中学校発展講座 観察 ヒトデやウニの受精や初期発生の観察 目的 動物における有性生殖の仕組みについて,ヒトデやウニの受精や初期発生の観察を通して理解 させる。 A イトマキヒトデの受精と初期発生の観察 準備 イトマキヒトデ,ビーカー,スポイト,スライドガラス,カバーガラス,ペトリ皿,時計 皿,解剖用具,顕微鏡,ろ過海水(または人工海水 ),10 −6mol/ メチルアデニン溶液(海水 希釈) 方法 1 ヒトデの解剖 背面図 図1のように,1本の腕の先端を切り落とし周 放射神経 口 囲に沿ってはさみを入れ,さらに間ふく隔壁を切 断し背側と腹側を分離し,生殖巣を露出させる。 白く精液が見えるのが精巣,オレンジ色の粒塊が 卵巣である。 2 間ふく隔壁 (5カ所) 未成熟卵(第一卵母細胞)の観察 ヒトデの卵巣を,ろ過海水を入れたペトリ皿に 取り出し,ゆすって卵を出したものを時計皿に採 生殖巣 り,顕微鏡で観察する(次の3の過程を行った直 後に観察してもよい)。 3 減数分裂の観察 摘出した卵巣の一部を10−6mol/メチルアデニ ン溶液を含む海水に20∼40分間浸したのち顕微鏡 で観察する。 4 人工受精 柄付き針の先に少量の精子を取り,方法2,3 切り放された背面 白色の粒塊…精巣(雄) オレンジ色の粒塊…卵巣(雌) 図1 ヒトデの解剖の仕方 で得られた卵にそれぞれ媒精し,顕微鏡下で変化 を観察する。 5 極体の観察 メチルアデニンで処理後80分位経過した卵を観察する。 参考 10−6mol/ メチルアデニン溶液(海水希釈)のつくり方 メチルアデニン10mgを蒸留水75㎝ 3に溶かし ,10−3mol/ 溶液をつくる 。これは冷蔵庫で2∼ 3ヶ月保存できる。冷凍しておけば,それ以上保存が可能である。使用するときは,10−3mol/ の溶液を1㎝ 3取り,海水999㎝ 3で希釈し,10−6mol/の溶液にする。 - 1 - 北海道立理科教育センター B ウニの人工受精と初期発生 準備 キタムラサキウニまたはエゾバフンウニ ,解剖用具 ,ビーカー ,ピペット ,ペトリ皿 , 時計皿,ホールスライドガラス,カバーガラス,顕微鏡,0.5mol/ 塩化カリウム溶液,海 水または人工海水,ホルマリン 方法 1 ウニの口器(アリストテレスのちょうちん)周囲の膜状部分にはさみを入れ,口器に沿って 切り,ピンセットを使って口器を取り出す。 2 図2のように,海水を入れたビーカーに口器側を上に 0.5 mol/ KCl してウニを載せ,0.5mol/塩化カリウム溶液をピペット で0.1㎝3程度注入し,卵または精子を放出させ,雌雄の 判別をする。 3 雌はそのまま放卵させる。雄は殻を割り,精巣のみを 取り出しペトリ皿に入れる(ドライスパーム)。 4 海水を入れた 採取した卵を海水とともに時計皿に少量取り,うすめ ビーカー た墨汁を2∼3滴加え,低倍率でゼリー層を観察する。 精子懸濁液(原精液:ドライスパーム1滴を海水30㎝ 3 5 に希釈したもの)をスライドガラスに取りカバーガラス 図2 ウニの雌雄判別の方法 をかけて,高倍率で観察する。 6 卵を海水とともに時計皿に少量取り, 低倍率で観察しながら,精子懸濁液1滴 を静かに加え,受精の様子を観察する。 7 そのまま60分程放置した後,第1卵割に よって細胞質がくびれていく様子を観察す る(図3)。引き続き,第2卵割以降につ いて,卵割の方向や割球の大きさなどに注 目しながら観察する。 8 図3 第1卵割の様子 桑実胚,胞胚,原腸胚,プルテウス幼生 などについては,海水ホルマリン液(海水:ホルマリン≒95:5)で固定した標本を用いて観察 する。 参考 1 口器を取り出さず,膜状部分から0.5mol/ 塩化カリウム溶液を注射器で注入する方法もあ る。また,0.5mol/塩化カリウム溶液の代わりに0.1mmol/ アセチルコリン海水溶液を使うこ ともある。 2 卵懸濁液は冷蔵庫で1日,ドライスパームは冷蔵庫で2・3日は保存できる。 3 ウニは必ず漁協を通して入手するようにし,決して自分で採集しないこと。入手時期は,禁 漁期間の直前を目安とする。 4 キタムラサキウニを15℃程度で発生させた場合,各発生過程の標本を得るタイムスケジュー ル例を次のページの表に,発生の様子を図4に示す。 - 2 - 中学校発展講座 表 発生過程タイムスケジュール例 第1日目 第2日目 第3日目 受精 原腸胚中期 時 間 8:30 11:30 13:00 13:30 14:00 17:30 23:30 9:30 12:00 17:30 3:30 受精後の経過時間 − 0分 1時間30分 2時間00分 3時間30分 6時間00分 12時間00分 22時間00分 24時間30分 30時間00分 40時間00分 発生の状態 採卵・採精 受精 2細胞期 4細胞期 8細胞期 桑実胚 胞胚 原腸胚中期 原腸胚後期 プリズム幼生 プルテウス幼生 2細胞期 4細胞期 8細胞期 原腸胚後期 プリズム幼生 プルテウス幼生 図4 キタムラサキウニの発生 - 3 - 北海道立理科教育センター
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