増岡浩インタビュー王者、3連覇への布石 7月に行われたモロッコテスト。そこで増岡浩は確かな手応えをつかんでいた。 3連覇期す増岡。来年のパリダカまであと半年と迫った今、何を考えどんな準備をしているのか。王者の「今」を探った。進化するパジェロエボリューション …まずは7月に行われたモロッコテストについてお伺いしたいのですが前回のコースは度胸一発みたいなとこがあったけど、今回は純粋な腕比べ。マシンの性能よりもドライバーの腕が顕著に現れるコースですからね。 …今年規則が変更になって、パジェロお得意のタイヤ空気圧調整システムが使えなくなりました。増岡：まあ、使えなくなってしまったんですが、それは他のチームにもいえること。レギュレーション変更によってマシンの開発の方向性が変わったということはありません。でも空気圧が調整できないことで 2 0 〜30分のタイムロスは必ずある。だからその時間をカバーできるくらい速い車を目指してます。首は車の振動やコーナリングで常に負担がかかるし、左足はいかに速く強くブレーキを踏めるかが重要。パリダカまでにはもっと鍛えないと。増岡：プロは結果がすべて。結果が出ないとクビだから、とにかく結果にはこだわりたいよね。それと考える時間がとても増えたんです。でね、これからのことをよく考えたの。そしたら、目標が変わった。いままでは（アリ）バタネンを超えるパリダカ 5 勝が目標だったけど、計算したら6 勝できるぞと（笑）。だから今の目標はパリダカ 6 勝です。 …その自信を持てるのがすごいですね。増岡：やっぱり妥協しないで取り組んでいることが自信につながってます。それと王者は追われる立場だってよく言われてるけど、僕はそうは思わない。むしろ追う立場だと思ってるんです。ライバルを自分より高いところにいると思い、それを超えるように努力する。そうしないとさらなる上を目指せないんです。王座を守るんじゃなくて、その上に行くという感じかなあ。それにラリーの行程中、必ず何回かタイヤの空気圧を自分で調節するために止まらなきゃいけないときがある。ドライバーって絶対に途中で止まりたくないんだけど、そこで止まれる勇気みたいなものが試されそうですね。 … チームについての変更点はあります ← 増岡：モロッコではドライバー 4 名で 5000kmもの距離を、改良されたパジェロで走りこみました。ワークスとして参戦している以上、日々技術の進化を追求するのは当然ですからね。パジェロの 7 0％は昨年と同じものを使用するので、残りの 3 0％を改良しています。テーマは「思い切った軽量化」。特にエンジンの重量が軽くなったんです。最低重量よりもマシンが軽くなったので、その分マシンのバランスを考えることができます。サスペンションも改良され、砂漠の上なのにオンザレール感覚！すごいでしょ（笑）。それと各部の冷却系に力を入れています。 …それはコースが変更されることに関係あるのですか？増岡：そうです。今回のモーリタニアを通るコースは、中低速のテクニカルコースなんです。前回のエジプトコースと違って圧倒的にスピードが遅い。だから特に冷却系には厳しいんです。それにエンジンに全負荷がかかることもしょっちゅうだし、マシンへの負担が大きい。だからいかにペースダウンをしないように走るかも重要なんです。でも僕はこういうコースが得意、だから有利だと思ってます。増岡：そう、W R C のチームから（ベルナール）リンダウアーっていうエンジニアがやって来たんです。彼はとっても現場向き。それにWRCで使用している技術的なアイディアをいっぱい持ってきた。意外かもしれないけど、いままでパリダカチームとW RCの方って、技術的なつながりがほとんどなかった。だから彼の加入がとても大きいですね。やっぱりパリダカとWRCを両方やっている三菱の強みがこれから生きていけばいいなあ、と。さらに進化する増岡浩 …マシン、チームときて次はやはり増岡さんの肉体についてですが。すごく引き締まりましたね。増岡：うん。前回のときと比べて身体能力がさらに 3 0 ％向上したんです。いままでやってきた持久力のトレーニングに加えて、最近は瞬発系のトレーニングをやっています。瞬発力を鍛えるには、同じトレーニングをスピードをつけてやらなきゃならないから、ほんとにきつい。それとラリー中に負担のかかるところを集中して鍛えています。それは首と左足。去年と比べてもトレーニング量は増えてます。腹筋・背筋なんて日に3 0 0〜5 0 0 回は必ずやってます。トレーナーからは1000 回やれって言われてるけど、疲れるからやだって（笑）。バーベル、ダンベルも相当重いのを使ってる。でもマシンの開発、進化についていけるように肉体も進化させないといけないんです。車、チーム、体、どれかひとつでも妥協しちゃったら終わりだから。すべてを最高まで持っていかないと、パリダカの連覇はできないと思ってますから。 …それと今年はプロドライバーとしての契約になりました。何か変化はありま増岡：自分らしくやれば必ず勝てると思っています。出るからには、前哨戦のUAEラリーから全部勝ちたいという気もあるし（笑）。前回のパリダカよりもすべてが進化した体制で挑む今回は、3 連覇を達成できると思っています。パリダカって本当に筋書きのないドラマ。だから絶対みんなを感動させる走りを見せるので、期待していてください！ …ありがとうございました。増岡選手のお話をうかがって感じることは、とにかく「順調」だということ。昨年より 2 か月早いスケジュールで準備をつづける王者の連覇は可能性大と見た！でもライバルは自分自身。自分に打ち勝てば、必ず結果は出ると思います。 2004年へ、王者の意気込み …では最後に、今年待ち続けている三 RALLIART JOURNAL 2