マルコオ・ポーロ化工

株式会社
マルコオ・ポーロ化工
拡大する建築物の修繕市場で一目置かれる存在、株式会社マルコオ・
ポーロ化工。大規模な修繕工事では、ハード面のみならず、ソフト面こ
そが重要と話す黒田洪二氏。本物のブランドを早期に確立し、盤石な体
制づくりを目指す。
(上挙母支店お取引先)
大規模修繕工事 年間40棟
御社の事業内容を簡単にお話ししていた
だけますか?
建物の修繕工事がメインです。とくに、塗
装工事、防水工事、防食工事、補強工事とい
った外装工事を中心に、おもにビル建築物の
リニューアルを行っています。
戸数が200∼300もある大型マンション、10
∼20戸ほどの小型アパート。民間の建物、公
代表取締役 黒田 洪二 氏
共の建物。どんな建物も当社の対象です。
売上の半分は大型マンションなどの大規模
【会社概要】
○本 社 豊田市金谷町4-50
TEL:0565-34-4631 FAX:0565-33-0548
修繕工事で、棟数にして年間40棟ほど。ほと
んどが名古屋市内の物件です。
○名古屋支店 名古屋市中区千代田5-3-20
残りは比較的小規模な工事で、このなかに
TEL:052-238-7102 FAX:052-238-7103
はアスベスト除去工事やダイオキシン処理工
○創 業 昭和50年3月
○資本金 4000万円
○社員数 30名
○協力会社85社・技術者190名
事など、環境関連の工事も含んでいます。
アスベストやダイオキシンの処理工事は、
6∼7年前をピークに徐々に減ってきています
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が、オリジナル工法で安全かつ確実に処理し
ですが、最近はなるべく多くの業者に競争さ
ています。環境技術部が担当しています。
せるようになっています。修繕費用はマンシ
元請け志向
売上の半分を占める大規模修繕工事は、
どのように受注するのですか?
元請けとして受注しています。当社は常に
ョン住人の積立金で賄われますので、住人の
意向を十分に反映させるようになっているの
が背景にあるようです。
創業は昭和50年とのことですが、当初か
ら元請け志向なのですか?
元請け志向ですから、下請け仕事は基本的に
当初からです。
していません。
当社のような中小企業の場合、大手企業の
大規模な修繕工事となると、工事金額もか
系列に入って下請けに徹するというのが普通
なりの高額になりますから、発注側のマンシ
の姿ですが、そういう事業にしたくなかった
ョンも複数の業者から見積もりを取るのが一
のです。
般的です。最近あった例ですと、17社から見
経済が右肩上がりの時代は、建設業界にも
積もりを取ったというところもありました。
大手を頂点としたピラミッド構造が地域ごと
受注獲得のためには、同業他社と競うとい
にあって、そこから外れると厳しい状況に置
うのが、ひとつのパターンになっていますが、
大規模工事の場合、競争相手の多くは大手ゼ
ネコンです。
かれることは承知していました。
今でこそ、ピラミッド構造は崩れつつあり
ますが、そういうなかでの創業でしたから、
ゼネコン企業を交えて、はじめに工事金額
環境はまったくの逆風で、はじめの頃は飛び
の入札が行われ、上位2∼3社に絞られた後、
込み営業専門で「2度と来なくていい」とい
各社のプレゼンテーションを経て、施工業者
われたことも何度もありました。
を決めるというケースが多くなっています。
それでも多くの経験を重ね、いろいろなこ
プレゼンは、ほとんどの場合、マンション住
とを学んでいくうちに、しだいに仕事が認め
民の総会(集会)などで行うことになります。
られ、紹介などもいただけるようになり、今
以前はマンション管理組合の事務局などが
一方的に業者を指定するケースも多かったの
日に至っています。
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ソフト面が勝敗のカギを
競合する大手企業に勝つためには、どの
ようなことがポイントになるのでしょう
か?
ソフトの面がカギを握っています。
と、おっしゃいますと?
り込んでおいてください」といった告知が時
工事そのものや施工技術といったハードの
面に大きな差はないと思います。もちろん、
その面でも当社は頭ひとつリードしていると
思っていますが・・・。
それ以上に、工事をいかにスムーズに実施
するか、アフターフォローをいかに充実させ
るか、そういったソフトの部分が勝敗を分け
るポイントになると思っています。とくに大
規模修繕工事では、そういう傾向が強いと感
じています。
たとえば、どういうことがあるのです
か?
