約2606KB - 一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会

再生可能エネルギー熱
事 例 集
平成26年2月
一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会
事務局:株式会社 三菱総合研究所
この事例集は、経済産業省資源エネルギー庁の補助事業「再生可能エネルギー熱利用高度複合システ
ム実証事業」の一環として実施した「平成25年度再生可能エネルギー熱利用に関する実態ならびに普及
拡大に向けた課題調査」において作成したものです。
目
1
次
はじめに
1
源じいの森での太陽熱利用システム
3
(福岡県赤村)
2
「道志の湯」木質バイオマスボイラー利用システム
5
(山梨県道志村)
3
ホテルでの木質バイオマスボイラー利用システム
7
(ホテルめぐま)
4
学校給食センター雪氷冷熱利用システム
9
(北海道弟子屈町)
5
埼玉メディカルパーク・スマートエネルギー
11
(埼玉県病院局)
6
エコスクール・WASEDA
13
(早稲田大学高等学校)
7
仙台市での管路内設置型下水熱利用システム
15
(積水化学工業株式会社)
8
中之島二・三丁目熱供給センターでの河川水熱利用システム
17
(関電エネルギー開発株式会社)
9
シーサイドももち地区海水熱利用システム
(株式会社福岡エネルギーサービス)
19
はじめに
●
東日本大震災以降、省エネルギー、再生可能エネルギーをこれまで以上に推進する必要性が高まる中で、
エネルギー需要の半分程度を占める熱の利用に関して、再生可能エネルギー熱の利用の拡大が求められ
ています。
●
この事例集は、これまでの先進的な再生可能エネルギー熱の導入事例を取り上げ、取り組みの概要、導入
した設備や技術の特徴、工夫している点、取り組みの効果などをまとめたものです。今後、再生可能エネル
ギー熱の導入を検討される場合の参考としてご活用下さい。
各種再生可能エネルギー熱の概要
種 類
概
要
太陽熱利用
太陽の熱エネルギーを太陽集熱器に集め、水や空気などの熱媒体を暖め、給湯
や冷暖房などに利用。
地中熱利用
大気の温度に対して、地中の温度は地下10~15mの深さになると、年間を通して
温度の変化が見られなくなる。このため、夏場は外気温度よりも地中温度が低く、
冬場は外気温度よりも地中温度が高いことから、この温度差を利用。
バイオマス熱利用
バイオマス資源を直接燃焼し、ボイラ-から発生する蒸気の熱を利用。
バイオマス資源を発酵させて発生したメタンガスを燃焼し、熱として利用。
雪氷熱利用
雪または氷(冷凍機を用いて生産したもの以外)を熱源とする熱を冷蔵、冷房そ
の他の用途に利用。
下水熱利用
下水の水温は大気に比べ、年間を通して安定しており、冬は暖かく、夏は冷たい
特質があり、都市内に豊富に存在している。下水熱利用は、未処理下水、下水処
理水、下水再生水、排水の水を熱源として、その熱をヒートポンプ等で汲み上げ
ることにより、給湯・暖房・冷房等の用途に利用。
河川水熱
河川や運河の水を熱源として、その熱をヒートポンプ等で汲み上げることにより、
給湯・暖房・冷房等の用途に利用。
その他温度差エネ
ルギー利用
源泉、排湯、海水等の水を熱源として、その熱をヒートポンプで汲み上げることに
より、給湯・暖房・冷房等の用途に利用。
1
事
太
陽
熱
利
用
例
地
中
熱
利
用
バ
イ
オ
マ
ス
熱
利
用
雪
氷
熱
利
用
下
水
熱
利
用
河
川
水
熱
利
用
エそ
ネの
ル他
ギ温
ー度
利差
用
自
治
体
民
間
1.源じいの森での太陽熱利用システム
○
●
(福岡県赤村)
2.「道志の湯」木質バイオマスボイラー利用システム
○
●
(山梨県道志村)
3.ホテルでの木質バイオマスボイラー利用システム
○
●
(ホテルめぐま)
4.学校給食センター雪氷熱利用システム
○
●
(北海道弟子屈町)
5.埼玉県メディカルパーク・スマートエネルギー
○
●
(埼玉県病院局)
6.エコスクール・WASEDA
○
○
●
(早稲田大学高等学院)
7.仙台市での管路内設置型下水熱利用システム
○
●
(積水化学工業株式会社)
8.中之島二・三丁目熱供給センターでの河川水熱利用システム
○
(関電エネルギー開発株式会社)
9.シーサイドももち地区海水熱利用システム
●
○
海水熱
(株式会社福岡エネルギーサービス)
2
●
事例①源じいの森での太陽熱利用システム
(福岡県赤村)
取り組みの概要
赤村・源じいの森(ふるさとセ
ンター)の駐車場屋根に太陽
熱集熱器を150枚設置してい
ます。
福岡県赤村の「源じいの森」で
●
集熱器で作られた熱水は温泉
の源泉を温めるのに有効利用
されます。
設備費
エネルギーの活用により、エネルギー
ルギーを実現するため、太陽
コストだけでなく、二酸化炭素(CO2)の
熱を利用した源泉加熱設備が
削減にもつながり、環境に優しいエコ
導入されています。
の温泉施設として全国にPRしていきた
駐車場屋根の上に太陽熱集熱器(1
台約2.7m2)を150台設置。
・真空二重管型
・有効集熱面積300m2
総事業費は約140百万円(内 再生
可能エネルギー熱利用加速化支援
対策費補助金40.7百万円)
い」としています。
●集熱器により作る熱水で、温
泉の源泉(30度)を温めて浴槽
に運び利用しています。
●保温性が高い二重構造の配管
により流す仕組みとなっていま
す。これにより、冬でも日差し
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会の平
成23年度再生可能エネルギー熱利用加速化支援
対策事業[地域再生可能エネルギー熱導入促進対
策事業]を活用しています。
赤村政策推進室によれば、「再生可能
は、新エネルギー導入と省エネ
設備や技術の特徴
設備の概要
●
があれば加熱が可能となりま
す。加熱を確実に行うために
追い焚き用のボイラーも設置し
ています。
3
事例①源じいの森太陽熱利用システム
太陽熱を利用し、温泉
の源泉水(30.4度)を加
温(42度)しています。太
陽熱を利用することで、
灯油ボイラーの燃料の
削減を行っています。
工夫している点
●
駐車場スペースの有効利用
●
源じいの森にはキャンプ場、宿泊施
既存設備との併用によるコスト削
減+供給安定性向上
設、駐車場などの施設があり、この駐
太陽熱利用を行う前は、灯油ボイラー
車場の屋根の上に太陽熱集熱器を設
による源泉加温を行っていて、太陽熱
置してスペースの有効利用を図りまし
集熱器を導入した後も、灯油ボイラー
た。
はバックアップ用として利用していま
す。
それでも、太陽熱を利用することに
よって燃料費が削減できています。再
生可能エネルギーの不安定さを補う
方法として、このような安定供給でき
る既存設備との組み合わせが有効と
考えています。
取り組みの効果
●
化石燃料の削減とコスト削減
250
「源じいの湯」灯油使用量(kL/年)
灯油ボイラーで加温していた従来方式では、
年間200kL以上の燃料が必要でした。太陽熱
温水器の導入で最大3割程度の燃料削減を見
込んでいましたが、実際に導入した後の燃料
200
226.9
187.8
(17.2%減)
平成23年度
平成24年度
150
100
消費量は右の表のようになりました。年間消費
量は200kLを下回りましたが、削減比率として
は17.2%となりました。
50
0
今後の課題
●
燃料消費量の一層の削減
ため、最適な運用に至っていない期
初年度の燃料消費量の削減幅は計
間が長かったため考えられます。今
画値(30%)まで達していません。この
後、運用の最適化が図れるにつれ
原因としては、外気温と湯温との差を
て灯油削減量は増えていくものと期
調整したり、各種の試験を繰り返した
待されます。
4
事例②「道志の湯」木質バイオマスボイラー利用システム
(山梨県道志村)
取り組みの概要
木質バイオマスボイラーに使
用する間伐材を、村内の林
家から購入。林産業の活性
化と共に、木材の価格低迷
や外国産材の利用増加によ
り、整備されない荒廃した森
林を整備するインセンティブ
にも繋がっています。
● 道志村はバイオマスタウン構想
● これにより、ボイラーでは小径木が
を掲げており、その一環として村
利用可能となり、含水量や加工コス
営温泉施設「道志の湯」の加熱
トの制約が大幅に解消されました。
に、間伐材を利用した木質バイ
道 志 村 で は、木 質 バ イ オ マ ス ボ イ
オマスボイラー5基の導入を行
ラーを活用することにより、地域のバ
いました。現在は、従来加熱に
イオマス利活用を促進し、地球温暖
使用していた重油ボイラーを補
化の防止に貢献すると共に、地域の
助装置として利用しています。
産業振興や雇用の創出に繋げてい
● 木質バイオマスボイラーへの投
ます。
入物はチップやペレットが主流
ですが、薪を燃焼できるボイラー
も開発されています。
温泉施設 道志の湯
設備や技術の特徴
設備の概要
● 道志村バイオタウン計画の一環として、木質バイオマスボイラー5基を平
成24年4月に新たに設置しました。
● 第1号源泉
35.6L/分T=17.8℃®75℃(ボイラー室)
● 第2号源泉
42.0L/分T=21.2℃®75℃(ボイラー室)
■計画協力:
● 木質バイオマスボイラーの導入はバイオマス構想の一環として、㈱森のエ
ネルギー研究所が計画協力。
■設備概要:
● 木質バイオマスボイラー75KW×5基=375KW
● 補助重油ボイラー1023KW(従来設備)
設備費
<木質バイオマスボイラー概要>
■設備事業費
薪ボイラー設備工事費4,434万円(ボイラー棟建屋の建設費等を除く)
設備の稼働
状況
<木質バイオマスボイラー設備稼働状況>
設備状況:重油ボイラーは補助装置として稼働しています。
木質バイオマスボイラー60%∼80%
重油ボイラー40%∼20%
年間薪材必要量1.83t/日×315日=577t/年
(全幹木3,400∼4,080本/年相当)
5
木質バイオマスボイラー
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会の平成23
年度再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策事業
[地域再生可能エネルギー熱導入促進対策事業]を活
用しています。
事例②「道志の湯」木質バイオマスボイラー利用システム
