CONTENTS 「キュランダ鉄道」ケアンズ(オーストラリア) KT 随 想 日々雑感 ―秋田の食を想う―……………………………………… <高野 靖>… 528 シリーズ解説 果実とその加工品の話(第12回) 果実・果汁飲料と機能性成分(10) 中高年者の疾病予防における果物・カロテノイド摂取の役割 …………………………………………… <安藤富士子・下方浩史>… 530 シリーズ解説 日本の伝統食品(第6回) 煮干し……………………………………………………………………… <滝口明秀>… 536 業界トピックス:缶コーヒー「秋の陣」が開幕… ……………………………………………… 541 海外技術・マーケット情報 健康志向の食品開発……………………………………………………………………………542 フードトレンド・トップ10(1)……………………………………………………………545 遺伝子組み換え作物の受容に関する諸問題…………………………………………………548 シングルサーブ市場におけるサステナビリティの革新……………………………………550 消費者のナチュラルフードに関する理解の変化……………………………………………552 筋肉と骨の量のマネージング…………………………………………………………………554 コーヒーから海藻まで:植物成分の最新情報………………………………………………556 食品安全強化法:その詳細を議論する………………………………………………………559 缶と競合するレトルトパッケージ……………………………………………………………561 連載エッセー:食べもの随想 3人のアメリカ人 −リンカーン・ジェファーソン・フランクリン− … …………………………………………………… <田村真八郎>… 564 特別解説:日本語のテクスチャー表現と対象食物名について……… <早川文代>… 566 技術コーナー:ペットボトル飲料製造における微酸性次亜塩素酸水を利用した 過酢酸耐性菌の制御………………………………………… <桑原浩輔>… 572 技術用語解説:外装,工業包装,個装,商業包装,消費者包装,適正包装,内装 …………………………………………………………………………… 577 業界の話題…………………………………………………………………………………………… 578 今月の統計…………………………………………………………………………………………… 582 最近の技術雑誌から………………………………………………………………………………… 584 野菜・果物を巡って(第五十七話) イギリスの野菜見聞と日本の状況 … …………………………………………………… <吉田企世子>… 589 缶詰技術研究会 http://kangiken.net/ • • • • • • • • • • • ― 秋田の食を想う ― • • • たか の やすし • 高 野 靖 • • (前秋田県総合食品研究センター所長) • •••••••••••••••••••••••••••• 随想 キャッチフレーズなどにしてほしくない。 日々雑感 次に「安心」の語。「安心」は,「安全」と字面 が似たような言葉で,近頃は一緒くたに使われ ることが多いが,この二つは大いに違う。人類 4百万年の歴史の中で,食に安心な状況などはこ れまで一度もなかった。病原菌やキノコやフグな どの毒素等の例を引くまでもなく,食が原因で命 今年の梅雨の頃,所用で北陸地方都市のホテル を落とすことはかなりの頻度で起きてきた。作家 に泊まったことがあった。翌朝併設の和食堂で朝 の曾野綾子さんは新聞への寄稿で「安心病への特 食をとったのだが,食べ終わってふとその入り口 効薬はない。自分は子供を育てていて安心な日な に「安全,安心,新鮮,手作り」と大書してある どなかった。今の日本は安心を口にし過ぎる」と のに気づいた。はてさて,このような言葉が,そ いっておられる。まして食品事業者が「当社商品 の店の信頼を獲得することにどれほど有効なので は安心して召し上がっていただける」などと安易 あろうか。私ならば,日本海のおいしい魚が食べ に請け負うのは,厳に戒めなければいけないこと たいと思って店を選ぶとき,これらの言葉に惹か だと,私は思っている。 れて入店はしたくないものだ。しかししかし,近 次に,「新鮮」ということについて。食品事業 頃では食堂にしろ加工食品にしろ,このような口 者は,自らの製品とその原料・材料がどの程度の 先だけとしか思えない枕詞のような宣伝文句が氾 鮮度を保っていれば顧客の満足を得られるのかを 濫している。客や消費者が「きちんとした価値 把握して,それに合致するように鮮度を管理すべ 基準をもって食べ物を選ぶ」ことをしない風潮 きものであり,ただ「新鮮」を唱い文句にしても が,こういう宣伝文句の氾濫を許してしまってい 新鮮さが伝わるものではない。新鮮な材料を仕入 るように思われる。といっても,私は「安全,安 れたとしても,客に提供するまでの管理が不適切 心,新鮮,手作り」がどうでもいいことだとは決 であったら,何にもならないではないか。 して思っていない。これらの言葉を安易に並べて 最後の「手作り」という言葉も,「天然」,「自 キャッチフレーズにすることに対し,怒りを覚え 然」という言葉と同様にその言葉自体で食品の価 るのである。 値の高さを表すものではない。加工食品は,近年 安全上の問題を起こしていないばかりか,おいし まず,「安全」について。10年ほど前まで食品 の製造会社に勤めていた私は,顧客の信頼を得る さでも便利さでも大きく進歩してきていることは, ためには,食品安全基本法にある「食品安全の第 多くの日本人が感じていることだと思う。「手作 一義的な責任は食品事業者にある」を自覚し実践 り」を強調するあまり,「安全」への配慮が欠け し続けることが一番大事なこと,と肝に銘じて仕 ることもある。安全上の危害があった出来事とし 事をしていた。つまり,食の安全性の確保には万 ては,レバ刺しなど非加熱の肉の摂食による食中 全を期し,何か不都合なことが起きたら,顧客の 毒の多発が耳に新しい。 販売競争に勝たんがために口先の唱い文句で顧 安全を守るという観点であらゆる手段を講ずる。 そして,こういったことを長期間継続することに 客を引きつけ,食品の品質・本質への配慮を疎か よって初めて,顧客が商品・企業に信頼を寄せて にするなどは,食品事業者としてあるまじき姿で くれるようになるのである。しかもその信頼は, あると私は思うが,それとも,彼らは己が商品の 何かことが起こってその対応を誤ったとき,一 品質・本質に自信がもてないので,口先の唱い文 夜にして失われてしまう。食品に関して「安全」 句商法に走るのであろうか。己が商品の品質・本 とは,そういう覚悟で使うべき重い言葉であっ 質に自信をもち惚れ込んでいたら,その「良さ」 て,安全確保のために何をやったのかを言わずに, について一生懸命アピールし売り込むことこそ, 食品と容器 528 2013 VOL. 54 NO. 9 の動きは多くの蔵元に広がっている。 真っ当な商売の姿だと私は思うのだが。いずれに せよ,食品の品質・本質を見ようともせず,うか こう書くと,いいところばかりで,現状も将来 うかと口先の唱い文句商法に乗せられ,結果とし も何も問題がないように感じられるかもしれない て食文化を乱してしまっている消費者も反省しな が,現実は厳しい。高い食糧自給率にも拘わらず, ければなるまい。 秋田県から他県への食品産業移出額は他県からの 移入額を大きく下回っており,そのギャップは増 ところで話は変って。今私は横浜に戻っている 大しつつある。 が,昨年春までの3年間ほどは仕事で秋田に住ん でいた。離れてみると秋田には,季節ごとにすば この原因は,食品の保存技術,包装技術の進展 らしい数々の食材があり,それを大事にしてきた をベースにした流通の大発展であり,それに伴う 食文化があることを今更ながら誇らしく思う。そ 強大な全国規模の食品企業との競争の激化である して,その一端に触れる機会が偶々与えられたこ わけなのだが,かといって流通の貧弱だった昔に とを本当に有り難いことだと思っている。 戻ることは許されない。せっかく誇るべき素材や たまたま 技術をもっているのだから,その価値をきちんと 春は萌え出る数多くの山菜がある。たとえば, 皮をむく手間はかかるがミズのシャキシャキとし 認識し,口先の宣伝文句ではなく,食品としての た食感。夏にかけてはジュンサイ。葉の根元に小 良さを口に出して広く消費地の人々と共有する… さな赤い玉のついた旬のジュンサイのびっくりす …これこそ一番大事なことだろう。広く消費地の るほどの美味しさ。クロモ,ギバサといった海藻 人々に伝えることで現状を変えて,力強く前に進 類と岩ガキも夏の海からの贈りもの。秋は舞茸 む必要がある。これは,同じような状況にある他 をはじめとする茸,冬はハタハタに,比内地鶏, の地方にもいえることであるし,世界における日 等々。あげていけばキリがない。食糧自給率全国 本のあり方にも通じるものだと思う。つい先日, 富士山が世界文化遺産に登録になったばかりであ るが,これも,関係者が富士山の価値をきちんと 認識し,自信をもって真っ当な活動を地道に積み 重ねた結果であろう。 我が愛する秋田県についていえば,東京品川駅 の高輪口から歩いて数分のところに,「あきた美 彩館」という店があって,秋田の季節毎のおいし いものを購入できるし,ここには美酒王国ならで 第2位の原動力「あきたこまち」をはじめとする はのお酒と料理が楽しめるレストランも併設され お米。最近東京でも評判がでてきた由利牛等の畜 ている。秋田県のアンテナショップは東京の他に 産物など,実に豊かな食素材に恵まれている。素 大阪や福岡にもあり,それ以外にも,秋田の食品 材ばかりではない。しょっつる(魚醤)や,いぶ の価値を良く知っている出身者が各所にお店を開 りがっこ(漬け物)には長い歴史と美味しさがあ いている。この方々が,更なる自信と確信をもっ る。麹の国にふさわしく,我が国有数の種麹会 て活動し誇るべき秋田の食と文化を伝え続けてほ 社,京都の和菓子屋さんからも信頼されている米 しいと思う。 消費する側(今の私はこちら側にいるが)は, 製粉会社などの存在からもわかる技術の高さもあ る。加えて,美酒王国秋田には40ほどの酒蔵があ 秋田のものに限る必要は全くないが,自らの食に り,芳醇で品のある清酒を醸造しているが,その 対してしっかりした価値観をもち口先目先の宣伝 中でも,5つの蔵の若い蔵元が NEXT5という 文句に惑わされず,真っ当な食品を選択して生活 グループを形成し協力しあいながら,大消費地に していきたい。そのことを通して真っ当な食品を 受け入れられる清酒づくりにトライしており,こ 守り育てて行きたいものだ。 食品と容器 529 2013 VOL. 54 NO. 9 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 第12回 果実・果汁飲料と機能性成分(10) 中高年者の疾病予防における 果物・カロテノイド摂取の役割 あ ん ど う・ふ じ こ 名古屋大学大学院医学研 究科修了。国立長寿医療 研究センター長期縦断疫 学研究室長を経て,現在, 安藤 富士子 下方 浩史 愛知淑徳大学健康医療科 学部教授。 医学博士 (名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科教授) 平成13年の平均摂取量279gと比較するとほぼ横 ●1.果物摂取状況と果物に 含まれる栄養素 ● ばいである3)。一方,平成23年の果物の1日平均 摂取量は106gであるが,これは推奨摂取量200g の約5割で,平成13年の平均摂取量の132gから 野菜や果物の中にはさまざまな栄養素が含まれ 10年で3割近く減少している。 ているが,日本人ではいずれも摂取量が推奨量を 下回っている。平成23年の国民健康・栄養調査 1) これは野菜に比べて果物が高価であり,傷みや によると日本人は毎日平均272gの野菜を摂って すく,また食事の副食となりにくいことや食べる いるが,これは近年メディアなどでもおなじみ 時にいちいち剝かなくてはならないことなどに加 2) えて,近年の極度の健康志向が「少しでも摂取カ となった1日推奨摂取量350g の8割弱であり, ロリーを減らそう」という, ともすれば極端な方向に走 りがちであることによると 思われる。 実際に平成23年の年代別 果物摂取量を10年前と比較 すると,すべての年代で果 物摂取量が低下しており, 特に小中学生での摂取量が 激減している。また平成13 年に最も摂取量が低かった 20歳代,30歳代が10年後に も摂取量が低いままで,底 第1図 年代別果物摂取量の10年間の変化1,3) 平成13年から平成23年の10年間で,果物の摂取量は約3割低下し, 特に若年成人や中年での果物離れが顕著となってきている。 食品と容器 530 値の高年齢層へのシフトが 進み,平成23年には底値を 示す年代が20歳代から40歳 2013 VOL. 54 NO. 9 中高年者の疾病予防における果物・カロテノイド摂取の役割 代まで幅広くなったことなど が読み取れる(第1図)1,3)。 このままでは10年後,20年後 に我が国の果物消費はさらに 落ち込むことが予測される。 平 成23年 の20歳 以 上 の 野 菜・果物摂取量の分布を見て も,野菜では350g以上食べ ている者が28%,70g未満が わずか7.4%なのに対して果 物では「0g」と答えた者が 実 に38.7% を 占 め, 一 方200 gを越えた者はわずか18.5% に過ぎない。特に男性では成 人の45%が日常の果物摂取量 を「0g」と答えている(第 2図)1)。 第2図 野菜・果物摂取量の分布(平成23年)1) 20歳以上の成人において,野菜の摂取量が70g未満の者は1割弱,推奨量以上 摂取している者は約3割であるのに対して,果物を全く食べていない者が約4 割,推奨量以上摂取しているものは2割弱にすぎない。 者に多い生活習慣病の予防効果を持つ,理想的な すなわち,野菜は量の多少はあってもほとんど 食べ物の一つと考えられる。 の国民が摂れているのに対して,果物摂取に効用 があるとすれば,それを活かせていない国民が大 ●2.注目を集めている栄養素, カロテノイド ● 多数なのが現状である。 それでは果物にはどのような栄養素が含まれて いるだろうか。果物は特にビタミンCが豊富で, 近年,果物と野菜に多く含まれる食品機能成分 食事中のビタミンC摂取の約3割は果物から摂ら としてカロテノイドが注目されている。カロテノ れている。果物にはその他にも食物繊維,カリウ ム,ビタミンA,B6,葉酸が豊富に含まれてい イドは赤,だいだい,黄色などの天然の色素で, 温州みかんのだいだい色はβ-クリプトキサンチ る。ビタミンCやビタミンAは抗酸化ビタミンと ンというカロテノイドの色であり,トマトの赤は して動脈硬化や老化を防ぎ,食物繊維は便秘や大 リコペンというカロテノイドによる。カロテノイ 腸癌を予防する。葉酸にも動脈硬化抑制作用があ ドは食品に含まれる代表的な抗酸化物質で,豊富 り,ビタミンB6には神経細胞の保護作用や貧血 に含まれる二重結合が加齢や疾患に伴い体内で増 の予防作用がある。カリウムには高血圧の原因と 加する活性酸素を中和することから抗老化・抗老 がん せつ 4) 年病作用が期待されている。 なるナトリウムの尿排泄を促す効果がある 。一 自然界には600種以上のカロテノイドがあり, 方,果物には高血圧や高脂血症の原因となるナト リウムや脂質,コレステロールがほとんど含まれ 果物や野菜にも40~50種類が含まれているが,そ ておらず,適量の摂取であれば糖尿病にも影響を のうちヒトの腸管から吸収されるのは10数種類と 与えない。実際に糖尿病の食事療法では,1単位 いわれている。 5) 果物や野菜など,水分の多い食物に含まれてい (80g)ではあるが,果物の摂取を勧めている 。 さらに果物自体にも心臓病や脳血管障害の予防 るのにもかかわらず,カロテノイドは脂溶性(油 効果があることも報告されており,果物は中高年 脂に溶けやすく,水に溶けにくい性質)で,腸管 食品と容器 531 2013 VOL. 54 NO. 9 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 第1表 果物・野菜に含まれる主なカロテノイド カロテノイド 特徴 含有量の多い代表的な食品 α-カロテン 純物質は紫色。体内でレチノイドとなるが, にんじん,かぼちゃ,ぜんまい,バナナ β-カロテンに比べると効力が低い。 β-カロテン 黄色色素。β-カロテンから2分子のビタミ ンAが産生される。細胞膜の損傷を防ぐ働き をする。 にんじん,かぼちゃ,あしたば,こまつな, しそ,ほうれんそう,マンゴー,ブロッコリー, 濃縮果汁 リコペン 赤色色素。抗酸化作用が大きい。 トマト,トマト製品,かき,ぐみ,すいか, にんじん,ハーブ,ブロッコリー ルテイン α-カロテンに O( 酸素原子)が2つ結合した もの。キサントフィルの1種で強い抗酸化作 ほうれんそう,ブロッコリー,果物,豆類, 用を持つ。目の黄斑部,水晶体に多く含まれ, 卵黄 加齢黄斑部変性症などの眼病との関係が注目 されている。 ゼアキサンチン β-カロテンに O(酸素原子)が2つ結合し とうもろこしの種,卵黄,緑黄色野菜,ほう たもの。 れんそう,ブロッコリー,パパイヤ β-クリプトキサンチン 温州みかんに特異的に多い。 温州みかん,オレンジジュース,オレンジ, パパイヤ,かき,びわ,赤ピーマン 現在,商業レベルで血中濃度が測定できる6種のカロテノイドについて多く含む食品とそのカロテノイドの特徴を示した。 から吸収されると体脂肪の中に蓄えられる。そし 表に代表的なカロテノイドが多く含まれる食べ物 てそこからまたゆっくりと血液中に溶け出してき とその特徴を示した。 て体中を巡る。従ってカロテノイドの摂取量は毎 カロテノイドの科学的性状や種類については本 日の野菜・果物の摂取量で大きく変動するが,血 誌54巻6号の稲熊隆博氏の記述に詳しい7)が,こ 液中のカロテノイド濃度は比較的安定している。 現在,α-カロテン,β-カロテン,リコペン,ル こでは「カロテノイド」が中高年者の疾病予防や テイン,ゼアキサンチン,β-クリプトキサンチ に解説する。 健康にどのように関連しているか,自験例を中心 ンという6種類の血液中カロテノイドの測定が 商業的に可能であり,α-カロテン,β-カロテン, β-クリプトキサンチンについては食事調査など カロテノイドの中でもβ-クリプトキサンチン で摂取量を推定することも可能となった6)。第1 µg/dl 血清ルテイン男性 既往なし 既往有り µg/dl 血清ルテイン女性 既往なし 既往有り ●3.カロテノイドと中高年者の 疾病予防 ● 血清ゼアキサンチン 男性 µg/dl 既往なし 既往有り クリプトキサンチン摂取量 女性 µg/dl 既往なし g/day 果物摂取量 男性 既往有り 既往なし 既往有り 第3図 狭心症・心筋梗塞既往の有無と血中カロテノイド(* ; p < 0.05) (年齢,BMI,季節,喫煙,閉経,果物ではさらに総摂取エネルギー,野菜摂取量を調整した一般線形モデル) 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)の既往がある者では血中カロテノイド濃度が低く, 果物摂取量が低かった(NILS-LSA 第5次調査結果より)。 食品と容器 532 2013 VOL. 54 NO. 9 中高年者の疾病予防における果物・カロテノイド摂取の役割 は温州みかんに特異的に多く含まれている。 一般地域住民の温州みかんの摂取は冬期に限 (*;p < 0.05) られているが,三ヶ日みかんの産地,旧静岡 県引佐郡三ヶ日町(現在の浜松市北区の一 部)では農家が貯蔵している温州みかんを一 年中摂取する習慣がある。この地方の疫学研 究では血中β-クリプトキサンチンが高い者 では,骨密度が高く,非糖尿病者でのインス リン抵抗性(糖尿病のなりやすさ)が低い等 の結果が得られている8,9)。 三ヶ日町のように,特定のカロテノイドを 特異的に多く摂取している地域ではそのカロ テノイドの健康への影響は強く現れやすい。 第4図 自覚的健康度と血中カロテノイド(女性) (年齢,BMI,季節,喫煙,閉経を調整した一般線形モデル) 女性において自覚的健康度が良い群では血清リコペン濃度が 高かった(NILS-LSA 第5次調査結果より)。 ではカロテノイドの摂取量が日本の平均的な 地域では,カロテノイド摂取と健康との関係 はどうなっているであろうか。 (*;p < 0.05,**;p < 0.01) 我々は愛知県大府市と知多郡東浦町で地域 在住の中高年者(40歳~79歳)から約2,300 人を無作為に選び出し,老化や病気の進行と 運動や栄養等との関わりを長期的に調査する 疫 学 研 究(NILS-LSA, 国 立 長 寿 医 療 研 究 センター・老化に関する長期縦断疫学研究)10) を1997年から行っている。特に第5次調査 (2006年~2008年)では前述の6種の血中カ ロテノイドを測定し,疾病との関わりを検討 第5図 大脳の小梗塞(ラクーナ)と血中カロテノイド (年齢,BMI,季節,喫煙,閉経を調整した一般線形モデル) ラクーナの数が増えるほど,血中カロテノイド濃度は 低下していた(NILS-LSA 第5次調査結果より)。 した。その結果狭心症や心筋梗塞の既往がな い群では血中ルテインやゼアキサンチン濃度 が高く,果物の摂取量が多いことが明らかになっ 血清リコペン,β-カロテン,β-クリプトキサン た(第3図)。また自覚的健康度(自分を健康と チンが低下していた(第5図)。 感じるかどうか)が高い人は血中リコペン濃度が これらのカロテノイドは果物や野菜に含まれて 有意に高いことも判明した(第4図)。さらに日 いることから,野菜や果物を十分に摂取して血中 常の生活動作の中で階段の上り下りや長距離の歩 カロテノイドを高く保つことは,おそらくその抗 行,入浴などが「困難なくすることができる」群 酸化作用を介して動脈硬化の進展を抑制し,心筋 では「困難」な群よりも,血中カロテノイド濃度 梗塞や脳梗塞を防ぎ,身体活動や健康度を高く保 が高いという結果が得られた。 つ可能性があると考えられる。 血中カロテノイドは小さな脳梗塞(ラクーナ) ●4.カロテノイドは体内が過酸化 状態であるとより強い効果を示す ● とも関連しており,血中カロテノイドを「ラクー ナがない群」,「ラクーナが一つだけある群」,「ラ クーナが多発している群」で比較するとこの順に 食品と容器 喫煙や糖尿病の存在はいずれも血中の活性酸素 533 2013 VOL. 54 NO. 9 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 効果はより強く表れると考えられる。 を増やし,動脈硬化や老化を早めると考えられて しょう いる。カロテノイドの抗加齢作用が抗酸化作用を たとえば骨粗鬆症は加齢に伴い骨密度が低下し 介するのであれば,喫煙者や糖尿病患者ではその て骨が折れやすくなる病気であるが,骨密度と血 清カロテノイドの関係を見てみると面白いこ とが分かる。