平成26年度 北海道内4高専技術職員SD研修会(平成27年3月12日実施) 〔技術トピック記載例〕 函館高専板金加工実習における高度先端技術加工機の導入取組み事例 高橋 一英(函館高専 技術長) キーワード:Fiber laser beam machine, Shearing machine, Press brake 1.はじめに 社会の高度情報化に伴い,製造業の生産現場では数 値制御(NC)化が進み高精度で効率的な様々な特徴あ るものづくりが要求されている.それに伴い,函館高 専では平成 19 年度からの全国高専における実習工場 再生支援設備経費において,老朽化及び高度化に対応 し,機械設備を計画的に更新してきた.特に,板金機 械設備は函館高専創立当初からの設備であり,40 年以 上の歳月を経過していたため,平成 23 年度以降に大幅 な更新となった. この板金機械設備は表1に示すように,板金を折り 曲げ加工するプレスブレーキ,切断するシャーリング マシン,そして,金属板に対して精密な切断加工,マ ーキング加工を行うファイバーレーザー加工機を導入 した.そこで本報告では,板金実習における高度先端 技術加工機の導入取組み事例を紹介する. 表 1 導入機械設備 導入年度 (平成) 23 年 23 年 26 年 名称 駆動方式 プレスブレーキ AC PAS5012 サーボ シャーリングマ シン SHS6×125 製造 コマツ 動力油圧 産機 コマツ 産機 ファィバーレー 半導体 澁谷 ザ SPF3907 レーザ 工業 数 1 1 ファイバーレーザ加工機 図 1 新機械設備 3.新機械設備の仕様及び特徴 新導入された機械の状況を図 2 に,その仕様および 特徴を表 2 に示す.前述のように新機械設備の特徴は, 数値制御による高精度,高信頼性の確立,および,人体 センサーおよび保護装置等による安全性の確保にある. プレスブレーキにおいては,NC 機能により精度,再現 性が向上している.また,シャーリングマシンにおい ては,従来切断できなかった板厚 2mm 以上の材料を手 軽に切断が可能となり,さらに,レーザー加工機は金 属板の精密な切断およびマーキングが可能となった. これらにより,学生に対する教育の向上ばかりでなく, 板金加工において,ものづくりの体制を根本から変え ることができた. 表 2 機械仕様及び特徴 1 名称 2.新機械設備導入による効果 更新導入した機械設備には図 1 に示す様な,プレス 仕様 プレスブレー 能力 500kN, キ PAS5012 曲げ長さ 1250mm ブレーキ,ファイバーレーザ加工機などがあり,コン 特徴 高精度曲げ加工, NC 操作, 生産性向上. ピュータ内蔵の自動化システムを有しており,その高 外形寸法 mm L1646×W1446×H2530 機能性により,高精度な加工が可能で,同時に作業時 シャーリング 切断長 1250mm, 高精度切断加工, 間を短縮することができる.また,安全装置が装備さ マシン 切断軟鋼厚 NC 操作, れ,作業における危険を回避することができる.従来 SHS6×125 0.8~6.5mm 生産性向上. の手動式から最新の動力機械に変更することで,生産 外形寸法 mm L350×W1145×H1868 現場の実情に即した教育効果が期待できる. ファイバーレ ーザ SPF3907 発振器 400W, 微細精密加工, レーザ波長 金属切断・ 1060~1080nm, マーキング加工. クラス 4 レーザ, 加工範囲 ビーム径 60μm 700×450mm 外形寸法 mm L2390×W2350×H2325 シャーリングマシン プレスブレーキ 平成26年度 北海道内4高専技術職員SD研修会(平成27年3月12日実施) 〔技術トピック記載例〕 工程⑤ヤスリ仕上げ箇所 4.板金加工実習におけるブックエンドの製作 生産システム工学科 2 年,生産システム実習基礎で の板金加工実習では,ブックエンドの製作を行ってい る.次にその作業工程,内容を表 3 に示す. 表 3 ブックエンドの工程(SUS304 t1.0mm) 工 程 工程・機器名称 実習内容 マーキングデザイン, ① CAD/CAM ② シャーリング マシン SUS 板材料の切断加工 ファイバーレーザ 外形切断(学生デモ) , (微細加工機) マーキング(輪郭加工) ③ NC データの作成 図 4 ブックエンド製作図 4.2 ブックエンド製作の課題と対応 以前は,機械が手動式のためR部のすべてをヤスリ がけしていたが,新導入したファイバーレーザ加工機 ④ シャーリング マシン R 接線部切断×1 箇所 ⑤ ヤスリ仕上げ 上記④の R 部×1 箇所 ⑥ プレスブレーキ 折り曲げ(ベンド) では簡単にステンレス材料の外形切断ができる.その ため,工程は自動機械のボタン操作のみとなり,学生 が技能的要素を習得する機会がなくなる.それにより, ヤスリがけ技能習得の要素を図 3,図 4 の丸印,工程⑤ (R 部×1 箇所)をあえて残すことにした. また,学生のファイバーレーザ作業は,約 10 名 (1part)による,デザイン作成+マーキング加工であ 4.1 ブックエンドの製作 ブックエンド製作(図 3)は表 3 に示す様に,ブッ クエンド側面へのマーキングのデザインを CAD/CAM を り,マーキング加工での待ち時間が生じる.そのため 実習作業を効率良く進めるため,時間配分が重要とな る.表 4 は作業の所要時間を示す. 使用して行い,主な加工をレーザ加工機で行い 図 4 に 示す形状を切断,プレスブレーキを用いて曲げ加工を 実施している.この中で四隅のうち 1 つの R を残して 切断し,金属板の単純な切断にはシャーリングを用い て,隅 R の加工を手作業で行っている. 表 4 ブックエンド製作時間(実習時間 200 分) 工 ① このように NC 機械を用いて各自のデザインを反映 させたものづくりをすることは,学生の創造性を向上 ② させることを目的としている.また,NC 作業だけでは なく,手仕上げで金属板を加工することにより,材料 ③ の性質(削りやすさ,硬さ,厚さ) ,加工方法などを理 解させるよう工夫している. 作業項目 程 ④ ⑤ ⑥ CAD/CAM 操作習得 (デザイン作成) 所要時間 約 60 分 ファイバーレーザの 約 2~3 分×10 人 操作習得 ≒30 分 ファイバーレーザ 約 5~9 分×10 人 加工 ≒90 分 シャーリングマシンに 約 1~2 分×10 人 よる切断 ≒20 分 R 部のやすり仕上げ 約 10 分 プレスブレーキによる 約 3 分×10 分 折り曲げ =30 分 表 5 ブックエンド時間配分(実習時間 180 分) 工程① 28% 図 3 製作するブックエンド 工程② 17% 工程③ 工程 44% (④⑤⑥) 20 分 余裕 ※結果,表 5 の 20 分程の余裕時間を確保でき,実習内 容の習得や安全面でゆとりある作業を終了できる.
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