染となる。また、基準の統一は環境監督管
理にも有利である。ただし、河北省にとって新基準は厳しくなるため、実現するのは難しく、
中央と北京政府が資金支援をすべきと常氏は述べた。
昨年の9月10日に、国務院は「大気汚染防止行動計画」(国十条)を発表した。これは中国
歴史上最大規模の大気汚染改善行動である。「計画」では、北京天津河北省における
PM2.5が5年以内で25%減少するとしている。今年6月10日、京津冀及び周辺地区大気汚染
防止協力チーム弁公室は「京津冀及び周辺地区大気汚染連携防止2014重点取組」を発
表した。また、今年中には区域空気室基準合格計画を編纂する予定で、大気環境の負荷
能力を明確化する。。
出処:中国環境
http://hj.china.com.cn/zghj/wrfz/365023.shtml
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