構造設計製図の授業でのブリッジコンテスト及び膜構造模型製作の試み

IV.学生が参加する授業を求めて
1.理系における授業実践
「構造設計製図の授業でのブリッジコンテスト及び膜構造模型製作の試み」
松田 浩 (長崎大学工学部)
1
はじめに
近年,高専や大学の機械・電気系の学生によるロボットコンテストがテレビ等で報道されている.高
校生の理工系離れを阻むためと,ものづくり基盤技術の育成を目的として実施されているものと理解し
ている.ロボットのユニークな動きや奇抜なアイデアには感嘆させられる面が多々あることはいうまで
もないが,それとともに高専や大学の学生のロボットづくりとその操作に対する直向さの映像はテレビ
を見て実に心地よく感じる.
一方,建設工学の分野でも,パデュー大学,テキサス大学オースチン校をはじめ北アメリカの多くの
大学で,長年にわたりブ リッジコンテストが盛んに行われている.ブ リッジコンテストは,一定のルー
ルのもとで,参加者が自由に橋梁模型の設計・製作を行い,その強度を競い合うものである.一連の作
業を通して,楽し みながら工学的センスや創造性を高めることができるため,教育的見地からも高く評
価されている.最近では,アメリカ鋼構造協会 (AISC) が中心となった全米大会 [1] や高校生を対象とし
た大会も催されている.
九州工業大学は平成 7 年度より学生実験 [2][3] で,九州大学では平成 8 年度より設計製図で,東京工
業大学では平成 8 年度より学生実験で,熊本大学でも平成 9 年度からブ リッジコンテストが実施されて
いる.長崎大学工学部構造工学科でも,平成 7 年度よりティーチングアシスタント (以下 T.A. と略記)
制度が設けられたのを機に,構造設計製図 B(学部 3 年生対象,必修) の授業において,設計 (合成桁橋),
製図 (H ビーム橋) に加え,ブ リッジコンテスト [4] と膜構造の模型製作を課すことにした.なお,ブ リッ
ジコンテストの設計・製作条件は九州工業大学,九州大学,東京工業大学,長崎大学ともすべて同じ 条
件である.
2
ブッリジコンテスト
2.1
コンテスト の条件
トラス構造物を製作し ,鉛直荷重を作用させ,トラス構造物の破壊性状を観察し ,トラスの力学的特
性を理解させることを目的に,以下のような条件を与えた.
(1) 使用材料および器具 :バルサ 5mm 角棒 (定尺 900mm),接着剤,載荷板,カッター,紙やすり
バルサ材は強度のバラツキが大きいが,概ね物性は引張強度 250kgf/cm2 ,圧縮強度 100kgf/cm2
を用いて設計すること.
(2) 供試体条件
すべての橋 (模型) は以下の条件で製作すること (図 1 参照).
(a) 橋の重量と許容最大荷重の比を最大限にするような橋を製作する.
(b) トラス構造を基本とし ,アーチ構造にしてはならない.
(c) 支間は 500mm とし ,支点外側に 50mm ずつ余裕を設け,橋長を 600mm とする.
(d) 橋の幅は,最大 80mm 以内とする.
61
(e) 支点上部から上または下までの最大高さは 100mm 以内とする.
(f) 載荷点は載荷板の範囲内で何点でも自由に決めてよいが,載荷板が橋の床上で静止できるよ
うにしなければならない.
(g) 橋の端支点部は平らでなければならない.
(h) 美的に優れた橋を製作すること.
170
100
載荷板
載荷点には橋軸直角方向に部材を渡す.
50
50
500
600
図 1 模型例
単位 [mm]
(3) 実験概要および結果の整理
(a) 5 ∼ 6 人で 1 組のチームを作る.
(b) 実験当日までに,上記条件に従ってど のような橋を製作するか検討し ,レポート 用紙に詳
細に設計図 (製作図) を書いておく.そして,レポート用紙に製作する橋を 2 次元的に解析
し ,どの部材が圧縮か引張りか図示する.また,なぜその形状を選んだのかという理由と,
どの部分から破壊すると思うかを合わせて記述しておく.
(c) 設計図に従って橋を製作する.
(d) 後日,接着剤が乾いてから橋の重量を測定する.そして,載荷装置にセットし徐々に荷重を
かけて破壊する.