第6図は喫煙者と非喫煙者を, それぞれ血清ルテイン濃度の「高い群(T 3 )」 「中程度の群(T 2 )」 「低い群(T 1 )」に分け て,骨密度を比較した結果である。非喫煙群 では,血清ルテイン濃度の高低にかかわらず, 骨密度は一定に保たれていた。しかし,喫煙 群では,血清ルテインが高ければ骨密度は保 たれていたが,低い群では骨密度が統計的に 有意に低かったのである。同じように第7図 では糖尿病のある群とない群でそれぞれでの 血清ゼアキサンチン濃度の高低で骨密度を比 第6図 喫煙者の骨密度と血中カロテノイド (年齢,BMI,季節,喫煙,アルコール,高血圧症, 糖尿病,虚血性心疾患を調整した一般線形モデル) 非喫煙者では大腿骨頸部の骨密度と血清ルテイン濃度との関係 は認められなかったが,喫煙者では血清ルテイン濃度が低い群 (T 1 )では普通あるいは高い群と比べて有意に骨密度が低かっ た(NILS-LSA 第5次調査結果より)。 較している。糖尿病がない群では,血清ゼア キサンチン濃度にかかわらず骨密度は保たれ ていたが,糖尿病群では血清ゼアキサンチン 濃度が低いほど骨密度が低くなっていた。 我々の研究では知能と喫煙とカロテノイド の間にも同じような結果が明らかになってい る。すなわち中高年の喫煙者では非喫煙者に 比べて知能が有意に低下していたが,β-カ ロテンや果物を十分に摂取していた群では, 非喫煙者と同等の知能が保たれていた。 ●5. おわりに ● 超高齢社会を迎え,心身ともに健全に過ご すことは万人の望みであろう。生活習慣病や 老年病の多くは動脈硬化が原因となっており, またこれらの疾患の発症は血中の活性酸素を 増やし,さらなる疾患発症の誘因となる。 果物や野菜に多く含まれるカロテノイドは 第7図 糖尿病有病者の骨密度と血中カロテノイド (年齢,BMI,季節,喫煙,アルコール,高血圧症, 糖尿病,虚血性心疾患を調整した一般線形モデル) 糖尿病の所見のない者では全身骨の骨密度と血清ゼアキサンチン濃 度との関係は認められなかったが,糖尿病患者あるいは血液検査か ら糖尿病が疑われる者ではゼアキサンチンが低い群では高い群と比 べて有意に骨密度が低かった(NILS-LSA 第5次調査結果より)。 食品と容器 534 その抗酸化作用を介して,血中の活性酸素を 減弱させ,冠動脈疾患や脳梗塞,日常生活動 作の低下や骨粗鬆症,知能低下など多くの疾 患発症を予防する可能性があり,特にその作 用は喫煙者や糖尿病患者などの,動脈硬化の 危険性の高い,ハイリスク集団で有効である 2013 VOL. 54 NO. 9 中高年者の疾病予防における果物・カロテノイド摂取の役割 日本学術振興会科学研究費助成事業(学術研究助 と考えられた。 ●6. 謝辞 ● 成基金助成金 23500974)により行われた。研究 にご協力頂いた NILS-LSA 参加者の皆様,なら この研究の一部は平成18年~平成23年度果樹試 びに研究スタッフに深謝いたします。 験研究委託事業ならびに平成23年度~平成25年度 参 考 文 献 1)厚生労働省 平成23年国民健康・栄養調査報告 . 汁飲料と機能性 ―カロテノイドを中心に―.食品と http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h23- 容器.54(6):342−347,2013. houkoku.html(2013年7月21日閲覧) 8)Sugiura M, Nakamura M, Ogawa K, Ikoma Y, Ando 2)公益財団法人 健康・体力づくり事業財団 健康日本 F, Yano M: Bone mineral density in post-menopausal 21http://www.kenkounippon21.gr.jp/(2013年7月21 female subjects is associated with serum antioxidant 日閲覧) cartenoids. Osteoporosis International 19 : 211−219, 4)健康栄養情報研究会(編):国民栄養の現状-平成13 2008. 年厚生労働省国民栄養調査結果.pp83−86.第1出版, 9)S ugiura M, Nakamura M, Ogawa K, Ikoma Y, 東京,2003.安藤富士子,下方浩史:超高齢社会で果 Matsumoto H, Ando F, Shimokata H, Yano M : 物が果たせる役割~老化を防ぐカロテノイドの効用~. Associations of serum carotenoid concentrationswith 果実日本.66(1):100−104,011. metabolic syndrome: Interaction with smoking. Br J Nutr. 2008 Dec ; 100(6): 1297−1306. 5)日本糖尿病学会(編):糖尿病食事療法のための食品 交換表 第6版.日本糖尿病学会.文光堂,東京,2002. 6)文 部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報 10)Shimokata H, Ando F, Niino N : A new comprehensive study on aging-the National Institute for Longevity 告:日本食品標準成分表 2010.全国官報販売協同組 Sciences, Longitudinal Study of Aging(NILS-LSA). 合,東京,2010. J. Epidemiol 10(Suppl 1):S1−S 9,2000. 7)稲熊隆博:果実・果汁飲料と機能性成分(7).野菜果 講演会のご案内 日本清涼飲料研究会「第23回総会及び研究発表会」 ◇日時:2013年10月23日(水)10:00~(受付 9:30~) ◇会場: ⑴総会・研究発表会 (財)日本教育会館 一ツ橋ホール 〒101−0003 東京都千代田区一ツ橋 2-6-2 TEL 03−3230−2831 ⑵懇親会 日本教育会館 9階 喜山倶楽部「平安」 TEL 03−3262−7661 ◇参加費: ⑴研究発表会参加費 会 員 1,000円 ※日本清涼飲料研究会の法人・ 団体会員:1社につき1名無料,一般 3,000円 ⑵親会参加費 5,000円 ※親睦会参加費につきましても,法人・団体会員 の方1名は無料です。 ◇申込方法:下記ホームページよりお願います。 http://www.j-sda.or.jp ◇プログラム 《研究発表》(10:10~11:40) 「アロマプロテクト製法の開発」 阿部和也 食品と容器 535 「エアインダクションノズルを活用した無菌充填ラ インにおけるボトルリンサー節水技術の開発」 菅沼 剛 「天然水超軽量化ボトルの垂直立ち上げ」 小笠原直也 「ダイエット BOX による胴膨れ量削減の取り組み」 坂口啓史 「排 水処理の MBR(Membrane Bio Reactor)導入 事例」 小林真澄 「飲料を飲んだ時に鼻から出る香気成分の分析」 中原一晃 ○昼食(11:40~13:10) ○総会,事業報告,表彰授与他(13:10~13:30) 《特別講演》(13:30~15:30) 「消費者はどのようにしておいしさを感じているの か?(仮題)」 坂井信之 「生物多様性条約及び微生物の保管・管理方等につ いて(仮題)」 鶴海泰久 《研究発表》(15:45~17:15)全6研究 6社発表 ○懇親会(17:30~19:30)喜山倶楽部「平安」 ☆理事会(11:50~13:00)喜山倶楽部「芙蓉」 2013 VOL. 54 NO. 9 ◆ 第6回 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 煮 干 し たきぐち・あきひで 東京水産大学修士課 程修了。現在,千葉 県水産総合研究セン ター流通加工研究室 室長。 滝 口 明 秀 博士 つもあるが,明治以降普及した関東以北ではほと ◆ はじめに ◆ んどが「煮干し」だけである。大正以降,関東に 煮干しは,主に小型の魚類を煮熟後に乾燥した もので,原料の魚種には,カタクチイワシ,マイ ワシ,ウルメイワシ,マアジ,ムロアジ,マルア ジ,チダイ,トビウオ,コウナゴ,エソ,カマス, サンマなど多くが使用されている(写真1) 。煮 干しに使用されていることがあまり知られていな い魚種もあるが,独特のダシを作り出すために, それぞれに需要がある。しかし,生産量の多い煮 干しは,イワシ類を原料としたもので,中でもカ タクチイワシを用いたものが最も多く,本稿では カタクチイワシの煮干しについて述べる。 ◆1.煮干しの歴史 ◆ 煮干しが,ダシ取り材料として調理に使用され 始めたのは,江戸時代からと推測される。当時, 煮干しの生産および消費は,西日本に偏ってお り「いりぼし」,「いりざこ」などと呼ばれていた。 明治時代になっても煮干しの生産量は西日本で多 く,東日本では少なかった。当時の西日本は,ダ シ取りとして煮干しの他,かつお節や昆布が東日 写真1 魚種の異なる煮干し 本より多く使用されており,ダシ文化が進んでい たと考えられる。現在の煮干しの呼び方も,歴史 上からマイワシ,ウルメイワシ,カタクチイワシ, マアジ,ムロアジ,マルアジ,サンマ のある西日本では「いりこ」「じゃこ」などいく (カラー写真を HP に掲載 C057) 食品と容器 536 2013 VOL. 54 NO. 9 ◆ 煮干し おいても煮干しは大いに使用されてきたが,近年, 熟時などに破裂する。痩せた魚が煮干し原料に適 食生活の変化により,消費量は全国的に減少して するのは,脂質含量の少ない煮干しは,脂質酸化 いる(第1図)。 による品質低下が起こりにくいためで,脂質含量 の多いものほど酸化に由来する品質低下を起こし ◆ 2.煮干しの品質 ◆ やすい。 煮干しの大まかな製造方法は,製造当日漁獲さ ◆ 3.原料 ◆ すだれ れたカタクチイワシを工場に搬入し,干し簾に載 せて煮熟した後,水分が15%程度まで乾燥して仕 カタクチイワシは,日本全国で漁獲されるが, 上げる。煮干しダシの最も重要な成分はイノシン 煮干しの原料に適した脂質含量の少ないものは西 酸で,これに遊離アミノ酸などのうま味成分が 日本で多く漁獲される。このため,煮干しは,太 加わり特有の風味を形成している。イノシン酸 平洋側では関東以西で主に生産されている。煮干 は,酵素作用によって分解され減少するため,イ しの生産量は,長崎県,千葉県で多いが,長崎県 ノシン酸濃度の高い煮干しを作るには,カタクチ では漁獲されたカタクチイワシの大部分が煮干し イワシの酵素が失活する煮熟工程までの鮮度保持 に加工されるが,千葉県では漁獲の3分の1程度 が重要である。カタクチイワシの脂質は,高度不 が煮干しに加工され,その他は脂質含量が多く煮 飽和脂肪酸を多く含んでおり,煮干しの製造およ 干しに適さない。一般に魚類の脂質含量は,産卵 び貯蔵中には酸化を起こし,不快な臭気や味を生 期に少なくなることが多く,マイワシなどのよう 成し,品質低下を招く。このため,製造工程およ に産卵期が一時期に集中しているものは,季節変 び貯蔵中の脂質酸化防止は,煮干しの品質保持に 動に一定の傾向がある。一方,カタクチイワシ 重要な課題である。このように,品質の良い煮干 は,沿岸に生息し年に何度か産卵するものや,沖 しを作るためには,原料の取り扱い,製造工程の 合を回遊し春や秋に産卵するものがある。このた 管理,製品の貯蔵を適正に行うことが求められる。 め,カタクチイワシの脂質含量は,産卵による変 また,煮干しの商品価値は,外観で判定されるこ 動はあるものの季節による変化の傾向は明瞭でな とが多く,形が整っており,痩せているものの評 く,同時期に漁獲されたものでも魚群によって脂 価が高い。煮干しの形が壊れる原因の一つに,鮮 質含量の異なることがある。このようなことから, 度低下した原料の使用による腹部の破裂がある 煮干し加工業者は,水揚げされたカタクチイワシ (写真2)。カタクチイワシは,内臓を覆う腹部の の脂質含量に常に注意を払っており,脂質含量は 肉が薄いため,内臓酵素などにより肉が溶け,煮 入札価格(カタクチイワシの価格)に大きく影響 する。なお,業者の水揚げ地におけるカタクチイ 50,000 ワシの脂質含量の判定は,外観での太り具合の他, 40,000 30,000 20,000 10,000 0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年 写真2 原料の鮮度が悪く腹部の壊れた煮干し (カラー写真を HP に掲載 C058) 第1図 煮干しの消費量 食品と容器 537 2013 VOL. 54 NO. 9 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 乾燥工程以後のイノシン酸は非常に安定で,煮 表皮を除き皮下脂肪ののり具合や内臓付着脂肪を 干しとして長期間室温などで貯蔵してもほとんど 目視で観察して行われる。 変化しない。 ◆ 4.原料の鮮度保持 ◆ ◆ 5.脂質酸化 ◆ イノシン酸は,アデノシン三リン酸(ATP) から酵素の関わる分解によって生成され筋肉など カタクチイワシの脂質は,エイコサペンタエン に蓄積する。カタクチイワシのイノシン酸は,漁 酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)など 獲直後には少ないが,多くの場合,水揚げの頃に の不飽和度の高い脂肪酸を多く含んでいる。この は最も多くなり,鮮度の低下と共に減少する。鮮 ような脂質は,健康性機能を有するため,カタク 度低下によって減少するのは,イノシン酸分解酵 チイワシなどの水産魚介類の栄養評価を高めてい 素によるもので,煮干しでは,煮熟によって酵素 る。一方,不飽和度の高い脂肪酸を多く含む脂質 を不活性化すると減少は止まる。このことから, は酸化しやすい。特に,煮干しは空気中で長時間 イノシン酸含量の多い煮干しを作るためには,煮 乾燥され,室温などに長期間貯蔵されるため,脂 熟工程までの原料を高鮮度に保つことが重要であ 質は酸化を起こしやすい環境にある。乾燥工程お る。カタクチイワシの鮮度保持には,漁獲直後か よび貯蔵中の脂質酸化は,乾燥方法や貯蔵方法に ら砕氷等を用い低温で貯蔵し,漁獲から煮熟工程 よって異なるが,一般的な煮干しの脂質酸化を高 までを短時間で行う必要がある。 度不飽和脂肪酸の減少から判定すると,乾燥工程 煮干しのイノシン酸量には,煮熟工程における および貯蔵の初期に進行する(第2図)。煮干し 水中への溶出が大きく影響する。煮熟時間は,原 は,脂質酸化により過酸化物の生成や高度不飽和 料の大きさによって異なるが,魚体中心部まで熱 脂肪酸の減少を起こし栄養面の品質が低下し,油 が伝わりタンパク質が変性する5分から10分程度 焼け,酸敗臭,異味を発生し,官能面での品質低 で終了するのが一般的である。このような煮熟工 下を招く。このため,外観で褐色化(油焼け)し 程で失われるイノシン酸量は,20%前後で鮮度低 た煮干しは,品質が悪いと判定され,安い価格で 下により肉質の弱った魚体からは溶出量が多くな 取り引される。市場における煮干しの脂質酸化度 る。 合いの判定は,油焼けによる褐色度の強さで行わ 高度不飽和脂肪酸残存率(%) 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 0 24 48 72 乾燥,時間 れている。 5-1.脂質含量による酸化 煮干しは,脂質含量の少ない ものほど商品価値が高い傾向が あ り,JAS 規 格 で も 脂 質 含 量 8%以下のものが格付けの対象 となっている。脂質含量の異な る煮干しの酸化を高度不飽和脂 0 10 20 30 40 25℃貯蔵,日 第2図 煮干しの乾燥工程および貯蔵中の 高度不飽和脂肪酸の残存率の変化 高度不飽和脂肪酸残存率 ={( t C 20 : 5+t C 22 : 6)/t C 16 : 0 } ・100/{(0 C 20 : 5+0 C 22 : 6)/0 C16 : 0 } 食品と容器 538 50 肪酸の減少量(第3図)から判 定すると,乾燥工程ではいずれ の脂質含量のものも酸化を起こ すが,室温貯蔵では脂質含量の 少ないものは高度不飽和脂肪酸 を高い割合で残しながら,酸化 2013 VOL. 54 NO. 9 ◆ 煮干し に対して安定である。これに対し,脂質含量の多 た煮干しの過酸化物価(PV)の変化は(第4図), い煮干しでは,貯蔵期間を通して酸化し,貯蔵期 室温では乾燥工程で上昇した値が貯蔵中に減少す 間が長くなると大部分の高度不飽和脂肪酸が失わ るのに対し,-20℃に貯蔵したものでは,貯蔵期 れる。このように,煮干しの脂質酸化は脂質含量 間を通して徐々に上昇し,-30℃貯蔵ではわずか によって異なり,脂質含量の多いものは,製造お に上昇した。PV の変化から,煮干しの貯蔵中の よび貯蔵中に脂質酸化を起こし,これに由来する 脂質酸化を判断すると,室温貯蔵では,前述の結 品質劣化を起こすため,良質な煮干しを製造する 果と同様に貯蔵の初期に脂質酸化するが貯蔵期間 ためには脂質含量の少ない原料のカタクチイワシ が長くなると脂質は酸化に対して安定化した。冷 が必要である。 凍貯蔵の煮干しは,-30℃以下では脂質酸化はよ 5-2.室温貯蔵で生成される抗酸化物質 く防止されるが,-20℃程度では貯蔵中に酸化が 室温貯蔵された脂質含量の少ない煮干しは,貯 徐々に進行した。煮干しの油焼けは,室温では進 蔵当初に脂質酸化を起こすが,油焼けの進行と共 行したが,-20℃以下の貯蔵ではほとんど起こら 高度不飽和脂肪酸残存率( %) に脂質は酸化に対して安定化する。煮干し粉末に ついて,油焼けの進行に伴う遊離アミノ酸の変化 を調べたところ,ヒスチジンなどいくつかのアミ ノ酸が減少していた。脂質酸化によってカルボニ ルが生成されることが知られており,遊離アミノ 酸の減少はこのカルボニルとのメイラード反応に よるもので,油焼けの大きな要因になっていると 推測される。メイラード反応生成物には,抗酸化 作用のあることが知られており,室温貯蔵の煮干 100 80 60 40 少脂品 20 多脂品 0 しにおける油焼けの進行が脂質の酸化に対して安 0 定化の要因の一つと考えられる。魚類脂質の酸化 10 20 30 25℃貯蔵,日 生成物として知られているいくつかのアルデヒド とヒスチジンの反応生成物の脂質酸化防止効果を 第3図 25℃に貯蔵した煮干しの高度不飽和 脂肪酸の残存率の変化 調べたところ,いずれの反応生成物にも強い抗酸 ※高度不飽和脂肪酸残存率の算出方法は第2図と同じ。 1) 化作用が認められた 。 500 5-3.貯蔵温度による酸化 煮干しは,長期間の貯蔵に際し,脂質 400 ことが多い。冷凍貯蔵により脂肪含量の ある程度多い煮干しも変色が抑制される ため,貯蔵中の脂質酸化は防止されてい ると判断されることがある。しかし,冷 凍貯蔵されていた煮干しは,解凍後に急 激な変色を生じることがある。このよう な現象を究明するため,煮干しをいくつ PV,meq/kg 酸化を防止するため冷凍して貯蔵される 300 30℃ 200 20℃ 0℃ -20℃ 100 -30℃ 0 0 かの温度に貯蔵して,脂質酸化と油焼け の進行を調べた。異なる温度に貯蔵し 食品と容器 50 100 150 200 貯蔵,日 第4図 異なる温度に貯蔵した煮干しの過酸化物価(PV) の変化 539 2013 VOL. 54 NO. 9 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 煮干しを酸素透過性の低い資材 で密封すると,包装内の酸素を 自ら消費し,脂質酸化が抑制さ れる。また,煮干し粉末を脱酸 素剤と共に密封すると,高度不 飽和脂肪酸の減少は止まり,包 装内の酸素の除去およびフィル ムによる酸素の遮断が煮干し の脂質酸化防止に有効である2)。 しかし,脂質酸化が進み過酸化 物質などの酸化生成物を蓄積し た時点で包装した煮干し粉末は, 包装しないものに比べても変色 写真3 異なる温度で120日間貯蔵した煮干しの外観 A:30℃,B:20℃,C:0℃,D:-20℃,E:-30℃ (カラー写真を HP に掲載 C059) の進行することがある3)。この 原因として,脂質酸化が進行し, 変色要因の蓄積した状態で酸素 を除去しても,メイラード反応 なかった(写真3)。これらのことから,-30℃ は酸素の有無に関係なく進行し,さらに,メイ 以下の低温貯蔵では,煮干し脂質の酸化および油 ラード反応によって生成した褐色物質は,酸素の 焼けの両方がよく抑制されるが,-20℃貯蔵では 影響を受けずに反応が進行することで褐色度の強 油焼けを伴わない脂質酸化の進行することが分 い色素が生成されたことが考えられる。煮干しは, かった。室温貯蔵の煮干しにおいて油焼け原因物 製造時の乾燥工程で脂質酸化を起こすが,脂質含 質に抗酸化性のあることを推測しており,-20℃ 量などによって酸化の度合いが異なり,褐変要因 貯蔵の煮干しではこのような抗酸化物質の生成さ の蓄積量も異なる。このため,包装により品質保 れないことが,貯蔵期間を通して酸化の起こる大 持を図るには,対象となる煮干しの脂質酸化状態 きな原因と考えられる。これらの結果から,解凍 を見極めて行う必要がある。 後に急激な油焼けを起こす煮干しは,冷凍貯蔵中 以上のように,品質の良い煮干しを作るために の脂質酸化によって過酸化物を蓄積していたもの は,煮干しに適した脂質含量の少ない原料を用い, であることが示唆された。 鮮度の良い状態で加工し,製造後は,対象となる 5-4.包装による酸化防止 煮干しの脂質含量を見極め,適切な貯蔵方法を選 煮干しは,包装されて販売されるものが多い。 択して脂質酸化を防止することが重要である。 参 考 文 献 1)滝口明秀,山口雅子,煮干しいわしの油焼け時に生成 3)Akihide Takiguchi, The Effect of Lipid Oxidation in される褐色物質の脂質酸化防止作用,千葉県水産試験 Frozen Pulverized Niboshi on Color Browning and 場研究報告,第51号,75−59(1993). Formation of Free Amino Acid, Food Sci. Technol. Res., 5, 204−209(1999). 2)滝口明秀,煮干しの酸化と褐変-Ⅱ,千葉県水産試験 場研究報告,第43号,71−74(1985). 食品と容器 540 2013 VOL. 54 NO. 9 業 T 界 O ト P ピ I ッ C ク S ス 缶コーヒー「秋の陣」が開幕 は,今年も「エメラルドマウンテン」「ヨーロ 缶コーヒー市場が「秋の陣」に向けて動きだし する模様だが,5月発売の新ブランド「ルアー た。主要各社は8月後半から第一弾の新製品を発 ナ」の動向も注目される。サントリー食品イン 売し,9月からテレビ CM や流通,消費者キャ ターナショナルの「ボス」は,華やかな香りが ンペーンなど 販促活動を開始する。 