HIV 感染者の 社会福祉施設サービス利用に関する調査

HIV 感染者の
社会福祉施設サービス利用に関する調査
結果概要版
桃山学院大学社会学部社会福祉学科
小西加保留
(平成 15 年度文部科学研究費補助事業萌芽研究)
目次
目的
p.1
方法
調査対象と回収率
調査方法
調査期間
調査項目
p.1
調査結果
Ⅰ. 施設属性
Ⅱ. 個人属性
Ⅲ. 施設環境−医療体制と感染症関連−
Ⅳ. 全体の傾向
Ⅴ. HIV 感染者の受け入れに影響を与える要因
p.3
考察
p.9
資料
p.11
本冊子作成につきましては、千葉県派遣カウンセラー 石川雅子氏に多大なご協力をいただきました。
本調査は、平成 14 年度厚生科学研究費エイズ対策事業「HIV 感染症の医療体制に関する研究」分担研
究「HIV 感染者の社会福祉施設利用に関する研究」(協力者:石川雅子、加藤高志)に基づいて、平成
15 年度文部科学研究費補助事業萌芽研究として、実施したものです。
調査に当たって、ご回答いただいた方々と共に、様々にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上
げます。
目的:
この調査は、HIV 感染者が社会福祉施設のサービスを利用しようとする時、またサービス利用中に感染の可
能性が考えられる場合に、サービス提供者側が抱える不安や課題を抽出することにより、感染者にとって円
滑な施設サービス利用に影響を与えるような要因を明らかにすることを目的としました。またどのような要
因が、サービス提供や受け入れ意向に影響を及ぼしているかを分析することにより、サービス提供者にとっ
ても、今後どのような対応や対策が必要とされているかを知ることを目的としました。
方法:
調査対象と回収率:
〔平成 11 年度厚生省情報統計部「社会福祉施設等名簿」による各施設全数〕
重度身体障害者更生援護護施設
身体障害者療護施設
知的障害者更生施設
児童養護施設
精神障害者生活訓練施設
計
施設数(回収数/配布数) 調査票数(回収数/配布数)
31 / 73
(42.47%)
89 / 219
(40.64%)
170 / 341
(49.86%)
486 /1032
(47.51%)
555 /1231
(45.09%) 1574 /3693
(42.62%)
170 / 552
(30.80%)
481 /1656
(29.05%)
73 / 180
(40.56%)
213 / 540
(39.44%)
999 /2377
(42.03%) 284 3/ 7131 (39.87%)
(*なお調査票は施設長、生活相談・支援員、その他の各 3 名の方にお送りしました。
)
調査方法: 質問紙を用いた郵送法
調査期間:2003 年 10 月∼11 月
調査項目:
① 基本属性(施設種別、地域、設置主体、利用者規模、創設以来年数、職種、性別、経験年数、教育背景)
② 環境要因(医療体制、診断書提出関連事項、サービス利用決定者、マニュアル、研修実施状況、
研修経験、ワクチン接種、損害保険加入状況、賠償経験、感染者の受け入れ状況等)
③ HIV 感染者の受け入れに関係すると思われる 83 項目
④ 受け入れ意向に関わる2つの項目(従属変数)
質問No.80「利用者にHIV感染の事実があったとしても受け入れを前提として努力したい」
質問No.81「HIV感染者のサービス利用はできれば受け入れたくない。
(なお以下の結果において、各施設名は下記のように表記します。身体障害者施設については、法律改正により、2003 年より、肢
体障害者施設となりましたが、本調査では 1998 年度の施設一覧を使用したため、旧分類のままで調査を実施しました。したがって
結果・分析においてもそのままの表記を使用しています。
)
1.重度身体障害者更生援護護施設 = 身体更生 2.身体障害者療護施設 = 身体療護 3.知的障害者更生施設 = 知的更生
4.児童養護施設 = 児童養護
5.精神障害者生活訓練施設 = 精神
1
調査結果:
Ⅰ.施設属性
① 施設種別
73 31
7% 3%
170
17%
170
17%
身体更生
身体療護
知的更生
児童養護
精神
555
56%
② 創設以来の年数
身障更生、身障療護、知的更生の 7∼8 割が創設後 30 年以下であるのに比べ、児童養護は 50 年から 60 年
の歴史を持つ施設が 65%、内 25 施設 15%は 100 年以上の歴史を持っていました。一方、精神は 7 割が 10 年
以下でした。
Ⅱ.個人属性
性別では、男性56%(1590名)女性43%(1233名)でした。
生活相談員
6% 4%2%
7%
施設長