(e) トラス模型の耐荷力に対する重量効率は次式に従う. (橋の重量は 1.5 乗することに注意)
重量効率[A] =
[耐荷力]
[重量]1.5
(1)
(f) レポート用紙に考察を書き,提出する.
(4) 製作上の注意
– 載荷点部や支点部の圧壊を防ぐため,部材に補強材を付けるとよい.
– 断面において,ねじれが生じにくくするような補強材を付けるとよい.
– 接着材は適所適量に気をつけて使用すること.引張部には多めに接着剤をつける.
式 (1) において分母を 1.5 乗しているのは,橋梁の重さにも十分に配慮させ,極度に重い橋の製作を
抑えるためであり,パデュー大学のコンテスト条件 [5] に準じている.また,これらの条件は,載荷装
置の物理的制約や講義という限られた時間内で製作するといった制約などから決定した.この決定に際
しては,文献 [5] 以外にも,テキサス大学オースチン校のコンテスト条件 [6] を参照した.
製作に際しては詳細な設計図と,その設計を採用した理由および破壊性状の予測を記したレポートを
製作日までに提出することを義務づけている.なお,このレポートでは,各部材に生じ る軸力の計算も
要求している.バルサ材は非常に軽い材料であるため,接着剤の重さも無視できない.良い A 値を得る
ためには,部材に作用する軸力の符号や大きさに応じて接着剤の使用量を調整することが重要であり,
設計時のみならず,橋梁模型製作時においても,軸力分布図は大きな役割を果たす.
62
2.2
載荷実験および判定結果
模型の優劣は,次式で判定することとした.
GG = 0.2 × AE + 0.2 × SS + 0.6 × LW
(2)
ここに, AE :美的評価 (=[得票数]/[最大得票数]), SS :構造上の印象や概念に対する評価 (=[得票数]/[最
大得票数]), LW :耐荷力の重量効率の評価 (=[A 値]/[最大 A 値]) である.
載荷実験の前に,各グループごとに製作した模型に対して,
1. その形状を選んだ理由
2. 破壊する部分
3. 製作模型の PR,他グループ模型の美的・構造上の評価
を発表させ,学生全員に上記の美的評価および構造上の印象や概念に対する評価を付けさせている.
図 2 トラス模型
63
写真 1
写真 2
個数 10
9
8
7
6
5
九工大
7
6
5
4
4
3
2
1
0
3
2
1
0
15
20
25
30
35
g
長崎大
9
長崎大
九工大
8
九工大
7
6
5
4
3
2
1
4
6
8
300
300
1 回目
2 回目
重量効率の平均値
2 回目の重量効率
250
重量効率
250
200
0
10 12 14 16 18 20
kgf
図 4 耐荷力分布
図 3 重量分布
重量効率
個数 10
個数 10
長崎大
9
8
∼60 80 100 120 140 160 180 200 ∼
図 5 重量効率 (A 値) 分布
個数 10
9
1 回目
8
2 回目
7
200
6
150
150
100
100
50
50
5
4
3
2
H7
H8
H9
H10
年度
図 6 各年度の重量効率の平均値
1
A B C D E F G H I J
0
∼ 60 80 100 120 140160 180 200 ∼
kgf
各班
図 7 各班の 2 回の重量効率
図 8 重量効率分布 (平成 10 年度)
平成 10 年度に製作された橋梁模型のうち 20 例を図 2 および写真 1, 2 に示す.トラスには多種多様
の形式があるが,構造形式としてはワーレントラス,ハウトラス形式の橋が最も多かった.美観を重視
して曲弦プ ラット形式の橋もあった.また構造解析の結果,部材力が 0 となる部材を取り去った構造形
式もみられた.現実の橋梁では移動荷重が載荷するので部材力が常に 0 となることはないが,本実験で
は載荷点が固定されているため重量を軽くするには最善の策であると考えられる.一方,載荷荷重を分
散させ耐荷力の増大を図り,垂直材および斜材を密に配置したものや,載荷荷重を分散と重量軽減化も
考慮して載荷点近傍だけ部材を密に配置したものもあった.さらに,補強に際しても全断面を一様に補
強するのではなく,接合部を中心に補強するなど 重量の軽減化を図った橋梁もみられた.
載荷実験結果は構造上の印象や概念に対する評価とはかなり異なる結果となった.これは,断面変形
し 横倒れ座屈したものや,接着剤で接合した箇所が切れることにより引き起こされる場合が多く,破壊
に至る過程での製作誤差などの初期不整が大きく影響しているものと考えられる.
