平成 22 年 3 月 19 日 東工大統合研究院 「COP15 とアジアの環境エネルギー」をテーマに マイケル・ノーベル博士講演会を開催 フロンティア研究センターと統合研究院は 3 月 16 日、大岡山キャンパス本館 4 階大会議 室でマイケル・ノーベル博士講演会を開催した。東京工業大学フロンティア研究セン ターの客員教授であるマイケル・ノーベル博士の来日に合わせ、地球温暖化の回避と安定 したエネルギー利用環境を実現するために、大学の役割や大学の国際連携をテーマとする 講演会である。 今回のシンポジウムでマイケル・ノーベル博士は、昨年 12 月にコペンハーゲンで行われ た COP15 で難航した合意形成や、地球温暖化の回避のために向けた日本の科学技術に対す る期待について講演し、東工大からは鈴木基之監事、原科幸彦教授、玉浦裕教授がそれぞ れの立場からアジアの持続性社会構築に向けての課題認識や、大学の今後の役割について 講演した。講演会には約 80 人が参加し、熱心な活発な意見交換と議論が繰り広げられた。 講演会では、まずフロンティア研究センターの大町達夫センター長から「世界の環境エ ネルギー問題に向けての国際連携について」挨拶と、マイケル・ノーベル博士の国際的な 活躍が紹介された。その後、マイケル・ノーベル博士が「COP15 とアジアの環境エネルギー」 をテーマに、星槎大学野口桂子准教授の通訳を含め約 60 分の講演を行った。 『COP15 では各国の思惑が交錯して合意形成に失敗し、多くの人々を落胆させた。地球環 境の現状を考えると、すぐにでも新たな合意を作り上げることが急務となっている。しか しながら、民衆やマスコミの関心は移ろいやすく、時と伴に薄れていくことを忘れてはい けない。政治のリーダーには、地球の未来を正しく見据え、時には民衆に迎合しない態度 を求めていかなければ、地球温暖化回避のソリューションにはたどり着けない。我々もこ の問題には強い関心を持ち続けることが肝要である。』 続いて鈴木監事が「アジアの持続性社会構築」について講演し、エコロジカルフットプ リント(人間活動が自然を踏みつけている面積)の考え方を紹介し、アジアの国々の一部 でも既に人間活動が自然の回復力を超えている現状を訴えた。今後、先進国が辿った発展 の道筋を中国やインドなどの開発途上国が繰り返すことによる地球の危機と、それに対す る大学の新しい役割について言及した。 原科教授は「持続性社会構築と国際協調」を解説し、日本の都市作りでの反省や、パブ リックスペースによる多くの人との合意形成のプロセスの重要性、JICA 等での新しいガイ ドラインの設定などについて講演した。パブリックスペースでの会話には専門家と利害関 係者を取り持つ進行役(ファシリテーター)の役割が重要であり、両者を包含するハイブ リッド型の透明性の高い話し合いの場が重要であることを強調した。 玉浦裕教授からは「アジア太平洋地域でのサンベルト開発(APS)構想」が発表され、APS プロジェクトが目指すアジア太平洋地域の将来像を解説した。今後、アジアでも急成長が 予想される太陽エネルギーの利用技術として、太陽光発電と並んで、太陽熱発電及び太陽 熱利用産業展開の重要性を訴え、アジア太平洋地域発展のための基幹技術となる可能性を 説いた。 講演会の最後に予定していたパネル討論は、時間の制約からマイケル・ノーベル博士へ の質疑とこれに付随する討議とし、地球温暖化防止に向けての国際的合意形成の方法論な どについて議論した。 最後に大倉一郎理事・副学長か挨拶し、マイケル・ノーベル博士に対するお礼や、東工 大が今後も科学技術を通じて、アジアの持続性社会構築に貢献できる決意を共有して閉幕 した。 今回の講演会の開催は、アジアの持続性社会構築に向けて、立場の異なる専門家が集ま って意見交換する場になり、大学の新しい役割についても討議され、アジアの持続性社会 構築に向けての東工大が大きく貢献できる可能性を予見できる、実りの多い会議であった。
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