研究課題:コンピュータを使った生活空間設計授業の展開

研究課題:コンピュータを使った生活空間設計授業の展開
短期大学部ライフデザイン学科 平田陽子
1.はじめに
建築や住宅の設計を行なう上で、コンピュータを利用して行なうことは常識になってきてい
る。本学においても、数年前よりコンピュータソフトの CANDY8 と3D マイホームデザイナー
(Ver.2)を使用して間取り図や室内パース図を作成する授業内容を試みているが、今回、後者
ソフトの新しいバージョンが開発されたこともあり、新機能を備えたソフトの使用勝手を試す
ことを通して、新たな授業内容として充実させ、反映させていくきっかけを掴みたいと考えた。
今回入手したソフトの3D マイホームデザイナーPRO5 は、建築の知識がなくても簡単に住
宅の間取りを設計したり、インテリアやエクステリアデザインを自由に設定することができ、
またできあがった空間の中を、まるで歩いているように体感できる「ウォーク・スルー」とい
う機能を備えている住宅デザインソフトの最新バージョンである。本ソフトを使って、住宅を
中心とする生活空間の設計授業の新たな案を作成することができると考えた。
2.3D マイホームデザイナーPRO5 の特徴
本ソフトは、身近な立体物である「建築」や「住宅」をテーマに、間取りの作成はもちろん、
3 次元での空間表現(パース図作成)までも試みることができる点が特徴である。また、空間完成
後にウォーク・スルーができるので、学生が自分で作成した空間に対する興味関心を引き起こ
すことができると考える。また、日陰のチェックや近景との照合も可能になり、周辺環境にも
配慮することができる点が新たに加わった機能であり、現代的課題に応えていると思われる。
2.マイホームデザイナーPRO5 ソフトを使った授業事例案
2-1 本ソフトを使った間取り図作成の特徴
新しい住まいを作った多くの人々が、でき上がってから「ああすればよかった」、「こうすれ
ばよかった」と後悔するということは良く言われることである。そうしないためには、設計段階
で自分が「どのように暮らしたいか」を明確にし、それが設計士または自分のパソコンで間取り
図を見ながら試行錯誤できて、希望のイメージを家族で相談しながら立体的に確認することがで
きれば、悔やむことは少なくなるのではないかと考える。
そのために、まず家づくりの初めの一歩として、本ソフトを使って平面図を作成してみるこ
とを考えた。本ソフトを使って作業をする特徴は以下のようである。
①様々な条件設定(部屋の面積など)をしておくと、それに沿った形で図面が作成できる点、
②平面図だけではなかなか分かりにくい立体空間をイメージしやすい点、③外装・内装のイメー
ジや、家具の配置位置を具体的に検討できる点、④家の中や周囲をウォーク・スルーして、実
際に歩いているような感覚で住み心地を確認することができる点である。
2-2 平面図作成
実際の平面図作成に必要な手順は次のようなことである。
①正確な敷地面積の測定を行なう、②必要な居室の設定をする、③バリアフリーに対応できる
階段・廊下幅を考える、④容積率・建蔽率のチェックをすること、などである。
これらの点に関して、本ソフトはかなり作業がしやすいように設定されているといえる。例
えば、部屋の名称や面積を設定すれば、適切な大きさの部屋が図面としてできあがることや(図
-1)廊下や階段幅もグリッドの分割が簡単にできて、細かい寸法を設定することができ、バリ
アフリー対応の間取りに設定しやすいことなど、敷地面積や建蔽率・容積率を設定しておくと
作業と中も現在の状況が確認でき、また規定の面積をオーバーすると警告が出される点などが
あげられる。
2-3 立体イメージをつくる
平面図ができあがったあとは、①各部屋の用途や雰囲気を考えて、家具や小物のパーツを配
置する(図-2)ことによって、実生活をイメージすることができる。また、②完成したパー
ス図の断面表示機能をみる(図-3)ことによって、各部屋間のつながりを確認できる。また、
③仕上げ材の比較検討を行なう際にも、外装材・内装材のデータサンプル集からの素材を簡単
に選べるため、素材間の比較をしやすいことなどがあげられる。
2-4 エクステリアデザインの試み
最後に住宅周りのエクステリアデザインや周辺環境を考える。駐車場、駐輪スペース、子ど
もの遊具、洗濯物干し場、植栽、花壇などのデザインを行うことによって、住宅の外回りの環
境を考えることができる。また、近景との照合を行なうことや、日当たりの確認、つまり周辺
地域への日陰のチェックをおこなうこともできる。
3. 終わりに-本ソフトを使った授業の有効性
本ソフトを使用することで、部屋の大きさを変更してみたり、壁紙や家具配置、色彩を様々
に変えてみるなど、手描きであるとなかなか面倒な作業も比較的簡単に、また自由に試してみ
ることができ、学生の学習意欲をそそる授業内容にすることができると思われる。また、エク
ステリアデザインや周辺住環境に対する配慮についても、実際の日影の出方などをイメージし
やすくなり、近景とのあっているかどうかを確認できるなど、設計する上で配慮すべきポイン
トについても学びやすい点が優れていると考える。
また、本ソフトを使用した学生作品コンテストも行なわれており、それに応募することを目
標にすることで、学生の授業に対する積極性をも引き出すことができる。住宅の間取り図やパー
ス図が比較的簡単に作成できることから、住宅設計に対する関心の高まりも予想でき、住宅系
資格取得への動機付けの1つとなるであろうことも期待できる。
以上、今回の試みでは購入した住宅設計ソフトに様々な機能が付加されたことで、学生の興
味関心が呼び起こされそうであることが分かった。そのことを踏まえて、本ソフトを使って授
業内容を展開していくことにより、学生の理解を深めていく効果があると推察できる。