工夫している点
道志村では、木質バイオ
マスボイラーの利用に よ
り、経済的利益、CO2削
減、省エネの3つの効果が
実現されています。
●
地元産業の活性化、災害
に強い山作り、環境に優し
い村としてのPRなどの副
次的的効果もあります。
「道志の湯」のバイオマスボイラー
材を管理し、「道志の湯」へ運搬して
には、地域の山の間伐材が利用
います。このように、林家と温泉の間
されていますが、これらの買取及
に地元のNPOが入ることで、効率的な
び運搬は「NPO道志・森づくりネッ
運用システムが実現されています。
トワーク」が、行っています。NPO
●
木質バイオマスボイラーへ投入する
では、木材保管場所である「木の
燃料の木材はすべて村内で賄ってい
駅」を運営し、林家から収集した木
ます。また、93%が森林である村の自
然資源を有効活用することで森林整
取り組みの効果
●
備を促進し、水資源の保全や災害に
強い山づくりが実現されています。
道志村産業振興課によると、「道志
の湯」に木質バイオマスボイラーを
導入したことにより、①化石資源の
使用量とコストの削減、②森林整備
の促進と林産業の活性化、③地域
経済の活性化、④二酸化炭素の排
出量削減の計4つの効果が表れま
した。
●
今までの重油ボイラーでは重油代
が年間1800万円程かかっていまし
たが、まきボイラーでは年間430万
円程度に抑えられます。
●
まきボイラーを使用することによる
年間人件費は270万円、まき代は
430万円であるため、村内に還元さ
薪ボイラー導入による経済効果
れる費用は合計700万円となってい
出典:道志村役場産業振興課・森のエネルギー研究所資料
(2013年12月13日)
ます。
今後の課題
●
薪の含水率が高い場合や、薪ボイ
●
含水率に関しては、間伐材を投入す
ラーの燃焼が不安定な場合(特にボ
る前に、木材を乾燥させることで解消
イラーの着火時や薪の投入終了後)
できていますが、それ以外の対策と
は、煙が発生しており、課題となって
して、現在は村で煙を抑制する装置
います。
等の購入を検討しています。
6
事例③ホテルでの木質バイオマスボイラー利用システム
(ホテルめぐま)
運転開始はスイッチ1つ。自動
運転化により操作が簡単に行
えます。
取り組みの概要
●
メンテナンスが容易。灰の収集
及び部品の自動清掃により、
大幅に手間が省けます。
高い効率性。自動で燃焼出力
調整を行うことで、燃料の無駄
な消費を抑えます。
●
高い安全性。異常時には、安
全に装置が止まるシステムが
作動します。
北海道稚内市のホテルめぐまで
ボックスに収集された灰は簡単に
は、平成23年から、廃木材チップ
取り出すことが可能であり、従来
(解体材)を使った、木質燃料焚
人手に頼っていた熱交換部分の
無圧開放式温水ボイラーを給湯
灰落とし作業も機械による自動清
および暖房用に利用していま
掃に代替され、大幅にメンテナン
す。
スの手間が省けました。
使用しているボイラーは、ドイツ
●
さらに、経済性の高いボイラーと
メ ー カー で あり、同 社 は60 年以
しての特徴もあります。排ガスの
上、総計1万台以上の木質バイ
酸素濃度を測定し、細かい燃焼
オマスボイラーを生産し ていま
出力調整を実施することにより、
す。また、本ボイラーは全自動運
高いボイラー効果を実現し、燃料
転により、高い燃焼効率や安全
の無駄な消費も抑えています。
性を保っています。
●
●
●
また、本施設は、逆火を防止する
本施設の特徴として、まずは燃
ために、3重の逆火防止装置を備
焼の自動 運転化 が挙 げら れま
えており、異常検知時には燃料供
す。運転開始はスイッチ1つで、
給を止められる安全性も確保され
後は最適な燃焼状態にまで自動
ています。
で温度が調整されます。また、温
水温度の設定や燃焼量のコント
ロールも自動で行うことができま
す。2点目の特徴として、炉内で
発生した灰は、灰出スクリューで
灰ボックスまで運搬されます。
設備や技術の特徴
設備の概要
ホテルめぐま外観
燃料:廃木材チップ(解体材)
燃料サイロ:鉄筋コンクリートピット(鉄骨ユニット造、容量約50㎥)
燃料供給装置:回転アーム掻寄式供給装置
燃料搬送装置: スクリューコンベア式
ボイラー本体:木質燃料焚無圧開放式温水ボイラー(燃焼量:30万kcal/h(最
大100kg/h、発熱量3000kcal/kg)
灰出装置:スクリュー排出式、灰ボックスに収集
集塵装置:マルチサイクロン方式
制御盤:タッチパネル式自動運転、温水温度および排ガス管理 自動運転
蓄熱槽:容量15t
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会の平成23年度再生可能エネルギー熱利用加速化
支援対策事業[再生可能エネルギー熱事業者支援対策事業]を活用しています。
7
炉内焼却状況
事例③ホテルでの木質バイオマスボイラー利用システム
蓄熱槽により、急激な熱
負荷の変動へも対応が
可能です。
工夫している点
●工夫している点の1つ目として、ホテ
●次に、ホテルめぐまでは、ボイラー
ルめぐまでは、稚内市内の業者か
をユニットとして工場で組み立てを
ボ イラーの設置を 容易
にしています。
ら木質チップを購入し、給湯、暖房
行っているため、現場では設置を行
及び風呂加熱の熱エネルギーの約
うだけで済みます。
客 室 のテ レ ビ を 付 け た
時、一番初めにバイオマ
スボイラーの宣伝を流し
ています。
80%を木質バイオマスで賄っていま
●客室のテレビやホームページを通し
す。熱エネルギーを使う時とそうで
てホテルの木質バイオマスボイラー
ない時との熱負荷の差分(お客がい
を宣伝することで、幅広いPRも行っ
ない昼間と宿泊客がいる夕方から
ています。
夜にかけての時間帯)への対応方
法として、約15tの蓄熱槽(湯水タン
ク)を利用しています。また、この蓄
熱槽により、急激な熱負荷の変動
にも対応ができます。
灰受ボックス
取り組みの効果
●
ホテルめぐまにおける取組の効果
●
次に、燃料費の削減も達成できて
は主に2つあります。まず、客室テ
います。従来の灯油に代わり、木
レビによる木質バイオマスボイラー
質チップを使用することにより、約
の宣伝により、客の「環境に優しい
500万円の燃料費削減が達成され
ホテル」としての認識が高まり、高
ています。
評価を得ている点です。
集塵灰ボックス
今後の課題
●
ボイラーユニット及びサイロ
木質チップのは、どうしても季節に
●
今後の展開としては、昼間などの
よる水分量の変動や大きさのばら
ホテルの熱負荷が少ない時の熱
つきがあるため、運転エラーの原
利用の方法(温室ハウスなど)の
因となります。従って、今後は木質
設置や、他の再生可能エネル
チップの性状の均一化が課題とし
ギーと組み合わせ、ホテルの自
て挙げられます。
然エネルギーの依存度を高め、
宣伝効果を狙うことです。
8
事例④学校給食センター雪氷冷熱利用システム
(北海道弟子屈町)
取り組みの概要
エコスクール化の取り組みの
中で、更なるエコ化の推進と
して、中学校と併設する新し
い給食センターに雪氷冷熱冷
房を導入しています。
● 摩周湖など優れた自然環境を有
●
システムは、まず貯雪庫に約600tの
し、環境保全を重点政策として進
大きな雪山をつくり、雪の融水から熱
めてきた弟子屈町は、平成18年度
交換冷水循環方式により冷熱を取り
からの5ヶ年にわたり、地域特性を
出して、給食センター内のファンコイ
活かした新・省エネルギー導入の
ルユニットを介して冷風を送り出すも
検討を行っています。その最初の
のです。冷熱利用期間は4月から9月
取組として位置付けたのが平成22
くらいまで、年間の冷熱利用量は約
年度に改築した弟子屈中学校の
157GJを想定しています。雪山は遮光
エコスクール化で、新校舎には
断熱シートで被覆し、気温上昇による
様々な省エネ技術に加え新エネ
融解を夏期間においても最大限防ぐ
ルギーとして太陽光発電の導入
ものです。
が行われました。更なるエコ化の
推進として、中学校と併設する新
しい給食センターへの雪氷冷熱冷
房の導入に取り組んでいます。
【冷熱の流れ】
設備や技術の特徴
設備の概要
設備費
設備の稼働
状況
● プール底部から一次冷水(低温側;4
● 貯雪庫(貯蔵量:約600t うち冷熱利用量470t=157GJ、融解雪氷量
130t)
● 沈砂槽(砂、ごみ等の除去)
● 集水槽(冷水の貯留)
● 熱交換器(冷水循環方式 交換熱量80kw)
● 給食センター空調機(ファンコイルユニット 冷房能力11.0kw=5基
7.5kw=2基)
●学校給食センター雪氷冷熱利活用施設建築工事 工事費25,620千円
●学校給食センター雪氷冷熱利活用施設設備工事 工事費30,062千円
●工事費計55,682千円
(内 再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策費補助金22,504千円)
4月∼9月(雪冷房を1日4.5時間利用での想定値)
平成25年度実績:6月1日∼8月19日
<ランニング費用>
202千円/年(計画値)
(内訳) 燃料費(電力)22千円、運転経費(メンテ費等)180千円
一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会の平成23年度再生可能エネルギー熱利用加
速化支援対策事業[地域再生可能エネルギー熱導入促進対策事業]を活用しています。
9
度程度)を集水し、きょう雑物、砂など
を除去後、ポンプ槽に導き、冷水一次
ポンプで熱交換器に送水。
● 熱交換器により、一次冷水(低温側)
と二次冷水の熱交換を行う。熱交換
後の一次冷水(高温側;9度程度)は
配管により、再びプールに還水し、雪
山にて冷され4度の冷水となる。
● 二次冷水を冷水二次ポンプで給食セ
ンターに送水し、ファンコイルユニット
を介して給食センターに冷熱を供給。
事例④学校給食センター雪氷冷熱利用システム
工夫している点
電気使用量の削減、温
室効果ガスの削減のほ
か、学校での環境教育
での効果に着目してい
ます。
閉鎖していた町営プール施設を貯
●
●
●
貯雪方法はスノーマウント方式と呼
雪庫及び機械室として再利用して
ばれるものであり、取り外し可能な
おり、設備についても再資源化が
融解防止シートを雪山へテントのよ
図られています。
うに被覆します。この方式により建
雪氷の確保については、町による