64
参考のため,九州工大で行われたブ リッジコンテストの結果と長崎大学で行われ結果のグラフを図 3
∼ 5 に示す.両大学ともトラス橋の重量,耐荷力, A 値のバラツキが大きい.また,長崎大学では A
値で 200 を越すトラス橋を製作できたことは,学生にとって大きな励みとなっている.教官同志でも「今
年は 200 を超えた」とかの話題がでている.
当初,模型製作は 1 回だけ行っていたが, T.A. の学生の「 2 回製作させたときの効果をみよう」と
の強い意見で, 2 回の模型製作を実施した.その結果が図 6 ∼ 8 である.図 6 は平成 7 ∼ 10 年度の各
年度の 1 回目の重量効率の平均値と平成 10 年度の 2 回目の重量効率の平均値を示したものである.図 7
は平成 10 年度の各班の 1 回目および 2 回目の重量効率を示したものである.また,図 8 は平成 10 年度
の 1 回目および 2 回目の重量効率分布を示したものである.いずれの図からでも 2 回実施することの効
果が大きいことがわかる.
3
膜構造の模型製作
構造工学科は,建築,土木,造船,機械の構造工学分野を集めた横割り学科として教育研究を行って
いるが,構造工学科を志望し てくる学生は,社会開発工学科 (旧土木工学科) があるためか,建築を希
望してくる学生が多いようである.西海橋はアーチ橋,平戸大橋は吊橋,大島大橋は斜張橋というよう
に,土木構造物として建設される橋梁構造物は,長さと力学原理の関係が興味深い.一方,三次元的な
大空間を覆うド ームなど の建築構造物には,膜,シェルといった構造があり,その力学原理もアーチ,
ケーブルを 2 次元に拡張したものと理解することができる.設計製図では土木分野の橋梁に偏らないこ
とと,三次元的な空間構造の感覚と興味を促すことを目的として,共同作業による膜構造模型の製作 (写
真 3) を課題として与えている.写真 4 ∼ 7 は膜構造の製作風景である.
3.1
使用材料
スチレンボード : 1 枚
膜: 1 枚
デザイン用紙: 1 枚
割ピン: 4 個
がびょう: 10 個
支柱 (割箸): 2 本
糸,両面テープ ,針
写真 3 膜構造物の例
3.2
膜模型の作成順序
1. ストッキングを均一に伸ばし 8 個所ピンで止め,マジックでストッキングに線を描く.
2. 線に沿って 4 辺を縫い,三角形の両面テープを 4 隅,裏表に 8 枚張る (カバーは取らない).
3. ストッキングの線から 5mm 外側をカッターで切りとる. (このとき糸を切らないようにする)
4. 割ピンを 4 個所に取りつけ,割箸の先端に画鋲を刺し他端を削ってボード に取りつける.
5. 糸を割ピン 2 個所,支柱 2 個所に取りつける.
6. 三角形両面テープの上から 2/3 の所に上糸,下糸を通す. (針で指を刺さないように気をつける)
7. 余った糸をテープで固定して,無駄な糸を切る.
65
4
写真 4
写真 5
写真 6
写真 7
シュツットガルト 大学での事例
平成 11 年 3 ∼ 5 月の 2ヶ月間,文部省海外研究開発動向調査の目的でシュツットガルト大学 (ド イツ)
とアルバータ大学 (カナダ ) を訪問する機会を得た.
シュツットガルト大学では,山岳地帯のロープウェイ駅舎の設計コンテストが行われていた.設計対
象となる建設物は,レ ストラン,事務所,サニタリー施設を併設したロープウェイの駅舎を 5ヶ月間で
建設するというものである.設計条件として,雪荷重,風荷重,ロープウェイの荷重が与えられている.
写真 8, 9 はその写真である.
写真 10, 11 はシュツットガルト大学の建設設計・施工研究所 (Prof.Schlaich) の本棚の上に見つけ
た膜構造の模型である.シュライヒ教授はミュンヘンオリンピック競技場の膜構造の設計,吊形式橋梁
をはじめとする数多くのユニークな橋の設計で有名で,シュツットガルト市内に多くの歩道橋を設計さ
れている [7].研究所には,いたる所にこのような模型があった.