大型マンションを改修工事する場合、そこ
には数多くの世帯が生活していますから、そ
の世帯に対するキメ細かい配慮が必要になっ
てきます。
たとえば、「明日の昼からこういう作業を
しますので、ベランダに干してあるものは取
には必要になるでしょう。
こういうことは簡単にできそうで、なかな
かできないものなのです。世帯数が10や20な
たやす
らば容易 いでしょうが、200となると周知す
るのが難しくなってきます。しかし、これが
トラブルの元になるのです。
そういうことを考慮して、当社は何百世帯
あろうとも、かならず1世帯ごと全世帯にお
知らせしたうえで作業に取り掛かっています。
また、アフターフォローについても、通常
は1∼2年の保証をつけて終わるケースがほと
んどですが、当社では、1年後、3年後、5年
後をメドに全世帯にアンケートをとって不具
合の有無を確認するなど、比較的長い期間サ
ポートできる体制を整えています。
とはいえ、修繕工事にはハードとソフト、
両面のノウハウが必要で、どちらが欠けても
上手くいかないものです。
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ソフトの話から少し逸れますが、当社は修
ようになったのは最近です。これまで新築ば
繕工事の専門業者として、ハードの面、とり
かりに目を向け、修繕にはあまり目を向けて
わけ工事品質についても、他社よりもワンラ
こなかったようなので無理もありませんが、
ンク上の品質を提供するのが当然だと思って
ソフト面は一朝一夕にはいかない部分も少な
います。
くないのです。
そんなことから品質管理については、国際
規格であるISO9001も取得しています。最近
では、多くの企業がISOを取得するようにな
っていますから、とくに目新しいとお感じに
ならないと思いますが、当社のISOは登録範
囲が他社と少し違っています。
「建築物改修に伴う防水工事、左官工事、ア
スベスト除去工事、ダイオキシン類除去工事」
というのが登録範囲ですが、前半部分の「建
築物改修に伴う・・・」のところがポイントで、
改修工事に重点を置いたものになっていま
す。
大手ゼネコンと当社が最終プレゼンテーシ
ョンの段階で競った場合、見積もりの金額で
は大手ゼネコンのほうが安いのに、ソフト面
もていねいに説明する当社が選ばれることが
よくあります。
このことはお客様のニーズにソフト面が大
きなウェイトを占めていることの表れではな
いでしょうか。
本来、修繕工事は完了したら、それで終わ
りではないのです。しかし、実際にはそうな
っているケースが多く、お客様もそのように
理解しているケースがほとんどです。
認定機関によれば、こういう範囲でのISO
取得は例がないそうです。
お客様の期待を超える
「お客様の期待を超える」を信条とする当社
では、完了した後もお客様のニーズを満たす
ように努めていますし、そうすることで次へ
の布石にしています。
ハードの面はともかく、ソフトの面は施
先ほど、複数の業者から見積もりを取る修
工業者によって、かなり対応が違うもので
繕工事が一般的と申し上げましたが、じつは
すか?
大型マンションであっても、そうでないケー
違うと思います。とくに大手は大雑把な印
象を受けます。
大手が修繕マーケットに本格的に参入する
スもたくさんあって、お客様から当社を直接
指定していただく場合や紹介をいただく場合
もあります。
2002年6月に「ISO9001:2000(2000年版)」を
取得。2010年4月に「ISO9001:2008(2008年版)
に更新。
登録範囲は「建築物改修に伴う防水工事、左
官工事、アスベスト除去工事、ダイオキシン類
除去工事」で、改修工事に重点が置かれている。
他に例をみない登録範囲。
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岐阜県養老公園「養老天命反転地」(作者:荒川修作、
マドリン・ギンズ)の塗装工事。
あるマンションでのことですが、もう少し
い、その責任は下請け企業の立場の責任とは
で工事が終わるという時に、お客様のほうか
別次元の問題です。もちろん、その場かぎり
ら「10年後の修繕もお願いできないか」と予
を繕えば済むようなものでもありません。
約を申し込まれたことがあります。すこし驚
具体的には?
いたのですが、お客様の最初の期待を超えた
からだと感じています。
ブランド構築のためには、優れた工事の実
績を積まなければなりませんし、工事の進め
マルコオ・ポーロを
本物のブランドへ
お客様からの紹介も多いのですか?
