工事監査報告書(PDF:767KB)

平成23年度
工 事 監 査 報 告 書
Ⅰ 市営住宅渋沢団地建替事業A工区工事
市営住宅渋沢団地建替事業B工区工事
Ⅱ 楢 川 保 育 園 建 設 工 事
塩尻市監査委員
1
監査の主眼
(1)
地方自治法第 199 条第4項の規定による定期監査の一環として、塩尻市長が執行し
た3工事について、その適法性、合理性、効率性等を検証し、更に設計や施工が適正
で、能率的に行われているかどうかに関して、高度な専門的技術力を持った技術士に
より財政面及び技術面から検査した。
(2)
当該3工事の計画、調査、設計、仕様、積算、契約、施工管理、監督、試験、検査
等に関する書類調査と、現場の施工状況等に係る技術的調査を行い、当該3工事の施
工が適正に行われているかどうかに主眼を置くとともに、併せて工事技術が適当であ
るかどうかについて検査した。
2
調 査 期 日
平成24年1月16日(月)及び17日(火)
3
(1)
(2)
(3)
4
調 査 対 象
市営住宅渋沢団地建替事業A工区工事(建築主体工事)
〃
(電気設備工事)
〃
〃
(機械設備工事)
市営住宅渋沢団地建替事業B工区工事(建築主体工事)
〃
〃
(電気設備工事)
〃
〃
(機械設備工事)
楢川保育園建設工事(建築主体工事)
委
〃
(電気設備工事)
〃
(機械設備工事)
託
社団法人
5
〃
先
大阪技術振興協会
調 査 結 果
別添の工事技術調査結果報告書のとおり。
塩
尻
市
平成23年度
工 事 技 術 調 査 結 果 報 告 書
平成24年2月6日
社団法人 大阪技術振興協会
技術士(建設・総合技術監理部門)
一級建築士
関川 詞之
調 査 実 施 日:
平成24年1月16日(月)~17日(火)
調 査 場 所:
塩尻市役所4階第2委員会室及び当該工事現場
調査対象課等:
建設事業部
こども教育部
監 査 執 行 者:
代表監査委員
監 査 委 員
監 査 委 員
荻 上
関
柴 田
調 査 立 会 者:
会計管理者
会 計 課 長
武 井 祥 司
松 田 さよ子
総務部財政課
工事検査専門員
監査委員事務局長
建築住宅課
教育総務課
古 川
弘 美
亘
博
吉 徳
田 村
永 久
調査対象工事:
Ⅰ
市営住宅渋沢団地建替事業A工区工事(建築主体工事)、同(電気
設備工事)、同(機械設備工事)
市営住宅渋沢団地建替事業B工区工事(建築主体工事)、同(電気
設備工事)、同(機械設備工事)
Ⅱ
楢川保育園建設工事(建築主体工事)、同(電気設備工事)、同(機
械設備工事)
Ⅰ
市営住宅渋沢団地建替事業A工区工事(建築主体・電気設備・機械設備工事)
市営住宅渋沢団地建替事業B工区工事(建築主体・電気設備・機械設備工事)
市営住宅渋沢団地建替事業A工区工事・B工区工事は、1棟の工事を2工区に分割
して発注しているが、監督職員と監理者・設計者は共通で、工事打合せも一緒に開催
している。そこで請負業者は別々であるが、調査の時間の制約もあるので、1棟の工
事とみなして技術調査を行うことにした。
なお、事前に質問書を提出して工事の方針、実施状況等について回答を受け、その
回答の内容を基にして、重要と思われる事項や疑問点を監督職員に質問する形で、工
事監査書類調査を進めた。
なお、回答書の中に「9月の事故」という言葉があったので、その意味の説明を求
めた。平成23年9月1日、A工区において杭打ち機械の組立て作業中、杭打ち機の
支柱(リーダー)に削孔装置(アースオーガー)を取り付ける作業の最中に、削孔装
置の駆動部分の機械が突然降りてきて、下にいた作業員がその機械の下敷きになって
亡くなった。原因調査のために、警察や労働基準監督署等の調査があり、その後、機
械装置や設備を入れ替えて工事を再開したのは10月15日であったとのことであ
る。
Ⅰ-1
工事内容説明者
技術調査に際しては、次の者から説明を受けた。
建設事業部
建築住宅課
課長
小 松
一 朗
〃
〃
建築指導係長
都 築
猛
〃
〃
技師
喜 多
廉
㈱アーキディアック
建築担当
玉 川
幹 夫
中 山
一 生
小 林
弘 幸
武 居
教 之
寺 畑
敦 夫
㈲ライフ設計室
設備担当
A工区:橋詰組・下平特定建設工事共同企業体
現場代理人
B工区:松本土建・米窪組特定建設工事共同企業体
現場代理人
松本土建㈱
Ⅰ-2
担当部長
工事概要
(1) 工 事 場 所
塩尻市大字片丘
(2) 敷 地 面 積
(3) 建 築 面 積
4,334.58 ㎡
A工区
589.53 ㎡
(自転車置場及びゴミ置場の 38.00 ㎡含まない。)
B工区
531.32 ㎡
(自転車置場及びゴミ置場の 38.00 ㎡含まない。)
合
計
1,120.85 ㎡
(自転車置場及びゴミ置場の 76.00 ㎡含まない。)
- 1 -
(4) 延 床 面 積
A工区
1,496.75 ㎡
(自転車置場及びゴミ置場の 38.00 ㎡含まない。)
B工区
1,368,60 ㎡
(自転車置場及びゴミ置場の 38.00 ㎡含まない。)
合
計
2,865.35 ㎡
(自転車置場及びゴミ置場の 76.00 ㎡含まない。)
(5) 構 造 ・ 規 模
鉄筋コンクリート造
3階建て
A工区
36戸(2DK・3DK
各18戸)
B工区
36戸(2DK・3DK
各18戸)
合
72戸(2DK・3DK 各36戸)
計
(6) 施 設 概 要
外部仕上:屋根
・・・・
フッ素樹脂塗装鋼板 t=0.4 横葺
外壁
・・・・
コンクリート打放し複層塗材吹付け
居室仕上: 床
・・・・ フローリング張り、タタミt=55
壁
天井
(7)
工事請負業者
・・・・ PBt=12.5
EP
・・・・
EP
PBt= 9.5