設コストを低減しています。
年間排雪量が3,000t∼6,000t程度
あり、排雪作業の一環として行って
います。
取り組みの効果
●
給食センターでは調理時に大量
し、将来的には産業用冷熱として
の熱を使用するため室温が上昇
の利用による地域経済効果も期
し、冷涼な弟子屈町でも1年中エ
待されています。
アコンを使用しており、地域に降
ネ・省CO 2 化を図るとともに環境
〔計画値〕
経済性
年間電気料:▲125千円程度
年間水道料:+20千円程度
教材としての啓発効果が期待さ
●
る雪を補助冷房として利用する
●
ことで電気使用量を削減、省エ
れています。
●
自然再生可能エネルギーを教育
の現場に率先的に導入し、子供
省エネ効果
年間電気使用量:▲7,700kwh程度
CO2削減効果
年間排出量:▲2.7t
●
※雪氷冷熱設備及び給食センターの使用
電力は、併設の中学校と一括してメー
ター計算しているため、電力等削減効果
の実測値の把握は難しい。
たちが日常的に見て触れること
の出来る環境教材となることで、
将来、地域全体に「循環型社会」
等の環境意識が根付くことが期
今後の課題
待されています。
●
雪氷冷熱冷房の教育施設への
●
重機による雪山の造成、及び断熱
●
また、雪氷冷房だけでは調理室
導入はほとんど例がなく、普及拡
シートによる雪山の被覆は特殊な
全体の温度管理ができないこと
大に向けて積極的に他地域から
作業であり、委託による設備のメン
からエアコンとの併用となる場合
の視察を受け入れる予定です。
テナンスも視野に入れた技術要員
も多く、効果的な併用法を今後確
また、本事例のノウハウを活か
の確保が必要となっています。
立していく必要があること等が課
題となっています。
10
事例⑤埼玉メディカルパーク・スマートエネルギー
(埼玉県病院局)
県立がんセンター新病院を
核として、周辺の複数建物と
電気と熱を融通しあう、エネ
ルギーネットワークを構築。
省 エネ 、 省C O 2 、災 害時の
バックアップなど、環境と防
災に配慮した取組みを推進
しています。
設備や技術の特徴
設備の
概要
再生可能エネルギーやコージェネレー
ションの廃熱を有効利用するため、各施
設のBEMS、HEMS 機能を統合管理・制
御。これによりエリア内各機器の運用や
エネルギー融通等を最適制御して省CO2
化を推進
設備費
約14億円
設備
設置施設
仕様
コージェ
ネレー
ションシス
テム
がんセンター新病院
315kW×2台
(停電対応機)
35kW×3台
(停電対応機)
25kW×1台
1,400kW×1台
蒸気ジェ
ネリンク
ターボ冷
凍機
空冷HPチ
ラー
太陽熱集
熱パネル
太陽光発
電パネル
小型貫流
ボイラ
職員公舎
精神医療センター
がんセンター新病院
がんセンター新病院
がんセンター新病院
1,740kW×1台、
蓄熱槽1,500m3
900kW×3台
職員公舎
100kW
がんセンター新病院
職員公舎
がんセンター新病院
30kW
70kW
1,253kW×3台
取り組みの概要
●県立がんセンターは、昭和50年の開
●ネットワーク内の電気と熱をBEMS
院以来30年以上が経過し、この間の
(ビルディング エネルギー マネジメ
医療技術の進歩や施設の老朽化な
ント システム)によ り最適にコント
どに対応するため、新病院を建設す
ロールすることで無駄を省き、さらに
ることとしました。
モニタリング機器を使用してエネル
●新病院の整備にあたっては、省エ
ギー使用量の見える化を行い、ソフ
ネ、省CO2 対策、災害対策を推進す
ト面でも省エネ・省CO2を高めていま
る た め、隣接の 県立 精神 医療セン
す。
ター、職員公舎など周辺エリアの複
●また、災害時にはネットワークを経
数建物と 電気と熱(冷温水)を効率
由してエリア内の非常用発電機、太
的 に 融 通 し あ う「エ ネ ル ギ ー ネ ッ ト
陽光発電、ガスコジェネレーションの
ワーク」を構築する取組みを進めま
電力を病院に集約し、必要電力を確
した。
保します。
●設備には太陽光発電パネルや太陽
●これらの取り組みにより、建替え前
熱集熱パネルなど大規模な再生可
のがんセンターと比較して同面積当
能エネルギーや、最新の高効率機
た り 約 40%の 省 エ ネ、約 35% の 省
器を導入しています。
CO2を見込んでいます。
11
事例⑤埼玉メディカルパーク・スマートエネルギー
工夫している点
県立がんセンターという大型医療施設
「高度先進がん医療」を
実践 す ると ともに 、「日
本一患者と家族にやさし
い病院」、「災害に強く省
エネの病院」を目指して
います。
を中心に、既設建築物を含む複数建
物間で電気と熱をネットワーク化し、
ICT に よ る ス マ ー ト エ ネ ル ギ ー ネ ッ ト
ワークを構築しました。大規模に導入
された太陽光発電パネル、太陽熱集
熱パネルといった再生可能エネルギー
やコージェネレーションの発電・廃熱は
このネットワークによって、最大限に活
用することが可能となります。
高効率設備の導入にあわせ、地域一体と
なって油燃料から都市ガス燃料への燃料
転換を図るとともに、最新型の高効率設備
から地域のベースとなる熱供給を行うこと
により、既築部分を取り込んだエリア全体
の熱効率の向上、CO2 排出量の大幅な削
減が可能となります。
● 省エネ・省CO2 に加え、東日本大震災を教
訓に防災機能の強化も図りました。エネル
ギーのネットワーク化を活用し、非常用発
電機の連携運用や各建物へのコージェネ
レーションシステム分散設置により、中核
医療施設として災害時の対応力を強化し
ています。
●
●
取り組みの効果
● 埼玉県の環境スローガンである『ス
パークは、これを率先する先
トップ温暖化・埼玉ナビゲーシ ョン
導的な取り組みとして、エリア
2050(埼玉県地球温暖化対策実行
内 の CO2 排 出 量 を 2010 年度
計 画)』に お い て、2020 年 に お け る
比35%削減することを目指して
埼玉県の温室効果ガス排出量を
います。
2005年比で25%削減する目標が設
● 太陽光発電パネル計100kW、
定 さ れ て い ま す。埼 玉 メ デ ィ カ ル
コージェネレーションシステム
太陽熱利用の基本システム
①太陽熱設備では、まず「余熱槽1」(6t)の
昇温用として、給湯用水源の加温を行ない
ます(低温域でネットワークに乗せられな
い熱の活用)。
②「余熱槽1」が85度まで昇温しきると多目的
機能をもつ「蓄熱槽2」(27t)の加温を行いま
す(機能:1)ネットワークへの収熱、放熱
2)給湯加温 3)CGS廃熱の蓄熱、放熱 4)
太陽熱の蓄熱、放熱)
③「蓄熱槽2」も満蓄となった場合は、ネット
ワーク化された温水管により病院内蓄熱
槽と相互熱融通を行います。
※上記の設備と熱の製造予測、消費予測プ
ログラムの活用で必要な熱量を把握し最
適運転を支援しています。
計760kWの発電設備導入によ
り、電力のピークカット効果も
見込むとともに、エリア内施設
の電力負荷統合効果も合わ
せた電力デマンドの低減も期
共同溝
待できます。
ジェネリンク
今後の課題
●
今後、エネルギーデータを蓄積、分析
ギーネットワーク運用の確立を図ること
し、適正なエネルギー消費予測とこれ
が課題となっています。
を基にした最適な設備運転と、エネル
ヒートポンプチラー
12
事例⑥エコスクール・WASEDA
(早稲田大学高等学院)
取り組みの概要
全館空調を行う学校が増
え、CO2排出量増大が懸念さ
れる中、本事例では、太陽
光などに加えて、太陽熱・地
中熱も活用した創エネ・省エ
ネ・負荷削減技術を組み合
わせ、大幅なCO 2 排出量削
減と、快適・安全・安心の両
立させることを狙いとしてい
ます。
●
従来の学校では、空調は最低限
技術を組み合わせることにより、
のエリアに限られ、CO2排出量が
大幅なCO2排出量削減と、快適・
他用途と比較して少ない状況でし
安全・安心の両立させることが狙
た。しかし、近年では全館空調を
いとなっています 。
行う学校が増え、CO2排出量増大
●
また、再エネ設備、緑化、自然換
が懸念されています。本プロジェ
気、消費エネルギーの見える化
クトでは、早稲田大学高等学院
等を通じて、エコ情報を生徒に伝
(東京都練馬区)の体育館棟、講
え、これら情報を環境学習の教材
堂棟、普通教室棟の新築工事に
として活用する狙いもあります。
伴い、創エネ・省エネ・負荷削減
設 備
や 技
設備や技術の特徴
設備の
概要
設備費
設備の
稼働状
況
給湯用太陽熱集熱器(真空式)
2.69m2×8枚
空調用太陽熱集熱器(平板式)
2.01m2×150枚、及びソーラー吸
収式冷温水機
蓄熱槽(地下躯体)800m3
太陽熱利用システム導入事業費
約103百万円(内 再生可能エネ
ルギー熱利用加速化支援対策費
補助金49百万円)
太陽熱利用設備による熱供給の
計画は下記の通り
夏季(8月):施設全体の熱負荷
293GJに対し、太陽熱により43GJ
を供給(14.6%)
冬季(2月):施設全体の熱負荷
218GJに対し、太陽熱により117GJ
を供給(53.7%)
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会の
平成24、25年度再生可能エネルギー熱利用加
速化支援対策事業[地域再生可能エネルギー
熱導入促進対策事業]を活用しています。
様々な創エネ・省エネ・負荷削減技術を取
り入れた総合的な取り組みとなっていま
● 省エネ等
す。
*
*
● 再生可能エネルギー(熱)
*
*
*
*
●
*
集熱温度制御による太陽熱利用シス
テム
共同溝クールヒートレンチによる地中
熱利用システム
中温蓄熱槽による自然エネルギーの
最大化技術
水熱源ヒートポンプ+ソーラー吸収冷
温水機による高効率熱源システム
再生可能エネルギー(電気)
被災時対応型の太陽光発電システ
ム
13
*
*
*
*
*
*
*
*
*
風力利用最大化システム
気化潜熱を利用した外気処理シ
ステム
熱と光の選択導入型外皮システ
ム
屋上緑化断熱+集熱/発電パネ
ルによる日射遮蔽
教室空調ゼロワット制御
省エネの「見える化/聞こえる化」
システム
パッケージ空調台数制御
コアンダ効果を利用した大空間
居住域空調システム
教室の外気負荷最小化技術
LED照明+昼光連動制御
超節水便器
事例⑥エコスクール・WASEDA
熱損失の小さな中温度
