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数学教育「紙と鉛筆」の時代は終わった

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数学教育「紙と鉛筆」の時代は終わった
渡辺
信・東海大学
[email protected]
垣花京子・筑波学院大学
[email protected]
本発表で扱っている授業についての概説
授業科目名:数学(微分積分の基礎)
大きな要求として新しい数学の発見に喜びを見出す
ことが可能になったならば素晴らしいと思う.
学部:海洋学部水産学系(文系志望者)
学年:1年生用半期
必修・選択:選択
2.パソコンによる教育改善の方法と内容
コンピュータを用いた授業における最大の欠陥は,
単位数:2 単位
学生の管理が時間をかけず簡単にできることである.
受講者数:60 人
学生を管理するのではなく,授業から開放する方向
授業形態:実験方式(パソコン室・体育館)
へとパソコンを活用することが重要である.黒板を
用いて,教科書の問題を与えられた方法で解くこと
1.数学の授業改革を目指す
数学教育での教育環境は「黒板」である.大学の
を繰り返す数学教育から,学生を解放することが可
能な授業方法を作り出すことが可能である.
講義では,教師の黒板に書く数学知識を,学生は解
自然科学を理解する上で強力な力になることは,
かる・解からないに関わらずノートに写す.学生は
具体的な実験を行うことであることは物理・化学・生
ノートに書き写すことによって満足し,理解してい
物の授業が示している.数学教育においても,数学
るかどうかについては考えない.ノートに写した内
の内容を見ることができるようにすることは,数学
容は解からないことがならんでいる.これが現在の
理解のためにも重要な事柄である.数学の技能の訓
も行われている数学教育の講義である.書くこと(写
練に終わることがない発見的な数学教育を行うこと
し取ること)に必死であって,授業中に学生自ら考
が可能な方法を求めている.このときに,数学的な
える余裕はない.この方法が最善であるのかについ
内容については,大きな変革は望まない.なぜなら,
ては,多くの先生方が批判的になってきている.
数学を用いた多くの分野の学問を専攻する学生にと
この従来の方法を改善し,できるならば学生一人
一人が「考える」「創造する」「楽しむ」ことを目指
って,現行の数学的知識は専門理解のために重要不
可欠であると考えられる.
した授業にしてみたい.知識を与えることから,知
学生にとってはパソコンに触れることには慣れて
識を自らが体得する方向へと変革したい.
「黒板」は
いる.中学校から技術・高校の情報として,パソコン
素晴らしい教育環境ではあるが,学生が自ら考える
を使うことには臆することはない.しかし,簡単な
道具とはならない.学生が持つ道具は「紙と鉛筆」
ソフトを活用することも,プログラムを書いてコン
であった.この考える道具として,
「紙と鉛筆」から
ピュータを動かすことなどには不慣れである.数学
「パソコン」へと切り替えていきたい.もちろん,
的な知識を学ぶ時に,多くの高い弊害があっては,
学生の使うパソコンは授業をも変えていく大きな原
易しい数学であっても,無塚四区感じてしまう.今
動力になる.
回は,簡単に操作ができる数式ソフトを用いた方法
パソコンを用いることによって,授業においても,
によって,数学に挑戦することを試みたい.取り扱
自ら考える時においても,数学的知識を「発見」す
いが平易で,多くの学生が使う環境が整った表計算
ることができるようにしたい.数学を「紙と鉛筆」
ソフト「エクセル」を用いることとした.
「紙と鉛筆」
だけで考えることから,抽象的な数学を具体的に「見
から,表計算スフとを自由に活用できる教育環境を
る」ことによって,理解することを目指したい.授
設定して,数学の基礎である微分積分の概念理解に
業においても,数学的な抽象概念を「見て・実験し
挑戦することとした.
て・考える」ことによって,理解すると共に,より
Δx を小さくする(例えばΔx=0.001)ことから,瞬間
3.教育実践による改善成果
数学を学び研究する時に,
「紙と鉛筆」があれば良
の傾きとし,点の左右の直線の傾きの平均を取るこ
いといわれてきた.現在でも数学の講義には電卓・
とによって「変化」を考える.微分と言う言葉を出
パソコン等の IT 機器は導入される環境にはない.
