平成23年度 地 域 生 物 多 様 性 保 全 計 画 (礼 文 町 生 物 多 様

環境省委託業務
平 成 23年 度
地 域 生 物 多 様 性 保 全 計 画
(礼 文 町 生 物 多 様 性 地 域 戦 略 )
策 定 事 業 委 託 業 務
報
告
書
平 成 24年 3月
礼
文
町
平成23年度
地域生物多様性保全計画(礼文町生物多様性地域戦略)策定事業委託業務
報
目
告 書
次
1. 委託業務の概要 _______________________________________________________ 1
1-1. 委託業務の目的 ............................................................ 1
1-2. 委託業務の概要 ............................................................ 1
1-3. 委託業務の内容 ............................................................ 1
2. 検討委員会の設置・運営 _______________________________________________ 3
2-1. 礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会規約 ................................ 3
2-2. 礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会名簿(平成23年度) ................ 4
2-3. 検討委員会開催概要 ........................................................ 5
2-4. 検討委員会議事次第・議事概要 .............................................. 5
3. 礼文町生物多様性地域戦略『礼文島いきものつながりプロジェクト』 ______ 72
1. 委 託 業 務 の 概 要
1-1. 委 託 業 務 の 目 的
本業務は、北海道礼文郡礼文町の生物多様性地域戦略の策定に向けた情報収集及び普及啓発を
行うことを目的に実施した。
1-2. 委 託 業 務 の 概 要

業
務
名
: 平成 23 年度地域生物多様性保全計画(礼文町生物多様性地域戦略)
策定事業委託業務

業 務 箇 所 : 主として北海道礼文郡礼文町

業務実施期間:
平成 23 年 5 月 16 日~平成 24 年 3 月 9 日
1-3. 委 託 業 務 の 内 容
(1) 検討委員会の設置・運営
生物多様性地域戦略を策定するために、
「礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会」
(以下「検
討委員会」という。
)を設置・運営した。検討委員会の委員は 15 名とし、うち学識経験者は 7
名とした。会議の回数は 5 回とし、うち 6 月・10 月の 2 回を礼文町内で、11 月・12 月・2 月の
3 回を札幌市内で開催した。検討委員会には委員の他礼文町関係職員等 20 名程度が出席した。
なお、会議の開催支援の業務は、株式会社ライヴ環境計画に再委託することにより実施した。
(2) 生物多様性地域戦略の策定
昨年度とりまとめた『礼文町いきものつながりプロジェクトの概要(礼文町生物多様性地域戦
略のガイドライン/2011.3.7 版)
』に基づき、前述の検討委員会委員等の意見・知見をふまえ、
礼文町生物多様性地域戦略『礼文島いきものつながりプロジェクト』を策定した。策定に至る経
緯(概略)を次ページに示す。
なお、生物多様性地域戦略の策定支援の業務は、株式会社ライヴ環境計画に再委託することに
より実施した。
-1-
礼文町生物多様性地域戦略『礼文島いきものつながりプロジェクト』策定に至る経緯(概略)
平成
平成
年 月 日(水)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
平成 年 月 日(土)
第 回検討委員打ち合わせ
平
成
22
年
度
平成 年 月 日(木)
第 回検討委員打ち合わせ
平成
平成
年 月 日(月)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、戦略の構成、戦略策定の進め方、礼文島の生物多様性の現状把握について
平成 年 月
『礼文島いきものつながりプロジェクトの概要』(礼文町生物多様性地域戦略のガイドライン/
平成
平成
版) 作成
年 月 日(金)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、戦略策定の進め方、「戦略策定にあたって」(戦略策定の背景、戦略の位置づけ)について
平成 年 月~ 月
礼文高等学校3年生による「礼文島いきものつながり」の恵みに関する聞き取り調査 実施
平成 年 月 日(水)
礼文島いきものつながり意見交換会 開催
平
成
23
年
度
平成
平成
年 月 日(木)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、「礼文島の生物多様性の現状と課題」について
平成
平成
年 月 日(木)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、礼文島の生物多様性の現状と課題について
平成
平成
年 月 日(月)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、「礼文島の生物多様性の現状と課題」、「礼文島いきものつながりプロジェクト」(将来像~基本方針~施策)について
平成
平成
年 月 日(火)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、「礼文島いきものつながりプロジェクト」(将来像~基本方針~施策)、「戦略の推進」について
平成 年 月
礼文町生物多様性地域戦略『礼文島いきものつながりプロジェクト』 策定
-2-
2. 検 討 委 員 会 の 設 置 ・ 運 営
2-1. 礼 文 町 生 物 多 様 性 地 域 戦 略 策 定 検 討 委 員 会 規 約
-3-
2-2. 礼 文 町 生 物 多 様 性 地 域 戦 略 策 定 検 討 委 員 会 名 簿 ( 平 成 2 3 年 度 )
検討委員会役職
氏名
委員長
小野 徹
委員長代理
宮本 誠一郎
委員
所属等
選出理由
礼文町長
受託自治体の首長
レブンクル自然館代表
地域活動団体の代表
久保 和夫
礼文町観光協会長
産業団体の代表
委員
柳谷 隆敏
礼文町民宿旅館組合長
産業団体の代表
委員
村上 賢治
環境
地域活動団体の代表
委員
藤沢 隆史
礼文町教育委員会学芸員
地域教育組織の代表
委員
河原 孝行
森林総合研究所北海道支所森林育成グループ長
研究関係者 植生
委員
高橋 英樹
北海道大学総合博物館教授
研究関係者 植生
※
委員
杉浦 直人
熊本大学大学院自然科学研究科准教授
研究関係者 昆虫
※
委員
愛甲 哲也
北海道大学大学院農学研究院准教授
研究関係者 歩道
※
委員
佐藤 謙
北海学園大学工学部教授
研究者(植生) ※
委員
庄子 康
北海道大学大学院農学研究院准教授
研究関係者(社会学) ※
委員
八巻 一成
森林総合研究所北海道支所
北方林管理研究グループ主任研究員
研究関係者 社会学
委員
俵 誠
公募
委員
古谷 健一
公募
礼文島自然情報センター代表
オブザーバー
環境省北海道地方環境事務所
関係行政機関
オブザーバー
宗谷森林管理署
関係行政機関
オブザーバー
宗谷総合振興局稚内建設管理部礼文出張所
関係行政機関
オブサーバー
宗谷総合振興局保険環境部環境生活課
関係行政機関
オブザーバー
礼文町建設課
関係行政機関
オブザーバー
船泊中学校校長
校長会会長
オブザーバー
船泊小学校教頭
教頭会会長
事務局
※
※
礼文町産業課
(敬称略)
※印の委員のみ委託事業により委嘱
-4-
2-3. 検 討 委 員 会 開 催 概 要
日時
場所
第
回検討委員会
平成
年
月 日(水)
~
礼文町役場
大会議室
階
第
回検討委員会
平成
月
礼文町役場
大会議室
階
第
回検討委員会
平成
年
月
日(木)
~
環境省
北海道地方環境事務所
会議室
(札幌第一合同庁舎 階)
第
回検討委員会
平成
年
月
日(月)
~
環境省
北海道地方環境事務所
会議室
(札幌第一合同庁舎 階)
第
回検討委員会
平成
年
月 日(火)
~
環境省
北海道地方環境事務所
会議室
(札幌第一合同庁舎 階)
年
日(木)
~
議題
○
年度検討委員会の概要
○
年度検討委員会の予定について
○礼文町いきものつながりプロジェクト概要につい
て(
. 版)
○その他
○第 回検討委員会の内容確認
○戦略案について
○その他
 次回検討委員会の開催について
 その他
○第 回検討委員会の内容確認
○戦略案について
○その他
 次回検討委員会の開催について
 その他
○第 回検討委員会の内容確認
○戦略案について
○その他
 次回検討委員会の開催について
 その他
○第 回検討委員会の内容確認
○戦略案について
○その他
2-4. 検 討 委 員 会 議 事 次 第 ・ 議 事 概 要
各回の検討委員会の議事次第及び議事概要を以下に示す。
-5-
平成 23 年度
第1回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
日時
場所
平成 23 年 6 月 3 日(金曜日)
午前 9 時 30 分
礼文町役場 3F 大会議室
1.委嘱状の交付
2.委員長挨拶
3.議題
① 22 年度検討委員会の概要
② 23 年度検討委員会の予定について
23 年 6 月 3 日 第 1 回目会議(礼文町)
23 年 9 月頃
第 2 回目会議(礼文町)
23 年 11 月頃
24 年 1 月頃
第 3 回目会議(札幌市)
第 4 回目会議(札幌市)
※最終回
③ 礼文町いきものつながりプロジェクト概要について(2011.6.3 版)
④その他
4.委員長挨拶
(産業課)
-6-
平成 23 年度
第 1 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
■日 時
平成 23 年 6 月 3 日(金)9:30~11:00
■場 所
礼文町役場 3 階 大会議室
■出席者
<委員>
議事概要
小野委員長、宮本委員、村上委員、河原委員、高橋委員、杉浦委員、佐藤委員、
庄子委員、八巻委員
<オブザーバー>
北海道地方環境事務所、宗谷森林管理署、宗谷総合振興局保健環境部環境生活課、
礼文町建設課
<事務局>
礼文町産業課、株式会社ライヴ環境計画
1
委嘱状の交付
2
委員長挨拶

小野委員長より挨拶。
【自己紹介】

委員及びオブザーバー自己紹介。
3
議題
①
平成 22 年度検討委員会の概要

事務局より資料説明。
②
平成 23 年度検討委員会の予定について
③
礼文町いきものつながりプロジェクト概要について(2011.6.3 版)

②、③併せて事務局より説明。
(事務局)

今年度は戦略としてとりまとめることが目的となる。

冬季にかかる第 3 回、第 4 回の検討委員会については、気象条件や検討委員のスケジュール
調整のしやすさ等を考慮し、事務局含め、礼文島在住委員が札幌に赴いて会議を開催するこ
とを想定している。

メールや書類のやりとりを随時行いながら戦略のとりまとめを進め、11 月の時点で 8~9 割
の項目・内容整理が進んでいる状態を目指したい。

本日配布したガイドラインの内容については、後日、事務局からとりまとめに関する問い合
わせ・お願い等を改めてさせていただく。
1
-7-

戦略のタイトルについては、プロジェクトというタイトルとするかどうかも含めて、今後意
見を伺いながら決めていきたい。

戦略をつくることも大切であるが、アクションプランを実行・継続していくことに主眼おい
て進めていくべきと考えている。今回策定する戦略は足がかりとして捉え、アクションプラ
ンを実行・継続する中で戦略を磨き上げていくことに力を注いでいきたい。礼文町では、
「リ
ボンプロジェクト」
(バッヂ購入費を寄付金として扱い、これを原資に関係する団体への支
援や必要な園路の整備等に充てる)
、島を訪れた方への感謝の意味を込めたポストカードの
配布などの取り組みをすでに開始している。
(高橋委員)

礼文島在住の委員は、観光のシーズンオフにあたる時期に予定されている札幌開催の検討委
員会には参加していただきやすいだろう。

研究者は側面から支援する立場であり、島の方が主役となって進めていくために、興味を惹
きつけるよう、島の方との情報交換をしていただきたい。
(河原委員)

島の人の意向がどのようなものであるか、が最も重要である。昨年度の検討委員会において
も、
“将来どうしたいのか”という意識調査の必要性が議論されていたが、その後進展はあ
るか。
(八巻委員)

本戦略策定とは別のプロジェクトにおいて、「過疎地域における地域資源を活かしたまちづ
くり」に関する文部科学省の科学研究費プロジェクトを進めている。9 月に研究者メンバー
が礼文島に来島し、現地を確認するとともに、島の方と意見交換をしたい、という意向をも
っている。仕事として関わっている方だけでなく、若い世代を含めて島の資源について議論
したいと考え、将来を担う高校生の参加を得られるよう準備を進めている。ここでの議論の
内容や結果は、本戦略にも反映させていくことができるのではないか。
(庄子委員)

“生物多様性と島の人々の生活との関わり”の視点で、事務局と相談しながら、島の方々へ
の聞き取り調査の実施を検討している。

“地域と生物多様性とのつながり”について、その結びつきを直接感じることは難しいだろ
う。しかし、直接的には認識されていなくても、日頃の生活の中で自然資源として利用して
いるものは生物多様性につながるだろう、と考えられる。島の方々への聞き取り調査などを
通して、“礼文島の自然環境の何が重要と感じているか”を明らかにしながら、生物多様性
と生活をつないでいくことができれば、と考えている。

屋久島では、地元の高校生を通して島の大人世代に聞き取り調査を行った例がある。研究者
が聞き取りを実施してもなかなか聞くことができない内容が、そのような手法をとったこと
でいろいろと明らかになった。
(河原委員)

第 2 回検討委員会のタイミングに合わせて、意識調査の結果についてもある程度報告してい
ただきたい。
2
-8-
(佐藤委員)

生物多様性はわかるようでわかりにくい。生物多様性とはなにか、について、ざっくばらん
に話をすることができる場、例えば、町民と研究者の座談会のような場があってもいいので
はないか。わかりにくいことを、少しでもわかっている研究者が町民に伝える機会も必要で
ある。

“礼文らしさを守ること”が戦略のテーマと考えると、
“礼文らしさ”とその具体的な内容、
あるいはアクションプランとの繋がりが遊離している面がある。漁業、観光などに関係する
人を含めながら、礼文らしさの中身をお互いに話し合う、理解し合う、共通認識にする、と
いうことを現段階から始めるべきではないか。島の方が中心となるべきであるが、外からみ
た礼文島のすばらしさについて外からの意見を知ることも必要である。
(八巻委員)

昨年、島で開催された生物多様性保全に関する講演会について、どのような方が参加された
のか、参加された方の反応はどのようなものであったか。

礼文島自然情報センターで実施しているフォーラムを支援する形もあるのではないか。
(中野自然保護官補佐:オブザーバー)

昨年の 12 月上旬に、
「礼文町町民学習交流会」において、島の方に生物多様性について説明
させていただいた。
「生物多様性という言葉は難しくてわからない」という声があったため、
礼文島での例を出しながら、生き物同士のつながり、そのつながりが失われることによる生
活への影響などを説明した。

旅館経営者や主婦の方など一般の方の参加もあった。普段外に出て花や鳥を観ているような
人が多かった印象である。
(村上委員)

今年度は、冬季にネイチャー礼文を利用したミニフォーラムを数回開催できれば、と考えて
いる。
(事務局)

興味のある方だけでなく、参加する方の裾野を広げながら、講演会やフォーラムのような場
を通して、いきものつながりに関わる意見交換をスタートさせることがアクションプランの
根幹になるのでは、と考えている。

本戦略に関する会議は今年度限りとなっている。その後の意見交換の場として、「礼文島高
山植物保護対策協議会」などの既存の会議・集まりをうまく組み合わせていくべきと考えて
おり、委員の方の意見も伺いたい。
(佐藤委員)

研究者は礼文島を訪れると 2 泊はしていくであろう。その滞在中の時間をうまく活用し、一
度の来島で 2 つ、3 つの目的を果たさせるようにするなど、検討委員を講演者とした町民と
の意見交換会のような機会を設けてもいいのではないか。戦略を策定していく過程において
町民にいろいろな考え方や知識を提供し、また町民の意見を集めるための工夫はいろいろ考
えられる。
3
-9-
(河原委員)

いきものつながりについて、一般の方にもわかってもらう努力も必要である。
「うすゆきの
湯」など、より多くの人が集まる場所にポスターやパネルを掲示するなど、少しずつでも一
般の人の目につくようなデモンストレーションをしてはどうか。
(高橋委員)

講演会のような 1 回限りのイベントでもそれなりの人は集まるが、一定期間の展示という形
であれば、
自分のペースで何度でも見て、考えることのできる学習手段となる。礼文町でも、
郷土資料館の常設展示の一角を 1~2 ヶ月での企画展示用のスペースにして、いきものつな
がりをテーマとした展示を行い、観光客も含めたいろいろな方に見ていただくのも効果的で
はないか。

礼文町の人口減少が激しく進んでいることに驚いた。その一方で、年間 10 万人を超える観
光客が礼文島を訪れている。島への移動に前後 1 日かけてでも観光客が訪れる礼文島の魅力
は何か、を考えることも重要である。

人口や観光入込客数などのわかりやすい数値を用いて島の状況を示しながら、島の人に危機
感をもって考え、取り組みに参加していただくよう働きかけていくことが必要ではないか。
(委員長)

すでに人口は 3,000 人を切っており、その段階で大きな危機感をもっている。島に雇用の場
を確保しないと、若い世代が島に残れないだろう。漁業の後継者がいない状況もある。生物
多様性を考えなければいけない一方で、島の産業についても考えなければいけない時期であ
ると考えている。

町民が何を感じているのか、を知らない限り、アクションプランに結びつけることが難しい。
9 月の会議に意識調査の結果を反映させていく方向で進めていきたい。
(八巻委員)

人口減少に伴う物流・インフラの減少、さらに観光客の減少という悪循環が生まれる。

いきものつながりを担う島民の減少、いきものつながりを考えていく上での基盤である観光
業の先細りといったことも考えると、人口減少社会の中で、基盤となる観光業をどうするか、
高山植物の保全・利用を担っていく人材をどのように確保していくか、というのも大きな問
題になるように感じている。“島の人口減少にも目配せした戦略策定”という視点での議論
も必要ではないか。
(委員長)

持続可能な利用ができる社会をつくることが原点にある。人口減少への対応は 1 つの大きな
課題であり、人口減少を食い止めるような施策をとっていくことも重要である。島に住み、
生物多様性の保全を担っていく人がいなくなってしまっては、この戦略を策定する意味が失
われる。
(佐藤委員)

生物多様性の考え方は、生物多様性は貴重な財産であり、持続可能な利用をしていくという、
我々の生き方に重点が置かれたものになっている。そのため、生物多様性の保全は一部の人
間が考えることではなく、”地域づくりの一環である”という考え方ができる。しかし、地
4
- 10 -
域づくりのすべてではない、と思う。

環境省や林野庁などとの横のつながりを活かすことを念頭におきながら、“地域づくりの中
で生物多様性の分野が担うべき部分はどこか”という整理をしておかなければ、この戦略が
茫漠としてしまうように感じる。
(高橋委員)

礼文町職員の中に、人文系の職員に加えて自然系の職員、生物多様性に関わるような専門職
員、若い・熱意のある人間が 1 人でもいれば、観光の魅力につながるしかけづくり、研究者
との連携、情報発信なども行うことができるようになり、突破口の 1 つになるのではないか。
(宮本委員)

多くの研究者が礼文島を訪れており、研究者を受け入れるシステムが町役場にあればよいと
思う。来島する研究者とうまく連携して情報を集約し、その成果を観光などに繋げることが
できる人であればよいのではないか。
④
その他
(佐藤委員)

今後、今回のプロジェクト概要(ガイドライン)だけではなく、最終的にまとめる本篇の案
文原稿についても、前もってデジタルデータを提供してもらえれば、論理的・科学的な修正
の根拠を示しながら修正を進めていくことができる。普段から意見交換をしながら、お互い
のチームプレーで作業を進めていく段取りを考えていただきたい。
4
委員長挨拶

小野委員長より閉会の挨拶。
以上
5
- 11 -
平成 23 年度
第 2 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
日時
場所
平成 23 年 10 月 13 日(木曜日)
午前 9 時 00 分~
礼文町役場 3F 大会議室
1. 委員長挨拶
2. 議題
① 第 1 回検討委員会の内容確認
② 戦略案について
③その他
・次回検討会の開催について
・その他
3.委員長挨拶
(産業課)
- 12 -
平成 23 年度
第 2 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
■日
時
平成 23 年 10 月 13 日(木)9:00~11:10
■場
所
礼文町役場 3 階 大会議室
■出席者
議事概要
<委員>
小野委員長、宮本委員、村上委員、藤澤委員、高橋委員、愛甲委員、庄子委員、
八巻委員
<オブザーバー>
北海道地方環境事務所、宗谷森林管理署、宗谷総合振興局稚内建設管理部礼文出張
所、宗谷総合振興局保健環境部環境生活課
<事務局>
礼文町産業課、株式会社ライヴ環境計画
※検討委員会のほか、前日(10 月 12 日)夜に開催された意見交換会の内容(赤字で記載)
、検討委
員会後に実施した意見交換(高橋委員、愛甲委員、八巻委員、庄子委員参加、西村さん同席)の内
容(青字で記載)を一括して記載しています。
1
委員長挨拶

小野委員長より挨拶。
2
議題
①
第 1 回検討委員会の概要
②
戦略案について

成果としての「礼文町いきものつながりプロジェクト(礼文町生物多様性地域戦略)」の考
え方について意見交換した後、
「礼文島いきものつながりプロジェクト(案)
(2011.9.27 版)」
本文の構成にそって、各項目の内容について意見交換を行った。
[戦略全般について]
(事務局)

本来は町民向けであるべきことを承知の上で、環境省委託事業の成果であることを意識した
書きぶりとしたい。

専門的な内容の部分については、各委員・オブザーバーから文案による修正意見をいただき
たい。あわせて、書きぶりや分量をある程度そろえる必要があるため、詳細なデータについ
ては資料編へ収録する可能性も考えている。

根拠を追求すると、目に見える形で残すことができない事項がある。地域として実感されて
いるが、論文等に整理されておらず、明確な根拠を示すことができないものについては、
「~
考えられている」
、
「~と言われている」といった表現をもって記述することとしたい。
1
- 13 -
(愛甲委員)

戦略を策定した後に概要版を作成して、見たいと思った人が気軽に見ることができるように
しておくといいのではないか。「生物多様性」というわかりづらいテーマに対する町民のみ
なさんへのハードルも下げられるのではないか。
(事務局)

町民向けであれば「広報れぶん」でシリーズ化する、という形もある。
(愛甲委員)

「広報れぶん」でシリーズ化することによって、町民の方が毎月「生物多様性」という文字
を目にする、という効果が期待できる。
(宮本委員)

「広報れぶん」でシリーズ化する場合、掲載する内容はアクションプランに関する部分だけ
でいいかもしれない。
(八巻委員)

「生物多様性国家戦略」で整理されているような、一般的な生物多様性に関する内容を記述
している部分がない。生物多様性を保全することの一般論の総括が冒頭などに必要ではない
だろうか。

他自治体が礼文町の事例を参考にしたい、という場合も考えられるので、情報発信の意味か
らも本編と概要版をダウンロードできるようにしておくといいのではないか。

コラムや脚注を挿入しながら、町民も含めた不特定多数の人が読んでも読みやすいものとな
るよう工夫したほうがいい。
(事務局)

戦略本編については、PDF ファイルを作成して、ダウンロード可能な形とする予定である。
概要版の作成については、予算の関係もあるため、現段階ではアクションプランの中に位置
づけておくこととしたい。

概要版の作成や「広報れぶん」の利用等、取り組んでいることを広く町民に周知・発信する
手段は考えなければならない。これもアクションプランの 1 つである。
(高橋委員)

町民が納得できるものであることが重要である。また、外部に対してアピールする視点も必
要である。
[1-1. 戦略の策定にあたって]

意見なし
[1-2. 戦略の位置づけ]

意見なし
[2-1-1. 礼文島の概要]及び[2-1-2. 礼文島のいきものつながりを構成する要素]
(事務局)
2
- 14 -

今後は、戦略策定にあたって「なければいけない情報」と「あったらいい情報」のメリハリ
をつけて整理を進めていきたい。アクションプランへのつなぎも見据えた情報の取捨選択の
基準についてご意見を伺いたい。
(愛甲委員)

文章との対応をみながら図表や地図を整理すべき。本文とあまり関わりがないものについて
は資料編に収録してはどうか。
(八巻委員)

事実が淡々と述べられている印象である。礼文島の生物多様性・生態系を特徴づける構成要
素が何か、に着目した記述とすることによって、理解しやすくなるのではないか。
(愛甲委員)

2-1-1.でふれている「基盤」と 2-1-2.でふれている「構成要素」から生み出されるいきもの
つながりを概説する記述が必要である。可能であれば、イラストや断面図のようなもの、例
えば、上空から斜め方向に島を眺めた構図で、「基盤」と「構成要素」の関係が示されたイ
メージ図のようなものが作成できないか。
『もっと知りたい!!礼文島 2011』の 62pp.~63pp.
に示されているイラストが非常に近い。
(宮本委員)

『もっと知りたい!!礼文島 2011』のイラストのようなイメージ図のようなものがあった
ほうがいいと思う。しかし、「基盤」と「構成要素」の関係を一体的に捉えた形で、礼文島
の生物多様性・生態系の現状を学術的に系統立てて整理されたものがない。イメージを積極
的に出していいものかどうか不安がある。
(八巻委員)

断定するような記述は難しいが、「イメージです」という表現を付すなど。書きぶりの工夫
や各分野の専門家への確認を経ながら、差し支えない形での表現をすることは可能ではない
か。イメージを膨らませるようなものを盛り込んでいくべき。
(愛甲委員)

各項目の書きぶりや情報量の統一が必要である。
(事務局)

植物相の項で挙げられている詳細な種名は資料編に収録するなど、本編での記述は特徴をか
いつまんだものにしたいと考えている。
(宮本委員)

植物相と希少動植物の植物で挙げられている詳細な種名は、絶滅危惧種のカテゴリーと対応
させながら 1 つの表に整理し、資料編に収録すればいい。
(高橋委員)

礼文島の生物多様性について、明らかにされているのはごく一部の分野であり、解明されて
いないことを示しておくべき。北海道の中でも礼文島は特徴ある場所であり、積極的に生物
多様性保全に向けた調査研究を推進すべき、と位置づけておくことで、礼文島に限らず、北
3
- 15 -
海道における今後の生物多様性に関する研究の充実が期待できるのではないか。
(愛甲委員)

「2-4.これまでの取り組み」の「研究機関との連携」の項目内、もしくは“調査研究”とい
う項目を加え、情報の蓄積が不十分な分野がある、と指摘しておくべき。「情報の蓄積」と
いうアクションプランの理由付けとなる。
[2-1-3. 自然環境保全に係る区域等の指定]
(宮本委員)

現在示されている表と対応する形で、区域を示す地図があるといい。
(愛甲委員)

礼文島において何らかの保全区域に指定されている範囲が島全体に占める割合や、指定範囲
を示す地図を掲載し、礼文島の広い範囲が保全区域である、という特徴を伝えるべき。保全
地域・名称を細分して表現された地図は、資料編にそれぞれ収録しておけばいい。
(宮本委員)

地図とあわせて面積割合を示す円グラフを掲載する。
(八巻委員)

「種の保存法」に基づく「生息地等保護区」は指定されていないのか?
(愛甲委員)

「生息地等保護区」は指定されていない。
(宮本委員)

環境省所管地は含まれていないのか。
(事務局)

環境省に確認する。
[2-2. 礼文島のいきものつながりの恵み]
(愛甲委員)

冒頭にある一般的な生態系サービスに関する文章はここまで分量を割く必要があるか。『生
物多様性国家戦略』のことにもふれられている「1-1.
戦略策定の背景」の項で記述する、
という形もある。
(八巻委員)

脚注やコラムという形にするだけでも読みやすくなる。
(愛甲委員)

生態系サービスの 4 項目の説明や具体的な内容については、脚注や図に説明を委ねてしまっ
てはどうか。

「供給サービス」の中で“医薬品”と言われても、礼文島ではピンとこない。礼文島におけ
る「供給サービス」はこういうもの、という示し方とした方がいい。「ミレニアム生態系評
4
- 16 -
価」の中で用いられている生態系サービスの図を基に、礼文島の具体的なサービスに置き換
えたものができないか。
[2-2-1. いきものつながりの恵みと産業]
(小野委員長)

礼文島に住んでいると、花の最盛期を知っているだけに、花が少ない時期は魅力がない、と
いう先入観のようなものをもっている。しかし、島を訪れる人は、1 つの景色として捉え、
景色の一部として花を見ている。青い海、低標高でも高山植物が咲いている、そのような景
色が日本でも珍しく、礼文島にしかない景色であるとして、花が少ない時期でも魅力を感じ
ていらっしゃるようだ。そういった要素を戦略の中に盛り込むことはできないか。
(愛甲委員)

「2-1-1.
礼文島の概要」や「2-1-2.
も景観に関する記述がない。
「2-2-1.
礼文島のいきものつながりを構成する要素」において
いきものつながりの恵みと産業」の「(1)
観光とい
きものつながりの恵み」の中で、高山植物の最盛期以外でも、特異な景観が観光資源となり
うるといった記述をしてはどうか。
(宮本委員)

現在、観光資源はすべて花になってしまっているが、以前は“釣り”を目的に島を訪れてい
た人も多かった。アキアジ釣りや磯釣りも魅力がある。観光資源としての“釣り”もいきも
のつながりの恵みに含まれるのではないか。
[2-2-2. 島の暮らしの中のいきものつながりの恵み]
(宮本委員)

礼文高校の生徒が実施したアンケート調査を引用してはどうか。
(庄子委員)

高校生が実施したアンケート調査は、ご両親や周りにいる大人の方を対象に行ったものであ
る。様々な要素について聞き取りができている。
(事務局)

礼文高校の生徒が実施したアンケート調査の結果ということを明示して、コラムという形で
結果をそのまま記載してはどうか。調査を実施した高校生の励みにもなる。また、このよう
な調査結果を戦略の内容に反映させることができるのは、礼文島だからできることでもある。
(庄子委員)

暮らしの中でのつながりをすべて抽出しようとすると限りがない。この戦略に対することも
含めて、観光協会、宿泊施設、漁協等を代表する方々へインタビューなどを実施し、それぞ
れどのような思いをもっていらっしゃるのか、コラムのような形で記載してもいいのではな
いか。
[2-3. 礼文島のいきものつながりに迫る危機]
(八巻委員)
5
- 17 -

「里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下(第 2 の危機)」に対応する項目は、独
立した項目として挙げられていないが。
(事務局)

1 つの項目として扱うだけの根拠をもって記載できるかどうか。その見極めができなかった
ため、現段階では独立した項目として扱うことはせず、冒頭の文章で“可能性がある”とい
ったニュアンスをもたせた表現で扱う形にとどめている。

ある程度人が手をかけることによって守られる生物多様性もある、という観点からみると、
「自然に対する人間の働きかけの減少」というような扱い方で記載することも考えられる。
(八巻委員)

どのように扱えばいいかわからないものに対しては、アクションプランとして実証実験的に
取り組む項目として位置づけるべきである。このような位置づけをしないと、取り組みが進
まないのではないか。
(愛甲委員)

「迫る危機」として記述している項目であるため、これまでに行われたことについては深く
言及することはせず、今後は配慮すべきということを強く打ち出した方がいい。過去に行わ
れた開発行為がどうであったかを記述するよりは、これまでの開発行為とその結果から、開
発行為を行うことによって起こりうる現象を整理しておき、防災面などから必要とされる開
発行為を行う場合においても、礼文島の生物多様性に与える影響を考え、壊さない程度に留
めるべきであることを意識させる書きぶりとすべき。

「化学物質による影響」についての記述は、礼文島に該当する具体的な事例が考えられない
ため、不要ではないか。
(宮本委員)

「海岸漂着ゴミの影響」の項目の中で、“ゴミに含まれる化学物質による魚介類、鳥類、人
体への影響”を記述してはどうか、とのコメントを付した。化学物質としたが、プラスチッ
クゴミ、とした方がわかりやすい。
(村上委員)

漂着ゴミに限らず不法投棄も含めて、
“ゴミ問題”として括ってはどうか。一般的に言われ
ている“環境ホルモンによる生態系への影響”など、化学物質による影響との関連づけがで
きるのではないか。
(宮本委員)

海に囲まれていることを考えれば、油汚染の可能性も考えられる。
(愛甲委員)

漂着ゴミに加え、不法投棄や油汚染の可能性も含め、「人為的な持込みによる影響」の 1 つ
の項目として記述してはどうか。
(事務局)

「外来種による影響」の中で、園芸種のことに言及すべきかどうか。個人の楽しみを制限す
6
- 18 -
るような認識を与える表現は避けたいが、影響を及ぼす可能性は考えられる。
(愛甲委員)

「外来種による影響」の記述の流れをもっと整理すべき。侵入の危険性と交雑の危険性のこ
とを押さえ、その経路や原因を記述する中で、園芸種などによる影響の可能性についてふれ
ておけばいいのではないか。対策に関わる記述は、ここでは必要はない。

一般論をふまえた上で礼文での話題にふれる、という流れで整理してはどうか。
(事務局)

エゾタンポポとセイヨウタンポポの交雑の話は、すでに現象として捉えられているものの、
直接的に人間に影響が及ばないため、
“危機”という実感は薄いように思う。オリジナリテ
ィーという面での重要性は認識しているが。
(八巻委員)

生物多様性の保全及び持続可能な利用の理念の中で、“将来の間接的・潜在的な利用の可能
性があり、将来の豊かな暮らしにつながる有用な価値を持っている”と示されている。潜在
的な可能性、という観点からみれば、タンポポについても関連づけられるのではないか。
(宮本委員)

タンポポ以外にも、外来種による影響が現れている箇所がある。そういった場所がどこなの
か、例として記述の中に含めていくことはできないか。
(事務局)

生物多様性に関する取り組みを支えるしくみづくりのことを考えた場合、人口減少・少子高
齢化といった、社会条件の面からみた問題を提起しておく必要はないか?どの項目で扱うべ
きか?
(八巻委員)

『 生物多様性国家戦略』では扱われていない“限界集落による担い手を失う危機“という
第 5 の危機があるのではないか?
(庄子委員)

危機として扱うと、他にもいろいろな要素があり、話がわかりづらくなる。生物多様性の話
に絞ってしまったほうがわかりやすい。また、枠組みをどうするか、といった話はわかる人
にしかわからないだろう。施策を進める上で考慮しなければいけないことの記述に含めてお
けばいいのではないか。
(宮本委員)

「生物多様性を失うこと」の図式はわかりやすい。
[2-4. これまでの取り組み]
(愛甲委員)

これまで行われてきた取り組みの限界や課題についてもふれておくことによって、基本方針
や施策につながる。あわせて、人やしくみに関わる課題についてもふれておいてはどうか。
7
- 19 -
(高橋委員)

礼文島は以前から多くの研究者に着目されてきたが、それでも解明されていないことが非常
に多い。
「2-4.これまでの取り組み」の中で“調査研究”という項目を設けるのであれば、
その中で礼文島における研究史を引き合いに出しながら解明状況を整理し、今後の研究を促
すことにつなげるといい。

外来種をどこまで駆除するかは難しいテーマである。コストと外来種が侵入したことによる
在来種への影響度(危険性)とのバランスが重要である。影響度の強弱で対処方法を変える
のかどうか、桃岩などピンポイントでの対処とするのか、島全体での 1 つの大きな目標とし
てアドバルーンを掲げるのか、礼文島ではどのように対処するかの考え方の整理が必要であ
ろう。実現性はともかく、
“島全体で在来種を守る、外来種を 0 にします”というような大
きな 1 つの目標を示すことで大きなインパクトを与えることができる。実際にはアクション
プランでの対応を積み重ねる。
(小野委員長)

10 年スパンで進めていくのであれば、桃岩展望台周辺など局所的なアクションプランを住
民も交えて実施していくという考え方もできる。
(村上委員)

範囲を広げてしまうと中途半端になってしまう。特定の箇所で成果を上げることができれば、
活動拡大に繋がる可能性がある。
(宮本委員)

保全すべき箇所だけでなく、供給源となる周辺地域にも注意を払い、対処も考えていかない
と、期待する効果を得ることができない、という記述を含めてはどうか。
(八巻委員)

生活圏での外来種の撲滅は非常に難しい。生活圏と自然が近接しており、貴重な生態系への
侵入を防ぐ取り組みを実施する、という記述が適当ではないか。
[3. 戦略のめざすところ]
(愛甲委員)

押さえなければいけない要素は項目として挙げられている。これらをうまくつないで、文章
化したものを早めに出すべき。
[4. 礼文島いきものつながりプロジェクト]
(八巻委員)

いきものつながりがつくり出す魅力を集めた“資源マップの作成”のようなアクションプラ
ンがあってもいい。高山植物だけではない、魅力の発掘やその魅力の保全につながっていく
のではないか。
(愛甲委員)

町がやれることとやれないことが混在しており、
“施策”という言葉より“方策”の方が適
切ではないか。また、緊急性が高いものから長期的に考えていかなければならないものがあ
8
- 20 -
る。基本方針に沿って方策のメニュー出しを行った上で、緊急性、町としての取り組みやす
さの観点から整理をしていくと、今後 5 年間で取り組むべき重点施策が抽出されてくるので
はないか。検討委員から方策として考えられるものを提示し、町が重点施策を決定する流れ
とすべきであろう。
(高橋委員)

将来像、基本方針、基本施策、重点施策で想定しているタイムスパンを提示してもらうと、
方策を考えやすい。将来像、基本方針には特定の期限は設定されない印象である。
(事務局)

新しい町の総合計画は、近年の経済情勢や社会情勢から見通しを立てづらい状況にあり、本
来 10 年計画とするところを 5 年計画とし、緊急性の高いものから重点的に取り組む方針と
している。このこととの関連から、重点施策は 3~5 年程度、基本施策は 10 年程度を想定し
ている。
(小野委員長)

“自然があふれる町・島にしたい”といった将来像を常に追求し、その都度合致した現実的
な施策を実行していく、5 年程度のサイクルで施策を見直していく、という進め方になるの
ではないか。
(愛甲委員)

研究者による研究は、研究者個人がテーマを設定して行うことであるため、戦略の中で“や
るべきこと”に位置づけることはできない。

礼文島の生物多様性で必要とされる研究テーマを設定し、テーマに沿った研究に対する「礼
文島生物多様性研究助成」
(研究費の助成や、宿泊の便宜など島内での研究活動における支
援等)のような考え方はあってもいいのではないか。

研究だけでなく、モニタリングを実施することも重要である。その実施主体をどのように考
えるか。研究者によるモニタリングの継続は難しく、NPO 等を中心に地元主体でモニタリ
ングを実施することが望ましい。モニタリングの継続体制を構築することを位置づけるべき。
(高橋委員)

研究者による調査研究は、研究費の確保などによって実施の可否が不透明な部分がある。重
点施策へ位置づけてしまうと、実施できなかった場合にチェックを受けることになってしま
うため、基本施策に位置づけておいた方がいい。
(高橋委員)

現状維持だけでなく、ポジティブな方向にもっていくことを打ち出すアクションプランであ
るほうがインパクトが大きい。

ササ地が拡大し、質の高い草原が減少している印象である。地質的な要因によって規定され
る部分もあるが、礼文島の健全であるべき植生配列を森林、広葉草原などの比率をもって示
した上で、例えば、現状ほどササが拡大する前の状態に戻すよう “ササ草原を○%減らし
ます”といったアクションプランの提示をしてはどうか。質を高めるためのアクションプラ
ンを実施することは可能ではないか。
9
- 21 -
(八巻委員)

豊かな草原を復元したい、という町民の思いがあれば、アクションプランの方向性の 1 つに
なると思われる。
(高橋委員)

礼文島における生物多様性研究史を町民へ還元し、普及啓発につなげてはどうか。

礼文町郷土館があるが、博物館教育からみれば、生涯学習の場としてだけでなく、島外から
の観光客も利用できる博物館との認識をもって、一層の充実が図られるといい。自然史博物
館(Natural History Museum)と郷土史を扱う博物館がそれぞれあると理想的である。
(八巻委員)

ビジターセンターなど、自然史に関する情報発信の充実を図る必要がある。
(高橋委員)

礼文島を何らかの形でゾーニングし、各ゾーンの施策を示す方法もあるのではないか。
(愛甲委員)

ゾーンを設定すると、各ゾーンで施策メニューが変わってきてしまう。また、施策をわけて
しまうことになり、施策そのものがぼやける、1 つの施策が複数のゾーンで重複してしまう、
といった恐れがあるのではないか。
(高橋委員)

ゾーニングをもとにすべて整理するのではなく、ポイントで具体的な地域名を出しながらそ
れぞれの取り組み内容などを示すと、島民が注意を向け、議論に参加してもらいやすくなる
のではないか。桃岩展望台周辺では外来種の侵入やササの侵入を防ぐ、といった示し方をす
るとわかりやすい。
(愛甲委員)

方策のアイディアを募る時点では、分類にあてはめてもらうような形とはせず、戦略案 9/27
版の 42~43pp.に挙げられているものに加えるべき方策があるかどうか、という視点で挙げ
ていただけばいい。その後事務局において、出てきた方策について、戦略案 9/27 版の 40~
41pp.に挙げられている「基本方針」に準拠するもの・またぐもの・新たな方針が必要なも
のに区分するとともに、すでに取り組んでいることまたはそのバージョンアップ、または新
たに取り組むことに分類をする。その次の段階で、検討委員を交えて実現のしやすさ、対策
の緊急性から評価する、という流れとしてはどうか。
(高橋委員)

基本方針の 4 つについては、やや表現が具体的すぎる部分もあるが、概ね方向性としてはい
い。基本施策についても、分類はともかく、概ね網羅されているように思う。組み合わせら
れるもの、まとめられるもの、という観点で整理を進めることができるのではないか。
[5. 戦略の推進に向けて]
(小野委員長)

今年度、礼文島リボンプロジェクトで 300 万円ほどの支援をいただいた。財源の確保につい
10
- 22 -
ては、このようなものを活用しながら進めていきたいと考えている。
(八巻委員)

『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の運営をどのように考えるか。
これまでも町だけでなく、関係行政機関の深い関係・連携があり、今後も連携していくこと
が重要である。役割分担をより明確にし、各関係行政機関の主体性を出すような形で示した
方がいいのではないか。
(事務局)

関係行政機関や研究機関の支援・アドバイスをいただきながら、役場を含む町民が中心とな
って意思決定をしていかなければならないと考えている。実際に活動する人を中心に据え、
行政が事務的な部分を担当する形としていかなければ、活動の継続性が担保できないだろう。
そういった意味では、現段階の図の形で問題ないと感じている。ただ一方ではこれまでもこ
のような形で様々な会議や協議会の事業を進めてきてはいるが、結局は目標に達しない或い
は活動が滞るという現実がある。原因は様々だが特筆しなければならないのは「関わる人・
活動する人」に起因する問題。マンパワー不足といった事。改善すべき部分があると認識し
ている。
(小野委員長)

背景として、レブンアツモリソウを盗掘から守りましょう、ということから、行政や警察、
研究者等を中心にレブンアツモリソウの保全向けた活動が始まった。その結果、島に住む人
が気軽に山に入って楽しむことができなくなってしまい、関係が疎遠になってしまった。レ
ブンアツモリソウを含め、自然環境の保全に向けた活動は行政や研究者がやるべきこと、と
捉えられがちである。

本戦略策定を通じて、島に住む人が、島の自然は自分たちの財産であり、自分たちで守って
いくべきものである、と認識してもらい、保全活動に参加する、という機運を高めることに
つなげたい。
(高橋委員)

生物多様性への取り組みは礼文町だけのものではなく、重層的な構造である。礼文町におけ
る取り組みは、基礎となる地球レベル、国レベル、北海道レベルでの取り組みの上に成り立
つもの、ということがわかるように表現されるといい。
③
その他
(事務局)

次回検討会については、11 月 17 日(木)に札幌での開催を検討している。当日の都合を事
務局までご連絡いただきたい。

12 月にはある程度の形にまとめたいと考えている。当初、今回を除いて残り 2 回の会議を
予定していたが、年内 2 回(11 月、12 月)と年明け 1 回(1~2 月)の計 3 回の会議開催と
させていただきたい。

できれば文章の形で修正案をいただけると作業の効率化を図ることができるため、ご協力を
お願いしたい。
11
- 23 -

3
戦略案のうち、施策に関するご意見等をメールにてお知らせいただきたい。
委員長挨拶

小野委員長より閉会の挨拶。
以上
12
- 24 -
平成 23 年度
第3回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
日時
場所
平成 23 年 11 月 17 日(木曜日)
午前 9 時 00 分~
環境省北海道地方環境事務所
札幌第一合同庁舎3階
1. 委員長挨拶
2. 議題
① 第 2 回検討委員会の内容確認
② 戦略案について
③ その他
・次回検討会の開催について
・その他
3.委員長挨拶
(産業課)
- 25 -
平成 23 年度
第 3 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
■日
時
平成 23 年 11 月 17 日(木)9:00~16:00
■場
所
環境省北海道地方環境事務所会議室(札幌第一合同庁舎 3 階)
■出席者
議事概要
<委員>
宮本委員、河原委員、高橋委員、杉浦委員、愛甲委員、佐藤委員、庄子委員、
八巻委員
<オブザーバー>
北海道地方環境事務所
北海道環境生活部自然環境保生物多様性保全グループ
<事務局>
礼文町産業課、株式会社ライヴ環境計画
1
副委員長挨拶

宮本副委員長より挨拶。
2
議題
①
第 2 回検討委員会の概要
②
戦略案について

成果としての「礼文町いきものつながりプロジェクト(礼文町生物多様性地域戦略)」の考
え方について意見交換した後、
「礼文島いきものつながりプロジェクト(案)
(2011.11.11 版)
」
本文の構成にそって、各項目の内容について意見交換を行った。
[戦略全般について]
(事務局)

この策定委員会は、年内は今回と 12 月 26 日の会議をもって終了し、来年 2 月の上旪までに
は最後の会議を札幌で行う予定。

[1-2.
来年 4 月に立ち上がるであろう会議に引き継ぐ。
戦略の策定の背景]
(杉浦委員)

「1-2.戦略策定の趣旨」の内容と「1-1.戦略策定の背景」の内容を入れ替え、趣旨を先に示
し、それから背景を述べた方がよいのではないだろうか。礼文島の話が出てくるような趣旨
をまず述べたうえで、背景や 3 番目の「1-3.戦略の位置づけ」を述べたほうがよい。
(事務局)