特長の「ボスグランアロマ-香るボス-」を新 ピアン」の各シリーズを軸とする新戦略を展開 発売。CM キャラクターに SMAP を起用するな 今年はコンビニのカウンターコーヒーに注目が 集まり,外食店のコーヒーも急成長。また,家 ど今年も目が離せない。アサヒ飲料の「ワンダ」 庭内ではコーヒーマシンやスティックコーヒー は,「モーニングショット」「金の微糖」を中心と といった一杯用 のパーソナルタイプが拡大する した従来のラインアップに加え,積極的な商品提 など,コーヒー市場全体では今まで以上に盛り 案,広告・販促活動を展開。新ブランド「大人ワ 上がっている。シアトル系カフェの普及により, ンダ」から登場した「ネオ・エスプレッソ」を発 サードプレイスと呼ばれる自宅 でも職場でもな 売するなど品揃え強化が目立つ。 い場所でのカフェ利用が幅広い世代に定着。その キリンビバレッジの「ファイア」は,8月末か 結果,カフェで飲むコーヒーの飲用率は,缶コー らペット入り「カフェデリ」シリーズを新発売 ヒーの飲用率を抜いた。 し,フレーバーラテのペットボトル飲料化を促進 こうした中で缶コーヒーをはじめとした RTD することで需要を喚起。ダイドードリンコは,9 (レディトゥードリンク)コーヒー市場は,今一 月から「M コーヒー」をダイドーブレンドブラ つ話題性に欠け,今秋需はこの逆風をどう跳ね返 ンドの「ダイドーブレンド M コーヒー」として すかが焦点となっている。缶コーヒーの中でも リニューアル。「デミタスコーヒー」「デミタス微 SOT 缶が苦戦する一方で,ボトル缶が安定成長 糖」「デミタス BLACK」を,ダイドーブレンド を続けるなど容器変化も激しい。 におけるプレミアムシリーズとして再定義し,8 健康志向を背景に「無糖」増加が顕著 月から「ダイドーブレンドデミタス」シリーズと カテゴリー別では,「レギュラータイプ」が4 してリニューアルした。 UCC 上 島 珈 琲 は, 砂 糖 ゼ ロ・ ミ ル ク 入 り リ 割強と依然最大シェアを堅持し,これを「微糖」 が3割強で追いかけ,残りを「無糖」と「カフェ キャップ缶コーヒー「砂糖ゼロリキャップ缶」を オレ」が分け合っているが,ここにきて健康志向 9月末からリニューアル発売。9月初旬から「ブ を背景に「無糖」が増加し,代わって「微糖」が ラック無糖」ブランドのホット専用リキャップ缶 やや後退するなど嗜好変化が起きている。 コーヒー「プラチナアロマ HOT LIMITED VER. リキャップ缶」も全国発売する。 既に数社が第一弾の新製品を発売,9月から 動きが加速する。ブランド別ではトップを走る 伊藤園は,原料や焙煎,抽出方法にこだわっ 「ジョージア」を筆頭に,「ボス」「ワンダ」「ファ た「タリ-ズコーヒー」ブランドのボトル缶コー イア」「ダイドー」「ネスカフェ」「UCC」「ポッ ヒーにより差別化を図ってくるとみられ,ポッカ カ」「タリーズ」「ルーツ」など有力ブランドがこ サッポロフード&ビバレッジは,広口ボトル缶の 「アロマックス」で新たな展開が予想される。 ぞって新戦略を打ち出し,今年も上位ブランドに よるパワーゲームが展開されることは間違いない。 最大の焦点は,今春から特定保健用食品の「ヘ 主要ブランドの新戦略第一弾出揃う ルシアコーヒー」を発売した花王の展開で,秋需 主要メーカーの新戦略第一弾は次のようになっ 向けにどう対応してくるかが注目される。 (業界誌記者 井上拓郎) ている。コカ ・ コーラシステムの「ジョージア」 食品と容器 541 2013 VOL. 54 NO. 9 ● 海外技術情報● 健康志向の食品開発 ( Formulating for Health ) Prepared Foods(USA)p. 53( ’ 13・4 )文献 № 5868 グルテンに敏感な人向けの古代穀物や抗酸化物 ルテン無し,美味なこと,長期保存可能,および 質が豊富なベリー類,満腹効果のある食品素材, 機能性だ,と Williams 氏は述べている。同氏は食 等々,健康増進や体調改善に良いとされる食品素 物繊維の効用について述べた中で,繊維を含んで 材は消費者を強く引き付ける。これからは健康を いて消化されず低カロリーのレジスタントスター 増進する食品素材が注目される。 チの使用例として,パンやクッキー,スナック, グルテンフリーの栄養強化素材 パスタ,栄養強化バー,スムージー,ヨーグルト, Datamonitor 社によれば,世界のグルテンフ ソース,等を挙げた。レジスタントスターチはプ リー食品市場は今後5年間で年間12億ドル以上の レバイオティクス効果を有するものもあり,繊維 成長が見込まれる。この市場は既に31億ドル規模 強化,低カロリー化,消化促進,血糖値改善など に達しており,全米レストラン協会(NRA)は 健康を増進する数々の利点がある,と言う。機能 “グルテンフリー”を2011年料理のトレンドトッ 性についても,水分結合力が低く,加工安定性が プ10の1つに選んだ。グルテン不耐性の消費者が 高く,テクスチャー(パリパリ感)改善効果があ 全世界で1,500万人に上り,もはや無視できない り,味にくせがなく口当たりが滑らかで,素材の 存在になっている。 日持ちをよくする効果がある。ジャガイモやタピ オカ由来のレジスタントスターチが非アレルギー シカゴで行われた Prepared Foods 誌の「グル テンフリーの栄養強化素材」と題する R&D 応用 性であることから消費者に好まれている,と言う。 セミナーで,Penford Food Ingredients 社の応用 また,サトウキビ繊維はくせのない味で食物繊維 化学上級研究員 J. Williams 氏はグルテンフリー を含んでいる上,テクスチャーを改善し,低カロ 製品の需要動向に関する講演を行った。グルテン リー,非アレルギー性で,ソラマメタンパクは優 の残存量が20 ppm 以下,テクスチャー/品質が れたタンパク質源であり,非遺伝子組み換え,非 グルテン使用時と同等かそれ以上,アレルゲンを アレルギー性で,使いやすい。チーア種子につい 一切使わない,そしてグルテン使用品と同様に容 ては,機能面では加工安定性,テクスチャー向上, 易に入手できる,といった点が“第一世代”の 味にくせがなく口当たりが滑らか,その保水力は, グルテン代替食品に対する市場のニーズであり, 最終製品でのしっとりしたテクスチャーを確保し, “第二世代”となる“グルテンフリー栄養食”の シェルフライフを向上させる。チーア種子の健康 市場ニーズは,栄養バランス,アレルギー反応を 効能としては,繊維補給,タンパク源となり,心 起こさないこと,改質を最小限に抑えること,グ 臓・消化器に良い影響を与える,と指摘した。 肝臓を守り体重管理に効果のある食 グルテンフリー穀粒粉およびホールグレイン アマランサ 高タンパク, 繊 維, カルシウム, ビタミン・ミネラル類 蕎麦 タンパク質,繊維,ビタミン,ミネラル類 チーア タンパク質,繊維,ω 3,ビタミン,ミネラル類 キビ・粟 繊維,ビタミン,ミネラル類 キヌア 繊 維,タンパク質,カルシウム,ビタミン,ミネラル類 テフ 繊維,タンパク質 そ ば 肥満は2型糖尿病,心疾患,高血 圧,脳梗塞のような慢性疾患ならびに ある種のがんの主な発症要因であり, その他数々の健康障害に関係してい る。PL Thomas 社の全米事業開拓マ ネジャー R. Jonas 氏は“肝臓の健康 出典:Penford Food Ingredients 食品と容器 品素材 542 2013 VOL. 54 NO. 9 と体重管理”と題する自身のプレゼンテーション した。体に良いとか栄養価が高いというだけでな で,肥満の原因は高エネルギー食物の摂取増加と く精神面,情緒面の健康志向素材が登場してきて 運動不足にある,と述べている。ある種の天然素 いる。消化器の健康,免疫サポート,心臓の健康, 材の組み合わせが肝臓に良い効果をもたらす,と 体重管理,体の内側からの美容,エネルギー/ス 同氏は言う。褐藻とザクロ種子油の組み合わせの ポーツ栄養,脳の健康などの効果が求められてい 中の活性化合物は,まず肥満者の肝臓脂肪を減少 るが,果実に含まれる抗酸化物質やその他の成分 させ,その6週間後からは体脂肪を減少させるこ はこれらすべてに効果がある。スーパーフルーツ とがこれまでの研究で明らかになっている。褐藻 は消費者の38%が摂取量を増やしたいとしている には活性化合物であるフコキサンチン,ビオラキ ので,新たな食品開発における有望な素材だ,と サンチン,ネオキサンチンおよび葉緑素が含まれ, Swedberg 氏は断言する。現在健康増進に利用さ ザクロ種子油にはプニカ酸,エラグ酸,その他の れている果実には,ブルーベリー,クランベリー, 脂肪酸やステロールが豊富に含まれている。こ ラズベリー,ブラックベリー,ザクロ,などがあ の独特な2つの組み合わせに関するヒト試験で る。“天然”であることが主流になってきて今や は,耐容性が良好,かつ,安全性の懸念も皆無で, すべての価格帯の商品が“天然”を売り物にして 600㎎/日を摂取した被験者は,試験完了までに おり,誰にでも手に入る,と言う。果実素材の変 ブラセボグループに比べて約5㎏以上の体重減少 わった利用例としては,エネルギーの持続と心臓 効果を示した。体重減少の約1週間前には肝臓脂 に良い効果のあるキヌア/グラノーラバー,スト 肪の著しい減少が認められた。また,肝臓酵素や レスを解消する果実ベースのビネグレットやマ 中性脂肪の値および血圧の明らかな改善も見られ リネ,Tree Top のさまざまな果実素材とナッツ, た。その他,体重減少効果が見込めるものとして, プレッツェル,Chex Mix を取り混ぜたスナック 気分を高め肝臓の働きをよくするとともに,甘い ミックス,などがある。また,機能性果実素材に スナック菓子に対する渇望を抑える効果のあるサ は,水分活性をコントロールする働きがあり,ス フラン抽出物が紹介された。今後は健康を増進し ターチとして用いる果実100%の低水分フルーツ 消費者により受け入れられやすい素材に焦点が絞 フレークパウダーがあり,低水分アップルパウ られることになる。 ダーは,100%天然材料で72%の繊維を含み,満 果実の健康増進効果 腹感を高めて血中コレステロールを減少させる。 2012年 の 世 界 的 な トレンディーな果実 トレンドの1つは“天 然”で“健康によく, 特徴 効用 原産地/栽培地域 活用度 元気になる”食品素 ローゼル 少し花の香り,土臭さ ビタミンC,血圧降下 南アジア,東南アジア 中 材を求める動きが主 レモングラス レモンの香り,酸味 咳止め,鼻詰まり改善 東南アジア 低 流になってきたこと マンゴー 果肉質,甘味 ビタミンC,葉酸 中米,南米,カリブ 南アジア,東南アジア 高 パパイア 弱い甘味,厚い果肉 ビタミンAおよびC 熱帯地域全域 中 カリウム,繊維 ビタミンAおよびC 中米,南米,カリブ 南アジア,東南アジア 高 東南アジア,中米 カリブ,南米 高 だ。Tree Top 社 の J. Curry-Swedberg 氏は Prepared Foods 誌 の 「果実の健康増進効 果」と題する R&D プ パッションフルーツ 甘味 パイナップル 甘味 ビタミンC,マンガン 濃厚なはっきりした味 レゼンテーションで, ザクロ ビタミンC,抗酸化物質 中東 高 消費者のキートレン ランブータン マンガン,ニコチン酸 東南アジア 中 ドとなっている機能 スターフルーツ ビタミンC 中 性素材について報告 食品と容器 東南アジア,中米,カリブ 出典:Euromonitor 543 2013 VOL. 54 NO. 9 製パン用キャッサバ粉 ア,テフ,米,トウモロコシ,粟,ソルガムなど American Key Food Products 社 の テ ク ニ カ がある。従来,風味の面からは精製した白色粉が ルセールスディレクター C. Foss 氏は Prepared 好まれてきたが,今ではホールグレインの天然フ Foods 誌 の R&D プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン で, 特 許 レーバーとテクスチャーを生かすことに益々製造 出願中の技術にもとづくグルテンフリー・製パ 業者の関心が向けられるようになってきた,と言 ン の た め に 開 発 さ れ た キ ャ ッ サ バ 粉 Premium う。ホールグレインは水溶性・非水溶性繊維,タ Cassava Flour を 紹 介 し た。Premium Cassava ンパク質,各種ビタミンやミネラルが含まれてお Flour は乾燥技術によりゼラチン化の度合いを り,繊維にはがんや心臓疾患のリスクを軽減する 調整してあり,7%の繊維分を含んでいる。他 効果があるといわれている。また,大麦やカラス のキャッサバ粉やタピオカスターチと同様に, 麦に含まれるβグルカンにはコレステロールを低 キャッサバ由来のスターチを80%以上含んでいる。 下させる効果があることが現在進められている研 Foss 氏によれば,これをグルテンフリースター 究で示されている。βグルカンは穀類の表層や チとして使えば,スターチが部分的にゼラチン化 胚乳の中に存在する天然の多糖類だ。小麦,大 することで水分吸着が良くなり,シェルフライフ 麦,カラス麦を混合使用して1食当たり0.75g の の長いテクスチャーの優れた製品ができる,と言 βグルカン摂取の目標を達成することが可能だ。 う。また,ケーキやパンなどの製品に用いれば, 精白パンをホールグレイン100%にすると1g以 形がよくふっくらしたものができ,適度の水分を 下だった1食当たり繊維摂取量が3gに増加す 保持し品質の劣化を遅らせる効果もある。冷凍/ る。Klimczak 氏によれば,ライ麦の繊維はその 解凍ができるスポンジケーキを作ることもできる。 他の繊維に比べ満腹感をより高めると言う。ホー パンケーキやワッフルも小麦粉で作ったものと同 ルグレインを使用した新食品開発の余地は大きい。 様の見栄えのものができるし,クッキーでは劣化 ホールグレインを使って精白小麦粉と同じような を遅れさせたり,マイルドなナッツの風味が出せ 味や機能を持った食品を作ることもできるし,独 る。米やジャガイモを使ったグルテンフリーの料 特の滋養効果,味,テクスチャーを強調した画期 理も簡単にできるし,スープのとろみ付け,グレ 的な食品を開発することも可能だ。 イビーソースの小麦粉の代用,あるいは鶏肉や魚 健康に良い菓子類のコーティング にまぶしてもよい。展伸性に優れており,スナッ Clasen Quality Coatings 社の R&D マネジャー クのポテトフレークの代わりにも使える。糖分が R. Tietz 氏は「健康に良い菓子類のコーティン 少なく,アクリルアミドの生成も少ない。 グ」と題するプレゼンテーションにおいて,消費 健康に良いホールグレイン(全粒粉)を使った 者はぜいたく感があって健康に良い品物を求めて 食品 おり,天然の香料,着色料,その他の天然素材, Bay State Milling 社の製品応用技術専門家 V. 持続可能性,利便性,エネルギー補給,満腹感が Klimczak 氏 が「 健 康 に 良 い ホ ー ル グ レ イ ン を 重要なのだ,と述べている。菓子類のコーティン 使った食品」と題するセミナーのプレゼンテー グはチョコレートに似た性質を持つオイルベース ションで指摘したのは,“ホールグレイン使用” の製品だが,フレーバーを付けたり,着色した とか“ホールグレイン100%”あるいはまた“マ り,栄養分を強化したりできる。焼き菓子,シリ ルチグレイン”と表示した新たな製品が増えてお アルバー,アイスクリームに使えばおいしいチョ り,ホールグレインスタンプが広く普及してきた コレートの風味と口当たりを持たせられるし,ぜ ことだ。ホールグレインを使った食品には,グル いたく感も出せる。使用する油脂は種々あり,目 テンフリー栄養バー,衣用生地やパン,健康を気 的に応じて,例えばラウリン酸の油脂はパキパキ にせず食べられるスイーツなどがある。グルテン 感,非ラウリン酸の油脂は若干柔らかで柔軟性の フリーの穀物には,アマランサス,蕎麦,キヌ あるコーティングに使われる。硬化油は飽和脂肪 食品と容器 544 2013 VOL. 54 NO. 9 酸を増やし固いテクスチャーに,エステル交換油 嵩を増やすために繊維添加物を加えてもよい,と は部分硬化油が使えない特殊な用途にブレンドし Tietz 氏は言う。タンパク質や繊維の強化に加え, て利用できる。鍵となる特質は融点だが,脂肪酸 ビタミン,ミネラル,ω3脂肪酸,プロバイオ の組成および含まれるトリグリセリドにより幅広 ティクスも可能性を秘めている。 (桜田三郎) い融点範囲の中から選択できる。栄養強化および ● 海外技術情報 ● フードトレンド・トップ 10(1) ( TOP TEN FOOD TRENDS) Food Technology(USA)p. 25( ’ 13・4 )文献 № 5865 孤食,ミレニアル世代(1980年代,1990年代生 第1表 包装商品の売り上げ増加トップ10 (2012年/ 2011年と比較した増減) まれの世代)の家庭での食事,健康の新しいとら 分 類 え方,食品情報の透明性は,食品業界に新たなビ ジネスチャンスをもたらす。 消費者の73%が,自らの経済状況に変化が無い か,悪化するであろうと推測しており,さらに約 1/4は毎週の食料品にも困窮していることか ら,消費者の保守的な食品購買行動は継続するで あろう。自宅で調理した消費者は,昨年は2011年 より増加し72%であった。3食のうち1食は,よ りチャレンジングで果物/野菜を多く含むような 調理に変更した。週平均で5回調理し,一晩は外 食,持帰り,宅配であった。5回の家庭調理のう 増減(%) エナジードリンク 15.5 体重コントロール用飲料・粉末 12.7 アルコール飲料 12.6 茶・コーヒー飲料 6.3 クラッカー 5.7 芳香剤・消臭剤 5.6 コーヒー 5.5 ビタミン 5.4 ワイン 5.2 スナックバー 4.8 包装食品全体 −0.1 ち,肉/鶏肉は,2012年の4.1回から3.6回(1.4回 は肉無し)へと,過去8年間では初めて減少し く,レストラン利用回数は,団塊世代や高齢者は た。昨年のベストセラー食品/飲料の多くは,持 6%増であり,ミレニアル世代は6%減であった。 帰り,ライフスタイル,家庭での食事・娯楽に適 大人の19.5%(4,400万人)は,「真の食通」で 応したものであった。エナジードリンクは,死亡 あり,新製品,高級プレゼンテーションに興味が 者の発生とカフェイン含有量に懸念がありなが あり,輸入品,スパイシー,グルメ,ナチュラル らも,売上高は15.5%増加し,急成長した。これ /オーガニック,新鮮食品に高い関心があった。 に次いで,体重コントロール液体/粉末は12.7% 66%は,昨年,特産食品を購入しており,2011年 増,スピリッツ/酒は12.6%増,ボトル入り飲料 よりも7%増加した。特産品の購入者は,25~34 水は4.7%増,ビールは4.5%増,ナチュラルチー 歳が73%と最も高く,次いで55~64歳の69%で ズは2.8%増であったが,塩味スナック,炭酸飲料, あった。特産食品として購入したものは,チョコ 焼きたてパン,牛乳,チョコレート菓子は減少し レート,油脂,チーズ,ヨーグルト,コーヒーで た。(第1表) あった。 1.味覚の変化 2012年のレストラン利用者は,景気後退以前の 水準にまで回復していないが,のべ610億人以上 グルメブームはアメリカの味覚に変化をもたら であった。一人当たりの支出は55〜64歳が最も多 している。夕食の10%,昼食の7%,朝食の5%, 食品と容器 545 2013 VOL. 54 NO. 9 間食の5%が,普段よりも洗練された料理であっ と考えており,小売店では80%,レストランでは た。レストランやシェフが推薦した新食品/飲料 58%が「新鮮」関連の表示に注意をはらった。成 は,年間売上高が17%上昇した。自宅でレストラ 人の74%がホームメイドやハウスメイドの食品/ ンスタイルの食事を模倣するため,消費者の10% 飲料が健康であると信じている。72%は当日調理 は,より高価な部位の肉を購入した。 食品は健康に良いとみなし,61%は「本物」とい 2009年以来,消費者の好みが劇的に変化した。 う表示は健康であると信じ,58%は「原料から調 最も好まれたのは依然としてグリル90%であり, 製」,60%は「決して凍結していない」を真実で 2番目がフルーティー(2009年の45%から73%に あると信じた。 消費者の43%は「プレミアム」,38%は「職人」, 増加)であり,スイートは72%,スパイシーは 65%であった。消費者の2/3は,ピリッとした 37%は「本物」,33%は「季節」と表示した商品 食感(tangy)を好み,スモーキー 54%,塩辛い は健康であるととらえた。9割の消費者が,「野 52%,ハーブ51%,サワー 31%,苦い11%と続 菜/果物の1食分の量」,「100%全粒小麦」, 「高 くが,これらは3年前と比較して倍増した。 食物繊維」は,健康メッセージであるととらえた。 消費者の77%は高タンパク質が健康メッセージで 消費者は,調理方法にも高い関心があった。ア あるとみなしている。 メリカ料理連盟は2013年流行の調製技術として, 発酵,酢漬け,真空調理,液体窒素凍結,燻製, 「高栄養」「健康」「心の健康」など健康に良い 蒸し焼き,油炒め,グリルをあげている。過去5 という意味合いのほうが「軽い」「潔白」よりも 年間で,最も急成長しているスパイスは海塩であ 魅力的となる傾向がある。ナチュラルやオーガ り,次いでフェンネル,クミン,カイエン,タイ ニック表示では,消費者は,「ナチュラル」とい ム,コリアンダー,黒胡椒,セージであった。特 う包括的な言葉よりもむしろ「防腐剤不使用」 「人工甘味料不使用」「未処理」などの添加物不使 製塩,風味酢,リュウゼツラン,特製オイル(例 用を強調しているものを評価している。 えば,トリュフオイル),熟成肉(例えば,生ハ ム)は人気の食品素材である。調理の82%は肉/ レストラン客の1/4は,表示(例えば「人工 鶏肉のマリネであり,55%が店舗で購入したマリ 甘味料不使用」「ナチュラル」「未処理」)を通し ネソースを使用し,38%は独自に調合した。ソー て商品が「ナチュラル」であるかを確認し,小売 ス,マリネ,調味料で最も好まれたフレーバーは 店では1/2がこうした表示に注意をはらった。 スパイシーであり(53%),消費者の46%は甘い 2012年,消費者の53%が塩/ナトリウム,51% 風味を好み,44%はエスニック,28%は新成分の が砂糖,49%がトランス脂肪,49%がカロリー, 組合わせ,23%は塩味,22%は酸味であった。 47%が飽和脂肪,44%が異性化糖の摂取を制限し 消費者の36%は,外食ではなく自宅に家族や友 た。「農場肥育」, 「牧草肥育」, 「放し飼い」, 「ケー 人を招いた。消費者の1/3はおもてなしの時に ジフリー」は健康に良いと認識されている。