33%
看護婦
18%
その他
30%
事務長
教育背景は、全体の約半数は社会福祉で、ついで看護でした。
施設長や事務長の2∼3割は、「その他」の教育背景を持っており、生活相談員と介護職員に比べてその背景
が有意に異なっていました。
10%
15%
18%
5%1%
51%
社会福祉
看護
その他
教育
保育
医学
2
Ⅲ.施設環境―医療体制・感染症関連
① 医療体制
医師が常勤している施設は全体の1割にも満たず、非常勤医師は約半数の施設に配置されていました。
看護師が常勤している施設は全体の5割弱で、夜間配置は全体の1割強でした。
施設別では、特に児童養護は医師、看護師共他の施設に比べて配置が少ないことが分かりました。
また、病院を併設している割合は身体更生と精神に多くみられました。
② 診断書
全体の8割は、サービス申し込み時に診断書を求めていました。また全体の7割は感染症を確認しており、
施設別では、身体更生で9割、逆に児童養護や精神では5割強にとどまっていました。感染症の確認を行う施
設のうち、全体で61の施設が、HIV感染症の確認を行うと回答しました。
施設独自の診断書は、児童養護では6%未満、身障更生・身障療護・精神で約5割、知的更生では3割が作成
していました。その内、HIV感染症を項目にあげているのは、全体で31箇所。身障療護で10箇所、知的更生
で18箇所でした。
③ 利用決定の判断
サービス利用申し込みに対して実質的な判断の中心となるのは、施設長とした人が全体の6割強で最も多く、
ついで職員の合議が約16%でした。施設別では、身障更生は合議、精神は医師の判断の割合が、他に比べて
高い回答でした。そして、HIV感染者の場合は、医師、理事長、法人の判断が増え、全体的に施設長や職員の
合議、市町村判断が減りました。
④ 感染症マニュアル作成
感染症マニュアル作成は、全体の半数の施設で作成しており、身障更生と身障療護では約7割が作成してい
ましたが、知的更生では5割でした。児童養護や精神では7∼8割が作成していませんでした。
マニュアルのある施設の中で、HIV感染症に関する項目があるところは全部で52施設(13%)のみでした。
⑤ 感染症研修
研修を実施しているところは全体の半数で、身障更生と身障療護は8割近くが実施、知的更生では5割が実
施していました。一方、児童養護と精神では8割近くが実施していませんでした。またHIV感染症を取り上げ
た経験のあるところは55箇所(12%)にとどまっていました。
HIV感染症研修の受講経験は、451名(16%)の人が有と回答し、施設種別による差はありませんでした。
感染症対策として最も重要な事柄としては、5割以上の人が「手洗い」を最も重視、ついで「血液の取り扱
い」「健康管理」を挙げていました。
⑥ 損害保険
感染症に関する事故対応として損害保険に加入している施設は全体の4分の1で、身障療護と知的更生は他に
比べて高い加入率でした。しかし、実際に感染症に対して賠償した経験がある人は非常に少なく、回答者全
員の中でも21名のみで、その半数は知的更生でした。
肝炎ワクチンの接種は、回答のあった施設の24%足らずにとどまっており、施設別では、身障更生の半数が
最も多い回答でした。
⑦ HIV感染者受け入れ経験
施設単位では、22施設が受け入れ経験があり、個人では約2%の53人が経験有との回答を得ました。
半数以上が知的更生で経験され、ついで身障療護となっていました。
3
なお、肝炎保菌者の拒否経験は、施設ごとでは20例で、約6割が知的更生施設。その理由は、受け入れ体制
や知識が不十分、出血を伴う自傷行為や行動障害、医師の指示によるなどでした。
HIV感染者受け入れ経験
有
身体更生
身体療護
知的更生
児童養護
精神
合計
10
11
1
22
無
31
157
520
155
71
934
Ⅳ.全体の傾向
怖い病気 正しい知識が不足
【知識とイメージ】
HIV感染症は身近な病気でなく、また怖い病気と感じている。正しい知識を持っていない人も多い。
「他の性感染症があるとHIVに感染しやすくなる」(正解)「ピルはHIV感染症を予防できる」(不正解)
「食器により感染する」(不正解)など・・・
【感染に対する対応とコスト】 具体的対応の仕方が分からない コスト保障が必要
HIV感染症に対する具体的対応の仕方が分からない人が多く、特に行動障害がある場合の対応は困難で、感
染発生時の処置や事後対応の不安が強い。
また9割近くの人は、感染症対応には「コスト保障」が必要と考えている。
【法的責任】 どんな時に法的責任が問われるのか分からない
そもそも「どのような場合に施設側の責任が問われるのか分からない」人が多く(8割以上)、感染性疾患
