再帰動詞の補足PDF

Lektion 10 再帰代名詞、再帰動詞、es の用法、zu 不定詞
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再帰代名詞
主語と同じ人や物を示す代名詞が、同一文中で出てくると、それを再帰代名詞と言います。
再帰代名詞は、3人称と、敬称の2人称(複数3人称を借用しているため)だけは、3格4格とも sich で、その
他の人称では、5課で学習した人称代名詞を、そのまま使います。そこでも述べましたが、1人称、2人称の代名
詞は、それが誰を(何を)指しているか?何の代わりに使われているかが明確なため、あまり問題はないのです。
3人称の場合に、特別な形が必要になります。その理由を、一緒に考えて見ましょう。
Der Vater wäscht den kleinen Sohn. 父親は小さな息子(の体)を洗ってやる。
この文で、話し手、聞き手が、誰を指しているのか了解していれば、
「父親」
、
「小さな息子」の両方とも、人称代名
詞にすることが可能です。
Er wäscht ihn. 彼は彼(の体)を洗ってやる。
話し手も聞き手も、er が誰を指すのか、ihn が誰を指すのかわかっているわけですから、問題はありません。
それでは、目的語が主語と同じになった場合、つまり「自分(の体)を洗う」という文を考えてみましょう。
1人称 Ich wasche mich.
Wir waschen uns.
2人称 Du wäschst dich.
Ihr wascht euch.
ここまでは、
普通の人称代名詞を使っていても、指示の混乱が生ずることはありません。
言い換えれば、ich と mich、
wir と uns、du と dich、ihr と euch が別の人を指すことはないわけです。
ところが3人称になると、上述の「彼は、
(別の)彼を洗ってやる」という文と、「彼が自分自身を洗う」場合を
区別しなければなりません。そのために、
「自分自身を」を表す場合には再帰代名詞 sich が使われるわけです。
3人称単数 Er wäscht sich.
Sie wäscht sich.
Es wäscht sich.
3人称複数 Sie waschen sich. (=敬称の2人称)
英語の場合は、再帰代名詞(=self 代名詞)は、myself, themselves のようにどの人称でも-self (-selves)という形
をしているため、特別な形 sich と、普通の人称代名詞が混在しているドイツ語の再帰代名詞はわかり難く感じられ
るかもしれませんが、上記のような理屈があるわけです。もうひとつのわかり難い原因は、英語では主語の性に応
じて himself, herself, itself のような区別がありますが、ドイツ語では、
「彼」でも「彼女」
、
「それ」でも、全て sich
ということがあるのでしょうか。
次に3格の再帰代名詞ですが、まず3格そのものの使い方を学習しましょう。3格の大きな用法として、利益を
受ける人「受益者」を表す使い方があることは、ご存知ですね。geben のような動詞を思い浮かべれば、簡単に理
解できます。
Ich gebe ihm ein Wörterbuch.
geben 与える・渡すという行為の、直接の対象は Wörterbuch 辞書ですね。辞書が、何らかの形で移動するわけで
すが、その行為の結果として、利益を得る人が3格の ihm で表されていることになります。これが、理解できると、
次の例文も簡単にわかりますね。
Der Vater wäscht dem Sohn die Hände.
洗う行為の、直接の対象は die Hände 手なのですが、そのことによって利益を受けるのは dem Sohn 息子であるわ
けです。このような場合、一般的には「体の一部」の所有者を3格で表すというように説明し、
「所有の3格」とい
う言い方をすることがあります。つまり日本語に訳す時は「お父さんは、息子の手を洗ってやる」とするのが普通
です。
ただ、この受益者の3格と、所有冠詞が両方使われるような文もしばしば出てくるため、混乱が生じるのでしょう。
Der Vater wäscht dem Sohn seine Hände.
3格は「利益を受ける人」だという基本がわかっていれば、混乱することはありません。この利益を受ける人とい
うのは、体の一部ではないような場合にも使われます。
Der Sohn wäscht dem Vater sein Auto.
Der Vater kauft dem Sohn ein Wörterbuch.
さてこのような3格受益者が、自分自身になるとどうなるかは、もうおわかりですね。
Ich wasch mir die Hände.
Wir waschen uns die Hände.
Du wäschst dir die Hände.
Ihr wascht euch die Hände.
Er wäscht sich die Hände.