町民に見てもらうのであれば、先にソフトなものを読ませたほうが理解しやすいのでは。
1
- 26 -
(八巻委員)

以前の話では基本的には行政向けだったはず。島民向けのものはまた別として考えると言っ
ていた気がする。これが町民向けであれば分かりやすくすればいいと思うが、もし行政的な
ものなら、今のままでもおかしくないと思う。
(事務局)

書きぶりの話を前回はしていたので、おそらくこのままの順番の方がわかりやすい。
(佐藤委員)

誰向けのものなのか。町民には公開しないのか。
(事務局)

今回作るのは環境省に提出する行政向けのものである。島民へは、
「広報れぶん」としてシ
リーズ化するなど、縮刷版の作成等を考えている。
(佐藤委員)

北海道ならば道民向けのものを作り配っているが、それと同じように環境省向けと町民向け
のどちらであるかをはっきりさせた方がよい。この文章は「背景」や「趣旨」などを小見出
しに分けていて、とても難くなっている。本来重要なのは「1-2.戦略策定の趣旨」であると
思うので「1-1.戦略策定の背景」と書くより「1-1.はじめに」とした方が順序だけでなくわ
かりやすいと思う。
(事務局)

確かに佐藤委員に書いていただいたものは、背景と趣旨を分けずにそれぞれの項目に対して
一般的なことを述べたうえで、礼文では、というような順となっていた。
(宮本委員)

逆に順番はこのままでも「1-1.戦略策定の背景」というのを「1-1.はじめに」の題目に変え
てしまい、次の趣旨が際立つ形にした方がわかりやすいと言えばわかりやすい。
(河原委員)

杉浦委員が最初に仰った「趣旨」を最初に持ってきて、その後に理由づけでも構わないが、
行政用についても最近はわかりやすい表現が求められているところもあるので、わざわざ堅
くする必要もない。私自身は「趣旨」を前にもってきた方が読みやすい。
(宮本委員)

そうすると項目的には「はじめに」の部分は抜きにして「趣旨」を前にもってきて「背景」
という形でいいのでは。
(佐藤委員)

「1-3.戦略の位置づけ」はどうするのか。
(愛甲委員)

確かに「背景」を間に入れると「位置づけ」の座りが悪くなるが、
「趣旨」のところに“生
物多様性地域戦略”という言葉を使っており“生物多様性地域戦略”が何かという説明もな
2
- 27 -
くその言葉が出てくるのはおかしい。ただ礼文島の話から始めた方がいい。したがって「趣
旨」と「背景」を合わせて 1 つの項目にして、
「はじめに」としてはどうか。
(杉浦委員)

すべて関連し合っているのだが、細かく分けすぎて難くなってしまったのかもしれない。や
はり「はじめに」ということで「趣旨」も述べるし、
「位置づけ」も述べるし、
「背景」も述
べるというようにまとめた方がいい。
(事務局)

礼文島だからこそというのが見えづらいという杉浦委員のコメントがあったので、それだけ
を一度まとめたというのと、前回の会議ではいわゆる“生物多様性の一般的な話”を無しに
していきなり礼文のいきものつながりの話をしても理解しづらいだろうという議論があっ
たと思う。文章を読むと一般的な話も説明されているので、これにわかりやすい図などをつ
け足せば、そもそもの生物多様性の説明も出来ると考え分けてみた。ただ、細かく分けて堅
苦しくなってしまうのも感じている。
[1-3. 戦略の位置づけ]
[1-3-1. 戦略の位置づけ]
(事務局)

4pp.の図と同じ意味では、この図の「まちづくり」という括りの中に「水産」もあれば「環
境保全」もあれば「観光」もあるのではないだろうか。これを見ると「まちづくり」がセパ
レートになっているので、表現をもう尐し変えようと思っている。
[1-3-4. 推進体制]
(杉浦委員)

この図だと影の付いた部分の「町民」の中にまた「町民」があり、何を表わしているのか趣
旨がわからない。
(事務局)

中央にある「礼文町民」を中央に置いて、いろいろな部分が出てきているが、そもそものこ
こで目指すところである「町民全体が」という表現に変えた方がいいだろうと話している。
[2-1. 礼文島の生物多様性の成り立ち]
[2-1-1. 礼文島の概要]

意見なし
[2-1-2. 礼文島の環境基盤]
(佐藤委員)

(1)の「地質」と(2)の「気候」を、礼文の生物多様性の特徴にうまく結び付けたい。

「地質」は自分なりに売りを書いてみて、北大の在田先生にも意見をいただこうと思う。
[2-1-3. 礼文島のいきものつながりを構成する要素]
3
- 28 -
(河原委員)

結構な量になってしまったので、資料編に回して簡略化してはどうか。
(宮本委員)

何故“いきものつながり”が必要なのかという趣旨として、この現状と課題というのが一番
大切な部分になってくるので、量が増えるのは仕方ない気がする。礼文島に関してはまず陸
上の植物を持ってこようという趣旨の中で始まったことなので、これでも削りすぎなくらい
の内容だと思う。
(佐藤委員)

資料編に資料をまとめることは否定しないが、現状の資料に基づいてこういった礼文島の生
物多様性の特徴があるのだということを、文章の方に連動させて書かなければいけないと思
う。

分担して礼文島の売りの部分をもっと書いた方がよい。それに合わせて「2-1-2.礼文島の環
境基盤」のところも、
「地質図」や「気候」と合わせて特徴を述べた方がよい。既存の情報
があるのだから礼文島の売りである特徴を簡明にまとめるべきと思う。
(宮本委員)

前回の会議で資料編に回せそうな植物名の羅列などは本編から割愛するという話になった
が、今回のものを見ると、2 ページにわたって書かれていた文章が削られている。そこは削
るという話ではなかったはずだが。

「植物相」は植物名を羅列しているだけなので、そのデータを削ったのはよいと思うが、そ
の礼文島の特徴となる部分を文章で高橋委員に書いていただきたい。
(高橋委員)

植物相の売りを念頭に置いて自分が書いたものを、河原委員に改訂していただく形はどうか。
(佐藤委員)

植物相は、高橋委員と河原委員にお任せし、当方は植生面から礼文島の生物多様性の特徴や
素晴らしさを主張したい。
(宮本委員)

佐藤委員には植生、高橋委員と河原委員に植物相の文章をもう一度書いていただきたい。
(杉浦委員)

昆虫のところは北海道の研究者に尋ねればもう尐し書けるかもしれない。わかっていないと
いう言葉には 2 つ意味があって、1 つはそういった情報をまとめている人がいないというこ
と、もう 1 つは実際に調査されていないということ。
(高橋委員)

他の昆虫を研究されている方にもこれを見せて、考えを聞いてみるとよいと思う。
(杉浦委員)

「
(3)2)その他の陸上動物」は昆虫類も含まれるので、島の生態系の特徴としてイタチと
キツネの捕食の関係の他、爬虫類の話を踏まえて原案を作り宮本委員にメールで送る。
4
- 29 -
(八巻委員)

参照すべきデータが資料編のどこにあるのかを、本文に脚注でもよいので記載すべき。また、
資料編の「2-3.気候」は最初に簡単な説明があり見やすいのだが、
「2-4.植物」はリストだけ
なのでその前部分との繋ぎになる文章を数行入れて統一させてはどうか。
(佐藤委員)

「2-1-3.(3)3)海獣類」は文章が尐ないので、資料編 19 の図等を本文の近くに入れてもよ
いと思う。
[2-1-4. 自然環境保全に係る区域等の指定]
(愛甲委員)

どのような場所が保護地域になっているか、なっていないかを書き加える。
(宮本委員)

前回話した環境省所管地の件はどうなったのか。
(環境省)

環境省所管地については特に法律で指定されて囲んでいるわけではなく、あくまでも種指定
の規定の元で、レブンアツモリソウが多く生育する箇所を財務省から環境省へ所管替えして
いる。この表の中では法律に基づく区域として掲載されているので、そことのバランスはど
うかと事務局と話していた。平成 10 年代に鉄府地区と船泊地区を環境省所管として取得し
ているので、これまでの取り組みの項で記載してはどうかという話になった。
(宮本委員)

現状が出てこないといけないので、やはり環境省で種の保存法の指定で保護している、とい
う形になっている地域も記載した方がよいのでは。
(事務局)

生息地保護区ではないので、区域指定等の中で同列に扱うのは違和感がある。しかし、囲っ
て手厚く保護や管理を行っているという意味では取り組みと言えるので、環境省と協議した
結果、土地を所有し保護・管理しているという内容を 29pp.の「2-4.これまでの取り組み」
の「
(6)レブンアツモリソウに対する取り組み」に追記した。
(愛甲委員)

29pp.「2-4.これまでの取り組み」の「(6)レブンアツモリソウに対する取り組み」に追記し
た、ということをここにも記載しておけばよいのでは。
(宮本委員)

15pp.の詳細は資料編 25~29pp.ということも書いておくとよい。
[2-2. 礼文島の生物多様性の恵み]
(事務局)

17pp.にはオホーツク文化や縄文時代に関する歴史年表を載せる予定である。
5
- 30 -
(佐藤委員)

16pp.の図を見て思うことは、
“生態系サービス“というよりも“資源的価値”を入れてもい
いのではないか。それを供給サービスの中に入れてもいいのかどうか。
(杉浦委員)

生物多様性の価値を述べた後に、その価値の中の一部として人間社会の価値を書くのがいい
と思う。
(宮本委員)

図の中の項目は、付け加えるべき内容があればメール等で事務局に連絡する。
[別紙

礼文島聞き取り調査報告]
意見なし
[2-2-1. いきものつながりの恵みと産業]

意見なし
[2-2-2. 島の暮らしの中のいきものつながりの恵み]
(宮本委員)

コラムにしてはどうか。
(庄子委員)

普通の文章では面白みがないので、具体的な事例として誰々さんの何々というように書いて
はどうか。
(宮本委員)

礼文高校の生徒が実施したアンケートを、コラムにした状態で見てからまた話し合ってはど
うか。今回の聞き取り調査も含め、このような意見が出たという形で書けばよいと思う。
[2-3. 礼文島のいきものつながりに迫る危機]
[2-3. (1)人間活動や開発による影響]
(河原委員)

順番として 3)2)1)のように大きいものから細かいものの順番がよい。
(環境省)

この戦略と開発行為の連携がひとつの課題でもあるのだが、実際に島民の方から『礼文島聞
き取り調査報告』のような意見が出てくるところからすると、
「3)開発行為による影響」の
項の中に“開発の必要性の認識”や“植生保全の認識”など工事を実施するうえでの合意形
成の部分が課題になってくるのではないだろうか。
(宮本委員)

指摘箇所は影響の部分なので、こういう影響が出るというものが 24pp.に掲載されていれば
よい。課題とするような部分を 1、2 文加えるような形にしてはどうか。
6
- 31 -
(事務局)

前回の検討委員会の際に、対策のようなものはここで書く必要はないという意見があり、実
際に起こっていることや考えられる可能性というレベルで止めている。これからの取り組み
のところで、そういった課題や限界を合わせて述べるとなったのでこのような形になった。
(宮本委員)

3)の最後の一文は外し、影響の部分だけ記載する。合意形成等は次のアクションプランに
入れる。
[2-3. (2)人為的な持込みによる影響]
(佐藤委員)

「3)病虫害による影響」は「1)外来種による影響」の中に入れていいのでは。
(河原委員)

基本的に外来種を通じての病虫害ということなので、1)の中に 3)を入れても構わない。
(佐藤委員)

1)外来種による影響では、外来種によって在来種が競争に負け追い出されること、捕食者
が入ると在来種が食べられてしまうこと、在来種との交雑が生じること、病原菌が持ち込ま
れること、これら 4 つの内容が入るが、それぞれに事例が示されると良いと思う。
(八巻委員)

冒頭部分の「里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下(第 2 の危機)」にあたるも
のがないように思う。
(高橋委員)

第 1~3 の危機には当てはまらないが、人間活動があるがために結果的に自然の質が低下し
ているというようなものが書かれていればよい気がする。
(事務局)

今年の最初の会議から続いている議論だが、事務局からそのような事例があるかどうかの意
見を求めた結果、事例が挙がってこなかったのでこのような形となった。ただ、どの危機に
おいてもササの問題に触れられていないことが気になっている。

礼文島全般に言えることではないかもしれないが、局部的に手を加えたと言えるところもあ
るので、ササはアクションプランの中で考えてはどうか。
(佐藤委員)

ササは「その他」や「礼文島固有の危機」などにおいて書いてはどうか。
[2-3. (4)生物多様性を失うこと]
(杉浦委員)

27pp.の流れ図は何のためにあるのか。この図だと多様性を失うことの一部分だけを表わし
ているので、生態系サービスの図のように大きな話で書いた方がよいのでは。
7
- 32 -
(事務局)

これは観光面での生物多様性を失うことによって想定される影響を図示したものだが、水産
面や生活面も足さないとわかりづらいと思う。
(佐藤委員)

23pp.の前書きの下に「盗掘」を加え、
「礼文島の魅力をうしなってしまう」までの図を入れ
てはどうか。
(八巻委員)

生物多様性を失うことがどのように我々の生活に関わってくるのか、が細かく書かれている
ところがないので、このままの図で前書きに“例えば”と入れた上で載せてはどうか。
(宮本委員)

この図を残すなら前書きの下に入れたらよいと思う。それぞれ意見をメール等で事務局に知
らせる。
[2-4. これまでの取り組み]
(八巻委員)

連携体制のところで関係行政機関の役割をどの程度出していくかに関わるが、例えば環境省
が国立公園に指定して管理している等の話を一部でも書いた方がいいのではないか。
(事務局)

前段として例えば「環境省はこれまでこのような取り組みを行ってきた。具体的な括りとし
て教育は.
.
.
」というような文にすればよいのでは。

今のやり方での課題や限界を整理しておかないと、これからの取り組みに繋がらないという
意見がありここで述べるとなったのだが、実際に活動を行っている人でなければ、何が限界
なのかわからないのでそこは書き加えていない。
(佐藤委員)

前書きの部分で、
“礼文町および礼文の NPO、町民が協力して以下のような活動に取り組ん
できたが、それぞれにおいて不足があり、関係機関である国の環境省や林野庁並びに北海道
の協力を得て、ますます対応しなければならない課題がある。”と前書きを加える。その上
で危機の順序に合わせて項目を 4 つ程に集約してはどうか。
(宮本委員)

よりよい案があれば事務局にメールで伝える。
(佐藤委員)

「
(10)礼文島の自然環境に配慮した社会資本整備の事例」は、成功しなかった事例である
ので書き方は良くない。このままでは宜しくないが、意図が良く計画が不十分で結果が伴わ
なかった試行錯誤例として書いても構わないと思う。
(事務局)

(10)は昨年委員会に参加されていた金子所長が「手間がかかる分コストもかかるが、礼文
8
- 33 -
ではそのような工事が必要であるということを知らせたいので、その事例として扱ってほし
い」と発言されていた。また「こういったものに示すことで、工事に携わる人間が生物多様
性保全の認識を持って実際の作業に取り組むように持っていきたい」ということであった。
したがって否定的な書き方とはせず、結果として上手くいかなかったとしても“もっと礼文
にあった工法等を考えなければいけない”という流れに繋げるべきと思う。
[3-1. 将来像]
(宮本委員)

「将来像」に代わるよい表現はないか。
(佐藤委員)

“まちづくりの将来像”のようなものが大きくあって、この検討との間で、どちらも豊かな
自然を活かしてとなったのかもしれない。しかしながら、“自然を活かし、同時に自然を保
全していく”という一つの骨があるのだという書き方になるのではないだろうか。
(事務局)

問題は本来そうあるべき町の振興計画が、財源の問題など色々な問題があって前回と何も変
わっていない、論じられていないこと。
(佐藤委員)

まちづくりの将来像の中で内容的にも、生物多様性は論じられていないのか。
(事務局)

論じられていない。
(佐藤委員)

“将来の町のあらまほしい将来像を担うものである“という感じで、生物多様性を表現して
も良いと思う。

「1-3.戦略の位置づけ」と交錯するので 1-3 に「戦略のめざすところ」を持ってきてもよい
のでは。
(事務局)

当時から何かキャッチフレーズが欲しいということでこのフレーズがあった。最初に町長が
話している中に“礼文島のためによいことをするのだ”というような話をしてきたのが印象
に残っている。
(宮本委員)

キャッチフレーズはこれ以上よい案はないか。
(杉浦委員)

キャッチフレーズは我々が指定するよりも、町民が決めたものにするのが一番。
[3-2. 基本方針]
(宮本委員)
9
- 34 -

何をキャッチフレーズにするかというのは難しい問題なので、まず“いきものつながりの保
全”のところで河原委員が話していたことに加えたいことや意見はないか。
(事務局)

3-1 と 3-2 は一緒にしてはどうか。
(佐藤委員)

「3-1.将来像」を「3-2.基本方針」の前書きにしてはどうか。やはり目次を見ていても「3-1.
将来像」と「1-3-1.戦略の位置づけ」が重複しているように感じる。「3-1 将来像」のキャッ
チフレーズと文章は「3-2.基本方針」の前書きとし、目次として 3 は 1 つしか無くなるが、
「戦略の基本方針」としてはどうか。もしくは「将来像」を「1-3-1.戦略の位置づけ」に持
っていくかのどちらかだと思う。
(宮本委員)

「将来像」という項目は設けない。
(佐藤委員)

(別紙『礼文島いきものつながりプロジェクト 施策(方策)分類案』参照)基本方針もプ
ロジェクトもこの 4 項目に分けられているが、順番はとにかく、
“生物多様性の現状把握”
が大きな項目として1つあるべきだと思う。町が行うか国が行うかは別として、現状把握を
1 項目とし、保全はそれを前提とした後の施策になる。現状認識をして悪いところがあった
ら保全する形に持っていく。そして保全の為には色々な仕組み作りが必要であるし、逆に調
査・研究がされていないと普及啓発は進んでいかないだろう。いきものつながりの保全のと
ころが、回復・再生としていきなり手を加えることから書かれており、現状認識の部分が項
目としてないのはおかしい。

『施策(方策)分類案』の「いきものつながりの保全」は「いきものつながりの保全・回復・
再生」と「いきものつながりの調査・研究」で分けてはどうか。
(事務局)

『施策(方策)分類案』で全体の体系を書いたのだが、この中に佐藤委員が述べた、しっか
り調査して現状を把握するという切り口での“現状把握”も 1 つの基本方針だと考えること
はできる。前段の話のように思いここでは入れなかったのだが、それこそが基本方針だとい
うような位置づけをすれば基本方針の項目として入ってくると感じる。
(宮本委員)

“現状認識”は完全に出来ているわけではないから、今後いきものつながりの保全をするに
しても現状認識は最初にあるべきものだし、町づくりにしても現状があるから仕組みを作ら
なければいけない。普及啓発をするにしても現状を認識していないとできない。

やはり“現状把握”が項目として 1 つあってもいいと思う。今回の資料の為に集めたデータ
もかなり調査が不足している部分があって、全体的な生物多様性の基本となる現状認識がま
だ確立しているわけではない。そしてこれからも新しいものが出てくるし、自分自身が島に
住んで何年も経つが、毎年新しい発見がある。そういった新たなものが継続的に調査され加
わっていくことも、指針や施策を変えていく方針にあたっている部分なのではないか。
10
- 35 -
(事務局)

本編で調査研究が不十分ということは触れているので、この表に落し込んだ時に調査研究は
独立させた方がいい。やはり調査研究は保全とは異なる。あとは達成率とは別に何を優先さ
せるのか。ただもう一つはササ刈りなどもそうだが、将来的な効果や影響が確立されている
ものばかりではない。将来的に不確実性があることを認識したうえで、取り組みをどのよう
にするのかが大切。あまりにも科学的知見ばかりを追っていると一歩が踏み出せない。
(佐藤委員)

自然公園であれば、自然であることは一つの価値である。現状調査では常にモニタリングが
必要になる。
そしてモニタリングで自然の姿の変化がわかり、そこに科学的根拠がうまれる。
例えば、これだけササが侵入しているからここを刈ってみたいと関係機関に復元を提案する
には、同じアングルから撮った昔の写真さえあれば、一般の方による効果的なモニタリング
がありうる。もう 1 つはスパイラルに変化してくる可能性があるので、元に戻そうと思って
も戻せないことも考えられる。いわゆる自然再生の問題にはなるが、大面積を元に戻そうと
する場合、悪影響も想定したうえで、試行錯誤として一部分でも刈らせてもらえないか、と
礼文町だけでなく環境省と連携し、専門家の助力も得て現状把握とその後の保全策を考える
ことが重要だろう。
(事務局)

それは平成 20 年に土地を借りて行ったが、調査が 1 年続かなかった。
(佐藤委員)

モニタリングを仕組みとして作ることも調査研究に入ってくると思う。常に見張っている部
局、項目があることが重要と思う。

古い写真など過去の情報を整理して、お爺さんが写っている写真の風景などから調査してみ
るのも面白いと思う。
(宮本委員)

古い写真を集めるのも調査研究である。

順番としては「いきものつながりの恵みの活用」は最後でよい気がする。
(八巻委員)

やはり“現状認識”が先で、そこで分かったことがその次の生物多様性を直接的に修復する
保全になる。さらに支援するためのものである“しくみづくり”
“普及啓発”の並びがよい
のではないか。
(佐藤委員)

「3-2.基本方針」の 2 段落目は現状認識の文章になるのではないか。ここを現状認識の 1 番
目に持ってきてはどうか。
[4. 礼文島いきものつながりプロジェクト](別紙 施策体系図案参照)
(高橋委員)

一番上の“回復・再生”をなぜ消したのかわからない。最終的にどの程度まで戻すかという
11
- 36 -
のはその中の議論としてあると思うが、保全と言うと現状を維持するだけのイメージになっ
てしまうので、それよりももう尐しアクティブな“回復・再生”という言葉まで入れたほう
がいいのではないか。
(事務局)

“回復・再生”を消したのは、回復・再生までいってしまうと、どのレベルを目指すのかと
いう話になってしまうためである。保全だけを集中的に行った方がいいのではないかと考え
たのであり、しないという意味ではない。
(佐藤委員)

「生態系の保全・回復・再生と活用」や「希尐種の保護と活用」においては「活用」はいら
ない。いわゆる恵みである活用に色々あるので、こちらは生物多様性を守るという意味での
保全であり、この章に活用は合わないと思う。それに合わせて 34pp.の文章は沢山線が引か
れているが、直されるのか。
(事務局)

別紙 1 枚目の施策分類案は最終的に研究者や行政の意見もあるので、現時点で引かれている
斜線は消して、色々な意見が出たことを示した。ただ現実的には整合性も考慮して、2 枚目
の施策体系図案のように基本方針などに基づいて“緊急性のあるもの”あるいは“重点・ア
クションプラン”をここ 5 年くらいで取り組むものとして絞り込み、次に作られるであろう
会議の中でそれらを具体的な話に繋げていった方がよいのではないだろうか。したがって、
施策体系図案の「いきものつながりの保全・回復・再生」は「保全・回復・再生」と「調査・
研究」に分けて、右側には具体的に出た意見、その内、重点・アクションとして何をやって
いくかというのを示すという流れを想定している。
(宮本委員)

回復・再生は入れたほうがよいのか。元がわからないとどこまでが回復・再生なのかわから
ない。現時点でスタートすれば保全で済むが、回復・再生という項目にするとどこまで戻せ
ばよいのか。達成がないのでは。
(佐藤委員)

環境省が自然再生に関して示しているように“目標値”を定めなければならない。例えば
10 年前の状況まで戻すなど、それに対してどういった自然の要素が残されて、非自然とな
った現状があるか、そうするとどのように交錯させて回復させていくかなど。
(事務局)

単純に過去の部分を絞り出すのが大変だろうと思ったが、佐藤委員の意見は積極性が出てき
てよいかもしれない。
(宮本委員)

“回復・再生”は入れる方向とする。
(事務局)

次回は横線で消しているところは全て活かして、絞り込みのところの重点施策(アクション
12
- 37 -
プラン)について検討したい。
(八巻委員)

目標値の設定の話が出たが、そういった内容は書かなくていいのか。レブンアツモリソウの
復元の話もそうだが、いきものつながりの最終的な形としてどのようなものを目指すのか書
かれていない。その話をどのように入れるのか。
(河原委員)

おそらく個別に大きく違うので、この中では入れようがない。定性的に回復するというよう
な言葉でいいのでは。
(八巻委員)

そうだとしても自然再生法や釧路の 1980 年代に戻すというような具体的な目標がこの計画
では書かれていないので、そういった“将来を考えている”ということを入れた方がいいの
かどうか。
(事務局)

どこかでこの計画はひとまず幕を閉じなければいけない。これから次の会議が生まれること
を考えると、その中で個別の話題として話し合えばいいと思う。ここで何年と書いてしまう
と難しくなる。
(佐藤委員)

4-1 は全てこのまま箇条書きなのか。
(事務局)

「~だから次のようなことをする」というような書き方にはなると思うが時間も無く、もし
個別にするのであれば今から取捨選択をしなければいけないので、個別にはつかない。
(佐藤委員)

順序の繋がりを考えなければいけない。例えば“調査研究”のところで 16~27 番はこの順
でよいのかという問題がある。
(事務局)

施策体系図案の右のグレーの部分に当てはまるもの(この 5 カ年くらいに取り組む・考え
る・進めるべきもの)が上位になるはずである。
(佐藤委員)

現時点ではそれぞれが意見を出しただけの状態で、22・23・24 番のデータベース化のよう
に重複しているところがあるので、そこをまとめて整理すべきであろう。
(事務局)

次回は同じようなものは整理して、“調査研究”は 1 つの基本方針として位置づける。更に
その中で重点施策を検討したい。
(佐藤委員)

同じことを違う言葉で表現しているので、順序は原因や危機別など今までの順序に合わせた
13
- 38 -
方がいいと思う。

31 番の「新桃岩トンネルなどをモデルにした低炭素社会の検討と提言・実践」というのは
どういう関わりがあるのか。
(事務局)

4 月以降の次の会議のテーマとして、詳しく話してみてはどうかという提案であげてみた。
(佐藤委員)

“低炭素”は観光利用の課題としてはどうかと思うが。

今の話だと 29pp.の(5)で「低炭素社会構築に対する取り組み」があるが、この文の後に「し
かし観光バスのアイドリングや排気ガスが...」のように課題を入れて布石を打ってはどう
か。
(事務局)

もう一度足すべきものを提案してもらい、似たものはまとめる。そしてもう一度グループ分
けをし、重点施策を次の回までに案を出す。
(宮本委員)

もう一度事務局で新たに施策をまとめ直してもらい、それを早めに出してもらいたい。そし
て足すものは足して、早めに重点項目を引き出したい。それをまたメール等で送ってもらい
“要る、要らない”という視点で精査し、皆さんに重点施策をあげてもらいたい。
[4-2. 重点施策(アクションプラン)]
(八巻委員)

前段階として細かいところは書かれているが、もっと住民目線の“どんな礼文島で生物多様
性の保全をしていきたいか”ということが具体的には書かれていないと思う。町民を含めた
全員が共有できる将来の島のイメージや目標をはっきりさせた方がよいのではないか。
(事務局)

今はまとめきれないので、それを事務局から来たメールに書いて送ってほしい。
(佐藤委員)

八巻委員の話を消化するには、“礼文町民が主役である”という言葉をどこかに書くしかな
いと思う。
[5. 戦略の推進]
[5-1-1. 『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設置]
(八巻委員)

今は礼文町が全て行っているわけではなく、かなりの部分を関係行政機関が一緒になって行
っているので、そういった前提で枠を書いた方がよいのではないか。

他の会議との関係も見ていかなければいけないが、
『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジ
ェクト推進会議』は町が主催するものなのか関係行政機関と対等な立場で行う会議なのか、
そのあたりの位置づけによってここの書き方も変わってくると思う。
14
- 39 -

“ガバナンス”という言葉を使えばもう尐しアクティブなイメージになると思う。
(佐藤委員)

大きく言えば“島内・外の連携を強める”ということであろう。関係する主体が一緒になっ
て行うということを 1 行文章として入れておいてはどうか。
『(仮称)礼文島いきものつなが
りプロジェクト推進会議』はあくまでも礼文町内で種々連携しながら将来を検討する、一方
で、島外の関係行政機関と連携し一緒に行うという二面性を持たせてはどうか。
(環境省)

今回の『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』は礼文町で作るという位
置づけではあるが、連携して実施していくことはこれまでも積み重ねてきたことであるし、
またそれを強化していかなければいけないと思う。したがって意思表示として出していいと
思う。
(八巻委員)

「7)大学等研究機関」はまず“調査研究”なので、文章化すると「生物多様性に関する調
査研究及び知識の向上への貢献。」の方がいいのではないか。
[5-2. 進行管理]

意見なし
[5-3. 財源の確保]
(八巻委員)

礼文島は尐子高齢化や過疎化が進んでいる状況だが、その中で今後の生物多様性保全を担う
人材の確保も考えていかなくてはいけない。人材のこともどこかに入っているといいと思う。
(事務局)

「施策(方策)分類案」と「施策体系図案(2)
」のしくみづくりに「指導者となる人材、担
い手となる人材の育成・確保」とあり、横線で消されている「指導者」を消して復活させる。
③
その他
(事務局)

次回検討会については、12 月 26 日(月)に札幌での開催を検討している。

会議は 12 月でほぼ終了し、若干の整理等はメールで行いたい。年内 1 回(12 月)と年明け
1 回(2 月上旪)の計 2 回の会議開催とさせていただきたい。

足りない部分は新しく組織されるであろう協議会の対策のなかで、個別にあるいは全体の中
で協議してきたい。
3
副委員長挨拶

宮本副委員長より閉会の挨拶。
以上
15
- 40 -
平成 23 年度
第4回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
日時
場所
平成 23 年 12 月 26 日(月曜日)
午前 9 時 00 分~
環境省北海道地方環境事務所
札幌第一合同庁舎3階
1. 委員長挨拶
2. 議題
① 第 3 回検討委員会の内容確認
② 戦略案について
③ その他
・次回検討会の開催について
・その他
3.委員長挨拶
(産業課)
- 41 -
平成 23 年度
第 4 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
■日
時
平成 23 年 12 月 26 日(月)9:00~17:00
■場
所
環境省北海道地方環境事務所会議室(札幌第一合同庁舎 3 階)
■出席者
議事概要
<委員>
宮本委員、村上委員、河原委員、高橋委員、杉浦委員、愛甲委員、佐藤委員、
庄子委員、八巻委員
<オブザーバー>
北海道地方環境事務所
北海道環境生活部自然環境保生物多様性保全グループ
<事務局>
礼文町産業課、株式会社ライヴ環境計画
1
副委員長挨拶

宮本副委員長より挨拶
2
議題
①
第 3 回検討委員会の概要
②
戦略策定にあたって
「礼文島いきものつながりプロジェクト(案)
(2011.12.20 版)」本文の構成にそって、別途配
布した佐藤委員、高橋委員・河原委員の修正文案、庄子委員の文案を確認しながら、各項目の内
容について意見交換を行った。(※各委員の修正文案の内容が承認されたものについては、本議
事概要への記載を省略する。
)
[1-1. はじめに]
(宮本委員)

環境省への提出を考えると、
「自然の中には~つながりながら生きています。」のブロックは
不要ではないか。「礼文島における人々の生活は~」から始まってもよいのではないか。

2p.の「1992 年の地球サミットで提案された~」についても、礼文町における戦略策定にあ
たって記載は必要か。
(佐藤委員)

今回の生物多様性地域戦略は、環境省だけに提出し、礼文町民には示さないのか。
(事務局)

礼文町民向けには、「広報れぶん」での紹介や、小冊子を作ることが可能であればそちらで
紹介していく。
(佐藤委員)

礼文町として出す、礼文町民が見るという目的で作成するのであれば、環境省に提出する文
1
- 42 -
章としてだけではなく、礼文町民の誰でも見ることができるようにしておくべきである。こ
の検討会の報告書、礼文町としての財産となるため、総括的に書いておいたほうがよい。
(宮本委員)

文章は 4 項目ほどになっているが、内容は重複している部分があり、もっと整理した方がよ
いと思う。
(愛甲委員)

1-1、1-2 を合わせると長い感はあるが、前段のメッセージとしては重要である。尐し整理す
れば読みやすくなる。段落の構成はこれでよい。
(宮本委員)

3 段目「1992 年に地球生物サミットで提案された」については、繰り返し記載されている。

「1992 年~」から始まらず、
「自然の中には~」が先にあり、その後に 2p.の「地球サミッ
ト」
、
「礼文島における~」の流れのほうがよい。
[1-2. 戦略の位置づけ]
(北海道環境生活部自然環境保生物多様性保全グループ)

生物多様性地域戦略は、北海道と市町村がつくるものであるので、上下関係ではなく、横並
びとなる。したがって礼文町の戦略と北海道の計画等の並びについてはこれでよい。

現在、北海道では生物多様性保全条例を作成しており、平成 25 年初めに公表される予定だ
が、それを記載するとバランスが悪いかもしれない。記載するとなれば、条例と計画の 2
行書きになるが、礼文町生物多様性地域戦略を公表する時点では、まだ条例が出来ていない
ので、記載しなくてもよい。
[2. 礼文島における生物多様性の現状と課題]
[2-1. 礼文島の生物多様性の成り立ち]
[2-1-1. 概要]
(佐藤委員)

5p.の文章について、最後の「形づくられていると考えられます」は「形づくられています」
に修正する。
(事務局)

5p.の下の図について、具体的に場所を示すのは難しいとは思うが、おおまかに動物や植物
が分布している場所を反映させたいと考えて作成した。
(杉浦委員)

5p.の下の図の中にはオジロワシ等の生物の名前が記載されているが、上の文章に出てくる
レブンアツモリソウやウルップソウ等、図が文章の説明になるよう、同じ生物を記載した方
が視覚的にわかりやすい。
(佐藤委員)

「海岸断崖が続く西海岸」をゴシックにし、西海岸の亜高山・高山植生のところに、レブン
アツモリソウやウルップソウを一字下げて記載するとよい。
2
- 43 -
(河原委員)

真ん中の黒い線は、礼文島の西側が急峻で東側が緩やかである、という地形の特徴を指して
いるのか。鳥瞰図とは別に、断面図などで表現したほうがわかりやすいのではないか。
(事務局)

断面的な特徴を表現する意図であったが、もっとよい表現方法がないか検討する。
(佐藤委員)

「北西方向から冷たい冬季季節風~」「断崖、露岩が連なる西海岸」「東側は緩やかな斜面」
のように、対比するような整理をするとよい。
(宮本委員)

鳥類はこの図に含めなくてもよいのではないか。植生と海中を含む地形に着目した図として
表現すればよいのではないか。
(佐藤委員)

山岳上部は礼文岳の方へ記載し、ハイマツ群落、ダケカンバ林の順に記載する。対象範囲は、
図案よりも西側部分を指すものとして表現した方がよい。
(宮本委員)

オレンジのラインは鳥類の渡りを示すものであるが、植生のラインに変更し、礼文島南部の
知床周辺からスコトン岬へ向かうラインとして、西海岸と東海岸に分けるラインとするのは
どうか。西海岸と東海岸を大きく分けて記載すれば、
「東海岸山麓」と記載する必要はない。
(事務局)

より適切と考えられる表現があれば、引き続きお知らせいただきたい。
[2-1-2. 礼文島の環境基盤]

佐藤委員作成の修正文案を基に意見交換を行った。
(佐藤委員)

(1)位置・気候、(2)地質・地形等と記載した。その方が植物の分布や生態についてわかりや
すく説明できる。

(1)位置・気候の中で、位置については、礼文町が公式に使用している北緯・東経の数値が
あれば、そちらを記載した方がよい。

礼文島の地質は、サハリンから樺戸につながる帯にあり、北海道本島とは違う系統でできた
地質であるということを記載すると、
礼文島の特徴を示すことができる。その点については、
必要であればさらに記載を付け加えることが可能である。

前期白亜紀の地質が分布する島の中央部から西海岸にはウルップソウやフタナミソウが分
布し、新第三紀層の分布する箇所にはレブンソウやレブンアツモリソウが分布している。地
質と植物の分布に対応について記載する必要があれば、付け加えることが可能である。
(宮本委員)

樺戸帯にあるということは、礼文島の特徴としてどのようなことを示すことができるのか。
珍しいということが、一般の人にもわかるように説明できれば、礼文島の特質として記載し
てもよいのではないか。
3
- 44 -
(佐藤委員)

樺戸帯は、サハリンから礼文島、そして樺戸に至るものである。北海道の中では、相当古い
地質帯である。古生層は、道南にはあるが、北海道全体としては尐ない。この点について加
筆することは可能である。
(宮本委員)

佐藤委員には、樺戸帯についてまとめていただきたい。
(河原委員)

北海道の古生層の分布とあわせて掲載するとよい。
(事務局)

樺戸帯についての記載は、本文の中に記述するよりコラムとして扱うことを検討したい。

地質図についても、資料編ではなく、本編に掲載することを検討する。
[2-1-3. 礼文島の生物多様性を構成する要素]
[(1)

植生]
佐藤委員作成の修正文案を基に意見交換を行った。
(河原委員)

(1)植生の文章の中にあるシロザクラはミヤマザクラとしたほうがよい。
(宮本委員)

カシワは、植林されたものだけで、自生は確認できてない。

オニグルミも、人家の近くに生えており、自生なのか、人為的に植えられたものなのかわか
らない。

西海岸の断崖にある小さな集落の召国(メシクニ)という地名は、
「オニグルミの木の多い
ところ、オニグルミのある沢」という意味のアイヌ語である。礼文島の海岸には、クルミの
実がよく流れ着いており、そのため「メシクニ」と名づけられた可能性もある。しかし、沢
でクルミが自生しているのを見たことがない。
(佐藤委員)

カシワについては、舘脇氏のリストからの記載であると思う。

オニグルミは、植林された可能性はある。
(宮本委員)

「チシマザサやクマイザサが優勢なササ群落となった「ハゲ山」が認められます」とあるが、
「ハゲ山」という表現が適切か。
(佐藤委員)

「ササ群落に覆われています」に修正する。

再度内容を確認し、コラムも含めて年内にみなさんにお送りする。
[(2)

植物相]
高橋委員・河原委員作成の修正文案を基に意見交換を行った。
(高橋委員)
4
- 45 -

植物相は、正確に記載するならば、調査が行われたのは維管束植物だけで、他の植物は調べ
られていないので、「維管束植物相」とした方がよい。

舘脇氏・伊藤氏の論文で、礼文島は北海道の植物区系を 4 つに再区分する際に「利礼小区」
として 1 つの小区とされている。このことは、地質のところで議論されたサハリンとのつな
がりというところに対応する。礼文島が独特の植物区系になっていることを強調するとよい。

分類学的研究・遺伝的研究がまだ進んでいないこと、維管束植物以外の調査研究が必要であ
ることを追加した。
(宮本委員)

レブンコザクラのように利尻島でも発見されたことがわかると、礼文島固有種ではなくなる。
(高橋委員)

記載の多くは、1934 年の舘脇氏の論文を参照しているため、最近の研究成果まで及んでい
ない部分もある。
(村上委員)

レブンソウとフタナミソウは大陸にもあると聞いたことがある。
「固有」をどのように解釈
するか。
(佐藤委員)

フタナミソウは学名的に新種として記載している。極東ロシア、サハリンの種と同じだとい
う意見と、その変種だという意見がある。葉の形態が違うが類似している。今のところは区
分されている。
(河原委員)

レブンコザクラについては、舘脇氏のその後の研究により知床岬でも発見され、利尻島でも
発見されているという注意書きを入れればよいのではないか。
(佐藤委員)

「ある」ことの証明は簡単であるが、なくなったことの証明は難しく、「ない」という断言
は難しい。

礼文島では、舘脇氏以降、植物リストをチェックされていないこと、研究されていないこと
も課題である。

戦略を作成している時点までに公表された文献に基づいて記載するしかない。したがって、
差しさわりのない記載の方法を検討していくのがよい。

[(3)
植物相以外の章にも、今後の一層の研究が必要である旨を記載するのがよい。
動物]
(佐藤委員)

「陸生哺乳類」は「陸棲哺乳類」としてはどうか。
(杉浦委員)

項目名は「動物相」として、前の「植物相」と合わせることとしたい。

既存の資料がある哺乳類、両生爬虫類、淡水魚類、昆虫、昆虫以外の無脊椎動物を記載した。
わかっていないものは無限にあり、完全な調査結果はない旨についても記載している。現在
5
- 46 -
判明しているもののみについて記載し、ある程度特徴を理解してもらえばよいと思う。

「海獣類」については「海棲哺乳類」とし、陸棲哺乳類の次に記載してはどうか。
(宮本委員)

海産の魚類について記載しなくてもよいか。
(杉浦委員)

魚類は、漁獲対象についてはある程度わかるが、動物相でのまとめとなると、地域を代表す
る魚類をリストアップすることは難しい。
(宮本委員)

10p.の陸生哺乳類について、出典を掲載した方がよいのではないか。
(杉浦委員)

まとまった資料がなく、確認されたものとして記載した。資料によって扱いが変わるものも
あり、複数の資料を組み合わせて文案を作成したため、出典を限定して記載することは難し
く煩雑となる。
(宮本委員)

[(4)
煩雑になるが、出典がわかるものについては、出典を入れた方がよい場合もある。
藻場]
(佐藤委員)

ここまで生物群を対象に記述をしている中では、生態系の 1 つである藻場の位置づけがあい
まいである。

23~24pp.の「礼文島の漁業・水産業と生物多様性」に記載を追加するとともに、5p.の文章中
に、藻場が生態系として重要であること、藻場が生物相の豊かさを支えていることを記載す
ればよい。
[(5)
希少動植物]
(河原委員)

希尐植物については項目があるが、希尐動物についての項目がない。
(事務局)

植物相・動物相の各項目の本文中に該当する種数を記載することとし、(5)希尐動植物とい
う項目自体は削除する。種リストは資料編に記載する。
[2-1-4. 自然環境保全に係る区域等の指定]
(杉浦委員)

17p.の表の下にある青文字で示された文章は、上の文章に続けてもよいのではないか。
(佐藤委員)

17p.の文章について、
「法令等により」は「各種法令により」、「保護区域」は「区域」、「何
らかの保全区域に含まれる面積は」は「それらの面積は」と修正してはどうか。
(杉浦委員)
6
- 47 -

面積の単位は統一した方がよい。

表の中にこれらの区域面積の合計値を入れた方がよい。
(佐藤委員)

18p.の図で「87.4%」とされている数値が文章中では「9 割近く」と表現されている。正確
なデータであれば、文章中でも「87.4%」と明確に記載してはどうか。
(事務局)

GIS で面積を算出しているため、数値については精度が低いものもあり、正確な数値として
扱うには問題があると考え、概ねの数値であることがわかるよう記載した。
(宮本委員)

地図については、いつ時点のものかがわかるよう、出典を記載しておくとよい。
[2-2. 礼文島の生物多様性の恵み]
(事務局)

礼文町の場合、漁業という言葉に水産業も含んでいるイメージが強いことから、「水産業・
漁業」を、「漁業」として一つにまとめることとした。
(河原委員)

19p.の図について、礼文町らしい調整サービスとして左の欄にある一般的な調整サービスの
内容がそのまま記載されているが、他の表現の方がわかりやすい。例えば、
「法面保護」
「雪
崩防止」等、礼文島で具体的にイメージできるものがよい。
(佐藤委員)

20p.は、グラフとの対応がわかるよう、「図示したとおり、島の主力産業である観光(サー
ビス業)や漁業が成り立っています。」と修正すべきである。
(愛甲委員)

20p.の 2 段落目以降は、産業の話が続くことから、産業の就業人口のグラフと関連づけた説
明が必要である。観光業はサービス業に含まれること、漁業と観光業が礼文町の主力産業で
あることを述べ、21p.以降につなげた方が流れとしてわかりやすい。

歴史に関する部分を先に記載し、現在の産業に至るまでの流れを記載した方がよい。
(事務局)

19~20pp.については、愛甲委員に修正文案の作成をお願いしたい。
[2-2-2. 島の暮らしの中の生物多様性の恵み]

庄子委員作成の資料を基に意見交換を行った。
(庄子委員)

礼文島での聞き取りと、礼文高校でのアンケート調査結果をもとに、生物多様性の言葉は使
わなくても、礼文島の海の幸、高山植物、美しい景観は恵みとして認識しているということ
を記載した。コラムとして記載するべきかどうかも含めてご意見を伺いたい。
(愛甲委員)

どのような恵みがあるか、という内容については本文として記載すべきである。その文章を
7
- 48 -
島の方が読んで違和感がなければそれでよい。

礼文高校 3 年生が実施したアンケート調査については、コラムとして取り上げた方がよい。
(事務局)

引き続き、庄子委員に文案の作成をお願いしたい。
[2-3. 礼文島の生物多様性に迫る危機]

佐藤委員作成の資料を基に意見交換を行った。
(佐藤委員)

地域づくりでは、恵みに対するプランを作成しなければならない。原因を究明することによ
り、課題・保全対策が明確となる。危機を明確にすることが対策につながっていくものと考
えている。
[(1)
人間活動や開発による影響]
(佐藤委員)

植物を中心に考えると、最も大きな影響を及ぼすものは盗掘で、次に踏みつけ、開発とした。
今までこれらの原因で絶滅したものがあるかどうかはよくわかっていないが、今後もこれら
の要因による絶滅の可能性が懸念される。

盗掘による影響について、盗掘は現在のこととしてではなく、将来に向かって大きな脅威で
ある、という事実であるから記載した方がよい。礼文島では、希尐種がパッチ状に小面積ず
つ生育しており、盗掘が絶滅につながることをはっきりと記載するとよい。現状認識から課
題を示すという意味合いでは、盗掘について触れた方がよい。盗掘についての記載は、レブ
ンアツモリソウに限った表現ではなく希尐植物全般を対象とした表現とする。
(事務局)

