デジタル放送の基礎

5.デジタル放送の基礎(1)
☆MPEG-TSについて(1)
(1)デジタル画像をMPEGで圧縮した後データを伝送するにはTS(トランスポートストリーム)
に変換して伝送します。
(2)TSの構造
エレメンタリーストリーム:ES
I-Picture
P-Picture
可変
可変
PES パケット
PES
I-Picture
PES
P-Picture
最大 64kB
ヘッダ
データ(可変)
ヘッダ
データ(可変)
TSP
TS
PES パケット
TS
PES パケット
TS
PES(X)
ヘッダ
ペイロード
ヘッダ
ペイロード
ヘッダ
ペイロード
固定
188 バイト
固定
188 バイト
固定
188 バイト
Adaptation
Stuffing
Field
bytes
sync
transport
payload
transport
P
transport
Adaptation
byte
error
unitStart
priority
I
scrambling
field
indicator
indicator
D
control
Control
1ビット
1ビット
8
13
1ビット
2ビット
2ビット
Continuity
Adaptation
Counter
field
4ビット
184-X
(3)各データの内容
TSP
:トランスポートストリームパケット
TS ヘッダ
:PID(パケット識別子4バイト)各種フラグ
Adaptation
field:PCR(Program
Clock
復号器の基準時間再生用タイムスタンプ
Reference 27MHz)
送信間隔0.1ms(PLL用)
スタッフィング機能:188バイトに固定する機能
ペイロード:映像や音声のデータ
PSI(Program
Specific Information)
:映像や音声のプログラム要素のテーブル
PAT(Program
Association
Table)
PMT(Program
Map
Table)
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(2)
☆MPEG-TSについて(2)
(1)映像信号やオーディオ信号をPESパケットに分割する場合、分割された信号の内容
をPESヘッダに記述します。後でビデオ信号や、オーディオ信号を復調する場合は、
PESヘッダの内容を元に復調すると元のデータを再生できます。
(2)PESヘッダの内容
項目
内容
Start Code
0x000001(PES パケットの開始を示す
Stream
Stream
ID
PES Packet
Length
Identifier(ES の種類及び番号の識別) 8
10
PES scrambling
control
PES Priority
Data Alignment
or
DTS
Scrambling
2
flag
2
デコーダー用
1
Indicator デコーダー用
1
Copylight
PTS
固定値) 24
パケットの長さ(PES パケット中のバイト数を書込) 16
Sync code
Original
ビット数
copy
flags
PTS:PES データの表示時刻
複製防止フラグ
1
オリジナルのフラグ
1
PESパケットヘッダ内のPTS、DTSの有無
2
PES:PES データのデコード時刻
B、P、I ピクチャーの表示順がデコード順と入れ替わるため。B、オーディオは
PTS、DTS が同じで PTS のみ受け付ける。時刻がPCRに一致したとき処理。
ESCR flag
PES パケットヘッダ内の ESCR
field の有無
1
ES rate
PES パケットの ES rate
field の有無
1
flag
DSM trick
Additional
PES CRC
mode
flag
copy info
PES header
flag
data
trick
flag ヘッダー内の Additional
flag
PES extension
ヘッダー内の DSM
flag
mode の有無
copy
1
field の有無
ヘッダー内の CRC
field の有無
1
ヘッダー内の PES
extension field の有無
1
ヘッダー内の Additional field と stuffing
byte
の合計バイト数
Additional
header
1
8
data 上記 flag の長さによります
(3)MPEG-2のTSのまとめ
連続しているESデータ(ビデオ信号やオーディオ信号)はパケットに分割されて
データの内容を示すヘッダを先頭につけてPESデータとなります。さらにこのPE
Sデータを同期や内容を示すヘッダを含めた固定長(188バイト)のTSPパケッ
トに分割します。TSはそれぞれのTSPをまとめたものです。復調する場合はTS
PやPESのヘッダ情報を基に元のビデオやオーディオのデータに戻します。
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(3)
☆ISDB 多重化