を持つ人の「サービス利用を断っても法的責任を問われない」と半数以上の人が考えている。
検査の義務付け、ガイドラインが必要
【健康管理と抗体検査】
「サービス利用時にHIV抗体検査の義務付ける」ことを6割が希望し、殆どの人が施設側への告知を望んでい
る。また入所後の健康管理のための受診には肯定的な人が多いが、抗体が(+)であった場合は、プライバ
シーを守ることが難しく、また「他の利用者の健康管理の責任上、入所を断ることがある」と考える人も多
い。そして大多数の人が、「HIV感染者受け入れのための公的な基準」を望んでいる。
【性に関する価値観と利用者支援】
性への支援は大切だが、実際の取組みは困難
「性を楽しむ権利」や「性に関する情報を知る」ことは、多くの人が重要と考えていたが、「性を語るのは
苦手」とした人が多い。
また利用者の行動について「性的要因の影響をアセスメント」することへの認識は高いが、実際には「利用
者の性への取り組みや工夫」はできていないところが多く、トラブルへの対応が困難と感じている。
しかし「施設内で性のことを話せる雰囲気が大切」とする人は多く、また「ピアカウンセリング」や「結婚
や性へのサポートシステム」は多くの人が重要と考えている。
4
主体的生活支援は重要だが、援助の質は保障されにくい
【援助の質と意思決定権 】
ほとんどの人が、「利用者の主体的な生活を支援する」ことは重要と強く考えているが、「利用者を支援す
るための援助技術の質」は、半数以上の人が保障されていないと感じている。またサービス利用に関して基
本的に「当事者の意思決定が尊重されていない」と感じている人も多く、 特に「検査や通知に際して本人
の意思を支える」ことは難しいと感じている。
【他者の理解 】 地域や保護者などの理解が難しい
他の保護者や、地域、他の利用者の不安に対して理解を求めることに、困難を感じている人が多い。
↓↓
「HIV感染者の受け入れに努力したい」が、「できれば受け入れたくない」と思っている人が多い。
<職種では>
看護師や生活相談員は、施設や事務長に比べ、受け入れに対して積極的である。
<施設別では> 知的更生施設や児童養護施設の施設長は、身体療護に比べ、受け入れたくない気持ちが強い。
<研修は>
研修を受けた人は、受けていない人より、積極的に受け入れたいと考えている。
受け入れ経験は今後の受け入れ意向に関係していない。
Ⅴ.HIV感染者の受け入れに影響を与える要因
(因子分析の結果)
HIV感染者の受け入れに対して影響する要因として、以下の12の要因が抽出されました。
1
抗体検査実施義務
2
性への陽性価値観
入所申し込み時やサービス利用時に HIV 抗体検査を実施し、感染の有無について施設側
に告知すること
性を楽しむ権利や情報の理解の重要性を認識している。また性的志向を尊重し、施設内
で性の問題について話せる雰囲気が大切
3
他者への対応困難感
HIV 感染者の受け入れに関して地域の理解を得たり、他の利用者の不安、保護者への対応
が困難
4
感染対応理解困難
感染の可能性のある状況や対応への理解
5
医療体制
医師や看護師の常駐
6
性への対応困難感
人を好きになる気持ちは尊重したいが、利用者の性的欲求への対応やトラブルへの対応
に自信がない。
施設職員全体が共通認識を持つことが困難
7
性支援システム
ピアカウンセリングや、障害を持つ人たちの結婚や性に関する事柄をサポートするよう
8
法的責任
入所者同士や外出中の感染、職員への感染に対して、施設側に責任が生じる場合がある
9
感染発生時不安
利用者の生理時の対応や事故発生時の事後対策に不安
10
健康管理
感染の疑いがある場合の医療機関を受診や感染者の定期的受診
11
自慰行為容認
施設内での自慰行為の容認や場所の必要性
12
コスト保障
医学的対応に対するコスト保障の必要性
なシステムが重要
5
12の要因をHIV感染者の受け入れに(+)に働いている要因と(−)に働いている要因に分けると以下のよう
になりました。
(+)の要因
(−)の要因
性への陽性価値観
性支援システム認識
自慰行為容認
他者への対応困難感
感染発生時の不安
感染対応の理解困難
抗体検査実施義務
コスト保障
健康管理
施設別では、次のような違いが見られました。
殆どの施設で、
「性への陽性価値観」が(+)の方向に、また「他者への対応困難感」が(−)の方向に働
いている点が、共通していました。加えて、知的更生では、感染への対応の不安や理解の困難さが(−)に、
性支援システムへの認識が(+)に影響を与えていました。
一方で、
「性への対応困難感」を持っている人が、逆に受け入れ努力に積極的であることが分かりました。