簡易型一般競争入札
A工区建築:橋詰組・下平特定建設工事共同企業体
〃
電気:東日本システム建設㈱中信支店
〃
機械:㈱中信水道
B工区建築:松本土建・米窪組特定建設工事共同企業体
(8)
〃
電気:㈱アイネット中南信支店
〃
機械:㈲南信管業
設計業務・施工監理業務受託業者
随意契約
㈱アーキディアック
(9) 事
業
費
設計金額
A工区建
請負金額
落札率
築
276,087,000 円
275,000,000 円
99.6%
〃
電気設備
36,687,000 円
35,700,000 円
97.3%
〃
機械設備
38,902,500 円
38,850,000 円
99.9%
築
235,200,000 円
234,045,000 円
99.6%
〃
電気設備
25,557,000 円
25,200,000 円
98.6%
〃
機械設備
35,742,000 円
35,700,000 円
99.9%
B工区建
(10) 工 事 期 間
平成23年6月22日~平成25年1月25日
(11) 工 事 監 督 員
建設事業部
建築住宅課 技師
- 2 -
喜 多
廉
Ⅰ-3 書類調査における所見
Ⅰ-3-1 設計について
県営住宅の建替え事業として設計され、事業が中断している集合住宅の建設を、
塩尻市が老朽化した市営住宅を建替え、市営の集合住宅として使うことにして事業
を進めている。設計者は、県営住宅としての実施設計を行った業者であるが、塩尻
市が県と契約を結び、集合住宅の建設を引き継ぐことになったので、事業を実施す
る塩尻市と設計及び監理業務を請け負う業者との間で、随意契約を結んだものであ
る。
(1)
当該建物は、壁式RC造の建物である。妻壁は、無窓の大きな壁面であるが、
「クラック防止対策をどのように採っているか」を監督職員に聞くと、「誘発目
地(深さ20mm)を3mごとに設けた」と回答された。集合住宅の妻側の壁は、
乾燥収縮や温度変化による膨張収縮の作用を受けて、クラックが生じやすい。そ
して、クラックが生じてそこから雨水が浸入すると、直ちに雨漏りとなる。また、
漏水が生じた後に対策を取ろうとすると、足場を懸けて調査や修繕工事をするこ
とになり、建設時に対策するよりも多くの費用がかかる。従って、妻壁には、建
設時に徹底したクラック防止対策を施しておかねばならない。誘発目地を設ける
ことは、クラック防止対策の内の一つであるが、205㎜の厚さの壁に深さ20
㎜の目地を設けても、誘発効果は期待できない。壁の厚さと目地の深さの比率と
横筋の配筋量との関係にも、留意しなければならない。
日本建築学会の「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指
針(案)・同解説」に基づく検討を早急に行い、効果的な対策を立案して実施さ
れるよう監督職員にアドバイスした。
(2)
1階のスロープとホールの床は、300角磁器質タイルで仕上げられることに
なっているので、
「滑り抵抗値はどの程度にするのか」を監督職員に聞くと、
「C.
S.R.値を0.4以上にする」と回答された。建築学会では、床が濡れた状態で
人が滑らないように、C.S.R.値を0.4以上にするよう推奨しているので、
適切であると判断した。
(3) 「住戸における地震時の家具の転倒防止対策が採られているか」を監督職員に
聞いたところ、
「本体工事に含む家具は、固定式とした」と回答された。
「居住者
が持ち込む家具の転倒防止対策は、どの様に考えているのか」を更に聞くと、
「居
室に「付け鴨居」を設けているので、そこに転倒防止用の金具等を付けて家具を
固定できるようにしてある」と回答された。図面を見分したところ、説明のとお
り、
「付け鴨居」が要所に付けられるように設計されていた。なお、
「付け鴨居」
は、下地の躯体や間仕切りの軸組に堅固に固定されるそうであり、大変良い設計
がなされている。
Ⅰ-3-2
(1)
見積に関する書類について
数量積算、値入れとも、実施設計受託業者の建築積算資格者である社員によっ
て行われた。作業は、「建築数量積算基準」に準拠して実施した。単価は、県単
価、
「建設物価」等の刊行物及び3社見積りによった。
(2)
3社見積りでの採用単価の決定は、3社の内の最低金額の業者の見積書の単価
- 3 -
に、設計事務所の判断による査定掛率を掛けて算出した。
これについては、塩尻市独自の査定掛率を定めることが望ましい。
(3)
実施設計受託業者がまとめた積算書の内容を、「市の監督職員は、どの様にチ
ェックするのか」を聞いた。監督職員は、「積算書の金額が予定額に納まってい
れば受け取るが、納まっていなければ受け取らない」と回答された。
そのような行為は、公の立場の者が採るべきことではない。技術者として、積
算のプロセスを点検し、誤りが無いならその結果を受け入れ、しかる後に調整す
る方策を考えるべきであろう。
Ⅰ-3-3
(1)
施工管理に関する書類について
実施工程表は、ネットワーク手法で作成されているが、工程管理の要点を示
す「クリティカルパス(一連の工事の経路の中で、その経路に遅れが生じると全
体の工事が遅れることになる経路)」は、表示されていなかった。監督職員は、
それを表示することを求めていないそうであるが、「クリティカルパス」上の工
事が予定どおり進んでいれば、工事に遅れは生じていないことを示している。監
督職員が施工管理をするうえで役立つものであるから、表示するよう求めるべき
であろう。
(2)
施工体系図は作成されており、仮囲いに掲示されている。
(3)
毎週火曜日の午後1時30分から、監督員、監理者、A及びB工区の各元請