(1)ビデオ信号、オーディオ信号は MPEG で圧縮され TS 化されます。また文字情報等も
TS 化されます。それぞれの信号を多重化により一つの TS にまとめます。
まとめる際、復号するための情報も付け加えられて多重化されます。
(2)ISDB 多重化の構造
MPEG
ビデオ
PES 化
TS 化
1次
多重
MPEG
オーディオ
PES 化
TS 化
TS
2次
データ
STC
PES 化
TS 化
ビデオ
MPEG
PES 化
TS 化
オーディオ
MPEG
PES 化
TS 化
データ
STC
PES 化
TS 化
STC
EPG(電子番組案内)送出サーバ
CTEN
関連情報サーバ、蓄積型データ
EMC
多重
1次
TS2
多重
STL
TS
データ
PSI/SI
TS
PSI/SI
(Enc/Mux 制御)
(3)信号内容
・PSI:複数番組が多重されたTS信号から指定番組を復号するためにどのパケット
を取り出すかを示す情報です。
PAT(番組)、PMT(復号方法)、NIT(受信周波数、チャンネルの名
称、放送局名、サービスID)、CAT(有料放送)の情報があります。
・SI
:(番組配列情報)EPG(電子番組案内)で使用する情報
EIT(番組名、放送日時、放送内容)、TOT(現在時刻)、SDT(サ
ービスIDとサービス名称)、BIT(放送事業者、サービスID)
、ST(ス
タッフィングテーブル)の信号があります。
・STC:
(System Time
Clock)各エンコーダーを同期させるための同期信号クロッ
クだけでなく GOP(Group of Picture)も同期させる必要があります。
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5.デジタル放送の基礎(4)
☆ISDB の方式について
(1)デジタルビデオ信号は MEPG で圧縮され TS に変換された後多重化された後、誤り
訂正を行うためのパリティやインターリーブの処理を行い OFDM 方式で変調され電波
として送信されます。
(2)ISDB 方式の概要
MPEG
TS
外符
階層
エネルギー拡散、遅延補正
多重部
再多重
号
分割
バイトインタリーブ
部
畳み込み符号化を行います
204バイト単位に階層分割します。
短縮化リードソロモン符号を適用します。
8 バイトまで誤り訂正できます。
複数の TSP で多重フレーム化します。
OFDMフレーム長にあわるためヌルパケットを挿入します。
変調とビットインターリーブを行います。
各階層の信号を合成しデータセグメントに挿入します。
TMCC パイロット
OFDM セグメントを構成
キャリア
階層
時間
OFDM
IFF
ガードイ
変調
合成
周波数
フレーム
T
ンターバル
インターリーブ
構成
付加
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(5)
☆ISDB-T デジタルのワンセグ放送
(1)概要
車載テレビや携帯電話での受信を可能にした放送で 13 セグメントの真ん中の1セグメ
ントで放送します。
(2)ワンセグ放送の伝送方式
13セグメント
1セグメント(428kHz)
(3)伝送パラメーターと伝送容量
変調方式
符号化率
ガードインターバル比
1/4
1/8
QPSK
1/2
281kbps
312kbps
QPSK
2/3
374kbps
416kbps
16QAM
1/2
562kbps
624kbps
移動時でも安定した受信が行えるように、QPSK や低い符号化率が使用されます。
そのため送れるデータ量は少なくなります。
映像圧縮方法
:H.264/MPEG-4AVC
映像サイズ
:16:9(320×180)、4:3 (320×240)
音声圧縮方法
:MPEG-2AAC(48kHz、24kHz)
字幕サービス
:2言語、12 文字 4 行(縦長)、16 文字 3 行(横長)
15 フレーム
データ圧縮方法:JPEG、GIF、複数枚 GIF(動画、16 枚、240×240)
データ言語
:XHTML
(4)番組内容
ワンセグ放送は固定受信と同一のサイマル放送や独自放送を行えます。
(5)受信機の機能
ワンセグ受信機は送られてきた画像や字幕・テキストを受信機の状態に合わせて
表示できます。
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(6)
☆誤り訂正技術について(1)
(1)BCH(7.3)符号の例
データ 3 ビットにチェックビット 4 ビットを付加します。
受信側で誤りの検出と訂正を行うことができます。
入力データを割り算回路に入力し余りを求めます。
割り算回路は D0 から D3 のシフトレジスタと排他的論理和で構成されます。
D0 から D3 に割り算の余りが得られます。
余りがチェックビットのデータになります。
入力:d1,d2,d3
D0
D1
出力:D0,D1,D2,D3,d1,d2,d3
+
D2
+
+
D3
割り算回路
(2)短縮化リードソロモン符号(外符号)
短縮化リードソロモン符号は BCH 符号をバイト単位に拡張した物です。
