2014 年 4 月 IP 電 話 普 及 推 進 センタ 技 術 解 説 第 1回 『音 声 コミュニケーションを支 える技 術 (1)』 従 来 、音 声 ネットワークはデータネットワークとは独 立 に構 築 されていました。しかし近 年 登 場 した VoIP(Voice over IP)技 術 を用 いることで IP ネットワークを介 した音 声 通 話 の 実 現 が可 能 となり、両 者 を統 合 したネットワークを構 築 出 来 るようになってきています。 本 技 術 解 説 ではまず VoIP を実 現 する 4 つの要 素 技 術 を解 説 します。 今 回 はこのうち音 声 コーデックについて取 り上 げます。 ①アナログ音声とIPパ ケットを相互に変換 (音声コーデック) 音声パケット 音声信号 音声信号 IPネットワーク (インターネット/イントラネット) 電話機 ②電話機間の接続を管 理(呼制御) ③ 音声パケットの伝送 に適したネットワーク性 能を確保(QoS) 電話機 ④ 音声パケットを伝達 できるネットワーク構築 (NAT/NAPT透過) 図 1: VoIP を実 現 する要 素 技 術 音 声 コーデック技 術 ●音 声 コーデックとは IP ネットワークを介 して音 声 信 号 を電 話 機 A から電 話 機 B に送 信 するシステムにお ける音 声 コーデックの模 式 図 を示 します。 符号化 音声信号 (アナログ) AD変換 IPパケット (デジタル) 圧縮 復号化 伸張 11000101 音声コーデック IPネット ワーク DA変換 音声信号 (アナログ) 音声コーデック 電話機A 電話機B IPネットワークはデジタル信号しか扱えま せん。 アナログ信号である音声信号はデ ジタル化する必要があります。 図 2:音 声 コーデック 電 話 機 A は音 声 信 号 の送 り側 です。IP ネットワークではデジタル信 号 しか扱 えませんの で、IP ネットワークに音 声 信 号 を流 すには、送 り側 ではアナログの音 声 信 号 をデジタル 化 す る 必 要 が あ り ます 。 ま た 伝 送 路 を 効 率 良 く 利 用 す る た め にデ ジ タ ル 信 号 は 圧 縮 さ れます。 電 話 機 B は音 声 信 号 の受 け側 です。音 声 信 号 は電 話 機 A でデジタル化 され、さらに圧 縮 されたデジタルデー タとなっています ので、これを元 の形 に復 元 す る必 要 があります 。 す な わち 、 受 け 取 っ たデ ジ タルデ ー タ を 伸 張 し 、 デ ジ タル 信 号 の アナ ログ 信 号 化 を 行 い ます。 このアナログの音 声 信 号 からデジタル信 号 に変 換 する機 能 (AD 変 換 )と、デジタル信 号 の サイ ズを 小 さ くす る 機 能 ( 圧 縮 ) を ま とめ て エ ンコー ド ( 符 号 化 )と い います 。 逆 に 圧 縮 されたデジタルデータを元 のデジタル信 号 に戻 す 機 能 (伸 張 )と、デジタル信 号 からア ナログ信 号 に変 換 する機 能 (DA 変 換 )をまとめてデコード(復 号 化 )といいます。 これらの機 能 をハードウェアやソフトウェアで実 現 したモジュールを「音 声 コーデック」と 呼 びます。コーデック(codec)とは coder(符 号 器 )と decoder(復 号 器 )の合 成 語 です。 電 話 機 A で入 力 された音 声 信 号 (アナログ信 号 )は、音 声 コーデックによって符 号 化 処 理 と圧 縮 処 理 が行 われ、IP データ化 されます 。IP データ化 された音 声 情 報 は RTP (Real-time Transport Protocol)というリアルタイムデータを伝 送 するプロトコルで IP ネ ットワーク上 に流 れます。電 話 機 B では同 じ音 声 コーデックによって伸 張 処 理 と復 号 化 処 理 が行 われ、電 話 機 A で入 力 された音 声 信 号 が再 現 され届 けられることなります。 ●音 声 コーデック G.711 と G.729a 音 声 コーデックはいくつかの方 式 が ITU-T で勧 告 されており、代 表 的 な方 式 は G.711 と G.729a があります。 G.711 は電 話 回 線 等 でも使 用 されている、最 も一 般 的 な音 声 コーデックです。G.711 によってデジタル化 された信 号 のビットレートは 64kbps と大 きめですが、音 質 が良 好 な ので広 帯 域 な IP ネットワークでは良 く用 いられる方 式 です。 電 話 回 線 における音 声 周 波 数 は最 高 で 3.4kHz です。原 信 号 の 2 倍 以 上 の周 波 数 で標 本 化 (サンプリング)を行 うと原 信 号 を劣 化 なく再 現 できることから、G.711 ではサン プリング周 波 数 8kHz で標 本 化 を行 います。 そしてサンプリングしたそれぞれの信 号 強 度 を 8bit、256 段 階 で表 して量 子 化 (デジタル化 )します。 復 号 はこの 逆 の 操 作 を おこ ない 、デ ジ タ ル 信 号 からアナロ グ 信 号 へ 戻 し ます 。G.711 では音 声 圧 縮 処 理 を行 っていないため、原 音 の劣 化 を抑 えて再 現 できます。 量子化(デジタル化) 音声信号入力 標本化 10110001 10110101 10010101 時間 時間 時間 11111000 図 3: G.711 による符 号 化 G.729a は音 声 圧 縮 率 が高 く、IP ネットワークを効 率 良 く利 用 できる音 声 コーデックで あり、 回 線 が 細 い 携 帯 電 話 でも 利 用 され てい ま す 。 音 声 信 号 その ものを 符 号 化 した 情 報 を伝 送 するのではなく、あらかじめ波 形 パター ンをコー ドブックというものに登 録 をして おき、 波 形 パター ン番 号 と実 際 の 音 声 に近 づ け るための音 響 特 性 (フィ ルタ係 数 )を 伝 送 します。復 号 された音 質 は G.711 に比 べると劣 りますが、ビットレートは 8kbps と小 さく なります。 実音声信号 (A0n) オ ハ ヨ A01 A02 A03 時間 ウ A04は未来の 音声信号 A04 過去の信号から 次の信号を予測 実音声に近づける ための音響特性 (A2n) 波形パターンに近似 された音声(A1n) オ ハ A11 A12 ヨ ウ A13 A14 A21 オ A22 ハ A23 ヨ A24 ウ 波形パターン番号 誤り符号を付加 して符号化 音響特性 (フィルタ係数) IPネットワークへ 図 4: G.729a による符 号 化 次 回 は代 表 的 な呼 制 御 プロトコルである SIP について説 明 します。
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