消費 はグルメ食品を購入し,29%は持帰りか調理済み 者は,これらの動物はより自然な環境,より自然 食品であった。280億ドル規模の消費者向けケー な餌を与えられ育ったと感じる。消費者の47%が タリングは巨大な未開拓分野である。レストラン 「ローカル」と表示されている食品,37%が持続 においては,この分野の収益は小売の4倍であっ 的調達製品,1/4はフェアトレード食品がより た(190億ドル対40億ドル)。大人の1/3は,毎 健康であるとみなしている。 月,立食用盛り合わせを注文し,その売上高は 3.世代別の調理法 220億ドルに達した。 5年連続でミレニアル世代のレストラン利用が 2.健康の新しいとらえ方 減少していることから,新しい調理法をアピール 消費者の60%は,健康的な食事として「新鮮」 した家庭食製品を開発することが必要である。ミ レニアル世代は調理技術が十分でないことから, を取り上げている。9割が生鮮な食品が健康的だ 食品と容器 546 2013 VOL. 54 NO. 9 調理する必要の無い食事を準備する可能性が高く, 年,大人の44%が孤食であった。孤食は,家庭で 小売惣菜や冷凍ディナーを一番良く利用した。ミ はほぼ2/3,レストランでは8%であった。孤 レニアム世代は,調理方法が多様性に富んでおり 食においては,冷凍よりも新鮮あるいは冷蔵され (55%,全体平均は45%),電子レンジ使用は65歳 た食事を選ぶ傾向にあった。2011年,調理済み冷 以上に次いで2番目であった(58%,全体平均は 蔵メインディッシュは,急成長アイテムの7番目 48%)。ミレニアム世代は,オーブンで焼いたり であった。新鮮/冷蔵調理済みの購入者数は7% 炒める割合が最も高いが,団塊世代はグリルを使 上昇した。子供が成長し同居していない世帯が一 用する割合が高かった。ミレニアム世代は,高齢 番多く,次いで一人暮らしであることから,一家 者よりも,茹でたり,ソテーしたり,蒸したりし 団らんの食が失われつつあることは当然である。 た。生鮮食品から夕食を作ることは,調理者の 成人家族の72%は,家庭食が成人だけであり,子 44%が非常に重要であるとしており,過去2年間 どもが一緒なのは28%であった。 ゆ で6%上昇した。とりわけ,新鮮であることは若 大人の1割は,購入後1時間以内に食べる物 い料理人には特に重要である。18〜34歳の1/4 を購入しており,その半分以上がスーパーマー 以上は,新鮮な肉,魚,または野菜と一緒に使用 ケットであった。購入してすぐ食べるスナックは, するクッキング/煮込みソースを利用した。 2010年の46%から2012年には69%に上昇した。ス ナックの売上高は23%増加し,続いて朝食16%増, 5年前と比較すると,調理時間が20分以下のも のは11%増,スロークッカー調理11%増,ワン ピザ12%増,寿司11%増,ディップ/スプレッド ポット調理10%増,パスタ/キャセロール9%増, 7%増,デザート6%増,サイドディッシュ5% 各国料理7%増,食事サラダ6%増であったが, 増であった。家で何かを食べ,コーヒーショップ フライ30%減,ロースト10%減,屋外グリル7% /ドライブスルーに立寄り,午前中にスナックを 減であった。18 ~ 25歳では,エスニック料理は 食べるという消費行動には,販売業者が十分に対 15%増,調理時間20分以下の料理は18%増であっ 応できていない。1割は学校へ朝食を持参してい た。 る。大人の1割は,自動車の中で朝食を食べてい 買い物客の72%が週に1〜3回鶏を調理し,同 る。2012年,消費者の57%がコンビニエンス・ス じ 頻 度 で65 % が 牛 肉,48 % が 豚 肉,44 % が 魚, トアで調理済みの食品を購入した。2011年には, 24%が七面鳥,10%がラム,11%が大豆を調理し 調理済み食品の販売額は267億ドル(10.6%増) た。半調理済肉は好評で,消費者の42%が少なく であった。コンビニエンスストアの調理済み食品 とも週に一度,加熱するだけで食べられる肉を使 では,ランチは38%,朝食は21%,夕食は15%, 用しており2012年比で4%増であり,39%がすぐ スナックは7~8%であった。2012年,コンビニ に食べられる肉製品を利用しており2010年比で エンスストアに立ち寄った者のほぼ半分が,焼き 6%増であった。加熱して食べるメインディッ たてベーカリー,ピザ,サンドイッチ/ラップ, シュ,コンビネーションディッシュ,暖かい副食, ホットドッグ/ローラーグリルを購入した。昨年, サラダ,付け合わせのパンおよび簡便な食事は, 米人の31%はドラッグストアで調理済みの食品を 2018年まで最も急成長するカテゴリーであると推 購入しており,ドラッグストアの売れ筋トップ10 察されている。 のうちの6つが,食品/飲料であり,うち2点は 4.孤食の増加 冷蔵品であった。 (林 清) <以下10月号に続く> 激増する孤食と,食事・スナック・飲料の多様 性は,食品産業において未開発分野である。2011 食品と容器 547 2013 VOL. 54 NO. 9 ● 海外技術情報 ● 遺伝子組み換え作物の受容に関する諸問題 ( Fear and Loathing Haunt GMOs ) Food Processing(USA)p WF2( ’ 13・4 )文献 № 5869 ここ2~30年でわれわれの生活や仕事,食事は が小規模の資金の少ない開発途上国の農業従事者 大きく変わった。2〜3年前までは同僚に電話す であることだ。農業従事者は危険回避の達人であ る代わりにメールで連絡するという人はおらず, るが,2012年には,中国でもインドでも多くの小 休暇の予約にしても旅行社に電話していたのでは 規模農家がバイテク作物を作付けした。Bt コッ ないだろうか? トン1)は農家の収入を1ヘクタールあたり250ド 時代は変わり,米国で生産され消費される80% ルにまで押し上げ,殺虫剤の散布を半減させると の食品が遺伝子組み換えによるものになった。朝 ともに農業従事者が農薬に曝される機会も減少さ 食のシリアルから飲み物にいたるまで,私たちが せている,と ISAAA は述べている。 さら 口にする穀粒は,1996年のはじめからは遺伝子組 遺伝子組み換え作物に危険性はあるか? み換えされたものになっている。それらの種子に 利点が多い作物がさらに増えることは歓迎され は,収量が多くなることはもちろん,除草剤や殺 るはずだが,科学がこれを後押ししていることに 虫剤に抵抗性があるなどといった,もともと持っ 複数の団体は懸念を抱いている。彼らは食材や食 ていない性質をもつよう遺伝子が組み換えられて 品は十分に試験されていないと考えていて,いく いるのだ。トウモロコシやダイズ,砂糖だいこん つかの州では遺伝子組み換え作物由来のすべての などの遺伝子組み換え作物は,コーンシロップや, 食品に表示をするようロビー活動が行われている。 油,砂糖などに加工されて,私たちの食生活に 昨年の11月,カリフォルニア州で遺伝子組み 入ってきている。多くの研究者は,それらは遺伝 換え作物食材を含む食品には表示を義務化する 子改変されていない植物から作った食材と何ら異 という提案37が52対48で否決された。ワシント なることはないと言っている。遺伝子組み換えさ ン州でもこの秋に同様の内容の法案 Legislative れた作物は最先端であるというだけでなく,米国 Initiative522の投票が行われる。いくつかの州で では当たり前になっており,さらに世界にも広ま は表示化法案に関する作業が行われているが,そ りつつある。 れ以外の州では投票に向けての提案準備もされて 遺伝子組み換え作物はアメリカの農業従事者に いない。 とっては多大な恩恵があり,低コストで食品加工 反対派は遺伝子組み換え作物は健康にリスクを できる点にも意義があるだけでなく,世界中の人 もたらすと主張しており,消費者には何を食べて に食料を供給したり,貧しい国の農業従事者の生 いるかを知る権利があると呼びかけ,表示義務を 計を改善したり経済均衡の維持にも役立っている。 自由の問題として戦っている。 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は,2012 GMO Inside は Green America 社 に よ っ て 創 年のバイテク作物の栽培面積は,1997年の100倍 設された,遺伝子組み換え作物のない食品システ に増加したと報じている。また,その理由は簡単 ムを目指す企業や団体,個人の連合組織である。 で,バイテク作物の供給量は多く,持続的,社会 そのウェブサイトには,“なぜわれわれは遺伝子 経済学的,環境学的に利益があるためだとしてい 組み換え作物を懸念しているのか?”と題して, る。ISAAA によると,世界全体でみると2012年 以下の4点が個条書きされている。 には前年より60万人多い1,730万人の農業従事者 ❖ヒトの健康リスク:遺伝子組み換え作物と空中 がバイテク作物を育てた。注目すべきはその90% 散布された化成品は,食物アレルギー,過敏性腸 食品と容器 548 2013 VOL. 54 NO. 9 炎,臓器障害,がんに関連すると考えている。 作物を環境に適応させ,動物をも病気やペストへ ❖環境リスク:除草剤耐性をより強くした遺伝子 の抵抗性を高めるよう,また人間の思うように使 組み換え作物によって,雑草は除草剤を使えば使 役できるよう改良してきた。人間はこれまでも作 うほどより大きく強くなり,除草剤耐性をもつ 物を栽培する過程で,望ましい形質をもつものを ランダムな遺伝子変異の中から選抜してきたので 「スーパー雑草」が生まれる。 ❖途上国の農業従事者への不当な圧力 ある。現代の作物の多くは野性種ではなく,実際, ❖有機農家へのリスク:近くの遺伝子組み換え作 人間の介入や世話なしでは生き延びられない。わ 物からのコンタミ れわれの作物は祖先から受け継いだものであるが, 昔と同じものではないのだ」と述べている。 「巨大農業関連企業や化学会社は,遺伝子組み 換え作物がどの段階で食品に入ったかわれわれが知 科学の進歩にはつきものであるが,時としてそ る権利を妨害している。適切な試験をせずに遺伝 れは人をおびえさせる。米国の政府機関である 子組み換え作物を市場に出しているのは,われわれ USDA,FDA や EPA は遺伝子組み換え作物に を実験動物として大規模科学実験を行っているの は危険を引き起こす要因はないので,表示の必要 と同じだ」と Green America 社の E. O’ Connell はないといっている。FDA は,多くの消費者が 部長は言っている。 食品が生物工学的な手法で製造されているかどう 遺伝子組み換え作物反対派は,数カ国では表示 かを知ることに強い関心をもっていることを認識 を義務化しており,ポーランド,オーストリア, しており,消費者が情報を得られるよう食品に表 フランス,ドイツ,ハンガリー,ルクセンブルク, 示することを支援するため,産業界に表示に関す ギリシャ,ブルガリアのヨーロッパ8カ国では遺 るガイダンスを出した,としている。ただ,これ 伝子組み換え作物は禁止されていると指摘する。 は表示を強制するものではない。 世界中に食物を供給する他の方法は? 遺伝子組み換え表示に関する議論でよく聞くも ののひとつに,米国に出回っているもので遺伝 全米食品製造者協会の B. Kennedy 部長は, 「協 子組み換えでない作物はほとんどない,という 会とその会員企業は,消費者に安全で健康的でか ものだ。しかし,それは本当ではないと3月の つ良心的な価格の食品をお届けできるよう努力し Natural Products Expo に出展していた少なくと ています。私どもは,表示をするとかえって消費 も2つの大手食材供給者はいう。L. Pizzery 氏は 者の皆さまに誤解を与えかねないので,遺伝子組 夫と経営していた製粉会社を売却して,SafeFlax み換え食材を含む食品であるという表示を義務化 と呼ばれる滅菌亜麻製品の製造ラインをもつ することに反対しております。FDA や世界保健 Grain Millers 社とパートナーシップ契約をし, 機関や国連食糧農業機関,米国医師会を含む多数 ミネソタ州やミシガン州で育てた遺伝子組み換え の規制機関や学術団体が,遺伝子組み換え食材を でないダイズから作った食材を提供している。ま 含む食品や飲料は安全で,遺伝子組み換え食材を た ネ ブ ラ ス カ 州 の Scoular 社 の A. Brown 氏 は 含まない製品と中身が異なることはない,と結論 「重要なのは,遺伝子組み換え品を混入させない づけています。食品のラベルは大きさが限られて 分別生産流通管理(Identity Preserved)で,最 いますので,お客さまに安全で健康によい食べ物 後まで生産農場を特定できるサプライチェーン全 を選んでいただくために必要な,食品安全や栄養 体を見ていただきたいのです。米国においても遺 に関する非常に重要な情報しか載せられません。 伝子組み換えでないダイズやその他の作物はもう 詳しい情報を調べたい方は,製造者のウェブサイ すでにできていて,必要とする声が大きくなれば トや顧客サービス部で入手ください」と話している。 前出の Chassy 名誉教授は次のように述べてい 供給量を増やして参ります」と述べていた。 イリノイ大学の食品科学・栄養学が専門の B. る。「遺伝子組み換えでないものやコーシャ(ユ Chassy 名誉教授は,「数千年にわたって農学者は ダヤ教の食事規定に従った食品),有機食品が欲 食品と容器 549 2013 VOL. 54 NO. 9 しいと思ったら,表示は生産者次第であり,表示 かっただろう」。 することでコストが上がることにもつながるが, 訳注:1)モンサント社が開発した害虫耐性の遺伝子組 み換え綿花の種子。Bacillus thuringiensis(Bt)という 土壌バクテリアから取り出した遺伝子が組み込まれ,ワ タキバガという害虫をよせつけない。しかし,インドで は品種特性の多様性の低さによる品種と栽培地帯のミス マッチや種子価格が高いことなどから,農民の困窮につ ながるといった問題も生んでいる。 自主的に表示できる仕組みを私たちは持っている。 今は人々に十分な食品が行き渡っている時代とは いえない。実際,バイオテクノロジーがなければ 農業で必要とされるものを何一つ手に入れられな (亀山眞由美) ● 海外技術情報 ● シングルサーブ市場におけるサステナビリティの革新 ( One-Shot Wonder ) Packaging Digest(USA)p. 37( ’ 13・3 )文献 № 5862 シングルサーブ(一杯分抽出)コーヒー市場に 項の話し合いで思い 特有なフィルターの材料革新が,サステナブルな ついたことに由来す シングルサーブ分野へのコーヒー関連企業の参入 る。 「UpShot を 製 品 を後押ししている。 シングルサーブ用コーヒーの分野は急成長しつ 化するための解決策 つあるが,この製品カテゴリーの評価は未知数で のアイデアの多く ある。パッケージングの傾向は,サステナブルな は, 我 々 の 顧 客 か ものよりむしろディスポーザブルなものへとなっ ら出てきたものだ」 てきている。コーヒーの粉を収容しているプラス と Cook 氏は述べた。 チックカップや,それを覆っているフォイル蓋は, 「顧客の話をよく聞 一般的にはリサイクルされずに使用後はゴミとし くことによって,品 て捨てられる。サステナビリティーは,まだ標準 質,即効性,柔軟性 化されるほど重要な要素だとはいえない。 がシングルサーブの LBP Manufacturing 社 のチームは,コーヒー カテゴリーにおける 会社およびパートナーのパッケージング業者に, 合言葉であると分 より環境にやさしいオプションを提供する新シ かってきた。我々が聞き取りした要望事項を基に ングルショットコーヒー形態の UpShot によって, して,多種のビジネスニーズを満足させ,ターン 1) その標準を変えようと考えている。Keurig 社 キューリグコーヒー抽出機 キープロセス(面倒な初期設定が不要なシステ 2) と他のシングルサーブフィルターは互換性があり, ム)を展開することができた」。 完全にリサイクル可能であることを提案すること コーヒー会社,小売店,パッケージング業者な で,他のシングルサーブの製品と差別化した。こ どの数社が本製品に関心を持った。そのような企 のフィルターは100%再生可能のポリプロピレン 業の一つが,パッケージング振興の歴史を持っ でできており,外装シール部分もリサイクル可能 ているコーヒー業界の調達業者であった Melitta な材質でできている。 USA 社である。「イノベーションは常に我々の企 類いまれなアイデア 業文化の大部分を占めている」と , Melitta USA LBP 社の M. Cook 社長によると,同社のサス 社マーケティング副社長の C. Hillman 氏は語る。 テナブルなシングルサーブ製品の創作は,コー 「Melitta 社には,かつて1908年にコーヒーフィル ヒー会社と共に彼らのカテゴリーに関する懸案事 ターを発明した創立者メリタ・ベンツから始まる 食品と容器 550 2013 VOL. 54 NO. 9 Hillman 氏 長いオリジナリティーの歴史がある」。 は「UpShot の Hillman 氏によると,Melitta 社の先見の明を 持ったパッケージング開発の実績は,その後の 技 術 に よ っ て, コーヒー産業界に利益をもたらした。フィルター Melitta 社は,プ の開発に加えて,コーナーシール付きバッグやコ ライベートラベ ンポジット缶およびよりサステナブルな箱形態に ルやトールロー よって,パッケージングに使用される材料を顕著 スティングと共 に減らすことになった。シングルサーブ分野に参 にシングルサー 入するためのオプションをリサーチしていた該社 ブ分野に参入し は,革新,効率,および品質における要望に対し たいという他の て LBP 社が訴えかけるものを持つことが分かった。 企業とパート LBP 社の UpShot フィルター ナーとなって,B2B(企業間取引)ビジネスを 「カスタマーサービス指向の企業である Melitta 広げることができるようになった」と言う。 社は,品質においてベストなものを均一に供給す ることを約束してくれるパートナーが必要であり, フレキシビリティーにフォーカス LBP 社はそれらの期待に見合い,そしてすぐに Cook 氏によると,UpShot パッケージはコー ヒー会社や包装会社に高いフレキシビリティーを それを上回った」と同氏は語った。 「UpShot は我々が検討した,あらゆるシング もたらした。LBP 社の技術はロイヤルティーと ルサーブ製品のオプションの中で,ベストの品質 契約金がかからない。パッケージング機械の所有 であった」。 権を使用することよりむしろ,コーヒーパッケー Melitta 社のチームが UpShot を好むにはいく ジングの工程において,自社のおのおののパッ つかの理由がある。サステナブルな面がより良い ケージング機械を自由に選択できるようになって ということに加えて,シングルサーブフィルター いる。さらに,彼が付け加えて言うには,「この によって抽出されるコーヒーのフレーバーが,他 プロセスは中小企業にとっても,シングルサーブ の製品をしのいでいた。さらに,他のシングル 市場に飛び込みやすくし,継続的な成長分野とし サーブの製品は中が見えないカップにコーヒーを て利益をもたらしてくれる。これまで多くの堅実 入れる一方で,UpShot フィルターは外装のパッ な企業が,シングルサーブ製品を軌道に乗せるこ ケージをはずして,実際に中のコーヒーを見て, とに,やりがいを見つけてきた。 UpShot フィルター製品は LBP 社によって生 香りを嗅ぎ,消費者にとってコーヒーを飲んでい 産されている。そして,Melitta 社は,2013年2 る体験を一層高めることができる。 「それは本当に,まったく感覚的な体験をさせ 月に,ニュージャージー州 Cherry Hill に特注設 てくれる」と Hillman 氏は言う。「我々が最も顕 備を設置して,その焙煎設備内でフィルターに詰 著に学んだことは,製品形態などに関係なく,消 めてパッケージングする。同社は,2013年4月 費者にとってはコーヒーの感覚的体験が一番重要 初旬に国内と地域の食品販売チェーンを通して, だということである。UpShot フィルターによっ UpShot の新製品を発売する予定となっている。 ばいせん て,消費者はコーヒーを視覚と嗅覚で感じられる。 それは,カプセルの中が密封されていて認知で く,Keurig Inc., として商標登録した。 きない製品ではなく,この新しい UpShot フィル (高橋律子) ターカップは,コーヒーの粉が既に内蔵されてお 1)LBP Manufacturing Upshot http://www.upshotsolution.com/the-upshot-solution 2) キューリグ・エフイー株式会社(英文社名:Keurig FE CO.,Ltd) http://www.keurig.co.jp/taste/ り,ドリップコーヒーの抽出を思い起こさせてく れ,よりおいしいコーヒーへの消費者の期待に間 違いなく応えてくれる」。 食品と容器 Keurig 社は LBP 社との合弁や共同経営ではな 551 2013 VOL. 54 NO. 9 ● 海外技術情報 ● 消費者のナチュラルフードに関する理解の変化 ( The Changing Face of Natural Foods ) Food Technology(USA)p. 34( ’ 13・3 )文献 № 5858 ここ数年,消費者が“ナチュラル”と 見なす食品は進化を続けている。健康 的・健全の概念も変わり,ナチュラルで あることの理解に影響を与えた。食品売 り場で見かける製品は進化を体現してい るといえる。 消費者の中には食品供給とその現状に ついて懐疑的な人もいる。食品を怖がっ ているという表現は大げさかもしれない 16 製 14 品 全 12 体 10 に 占 8 め る 6 割 合 4 % が,食品に神経をとがらせているのは間 違いあるまい。例えば飼っているペット えさ のために餌を手作りする人が増えている 添加物/保存料無し オールナチュラル オーガニック 食物繊維強化 ビタミン/ミネラル強化 2 0 2008 2009 2010 2011 2012 第1図 アメリカ市場で新製品における機能表示の占める割合 が,それは4本足の家族の一員に食べさせるもの 示す方向へと向かいつつある。またカロリー控え の安全性を確保したいがためという面を持つ。 め,脂肪やナトリウムを抑えた,などの“低含有 消費者は食品が健全で信頼に値するかを判断で 量”表示も減少傾向にある。例外はグルテン・乳 きる簡単な方法を探しているといえよう。ラベル 糖・アレルゲンに言及した表示で,アメリカ市場 上のナチュラルという言葉を疑いながらも求め, に年々数を増やしている。特に“無グルテン”の 価値を見いだす人は多い。