Sie waschen sich die Hände.
この場合も、
「彼は、
(誰か別の)彼の手を洗ってやる」のなら
Er wäscht ihm die Hände. (←上述の Der Vater wäscht dem Sohn die Hände.)
となるわけです。
再帰代名詞の基本的な意味・用法
再帰代名詞が三人称で特別な形を必要とする理由は、お解りになったと思いますが、実は、これは3格、4格の場
合だけで、1,2格は、通常の人称代名詞をそのまま使いますし、所有冠詞のある種の用法も再帰的と言えないこ
ともありません。
Felix ist Felix, Felix ist immer er.
Julia gedenkt ihrer immer nicht. 2格の目的語をとる動詞
Er wäscht sein Auto. 所有冠詞
この場合、所有冠詞 sein「彼の」の「彼」が主語 er と別の誰かを指しているという確証がない限りは、主語と同
じ人を指しています。
再帰代名詞の、基本的な意味・用法は、後述の再帰動詞の場合を除き、
「自分自身」が行為なり動作の対象になる再
帰的用法と、主語が複数の場合に「お互いに」の意味で使われる相互的用法があります。再帰的用法の場合、副詞
selbst など、相互的用法の場合は(mit)einander, gegenseitig などで、それぞれの意味がはっきり現わされているこ
ともあります。
Julia lobt sich selbst.
Max und Felix streiten sich miteinander.
2再帰動詞
さきほどの waschen を使った例文は、他動詞としての用法があり、たまたま目的語が「自分自身」、つまり主語と
同じになった場合です。
Ich wasche den Sohn. > Ich wasche ihn.  Ich wasche mich.
Ich wasche dem Sohn die Hände. > Ich wasche ihm die Hände. Ich wasche mir die Hände.
所有の3格とは異なった例文も挙げてみましょう。
Sie kauft ihrer Tochter einen Rock. > Sie kauft ihr einen Rock. Sie kauft sich3 einen Rock.
従って、そこで使われている再帰代名詞は、「自分を」とか「自分の(ために)」とすれば、適切な訳になっていま
した。
しかし、再帰動詞というグループは、再帰代名詞に「自分」というような意味がなく、またそのように訳すことも
ないような動詞群を指します。
Ich freue mich auf die Sommerferien. 私は、夏休みを楽しみにして(待って)いる。
確かに freuen には、他動詞としての用法があり、次のような使い方もできます。
Das Geschenk freut die Kinder. そのプレゼントは、子供たちを喜ばせる。
この場合は、もの、つまりプレゼントが主語で、子供たちは 4 格目的語となっています。同じような状況を、再帰
動詞を使って表現することもできます。
Die Kinder freuen sich über das Geschenk. 子供たちは、その贈物を(もらって)喜ぶ。
再帰動詞 sich freuen の場合、他動詞の訳を、そのまま応用し、
「自分自身を喜ばせる」としても、意味不明の文に
なってしまいます。ここが目的語を「自分」とすれば、ある程度適切に理解できる waschen などとの違いです。し
かし、辞書や、教科書などでも、この両者を区別せず、再帰動詞として扱っているものが多いので、逆に学習者に
はわかりにくいという結果になっているのです。ただし、境界領域のようなものは常にあり、たとえば setzen の場
合はどうでしょうか。
Der Vater setzt das Baby auf den Stuhl. 父親は、その赤ん坊を椅子に座らせる
Der Vater setzt sich auf den Stuhl. 父親は椅子に座る
「自分自身を座らせる」としても良いのかもしれませんが、むしろ「
(誰かを)座らせる」という他動詞が、再帰代
名詞と一緒に使うことで、
「座る」という意味の自動詞のような使い方になっていると考えるとよいのでしょう。英
語では sit という動詞が、「座っている」状態も、sit down「座る」という動作も表すのですが、ドイツ語の sitzen
は「座っている」状態しか表しません。そこで、sich setzen が「座る」動作を表すために使われるわけです。
Der Vater sitzt auf dem Stuhl. 父親は、椅子に座っている
他動詞としての用法があっても、再帰動詞として使うと、全く違う意味領域になるものもあります。
Die Lehrer befinden sich zur Zeit in der Schule.
