お客さまの熱意に全力で応え、 共にナンバーワンになるために 海野忍

社 長 対 談
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Dimension Data 最高経営責任者
ブレット・ドーソン氏
NTTコムウェア 代表取締役社長
海野 忍
お客さまの熱意に全力で応え、
共にナンバーワンになるために
〜市場をリードする技術で、お客さまとの信頼関係を構築〜
当コーナーは、N T Tコムウェアのお客さまをゲストにお迎えし、お客さまの事業動向
をお聴かせいただくとともに、当社 への期 待などもお伺いしていきます。今 回は、
Dimension Data 最高経営責任者( CEO )のブレット・ドーソン氏に、お話を伺いました。
(本文中敬称略)
海野 まず、ドーソン最高経営責任者のことを伺います。現
職に就く前は、どのような仕事をされていたのでしょうか。
ドーソン 公認会計士としてスタートし、南アフリカ共和
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営責任者に就任しました。
お客さま重視を徹底し、グローバルに業容を拡大
国の鉱山会社で財務全体の統括を担当していました。その
海野 どのような地域や事業で業績が伸びていますか。
後、紅茶やコーヒー、ポテトチップス、化粧品などを作る会
ドーソン 直近6カ月間の業績では、約14% の成長が見られ
社の最高財務責任者を務めました。その会社はスナック菓
ました。セキュリティー関連とサービス提供用データセンタ
子メーカー、プリングルズの南アフリカ販売代理店でもあ
ーが急速に伸びたことが要因です。クラウドも好調です。IT
り、ビジネス上、多くのことを学びました。今でもその手法
業界全体の動きはアウトソーシングに向かっており、それを
や戦略を参考にすることがあります。当時、南アフリカは経
引き受ける当社は多くの分野で順調な成長を遂げています。
済制裁を受けていて、貿易ができない状態でした。制裁解除
地域でいうと、競争の厳しいヨーロッパ市場での成長が顕著
の際にはぜひ海外進出したいと、輸出事業に携わることを申
です。復調傾向にある米国、アジア、オーストラリアでも堅
し出ました。この事業が順調に進んでいた1990年代後半に、
調です。一方、中近東やアフリカでは政治情勢などにより思
Dimension Data から誘いを受けたのです。
ったほどの成長は見られませんでした。
海野 入社の動機と、入社後のご経歴をお聞かせください。
海野 ガートナーのマジック・クアドラント(通信系アウト
ドーソン 当時、すでに南アフリカのネットワーク事業でナ
* は縦軸が「実行力」
ソーシング/専門サービス)
、横軸が「ビ
ンバーワンだった Dimension Data は、既存の事業モデルに
ジョン」と設定されており、Dimension Data 様は右上の「リ
とらわれないまったく新しいサービスを考えていて、斬新な
ーダー」に位置づけられていますね。
発想力のある人材を求めていました。私は、今では世界中で
ドーソン お客さまは、こうした評価を基に判断されますか
定着している VPN(仮想プライベートネットワーク)のビジ
ら、この位置づけはとても重要です。高品質かつリーズナブ
ネスモデルを確立して利益を上げました。この試みは、南ア
ルなサービスでお客さまの事業改革を実現できる、信頼でき
フリカ国内においては非常に先進的なものであり、今でも国
る会社だと認識されるようになると思います。
内市場を独占しています。
海野 Dimension Data 様の企業理念をお聞かせください。
Dimension Data はその当時持っていた2つの会社を統合
ドーソン 「変化をもたらす」というのが会社としての目標
しようと考えていました。私は Internet Solutions という会
です。一番を目指すお客さまの熱意に、全力で応えていくと
社の合併業務を担当しました。その後、Dimension Data が
いうことです。そしてスタッフや株主、ひいては社会全体の
6件ほどの買収を行ったばかりの北米に行き、それらを統合
情熱を刺激したいと考えています。私たちは、お客さまをす
する任務に就きました。北米にいた2002年はドットコム不
べての中心に据えています。それが「変化をもたらす」ため
況の直後で、厳しい市場での企業統合は私のキャリアの中で
に最も重要な点です。
も非常に困難なものでした。私たちは雇用を減らし、業務集
海野 シスコや IBM、HP といった世界の有力ベンダーと強
約をしなくてはなりませんでした。2003年に最高執行責任
いパートナーシップを構築されていると伺っています。
者として本社に戻るよう言われ、2004年にグループ最高経
ドーソン これらの会社とは、いずれも長い年月をかけて
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社 長 対 談
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「お客さまやスタッフ、株主、そして社会全体の
情熱を刺激したいと考えています」
「NTTグループの一員として
共に発展、成長できるよう努力します」
ブレット・ドーソン(Brett Dawson)氏
1997年 Dimension Data 入社。同グループ初の
ジョイントベンチャー、OmniLink 社の財務部
長を務めた後、合併で誕生したインターネッ
トソリューションズ最高経営責任者などを歴
任。2001年 Dimension Data ノースアメリカ社
の最高財務責任者、2002年グループ最高執行
責任者を務め、2004年3月グループ最高経営
責任者に就任(現職)
関係を築いてきました。IT 市場に新たなプレーヤーが登場
ドーソン 何よりまず人材、そして文化です。私たちの事
員となることで、企業文化や仕事に対する高揚感、情熱を
アプリケーション分野、NTT アメリカは通信関係で豊富な
した場合、私たちは彼らの製品をよく理解し、関係を築け
業の要は「人」です。社員が事業戦略を理解し、それを信じ