実際,彼らの約2/3 表示を付けた製品は全体の10%近くに上る。 国によるラベル表示の差異 が“オールナチュラル”と表示されていると,健 康に良い食品だと考えるという。ラベル表示が真 “オールナチュラル”はアメリカでこそ食品へ 実の効能を正確に反映していようがいまいが,重 の表示が12%を占めるが,世界市場では4%にす 要なのは“ナチュラル”と“健康に良い”が消費 ぎない。一方“オーガニック”は少々異なる展開 者の頭の中で強く結び付いているという事実である。 を見せ,アメリカ市場において特に“オールナ アメリカにおけるラベル表示 チュラル”が重視されていることが浮き彫りに アメリカの食品メーカーは消費者の声に敏感で なっている。“オーガニック”表示は数値の上で ある。“オールナチュラル”との表示は最も多い はアメリカで多いものの,減少傾向にある。とこ もののひとつで,製品全体の12%に付けられてい ろが世界市場では年を追って増え続けている。 る。一見少ないようだが,この数値は“添加物/ アメリカとヨーロッパを比較すると,ラベル表 保存料なし”とほぼ同じで“ビタミン/ミネラル 示の違いが鮮明になる。ヨーロッパでは“オール 強化” “オーガニック” “食物繊維強化”より明ら ナチュラル”表示は約2%で,関連新法規の施行 かに多い(第1図)。 にもかかわらず,この数値は5年間ほとんど変わ “オールナチュラル”の表示はここ2年で減少 らない。これはヨーロッパ市場の“オールナチュ しており,この傾向は他の健康増進関連表示にも ラル”に対する無関心の表れと解釈できる。“添 見られる。メーカーでは健康効能を声高にアピー 加物/保存料なし”は約15%とアメリカの12%よ ルするより,製品に何が使われているかを簡易に り高い。“オーガニック”は現在アメリカ市場に 食品と容器 552 2013 VOL. 54 NO. 9 おいて約6%であるが,ヨーロッパでは10%近く 良い。また Kraft 社では欧米市場に朝食向けビス に達している。 ケット BelVita を導入,全粒穀物とビタミンB群 に富むナチュラルフードで,ユニークかつ満足感 ナチュラルとはほとんど関係が無いが“ベジタ のある朝食になるとしている。 リアン”という表示が付いていると,消費者は Pure のパワー “より良い”,良いことづくめの食品と考える傾向 がある。アメリカでは1.3%と低い数値のままだ 食品そのものに良さがあると伝える方法とし が,ヨーロッパでは対照的に5年間で6%から て“Pure(純粋な)”という表現がある。この一 9%に躍進した。 言で製品が健全だとの強いメッセージを消費者に ナチュラルな良さ 送ることができる。主にガムなどミント系の食品 世界中の市場で“ナチュラルな良さ”という に見られる表示で,Perfetti 社の Mentos や Kraft 考え方に着目したさまざまな食品を見ることが 社の Dentyne は息をさわやかにする効果を強調 できる。例えば Heinz 社は欧米市場向けに一番 している。一方米 Danon 社の Pure ヨーグルト 摘みのトマトのみで作った First Harvest Tomato は,フレーバーによって7~9種類の素材を使い Ketchup を毎年販売している。瓶には番号・署 安価で求めやすくなっている。通常は素材がシン 名・日付が入り,少量生産で,当年分が売り切れ プルなほど吟味を重ねるもので,その度合いが値 ると次の年まで手に入らない。この姿勢で消費者 札に反映されるが,Pure に関しては全く逆であ に対し,ナチュラルフードであることと“純粋 る。同社では家族向けに他のヨーグルト製品より さ”を強烈に印象付けている。 価格を抑え,32オンスの大容量パックや1回分量 ずつに分かれたマルチパックをそろえた。 イギリスでは製菓大手の Tate & Lyle 社が家 庭用甘味料 Light at Heart を販売している。ステ ドイツ Danon 社の Activia Pur ヨーグルトは ビアと精白糖またはブラウンシュガーの混合であ さらに徹底しており,素材は3種のみ,他は一切 り,同社としてはステビアを使うことで,消費者 使っていない。ヨーグルト・果物・黒砂糖を使い, にカロリーが砂糖の半分でしかもナチュラルフー 他の Activia ヨーグルトより20%ほど割高となっ ドであることをアピールできる。事実,同製品に ている。 少ない素材を厳選する手法はすべての食品に応 はオールナチュラル素材使用とのラベル表示がな 用できるわけではない。総菜・ベーカリー製品・ されている。 ナチュラルであるとのメッセージが素材以外の 菓子など複雑な素材表示を要するものには不利と ところに込められている場合もある。昨年 Kraft なる。しかしイギリス市場では,Nestlé 社がホ 社は Milk Bite バーを市場導入,ミルク8オンス ワイトチョコレート菓子 Milkybar Giant Buttons に相当するカルシウム含有とうたった。このミル で成功を収めた。素材表示を短くする代わりに, ク入りグラノーラ・バーは陳列方法が画期的で, おのおのの素材を使う理由の表記に重点を置いた 他の同社製品と並んで冷蔵ケースに入れられてい のである。“乳清粉末(ミルク由来) ”“乳化レシ る。冷蔵して売るということは“ナチュラルであ チン(大豆由来で素材をまとめる)”など,素材 ること”の極めて有効な主張方法である。この種 を使う目的を詳細に記せば消費者に理解しやすく, の製品のこうした売り方は過去にも例を見ない。 謎解きも容易になる。 ナチュラルの行方 健康に良い素材を使っていると強調してナチュ ラルな良さを前面に出す方法もある。果物・野 自社製品のナチュラルさを強調したいメーカー 菜・穀物を含むと表示された食品は枚挙にいと は,他社の画期的な試みがどのように受け止めら まがない。米 Campbell Soup 社は清涼飲料の代 れてきたかを検証すべきである。製品に内在する 替品として V8 V-Fusion Sparkling を売り出した。 良さをアピールすることが,最も説得力のある, 50%果汁入りで炭酸のさわやかな口当たりが心地 ひいては成功する方法といえる。全粒穀物といっ 食品と容器 553 2013 VOL. 54 NO. 9 た特定の形態や,具体的な健康効能を明記するの “ナチュラル”という言葉がしばしば攻撃の的 が望ましい。簡単明瞭な表記が難しい場合は,聞 になるとしても,消費者はなおその利点を求めて きなれない素材が使われているのはなぜか,消費 やまない。メーカーが彼らの要望に応える術はい 者を教育することも検討の必要がある。 くらでもある。 めいりょう こた (力丸みほ) ● 海外技術情報 ● 筋肉と骨の量のマネージング ( Managing Muscle and Bone Mass ) Food Technology(USA)p. 61( ’ 13・4 )文献 № 5866 そしょう われわれの身体は年を取ると筋力低下や骨粗鬆 の筋肉減少速度を遅くするとの見解を示した。食 が生ずる。筋肉量が減少すると身体が弱くなり, 事タンパク質は筋肉タンパク質の合成に必要なア 転倒や骨折のリスクが増大する。 ミノ酸を提供する。Manders ら(2012)は,ロ LeBrasseur ら(2012) は,Mayo ク リ ニ ッ ク イシンは強いインスリン分泌特性(筋肉タンパク の長年の骨健康調査記録(20歳~97歳の女性272 質合成のためにアミノ酸の利用度を高め,筋肉タ 人,男性317人対象)を精査して,骨の構造や強 ンパク質の減衰を低減する)を示す事実を検討し 度と骨格筋量の関連を調べ,筋肉量は身体の特定 た。分枝鎖アミノ酸(主としてロイシン)は,イ の個所で骨強度と関係があることを発見した。そ して,血中の IGFBP-2(インスリン様成長因子 ンスリン依存性および非依存性メカニズムを通し 結合タンパク質2型)値が高いほど関連する筋 USDEC の情報は,高齢者のタンパク質総摂取 肉量が全般的に少ないことを明らかにした。ま 量は1~ 1.5 g/kg/day の範囲のやや高めが良い た,男性の骨粗鬆症性骨折と関係があるとされる IGFBP-2 は,男女共に筋肉量の生体指標(バイ と示唆している。最近の研究は,間隔をあけて毎 オマーカー)にはならないことが分かった(Mayo 寄与することを示している。「乳製品や乳素材の クリニック,2012)。 栄養効能は加齢関連の健康問題に完全に適合する。 て筋肉タンパク質合成プロセスを活性化する。 食均等に高タンパク質を摂取すると筋肉の保持に 本稿では,タンパク質やビタミンDの他,筋肉 米国の消費者は乳素材を用いた食品は魅力的でナ 量の維持あるいは骨量減少や筋力低下を遅らせる チュラルで健康的であると思っている。高齢者向 のに寄与すると考えられている栄養成分について けにタンパク質含量を強化するために乳タンパク 概説する。 質を利用する食品・飲料メーカーが世界的に増え 筋肉量の減少 ている」と USDEC の V. Nicholson 氏は言う。 加齢性筋肉減弱症(加齢による筋肉量の減少) 他のほとんどのタンパク質に比べて,ホエータ は,25歳くらいから始まり65歳以降顕著になる。 ンパク質は引き締まった筋肉を作るために有益な 米国乳製品輸出協議会(USDEC)によると,骨 分枝鎖アミノ酸(ロイシンやイソロイシン,バリ 格筋の退行性減少は30歳を過ぎると10年間当たり ン)が多い。このためホエータンパク質は,筋肉 3~8%の率で生じ,年齢が進むにつれて加速す タンパク質の合成あるいは新しい筋肉作りの促進 る。タンパク質やビタミン D,抗酸化物質は筋肉 に対して他のタンパク質源より優れたタンパク同 量の維持に寄与すると考えられている。 化作用を提供することを最近の研究が示している。 ♦タンパク質:Robinson ら(2012)は,筋肉減 ホエータンパク質素材の革新は多種多様な食 弱症に対するタンパク質の役割を検討し,タンパ 品や飲料にこのタンパク質の添加を容易にし ク質および/またはアミノ酸の補給は筋肉減弱症 た。2012年 Aria Foods Ingredients 社は,pH が 食品と容器 554 2013 VOL. 54 NO. 9 中性で超高温熱処理(UHT)で安定なホエータ ン パ ク 質 濃 縮 物(Lacprodan Ⓡ DI-7017) を 発 表 合,「骨塩密度は高タンパク質の食事から実質的 した。これは,効能があり処方しやすく味の良 シウム吸収を減少させる可能性があり,ほとんど い100%ホエーベースの RTD 飲料開発に利用で の観察研究で骨量減少との関係を示したという調 きる。2013年1月,同社は“クイック”プロセス 査(Kerstetter ら,2003)を USDEC は証例にす (ホエー分離工程不要のギリシャヨーグルト製造 る。別の研究は,毎日の運動と組み合わせて,低 方法)と併用することによってヨーグルトメー 炭水化物で主として乳からのタンパク質が高い, カーが既存工場で廃棄物を劇的に低減できるギリ カロリーを抑えた食事の摂取は,太り過ぎのヒト Ⓡ や肥満体の若い女性の骨健康に著しいポジティブ シャヨーグルト用のタンパク質溶液(Nutrilac に恩恵を得ている」。低タンパク質食は腸のカル タンパク質)を発売した。 な影響を及ぼすことを示している。骨健康の改善 ♦ビタミン D:Robinson ら(2012)は筋肉の健 は,ビタミンDや乳ベースタンパク質,カルシウ 康に対するビタミンDと抗酸化物質の役割を検討 ムなど高骨密度をサポートする栄養素によること し,標的骨格筋からビタミンDの受容体(VDR) は 明 白 で あ る(Rattue,2011)。USDEC も 骨 健 を分離し VDR の多様性が筋力の差に関係する 康に対して推奨量の乳製品摂取の重要性を強調し ことを明らかにした。遺伝子レベルで,ビタミ ン( 1 , 25 -ジヒドロキシビタミンD)の生物学的 ている。ミルクはカルシウムやビタミンD,ビタ ミンB-12,カリウム,リン,マグネシウム,亜 活性型結合は,カルシウム代謝に関係するものを 鉛など骨の発達や維持に重要な多数の栄養素を提 含め広範囲のタンパク質転写を促進する。これは, 供する。 筋力に対してビタミンDが直接影響する可能性が ♦ビタミンDおよびK:ビタミンDやKもカル あるとする多くの疫学文献と一致する。 シウムとの関係を通して骨健康に影響を与える。 ♦ 抗 酸 化 物 質:Robinson に よ る と,DNA や 脂 ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し,ビタ 質,タンパク質などの生体分子の損傷は活性酸素 ミンKは骨へのカルシウムの結合に影響を与え る。観察研究はビタミンK- 2 は日本女性の骨折 種(ROS)が細胞に過剰に存在する場合に生じる。 加齢による ROS の蓄積が酸化的ダメージを招き リスクの低さと関係があることを示している。ビ タミンK- 2 のメナキノン- 4(MK- 4)とメナキ 筋肉量や筋力の低下の一因になる。多数の観察研 ノン- 7(MK- 7)型の骨健康に対する効能に着目 し,PL Thomas 社は Natural Vitamin K2 MK-7 究は,抗酸化状態の高さと身体機能の測定値との 関連性を示している。研究者はカロテノイドやビ タミンE,セレンなどの抗酸化物質と身体の機能 (納豆や発酵大豆由来の天然抽出物)を,また Frutarom Health 社は uniK2 TMVitaminK2MK-7 障害との逆相関を示す研究を証例に挙げている。 骨量の減少 を提供している。ビタミンK- 2 は,オステオカ 骨粗鬆症は通常50歳以上のヒトに生じる。カル ルシン(タンパク質)を活性化して骨のカルシ シウムは骨の健康と最も関係があるが,ビタミン ウム結合を最適化させたり,骨のコラーゲン状 DやビタミンK,カリウム,フッ化物,マグネシ ウムなどの栄養素は骨量の維持に関与する。 態を改善して骨の質や強さを改善する。納豆由 来 の uniK2は,uniK2 MK-7 パ ウ ダ ー 0.2 % と ♦カルシウム:カルシウムの摂取が不十分だと, uniK2 MK-7 オイル0.15%の形態で利用できる。 身体が骨のカルシウムを消費し骨密度が低下する。 ♦ プ レ バ イ オ テ ィ ッ ク 繊 維: フ ラ ク ト オ リ ゴ タンパク質やビタミンD,ビタミンK,フラクト 糖 や イ ヌ リ ン な ど, プ レ バ イ オ テ ィ ッ ク 繊 維 オリゴ糖はカルシウムに有益な影響を及ぼす。 は カ ル シ ウ ム の 吸 収 を 助 け る。Ingredion 社 の ♦タンパク質:米国農務省(USDA)のカルシウ NUTRAFLORAⓇ プレバイオティック繊維は生 ムおよび骨代謝研究所によると,「食事がカルシ 物発酵(特許)を利用したサトウキビ由来の非遺 ウムとビタミンDの推奨食事許容量を満たす」場 伝子組み換え成分(高純度短鎖フラクトオリゴ 食品と容器 555 2013 VOL. 54 NO. 9 糖)であり,免疫の健康やカルシウムの吸収をサ し, 併 せ て カ ル シ ウ ム500 mg と ビ タ ミ ン D-3 ポートする。 BENEO-Orafti 社 の Orafti Ⓡ( オ リ ゴ フ ル ク を400 IU 補給して24カ月行われた。TPC はビタ トース強化イヌリン)はカルシウムの吸収と骨密 投与された場合,良好な耐容性を示し,正常な 度を強化する。これは100人の青年被験者に8g 骨量をもつ健康な高齢者に対して骨塩密度を上 の Orafti Synergy1または同量のプラセボを与え げ,骨の微細構造を改善するための安価な介入策 た二重盲検試験で立証された。Orafti Synergy1 になる(Jungbunzlauer 社,2012)。2013年1月, を摂取した被験者は,1年と6週間の介入試験で Jungbunzlauer 社は栄養補助食品としてクエン酸 カルシウムの吸収は25%増加した。また,骨のミ 三カルシウム GN を発表した。微粉末形状は飲料 ネラル含量は,Orafti Synergy1を摂取した被験 や乳製品,フルーツプレパレーション,臨床栄養 者では骨のカルシウム付着が1日当たり30 mg 増 剤,特殊調製粉乳のカルシウム強化に使用される。 加した。 ♦コラーゲンペプチド:コラーゲンペプチドは主 ♦ ク エ ン 酸 三 カ リ ウ ム:Jehle ら(2012) は, に関節の健康に関係するが,骨の健康効能も提 Jungbunzlauer 社 の Active Pharmaceutical 供する。例えば,Nitta Gelatin 社の Wellnex Ⓡ コ Ingredient Tripotassium Citrate(TPC) は 健 康な高齢者の骨塩密度の顕著な向上と骨の微細 ラーゲンペプチド摂取後,大量のジペプチド(プ ロリン-ヒドロキシプロリンとヒドロキシプロリ 構造の改善をもたらすことを立証した。ランダ ン-グリシン)がヒトの末 梢血に放出され健康な ム 二 重 盲 検 プ ラ セ ボ 対 照 試 験 は, 標 準 的 な 骨 骨代謝を促進する。両ジペプチドは破骨細胞や骨 塩密度をもつ65歳 以 上 の 被 験 者201人 を 対 象に 芽細胞の分化をコントロールし,結果的に健康な Mission Phamacal 社 の Urocit-K 錠 剤( ア ル カ 骨代謝を促進することによって正常な骨密度維持 リ化 TPC)を60mEq/日またはプラセボを投与 に寄与する。 ミンDおよびカルシウムのサプリメントと共に まっしょうけつ (合田芳宏) ● 海外技術情報 ● コーヒーから海藻まで:植物成分の最新情報 ( From Coffee to Seaweed : An Update Botanicals ) Food Engineering & Ingredients(BEL)p. 8( ’ 13・2 / 3 )文献 № 5863 ない。アメリカで50万人近くの人を対象として, 近年,植物成分の機能性研究・開発の発展は, めざましいものがある。この記事では,コーヒー 健康に関する研究が行われた。その研究によっ の健康への効用に関する新規の研究をはじめとし て,1日2杯のコーヒーを楽しむ人はコーヒーを て,抗酸化物質の供給源として魅力的な褐藻の一 飲まない人に比べて長寿であるという重要な発 種アスコフィルム属の海藻について,現在進行し 見がなされた。この研究はアメリカ国立衛生研 ている欧州連合(EU)の研究について報告する。 究所(NIH)の資金を受け,最近 New England さらには,南アフリカ原産の多肉多汁植物のカン Journal of Medicine 誌に掲載された。この論文 ナが,セイヨウオトギリソウに取って代わる新規 によれば,毎日コーヒーを飲む人は,コーヒー中 の気分高揚物質として市場に参入する準備が整い のカフェインの有無にかかわらず,心臓病や呼吸 つつあることを報告する。 器疾患,脳卒中,けがや事故,糖尿病,種々の感 日常的にコーヒーを飲むことの健康への効用 染で死ぬケースが少なかった。 コーヒーを飲むということは,あなたを元気づ 2月末に出版された Journal of Caffeine Research けるだけでなく,あなたの寿命を延ばすかもしれ のインタビューで NIH 国立がん研究所のがん疫 食品と容器 556 2013 VOL. 54 NO. 9 学および遺伝学部の N. Freedman 氏は,この研 えば,対照を無作為化してコーヒーのどの成分が 究はコーヒーの健康への効用に関する今日までで 関与するのかをはっきりさせる研究や,他のカ 最も包括的な研究であり,日常的なコーヒー愛飲 フェイン含有飲料が消費者の健康にとって有益で 者に顕著な関わり合いがあると答えている。研究 あるか有害であるかを調べる研究などである。 EU が海藻からの抗酸化物質抽出の研究に資金 チームはアメリカ人の男女,50歳から71歳を12年 を提供 間追跡調査した。その結果はコーヒーと寿命の間 めいりょう の明瞭な関係を示しただけでなく,Freedman 氏 アイルランドやスコットランド,スペインの中 が言うには,最も多くコーヒーを飲む人たちが最 小企業とレディング,アルスター両大学との海藻 も健康への効用を受けていたことも示している。 の栄養学的可能性についての研究プロジェクトに, EU は研究資金を提供した。その研究では抗酸化 「 我 々 が 発 見 し た の は, 実 験 期 間 を 通 し て, コーヒーの日常的な消費と死亡のリスク全般およ 物質の抽出に焦点を当てている。SWAFAX と名 び種々の原因別死亡リスクの両方との逆相関があ 付けられたそのプロジェクトは,欧州委員会から るということだ。この関係に男女差はほとんどな 「中小企業に貢献する研究」の資金の提供を受け ている。 い。そしてこの関係は,日に2,3杯以上のコー 植物のポリフェノール類は機能性食品やサプリ ヒーを飲む人で強く示される」と Freedman 氏 メントに用いられているが,これまでのところ海 は言う。 藻に関してはほとんど研究も開発も行われてこ 研究結果は,1日に3杯以上コーヒーを飲む人 は,コーヒーを飲まない人に比べてさまざまな原 なかった。SWAFAX プロジェクトの最終目的は, 因による死亡リスクが10% 低いことを示してい 海藻のポリフェノール含量に関するより深い理解 る。コーヒーを飲むかどうかは女性のがん死亡率 を成し遂げることである。その研究はヨーロッパ に影響を与えないが,大量にコーヒーを飲む男性 の種々の海藻中のポリフェノール類の量的および のがんによる死亡リスクは,辛うじて統計的に有 質的解析だけではなく,海藻中のポリフェノール 意となる,わずかな上昇を示した。 類の利用可能性や生物活性についての量的および い 質的解析を提供するだろう。 コーヒーの淹れ方には,高温高圧で一気に抽出 するエスプレッソやひいた豆を煮沸してその上澄 コ ン ソ ー シ ア ム は Hebridean Seaweed 社 と みを飲むトルココーヒー,お湯や水で抽出した後 Marigot 社,Mesosystem 社の中小企業3社の共 紙等のフィルターで濾過する一般的なコーヒーな 同研究で成り立っている。他に Cyber-Colloids どがある。Freedman 氏はコーヒーがどのように 社とレディング,アルスター両大学の3つの研究 淹れられたかについての情報は得られなかったこ および技術開発機関もメンバーである。このプロ と,コーヒーの淹れ方がコーヒー中の健康保護成 ジェクトは,食品および健康とウェルネス製品に 分の濃度に影響を与える可能性があることに言及 生物活性のある海藻成分を適用して商品化するこ している。コーヒー豆中の何百という成分のうち, とを目指している。さらに中小企業のイノベー どの成分が健康に効用があるのかについて,研究 ションとマーケティング戦略を下支えするための, はまだ進んでいないということも彼は付け加えた。 強力な科学的エビデンスの一覧表を提供すること ろ Journal of Caffeine Research の 編 集 者 J. E. を目的としている。 