東京都におけるPM2.5発生源寄与の推定

資料3
東京都における
PM2.5の発生源寄与の推定
上野広行
(公財)東京都環境公社
東京都環境科学研究所
東京都微小粒子状物質検討会
• 目的
都内PM2.5の実態調査、原因物質や生成メカニズム
の解明及び削減対策等について専門的な見地から
学識経験者の意見を聴くために
• 期間
平成20年4月~平成23年7月
• 座長
坂本和彦埼玉大学教授
2
発生源寄与推定の流れ
大気環境調査
(2008)
発生源調査
(2008-2009)
既存の発生源
プロファイルの更新
レセプターモデルに
よる発生源寄与解析
既存の発生源
インベントリの更新
シミュレーションモデ
ルによる
発生源寄与解析
発生源寄与の推定
(2011)
3
大気環境調査
4季各2週間
PM2.5ローボリュームサンプラーによる24時間採取
質量濃度
成分分析(イオン成分、炭素成分、金属成分、レボグルコサン等)
30
3
濃度( μ g/m )
•
•
•
•
一般環境大気測定局 9地点
自動車排出ガス測定局8地点
20
10
0
春 夏 秋 冬
春 夏 秋 冬
一般局 自排局
その他
その他
SO42SO 42NO3NO 3ClClCa2+
Ca2+
K+
K+
Na+
Na+
NH4+
NH 4+
OC
EC
4
発生源調査
調査施設
プロファイル・インベントリ更新等
ボイラ
ガスタービン
ガス機関
廃棄物焼却炉
電気炉
窯業炉
船舶
建設機械
自動車
調査対象
道路粉じん
厨房
排出係数設定
地下街
野焼き
喫煙所
排出係数設定
発生源プロファイル更新に使用
排出係数設定
鉄道
排出係数設定
• 発生源プロファイルの更新の
検討は行ったが、結果的には
あまり使用できなかった。
• 凝縮性ダストは発生源寄与
解析には使用していない。
CMBモデルによる発生源寄与推定
使用した発生源プロファイル
(環境省プロファイルに植物質燃焼を追加)
(単位:mg/kg)
発生源
成分
道路
海塩
鉄鋼
石油
廃棄物
自動車
ブレーキ
植物質
粉じん
粒子
工業
燃焼
焼却
排出ガス
粉じん
燃焼
1
EC
12800
0.028
5000
300000
50000
494000
153000
97100
2
K
+
12700
11000
13200
850
200000
197
3500
63200
3
Ca2+
55200
11700
45100
850
11000
1460
31800
415
4
Na
12500
304000
13600
10000
120000
76.4
7600
6550
5
Al
61100
0.29
9990
2100
4200
1570
19400
370
6
V
108
0.058
125
6380
27
7.25
59
0
7
Mn
1060
0.058
22000
120
330
19.3
720
10
8
Sc
13.3
0.0012
1.32
0.09
0.46
0.119
4
0
9
Cr
279
0.0015
3160
210
850
11.6
421
0
10
Fe
53100
0.29
157000
4600
6100
989
91200
100
11
Zn
1310
0.029
51500
400
26000
624
3260
100
12
As
11.3
0.029
103
23
150
3.69
22
0
13
Se
1.43
0.12
51.1
48
0
1.67
3.5
0
14
Br
4.64
1900
144
8.5
830
24.5
49
2806
15
Sb
13
0.014
90
6.9
952
19.6
2130
0
16
La
31.3
0.009
9.75
40
7.7
0.341
7
0
CMBモデルによる発生源寄与解析
(一般局平均)
その他(水分
等)
8%
土壌・道路粉じ
海塩粒子
ん
1%
3%
鉄鋼
1%
Cl⁻
1%
廃棄物焼却
3%
自動車排出ガ
ス
12%
SO₄⁻
22%
NO₃⁻
11% NH₄⁺