方や現場の作業員の言葉づかい、技術力、工
事の品質、アフターフォロー、お客様の満足
といったファクターが、すべての工事におい
て、例外なくハイレベルで実践されなければ
かなり多くなっています。
なりません。それでこそ、はじめてブランド
それだけ、お客様からの評価が高いとい
といえるからです。
うことでしょう。
これまでブランドを作ることを心掛けてき
たことの結果と捉えています。
そういうブランドの構築を目指してきたこ
とが、結果的にお客様からの支持が得られる
ようになったベースになっているのではない
かと思います。
ブランドを作ること?
「マルコオ・ポーロ」ブランドが完成したと
元請けを志向した当社が、他の元請け業者
は思っていませんが、このさき、誰の目から
と対等に工事を受注していくには、ある程度
みても、「ブランドにふさわしい仕事をする」
の事業規模が不可欠で、それを実現しようと
と評価されるようにならなければなりませ
すれば、自社ブランドの構築がどうしても必
ん。
要になってきます。そう考えるようになった
のは、創業してかなり早い頃です。
ブランドの展開には大きな責任をともな
トヨタは誰の目からみても、トヨタのブラ
ンドにふさわしいクルマを作っています。そ
の意味で目指すべきブランドです。
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また、サークルKは商品を堂々と定価で販
売しています。おなじ商品をもっと安く売っ
ている店があるにもかかわらず、定価販売し
ているのです。そして、来店客はそのことに
少しの疑念も持たずに、その値段で買ってい
えてもらうことや会社のイメージを印象づけ
る作業も必要だと思います。
その点、御社の社名は一度聞いたら忘れ
ないユニークな名前です。どういった経緯
で付けた社名なのですか?
ます。レジで値引き交渉しているところなど
見たことがないでしょう。客はサークルKと
会社を設立した時は「まるこお塗装商事」
いうブランドを認めたうえで、商品を買おう
でしたが、平成4年に「マルコオ・ポーロ化
と来店しているからです。
工」に改名しました。
イタリアに「ピレリー」というタイヤメー
競争相手の工事価格が4000万円、当社が
4400万円だとしても、お客様から「マルコ
オ・ポーロさんでお願いしたい」といわれる
のが理想的です。それが本物のブランドなの
です。お客様がブランドに価値を認めている
からそうなるのであって、「安いからマルコ
オ・ポーロさんにしたい」というのではブラ
ンドではありません。
会社イメージを
カーがあって、ひょんなことからその会社が
扱っている建材「ラバーフローリング」の日
本総代理店になったのがきっかけです。
ここでは詳しく申し上げませんが、ラバー
フローリングというのは、安全性、耐久性、
デザイン性などに優れた建材で、ヨーロッパ
では床材などに広く利用されています。日本
では、当社の関係したところをあげれば、各
務原航空宇宙博物館や東京ディズニーランド
などで利用されています。
ブランドを浸透させるための方策も必要
になるのでは?
ブランドを浸透させるためには、社名を覚
そのイタリア製の建材を扱うことになっ
て、それまでの社名が「まるこお」。そこに
イタリアとくれば、『東方見聞録』で有名な
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マルコ・ポーロを連想しますから、それで
「マルコオ・ポーロ化工」としました。
から当社がすぐに連想されるように、あらゆ
るところに使うことにしました。当時は、ま
マルコ・ポーロは冒険家です。当社は新た
だ「まるこお塗装商事」でしたから、馴染み
なスタンダードの探求にも挑戦するという気
やすいマスコットを前に出して、会社イメー
概をもっていますから、その点からもピッタ
ジを先行させる狙いもありました。
リする社名です。
しかし、それだけの理由で改名したのでは
今では、“ゴリラのマスコット=マルコ
オ・ポーロ化工”のイメージが定着してきて、
ありません。「マルコオ・ポーロ」などとい
マスコットのシルエットだけで当社と分かる
うイタリア料理店のような社名ならば、かな
までになっています。一般には社名を入れる
らず由来をたずねられるだろうし、そうした
現場の安全防護ネットは、社名を入れずにマ
らきっと記憶に残るだろう、という思惑もあ
スコットだけにしています。
ったからです。戦略の一環です。
余談ながら、いまは、よんどころない事情
でラバーフローリングの取り扱いをやめてい
ます。
膨大な建築物ストック
拡大する修繕市場
ところで、いまの業界動向はどのように
ゴリラのマスコットキャラクターも戦略
の一環でしょうか?
そうです。マスコットキャラクターは創業
して間もない頃に導入しました。
なっているのですか?