踏みつけによる影響について、自然公園法では、一般の人々が国立公園内の歩道以外の箇所
を歩くことを制限していない。
“立ち入らないでほしい”とするルールがあるだけである。
安全確保も含め、ルールとして園路を設定しロープを張っているが、心ない人が歩道から出
るということと、それを止めていただきたいという意味合いのことを記載したい。
(愛甲委員)

植物や指定区域によっては、歩道を踏み出して歩くことによるインパクトが、自然公園法の
植物の損傷にあたることも考えられる。

佐藤委員の修正文案の「賢明な利用方法」に関する部分をさらに具体的に記載すると、後の
対策につながっていくのではないか。ロープや柵に加えて、適正利用を促す礼文島なりのル
ールが必要であるということを記載するとよい。
(事務局)

開発行為による影響について、「ところで、希尐植物が小面積にパッチ状に生育する礼文島
では、~」の文章は、礼文島での実際の例として記載しているのか。
(佐藤委員)

他の委員の意見を加味し、小規模な改変行為であっても緻密に対応しなければ、種の絶滅に
つながる可能性もある、ということを記載している。
8
- 49 -
[(2) 人為的な持込みによる影響]
(佐藤委員)

環境省での外来種の定義は、海外だけではなく国内の他地域から持ち込まれたものも外来種
とみなしている。外来種は、
「競争で追い出す」
「捕食する」
「病気をうつす」
「交雑する」等
により、在来種を絶滅させてしまう。

火山島や海岸砂丘等の植物が尐ないところでは外来種が繁茂している。
「島嶼」というのは、
外来種問題に敏感でなければならない、という考え方に基づいて記述した。

漂着物と漂着油の影響については、
「人為的な持込みによる影響」ではなく、
「その他の影響」
で記載する方がよいのではないか。

法面植栽は、在来種での工法が可能であると考えられる。生物多様性を保護する上での在来
種候補の基準があるとよいが、地域によってそれぞれ違う基準となる。
[(3) 地球規模の環境変動による影響]
(佐藤委員)

地球規模の環境変動により絶滅した例は、水産資源では多くあると思うが、陸上でも今後増
大していくと考えられる。
[(4) その他の影響]
(佐藤委員)

その他の影響には、放射性物質や酸性雨もあげられる。諸外国との関係が、礼文町の生物多
様性に影響を与える要因となることもある。礼文町だけではなく、国際協力していかなけれ
ばならない点である。島民だけで自己解決できる部分は尐ない。
(河原委員)

「基本的には、私たち礼文町民は、島の財産である生物多様性に悪影響を及ぼす要因・原因
について、常に、その具体的内容を明らかにし、保全策を講じていく必要があります。」と
あるが、これまで議論したように、礼文町民自身の保全策を講じていくことは困難である。
この文章は削除し、前段の「~生物多様性を含んで国や北海道との密な連携を形成する必要
があります。
」で結んでおくとよいのではないか。
[2-4. これまでの取り組み]
(八巻委員)

冒頭の文章に、民間だけではなく、環境省、林野庁等による取り組みと課題について追記し
た。
(佐藤委員)

タイトルは、
「これまでの取り組みと今後の課題」とすべきである。
(事務局)

取り組みの効果が出ないことへの課題として、「一層の連携」だけではなく、行政との連携
と各々の自主性を促すようなことを盛り込みたい。
(佐藤委員)
9
- 50 -

冒頭の文章において、生物多様性の保全に向けた実りある対策とするために、NGO、民間、
行政が体制づくりや理念について話し合う場、実行する体制が必要であることを具体的に記
載できるとよい。北海道の生物多様性保全計画には、横の連携会議を設けるという一文を加
えた。
(八巻委員)

問題によって取り組みの方向性は違い、組織をつくるだけでは形骸化する可能性もあるので、
あくまで課題とした。
(杉浦委員)

取り組みを実施した結果、どのような成果があったのか、一方でどのような課題が残されて
いるのかを記載したほうがよい。
(事務局)

危機とこれまでの取り組みは、分けて記載したほうがよいか。
(愛甲委員)

危機と取り組みが対応しない等、あてはまらないものをどう扱うかによるのではないか。
(杉浦委員)

これまでの取り組みについては、現状を守るための取り組み、損なわれたものを復活させる
ための取り組み、教育普及の取り組みの 3 つに分類することも可能ではないか。
(愛甲委員)

危機に対する取り組みと教育・研究に対する取り組み、といった項目にまとめてみてはどう
か。

恵みの危機とそれに対して行ったこと、行っていないことについて記載したらよいのではな
いか。恵みと危機に対しては教育・研究分野でも足りないことがあり、その点についても指
摘しておいてはどうか
(佐藤委員)

3 つ目の大きな項目として「課題」とすることも可能である。
[2-4-1. 外来種に対する取り組み]
(杉浦委員)

「セイヨウオオマルハナバチバスターズ」制度は北海道の事業であり、礼文島としての具体
的な取り組み事例ではないのであれば、紹介する程度にとどめてはどうか。
(佐藤委員)

セイヨウオオマルハナバチは利尻島で発見されているので、今後の外来種に対する取り組み
として、紹介するのがよい。

3 つ目の項目の文章の中にある「自然度」という言葉は、一般的ではないので言い換える。
[2-4-3. 公園利用に対する取り組み]
(宮本委員)

歩道からの逸脱行為等も悪意がなければ咎めることはできない。しかし、踏みつけを繰り返
10
- 51 -
すうちにその箇所の花を傷めることになる。
(八巻委員)

アクションプランで、ルールづくりや声かけを提案していくとよい。
(河原委員)

公園利用に対する取り組みについて、指導員を委嘱したということだけでは、目的や取り組
みについてわからない。

盗掘に対する取り組みとして、盗掘防止活動を行っている点を独立して記載したほうがよい
のではないか。
[2-4-6. レブンアツモリソウに対する取り組み]
(河原委員)

礼文町高山植物培養センターでは、レブンアツモリソウ以外の希尐植物も扱っており、遺伝
資源保全の活動の一つとして取りあげるとよいのではないか。
[2-4-8. レブンアツモリソウに対する取り組み]
(佐藤委員)

北海道大学だけではなく、多くの研究機関との連携について記載したほうがよい。
[2-4-10. 礼文島の自然環境に配慮した社会資本整備の事例]
(佐藤委員)

自然復元緑化工法については、目的の意図はよいが、まだ成果が得られていないため、今後
の課題とした方がよい。
[3. 戦略のめざすところ]
(八巻委員)

戦略のめざすところの目標として、これまでの取り組みと課題によって明らかとなったもの
から、自分達で何をするかを具体的に示す方がよいのではないか。例えば「高山植物が咲き
乱れ
海の幸に恵まれた人と自然の共存する島」など。そこから研究推進、回復再生につな
がるのではないか。島民がどういう島にしたいのか、その思いが見えてくるものがよい。
(愛甲委員)

“いきものつながり”の言葉はあったほうがよい。

「いつまでも住んでいたい、訪れたい島」という表現をうまく使って、
「“いいこと”しよう!」
に繋げられるとよい。
(河原委員)

「
“いいこと”しよう!」には行動的なイメージが感じられる。
(事務局)

案を持ち帰り、礼文町で最終的に決定する。
[基本方針]
11
- 52 -
(佐藤委員)

「いきものつながりの保全・回復・再生」について、自然の回復・再生とは大きい意味では
生物多様性保全ということである。自然環境の回復のことなのか、劣化が進んでいる自然環
境のことなのか。激減した希尐種の回復再生をはかるであれば理解できる。自然再生法でい
うような回復・再生にはあたらないのではないか。全国的にも礼文島は全体としてはよく保
全されているので、保全し続けるということが重要であり、劣化が進んだ部分については再
生させるとしたほうがよい。「劣化が進んでいる自然環境」では範疇が広すぎるので、劣化
が進んでいる植生や激減している希尐種の回復・再生をはかる、大規模な再生事業ではなく、
狭い観点での記載としたほうがよいのではないか。

「取り組みを実施・継続するためのしくみづくり」について、礼文町民が主役だが、礼文町
の恵みは全国、世界に発信できるほどのすばらしいものである。北海道、日本全国の島外の
人も取り込んで協力してもらうようなしくみづくりの観点を含めてもよいのではないか。
(宮本委員)

「普及啓発・教育(知ること、伝えること・引き継ぐこと、発信すること)」について、教
育の上で、実際に体験できることが重要であり、そのためには、地域での国有林の利用が不
可欠である。
[4. 礼文島いきものつながりプロジェクト]

事務局作成資料「礼文島いきものつながりプロジェクト施策体系図(案)」を基に意見交換
を行った。
(事務局)

「礼文島いきものつながりプロジェクト施策体系図(案)」について、前回の検討委員会で
のご指摘を受け、
「施策」と具体的な取り組みを指す「方策」に分けて整理した。

方策については、委員やオブザーバーからいただいたご意見・アイディアをふりかえること
ができるよう、資料編等に収録するなど、何らかの形で残しておきたいと考えている。
(河原委員)

各方策の項目だけでは、具体的にどのようなことを実施するのかイメージすることが難しい。
(愛甲委員)

基本方針から導き出される基本施策の必要性と、基本施策に対応する具体的な方策として考
えられる例を文章として記述しておく必要がある。項目だけではイメージしづらい方策につ
いては、
補足する説明をつけておけばよい。その上で、これらの中から重点施策を選択した、
という流れではどうか。
[いきものつながりに関する調査・研究の推進]
(佐藤委員)

「いきものつながりの現状把握」について、産学民官連携とはせず、全体的な「生物多様性
に関する調査研究」だけでよいのではないか。

「生物多様性モニタリング調査の実施と継続」の項目には、北海道を加えたほうがよい。
(河原委員)

「礼文のいきものリストの作成」については、各種資料、報告書、論文等によるリストの作
12
- 53 -
成という意味が大きい。データベースは、そういったものを積み上げた上で電子化し、誰で
も利用できるような形にするということである。
[いきものつながりの保全・回復・再生]
(佐藤委員)

「生態系の保全・回復・再生」の項目に「ササ拡大抑止対策の検討」とあるが、ササが増え
たという事実は確認できているのか。
(河原委員)

空中写真で見る限りではササは増えており、鉄府地区では畑がササ地になった箇所や、山の
ササ地が下りてきている箇所がある。
(佐藤委員)

ササには、自然植生、二次植生、人為植生があり、自然度について言えば、ササの自然度が
低いとは限らない。ササが増えた場所が特定できると具体的なアクションプランにつながる。
場所が特定できない場合は、アクションプランとするのは危険である。
(河原委員)

「希尐種の保護」に「礼文町高山植物培養センターを活用した遺伝資源保全」を位置づけて
はどうか。
(佐藤委員)

「希尐種の生育地での保全と、隣接したところでの復元保全の 2 通りがあるので、書き分け
た方がよい。
(河原委員)

道路の拡張に伴って小面積であるが海域部分が減尐する等の状況がみられ、藻場や河川等の
水環境の保全について、生態系として認識し、保全していく施策を検討していかなければな
らないと思う。
(佐藤委員)

項目の並びの順について、希尐種、外来種対策、生態系の保全・回復・再生の並びにすれば、
社会資本整備につながると考えられる。
(河原委員)

生態系の保全が最も重要であると考えており、大きな枠で保全し、その次に個々の希尐種保
護、外来種駆除という小さい事項の保全があると考えているので、原案に示された順番でよ
いと思う。つながりプロジェクトとなっているので、全体に大きく保全していくという方が
よいのかと思う。

生態系を把握するための調査が位置づけられていない。しかし、種のリストを作成し、どの
ような生物がいるのかがわからなければ生態系につながらない。
(宮本委員)

危機によって失われつつあるものを最優先としたほうがよいのではないか。
[取り組みを実施・継続するためのしくみづくり]
13
- 54 -
(佐藤委員)

「多様な主体との情報交換・連携強化」となっているので、特定の機関ではなく、もう尐し
間口を広げた表現とすべきである。

「多様な主体との情報交換・連携強化」の中の「異分野への情報提供と連携」とは具体的に
どのようなことか。これまで関連が薄かった部門との連携という意味合いであれば、「幅広
い分野への情報提供と連携」としてはどうか。
(河原委員)

「活動団体等の支援」の中の「生物多様性調査研究者への補助」とはどういった内容か。ま
た、
「民間ファンドも利用した生物多様性調査研究の助成金」は、助成金そのものを礼文町
が支出するというファンドという意味合いではないので、資金の項目に記載してはどうか。
(事務局)

「生物多様性調査研究者への補助」とは、利尻島の「島おこし基金」や様似町の宿泊施設に
おける研究者の優遇といった、金銭的なことも含む補助をイメージしている。
(佐藤委員)

「多様な主体との情報交換・連携強化」の中の「礼文町内の連携体制強化」は、役場内を差
してのことか。
(事務局)

礼文町内の連携体制強化とは、礼文町が中心となり、町内外に限らず様々な団体と連携して
進めるということである。
[普及啓発・教育]
(佐藤委員)

「礼文島のいきものつながりの発信」の中の「島民行動リスト」とはなにか。
(事務局)

いきものつながりを進める中の多様な主体の一つとして島民がおり、
「島民行動リスト」は、
普段の生活の中で、生物多様性の保全についてできることを示そうとするものである。
(河原委員)

「体験プログラムの充実」は、
「礼文島のいきものつながりの発信」の 1 項目としてはどう
か。
[持続可能な礼文島いきものつながりの恵みの活用]
(佐藤委員)

「低炭素社会の構築・循環型社会の構築との統合的な取り組み」について、生物多様性との
関連は具体的にどういったことか。環境問題全般としては重要なことであるが、恵みの活用
の項目としているので、基本施策自体を「持続可能な社会をめざして」にするとよいのでは
ないか。
(事務局)

「循環型社会」という言葉は、生物多様性と同じ階層の大きな概念である。この項目で扱う
14
- 55 -
には異質である。基本方針を述べる中で、「礼文島いきものつながり」を考えるにあたって
は、低炭素社会や循環型社会にも目を向けるべき、という趣旨の文章を記述する、という方
法も考えられる。
(八巻委員)

「統合的な取り組み」と表現されており、低炭素社会や循環型社会との連携を図るという意
味であり、直接的に低炭素社会や循環型社会の構築に向けた取り組みを実施することを意図
したものではない。したがって、項目としては残しておいてもよいのではないか。
(河原委員)

「いきものつながりに配慮した漁業・水産業(育てる漁業)の推進」は、
「水産業と観光産
業の連携を柱とした地域の活性化」の 1 項目としてはどうか。
(愛甲委員)

「認証制度の推進」に関しては、制度であるから「取り組みを実施・継続するためのしくみ
づくり」の項目として扱ったほうがよい。
(佐藤委員)

「暮らしの中での恵みの活用」は「普及啓発・教育」のいずれかの項目に統合できないか。
(愛甲委員)

「暮らしの中での恵みの活用」は項目として残しておかないと、観光業や漁業に関わりのな
い島民にとって全く関係のないものになってしまう。

「暮らしの中での恵みの活用」に該当する内容はもっとあるのではないか。
[4-2. 重点施策(アクションプラン)]

事務局作成の資料「礼文町いきものつながりプロジェクト
重点事業案」をもとに意見交換
を行った。
(事務局)

重点事業の選定の基準は 5 つで進めている。調査研究、保全回復再生、しくみづくり、普及
啓発教育という基本方針の項目に沿って、2 から 4 つ程度あげている。

事業としては、それぞれ単独で進めるものだけではなく、組み合わせて進めていくものもあ
るように思う。

基本方針の項目順に記載しているが、記載する項目の優先順位を検討しなければならないと
考えている。またそれぞれについて、どこまで掘り下げていくかは次の課題かと思う。

はじめに『礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』を設立し、しくみをしっかりつ
くった上で、保全及び恵みの活用に関する活動や普及啓発活動といった実際の取り組みを進
め、推進会議という母体が包括して一つの方向性を示しながら進めていく、というイメージ
をもっている。そのような考え方で問題がないか、ご意見を伺いたい。
(佐藤委員)

「1.
調査研究」のモニタリング調査は、決まった地点で継続に重点をおいており、一方で
現状調査はあらゆる生物相で不足しており網羅的・全般的に調査することである。両者の視
点が違うので、データベース作成とモニタリングの間に「生物多様性現状調査」といった項
目を追加すべきである。
15
- 56 -

「2.
保全回復再生」のレブンアツモリソウの保護増殖事業の継続だけでなく、希尐植物全
般を対象に記載した方がよい。
[5-1. 推進体制]
(事務局)

戦略の推進について、礼文町民の自主的な行動・参加も促したいと考えている。

各主体の役割について、ここまでならできる、やろうと思っている、といったことを書いて
いただけるとよい。理想として、どのような主体がどのような関わり方をするべきかについ
て記載したいと考えている。
(愛甲委員)

アクションプランとの関連性を見直し、それぞれの主体がどのようなアクションプランに関
わりがあるのかに合わせて整理するとよいのではないか。
(河原委員)

「3.
取り組みを実施・継続するための仕組み」の中の文章において、「一般町民も参加で
きる緩やかな連携組織を目指します」とあるが、「緩やかな」の意図するところは何か。
(事務局)

緩やかな連携組織というのは、例えば一般町民も参加できるような開かれた会議などを意味
する。
(佐藤委員)

③
組織、主役の連携が必要であり、礼文町で実際効果があるように作成していくのがよい。
その他
(事務局)

3
次回の検討委員会は 2 月上旬に札幌で開催することを予定している。
副委員長挨拶

宮本副委員長より閉会の挨拶。
以上
16
- 57 -
平成 23 年度
第 5 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
日時
場所
平成 24 年 2 月 7 日(火曜日)
午前 9 時 00 分~
環境省北海道地方環境事務所
札幌第一合同庁舎3階
1. 委員長挨拶
2. 議題
① 第4回検討委員会の内容確認
② 戦略案について
③ その他
3.委員長挨拶
(産業課)
- 58 -
平成 23 年度
第 5 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会
■日
時
平成 24 年 2 月 7 日(火)9:00~15:00
■場
所
環境省北海道地方環境事務所会議室(札幌第一合同庁舎 3 階)
■出席者
議事概要
<委員>
宮本委員、河原委員、高橋委員、杉浦委員、愛甲委員、佐藤委員、庄子委員、
八巻委員
<オブザーバー>
北海道地方環境事務所
北海道宗谷総合振興局
<事務局>
礼文町産業課、株式会社ライヴ環境計画
1
副委員長挨拶

宮本副委員長より挨拶。
2
議題
①
第 4 回検討委員会の概要
②
戦略案について

「礼文島いきものつながりプロジェクト(案)(2012.1.27 版)」の構成にそって、別途配布
した佐藤委員、河原委員、村上委員の修正文案の内容を確認しながら、各項目の内容につい
て意見交換を行った。(※佐藤委員、河原委員、村上委員の修正文案の内容が承認されたも
のについては、本議事概要への記載を省略する。)
(佐藤委員)

この戦略は生物多様性に関する記述であるため、生物の名称には正式名称を用いるべきであ
る。通称名称を記載する場合は、通称名称と正式名称の記載順序を統一したほうがよい。

コラム内の文章は、1 文字字下げとした方が読みやすい。
[2. 礼文島における生物多様性の現状と課題]
[2-1. 礼文島の生物多様性の成り立ち]
[2-1-1. 概要]
(佐藤委員)

6p.の上の図の「亜高山・高山性の自然草原」は「亜高山・高山性の植物群落」としたほう
がよい。

6p.の上の図の西海岸と東海岸を分ける赤い線については、北部の境界線を東寄り(「浜中」
の文字のあたり)にしたほうがよい。礼文岳については、西海岸に含まれるように表現され
1
- 59 -
ていたほうがよい。
[2-1-2. 礼文島の環境基盤]

7p.の右上の図にある「広ぼう」という言葉は一般的に使われるものではない。「幅と長さ」
としてはどうか。
(河原委員)

11p.の「コラム:礼文-樺戸帯」について、礼文層群と礼文-樺戸帯の関係がはっきりと示
されていないように思う。これら全体が礼文-樺戸帯と呼ばれるものである、というような
文章を加えてはどうか。

「コラム:礼文-樺戸帯」内の図について、着色されている部分の凡例を併記するか、着色
部分を消去して地質帯区分を示す線のみ示す、といった表現とすべきである。
(八巻委員)

11p.の「コラム:礼文-樺戸帯」について、図を見ると幅 10 数 km ではなく、数 10km ある
ように見える。数値を再確認すべきである。
[2-1-3. 礼文島のいきものつながりを構成する要素]
(佐藤委員)

17p.で用いられている「分布の拡大」といった表現に違和感があり、「生息地の拡大」とい
った表現に修正した。
(高橋委員)

「分布」という言葉は、動物と植物では使い方・ニュアンスが異なるのではないか。動物は
移動能力が強く、全体を「分布」と扱うようにしているのではないか。
(事務局)

佐藤委員の指摘・修正の内容がわかるように見え消しの状態で、東京農業大学・小林准教授
に確認する。
(河原委員)

21p.の「原名亜種」については、杉浦委員と相談の上、脚注に説明を加えてはどうか。
[2-1-4. 自然環境保全にかかる区域等の指定]
(佐藤委員)

22p.「自然環境保全にかかる区域等の指定」とあるが、
「自然環境保全にかかる」
、という表
現は適当か。

「区域」という言葉は一般的に使われるものなのか。「地域」と表現するものもある。どの
ような表現が適当か。
(八巻委員)

日本では「区域」
「地域」の用法が統一されていないのではないか。英語であれば”area”が
通常であるが、日本語では「保護区域」、「保全地域」、「保全区域」などと変換されており、
乱用・混用されている。
2
- 60 -

「保護地域」と表現してしまうと、「保安林」等なじまない項目もある。

「生物多様性保全に関わる地域指定」としてはどうか。
(宮本委員)

表の中に礼文町の総面積に占める割合を示してはどうか。
[2-2. 礼文島の生物多様性の恵み]
(佐藤委員)

24p.の図について、
「文化的サービス」の例として挙げられている「高山植物や美しい景観
を楽しむトレッキング」は、審美的な要素としての「高山植物と美しい景観」
、レクリエー
ション的な要素としての「トレッキング」に分割してはどうか。

24p.の図に挙げられている生物名がひらがな表記となっている。カタカナ表記に統一したほ
うがよい。
(河原委員)

24p.の図のタイトルは、
「礼文島の生態系サービスの例」の“の例”を削除し、
「礼文島での
生態系サービス」としてはどうか。
[2-2-1. いきものつながりの恵みと産業]
(佐藤委員)

26p.の 6 行目にある「景勝地」という表現に違和感があったため、
「景観」とした。
「自然景
観」と表現したほうがよいか。
(河原委員)

「景勝」という表現の中には価値観が含まれている。
(八巻委員)

ここでは “観光的な資源として価値がある”ということを含めた情緒的な表現が適してい
ると考える。したがって「景勝地」と表現したほうがよいのではないか。
[2-3. 礼文島のいきものつながりに迫る危機]
(佐藤委員)

32p.の図について、
「草原や森林の荒廃によるササ地化」となっているが、
「ササ地化」もし
くは「ササの侵入」と表現してはどうか。
(河原委員)

森林もササ地化が進んでいることは事実かもしれないが、ここでは“お花畑の様相”を例に
挙げて表現しようとしている。そのことを考えると、森林を含める必要はないと思われる。
「ササの侵入」と表現すればよいのではないか。
(佐藤委員)

「お花畑の様相を失う」となっているが、お花畑が本来もっている様相を失うことと、お花
畑そのものが失われてしまうことの 2 つを表現するために、「お花畑の荒廃と喪失」として
3
- 61 -
はどうか。
[2-3. (4)その他の影響]
(佐藤委員)

40p.の 2)の 2 段落目に対する河原委員修正文案をもとに、「魚介類や鳥類など野生生物の誤
飲による影響、漂着物に含まれる合成化学物質(環境ホルモン)による野生生物への影響、
生態系の撹乱、ひいては人体への影響が懸念されます。」と修正してはどうか。
[2-4. これまでの取り組み]
(八巻委員)

41p.の前段の文章 2 段落目について、
「行政主導ではなく、~~~。」となっているが、市民
参加で行政は責任を取らない、という姿勢と読み取られかねない。ガバナンスの考え方から
は、礼文町だけでなく環境省、林野庁、北海道などを含む関係行政機関が先頭にたって住民、
NPO、研究者と連携し協力しあう、という構図が望ましい。したがって、「生物多様性保全
のために今後の活動では、ここに策定する生物多様性地域戦略を核にして、関係行政機関だ
けでなく、住民や NPO、研究者などと一層連携し協力しあうしくみづくりを構築すること
が不可欠です。」としてはどうか。
[3. 礼文島いきものつながりプロジェクト]
[3-2. 基本方針と基本施策]
(河原委員)

「検討します」という表現は、施策等を考えた後その施策を実行する場合もあれば実行しな
い場合もある、ということを指す。担保されていないものを明確に示すのは難しい、という
面もあるが、「施策」という以上は、本来であれば、目標に向けて実行する、という内容や
書きぶりとすべきである。
(佐藤委員)

「努めます」という表現を用いるにしても、行政として物事を先に進めるのだ、という意思
表示となるよう記述することが必要である。
(事務局)

目指すべき姿について記述するのであれば、「努めます」・「推進します」という表現のほう
が明確となる。

施策全般にわたって、
「検討します」という表現は基本的に用いないこととする。
「努めます」
を先に進める方向の最低ラインの表現とし、「推進します」・「実施します」などの表現を用
いるよう、事務局で再整理する。
[基本方針 1]
(佐藤委員)

基本施策 1-1 について、生物種だけでなく、生態系の把握についてもふれるべきである。

「適切な取り組みを実施するための基礎データとなる、動植物リスト(礼文島いきものリス
4
- 62 -
ト)の作成(礼文島独自のレッドデータブック、外来種含め)や生態系の現状把握を推進し
ます。また、生物多様性の変化を捉えるために必要なモニタリングをはじめとする各種デー
タの蓄積と活用に努めます。さらに、漁業や観光といった生物多様性の経済的側面に関する
調査を実施するなど、現段階では十分ではない様々な現状の把握に努めます。
」としてはど
うか。
[基本方針 2]
(河原委員)

1 段落目の文章が長いように思う。佐藤委員の修正文案の内容をふまえ、文章を分割しては
どうか。
(佐藤委員)

「森林や草原は、水源かん養機能や土砂流出防止機能など多くの公益的な機能をもっていま
す。これらは、
川を通じて栄養塩類等を海へ供給し、海藻や植物プランクトンを育てるなど、
海の生物多様性に寄与しています。したがって、森・川・海の生態系のつながり全体を適正
に維持するように、生物多様性の保全に取り組んでいかなければなりません。
」としてはど
うか。
(河原委員)

佐藤委員の修正文案の 2 段落目について、「限られた生育地」というのは面積だけでなく、
環境も含まれると考えられるため、「小面積の」という表現を削除してはどうか。
(佐藤委員)

保全・回復・再生とあるが、
「回復」をどのように位置づけるべきか。「回復」とは「再生」
に含まれるものと考えられるため、「回復」という表現は不要ではないか。
(河原委員)

「再生」は失われてしまった箇所に新たに行うという印象、対して「回復」は弱っている・
数が減っているなど务化した植物群落を元の状態に戻す、といった印象がある。
(環境省)

サロベツの自然再生においては、「回復」は弱っている箇所を手助けして元に戻す、「再生」
は既に失われてしまった箇所を元に戻す、としている。回復と再生には、自然の回復力を促
すという趣旨も含めている。したがって、保全・回復・再生という並びに違和感はない。
(八巻委員)

佐藤委員の修正文案の 3 段落目「従来は生物多様性保全と関係が意識されなかった低炭素社
会の構築・循環型社会の構築」の部分について、文章のとおりだと思うがネガティブな印象
を受ける。「生物多様性の保全につながる環境負荷の小さな社会、低炭素社会・循環型社会
の構築」としてはどうか。
(佐藤委員)

基本施策 2-1 について、種の保存の基本を考えた場合、まず生息域内保全が重要である。加
えて生息域外保全を行う、とすべきである。
5
- 63 -
(高橋委員)

生息域内保全が基本ではあることは間違いない。加えて、将来的な高山植物培養センターの
機能を考えると、レブンアツモリソウに限らず礼文島内固有の失われる可能性のある遺伝子
をレスキューし、保護増殖技術を確立・確保しておく視点も重要ではないか。
(河原委員)

基本施策の中では、「生息域内保全を基本とし、生息域外保全を含めた保護対策を講じてい
く」と位置づけておけば十分である。生息域内保全及び生息域外保全の具体的な内容・方策
については、高山植物培養センターを活用する視点も含めて、アクションプランでの位置づ
けとしておくのが適当ではないか。
(事務局)

礼文島版レッドデータブックが作成されれば、アクションプランの 1 つの方向性として「種
の保存」が位置づけられるのではないか。
(河原委員)

基本施策 2-2 について、
「フェリーターミナルや自然歩道入口における靴底付着物除去マッ
トの設置などの対策」と記述されているが、アクションプランとして位置づけるべき内容で
はないか。
(佐藤委員)

基本施策 2-5 について、
「区域の適正な範囲」の表現の意図がよくわからない。
(事務局)

国立公園区域の拡大・縮小という問題ではなく、島の産業や生活との関係もふまえた、本来
あるべき範囲を設定してほしい、という意図があり、
「区域の適正な範囲」という表現をさ
せていただいた。
(環境省)

国立公園は 5 年おきに見直しを行い、区域の拡張等も検討することになっている。
「法令等
に基づく適正な管理・保全を行う」の文章の中には、国立公園区域の見直しの手続きも含ま
れていると捉えられる。
(八巻委員)

『礼文島いきものつながりプロジェクト』を推進するために、財務省所管地などを環境省に
移管して国立公園として管理していくようなことまで視野に入れているのであれば、区域の
適正な範囲に関して記述されていたほうがよい。
(佐藤委員)

区域の変更や再検討、見直しといった視点の記載は必要である。
(事務局)

国立公園を例に挙げると、国立公園の範囲そのものだけでなく、礼文島の自然に見合った区
6
- 64 -
域区分(地種区分)となっているかどうか、という視点もあるのではないか。制度や土地を
所管する関係機関が、礼文島の自然の現状に合った保護地域の範囲や区域設定となっている
かどうかを検証し、合っていない箇所があれば合わせる、といった取り組みも必要と考えら
れる。
(八巻委員)

『礼文島いきものつながりプロジェクト』を推進するために必要であれば、保護地域の範囲
やその区域区分の適正化を図る、という意味合いを含めることになるのではないか。
(事務局)

基本施策 2-5 については、引き続き委員のみなさんに修正文案の作成をお願いしたい。
[基本方針 3]
(河原委員)

前段の文章 1 段落目の文意が取りにくい。「それぞれの立場で」重要性を認識する、という
より共通の認識をすることが必要ではないか。
(八巻委員)

文章中の「多様な主体がそれぞれの立場で礼文島の生物多様性の重要性を認識した上で」は
「多様な主体が礼文島の生物多様性の重要性を認識した上で」としてはどうか。
(佐藤委員)

文章中の「それぞれの役割に応じた取り組みを主体となって進めていく必要があります」は
「それぞれの役割に応じて取り組みを進めていく必要があります」としてはどうか。
[基本方針 5]
(河原委員)

基本方針 5-2 について、
「地域ブランディングに有効な情報の発信と新たな活用」とあるが、
企画・開発することと情報発信は別の取り組みではないか。企画・開発することと情報発信
をすることを区別した文章とすべきである。
(佐藤委員)

生物多様性を守ることが、結果的に観光の資源になるなどの地域活性化につながる、という
考え方を示すことができるとよい。
(事務局)

基本施策 5-2 については、引き続き委員のみなさんに修正文案の作成をお願いしたい。
[3-3. 重点施策(アクションプラン)]
(事務局)

現状把握のための調査やモニタリングは、ある目的を達成するための 1 つの重要な手法であ
る、と認識している。物事を判断するための情報を集めるために実施して当たり前のもので
あり、調査研究やモニタリングをアクションプランの 1 つとして据えるべきか、アクション
7
- 65 -
プランを推進する上での前提として扱うべきか、ご意見を伺いたい。
(佐藤委員)

戦略本文におけるここまでの記述の中で現状把握が不足していることを述べてきた。国民の
共有財産として礼文町の生物多様性をどのように守るか、という観点に立つと、やはり現状
把握が不足している。礼文町だけが実施するということではなく、現状把握はアクションプ
ランの 1 つとして位置づけるべきである。
(八巻委員)

礼文島の生物多様性に関して不明なことがまだ多くある。基本施策を実施するために必要な
データ・情報を集めるための行動の 1 つとして調査研究を位置づけるのであれば、現状把握
はアクションプランとして位置づけるべきである。ただし、調査の位置づけや目的を明確に
することが必要である。
(河原委員)

現状把握のための調査が生物多様性を保全・管理するために必要なこと、というのは、これ
までの記述からも自明である。
(佐藤委員)

アクションプラン 1 は「
『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設立と
事業推進」となっている。この「事業推進」の内容として、生物多様性の現状把握とモニタ
リングの企画・実施に関する内容が含まれていれば、アクションプラン 2 で多くを述べる必
要はないと思う。アクションプラン 1 もしくは 2 において、生物多様性の現状把握とモニタ
リングを位置づけるべきである。
(河原委員)

アクションプラン 1 は、組織づくり・体制づくりについての内容とすべきであろう。
(佐藤委員)

アクションプラン 1 が組織について、ということであれば、アクションプラン 2 に「生物多
様性の現状把握とモニタリングの企画・実施」に関する内容を位置づけることになる。
[アクションプラン 1]
(河原委員)

緩やかな連携組織となっているが、そのような組織で企画や主導体制ができるのか、という
のは大きな問題である。
(事務局)

これまでの取り組みは、行政が主体であり主導であった。今後は参加する個人・組織もそれ
ぞれの責任・使命を負って集まっていただく形を目指すことになるだろう。その組織の性格
を考えた場合、大上段に構えたような組織とすれば、個人の参加をどのように考えるか、そ
もそも組織への参加がなくなってしまうのではないか、といった懸念から、「緩やかな連携
組織」という表現とした。一方で、河原委員のご指摘のとおり、「緩やかな連携組織」で組
織の立ち上げが可能なのか、参加者の責任はどの程度なのか、企画力を発揮できるのか、と
8
- 66 -
いった懸念も感じている。

平成 24 年度初めから、まずは関係行政機関を中心にどのような組織とすべきか、という議
論を始めようと考えている。
「礼文島高山植物保護対策協議会」を発展的に解消してこの推
進会議につなげる、との考えをもっている。
(八巻委員)

組織づくりを急ぐと不備が生じるため、時間をかけてつくりあげていくべきである。

これから立ち上げようとする組織では、異なる利害をもつ主体の調整をしていくことになる
ため、プロジェクトを推進する方向性を管理する事務局体制をつくりあげることが重要であ
る(自己組織化)
。緩やかな組織であると、何を実施しているのかわからなくなってしまう
だろう。

礼文町だけでなく、コンソーシアムのような形での体制も考えられる。

多様な主体の連携の中では、礼文町・国・市民・研究者、それぞれ実施できることは異なる。
今後、関係者の間で、それぞれの役割をふまえた組織づくりについて話し合いを行うべきで
ある。
(環境省)

町役場や島の NPO の方とお話をする中で、組織づくりにおける礼文島ならではの難しい問
題があるように感じている。

民間では多様な人の考え方をまとめることは難しく、しかるべきタイミングでの行政主導の
必要性を感じている、とのお話がある。一方で、行政が突出してしまうと今までと変わらず、
上からの押さえつけが強くなり、新たな可能性を引き出すことができない現状と、そこから
なかなか脱することができない、という面もある。

将来的に、町民や NPO が主体となっていくことが望ましいと考えられるが、短期間での実
現は難しい。いつまでマネジメントをするべきか、将来的に町民が主体となるのか、あるい
は将来的にも行政主体としていくのか等、新しい組織のあり方を決めるためには、長期的な
目標を掲げた上で、目標に至るプロセスを話し合う必要がある。
(八巻委員)

礼文町や関係行政機関等が突出するということではなく、新しく作られるであろう“会議”
が主導する、
という形がよい。
各主体が参画する会議の場で熟議して決めたルールに基づき、
得意・不得意に応じた役割分担をしながら、組織的に進めていく形である。このような形を
視野に入れて検討していく必要がある。

今までこのような形での組織づくりの成功事例はなく、確立することができれば「礼文モデ
ル」とも呼べるものになる。
(佐藤委員)

観光業、漁業とも生物多様性の恩恵を受けている産業である。これらの産業の関係者も含め、
関係者が一同に会して礼文島らしさや礼文島の魅力を常に話し合う場が常に必要である。そ
のような場がなければ、プロジェクト全体が進まないだろう。

一方で、財源の確保や役割分担等実質的な活動をする合議体も必要である。
(事務局)
9
- 67 -

議論の内容から、「緩やかな連携組織」の「緩やかな」は削除する。
[アクションプラン 2]
(佐藤委員)

見出しの「希尐植物の保全・再生」は「生物多様性の調査・保全・再生」とすべきである。
(河原委員)

アクションプランの中では植物しか扱われていない。植物以外の調査研究が不足している項
目の底上げを図るアクションプランの内容とすべきである。

希尐植物は別格として扱っても良いのではないか。単にリストを作るだけではなく、個体数
などの量に関する調査も必要である。それに合わせて絶滅の危険度を評価することも必要と
なる。その他に、不足している生物相の調査を実施する、というような記載方法ではどうか。
(佐藤委員)

「レブンアツモリソウ保護増殖事業の継続」は「レブンアツモリソウ保護増殖事業の継続と
その他の希尐植物の生息域外保全」とし、高橋委員が発言していた高山植物培養センターを
活用した遺伝子レスキューのような内容も含めてはどうか。この部分については、文案を再
検討する。

「ササの拡大抑止対策」について、ササには自然植生もあり、「ササ」と一括りにして対策
を考えることは危険である。それぞれの箇所におけるササの侵入による変化を証明する必要
がある。

サロベツでは排水して乾燥したためササが侵入するようになった。また、五色ヶ原では以前
に比べ雪解けが早くなり、地形的に凸で雪が尐ないところ、雪が早く溶けるところから侵入
しやすい状況がみられる。

礼文島においては、高山草原にササが侵入したことを証明できる場所であれば、刈り払い等
の手を加えてもいいと判断できる。一方、礼文島の東海岸では植林事業が実施され、稜線近
くまで筋刈りが行われているが、筋刈りした箇所には帰化植物が侵入し、西海岸の草原に侵
入する帰化植物の温床のようになっている。このような場合はササで覆われている方がよい
と考えられる。したがって、風の当たらない箇所だけで森林を回復させるのはよいが、それ
以外の箇所でササを刈り払うのは危険な場合もある。

桃岩から元地灯台の間などで小規模に試験的にササを刈り払ってみて、イブキトラノオ等の
自然草原に回復していくかどうか、帰化植物が侵入しないかどうかを確認する等、小面積で
の試験研究を実施する必要がある。もう 1 つはレブンアツモリソウ自生地のあたりであるが、
元々畑や草原であった箇所にササが侵入してきている。ササを刈り払って帰化植物は侵入せ
ず、レブンアツモリソウの数が増えてくれるとよい。局所的に小規模な試験研究を行い、目
的を明確にすることから始めるササ対策としたほうが無難と考えられる。

風向きによっては刈り払った後に侵入してくる植物が異なると考えられる。東向きの箇所で
は帰化植物が侵入しやすいと思われるが、西向きの箇所では風が吹き付けること等によって
高山植物が回復するかもしれない。
(河原委員)

ササの拡大抑止対策については、どの程度の面積のササを刈り払うと帰化植物が侵入する可
10
- 68 -
能性があるか、効果的な刈り払いの頻度や時期等に関する基礎試験が必要な段階である。試
験的な部分や技術開発的な部分の位置づけを含めるべきである。
(事務局)

アクションプラン 2 全般について、引き続き佐藤委員に修正文案の作成をお願いしたい。ま
た、
「ササの拡大抑止対策」については、試験研究の視点を含めて河原委員に修正文案の作
成をお願いしたい。
[4. 戦略の推進]
[4-1. 推進体制]
[4-1-1. 『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設立]
(事務局)

佐藤委員の修正文案について、2 段落目に「順応的管理」についての解説が記載されており、
事務局が作成した原案では表現しきれていなかった非常に重要な考え方が含まれている。し
かし、
「
『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設立」の項目で記載す
るより適した項目があるように感じている。例えば、既に順応的管理について触れている「基
本方針 2」で、本文中に記載するもしくはコラムとして扱う形はどうか。
(佐藤委員)

作成した「順応的管理」に関する文章は、この部分に記載すべきではない内容と認識してい
るが、事務局原案の文章中に「順応的管理」という表現があったため、あえてこちらに記載
した。真の意味での順応的管理とは言えない場面で順応的管理という言葉が用いられるよう
になっているためである。事前の十分な現状把握と予防原則による予防策を講じることが基
本であり、本来の順応的管理にはこの考え方が含まれている。
(河原委員)

本来の順応的管理には、事前に仮説検証があり、そのためのモニタリングを実施して検証す
るというサイクルがある。本当に順応的管理を行う場合には、通常よりも費用がかかり、常
設的な委員会を開き、常に検討していくことが必要となる。
(佐藤委員)

この文章では、事前には現状把握を行い、予防原則に基づく各種対策を検討し、事前にも事
後にも真の意味での順応的管理を行う、という内容を記載しておけばよいと思う。

「順応的管理」に関する文章は、「予防原則と順応的管理」というタイトルで、しかるべき
箇所にコラムとしては記載してはどうか。
(事務局)

佐藤委員に作成していただいた修正文案 2 段落目の順応的管理に関する文章はコラムとし
て扱うこととし、
「基本方針 2」の中に配置する。
[4-1-2. 各主体の役割]
(佐藤委員)
11
- 69 -

本来は積極性が現れる表現を用いることが望ましいが、財政との関係もあり書きぶりを工夫
する必要がある。
(八巻委員)

この戦略は、
“礼文島における”戦略であり、対象とする範囲も具体的で、利害関係者・主
体も明確であることから、各主体が担うべき役割はほぼ共有されていると言える。したがっ
て相応の書き方があるだろう。
(佐藤委員)

国や北海道レベルでは、事務局原案に示されているような主体に分けて、それぞれの責務を
記述していくことになるが、礼文町の場合は、各主体の立場に応じた責任をもちながら、推
進会議の中で一同に集まって意見交換し、合意形成を図っていく、といった書きぶりのほう
がよいかもしれない。この項目の前段となる文章として、アクションプラン 1 に結びつく形
にすると具体的になる。
(宮本委員)

佐藤委員修正文案の「(1)町民」の文章の中で、
「地域に限られた固有種など」という表現が
あるが、礼文島の場合、固有種と呼ばれるものは尐ないと思うが。
(佐藤委員)

「地域に限られた固有種など」の部分を削除した方がよい。
(河原委員)

「
(3)事業者」について、観光業者を意識したような文章となっているが、事業者の中には
土木・建設業者やフェリー等も含まれる。「持ち込まない」ことに関する記述、ルールの遵
守といったニュアンスを加えたほうがよい。
[5-3. 財源の確保]
[5-3-2. 新たな財源確保の方策の検討]
(八巻委員)

1 つ目の項目について、4 行目の「国立公園や園路の「利用料・入園料」といった利用者へ
の直接負担、さらには、広く負担することのできる「入島税」「宿泊税」といった別立ての
財源確保を検討する必要があります。
」とあるが、「入島税」「宿泊税」を強調しているよう
にも読める。文章中の「さらには」という表現を「あるいは」としてはどうか。
[資料編]
(佐藤委員)

植物相のリストに学名を記載する必要があるか。植物相以外のリストには学名の記載はない。
(河原委員)

学名は記載したほうがよい。特に、外来植物の和名は確定していないものが多く、何を指す
のかがわからないものが多いため、学名を記載すべきと思う。
12
- 70 -
(佐藤委員)

学名を記載する場合、命名者は必要か。
(河原委員)

命名者も記載したほうがよいと思う。
(佐藤委員)

学名のチェック・修正を行うため、事務局から希尐植物及び外来植物リスト(学名付き)と
ともに、現在のリストで記載している学名の出典を教えていただきたい。

河原委員と高橋委員に学名の最終チェックをお願いしたい。
(河原委員)

外来植物について、通称として使われている名称をカッコ書きで記載したほうがよい。例え
ば、ヒレハリソウ(コンフリー)やオオアワガエリ(チモシー)等。

鳥類について、亜種だけ特出ししているところがあり、統一されていない印象である。

希尐植物や外来植物のリストとの統一感をもたせるために、鳥類についても学名を記載すべ
きである。学名は「日本鳥類目録改訂第 6 版」に拠ればよい。
(佐藤委員)

学名欄を設けるために、IUCN・種の保存法・天然記念物をまとめて備考欄とする等として
はどうか。
③
その他
(事務局)

今回の検討委員会での指摘内容を反映させた戦略案をできるだけ早く作成し、みなさんにお
配りする。その案に対する最終的な意見の集約等は 2 月 17 日を目処としたい。
3
副委員長挨拶