施設種別
身体更生
身体療護
知的更生
児童養護
(+)に影響を与えている因子
(−)に影響を与えている因子
他者への対応困難感
性への陽性価値観
他者への対応困難感
性への対応困難感
感染発生時不安
性への陽性価値観
他者への対応困難感
性支援システム
感染対応理解困難
性への対応困難感
感染発生時不安
性への陽性価値観
他者への対応困難感
性への対応困難感
精神
性への陽性価値観
他者への対応困難感
性への対応困難感
抗体検査実施義務
考察:
1.HIV 感染者の受け入れの実態
22 施設が HIV 感染者の受け入れを既に経験しておられたことは、当初の予想を上回る結果でした。
受け入れ意向については、受け入れに努力したい気持ちと拒否感が同居し、いずれも 6 割の回答でした。こ
のことは思いと実際、本音と現実が相容れないことを示している可能性があると思われます。
また受け入れ経験の有無によって受け入れ意向に差がなかったにもかかわらず、HIV 感染症研修受講経験の
有無によって、受け入れ意向に有意な差が出たことは、単に経験があるだけでは困難な問題や未解決な課題が
あることを示していると同時に、研修の重要性を示していると考えられます。
6
2.受け入れへのマイナス要因の解決とプラス要因の促進
今回の調査で示された、HIV 感染者の受け入れへのマイナス要因を解決し、プラス要因を促進するような働
きかけが重要になります。例えば、次のように考えています。
① 感染発生時の不安や対応への理解については、現場に即した的確な知識を研修の場などで提供されること
が有効と考えられます。
② コストの問題は社会福祉制度に限らず、医療保険のあり方や制度・システム全体に関わる課題として捉え
る必要があると思われます。
③ 他者への対応困難感については、具体的な対応場面を想定した理解を深めるための場が必要と思われます
が、単にそれだけに止まらない組織のリーダーシップのあり方や地域への働きかけの方法などにおいて、
「施
設コンフリクト」の考え方を活用するなどの方策が求められると思います。
④ 抗体検査の実施や健康管理については、意思決定の支援やプライバシー、ユニバーサルプリコーション(標
準化・普遍化された予防的対策)
、コストなど複数の要因を統合して考察する必要があります。
⑤ 性に関する価値観や支援システムへの考え方は、単に知識や情報提供に止まらない、各人の参加度の高い
学習の機会が大切であるとともに、システム構築へ向けた活動が必要となります。
3.施設によって差がある不安や課題
全ての施設でほぼ共通して「他者への対応困難感」が最も大きく(−)に影響し、
「性への陽性価値観」が
(+)に影響していました。
施設によって差があった要因については、利用者の特性や、持っている病気へのイメージ、対応への不安の
程度、病院併設など医療との関わりの違いが関連していると推測されます。
たとえば知的更生では、特に具体的な感染発生時の不安や対応への理解が(-)の方向に、性支援システム
への認識が(+)に影響していましたが、精神では、
「抗体検査実施義務」への考え方が(−)に影響してい
ることが示されました。
また「性への対応困難感」が、身体療護、知的更生、児童養護、精神において、困難を感じている人のほう
が受け入れに対して積極的であるという興味深い結果が示されました。問題意識が高く持って、日々そのこと
に苦慮している人ほど理解しようとしている、努力しようとしている姿勢の現われと解釈することが可能とい
えるのではないでしょうか。
各施設の抱える個別の課題を更に熟考し、方策を探ることの必要性が改めて示されたものと考えます。
4.一定のガイドラインの提示の必要性
今回の調査で、一定のガイドラインへの希望が強く示されました。そこでは具体的な対応方法や法的責任へ
の考え方なども含まれる必要があると考えられます。しかし、それだけではなく、正しい知識や自分自身の持
つ価値観に向かい合うことと共に、一方では制度施策改善への提言や活動も必要と考えています。
今の段階でそのすべてにお答えすることはできませんが、今後調査にご協力いただいた皆様と共に、可能な
限り取り組んでいきたいと考えています。
7
資料:
エイズの基礎知識
エイズとは
エイズとは、HIV 感染症が発症した状態を指し、
「後天性免疫不全症候群(AIDS)」のことです。HIV(ヒト免
疫不全ウィルス)が人間の免疫機能を破壊することにより、感染成立から 8∼10 年くらいで発症します。発症
すると様々な日和見感染症や悪性腫瘍が出現します。この HIV に感染すると、一生体内にとどまり、適切な治