保ち続けられています。
実績を持っています。
るかどうか確認します。私たちは、パートナーと長期的な
て情熱を燃やせるよう、経営陣はリーダーとして全力を尽
関係を築くためには努力を惜しみません。明確なゴールを
設定し、お客さまの事業環境に最もふさわしいサービスを
グループの一員になった理由は、まず2つの会社のビジ
現在も協力的な関係になっているとは思いますが、力を
くさなければなりません。
ョンがぴったりと合っていたこと、次に、企業文化が近い
合わせて3社の持てる力を1つにできれば、さらに素晴らし
海野 御社はこれまでに多くの企業を買収されました。ど
ものであったこと、3つ目は、より一層 IT サービス、つま
い関係が築けるでしょう。
提供することによって、お客さまにとっての価値を最大化
のような基準や方法で買収の判断をされているのですか。
りクラウドへと向かっていく市場に対応するために、大き
ドーソン まず買収ありきではなく、自社で事業構築する
海野 日本での業績を向上させるアイデアは、何かお持ち
することができるからです。
な助けが必要だという認識があったことです。
でしょうか。
海野 設立から12年たった1995年にグローバル事業を開始
ことを検討し、次にパートナーと組むことを考えます。新
海野 NTT グループに加わって、実際にどのように感じら
ドーソン 大きな日本市場の中で、当社の存在は小さなも
しています。そのきっかけは何だったのでしょうか。
たな地域や知的ノウハウを必要とする分野へ進出する上で、
れましたか。
のです。小さいからこそ、日本での目標、そして夢は「積
ドーソン ネルソン・マンデラ氏が1990年に解放されるま
実行に時間がかかる場合は買収という手段に出ます。時間
ドーソン 参加して3年半ですが、グループの成長を支え、
極的に拡大し続けること」です。NTT は日本での私たちの
で、南アフリカは経済制裁の対象となっていました。同氏
をかけて相手企業の社員や企業文化について検討を重ね、
できることを実行しよう、という情熱に胸をふくらませて
事業を支援してくれていて、大変ありがたく思っています。
の釈放後、制裁が徐々に解かれていくのを目にして、グロ
私たちと仕事をすることを望んでいるかどうかを判断しま
います。当社は NTT を発展させ、その夢を育むよう努め、
海野 当社への期待をお聞かせください。
ーバル化の条件が整ってきたと感じました。当時私たちは、
す。技能やサービス、ユーザー層なども重要です。
現在のところそれは成功しています。社員の夢を育み続け
ドーソン 私たちは NTT コムウェアと共に、NTT グループ
南アフリカにおいて市場を独占していて、ちょうど20年前
海野 文化や事業が異なる企業を買収した後、どのように
られる今の状態を、大変うれしく思っています。
および各国の NTT グループのお客さまのために、高い目標
の NTT と同じような状況でした。国内のマーケットシェア
統合を図っていくのですか。
に向かっていきたいと思います。
ドーソン 買収はそれぞれ異なっているため、1つの方法
海野 一例として、米国市場には Dimension Data 様のほ
を維持する意味でも、より多くの地域でサービスを提供す
かに NTT データ様(元キーン社)
、NTT アメリカ様があり
海野 はい。Dimension Data 様と NTT コムウェアが協力
る必要がありました。
がすべてのケースに適用できるわけではありません。ケー
ます。3社はどのような関係といえますか。
し、NTT グループの発展と、世界中のお客さまのために大
海野 それはお客さまから見るとどのような意味を持つの
スごとに適切なアプローチを考え、強みを明確化し、私た
ドーソン この3社はそれぞれ異なる事業領域に重点を置
きな力になっていきたいですね。本日はありがとうござい
でしょうか。
ちの事業に統合する方法を検討します。
いています。私たちは ICT の管理が得意で、NTT データは
ました。
ドーソン IT 業界は、お客さまの要求レベルがますます高
くなってきているとともに、全世界で一貫したサービスが
必要とされています。クライアントが多国籍になった途端、
海野 Dimension Data 様は2010年10月に NTT グループと
1つの地域だけでサービス提供を行うことは困難になりま
なりました。そのきっかけは何だったのでしょうか。
す。IT 業界はますます標準化し、サービスとしての IT、そ
ドーソン NTT の鵜浦博夫氏(現・代表取締役社長)が、私
してクラウドへ向かっています。当然、グローバルに基軸
たちとの交渉に多くの時間を割いてくれました。NTT が海
を置いた対応が求められるようになるでしょう。
外市場への進出に強い意向を持っており、当社に対しその
事業の要は「人」
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NTT グループの一員として
対談日:2014年4月25日 場所:南アフリカDimension Data本社(ヨハネスブルク)
CORPORATE
PROFILE
先陣を担ってほしいという思いが伝わりました。
ご存じの通り当社は現在複数の買収が進行中で、今後も
海野 御社が30年以上にわたって成功している要因は何だ
積極的に投資したいと思っています。これはすべて NTT の
と思われますか。
サポートがあってのことです。私たちは NTT グループの一
名称:Dimension Data 本社所在地:ヨハネスブルク(南アフリカ共和国)
設立:1983年 従業員数:約2万3000人(グループ全体)
主な事業内容:ICT サービスプロバイダー、ソリューションプロバイダー
*Gartner, Magic Quadrant for Communications Outsourcing and Professional Services, Eric Goodness and Christine Tenneson, 21 October 2013.
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