James 氏は,Freedman 氏の研究はコーヒーの健 レディング大学ヒト栄養学研究ユニット長で 康増進特性にどんな成分が関与するかというさら SWAFAX プロジェクトリーダーの I. Rowland なる研究が必要であることを示していると発言し 氏はこう説明する。「植物はたくさんのポリフェ ている。世界中で日常的にコーヒーが消費されて ノール類を含むことが知られているが,海藻の抗 いることを考えると,Freedman 氏の研究を発展 酸化活性に関しては全く研究されていない。だか させる緊急の必要があることを強調している。例 ら我々は海藻中の抗酸化物質を探していて,これ 食品と容器 557 2013 VOL. 54 NO. 9 までに得られた結果は我々を大いに勇気づけてく PL Thomas 社 は 南 ア フ リ カ の HG&H れている。最も重要なことは,それが海藻であれ Pharmaceuticals 社とともに,初めて特許化・標 植物であれ,いかに効率よく体に吸収されるかで 準化され,臨床的にも研究されたカンナの抽出物 ある」。 事業を2012年末に始めた。ゼンブリン(Zembrin) として知られるこの抽出物は,抑うつ状態にない SWAFAX プロジェクトのいくつかの結果は, 褐藻の一種であるアスコフィルム属の海藻が抗酸 健康な人の認識作用を高めることが最近わかって 化物質抽出に関して最も可能性が高いことを示し きた。この研究はカナダの西オンタリオ大学で行 ている。Rowland 氏によれば,「抗酸化物質の含 われたが,無作為化や二重盲検,対照にプラセボ 有量は海藻の重量の15%にも上るかもしれない。 を用いるなど非常に信頼性の高い研究である。ゼ 我々が見つけた中で最も見込みがあるのは,アス ンブリンのグループは2つの認知機能で統計的に コフィルム属のような褐藻類に特異的に存在する 有意な向上がみられた。 気分に対する好ましい効果は,2012年7月にオ フロロタンニン類である」。 ンタリオ州ロンドンで開かれた天然の生物活性物 SWAFAX の長期介入研究の予備的な結果は, 最近では北アイルランドのロンドンデリーで開か 質国際会議と,2012年10月プラハで開催された世 れた2012年の C-TRIC 展開医療会議年会で発表 界精神医学協会国際会議で発表された。 された。今年 SWAFAX は,最新の研究結果を PL Thomas 社 の ビ ジ ネ ス 開 発 部 部 長 S. 2013年4月21日から26日にインドネシアのバリで Flowerman 氏によれば,「ゼンブリンは自然な香 開かれる国際海藻シンポジウムで発表する。 りと色をしており,しかも低用量で効果があり, カンナはセイヨウオトギリソウの後継者となる 非常にコストパフォーマンスに優れている。さら のか? には完全に可溶性である。このことは,スナック 植 物 成 分 研 究 で 興 味 深 い 新 し い 進 展 は, 南 バーなどの棒状のお菓子や飲み物といった製品に アフリカ原産の多肉多汁の植物であるカンナ 取り入れることができる,優れた成分であるとい うことである」。 (Seletium tortuosum)の標準化された抽出法の 「過去のセイヨウオトギリソウや店頭で販売さ 導入である。カンナは知的能力を高め,気分を高 れていたその他の気分高揚の製品のことを考え 揚させることが示されている。 ると,ゼンブリンは経済的であるばかりでなく, カンナは,狩人や羊飼いが気分を高揚させる物 質として使われてきた。そしてよく知られている 我々の産業が社会に対して安全で高品質で人々の ヨーロッパの植物のセイヨウオトギリソウ(St. 生活の質を明確に向上させる製品を供給できる機 John’ s wort)よりも,より効果的でより速く効 会を与えてくれる」と Flowerman 氏は言った。 この抽出物は輸出する価値があるということ 果が現れると言われている。 カンナの気分を高揚させる活性は,脳のドーパ で,生物材料の輸出の許可を南アフリカ政府から ミン受容体とセロトニン受容体に作用する多くの 受けている。今後サプリメント製造会社や機能性 アルカロイド,メセンブリンやメセンブレノール, 食品・飲料会社をターゲットにしていきたいと トルツオスアミンなど,によるものである。メセ HG&H Pharmaceuticals 社は述べた。同社は PL ンブリンはカンナの主要なアルカロイドで,セロ Thomas 社と共に,ゼンブリンを新規な食品材料 トニンの取り込みを阻害する物質として明らかに として周知するプロセスを終えるために2年間共 なってきた。このことは,伝統的な気分高揚のた 同で事業を行った。そして北アメリカでゼンブリ めの使用によって実証されている。また治療や健 ンを販売する準備のために研究開発に400万ドル 康(wellness)へカンナを適用することのさらな 以上の投資を行っている。 (長嶋 等) る可能性を示している。 食品と容器 558 2013 VOL. 54 NO. 9 ● 海外技術情報 ● 食品安全強化法:その詳細を議論する ( The Devil’ s in the Details ) Food Technology(USA)p. 59( ’ 13・3 )文献 № 5860 食品安全強化法(FSMA)の成立から2年目 に当たる今年1月4日,FDA はようやく農産物 生産者,食品製造業者に対する規則案を公表した。 FDA の言う「予防的食品安全強化システムの試 金石」となるもので,海外供給業者の検証,動物 飼料の予防管理,公認第三者機関による検証に関 する追加規則案も本年中に公表されるものと思わ れる。この間,FDA は昨年11月に食品安全強化 法に基づく食品汚染に関係する施設の営業停止権 限を行使して Sunland 社を是正措置がなされる 第1図 ウエイトチェッカーや金属探知機は FDA が 目指す科学的管理に資する機器 までの間,ピーナツバターとピーナツペーストの 製造停止処分とした。 食品安全強化法の最重要点は事後対応から科学 言う。Snyder’ s-Lance 社のようなスナック食品 的予防へとアプローチを転換することにあり,登 メーカーでは,目視で設備および食品接触面に汚 録されたすべての食品施設が危害分析とリスクに れがないことを確認しているが,食品安全強化法 基づく管理措置計画の策定を求められる。食品安 では機械設備を微生物学的レベルで衛生管理する 全強化法を米国の食品製造施設の約85%が既に導 ことが求められる。アレルゲンに関する規定で 入している HACCP の別名と捉える向きもある は,異種原料の接触についての対応が必要となる。 が,食品安全強化法ではより詳細な記録の維持と Flickinger 氏は代々受け継がれてきた設備をどう 経営陣の積極的な関与が求められる。 やってクリーニングするかが一番の問題だ,と指 摘する。 FDA はパブリックコメントを5月16日まで受 け付け,その後の修正を経て最終的な規則を連邦 科学的裏付け 議会議事録に記載し公示することになる。規則 H. J. Heinz 社で品質・食品の安全性を担当す 制定後は段階を追ってまず大手企業がおそらく る 副 社 長 K. E. Deibel 氏 は,Food Engineering 2015年を期限にその履行を求められることにな 誌が主催する2012年次食品加工と自動化に関する る。FDA のウェブサイトに両規則案が掲示され 会合における食品安全強化法の現状発表の中で, ているが,製造業者に関する規則は約700ページ 食品安全強化法の規定範囲を1938年食品医薬品化 に及び,難解で内容を調べるには相当の忍耐を要 粧品法(FD&C Act)および1906年純正食品医薬 する。 品法(PF&D Act)と比較した上で,予防管理と ノースカロライナ州シャーロットの Snyder’ s- 検査ならびに順守事項について求められる製造工 Lance 社の製造・技術担当副社長 G. Flickinger 程の検証は極めて複雑なものだと語っている。資 氏はこの2年間,自社10工場で食品安全強化法 格を持った要員が問題となる病原体を特定するた 対応の地ならしを進めてきたが,問題を特定し めに科学文献を検討,工場のすべての必須管理点 て解決し,解決したことを証明する上で生産者 からデータを収集して管理の効果を評価し既存の は予想以上に大きな能力を期待されている,と 処置の効果を定量化することが必要だ。 食品と容器 559 2013 VOL. 54 NO. 9 オハイオ州コロンバスの Mettler-Toledo Product Inspection 社で,食品の安全性と法規を担当する 上級アドバイザー R. Rogers 氏は,製造業者が対 処しなければならない汚染に放射線危害を含めた 点は留意すべきだとしている。FDA が関心を向 けているのは原材料の汚染だというのが,関係者 の一致した見方だ。日本の原子炉3基でメルトダ ウンを起こさせた2011年の津波が,今後何世紀に もわたる土壌と穀物汚染の不安を生じさせ,北米 に飛来してくる放射線を検出すべく渡り鳥の監視 第2図 金属探知機は既存機器の入れ替えではなく, 複合的な検査の一部として組み入れるのが望ましい。 調査が行われている。 リスクに基づいた FDA の危害分析と予防管理 が,HACCP とどのように異なるのかも不明瞭な アルコール・タバコ・火器取り締まり局は司法管 点だ。文書化の要件は HACCP よりもっと広範 轄における権限を維持しており,商務省は依然と 囲にわたり,CCPS(重要管理点)のみならずす して魚介類の加工に関する管理権限を持っている。 べての管理手段の詳細な管理を要求している,と だが,企業によっては複数の当局に対する対応を カンザス州マンハッタンの AIB International 社 迫られ混乱を引き起こす可能性もある。その典型 の食品安全教育担当副社長の S. Lopez 氏は言う。 的な例が FDA の管理下でチーズピザを製造する 工場で,同時にペペローニピザも製造する場合だ。 コ ン サ ル タ ン ト の J. McEntire 氏 は, こ れ ま でに公表された1,000ページに及ぶ規則案に表れ McEntire 氏によれば,ペペローニピザの重量の た FDA が期待するところを詳細に把握した上で, 3%以上を畜肉が占める場合には,その製造ライ 供給業者の検証,環境モニタリングならびに最終 ンは FSIS 検査官の日々の管理のもとで操業する 製品のテストに関する規則がまとまるまでは判断 ことになる。食品安全強化法は3年を超えない間 を保留する,として,規則がまとまる前に食品の 隔で製造施設を検査することを規定しているが, 専門家は疑問点や懸念,提案について声を上げる 第112回連邦議会は FDA に登録された米国内外 べきだ,と指摘する。また,規則順守の鍵となる の456,000カ所以上に及ぶ施設を巡回する大量の のは記録の維持だと同氏は言う。食品安全強化法 検査員を採用・訓練するために必要な予算配分を は規則順守文書に電子署名することを求めては 行わなかった。FDA 規則案の公表が遅れたのも いないが,バージニア州シャーロットビルの GE 極端なスタッフ不足が主たる原因となっている。 Intelligent Platforms 社の K. Beissel 氏は,この 当局は規則制定を協調して進めるべく努力して 法律が多くの食品企業をデータベース化に向かわ おり,Heinz 社の Deibel 氏も FDA は従来よりも せると信じている。製造中に問題が生じればオペ 業界のニーズに歩調を合わせている,という。昨 レーターは書類の作成を放棄して対応せざるを得 年ブラジルから輸入された濃縮オレンジジュース なくなる。記録が自動的に収集されていなければ に農薬のカルベンダジムが検出された際,出荷11 欠落が生じて食品安全強化法のもとでは認められ 件に許容値10ppb の5~11倍の残留農薬が検出さ ない。特に予防管理に関する記録の欠落は出頭命 れたが,FDA は環境保護庁(EPA)および保健 令や実質的に生産中止を招く登録の停止にもつな 衛生当局との協議の上で輸入を許可した。これ がりかねない,と AIB 社の Lopez 氏も指摘する。 は FDA が新たな現実対応の姿勢を示したものだ, 複数の当局による規制 と Deibel 氏は指摘する。公認第三者機関による FDA 以外の当局の管理下にある食品製造業者 施設検査員の認証に関する規則の策定も,民間と に,食品安全強化法の効力が直接及ぶことはない。 の協力により進められており,FDA は食品安全 食品と容器 560 2013 VOL. 54 NO. 9 れから整備することになる。 サービスプロバイダー(FSSP)と称するグルー 中小企業にとって食品安全強化法への対応は極 プの提言を受け入れた。 一方,食品安全強化法を運用するために必要な めて困難な仕事となろうが,法律の適用開始を待 インフラの構築には,依然として多くの作業が残 つことなく今から製造手順とプロトコルの再編を されている。イリノイ工科大学は法を運用する要 始めるべきで,今すぐに最終ラインに到達する必 員の訓練向け教材開発のために,2011年に100万 要はないが,スタートラインに止まっているのは ドルの補助金を受けた。食品企業が,工場の日々 得策ではないと Mettler-Toledo 社の Rogers 氏は の食品安全計画を管理していくには資格を持つ人 助言する。 (桜田三郎) 材の確保が必要で,そのための訓練要員体制はこ ● 海外技術情報 ● 缶と競合するレトルトパッケージ ( Cans in Competition-How Alternative Types of Retort Packaging Are Gaining Ground ) Food Engineering & Ingredients(BEL)p. 37( ’ 13・2/ 3 )文献 № 5864 缶詰食品産業の誕生から200年が過ぎたが,缶 しても加熱され過ぎて,内容物の味覚特性に悪い 詰食品はスーパーの棚,そして消費者の台所では 影響を与える。また,缶の形状のため,輸送コス 依然主要な存在である。長期にわたる食品保存手 トおよび保管コストに加え,二次的に大きなデッ 段として,缶製造プロセスは有効であるが,缶詰 ドスペースができることも避けられない。開封の 食品市場の将来展望は明るくないようだ。プラス しやすさ,鋭いエッジによる安全上の問題,食缶 チックチューブやトレー,ホイルパウチやカート の内面塗装に使用される化学品の安全性懸念など ンなどのレトルト可能なパッケージという缶詰代 の課題もある。従来の缶には,消費者が何にもま 替品によってもたらされる脅威が増大している。 して利便性を評価する時代における欠点もある。 これらはどれ一つとして新しいアイデアではない 食器として安易には使用できないし,また中身を が,原材料費の値上がりや環境に対する関心が高 再加熱すべく電子レンジに入れることもできない。 まるにつれ,食品産業が直面する事業環境が急速 さらに金属価格はエネルギーコストの上昇と共に, に変わりつつあるのだ。技術改良と相まって,こ 最近数年間で大幅に上昇した。 れらの変化により,以前は非経済的であったパッ 缶メーカーはこうした課題に直面して手をこま ケージが魅力的になってきた。食品製造者は,缶 ねいていたわけではない。これらの問題のいくつ 詰代替パッケージを採用することによって,不振 かを克服することをめざして,開発が行われてき にあえぐ長期保存可能な食品市場を活性化させる た。いくつかの用途では3ピース缶より軽量な2 機会に目を向け始めている。 ピース缶やアルミ缶が,従来の3ピースのブリ 缶メーカーが直面する課題 キ溶接缶に取って代わり,コスト削減に役立っ 従来の食缶は食品容器の条件としては不利な点 た。2ピース缶は成形の点で,食器としてより受 がある。缶詰食品は商業的無菌性と安全性を達成 け入れられやすいボウル型,タブ型缶の開発が可 するため長時間の加熱処理をする必要がある。一 能になり,ずっと変化に富む。易開封性の缶蓋も 般的には,加熱が一番遅いポイントで,少なくと 欧州で販売されている食缶の3分の2に採用され も3分間は121℃に達しなくてはならない。大部 てきた。缶オープナーの必要がなくなることは食 分の缶詰製品で,加熱が一番遅いポイントは中心 缶を本当に便利な容器にする大きなステップだっ 部付近であり,缶の形状から一部の内容物はどう た。電子レンジ対応のスチール缶開発も試行がな 食品と容器 561 2013 VOL. 54 NO. 9 され,2006年には Ball 社から Fusion-Tek™ 缶が もう一つの重要な問題がまだ解決されていない。 初めて発売された。この製品には,プラスチック 缶とガラスジャーはリジッド(固さがある)だが, の底蓋,イージーピール蓋,プラスチックのオー プラスチックトレー,ホイルパウチやカートンは バーキャップがあり,スープやその他の調理済み そうではない。パッケージが真空状態でシールさ 食品用にデザインされた。 れない限りわずかな量の空気が残存し,レトルト その他のレトルトパッケージ形態の技術的課題 で商業的無菌性を達成するのに必要な温度まで加 アルミホイルパッケージやプラスチックトレー, 熱すると膨張する。リジッドな缶ではこれは問題 プラスチックポット/ジャー ,ホイルパウチ, ではないが,セミリジッドなパッケージでは,特 レトルトカートンといったパッケージが,金属缶 に冷却時,パック(袋)が膨張したり,歪んだり の代替品として開発されたが,技術的課題や高コ するし,パックのシールが全くできないことが起 ストが重なって,つい最近までこれらの市場全体 きる。この問題の解決策は,処理の間中ずっとレ シェアは10%を下回る状況が続いた。しかしなが トルト装置内をエアーで圧力過多に維持し,パッ ら,今や,進行中の開発や金属缶に関連するコス クの内圧変化をバランスさせ,膨張を防ぐことで ト上昇がきっかけとなって,多くの食品業者がそ ある。このエアー加圧レトルトは,バッチ処理で れら代替品の見直しを促進している。 は長年商業的に利用されているが,最近連続レト 1) ゆが レトルト処理の温度に耐えられる熱可塑性プラ ルトシステム用に開発された。例えば,英国に拠 スチックポリマーやその他のパッケージ素材には, 点を置く CRL 社には,スタンディングのホイル ポリプロピレンやエチレン・ビニールアルコー パウチ,プラスチックポット,蓋付きトレーばか ル(EVOH)フィルムなど多くのものがある。し りでなく,ガラスジャーや缶も取り扱える連続レ かし,われわれを取り巻く食品の長期保存性には トルトシステムがある。連続レトルトシステムは パッケージに適正なバリアー特性が求められる。 バッチレトルトより速いラインスピードで,エネ 最近のラミネートバリアーフィルムはパッケージ ルギー,水の節約をもたらす潜在能力がある。 を受け入れがたいほどには厚くせず,またコスト 缶の代替品 もかけずにこれに適合している。多くのレトルト ホイルトレー パッケージにはバリアーとしてアルミホイル層が アルミホイルトレーは缶やジャーに匹敵するバ あるが,二酸化ケイ素,酸化アルミ,ポリ塩化ビ リアー特性を持ち,腐食を防ぐラッカーコートで ニリデン(PVDC)バリアー層でコートされた透 保護されている。しかし,トレーへのホイル蓋の 明フィルムが使われることもある。充填中のシー シーリングは,蓋フィルムとトレーに通常ポリプ ル部の汚染は缶の代替品にとって,もう一つの問 ロピレンのシーラントフィルム層を設けることで 題である。充填時に容器の縁に残ったほんの小さ 達成されるが,問題となることがあり,また電子 な粒子でさえ,パウチを閉じたりフィルムで蓋を レンジでは使えない。主な活用はプレミアムペッ する時,ヒートシールの強度を著しく損なう。し トフードブランドのパッケージとして,缶とは明 かし,より好ましいデザインや充填機器,そして 確に視覚的な差別化がなされ,付加価値の形成に シールテスト方法の改善のおかげで,缶詰並みの 役立ってきた。 プラスチックトレー 低い不良率に近づいている。 多様で時折複雑な代替レトルトパッケージの形 熱成形プラスチックトレーは電子レンジ対応 状は,安全な加熱プロセス計算には問題だが,幸 が可能であるが故に,アルミホイルトレーより い利用可能なコンピューターの計算能力と洗練さ 多様である。通常,EVOH または PVDC のバリ れたソフトウエアによって,パッケージデザイン アー層を積層した CPP(無延伸ポリプロピレン) の段階で正確にモデル化され,さまざまなパッ から作られている。蓋フィルムは通常,内面 PP ケージ形状への熱浸透が可能である。 シーラントフィルムと外面ポリエステル層でラ 食品と容器 562 2013 VOL. 54 NO. 9 レトルトカー ミネートされたメタルホイルのバリアー層であ トン り,印刷可能で,引き裂きや摩耗に強い。EVOH のようなバリアープラスチックを組み込んだ透明 比較的最近ま フィルムも,メタルホイルに替わって使うことが でカートンは無 できる。レトルトトレーは電子レンジで再加熱す 菌充填製品ある るように作られた調理済み食品のような製品に特 いは高酸性食品 に適している。 にしか使われな プラスチックポット/ジャー かった。しかし, 多様な形と大きさのポット,ボウル,タブ,ジャー TetraPak 社 の がレトルトトレーに使われた素材と同様の素材で Tetra Recart ® 開発された。蓋フィルムを覆うオーバーキャップ レトルトカート が取り付けられ,スーパーの棚での展示を改良す ンの発売によっ るばかりでなく,パッケージを開封した後でも冷 て,カートンが 凍貯蔵用に再度封をすることもできる。缶に対し 従来の缶の市場 て付加される利点の主なものは,食器としての適 シェアを取るこ 性である。例えば,煎 り豆のような一人分のス とも可能になっ ナック製品が,レトルトポットで売られている。 た。再生可能な い 2011年 導 入 の Tetra Recart は, 充 填された内容物をパッケージ内部で 殺菌する事を可能にした最初のレト ルト可能なカートン。Tetra Recart パッケージは400g缶に比べ64%も 軽量化されている。 レトルトパウチ 木材繊維,アル パウチ,特にガゼット付きのスタンディングパ ミホイル,その ウチデザインは,近年急速に市場で伸びている。 他のバリアー メタル缶よりずっと軽く,コストと使い勝手で競 素材のラミネートで製造された Recart は頑丈で, 合する。多くはレトルトトレー用の蓋フィルムに トップシームにあるミシン目の入った帯状部で簡 使われている素材と同様のもので作られている。 単に開けられる。無菌充填用途において技術は十 EVOH / PVDC を使ったバリアープラスチック 分に立証されているし,カートンはスペース効率 の透明のラミネートパウチも利用できるし,ナノ の点で群を抜き,物流コストを節約しながら,な クレイのようなナノ素材をフィルムに組み込むこ おかつグラフィックスやブランド情報のための非 とで透明フィルムのバリアー特性を格段に向上さ 常に大きな印刷可能領域がある。