帯の集熱システムを組
み合わせることにより、
システム全体としての太
陽熱の有効利用を高め
る工夫をしています。
工夫している点
● 学校施設では、土日や休業期間は
● 本事例では、熱損失の小さな中温
熱負荷は非常に小さく、事務所や
度帯で集熱を継続し、必要に応じて
商業施設と比較して負荷変動が大
電気エネルギーで昇温するシステ
きいという特徴があります。このよう
ムを組み合わせることによって、シ
な建物に太陽熱システムを適用し
ステム全体としての効率性を高め
た場合、太陽熱が得られる期間と
る工夫をしています。
熱需要が発生する期間にずれが生
● 特に冬季における集熱量を最大化
じ、高温度帯で集熱した場合、熱損
するため、傾斜角を55度として設置
失が大きくなります。
するなど、太陽熱を効率的に使うと
いう目的にそって最適化を行ってい
ます。
取り組みの効果
500,000
より、近年の一般的全館空調シス
テムと比較して年間CO2排出量が
約10%削減される見込みです。
また、太陽熱、水熱源ヒートポンプ、
ソーラー吸収冷温水機導入による
一次エネルギー削減率は32.7%と試
CO2排出量[kg-CO2/年]
太陽熱・地下熱システムの導入に
算されています。
再生可能エネルギー熱
導入による削減分(10%)
400,000
省エネ、他再エネ導入
による削減分(38%)
300,000
200,000
合計48%減
100,000
0
全館空調(近年型)
エコスクール・WASEDA
今後の課題
●本施設の建設完了は平成26年6月であり、
校施設としての背景があり、新しい太陽
現時点では課題は明らかとなっていません
熱の効率的方法にチャレンジしている事
が、従来の施設と比較して設備運用・管理
例です。
手順が増すため、今後どのように効率的に
●本事例を通じて、熱負荷変動の大きな施
設備運用を行っていくかが課題と言えま
設における太陽熱利用の導入拡大のた
す。
めの工夫、ノウハウを抽出していくことも
●また、本事例は短期の投資回収のみに固
執せず、省エネルギーを推進するという学
14
課題と言えます。
事例⑦仙台市での路内設置型下水熱利用システム
(積水化学工業株式会社)
取り組みの概要
市街の広範にわたって設置
されている下水管路からエ
ネルギーを回収可能、熱回
収管と管更生を同時に施工
可能な利用システムとして注
目されています。
● 都市の下水管渠から熱を取り出
を高めると同時に、熱媒体を循環さ
す事例は全国初の試みで、仙台
せる熱回収管の施工により熱回収機
市若林区において実証試験が行
能を付加しています。
われています(商
業店舗での給湯
利用)。
●
老朽化した下水
管内側に補強部
材 を 巻 き 付 け、
耐震性や耐久性
設備や技術の特徴
設備の
概要
設備の稼
働状況
● 熱取得方式:管路内設置の
螺旋管路更生一体型によ
る
● 管路径:f1200㎜ (更生後
f1030㎜)
● 管種:雨水・汚水合流式下
水管
● 管路長: 44.5 m
このシステムは、新管敷設時に対応で
実証試験段階
1)エネルギー消費量,エネル
ギー効率(COP),CO2排出量の
把握
2)変動に対する運転の安定性
の検証
げることができるのが特徴です。
一般社団法人新エネルギー導入促進協
議会の平成25年度再生可能エネルギー
熱利用高度複合システム実証事業(補助
事業)を活用しています
きると共に、需要が高まっている老朽
管路更生シ ステ ムと 組合 わせる こと
で、耐震性能を付加できるなど、機能
を高度化した管路として資産価値を上
●
システム全体の特徴
また、従来の管路外設置型熱回収技
術と比べて、以下の特徴があります。
(1) 建設コスト縮減、維持管理コスト縮
減が可能
(2) エネルギー消費量削減、温室効果ガ
ス排出量削減が可能
(3) 都市部に面的に布設された下水管
路を利用するため、広域に導入が可
能
15
事例⑦仙台市での管路内設置型下水熱利用システム
工夫している点
未処理下水と熱回収管
が直接触れる構造によ
る高い熱回収性能、特
別な維持管理作業が不
要ことなど特徴です。
本システムに用いる熱回収設備は、以
下の特徴があります。
●
を行うよう配管設計を行っています。それによ
り、様々な延長にも適用可能です。
未処理下水と熱回収管が直接触れ
●
特別な維持管理作業が不要
る構造による高い熱回収性能
本熱回収システムは、樹脂製帯状材料
本熱回収システムは、製管工法に用い
を製管する方式のため、従来の製管工
る帯状部材の内面に熱回収管が埋め
法同様に内面粗度の改善が図れます。
込まれている構造のため、下水管路内を
構造は、硬質塩化ビニル製の帯状部材
流れる未処理下水と直接熱交換が可
にポリエチレン管が埋め込まれた構造で
能となります。これにより、高い熱回収性
す。また、大阪B-Dashでの実証設備にお
能が得られます。
いて、熱回収管埋込みによる内面粗度へ
●
ユニット構造による任意の延長への
の影響はないことを確認しております。し
適用性と均一な熱交換
たがって、本熱回収更生管布設により別
本熱回収システムは、管軸方向(延長
途必要となる維持管理作業は不要です。
方向)にユニット分割された構造としてお
り、分割した各ユニットで同等の熱回収
取り組みの効果
●2013年11月のデータでは、気温の
●今後継続してデータを取得し、雨天
低下とともに下水温度も下がってお
時の集熱性能や管路内付着物の集
りますが、エネルギー効率は3.5∼
熱に与える影響などを調査し、熱利
4.0が得られており、安定かつ高効
用システムの長期運用上の課題を
率な運転を維持しています 。
整理する計画です 。
今後の課題
案件形成においては、計画の初期段階から、自
●
また、自治体の協力と理解を得つつ、実際
治体(下水道管理者)などの関係者と連携を図り
に管渠内の状況を確認しつつ(汚水量、季
進めていくことが重要です。
節毎の温度データ、劣化具合)、詳細のシ
●
例えば、対象となる管渠の情報を自治体より
ミュレーションを実施したり、最も負荷量の大
●
入手し、必要な負荷量に応じたシミュレーショ
きな時期(冷房であれば夏季、厳冬期、給湯
ンを実施することとなります。このためは、管
であれば厳冬期)の管路内データを入手す
渠の更生計画や地域の負荷及び下水管のポ
るなどして、検討することも重要です。
テンシャルなどの情報を設計時に共有化し、
設計計画に折り込んでいく必要があります。
16
事例⑧中之島二・三丁目熱供給センターでの河川水熱利用システム
(関電エネルギー開発株式会社)
取り組みの概要
熱源水・冷却水として100%
河川水を用いている地域熱
供給事業です。
●
河川水の温度差エネルギーを利
えるとともに、省エネルギーとCO2削減に
用した地域熱供給は、全国でも
大きく貢献しています。
この大阪・中之島三丁目プラント
●
ま た、大 阪 湾 近 く の 二 つ の 河 川(堂 島
とフェスティバルタワープラントを
川、土佐堀川)を利用し、河川の水涸れ
含め5例のみです。
の心配がないため、熱源水・冷却水とし
● 取水する河川水の温度は、外気
温と比べて夏は低く、冬は高く保
て100%河川水を用いている点は、日本
初、唯一の事例でもあります。
たれています。この温度差をエネ
● 平成17年の設備運用開始以来、本施設
ルギー源とし、ヒートポンプと熱
の見学者は延べ1万2千名近くに上って
交換器等を用いたシステムに
おり、河川水の温度差エネルギー利用
よって、地域の冷暖房需要に応
の代表例と言えます。
渡辺橋
取水口
堂島川
橋駅
ダイビル
中之島
ダイビル
本館
車渡辺
ィバル
フェステ
下街
プラザ地
京阪電
取水口
肥後橋
北西広場
プラント
(H25.3∼)
中之島 バ ル
ィ
フェステ
タワー
排水口
土佐堀川
関電
ィン グ
ビ ルデ
排水口
(仮称)
三井ガーデンホテル
大阪中之島
(建設中)
中之島三丁目プラント
(H17.1∼)
フェスティバルタワー
プラント (H24.11∼)
設備や技術の特徴
設備の概要
(第ⅠⅡⅢ
期)
設備費
(第Ⅲ期)
設備の稼働
状況
●供給概要
冷水供給能力 89,889MJ/h(往:4℃、還14℃)
温水供給能力 65,553MJ/h(往:47℃、還40℃)
●河川水利用概要
夏季利用水量 1.204m3/s、82,000m3/日
冬季利用水量 0.808m3/s、62,000m3/日
●熱源機器
スクリューヒートポンプ13組、ターボ冷凍機2機、氷蓄熱槽
第Ⅲ期では、主な熱源設備として冷温切替型のスクリュー
ヒートポンプ2組を設置する計画で、設備導入事業費は約
546百万円 (内 再生可能エネルギー熱利用加速化支援対
策費補助金181 百万円)
●熱供給プラントは水熱源スクリューヒートポンプ、水冷
式電動ターボ冷凍機、大規模氷蓄熱槽を熱源とし、堂
島川から取水し土佐堀川に排水する河川水を熱源水・
冷却水として全面的に活用しています。
●本システムでは冷房と暖房需要の100%をこの河川熱
によってまかなっています。地冷設備はビルの段階的
開発に合わせて増設されており 、第Ⅰ期は関電ビル
ディング、第Ⅱ期は中之島ダイビル、渡辺橋駅、第Ⅲ
地域熱供給事業として運用されています。
期はダイビル本館向けに設置され、供給してきていま
す。
「中之島 三丁目熱供給事業Ⅲ期」では、一般社団法人新エネルギー導
入促進協議会の平成24年度再生可能エネルギー熱利用加速化支援対
策事業が活用されています。
17
事例⑧中之島二・三丁目熱供給センターでの河川水熱利用システム
工夫している点
薬品などを 一切使用し
ないメカニカルな水処理
システムにより河川環境
に影響を与えないシステ
ムとなっています。
● 河川水を利用する場合、取り入れ
では、薬品などを一切使用しないメ
られた水中に貝等の水中生物が含
カニカルなシステムを採用して、熱
まれ、システム内で繁殖することが
交換チューブをボール洗浄装置に
あります。これを防止するためオゾ
より正常に保ちヒートポンプ性能を
ンなどを用いたケミカルな水処理が
維持しており、河川環境に影響を与
行われることもありますが、本事例
えないシステムとなっています。
取り組みの効果
●地域冷暖房の平均と比較して一次
は土佐堀川に排水されていますの
エネルギー消費を30%、CO2排出源
で、ヒートアイランド現象の抑制に役
立っています。
単位を42%削減しています。
●さ ら に、大 都 市 等 で 深 刻 な 問 題 と
● また、河川水利用により冷却塔の
