(1)空き家率が増加しています。特に賃貸住宅での増加が顕著になってい

第4章
住宅を取り巻く課題と特徴
(1)空き家率が増加しています。特に賃貸住宅での増加が顕著になっています。
・本市における空き家率※8 は、福岡市・北九州市の通勤圏内(おおむね1時間圏内)
にある新宮町・古賀市・福津市・岡垣町・遠賀町・水巻町・糸島市の3市4町(以
下、「比較対象都市※9」という。)と比べると、比較的高く、空き家数も増加傾向
(資料編 p.57)
にあります。
・本市の賃貸住宅を代表する日の里団地と日の里 1 丁目団地では、これを所有する
UR 都市機構が、平成 19 年「UR 賃貸住宅ストック再生・再編方針※10」を公表
「用途転換※12」と位置付けしたことに伴い、
し、それぞれの団地を「団地再生※11」
空き室が増加しました。
・JR教育大前駅周辺の主に大学生向けの賃貸住宅は、建築年数の古い住宅ほど老
朽化の問題などにより魅力が低下しているため、空き室が増加しています。
(2)居住者の高齢化と建物の老朽化は、空き家率をさらに増加させる要因とな
ります。
・特に昭和 40 年代から 50 年代前半にかけて建設された初期開発住宅団地の住宅
は、そのほとんどが築後 30 年から 40 年を経過し、木造住宅の耐用年数(法定
22 年)を超えています。
・初期開発住宅団地では、特に居住者の高齢化が進んでおり、日の里団地(日の里
1~9丁目)では、平成 23 年 12 月末時点で人口 9,484 人、高齢化率は 30.5%
となっています。また、自由ヶ丘団地(自由ヶ丘1~11 丁目)では、同じく人
口 8,345 人、高齢化率は 31.2%となっており、このうちすでに高齢化率が 40%
(資料編 p.50、p.51、p.52)
を超えている行政区もみられます。
・全市的な高齢化の進行に伴い、生産年齢人口比率、年少人口比率の増々の低下が
懸念されます。(資料編 p.48、p.49)
・高齢化の進行は、住み替えなどによる転出を助長し、さらなる空き家・空き地の
の侵入など犯罪を助長する恐れがあります。(資料編 p.57)
※8
総住宅数に占める
「空き家」の割合。空
き家には、賃貸・売却
のための空き家や別荘
などが含まれる。
団地再生
比較対象都市 ※9
UR 賃貸住宅ストック再生・再編方針 ※10
本市と比較するための参考都市。福岡市・北九州市
の通勤圏(おおむね1時間圏)にあるJR九州鹿児島
本線沿線の同規模自治体として新宮町・古賀市・福津
市・岡垣町・遠賀町・水巻町とする。また、福岡市を
挟み位置する同条件自治体として糸島市も含めるも
のとする。
UR 都市機構が平成 19 年 12 月の「独立行政法人整理合理
化計画」を受けて、全国約 77 万戸の賃貸住宅ストックに
ついての再生・再編方針を策定。宗像市日の里にある UR
賃貸住宅については、平成 30 年度までに、1丁目団地を
用途転換、5丁目団地を団地再生(集約)するとしている。
※11
まちづくりによる再生が必要と判断される団地について、地域の整備課題、住宅
需要などに応じて、大規模な再生事業(建替事業、トータルリニューアルなど)、
改善事業を複合的・選択的に実施すること。
用途転換
※12
将来需要の厳しい一部の小規模な団地などについて、
居住者の居住の安定を確保しつつ、賃貸住宅以外の用途
として新たなまちづくりに活用すること。
住宅を取り巻く課題と特徴
空き家率
第4章
増加が予測されます。また、空き家の増加によって、防犯上の面では、空き家へ
15
(3)住宅確保要配慮者※13 へのバランスのとれた住宅セーフティネット※14 が求め
られています。
・さまざまな理由で独力では住宅の確保が困難な住宅確保要配慮者に対しては、安
心して暮らすことのできる住宅の確保が求められています。
・本市では、市営住宅などがその役割を有していますが、UR都市機構の賃貸住宅
によって、住宅セーフティネットが補完されています。(資料編 p.63)
