大阪市立科学館研究報告 20, 109 - 110 (2010) プラネタリウム投影プログラム「惑星状星雲」制作報告 * 江 越 航 概 要 当 館 では 2009 年 6 月 から 8 月 にかけて、「惑 星 状 星 雲 」という内 容 でプラネタリウム番 組 を投 影 した。 今 回 の番 組 中 では様 々な惑 星 状 星 雲 の姿 を紹 介 することを通 して、惑 星 状 星 雲 が私 たちの誕 生 とも深 く関 わっていることを理 解 してもらうことを目 指 した。本 稿 では番 組 制 作 に当 たってのコンセプト、および製 作 した番 組 の内 容 について報 告 する。 1 . はじめに 状 星 雲 となって、宇 宙 空 間 に散 らばったガスは、やが 2009 年 6 月 5 日より 8 月 30 日まで、「惑 星 状 星 雲」 てまた新 しい星 の材 料となる。 と題 してプラネタリウムの投 影 を行 なった。惑 星 状 星 雲 それだけではなく、私 たちの体 を作 っている元 素 も、 という天 体 は、一 般 にはあまりなじみのない言 葉 である 星 の中 で作 られたものである。それが惑 星 状 星 雲 とな が、大 変 美 しい姿 をした天 体 であるとともに、星 の中 で って宇 宙 空 間 にばらまかれ、やがて私 たちの体 の材 料 合 成 された元 素 を実 際 に観 測 することができ、それに になったものと考えられる。 そういう意 味 で、惑 星 状 星 雲 は実 は私 たちの誕 生 と より星 と私 たち自 身 とのつながりを考 えるきっかけも与 えてくれるものである。今 回 の番 組 中 では、そうした惑 も深く関 わっていることを理 解 してもらう。 星 状 星 雲 と私 たちの誕 生 の関 わりについて理 解 しても 3 . 番組 の 構成 らうことを目 指 した。 番 組の構 成は、次のように主 に 6 つのパートに分け 本 稿 では番 組 制 作 に当 たってのコンセプト、および て作 成 した。()内は、作 成した sft ファイルの名 称 であ 製 作 した番 組 の内 容について報 告 する。 る。 2 . 番組 コンセプト ○イントロ(intro.sft) 夜 空 には、惑 星 状 星 雲 と呼 ばれる天 体 があることを 今 回 の番 組 においては、主 に次 の点 を伝 えることを 目 的に製 作 した。 紹 介 する。望 遠 鏡 で見 た姿 は惑 星 に似 ているが、全 く ○宇 宙 には惑 星 状 星 雲 と呼 ばれる美 しい 輝 きを持 つ 別の天 体 であり、今 回の番 組 ではその秘 密に迫ってい 天 体がある。 く、という内 容を解 説 する。 惑 星 状 星 雲 は一 般 にはあまり知 られていないが、天 ○惑 星 状 星 雲 の姿(structure.sft) 文 のニュース等 においてはよく紹 介 される天 体 であり、 多 くの惑 星 状 星 雲 の写 真 を示 して、惑 星 状 星 雲 に その美 しい姿 がたいへん興 味 深 いものである。こうした は、リング状のもの、細 長く伸 びたもの、楕 円 形をしたも 天 体 の姿 を紹 介 することは、より天 文 学 に興 味 を持 っ のなどさまざまな姿をしたものがあることを紹 介する。 しかし、これらの写 真 をよく見 ると、中 心 に星 があるこ てもらうことにつながると考えられる。 ○惑 星 状 星 雲 の正 体 は終 末 を迎 えた星 の残 骸 であり、 とから、惑 星 状 星 雲 の 正 体 は、星 が 死 んだときに 周 り に放 出 したガスであることを説 明 し、全 天 周 動 画 により 実は私たちの誕 生とも関わっている。 惑 星 状 星 雲 は星 の進 化 の最 終 段 階 の姿 であり、星 の一 生 を 理 解 するうえでも、重 要 な 天 体 である。惑 星 星 の進 化 の最 終 段 階 として惑 星 状 星 雲 のできる様 子 を紹 介する。 ○私たちとの関 わり(research.sft) 天 文 学 者 た ちも 惑 星 状 星 雲 をさまざ まな 方 法 で 研 * 大阪市立科学館 学芸課 E-mail:[email protected] 究 していることを紹 介 する。