11%
重油燃焼
4%
ブレーキ粉じん
2%
v-OC
20%
植物質燃焼類
1%
• v-OC:主として二次有機粒子であると考えられ、大気
環境調査におけるOC濃度から、一次粒子として割り
当てられたOC濃度を差し引いて1.4倍したもの。
7
シミュレーションモデル
気象モデル:MM5 移流・拡散・化学反応モデル:CMAQ v.4.6, AERO4, SAPRC-99
中部日本域:15kmメッシュ
境界値:国環研広域モデル
計算値
関東域:5kmメッシュ
境界値:中部日本域計算の
結果を使用
一都六県の発生源
本調査の結果等をもとに
平成20年度(現況)と
平成28年度(将来)の
発生源インベントリを作成
一都六県外の発生源
EAGrid2000-Japanを年度補
正した発生源インベントリ等を
使用
8
シミュレーションモデルの現況再現
PM2.5 一般局平均
μg/m3
40
30
•CMAQのOtherには水分が含まれず、土壌・海塩の計算が完全ではない
•年平均で見ると、PM2.5実測の60%、FINEを除く実測の75%程度
•NO3に過大評価、Organicsは過小評価の傾向があるものの、成分間のバ
ランス、季節変動は実測値をある程度再現
⇒成分ごとの補正係数を作成して対応
水分はE-AIMモデル※、土壌・海塩はCMBの値を使用
Obs.(観測)
20
Other
NH4
SO4
10
NO3
Organics
EC
0
obs. CMAQ
春
obs. CMAQ
夏
obs. CMAQ
秋
obs. CMAQ
冬
obs. CMAQ
年平均
※The Extended Aerosol Inorganics Model:粒子に係るガス/液相/固相の熱力学平衡モデル。
Simon L. Clegg, School of Environmental Sciences, University of East Anglia, Norwich NR4 7TJ, UK.
9
シミュレーションモデルによる発生源寄与解析
15
その他
アンモニウンムイオン(NH₄⁺)
硫酸イオン(SO₄⁻)
硝酸イオン(NO₃⁻)
有機粒子
元素状炭素(EC)
10
5
アンモニア自然
VOC施設
その他人為
建機
民生
大規模固定
船舶
自動車
0
現況
PM2.5濃度(μg/m3)
関東地方の発生源に関するゼロアウト感度解析結果
•ゼロアウト法では原因物質排出量とPM濃度が非線形の関係にある場合、正確な寄与は
計算できない。
•アンモニア自然の寄与は課題に評価されている可能性。
•VOC施設の寄与は著しく過小評価の可能性(モデルの感度不足)。
10
⇒VOC由来有機粒子についてはCMAQの値は使わず、CMBのv-OCを使用。
発生源寄与の推定(東京都一般局2008)
E-AIM
モデル
CMBの
結果
CMBの
v-OC
海塩・土壌
4.0%
二次有機
粒子等
20.8%
工場等
0.6%
船舶 1.3% 家庭・業務
1.2%
自動車
水分 4.6%
7.9%
不明
32.7%
都内
14.8%
関東6県
関東外 34.4%
18.3%
関東外
(国外を含む)
18.3%
建機 1.5%
その他人為
1.8%
アンモニア
発生源、
自然 3.8%
自動車
6.9%
船舶
5.4%
工場等
6.0%
家庭・業務
アンモニ
1.1%
建機
ア発生源、
1.6%
自然 11.4%
その他人為
2.0%
都内発生源の
寄与は大きくない
都を含む
関東地方で5割
二次有機粒子を
入れると
関東地方の寄与
6割程度?
広域対策が重要
有機粒子には
不明な点が多い
多様な発生源
対策が必要
11
本調査における課題
CMBモデル
• 発生源プロファイルの整備(PM2.5及び成分組成)
シミュレーションモデル
• 排出インベントリの高精度化(PM2.5、凝縮性ダスト等)
• 計算精度向上(二次有機粒子等)
• 国外の寄与計算
その他
• レボグルコサン等の有機成分、放射性炭素同位体比(14C)
等も活用した総合的な発生源寄与推定
12