宮本副委員長より閉会の挨拶。
以上
13
- 71 -
3. 礼 文 町 生 物 多 様 性 地 域 戦 略 『 礼 文 島 い き も の つ な が り プ ロ ジ ェ ク ト 』
以下に、本業務を通じて策定した礼文町生物多様性地域戦略『礼文島いきものつながりプロジ
ェクト』を示す。
- 72 -
礼文町生物多様性地域戦略
礼文島いきものつながりプロジェクト
平成24年3月
礼
文 町
『礼文島いきものつながりプロジェクト』
目 次
本 編
1. 戦略策定にあたって ___________________________________________________________________________________ 1
1-1. はじめに ........................................................................................................................................................................................................... 1
1-2. 戦略の位置づけ.......................................................................................................................................................................................... 3
1-2-1. 戦略の位置づけ ................................................................................................................................................................................ 3
1-2-2. 対象地域 .............................................................................................................................................................................................. 3
1-2-3. 対象期間 .............................................................................................................................................................................................. 3
1-2-4. 推進体制 .............................................................................................................................................................................................. 4
2. 礼文島における生物多様性の現状と課題 _________________________________________________________ 5
2-1. 礼文島の生物多様性の成り立ち ........................................................................................................................................................ 5
2-1-1. 概要......................................................................................................................................................................................................... 5
2-1-2. 礼文島の環境基盤 .......................................................................................................................................................................... 7
2-1-3. 礼文島の生物多様性を構成する要素 ............................................................................................................................... 12
2-1-4. 生物多様性保全に関わる地域指定 .................................................................................................................................... 25
2-2. 礼文島の生物多様性の恵み ............................................................................................................................................................ 27
2-2-1. 生物多様性の恵みと産業 ......................................................................................................................................................... 29
2-2-2. 島の暮らしの中の生物多様性の恵み .................................................................................................................................. 33
2-3. 礼文島の生物多様性に迫る危機 ................................................................................................................................................... 35
2-3-1. 人間活動や開発による影響.................................................................................................................................................... 36
2-3-2. 人為的な持込みによる影響(外来種による影響) ........................................................................................................ 39
2-3-3. 地球規模の環境変動による影響.......................................................................................................................................... 42
2-3-4. その他の影響.................................................................................................................................................................................. 43
2-4. これまでの取り組みと今後の課題 ................................................................................................................................................... 46
2-4-1. 人間活動や開発による影響に対する取り組み ............................................................................................................... 46
2-4-2. 人為的な持込みによる影響に関する取り組み(外来種に関する取り組み)...................................................... 48
2-4-3. 地球規模の環境変動による影響に関する取り組み(低炭素社会構築に関する取り組み) ...................... 49
2-4-4. その他の影響に関する取り組み(海岸漂着ゴミに関する取り組み) ...................................................................... 49
2-4-5. 普及啓発・教育活動.................................................................................................................................................................... 50
2-4-6. 生物多様性の保全や解明に向けた取り組み .................................................................................................................. 51
3. 礼文島いきものつながりプロジェクト ______________________________________________________________ 53
3-1. 戦略のめざすところ ................................................................................................................................................................................. 53
3-2. 基本方針と基本施策 ............................................................................................................................................................................ 54
3-3. 重点施策(アクションプラン)............................................................................................................................................................... 61
4. 戦略の推進 ____________________________________________________________________________________________ 66
4-1. 推進体制..................................................................................................................................................................................................... 66
4-1-1. 『(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設立 .............................................................................. 66
4-1-2. 各主体の役割 ................................................................................................................................................................................. 67
4-2. 進行管理..................................................................................................................................................................................................... 69
4-3. 財源の確保 ................................................................................................................................................................................................ 70
4-3-1. 予算の確保....................................................................................................................................................................................... 70
4-3-2. 新たな財源確保の方策の検討 .............................................................................................................................................. 70
資 料 編
1. 礼文町生物多様性地域戦略策定の経緯等 _________________________________________________資料 1
1-1. 検討スケジュール ....................................................................................................................................................................... 資料 1
1-2. 検討体制......................................................................................................................................................................................... 資料 2
2. 参考資料___________________________________________________________________________________________資料 3
2-1. 気候 ................................................................................................................................................................................................... 資料 3
2-2. 地形 ................................................................................................................................................................................................... 資料 5
2-3. 礼文島の希少植物(絶滅危惧植物と主な高山植物) ............................................................................................. 資料 8
2-4. 外来植物......................................................................................................................................................................................... 資料 10
2-5. 鳥類 ................................................................................................................................................................................................... 資料 13
2-6. 生物多様性保全に関わる地域の指定状況 .................................................................................................................. 資料 18
2-6-1. 利尻礼文サロベツ国立公園........................................................................................................................................... 資料 18
2-6-2. 北海道指定天然記念物 .................................................................................................................................................. 資料 19
2-6-3. 保護林 ...................................................................................................................................................................................... 資料 20
2-6-4. 保安林 ...................................................................................................................................................................................... 資料 21
2-6-5. 北海道指定礼文鳥獣保護区........................................................................................................................................ 資料 22
2-7. 人口 ................................................................................................................................................................................................... 資料 23
2-8. 産業別就業人口 ......................................................................................................................................................................... 資料 24
2-9. 観光関連施設観光入込客数 ............................................................................................................................................... 資料 25
2-10. 礼文島で漁獲される魚種.................................................................................................................................................... 資料 26
2-10-1. 礼文島で漁獲される魚種 ............................................................................................................................................ 資料 26
2-10-2. 魚種別生産高 ................................................................................................................................................................... 資料 28
2-11. 土地利用 ..................................................................................................................................................................................... 資料 29
2-12. 検討過程で抽出された具体的な方策・アイディア .................................................................................................. 資料 30
1.戦略策定にあたって
1-1.は じ め に
自然の中には、实にさまざまな生き物がおり、それらは互いにつながりあって生きています。
このような「さまざまな生き物とそれらのつながり」は、いま、時代の新しい言葉として「生物
多様性」と呼ばれています。生物多様性は、生き物に多くの異なる種が認められること(種の多
様性)
、同じ種の中にさまざまな遺伝子が見られること(遺伝子の多様性)を意味するとともに、
多くの種類の生き物がつながりあった生態系として、陸上の森林や草原、海洋の大陸棚や深海な
ど、いろいろなタイプの生態系が認められること(生態系の多様性)を意味します。
野生の生物と自然な生態系は、人間が野生生物から選抜した農作物、園芸植物、薬用植物、家
畜、ペットなどの有用な生物、あるいは人間が創った人工林や農地などの人工的な生態系とは異
なって、一見すると、私たちの生活に何ら役立たないように考えてしまいがちですが、野生の生
物が絶滅し自然な生態系が尐なくなってきた現代において、それらの価値が改めて認識されるよ
うになっています。
生き物の異なる種や遺伝子は衣食住や医療のための資源を提供し、いろいろな生態系は私たち
の生存に欠かせない大気や水を供給するなど、ともに「自然の恵み」として私たちの暮らしを成
り立たせています。このような「自然の恵み」は、種や遺伝子については「資源的価値」、生態
系においては「生態系サービス」と総称されています。また、生き物の美しさやその暮らしぶり
は我々の心を豊かにし観光に寄与するほか、教育・文化面にも大きな貢献を果たしています。
1992(平成 4)年の地球サミットで提案された「生物多様性条約」において、生物多様性を保
全すること(保護・保存と賢明な利用の両立)は国際的に大きな流れになりました。それは、生
物多様性の衰退が資源の枯渇や地球環境の悪化として世界的な大問題とされてきたからです。日
本は、1993(平成 5)年に同条約を締約しましたが、その準備として前年の 1992 年に、生物の絶
滅や減尐を防ぐ国内法「種の保存法」を制定しています。1993(平成 5)年以降、我が国では、
生物多様性の保全策として、国家戦略の策定・改定、各種のレッドデータブック(絶滅しそうな
生物の目録)の作成、絶滅危惧動植物の保護増殖事業が続けられてきました。2010(平成 22)年
には、名古屋で開催された第 10 回生物多様性条約締約国会議において、日本は改めて、国内外
において生物多様性保全に努力することを約束しました。
2008(平成 20)年に制定された生物多様性基本法では、国の責務として生物多様性国家戦略の
策定やそれに基づく取り組みの推進を定めており、
『生物多様性国家戦略 2010』として 1993(平
成 5)年の条約締結以降 3 回目の改訂版を発表し、さらに 2012(平成 24)年に向けた改訂作業が
現在も続けられています。都道府県及び市町村に対しては、「生物多様性地域戦略」の策定を努
力義務として定めています。北海道は、これに基づき 2010(平成 22)年 7 月、
『北海道生物多様
性保全計画』を策定しています。
1
礼文島における人々の生活は、豊かな海から得られる豊富な水産物や、観光の基盤である美し
い風景・高山植物など、溢れるほどの自然の恵みによって支えられています。森が緑のダム(水
源かん養)の役割を果たすことによって、私たちは生存に必要な飲用水を森という生態系から確
保しています。森はまた、土砂流出防止の役割も果たし、森から流れ出す養分は沿岸域のコンブ
の成長を支えています。また、カモメが食べた海産物は糞となって、養分は陸に返されるように、
資源は循環されています。これら自然の恵みは、余りにも身近にあるため、無意識に過ごしてし
まいますが、すべてが「生物多様性の恩恵」であり、生き物のつながりの中で成り立っているの
です。
しかし、以上の恵みとなる生物多様性が損なわれると、私たちの生活基盤が揺らいでしまいま
す。礼文島においても、さまざまな人間の活動や地球規模での環境の変化等による様々な生き物
の生息地・生育地の破壊や、希尐な生物の採取(違法な盗掘や密猟、あるいは過剰な採取)、外
来種の拡大などによって種が絶滅あるいは減尐しており、これらに起因した元々の自然へ悪影響、
生物多様性の衰退が始まっています。このような状況において、将来まで持続して自然の恵み・
生物多様性の恩恵を受け続けることができるようにしなければなりません。そのため、礼文島ら
しい生活を発展させていくための取り組みとして、生物多様性の恩恵について深く考え、その維
持や保全を考えていく必要があります。
礼文島の暮らしや産業に豊かな恵みをもたらす生物多様性は、私たち島民の使命として、次の
世代に引き継いでいくべきです。これら礼文島の生物多様性を保全する取り組みは、北海道の市
町村の中で先行事例として、礼文島から発信することによって、他の市町村の取り組みへ広がっ
ていき、地域相互の強い連帯を形成することが期待されます。さらに、礼文島の生物多様性を保
全することは、北海道、日本、地球の生物多様性の保全につながり、広義には世界的な生物多様
性保全となるというグローバルな視点が重要です。地域から世界へ、逆に世界から地域へ、人々
の知恵が相互に刺激し合うことが期待されます。
生物多様性と地域の暮らし・産業は实際には強く結びついています。地域が安定的に発展して
いくための「
“生物多様性”について」自分たちはどのように行動することがよいのかを考え、
地域の活力の源として生物多様性を壊さず活用していくことを意識しながら、未来につながる取
り組みを考えていきます。
尐し聞きなれない「生物多様性」について、より身近に感じることができるよう、礼文島では
それを「礼文島いきものつながり」と呼ぶこととし、策定する生物多様性地域戦略を『礼文島い
きものつながりプロジェクト』とします。
2
1-2.戦 略 の 位 置 づ け
1-2-1. 戦略の位置づけ
『礼文島いきものつながりプロジェクト』は、生物多様性基本法第 13 条に基づいて定める、
礼文町における生物の多様性及び持続可能な利用に関する基本的な計画です。上位計画である
『礼文町総合振興計画』においても、まちづくりのテーマとして「豊かな自然を未来につなぐい
きいきとした元気な礼文づくり」を明記していることから、二つの計画間の整合・連動を図りな
がら、さまざまな施策において生物多様性の観点を意識した取り組みを総合的に推進していきま
す。また、島民を中心とする多様な主体(事業者・行政・NPO など)が島の自然を守り活かすこ
とを考え、この戦略を行動するためのガイドラインとして位置づけます。
生物多様性基本法
生物多様性国家戦略
調整
(生物多様性国家戦略2010)
礼文町総合振興計画
調整
(第5次新礼文町まちづくり総合計画)
礼文島いきものつながりプロジェクト
(礼文町生物多様性地域戦略)
整合
北海道生物多様性保全計画
[町の施策]
水
産
自
然
環
境
保
全
社
会
資
本
整
備
観
光
教
育
・・・
まちづくり
1-2-2. 対象地域
対象地域は、礼文町全域とします。また将来的には海洋の生物多様性保全に対する関心も高ま
っていることから、周辺海域も含めながら、関係の深い利尻島や北海道本島などとより広域での
連携も考慮します。
1-2-3. 対象期間
目標年次は、10 年後の 2021(平成 33)年度とします。概ね 5 年ごとに『礼文島いきものつな
がりプロジェクト』の効果・課題を検証し、必要な見直しを行います。
3
1-2-4. 推進体制
『礼文島いきものつながりプロジェクト』の推進のためには、町民を中心とする多様な主体(事
業者・NPO・教育機関・研究機関・行政など)が参画し、連携することが必要です。情報や意見
を交換しながら協力してプロジェクトを推進していくための組織として、礼文町民を主体とする
『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』を設置します。また、必要に応じて
島外の大学等研究機関や関係行政機関からのアドバイスを得られる体制を整備していきます
(「4-1. 推進体制」参照)
。
4
2.礼文島における生物多様性の現状と課題
2-1.礼 文 島 の 生 物 多 様 性 の 成 り 立 ち
2-1-1. 概要
礼文島の生物多様性は、自然草原、森林、湖沼・湿原、河川、海浜、藻場・浅海など自然な生
態系が多様に認められることと自然な生態系が島の大半を占めること、すなわち、生態系の多様
性の観点から大きな特徴が認められます。陸域では、上記の自然生態系のほかに、さらに耕作放
棄地や山火跡地、伐採跡地などの二次的な生態系や人工林、農地や市街地などの人工的な生態系
も見られます。そうした中で、礼文島では、500 種を超える維管束植物や約 300 種に及ぶ鳥類な
ど多様な生物種が生育・生息しており、このような種の多様性は、上述の生態系の多様性に支え
られています。
礼文島の西海岸では、砂礫や岩礫となりやすい脆い地質によって不安定な岩礫地や急峻な断崖
が形成され、そこに強い冬季季節風が吹きつけるため、亜高山・高山性の自然草原である「お花
畑」が成立します。この自然な草原生態系において、レブンアツモリソウなどの礼文島固有植物
や、道内で礼文島に限られるウルップソウのように著しい隔離分布を示す植物など、多くの希尐
植物が生育しています。一方、冬季季節風の風下側となる東海岸では、山麓にトドマツ林、山岳
上部にダケカンバ林が成立しており、西海岸とは異なる植生や生態系が認められます。
他方、海域の生態系では、特に浅海・藻場においてホッケやウニ、コンブなど海の幸が豊富で、
礼文島の基幹産業である漁業が成り立っています。
「第 5 回自然環境保全基礎調査海辺調査(藻
場)
」
(環境庁、1998 年)によると、礼文島を取り巻くように藻場が発達し、港湾・漁港周辺、河
口部等を除くほぼ全域の浅海に分布しています。いずれもコンブ場であり、リシリコンブ(だし
用昆布「利尻昆布」として広く知られる)が分布しています。このコンブ場を生息地としてウニ
類(エゾバフンウニ、キタムラサキウニ)が分布し、ウニ漁場が形成されています。この藻場・
コンブ場は、エゾアワビ、ナマコなどの有用魚介類の生息地としての機能も果たしていると考え
られ、沿岸、浅海域の生態系が良好な状態で維持されていると言うことができます。
このことについて、まず、陸域の自然生態系である森林から海域の藻場に栄養が添加されるこ
と、生態系同士の密接な関係が重視されます。また、礼文島を取り巻く海域では、暖流である対
馬海流と寒流のリマン海流が交錯するため、この海の生態系では、漁業資源を含んで海棲生物が
豊富に認められます。この海には、海棲哺乳類のトドやゴマフアザラシが来遊し、国際的に重視
される生物の保護と漁業資源食害の間の調整が必要になっています。
以上のように、気候、地形・地質などの非生物的な環境を基盤として、礼文島における生態系
の多様性が形成されており、それぞれの生態系が維持される中で種の多様性が存続可能となって
います。
5
図 礼文島の生物多様性の成り立ち(イメージ)
図 礼文島の生物多様性の成り立ち(模式断面イメージ)
亜高山・高山性の植物群落
ハイマツ低木林・ダケカンバ林
トドマツ林
※写真提供:環境 NPO 礼文島自然情報センター
6
2-1-2. 礼文島の環境基盤
(1) 位置・気候
礼文島は、わが国最北端の離島で、北海道本
島北端の稚内の西方約 50km の日本海上、北緯約
45°16′~45°30′、東経約 140°58′~141°
04′に位置します。その東南には、幅約 8km の
礼文水道をへだてて利尻島がそびえています。
周辺の海域には、南からの対馬海流(暖流)と
北からのリマン海流(寒流)が流れています。
地域の気候帯は、暖かさの指数(吉良 1948、
Warmth Index: WI)により、冷温帯(WI:45-85
度)
・亜寒帯(WI:15-45 度)
・寒帯(WI:15 度以下)
と規定され、垂直分布帯の山地帯・亜高山帯・
高山帯がそれぞれ上記の気候帯区分と同じ指数
によって規定されています。礼文島における暖
かさの指数は、札幌管区気象台編(1992)のア
メダス資料によると、船泊(標高 26m)で 53.3
度、最高峰礼文岳(490m)では 37.7 度、WI:45
度となる標高は約 302m と算出されます。
面
積
81.33km2
幅 と 長 さ
東西距離 7.9km、南北距離 29.8km
周
72km
囲
図 礼文島の位置・概要
以上のことから、礼文島は、水平分布から見て冷温帯の気候下にあり、垂直分布帯を合わせる
と標高約 300m を境にして低地が冷温帯・山地帯、高地が亜寒帯・亜高山帯の気候下にあると言
えます。
礼文島は日本の北端に位置していますが、低地の気候は、亜寒帯・亜高山帯や寒帯・高山帯に
達しておらず、低地から亜寒帯気候(WI:45 度以下)となる北海道東端の根室付近と比較して、
夏季に暖かい特徴があります。礼文島では4月、5月、そして9月の天候が曇天日数と降水量が
尐なく日照率が高くなって比較的安定しています。ただ、夏季の中で6月は、オホーツク高気圧
の影響によって曇天や雤天、霧の発生が多くなります。また、北海道本島の内陸部と比較すると、
冬季に極端な低温に達しません。以上の特徴は、礼文島が海に囲まれ、特に日本海を北上する対
馬暖流に影響されている理由が考えられます。
礼文島の降水量は、年間 945mm ですが、日降水量1mm が 10 日以上になる月は 10 月から4月
まで、
日降水量 10mm が3日以上になる月は9月から1月までであり、秋季と冬季に降雤が多く、
冬季に積雪が多い特徴があります。最深積雪は、礼文町史によると、2月と3月にそれぞれ 190cm
が記録され、日本海型の多雪気候を示しています。10 月以降になると大陸の高気圧に支配されて
気温が低くなり、12 月に入ると雪の降る日が多くなり、年内に根雪となります。
礼文島の気候で特筆される特徴は風の強さであり、年平均風速は秒速 4.7m に達しています。
4月から9月までの春季から秋季でも、月平均の風速が秒速 3.4~4.6m で、かなり強い風が吹き
ます。他方、10 月から3月までの秋季から冬季には、月平均で秒速 10m 以上の風速となる日数
が多く、特に 11 月から1月は秒速 15m を超えるほど強くなり、西ないし北西から吹き付ける冬
季季節風が激しい特徴があります。
7
西海岸の山稜や断崖付近では冬季の強風で積雪が吹き飛んでしまうため、植物は積雪による保
温効果を受けることができず、冬季の低温に直接さらされることになります。ウエンナイなどの
冬季季節風を直接受ける山稜部の西斜面では標高がわずか 200~300m 程度であっても、大雪山高
山帯と同様に、土壌の凍結融解によって生じる周氷河微地形の線状土が認められます。このこと
によって、上記の地域は、強風によって積雪が尐なくなり土壌が凍結するなど、高山風衝地と同
様な冬季の厳しい気候環境下にあることがわかります。
(2) 地質・地形
礼文島の地質は、主に、火山角礫岩や角礫凝灰岩、火山円礫岩などの火砕岩や火山性の砂岩や
礫岩からなる前期白亜紀(1億4千万年前~1億2千5百万年前)の礼文層群と、それらを覆う
頁岩、泥岩、礫岩、砂岩、凝灰岩、凝灰質砂岩・角礫岩などの新第三紀層からなります(長尾ほ
か 1963、池田・小松 1986)
。前期白亜紀の礼文層群は島の中央部の山地と西海岸(西上泊と元地
の間)、そして東海岸では手然から北端の金田ノ岬の間に分布し、新第三紀層は上記を除く北部
と南部の断崖を構成しています。これらはともに地表に破砕された砂礫や岩礫が多く不安定な環
境を形成しています。また、桃岩や海馬島、スコトン岬では上記の堆積層を貫いた火成岩の岩脈
として侵食に強い部分をつくっています。
礼文島では第四紀の洪積層(約 260 万年前~約1万年前)と沖積層(約1万年前以降)がわず
かにみられます。洪積層には北部と南部の海岸段丘が挙げられます。他方、沖積層には北部船泊
湾の海岸砂丘、その内側に形成された礼文島唯一の湖、久種湖と湖岸の湿原が挙げられ、礼文島
の沖積平野はほとんど久種湖周辺に限られています。
礼文島の地形は、最高峰の礼文岳(標高 490m)を除くと、
南部と中央部では標高 200~300m の山地が連続しており、東
側は海岸に向かって緩斜面が広がっていますが、西側では切
り立った断崖絶壁(海崖)が連なっています。他方、北部で
は凍結融解の周氷河作用を強く受けてなだらかな波状地形
を呈した丘陵が発達しています。しかし、海岸線に平坦地は
尐なく、全体に緩傾斜となる東側でも海岸には段丘崖などの
西海岸の断崖(海食崖)
急斜面が見られます。
河川は、以上の地形的な特徴に支配されて、北と東に向かって流れる場合は比較的流路が長く、
西に流れるものは流路が短く、海岸の断崖から滝となって落下しています。
礼文島の地形は、西側が急峻な断崖、東側が緩斜面と段丘崖となり、また内陸部分はほとんど
山地です。そのため、利用可能な平坦地は少なく、市街地・住宅地は海岸線や一部の川の流域に
あります。道路は、主要道道礼文島線が東海岸を南北に走り、一般道道 3 路線(元地香深線、船
泊港利札公園線、礼文空港線)や町道がこれに接続して、島の道路網を形成しています。急峻な
地形が連続する西海岸には、住宅地はもちろん車両でアクセスできる箇所が限られています。
8
図 礼文島の地質
※「20 万分の 1 数値地質図幅集「北海道北部」
.数値地質図 G20-1」
(産業技術総合研究所地質調査総合センター)収録
地質図幅「礼文島」
(北海道開発庁、昭和 38 年)より
9
図 礼文島の地形
10
礼文-樺戸帯
礼文島の地質は、北海道全体の地質構造発達史の中で、前期白亜紀という古い地質年代に形
成され、相対的に新しい北海道胴体部の地質と大きく異なっています。礼文島や樺戸山地を経
て苫小牧・鵡川付近に至る幅数 10km の地帯は、「礼文-樺戸帯」と呼ばれ、北方に向けては
サハリン南部と直接つながり、道内では、西側の東北日本の延長である渡島帯と、東側の北海
道中央部の西半分となる空知-エゾ帯を境界づけています。
前期白亜紀に、渡島帯はアジア大陸の東縁に位置しており、その下に古太平洋が東から沈み
込んでいました。その沈み込みによるマグマ活動によって、大陸の東側の浅い海で海底火山活
動(一部は陸上の火山活動)があり、その結果が前期白亜紀の礼文層群(火山岩類)となりま
した。新第三紀には、そこが陸になって侵食されましたが、その後再び海になり、現在見られ
る新第三紀層が堆積しました。これら全体が「礼文-樺戸帯」と呼ばれています。
※独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)北海道センターホームページ掲載図より作成
http://staff.aist.go.jp/ohta-e/geomap/geozone.htm
<参考文献>
池田泉・小松正幸 1986. 礼文島の前期白亜紀火山岩類. 地団研専報 31 号(北海道の地質と構造
運動), 51-62 頁. 地学団体研究会.
長尾捨一・秋葉力・大森保 1963. 5万分の1地質図幅説明書「礼文島」. 43 頁. 北海道開発庁.
札幌.
11
2-1-3. 礼文島の生物多様性を構成する要素
(1) 植生
礼文島の植生は、前項で述べた気候や地質・地形の特徴に応じて、国内で特筆される大きな特
徴を示しています。
まず、森林植生は、山岳上部を被うダケカンバ林、谷間や山麓、東海岸に多いトドマツ林、な
らびに沢沿に成立するオノエヤナギ林の 3 タイプから構成されます(舘脇 1934)。これらは、ト
ドマツ林のようにサハリンまで、ダケカンバ林やオノエヤナギ林のように千島やカムチャッカま
で分布する亜寒帯・亜高山帯性の森林であり、礼文島が亜寒帯に近い水平的な位置にあることを
示します。しかし、亜寒帯性のダケカンバ林とトドマツ林に、ときにオニグルミ、ケヤマハンノ
キ、ミズナラ、オヒョウ、ホオノキ、ミヤマザクラ、エゾヤマザクラ、シウリザクラ、ヒロハノ
キハダ、イタヤカエデ、ハリギリなどの冷温帯性落葉広葉樹がわずかずつ混生しています。した
がって、礼文島の森林植生は、亜寒帯の特徴を強く示しながら、なお冷温帯の特徴を併せ持って
います。
次に、海岸植生は、砂丘・砂浜のハマニンニク群落、礫浜のハマハコベ群落、海岸断崖のアサ
ギリソウ群落ならびに海岸斜面のセンダイハギ群落の 4 タイプがあげられます。湖や池ではヒロ
ハノエビモ群落、湖畔にヨシが主体となる湿原植生が成立します。これらもまた、冷温帯から亜
寒帯にかけて成立する植物群落です。
礼文島の植生の大きな特徴は、決して寒帯・高山帯に達していないのに、高山植生・亜高山植
生が低い標高から成立すること、それらが礼文島に固有な植物群落であることです。まず、ハイ
マツ群落は、最高峰礼文岳や二並山など標高 400m ほどの山岳上部に成立し、西海岸のウエンナ
イ、アナマなどでは標高 100m 以下まで認められます。また、種々の高山植物群落(亜高山性の
草原を含む、舘脇(1934)のいう「御花畑」)は、西海岸、とりわけ海岸断崖とその周辺に成立
します(大場 1973、1976、Ohba1974、佐藤 2004、2007)。高山植生は、不安定な岩礫地でカラフ
トマンテマ、ヒメイワタデなどが主体となる荒原群落、冬季の風当たりが強烈な風衝地に成立し
レブンソウ、ウルップソウ、フタナミソウなどが主体となる風衝草原、同様な風衝地のガンコウ
ラン群落、冬季季節風の風下側、雪崩地に成立しレブントウヒレン、エゾイブキトラノオ(アミ
メイブキトラノオ)、レブンキンバイソウ(オクキンバイソウ)などが主体となる広葉草原(亜
高山高茎草原)などから構成されます。これらは、すべてが礼文島に固有な植物群落です。また、
ダケカンバ林から高山植生へ移り代わる範囲にチシマザサ群落とダケカンバ低木林が成立して
おり、後者の低木林もまた雪崩地の草本が混在するなど礼文島固有の群落です。
礼文島の高山植生と亜高山草原は、西海岸、特に断崖とその周辺に発達します。その原因とし
て、第一に、強烈な冬季季節風が挙げられます。西海岸の断崖や岩稜、あるいは山頂・尾根部で
は積雪が非常に尐なくなり、高山帯と同様な周氷河環境になり、冬季の低温が植物に直接影響し
ます。また、第二に、古い時代に海底噴火などによって形成された水冷破砕岩(集塊岩)など火
山砕屑岩が多いことは、周氷河環境も影響して極めて崩れやすい岩礫地を形成します。これら地
質・地形と気候の特徴に応じて、礼文島の高山植生が低い標高でも発達しているといえます。
12
ところで、礼文島は、かつて鬱蒼たる緑の島であったといわれますが、特に礼文島北部では今
から 100~110 年前の明治時代に発生した数度の山火事や伐採によって森林が失われ、その後、
おそらく冬季季節風が吹き抜ける風当たりの強さなどによって元の森林に戻らないまま、チシマ
ザサやクマイザサが優勢なササ群落に被われています。大きな山火事は、1898(明治 31)年の赤
岩、1902(明治 35)年のウエンナイ、1911(明治 44)年の船泊から内路・香深井にかけて、主
に礼文島北部で記録されています。
<参考文献>
大場達之 1973. 日本の亜高山広葉-低木群落. 神奈川県立博物館研究報告(自然科学), 第6号,
61-93 頁. 横浜.
大場達之 1976. 日本の亜高山広葉草原2. 神奈川県立博物館研究報告(自然科学), 第9号,
9-36 頁. 横浜.
Ohba, T. 1974. Vergleichende Studien ueber die alpine Vegetation Japans 1. Carici rupestris-Kobresietea
bellaridii. Phytocoenologia, 1(3): 339-401. Berlin, Stuttgart.
佐藤謙 2004. 礼文島の亜高山・高山植生(Ⅰ)2001-2003 年における植生の現状. 北海学園大学
学園論集第 119 号, 41-81 頁. 札幌.
佐藤謙 2007. 北海道高山植生誌. 688 頁. 北海道大学出版会. 札幌.
舘脇操 1934. 北見禮文島植物概説と禮文島植物目録, 10 頁と 24 頁. 北海道景勝地協會. 札幌.
13
(2) 植物相
礼文島の植物相調査は、札幌農学校七期生だった堀正太郎による 1887(明治 20)年の採集調
査に始まりほぼ 120 年の歴史があります(高橋 2012)。堀以降、フランスの著名な採集家フォー
リーらも来島して研究が進められ、礼文島在住者や営林署関係職員の協力も得て、舘脇(1934)
により一定の成果がまとめられました。舘脇の研究は時代性もあったと思いますが、地元関係者
との協働調査とも言えるもので、今後の地域研究のあり方を示唆しているとも言えます。舘脇
(1934)は亜種・変種・品種などを含み約 530 種類からなる維管束植物リストを作成し、多数の
北方植物が出現する特徴を明らかにしています。
この中で、ミヤマヤナギが分布の北限になること、レブンソウ、レブンコザクラ1、フタナミソ
ウ、レブンアツモリソウなどが礼文島に限られる礼文島固有植物であること、リシリブシとリシ
リソウは利尻島・礼文島の 2 島に限られる北海道固有植物であること、ウルップソウ、シコタン
ヨモギは北海道で隔離分布をすること、チョウノスケソウ、イソツツジ、トチナイソウ、エゾル
リムラサキ、ウルップソウ、エゾノチチコグサは礼文島において生育地が限られていることなど
植物地理学的な特徴を指摘しています。また、南方系の植物については、当時は礼文島に限られ
ていたアナマスミレ、北限となるキツネヤナギや隔離分布を示すスナビキソウが特記されていま
す。
礼文島においては面積・標高の割に維管束植物種数が多いこと、利尻島とは 8km しか離れてい
ないにもかかわらず、植物相に差が認められることが Tatewaki(1934)により述べられています。
さらに利尻・礼文の植物相は、北極-高山植物の豊富さ、木本種の貧弱さなどにより北海道北西
部とは区別され、むしろサハリン南部地域に含められると結論づけています。この考え方は伊藤
(1981)にも引き継がれ、北海道の植物区系を 4 小区に細区分するに際し、その一つとして利礼
小区を認めています。つまり利尻・礼文のみからなる小さな地域を北海道のなかで一つの独立し
た植物区系地域として認め、独特の植物相だとしているのです。
その後、レブンソウやレブンアツモリソウなどはロシア極東産近縁種との比較が必要(矢原・
永田 2003)とされていますが、礼文島固有植物の分類学的検討は必ずしも進んでいないのが現
状です。今後は、種や種内分類群の広域的な遺伝的地理変異の研究も求められています。
戦後の多数の研究により、周北極分布をするカラフトイワスゲや北東アジアに分布するヌイオ
スゲの出現が確認される(佐藤 2007)など、礼文島ではさらに多くの植物が記録されています。
礼文島全域において植物研究が一層進められるならば、さらなる出現種が加わると予想されます。
一方で、高山植物の、チョウノスケソウとエゾノチチコグサは、現在ではまったく確認すること
ができず、おもに盗掘によって絶滅したと判断されます2。
今後は証拠標本を基にした、礼文島の維管束植物リスト改訂版の作成が課題となっています。
また、近年の DNA 解析技術の進歩とともに、系統地理学的解析がヨツバシオガマやレブンコザ
クラ(Fujii et al. 1997, 1999)などで行われており、今後、系統的な観点からの重要性も検証され
てくるでしょう。
1
その後、夕張山地、北見山地、知床半島、最近では利尻島でも見つかっています。しかし近縁の別変種ユキワリソウ、ユキワリコザ
クラ、サマニユキワリとは形態レベルでの違いが連続しているとの指摘もあり、形態形質のみでこれら変種を同定するのは時に困難と
なります。
2
チョウノスケソウは 1920~30 年代に礼文島の複数個所で採集されており、元来は比較的株数があったにもかかわらず盗掘されて減
尐・絶滅したと判断されます。一方エゾノチチコグサは 1930 年代に礼文島焼山で無花茎の 2 株が採集されているのみで、盗掘のほかに、
もともと個体数が尐なかったことも絶滅要因の一つと思われます。
14
一方で、これらの多様性研究は实質的に維管束植物に限られているのが現状です。今後は多様
性研究が大幅に遅れているコケ植物、菌類、地衣類、淡水藻類など維管束植物以外の生物分類群
に対する多様性調査も必要となっています。
環境省レッドリスト(2007 年)及び『北海道の希尐野生生物
北海道レッドデータブック 2001』
(北海道、2001 年)に記載されている礼文島の絶滅危惧植物は、これらと照合するとそれぞれ
48 種と 38 種、合計すると 59 種が挙げられます(参考資料「2-3.
礼文島の希尐植物(絶滅危惧
植物と主な高山植物)
」参照)
。
こうした絶滅のおそれのある野生生物目録は、絶滅リスクの評価のために地域を網羅して調査
した結果ではなく、研究者各自の長い経験に基づく場合が多いので、また全国的視野または北海
道全体の視野でまとめているので、一地域を考えると、かえって希尐性や絶滅の可能性を正しく
評価しているとは言えない場合が認められます。前述しているように、全国でも北海道でも絶滅
寸前 CR・Cr と評価されたエゾノチチコグサと、北海道でのみ希尐 R と評価されたチョウノスケ
ソウは、ともに礼文島では盗掘によって絶滅したと考えられていますので、将来的には礼文島の
レッドデータブックは、礼文島で独自に調査し、礼文島としての絶滅評価が必要と考えられます。
生物多様性条約を締約するために制定した国内法、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保
存に関する法律」(種の保存法)に基づいて、北海道では、アツモリソウ、ホテイアツモリおよ
びレブンアツモリソウの 3 種類(1 種 3 変種)が指定され、特に「特定国内希尐野生動植物種」
に指定されているレブンアツモリソウについては、礼文町・環境省・林野庁など関係機関の連携
のもと、保護増殖事業が進められています。
また、「北海道希尐野生動植物の保護に関する条例」によって、礼文島にあるウルップソウ、
フタナミソウおよびレブンソウが「指定希尐野生動植物」に、そのうちウルップソウは「特定希
尐野生動植物」に指定されており、北海道で、これら 3 種についてモニタリング調査を続けてい
ます。
15
<参考文献>
Fujii N, Ueda K, Watano Y, Shimizu T (1997) Intraspecific
DNA in Pedicularis
chamissonis Steven
Sequence
(Scrophulariaceae)
Variation
and Geographic
of Chloroplast
Structuring
of
the Japanese "Alpine" Plants .J. Plant Res. 110: 195-207.
Fujii N, Ueda K, Watano Y, Shimizu T (1999) Further Analysis of lntraspecific Sequence Variation of
Chloroplast DNA in Primula cuneifolia Ledeb. (Primulaceae): Implications for
Biogeography of the
Japanese Alpine Flora. J. Plant Res. 112: 87-95
北海道環境生活部自然環境課編(2001)北海道の希尐野生生物、北海道レッドデータブック 2001.
(財)自然環境研究センター.札幌.
伊藤浩司(1981)北海道の高山植物と山草.誠文堂新光社、東京.
環境庁自然保護局野生生物課編(2000)改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物、植物Ⅰ
(維管束植物)
.
(財)自然環境研究センター.東京.
高橋英樹(2012)北大総合博物館陸上植物標本庫(SAPS)からみた利尻島・礼文島の植物標本史.
北方山草 (29)投稿中.
Tatewaki, M. (1934) Notes on the phytogeography of the Islands of Rishiri and Rebun. Proceed. Imp. Acad.
10: 680-682.
矢原徹一・永田芳男(2003)レッドデータプランツ.山と渓谷社、東京.
北海道の維管束植物(シダ植物と種子植物)に関するレッドデータブック
現在まで『我が国における保護上重要な植物種の現状』
(我が国における保護上重要な植物種
および植物群落の研究委員会植物種分科会編、日本自然保護協会・世界自然保護基金日本委員
会発行、1989 年)
、
『改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物、植物Ⅰ(維管束植物)』(環
境庁自然保護局野生生物課編、自然環境研究センター発行、2000 年)、ならびに『北海道の
希少野生生物、北海道レッドデータブック 2001』
(北海道環境生活部自然環境課編、北海道
発行、2001 年)の 3 つが発行されています。また、環境省レッドリスト(2007 年)は印刷
物ではなく、インターネット上で公表されています。
1989 年のレッドデータブックは、北海道の植物については 3 人の研究者からの聞き取り調
査結果に終わり掲載種が少ない欠点がありますが、日本最初のものとして貴重です。その段階
で、礼文島の植物では、絶滅危惧種としてカラフトアツモリソウ、レブンアツモリソウ、アツ
モリソウ(ホテイアツモリを含む)
、エゾノチチコグサ、オオウサギギク、危急種としてカラフ
トマンテマ、レブンソウの 7 種が挙げられています。環境庁編(2000)では、絶滅のおそれ
の程度を判定する基準が高い方から段階的に、絶滅危惧ⅠA 類(CR)、絶滅危惧ⅠB 類(EN)
および絶滅危惧Ⅱ類(VU)に区別し、北海道編(2001)では、絶滅危機種(Cr)、絶滅危惧
種(En)
、絶滅危急種(Vu)および希少種(R)に区別しており、礼文島では本文と資料編に
示すように、合計 59 種の絶滅危惧植物が知られています。
16
(3) 動物相
礼文島は、動物地理区の観点からいえば、利尻島や北海道本島の北端部とともに「八田線(宗
谷線)で「シベリア亜区」と隔てられる、「満州亜区」内の国内における最北部に位置します。
この八田線は、両生類・爬虫類・淡水無脊椎動物の分布境界と合致することが多いとされる境界
線です。下記するように、礼文島の脊椎動物相は哺乳類相や爬虫類・両生類相からみると貧弱で、
しかも空きニッチの多い不調和な種構成になっています。そのため、外来種が侵入した場合、そ
の定着を許してしまいやすい場所かもしれません。
1) 陸棲哺乳類
北海道本島に生息するヒグマやエゾシカのような大型種は生息していません。これまでに確認
された在来種は計 11 種で、その内訳はヒメトガリネズミ・オオアシトガリネズミ(食虫目)、カ
グヤコウモリ・ヒメホリカワコウモリ(キタクビワコウモリ)・ウサギコウモリ・コテングコウ
モリ・ヒメヒナコウモリ(翼手目)、エゾシマリス・エゾヤチネズミ(タイリクヤチネズミの亜
種)
・ムクゲネズミ(齧歯目)
、キツネあるいはその亜種キタキツネ(食肉目)です。このうちの
キツネはすでに絶滅し、現在は生息していません。カグヤコウモリ(北海道 RDB の希尐種 R)、
ヒメヒナコウモリ(環境省 RDB の情報不足種 DD、礼文島の個体が国内唯一の事例で、おそらく
大陸からの迷個体)
、コテングコウモリ(北海道 RDB の R)
、エゾシマリス(環境省 RDB の DD)、
ムクゲネズミ(環境省 RDB の準絶滅危惧種 NT と北海道 RDB の R)は、特に希尐な種だとみな
せます。なお、ドブネズミ・クマネズミ・ニホンイタチ(イタチ)・ノネコ(イエネコ)の 4 種
が帰化種/人為移入種として知られています。
トガリネズミの仲間
エゾヤチネズミ
ニホンイタチ
※写真提供:環境 NPO 礼文島自然情報センター
<参考文献>
阿部 永(監修) (1994) 日本の哺乳類. 東海大学出版会.
日高敏隆 (監修) (1996) 日本動物大百科 第 1 巻 哺乳類Ⅰ. 平凡社.
佐藤雅彦 (2003) 道北北部におけるヒナコウモリの記録. 利尻研究, (22): 33-40.
佐藤雅彦 (2010) 利尻島西部新湊漁港で捕獲されたキタクビワコウモリの記録. 利尻研究, (29):
35-36.
佐藤雅彦・前田 喜四雄 (1999) 礼文と枝幸におけるコウモリ類の分布. 利尻研究, (18): 37-42.
17
2) 海棲哺乳類
礼文島には、ゴマフアザラシやトドが来遊してくるほか、礼文島に渡るフェリーから、ミンク
クジラやカマイルカ・イシイルカがみられることもあります。
ゴマフアザラシは 1980 年代後半から礼文でも生息地の拡大や個体数の増加が目立つようにな
り、海驢島やビーサシノ崎(ベンサシノ崎)が休息地となっているほか、船泊湾、金田ノ岬など
でも観察されるようになりました。北海道への来遊数の増加に加え、従来は来遊のなかった日本
海側への南下・回遊範囲の拡大と、滞在期間の長期化が明らかになってきていますが、礼文島は
その傾向が特に顕著な地域であり、近年では周年生息や繁殖も確認されています。オホーツク海
の流氷が減尐し、彼らの繁殖期前である 2 月に日本海側からオホーツク海の流氷帯へ移動しやす
くなったこと、狩猟が行われなくなりオホーツク海全体の個体数が増えてきていることが要因と
考えられています。
礼文島
トド島
昔
礼文
今
宗谷
抜海
利尻
サロマ湖
天売
能取岬・湖
網走湖
能取岬・湖
網走湖
焼尻
積丹
野付
風連
サロマ湖
野付
風連
小樽
大黒島
大黒島
襟裳岬
襟裳岬
日本海側:
月~翌 月滞在
オホーツク海側:
月~翌 月滞在
日本海側・オホーツク海側:
月~翌 月滞在
太平洋側: 月~ 月滞在
太平洋側: 月~ 月滞在
根室海峡(索餌海域):
月~翌 月滞在
根室海峡(索餌海域):
月~翌 月滞在
図 ゴマフアザラシの分布の変化
※東京農業大学 小林万里准教授提供
表 日本海側のゴマフアザラシの生態変化
来遊場所
来遊時期
昔
今
礼文島トド島のみ
日本海側積丹・小樽まで南下分布
月~翌 月
月~翌5月
(長期滞在型増加)
礼文島のみ周年
個体の特徴
繁殖に参加しない亜成獣
妊娠個体を含む
礼文島トド島では繁殖
来遊個体数
数百個体
年々個体数を増加
(数千個体)
※東京農業大学 小林万里准教授提供
18
トド(環境省 RDB の絶滅危惧Ⅱ類 VU)は、千島列島やサハリンからの集団のうち雌雄混合群
が滞留しているとされ、礼文島の北側にある種島、平島、海驢島、タタキ島、さらにゴロタ岬も
上陸場であったとする調査報告があり、冬期には貴重なタンパク源として食料にしてきた歴史が
あります。現在は、主にサハリンのチュレニー島から来遊し、種島や平島に上陸しています。
いずれも海洋生態系における高次捕食者として重要な位置を占めると考えられますが、漁具の
破壊や漁獲物の食害など漁業との軋轢も生じています。漁業への打撃は漁業者だけではなく地域
経済全体へ波及する重大な問題となることから、漁業被害の軽減を目的として、年間に決められ
た頭数の有害捕獲駆除が行われています。
表 トド上陸場と上陸数 (山中ほか 1986)
※番号 1~5 が礼文島に該当
図 トド上陸場の分布 (山中ほか 1986)
※過去:1920~1970 年、現在:1981~1985 年の間に調査・報告されたもの。
図 1980 年代のトド回遊模式図 (山中ほか 1986)
図 近年のトド来遊状況と回遊模式図 (星野 2004)
表 礼文島におけるトド・アザラシによる漁業被害(平成20年度)
種類
トド
被害の内容
被害額・件数
直接被害 漁具・漁網など
38,394千円・2,486件
間接被害 漁獲物
76,378千円
アザラシ 直接被害
丌詳
間接被害 タコ・フノリなど
37,100千円
※礼文町産業課
19
<参考文献>
山中正实・大泰司紀之・伊藤徹魯(1986):北海道沿岸におけるトドの来遊状況と漁業被害に
ついて,和田一雄・伊藤徹魯・新妻昭夫・羽山伸一・鈴木正嗣編集:ゼニガタアザラシの生態と
保護, 274-295:東海大学出版会, 東京.
星野広志(2004):トドの来遊状況,小林万里・磯野岳臣・服部薫編集:北海道の海生哺乳類管理, 2-5:
北の海の動物センター,北海道.
3) 鳥類
礼文島では、これまでに 300 種近い鳥類が確認されています(参考資料「2-5. 鳥類」参照)。
森林、草原、湖、川、湿地、海浜など多様な自然環境にそれぞれの環境を好む鳥類が観察されま
す。オオワシやオジロワシが越冬し、夏季に海岸ではオオセグロカモメやウミネコ、ウミウ、ウ
トウなど、草原ではシマセンニュウ、ノゴマ、ノビタキなど、森林ではコマドリ、クロジ、ウソ
などの繁殖がみられます。また、日本列島の北に位置しているため、渡り鳥の中継地となってお
り、春と秋の渡りの時期にはカモメ類やミズナギドリ類、カモ類、ウミスズメ類、ツグミやジョ
ウビタキなどのヒタキ類、ユキホオジロ、ミヤマホオジロなどのホオジロ類、マヒワ、アトリな
どのアトリ類など多くの種類と個体がやってきます。日本国内ではあまり見かけないヤツガシラ
などの大陸性の鳥類も観察されます。環境省レッドリスト(2007 年)及び『北海道の希尐野生生
物
北海道レッドデータブック 2001』(北海道、2001 年)に記載されている種は、それぞれ 46
種と 49 種、合計 61 種となっています。
オオワシ
ノビタキ
ヤツガシラ
※写真提供:環境 NPO 礼文島自然情報センター
<参考文献>
レブンクル自然館(2011):
『礼文島の野鳥』野鳥リスト VOL.17
自然館
20
1994 年~2010 年:レブンクル
4) 爬虫類・両生類
現在までのところ、爬虫類の確实な生息記録はみあたりません。また、両生類はエゾアカガエ
ルとエゾサンショウウオ(2000 年と 2010 年に各 1 例の記録あり)の 2 種だけが生息しており、
いずれも学術的に価値の高い地域個体群とみなせます。前種は北海道 RDB において地域個体群
Lp、後種も環境省 RDB の情報不足種 DD のカテゴリーに区分されています。さらに、礼文島産
のエゾサンショウウオは、(人為移入でなければ)北海道において離島に生息する唯一の個体群
ということになります。
<参考文献>
前田憲男・松井正文 (1999) 改訂版 日本カエル図鑑. 文一総合出版.
松井正文・関 慎太郎 (2008) カエル・サンショウウオ・イモリのオタマジャクシハンドブック.
文一総合出版.
5) 淡水魚類
1990 年代初頭に島内の 6 河川および久種湖で实施された魚類相調査(山本ら, 1994)では、14
種の生息が記録されており、そのうちの 2 種(シロザケとオショロコマ)は人為移入種です。在
来種の内訳は、シベリアヤツメ(ヤツメウナギ科)
、イシカリワカサギ(キュウリウオ科)
、アメ
マス・サクラマス・カラフトマス(サケ科)、エゾウグイ(コイ科)、イトヨ・トミヨ(トゲウオ
科)、ヌマチチブ・ジュズカケハゼ・ウキゴリ・シマウキゴリ(ハゼ科)で、最も優占する種は
アメマスとされています。この調査以降に、久種湖からドジョウ(ドジョウ科)(2001 年の採集
記録 1 例のみ)と人為移入種のコイ(コイ科)が記録されたため、礼文島には合計 16 種の淡水
魚類が生息していることになります。
人為移入種を除く 13 種の生活型をみると、淡水域で孵化後、海に下って成長し、繁殖のため
に河川を遡上する「遡河回遊魚」がサケ科 3 種とイトヨの計 4 種、淡水域で孵化後、河川と海の
両方で成長し、繁殖をおこなう「両側回遊魚」がヌマチチブ・ウキゴリ・シマウキゴリの 3 種、
一生を淡水域ですごすが、海でも生息可能な「二次的淡水魚」がシベリアヤツメ・イシカリワカ
サギ・エゾウグイ・ジュズカケハゼの 4 種、回遊能力を保持したまま淡水域に閉じ込められた「陸
封性淡水魚」がトミヨ 1 種、そして海水中で生存できない「一次的淡水魚」がドジョウ 1 種とな
り、一次的淡水魚がほぼ皆無であるという点が北海道本島とは大きく異なっています。レッドデ
ータブック掲載種は、シベリアヤツメ(環境省 RDB の NT と北海道 RDB の R)、エゾウグイ(北
海道 RDB で留意種 N)およびイシカリワカサギ(北海道 RDB で R)の 3 種です。なお、シベリ
アヤツメ・イシカリワカサギ・エゾウグイ・ドジョウ・ジュズカケハゼ・トミヨの 6 種は久種湖
のみから知られ、この淡水湖が存在することの重要性がうかがわれます。
<参考文献>
山本 祥一郎・飯田夏美・中野 繁 (1994) 礼文島の淡水魚類相. 利尻研究, (13): 13-17.
21
6) 昆虫類
日本産昆虫目録データベース MOKUROKU には、礼文島に生息する昆虫として 91 分類群が登
録されています。しかし、それらは、ごく一部の鞘翅目・膜翅目・隠翅目・双翅目・鱗翅目を含
むだけで、その数が島内の昆虫相やその特徴等をあらわしているとは到底いえません。現在まで
のところ、礼文島における昆虫相を扱った総合的な資料はなく、また目レベルに限ってみても、
信頼に足る種名リスト等はほとんど作成されていない状態です。尐数の限られた分類群でのみ、
分布記録等が公表されているだけです。たとえば、国内に分布するほぼ全種が完全に把握され、
各種の図鑑も多数刉行されているチョウ類(鱗翅目)においてさえ、礼文島に分布する種数が確
定できないような状況なのです(最新刉のある図鑑には 24 種が分布するとされていますが、明
らかな見落としが幾つもみられます。1990 年発行の別の図鑑には 33 種の分布記録があります)。
したがって、礼文島における昆虫相の解明はいまだ手つかずのままで、その生息種数や種構成等
の特徴をここで述べることは、残念ながらできません。
地域個体群として特筆すべき礼文島産種には、鞘翅目のレブンオサムシ(チシマオサムシの礼
文島亜種)、鱗翅目のベニヒカゲ(後翅裏面の白帯が発達)とゴマシジミ(北海道・東北亜種に
属するが、亜種内での地理的変異が顕著)、膜翅目のエゾトラマルハナバチ(本州以南に生息す
るトラマルハナバチと同じく体毛が濃色)などがあります。また、現在までのところ、礼文島か
らしか分布記録のないレブンヒナバッタ(2003 年に新種記載、メスは未知)のような種類も生息
しています。礼文島の気候・地形・植生等には他地域にみられない諸特性があることを考えれば、
昆虫類のなかに固有種、あるいは特化した生活史や姿かたちをもつ生態種・形態種が多数いても、
何の不思議もありません。
代表的な外来種としては、アブラナ科各種を食草とするオオモンシロチョウをあげることがで
きます。利尻島で 2008 年に記録されたことのあるセイヨウオオマルハナバチ(特定外来生物)
は、幸いなことに現在までのところ、礼文島からは記録されていません。
ベニヒカゲ
ゴマシジミ
エゾトラマルハナバチ
※写真提供:環境 NPO 礼文島自然情報センター
22
<参考文献>
堀 繁久 (2003) 利尻島・礼文島のゾウムシ類. 利尻研究, (22): 73-78.
猪又俊男 (1990) 原色蝶類検索図鑑. 北隆館.
宮本 誠一郎 (1999) 礼文島におけるエゾチッチゼミの記録. 利尻研究, (18): 45.
日本直翅類学会 (編) (2006) バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑. 北海道大学出版会.
日本産昆虫目録データベース MOKUROKU.konchudb.agr.agr.kyushu-u.ac.jp/mokuroku/index-j.html/
西川 勝 (2009) 利尻島・礼文島から得られたハサミムシの記録 附北海道産ハサミムシ関係文献
目録.利尻研究, (28): 61-65.
大平仁夫・佐藤雅彦 (1994) 利尻島・礼文島のコメツキムシの記録 (1). 利尻研究, (13): 9-12.
大平仁夫・佐藤雅彦 (1995) 利尻島・礼文島のコメツキムシの記録 (2). 利尻研究, (15): 9-12.
笹川滿廣 (2005) 利尻・礼文島のハモグリバエ (昆虫綱: 双翅目). 利尻研究, (24): 1-3.