この場合も、sich には意味がなく、再帰動詞としての用法であることを示しているだけです。
他動詞としての用法がなく、再帰動詞しかないようなものもいくつかあります。
Der Königssohn verliebt sich in das Mädchen.
この場合は、再帰代名詞には、再帰動詞であることを示すほかに、固有の意味は全くないのですが、主語が1・2
人称になれば、形を変えないとならないのが不思議な点です。
Ich verliebe mich in das Mädchen.
他に sich schämen, sich verirren などがあります。
以上、再帰代名詞の用法として1)動詞の行為・動作が、自分自身に及ぶような、再帰的用法、2)動詞の行為・
動作がお互いに相手に影響を及ぼすような、相互的用法、3)sich setzen のような、動詞の行為・動作が自分自身
に及んだ結果、他動詞を自動詞化する働きのある用法、4)自分自身という意味を失った、狭い意味での再帰動詞
用法の4つに整理して考えるとよいでしょう。
☆動詞によっては、これらの用法のいくつかをカバーするようなものもあります。例えば vor|stellen という分離
動詞は、
「人3に人4を紹介する」という用法があり、この「人4」が「自分自身」になって再帰代名詞を使えば「人
3
に自己紹介する」という意味になり、また再帰動詞として sich3事柄4vor|stellen で「事柄4を想像する」という
使い方もあります。
Hänsel stellt der Hexe seine Schwester vor. ヘンゼルは魔女に妹を紹介する(他動詞)
Hänsel stellt sich4 der Hexe vor. ヘンゼルは魔女に自己紹介する(他動詞の目的語が「自分を」→再帰代名詞)
Das kann ich mir nicht vorstellen. そんなこと、私には想像できない(純粋な再帰動詞)
☆また、同様の状況で、他動詞、他動詞+再帰代名詞、再帰動詞、自動詞の全ての表現が可能な動詞もあります。
Hanna trifft vor dem Kino ihren Freund. 意図的、偶然、両方可(他動詞)
Hanna und ihr Freund treffen sich vor dem Kino. 同上(相互的な再帰代名詞)
Hanna trifft sich vor dem Kino mit ihrem Freund. 待ち合わせなど意図的(再帰動詞)
Hanna trifft vor dem Kino auf ihren Freund. 偶然(自動詞)
この 4 つの文は、いずれも「ハンナが、映画館の前で、男友達と、出逢う」わけですが、使い方によって微妙な差
があるのが興味深いところです。
☆他動詞の自動詞化の延長(ヴァリエーション)で、動作の直接対象であるはずのものが主語となり、再帰代名詞
と一緒に使うことで、本来なら動作・行為を担うはずの主体を明確にしない用法もあります。
Gretel / Der Wind / Jemand öffnet die Tür.  Die Tür öffnet sich.
Viele Leser kaufen den Roman.  Man verkauft den Roman viel.  Der Roman verkauft sich gut.
再帰代名詞の位置
辞書、教科書などで、再帰代名詞を使った句例などを示す時は、3人称の形 sich で代表させていますので、実際
の文を作る時には、主語の人称に合わせた形にしなければならないのも初学者には混乱の原因となるかも知れませ
ん。
sich4 auf etwas4 vor|bereiten 物・事4の準備をする
sich3 die Hände waschen (自分の)手を洗う
などと書いてあるのに、実際の文例では
Ich muss mich heute Abend auf das Referat vorbereiten.
Wasche dir sofort die Hände! (主語がない命令文でも、再帰代名詞は命令の対象に合わせる!)
のように、適切な形に直す必要があります。
再帰代名詞の位置は、文頭以外で、できるだけ前というのが一般的です。
Ich wasche mir die Hände.
定動詞は二番目と決まっていますから、再帰代名詞 mir はその直後。4格目的語の die Hände はできるだけ後ろの
ほうが望ましいので、他の要素を入れる場合は、mir と die Hände の間になります。
Ich wasche mir vor dem Essen die Hände.
疑問文の場合はどうでしょうか?主語が代名詞なら、やはり主語の方が先。
Wäschst du dir vor dem Essen die Hände?
主語が名詞句だと、再帰代名詞が主語より前に来ることもあります。
Waschen sich die Kinder die Hände?
主語より前に来ることがあるのは、副文でもそうなります。
(13課従属接続詞参照)
Weißt du, dass sich ein Schulkind vor dem Essen die Hände waschen muss?