業者が参加して、工事打合せ会を行っている。議事録は、各元請業者がまとめて、
翌週の打合せ会で提出している。
Ⅰ-3-4
品質管理に関する書類について
主要部分に関する品質管理の状況を見分した。見分した項目とその結果を、以下
に記載する。
(1)
仮設工事について
・ 「労働安全衛生法第88条第2項に規定されている機械設備の届けは、何を
いつ提出したか」を監督職員に聞くと、「足場に関する届けを、B工区は平成
23年9月5日に、A工区は平成24年1月6日に提出した」と回答された。
両工区とも、足場架設の30日前までに提出することはできていたが、A工
区の階段室Aにおける「高さ3.5mを超える型枠支保工」の届けが、まだ提
出されていなかった。これからでも十分に間に合うので、監督職員は、これを
提出するよう元請業者に指導をしていただきたい。
(2)
土工事について
ア
「掘削した残土は、適切に再利用されているか」を監督職員に聞いた。「A
工区の橋詰組は、自社の敷地内に保管し、B工区の松本土建は、下請会社の土
地を借りて保管している」と回答された。
イ
埋め戻しは、現地発生土を一部残してあり、それを使って埋め戻す計画とな
っている。A工区の施工計画書を見分したところ、「30cm 巻き出して、転圧
をする」と記述されていた。適切な計画である。
(3)
地業工事について
- 4 -
ア
地業工事は、「プレボーリング根固め工法」の一種で、ジャパンパイルが開
発した「BASIC工法」が採用されていた。
イ
杭の施工誤差は、A工区では、水平方向の許容誤差100㎜を超えた杭は1
ヵ所で、134㎜であった。構造設計者の指示で、基礎の大きさを大きくして
対応した。垂直方向の誤差は、+18から-50㎜の範囲であり、特別な補強
は必要なかった。B工区では、水平方向の誤差が100㎜を超えた杭は無かっ
た。垂直方向の誤差は+12から-140㎜の範囲であり、特別な補強は必要
なかった。測定結果一覧表を見分し、監督職員の説明を受けた結果、杭工事は
問題なく施工されたと判断した。
ウ
(4)
監督職員から「砂利地業には、再生砕石を使用している」との説明を受けた。
鉄筋工事について
ア
最近、たびたび、配筋のミスが報道されることがあるので、
「当該工事では、
どのような検査方法を採っているのか」を監督職員に聞いた。「元請業者が検
査をして、その報告書を監理者に提出し、その結果を踏まえながら、監理者が
検査をして確認している」と回答された。また、監督職員は、「時間がとれる
ときには、監理者とともに検査に当たっている」とのことである。適切な検査
方法が採られている。
イ 「工事に使っている鉄筋の材質に問題ないか、どのような確認をしているか」
を監督職員に聞いた。「A工区の元請業者は、現場に入ってきた鉄筋のロール
マークをチェックしている。また、B工区の元請業者は、鉄筋加工会社に鉄筋
が搬入されたら、加工場に行って検査をしている」と回答された。監督職員及
び監理者は、両工区での自主検査に任せておかず、統一した検査方法を指示す
るべきであろう。すなわち、鉄筋メーカーから鉄筋加工場に搬入された段階で、
元請業者に検査をさせて、その結果を報告させて確認しておくべきであろう。
(5)
コンクリート工事について
ア 「生コンプラントは、どの様な所か」を監督職員に聞いた。A工区は松本太
平洋生コン㈱を、B工区は第一生コンクリート㈱を、それぞれ1社ずつ採用し
ていた。どちらのプラントも、JISマーク表示認証工場で、かつ、品質管理
監査適合工場であり、品質の優れた生コン工場が選定されていた。
イ
使われている骨材は、両社とも梓川水系の砂・砂利であり、アルカリシリカ
反応性は、問題のないA判定の骨材であった。
ウ
コンクリートの単位水量は、175kg/㎥であり、大変性能の良いコンクリ
ートである。
エ
コンクリートの強度確認のための供試体の養生は、一般的に現場水中養生し
ているが、当該工事では「現場封緘養生」をしている。養生中の最高最低温度
は、計測していた。
オ 「型枠取り外し後のコンクリートの状態の検査は、誰がしているか」を監督
職員に聞いたところ、「工事施工者による」と回答された。RC造の躯体の性
能は、配筋の良し悪しやコンクリート打設の良し悪しで決まるものである。型
枠取り外し後の検査は、少なくとも、必ず監理者に実施させ、監督職員にその
結果を報告させて確認すべきである。国内の各所で、改修工事の際に昔施工さ
- 5 -
れた躯体を見分すると、型枠取り外し後の検査が全くなされなかったらしく、
ジャンカやコールドジョイント、充填不良個所が全く修復されずに放置されて
いて、構造上の弱点になっていることが大変多い。いくら良い調合のコンクリ
ートを使わせても、きちんと適切に充填され、締め固められていなければ何の
価値もないことに、監督職員は思いを致すべきであろう。
(6)
鉄骨工事について
ア
鉄骨工場は、Mグレードの資格を持つ松田鐵工㈱であり、特記仕様書の規定
を満足していた。
イ
「高力ボルトの現場内での管理はどうするか」を監督職員に聞いたところ、
「工事施工者による」と回答された。「監督職員としての監理方針や理念は無
いのか」と残念に思い、かつ強い不信感を抱いた。高力ボルトは湿気がつくと、
本来の性能を発揮できないので、湿気を帯びないように適切な倉庫等に保管す
べきである。監督職員として、監理者及び元請業者を適切に指導していただき
たい。
(7)
防水工事について
ア
当該工事では、「ステンレスシーム溶接工法」が採用されることになってい
る。
「屋根の防水層の水張り試験は、どの様に行うのか」を監督職員に聞いた。
回答は、「計画中」とのことで、具体的な方法についての説明がなされなかっ
た。