なっているヒートアイランド現象の原
補給水が不要であり、上水道の使
因の一つは、大気への排熱といわ
用量が大幅に削減されています。
れていますが、本事例では大気へ
の排熱がなく、熱利用された河川水
今後の課題
●平成17年の供給開始以来、三期にわたり
設備増設を図っており、設備追加前後で
のプラントの運用最適化に取り組んでい
ます。
様々な設備のチューニング、運用ノウ
ハウの蓄積がなされてきました。
●河川水の温度差利用システムをより
利用しやすいものとするため、汎用的
●また、河川水利用システムは、事例も少
ないことから本システムの運用を通じて
18
な設備運用方法を構築することが課
題となっています。
事例⑨シーサイドももち地区海水熱利用システム
(株式会社福岡エネルギーサービス )
取り組みの概要
我が国で海水熱をヒートポンプ
熱源として活用した最初の地域
熱供給です。
海水は、夏期は外気温度よ り
冷たく、冬期は外気温度より温
かいため、外気熱源ヒートポン
プよりも高い効率(COP)で運転
が可能です。
● シーサイドももち地区は、博多湾を展
かい海水の持つ温度差エネル
望するウォーターフロントの環境に商
ギーを活用した海水熱源ヒートポ
業・業務・文化機能が高度に集積す
ンプを採用しています。平成5年4
る「ももち地区」及びスポーツ・レクリ
月にシーサイドももち地区地域熱
エーション施設の「地行地区」に人・情
供給として事業が開始されました。
報・文化が交流する洗練された都市
● この方式を採用することにより、
空間が形成されています。
個別のビルごとに空調する従来
●この地域に建設された業務施設や商
業施設などの空調に、夏期は外気温
の方式より大きな省エネルギー効
果が得られています。
度より冷たく、冬期は外気温度より温
設備や技術の特徴
設備の概
要
海水熱源ヒートポンプの効率(COP)向上のため、熱源
となる海水を外気温度に影響されにくい海底から取水
する「深層取水方式」を採用。
項
目
●海水熱源ヒートポンプ
第1熱源センター
[日本電気(株)
●水蓄熱槽(冷温水槽)
ビル地下]
●電動ターボ冷凍機
(熱回収型)
冬期の電算機室の冷房需要を賄うため、電動ターボ
冷凍機(熱回収型)を採用。
総事業費約160億円
設備の稼
働状況
地域熱供給事業として実施。
容
3,000RT
×3台
4,000m3
〈合計9,000RT〉
氷蓄熱槽(昼間の放熱能力は冷凍機1,500RT相当)お
よび水蓄熱槽(4,000㎥+1,900㎥)とともにベースエ
ネルギー源として活用し、安価な夜間電力の活用。
設備費
内
●ガス吸収式冷温水機
第2熱源センター
[(株)日立製作所
敷地内地下]
1,500RT
×1台
500RT
×1台
1,500RT
×2台
600RT
×2台
500RT
×1台
●水蓄熱槽(冷水槽)
1,900m3
●氷蓄熱槽(STL)
185m3
×3基
〈合計6,700RT〉
地域導管
19
●管 径:125A∼900A
●総延長:冷水管3,786m(往復) / 温水管3,895m(往復)
事例⑨シーサイドももち地区海水熱利用システム
工夫している点
シーサイドももち地区で
は、ビルに供給される温
熱や冷熱のほとんどが
海水から採熱されてい
ます。
●
海水熱源ヒートポンプと組み合わせて氷
し、設備容量の低減と安価な夜間
蓄熱槽(昼間の放熱能力は1,500RT相当)
電力の有効活用による経済性の向
および水蓄熱槽(4,000m3+1,900m3) を設置
上を図っています。
取り組みの効果
●
以前のデータ(2000年)ですが、シーサイドも
90,000
80,000
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
もち方式(海水熱源ヒートポンプ方式)は、従
来方式(ボイラ+吸収式冷凍機)と比較して一
次エネルギー換算で約38.0%の省エネルギー
効果を実現しています。
●
さらにCO2発生量削減率として47.3%、NOx排
出量削減率として57.2%と、大幅な環境保全
82,531.26
省エネ効果
37.99%
排出量削減
CO2; 47.34%
NOx; 57.17%
15,673.44
8,253.24
51,178.39
従来方式
1次エネルギー換
算
(Gcal)
シーサイドももち地区熱供給においては海水
CO2排出量(t)
熱源ヒートポンプの製造熱量の割合が約80%
と高いことから、これらの効果は海水温度差
ももち方式
15,313.30
6,588.90
効果も実現されています。
●
37.99%
NOX排出量(kg) 消費エネルギー
出典:特集「21世紀海水科学の展望」
エネルギーの活用によるところが大きいとい
21世紀への学術・技術展望 .海水温度差エネルギー利用の現状
えます。
と今後の展望
今後の課題
● 海水を熱源として活用するため、海
●
熱源導管や熱交換器等の付帯
洋生物の定期的な除去等が必要
設備が大きいため設備更新コス
になるなど、保守メンテナンスに手
トが大きいことが課題です。
間がかかることが課題です。
20
参
考
資
料
再生可能エネルギー熱利用にあたって
1
再生可能エネルギー熱とは
■ 再生可能エネルギー熱の特徴と利用の意義
再生可能エネルギーとしての重要性
わが国の主要なエネルギー源である石油・石炭等の化石燃料は限りがあるエ
ネルギー資源です。これに対し、太陽熱、地中熱、雪氷熱、バイオマス熱、
温度差エネルギー等のエネルギーは、一度利用しても比較的短期間に再生が
可能であり、枯渇しないエネルギーであり、このような「再生可能エネルギ
ー」の導入・普及を加速化することが求められています。
特に、一般家庭や業務用施設においては、エネルギー需要の半分以上が、給
湯、冷暖房、厨房等の熱需要です。このため、熱の分野での、再生可能エネ
ルギー熱の利用の拡大が重要です。
注)温度差エネルギー
河川水、海水、下水、下水処理水等の水源を熱源として利用することが可能
です。夏場は、水温の方が大気より温度が低く、一方、冬場は水温の方が大
気より温度が高いという水源の持つ温度特性を利用し、ヒートポンプを用い
て利用します。
業務用エネルギー消費
(2011年度)
冷房用
11%
動力・
照明用
49%
暖房用
17%
給湯用
14%
厨房用
9%
出典:エネルギー白書 2013
参考資料-1
6
2
注)原単位ベース(10 J/m )の値より作成
再生可能エネルギー熱利用にあたって
省エネ、ピークカット対策としての重要性
震災を契機として、電力供給の制約が顕在化し、節電やピークカットに取り
組むことの重要性が高まっています。再生可能エネルギー熱の利用は、省エ
ネやピークカット対策の一つとして注目されています。
1次エネルギーの消費量
個別熱源システム(各ビル単独)
100%
熱供給事業平均
90%
未利用エネルギー活用
(熱供給事業、河川水熱利用のケース)
79%
出典:経済産業省エネルギー庁 『未利用エネルギー面的活用熱供給の実態と次世代に向けた方向性』
(2008 年 3 月)
分散型エネルギーシステムとしての重要性
大規模集中型のエネルギーシステムの脆弱性が明らかになり、災害にも強い
分散型のエネルギーシステムが求められています。再生可能エネルギー熱は、
地産地消型のエネルギーであり、他のエネルギーとの組み合わせ等により、
分散型エネルギーシステムの構築において重要な役割を果たすことができま
す。
地域への貢献等
地域への貢献等の効果への期待
再生可能エネルギー熱は、エネルギーの自給・地産地消、地域の低炭素化、
バイオマス等の地域資源を活用した新たな産業創出といった面からも期待さ
れています。
地中熱や温度差熱を利用したヒートポンプ空調システムは、冷房排熱を大気
中に放出しないことから、都市圏でのヒートアイランド現象の緩和に寄与す
ることも期待されています。
参考資料-2
再生可能エネルギー熱利用にあたって
■ 再生エネルギー熱の種類
再生エネルギー熱の種類
太陽熱
<導入のポイント>
日照条件の良い地域で広範に導入可能です。
建物屋上等への設置では、集熱器の重量を支える強度、設
置空間が必要です。
概 要
太陽の熱エネルギーを太陽集熱器に集め、水や空気等の熱媒体を暖め給
湯や冷暖房等に活用するシステムです。
技術の特徴
ソーラーシステム(水式と空気式)と太陽熱温水器に大別されます。
太陽熱を直接活用できる給湯需要が多い建物、施設で導入効果が大き
いことが特徴です(住宅、ホテル、福祉施設、病院等)。
出典:資源エネルギー庁 HP、あったかエコ太陽熱
導入状況
日本ではオイルショック時に住宅用太陽熱利用の導入が進みました
が近年は減少傾向にあります。
設置実績
(万台)
ソーラーシステム
太陽熱温水器
90
80
70
<累積出荷台数>
(2012 年末現在)
ソーラーシステム: 658千台
太陽熱温水器:6,844千台
60
50
※ソーラーシステムは、自主統計に
よる設置台数。
※太陽熱温水器は経済産業省「鉄
鋼・非鉄金属・金属製品統計」か
らの販売台数
40
30
20
10
0
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2012
出典:ソーラーシステム振興協会
参考資料-3
再生可能エネルギー熱利用にあたって
下水熱
<導入のポイント>
市街の広範にわたって設置されている下水管路からエネル
ギーを回収可能です。
規制緩和により活用機会が拡大しています。
下水の利用にあたっては、下水道管理者との協議が必要
です。
概 要
下水の水温は大気に比べ、年間を通して安定しており、冬は暖かく、夏
は冷たい特質があり、都市内に豊富に存在しています。
未処理下水、下水処理水の水を熱源として、その熱をヒートポンプ等で
汲み上げることにより、冷暖房や給湯等の用途に利用します。
技術の特徴
下水の種類別に、①処理水を利用するもの、②未処理水を利用するも
のがあります。
未処理水の熱の回収方法としては、①コンパクト型管外熱交換器方式、
②二重管式下水管方式、③管組込方式、④既設管設置方式、⑤更生
管組込方式等が考えられています。
<処理水の利用例>
下水道施設
熱需要家施設
出典:国土交通省「下水熱でスマートなエネルギー利用を ~ まちづくりにおける下水熱活用の提案~
導入状況
現在は、処理場、ポンプ
場付近での利用に限定さ
れています。
処理水〔大規模〕
幕張新都心ハイテク・ビジネス地区、江東区新
