第4号 - なにわ橋法律事務所

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第 4号
発 行 :弁 護 士 法 人 な にわ橋 法 律 事 務 所
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遺言のすすめ
弁護士
1
新井 教正
なぜ遺言が必要なのか
(1)法 定相続による不都合の回避
遺言がない場合、①相続人が、②相続分 に従 い、
③遺産分割手続 (協 議 ・調停 ・審判 )を 経 て、遺 (2)争 族の回避
産を取得することになります。
争族紛争 の主たる原因 としては以下 のものがあ
したがいまして、以下 のような場合 には、遺言
りますが、②以外 は、遺言 を作成す ることにより
を作成す る必要性 が特 に高 いと言えます。
回避す ることが可能 です。
①遺産の範囲
ア 相続人以外の者 に遺産を与えたい場合
②遺産 の評価
(例 )
③相続分 (特 別受益 ・寄与分 )
①内縁の配偶者 がいる場合
②既 に死亡 した長男 の嫁 (同 居 )に 非常 に世話
になっている場合
③養子縁組 をしていない配偶者 の連れ子が いる
場合
④遺産分割方法
(3)遺 言の必要性に対する誤解
遺言の話 をすると、「争族 になるほど遺産 がな
い」「家族仲 がよい」な どとして遺言 を作成する
必要はないという方 も多数 い らつしゃい ますが、
イ 特定の遺産を特定の相続人 に相続 させた い、 完全な誤解です。
あるいは、法定相続分 とは異なった割合で相
平成 25年 に家庭裁判所 で調停 が成立するなど
して解決 した遺産分割事件 の内、遺産が 5,000万
続させたい場合
(例 )
円以下 の事件 が全 体 の 750/0を 占め、さらに遺産
①家業 を継 ぐ相続人 (長 男な ど)に 事業用資産 が 1,000万 円以下 の事件 が全体 の 320/Oを 占めて
います。
を継がせたい場合
また、生前は家族仲 がよかったとしても、相続
②特 に世話 になった相続人が いる場合
はお金の話 であ り、家族 の経済状況 もそれぞれで
③離婚状態 にある別居中の配偶者 がいる場合
すから、遺産分割 に関す る話 し合 いをする過程で、
0
0
・
①後妻 がいるが、先妻 との間に子供が いる場合
②兄弟仲 が悪 い場合
③夫婦間 に子供がなく、唯―の財産 が現在 居住
する不動産だけの場合
④相続人資格者 のうち行方不明者 がいる場合
,
(例 )
?・
ウ 相続人間で (円 満な)話 し合いが期待できな
い場合
「○○ は東京 の大学 へ行 かせてもらった。
」「○○
「
は結婚 の際 に多額 のお金 を貰 っている。
」 ○○ は
親 と同居 していて家賃 がかかつていない。
」などの
いがまとまら
ず、 これ
話 がでて、なかなか話 し合
がきっかけとなって、家族仲 に亀裂 が生 じる事案
ではあ りませ ん し、② につ いて も、適 当 な人 物 が
準備 で きなけれ ば、公 証 役場 に相談 すれ ば 1人 1
万 円程度 で準備 して も らえますので、短所 との評
価 はあた らな い と考 えています。
も数 多く見 られます。
置産 の多寡、生前 の家族仲 の良 し悪 しにかかわ
らず、すべ ての事案 において争族へ発展す る可能
(2)弁 護士 との併用
性があります。
争族 を回避する唯一の法的手段は遺言 を作成す
ることであ り、死後 における家族円満 を願 うので
た上 で、 内容 が 明確 で法 的 に有効 な遺 言 が作 成 で
あれば、遺言の作成は必要不可欠なものです。
あ り、 また、人 間 で ある以上 、 ミスをす る可 能性
もない とは言 えませ ん。
2
この ように、公 正 証書 遺言 を利用 す る ことによ
り、遺言作成 にあた って 留意 す べ き事項 を踏 まえ
きる可 能性 が飛躍 的 に高 ま ります。
しか しなが ら、公 証人 にも知 識 。経験 の差 異 は
遺言の作成
(1)公 正証書遺言の利用