イ
厚さ0.4mm のステンレスシートの防水層の入り隅での納まり、ルーフドレ
ーンとの納まり、笠木との納まりなど、金属シートであるための難しさがある
と思われる。しっかり検討して、将来に禍根を残さないように施工していただ
きたい。
ウ
エレベーターシャフトの屋根は、小さな屋根であるが、四方をパラペットで
囲われていて、ルーフドレーンが1個付く。将来、ルーフドレーンに枯葉やゴ
ミが詰まり、そこに苔や草が生えると、排水能力が低下し、豪雨に見舞われる
とプール状態になって溢れるおそれがある。オーバーフロー管を設けておくべ
きであろう。
(8)
屋根及び樋工事について
・ 当該建物の屋根は、耐候性の高い長尺金属板葺きで計画されている。落雪防
止金物は、取り付けることになっている。耐風強度の検討を行って、施工に反
映しておいていただきたい。また、竪樋については、凍結防止対策が採られて
いないようであるが、この地域にあっては、対策の必要があるのではないかと
感じた。
(9)
建具工事について
ア 「窓ガラスからの熱の出入りの抑制対策が採られているか」を監督職員に聞
いた。屋外に面するサッシに、断熱サッシの採用はされていなかったが、ペア
ガラスが採用されていた。省エネ効果が期待できる仕様となっている。
イ
「外部建具の防犯対策」を監督職員に聞いたところ、「建具鍵による」と回
答された。図面特記仕様書には、ピッキング対策等について特に記述されてい
ないが、管理人を置いて管理する等の対策を採っていないので、せめて鍵など
- 6 -
で、入居者の安全をしっかり確保していただきたい。
(10) 塗装工事について
・
「工事中の塗料置き場を、どこにするか」を監督職員に聞いた。「水性塗料
であっても、塗料にはシックハウス症候群をひき起こすVOCが含まれている
ので、工事中の建物の中に塗料置場を設けない方が良い」と指導したところ、
A・B工区とも、仮設コンテナに鍵をかけて保管するとのことであった。
(11) 電気工事について
・
「照明器具の交換が困難な箇所が無いか」を監督職員に聞いた。「階段室の
器具は、壁付きで計画しており、特に交換が難しい所は無い」と回答された。
(12)
給排水衛生工事について
・ 「満水試験、圧力試験及び気密試験は、実施されているか」を監督職員に聞
いた。「現在、工事が試験を行う段階に達していないので実施していないが、
出来る段階になったら行う」と回答された。必ず実施していただきたい。
Ⅰ-4 現場施工状況調査における所見
Ⅰ-4-1 現場施工状況について
現場施工状況については、監督職員、監理者及び監理技術者から説明を受けなが
ら検査を行った。両工区とも基礎の躯体が完了し、埋め戻しが始まっていた。B工
区では、配管ピットの耐圧版のコンクリートが打設され、鏝均しと加熱養生が始め
られていた。
(1)
工事施工状況について
ア
仮囲は、H3mの塗装鋼板で、見栄え良く取り付けられていた。単管パイプ
の下地も控えをとり、防風対策がなされていた。仮門は高さ約4mのシートゲ
ートで、しっかりしていた。
イ
現場内は、埋め戻し中であるため、やむを得ないことであるが、歩き難かっ
た。
ウ
A工区は、ほぼ埋め戻しが完了しており、1階床下の断熱層・防湿層の工事
が進められていた。小型の転圧機械を使って締め固めが行われていた。
エ
B工区は、調査当日から埋め戻しが始められたように見受けられた。書類調
査において、埋め戻し方法を聞いたとき、「30cm ずつ埋め戻して、十分に転
圧をすることにしている」と回答されたが、梁底の型枠材は残ったまま、型枠
の残材も片付けられていない状態で、大型の掘削機械で、構内から運んできた
掘削残土をどんどんと入れていた。30cm ずつなどではなく、一挙に1m程も
土が入れられていた。また、廃棄されたコンクリートと思われるコンクリート
塊が入ったままであった。無論、転圧等はどこもされていなかった。管理状態
は、最悪であったので、監督職員は、埋め戻した土を一旦撤去させ、初めから
計画どおりの手順で埋め戻しをさせるべきである。
オ
A工区のコンクリートの状態を見分した。埋め戻しが進んでいたこともあり、
特にこれという欠陥は見られなかった。
カ
B工区のコンクリートの状態を見分した。ジャンカが何箇所かあったが、コ
- 7 -
ールドジョイントは見られなかった。ジャンカは、一旦豆板状の個所をハツリ
取り、補修用モルタルで補修してから埋め戻しにかかるようにしていただきた
い。隠蔽部分として、現状、処理中及び処理後の写真を撮影させて、確認して
おく必要がある。
キ
仮囲に各種の掲示がなされていたので、確認した。
A工区
建築
電気
B工区
機械
建築
建 築 確 認 済 み
凡
機械
○
建 設 業 許 可 証
○
○
○
○
○
○
労 災 保 険 成 立 票
○
○
○
○
○
○
建 退 協 加 入 表 示
○
未
未
○
未
未
施
図
○
未
未
○
中に掲示
中に掲示
鉄骨製作工場名表示
未
-
-
未
-
-
下請業者建設業許可証
○
未
未
○
未
未
例
工
○
体
系
:
適切に掲示されている。
未
:
掲示されていない。
-
:
該当せず。
中に掲示 :
(2)
電気
仮囲(正規な場所)に掲示されていない。
労働安全管理その他について
ア
労働基準監督署に提出された足場計画を見分した。A工区の計画の提出は、
平成24年1月6日付けであり、架設予定の31日前で、安全衛生法の規定す
る期限ギリギリであった。昇降階段は、南北の桁行き面に1ヵ所ずつ、妻面に
1ヵ所の計3ヵ所に取り付ける計画となっていた。また、階段は、足場の作業
床が狭くならないように、足場の外に設けるとのことであった。
イ