砂三丁目地区、ソニーシティ(ソニー本社)等
未処理水〔大規模〕
未処理水〔大規模〕
後楽一丁目地区、盛岡駅西口
今後は、水道管きょ熱利
用により、利用可能エリ
アの拡大が期待されてい
ます。
出典:仙台市資料
参考資料-4
再生可能エネルギー熱利用にあたって
河川水熱
<導入のポイント>
安定した水量の河川水の利用が可能な川岸で導入可能
です。
河川水の利用にあたっては、関係者との調整が必要で
す。
(例:河川法に基づく河川水使用許可手続き、環境影響調
査等の手続き等)
概 要
河川や運河の水を熱源として、その熱をヒートポンプ等で汲み上げることに
より、冷暖房や給湯等の用途に利用します。
技術の特徴
【導入の計画検討面】
安定した水量の河川での導入
(立地場所の制約があります)
地域開発と連携した
計画検討が重要です
採熱・熱交換等の設備投資、取水設備、放
流設備等の土木工事費が嵩むため、大規
模な熱利用での導入
【運転管理面】
雨天増水時、荒天時の取水施設の衝撃対策
夾雑物処理対策
(例:オートストレナーによる異物除去)
導入状況
地域冷暖房や再開発街区、大規模施設における河川水利用を中心に導
入が行われています。
大規模な地域熱供給 1)
小規模な地域熱供給 2)
箱崎地区
リバーサイド隅田
富山駅北地区
大川端リバーシティ
天満橋一丁目地区
室町一丁目再開発
中之島二・三丁目地区
中之島セントラルタワー
注 1)熱供給事業法の適用を受けるもの。
2) 地点熱供給・建物間熱融通等、熱供給事業法の適用を受けないもの。
参考資料-5
再生可能エネルギー熱利用にあたって
地中熱
<導入のポイント>
天候に左右されず、一年を通じて、昼夜を問わず、利用可
能であることが特徴です。
地盤の熱伝導率が高い地域、地下水量が豊富な地域で有
利です。地中の条件を調査・確認し、良好な熱利用率で持
続的に利用することが重要です。
概 要
夏場は外気温度よりも地中温度が
低く、冬場は外気温度よりも地中温
度が高いことから、この温度差を利
用します。
出典:地中熱利用促進協会
技術の特徴
ヒートポンプシステム(ヒート
ポンプの熱源として利用)と
して、①クローズドループ
(不凍液等を循環させる方
式)、②オープンループ(地
下水を利用する方式)があり
ます。
クローズドループの採熱技
術としては、①ボアホール方
式、②杭方式があります。
出典:地中熱利用促進協協会
導入状況
主に住宅・事務所・公共
施設等での冷暖房・給湯
や道路融雪に利用されて
いますが、工場、学校、店
舗、温室等の農業施設等
にも幅広く導入されていま
す。
地域冷暖
房施設
その他
実験施設
農業施設
駐車場(融
雪)
道路(融雪)
, 1
, 44
, 26
, 33
, 2
,
住宅
59
工場
温浴施設
宿泊施設
, 434
, 28
, 16
, 35
店舗
, 40
事務所
, 114
福祉施設
病院・医療
施設 幼稚園・保
育所
, 12
, 19
学校
, 40
公共施設
, 72
, 15
参考資料-6
2011 年 12 月現在、累計 990 件
出典:環境省
再生可能エネルギー熱利用にあたって
雪氷熱
<導入のポイント>
寒冷地の気象特性を活用するため、利用地域は限定さ
れますが、資源は豊富です。
雪堆積場、融雪槽等大量の雪氷が集積する施設があ
り、雪氷収集、輸送のコスト削減が可能な地区で適用性
が高い。
概 要
雪または氷の冷熱を冷蔵、冷房その他の用途に利用します。
技術の特徴
【冷熱源の確保・保存】
①雪の確保・保存、②氷の確保・保存、③ヒートパイプによる凍土等の形
成等があります。
【貯蔵庫や室内に雪氷の冷熱を供給する方法】
①直接熱交換冷風循環方式、②熱交換冷水循環方式、③自然対流方
式、これらの組み合わせ等があります。
【熱の利用面】
雪氷熱利用の冷気は通常の冷蔵施設と異なり、適度な水分を含んだ冷気
であることから、食物の冷蔵に適しているといった特徴があります。
夏期に使用する熱の需要量、設置した設備容量等を踏まえた十分
な量の雪氷を冬期に確保する必要があります。
導入状況
北日本や日本海側を中心に全国で140件を超える事例があり、公共施設
の冷房、農産物貯蔵、住宅、福祉施設の冷房等に利用されています。
参考資料-7
再生可能エネルギー熱利用にあたって
バイオマス熱
<導入のポイント>
バイオマス資源が豊富で入手が容易な区域で導
入可能です。
地域で発生するバイオマスを活用することで、原
料から利用までの地産地消型の利用システムの
構築が可能です。例えば、地域の間伐材等を活
用することで地域経済への貢献にも寄与します。
概 要
バイオマス資源を直接燃焼し、ボイラーから発生する蒸気の熱を利用し
ます。
バイオマス資源を発酵させて発生したバイオガスを燃焼し、ボイラーか
ら発生する蒸気の熱を利用します。
技術の特徴
【エネルギー化のための技術】
バイオマスボイラー(直接燃焼)
バイオガス化(メタン発酵等)とガス
ボイラー
【原料の調達に関連する技術】
間伐材等の収集、輸送技術
ペレット化
地域で発生するバイオマス
を活用する仕組みと連携す
ることで、地域経済への波及
効果も期待できます。
導入状況
木質バイオマスボイラー、食品工場等でのメタン発酵等が多数導入され
ています。
<導入分野の例>
温泉施設での木質バイオマスボイラーの利用
(加温用に利用)
福祉施設での木質バイオマスボイラーの利用
(施設の暖房に利用)
食品工場廃水のバイオガス化利用
(有機性廃水よりバイオガスを取り出し、ガスボイラーで燃焼さ
せ、食品加工の熱源として利用)
参考資料-8
再生可能エネルギー熱利用にあたって
2
導入検討
導入検討の
検討の流れ
■ 再生可能エネルギー熱の選択
再生可能エネルギー熱の導入検討にあたっては、地域特性等を考慮し、導入可
能な再生エネルギー熱種を明確化することが重要です。
種 類
太陽熱
下水熱
河川水、
海水熱
地中熱
雪氷熱
地域特性を踏まえた特徴
日照条件の良い地域(西日本、中部、関東等)で導入可能です。
採熱器の除雪、凍結防止が必要な積雪寒冷地等では導入に制約が
あります(対策が必要です)。
下水処理場、ポンプ所、幹線管きょと隣接する区域で導入が可能
です。
処理水の送水管を整備することにより導入範囲の拡大が期待され
ています。
今後、下水管きょで直接採熱・利用する技術が実用化された場合
は、下水幹線管きょ網の敷設地域に導入範囲が拡大することが期
待されています。
安定した水量の河川水、海水の利用が可能な川岸、臨海部地域で
導入が可能です。
取水施設の整備が洪水対策等を阻害しないことが必要です。
地盤の熱伝導率が高い地域、地下水量が豊富な地域で導入可能で
す。採熱層の地質、地中温度、地下水の水位、流速、水質等の地
中の条件を調査・確認し、良好な熱利用率で持続的に利用するこ
とが重要です。
地下水の利用(オープンループ方式)は揚水規制の対象外である
ことが必要です。
積算寒度が 200℃・日以上の地域(北海道、東北、信州等)で導入
可能です。
注)積算寒度:一日の平均気温がマイナスとなった日の温度を合計した数字。
バイオマ
ス熱
雪堆積場、融雪槽等大量の雪氷が集積する施設があり、雪氷収
集、輸送のコスト削減が可能な地区で適用性が高い。
バイオマス資源が豊富で、安定的な調達が可能な地域で導入可能
です。
なお、バイオマス燃料(木質ペレット等)の流通体制を整えるこ
とにより広範な地域での導入が期待されています。
参考資料-9
再生可能エネルギー熱利用にあたって
■ 太陽熱の導入検討の流れ
導入の一般的な流れと留意事項の例示
計画・調整
〇導入意義の検討
省エネの推進等
方式選定
・太陽熱温水器
調査・設計
・ソーラーシステム(水式、空
〇設計条件の調査・検討
気式)
・セントラル太陽熱利用システ
方式の選定
ム(集合住宅向け)
導入システムの具体化
導入システムの具体化
・日射条件、太陽熱の利用量
〇経済性の検討
設備費、運転管理費
・利用用途、熱需要量の把握
・設置場所、設置方法
〇設計
・集熱器、配管、蓄熱槽等
工事・検査
〇工事
運転開始
○メンテナンス、保守
参考資料-10
再生可能エネルギー熱利用にあたって
方式の
方式の選定
・初期の太陽熱利用は大部分が太陽熱温水器の導入で占められていましたが、
近年は空気式ソーラーシステムや太陽熱利用の冷暖房システム等、太陽熱を
より多様な用途に利用するシステムが開発されています。
・最近は集合住宅向けのシステム(個別設置、集中設置等)や事務所ビルに使
用する冷房用システムが実用化しており、その導入拡大が期待されています。
・太陽熱の利用目的、対象施設の熱需要量等を踏まえて、最適な太陽熱利用方
式を選定します。
導入システムの具体化
・太陽熱を利用するのに十分な日照状況であるかを確認することが必要です。
・建物配置、屋上スペース等の設置場所の状況、周囲の日射遮蔽物の有無、熱
需要等を把握し、太陽熱利用量、利用率(熱負荷に対する割合)等を把握し
ます。
・導入にあたっては、屋根等への集熱器や配管の設置方法等の設計条件を調査
します。設置場所としては、建物の屋根の他、駐車場の屋根を利用し設置ス
ペースの有効を図っている事例もあります。
・ボイラーや給湯器の位置について確認する必要があります(集熱器の設置場
所が熱の需要場所と離れていると保温材等配管のコストが高くなりますので
留意が必要です)。また、保温性の高い配管を利用し、熱のロスを抑える工
夫も重要です。
・太陽熱は、天候等により熱の供給量が変動することから、バックアップ用の
熱源設備や蓄熱槽との組み合わせ等により安定供給可能な体制を確保するこ
とが重要です。
・建築基準法等、関係法令に対応した設計検討が必要です(例:集熱器を屋根
に設置する場合の建物の強度の問題や工法)。
・設置後は、各機器・システムの性能、耐久性を維持するため、定期的なメン
テナンスが必要であり(日常点検、定期点検等)1、実施体制の検討が重要で
す。
1
NEDO「平成 21 年度業務用太陽熱利用システムの導入検討ガイドライン」p.33-35 参照
参考資料-11
再生可能エネルギー熱利用にあたって
■ 下水熱の導入検討の流れ
導入の一般的な流れと留意事項の例示
地域計画との調整
計画・調整
・関係機関との調整
〇導入意義の検討
省エネ推進、ヒートアイランド対策等
・「特定都市再生緊急整備地域
に係る整備計画」または「低
炭素まちづくり計画」への記
〇地域計画との調整
載/計画決定
〇下水熱利用の申請
→下水道管理者の同意
〇下水道施設への接続許可申請→許可