佐藤雅彦・飛島ふみ (2009) 利尻島におけるセイヨウオオマルハナバチの記録. 利尻研究, (28):
43-44.
白水 隆 (2006) 日本産蝶類標準図鑑. 学習研究社.
保田信紀・佐藤雅彦 (1992) 礼文岳における地表性甲虫類の垂直分布-利尻島・礼文島・
サロベツ原野昆虫相調査報告. 利尻研究, (11): 11-25.
吉村正志 (1999) 北海道離島におけるアリ類 (その2、礼文島編). 利尻研究, (18): 49-54.
23
7) 昆虫以外の無脊椎動物
等脚目(ワラジムシ・フナムシなど)や端脚目(ハマトビムシ類)、あるいは鳥類に内部寄生
する蠕虫類などいくつかの分類群で、分布記録が公表されていますが、上記した昆虫類と同じく、
完全な種リストが完備されていなかったり、知見の統合が進んでいない状態です。今後いろいろ
な分類群で網羅的な調査が行われれば、1998 年に久種湖で採集された標本をもとに新種記載され
たレブンコツブムシのような礼文固有種、あるいは新種や新記録種などが多数見つかることが予
想されます。また、ニホンザリガニのように人為移入が疑われるような種類も新たに見つかるか
もしれません。
<参考文献>
浅川満彦・松本 紀代恵・佐藤雅彦 (1999) 利尻島および礼文島で発見された鳥類の内部寄生
蠕虫類(予報). 利尻研究, (18): 97-106.
船木 梓・佐藤雅彦 (2009) アオイガイ (カイダコ科) の礼文島における記録. 利尻研究, (28):
11-12.
川井唯史・佐藤雅彦 (1995) 利尻、礼文島におけるニホンザリガニ Cambaroides japonicus と
人間の関係. 利尻研究, (14): 1-4.
川井唯史・佐藤雅彦 (2006) 北海道の離島におけるニホンザリガニの分布. 利尻研究, (25): 1-12.
森野 浩・石井 清・佐藤雅彦・宮本 誠一郎 (2009) 利尻島及び礼文島の陸生ハマトビムシ
(甲殻綱: 端脚目) について. 利尻研究, (28): 25-28.
中村修美・宮本 誠一郎・佐藤雅彦・石井 清 (2010) 礼文島のカマアシムシ類. 利尻研究, (29):
65-67.
布村 昇 (2004) 利尻島及びその周辺の等脚目甲殻類. 利尻研究, (23): 19-23.
布村 昇・石井 清・佐藤雅彦・宮本 誠一郎 (2009) 利尻島および礼文島の等脚目甲殻類 .
利尻研究, (28): 31-32.
寺田 美奈子 (1993) 礼文島における陸産等脚目の分布の概観. 利尻研究, (12): 49-52.
保田信紀 (2002) 利尻礼文サロベツ国立公園のクモ類. 利尻研究, (21): 5-28.
24
2-1-4. 生物多様性保全に関わる地域指定
礼文島では、各種法令により以下の生物多様性保全に関わる地域が指定されています(下表な
らびに参考資料「2-6.
生物多様性保全に関わる地域の指定状況」参照)
。
自然公園法により、礼文島西海岸を中心として島の面積の約半分に当たる陸域 4,231ha が利尻
礼文サロベツ国立公園に指定されています。この国立公園では次ページの図に示したように海域
も指定されています。北海道文化財保護条例に基づく天然記念物として「レブンアツモリソウ群
生地」と「桃岩付近一体の野生植物」が指定され、国有林野管理経営規程に基づく保護林制度に
より、「レブンアツモリソウ群生地植物群落保護林」、「礼文島西海岸植物群落保護林」のほか、
礼文岳周辺の山岳域に「利尻・礼文森林生物遺伝資源保存林」が指定されています。北海道指定
の鳥獣保護区は、林野庁所管の国有林と同じ範囲に指定され、礼文島面積の約 80%を占めていま
す。さらに、国有林の約 85%は、土砂流出防止や水源かん養などを目的とした保安林に指定され
ています。
以上の法令等に基づく指定区域はそれぞれ重なり合っており、それらを組み合わせた面積は表
に示すように合計 7,092ha(海域部分を除く)と見積もられ、礼文町の総面積 8,133ha の約 87%を
占めています。これだけ広い面積が生物多様性保全に関わる地域に指定されていることは、礼文
島では、それだけ保全の必要性が高い自然環境が残されていることを示しています。
また、法令等による区域指定ではありませんが、レブンアツモリソウが多く生育する箇所(鉄
府地区、船舶地区)に「レブンアツモリソウ保護増殖事業地」として環境省の所管地があります。
表 生物多様性保全に関わる地域の指定状況
根拠法令等
自然公園法
保全地域・名称
面積
利尻礼文サロベツ国立公園
礼文町総面積に
占める割合
備考
海域部分を除く
特別保護地区
第1種特別地域
第2種特別地域
第3種特別地域
普通地域
海域部分を除く
北海道文化財保護条例 道指定天然記念物
レブンアツモリソウ群生地
礼文島桃岩付近一帯の野生植物
国有林野管理経営規程 保護林
レブンアツモリソウ群生地植物群落保護林
利尻・礼文森林生物遺伝資源保存林
礼文島西海岸植物群落保護林
森林法
保安林
水源かん養保安林
土砂流出防備保安林
土砂崩壊防備保安林
干害防備保安林
なだれ防止保安林
鳥獣の保護及び狩猟の
適正化に関する法律
道指定礼文鳥獣保護区 [森林鳥獣生息地]
礼文町に所在する宗谷森林管理署
所管の国有林のすべての区域
重複あり
GIS(地理情報システム)により算出
生物多様性保全に関わる地域全体
25
図 生物多様性保全に関わる地域の指定状況
※「宗谷森林計画区第 3 次国有林野施業实施計画図」
(宗谷森林管理署)より作成
※各区域の詳細は、参考資料「2-6. 生物多様性保全に関わる地域の指定状況」参照
26
2-2.礼 文 島 の 生 物 多 様 性 の 恵 み
衣食住から経済・文化まで、人間の生活は生物多様性がうみだすさまざまな自然の恵みに支え
られています。国連が中心となって行われたミレニアム生態系評価では、生態系が人間社会にも
たらす恵み(利益)を「生態系サービス」としてとらえています。この中で、
「生態系サービス」
は、
「供給サービス」
、
「調節サービス」、
「文化的サービス」、「基盤サービス」の 4 つに分類され
ています1。
生態系サービス
礼文島における生態系サービス(例)
供給サービス
食糧
· 淡水
· 木材、繊維
· 燃料
· その他
·
基盤サービス
栄養塩の循環
· 土壌形成
· 一次生産
· その他
·
調整サービス
気候調整
· 洪水制御
· 疾病制御
· 水の浄化
· その他
·
文化的サービス
審美的
· 精神的
· 教育的
· レクリエーション的
· その他
·
· 豊かな漁場と水産物(ウニ類、ホッケ、タラ
類、コンブ、ナマコなど)
· 野生の食物(山菜、キノコなど)
· 家庭や産業で利用する淡水 など
·
·
·
·
·
産業
漁業
観光業
道路法面の保護
雪崩防止
森林による気候調整
洪水の制御
水の浄化 など
生活
·
·
·
·
高山植物や美しい景観
トレッキング
バードウォッチング
礼文島の海の恵み(ウニ類、ホッケ、タラ類
など)を利用した伝統料理 など
食卓
災害からの安全
コミュニティ
など
図 生物多様性がもたらす生態系サービス
礼文島の人々は、太古からこうした生態系サービスを利用して暮らしてきました。島に人が定
住した約 4,000 年前の縄文時代中期の終わり頃をはじめ、江戸時代の文献・絵図から見るアイヌ
の人々の暮らしなど、古くから、海や川、山や森といった島の様々な恩恵(生態系サービス)が、
人々の暮らしを支えるものであったと言えます。
1
「供給サービス」(食糧・淡水・木材・燃料・繊維・遺伝資源・医薬品など、人間が直接利用するもの、あるいはその原材料の供給源
となるはたらき)、
「調節サービス」
(大気の質や気候の調節・水の浄化・洪水その他の自然災害の抑制・土壌浸食の抑制・花粉媒介・病
害虫の抑制など、人間生活が依存する安定した環境条件を維持するはたらき)、
「文化的サービス」
(精神的・宗教的・審美的価値や教育・
研究上の価値、レクリエーションやエコツーリズムなどをささえる価値の源泉としてのはたらき)
、
「基盤サービス」
(光合成や物質循環・
土壌形成など、生態系の基本的な機能として上の 3 つのサービスの基盤となるはたらき)
27
現在の礼文島でも、人々は豊かな生態系
運輸・通信業;
78 ; 3%
金融業; 13 ; 1%
の恵みを得て、なりわい、生活をおくって
電気・ガス・水道
業; 16 ; 1%
卸・小売業; 162 ;
7%
います。島の主力産業である漁業と観光業
公務; 114 ; 5%
を支えているのは、海から得られる豊富な
漁業; 823 ; 37%
水産物と高山植物や美しい風景です。それ
らは外から訪れる人々を楽しませ、経済的
第3次産業
1,104
49%
な利益をもたらしているだけでなく、季節
の移り変わりを知らせ、伝統的な生活様式
サービス業
(観光業含む);
721 ; 32%
の基盤となり、人々の暮らしと文化を様々
な面から支えています。
第1次産業
824
37%
第2次産業
313
14%
林業; 1 ; 0%
製造業; 117 ; 5%
建設業; 196 ; 9%
図 産業別就業人口(単位:人、%)
(平成17年度)
※国勢調査より
28
2-2-1. 生物多様性の恵みと産業
(1) 礼文島の漁業と生物多様性
礼文島周辺の海域には、南からの対馬海流(暖流、黒潮を起源とする高水温・高塩分の水や長
江を起源とする低塩分水が混在して流入)と北からのリマン海流(寒流、オホーツク海およびア
ムール河を起源とする低水温・低塩分水を供給)が流入しています。このことが、礼文島周辺に
豊かな漁場をつくり出し、季節ごとに異なる魚が獲れる環境を作り出しており、季節に応じて、
広域的に利用しています。また、礼文島西側の海域(礼文堆・武蔵堆)は、日本海を北上するイ
カの回遊経路となっており、道内外から多くの漁船が集まる漁場となっています。
江戸時代から、礼文島で生産された鰊肥やコンブが北前船によって関西方面に運ばれていたほ
か、乾燥ナマコや干しアワビなどは中国で高級食材として利用され、長崎から大量に輸出されて
いました。その際、江戸時代の終わりから明治時代にかけて、主に青森県からの移住者によって
礼文島周辺の漁場が開拓され、この移住者達によって島の礎が築かれました。この頃の主な海産
物は、ニシン、タラ類、ナマコ(マナマコ)
、エゾアワビ、コンブ(リシリコンブ)などでした。
昭和 20 年代までは“春告魚”と呼ばれたニシンが、産卵のために沿岸に押し寄せ、島の経済を
支えていましたが、1954(昭和 29)年以降ニシンが大量に獲れなくなりました。現在の主力はホ
ッケとなりましたが、過去から現在にいたるまで漁業は島を支える基幹産業であり、海の豊かな
恵みによって島が発展してきたと言えます。
現在はホッケのほかにウニ類(エゾバフン
12,000
ウニ(がんぜ)
、キタムラサキウニ(のな))、
10,000
タラ類、コンブ(リシリコンブ)
、ナマコ(マ
8,000
ナマコ)等を中心に、季節ごとに異なる水産
9,716
7,669
4,000
2,000
は 7,669t でホッケがほぼ半数を占めていま
0
平成18
す。漁獲金額は約 29 億円でその中でもウニ
平成19
平成20
平成21
漁獲量(t)
類、コンブ、ホッケの割合が高くなっていま
魚種別生産高」参照)。
9,057
6,000
物が漁獲されています。平成 21 年度の漁獲量
す(参考資料「2-10.
9,637
図 漁獲量(平成18年度~平成21年度)
ウニ類は、昔から食用として珍重され、特
にエゾバフンウニは高級食材とされていま
す。水揚げは漁獲金額の 3 割を占め、漁業者
4,000,000
3,741,530
3,381,937 3,481,242
2,863,093
3,000,000
のすべてが着業する最も重要な水産資源とな
っています。漁獲量は、むき身で 50t(6 億円)
と全道漁獲量の約 20%近くを占めています。
ウニ類は資源の管理のため、禁漁期間を設定
しているほか、漁獲量の設定などの取り組み
が行われています。また水産試験場や水産指
導所の調査によりウニの年齢、稚ウニ・海藻
などの現存量が調査されています。
29
2,000,000
1,000,000
0
平成18
平成19
平成20
平成21
漁獲金額(千円)
図 漁獲金額(平成18年度~平成21年度)
※「北海道水産現勢」
(北海道水産林務部)より
ホッケは漁獲量の半分以上、漁獲金額の約 20%を占める重要な魚種です。ホッケの多くは刺し
網で漁獲されています。ホッケ刺し網漁業は漁期も半年以上と長いうえ、網はずしにパートを必
要とするので、島の一大産業になっています。ホッケ刺し網漁業は 1 年中操業が許可されていま
すが、資源保護のため産卵期にあたる秋(10 月初旪)から冬にかけては操業を控えています。
「第 5 回自然環境保全基礎調査海辺
調査(藻場)
」
(環境庁、1998 年)によ
れば、藻場は、礼文島を取り巻くよう
に発達し、港湾・漁港周辺、河口部等
を除くほぼ全域に分布しています。い
ずれもコンブ場であり、リシリコンブ
が分布しています。リシリコンブは、
だし用昆布「利尻昆布」として広く知
られ、くせのない、上品で澄んだだし
が取れるため、関西を中心に高級昆布
として高く評価されています。リシリ
コンブの資源量は、沿岸の状況によっ
て年ごとに大きく変動するため、養殖
も行われています。大勢の干し子を必
要とするので、コンブ漁の日は島中が
にぎわい、活気づきます。このコンブ
場・藻場を主要な生息地として、ウニ
類(エゾバフンウニ、キタムラサキウ
ニ)が生息し、ウニ漁場が形成されて
います。さらに、藻場は、エゾアワビ、
ナマコなどの有用魚介類の生息地とし
図 礼文島における藻場(コンブ場)の分布
ての機能を果たしており、沿岸域の環
※自然環境情報 GIS データ/第 5 回海辺調査・藻場調査
(環境省)より
境・生態系として今まで以上に良好な
状態で維持されてほしいところです。
このように、礼文島の漁業は、現在まで海から豊かな恵みを受けて成り立っており、今後も海
洋生態系を持続的に利用することができるような取り組みを推進する必要があります。広い視点
でみると、礼文島は良質な食料(水産物)を安定的に国内に供給する役割・サービスを担ってい
ると言えます。
30
(2) 礼文島の観光と生物多様性の恵み
日本最北の離島という地理的条件からくる
憧れに加え、
「花の浮島」と呼ばれる礼文島に
は、約 300 種の貴重な高山植物や美しい海と
海食崖地形がつくりだす景勝地、利尻山の眺
望、豊かな海の幸など、礼文島固有の生物多
様性や特異な景観が多くの観光実を集め、楽
しませる魅力となっています。
近年は経済状況など様々な要因により、観
光実は減尐していますが、年間 15 万人を超え
る観光実が礼文島を訪れています。道外から
の観光実も多く、礼文島のほか、稚内・利尻
とあわせて訪れているものと考えられます
が、団体ツアー実が減尐し、個人型旅行が増
加している傾向にあります。
観光入込実数の季節的な変動をみると、極
端な夏季偏重で、花の開花季節(5 月~9 月)
と重なっています。宿泊施設の多くはこの期
間だけの営業であり、フェリーやバスの運行
もこれに対応しています。
礼文島の花々を観察できる代表的な場所は
自然歩道です。本州のアルプスや北海道の大
雪山と同様に高山植物を間近で観察できるた
め、幅広い年代層に様々な形態で利用されて
います。2010(平成 22 年)年 6 月~7 月に行
われた観光実の意識調査から、訪れた目的と
して「礼文島の固有の植物や高山植物をみる
ため」が最も多くあげられ、約 8 割の回答者
が实際に様々な自然歩道でトレッキングを楽
しんでいることが明らかとなっています(熊
谷・愛甲 2010)。
図 礼文島の観光資源
※利尻島・礼文島観光パンフレットより
このほか、切り立った断崖絶壁が続く西海岸の豪壮な景観に着目したクルージング(礼文島西
海岸クルーズ)やウニむき体験などの体験型観光も増加しています。
<参考文献>
熊谷怜奈・愛甲哲也 (2010) 礼文島の自然歩道の評価と利用者の实態について. 日本造園学会北
海道支部研究・事例報告発表要旨/会報, (14): 25-26.
31
154,023
163,431
200,000
176,440
181,926
250,000
205,109
229,300
267,100
294,300
308,400
305,100
276,000
279,400
300,000
255,200
350,000
264,900
400,000
150,000
100,000
平成9 平成10 平成11 平成12 平成13 平成14 平成15 平成16 平成17 平成18 平成19 平成20 平成21 平成22
図 観光入込客数の推移(単位:人)
注:平成 18 年度から集計方法を訂正(換算値を止め实数にする)
※ 礼文町産業課
50,000
40,000
33,630
35,665
30,000
22,818
26,076
15,844
20,000
9,807
10,000
4,242
0
4月
5月
6月
7月
春季
8月
9月
1,616
1,114
932
950
1,329
11月
12月
1月
2月
3月
10月
夏季
秋季
冬季
図 月別観光入込客数(平成22年度)(単位:人)
※ 礼文町産業課
16,022
74,345
53,635
15,810
72,682
34,907
15,077
72,092
33,316
14,597
59,151
31,775
11,693
48,631
32,457
78,069
49,204
18,083
43,082
平成15
77,869
89,100
66,211
平成14
20,422
20,000
24,337
40,000
22,576
60,000
25,807
75,123
73,516
80,000
92,162
61,142
100,000
平成18
平成19
平成20
平成21
平成22
0
平成13
平成16
礼文林道・礼文滝一帯
平成17
桃岩展望台一帯
アツモリソウ群生地
図 観光関連施設観光入込客数の推移(単位:人)
※ 礼文町産業課
表 礼文島の代表的な自然歩道
コース
経由地
桃岩展望台コース
桃岩展望台~元地灯台~知床
礼文林道コース
香深井林道口~レブンウスユキソウ群生地・礼文滝
~元地林道口
内路登山口~礼文岳山頂
礼文岳登山コース
時間コース
時間コース
スコトン岬~ゴロタ岬~澄海岬~西上泊
~浜中
スコトン岬~ゴロタ岬~澄海岬~西上泊
~字遠内~礼文林道
32
距離・所要時間
全長約
所要時間約
全長約
所要時間約
全長約
所要時間約
全長約
所要時間約
全長約
所要時間約
時間半
時間
時間
時間
時間
2-2-2. 島の暮らしの中の生物多様性の恵み
礼文島における人々の暮らしは、豊かな水産物や高山植物、美しい風景など、溢れるほどの自
然の恵みによって支えられています。これらの恵みは、観光業や漁業といった産業を通じて、生
活の基盤を形作っています。一方で、このような豊かな水産物や高山植物、美しい風景は、産業
活動だけでなく、島の暮らしにも深く根付いています。
ホッケは、礼文島の漁業において漁獲量の半分以上を占める重要な魚ですが、釣りを楽しむ人
にとっても、春の釣りシーズン到来を告げる重要な魚です。また、礼文島ならではの食文化とし
て紹介されるホッケのちゃんちゃん焼きは、島の人々に広く食べられていますし、ホッケを使っ
たいずしも、冬の貴重な保存食として各家庭の味として伝わってきています。
一方、このような豊かな水産物は、地域の人々をつなげる役割も持っています。コンブ干しや
ウニむきは人手が必要となるため、親戚やご近所同士の助け合いの場であり、またコミュニケー
ションの場ともなっているほか、小さな子供たちにとっては、大人の仕事場である浜も格好の遊
び場となっています。またコンブ漁の日は、子供たちも含めて早朝から地域総出でコンブ干しを
行い、島中が大きく活気づきます。他方、ホッケに限らず、礼文島では多くの人が釣りを楽しん
でいますが(春のカレイ釣り、夏のソイ釣り、秋のサケ釣り)、このような釣りは大人の社交の
場として、異なる職業の方々が交流を図る場ともなっています。
人々の暮らしの中で食べ物という視点で海から山に目を向けると、礼文島は山菜の宝庫でもあ
ります。春にはタケノコ(チシマザサ)やギョウジャニンニクをはじめとして、葉ワサビ(ワサ
ビ)、フキ(アキタブキ)、コゴミ(クサソテツ)、ウドなどの様々な山菜を収穫することができ
ます。子供たちにとっては、山菜採りのために山に分け入るのは、小さな冒険の場でもあり、文
化的な生活の場だけでは感じることのできない、野趣や感動を感じることのできる大切な空間と
なっています。島では多くの人々が、自分のとっておきの場所からたくさんの山菜を収穫し、家
庭の味を守り継いでいます。そのような山には、初夏になれば多くの高山植物が咲き、島の人々
の心を癒しています。聞き取り調査によると、昔は見晴らしの良いお花畑に陣取って、利尻島を
眺めつつお弁当を広げたという話も数多く寄せられます。また山火事などで尐なくなりましたが、
過去には島内各地に樹木も生育しており、様々な用途に利用していました。チシマザサやクマイ
ザサも石炭や石油が燃料して広く使われる以前は、燃料や焚きつけなどとして生活には欠かせま
せんでした。
このような海の恵み、山の恵みはそれぞれ別のものではなく、一体として島の人々に恵みをも
たらしています。樹木や草が土壌を固定することで、土砂が河川や沿岸に流出することを防いで
います。落ち葉などは分解されて無機塩類として川に流れ込み、沿岸域のコンブの成長を支える
養分となっています。前述の「基盤サービス」の下、海の恵みも山の恵みもお互いにつながりあ
っており、その上に人々の暮らしが営まれているのです。島の人々も、このような恵みに意識的
あるいは無意識に感謝していると言えます。礼文島では、毎年様々なお祭りが開催されています
が、フラワーマラソン大会、うめーべやフェスティバル(水産祭)などのお祭りも、名前を見る
だけでこのような恵みへの感謝を読みとることできます。
33
礼文島には、数え切れないほどの素晴らしい自然の恵みがあります。実際に島の人々は、これ
らをどのように考えているのでしょうか?生物多様性の恵みを保全するには、地域の人々の協力
が欠かません。だからこそ、島の人々が生物多様性の恵みをどのように考えているのかにも目を
向けておく必要があります。
今回の『礼文町生物多様性地域戦略』の策定にあたり、礼文高等学校3年生が自分の周りの大
人に、礼文島の生物多様性の恵みとしてどのようなものを認識しているのか、聞き取りをしまし
た。高校生の皆さんも、周りの大人の話を聞きながら、あるいは友人がまとめた意見を聞きなが
ら、おそらく過去の礼文島、そして未来の礼文島に思いを巡らせたに違いありません。聞き取り
の結果については、礼文高等学校の3年生の皆さんと意見交換も実施しました(写真)。
写真
礼文高等学校の3年生との意見交換の様子
礼文高等学校 3 年生の 10 名が、夏休みの課題として、両親や祖父母、あるいは地域の年配
の方など、自分の周りの大人 20 名を対象に、以下の内容について聞き取りました。
生きものに関係して礼文島について好きなところ(あるいはすばらしいところ、誇りに思
うところ)は何ですか?
上記で挙げて頂いた、
「生きものに関係して礼文島について好きなところ」のうち、特に
好きなものを順に5つ挙げて下さい
聞き取りの結果、礼文島の恵みとして認識されているものは、以下のように漁業資源、高山植
物、自然の景観の大きく分類されました。
① 漁業資源:ウニ(エゾバフンウニとエゾムラサキウニ)、昆布、ほっけ、タラ、ナマコ、
ニシン、アワビ、イカ、カレイ(恵みとしては…味の良さ、収入源、観光振興)
② 高山植物:レブンアツモリソウ、レブンウスユキソウ、レブンコザクラ(恵みとしては…
観光振興、癒し、町の活性化)
③ 自然の景観:澄海岬、スコトン岬、桃岩、トド島、久種湖、元地灯台、夕日、海、星空、
利尻富士の見える風景(恵みとしては…癒し、観光振興、自然を感じられる)
20 名のうち 17 名が漁業資源を礼文島について好きなところとして挙げており、味の良さや
収入源、観光振興に効果をもたらす恵みとして認識していました。次に多く方に恵みとして認識
されていたのが高山植物であり、回答者の半数である 10 名が、観光振興や癒し、町の活性化の
効果をもたらす恵みとして認識していました。次いで、島の風景であり、9 名に癒しや観光振興、
自然を感じられる効果をもたらす恵みとして認識していました。
これらの結果から、島民の多くは、日々の暮らしにおいて自然と関わりを持っており、特に産
業(漁業や観光業)に関わる形で自然の恵みを認識している傾向がみられました。
34
2-3.礼 文 島 の 生 物 多 様 性 に 迫 る 危 機
わが国の生物多様性は、最初の国家戦略から「開発や乱獲による種の減尐・絶滅、生息・生育
地の減尐(第1の危機)
」
、
「里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下(第2の危機)」、
「外
来種などの持ち込みによる生態系の撹乱(第3の危機)」、「多くの種の絶滅や生態系の崩壊をも
たらす地球温暖化による世界的な危機」の4つの危機にさらされているとまとめられています。
これらの危機によって、日本の野生動植物の約3割が絶滅の危機に瀕している現状にあります。
他方、『北海道生物多様性保全計画』では、北海道の生物多様性を脅かす要因として、上記の
うち「人間活動や開発による影響」
、
「外来種の人為的な持込みによる影響」、
「地球温暖化による
影響」の3つの危機を取り上げ、第2の危機を除いています。それは、第2の危機が北海道では
顕著でないからです。ちなみに、本州以南では、里山の二次林(落葉広葉樹林)や里地の二次草
原を放置し、常緑広葉樹や竹類が侵入して林内が暗くなる変化や、二次草原が森林化する変化が
生じた結果、在来種が減尐してきたため、第2の危機として問題視されています。
以上のことから、礼文島のいきものつながり、生物多様性に迫る危機について、基本的には「人
間活動や開発による影響」
、
「外来種の人為的な持込みによる影響」、
「地球規模の環境変動による
影響」の3つの危機として整理します。ただし、礼文島の将来を考えると、第2の危機にあたる
「自然に対する人間の働きかけの減尐」によって生物多様性が失われる場合も想定されますので、
将来に危惧される事項として整理します。
前節に述べたように、礼文島の産業や暮らしの基盤は、生物多様性の豊かな恵みによって支え
られています。生物多様性の衰退は地域の産業の衰退につながり、ひいては島の暮らしが成り立
たなくなることを意味すると言っても過言ではありません。例えば、高山植物の盗掘や踏みつけ
による生育地の撹乱、高山植生への外来植物の侵入は、礼文島のメインブランドである「お花畑」
という大きな魅力を失わせることになります。そのため、私たちの生活を支える観点から、礼文
島の生物多様性保全を進める实行プランが必要であり、それを計画する上では、最初に、礼文島
の生物多様性に迫る危機の内容を明らかにすることが重要です。
お花畑の生物多様性に
迫る危機
盗掘
踏みつけによる
ダメージ
将来的に
結果として・・・
お花畑の
荒廃と喪失
礼文島の
魅力を
失ってしまう
ササの侵入
オオハンゴンソウなどの
外来種の侵入
図 生物多様性を失うことによる影響の例
35
2-3-1. 人間活動や開発による影響
(1) 開発行為による影響
環境庁(2000)によると、わが国の植物の減尐原因として、盗掘に次いで森林伐採があげられ、
さらに湿地開発、農地開発、道路掘削などの開発行為が挙げられています。これらは、近年、生
物の減尐絶滅に関する第1の危機として一括されていますが、種々の開発行為を多く含んでいま
す。開発行為は、後述する盗掘や踏みつけと同様に植物に大きな影響を与えますが、植物だけで
はなく様々な生物群の生息地を直接破壊することから、生物種を減尐・絶滅させ、自然生態系を
劣化・減尐させるなど、生物多様性を喪失させてきた大きな要因と考えられます。礼文島におい
ても、国立公園外を含んだ全域を考えると、生物多様性に対する開発行為の影響が大きいと考え
られます。
例えば、森林生態系が持つ土砂流出防止などの国土保全や水源かん養などの役割(森林の公益
的機能)は、国際レベルでは「生態系サービス」と総称され重視されてきました。特に島嶼(と
うしょ)である礼文島における森林の生態系サービスは、島民の生活基盤として極めて重要であ
るため、今後も森林を大切にし、その生態系サービスを確保しけなければなりません。礼文島に
おける森林伐採は、過去に冬季の暖房あるいは魚粕生産の燃料のためにかなり進められ、元来尐
なかった冷温帯性広葉樹が加速度的に減尐するなど、そこに生育・生息する動植物に対して、ま
た森林生態系全体に対して影響を与えてきました。現在、過去の伐採地や山火跡地における植林
活動が推進されていますが、植林活動は、今後とも一層推進されるべき取り組みの一つです。
礼文島は海岸線から急峻な地形が多いため、市街地や住宅地などにおいて災害から人命や財産
を守るための治山工事、交通を確保するための道路建設など、各種の開発行為が行われてきまし
た。しかしながら、これらの開発行為において、今まで生物多様性保全との整合性が図られてき
たとは言えません。今後は、社会資本整備などの計画段階において、社会資本整備などの価値と
生物多様性保全の価値を両立させるよう、生物多様性を考えることが必要です。
近年、道路建設において、エコロードと呼ばれる生物多様性保全を考えた工法が提案され、様々
な試行錯誤が始められています。欧米から輸入されたエコロードの考え方は、そもそも計画時点
において、生物多様性への影響が最小となる路線を選ぶことを重視しています。しかし、日本の
場合は、生物多様性保全を考慮して複数の路線案を検討することを省き、図上で決めた計画路線
において工事による自然環境への負荷を低減させ、自然環境に配慮したという工法がしばしば採
用されます。その結果、それらの工法でもって地域の生物多様性が保全された成果は非常に尐な
く、生物多様性保全に関する意図と結果が合致しない現状にあると判断されます。
礼文島では、覆道によって海岸線の自然景観が損なわれていることにも注意を払う必要があり
ます。さらに、河川における護岸や治山ダム、海岸における漁港などの建設工事においても、生
物多様性保全に関する工夫がなお一層必要な段階にあります。以上のような社会資本整備や開発
行為において、今後は、私たちの財産である生物多様性の保全を考慮し、十分な検討や意見交換・
検証など、様々な対応が必要な段階になったと考えます。
36
希少植物が小面積にパッチ状に生育する礼文島では、電柱1本、杭1本でも、それらを設ける
場合には希少植物の生育地に大きな影響を不える危険性が伴います。杭1本を打つことによって
土壌水分が低下し、ササの侵入を促してしまう可能性があります。このような危険性は、特に希
少植物が多い西海岸でより多く想定されます。したがって、道路工事のような大規模な開発行為
だけではなく、極めて小規模な改変行為であっても、礼文島では緻密かつ慎重な事前検討と事後
モニタリングが必要です。
(2) 盗掘による影響
礼文島の生物多様性を代表する希尐植物の生存を脅かす要因として、特に希尐植物が多い国立
公園の範囲では、現在まで、盗掘が最大要因であったことは間違いありません。すでに述べたよ
うに、高山植物のチョウノスケソウとエゾノチチコグサは、盗掘によって礼文島から絶滅したと
判断されます。また、北海道では礼文島にのみ分布するウルップソウや礼文島固有種のレブンソ
ウ、さらにはトチナイソウ、フタナミソウ、レブンアツモリソウなどの希尐植物も盗掘によって
減尐しました。他方、特にウエンナイからアナマの範囲では、過去の研究報告にあり現在確認で
きない植物種が尐なくないので、この範囲で盗掘の影響が大きかったことが明らかです。礼文島
には希尐な高山植物が多く記録され、同時に、それらのほとんどが盗掘によって減尐しレッドデ
ータブックに掲載されています。
礼文島の植物を代表するレブンアツモリソウは、かつて島のいろいろな場所で生育していまし
たが、その特徴的な形や花の美しさ、そして礼文にしか分布しないという希尐性から大規模な盗
掘が相次ぎ、絶滅が危惧される状態までにその数を減らしました。現在、野生のレブンアツモリ
ソウは管理が続けられている北部の保護区を中心に見られるだけとなりました。
礼文島では、レブンアツモリソウを初めとして希尐植物を盗掘から守るため、さまざまな関係
者の連携・協力による監視・パトロール活動が行われています。しかしながら、希尐植物の盗掘
は小規模ではあるものの、現在でも時々発生しています。盗掘は、繁殖の母体となる個体群の衰
退を招き、特に個体数の尐ない希尐植物を絶滅の危機に至らせる大きな脅威であり、しかも違法
な行為になりますので、将来にわたって防がなければなりません。
37
(3) 踏みつけによる影響
礼文島の特徴の一つとして、3000m 級の本州アルプスや 2000m 級の北海道大雪山と同様に多様
な高山植物が認められ、それらを徒歩による散策によって容易に観察できることが挙げられます。
こうした礼文島には長い自然歩道が設けられており、旅行者を中心に幅広い層に様々な形態で利
用されています。
南部の桃岩・元地間の自然歩道では、かつて、ロープや侵入防止柵が設けられていない 1980
年代初頭になりますが、歩道からの立ち入りによる植生の踏みつけ撹乱、歩道の複線化や侵食に
よる荒廃が認められました。歩道周辺で裸地化した場所において、急峻な場所では侵食が進行し、
比較的安定した場所では在来植物ではなくオオバコ、セイヨウタンポポ、カモガヤなど踏みつけ
に強い外来植物が侵入してきました。他方、礼文島自然歩道の現状をみると、立ち入りが制限さ
れている所に入って写真を撮影し、立ち入り禁止となった踏み分け道にも入り込む人がしばしば
見受けられます。このように、今でも、踏みつけによる植生への悪影響が懸念される問題が認め
られます。
歩道周辺の荒廃に対して、その後、自然条件のままでは植生の回復が難しいので、関係行政機
関や NGO が協力して、植生の踏みつけ防止や植生回復だけではなく、利用者の安全確保も考え
併せ、自然歩道について種々の管理対策が講じられてきました。急峻な裸地では侵食を防止し在
来植物の侵入、植生の回復を促進するためにネットを設ける、侵入した外来植物を抜き取る、踏
みつけ撹乱を防ぐため高山植生への立ち入りを制限するロープや柵を設置する、木製チップを敷
いて歩きやすく踏み外さない歩道に改良するなどの対策を講じてきました。
上述の対策による効果の評価は行われていませんが、逆に、厳しい環境下での植生の回復には
相当に長い時間がかかることを示しています。高山植物は踏みつけに対して脆弱であり、踏みつ
け撹乱は、植物の減尐・絶滅を招く恐れもあります。そのため、踏みつけによって希尐な高山植
物や貴重な高山植生に悪影響を及ぼさない対策を最初から考慮しておくことが肝心です。
踏みつけによる植生の荒廃などの自然環境の劣化は、希尐植物や貴重な生態系を破壊するだけ
でなく、礼文島の恵みの象徴である自然景観を劣化させ、来訪者の満足度を低下させますので、
地域ブランドを傷つける可能性があります。踏みつけによって植生が荒廃すると、それによって
土壌が不安定化し、その周辺の植生に影響が及ぶ場合もあります。こういった影響を引き起こさ
ず、無秩序な立入りや誤った利用を防ぐため、自然歩道の適正な配置や柵や木道の整備・維持、
注意看板や標識の設置、利用者への啓発が必要です。賢明な利用方法を将来にわたって構築する
ためには、エコツーリズムの推進や、自然歩道の利用ルールと維持管理体制の検討が必要です。
38
2-3-2. 人為的な持込みによる影響(外来種による影響)
地域に生息・生育する野生生物は、その地域固有の生態系を構成する「在来種」として、その
地域を象徴する大切な存在です。一方、「外来種」は、本来の生息・生育地から人為的に持ち込
まれた生物種を指し、海外からだけではなく国内の他地域から持ち込まれた生物種も含みます。
そうした外来種は、在来種と人為的な種間関係を新たにつくって、在来種に大きな影響を与える
問題が指摘されています。例えば、
「競争」によって在来種を追い出す(駆逐する)、草食動物で
あれば植物を食べ尽くし肉食動物であれば他の動物を「捕食」する、病原菌や寄生昆虫などを持
ち込み在来種に「感染」させる、近縁な種類であれば在来種と「交雑」して遺伝子を撹乱させ在
来種を絶滅させるなど、外来種は、在来種に多大な影響を与えることが危惧されています。この
ように、外来種は、在来種の生存を脅かすことから、地域固有の生物多様性を喪失させ、地域の
生態系を破壊させてしまうことが危惧されています。
礼文島のような島嶼の生態系は、面積的に限られた空間の中で、長い隔離の歴史を通じて、微
妙なバランスの上に成り立つ独特の生物多様性と生態系が形成されてきました。そのため、島嶼
生態系は、外来種の侵入による影響を受けやすく、容易に破壊され、劣化しやすい脆弱性を有す
ると言われています。
『生物多様性総合評価報告書』
(環境省、2010 年)では、「日本の島嶼生態
系における生物多様性の損失は重大であり、現在も状態が悪化する傾向にあること、これまでの
開発行為等の強い影響に加え、近年、顕在化している外来種の影響等が複合的に作用しているこ
とが指摘され、不可逆的な変化を引き起こすおそれがある」と報告されています。
礼文島の生物多様性と生態系は、礼文島特有の気候や地質・地形などの地史的変化と、生物の
移動や進化の歴史が相互に作用し、長い時間をかけて形づくられてきました。礼文島を特徴づけ
る在来種、生物多様性は、まさに礼文島らしさを形成しますので、外来種の侵入によって悪影響
を受けることは防がなければなりません。
『平成 22 年度礼文島外来種分布調査等業務報告書』
(環境省北海道地方環境事務所、2011 年)
によると、礼文島ではすでに、外来生物法で「特定外来生物」に指定されているオオハンゴウソ
ウや「要注意外来生物」16 種を含む、150 種を超える外来植物の侵入が確認されており(参考資
料「2-4. 外来植物」参照)
、高山植物や固有植物への影響が懸念されています。
オオハンゴンソウは、繁殖力が強く人間によっ
て撹乱された場所にいち早く侵入・繁茂して他の
植物の生育を妨げます。また、セイヨウタンポポ、
ムラサキツメクサ、シロツメクサ、エゾノギシギ
シ、ヒメスイバ、メマツヨイグサ、カモガヤ、オ
オアワガエリなどの外来植物(帰化植物)は、島
内で広く確認されています。これらは、自然歩道
沿いにも広がり、自然草原に侵入する場合も確認
されています。こうした外来植物の侵入によって
在来植物が「競争」に負け、礼文島の貴重な植物
レブンソウやネムロシオガマなどの希少植物の周囲に
生育する外来植物のシロツメクサ
※写真提供:環境 NPO 礼文島自然情報センター
が失われてしまう危険性があります。
39
他方、外来種セイヨウタンポポの侵入によって、在来種エゾタンポポは非常に尐なくなってお
り、エゾタンポポと見える個体でも多くが交雑種であること、すなわち遺伝的には純粋なエゾタ
ンポポが尐なくなったことがわかってきました。これは、外来種の影響の一つ、「雑種の形成」
による在来種の減尐・絶滅の例になります。エゾタンポポに限らず、礼文島の在来植物に遺伝的
に近縁な外来植物が持ち込まれると外来種と在来種が交雑してしまい、在来種が減尐・絶滅する
可能性が多く考えられます。とりわけ礼文島の固有種に近縁な外来種が持ち込まれると、遺伝子
汚染(遺伝子撹乱)による絶滅リスクが高まり、取り返しのつかない事態が想定されます。礼文
島と同じ国立公園にある利尻島では、固有種リシリヒナゲシが近縁な栽培ヒナゲシの導入によっ
て遺伝子汚染の恐れが懸念されていますので、外来種の導入ならびに在来種との交雑には最大限
注意を払うべきです。
エゾタンポポ
セイヨウタンポポ
交雑タンポポ
花の下側にある濃い緑の部分を総苞といい、総苞の個々が総苞片です。エゾタンポポは総苞片が黄色の花に向
かって直立し、セイヨウタンポポでは総苞片が大きく反り返っています。エゾタンポポとセイヨウタンポポの交
雑個体では総苞片が開き、一部反り返りもみられます。
※写真提供:環境 NPO 礼文島自然情報センター
他方、礼文島の在来種と同じ種であっても、島外から持ち込まれた生物個体は遺伝子が異なる
ことが想定されます。すなわち、遺伝子の多様性の観点から、礼文島の生物は、同一種であって
も他地域の個体と遺伝子が異なる特徴を持つと考えられます。そのため、植樹や道路の法面緑化、
魚類の放流において、同一種であると言っても他地域に由来する生物個体の導入は、礼文島固有
の生物個体群に遺伝的撹乱をもたらす可能性があります。
ところで、植物-昆虫の共生系は、在来植物にとって花粉を運んでもらい繁殖することができ、
在来の訪花昆虫にとっては花粉や蜜を餌にすることができるという双利共生の種間関係であり、
長い進化の過程で形成されてきました。外来種の侵入は、この種間関係にミスマッチを引き起こ
す、すなわち植物-昆虫の共生系を撹乱する可能性が指摘されています。まず、侵入した外来植
物が在来の訪花昆虫を引き付けることによって、在来植物は、訪花頻度が減る結果、結实率が低
下する可能性があります。他方、外来の訪花昆虫が在来植物の送粉システムに悪影響を与えるこ
とが危惧されています。例えば、北海道本島で生息域を拡大している外来のセイヨウオオマルハ
ナバチは、在来のマルハナバチ類に対して競争によって生息地から追いだす、交雑するなどの影
響を与え、在来植物に対しては花を外側から食い破って蜜を食べること(盗蜜、双利共生ではな
い一方的な利益)によって、授粉を妨げる結果、在来植物に未授粉花が増加する可能性がありま
す。
40
島外から外来種が持ち込まれる際、さらに、それに寄生する菌類、細菌類、ウイルスなど伝染
性の病原体や寄生昆虫類などが同時に持ち込まれる可能性が考えられます。これは、遺伝子汚染
と同様に、可視化が難しいためになかなか实感されない外来種の影響の大きな側面になります。
礼文島における植樹において、過去にはカラマツとグイマツの雑種が植えられ、現在において
も、元々礼文島になかったアカエゾマツやウダイカンバが使用されています。島嶼生態系である
礼文島での生物多様性保全を考えると、植樹の対象種は、礼文島に在来のトドマツなどの使用を
優先しつつ、在来のトドマツなどでは寒風害等で生育が難しくササ群落(笹原、笹生地)となる
ような場合において、生物多様性や保安林機能を十分に考慮し、地域にとってより良い方法を考
える時期になってきたと考えられます。
また、礼文島では、生活区域と国立公園区域が近接していますので、前者の生活区域に導入さ
れた外来種は、後者の公園区域にある在来種に容易に影響を与える可能性があり、外来種の導入
にはできる限り慎重でなければなりません。例えば、北海道本島から本州に自生するシラカンバ
とアキグミは、礼文島では外来種(国内移入種)で、それぞれ並木や公園の植栽木と海岸緑化木
として島外から導入され、外国産のギンドロ(ウラジロハコヤナギ)とハリエンジュ(ニセアカ
シア)は、土砂流出防止や伐採跡地の緑化のために導入されました。道内各地で上記種の状況を
見ますと、これらは、陽樹であるため日当たりの良い場所で繁茂する場合が多く、礼文島でも自
然植生や希尐種に悪影響を与える可能性があります。このような外来種は、礼文島の在来種や自
然植生に悪影響を与える観点から、導入時点での慎重な検討が必要であり、いったん導入された
外来種については、それらを在来種に転換していく対策が必要と考えます。
41
2-3-3. 地球規模の環境変動による影響
地球規模で生じる気候変動、特に人間活動によって生じている地球温暖化の影響は、生物多様
性を脅かす危機の一つとして、今後増大していくと予想されています。IPCC(気候変動に関する
政府間パネル)
の第 4 次評価報告書によると、地球の平均気温の上昇は、今世紀末に最大で約 4.0℃
になると予測されており、その場合、地球規模での重大な(40%以上の種の)生物の絶滅につな
がると予測されています。これまで、生物多様性と生態系は気候変動に適応してきましたが、近
年の気候変動は人類史上、類を見ない速度で進行しています。
冬季に積雪のある礼文島では、多くの植物の生育期間や繁殖時期などが雪解け時期や積雪深の
影響を受けています。温暖化によって降雪パターンが変化し、気温の上昇とあいまって雪解け時
期や冬季の土壌の凍結深などが変化すると、植物の開花時期が変化するだけでなく、礼文島での
生育が不可能となることが考えられます。また、気象条件の変化による動植物の生物季節の変化
や種ごとの変化に対する反応の違いは、生物間の相互作用を撹乱し、生態系の構造に変化をもた
らすことが予想されます。
また、温暖化の進行による海面の上昇に伴い、現在の海岸の生態系が失われ、平野部の水没や
浅海域の分布の変化も予想されます。その結果、現在島を取り巻くように発達している藻場(コ
ンブ場)が衰退し、コンブ場を主な生息環境としているウニ類や有用魚介類の生息場が失われる
ことも考えられます。
地球規模での環境変化は、礼文町の地域戦略によって解決することはできませんが、礼文島の
生物多様性に大きな影響を与える要因として、温度などの現状と変化を科学的に捉えていく必要
があります。
42
2-3-4. その他の影響
(1) ササ群落の拡大
生物多様性に対する上記以外の影響として、第一に、環境省による第2の危機にあたる「自然
に対する人間の働きかけの減尐」によって生物多様性が失われる場合も想定されます。過去に畑
地として使用された場所にレブンソウやレブンアツモリソウなど希尐植物が生育し、他の植物や
ササ類が繁茂するにつれて、これら希尐植物が尐なくなった場合が認められます。このことは、
植物種によっては、ある程度、地表が撹乱されることが生育条件となり、人為の影響によってそ
の不安定性が失われた場合はその植物が減尐することを示します。本州における里山とは状況が
異なりますが、レブンアツモリソウなど植物種によっては、人間の働きかけによってある程度の
不安定性を維持する保全策が必要な場合があると思われます。
礼文島では、全島にわたってチシマザサ、クマイザサなどササ類が優占する群落が発達してい
ます。ササ群落は、まず、森林限界付近においてダケカンバ林やハイマツ群落、高山風衝草原な
どが成立する環境より積雪が多い山稜東側の斜面で雪崩地広葉草原と隣接する場合や、ダケカン
バ林を超えた山頂部を被う場合があります。これらのササ群落は、山地でかなり広い面積を占め
ていますが、植物群落としての成立環境から自然植生と判断されます。
このような自然植生においても、山稜の東斜面において雪崩地広葉草原からササ群落に交代す
る場合が想定されます。既に、桃岩・元地灯台間では、自然な草原にチシマザサが侵入して、草
原面積が減尐する傾向が確認されています。この原因について科学的な検証が必要ですが、一つ
の理由として、前節で述べた地球温暖化による降雪パターンの変化、雪解け時期の変化、土壌湿
度の変化などが関わっていることが想定されます。ちなみに、大雪山五色ヶ原では残雪期が前倒
しとなって春の土地の乾燥が早まったことによりササ群落が拡大したと考えられています(Kudo
et al. 2011)。礼文島におけるササ群落の拡大と草原の減尐は、上記いずれの原因であっても、礼
文島において生物多様性が変化していることを可視化できる事例として、今後とも注視し因果関
係を科学的に検証していく必要があります。
他方、明治以降から続く活発な人間活動によって拡大したササ群落、すなわち二次植生として
のササ群落が低標高地を中心に広く認められます。例えば、山火事によって森林が消失したため
にササ群落が拡大した場合や、暖房用ならびに魚粕生産のための薪の利用のために森林が伐採さ
れてササ群落が拡大した場合があり、耕作放棄地の拡大に伴ってササ群落が広がった場合もあり
ます。このような二次植生としてのササ群落の場合には、森林植生など元来の自然植生と比較し
て、次の問題点が指摘できます。ササは密生することによって地表面に光を届かなくします。ま
た、密生したササの葉は、地表面への降水の供給を減らし、分解しにくい茎葉が植物種子の定着
を阻害します。これらの結果、ササが繁茂する群落では、ササより丈の低い植物は被陰され成長
が大きく阻害され、また、樹種の实生や幼稚樹も定着・成長できないため、みずから自然条件下
で森林に戻る・天然更新をすることができなくなります。そのため、こうした二次植生としての
ササ群落は、自然植生に戻すこと、すなわち植樹活動により元来の森林植生へ回復させることが
必要と考えます。
43
最近、鉄府周辺や元地周辺などにおいて自然草原へササが侵入してササ群落が拡大しています。
この拡大は、流路整備による滞水の減尐から生じる土地の乾燥、土留めによる土地の安定化のよ
うな人間活動による生育地の環境変化が主な原因となり、他方で地球温暖化に関係する春の残雪
の早期化などが複合して生じた可能性があります。似た事例として、農地開発のために排水し乾
燥化が進んだ湿原生態系において、乾燥化に伴ってササが顕著に侵入したサロベツ湿原が挙げら
れます(梅田ら 1988、冨士田ら 2003)
。
ササは、適度の土壌条件において、地下茎によって開けた空間にいち早く侵入することができ、
50~60 年に 1 度といわれる開花により枯れるまで、その場所を占有し続けます。一方で、ササは、
種子による繁殖は稀にしか行わず、地下茎を水平方向に伸長させるために厚さを持った土壌層が
必要であるため、地滑りや崩落などが起こりやすい不安定で土壌層が薄い環境ではなかなか侵入
し、勢力を拡大することがなかなかできません。したがって、ササ群落の拡大は、極端な環境が
尐なくなったことを示しているようです。
このササ群落が元々自然植生であったすれば、保全策として人間の働きかけは不要と考えら
れます。また、ササに生活環境を頼って暮らしている動物(ネズミ、ウグイス、アブラムシの一
部、ゴイシシジミなど)もおり、ササ群落がもたらす生物多様性も忘れてはいけません。一方で、
ササ群落において過去に暖房用にササを刈りだし、現在は利用されず放置されたところがありま
す。このササ群落が元々自然植生であったすれば、保全策として人間の働きかけは不要と考えら
れますが、逆に、自然なままに持続してきた草原に人間の活動によりササの侵入が加速されてい
る場合には、ササを刈り払うなど人間の働きかけによる草原の保全策も必要と思われます。この
ように、ササ群落に関して生物多様性保全を考えると、逆向きの二つの方向が想定されますので、
科学的研究に基づいてササの管理方針を判断する必要があります。
<参考文献>
冨士田裕子,加納佐俊,今井秀幸(2003)上サロベツ湿原時系列ササ分布図の作成とササの面積
変化
北大植物園研究紀要 3: 43-45.
Kudo G, Amagai Y, Hoshino B, Kaneko M (2011) Invasion of dwarf bamboo into alpine snow-meadows in
northern Japan: pattern of expansion and impact on species diversity. Ecology and Evolution 1(1):
85-96.
梅田安治,辻井達一,井上京,清水雅男,紺野康夫 (1988) サロベツ泥炭地の地下水位とササ :
泥炭地の形態的研究(Ⅲ)
.北海道大学農学部邦文紀要, 16(1): 70-81.
44
(2) 酸性雨、漂着物・油汚染、放射能汚染など
第一に、国内外において、国境を越えて長距離に移送される酸性雤原因物質によって森林が枯
れるなど生物多様性への悪影響が明らかになってきました。離島の礼文町であっても、酸性雤物
質は島外から簡単に移送されてきますので、その实態を把握する必要があります。
第二に、漂着物や油汚染などによる影響が考えられます。礼文島の海岸では、流木、ペットボ
トルや発泡スチロール、漁具などの漂着物が多く見られます。これらには、ハングル文字やロシ
ア語表記の漂着物も含まれ、日本海を北上する対馬海流や南下するリマン海流にのって漂着して
いると考えられます。また、島内の一部には、空き缶のポイ捨てやゴミの不法投棄が見られます。
これらの漂着物やゴミは、景観の悪化をもたらすことはもちろん、魚介類や鳥類など野生生物の
誤飲による影響、漂着物に含まれる合成化学物質(環境ホルモン)による野生生物への影響、生
態系の撹乱、ひいては人体への影響が懸念されます。
第三に、海に囲まれた礼文島は、タンカーなどからの油流出の影響を受ける可能性が考えられ
ます。もしも大規模な油流出が生じた場合は、島民の生活すべてに悪影響を及ぼしますので、単
に礼文島の生物多様性保全だけではなく、北海道全体で油汚染の危険性を想定した準備が必要で
す。
以上の酸性雤や漂着物・漂着油のほか、原子力発電所などから放散される人工放射性物質の影
響も想定されます。これらの影響は、現在直面した問題ではありませんが、将来的には、生物多
様性とともに、我々の健康や生命にまで影響が及ぶ可能性があります。これらの危機については、
漂着ゴミのように可能なところから対策を講じている課題もありますが、礼文町だけでは対応で
きない場合が想定されますので、生物多様性への影響を含んで注意を払い続け、国や北海道との
密な連携を形成して対策を講じる必要があります。
45
2-4.こ れ ま で の 取 り 組 み と 今 後 の 課 題
礼文島では、これまで礼文町と環境省、林野庁、北海道など関係行政機関の連携によって国立
公園、保安林、保護林、天然記念物などの保護地域が指定され、これらの地域を中心に生物多様
性保全に関する様々な取り組みが進められてきました。その取り組みは、以下に述べるように、
近年ますます多様なものとなっていますが、今後、礼文島全域において生物多様性保全をさらに
推進していくためには、取り組みの現状をまとめ、今後の課題を明確にする必要があります。
生物多様性保全のために今後の活動では、ここに策定する生物多様性地域戦略を核にして、関
係行政機関だけでなく、住民や NPO、研究者などと一層連携し協力しあうしくみづくりを構築す
ることが不可欠です。
2-4-1. 人間活動や開発による影響に対する取り組み
(1) 社会資本整備などの開発行為における取り組み
社会資本の整備は、人々が文化的で豊かな生活を過ごし、安定的な地域産業を育む上で欠かす
ことができません。しかし、一方では、社会資本整備のための工事が、前節で述べたように、礼
文島特有の生物多様性を失わせる要因となる場合が尐なくありません。そのため、社会資本整備
を目的としたとしても、その整備において礼文島独自の工法を考案し、整備指針を示すなどの新
たな対応が必要と考えます。
既に、道道礼文島線(香深井地区)や町道浜中西上泊線道路工事では、道路法面を在来植物で
被うための「自己復元緑化工法」が採用されています。この工法は、表土に含まれる埋土種子を
有効活用することによって在来種による法面緑化とその持続を目的としており、道路法面に外来
植物とそれらの種子を持ち込まないように施工箇所の表土と現地で発生した残土を利用する方
法です。
しかし、残念なことに、完成後の法面には外来植物が繁茂しています。上記の工法は、生物多
様性保全を目的とした意図は良いものの、その意図と異なる結果となったため、今後に向けて緻
密な工夫が必要です。意図と異なる結果を得た原因として、工事以前から、表土に外来植物の種
子が多く存在していたこと、工事後に、法面という新たな空き地に外来植物の種子が飛来して定
着したことが考えられます。以上の道路法面における意図や方向性は肯定されますので、現在の
欠点は、生物多様性保全として实効ある方法に、字義通りの「自己復元ができる緑化方法」に変
えていく必要があります。
平成23年4月9日
平成23年6月24日
平成23年7月22日
自己復元緑化工法施工箇所の植生の状況
※写真提供:北海道宗谷総合振興局稚内建設管理部礼文出張所
46
(2) 盗掘や踏みつけに対する取り組み
盗掘や踏みつけは、前節で述べたように、礼文島の貴重な財産である希尐植物や自然植生に対
して大きな影響を与える要因となっています。この問題に対して、礼文島では既に、関係行政機
関が連携した「礼文島高山植物保護対策協議会」を設置し、横断的に協議して様々な取り組みを
行っています。そうした中で、環境省・林野庁・北海道・礼文町は協力して、夏期に監視員を配
置し、公園利用マナーの呼びかけや盗掘防止のための巡視を实施しています。また、環境省は自
然公園指導員の依嘱、林野庁は国有林パトロール員の依嘱を行って、それぞれ管理を進めていま
す。さらに、林野庁は植生荒廃等を防止するため森林保護員(グリーン・サポート・スタッフ)
による巡視が行われており、北海道、礼文町の単独事業では園路の維持・補修が实施されていま
す。礼文町高山植物保護対策協議会では、自然の生態系をできる限り損なわない中での自然歩道
の補修を主眼として、近自然工法の研修会が行われました。
しかしながら、礼文島において盗掘や踏みつけの影響がまったく無くなったわけではありませ
んので、広大な保護地域を網羅した保全のために、これらの活動を充实させる工夫や、住民、関
係機関などの間で相互の密な連携が必要と考えます。
近自然工法による自然歩道の補修
踏み込み防止のロープ設置
ぬかるみ解消のための補修
(3) 森林の再生
森は、洪水や土砂流出などの災害から地域の人々を守り、潤沢な飲料水を供給するばかりでは
なく、人々が感動する自然な風景の一つであり、豊かな情操教育や地域活動を育む上でも欠かせ
ないものです。また、森から海への栄養添加によって、格好の漁場となる藻場・浅海の生態系が
維持されていることも、礼文島では忘れてはいけないことです。
生態系サービスという言葉がない古い時期から、礼文島では伐採跡地や山火事跡地を中心に森
林生態系を回復させるための植樹活動が行われてきました。植樹活動は、国有林における宗谷森
林管理署による造林が中心でしたが、最近、そのほかに、島内の諸団体(船泊森林愛護組合連合
会、香深森林愛護組合連合会、礼文島自然クラブ、船泊漁業協同組合女性部、香深漁業協同組合
女性部など)が、礼文町主催の記念植樹祭、
「お魚殖やす植樹運動」、さらには宗谷森林管理署と
の森林整備の協定を結ぶことなどによって種々の植樹活動を展開しています。
植樹活動における今後の課題として、島内関係者の高齢化に起因するマンパワー不足が認めら
れますので、島外ボランティアを募る工夫など、新たな対応を考える必要があります。
47
2-4-2. 人為的な持込みによる影響に関する取り組み(外来種に関する取り組み)
外来種の侵入は、前節で述べたように、様々な面で礼文島固有の生物多様性を損なう要因とな
るため、十分に注意を払い続ける必要があります。
まず、礼文島を代表する希尐植物とそれらが出現する自然植
生は、特定外来種、侵略的外来種、要注意外来植物など加速度
的に繁茂する外来植物が侵入した場合、短期間で在来の希尐植
物が絶滅し、自然な植物群落が劣化、減尐する可能性がありま
す。勢力旺盛な外来種の侵入に対して極端な軟弱性を有してい
る希尐植物は、礼文島では尐なくないと考えられます。
以上の問題に対して、礼文島の様々な主体が外来植物の抜き
取りなどの作業を行っています。島内 NPO「礼文島自然情報セ
ンター」が主体となって、オオハンゴンソウやシロツメクサ、
ムラサキツメクサ、セイヨウタンポポなど外来植物の除去作業
が实施されています。この作業は、環境省から受託したグリー
ンワーカー事業だけでなく、NPO みずからの自主的な事業を含
みます。
既に述べたように、道路の法面にはびこる外来植物は、法面
だけにとどまらず、周辺の自然植生へ侵入して悪影響を及ぼす
ことが危惧されます。今後の道路工事では、法面が外来植物の
外来植物の除去作業の様子
※写真提供:
環境 NPO 礼文島自然情報センター
分布拡大にとって出発点にならないような、緻密な工夫が必要
です。礼文島では、人々の生活する空間と、希尐植物が生育す
る自然植生・国立公園の範囲が近接していますので、外来種が
貴重な自然の範囲に侵入しやすい特徴があること、それを強く
注意しなければなりません。
礼文町では、外来種持ち込み禁止の PR 活動を行っており、
外来植物が侵入しないようにフェリーの出口に靴底に付着した
種子や泥を除くためのマットを敷いています。今後の外来種対
策として、礼文島内への外来種侵入を防ぐ方法をさらに検討し、
いったん侵入した外来種については効率的な除去手法を検討
し、住民や NPO などによる多様な活動を底支えする体制づくり
を進めることが必要です。
普及啓発ポスター
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2-4-3. 地球規模の環境変動による影響に関する取り組み(低炭素社会構築に関する取り組み)
礼文町では、これまで「低酸素地域づくり面的対策支援事業」
によるハイブリッドバスの試験運行を行ったほか、観光地とし
ての取り組みとして「宗谷路の会」と連携し、電気自動車の走
行テスト・試乗会を实施するなど、低炭素社会構築のための検
討を行っています。
以上の取り組みは、二酸化炭素削減によって、一面では、礼
文島に限らない広範囲における生物多様性保全を目指した活動
ハイブリッドバス
となり、別の側面では、礼文島において希尐植物や自然植生に
対する車両の排ガスによる影響を防ぐ活動であると言えます。
いずれにしても、これらの影響を排除する上では、個々人や自
治体による地道な活動の積み上げが欠かせず、そのことが礼文
島の生物多様性を保全する積極的な活動になると考えます。
地球温暖化は、前節で述べたように、温度や降雤、降雪パタ
ーンが変化することによって、礼文島の生物多様性に影響する
電気自動車
可能性が増大していくと予想されています。そのため、温度や
降雤などの環境変動と生物多様性の変化を併せた、総合的なモ
ニタリング調査が必要です。
2-4-4. その他の影響に関する取り組み(海岸漂着ゴミに関する取り組み)
海岸に漂着するゴミは、前節で述べたように、大切な観光資
源である景観を損なうばかりではなく、礼文島の生物多様性や
人間の健康や生命に対して今後様々な問題を引き起こす可能性
があります。この問題に対して、礼文島では町民や漁協女性部
による海岸清掃の实施、環境省グリーンワーカー事業として海
岸漂着ゴミの除去など、町民や行政による清掃活動が行われて
います。今後、このような活動を充实させて継続していくため
には、参加主体を増やす工夫や、収集したゴミの処分方法など
について、さらに検討を進める必要があります。
49
クリーン作戦
2-4-5. 普及啓発・教育活動
礼文町では、小中高 12 年間の学校教育でふるさと学習として
礼文島の歴史や産業、自然環境などを学ぶ「礼文学」が取り組
まれており、町内 NPO「礼文島自然情報センター」が小・中・
高校生への出前講座として「自然や植物」を解説する機会を設
けています。また、礼文町は、レブンアツモリソウの無菌株を
町内の小・中学校に貸出し、子供たちがみずから育てることを
通じて希尐植物と郷土の自然の大切さを体感することができる
船泊中学校での学習の様子
取り組みを進めており、高山植物園を利用した観察会なども实
施しています。これらは、礼文町に住む多くの人が誇れる教育
活動であると言えます。
他方、社会教育・生涯教育の一つとして、環境 NPO「礼文島
自然情報センター」が中心となって設置された「ネイチャー礼
文」の取り組みが挙げられます。ここでは、各種の展示のほか、
礼文の自然に関して学習する「町民学習交流会」等を实施して
礼文高等学校での学習の様子
おり、2008(平成 20)年~2010(平成 22)年には、礼文島自然
情報センター主催の「礼文島環境フォーラム」が開催されてい
ます。一方、環境省、北海道、礼文町では、それぞれに礼文島
の自然や生物多様性を紹介する各種パンフレットを発行し、礼
文島の自然について普及啓発に努めています。
以上のように、礼文島では様々な主体によって、ライフステ
ージに対応して生物多様性保全についての教育・普及啓発活動
町民学習交流会
が展開されていると言えます。しかし、一方では、それら様々
な活動における評価も必要であり、マンパワーや指導者の不足、
マンネリ化といった島嶼地域特有の問題を解消し、町民が一層
楽しみながら学び行動できるよう、道民、国民も巻き込んだ取
り組みに関する工夫が必要です。またこの中では、貴重な自然
としての「生物多様性」を、より身近なものとして理解を容易
にする、一般向けの解説書なども必要と考えます。
「礼文島自然環境フォーラム」
※写真提供:
環境 NPO 礼文島自然情報センター
50
2-4-6. 生物多様性の保全や解明に向けた取り組み
(1) レブンアツモリソウに対する取り組み
レブンアツモリソウは、礼文島を代表する花として町民に親しまれており、街路灯やマンホー
ルなど町内さまざまなところに、そのデザインが取り入れられています。しかしながら、レブン
アツモリソウは、過去には、礼文島の南部と北部に多くの個体が認められましたが、現在では盗
掘によって激減し、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧 IB 類に指定される状況になってい
ます。近年、同種の盗掘は、盗掘防止のための監視活動や侵入防止柵の設置などにより急減して
いますが、すでに失われてしまった地域も尐なくありません。そのため、レブンアツモリソウ群
生地植物群落保護林(林野庁)、鉄府保護区(環境省)と船泊保護区(環境省)が設けられ、保
護柵の設置、立ち入り制限、保護及び盗掘防止のための巡視活動などが行われています。林野庁
所管保護林では、観光実が直接観察できる歩道が設けられており、環境省所管の 2 保護区は「レ
ブンアツモリソウ保護増殖事業地」として柵で囲まれ、立ち入りが制限されています。
レブンアツモリソウは、保護区内でも減尐傾向にあることから「保護増殖事業」が必要と考え
られてきました。現在、地球環境保全試験等試験研究費助成金による保全研究と行政施策を連動
させながら、同種の保護増殖事業が展開され、それぞれの事業の中で、以下のような保全研究が
続けられてきました。
礼文町は、礼文町高山植物培養センターを設置し、レブンアツモリソウの無菌培養技術を開
発・確立しました。北海道大学は、自然状態での繁殖方法に近い共生菌発芽による培養技術(共
生菌トラップ・共生菌培養)を開発しました。北海道大学と熊本大学は協力して、レブンアツモ
リソウをとりまく共生生態系(植物-昆虫の間の共生関係)について調査・解析を進めています。
森林総合研究所は、環境省と協力して、個体群動態をモニタリングするとともに、かき起こし、
刈り取りによる生育環境改善試験を行っています。森林総合研究所はさらに北海道大学と共同で、
レブンアツモリソウの遺伝的多様性の解析やレブンアツモリソウとカラフトアツモリソウの雑
種化の解析を行っており、保全に関する社会意識調査や保全体制の社会学的解析も進めています。
レブンアツモリソウの保全については、今後も議論を重ねながら、現存する自生地を持続的に
保全していくとともに、すでに消滅した自生地を生態系ごと回復する自生地復元試験を行い、順
応的管理を推進していくことが予定されています。
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(2) 調査・研究
生物多様性保全のためには、その基礎として、現状を把握し、その変化をモニタリングする調
査研究が欠かせません。礼文島における生物相の現状把握は、維管束植物相や鳥類相については
比較的進められてきましたが、他の生物相についてはほとんど進んでいないと言っても過言では
ありません。礼文島の生物多様性保全を考えますと、全域を網羅する生物相の研究を進行させ、
現状把握を行うことが先決事項と考えます。
また、生物相とは違う生態系のレベルでの研究が必要です。草原、森林、湖沼、河川、藻場な
ど、生態系ごとの現状を把握することによって、生態系サービスの質の変化を理解でき、保全上
の生態系評価が可能になると考えます。さらには、道路法面緑化の項で既述のように、礼文島に
おいてこそ、外来植物を除いて在来植物だけによる緑化を進行させる、すなわち生物多様性保全
に結びつく法面緑化方法の研究が必要であり、また河川や浅海の生態系における河川・港湾工作
物の建設の際に生物多様性の保全を図る基礎研究も必要です。そうした生態系レベルでの応用研
究を、礼文町として進めるだけではなく、島外の試行錯誤例にも目を配り、島内での实効的な応
用を考える必要もあります。
絶滅危惧生物の目録であるレッドデータブックは、全国レベルでは個体数・産地メッシュ数の
増減に基づく定量的評価によって行われ、北海道レベルでは主に研究者の経験に基づいた定性的
評価により作成されました。全国レベルにおいては定量的評価の基になるデータが必ずしも網羅
的でなく信頼性にもバラツキがある点、北海道レベルではさらに多数の研究者の経験に基づくこ
とが必要であること、などの問題点・課題があります。それ故に、礼文島として現状把握が必要
であり、数年ごとの変化を把握するモニタリング調査も必要と考えます。
上記の絶滅危惧生物は、他方で、全国的視野または北海道全体の視野でまとめられるため、一
地域の礼文島を考えると、かえって希尐性や絶滅の可能性を正しく評価しているとは言えない場
合が生じます1。礼文島のレッドデータブックは礼文島で独自に調査し、礼文島としての絶滅評価
が必要と考えます。
礼文島の生物多様性の保全に関わる社会科学面からの調査については、最近になっていくつか
の例が見られます。レブンアツモリソウの保全にかかわる関係者のネットワークに関する研究や、
礼文島を訪れる観光実の動態や自然歩道の評価に関する調査・研究が实施されています。このプ
ロジェクトの一環として、礼文高等学校の生徒の協力のもと、生物多様性による恵みに関する調
査も行われました。それぞれの調査・研究はまだ部分的で、観光や経済的側面に関する調査も不
足しているため、今後の取り組みが必要です。
一方、利礼 3 町(利尻町、利尻富士町、礼文町)と北海道大学農学研究院(農学院・農学部)
は、農学、森林関連の技術及び学術の発展、環境の保全、地域の持続的発展、科学技術・文化の
振興、人的交流・人材育成などに協力して取り組むための連携協定を締結しています。礼文島に
おける生物多様性保全のために、研究機関や個人研究者との連携は、より広い範囲からより多面
的に展開されることが期待されます。
1
礼文島では比較的よく見られ特に減尐もしていないレブンコザクラとイワヨモギは、日本あるいは北海道全体から見ると産地が限ら
れますが減尐傾向にあるため、日本・北海道レベルでは絶滅危惧種として評価されています。一方、逆に、礼文島では希尐でしかも減
尐している種類であったとしても日本・北海道では普通種であり減尐もしていない場合は、絶滅危惧種として評価されないことになり
ます。礼文島独自のレッドデータブックを考える際、これらの事情をよく考慮して、日本・北海道のレッドデータブックにおける評価
も考慮しながら作成する必要があります。
52
3.礼文島いきものつながりプロジェクト
3-1.戦 略 の め ざ す と こ ろ
高山植物が咲き乱れ、海の幸に恵まれた、いきものつながりを体感できる島
~いつまでも住んでいたい、訪れたい礼文島であるために“いいこと”しよう!~
礼文島の暮らしや産業は、海岸付近から見られる多くの高山植物や美しい海と海食崖地形がつ
くりだす景勝地、豊かな海の幸など、礼文島ならではの、美しく豊かな自然の恵み・生物多様性
の恩恵に支えられて成り立っており、将来にその恵みを引き継ぎ、持続して受け取るためには、
「自然そのもの」だけではなく「人と自然の関わり」を考え、
『人と自然の共生』、つまり、人を
含めた“礼文島いきものつながり”を築くことが重要で、このことは町内外の多くの人が感じ、
また、目指していかなければならないこととして捉えていることは間違いありません。
太古の昔から積み重ねられてきたいくつかの偶然と、そこに生きるいきもの達が造りあげた必
然がつくり出したこの島の類まれな環境。今は人里と自然が隣り合わせるこの島で、島に住む人
が“礼文島いきものつながり”の一員として自然体で暮らし、豊かな恵みを受けながら誇りをも
って“住んでいたい”と思える島、憧れをもって“訪れたい”と思われる魅力的な島であり続け
る、そして、島に関わるすべての人が、「礼文島のために“いいこと”しよう!」という気持ち
で自分たちがとるべき行動を考える、そのような姿を『礼文島いきものつながりプロジェクト』
を通して目指します。
53
3-2.基 本 方 針 と 基 本 施 策
礼文島のいきものつながり、すなわち生物多様性を取り巻く現状をみつめ、生物多様性に迫っ
ている危機を回避・軽減することにより、今、いきものつながりについて目指すべき姿を实現す
るため、以下の 5 つの基本方針を設定します。この中では、これまで实施してきた取り組みを継
続・拡充するとともに、将来的に取り組むべきと考えられる施策を網羅して、『礼文島いきもの
つながりプロジェクト』の「基本施策」として整理します。