データは188バイトのデータにチェックビット16ビットを付加して204バイト
のブロックにして誤り訂正を行います。
バースト状の誤りの訂正ができます。
データ
チェックビットを付加
1
0
1
1
0
1
データ188バイト
1
0
チェックビット16バイト
合計204バイトにします。
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(7)
☆誤り訂正技術について(2)
(1) 畳込符号化(内符号)
過去に入力した複数の入力ビットと現在のビットから冗長ビットを作成しエラー訂正
する誤訂正符号です。
誤りが発生しても前後関係から誤りを見つけ訂正できます。
(2)畳込符号化の例
C1
加算
B0
D
D
D
D
D
D
加算
C0
(3)パンクチャード
畳込符号化の後C0とC1のデータを間引くパンクチャードの処理を行います。
・パンクチャードの例
C0
C1
送信データを減らすために黒の部分のデータを間引きます。
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(8)
☆インターリーブについて
(1)概要
誤り訂正の効果を高めるためにインターリーブを行います。インターリーブは送信す
る前にデータを時間軸上と周波数軸上でばらばらに分散します。
まとまって誤りが起きても受信後、元に戻せば誤りが分散します。
誤りが集中しないので訂正能力を高まめることが出来ます。
(2)時間軸インターリーブの方法について
203 バイト
スーパーフレーム 8 バイト
読出し方向
書込み方向
TSPの204バイト中203バイトをインターリーブします。
リードソロモンの符号化によって204バイト中 8 バイトが訂正可能です。
横方向にメモリーに書き込みし、縦方向に読み出します。
受信側は縦方向に書き込み横方向に読み出します。
途中で64バイトのバースト誤りがあっても、横方向では8バイトの誤りになり訂正
が可能になります。
(3)周波数インターリーブ
周波数
マルチパスにより特定の周波数
のレベルが小さくなることがあり
ます。その場合、送る周波数を順
次変えることにより誤りを分散で
きます。
レ
時間
ベ
ル
周波数
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(9)
☆エネルギー拡散
(1)概要
音声や映像の入力される信号は0や1が連続して続く場合があります。
このような信号があると変調された信号に特定の周波数成分だけが大きくなります。
特定の周波数成分だけが大きくなると伝送系の負担が大きくなります。
このようなことが起きないように信号を拡散します。
階層分割の後、疑似ランダム信号(PRBS)と排他的論理和(Exor)を行います。
受信時には拡散した信号を拡散と逆の手順で元に戻します。
(2)エネルギー拡散方法
疑似ランダム信号発生器
1
0
0
1
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
シフトレジスター
Exor
OR
Enable
Exor
データ
PRBS
同期
187 バイト
拡散後のデータ
1503 バイト
同期
187 バイト
同期
同期=47Hex
Enable
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5.デジタル放送の基礎(10)
☆PSK 変調と QAM 変調
(1)概要:PSK 変調はデジタル信号を変調するのに用いられます。QPSK は 2 ビットを8
相 PSK は 3 ビット、QAM は更に 4 ビット以上の信号を変調します。
(2)構成
ローパスフ
I 信号
ィルター
直並列
送信データ
90°
発振器
レベル
出力
変換
ローパスフ
ィルター
Q 信号
(3)QPSK の信号組合わせと位相
コンスタレーション表示
I 信号 Q 信号
状態
変調
位相器
Q軸
135°
45°
0
0
0
-1
-1
1
0
1
-1
1
2
1
0
1
-1
3
1
1
1
1
225°
Q 信号
コンスタレーション表示
I軸
315°
(4)QAM 変調
Q
I
D C B A
I 信号
0
0
0
0
0
-1
-1
Q軸
1
0
0
0
1
-1
- 1/3
2
0
0
1
0
-1
1/3
1
3
0
0
1
1
-1
1
1/3
4
0
1
0
0
- 1/3 - 1
5
0
1
0
1
- 1/3 - 1/3
-1/3
6
0
1
1
0
- 1/3
1/3
-1
7
0
1
1
1
- 1/3
1
8
1
0
0
0
1/3 - 1
9
1
0
0
1
1/3 - 1/3
10 1
0
1
0
1/3
1/3
11
1
0
1
1
1/3
1
12 1
1
0
0
1
-1
13 1
1
0
1
1
- 1/3
14 1
1
1
0
1
1/3
15 1
1
1
1
1
1
I軸
-1-1/3 1/3
1
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5.デジタル放送の基礎(11)