主な適用は野菜, せる可能性もある。パウチデザインは電子レンジ スープ,ソースである。こうした競合他社の強力 対応が可能で,人目を引くグラフィックスや陳列 なラインアップに直面すると,一部の缶詰食品が 棚での見栄えには十分な印刷可能領域がある。開 缶以外のパッケージに取って替わるかもしれない。 封しやすく,レトルト可能なジッパータイプのク しかしながら,200年の歴史を背負っている金属 ロージャーが装着されており,パウチは開封し 食缶の強さと信頼性は立証済みであることから, た後でも再封でき,必要な時まで貯蔵可能であ 金属食缶には,今後多年にわたり,かなりの市場 る。パウチはレトルトですぐに加熱され,薄い壁 規模が約束されているはずである。 (常盤恭徳) と“枕のような形状”によって処理時間の大幅な 削減ができ,結果的に品質メリット,ならびにエ 訳注) ネルギーの節約が可能である。レトルトパウチ適 1) ジャー(jar):原義は食品保存用の蓋付き広口ガラ 用例は,ペットフード,ソース,調理済み米,調 ス容器のこと。プラスチック製の場合プラスチック 理済み野菜,肉およびスープである。 食品と容器 ジャーという。 563 2013 VOL. 54 NO. 9 連載エッセー 食べもの随想 74 3人のアメリカ人 ―リンカーン・ジェファーソン・フランクリン ― た むら しん ぱち ろう 田 村 真 八 郎 (元農水省食品総合研究所長) 現在・平成25年(2013)の夏,日本では憲法に このような東南アジアの状況から各地域を開放 ついて多くの意見が出され,議論が行われていま しようという名目で,日本政府は大東亜戦争と呼 す。 んだわけです。しかし現実には,日本はアメリカ 筆者は特別に強い関心を持っているわけではあ との戦争に負けてしまいましたから,現在では太 りませんが,思い出してみると日本国憲法につい 平洋戦争という呼称が用いられ,大東亜戦争は使 て話を聞いた時期があります。それは高校時代で われなくなりました。 一方で,イギリス・フランス・オランダなどは, した。日本がアメリカと戦った太平洋戦争・昭和 16年~20年(1941 ~ 1945)に負けた直後の時代 ヨーロッパでのヒトラーのナチ・ドイツとの戦争 です。 によって国力が弱り,東南アジアでは支配力の空 太平洋戦争というのはアメリカ側の呼び名です。 白状態が生じました。その中で東南アジアの各地 日本側の呼び名は大東亜戦争でした。アメリカと 域で独立戦争が始まり,各国は一応の独立を達成 の戦争を始める以前に,日本は満州(現在の中国 したわけです。日本の戦争目的の一つは曲がりな 東北地方)や中国で戦争をしていたからです。太 りにも達成されたわけです。 しかし,日本はアメリカに無条件降伏したので, 平洋だけでの戦争ではなかったからです。戦争と マッカーサーを総司令官とするアメリカ軍に占領 は言わずに支那事変と言っていましたが。 アメリカとの戦争を始めると同時に,日本は東 されてしまいました。そしてアメリカは日本社会 南アジア全体に戦争を拡大しました。東南アジア に,それまでの軍国主義・日本中心主義を捨てさ は当時ほとんどヨーロッパ諸国や,アメリカの植 せ,アメリカン・デモクラシーの考え方を教育し 民地とされていました。それらを植民地支配から ようとしたわけです。本来アメリカ軍は占領軍な 解放することが日本政府のスローガンのひとつで, のですが,日本社会は占領軍と呼ばず,進駐軍と それで日本は大東亜戦争と呼んだわけです。 呼んで感じを和らげようとしました。 ベトナム・カンボジア・ラオスはフランスの支 進駐軍はアメリカ本国の意向にそって,アメリ 配下にあり仏印と呼ばれていました。インドネシ カン・デモクラシーを日本社会に理解させようと アはオランダの支配下にあり,蘭印と呼ばれてい し,学校教育にも,その面の教材が入って来まし ました。ビルマ(現在のミャンマー)は,セイ た。筆者は高校の2年だったと思いますが,そう ロン(現在のスリランカ)・インド・マレー半島 した教材の中で3人のアメリカ人,リンカーン・ (現在のマレーシア)・シンガポールと共にイギリ ジェファーソン・フランクリンについての知識を 得たわけです。 スの支配下にありました。またフィリピンはアメ 私は自分でいうのもヘンですが,どちらかとい リカの支配下にあったわけです。独立国の面目を えばスナオな性格でしたので,それまでの日本人 保っていたのはタイだけでした。 食品と容器 564 2013 VOL. 54 NO. 9 の考え方よりはアメリカ人の考え方のほうが,や デモクラシーの思想を構築した人々の中でも,ず はり優れていると思っていました。それで日本国 ば抜けて重要な人物だったようです。 憲法と3人のアメリカ人の思想などについて学ぶ 太平洋戦争後のアメリカ軍占領下の日本で 中で,この3人を尊敬するようになりました。今 は,いわばジェファーソンのブームでした。ジェ でも尊敬しています。 ファーソンは文筆の才があったので,起草委員長 として,アメリカ独立宣言の作成に当たりました。 エイブラハム・リンカーン(1809~1865)はた いそう有名なアメリカ人です。日本においても誰 南部のヴァージニア州の発展のための制度をつ でも子供の頃から,奴隷解放を実行した大統領と くり,有名なヴァージニア大学を創設しました。 して尊敬しています。リンカーンは貧農の家に生 ベンジャミン・フランクリン(1706~1790)は 凧の実験で,日本ではたいそう有名なアメリカ人 まれましたが,苦学して弁護士になりました。 その頃,アメリカを二分していた考えがありま です。ボストンの生まれで,幼い頃から印刷所で した。奴隷に頼らないとアメリカは繁栄できない 働き,苦学して政治家になりました。自然科学に とする,主として南部諸州の考えと,奴隷は解放 も興味を持ち研究の結果,雷は電気と同じ物だと して商工業を発展させて近代国家になるべきだ, 考え,凧揚げの実験をしてこれを確かめました。 との北部諸州の考えです。 それで避雷針を発明して人類は雷を避けることが リンカーンは強力に奴隷解放を主張しましたか できるようになったわけです。しかし,この凧の ら,多勢の味方と多勢の敵とをつくったわけです。 実験は危険だそうですから,マネをすることは厳 禁です。 それでリンカーンが第16代の大統領に選出され ると,南部諸州はアメリカ合衆国からの脱退を表 なお,漢字文化圏の中国では,電気の電の字は 明しました。リンカーンはアメリカの分裂をくい 雷にシッポがついたような字になっていますから, 止める必要があると考え,南北戦争(シヴィル・ 雷は電気だと気がついていたのでしょう。 政治家としてのフランクリンは,アメリカ独立 ウォー)が始まりました。 はじめは,北軍は連戦連敗に近い状態だったよ 戦争時代に活躍し,独立宣言起草委員会の一員と うです。南軍の司令官・リー将軍がきわめて優れ なり,何十才も年下の委員長・ジェファーソンを た指揮官だったからです。しかし,最後に北軍の 助けました。また対英交渉や対仏交渉をこなし, グラント将軍にゲッティスバーグで降伏しました。 アメリカがヨーロッパの強国から完全に独立した その時のリンカーンの演説が有名です。<・・・ アメリカン・デモクラシーの社会を形成するため 人民の人民による,人民のための政治・・・>は の基盤を構築するのに大きな貢献をしました。 フランクリンの『自叙伝』は有名です。その中 民主主義の理念となりました。 リンカーンは大統領に再選されましたが,翌 の一節が設けられていたのかどうか,定かではな 年,南部出身のブースにより暗殺されてしまいま いのですが,書物の読み方について学んだことが す。味方も多かったが,敵も多かったということ あります。序文と後書きをよく読むこと,それか でしょう。 ら本文を読み始める前に目次を入念に読むことで した。筆者はそれまで目次をよく読まずに本文を トーマス・ジェファーソン(1743~1826)はア メリカの第3代大統領だった人です。リンカーン, 読んでいました。 フランクリンほどには日本では名前が知られてい しかし現在ではフランクリンの意見に従って, ないと思います。筆者もおそらく高校時代に学校 目次を入念に調べることにしています。さらに, で話題にならなければ,知ることはなかったで 本文を読みながらも,しょっちゅう,目次を確か しょう。 めるようにしています。そのことによって,その 本の著者が,何を読者に伝えたいとしたかが,明 リンカーンは<・・・彼を,アメリカ民主主義 確にわかるように考えています。 の父・・・>と呼んだそうですが,アメリカン・ 食品と容器 565 2013 VOL. 54 NO. 9 ● 特別解説 ● 日本語のテクスチャー表現と対象食物名について は や か わ・ ふ み よ お茶の水女子大学大学院博 士課程修了。同助手,小田 原女子短期大学助教授,上 海水産大学客員副教授を経 て,現在,独立行政法人農 業・食品産業技術総合研究 機構食品総合研究所主任研 究員。 博士(学術) 早 川 文 代 日常的に,無意識のうちに言葉を使い分けている。 1.はじめに ~官能評価における 用語の重要性 多彩なテクスチャーの表現の中から,どのよう な用語を官能評価の項目として選べばよいか。こ 食べ物のテクスチャー(食感)は,おいしさに れは重要な問題で,例えば, 「油っこい」と「油っ 関わる大きな要因の一つである。テクスチャーは, ぽい」などのように,似たような言葉でもニュア 食品の物理的な要素が背景にあるが,物理の専門 ンスが違えば,官能評価結果が変わることがある。 用語だけでは研究内容は説明できないし,そもそ また,「ねばねば」の反対語は何か,「もちもち」 も,研究の計画もできない。なぜなら,テクス はどんな意味かなどについて,曖昧なまま官能評 チャーは,人間が感じるものだからである。 価を行うと,曖昧な結果しか得られない。適切な 官能評価には適切な用語の使い方が前提となって 一見,アカデミックではないように思えるかも いる。 しれないが,「サクサク」や「なめらか」といっ 用語を選ぶ際には,参考資料があると便利であ た,人間が知覚したテクスチャーを表す言葉は, る。日本語にはどのようなテクスチャー用語が テクスチャーの研究や分析において重要な役割を 注1 の場合 あって,それぞれの用語は,どのような食べ物 は評価項目に用いられるし,機器測定の場合は結 の,どんな要素について表現しているかについて 果の解釈に用いられる。しかし,言葉には曖昧さ 情報が得られる用語体系があれば,白紙の状態か があり,さらに,テクスチャー自体も複合的で複 ら用語を選ぶよりも,はるかに効率的である。実 雑なものなので,テクスチャーを分析するには, 際,テクスチャーの用語体系を作成する試みは各 その前提として「テクスチャーを表す言葉」が 国でなされていて,英語1)2),ドイツ語3),フラ 「テクスチャー用語」として整理されている必要が ンス語4),中国語5),フィンランド語6)など,い 果たす。このような言葉は,官能評価 ある。 くつかの言語でテクスチャー用語のリストや用語 日本語のテクスチャーの表現は多彩である。私 体系が作成され,公開されている。そこで,著者 た ち は, 例 え ば「 シ ャ キ シ ャ キ の レ タ ス 」 や らは,日本語のテクスチャー用語体系の作成を試 「シャリシャリのスライスオニオン」といった表 みた。本稿では,用語体系の作成の過程で,各用 現にある,「シャキシャキ」と「シャリシャリ」 語が形容する対象食物名の収集を行い,集計,解 のような,似たような言葉の微妙な違いを認識し, 析したので,そのデータの一部を紹介したい。 食品と容器 566 2013 VOL. 54 NO. 9 ポテトチップス」,「しっとりしたパン」等,擬音 2.日本語テクスチャー用語の収集7) 語・擬態語は頻繁に用いられている。もし擬音 語・擬態語を使わずに食べ物のテクスチャーを表 著者らは,日本語テクスチャー用語体系の作成 現するとしたらもどかしい思いをするに違いない。 にあたって,まず,日本語のテクスチャー用語を収 7) 粘り,弾力,ぬめりの表現が多いことも特徴 集し,用語リストを作成した 。すでに本誌48巻 8) 第8号 で紹介したので,ここでは概略のみ述べる。 の一つである。「ねっとり」や「ねばねば」等の 2003年に,仙台,東京,大阪,鹿児島の4地点 粘りの表現,「ぬるぬる」や「にゅるっ」等のぬ で,食品分野の研究者合計116人に自由記述式の めりの表現,「ぷりぷり」や「ぷるぷる」等の弾 アンケートによって,テクスチャー表現を思いつ 力を表現する擬音語・擬態語が日本語のテクス く限り挙げてもらった。あわせて,専門書や辞書 チャー表現には多く見られる。ここには,日本で 類からもテクスチャー表現を収集した。さらに, 食べられている食材や日本人のテクスチャー嗜好 テクスチャーの研究者55人へのアンケートを実施 が背景にあるのではないかと推測される。日本人 して用語の検証を行い,最後に,長い経験と高度 は,古来,もちなどの粘りのある食品を好んで食 な専門知識を有するテクスチャー研究の専門家4 べてきた。納豆,里芋,こんにゃく等の粘り,ぬ 人に面接調査を実施し,リストに過不足がないか めり,弾力が特徴の食品も多い。食の表現は,そ を確認した。このようにして, 最終的に日本語テクスチャー 表現として445語を得た(第 1表に一部を抜粋。全445語 は本誌48巻第8号8)あるいは 原著論文7)をご参照いただき たい)。 日本語テクスチャー表現の 最大の特徴は数が多いことで ある。英語の例で77語1),ド イツ語では105語 3),フラン ス語では227語 4),中国語で は144語 5)であった。これら の報告は,調査方法や時期が 異なるので,厳密に比較する ことはできないが,それにし ても,日本語のテクスチャー 表現は数が多いといってよい であろう。 第 2 の 特 徴 は, 擬 音 語・ 擬 態 語注2 が 多 い こ と で あ る。用語リストの445語のう ち,約70%は擬音語・擬態語 で あ っ た。 確 か に, テ ク ス チャーを表現する際,「サク サクのパイ」,「パリッとした 食品と容器 第 1 表 日本語のテクスチャー用語リスト(一部) 用語 あ 厚い 脂っこい 油っこい 脂っぽい 油っぽい 粗い 泡状の 泡の立つ い いがいが 糸を引く う 薄い うろこ状の え 液状の 液のしたたる お 重い か かくばった かさかさ がさがさ かさつく かすかす かたい 硬い 堅い 固い 塊状の かちかち がちがち かちんかちん かちんこちん がっしり かどばった 用語 かみ切れない かみごたえがある かゆ状の からから からっ からみつく からり カリカリ ガリガリ カリッ ガリッ 顆粒状の 軽い 乾いた 皮ばった き キシキシ ギシギシ ぎっしり ぎとぎと ぎとっ きめ細かい 吸湿性がある 球状の 吸水性がある 強靭な 切れやすい 均一な く くしゃくしゃ ぐしゃぐしゃ くしゃっ ぐしゃっ け 用語 用語 ぐずぐず こ コキコキ くずれやすい こくがある くたくた 固形の くだけやすい こしがある くたっ こちこち 口あたりがよい こちっ 口ざわりがよい こちんこちん 口どけがよい ごつごつ くちゃくちゃ こってり ぐちゃぐちゃ 粉状の くちゃっ 粉っぽい ぐちゃっ 粉をふいた くちゅくちゅ 細かい ぐちょぐちょ ゴムのような ぐちょっ コリコリ くっつく ゴリゴリ くにゃくにゃ コリッ ぐにゃぐにゃ ゴリッ くにゃっ ころころ ぐにゃっ ごろごろ くにゃり ころっ ぐにゃり ごろっ くにゅくにゅ ころり ぐにゅぐにゅ ごろり ぐにゅっ こわい(強い) くにょくにょ ごわごわ ぐにょぐにょ ごわっ ぐにょっ こわれやすい クリーミー クリーム状の 結晶状の 日本語テクスチャー用語 445 語のうち,あ行,か行の 121 語 567 2013 VOL. 54 NO. 9 集した.回答者の負担を軽減するため,445語を, 第2表 出現頻度の高い食物名上位 50 品目 食物名 頻度 食物名 頻度 漢字は異なるが意味が類似した用語(「堅い」お ゼリー せんべい 餅 こんにゃく プリン うどん 豆腐 パン グミキャンディ 納豆 ラーメン ガム そば チョコレート アイスクリーム 飴 里芋 きゅうり ヨーグルト ところてん はちみつ イクラ おかき スナック菓子 マシュマロ 296 258 245 206 193 170 161 151 149 139 130 128 128 127 125 123 122 117 108 103 102 101 100 99 99 山芋 オクラ キャラメル クッキー チーズ 白飯 生クリーム するめ めかぶ かりんとう 水飴 おかゆ パイ 海苔 中華まん ポテトチップス 綿菓子 イカ 饅頭 じゃがいも さつまいも シチュー 昆布 団子 ソフトキャンディ 99 98 98 98 97 97 96 94 88 87 87 86 84 83 82 82 82 81 81 79 78 78 77 77 76 よび「硬い」等),擬音語・擬態語で同じ音から 派生した用語(「カリカリ」および「カリッ」等) は一つの用語群とし,271用語群をアンケートに 用いた。回答者には,各用語群が形容する候補と なる食物名を自由記述式で記入させた。その際, 素材名でも,料理名でも,商品名でもよいと指示 した。得られた回答は,辞書類や事典類を参照す るなどして食物名の表記を整理し,集計した。そ の結果,全271語群から挙げられた食物の品目数 (種類)は,935品目であった。 全271語群に対する18人分の回答を合計した際 の出現頻度が高いものから,上位50品目を第2表 に示した。ゼリーが296と最も多く,次いでせん べい,餅,こんにゃく等であり,いずれもテクス チャーが特徴的で,かつ日本人の食生活になじみ のある食物名が上位を占めていた。また,テクス チャー用語の収集の際に,粘り,弾力,ぬめりの 表現が多いことの背景には,そのような食物が日 本人の食生活に重要な位置を占めているからであ ろうと推測したが,確かに,第2表には,餅,こ 271 語群に対して,18 人の評価員が各語群から想起した食物 名を集計し,全用語群のデータを合計した。 んにゃく,納豆,里芋,ところてん,山芋等,粘 り,弾力,ぬめりが特徴的な食物が多く見られた。 各用語から挙げられる食物名の集計データは, の言葉が使われる地域の食生活や食習慣を色濃く 官能評価において評価用語を選ぶ際のデータベー 反映しているのであろう。 スとして利用することが可能である。例えば,ゼ 3.用語が形容する食物名の収集9) リーの官能評価用語を選ぶのであれば,ゼリーが 実際の官能評価の用語選定の際に,それぞれの 挙がっている用語を抽出すれば,評価用語の候補 テクスチャー用語がどのような食物に使われるか が得られる。このとき,出現頻度は重要な判断基 についてのデータがあれば,候補用語を検索する 準となる。 また,このデータは,各テクスチャー用語の意 ことができる。また,用語の意味を理解したり, 英語で用語の説明をしたりするのに,その用語が 味の理解の手掛かりとなったり,用語の説明の際 どのような食物に使われるか,という情報は大き のキーワードとなったりすると考えられる。例 な手がかりとなる。そこで,アンケートによって, えば,「きめ細かい」は,絹ごし豆腐,茶碗蒸し, 各用語が使われる食物名を収集した。 プリン,きんとん,クリーム,パン等が挙げられ, こしょう (独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合 「細かい」は,ごま,胡椒,粉砂糖等が挙げられ 研究所(以下,農研機構食品総合研究所)の近隣 ていた。「きめ細かい」と「細かい」は,言葉は 10) から ISO8586 に従って選抜,訓練され,3~5 一見似ているが,両者を比較すると,前者は豆腐 年のテクスチャーの官能評価に経験のある18人の やクリーム等のゲル状あるいはゾル状の食品,パ パネルに対してアンケートを行い,食物名を収 ン等のスポンジ状食品に対してよく使われ,後者 食品と容器 568 2013 VOL. 54 NO. 9 第3表 日本語テクスチャー用語体系の一部 1. 力学的特性 1.1 噛みごたえ 1.1.1. 引き締まった感じの弾力 しっかり 羊羹(4),押し寿司(3),フランスパン(3) ぶりぶり エビ(5),こんにゃく(5),ソーセージ(4),イカ(3),刺身(3),ゼリー(3) : むっちり 餅(5),中華まん(4),ハム(4),パン(3),ピザ(3) 1.1.2.ほどよい噛みごたえのある弾力 こしがある うどん(18),そば(17),ラーメン(12),餅(9),スパゲッティ(6) しこしこ うどん(14),ラーメン(10),そば(8),冷麺(4),イカ(3),かまぼこ(3),昆布(3) : もっちり 餅(14),パン(11),ギョーザ(7),うどん(6),団子(6) 1.1.3.のびる感じの弾力 ゴムのような ガム(9),タコ(5),イカ(4),グミキャンディ(4),肉(4) しなやか かまぼこ(3) : 2. 幾何学的特性 2.1. 空気 2.1.1.かたい気泡壁 かすかす ふ菓子(8),ごぼう(5),おから(3),カステラ(3),ラスク(3) すかすか ふ菓子(8),すいか(4),スナック菓子(4),大根(3),りんご(3),れんこん(3) : 3. その他の特性(油脂と水) 3.1.脂肪 3.1.1.油脂の濃厚感 脂っこい 天ぷら(11),とんかつ(9),豚骨ラーメン(8),ラーメン(7),豚の角煮(5) : 大分類(1.力学的特性,2.幾何学的特性,3.その他の特性)は ISO11036 Texture Profile12)のテクスチャーの3要素に対応して いる。また,食物名の後の( )内の数字は回答者である訓練された官能評価員18人のうち,何人が挙げたかを表す。 は粒状や粉状の食品に対してよく使われるといっ ンデンス分析注3 を適用した。第1図は用語の散 たように,用語の違いを明確に示すことができ 布図である。第1図の第1次元は,正の方向に 9) る。用語と食物名のデータの一覧は,既報 をご 「歯切れがよい」や「ポキポキ」等の破砕を表現 あめ 覧いただきたい。また,さらにアンケートによっ する用語,負の方向に「水飴状の」,「たらたら」 て用語の類似性についてのデータをとり,解析 等の流動を表現する用語が布置されており,第1 11) し,用語を分類して ,食物名とともに用語体系 次元は,破砕を表す軸と解釈できた。また,第2 を作成した。用語体系は,農研機構食品総合研 次元は,正の方向に「ぬめりがある」 ,「こりこ 究所のホームページで公開しているので,そち り」等,負の方向に「泡状の」,「わた状の」等が らをご参照いただきたい(用語体系のイメージは 布置されており,空気による軽さを表す軸と解釈 第3表,URL は,http://www.naro.affrc.go.jp/nfri/ できた。1990年代後半に著者ら13)が行った食感覚 introduction/files/2013-yougotaikei.pdf) 。 を表現する擬音語・擬態語の代表的な用語53語 と食物名との関係の解析結果も,1960年代に吉川 4.