基本方針 1:いきものつながりに必要となる調査・研究の推進

基本方針 2:いきものつながりに有効な保全・回復・再生

基本方針 3:いきものつながりの取り組みを实施・継続するためのしくみづくり

基本方針 4:いきものつながりに関する普及啓発・教育の推進

基本方針 5:いきものつながりによって得られる恵みの持続可能な活用
基本方針1:いきものつながりに必要となる調査・研究の推進
礼文島の生物多様性は、今までわかっているだけでも、町民・道民・国民にとって非常に貴重
な共有財産です。しかしながら、礼文島の生物多様性は十分に解明されているとは言えず、分野
によっては礼文島に分布する生物種にどのようなものがあるのか、十分把握されていません。加
えて、異なる生物種や生態系の間にある「いきものつながり」は、さまざまな人間活動の影響、
環境条件の変動の影響を受けながら変化し続けています。このため、今後、礼文島の生物多様性
の保全と利用を適切に進めていくためには、遺伝子・種・生態系の 3 つのレベルを含んで生物多
様性に関する情報の収集・整理を行っていくことと、蓄積した情報を上手に活用していくことが
必要です。
基本施策1-1:いきものつながりの現状把握とモニタリング及び情報の活用
適切な取り組みを实施するための基礎データとなる、動植物リスト(礼文島いきものリス
ト)の作成(礼文島独自のレッドデータブック、外来種含め)や生態系の現状把握を推進し
ます。また、生物多様性の変化を捉えるために必要なモニタリングをはじめとする各種デー
タの蓄積と活用に努めます。さらに、漁業や観光といった生物多様性の経済的側面に関する
調査を实施するなど、現段階では十分ではない様々な現状の把握に努めます。
54
基本方針2:いきものつながりに有効な保全・回復・再生
森林や草原は、水源かん養機能や土砂流出防止機能など多くの公益的な機能をもっています。
これらは、川を通じて栄養塩類等を海へ供給し、海藻や植物プランクトンを育てるなど、海の生
物多様性に寄与しています。したがって、森・川・海の生態系のつながり全体を適正に維持する
ように、生物多様性の保全に取り組んでいかなければなりません。
そうした中で、礼文島の生物多様性は、島特有の環境の中、限られた生育・生息地において維
持されている場合が多く見られます。特定の小面積に限られる希尐植物が多いため、盗掘や踏み
つけの要因がたとえ小規模に働いたとしても、希尐植物がすぐに絶滅の危機に陥るように、結果
として大きな影響を及ぼすことが考えられます。今後は過剰利用による踏みつけや開発行為とい
った「人間活動や開発による影響」や外来種の侵入などの「人為的な持込みによる影響」といっ
た危機に対し、今残されている自然の保全はもちろんのこと、劣化が進んでいる植生や激減して
いる希尐種の回復・再生を図る取り組みが求められます。
以上の保全・回復・再生に関する实際の施策として、これまで行われてきた野生生物の保護・
管理、外来種対策、保護と適正な利用の両立といった取り組みをより充实させることはもちろん
ですが、継続的なモニタリング調査結果に基づいて予防的な対応(予防原則を重視した施策)を
行う場合や、新たに得られた科学的知見に基づいて早期に対策を講じることが必要な場合など、
柔軟な対応となる順応的管理の視点が重要です。さらに、この施策は、生物多様性の保全につな
がる環境負荷の小さな社会、低炭素社会・循環型社会の構築を目的とした施策と統合して総合的
に考える必要があります。
基本施策2-1:希少種の保護
日本・北海道のレッドデータブックにおける評価だけでなく、礼文島における希尐性・絶
滅リスクを判断できる礼文島独自のレッドデータブックを作成するなど、島内で絶滅のおそ
れが高い種については、継続的な情報収集に努めます。それらに基づいて、生息域内保全を
基本として生育域外保全も含めた保護対策を総合的に推進します。
また、盗掘や踏みつけ等に対しては、これまで関係機関が協力して实施してきた公園利用マ
ナーの呼びかけや、盗掘防止のためのパトロール活動の充实に努めます。
基本施策2-2:外来種への対策
新たな外来種問題を引き起こさないためには、侵入前に水際で阻止することが有効です。
観光実をはじめとする来島者や車両、建設資材などによる礼文島への外来種の持ち込みや、
島内の重要地域への外来種の分布の拡大を抑止するための手法を検討します。
また、既に島内に侵入している外来植物については、分布を拡大させないため、優先的に
除去を行うべき種の選定と効率的な除去手法及び在来植生の再生手法の検討や、その除去活
動を進めるための体制づくりに努めます。
一方、外来種が「礼文島いきものつながり」に重大な影響を及ぼすことを広く認識しても
らうために、ホームページやポスター、IP 告知端末など様々な媒体を通じた PR に努めます。
55
基本施策2-3:生態系の保全・回復・再生
礼文島では、多様な生物種の生育・生息が認められ、それを支える多様な自然生態系(自
然草原、森林、湖沼・河川・湿原、海浜・藻場)が島の大半を占めています。生態系は、そ
れぞれの立地によって生育・生息する生物種とそれらの基盤となる水、土壌などの条件が異
なり、それぞれの生態系の特徴に合わせた保全が必要となります。お花畑の保全・再生、森
林の再生、ササ拡大抑止対策、水環境(湖沼・河川・湿原)の保全、海浜・藻場の保全とい
った取り組みを進めます。
基本施策2-4:社会資本整備における自然環境への配慮
社会資本整備にあたっては、在来植物による道路法面緑化や、河川・港湾工作物の建設に
おける生物多様性への影響軽減・保全など、礼文島の自然環境に応じた独自の工法や整備方
針を検討し、その实施に努めます。
基本施策2-5:法令等による保全
生物多様性の保全に関わる地域については、生物多様性の保全と持続可能な利用に向け、
制度や土地を所管する関係行政機関と連携・協働しながら、適正な管理・保全を行います。
また、必要に応じて、今後の地域の適正な範囲や区分のあり方について検討・提言します。
基本施策2-6:低炭素社会の構築・循環型社会の構築との統合的な取り組み
礼文島における希尐植物や自然植生の保全、さらには生物多様性保全に関するより広範な
取り組みの一つとして、ハイブリッドバスや電気自動車の導入による二酸化炭素排出量の削
減や、町民参加による漂着ゴミ等の回収・処理を推進するための地域通貨の活用の検討、環
境認証制度を活用した地域商品への生物多様性の価値の反映の検討など、生物多様性の保全
につながる環境負荷の小さな社会、低炭素社会・循環型社会の構築に向けた取り組みを総合
的に推進します。
56
予防原則と順応的管理
生物多様性の保全のため、開発や保全施策など人間がもたらす行為によって悪影響を被らな
いことが大切です。そのため、
「予防原則」と「順応的管理」が重視されてきました。前者の
「予防原則」は、開発や保全施策など人間がもたらす行為の立案にあたり、事前に、科学的に
生物多様性の現状を把握し、それに対する悪影響を評価し、科学的に予測できない部分につい
ては種々想定される悪影響を重視して、行為の事前に計画を再検討・修正する方法です。これ
は、本来、生物多様性保全に関して最も確実な考え方です。他方、
「順応的管理」は、
「予防原
則」としての現状把握と影響評価を進めた上で、どうしても未来予測が丌確実な部分について
は、開発や保全施策など人間がもたらす行為を実施した事後にモニタリング調査・影響の評
価・検証を続け、随時、見直しと修正をおこなう考え方です。本来的に、これら「予防原則」
と「順応的管理」のいずれも、生物多様性保全にとって重要な考え方、かつ重要な方法といえ
ます。
しかし、各種の開発計画に対する環境影響評価(環境アセスメント)において、最近、「順
応的管理」という言葉がよく使用されるようになり、中には、上述の観点から基本的に間違っ
た悪用例が認められます。それは、事前の現状把握が丌十分、あるいは環境に対する影響評価
が過小である上に、影響があったら事後に対策を講じることを「順応的管理」と呼ぶ悪用例で
す。自然を破壊した後、生物多様性に悪影響を不えた後の対策は、真の順応的管理ではありま
せん。
したがって、事前に十分な現状把握と環境影響評価を行う「予防原則」が大切です。そうし
た上で、結果として予防原則が効果を発揮しない場合も想定されますので、事前も事後も常に、
「予防原則を含む本来的な順応的管理」を考えるべきです。そうした考え方によって、どこま
でも生物多様性保全のために人々の多面的な知恵を結集する必要があります。
57
基本方針3:いきものつながりの取り組みを実施・継続するためのしくみづくり
礼文島いきものつながりの保全と持続可能な恵みの利用を進めるためには、島民や事業者、行
政など、多様な主体が礼文島の生物多様性の重要性を認識した上で、共通の目標に向かって協
働・連携し、合意形成を図りながら、それぞれの役割に応じて取り組みを進めていく必要があり
ます。
しかし、一方では、人口の減尐・尐子高齢化が急激に進行していることから(参考資料「2-7.
人口」参照)、担い手不足や地域コミュニティの希薄化による地域活動の停滞が懸念されるとい
った地域の实情をふまえながら、生物多様性の保全と持続可能な恵みの活用の实現に向けたしく
みづくりも必要です。
基本施策3-1:多様な主体との情報交換・連携強化
礼文島に暮らす人々を中心として、礼文島に関わる各主体が生物多様性保全という共通の
目標に向かって自主的な取り組みを着实に实行していくためには、主体間の連携や情報交換
が欠かせません。多様な主体の間で定期的に情報交換を行う場を設け、これからの島の暮ら
しと生物多様性について一緒に考え、行動に移していくための核となるしくみづくりに努め
ます。
基本施策3-2:担い手づくり
地域活動団体に対してフォーラム開催などの事業委託を行うことや活動支援金制度を創設
することなどを通して、
『礼文島いきものつながりプロジェクト』の推進を主体的に担う人
材・組織の育成に努めます。また、
「島ガイドの育成」や「いきものつながり応援団」といっ
た個々の活動の場を創り出すことにより、島内外から『礼文島いきものつながりプロジェク
ト』への参加者・活動者を増やす取り組みを推進します。
基本施策3-3:事業・活動財源の確保
「礼文島リボンプロジェクト」のような活動財源確保のための施策をモデル的に实施する
とともに、環境に特化した地域通貨制度の導入など、活動のための財源の確保や活動支援の
ための助成制度の創設に努めます(「4-3.財源の確保」参照)。
58
基本方針4:いきものつながりに関する普及啓発・教育の推進
『環境問題に関する世論調査』
(内閣府、2009 年 6 月調査)によると、
「生物多様性」の「言葉
の意味を知っている」と答えた人は 12.8%、
「意味は知らないが、言葉は聞いたことがある」と
答えた人は 23.6%、
「聞いたこともない」と答えた人は 61.5%で、「生物多様性」という言葉その
ものがまだ十分知られているとは言えません。生物多様性の意味とその保全の重要性を認識して
もらい、地域レベル、個人レベルでの取り組み、さらには社会経済活動全般における取り組みの
必要性をより多くの人に、より早い段階で知ってもらうことが必要です。
島に住む人にとってあたり前の自然の恵みが、島の暮らしや産業を支える資源であり、世界に
誇れる財産であることを改めて認識し、身近にある大切な恵みを受け続けられるよう、「みんな
で守り、次世代へ引き継いでいこう」、という意識を高めていくことが必要です。
さらに、島を訪れる多くの人に対しては、礼文島の生物多様性の大切さ、そしてその生物多様
性を守ろうとする気持ちを発信し、「礼文島いきものつながり」を応援してくれる人を増やして
いくことも重要です。
基本施策4-1:
「礼文島いきものつながり」の発信
「礼文島いきものつながり」の大切さや魅力などを島内外に広く発信するため、ホームペ
ージのほか、
「広報れぶん」やガイドブックの製作・配布など、様々な媒体を利用した PR に
努めます。また、研究機関や NPO、町民との交流やシンポジウム、イベントを通じた普及啓
発も重要であることから、これらのイベントと町民の体験を合わせた情報の発信に努めます。
基本施策4-2:ライフステージに応じたアプローチ
これまで行われてきた町民学習交流会や出前講座等を継続するとともに、
「礼文島いきもの
つながり」に関するフォーラムなどの開催に努めます。また、礼文町の教育カリキュラムと
しての「いきもの学習」を設定することや、地域通貨などによる学習活動への支援方策を検
討することにより、ライフステージに応じた学習機会の創出に努めます。
基本施策4-3:高山植物園(高山植物培養センター)・郷土資料館などの活用
島民だけでなく、島を訪れる人の利用も考え合わせた企画展示など、
「礼文島いきものつな
がり」を自然・人文の両面から広く伝える視点から、高山植物園(高山植物培養センター)
や郷土資料館の有効な活用に努めます。
59
基本方針5:いきものつながりによって得られる恵みの持続可能な活用
豊かな生物多様性の恵みを保全し、持続的に活用することは、島の生活を豊かにすることにつ
ながります。「いきものつながり」をキーワードに、漁業と観光の連携など産業同士の結びつき
を深め、礼文島の魅力や商品の魅力・付加価値を高めるためのブランド化を進めることは、礼文
島における地域活性化を図る上で重要な視点と考えられます。さらにいきものつながりの取り組
みを、島の人が日々の暮らしの中で幸せを感じられるように推進することで、地域の産業と経済
を安定的に発展させることも期待されます。
基本施策5-1:観光利用との調和
エコツーリズムの考え方に基づき、礼文島の豊かな自然とその観光利用のあり方を再確認
するとともに、希尐植物や自然植生など貴重な自然への影響回避・軽減と利用者の体験の質
の確保の両立を目指して、自然歩道の整備と維持管理のガイドラインの検討・提言や過剰利
用の回避などの利用コントロール方策の検討を行います。
さらに、生物多様性の成り立ちと深く関係する地形や地質などの特徴や魅力についても、
地域の観光資源としての利活用に努めます。
基本施策5-2:漁業と観光業の連携を柱とした地域の活性化
礼文島の二大産業である観光業と漁業において、生物多様性の恵みを再認識し、その連携
によってさらなる産業の発展に寄与する企画開発や情報発信を行います。例えば、生物多様
性と漁業のつながりを学習するツアーの企画や、水産ブランドの開発と観光実への情報発信
などが考えられます。
基本施策5-3:暮らしの中での恵みの利用
豊かな「礼文島いきものつながり」を背景に引き継がれてきた地域の文化や地域に合った
レジャーをこれからも楽しむことができるように努めます。とりわけ、ハイキングや釣りの
ほか、山菜採りは、島内に暮らす人々の食文化や暮らしに深いつながりがあることから、浜
辺や草原、森林を安全に、壊さず持続的に利用できる方法の紹介などに努めます。
60
3-3.重 点 施 策 ( ア ク シ ョ ン プ ラ ン )
『礼文島いきものつながりプロジェクト』全体の先導的な役割を果たすとともに、プロジェク
トの効果を町民や島を訪れる人にアピールする施策として「重点施策(アクションプラン)」を
設定し、対策の具体化・实践に向けた取り組みを優先的に行います。3~5 年を 1 つの目途として
一定の成果を出すことを目指します。
『礼文島いきものつながりプロジェクト』は、
“生
しくみの
枠をつくる
物多様性”という視点から礼文町のまちづくりを推
進する新しいプロジェクトとなります。新しいプロ
ジェクトをスタートさせる現段階でのアクション
プランとして、島の生物多様性に迫る危機を回避す
るための具体的な対策の实施に向けた取り組みは
取り組みの
担い手を
増やす
取り組みを
企画・実践
する
しくみを
安定・充実
させる
もちろん、担い手や財源の確保といった“しくみ”
を安定させる取り組みも戦略的に進め、新しいプロ
ジェクトを定着・継続させるための基礎を築いてい
プロジェクトの
継続・発展・充実
く必要があります。
アクションプランは、行政が主体となって取り組む内容もありますが、町民や NPO、事業者な
どが責任ある主体として積極的に参加し、取り組んでいくことで、継続的な取り組みとなること
を目指します。