すと,今までの数学の固定観念に縛られる.あくま
表計算ソフトでは関数のグラフが表示できる.現在
でも変化を眺める方法を模索した.割り算を使って
の高校の微分積分はグラフを描くことに重きを置く,
いることを見て置くことも効果的であった.グラフ
グラフを書くことは機器活用によって表現できる.
は散布図で B-E のグラフを書く.
数学教育は関数のグラフを見ることを大切にした.
A
B
C
D
E
1
変数
x
y
傾き
平均
体育館を活用して「歩いてグラフ」を書くことから
2
増分
Δx
始めた.小学校からグラフには慣れ親しんでいる.
3
出発点
B3
C3
=(C4-C3)/B2
=(D4+D5)/2
その親しみ方はグラフの持つ意味を理解できている
4
B4
C4
(C5-C4)/B2
(D5+D6)/2
(1) グラフを読む訓練
とは思えない.2つの変数(時間tと距離s)は両方
(4) 積分の概念
共に一次元上を動いていることを理解していない.
割り算の話の延長線上に掛け算が出てくることは
変化しているのはグラフの書かれている平面(2次
当然であった.掛け算が意味することを面積に帰着
元)上と考えている節がある.基本的は次ぎの3つの
させることも,「歩いてグラフ」からも学生の思考範
グラフを歩いて作ることを試みた.ここでは歩く「方
囲である.面積を長方形の和として求めていくこと
向」が重要になっていた.
は,すぐに台形に置き換えていた.面積近似が台形
の方が良いことは,具体的にグラフを眺めていた結
果である.エクセルでの微分の活動を示す
増加の状態
変化なしの状態
減少の状態
(2) 関数の概念(合成関数をも含めて)
関数の規則を理解しない数学に対して,具体的に動
くためには,規則をはっきりと約束する必要がある.
具体的に動きによって,2つの間の関係が存在する
ことを,三角関数を例にとって考えてみた.動きの
様子を具体的に見ることによって,理解することは
抽象的な思考方法の基盤を作る.
A
B
C
D
E
1
変数
x
y
面積
和
2
増分
Δx
3
出発点
B3
C3
(C4+C3)* B2/2
D3
B4
C4
(C5+C4)* B2/2
(E3+D4)/2
4
(5) 「紙と鉛筆」では不可能なこと
グラフを書く原理は,多くの点を計算で求め,各
点を次々に結んでいく.この原理を理解できるなら
ば,後の計算は学生の直接的な活動ではない.機器
に任せる.現在の数学教育で最もかけていることは,
創造的な活動である.抽象的な数学的知識理解と
その発見的な喜びを助けるの可能性として,機器活
用は数学教育の中に喜びを加えることが可能である.
y=sinxの規則
y=sin(2x)の規則
(3) 微分の概念
微分という言葉は多くの学生は知っている.しかし,
ここで知っている事柄は,計算ができると言っても
良い.歩く方向に対して,グラフを眺めて「変化」を
重視することであった.この変化は「歩いてグラフ」
では速度として考えられた.目で見ているグラフか
ら,直線の傾きが変化にとって重要であることがわ
かる.この理解が新しい概念(微分)形成につながる.
与えることではなく,あくまでも学生の発見的な数
学活動ができることを求めていくことができる.直
線の傾きから,一点(瞬間)の傾きへの転換は難しい.
「紙と鉛筆」によって,一部の学生のみが参加してい
た数学教育を,表計算ソフトの活用によって,だれ
もが楽しむ数学教育の可能性を見つけ出すことがで
きる.数学活用においても,具体的に自ら体験した
事柄に戻ることが可能である.数学の楽しさを体験
している.
5.参考文献
S.Watanabe,K.Kakihana and C.Hukuda
Easy Understanding the definition of Trigonometry
Using the CBL and TI-83,89
Teachers Teaching with Technology at Chicago 2007
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