B工区の足場計画は、平成23年9月5日に提出されていた。昇降階段は、
南北の桁行き面に2ヵ所ずつ、妻面に1ヵ所の計5ヵ所に取り付ける計画とな
っていた。長さが40mを超えるので、桁行き面に昇降階段を2ヵ所設けるの
は、適切であると思われる。
ウ
A工区は、平成23年9月1日に死亡災害を1件起こしたが、その後は、災
害を起していない。安全施工サイクルの表示を設けている。また、危険予知活
動をしていて、活動表を作業員詰所内に掲示していた。玉掛け用台付ワイワー
の当月の点検色は、黄色であった。作業主任者の表示は、見られなかった。
エ
B工区は、着工以来労働災害を起していない。安全施工サイクルの表示は、
見える場所には設けられていなかった。危険予知活動を実施していて、活動表
を安全掲示板に掲示していた。玉掛け用台付ワイワーの当月の点検色は、白色
であった。作業主任者を選任してあり、掲示板に表示されていた。
オ
地中梁には、壁筋等の差筋がされている。A工区の差筋は、先端を180度
曲げしてあるので、その上に人が倒れ込んでも刺さることはないであろう。
- 8 -
カ
B工区の差筋は、先端が曲げられていない真っ直ぐな鉄筋であった。しかも、
埋め戻し中であるため、養生用キャップが付けられていないので、人が倒れ込
むと突き刺さるであろう。直ちに差筋にキャップをかけるか、先端に横筋や桟
木を結わえつけて、人に刺さらないように措置するべきである。
Ⅰ-5
まとめ
書類調査の効率を高めるために、監査委員事務局を経由して、監督職員に事前に質
問を送った。しかし、その回答は、大部分が粗雑で、逃げの姿勢に満ち満ちており、
かつ見当はずれで、あまり役に立たなかった。
工事技術調査に協力する姿勢の欠如だけでなく、建築技術者としての知識も欠如し
ていると感じることが多々あった。
監督職員は、技術専門職員として採用され、塩尻市から「監督職員」に任命されて
いる責任ある立場の職員である。国土交通大臣官房官庁営繕部監修の「建築工事監理
指針」等をしっかり勉強して、基礎的知識を養い、もっと監理の要点をしっかり勉強
すべきであろう。
以上
- 9 -
Ⅱ-1 楢川保育園建設工事(建築主体工事)
Ⅱ-1-1 工事内容説明者
建築主体工事技術調査に際しては、次の者から説明を受けた。
こども教育部
教育総務課
〃
〃
教育施設係
〃
〃
教育施設係
㈱エイ・デザイン
課長
古 畑
耕 司
係長
青 柳
和 明
技師
中 田 健太郎
建築担当
西 村
文 彦
㈱真陽建設
現場代理人
信 太
直 樹
〃
監理技術者
中 島
良 益
Ⅱ-1-2
工事概要
(1) 工 事 場 所
塩尻市大字木曽平沢 1490 番地
(2) 敷 地 面 積
4,537.18 ㎡
(3) 建 築 面 積
616.78 ㎡
(4) 延 床 面 積
499.38 ㎡
(5) 構 造 ・ 規 模
木造平家建て
(6) 施 設 概 要
外部仕上:屋根
・・・・
カラーガルバリウム鋼板t=0.4 横葺
外壁
・・・・
合板+モルタル下地、アクリル系壁装材吹付け
居室仕上: 床
(7)
・・・・ 桧フローリング張り
壁
・・・・
PBt= 12.5
天井
・・・・
PBt= 化粧PB吸音板 t= 9.5
工事請負業者
無機質壁紙貼り
7社による一般競争入札、第1回目で落札
真陽・川上特定建設工事共同企業体
(8)
設計業務・施工監理業務受託業者
7社による指名競争入札
㈱エイ・デザイン
(9) 事
業
費
設計金額
172,035,000 円(消費税を含む。)
請負金額
170,719,500 円(消費税を含む。)
99.2 %(対設計金額)
落 札 率
(10) 工 事 期 間
平成23年6月22日~平成24年3月16日
(11) 工 事 監 督 員
こども教育部 教育総務課
教育施設係
係長
青 柳
和 明
Ⅱ-1-3 書類調査における所見
Ⅱ-1-3-1 設計について
(1)
当該工事に先だって、教育委員会の関係者、保育園長、保育士、調理士、
栄養士等が参加する「建設研究委員会」を組織して、7回にわたって検討会
議を開催して意見をまとめたとのことである。保育の現況を、第一線で日々
感じ取っている関係者が、保育に欠ける子供達をどのように守っていくかが
- 10 -
話し合われたことであろう。当該建物の建設のためだけでなく、これからの
塩尻市の保育のあり方についての貴重な意見も出されたものと思われる。少
子化傾向を止める重要な方策の一つである保育所の整備や制度のあり方に役
立つ、立派な業績となるであろう。
(2)
扉のガラスへ子供が衝突して、怪我をしたり、死亡する事故が、過去にお
いて全国各地で発生している。
「当該施設では、どのように計画しているのか」を監督職員に聞いた。
「出
来るだけ大型のガラスを使用しないために、子供たちが出入りする扉に中桟
をつけてある。また、ガラスは、強化ガラスとし、割れた場合にも怪我をし
にくいように配慮した」と回答された。再度、
「子供達が、ぶつかる前に気付
く対策(例えば、シート類で模様を貼る、一種のアイ・ストップを貼り付け
るなど)は取れないか」と聞くと、
「子供達が出入りする南面の掃き出し面に
は、網戸の傷みを防止するためにアルミ製格子をはめるので、それがアイ・
ストップになる」と監督職員に説明された。しかし、人々は、格子のないガ
ラスだけの所から外を見ているのであって、格子の存在は、衝突防止に役立
たないであろう。監督職員は、この問題に関して、保育士の皆さんとよく話
し合い、対応していただきたい。
(3)
「ポーチ、玄関の床タイル及び厨房床の長尺シートの滑り抵抗値はいくら
で設計してあるか」を監督職員に聞いた。「ポーチ、玄関の床タイルは、C.