アクションプラン 1:
『
(仮称) 礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設立と
事業推進

アクションプラン 2:生物多様性の調査・保全・再生

アクションプラン 3:「礼文島いきものつながり」にふさわしい利用の实現

アクションプラン 4:『礼文島いきものつながりプロジェクト』の担い手づくり

アクションプラン 5:「礼文島いきものつながり」の PR
アクションプラン1:
『
(仮称) 礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設立と事業推進
『礼文島いきものつながりプロジェクト』推進のための活動母体として、
「(仮称)礼文島いき
ものつながりプロジェクト推進会議」を設立します。この組織は、町民、NPO など市民団体、事
業者、教育・研究機関、行政などが参加する連携組織とします。各主体の役割を明確にするとと
もに、情報交換・共有することによる各主体の対策・取り組みの効率化、また多様な主体が関わ
ることによる多様な視点からの対応を可能とする体制を目指します(「4-1.
推進体制」参照)。
「
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議」では、
「礼文島いきものつながりプ
ロジェクト」推進に向けた取り組みの具体的な企画・立案と取り組み効果の検証・改善方策の検
討を实施します。
61
アクションプラン2:生物多様性の調査・保全・再生
希尐植物や自然植生などの礼文町の生物多様性の保全を図るため、生物多様性の現状把握とモ
ニタリング調査を進め、調査結果に基づいた保全・再生の対策を講じる、そのような順序を大切
にして、以下の取り組みを複合的に進めていきます。
希少植物の現状把握とモニタリング調査
礼文島における希尐植物保全の基礎データとして、礼文島レッドデータブックの作成を進
めます。そのためには、研究者による調査を推進すると同時に、町民が可能な現状調査やモ
ニタリング調査の方法を検討します。
レブンアツモリソウ保護増殖事業の継続とその他の希少植物の生息域外保全
研究の進んでいるレブンアツモリソウを希尐種保全モデルとして示すべく、国・北海道と
連携しながら保護増殖を進めていきます。現存するレブンアツモリソウを保護・維持する方
法を確立するとともに、盗掘などで失われた自生地の回復に努めます。レブンアツモリソウ
以外の希尐植物についても、生息域内保全に加え、生息地での衰退や絶滅を補償する手段と
して、高山植物培養センター等を利用した生息域外での保全に努めます。
生物多様性の現状把握
希尐植物以外の生物多様性に関して、特に情報量の尐ない生物群に注目して、保全のため
に基礎となる現状把握に努めます。
外来種対策
新たな外来種の侵入を予防するために、外来種の侵入・拡大経路を想定しながら、フェリ
ーターミナルや自然歩道入口など外来種の侵入・拡大を効果的に抑止できると考えられる箇
所への靴底付着物除去マット・ブラシの設置を検討します。
既に島内に侵入している外来種については、これまでの調査結果を基に、外来種の定着状
況・生態的特性などから優先的に除去を行うべき種を選定し、より効率的かつ確实な除去手
法の確立を目指します。
62
ササの侵入抑止対策
ササも自然植生の一部ではありますが、希尐植物が生育する自然草原へササが侵入しつつ
ある場所では、希尐植物と多様性の高い自然植生の保全が優先されると考えます。そのため
に、ササのもたらす生物多様性の意義を考え合わせながら、ササの拡大抑止に関する試験研
究に着手します。また、森林植生が過去の伐採後ササに被われたまま森林に回復しない場所
では、森林の回復だけでなく、希尐植物を含む林床植物が尐なくなったことが想定されるた
め、ササ刈り払いによる森林の回復効果の検証に努めます。
『
(仮称)礼文島にふさわしい社会資本整備ガイドライン』の検討
「礼文島いきものつながり」にとって適切な整備が行われるよう、事前調査から工法の選
定、施工時の配慮、施工後のモニタリングなど、一連のしくみを整理したガイドラインを検
討・策定し、礼文島に特化した技術の向上に寄与します。
アクションプラン3:
「礼文島いきものつながり」にふさわしい利用の実現
自然歩道等の利用ルール及び施設整備・維持管理ガイドラインの検討・提言
礼文島にはお花畑をめぐる自然歩道が整備され、多くの観光実に利用されています。自然
歩道は、国立公園を楽しむ上で欠かせない重要施設ですが、その利用のしかたによっては貴
重な自然に大きな影響を与えます。特に、自然歩道の利用や整備の不足は、路面の侵食や外
来種の侵入などを引き起こす要因になります。自然歩道の利用状況に加え、利用者の行動や
意識を十分に把握し、自然歩道の荒廃、貴重な自然や利用体験の質の保全とのバランスの中
で、自然歩道の利用ルール、自然歩道などの施設の適正な整備水準と維持管理のしくみづく
りに努めます。
『礼文島トレッキングルールブック』による利用ルールの周知
観光実をはじめとする自然歩道利用者に対して、自然歩道のルートの解説とともに、盗掘
や踏みつけ、外来種の持込みなど、自然歩道の利用にあたって守ってほしいルール、地域が
自然保護に貢献するためにとっている対策と検討する施設整備・維持管理ガイドラインの内
容などを『礼文島トレッキングルールブック』として整理し周知を図ります。
63
アクションプラン4:
「礼文島いきものつながりプロジェクト」の担い手づくり
「
(仮称)礼文島いきものつながり応援団」の募集
「礼文島いきものつながりプロジェクト」の实現には、島民の人たちの力のほかに、実観
的に礼文島の自然の価値を評価している島外の人たちによる応援が大きな力となります。礼
文島が永遠に美しい花の島であることを願う人が大勢います。そのような個人・企業に「(仮
称)礼文島いきものつながり応援団」になってもらい、ボランティアとして島内における各
種活動に参加できるしくみづくりに努めます。
「
(仮称)礼文島いきものつながり学習」による次代を担う子どもたちの教育
生物多様性に対する住民意識の向上は、小学校・中学校・高校の教育に期待するところが
大きいといえます。その意味で、地域を学ぶ「礼文学」は、児童・生徒の郷土意識を高める
など、その成長に大きなプラスの影響を与えるものとして高く評価されています。今後は、
生物多様性の観点からこの礼文学をさらに発展させ、礼文島独自の教育カリキュラムとして
「
(仮称)礼文島いきものつながり学習」の設定に努めます。
アクションプラン5:
「礼文島いきものつながり」のPR
「礼文島いきものつながり」の大切さや魅力などを島内外に広く発信するため、ホームページ
や「広報れぶん」
、各種ガイドブックの製作・配布など、様々な媒体を利用した PR に努めます。
また、町はもとより、研究機関や NPO などの市民団体も含めた情報交換やフォーラム、イベン
トを通じた普及啓発に努めます。
64
65
4.戦略の推進
4-1.推 進 体 制
4-1-1. 『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設立
礼文島のいきものつながり(生物多様性)は、過去の研究によって維管束植物などのように全
国レベルでの貴重性がわかり、それに基づいて種々の生物多様性保全策が講じられてきました。
そうした過去の施策を一層推進するため、『礼文島いきものつながりプロジェクト』では、礼文
島に関わる多様な主体(町民、NPO など市民団体、事業者、教育・研究機関、行政など)が参画
し、礼文町を中心に置いて連携することが必要です。
そうした観点から、様々な主体が情報や意見を交換し、様々な主体間の調整を行い、協力して
プロジェクトを推進していくための組織として、島内の関係者に加えて関係行政機関、大学等研
究機関との協働による『
(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』を設立します。
その中で、事前も事後も含んで常に、人々の多面的な知恵を結集する意味での「順応的管理」の
考え方に基づき、色々な状況を判断しながら、適正なアクションプランを实行していきます。
一方、礼文島には、優れた自然や特異な景観を楽しむために多くの観光実が訪れますが、自然
歩道の利用などによる生物多様性への影響は無視できないと考えられることから、観光実をはじ
めとする来島者の協力も必要です。礼文島の生物多様性の特徴や、生物多様性を守り楽しむため
に礼文島で進められている自然保護に関する情報を提供し、観光実自身ができることを呼びかけ
るなど、観光実や来島者に利用マナーや適正な行動を期待する対策を講じます。
『(仮称)礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』
島内
教育機関
関係
行政機関
連携
島外
事業者
連携
礼文町
行政
礼文町民
島内
事業者
連携
大学等
研究機関
NPO等
市民団体
礼文島内
関係者
礼文島いきものつながりプロジェクトの推進
66
来島者
(観光客等)
4-1-2. 各主体の役割
『礼文島いきものつながりプロジェクト』の施策を实効性のあるものとするために、礼文島に
関わる各主体が、立場に応じた役割と責任をもって『(仮称)礼文島いきものつながりプロジェ
クト推進会議』の中で様々な意見やアイディアを出し合い、合意形成を図ります。
(1) 町民
生物多様性の保全と持続可能な利用が日々の暮らしと密接な関わりがあることを認識し、「礼
文島いきものつながり」の一員として、『礼文島いきものつながりプロジェクト』への参加を通
し、絶滅しやすい希尐野生動植物の保護の实践、外来種についての正しい理解、生活者ならでは
のアイディアの提案など、生物多様性の保全を意識したライフスタイルを实践することが期待さ
れます。
(2) NPO等市民団体
関係行政機関や教育・研究機関と協働して、「礼文島いきものつながり」に関する現状把握・
モニタリングの实施、地域や学校の自然環境保全活動や環境学習活動における協力・支援、『礼
文島いきものつながりプロジェクト』の推進に向けた研修会の实施、観光実に対する「礼文島い
きものつながり」の重要性の情報発信などの活動を発展・充实させることが期待されます。
(3) 事業者
様々な事業活動の中で「礼文島いきものつながり」を意識し、野生動植物の生息・生育地の保
全や保護活動への参加、島外から外来種を持ち込まないための配慮、観光実に対する「礼文島い
きものつながり」の発信、経済的な価値が生まれるようなアイディアの提供など、関係行政機関
や NPO 等市民団体などとの協働による社会貢献活動に取り組むことが期待されます。
(4) 教育・研究機関
礼文島の生物多様性に関する調査研究を实施し、専門的な知識・技術をふまえた問題点・課題
の提示や改善方策検討に向けた助言・指導を行うとともに、科学的知見に基づく取り組みの重要
性に関する普及啓発、取り組みを通じた「礼文島いきものつながり」に関する学習・教育への貢
献が期待されます。
(5) 国・北海道等の関係行政機関
各種予算上の措置、他地域における取り組みに関する情報提供、取り組みの实施にあたっての
技術的な助言など、生物多様性の保全に対する地域の意欲を实際の取り組みとして具体化し、発
展して地域活性化につなげられるように支援する役割を担います。国・北海道が主体的に行って
きた取り組みや成果を活かし、生物多様性の保全を共通認識として国立公園や森林などの維持管
理や施設整備、レブンアツモリソウをはじめとする希尐動植物の保護増殖など、様々な施策にお
いて積極的に連携することが望まれます。また、礼文町の枞を越えた広域的な課題については、
地域間の調整を図る役割が期待されます。
67
(6) 礼文町
町は、『礼文島いきものつながりプロジェクト』に基づき、生物多様性の保全と持続可能な利
用に関する施策を総合的、計画的に推進するとともに、町みずからが事業者及び利用者として率
先した行動を实践しなければなりません。町民、事業者、市民団体などの各主体が積極的にプロ
ジェクトに取り組むことができるよう、取り組みを円滑に効果的に進めていく調整役として、島
内外の様々な関係者との連携・調整を図るとともに、調整や合意形成を図る場を設定することや、
助言や必要な支援を受けるため、必要に応じて国や北海道との連携を図ります。
68
4-2.進 行 管 理
『礼文島いきものつながりプロジェクト』の進行管理は、PDCA サイクル(アクションプラン
の策定(Plan)→アクションプランの实行(Do)→アクションプランの効果検証(Check)→ア
クションプランの見直し・改善(Action))の各過程で、
『(仮称)礼文島いきものつながりプロジ
ェクト推進会議』において協議・調整を図り、アクションプランの点検、評価、および必要に応
じて『礼文島いきものつながりプロジェクト』の見直しを行います。
(1) 計画(Plan)
・実行(Do)
PLAN
計画
各主体の役割に応じた取り組みを決定し
(計画)
、連携を保ちながらそれぞれの施策
アクションプラン・
戦略の策定
を实行します。
(2) 点検・評価(Check)
概ね 5 年ごとに、アクションプランの進捗
状況について点検・評価を行います。
ACTION
改善
ア
見ク
直シ
ョ
しン
・
改プ
善ラ
ン
の
進行状況の公表
情報発信
ア
ク
シ
実ョ
行ン
プ
ラ
ン
の
DO
実行
アクションプランの
効果検証
(3) 見直し・改善(Action)
評価結果を踏まえたアクションプランの
見直し・改善を検討するとともに、新規取り
CHECK
評価
組みを検討します。
(4) 進行状況の公表・情報発信
『礼文島いきものつながりプロジェクト』の進行状況については、インターネットや広報など
を通じて公表・情報発信をするともに、適宜、施策に参加した町民等による参加する活動発表の
機会を設けます。
69
4-3.財 源 の 確 保
課題の緊急性やプロジェクトの進捗状況、効果等を検討し、優先的に取り組むべき事項を洗い
出した上で、必要な財源を生物多様性の保全・改善・活用に配分していかなければなりません。
そのためには、予算の確保はもちろん、国等による補助・既存制度の積極的な活用・助成制度の
創設に加え、新たな財源確保の方策の検討も視野に入れながら取り組みを推進する必要がありま
す。
4-3-1. 予算の確保

『礼文島いきものつながりプロジェクト』を安定的に推進するために、プロジェクトの進
捗状況をふまえた中で、町は中心的な事業者として、町の予算を計画的に配分することや、
関係する制度や土地等を所管する関係機関の予算も確保する必要があります。

将来に向けて『礼文島いきものつながりプロジェクト』の広がりをもたせるため、就学す
る児童生徒の活動を十分に支援する必要があることから、関係する活動に必要な予算を別
枞で確保することを検討する必要があります。

地域の人的資源を活用することが効率・効果的である場面においては、NPO 等を中心とす
る地域活動に対する積極的な支援や、簡易な事業は NPO 等へのアウトソーシング化を行
うなど、予算の組み替えや新規の予算の確保を検討する必要があります。
4-3-2. 新たな財源確保の方策の検討

観光を中心に礼文島いきものつながりから発生する恩恵を地域産業が直接的に受け、活用
していることを表現するため、交付税を中心とした財源だけではなく、「礼文島リボンプ
ロジェクト」のような、利用者が自発的にアクションプランに参加することによる財源の
確保や、国立公園や園路の「利用料・入園料」といった利用者への直接負担、あるいは、
広く負担することのできる「入島税」「宿泊税」といった別立ての財源確保を検討する必
要があります。

「自然基金」を創設し、趣旨に賛同する個人・企業からの寄付金や、前述した財源を積み
立て、これらを安定的に再配分するしくみを検討する必要があります。

「地域通貨」を創設し地域内で流通させるなど、活動する団体や個人の財政的な支援を検
討する必要があります。

地域企業の協賛や寄付金つき商品の造成など、活動を支える企業とのタイアップを積極的
に検討していく必要があります。

「オーナー制度」の導入によって、レブアツモリソウなど価値の高い植物の保護・増殖事
業に特化した財源の確保について検討していく必要があります。
70
資
料 編
1.礼文町生物多様性地域戦略策定の経緯等
1-1.検 討 ス ケ ジ ュ ー ル
平成
平成
年 月 日(水)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
平成 年 月 日(土)
第 回検討委員打ち合わせ
平
成
22
年
度
平成 年 月 日(木)
第 回検討委員打ち合わせ
平成
平成
年 月 日(月)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、戦略の構成、戦略策定の進め方、礼文島の生物多様性の現状把握について
平成 年 月
『礼文島いきものつながりプロジェクトの概要』(礼文町生物多様性地域戦略のガイドライン/
平成
平成
版) 作成
年 月 日(金)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、戦略策定の進め方、「戦略策定にあたって」(戦略策定の背景、戦略の位置づけ)について
平成 年 月~ 月
礼文高等学校3年生による「礼文島いきものつながり」の恵みに関する聞き取り調査 実施
平成 年 月 日(水)
礼文島いきものつながり意見交換会 開催
平
成
23
年
度
平成
平成
年 月 日(木)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、「礼文島の生物多様性の現状と課題」について
平成
平成
年 月 日(木)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、礼文島の生物多様性の現状と課題について
平成
平成
年 月 日(月)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、「礼文島の生物多様性の現状と課題」、「礼文島いきものつながりプロジェクト」(将来像~基本方針~施策)について
平成
平成
年 月 日(火)
年度 第 回礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会 開催
主に、「礼文島いきものつながりプロジェクト」(将来像~基本方針~施策)、「戦略の推進」について
平成 年 月
礼文町生物多様性地域戦略『礼文島いきものつながりプロジェクト』 策定
資料 1
1-2.検 討 体 制
礼文町生物多様性地域戦略策定検討委員会名簿
検討委員会役職
委員長
氏名
小
野
所属等
徹
礼文町長
自治体の首長
レブンクル自然館代表
地域活動団体の代表
委員長代理
宮本
委員
久 保
和 夫
礼文町観光協会長
産業団体の代表
柳 谷
隆 敏
礼文町民宿旅館組合長
産業団体の代表
村 上
賢 治
環境
地域活動団体の代表
藤 沢
隆 史
礼文町教育委員会学芸員
地域教育組織の代表
河 原
孝 行
森林総合研究所北海道支所森林育成グループ長
研究関係者(植生)
高 橋
英 樹
北海道大学総合博物館教授
研究関係者(植生)
杉 浦
直 人
熊本大学大学院自然科学研究科准教授
研究関係者(昆虫)
愛 甲
哲 也
北海道大学大学院農学研究院准教授
研究関係者(歩道)
八 巻
一 成
森林総合研究所北海道支所
北方林管理研究グループ主任研究員
研究関係者(社会学)
研究者(植生)
藤
謙
北海学園大学工学部教授
庄
子
康
北海道大学大学院農学研究院准教授
俵
古 谷
事務局
礼文島自然情報センター代表
佐
畠
オブザーバー
誠一郎
選出理由
昭
二
誠
健 一
研究者(社会学)
※平成
年度はオブザーバー
公募
※平成
年度のみ
公募
※平成
年度のみ
公募
環境省北海道地方環境事務所
関係行政機関
林野庁北海道森林管理局宗谷森林管理署
関係行政機関
北海道宗谷総合振興局(保健環境部環境生活課、
稚内建設管理部礼文出張所)
関係行政機関
礼文町建設課
関係行政機関
礼文小学校長
校長会会長
香深井小学校教頭
教頭会会長
礼文町産業課
株式会社ライヴ環境計画
(敬称略)
資料 2
2.参考資料
2-1.気 候
香深村字トンナイ(標高 65m)におけるアメダス資料(平成 16 年~平成 22 年)によると、
月平均気温は、最低-4.5℃(2 月)
、最高 19.9℃(8 月)です。年間降水量は概ね 900~1,000mm
で、5 月~9 月にかけて降水量が多く、10 月~翌 4 月にかけてやや尐ない傾向がみられます。冬
季は西寄りの風が多く、5 月~8 月にかけては、南西寄りもしくは東寄りの風となっています。
風速は、3 月~7 月にかけて 3.5m/s 以上とやや強く、秋から冬にかけての 8 月~翌 2 月は 3.5m/s
以下と夏季に比べてやや弱くなっていますが、最大風速は冬季に大きな値を示しており、西寄り
の強風が吹く特徴がみられます。
25.0
20.0
19.9
16.9
15.0
17.4
13.0
10.0
11.2
8.2
5.0
3.8
0.0
3.6
-0.7
-4.4
-5.0
-2.3
-4.5
-10.0
1月
2月
3月
4月
平均気温(℃)
5月
6月
7月
8月
9月
日最高気温の平均(℃)
10月 11月 12月
日最低気温の平均(℃)
図 月平均気温(平成16年~平成22年平均)
1,500
200
1,137.0
978.0
996.0
1,000
1,095.5 1,119.5
130.4134.7
150
917.0
820.5
98.9
100
500
74.1 80.8 81.9
0
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
月降水量(mm)
年間降水量(mm)
図 年間降水量の推移(平成16年~平成22年)
図 月平均降水量(平成16年~平成22年平均)
200
2,000
1,500
87.8
45.6 44.2
50
0
72.6
71.4 64.2
1,319.7 1,254.0 1,310.1
1,440.6 1,459.4
1,308.0 1,280.6
150
50
500
124.0
111.7
100
1,000
178.6
168.3 162.5
140.6
146.9
106.3
72.1
57.4
38.0
32.5
0
0
H16
H17
H18
H19
H20
H21
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
H22
日照時間(h)
日照時間(h)
図 月平均日照時間(平成16年~平成22年平均)
図 年間日照時間の推移(平成16年~平成22年)
20
14.2
15
13.3
14.5
12.5
12.2
12.2
10.1
9.8
9.9
10.8
12.9
13.8
10
5
3.2
3.1
3.9
3.8
4.2
3.8
3.6
3.5
3.3
3.4
3.5
3.4
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
0
平均風速(m/s)
最大風速(m/s)
図 月平均風速(平成16年~平成22年平均)
※アメダス礼文:気象庁ホーム http://www.jma.go.jp/jma/index.html>気象統計情報
>過去の気象統計検索>検索「宗谷」
「礼文」
資料 3
1月
2月
N
NNW
NNE
NW
3月
N
NNW
NE
N
NNE
NW
NNW
NE
NNE
NW
NE
WNW
ENE
WNW
ENE
WNW
ENE
W
E
W
E
W
E
WSW
ESE
WSW
ESE
WSW
ESE
SW
SE
SSW
SW
SSE
SE
SSW
S
4月
SE
SSW
S
5月
N
NNW
SW
SSE
NW
S
6月
N
NNE
NNW
NE
SSE
N
NNE
NW
NNW
NE
NNE
NW
NE
WNW
ENE
WNW
ENE
WNW
ENE
W
E
W
E
W
E
WSW
ESE
WSW
ESE
WSW
ESE
SW
SE
SSW
SW
SSE
SE
SSW
S
7月
SE
SSW
S
8月
N
NNW
SW
SSE
NW
S
9月
N
NNE
NNW
NE
SSE
N
NNE
NW
NNW
NE
NNE
NW
NE
WNW
ENE
WNW
ENE
WNW
ENE
W
E
W
E
W
E
WSW
ESE
WSW
ESE
WSW
ESE
SW
SE
SSW
SW
SSE
SE
SSW
S
10月
SE
SSW
S
11月
N
NNW
SW
SSE
NW
NNW
NE
S
12月
N
NNE
SSE
N
NNE
NW
NNW
NE
NNE
NW
NE
WNW
ENE
WNW
ENE
WNW
ENE
W
E
W
E
W
E
WSW
ESE
WSW
ESE
WSW
ESE
SW
SE
SSW
SW
SSE
SE
SSW
S
SSE
S
SW
SE
SSW
SSE
S
凡例
N
NNW 40%
NNE
30%
NW
NE
20%
WNW
ENE
10%
W
E
0%
WSW
ESE
SW
図 月別最多風向(平成16年~平成22年)
※アメダス礼文:気象庁ホーム http://www.jma.go.jp/jma/index.html>気象統計情報
>過去の気象統計検索>検索「宗谷」
「礼文」
SE
SSW
SSE
S
資料 4
2-2.地 形
地形分類
傾斜区分
自然景観資源
「第 3 回自然環境保全基礎調
査自然景観資源調査」
(環境庁、
表 礼文島の自然景観資源
No.
類型
名称
自然景観資源名
1 山地(非火山性)景観
礼文丘陵
丘陵(中地形)
2 特殊地学景観
礼文島桃岩
節理(極微地形)
島には地形の特徴に基づいた 12
3 湖沼景観
久種湖
湖沼(小地形)
4 河川景観
礼文滝
滝(極微地形)
件の自然景観資源があります。
5 海岸景観
昭和 61~62 年)によれば、礼文
これらの資源は、海上からの眺
め、陸上からの眺め、いずれの
視点からも、美しい海とあいま
っ て 優 れた 景観 を 構成 し てお
り、礼文島における重要な観光
資源ともなっています。
資料A
資料B
●
●
●
●
●
多島海(中地形)
●
6 海岸景観
船泊-浜中海岸
砂浜・礫浜(小地形)
●
7 海岸景観
ゴロタノ浜
砂浜・礫浜(小地形)
●
8 海岸景観
スコトン岬
海食崖(微地形)
●
●
9 海岸景観
ゴロタ岬
海食崖(微地形)
●
●
10 海岸景観
礼文島西海岸
海食崖(微地形)
●
●
11 海岸景観
ベンサシノ崎
海食崖(微地形)
●
●
12 海岸景観
金田ノ岬-上泊崎
岩礁(微地形)
●
※資料A:環境省生物多様性情報システム検索結果(礼文町で検索)
※資料B:第 3 回自然環境保全基礎調査「北海道自然環境情報図」
資料 5
土砂災害危険箇所
礼文島には、土砂災害への備えや警戒・避難に役立てることを目的として抽出された土砂災害
危険箇所(地すべり危険箇所、急傾斜地崩壊危険箇所、土石流危険渓流)が 239 箇所あります。
表 土砂災害危険箇所数
土砂災害形態区分
分類
土 石 流 危 険 渓 流
Ⅰ
箇所数
土砂災害危険箇所

土石流危険渓流
土石流発生の恐れが高いとされている 3°以上の渓床勾配
を有する渓流のうち、土石流により人家や公共施設に被害を
Ⅱ
及ぼす恐れがあるもの
Ⅲ
計
急傾斜地崩壊 危険 箇所

急傾斜地崩壊危険箇所
傾斜度 30°以上でその高さが 5m 以上の急傾斜地のうち、
Ⅰ
がけ崩れにより人家や公共施設等に被害を及ぼす恐れがあ
Ⅱ
る箇所
Ⅲ
計
地 す べ り 危険 箇所
( 国土 交通 省所 管)

地すべり危険箇所
地すべり地形を呈する地域の面積が 5ha(市街化区域等にあ
っては 2ha)以上で、人家や公共施設等に被害を及ぼす恐れ
計
がある箇所
土砂災害 危険 箇所 合計
土砂災害形態区分における分類の解説

分類Ⅰ
土石流・がけ崩れの発生の危険性があり、5 戸以上の人家(人家がなくても公共施設・災害弱者施設が 1 施設以上
ある場合を含む)に被害を生じる恐れがある渓流・急傾斜地