〇熱源供給契約の締結
下水熱利用の
下水熱利用の手続き
・情報提供依頼
・利用申請
調査・設計
〇設計条件の調査、検討
方式の
方式の選定
方式の選定
・管路外設置型熱回収方式、管
路内設置型熱回収方式
導入システムの具体化
導入システムの具体化
〇経済性の検討
設備費、運転管理費
・下水道管理者との連携による
下水の状況確認
〇設計
・採熱場所、配管ルート、熱交
換器等
工事・検査
〇工事
〇完成検査
申請内容との整合性確認
完成検査
・下水道管理者による検査
運転開始
○メンテナンス、保守
参考資料-12
再生可能エネルギー熱利用にあたって
低炭素まちづくり計画等の
低炭素まちづくり計画等の地域計画との調整
・民間事業者が未処理下水を熱源とする熱を利用する場合には、「特定都市再
生緊急整備地域に係る整備計画」または「低炭素まちづくり計画」への記載、
計画の決定が必要となり、関係者との調整、下水道管理者の同意が必要です。
下水道管理者との調整
・計画の初期段階から、自治体(下水道管理者)等の関係者と連携を図り進め
ていくことが重要です。
国土交通省は、下水熱利用設備の下水道施設への接続に係る許可手続、許可申
請に至る事前手続及び競合した場合における調整方法等について記載した「民
間事業者による下水熱利用手続ガイドライン」を策定しています。
出典:国土交通省「民間事業者による下水熱利用手続ガイドラインの概要」
方式の選定
方式の選定
・従来の下水処理場、ポンプ所で下水から採熱する方式に加えて、下水管路か
ら直接下水熱を活用するためのコンパクトな熱交換器、ヒートポンプを組み
合わせたパッケージシステムの実証研究が進んでいます。
導入システムの具体化
・自治体(下水道管理者)等の関係者と連携を図り、下水の状況(水量、温度
等)を確認しつつ進めていくことが重要です。
完成検査
・工事完了後に水道施設への接続設備の設置が申請内容と整合しているかどう
か、下水道管理者の検査が必要です。
参考資料-13
再生可能エネルギー熱利用にあたって
■ 河川水熱の導入検討の流れ
導入の一般的な流れと留意事項の例示
環境影響評価
・河川環境調査(治水、利水、
計画・調整
〇導入意義、河川水の熱利用計画の検討
省エネ推進、ヒートアイランド対策等
生態系等への影響)
・河川流況変化、水温変化の予
測
〇環境影響評価
・関係者との協議
〇流水占用の許可、河川区域内の土地の
占用、河川区域の工作物新築、土地形
状を変更する行為の許可に関する調整
流水占用等の
流水占用等の許可
等の許可手続き
許可手続き
・河川法に基づく河川管理者の
許可
〇流水占用等の許可、許可条件の付与
流水占用条件
・取水排水温度差
・取水流量
調査・設計
〇設計条件の調査・検討
導入システムの具体化
導入システムの具体化
・取水・排水場所、配管ルート
〇経済性の検討
設備費、運転管理費
等
・天候による河川流量変動対
〇設計
策、水中の夾雑物対策、腐食
対策
工事・検査
〇工事
〇完成検査(河川管理者)
占用許可内容と整合性確認
完成検査
・河川管理者による検査
運転開始
○メンテナンス、保守
〇管理情報報告(定期報告)
流量・水温
溶存酸素(必要に応じ) 等
参考資料-14
再生可能エネルギー熱利用にあたって
環境影響評価
・河川水熱の利用にあたっては、治水、利水及び生態系等の河川機能に著しい
影響を与えないものでなければならないとされており、このため、事前に河
川環境調査の実施が必要となります。河川環境調査の内容は、河川水熱利用
に係わる河川流況、河川形状、河川水質、水生生物、河川周辺の利用状況及
び近傍の気象となっており、河川水熱利用による流況変化と水温変化が当該
水域の河川環境に与える影響の検討が必要です。また、検討に際しては、河
川流況変化及び水温変化の予測を行う必要があります2。
流水占用許可申請
・河川法では、河川の流水を取水等により排他的に使用することを「流水の占
用」と規定しており、以下の各項目について河川管理者の許可を得ることが
必要です。
(参考)水利使用許可の判断基準3。
公共の福祉の 水利使用の目的及び事業内容が、国民経済の発展及び国民生活の向
増進
上に寄与し、公共の福祉の増進に資するものであること。
実行の確実性 申請者の事業計画が妥当であるとともに、関係法令の許可、申請者
の当該事業を遂行するための能力及び信用等、水利使用の実行の確
実性が確保されていること。
河川流量と取 河川の流況等に照らし、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の
水量の関係
維持に支障を与えることなく安定的に当該水利使用の許可に係る取
水を行えるものであること。
公益上の支障 流水の占用のためのダム、堰、水門等の工作物の新築等が河川法第
の有無
26 条第 1 項(工作物の新築等の許可)の審査基準を満たしている
等、当該水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じるおそ
れがないこと。
流水占用条件
・取水口ごとの取水排水温度差、取水流量等について必要な条件が定められま
す。
導入システムの具体化
・熱需要施設、河川に関する基本条件を整理し、河川水熱利用の可能性がある
かどうか概略検討を行なった後に、システム検討・評価を行います。その際
には、天候による河川流量変動対策、水中の夾雑物対策、腐食対策といった
河川水熱利用に特有の項目について留意しつつ、必要な検討を行います。
完成検査
・工事完了後に取水のための工作物設置に係る土地の占用、河川区域における
工作物、取水のため掘削や盛土が申請内容と整合しているかどうか、河川管
理者の検査を受ける必要があります。
「河川水熱エネルギー利用に係る河川環境影響検討指針(案)について」(平成 7 年建河計発第 12
号平成 7 年 2 月 15 日)参照
2
3 国土交通省ホームページ 水管理・国土保全 「水利使用許可の判断基準」
(http://www.mlit.go.jp/river/riyou/main/suiriken/kyoka/index.html)参照
参考資料-15
再生可能エネルギー熱利用にあたって
■ 地中熱の導入検討の流れ
導入の一般的な流れと留意事項の例示
計画・調整
〇導入意義の検討
省エネ推進、ヒートアイランド対策等
地下水利用条件の検討
地下水利用条件の検討
・工業用水法、ビル用水法、自
治体の条例等の地下水揚水に
〇地下水利用条件の確認
関する規制への対応検討(オ
ープンループ方式の場合)
調査・設計
〇設計条件の調査・検討
方式の
方式の選定
方式の選定
・オープンループ方式、クロー
導入システムの具体化
ズドループ方式
〇経済性の検討
設備費、運転管理費
導入システムの具体化
〇設計
・地質構成、地下水の有無等の
地中条件の把握(必要に応
じ、熱応答試験等)
工事・検査
・熱交換井の深さ、本数等
〇工事
・還元井の配置、本数等
運転開始
○メンテナンス、保守
〇持続的運用のためのモニタリング
モニタリング
・地下水、地盤環境への影響
参考資料-16
再生可能エネルギー熱利用にあたって
地下水利用条件の検討
地下水利用条件の検討
・オープンループ方式では地下水をくみ上げて使用するため、地域や揚水量に
よっては、地下水揚水に関する規制(工業用水法、ビル用水法〔建築物用の地下
水の採取の規制に関する法律〕、地方公共団体の条例等)の対象となる可能性があ
ります。特に、揚水規制がある地域では、揚水の可否、運用条件、許可申請
手続き等を確認する必要があります。
※地下水の揚水に関する地方自治体の条例としては、東京都環境確保条例(地下
水の揚水施設の構造基準及び揚水量の制限)等があります。
・揚水しようとした地下水に有害物質(ひ素、鉛等)が含まれている場合には
特に注意が必要です(水質汚濁防止法に基づく排水基準の順守等)。
方式の選定
方式の選定
・地中熱を利用したヒートポンプの方式には、「クローズドループ方式」と
「オープンループ方式(還元型、放流型)」があります。
※クローズドループ方式:熱媒体を地中に循環させて地下水や地盤と熱のやり取
りを行う方式。
※オープンループ方式:揚水した地下水と熱をやり取りし、地下水を地中に戻す
または地上で放流する方式。
・導入方式の選定は、地下水・地盤環境の保全や熱利用効率の維持の視点から、
地中熱利用ヒートポンプの規模、年間の熱利用方法の想定、利用可能な深さ
(概ね 0~100m)での地下水の有無等に留意しながら行います4。
導入システムの具体化
・クローズドループ方式の場合、熱交換井の深さあたりの可能熱交換量は、地
質構成、地下水の有無、熱交換器のサイズ、U チューブの素材、熱交換井の充
てん剤の有無・素材、温度条件等に左右されます5。
・対象地点における可能熱交換量を把握する方法として、熱応答試験(サーマ
ルレスポンステスト)があり、出力規模に応じた必要な熱交換井の深さを定
める上で有効は手法です。
持続的運用のためのモニタリング
・地中熱利用にあたっては、採熱や放熱による地下水・地盤環境への影響に留
意しつつ、過剰な負荷をかけないよう、持続的に利用することが重要です。
適切な利用範囲を超え、熱利用対象の地下水・地盤温度に大きな変化をもた
らすような運転を継続すると、運転効率の低下につながる可能性があります。
運転効率に影響する項目を定期的・継続的にモニタリングすることが重要で
す。クローズド方式では、地下水・地盤温度への影響、地下水質への影響等
について、一方、オープンループ方式では、地下水のくみ上げや放流、還元
に関して、揚水による地下水位への影響、放流先水域への水温・水質への影
響、地下水の還元による水温・水質への影響等に留意が必要です6。
4
5
6
環境省水・大気環境局「地中熱利用にあたってのガイドライン」P.16 参照
環境省水・大気環境局「地中熱利用にあたってのガイドライン」P.22 参照
環境省水・大気環境局「地中熱利用にあたってのガイドライン」P.34-36 参照
参考資料-17
再生可能エネルギー熱利用にあたって
■ 雪氷冷熱の導入検討の流れ
導入の一般的な流れと留意事項の例示
計画・調整
導入効果の検討
導入効果の検討
・熱の利用先での導入効果(農
産物や食品の貯蔵分野での利
用等)
〇導入意義の検討
省エネ推進、産業振興等
調査・設計
方式の選定
・雪氷の貯蔵方法
〇設計条件の調査・検討
方式の選定
導入システムの具体化
導入システムの具体化