遺言 を作成す るにあたって留意すべ き事項 は多
数あ りますが、最 も重 要 なことは、内容が明確で
法的 に有効 な遺言 を作成す ることです。
遺言 は遺言者 の生前 の意思を実現 し、また、争
族 を防止するための ものですから、遺言の効力や
内容を巡 つて問題 になるようでは話 になりません。
かかる観点か ら、遺言の作成 にあたっては、是
非 とも公正証書遺言 (公 証役場 で公証人 に作成 し
てもらう方式 の遺言 )を 利用 していただければと
思 います。
公証人 は元裁判官あるいは元検察官が大半であ
り、遺言の作成 にプ ロが 関与す るため、自分で作
そのため、 さ らに万全 を期 す のであれ ば、 弁護
士 との併用 (弁 護 士 に遺 言案 の作成 を依頼 した上
で公正 証書遺言 と して完 成 させ る)を お勧 め しま
す。
3
最後 に
平成 27年 1月 1日 か らの相続税制 改正 の 影響
で、遺 言 に対 す る関 心 も飛躍 的 に高 ま ってい ます
が、それで も遺言 を作成 す べ きか につ いて悩 んで
お られる方 も多数 い らっ しゃると思 い ます。
ただ、上 述 の ように、 皆様 の死 後 にお ける ご家
族 の 円満 を希望 され るのであれ ば、遺言 の 作成 は
必要不可欠 であ るため、 繰 り返 しにな ります が、
この機会 に、遺 言 の 作成 に着手 され る ことをお勧
成する方式 の 自筆証書遺言 と比較 して、形式不備 めいた します。
による遺言無効 あるいは内容不明確 となるリスク
以上
を格段 に低減できます。
また、公証人 は、遺言 を作成す るにあたつての
過 労死 につ い て
留意事項 を踏まえた上で遺言を作成 して くれるた
(過 労死等防止対策推進法施行を機に)
め、
遺言者がそれらを気 にする必要 もなくなります。
一般的に公正証書遺言 には①手間 ・費用が かか
弁護士 野 中 徹 也
る、②証人二人以上 を準備す る必要がある、といっ
た短所があると言われています。 しか しなが ら、
① について言えば、遺産 1億 円でも通 常 は 10万
円 もかか らず、保 険 と考 えれば決 して高 い金 額
過労死等 防止対策 推進 法 (以 下 、過労死等 防止
法 といいます。)が 、平成 26年 6月 20日 に成立
11月
1日 に施行 されま した。
この法律 は、近年 、過剰 労働 が原 因 とみ られ る
し、 同年
突然死 や 自殺 な ど、 いわ ゆる過労死 が社会 問題化
していることか ら、過 労死 をされた方 の遺族 や弁
護 団 の働 きか けを契機 に、 議員 立法 によつて成 立
した ものです。
この 過 労死 等 防止 法 に よ って、「過 労死 等 」 と
い う言 葉 は、「業務 にお ける過 重 な負 荷 に よる脳
血 管疾患若 しくは心臓疾 患 を原 因 とす る死 亡 若 し
くは業務 にお ける強 い心 理 的負荷 による精神 障害
を原因とする自殺 による死亡及 びこれ らの脳血管
疾患若 しくは心臓疾患若 しくは精神障害」 と定義
づ けられました。
時間 )に 比 べ て、
心 筋梗塞 に罹患 す
もっとも、 この過労死等防止法 は、過労死等 を
防止するための国や自治体 の施策や責務 を定 めた
ものであって、使用者側 に過労死 を防止すべ き義
務や罰則 を課す るものではあ りません。概略を説
明す ると、過労死等防止法では、次 のような事項
倍 とな り、 また、
が規定 されています。
数 8日 以上 の人 に
比較 して、心 筋梗塞 に罹患す る リスクが 2.9倍 と
①過労死等防止策を実施することを国の責務 と
する。地方 自治体 も国に協力 して過労死防止
策を実施するよう努める。事業主もこれ に協
力するよう努める (4条 )。
② ll月 を過労死等の防止のための啓発月間 と
する (5条 )。
③ 政府は過労死等の概要 。政府が講 じた施策等
について年次報告詈を提出する (6条 )。