その理 由 の一 つとして、私 - 109 - 江越 航 たちの将 来 に関 係 するためであり、遠 い将 来 太 陽 も実 いて、印 象 を強 くすべきということで引 き延 ばした映 像 は惑 星 状 星 雲 となり、最 後 を迎 えることを全 天 周 動 画 素 材の提 供と BGM の提 案 を受けた。 により解 説する ○元 素の発 見 ○元 素の発 見(elements.sft) 私 たちは星 のかけらでできているというシーンに関 し もう一 つ惑 星 状 星 雲 を研 究 する理 由 として、私 たち の過 去とも関 係することを述 べる。 て、惑 星 状 星 雲 が 地 球 や 人 と 深 くつな がっていること を概 念 的に示すビジュアルイメージの提 供を受けた。 宇 宙 には最 初 、水 素 ・ヘリウム・リチウムしかなく、地 ○エンディング 球 のような星 や、私 たちの体 をつくる物 質 はなかったが、 惑 星 状 星 雲 の中 からこれらの物 質 が見 つかっており、 印 象 づけをもう少 し深 く行 うための、BGM の提 案 を 受けた。 私 た ちはまさに 星 のか け ら で できて いると いうことを 説 明する。 これら指 摘 を取 り入 れ、番 組 内 容 を再 構 成 して実 際 の投 影 用 番 組とした。 ○惑 星 状 星 雲 の観 察(observe.sft) 夏 休 みの時 期 であるので、夏 に見 える惑 星 状 星 雲 5 . おわりに として、こと座 のリング星 雲 、こぎつね座 のあれい状 星 雲を紹 介する。 惑 星 状 星 雲 というものは、一 般 の来 館 者 に対 しては ほとんどなじみのない天 体 であったと考 えられる。その ただし実 際 に見 るのは、望 遠 鏡 の扱 いに慣れた方と ため、番 組 の製 作 に当 たっては演 出 構 成 の意 見 を受 いっしょに見 るか、公 開 天 文 台 などで観 察 することを勧 けることで、より理 解 を深 めてもらえたのではないかと考 める。 えられる。 ○エンディング(ending.sft) 一 般 に天 文 学 は私たちと関 係 のない世 界 のことと捉 惑 星 状 星 雲 の全 天 周 映 像 を投 影 しつつ、今 回 のテ ーマを振り返る。 えられることもあるが、実 際 には私たちとも深 く関 わって いるものであるということを、伝 えていきたいと考 えてい る。 4 . 製作依 頼 4-1.全 天 周 映 像 惑 星 状 星 雲 のできる様 子 については、今 回 の番 組 でポイントとなる部 分 なので、全 天 周 映 像 にて 構 成 す ることとした。しかし市 販 の映 像 では、惑 星 状 星 雲 の形 成 過 程 について分 かりやすいものがなかったため、現 在 得 られている知 識 でできるだけ正 確 な描 写 を行 うた め、新 た に 映 像 を 製 作 する こととした 。全 天 周 映 像 の 製 作は(株)冥 王に依 頼 した。 4-2.全 天 周 映 像 番 組 の構 成 方 法 番 組 の内 容 について、より来 館 者 に理 解 してもらい 印 象 として残 してもらえるよう、番 組 の構 成 方 法 につい て外 部 の専 門 家 の意 見をもらうこととした。このために、 (有 )トラフィックの藤 澤 正 則 氏 に演 出 構 成 の委 託 を行 った。そこで指 摘された点は、以 下の通りである。 ○イントロ スタート 時 にメ リハリが 欲 しい。そのた めの 音 のサ ン プル提 供を受 けた。 ○惑 星 状 星 雲 の姿 色 々な姿 の 惑 星 状 星 雲 がある訳 について、見 せた いポイントを明 確 にするよう指 摘 を受 けた。見 せ方 のサ ンプル映 像 を提 供 してもらい、これをもとに演 出 の改 善 を行った。 ○私たちとの関 わり 50 億 年 後 には太 陽 も惑 星 状 星 雲 となるシーンにつ - 110 -
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