☆PSK 信号と QAM 信号の復調
(1)PSK 信号と QAM 信号の復調は変調の逆を行います。
Q 信号
乗算器
ローパスフ
ィルター
90°
発振器
PLL
入力信号
位相器
位相比較
ローパスフ
I 信号
ィルター
乗算器
(2) IQ 信号の変復調波形
・I 信号の変調(I 信号と I 搬送波を乗じることにより生成されます)
I 信号
I 搬送波
I 変調信号
・I 信号の復調(I 復調は I 変調信号に I 搬送波を乗じます)
I 復調出力
Q 復調出力
Q 出力は周波数が 2 倍になり、フィルターで除去され Q 出力には I の信号は現れません。
・Q 信号の変調(Q 信号と Q 搬送波を乗じることにより乗じます)
Q 信号
Q 搬送波
Q 変調信号
・Q 信号の復調(Q 復調は Q 変調信号に Q 搬送波を、I 復調は I 搬送波を乗じます)
Q 復調出力
I 復調出力
I 出力は周波数が 2 倍になり、フィルターで除去され I 出力には Q の信号は現れません。
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5.デジタル放送の基礎(12)
☆OFDMの原理について
(1)概要
OFDMの変調方式の特徴は周波数利用効率が高く、広帯域でマルチパスに強い方式
で、移動受信が可能です。
また単一周波数ネットワーク(SFN、同一チャンネル放送)が可能になります。
2.OFDMの変調方法
1、2、3、-、N
f1:fs×1
Ts:シンボル長
キャリア
f2:fs×2
5.575MHz
f3:fs×3
例:Mode1
fs=3.968kHz
f-
N=1405
fN:fs×N
1から N のデータを
各搬送波に変調します。
NTs
252us
実際には逆高速フーリエ変換(IFFT)処理で各搬送波周波数に変調します。
サンプルクロック周波数=512MHz/63=8.1269MHz
3.OFDM の階層とセグメント
ト
ン
メ
゙
ク
セ
12
ト
ン
メ
゙
ク
セ
10
ト
ン
メ
゙
ク
セ
8
ト
ン
メ
゙
ク
セ
6
ト
ン
メ
゙
ク
セ
4
ト
ン
メ
゙
ク
セ
2
ト
ン
メ
゙
ク
セ
0
ト
ン
メ
゙
ク
セ
1
ト
ン
メ
゙
ク
セ
3
ト
ン
メ
゙
ク
セ
5
ト
ン
メ
゙
ク
セ
7
ト
ン
メ
゙
ク
セ
9
ト
ン
メ
゙
ク
セ
11 96
ア
リ
ャ
キ
B 階層
A階層
C階層
部分受信可能
各階層ごとに変調方式を指定できます。
変調方式:QPSK、16QAM、64QAM、64QAM、DQPSK
搬送波周波数:周波数帯幅の中央
Mode1:キャリア 702 番目
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5.デジタル放送の基礎(13)
☆OFDMのマルチパスについて
(1)概要
アナログ放送ではマルチパス(ゴースト)によって画像が多重に見える問題がありま
す。デジタル放送でもマルチパスがあるとデータを誤る原因になります。
OFDMではシンボル期間が長いため符号間干渉が少ないことと、ガードインターバ
ルによってマルチパスに強い方式になっています。欠点としてガードインターバル分
送れるデータが少なくなるため伝送効率が下がります。
(2)ガードインターバル(GI、Mode1の例)
62.5us の期間コピー
直接波
シンボル
遅延波
GI
シンボル
シンボル Ts=252us
GI
GI
シンボル
GI
FFT 処理期間
遅延時間
遅延波の後のシンボルがガードインターバル期間に重なりますがFFT処理する期間
に入らなければ影響は受けません。遅延波のガードインターバル期間の一部がFFT
処理期間に入りますが元のシンボルの一部なので処理には影響を与えません。
(3)FFT 処理期間を見つけるためのタイミング再生
自己相関法:ガードインターバル信号はシンボルの最後の部分をコピーした波形であ
るので相関が高くなります。受信した信号を Ts時間遅延した信号と元の信号の相関を
とります。
一致した部分が信号が大きくなるのでタイミング信号として使用できます。
GI
GI
シンボル
遅延した信号
GI
シンボル
シンボル
元の信号
GI
シンボル
相関信号
・パイロット信号による方法
信号に埋め込まれたパイロット信号を基準にしてより精度の高い検出を行います。
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5.デジタル放送の基礎(14)
☆OFDM に必要な機器の性能
(1)OFDM に於ける周波数精度と位相雑音
OFDM の搬送波の周波数は高い精度が必要です。また搬送波の周波数間隔が狭いので、
位相雑音の影響を受けやすくなります。そのため信号安定度を高める必要があります。
位相雑音が隣接する搬送波に影響を与えます。
位相雑音がある搬送波
(2)OFDM の増幅器
OFDM の波形は平均に比べてピークが非常に大きくなります。
増幅器はピークが歪み無く増幅されるようにダイナミックレンジを広く取らなければ