分類Ⅱ
土石流・がけ崩れの発生の危険性があり、1 戸以上 5 戸未満の人家に被害を生じる恐れがある渓流・急傾斜地

分類Ⅲ
土石流・がけ崩れの発生の危険性があり、現在人家等の保全対象はないが将来住宅地が拡大して保全対象ができ
る可能性の高い地域に被害を生じる恐れがある渓流・急傾斜地
※稚内土木現業所ホームページより
資料 6
資料 7
2-3.礼 文 島 の 希 少 植 物 ( 絶 滅 危 惧 植 物 と 主 な 高 山 植 物 )
科名
種名
ヒカゲノカズラ科 コスギラン
イワヒバ科
エゾノヒメクラマゴケ
エゾノヒモカズラ
ハナヤスリ科
ヒメハナワラビ
ヒロハハナヤスリ
マツ科
ハイマツ
ミヤマビャクシン(ミヤマハイビャクシン)
ヒノキ科
ハイネズ
リシリビャクシン
ヤナギ科
ミヤマヤナギ
ビャクダン科
カマヤリソウ
タデ科
ヒメイワタデ
エゾイブキトラノオ(アミメイブキトラノオ)
ナデシコ科
キンポウゲ科
ムカゴトラノオ
カラフトノダイオウ
タカネナデシコ
エゾタカネツメクサ
ホソバツメクサ
カラフトマンテマ
リシリブシ
エゾノハクサンイチゲ
ミヤマオダマキ
ミヤマキンポウゲ
モミジカラマツ
レブンキンバイソウ(オクキンバイソウ)
スイレン科
ボタン科
オトギリソウ科
ネムロコウホネ
ヤマシャクヤク
ハイオトギリ
エゾオトギリ
アブラナ科
ミヤマハタザオ
ミヤウチソウ
ハマタイセイ
タカネグンバイ
ベンケイソウ科 レブンイワレンゲ
ユキノシタ科
ウメバチソウ
シコタンソウ
バラ科
チョウノスケソウ
チングルマ
ウラジロキンバイ
学名
Huperzia selago (L.) Bernh. ex Schrank et C. F. P. Mart
Selaginella helvetica (L.) Link
Selaginella sibirica (Milde) Hieron.
Botrychium lunaria (L.) Sw.
Ophioglossum vulgatum L.
Pinus pumila (Pallas) Regel
Juniperus chinensis L. var. sargentii A. Henry
Juniperus conferta Parl.
Juniperus communis L. var. montana Aiton
Salix reinii Franch. et Sav. ex Seemen
Thesium refractum C. A. Mey
Aconogonon ajanense (Regel et T illing) H. Hara
Bistorta officinalis Delarbre subsp. pacifica (Petrov ex Kom.) Kom. ex Kitag.
Bistorta vivipara (L.) Delarbre
Rumex gmelinii T urcz. ex Ledeb.
Dianthus superbus L. var. speciosus Rchb.
Minuartia arctica Steven ex Ser. var. arctica
Minuartia verna L. var. japonica (H. Hara) H. Hara
Silene repens Patrin var. repens
Aconitum sachalinense F. Schm. var. compactum Miyabe et T atew.
Anemone narcissiflora L. subsp. crinita (Juz.) Kitag. var. sachalinensis Miyabe et T. Miyake
Aquilegia flabellata Siebold et Zucc.var. pumila Kudô
Ranunculus acris L. subsp. nipponicus (H. Hara) Hultén
Trautvetteria caroliniensis (Walter) Vail var. japonica (Siebold et Zucc.) T . Shimizu
Trollius ledebourii Rchb. var. polusepalus Regel et T iling
Nuphar pumila (T imm) DC. var. pumila
Paeonia japonica (Makino) Miyabe et T akeda
Hypericum kamtschaticum Ledeb.
Hypericum yezoense Maxim.
Arabidopsis kamtschatica (DC.) K. Shimizu et Kudoh subsp. kamtschatica
Cardamine trifida (Lam. ex Poir.) B. M. G. Jones
Isatis tinctoris L.
Noccaea cochleariformis (DC.) A. et D. Löve
Orostachys furusei Ohwi
Parnassia palustris L. var. palustris
Saxifraga bronchialis L. subsp. funstonii (Small) Hultén var. rebunshirensis (Engl. et Irmsch.) H. Hara
Dryas octopetala L. var. asiatica (Nakai) Nakai
Sieversia pentapetala (L.) Greene
Potentilla nivea L.
オオタカネバラ(オオタカネイバラ) Rosa acicularis Lindl.
チシマワレモコウ
Sanguisorba tenuifolia Fisch. ex Link. var. grandiflora Maxim.
タカネナナカマド
Sorbus sambucifolia (Cham. et Schltdl.) M. Roem.
エゾシモツケ
Spiraea media F. W. Schmidt var. sericea (T urcz.) Regel ex Maxim.
マメ科
チシマゲンゲ
Hedysarum hedysaroides (L.) Schinz et T hell. f. neglectum (Ledeb.) Ohwi
カラフトゲンゲ
Hedysarum hedysaroides (L.) Schinz et T hell. f. hedysaroides
レブンソウ
Oxytropis megalantha H. Boissieu
フウロソウ科
チシマフウロ
Geranium erianthum DC.
スミレ科
キバナノコマノツメ
Viola biflora L.
セリ科
レブンサイコ
Bupleurum ajanense (Regel) Krasnob.
オオカサモチ
Pleurospermum uralense Hoffm.
ヒロハシラネニンジン
Tilingia ajanensis Regel f. latisecta Kitag.
イチヤクソウ科 エゾイチヤクソウ
Pyrola minor L.
ツツジ科
ウラシマツツジ
Arctous alpinus (L.) Nied. var. japonicus (Nakai) Ohwi
イソツツジ
Ledum palustre L. subsp. diversipilosum (Nakai) H. Hara var. diversipilosum Nakai
キバナシャクナゲ
Rhododendron aureum Georgi
エゾツツジ
Therorhodion camtschaticum (Pall.) Small
コケモモ
Vaccinium vitis -idaea L.
ガンコウラン科 ガンコウラン
Empetrum nigrum L. var. japonicum K. Koch
サクラソウ科
トチナイソウ
Androsace chamaejasme Host subsp. lehmanniana (Spreng.) Hultén
サクラソウモドキ
Cortusa matthioli L. subsp. pekinensis (V. A. Richt.) Kitag. var. yezoensis (Losinsk) T. Yamaz.
レブンコザクラ
Primula farinosa L. subsp. modesta (Bisset et Moore) P ax. var. matsumurae (P etitm.) T. Yamaz.
ツマトリソウ
Trientalis europaea L.
資料 8
環境省/北海道*
科名
種名
学名
リンドウ科
エゾオヤマリンドウ
チシマリンドウ
アカネ科
エゾキヌタソウ
ハナシノブ科
カラフトハナシノブ
ムラサキ科
エゾルリムラサキ
シソ科
イブキジャコウソウ
ゴマノハグサ科 キタヨツバシオガマ
レブンシオガマ
シオガマギク
ネムロシオガマ
シラゲキクバクワガタ
ウルップソウ科 ウルップソウ
ハマウツボ科
ハマウツボ
スイカズラ科
エゾヒョウタンボク
チシマヒョウタンボク
ネムロブシダマ
チシマキンレイカ(タカネオミナエシ)
オミナエシ科
キキョウ科
チシマギキョウ
イワギキョウ
キタノコギリソウ(ホロマンノコギリソウ)
キク科
エゾノチチコグサ
オオウサギギク
サマニヨモギ
イワヨモギ
シコタンヨモギ
アサギリソウ
エゾウスユキソウ
トウゲブキ
ナガバキタアザミ
フタナミソウ
ユリ科
ミヤマラッキョウ
ゼンテイカ(エゾゼンテイカ)
チシマアマナ
チシマゼキショウ(クロミノイワゼキショウ)
リシリソウ
ミヤマヌカボ
ミヤマノガリヤス
コメススキ
ウシノケグサ(広義)
リシリカニツリ(広義)
サトイモ科
カラフトヒロハテンナンショウ
カヤツリグサ科 タカネショウジョウスゲ
ネムロスゲ
カラフトイワスゲ
リシリスゲ
シコタンスゲ
オノエスゲ(レブンスゲ)
ヌイオスゲ
ラン科
カラフトアツモリソウ **
レブンアツモリソウ
アツモリソウ
イネ科
注)学名は 、「
環境省/北海道*
Gentiana triflora Pall. var. japonica (Kusn.) H. Hara f. montana (H. Hara) Toyok. et Tanaka
Gentianella auriculata (Pall.) J. M. Gillett
Galium boreale L. var. kamtschaticum (Maxim.) Maxim. ex Herder
Polemonium caeruleum L. subsp. laxiflorum (Regel) Koji Ito
Eritrichium nipponicum Makino var. albiflorum Koidz. f. yesoense H. Hara
Thymus quinquecostatus Celak.
Pedicularis chamissonis Steven var. hokkaidoensis T . Shimizu
Pedicularis chamissonis Steven var. rebunensis T . Yamaz.
Pedicularis resupinata L.
Pedicularis schistostegia Vvedensky
Veronica schmidtiana Regel subsp. schmidtiana f. candida T . Yamaz.
Lagotis glauca Gaertn.
Orobanche caerulescens Stephan ex Willd.
Lonicera alpigena L. subsp. glehnii (F. Schmidt) H. Hara
Lonicera chamissoi Bunge
Lonicera chrysantha T urcz. ex Bunge
Patrinia sibirica (L.) Juss.
Campanula chamissonis Ar. Fedor.
Campanula lasiocarpa Cham.
Achillea alpina L. subsp. japonica (Heimerl) Kitam.
Antennaria dioica (L.) Gartn.
Arnica sachalinensis (Regel) A. Gray
Artemisia arctica Less. subsp. sachalinensis (F. Schmidt) Hultén
Artemisia sacrorum Ledeb.
Artemisia tanacetifolia L.
Artemisia schmidtiana Maxim.
Leontopodium discolor Beauveld
Ligularia hodgsonii Hook. f.
Saussurea riederi Herder subsp. yezoensis (Maxim.) Kitam.
Scorzonera rebunensis T atew. et Kitam.
Allium splendens Willd. ex Schult. et Schult. f.
Hemerocallis dumortieri C. Morren var. esculenta (Koidz.) Kitam. ex M. Matsuoka et M. Hotta
Lloydia serotina (L.) Rchb.
Tofieldia coccinea Richards. var. fusca (Miyabe et Kudô) H. Hara
Anticlea sibirica (L.) Knuth
Agrostis flaccida Hack.
Calamagrostis sesquiflora (T rin.) T zvelev
Avenella flexuosa (L.) Drejer
Festuca ovina L. s. l.
Trisetum spicatum (L.) K. Richt. s. l.
Arisaema sachalinense (Miyabe et Kudô) J. Murata
Carex blepharicarpa Franch. var. dueensis (Meinsh.) Akiyama
Carex gmelinii Hook. et Arn.
Carex rupestris Bellardi ex All.
Carex scita Maxim. var. riishirensis (Franch.) Kük.
Carex scita Maxim. var. scabrinervia (Franch.) Kük.
Carex tenuiformis H. Lév. et Vaniot
Carex vanheurckii Müll. Arg.
Cypripedium calceolus L.
Cypripedium macranthos Sw. var. flavum Mandl.
Cypripedium macranthos Sw. var. speciosum (Rolfe) Koidz.
和名
学名インデックス 」(
(
年
ていないものがあったので、学名との照合の上、複数の和名として示した。
)(米倉浩司・梶田忠 、
年~)
月
日)に基づいた。和名は、同リストに掲載され
* 環境省と北海道による絶滅リスクのカテゴリーを環境省 北海道と合わせて併記した。それぞれのカテゴリーは以下の通りである。
環境省レッドリスト(
)
:絶滅危惧
北海道レッドデータブック
類
:絶滅危機種
:絶滅危惧
類
:絶滅危惧種
** 自生個体でない可能性がある。
資料 9
:絶滅危惧Ⅱ類
:絶滅危急種
:準絶滅危惧
:希少種
2-4.外 来 植 物
「平成 22 年度礼文島外来種分布調査等業務報告書」
(環境省、2011 年)によると、150 種を超
える以下の外来植物の侵入が確認されています。
北海道の在来種であるアカエゾマツ、ヤマナラシ、シラカンバ、カシワ、クリ、ノイバラ、イ
ヌエンジュ、アキグミ、およびアオダモは、礼文島には元々分布しておらず、後に移入された外
来種です。また、本州以南の自生種であるフキもまた国内移入種であり、礼文島においては外来
種となります。さらには、世界に広く分布し礼文島にも生育するオオウシノケグサが外来種に挙
げられているが、欧米起源の同種が道路法面に導入されており、おそらく遺伝子が異なる外来種
として遺伝子の多様性から問題視されます。
科
マツ科
コウヤマキ科
ヤナギ科
カバノキ科 ブナ科
タデ科
スベリヒユ科
ナデシコ科
アカザ科
ヒユ科
キンポウゲ科
メギ科
ドクダミ科
ケシ科
アブラナ科
ベンケイソウ科
種名 *1
カラマツ
アカエゾマツ モンタナマツ
コウヤマキ
ギンドロ(ウラジロハコヤナギ)
セイヨウハコヤナギ
ヤマナラシ
シダレヤナギ オオバヤシャブシ
シラカンバ カシワ
クリ ヒメスイバ
イタドリ
ソバカズラ オオツルイタドリ
ツルタデ
ハイミチヤナギ
エゾノギシギシ スベリヒユ
セイヨウミミナグサ
ノハラナデシコ スイセンノウ
ヒロハノマンテマ、マツヨイセンノウ
アケボノセンノウ ノハラツメクサ ウスベニツメクサ
カラフトホソバハコベ コハコベ シロザ
アカザ
ウラジロアカザ アオゲイトウ、アオビユ
セイヨウキンポウゲ ハイキンポウゲ
メギ ドクダミ ヒナゲシ
セイヨウワサビ
セイヨウカラシナ
セイヨウアブラナ ナズナ、ホソミナズナ
オオナズナ、ナズナ
ゴウダソウ
キレハイヌガラシ オニハマダイコン
ハルザキヤマガラシ
ヨーロッパタイトゴメ
ウスユキマンネングサ
マルバマンネングサ(?)
ツルマンネングサ
学名
Larix kaempferi (Lamb.) Sargent
Picea glehnii (Fr. Schm.) Masters
Pinus mugo T urra
Sciadopytis verticillata (T hunb.) Sieb. et Zucc.
Populus alba L.
Populus nigra L. var. italica Muenchh.
Populus sieboldii Miq.
Salix babylonica L.
Alnus sieboldiana Matsum.
Betula platyphylla Sukatschev var. japonica (Miq.) Hara
Quercus dentara T hunb.
Castanea crenata Sieb. et Zucc.
Rumex acetosella L.
Reynoutria japonica Houtt.
Fallopia convolvulus (L.) A.Löve
Fallopia dentato-alatum Fr. Schm.
Fallopia dumetoraum (L.) Holub.
Polygonum arenastrum Boreau
Rumex obtusifolius L.
Portulaca oleracea L.
Cerastium arvense L.
Dianthus armeria L.
Lychnis coronaria (L.) Desr.
Silene alba (Mill.) E. H. Krause
Silene dioica (L.) Clairv.
Spergula arvensis L.
Spergularia rubra (L.) J. Presl et C. Presl
Stellaria graminea L.
Stellaria media (L.) Villars
Chenopodium album L. var. album
Chenopodium album L. var. centrorubrum Makino
Chenopodium glaucum L.
Amarantus retroflexus L.
Ranunculus acris L.
Ranunculus repens L.
Berberis thunbergii DC.
Houttuynia cordata T hunb.
Papaver rhoeas L.
Armoracia rusticana P. Gaertn., B. Mey. et Scherb.
Brassica juncea (L.) Cern.
Brassica napus L.
Capsella bursa-pastoris Medik. var. bursa-pastoris
Capsella bursa-pastoris Medik. var. triangularis Gruner
Lunaria annua L.
Rorippa sylvestris (L.) Bess.
Cakile edentula (Bigel.) Hook
Barbarea vulgaris R. Br.
Sedum acre L.
Sedum hispanicum L.
Sedum makinoi Maxim. (?)
Sedum sarmentosum Bunge
資料 10
指定等
*2
要注意
要注意
北海道
BL *3
科
ユキノシタ科
バラ科
マメ科
トウダイグサ科
アオイ科
グミ科 スミレ科
ミソハギ科
アカバナ科
セリ科
モクセイ科
キョウチクトウ科
ハナシノブ科
ムラサキ科
シソ科
ナス科
ゴマノハグサ科 オオバコ科 キク科
種名 *1
学名
マルスグリ
クサボケ
オランダイチゴ ヒメリンゴ *
サトザクラ
ノイバラ
ルピナス
ムラサキウマゴヤシ タチオランダゲンゲ
コメツブウマゴヤシ
ムラサキツメクサ
シロバナアカツメクサ
シロツメクサ
フジ
ヤマハギ ハリエンジュ
イヌエンジュ イタチハギ
マツバトウダイ
コニシキソウ ジャコウアオイ アキグミ
ニオイスミレ パンジー
ミソハギ
メマツヨイグサ
ノラニンジン アオダモ
ヒメツルニチニチソウ シバザクラ ヒレハリソウ(コンフリー)
チシマオドリコソウ(イタチジソ)*1
シロバナチシマオドリコソウ*1
コバノカキドオシ
シソ
ウツボグサ*1
ヒメオドリコソウ
ワルナスビ
イヌホオズキ タチイヌノフグリ オオイヌノフグリ コテングクワガタ モウズイカ
ビロードモウズイカ .
ヘラオオバコ セイヨウノコギリソウ ゴボウ
ヒメヨモギ ヨモギ ネバリノギク カミツレモドキ ユウゼンギク フランスギク(マーガレット)
ヒナギク アメリカセンダングサ セイヨウトゲアザミ
アメリカオニアザミ ヤネタビラコ キンケイギク
オオハルシャギク
ヒメジョオン
ヒメムカシヨモギ
ハルジョオン
ハキダメギク エダウチチチコグサ
キクイモ
コウリンタンポポ
ブタナ(タンポポモドキ)
トゲチシャ、トゲジシャ
イヌカミツレ コシカギク
フキ
アラゲハンゴンソウ
ハナガサギク、ヤエザキオオハンゴンソウ
Ribes grossularia L.
Chaenomeles japonica (T hunb.) Lindl.
Fragaria X ananassa Duchesne
Malus prunifolia Borkh.
Cerasus serrulata Lindl.
Rosa multiflora T hunb.
Lupinus polyphyllus Lindl.
Medicago sativa L.
Trifolium hybridum L.
Medicago lupulina L.
Trifolium pratense L. f. pratense
Trifolium pratense L. f. albiflorum Alef.
Trifolium repens L.
Wisteria floribunda (Willd.) DC.
Lespedeza bicolor T urcz.
Robinia pseudoacacia L.
Maackia amurensis Rupr. et Maxim. var. buergeri (Maxim.) C. K. Schn.
Amorpha fruticosa L.
Euphorbia cyparissias L.
Euphorbia supina Rafin.
Malva moschata L.
Elaeagnus umbellata T hunb.
Viola odorata L.
Viola tricolor L.
Lythrum anceps (Koehne) Makino
Oenothera biennis L.
Daucus carota L.
Fraxinus lannuginosa Koidz.
Vinca minor L.
Phlox subulata L.
Symphytum officinale L.
Galeopsis bifida Boenn. f. bifida
Galeopsis bifida Boenn. f. albiflorum (white flowered form)
Glechoma hederacea L.
Perilla frutescens (L.) Britton var. acuta Kudô
Prunella vulgaris L. var. lilacina Nakai
Lamium purpureum L.
Solanum carolinense L.
Solanum nigrum L.
Veronica arvensis L.
Veronica persica Poir.
Veronica serpyllifolia L.
Verbascum blattaria L.
Verbascum thapsus L.
Plantago lanceolata L.
Achillea millefolium L.
Arctium lappa L.
Artmisia feddei Lev. et Van.
Artemisia princeps Pampan.
Aster novae-angliae L.
Anthemis cotula L.
Aster novi-belgii L.
Leucanthemum vulgare Lam.
Bellis perennis L.
Bidens frondosa L.
Cirsium arvense (L.) Scop.
Cirsium vulgare (Savi) T onore
Crepis tectorum L.
Coreopsis drummondii T orr. et Gray
Cosmos bipinnatus Cav.
Erigeron annuus (L.) Pers.
Erigeron canadensis L.
Erigeron philadephicus L.
Galinsoga quadriradiata Ruiz et Pav.
Gnaphalium sylvaticum L.
Helianthus tuberosus L.
Hieracium aurantiacum L.
Hypochaeris radicata L.
Lactuca scariola L.
Matricaria inodora L.
Matricaria matricarioides (Less.) Porter
Petasites japonicus (Sieb. et Zucc.) Maxim.
Rudbeckia hirta L. var. pulcherrima Farwell
Rudbeckia laciniata L. var. hortensis Bailey
資料 11
指定等
*2
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
北海道
BL *3
科
種名 *1
学名
オオハンゴンソウ ノボロギク オニノゲシ オオアワダチソウ
アカミタンポポ
セイヨウタンポポ バラモンギク、キバナザキバラモンジン
オニタビラコ オニユリ コオニユリ
ニラ スイセン キショウブ
ハナショウブ ヒトフサニワゼキショウ
ヒメヒオウギズイセン コヌカグサ
ハルガヤ
マカラスムギ カモガヤ(オーチャードグラス)
シバムギ ノゲシバムギ ヒロハウシノケグサ
オオウシノケグサ(広義)
ホソノゲムギ
ネズミホソムギ ネズミムギ
ホソムギ クサヨシ(カナリークサヨシ?)
ヌマイチゴツナギ ナガハグサ
オギ
オオアワガエリ(チモシー)
ユリ科
ヒガンバナ科
アヤメ科
イネ科
注)学名は 、「
和名
Rudbeckia laciniata L. var. laciniata
Senecio vulgaris L.
Sonchus asper (L.) Hill
Solidago gigantea Aiton var. leiophylla Fern.
Taraxacum laevigatum (Willd.) DC.
Taraxacum officinaie Weber
Tragopogon pratensis L.
Youngia japonica (L.) DC.
Lilium lancifolium T hunb.
Lilium leichtlinii Hook. fil. var. tigrinum (Regel) Nichols.
Allium tuberosum Rottl.
Narcissus tazetta L. var. chinensis M. Roem.
Iris pseudoacorus L.
Iris ensata T hunb. var. ensata
Sisyrinchium mucrronatum Michx.
Tritonia X crocosmaeflora Lomoine
Agrostis alba L.
Anthoxanthum odoratum L.
Avena nuda L.
Dactylis glomerata L.
Elymus repens (L.) Gould var. repens
Elymus repens (L.) Gould var. aristatum Baumg.
Fustuca pratensis Huds.
Fustuca rubura L. (s. l.)
Hordeum jubatum L.
Lolium X hybridum Hausskn.
Lolium multiflorum Lam.
Lolium perenne L.
Phalaris arundinacea L. (? P. canariensis L.)
Poa palustris L.
Poa pratensis L.
Miscanthus sacchariflorus (Maxim.) Benth.
Phleum pratense L.
学名インデックス 」(
(
年
)(米倉浩司・梶田忠 、
月
日)に基づいた。
指定等
*2
特定
北海道
BL *3
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
要注意
年~)
*
種名欄に
を付した種は、外来植物の可能性がある種。
*
指定等:「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)に基づく指定を受けているものを記載
した。
特定:特定外来生物
*
北海道
要注意:要注意外来植物
:「北海道ブルーリスト
」(北海道、
年)によるカテゴリー区分(生態系等への影響及び対策の優先度)を
記載した。
:緊急に防除対策が必要な外来種 (※上記リストには該当なし)
:北海道の生態系等へ大きな影響を及ぼしており、防除対策の必要性について検討する外来種
:北海道に定着しており、生態系等への影響が報告または懸念されている外来種
:北海道に定着している外来種。
資料 12
2-5.鳥 類
「礼文島の野鳥
野鳥リスト VOL.17
1994 年~2010 年」
(レブンクル自然館、2011 年)によ
ると、300 種近い鳥類が確認されています。
科名
アビ
カイツブリ
ウ
ガンカモ
ウミスズメ
ミズナギドリ
種名
アビ
シロエリオオハム
オオハム
ハシジロアビ
カイツブリ
ハジロカイツブリ
ミミカイツブリ
アカエリカイツブリ
カンムリカイツブリ
ウミウ
カワウ
ヒメウ
チシマウガラス
オオハクチョウ
コハクチョウ
コクガン
マガン
カリガネ
ヒシクイ
オオヒシクイ
マガモ
カルガモ
ハシビロガモ
コガモ
シマアジ
トモエガモ
オシドリ
ヨシガモ
オカヨシガモ
オナガガモ
ヒドリガモ
ホシハジロ
オオホシハジロ
ホオジロガモ
キンクロハジロ
スズガモ
シノリガモ
コオリガモ
クロガモ
ビロードキンクロ
ミコアイサ
ウミアイサ
カワアイサ
ウミガラス
ハシブトウミガラス
ケイマフリ
ウミバト
マダラウミスズメ
ウミスズメ
カンムリウミスズメ
コウミスズメ
エトロフウミスズメ
ウトウ
フルマカモメ
オオミズナギドリ
ハイイロミズナギドリ
アカアシミズナギドリ
ハシボソミズナギドリ
学名
環境省/北海道/IUCN *1
Gavia stellata
Gavia pacifica
Gavia arctica
Gavia adamsii
Tachybaptus ruficollis
Podiceps nigricollis
Podiceps auritus
Podiceps grisegena
Podiceps cristatus
Phalacrocorax capillatus
Phalacrocorax carbo
Phalacrocorax pelagicus
Phalacrocorax urile
Cygnus cygnus
Cygnus columbianus
Branta bernicla
Anser albifrons
Anser erythropus
Anser fabalis
Anser fabalis middendorffii
Anas platyrhynchos
Anas poecilorhyncha
Anas clypeata
Anas crecca
Anas querquedula
Anas formosa
Aix galericulata
Anas falcata
Anas strepera
Anas acuta
Anas penelope
Aythya ferina
Aythya valisineria
Bucephala clangula
Aythya fuligula
Aythya marila
Histrionicus histrionicus
Clangula hyemalis
Melanitta nigra
Melanitta fusca
Mergus albellus
Mergus serrator
Mergus merganser
Uria aalge
Uria lomvia
Cepphus carbo
Cepphus columba
Brachyramphus marmoratus
Synthliboramphus antiquus
Synthliboramphus wumizusume
Aethia pusilla
Aethia cristatella
Cerorhinca monocerata
Fulmarus glacialis
Calonectris leucomelas
Puffinus griseus
Puffinus carneipes
Puffinus tenuirostris
資料 13
種の保存法 *2 天然記念物 *3
国内
国天然
国天然
国天然
国内
科名
ウミツバメ
トウゾクカモメ
カモメ
サギ
コウノトリ
ツル
クイナ
チドリ
シギ
ツバメチドリ
セイタカシギ
ヒレアシシギ
タカ
種名
ハイイロウミツバメ
オオトウゾクカモメ
トウゾクカモメ
クロトウゾクカモメ
オオセグロカモメ
セグロカモメ
ニシセグロカモメ
ウミネコ
ワシカモメ
シロカモメ
カモメ
ユリカモメ
ミツユビカモメ
アジサシ
エリグロアジサシ
サンカノゴイ
ヨシゴイ
ミゾゴイ
ゴイサギ
アカガシラサギ
アマサギ
コサギ
チュウサギ
ダイサギ
アオサギ
コウノトリ
ナベヅル
オオバン
バン
シロハラクイナ
コチドリ
シロチドリ
メダイチドリ
イカルチドリ
ムナグロ
タゲリ
ケリ
トウネン
オジロトウネン
ヒバリシギ
ウズラシギ
キリアイ
チシマシギ
ミユビシギ
コオバシギ
エリマキシギ
タカブシギ
クサシギ
イソシギ
ソリハシシギ
キョウジョウシギ
ツルシギ
アオアシシギ
カラフトアオアシシギ
キアシシギ
オオソリハシシギ
チュウシャクシギ
ホウロクシギ
タシギ
オオジシギ
アオシギ
ヤマシギ
ツバメチドリ
セイタカシギ
アカエリヒレアシシギ
ミサゴ
オジロワシ
オオワシ
学名
環境省/北海道/IUCN *1
Oceanodroma furcata
Catharacta maccormicki
Stercorarius pomarinus
Stercorarius parasiticus
Larus schistisagus
Larus argentatus
Larus fuscus
Larus crassirostris
Larus glaucescens
Larus hyperboreus
Larus canus
Larus ridibundus
Rissa tridactyla
Sterna hirundo
Sterna sumatrana
Botaurus stellaris
Ixobrychus sinensis
Gorsachius goisagi
Nycticorax nycticorax
Ardeola bacchus
Bubulcus ibis
Egretta garzetta
Egretta intermedia
Egretta alba
Ardea cinerea
Ciconia boyciana
Grus monacha
Fulica atra
Gallinula chloropus
Amaurornis phoenicurus
Charadrius dubius
Charadrius alexandrinus
Charadrius mongolus
Charadrius placidus
Pluvialis fulva
Vanellus vanellus
Vanellus cinereus
Calidris ruficollis
Calidris temminckii
Calidris subminuta
Calidris acuminata
Limicola falcinellus
Calidris ptilocnemis
Crocethia alba
Calidris canutus
Philomachus pugnax
Tringa glareola
Tringa ochropus
Actitis hypoleucos
Xenus cinereus
Arenaria interpres
Tringa erythropus
Tringa nebularia
Tringa guttifer
Heteroscelus brevipes
Limosa lapponica
Numenius phaeopus
Numenius madagascariensis
Gallinago gallinago
Gallinago hardwickii
Gallinago solitaria
Scolopax rusticola
Glareola maldivarum
Himantopus himantopus
Phalaropus lobatus
Pandion haliaetus
Haliaeetus albicilla
Haliaeetus pelagicus
資料 14
種の保存法 *2 天然記念物 *3
国内
国特別
国内
国内
国内
国天然
国天然
科名
ハヤブサ
フクロウ
キジ
ハト
カッコウ
ヨタカ
アマツバメ
カワセミ
ブッポウソウ
ヤツガシラ
キツツキ
ヒバリ
ツバメ
セキレイ
ヒヨドリ
モズ
種名
ハチクマ
トビ
サシバ
ケアシノスリ
ノスリ
ハイイロチュウヒ
チュウヒ
オオタカ
ハイタカ
ツミ
ハヤブサ
チゴハヤブサ
コチョウゲンボウ
アカアシチョウゲンボウ
チョウゲンボウ
シロハヤブサ
シロフクロウ
シマフクロウ
トラフズク
コミミズク
フクロウ
コノハズク
オオコノハズク
ウズラ
キジバト
アオバト
ドバト
カッコウ
ツツドリ
ホトトギス
ジュウイチ
ヨタカ
ハリオアマツバメ
アマツバメ
ヤマショウビン
アカショウビン
カワセミ
ブッポウソウ
ヤツガシラ
クマゲラ
アリスイ
オオアカゲラ
アカゲラ
コゲラ
コアカゲラ
ヒバリ
ハマヒバリ
ヒメコウテンシ
イワツバメ
ショウドウツバメ
コシアカツバメ
ツバメ
アカハラツバメ
ツメナガセキレイ
キマユツメナガセキレイ a
マミジロツメナガセキレイ
キセキレイ
ハクセキレイ
シベリアハクセキレイ b
タイワンハクセキレイ
ホオジロハクセキレイ
セジロタヒバリ
ビンズイ
ムネアカタヒバリ
コマミジロタヒバリ
タヒバリ
ヒヨドリ
モズ
学名
環境省/北海道/IUCN *1
Pernis apivorus
Milvus migrans
Butastur indicus
Buteo lagopus
Buteo buteo
Circus cyaneus
Circus spilonotus
Accipiter gentilis
Accipiter nisus
Accipiter gularis
Falco peregrinus
Falco subbuteo
Falco columbarius
Falco amurensis
Falco tinnunculus
Falco rusticolus
Nyctea scandiaca
Ketupa blakistoni
Asio otus
Asio flammeus
Strix uralensis
Otus scops
Otus lempiji
Coturnix japonica
Streptopelia orientalis
Sphenurus sieboldii
Columba livia var.domesticus
Cuculus canorus
Cuculus saturatus
Cuculus poliocephalus
Cuculus fugax
Caprimulgus indicus
Hirundapus caudacutus
Apus pacificus
Halcyon pileata
Halcyon coromanda
Alcedo atthis
Eurystomus orientalis
Upupa epops
Dryocopus martius
Jynx torquilla
Dendrocopos leucotos
Dendrocopos major
Dendrocopos kizuki
Dendrocopos minor
Alauda arvensis
Eremophila alpestris
Calandrella cinerea
Delichon urbica
Riparia riparia
Hirundo daurica
Hirundo rustica
Hirundo rustica saturata
Motacilla flava
Motacilla flava taivana
Motacilla flava simillima
Motacilla cinerea
Motacilla alba
Motacilla alba baicalensis
Motacilla alba ocularis
Motacilla alba leucopsis
Anthus gustavi
Anthus hodgsoni
Anthus cervinus
Anthus godlewskii
Anthus spinoletta
Hypsipetes amaurotis
Lanius bucephalus
資料 15
種の保存法 *2 天然記念物 *3
国内
国内
国内
国天然
科名
レンジャク
カワガラス
ミソサザイ
イワヒバリ
ツグミ
ウグイス
ヒタキ
シジュウカラ
エナガ
ゴジュウカラ
キバシリ
メジロ
ホオジロ
種名
アカモズ
チゴモズ
オオモズ
ヒレンジャク
キレンジャク
カワガラス
ミソサザイ
カヤクグリ
コマドリ
シマゴマ
ノゴマ
コルリ
ジョウビタキ
ルリビタキ
ハシグロヒタキ
ノビタキ
イソヒヨドリ
マミジロ
トラツグミ
アカハラ
マミチャジナイ
クロツグミ
シロハラ
ツグミ
ハチジョウツグミ
ウグイス
ヤブサメ
オオセッカ
キクイタダキ
シマセンニュウ
エゾセンニュウ
オオヨシキリ
コヨシキリ
カラフトムシクイ
キマユムシクイ
メボソムシクイ
センダイムシクイ
マミジロキビタキ
キビタキ
ムギマキ
オジロビタキ
オオルリ
コサメビタキ
エゾビタキ
ハシブトガラ
コガラ
ヒガラ
シジュウカラ
ヤマガラ
エナガ(シマエナガ)
ゴジュウカラ
キバシリ
メジロ
チョウセンメジロ a
シラガホオジロ
ホオジロ
カシラダカ
ホオアカ
キマユホオジロ
ミヤマホオジロ
シロハラホオジロ
コホオアカ
アオジ
ノジコ
シマアオジ
シマノジコ
クロジ
オオジュリン
学名
環境省/北海道/IUCN *1
Lanius cristatus
Lanius tigrinus
Lanius excubitor
Bombycilla japonica
Bombycilla garrulus
Cinclus pallasii
Troglodytes troglodytes
Prunella rubida
Erithacus akahige
Luscinia sibilans
Luscinia calliope
Luscinia cyane
Phoenicurus auroreus
Tarsiger cyanurus
Oenanthe oenanthe
Saxicola torquata
Monticola solitarius
Turdus sibiricus
Zoothera dauma
Turdus chrysolaus
Turdus obscurus
Turdus cardis
Turdus pallidus
Turdus naumanni
Turdus naumanni naumanni
Cettia diphone
Urosphena squameiceps
Locustella pryeri
Regulus regulus
Locustella ochotensis
Locustella fasciolata
Acrocephalus arundinaceus
Acrocephalus bistrigiceps
Phylloscopus proregulus
Phylloscopus inornatus
Phylloscopus borealis
Phylloscopus coronatus
Ficedula zanthopygia
Ficedula narcissina
Ficedula mugimaki
Ficedula parva
Cyanoptila cyanomelana
Muscicapa dauurica
Muscicapa griseisticta
Parus palustris
Parus montanus
Parus ater
Parus major
Parus varius
Aegithalos caudatus
Sitta europaea
Certhia familiaris
Zosterops japonicus
Zosterops erythopleura
Emberiza leucocephalos
Emberiza cioides
Emberiza rustica
Emberiza fucata
Emberiza chrysophrys
Emberiza elegans
Emberiza tristrami
Emberiza pusilla
Emberiza spodocephala
Emberiza sulphurata
Emberiza aureola
Emberiza rutila
Emberiza variabilis
Emberiza schoeniclus
資料 16
種の保存法 *2 天然記念物 *3
国内
科名
アトリ
ハタオリドリ
ムクドリ
オウチュウ
カラス
種名
学名
シベリアジュリン
ツメナガホオジロ
ユキホオジロ
カワラヒワ
マヒワ
ベニヒワ
コベニヒワ
アトリ
ハギマシコ
ギンザンマシコ
イスカ
オオマシコ
ベニマシコ
ウソ
コイカル
イカル
シメ
ニュウナイスズメ
スズメ
コムクドリ
ムクドリ
ギンムクドリ
ホシムクドリ
オウチュウ a
カケス(ミヤマカケス)
ホシガラス
コクマルガラス
ミヤマガラス
ハシボソガラス
ハシブトガラス
ワタリガラス
環境省/北海道/IUCN *1
種の保存法 *2 天然記念物 *3
Emberiza pallasi
Calcarius lapponicus
Plectrophenax nivalis
Carduelis sinica
Carduelis spinus
Carduelis flammea
Carduelis hornemanni
Fringilla montifringilla
Leucosticte arctoa
Pinicola enucleator
Loxia curvirostra
Carpodacus roseus
Uragus sibiricus
Pyrrhula pyrrhula
Eophona migratoria
Eophona personata
Coccothraustes coccothraustes
Passer rutilans
Passer montanus
Sturnus philippensis
Sturnus cineraceus
Sturnus sericeus
Sturnus vulgaris
Dicrurus macrocercus
Garrulus glandarius
Nucifraga caryocatactes
Corvus dauuricus
Corvus frugilegus
Corvus corone
Corvus macrorhynchos
Corvus corax
注)鳥類の配列及び学名は、「日本鳥類目録改訂第6版」(日本鳥学会、
年)に基づいた。ただし、
を付した種の学名は、「種の多様性調査動物種チェックリスト鳥類コード表」(環境庁、
年)による
を付した種の学名は、「フィールドガイド日本の野鳥」(高野伸二著、財団法人日本野鳥の会発行、
*
環境省・北海道・
年)による
(国際自然保護連合)による絶滅リスクのカテゴリーを環境省 北海道と合わせて併記した。それぞれの
カテゴリーは以下の通りである。
環境省レッドリスト(
)
:絶滅危惧
北海道レッドデータブック
レッドリスト
*
類
:絶滅危機種
:絶滅危惧IB類
:絶滅危惧
:絶滅危惧種
:絶滅危惧
:絶滅危惧Ⅱ類
:絶滅危急種
:準絶滅危惧
:希少種
類
種の保存法:「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づき指定されたものを記載した。
国内:国内希少野生動植物種
*
類
天然記念物:「文化財保護法」に基づき指定されたものを記載した。
国特別:国指定特別天然記念物 国天然:国指定天然記念物
資料 17
2-6.生 物 多 様 性 保 全 に 関 わ る 地 域 の 指 定 状 況
2-6-1. 利尻礼文サロベツ国立公園
資料 18
2-6-2. 北海道指定天然記念物
資料 19
2-6-3. 保護林
資料 20
2-6-4. 保安林
資料 21
2-6-5. 北海道指定礼文鳥獣保護区
資料 22
2-7.人 口
礼文町の人口は、国勢調査によると昭和 30 年の 9,874 人をピークに減尐傾向をたどり平成 17
年には 3,410 人となり、その減尐率は 65.5%となっています。国勢調査の推移をみると、平成 7
年の 4,375 人から平成 12 年 3,856 人となり 519 人が減尐し、減尐率は 11.9%、平成 17 年では 446
人減尐し、減尐率は 11.6%となっており、その減尐の激しさが顕著に現れています。
人口構成別では、若年層の減尐が続く一方、65 歳以上の高齢者については、総人口の 30.1%
(平成 17 年)を占め、高齢化が著しく進行しているのがうかがわれます。今後も尐子高齢化が
進行し、総人口、生産年齢人口とも減尐していくと予想され、担い手不足や地域コミュニティの
2,000
1,614
1,847
2,097
2,374
2,683
3,078
3,009
3,410
4,000
3,856
4,375
5,121
6,000
5,724
5,990
6,525
7,535
8,374
8,795
9,874
9,545
7,662
7,767
8,000
8,189
10,000
7,916
12,000
7,728
希薄化による地域活動の停滞が懸念されます。
総人口(国勢調査)
平成47
平成42
平成37
平成32
平成27
平成22
平成17
平成12
平成7
平成2
昭和60
昭和55
昭和50
昭和45
昭和40
昭和35
昭和30
昭和25
昭和20
昭和15
昭和10
昭和5
大正14
0
推計値(国立社会保障・人口問題研究所)
図 礼文島の人口推移
※平成 19 年度礼文町勢要覧(礼文町総務課)
、国勢調査、『日本の市区町村別将来推計人口』
(平成 20 年 12 月推計)
(国立社会保障・人口問題研究所)より
100%
12.3
13.2
15.7
23.0
80%
60%
66.9
66.8
66.8
40%
62.4
26.5
30.1
31.5
33.8
36.9
38.3
39.0
39.5
60.7
58.6
58.4
56.2
53.9
52.9
52.4
52.2
20%
20.8
20.0
17.6
14.7
12.8
11.3
10.1
10.0
9.3
8.8
8.5
8.3
昭和55
昭和60
平成2
平成7
平成12
平成17
平成22
平成27
平成32
平成37
平成42
平成47
0%
年少人口(0~14歳人口)割合(%)
生産年齢人口(15~64歳人口)割合(%)
老年人口(65歳以上人口)割合(%)
年少人口(0~14歳人口)割合(%)推計値
生産年齢人口(15~64歳人口)割合(%)推計値
老年人口(65歳以上人口)割合(%)推計値
図 礼文島の年齢3区分別人口割合の推移
注:平成 22 年以降は推計値(国立社会保障・人口問題研究所)
※平成 19 年度礼文町勢要覧(礼文町総務課)
、国勢調査、『日本の市区町村別将来推計人口』
(平成 20 年 12 月推計)
(国立社会保障・人口問題研究所)より
資料 23
2-8.産 業 別 就 業 人 口
礼文町の産業構造は、昭和 30 年頃までの鰊漁業の繁栄によって第 1 次産業就業者数が増加を
続けました。しかし、その後の鰊漁の不振とともに人口の減尐が顕著に現れ、主産業である漁業
の就業者数が減り続け、昭和 45 年の国勢調査で 66.1%であった第 1 次産業の構成比も平成 17 年
には 36.8%となり、産業構造は大きく変化しています。第 2 次産業は建設業・製造業が中心とな
っており、構成比では平成 17 年で 14.0%と徐々に減尐傾向にあります。本町の産業構造がもっ
とも変化しているのが、サービス・小売業の第 3 次産業で昭和 45 年の 21.8%に対して、平成 17
年には 49.2%と大きな伸びを示しています。この第 3 次産業の変化の要因は、観光産業にかかわ
る宿泊施設の増加や観光関連小売業の増加とみられ、今では水産業とともに主要な産業となって
います。
第3次
産業
21.8%
第2次
産業
12.1%
第3次
産業
49.2%
昭和45年
第1次
産業
66.1%
第1次
産業
36.8%
平成17年
第2次
産業
14.0%
図 産業別就業人口割合の比較(昭和45年・平成17年)
運輸・通信業;
78 ; 3%
金融業; 13 ; 1%
電気・ガス・水道
業; 16 ; 1%
卸・小売業; 162 ;
7%
公務; 114 ; 5%
漁業; 823 ; 37%
第1次産業
824
37%
第3次産業
1,104
49%
サービス業
(観光業含む);
721 ; 32%
第2次産業
313
14%
林業; 1 ; 0%
製造業; 117 ; 5%
建設業; 196 ; 9%
図 産業別就業人口(単位:人、%)(平成17年度)
※国勢調査より
資料 24
2-9.観 光 関 連 施 設 観 光 入 込 客 数
礼文林道・礼文滝一帯
年 度
4月
月
月
月
月
月
月
合 計
増減率
月
月
月
月
月
月
合 計
増減率
月
月
月
月
月
月
合計
増減率
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
桃岩展望台一帯
年 度
月
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
アツモリソウ群生地
年 度
月
群生地開放期間
平成
~ /
平成
~ /
平成
~
平成
~
平成
~
平成
~
平成
~
平成
~
平成
~
平成
~
平成
~
※ 礼文町産業課
資料 25
2-10.礼 文 島 で 漁 獲 さ れ る 魚 種
2-10-1. 礼文島で漁獲される魚種
香深漁協魚種名
モウカサメ
サメ大、サメ小
サメ、サメ中、サメ(オス)
まかすべ
水かすべ
イワシ
ニシン
キュウリ
チカ
サケ、ブナ
青マス
マス
タラ
コマイ
すけそう、助カラ
アンコウ
サンマ
油ソイ
柳のマイ
黒ガヤ
黒ソイ
マソイ
シマソイ
ハチガラ
サガ
ほっけ
しまぼっけ
油子
船泊漁協魚種名
モーカザメ
油サメ
アオサメ
真かすべ
水かすべ
いわし
にしん
片口いわし
ちか
雨ます
秋さけ、秋鮭ブナ、トキサケ
青ます、樺太マス
本ます、サクラマス
たら
コマイ、かんかい
助宗
あんこう
さんま
八目
油ぞい
赤がや
柳ノ舞
黒がや
本メバル
ながら
真ぞい
しまぞい
はちがら
サガ
めぬき
ほっけ
しまぼっけ
油子
とうべつかじか
ギス
カジカ
八角
シーラ
エボダイ
ワラズカ
大女子、小女子
白魚、白魚赤ハラ
サバ
マグロ
ヒラメ
カワカレイ
タカノハ
オヒョウ
かじか
八角
ごっこ
スズキ
シイラ
はまち、ブリ
黒鯛
縞鯛
いぼ鯛
わらずか
大女子、小女子
白魚
たちうお
さば
鰹
マグロ、ゴンタマグロ
平目
かわ鰈
さめがれい
たかの羽
大鮃
からすがれい
油がれい
資料 26
魚種科名
ねずみさめ科
つのざめ科
さめ類その他
がんぎえい科
がんぎえい科
にしん科
にしん科
かたくちいわし科
きゅうりうお科
きゅうりうお科
さけ科
さけ科
さけ科
さけ科
たら科
たら科
たら科
あんこう科
さんま科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
ふさかさご科
あいなめ科
あいなめ科
あいなめ科
けむしかじか科
かじか科
かじか科
かじか科
とくびれ科
だんごうお科
すずき科
しいら科
あじ科
たい科
いしだい科
いぼだい科
たうえがじ科
いかなご科
いかなご科
たちうお科
さば科
さば科
さば科
ひらめ科
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
統一魚種名(標準和名)
ねずみざめ
あぶらつのざめ
その他のさめ類
めがねかすべ
その他のがんぎえい類
まいわし
にしん
かたくちいわし
きゅうりうお
ちか
あめます(降海型)
しろさけ
からふとます
さくらます
まだら
こまい
すけとうだら
きあんこう
さんま
はつめ
くろめぬけ
がやもどき
やなぎのまい
えぞめばる
うすめばる
くろそい
きつねめばる
しまそい
むらそい
その他のめぬけ類
その他のめぬけ類
ほっけ
きたのほっけ
あいなめ
けむしかじか
つまぐろかじか
とげかじか
その他のかじか類
とくびれ
ほていうお
すずき
しいら
ぶり
くろだい
いしだい
めだい
ながづか
いかなご、あかいかなごの2種
その他のいかなご類
たちうお
まさば
まるそうだ
くろまぐろ
ひらめ
ぬまがれい
さめがれい
まつかわ
おひょう
からすがれい
あぶらがれい
香深漁協魚種名
宗八かれい
赤かれい
ナメタかれい
石かれい
黒かれい
砂かれい
浅羽かれい
まかれい
やりいか
いか
たこ、ササメ
たこ柳
なまこ
タラバガニ
毛カニ
ヘラガニ
ズワイガニ
うに
のな
オキアミ
トラエビ
シマエビ
ナンバンエビ
ボタンエビ
ホヤ
えむし
あわび
つぶ、貝つぶ、むきつぶ
青つぶ
いがい
あさり
天然昆布、水昆布、水雑昆布、
后取昆布、拾昆布、養殖昆布
わかめ
生のり、干のり
もずく
干天草
あかば
船泊漁協魚種名
宗八
赤がれい
なめた
石がれい
黒がれい
砂がれい
浅羽
真がれい
小金かれい
カワハギ
フグ
やりいか
真いか、するめ
蛸
やなぎだこ
なまこ
たらばがに
油かに
毛がに
平がに
本ずわい
紅ずわい
うに
のな
オキアミダンボー
オニエビ
シマエビ
ナンバンエビ
ボタンエビ
ほや
えむし
あわび
貝つぶ、ばいつぶ
青つぶ
毛つぶ
い貝
ほっき
ばば貝
天然こんぶ、天然后取こんぶ、
天然拾こんぶ、棹前こんぶ
生わかめ、根かぶ
岩のり
ふのり
もずく
松藻
あかば
銀杏藻
魚種科名
統一魚種名(標準和名)
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
かれい科
かわはぎ科
ふぐ科
やりいか科
あかいか科
まだこ科
まだこ科
まなまこ科
たらばがに科
たらばがに科
くりがに科
わたりがに科
くもがに科
くもがに科
おおばふんうに科
おおばふんうに科
おきあみ科
もえび科
たらばえび科
たらばえび科
たらばえび科
からすぼや科
けやり科
みみがい科
えぞばい科
えぞばい科
ふじつがい科
いがい科
ばかがい科
いたやがい科
まるすだれがい科
そうはち
あかがれい
ひれぐろ
いしがれい
くろがしら
すながれい
あさばがれい
まがれい
こがねがれい
うまづらはぎ
まふぐ
じんどういか
するめいか
みずだこ
やなぎだこ
まなまこ
たらばがに
あぶらがに
けがに
ひらつめがに
ずわいがに
べにずわいがに
えぞばふんうに
きたむらさきうに
こんぶ科
りしりこんぶ
ちがいそ科
うしけのり科
ふのり科
ながまつも科
いそがわら科
てんぐさ科
りゅうもんそう科
すぎのり科
わかめ
その他のうしけのり類
ふくろふのり
いしもずく
まつも
まくさ
あかば
くろはぎんなんそう
Thysanoessa inermis
いばらもえび
もろとげあかえび
ほっこくあかえび
とやまえび
あかぼや
えらこ
えぞあわび
その他のえぞばい類
ひめえぞぼら
あやぼら
えぞいがい
うばがい
えぞきんちゃくがい
あさり
注)種の同定困難な場合は、簡易的にその他○○類としている。
※北海道宗谷総合振興局礼文地区水産技術普及指導所提供資料より作成
資料 27
2-10-2. 魚種別生産高
魚
種
名
漁獲量
平成
漁獲高(千円)
漁獲量
平成
漁獲高(千円)
漁獲量
平成
漁獲高(千円)
漁獲量
平成
漁獲高(千円)
魚類
にしん
さけ
ます
たら
すけとうだら
こまい
ほっ け
ひらめ
まがれい
ひれぐろ
すながれい
そうはち
あかがれい
くろがしらがれい
まつかわ
その他のかれい類
ぶり
さめ類
いかなご
あいなめ
そい類
その他の魚類
小計
水産動物 するめいか
あかいか
み ずだこ
やなぎだこ
なまこ
たらばがに
毛がに
その他のかに
えぞ ば ふんうに
きた むらさきうに
ほっこくあかえび
とやまえび
その他のえび類
その他の水産動物
小計
貝類
あわび
つぶ類
いがい
小計
海藻類
こんぶ
わかめ
のり
もずく
その他の海藻類
小計
合
計
※「北海道水産現勢」
(北海道水産林務部)より
資料 28
2-11.土 地 利 用
礼文島は丘陵地帯がほとんどで、利
用可能な平坦地は多くありません。
「国土数値情報土地利用細分メッシ
ュデータ」
(平成 18 年度、国土交通省
国土計画局)から礼文島の土地利用の
現況をみると、
「荒地」が 55.2%と最も
広い面積を占め、ササ地や高山植物群
落などのほか、植林地の若齢林が含ま
れていると考えられます。次いで「森
林」が 39.8%を占め、主に礼文島の中
央部に広がっています。
「市街地」は海
岸線や一部の川の流域に分布している
利用可能な平坦地に分布し、2.5%を占
めています。
「農用地」は久種湖周辺や
神崎周辺にまとまって分布しています
が、0.4%と割合は非常に小さく、中に
は耕作放棄地が含まれ、
「荒地」へと変
化していることが考えられます。
図 礼文島の土地利用(平成18年)
※国土数値情報 土地利用細分メッシュデータ(平成 18 年度)
(国土交通省国土計画局)より
表 土地利用細分メッシュデータにおける礼文島の土地利用の内訳
土地利用区分
割合
内容(土地利用細分メッシュデータの種別)
農用地
田、その他農地
森林
森林
荒地
荒地
市街地
建物用地、幹線交通用地、その他の用地、ゴルフ場
河川地及び湖沼
河川地及び湖沼
海浜
海浜
※国土数値情報 土地利用細分メッシュデータ(平成 18 年度)(国土交通省国土計画局)より
資料 29
2-12.検 討 過 程 で 抽 出 さ れ た 具 体 的 な 方 策 ・ ア イ デ ィ ア
『礼文島いきものつながりプロジェクト』の基本方針、基本施策、重点施策(アクションプラ
ン)の検討過程において、検討委員会での意見交換やこれまでの礼文島における取り組み、他地
域での先行事例等から抽出された具体的な方策・アイディア(案)を次ページ以降に示します。
今後、
『礼文島いきものつながりプロジェクト』を進め、具体的な対策を実施する際の参考とし
ていきます。
資料 30
礼文島いきものつながりプロジェクト 施策及び方策・アイディア体系図(1)
めざすところ
基本方針
いきものつながりに関する
調査・研究の推進
基本施策
いきものつながりの現状把握と
モニタリング及び情報の活用
いきものつながりの現状把握と
モニタリング
いきものつながりに関する
データベースの構築・運用
希尐種の保護
外来種対策
生態系の保全・回復・再生
いきものつながりの
保全・回復・再生
社会資本整備における自然環境への配慮
法令等による保全
低炭素社会の構築・循環型社会の構築との統合的な取り組み
"
~
い高
つ 山
ま植
で物
もが
住咲
んき
で乱
いれ
た、
い海
、 の
訪幸
れに
た恵
いま
礼れ
文た
島、
でい
あき
るも
たの
めつ
にな
が
いり
い
こを
と体
感
しで
よき
うる
!島
~
※検討委員会における意見交換や各種調査の過程で抽出された方策・アイディアの案である。
方策・アイディア(案)
·
·
·
·
·
·
·
礼文島のいきものリスト(礼文島独自のレッドデータブック、外来種含め)の作成
·
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希尐種の保護増殖と活用に関する検討と提言
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生物多様性の観点を生かす町役場の機構改革(課の再編成・環境課の創設を含む)
海洋生物(海藻・魚類)多様性調査実施
海獣類の被害対策や保全管理に必要な情報の収集・整理
生物多様性に関する調査研究の実施
生物多様性モニタリング調査の実施と継続(関係行政機関(環境省、林野庁、北海道など)と町の協働)
いきものつながりに関する情報(各種資料・報告書・論文等)のデータベース化
各種資料・調査データを蓄積するデータセンターの設置、運用
いきもの指導員(監視員)制度などの創設
レブンアツモリソウ保護増殖事業の継続
高山植物培養センター等を利用したレブンアツモリソウ以外の希尐植物の生息域外保全
入れない・捨てない・広げない:webやポスター、IP告知端末等によるPR、歩道入口・港での靴底洗浄の設置提言と実践
礼文の外来植物ワースト10作成(優先的に除去をおこなうべき種の選定・除去)
礼文の花 いっぱい運動(車道や造成地跡に多く分布している外来植物の代わりに在来種を)
森づくり(国有林、島内団体による植樹など森林整備の協定や提言)の検討と実施
お花畑の復元や維持管理
ササ侵入抑止対策の検討と実践(ササ刈り払いによる森林の回復効果の検証 等)
保全と活用を考慮した自然歩道等の施設整備・維持管理などの検討と実践
湖沼・河川・湿原の水環境の保全
海浜・藻場の保全
負荷の小さい工法の検討と提言
適切なアセスメント・モニタリングなどの提言と実施
自然環境保全に係る区域の適正な管理
自然環境保全に係る区域の適正な範囲の検討と提言
新桃岩トンネルなどをモデルにした低炭素社会構築の検討と提言
地域通貨などを活用した循環型社会モデルの検討と提言・実践
漂着ゴミの回収・処理
漁業系資材のリサイクル技術の開発・普及
ハイブリッドバスや電気自動車の導入
環境認証制度を活用した地域商品への生物多様性の価値の反映と制度への生産者の参加促進
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(仮称)『礼文島いきものつながりプロジェクト推進会議』の設立と事業推進
多様な主体との情報交換・連携強化
取り組みを
実施・継続するための
しくみづくり
活動団体等の支援
担い手づくり
参加者・活動者の募集
事業・活動財源の確保
国・北海道・礼文町の連携強化
いきものフォーラムなどを通じた情報交換
幅広い情報提供と連携
北海道大学大学院農学研究院との連携協定の継続
島を訪れる研究者等との交流の場づくり
フォーラム開催などの委託
活動支援金制度などの拡充
生物多様性調査研究者への補助
生物多様性の維持活動を担うボランティアの育成
島ガイド制度の創設・島ガイドの養成
いきものつながり応援団の募集
調査・分析における島民の参加
礼文島リボンプロジェクトなどの実施
地域通貨制度の導入
民間のファンドも利用した生物多様性調査研究の助成金
資料31
礼文島いきものつながりプロジェクト 施策及び方策・アイディア体系図(2)
めざすところ
基本施策
礼文島のいきものつながりの発信
普及啓発・教育
学校教育・社会教育・生涯学習からのアプローチ
高山植物園(高山植物培養センター)、礼文町郷土資料館などの活用
観光利用との調和
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基本方針
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持続可能ないきものつながりの
恵みの活用
漁業と観光産業の連携を柱とした地域の活性化
暮らしの中での恵みの活用
※検討委員会における意見交換や各種調査の過程で抽出された方策・アイディアの案である。
方策・アイディア(案)
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『礼文島いきものつながりガイドブック』の製作
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生物多様性保全を考慮した自然歩道等の施設整備・維持管理などのガイドラインの検討と提言
島民行動リストの作成
礼文島ローカルルールの策定と活用ルールブックの製作
広報紙・webによる情報発信(関連事業者の活動や島民と来島者の交流活動におけるいきものつながりなど)
体験プログラム(実際に見る・聞く・嗅ぐ・触れる・・・)の充実
いきもの市民フォーラムなどの講演会、町民学習交流会、観察会、出前講座等の実施・継続
環境教育の実施
次世代を担う子どもたちへの教育-「礼文学」などとの連動
礼文町の教育カリキュラムとしての「いきもの学習」の時間設定
生物多様性研究の歴史と成果の生涯学習への展開-町民対象の企画展示開催
世代間交流による学びと気づき、伝承
地域通貨などによる学習活動への経済的支援
企画展示などの実施
既存施設の再編成を含む生物多様性センター設置の検討
特定箇所・特定時期に集中する過剰利用対策(レブンアツモリソウ群生地の遊歩道における利用コントロール等)
エコツーリズムガイドラインの作成、エコツーリズム推進法に基づく全体構想策定、特定自然観光資源指定の検討
地域の観光資源として、生物多様性の成り立ちと深く関係する地形・地質などの特徴・魅力の利活用
地域ブランディングに有効な情報の発信と新たな活用の提言
新しいツアーブランド造成への提言
新しい水産ブランド開発への提言
いきものつながりに配慮した漁業の推進
生物多様性と漁業のつながりを学習するツアーの企画・実施
森林資源の利活用
山菜等の資源の持続的利用
釣り
資料33
本報告書(表紙を除く)は、古紙配合率 100%の再生紙を利用しています。
リサイクル適性の表示:紙へリサイクル可
この印刷物は、グリーン購入法に基づく基本方針における「印刷」に係る判断の基準にしたがい、
印刷用の紙へのリサイクルに適した材料[A ランク]のみを用いて作製しています。