療を受けない限り、どんどん増殖し、免疫力が徐々に低下して最後には命を奪われてしまいます。ただ、感染
しても8∼10 年は全く自覚症状がないので自分では感染しているかどうかわかりません。感染しているかどう
かを知る唯一の方法は、
「抗体検査」と呼ばれる血液検査です。
抗体検査は
全国の保健所で、無料・匿名で実施されています。プライバシーが漏れることはなく、感染が判明した場合
は専門病院に紹介状を書いてもらえます。結果は 1∼2 週間後に本人に知らされますが、最近では即日に結果
が分かる迅速検査も実施されています。
検査は感染が疑われる出来事から、8 週∼3 ヶ月経ってから受けてください。感染してすぐには正しい結果
が出ません。
感染源は
日常生活で注意するのは、血液・母乳・精液・クーパー腺液・膣分泌液の 5 種類です。これ以外の体液には
HIV が極微量にしか混入しないので感染しません。
感染経路は
粘膜(性器・肛門・口腔など)や深い傷口に、これら 5 種類の HIV を含んだ体液が、接触することによって
感染します。他の性感染症に罹っていると感染しやすくなります。この他、感染体液が血管に直接注入される
場合(注射器の共用・輸血)や母子感染がありますが、現在の感染者の多くは性行為感染によるものです。
治療方法は
HIV に感染するとすぐに死んでしまうという誤解が、まだまだ根強いようです。確かに、完治法は残念なが
らまだ発見されていません。ですが、現在では、HIV の増殖をできるだけ抑えて、病気の進行をくいとめるた
めの治療を受けることで、それまでの社会生活を維持し続けることができるようになっています。
きちんと治療をすれば、体内の HIV の量が少なく抑えられるために、他の人に感染する危険性も低くなりま
す。そのためにも、まず、抗体検査を受けることが重要であるといえます。
治療費は
高額な治療薬を一生涯服用し続けられるように、身体障害者の認定を受けられるようになりました。それに
より、更生医療や税金の控除が受けられるので、安心して治療生活を続けられるようになっています。
感染予防について
感染者をケアする人のために
B 型肝炎・C 型肝炎と同じく、日常的な接触での感染はありません。
スタンダードプリコーション(標準予防策)で感染予防は可能です。
血液・母乳・精液・クーパー腺液・膣分泌液の 5 つの感染体液が、粘膜や傷口に直接触れないようにするこ
とが予防の基本といえます。
8
健康な皮膚からは感染しませんので、これらの体液に直接触れた場合でも、十分に手洗いすれば感染を防ぐ
ことができます。
針刺し事故の場合の感染確率は 0.3%といわれています。もし事故が起きたときは、血液をもみだし、水洗
いしたあとアルコール消毒を行ないます。そして最寄りのエイズ拠点病院にご相談ください。エイズ拠点病院
は各都道府県に配置されています。行政のエイズ担当窓口にお問い合わせください。
感染者のために
感染者が速やかに医療につながることがもっとも大切なことです。
そして、感染者自身とその周囲の人がこの病気について、誤解や偏見をもたずに正しく理解することによって、
安心して治療が受けられるようになります。
性行為に関係する体液が感染源となるので、性行為の際の予防が大切です。基本的には、それらの体液が直
接相手の粘膜や傷口に接触しないようにすること、つまりコンドームの利用が最も簡単で有効な予防法といえ
ます。
性行為以外で気をつけることは、血液は自分で処理をし、ほかの人に触らせないということです。健康な皮
膚からは感染はしませんが、これを習慣にすることで、性行為以外の日常生活で他者に感染させる危険はない
のです。
予防法を習得し実践できれば、感染者も非感染者もそれまでと同じような性生活を送ることが可能です。
詳しいことは、以下の文献やインターネット上のサイトを参考にして下さい。
1.神吉耕三監修、江川文誠著(2003)『高齢者・障害者福祉施設の感染対策−福祉版スタンダード
プリコーション』日本知的障害者福祉協会
2.菊池賢監修・執筆、介護老人保健施設ハートランド・ぐらんば ぐらんま 感染対策委員会著(2004)
『実践マニュアル高齢者施設内感染対策改訂版』日総研
3.http://www.onh.go.jp/khac/ または http://www.hivcare.jp/3resource.html
【本調査及び冊子に関するお問い合わせ先】
桃山学院大学社会学部社会福祉学科 教授 小西加保留
℡ 06725-54-3131
e-mail [email protected]
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