S.R.値0.37以上のものを、また、厨房床の長尺シートは、C.S.R.値
0.55以上のものを使用した」と回答された。床タイルのC.S.R.値は、
もう少し大きいものの方が安全であろう。監督職員には、今後、建築学会の
推奨値について、調べておくようにお薦めした。
(4)
過去に、全国の保育園で発生した事故として、押し入れや本棚の中に、か
くれんぼう等で入り込んだ子供が、熱中症にかかって亡くなった事例が、何
件か報告されている。そこで、
「当該保育園内の物入れに、子供達が入ること
ができないように措置されているか」を監督職員に聞いた。
「子供の手が届か
ない高さで施錠することで、管理するよう設計している」と回答された。大
人達が忘れずに施錠することで、有効になる対策ではあるが、狙いどおりに
機能させるには、大人達の施錠ミス(失念)を防止するための、更なる工夫
が必要であると思われる。
Ⅱ-1-3-2
(1)
積算について
積算の作業は、数量の算出、値入れとも、業務委託した設計事務所によっ
て行われている。
「出来上がった積算書の内容の照査を、誰がどのように行っ
たか」を監督職員に聞いた。
「設計事務所の照査後、市担当者が照査した。照
査に関する規定は無い」と回答された。そこで、今回、市担当者が行った照
査の方法について再質問をした。
「従来からの保育園の積算資料が保管されて
いるので、それと比較検討した」と回答された。
(2)
それらの積算資料は、統計的には処理していないとのことであるが、構造
体や主要仕上げ材の延床面積当たりの数量やコストを、統計的に整理してお
- 11 -
けば、短時間で積算書の概略のチェックが出来るものと考えられる。委託先
から提出された積算書の内容を、短期間で、根本的にチェックすることはほ
とんど不可能であると思われるので、統計処理したデータで点検することに
したらいかがであろうか。なお、統計データは、いろいろな機関から公表さ
れているので、それらも大いに参考にすることができるであろう。是非、検
討していただきたい。
Ⅱ-1-3-3
(1)
施工監理・監督について
工程表は、バーチャートで作成されており、作図・製作工程は、工事費目
ごとに記載されていた。工事の進捗との関係が良く分かる利点はあるが、監
理する立場からは、工事の流れを示す部分と作図工程とは、分離して記載す
るべきであろう。
(2)
工事記録写真を見分した。白板の説明は適切で、見やすく写真に写し込ま
れており、適切に整理されていた。
(3) 「建設廃棄物の収集運搬・中間処理・最終処分の契約が適切であることを、
確認したか」を監督職員に聞いた。
「元請業者の産業廃棄物処分計画によって
確認している」との回答であり、その内容は適切であった。
(4)
当該工事では、ほとんどの主要な工事において、
「一級技能士」を配属する
よう特記仕様書に規定している。監督職員に、
「本人確認をどの様に行ってい
るのか」を質問した。
「当現場では、新規入場時に本人確認がなされ、かつ、
一級技能士の資格証(顔写真付き)を本人に持ってもらいながら撮影した写
真があるので、監督職員は、それと照合して確認している」と回答され、的
確に確認されていると判断した。
Ⅱ-1-3-4
(1)
品質管理について
地業工事について
・
当該工事は、直接基礎である。地質調査の結果をみると、あまり締まっ
ていない「シルト又は砂混じり礫層」と見受けられるので、
「支持地盤の地
耐力は、どの様に確認したか」を監督職員に聞いた。監督職員の説明によ
ると、
「当該土地は、昔は河川敷であり、根切りして監理者と監理技術者と
で確認したところ、地質柱状図の結果と違わないので、支持地盤として問
題ないと判断した」とのことであった。
(2)
鉄筋工事について
ア
「配筋ミス防止のために、どのような対策を採ったか」を監督職員に聞
いた。
「元請業者は、自社の一級建築士資格を持つ検査員によって自主検査
を行い、検査記録を作成した。その後、監理者が配筋検査を実施した」と
回答された。配筋検査は、適切に行われていた。
イ
圧接部の検査は、超音波探傷試験を採用してあった。工事記録写真を見
分したところ、圧接作業員及び超音波探傷試験員とも、資格証を持った写
真が撮られていた。また、監理者が、圧接部の形状の検査及び超音波探傷
試験に立ち会って行ったことを、工事記録写真で確認した。報告書を見分
- 12 -
したところ、全て合格していた。検査は、適切に実施されていた。
(3)
コンクリート工事について
ア
生コンプラントは、昭和産業㈱木曽生コンプラントを採用していた。同
プラントは、JIS規格工場で、かつ、品質管理監査適合工場でもあり、
品質の良いプラントが採用されていた。
イ
骨材の産地及び品質について、監督職員に聞いた。細骨材は、木曽大桑
村川砂と木曽日義川砂であり、粗骨材は、木曽日義川砂利であった。塩化
物含有量試験には合格していたが、アルカリ骨材反応試験の結果は、B判
定(無害でない)であった。そこで、コンクリートの調合計画において、
コンクリート中のアルカリ総量の計算が行われており、JISで認められ
る3.0kg/㎥以下であることが証明され、使用されていた。手続き上に問
題はなかった。
ウ
コンクリートの単位水量は、179kg/㎥であり、特記仕様書に適合して
いた。
(4)
木質工事について
ア
特記仕様書において、当該工事で用いる木材は、
「県産材」であることと
されている。監督職員に、木材の産地が証明されている書類の提示を求め
たところ、信州木材認証製品センター発行の「信州木材認証製品出荷証明
書」が示された。使用されている木材は、確かに長野県産であった。
イ
木材の製材前の受入検査及び製材後の製品検査は、信州木材製品認証工