なりません。
ピーク
平均
平均
ピーク
ピークが歪むとインターモジュレーションにより帯域外不要信号が発生します。
隣接のチャンネルに影響を与えます。
元の信号
歪んで発生した
不要信号
周波数
ピークがクリップした OFDM 信号の周波数特性
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5.デジタル放送の基礎(15)
☆OFDM に必要な機器の性能(2)
(1)増幅器の特性
増幅器の入力信号が大きくなると出力が徐々に飽和してきます。
飽和が始まると波形が歪みインターモジュレーションが発生します。
増幅器の飽和に関する特性は1dB コンプレッションポイントとインターセプトポイ
ントがあります。
・1dB コンプレッションとインターセプトポイント
1dB コンプレッションポイントは入力に対し出力が直線的に増加すると仮定した
場合の出力から実際の出力が1dB 下がるレベルの値です。
インターセプトポイントはインターモジュレーションの出力が直線的に増加したと
仮定した場合と、入力と出力が直線的に増加した場合との交点のレベルです。
1dB コンプレッションと3次インターセプトポイントのグラフ
出力
3次インターセプトポイント
1dB コンプレッションポイント
IM3(インターモジュレーション)
入力
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5.デジタル放送の基礎(16)
☆OFDM の信号生成について
(1) OFDM の信号生成の原理
複数の変調器と搬送波でデータ信号を変調し加算します。
各搬送波は直交してることが必要です。
変調器 0
変調器 1
加算
デジタル信号
F0
波形例
時間
F0+1kHz
加算
変調器 n
F0+nkHz
F0
F0+1kHz F0+nkHz
周波数
(2)OFDM とフーリエ変換
OFDM の変調を行うのに複数の変調器を備えるのは現実的ではありません。時間信号
をフーリエ変換すれば周波数成分に変換できます。
逆に周波数成分を逆フーリエ変換すれば時間成分に変換できます。この特性を利用し
て OFDM の変調を行います。実際には逆高速フーリエ変換(IFFT)が用いられます。
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(17)
☆OFDM 信号の復調について
(1)複数の搬送波からの信号検出方法
・複数の変調された搬送信号からそれぞれの希望する信号を取り出すには取り出した
い搬送波と同じ周波数・位相の信号を乗算します。
異なる周波数で乗算しても平均の出力は0となります。
(2)例:Acos1+Bcos2 の混在した二つの信号から A の成分を取り出すには cos1 の信号
を乗算します。
Acos1+Bcos2
=(Acos1+Bcos2)×cos1=Acos1×cos1+Bcos2×cos1
フィルタ
=A(cos1)2+Bcos2×cos1
=A(1+cos2)/2+B(cos3+cos1)/2
cos1
=(A+Acos2+Bcos3+Bcos1)/2
この部分はフィルタで除去します
=A/2 (A の成分が取り出せます)
Acos1(実線)+Bcos2(点線)
×
cos1
↓
A/2
(Acos2+Bcos3+Bcos1)/2の信号をフィルターで除去
すると A/2の信号のみ取り出せます。
波形
同様に B の成分を取り出すには cos2 を乗算します。
このように複数の信号が混在していても希望の信号が得られます。
(3)実際のOFDM信号の各信号を個々の復調器で復調するのは現実的ではありません。
変調と逆のFFT処理を行い多くの信号を復調します。
リーダー電子株式会社
5.デジタル放送の基礎(18)
☆OFDM 信号の位相雑音ついて
(1)RF 信号に変換する場合の局部発振器による位相雑音
OFDM 信号は通常 IF 周波数で生成され、局部発振器の信号と乗算し RF 周波数に変換
します。
この場合局部発振器の位相雑音が OFDM 信号の各キャリア信号に移ります。
キャリア 1
2 3
4 5
6
位相雑音
×
IF 帯の OFDM 信号
→
局部発振器信号
RF の OFDM 信号
キャリア1の位相雑音は2以上のキャリアからの位相雑音が加算されます。
キャリア6の位相雑音は5以下のキャリアからの位相雑音が加算されます。
キャリア2から5は隣接するキャリアからの位相雑音が加算されます。
そのためキャリア1と2より位相雑音が大きくなります。
(2)位相雑音の軽減方法
復調する場合、RF信号からIF信号に変換する場合も復調器の局部発振器の位相雑
音の影響を受けます。
位相雑音の影響を少なくするために TMCC 信号の位相雑音を検出し、同じように影響
を受けている信号の位相雑音を打ち消します。
またガードインターバル信号と同じ元の信号を比較し位相雑音を検出し同様に打ち消
しを行うことができます。
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