・今後は、入居者の高齢化が予測されることから、高齢単身者の利用に配慮した住
宅をはじめ、入居者の状況に応じた公共住宅※15 の供給が求められています。
(4)昭和55年以前の住宅には耐震基準に満たないものがあります。
・昭和 56 年に建築基準法の新耐震基準が施行され、施行以前に建築された住宅
には新耐震基準に適合しない住宅が含まれている恐れがあります。このため、
昭和 55 年以前に建てられた住宅における耐震診断の実施と耐震補強工事の推
進が求められています。
(資料編 p.58)
(5)居住者の高齢化により、住宅のバリアフリー※16 化が求められるとともに、
住宅の維持が困難になることが予想されます。
・居住者の高齢化が進むことにより、住宅内の段差などが日常生活の支障となる
場合があります。また、高齢者のひとり暮らしや夫婦のみの世帯においては、
部屋数が多い、床面積や手入れが必要な庭園が広いといったような場合、住宅
の維持管理が年々重い負担となってくることが予想されます。
(資料編 p.53、p.55)
(6)エコ住宅※17 やリサイクル建材など低炭素社会※18 に向けた取り組みが求めら
れています。
・住宅は、建築時の建設資材、居住時のエネルギー消費や解体時における多量の建
設廃棄物の発生など、環境に対して大きな負荷を抱えています。そのため、これ
からの住宅建設やリフォーム工事においては、環境への負荷を軽減し、低炭素社
会の実現に向けた省エネルギー、省資源に配慮した取り組みが求められています。
第4章
住宅を取り巻く課題と特徴
16
住宅確保要配慮者 ※13
住宅セーフティネット
低額所得者、被災者、高
齢者、障害者、子どもを育
成する家庭その他住宅の確
保に特に配慮を必要とする
者のこと。
住宅確保要配慮者が、それぞれの所得、家族
構成、身体の状況などに適した住宅を確保でき
るようなさまざまな仕組み。平成 19 年 7 月に
「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給
の促進に関する法律」(通称:住宅セーフティ
ネット法)が施行された。
エコ住宅
※14
※17
地球温暖化防止などの地球環境保全を促進する観点から、エネルギー・資
源・廃棄物などの面で適切に配慮された住宅。省エネ基準に適合する使用エネ
ルギー量を少なくできる住宅も含まれる。
公共住宅
※15
公営住宅、地域優良
賃貸住宅などの公的
賃貸住宅のこと。
バリアフリー ※16
障害者を含む高齢者などの社会
生活弱者が、社会生活に参加する上
で生活の支障となる物理的な障害
や、精神的な障壁を取り除くための
施策、もしくは具体的に障害を取り
除いた事物および状態。
低炭素社会 ※18
温室効果ガスの排出量の削減、温室効果ガスの吸収作用の
保全および強化ならびに地球温暖化に対する適応を行うこ
とにより、創造的で活力ある持続的な発展が可能となる。
(7)シックハウス※19 対策など室内環境に配慮した住宅が求められています。
・住宅は、使用する建材から発生する化学物質によって、室内空気汚染を引き起こ
し、アレルギーの発症など、居住者の健康状態に重大な影響を及ぼす恐れがあり
ます。このため、良好な室内住環境に配慮した住宅の建設やリフォーム工事が求
められています。
(8)面積の規制や地区計画※20 により、良好な住宅地の景観が保たれている一方
で、市場化が進まないなどの課題が生じています。
・本市の第一種低層住居専用地域※21 では、最低敷地面積の制限や建ぺい率・容積率
の制限、地区計画の指定によって、ゆとりある敷地や住戸間の空間確保など良好
な低層住宅地の環境や景観が保たれています。
(資料編 p.42)
・最低敷地面積の制限によって、戸当たりの敷地面積が広くなることから、一区画
当たりの土地価格が高額となります。また、所得の大幅な増加が見込めない現況
において、住宅建設に費やす額は制限されるため、住宅取得希望者にとって購入
が困難となっています。
(資料編 p.53、p.61)