場である齋藤木材工業㈱において、監理者と現場代理人とで行ってあった。
検査の結果は、
「製品検査報告書」としてまとめられていた。受入検査、製
品検査とも、適切に行われており、当該工事に使われた木材は、特記仕様
書のとおりであると判断した。
ウ
当該建物の耐震性能は、壁や床における釘の打ち方や、柱の脚部及び柱
頭に用いられる金物類の適切な配置と使われ方で、大きく左右される。そ
こで、「壁や床の釘の止め方とその確認方法」を監督職員に聞いた。釘の
打ち方は、
「手打ち」ではなく、「機械打ち」であった。工事記録写真を見
分したところ、釘は、適切に割りつけされた個所に、打込み過ぎず、適切
な高さで止められていた。また、釘の種類は色で識別でき、長さは釘頭に
表記されていて、確実に適切な釘が使われたか否かが分かるようになって
いた。適切な釘が、適正な圧力で打たれていた。
エ
アンカーボルトの使い方は、監督職員と監理者が立ち会い検査をしたとの
ことで、工事記録写真を見分し、確認した。建て方時の立ち会い検査は、監
理者が行ってあり、建て方後の検査は、監督職員と監理者が行ってあった。
また、それぞれの自主検査の記録が提出されていて、監督職員は、それを確
認していた。
オ
以上の結果から、当該工事における木質工事は、適切に行われたものと判
断した。
(5)
ア
屋根及びとい工事について
軒樋、竪樋ともに、耐久性のあるアルミ製品が採用されている。「掴み金
- 13 -
物等の附属金物の材質は、適切であるか」を監督職員に聞いた。「軒樋の支
持金物は、アルミ製のものを、竪樋の支持金物は、ステンレス製のものを使
用している」と回答され、附属金物の耐久性は、本体と同程度のものであり、
適切であると判断した。
イ 「軒樋及び竪樋の冬季の凍結防止対策を採るか」を監督職員に聞いた。
「北
面の軒樋の落し口附近及び竪樋にはヒーターを設置し、南面にはコンセント
を設置してある」と回答され、適切な凍結防止対策が採られていることが分
かった。
ウ
テラスの屋根は、酸化チタン光触媒コーティングされた膜構造である。膜
の素材は、ガラス繊維にポリ塩化ビニールを被覆したもので、透光性能が高
く、汚れが付きにくいものであった。積雪の多い地域であるので、
「落雪で破
損しないか」を監督職員に聞いた。
「一般屋根と同様に、積雪78cm として
設計してある。本体屋根には、雪止アングルを設けて落雪防止をしてあり、
更に本体屋根との落差も少なくしてあるので、落雪等による破損は生じない
と判断している」と回答された。
エ
(6)
屋根工事は、適切な設計がなされていると判断した。
塗装工事について
・
塗料には、シックハウス症候群をひき起こすおそれのあるトルエン、キシ
レン等の揮発性有機化合物が含まれているので、その保管には注意が必要で
ある。そこで、
「工事中、塗料置場をどこに設けているか」を監督職員に聞い
た。
「未開封で湿気等の影響を受けない材料(缶入)は、現場事務所隣のスト
ックヤードに置いた。また、溶剤系、湿気の影響を受ける塗料は、施錠ので
きる仮設建物内に保管した」と回答され、工事中の建物内には、揮発性有機
化合物を発散する塗料を置いていなかったことが分かった。適切な管理がな
されていた。
(7)
・
その他
一般的に、針葉樹の木材には「トゲ」が生じることがある。当該建物にお
いては、針葉樹が多用されているので、「室内の腰の桧羽目板や木製巾木に、
「トゲ」が生じないようにどのような対策を採っているか」を監督職員に聞
いた。
「毛羽立ち、トゲの防止として、腰見切りや出隅見切り等にはR10の
面取り、その他の木材部には糸面を施し、かつ、木材保護塗料を塗布した」
と回答された。適切な措置が取られていると判断した。
- 14 -
Ⅱ-1-4
現場調査における所見
当該施設は、現場調査の前日の1月16日から供用開始されており、保育士、保
育園児とも、大喜びで生活している中で現場調査を行った。
(1)
アルミドア及びアルミサッ
シュの直角部分に、尖っている
箇所があった。ヤスリ掛け、あ
るいは叩き潰す等をして、園児
が触っても、怪我をしないため
の処理をしておくようアドバ
イスした。
(写真中の○印の部分)
(2)
テラス側の掃き出し窓には、アイ・ストップとなる表示がなかった。園児がガ
ラス面に激突することが無いかを保育士にも聞いて、必要であるならば、早急に
対策を講じていただきたい。
(3)
送迎用の駐車場は、園庭の南側にあり、園児の入退出は、テラス側から行うと
のことである。雨などで園庭がぬかるむことは無いのであろうか。何らかの対策
を講じる必要があると思われる。
(4)
室内の物入れや職員便所の入口などには、園児たちの手の届かない位置にサム
ターン取手等が付けられており、一応、園児の安全向上に役立つ仕掛けは付けら
れていた。ただし、これが有効に機能するには、保育士、父兄、大人達がしっか
りルールを守らなければならないことを、監督職員は、関係者に引継いでいただ
きたい。
(5)
産業廃棄物の分別用コンテナは、現場内に2個設置されていた。
(6)
第三者が見ることができるように、仮囲等に掲示するよう建設業法で定められ
ている掲示物を見分した。建築基準法による確認済み票、元請業者の建設業許可
証、労災保険成立票、建退協加入表示、施工体系図、下請工事業者の建設業許可
証は掲示されていたが、鉄骨工場名表示は、掲示されていなかった。
(7)
建物の出来栄えは良く、保育士、園児ともに大変喜んでいた。引き続き既存建
物の解体、駐車場を始めとする外構工事が続けて行われる。監督職員及び監理者
は、園児達にとって、この場所が生活の場であることを忘れずに、安全対策はも