写真 8
写真 9 一等賞作品
66
写真 10
5
写真 11 サスペンション膜構造
研究室での模型製作事例
3 年生の設計製図の授業でブ リッジコンテストを開始したのと同時に,研究室で橋の模型の製作を行っ
てきた.これまで,大島大橋 (写真 12),西海橋 (写真 13),中央橋などの模型製作を行った.
写真 12 大島大橋
写真 13 西海橋
写真 14 現在の中央橋
写真 15 中央橋模型
写真 16 中央橋模型
写真 17 奥は事務局,手前は模型 (中央橋)
67
写真 14 は現在の中央橋である.中央の支柱が交通の妨げになっている.写真 15, 16 は中央に支柱
を設けないことを条件に製作した歩道橋案である.スパンを長くするために,吊ケーブル形式とし ,ま
た採光に配慮した構造設計となっている.写真 17 は,学内で撮った写真で,奥は本部事務局,手前は
模型で,模型と実物が写真では区別できないほどの出来栄えである.
6
授業内容アンケート
設計製図の授業をど のように考えているか,トラス模型製作によるブ リッジコンテスト,および膜構
造模型製作をどのように考えているかを調べるために,授業の最後にアンケート調査を行っている.
合成桁の設計では,クリープや乾燥収縮や温度差による応力の計算など 結構面倒な計算を必要とする.
それにもかかわらず,「設計はやった方がよい」との回答があるのは,構造工学科の学生が計算するこ
とを苦にしない証拠であろうか.
H ビームの設計・製図では約 3 割の学生が製図はやらない方がよいと回答した.実社会でも CAD 化
が進んでおり,手書きの図面を描くことはなくなってきている.しかし ,図面を読むことができるよう
になるためにも一度くらい描いた方がよいとの判断のもと製図を課しているが,今後検討する余地があ
る.また,構造工学科に平成 8 年度に導入された CAD システムを用いて製図し ,実際にボール紙等で
の製作を課したら,実際自分で設計した橋の図面を描くことに興味を抱くものと思っている.
トラス橋の製作・実験の実施,および膜構造の模型製作に関しては,高い評価を得ている.学生が提
出したレポートには,以下のような記述があった.
6.1
ブリッジコンテスト の感想
• 1 回目は上路式, 2 回目は下路式と 2 種類の少し変ったトラス橋を製作した.
• ど うすれば耐力が増すかを考えることは楽しい時間であって,模型製作の 1 週間は様々なことを
考えた.吊橋などん模型も作成して載荷実験してみたいと思った.
• 2 回の製作で,前回の反省や他班の良い箇所を取り入れたり,解析と製作の面で考える機会がで
きた.実験では予想外の破壊結果となり,その原因を討論し貴重な時間がもてた.
• 同じ部材を使っているのに,アイデアやセンスによっていろんな橋ができていた.製作上の丁寧
さも強度に大きく影響した.
• 耐力実験ではどの程度の強度があるのか緊張感を感じた.
• 製作したトラス橋には愛着がわいて破壊されたときにはせつなさがこみあげてきた.構造力学の
大切さを実感した.
• トラスの耐力実験を通して,溶接工学や構造力学などとの関連性が大きいことを再認識した.
• とても楽しかった.できれば 構造力学の講義でトラスを習った頃にやればもっと学校が好きに
なったかもしれないと思う.
• グループワークであったため,班員の意見や考えを評価し合い,実力を高め合うことができた.
• 最初はとっとと作れば一週間が楽になると考えていたが,いざ 作成する段階になると細かい部分
にまでこだわるようになった.
• トラスの製作を通じて,これまで交流のなかった人との交流ができた.
• 班員全員で議論し ,参考書をひっぱり出して調べたことは有益だった.
• 横倒れ防止の方策をもっと慎重に考えるべきだった.
• 美観,構造ともに得票数が多かったが,皆の期待を裏切ってしまった.製作の丁寧さが強度に反
映することを実感した.
68
6.2
膜構造の製作の感想
• 膜材が変形するので安定させるのに苦労した.最適な引張り具合はどれくらいかなと思った.
• 不安定な膜に張力を与えることで安定化するのは,作っていて興味を引いた.
左右のバランスをとく考えて作るともう少しきれいな形になるのではと思った.今度,暇なとき,
自分で大きなものや,別の形で作成してみたい.