④過労死等の防止のための大綱を定める(ア 条)。
⑤国 は過労死等に関する調査研究等を行う (8
条)。
④国及び地方 自治体 は過労死等を防止すること
の重要性について啓発を行う (9条 )。
②相談体制を整備する (10条 )。
⑥民間団体が行う過労死等の防止に関する活動
を支援する (1¬ 条)。
②過労死等防止対策協議会を開催する (12、
13条
)。
⑩国 は、調査結果を踏 まえて、法制上 または財
政上等の措置を請ずる (14条 )。
同法 に基づき、平成 26年 12月 19日 には、
過労死等防止対策推進協議会が開かれてお り、本
年夏 ごろに大綱 の公表 を目指 しているようです。
ところで、先述 の定義か らも明らかなとお り、
過労死 には、大 きく分 けて、心筋梗塞、狭心症、
脳出血、脳梗塞、くも膜下出血等 の心臓疾患及 び
脳血管疾患 による死亡 と、仕事上のス トレス等 に
よるうつ病等 の精神障害 を原因とする自殺 の 2類
型があります。
自殺や、心臓疾患 ・脳 血管疾患が、業務 に起因
するか否かとい う医学的な立証は困難なものです
が、これまで、疫学的な観点 か ら、い くつ もの調
査が行われています。
例 えば、過去 1カ 月 の週労働時間が 61時 間以
上 (時 間外労働時間月 81時 間以上 )の 人は、週
労働時間 40時 間以下 の人 (時 間外労働時間月 0
る リス ク が
1,9
過去 1カ 月 につ い
て 月当 た り休 日数
2日 未 満 の 人 で
は、 月章 た り休 日
なるとい う調査結果 もあ ります。
さ らに、睡眠時間の観 点 も加 える と、睡 眠 5時
間未満 、週 労働 時間 61時 間以 上 の人 は、 睡眠時
間 5時 間以上、週労働 時間 60時 間以下 の人 と比
較 して、急 性心筋梗 塞 の リス クが 4.8倍 となる と
の調査結果 もあ ります。
精神疾 患 との 関係 で は、 深夜勤務 が月 13回 以
上 の人 は、1.66倍 の精 神科 の新規受診 リスクが
ある とい う研 究や、深夜 勤務 の 回数 が 多 い、 ス ト
レスが高 い、 ノルマ ・納期 に追 われている、仕 事
量 が 多す ぎるな どの高 い仕事 上 の負荷 がある場 合
に、精神科 の新規 受診 リスクが 高 まる とい う研 究
などもあ ります。
これ らの調査 結果 か ら、長 時間労働 、睡眠不足 、
強度 の仕事上 の物理 的 ・心理 的負荷 な どが複 合 的
に絡 み合 つて 、上記 の ような心 臓疾患 、脳血 管疾
患、精神 障害等 が発生 す る場合 があることに異論
はあ りません。
そ こで 、上記 の ような心 臓疾患 や心筋梗 塞 に関
して労災保 険 の 請求 があ つた場合 に、それ らが業
務 に起 因す る もので あるかの認定基準 も定 め られ
ています (厚 労省 脳 ・心臓疾患の労災認定 参
照 )。
これ による と、脳 ・ 心臓疾 患 につ いて は、 脳 内
出血 、 くも膜 下 出血 、脳梗塞 、高 血圧性 脳 症 、心
筋梗塞 、狭心症 、心停止 、解離性大動脈瘤 を対 象
と して、次 の要 因 を総合考慮 の上、業務起 因性 を
判断する こととされています。
①発生直前から前 日までの間において、発生状
態を時間的及び場所的に明確にし得 る異常な
出来事に遭遇 したこと (異 常な出来事)
②発生に近接 した時期において特 に過重な業務
に就労 したこと (短 期間の過重業務)
③発生前の長期間にわたって、著 しい疲労の蓄
積をもたらす特に過重な業務に就労 したこと
(長 期間の過重業務 )
ここでの詳細 の説明 は省略 いた しますが、② や
③ の過剰負荷 の有無を評価する要因としては、【
②
い
の
労働時間、④不規則な勤務、②拘束時間 長 勤
務、○出張の多い業務、①交替制勤務・深夜勤務、
〇作業環境 (温 度環境 ・騒音 ・時差 )、 ○精神的
緊張を伴 う業務 (危 険性、 ノルマ、上 司・顧客 と