とより、騒音、振動、塵挨等の発生防止に努めるよう元請業者をしっかり指導し
ていただきたい。
以上
- 15 -
Ⅱ-2 楢川保育園建設工事(電気設備工事)
Ⅱ-2-1 工事内容説明者
電気設備工事技術調査に際しては、次の者から説明を受けた。
こども教育部
教育総務課
〃
〃
教育施設係
〃
〃
教育施設係
㈱エイ・デザイン
㈲鈴木興電
Ⅱ-2-2
課長
古 畑
耕 司
係長
青 柳
和 明
技師
中 田 健太郎
建築担当
西 村
現場代理人兼主任技術者
文 彦
奥 田 利 文
工事概要
(1) 工 事 場 所
塩尻市大字木曽平沢 1490 番地
(2) 敷 地 面 積
4,537.18 ㎡
(3) 建 築 面 積
616.78 ㎡
(4) 延 床 面 積
499.38 ㎡
(5) 構 造 ・ 規 模
木造平家建て
(6) 工 事 概 要
電灯コンセント設備工事
テレビ共聴設備工事
非常用照明設備工事
トイレ呼出設備工事
幹線動力設備工事
自動火災報知設備工事
電話設備工事
防犯設備工事
電話交換機設備工事
光ケーブル敷設工事
拡声放送設備工事
蓄熱式床暖房設備工事
インターホン設備工事
(7)
工事請負業者
6社による簡易型競争入札、第1回目で落札
㈲鈴木興電
(8)
設計業務・施工監理業務受託業者
7社による指名競争入札
㈱エイ・デザイン
(9) 事
業
費
設計金額
25,095,000 円(消費税を含む。)
請負金額
24,675,000 円(消費税を含む。)
98.3 %(対設計金額)
落 札 率
(10) 工 事 期 間
平成23年6月23日~平成24年3月16日
(11) 工 事 監 督 員
こども教育部 教育総務課
教育施設係
Ⅱ-2-3
係長
青 柳
和 明
書類調査における所見
照度検査記録を見分した。全館、適切な性能が得られていた。
「照明器具の球替えが、困難な所はないか」と監督職員に聞いた。
「遊戯室の天
井の高さは4.55mあり、脚立を使っても交換が難しいので、専用の器具を使う
- 16 -
ことで、床に立って球替え出来るようにした」と回答された。
ケ-ブルの貫通部の防火処理は、熱膨張材を利用する「プチクロ(㈱古河マテリ
アル社製)」で処理されていた。薄い壁でも防火処理できる材料で、国土交通大臣
認定(1時間耐火)も取っていた。
Ⅱ-2-3
現地調査について
建築と同様に、出来栄えについては特に問題は無かった。遊戯室では、天井付け
の電球を交換する器具の操作と実用性を見分した。
(遊戯室天井の状況)
以上
- 17 -
Ⅱ-3 楢川保育園建設工事(機械設備工事)
Ⅱ-3-1 工事内容説明者
機械設備工事技術調査に際しては、次の者から説明を受けた。
こども教育部
教育総務課
〃
〃
教育施設係
〃
〃
教育施設係
㈱エイ・デザイン
㈲塩尻水建
Ⅱ-3-2
課長
古 畑
耕 司
係長
青 柳
和 明
技師
中 田 健太郎
建築担当
西 村
現場代理人兼主任技術者
文 彦
百 瀬 正 幸
工事概要
(1) 工 事 場 所
塩尻市大字木曽平沢 1490 番地
(2) 敷 地 面 積
4,537.18 ㎡
(3) 建 築 面 積
616.78 ㎡
(4) 延 床 面 積
499.38 ㎡
(5) 構 造 ・ 規 模
木造平家建て
(6) 施 設 概 要
冷暖房設備
排水設備
暖房設備
給湯設備
換気設備
消火設備
衛生器具設備
ガス設備
給水設備
(7)
工事請負業者
10社による簡易型競争入札、第1回目で落札
㈲塩尻水建
(8)
設計業務・施工監理業務受託業者
7社による指名競争入札
㈱エイ・デザイン
(9) 事
業
費
設計金額
26,145,000 円(消費税を含む。)
請負金額
26,029,500 円(消費税を含む。)
99.6 %(対設計金額)
落 札 率
(10) 工 事 期 間
平成23年6月23日~平成24年3月16日
(11) 工 事 監 督 員
こども教育部 教育総務課
教育施設係
係長
青 柳
和 明
Ⅱ-3-3 書類調査における所見
(1)
天井付けの器具の耐震性の確保について、監督職員に聞いた。
「天井付け扇風
機等の機具は、建築工事で組んだ天井下地には取り付けず、全て、構造部材に
直接取り付けた」と回答された。適切な措置である。
(2)
省エネ対策について、監督職員に聞いた。
「寒冷地であり、水道管が凍結する
- 18 -
ので、その対策として不凍栓を操作して水抜きをする必要がある。既存施設で
は屋外に出て操作するようになっていたが、保育士からの要望もあって、この
施設では室内で操作できるようにした。これにより、凍結ヒーターを減らすこ
とができた。エアコンは、インバーター仕様にしてある。また、便器は、節水
タイプを採用した」と回答された。
(3)
配管の満水検査、圧力試験及び気密試験の実施状況を、検査記録と工事記録
写真で見分した。全て適切に実施されていた。
Ⅱ-3-4
現場調査における所見
自然のエネルギーを積極的に利用する仕掛けを設けており、太陽熱を暖房に利用
する「OMソーラー」は、早速快適な室内環境を作り出していて、園児達は喜んで
いた。夏は、夜間の放射冷却を使って室内の空調に使うとのことで、その効果が楽
しみである。
以上
Ⅱ-4
まとめ
建設研究委員会において関係者が意見を出し合った成果が、設計内容に適切に織り
込まれていたように思われる。
OMソーラーシステムの夏場での効果を確かめて、よい成果が出せたならば、今後
の省エネ対策として、他の施設でも大いに役立つものと思われる。
工事技術調査に先だって、監督職員に質問書を送り、回答を受けたが、
「市営渋沢
団地建替事業」の回答と同様に、あまり役に立たなかった。読む人が理解できるよう、
5W1Hを踏まえた適切な文書を、真剣に作成していただきたい。
以上
- 19 -