• 糸を強く引張りすぎたため形が角ばってしまった.
• 平面曲面構造論で習った応力計算を模型と結びつけて考えていきたい.
• 今までなじみのなかった膜構造を作成してみて,自由度が大きい曲面構造物に興味をもった.
• さまざ まなものに膜が使われているが,あまり安全でないような気がしていたが,張力を与える
ことで安定した構造物となることがわかった.楽しみながら理解できたので大変よかったと思う.
• アホな間違いをしたため,時間がかかってしまった.その分膜構造についてはほかの班より理解
できたはず . . . . . . . . ..
• 詳しいことはわからないけど ,引張りには強いが圧縮には抵抗しない膜材料も,引張り力を導入
することで安定した構造になることが理解できた.
• 以外と簡単にできたが,膜の張り方がピンと張った方がいいのか,少し緩めに形を保つ程度でい
いのか悩んだ.
• 形状がきたなくなってしまった.隣の班がきれいに仕上げていたので見劣りした.
• 膜の製作により,膜構造の特徴を実感できた.
• 膜の曲面は美観がいいと思った.しかし ,製作においては張力の大きさに注意して慎重に作業す
る必要があると思った.
• 膜の張力が均一になるように張ることが意外と難しいことを知った.
7
あとがき
本授業では,「軽くて強く,かつ見栄えのよい橋梁模型の作成」という課題を学生に与えている.し
かし「良い」橋梁模型を作成するための明確な方法が存在するわけではなく,学生は構造力学等の講義
で学んだ知識をもとに,自らアイデアを出し ,創意工夫を施して橋梁模型を設計・製作することになる.
取組みをはじめて 5 年が経過したが,作成された橋梁模型,またその設計に至った思考プロセスは多種
多様であり,本取組みは創造性育成に大いに寄与しているものと思われる.授業で行っているため,製
作時間が必ずしも十分でない.このため,現在はトラス橋のみを製作させている.将来的にはアーチ,
吊橋,斜張橋などの他形式の橋も取り入れていきたいと考えている.
また,膜の力学特性を理論的に調べるには,弾性論からはじ まり大変形理論など の高度な構造力学を
学ぶことが通常実施されている.しかし ,そのような理論を学ぶことなく膜構造模型製作を行うことは,
三次元空間構造を理解する上で,また空間構造物に興味をもつためにも大切なことだと考えている.
ブ リッジコンテストと膜構造の製作は,学生が能動的に関わる授業となっており,その意味で,今後
とも持続していく価値は十分にあると考えている.しかしながら,まだ試行錯誤の段階であり,改善し
なければならない点も多い.
また,現在は 3 年生を対象としてブ リッジコンテストを行っているが, 1 年生から大学院生まで,さ
らには他学科 (機械システム,社会開発など ) の参加者を広げたコンテストが行えたらと考えている.
「ブ リッジコンテスト 」は熊本大学でも行われており,崎元先生が,『いずれ,九州大会,全国大会が
開けないかと夢見ている』と橋梁と基礎 [8] の巻頭言に書いておられる.
69
参考文献
[1] AISC: 1995 Steel Bridge-Building Competition, AISC, 1995 .
[2] 山口栄輝・稲森誠一郎・久保喜延・加藤九州男:ブ リッジコンテストの試み,土木学会西部支部研
究発表会, pp. 30-31 , 1996 .
[3] 山口栄輝・稲森誠一郎・久保喜延・加藤九州男:コンテスト形式の構造工学実験,土木学会第 51
回年次学術講演会講演概要集 (共通セッション ), pp. 216-217 , 1996 .
[4] 松田浩・崎山毅・山口浩平・三浦昌弘・山口栄輝:構造設計製図でのブ リッジコンテストの試み,
長崎大学工学部研究報告,第 27 巻,第 49 号, pp.253-259, 1997.
[5] Purdue Student Chapter of ASCE : The 14th Annual Bridge Model Contest, 1995 .
[6] 春日昭夫:トラスは強し ,橋梁と基礎, 93-8 , pp. 112-1113 , 1993 .
[7] 上阪康雄・松田浩:橋のお国事情,ド イツ – シュライヒの橋を中心に – ,橋梁と基礎, 99-11 ,
pp.41-49 , 1999.
[8] 崎元達雄:大学における構造系の教育について,橋梁と基礎, 2000-7 , p.1, 2000.
70