・利用施設の熱負荷条件の把握
・雪氷確保方策の検討
・雪の堆積被覆材の設定と使用
後の処理方法の検討
関係者との調整
〇経済性の検討
設備費、運転管理費
関係者との調整
・融解冷水の放流による地域環
境への影響等
・関係者への事前説明(必要に
応じ)
〇設計
工事
〇工事
運転開始
○雪氷の安定確保
○メンテナンス、保守
参考資料-18
再生可能エネルギー熱利用にあたって
導入効果
導入効果の検討
効果の検討
・雪氷熱利用は、冷房用の冷熱源としての意義に加えて、農産物の品質の維
持・向上(例えば、低温貯蔵による農産物の鮮度維持、糖度増加による食味
の向上)等、利用面での付加価値化も期待されており、雪氷熱利用を通じた、
地域における農業、食品産業等での産業振興の効果が注目されています7。
・また、雪という地域の身近な資源を利用した取り組みであることから、地域
での環境意識の向上にも役立つことが期待されます(例えば、学校で雪氷熱
利用することで環境教育に役立てる事例も見られます。)
方式の選定
・雪を確保し保存する方法には、重機等を使用し、直接、貯雪庫等へ雪を搬入
する方式、雪をコンテナに詰め貯雪庫へコンテナを運び入れる方式、利雪用
雪堆積場を造成する方式(スノーマウンド)等があります。一方、氷を確保
する方法には、貯氷庫内の水槽等に水を張り、冬季の冷たい外気を取り入れ
結氷させる方式、沼等に張った氷を切り出して、貯氷庫へ運び入れる方式等
があります。また、貯蔵庫や室内に、雪氷の冷熱を供給する方法としては、
直接熱交換冷風循環方式、熱交換冷水循環方式、自然対流方式、それらの組
み合わせ等の方式があります8。
・雪を堆積して貯蔵する場合、断熱被覆材(バーク材、籾殻、遮光断熱シート
等)が利用されます。被覆材の選定に際しては、使用後の処理方法について
も検討しておくことが必要です(産業廃棄物としての処理、バイオマスとし
ての有利用等)。
導入システムの具体化
・利用施設の熱負荷条件
利用施設の規模、断熱性能、設定温度、冷熱の利用期間、外気温条件等を
把握し、年間の冷熱利用量を算定し、必要な貯雪量等を設定します。
・雪氷確保方策の検討
使用する雪と収集方法を検討します。事業性等を考えると、除雪作業で除
雪した雪の利用が効果的です。
関係者との調整
関係者との調整
・大規模な雪利用では、融解冷水の放流による地域環境への影響等についても
留意が必要です。農業関係者や地域住民等への事前説明を行う等、関係者と
の調整が必要な場合もあります。
7
8
北海道経済部産業振興局環境・エネルギー室「エネルギー地産地消導入検討マニュアル」p.49-55
北海道経済産業局「雪氷熱エネルギー活用事例集 5」p.1-4 参照
参考資料-19
再生可能エネルギー熱利用にあたって
■ バイオマス熱の導入検討の流れ
導入の一般的な流れと留意事項の例示
導入効果の検討
導入効果の検討
・地域経済への貢献(地域で発
計画・調整
〇導入意義の検討
省エネ推進、産業振興等
生する間伐材等利用)
〇利用バイオマスの把握
間伐材、製材残材、建設廃材、有機性
廃棄物等
バイオマス把握
・発生量、発生時期
バイオマスの調達方法の検討
バイオマスの調達方法の検討
・安定確保のための方策
調査・設計
・関係者との連携(自治体、林
〇設計条件の調査・検討
業関係者等)
エネルギー利用方式の選定
エネルギー利用方式の選定
バイオマスの調達方法の検討
・バイオマスボイラー(直接燃
導入システムの具体化
・施設規模の設定等
焼)
・バイオガス化+ガスボイラー
・副産物の利用・処理方法の検討
による熱利用
設備規模の設定
関係者との調整
・バイオマス供給量
・熱需要
・廃棄物処理法等、関係法令へ
〇経済性の検討
設備費、運転管理費
の対応(必要応じ)
〇設計
焼却灰等の処理
焼却灰等の処理方法の検討
処理方法の検討
・廃棄物処理法
・焼却灰等の処理方法
工事・検査
関係者との調整
・周辺への環境影響
・関係者への事前説明、合意形
成
〇工事
運転開始
○原料の安定確保、焼却灰等の処理
○メンテナンス、保守
参考資料-20
再生可能エネルギー熱利用にあたって
導入効果
導入効果の検討
効果の検討
・地域で発生するバイオマスを活用することで、原料から利用までの地産地消
型の利用システムの構築が可能です。例えば、地域の間伐材、林地残材を活
用することで地域の産業振興や雇用創出にも寄与します。
利用バイオマスの把握
・木質バイオマスとしては、製材残材、建築廃材、間伐材、林地残材等が利用
されています。また、有機性廃棄物としては、食品廃棄物、排水汚泥等が利
用されています。なお、塗料や薬剤等を含む廃木材も存在し、利用する際に
は留意が必要です。
バイオマスの調達
バイオマスの調達方法
の調達方法の検討
方法の検討
・利用するバイオマスの性状、量、供給安定性、収集・輸送方法を確認し、バ
イオマスの供給体制を検討することが重要です。
・特に、間伐材、林地残材等を利用する場合は、収集運搬コストに留意し、経
済的に見合う範囲内で考えることが重要です。また、自治体関係者や林業関
係者等、地域関係者との連携が重要です。
エネルギー利用方式の選定
エネルギー利用方式の選定
・バイオマスの性状等を踏まえ、①バイオマスボイラー(直接燃焼)による熱
利用の方式、②メタン発酵等によりバイオガス化し、バイオガス焚きボイラ
ーにより熱利用する方式等、最適なエネルギー利用の方法を検討します。
施設規模の設定等
施設規模の設定等
・バイオマス供給量、熱需要等から最適な施設規模を設定します。
・なお、産業廃棄物の中間処理施設として必要な施設設置許可や中間廃棄物処
理業許可が必要となる場合があり、関係法令の確認や関係機関等への相談が
重要です。
焼却灰
焼却灰等の処理方法の検討
処理方法の検討
・バイオマスボイラーにおける焼却灰の処理方法について検討することが重要
です。薬品等有害物質を含んでいない木質バイオマスの焼却灰を、土壌改良
剤等として有効利用することが可能な場合もあります。有効利用する場合に
は、焼却灰の成分等に十分留意することが必要です。なお、焼却灰は、産業
廃棄物に該当する場合もあり、該当するか否かについては、関係機関等に相
談する等して、確認することが重要です。
関係者との調整
・大規模なバイオマス利用では、バイオマスの搬入車輛や焼却灰の処理、発酵
残渣(消化液)の処理、臭気、煙等、周辺の地域環境への影響について留意
が必要です。地域住民等への事前説明を行う等、関係者との調整が必要な場
合もあります。
参考資料-21
再生可能エネルギー熱利用の手引き
参考資料の紹介
参考資料の紹介
3
未利用エネルギー面的活用熱供給導入促進ガイド
資源エネルギー庁・平成 19 年 3 月
概要:地域における未利用エネルギー面的活用熱供給の計画的な導入促進を支
援することを目的に作成されたガイド。
業務用太陽熱利用システムの導入検討ガイドライン、業務用太陽熱利用シス
テムの設計ガイドライン、業務用太陽熱利用システムの施工・保守ガイドラ
イン
業務用太陽熱利用システムガイドライン作成検討委員会(NEDO 委託事業)・平
成 21 年 12 月
概要:「業務用太陽熱利用システムの導入検討ガイドライン」は、主に住宅用
以外で使用する太陽熱利用システムについて、システムの基本的な構成
や仕組み、また導入を検討する際の参考となる情報がまとめられた資料。
太陽熱利用システムの導入を検討する際の参考資料。
「業務用太陽熱利用システムの設計ガイドライン」は、太陽熱の利用対象
用途やシステムの構成及び機器等の特徴、計画と設計に関する基本事項、
設計の流れや留意点等がまとめられた資料。主に太陽熱利用システムを
設計する設計者等向けの資料。
「業務用太陽熱利用システムの施工・保守ガイドライン」は、システム設
置時の施工の流れや注意点等の基本事項、施工後の試運転方法、保守・
点検等の内容についてとりまとめられた資料。主に太陽熱利用システム
を施工するシステム事業者や工事業者等向けの資料。
入手先:http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/reference
参考資料-22
再生可能エネルギー熱利用の手引き
地中熱利用にあたってのガイドライン
環境省・平成 24 年 3 月
概要:地中熱利用ヒートポンプのメリット、想定される地下水・地盤環境に影
響を及ぼす可能性、技術の導入における留意点、熱利用効率の維持や地
下水・地盤環境の保全に資するモニタリング方法等についての基本的な
考え方等を整理したガイドライン。
入手先:http://www.env.go.jp/water/jiban/gl-gh201203/
官庁施設における 地中熱利用システム導入ガイドライン(案)
国土交通省(大臣官房官庁営繕部 設備・環境課)・平成 25 年 10 月
概要:設計手法、施工方法、効果の評価方法についてガイドラインとしてまと
めたもの。
入手先:http://www.mlit.go.jp/common/001016159.pdf
COOL ENERGY 5(雪氷熱エネルギー活用事例集 5)
経済産業省北海道経済産業局
概要:全国 144 の雪氷熱エネルギー活用施設の導入状況(都道府県別施設数、
施設所有者及び名称)とともに、雪氷熱エネルギー活用施設の施設概要
(所在地、完成年度、施設規模及び貯雪氷量等)、外観及びシステム概
要(写真・図)を掲載した事例集。
入手先:http://www.hkd.meti.go.jp/hokne/c_energy5/
官庁施設の熱源設備における木質バイオマス燃料導入ガイドライン (案)
国土交通省(大臣官房営繕部 設備・環境課)・平成 23 年 3 月
概要:木質ボイラーペレットボイラーについて必要となる技術的な事項、標準
的な手法等についてガイドラインとしてまとめたもの。
入手先:http://www.mlit.go.jp/common/001000215.pdf
参考資料-23
再生可能エネルギー熱利用の手引き
学校における新エネルギー活用に関するガイドブック
文部科学省・平成 22 年 3 月
概要:新エネルギー設備導入の意義・効果、設置・活用のポイント、導入ま
での手順について必要な情報を精選して掲載するとともに、先進事例
や関連する国の財政支援制度等を掲載している。
入手先:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/03/1291949.htm
参考資料-24