さきほど少し触れましたが、大規模修繕工
事に大手が本格的に参入するようになってか
ら競争が激しくなっています。大手の参入は
ゴリラを選んだのは、当時、がむしゃらに
仕事をしていたわたしが、「ゴリラのようだ」
と、よく言われていたからです。
わたしの知るかぎり、昭和50年代前半にマ
スコットキャラクターをもっていた中小企業
はなかったようですが、ゴリラのマスコット
修繕の目安
現場の安全防護ネット
平成23年1月1日現在の建築物ストック
(単位:万m2)
住宅延べ床面積
法人等の非住宅延べ床面積
一戸建・長屋
388,683
事務所・店舗
58,103
共同住宅
149,490
工場・倉庫
79,558
その他
合計
1,622
539,795
その他
42,613
合計
180,274
国土交通省「建築物ストック統計」より
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新築物件が減っているからです。
仮にそうなった場合、お客様の期待を超え
しかし、新築は少なくなっていますが、こ
るどころか、最低限の満足の提供すらできな
れまでに建てられた建物は大量に残っていま
くなるでしょう。そうなれば社会的責任も果
す。いわゆるストックが膨大な量にのぼって
たせなくなり、企業の存続すら危ぶまれるこ
いるのです。国の統計によれば、住宅ストッ
とになるかもしれません。
クと非住宅ストックの延べ床面積の合計は72
億m2もあるようです。
人材の育成は大変に重要だと認識していま
す。
マンションなどのストックは、ある程度そ
当社ではさまざまな勉強会や研鑚会、OJT
の資産価値を維持していかなければなりませ
などを通じて、社員一人ひとりの知識向上や
んから、定期的な修繕やメンテナンスが必要
技術力アップを図っていますが、加えてプロ
です。だとすれば、これから膨大な修繕工事
集団としての組織力強化にも努めています。
が発生することは間違いありません。だから
一人ひとりは微力です。その一人ひとりの
こそ大手も参入してくるのですが・・・。
力を何倍もの大きな力にするには、それを無
現時点での修繕工事の市場規模は、おそら
理なく融合させなければなりません。組織の
く5,000億円はあると思いますが、市場規模
なかでの人材育成というのは、個人プレーに
の拡大はこのさきも続きそうです。
走る人材ではなく、組織目標に向かって自然
プロ集団としての組織力強化
人材の育成については?
「企業は人なり」といいます。どんなに素晴
に周りと協力できる人材を育てることだと考
えています。それが組織力の強化に繋がるは
ずです。
巨大市場も視野に
らしい理念を掲げ、どんなに輝かしい実績を
積んだとしても、情熱や熱意をもった人材が
それを受け継いでいかなければ、将来にわた
って企業は立ち行かなくなる可能性があるの
ではないでしょうか。それはどの企業もおな
じことですが・・・。
今後はどのような展開をお考えですか?
やはり、「マルコオ・ポーロ」ブランドを
確立させることを目指します。
ブランドさえ確立できれば、よほどのこと
がないかぎり、企業は衰退することはないと
The カンパニー
思います。そのときには大きく打って出るこ
ともできます。その場合、東京や大阪への進
<沿革>
1975
●
「まるこお塗装商事」設立
1987
●
“アスベスト”環境事業部発足
1992
●
「株式会社マルコオ・ポーロ化工」に改名
今後、拡大していく修繕工事の市場をどの
1994
●駐車場特許防水“マルコオP工法”
ように獲得していくか。どのように競争して、
1998
●名古屋営業所開設
出も視野に入ってくるでしょう。そこには東
海地方の比ではない巨大な市場があるからで
す。
イタリーピレリーアルティゴ社 日本総代理店
2002
●
“DXN”環境事業部発足
2003
●名古屋営業所移転
2004
●国際規格「品質マネジメントシステム」
立ちません。受注獲得の手法は、いろいろあ
2005
●名古屋支店昇格
ると思いますが、本物のブランドを確立し、
2006
●
「MP工法」
それに相応しい人材を育成していけば、自ず
2007
●名古屋支店移転
2009
●国際規格「品質マネジメントシステム」
2011
●「アクリルシリコン樹脂塗料開発における技
どのように受注していくか。
安売りすれば、かぎりなく受注は取れるか
もしれません。しかし、それでは経営が成り
と道は拓けると信じています。
ISO9001認証取得
技術審査証明BJ102取得
ISO9001:2008認証更新
術向上に対する貢献」において、日本建築
仕上学会学会賞受賞
本社
名古屋支店