の トラブル、事故 )〕 などが挙げられています。
労働時間 については、③長期間の過重業務 に関
連 して、労働時間が長 いほど業務 の過重性が増す
ことを前提 に、次の事項が指摘 されています。
●発症前 ¬力月な い し 6カ 月間にわたって、1
カ月当た り概ね 45時 間を超える時間外労働
が認められな い場合は、業務 と発症 との 関連
性が弱 いと評価 されること
●概ね 45時 間を超えて時間外労働時間が長 く
なるほど、業務 と発症の関連性が徐 々に強ま
ると評価されること
。発症前 ¬力月間に概ね ¬00時 間又は発症前
2カ 月間な い し6カ 月間にわたって、 1カ 月
当た り概ね 80時 間を超える時間外労働が認
められる場合は、業務 と発症 との関連性が強
いと評価できること
また、精神障害 に関す る労災認定 の基準 も定 め
られて います (厚 労省 精神 障害 の労災認定参
照 )。 これによると、精神 障害 を発病 した場合 に
ついては次の要件 を満 た したときに、労災 と認定
(業 務起因性が認定 )さ
れることになります。
これ も詳細 の 説 明 は省 略 しますが、② の心理 的
負荷 の 判 断 にあた って は、長 時間労働 を含 む 仕事
の量や 質、 セ クハ ラ・パ ワハ ラを含 む対人 関係 の
問題、仕事上 の 失 敗、過剰 な責任 、役割 や地位 の
変化、事故等 とい つた要 因 か ら総合評 価 をす るこ
とにな ります。なお、
業務 による心理 的負荷 によっ
て 精 神 障害 が発 病 した 人 が 自殺 を図 った 場 合 に
は、原則 として労災 と認定 され ます。
これ らの基準 も前 提 に して いる とお り、過酷 な
長 時間労働 は、 過労死 の リス クを高 め る ものであ
り、過労死等 防止法 の趣 旨 に則 つて過労死 問題 を
解決 す るには、労 働 時間法制 のテ コ入 れ を抜 きに
しては、語 れないものであると考 え られ ます。
他方 で、 政府 は、 いわ ゆるホ ワイ トカラ ーエ グ
ゼ ンプ シ ョンの 採用 を打 ち 出 し、一 部 につ いて、
労働 時間規制 を撤廃 す る方 向 を示 しています。 国
際競争 力 の 強化 な ど企 業 の 要請 もあ ります し、労
働者 に とって も多様 な働 き方 を可能 にす る観 点 か
ら、現在 の 労働 時間規制 を見 直す必要 はあるので
しょうが、 ブラ ック企業 の 問題 な どが 指摘 されて
いる昨今 において、その対象 や規制撤廃 の 程度 に
よつては、 過重労働 を助 長 し、過労死等 防止法 の
趣 旨 と矛盾 する結果 となる可 能性 がある と謂 わ ざ
るを得 ませ ん。 過労死 問題 の解決 の ため に、過 労
死等 防 止法 14条 に基 づ き、労働 時間規制 を含 む
適切 か つ具体 的 な法律 の制定 。改 正 が なされ るこ
とを希求 します。
最後 に、 皆様 におかれ ま して も、改 めて、 ご本
人様 や周 りの方 が働 き過 ぎて いないか 、確認 して
いただ けれ ば と考 えてお ります。特 に、 月 80時
①労災認定の対象 となる精神障害を発病 してい
ること
②認定基準の対象 となる精神障害の発病前の概
ね 6カ 月の間に業務 による強い心理的負荷が
間 を超 える ような残 業 を続 けて いる方や、最近仕
事上 の大 きな事故 があ った方 な どは注意 が必 要 で
認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発
病 したとは認められないこと
以上
献謙比員 津 田 禎 三
員
献謙封 津 田 尚 廣
弁護士 新 井 教 正
弁護士 北 野 了考
弁護士 野中 徹 也
弁護士 矢 野 智 美
籍
謙
戸根 住夫
士
事務長 小 野 和 也
事 務 職 員 一同
※著作権法により無断複写転載 は禁止 されています。
す。本 稿 が、少 しで も労 働環境 改善 の契機 となれ
ば、幸 いで す。