(9)旧唐津街道や農村漁村集落には古くから伝わる様式で建てられた住宅が残
されています。
・旧唐津街道の沿道には赤間宿・原町などの歴史的まちなみが残され、宗像大社や
神湊に連絡する主要地方道宗像玄海線沿道には豊かな緑地や田園風景、海岸・河
川の美しい自然と一体となった農漁村集落の景観が保全されています。これらの
地域では、古くからの日本の伝統様式により建てられた住宅が残っています。
(10)JR鹿児島本線沿線の福岡市東部エリアの中で、本市の地価は比較的安価
となっています。
・福岡市東部で、JR鹿児島本線沿いに位置する新宮町・古賀市や福津市などと比
較すると、本市の住宅地の地価は比較的安価となっています。(資料編 p.60)
第4章
住宅を取り巻く課題と特徴
シックハウス ※19
「シックハウス症候群」をもたらす住居のこと。「シックハウス症候群」と
は、建築の内装材、家具などから発生する化学物質に起因する健康への影響
のこと。建材への化学物質の使用のほか住宅の高気密化などが原因と考えら
れている。
地区計画
※20
住民の生活に身近な地区について、道路、公園などの施設の配置や建築物の建
て方など、地区の特性に応じてきめ細かく定めるまちづくりの計画のこと。地区
計画は、都市計画や建築基準法による大まかな規制、誘導だけではカバーしきれ
ない面を補完し、地域特性を生かしたまちづくりに有効となる。
第一種低層住居専用地域
※21
低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定め
る地域。建物の高さや敷地面積の最低限度など、良好な環
境を整備するための制限が設けられている。
17
(11) 医師会病院や急患センターが立地しているなど、地域医療が充実しています。
・本市には、日ごろから市民の病気や健康にきめ細かく対応する地域の医療機関(か
かりつけ医)に加え、その「かかりつけ医」と連携して診療を行う「地域医療支
援病院※22」として承認されている宗像医師会病院があります。
・宗像と福津の両市で構成する宗像地区事務組合※23 が設置し宗像医師会が運営する
宗像地区急患センターでは、夜間や休日、お盆や年末年始の急患の診療を行って
います。その他にも、同センターや市内の医療機関の運営時間外に発生した急患
に24時間対応する「救急告示病院※24」など、“暮らしの安心”を支える地域医
療が充実しています。
(12)住宅関連事業者が集まり、行政とのパートナーシップのもと、独自の事業
を展開しています。
・平成 20 年、市内の住宅関連事業者有志が集まり、市民の安心できる住生活を支
援するとともに、市内住宅地の賑わいの創出に寄与することを目的に「住マイむ
なかた」が結成されています。
・同団体は、本市からの住宅相談業務の受託、宗像市空き家・空き地バンクへの協
力のほか、本市との協働により、地元事業者ならではのきめ細かな“安心”と“安
全”を実感できるような住生活関連の独自事業を展開しています。
(13)本市には3つの大学が立地し、また、住宅関連事業者が存在することから
住宅政策の実現に向けて産学官の連携が期待できます。
・本市には、国立大学法人福岡教育大学、日本赤十字九州国際看護大学、東海大学
福岡短期大学の3大学が立地しており、3大学を合わせると大学生が約 3,700 人
就学しています。
・市内の3大学と住宅関連事業者、そして行政による産学官の連携が期待できます。
第4章
住宅を取り巻く課題と特徴
地域医療支援病院
18
※22
地域の病院や診療所などを後方支援するた
めに創設された病院。医療機関の機能の役割
分担と連携を目的とし、都道府県知事が承認。
宗像地区事務組合
※23
宗像市と福津市で構成する一部事務組合。水
道、消防、し尿処理場、急患センターなどに関
する事務を共同で処理している。
救急告示病院 ※24
厚生労働省の「救急病院等に定める省令」
に基づいて、都道府県知事が認定した医療機
関。24 時間 365 日救急医療に対応している。