語彙の主要な要素の抽出 ら14)が行ったテクスチャー用語と食物名との関係 テクスチャー用語全体を構成する主要な要素を の解析結果も,軸の命名は多少異なるものの,用 調べるために,用語と食物名のデータにコレスポ 語の配置は同様の傾向であった。調査時期,対象 食品と容器 569 2013 VOL. 54 NO. 9 とする用語数,出現している食物,評価者等が異 るので厳密な比較ではないものの,テクスチャー なるにもかかわらず,同様の傾向が示されており, 語彙の構造を解析した場合,言語が異なっても, 日本語のテクスチャー語彙は,破砕および空気に 破砕および空気による軽さは,語彙を構成する主 よる軽さが主要な構成要素であることが示された。 要な要素であるという共通点があることが示唆さ また,本研究とは方法が異なるものの,Lawless れた。 et al. 6) が,フィンランド語のテクスチャー用語 5.おわりに 71語と英語66語を解析した結果でも,おおよそ同 様の結果が得られている。すなわち,方法が異な 官能評価においては,十分な評価用語の吟味が 第1図 食物名との関係の観点から配置した用語マップ 18人の分析型パネルにテクスチャー用語から食物名を想起させたデータについてコレスポンデンス分析を行った。 全用語をラベル表示すると煩雑になるため,約半分の用語を表示した。 食品と容器 570 2013 VOL. 54 NO. 9 必要である。著者自身も,評価用語を選定するこ 軽さがあるかないか」という要素は,言語を問わ とに多くの時間と労力をかけてきた。しかし,テ ず,テクスチャー語彙を構成する共通の主要な要 クスチャー用語体系を利用することで,用語を挙 因である可能性も示された。食感覚表現において げたり,用語を整理したりする際に,少しではあ 共通性と多様性を認識することは,食に関する国際 るが,省力できるようになった。ただし,テクス 的な相互理解につながるのではないかと考えられる。 チャー用語体系には,いわゆる業界用語や方言は 注1)目,鼻,舌などのヒトの感覚器官をセンサーと 含まれていない。また,新規のテクスチャー表現 して,対象の性質を分析,評価,解釈すること。食品の も次々に生まれている。つまり,拙稿で紹介した 官能評価の場合,対象試料の外観,におい,味,テクス チャーなどを分析したり,食べる側である消費者の好み テクスチャー用語体系や対象食物名のリストは完 を分析したりする。 全なものではない。官能評価の用語選定等,何か 注2)擬音語は「実際の音をまねて言葉とした語」(広 の資料として参照する際には,予備実験等で,適 辞苑)で,例えば「パチパチ」「わんわん」などを指す。 宜,用語や食物名を追加したり修正したりしてお 擬態語は「視覚・触覚など聴覚以外の感覚印象を言語音 使いいただきたい。 で表現した語」(広辞苑)で, 「きびきび」「ごちゃごちゃ」 「にこにこ」などを指す。実際には,擬音語と擬態語を厳 食感覚を表現する言葉は,それぞれの言語圏の 密に区別することは難しく,本稿ではまとめて「擬音語・ 食文化や食生活を反映している。日本語のテク 擬態語」とする。 スチャー表現の数が多いことは日本人のテクス 注3)複数の変数(この場合は用語)の関係を調べる チャーへの意識の強さが,また,粘りやぬめりの 表現が多いことは日本人の食文化が背景にあろう。 一方で,「破砕するか流動するか」,「空気による 多変量解析の一つ。頻度など連続量ではないデータにも 用いることができる。通常,結果は散布図として示され, 似たような反応の変数は近くにプロットされる。 引 用 文 献 1)S zczesniak, A. S. and. Kleyn, D. H., Consumer 用語の収集,日本食品科学工学会誌,52,337−346 awareness of texture and other food attributes. Food (2005). Technology, 17, 74−77(1963) 8)早川文代,官能評価のためのテクスチャー用語リスト, 2)S zczesniak, A. S., Classification of Textural 食品と容器,48,470−475(2007). characteristics. Journal of Food Science, 28, 385−389 9)早川文代,風見由香利,井奥加奈,阿久澤さゆり,西 (1963) 成勝好,神山かおる,日本語テクスチャー用語の対 3)Rohm, H., Consumer awareness of food texture in 象食物名の収集と解析,日本食品科学工学会誌,58, Austria. Journal of Texture Studies, 21, 363−373 359−374(2011). (1990) 10)I nternational Standard Organization, Sensory 4)Nishinari, K., Hayakawa, F., Xia, C. F., Huang, L., analysis-General guidance for the selection, training Meullenet, J. F. and Sieffermann, J. M., Comparative and monitoring of assessors-. ISO8586−1(1993). study of texture terms: English, French, Japanese 11)H ayakawa, F., Kazami, Y, Nishinari, K., Ioku, K., and Chinese. Journal of Texture Studies, 39, 530−568 Akuzawa, S., Yamano, Y., Baba, Y. and Kohyama, K., (2008). Classification of Japanese texture terms, Journal of Texture Studies, 44, 140−159(2013). 5)早川文代,陳舜勝,王錫昌,李再貴,斎藤昌義,馬場 康維,横山雅仁,中国語テクスチャ表現の収集と分類, 日本食品科学工学会誌,51, 131−141(2004) 12)I nternational Standard Organization, Sensory analysis-Methodology-Texture profile. ISO11036 6)Lawless, H., Vanne, M. and Tuorila, H., Categorization (1994). of English and Finnish texture terms among 13)早川文代,畑江敬子,島田淳子,食感覚の擬音語・擬 consumers and food professionals. Journal of Texture 態語の特徴づけ,日本食品科学工学会誌,47,197− Studies, 28, 687−708(1997) 207(2000). 7)早川文代,井奥加奈,阿久澤さゆり,齋藤昌義,西成 14)吉川誠次,西丸震哉,田代豊久,吉田正昭,テクスチャー 用語の収集と分析(2),品質管理,19,147−155(1968). 勝好,山野善正,神山かおる,日本語テクスチャー 食品と容器 571 2013 VOL. 54 NO. 9 技 術 コ ー ナ ー ペットボトル飲料製造における微酸性 次亜塩素酸水を利用した過酢酸耐性菌の制御 桑 原 浩 輔 (大和製罐株式会社 技術管理部 新規事業室) Bacillus cereus などが過酢酸耐性菌として知ら 1.はじめに れていた 4)。しかし2000年頃から Paenibacillus 食品製造分野における微生物制御は製品品質を 属に分類される一部菌種に B. cereus など比較に 維持する上で非常に重要な技術である。特に常温 ならないほど過酢酸に対して強い耐性を持つも 流通における容器詰食品製造では微生物による危 のが確認され始めた。我々の調査で,これらは 害がなく,安心安全で長期にわたる食品品質保持 16 SrDNA top500bp の 相 同 性 か ら P. chibensis, が求められている。これらを実現するには,食品 P. favisporus に類縁の菌種であり,それぞれ分離 自体が持つ特性(pH,粘度,AW,その他摂取 由来の異なる株についても同様の過酢酸耐性能を 可能な発育制御物質)により,一部の微生物発育 確認した。過酢酸による殺菌では,高い殺菌条 制御は可能であるものの,一般的には容器・内容 件を適用しなくては無菌性水準(SAL 10−6以下, 物含め,製造工程環境は熱,薬剤,ガス等による 殺菌効果として>6Dと示す)を確保することは 物理化学的手法で殺菌され,清浄な状態を保つこ 難しいことが予想された。 とが必須とされる。薬剤殺菌に関しては過酸化 そこで我々は代替殺菌剤の候補として微酸性次 水素,過酢酸,次亜塩素酸などを主成分とした薬 亜塩素酸水5)6)の効果を検討した.これは次亜塩 剤が用いられることが一般的で,中でも過酢酸はそ 素酸を殺菌主成分として,希塩酸を無隔膜電極法 の強い殺菌能力により古くから幅広い分野で利用さ で電気分解して生成される電解水で近年,工業的 れ,量産製造に適した殺菌剤といえる 1)2)3) 利用化が期待されているものの一つであり食品添 。殺 菌対象である微生物は通常,有芽胞細菌であり菌 加物(2002年6月10日 厚労省令第75号)でもある。 株によって多少異なるものの,食中毒菌である ペットボトル飲料製造の微生物制御に適した殺菌 対数増殖期到達時間〔hr〕 方法について各種試験から検討を行った ので報告する。 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 DS-1 DS-2 DS-3 2.一般性状試験 2-1.方法 DS-4 過酢酸耐性株は耐性を持たない株に比 DS-5 べて発育温度や pH に何か特異な点があ DS-6 るのかを調査した。L字試験管に SCD 液体培地(和光純薬工業)を10 mL 分注 4 5 6 7 pH 8 9 10 し,オートクレーブ滅菌した。それぞれ に30~100 cfu の菌を無菌的に接種した。 ADVANTEC 社製:温度勾配振とう培 第1図 pH による微生物のグロスカーブ 食品と容器 572 2013 VOL. 54 NO. 9 養装置 TN26 -12を利用して10~60℃ 第1表 供試菌株一覧 で7日間培養し,15秒間隔で OD660 No. の吸光度を測定した。得られたデータ DS-1 Paenibacillus chibensis NBRC 15958T より対数増殖期到達時間を算出してグ DS-2 Paenibacillus chibensis 製造工程環境分離株 ロスカーブを作成した。次いでクエン DS-3 Paenibacillus favisporus 製造工程環境分離株① 酸を用いて SCD 培地を pH 4~10に DS-4 Paenibacillus favisporus 製造工程環境分離株② 調整したL字管を準備し,上記で算出 DS-5 Paenibacillus sp. 酸性飲料分離株 した至適培養温度域において同様に測 DS-6 Bacillus cereus 酸性飲料分離株 定し,グロスカーブを作成した(第1 DS-7 清涼飲料分離 図)。以下,供試菌株については第1 Alicyclobacillus acidocaldarius DS-8 Geobacillus stearothermophilus ATCC12980 DS-9 Aspergillus niger 表を参照のこと。 2-2.結果 菌株名 由来 NBRC9455 発育至適温度については,供試菌 DS-1から順 の有機物を極力取り除いた成熟芽胞のみの芽胞懸 に39℃,38℃,36℃,44℃,45℃,40℃であり, DS-5 が50℃以上の高温域でも発育可能である以 濁液を調製した。当方法は常法(渡部ら7)8))を 外は,いずれも36~45℃付近を至適温度とする一 の方法である。これら胞子懸濁液を試験供試液と 般的な Bacillus 属細菌と同様であった(第2図)。 した。なお,カビの場合は培地および培養日数を 発育至適 pH については,供試菌全て pH 7が至 適であった。DS-1~DS-5 は,pH 5~6付近で 変化させ芽胞と同様に精製を行った。 改良し,より精製度の高い懸濁液を作成する独自 4.薬剤耐性試験 も発育できるが,DS-6 は,pH 6以下では極端 に発育が悪くなった。一方で,pH 9を超えると DS-1~DS-5 は発育できないが,DS-6 は pH10で 菌に比べ,どのくらい過酢酸に耐性があるのか。 も発育可能であった。つまり Paenibacillus 属細 また Paenibacillus 属細菌のどのような種が耐性 菌は,温度指摘こそ Bacillus 属細菌のそれと変 を持つのか。そして芽胞菌にも多くの種属が存在 わらないが,pH 至適においては,より酸性側で するが,薬剤の種類で耐性はどのように変わるの も発育できることを示した。 か。これらを調べる目的で実施した。 Paenibacillus 属細菌は一般的な Bacillus 属細 4-1.方法 3.胞子懸濁液の調製 各薬剤に対して胞子を形成する微生物がどの 程度,抵抗性を示すのかを確認するため実施し 芽胞形成促進のため無機塩を少量添加した低 30℃において4~7日間培養した。ここで 低栄養とは市販培地の表示量の1/2量や 1/4量で調整したもの。基盤とする培地 の種類は菌株によって異なるため,どの 培地で最も芽胞形成率が高いかについて は,あらかじめ観察調査した。培養によっ て芽胞形成状態が良好であることを顕微鏡 (1,000倍)で確認後,滅菌水を用いてコン 対数増殖期到達時間〔hr〕 栄養寒天培地上にそれぞれの菌を塗布し, 140 120 100 80 60 40 20 0 10 ラージ棒でコロニーを掻き取り集菌した。 20 30 40 50 60 温度〔℃〕 遠心分離と超音波処理を経て多段階ろ過に より芽胞精製を行い,培地および菌体由来 食品と容器 DS-1 DS-2 DS-3 DS-4 DS-5 DS-6 第2図 培養温度による微生物のグロスカーブ 573 2013 VOL. 54 NO. 9 が20~40ppm の範囲にあるものを使用 殺菌効果〔D65(秒)〕 1000 DS-1 DS-2 100 DS-3 DS-4 10 500 1000 1500 2000 濃度は理工協産社過酢酸過酸化水素モニ ター RK-POXⅡを,有効塩素濃度は笠 原理化工業社 有効塩素濃度計 RC-2 Z で 測定した。 DS-5 4-2.結果 DS-6 オキソニアを用いた65℃における死 滅曲線を第3図に示す。P. chibensis お 1 0 した(以下,ピュアスター水)。過酢酸 2500 よび P. favisporus の結果に着目すると, 過酢酸濃度〔ppm〕 ①D値は B. cereus のおよそ10倍近くあ 第3図 65℃における過酢酸濃度別の殺菌効果 ることが分かった,②それぞれ来源の異 なる菌株間でも耐性に差は見られなかっ た。適宜,所定濃度に調製した薬剤を滅菌済みの た,③耐性が高い P. chibensis と P. favisporus で 100 mL フラスコへ99 mL 入れ湯浴した。液が所 は,P. chibensis の方がわずかに高い耐性を示し 定温度に到達後,調製した芽胞懸濁液を1mL 添 た。同様の微生物を用い,ピュアスター水で試験 加し試験を開始した。所定時間毎にフラスコから した結果を(第3図)と併記し第2表に示す。結 1mL サンプリングし,即座にチオ硫酸ナトリウ 果,ピュアスター水ではいずれも速やかに殺菌さ ム-リン酸緩衝液で薬剤の反応を停止させた。適 れた。つまり過酢酸耐性株は,ピュアスター水で 宜段階希釈し SCD 寒天培地(和光純薬工業)に 極めて短時間で殺菌できることが分かった。 よる混釈培養法で生残菌数を測定した。平板は しかしペットボトル飲料製造のみならず食品製 30℃で5日間培養後,出現したコロニーを計測し 造環境では,食品危害を防ぐための制御対象と て各微生物の死滅曲線を得た。反応停止液は,薬 する有芽胞細菌は多種多様である。従って我々 剤の種類により濃度を変更したものを用い,チオ はさらに Bacillus 属細菌を中心に,微生物種を 硫酸濃度で過酢酸製剤の場合5%,微酸性次亜塩 増やし,それぞれの薬剤を用いた同様の耐性試 素酸水の場合0.5%とした。過酢酸製剤としてエ 験を実施した。計72株の微生物種から得られた コラボ社 オキソニアアクティブ110を滅菌水で所 結果を第3表に示す。これによるとオキソニア 定濃度に希釈し使用(以下,オキソニア)。また の殺菌効果は広域で使用される殺菌剤というこ 微酸性次亜塩素酸水は森永エンジニアリング社 ピュアスター水生成装置 Mp-240を用いて生成し ともあり,Paenibacillus 属細菌の一部菌株以外 は,多種の芽胞・胞子に対して高い殺菌効果があ たもので,pH が5~ 6.5にあり,有効塩素濃度 ることを確認した。一方,微酸性次亜塩素酸水の 殺菌効果に着目すると過酢酸耐性株を含む他の 第2表 65℃における殺菌効果結果〔D65 (秒)〕 No. 過酢酸濃度〔ppm〕 ピュア スター水 500 1,000 1,500 2,000 DS-1 217 98 61 28 6 DS-2 201 99 60 26 4 DS-3 229 114 53 21 4 DS-4 502 145 58 16 6 DS-5 42 27 17 11 4 DS-6 32 20 13 8 3 食品と容器 Bacillus 属細菌も65℃という高温域では容易に死 滅させることができた。ただし,果汁酸性食品な どで危害菌として認識されている高温性好酸性 細菌 Alicyclobacillus 属細菌や高温性細菌である Geobacillus 属細菌には全く効果がなかった(D65 は前者で8~10分,後者で1~3分であった)。 つまり,製造する飲料種や危害微生物によっては, いずれかの薬剤単独での殺菌を適用できるが,あ らゆる飲料種を製造するようなマルチラインでは, 574 2013 VOL. 54 NO. 9 第3表 薬剤耐性試験総評と懸案事項 分 類 計 65℃殺菌結果 備 考 オキソニア ピュアスター Bacillus 属細菌 38株 A~B A~B 特になし Brevibacillus 属細菌 4株 A A 特になし Paenibacillus 属細菌 14株 C A オキソニアでは中性食品製造に懸念 Geobacillus 属細菌 3株 A D ピュアスター水ではホット販売食品製造に懸念 Alicyclobacillus 属細菌 5株 B D ピュアスターでは酸性食品製造に懸念 真菌類(カビ胞子) 8株 A A 特になし ※A…短時間(数秒)で−6 log 以上の効果,B…大半はA,一部株に若干の耐性あり. C…耐性株が多数存在する,D…当該条件で1分以上でも殺菌できない いずれも選択できないということになる。 過酢酸耐性菌を除外すればオキソニアに よる殺菌で問題ないため,殺菌方法を変 更しない場合は,オキソニア濃度を高く することなどが対策として挙げられる。 5.ボトルチャレンジテスト ラボにおける薬剤耐性試験の結果より, いずれの薬剤もお互いの弱点を補完する ように見えた。例えば,オキソニアリン スの工程で,水洗の代わりに食品添加物 であるピュアスター水で行えば,殺菌効 第Ⅰ工程 第Ⅱ工程 第Ⅲ工程 《殺菌》 《リンス》 《充填・密封》 第4図 ボトルチャレンジテストにおける殺菌工程模式図 果が,より広範囲の微生物に対して高くなるので 第4表 ボトルチャレンジテスト結果(N=10) はないかと考えた。そこでペットボトルの連続 生産現場で行われる殺菌工程において(第4図), オキソニアのみで殺菌を行った場合と,薬剤を併 用した場合の殺菌効果を比較した。 5-1.方法 菌株名 塗布菌数 (cfu/bottle) 条件A 条件B DS-1 1.1×106 10 0 DS-3 2.4×106 8 0 DS-6 1.4×10 6 2 0 1.7×10 6 0 0 1.5×10 6 0 0 1.9×10 6 0 0 DS-7 あらかじめ殺菌した PET ボトル容器内面全体 DS-8 に,胞子数が106cfu となるよう接種し乾燥させ DS-9 たものを準備した(以下,菌接種ボトルとする)。 ※表中数字は陽性(変敗)本数を表す。 菌接種ボトルを下記の2条件で処理し,SCD 培 地を充填後,キャップを巻締めた。所定温度で7 5-2.結果 日間培養後,外観検査による培地変敗確認より, オキソニア単独による殺菌では,過酢酸に高い 微生物残存の有無を調べた。条件Aとして,65℃, 耐性を示した Paenibacillus 属細菌と,従来過酢 1,500ppm のオキソニアで第Ⅰ工程を処理し,第 酸耐性菌として考えられた B. cereus が殺菌しき Ⅱ工程では65℃の水洗処理を行い,第Ⅲ工程で充 れず残存した。ところが,水洗工程にピュアス 填・密封した。条件Bとして,条件Aの第Ⅱ工 ター水を適用する併用殺菌では,第4表に示す通 程:水をピュアスター水に替えて実施した。 りいずれも−6 log 以上の殺菌効果が確認された。 食品と容器 575 2013 VOL. 54 NO. 9 性,酸性,ホット販売飲料などに対応するマルチ 6.おわりに 製造ラインでは,単一の薬剤による殺菌は微生物 Paenibacillus 属細菌は新種の微生物群ではな 種によって残存する可能性があるという不安が残 く,十数年前より分離事例がある微生物株である。 るため,これらの併用殺菌は多種の微生物群に対 薬剤耐性獲得の機構についても諸説はあるが,劣 して有効な殺菌方法と考える。また,例えば定期 悪環境に適応するため世代を経て何らかの抵抗因 的に容器殺菌以外でラインの実液配管や充填設備 子を獲得したと予想される。本報の結果では過酢 内外面の殺菌工程で2種の薬剤を使い分けること 酸および微酸性次亜塩素酸水のいずれにも耐性を で,耐性菌が発生するリスクを抑えることができ 示す微生物株は存在しなかったため,これらの薬 るとも考えられる。 本来,食品製造においては品質向上の面から清 剤を併用することで多様な微生物種を殺菌でき, また永続的に微生物が薬剤耐性を獲得する可能性 浄環境を維持することは当然のことであり,容 を削減できるのではないかと考えている。ここで 器,内容物,充填設備など熱,薬剤,ガスによっ ピュアスター水は食品添加物であるということと, てこれらを実現するが,長期にわたる単一薬剤で 有効塩素濃度が20~40ppm と低濃度であるが故, の殺菌を進めることで耐性菌を産みだす可能性が 薬剤間の接触による不具合(例えば塩素発生によ 高まると推測される。特に金属缶やPETボトル る周辺環境への危険)を問題としなくとも良いと 容器などのように量産製造する製造工程において いうことが,工業的利用の可能性を広げた。他の は,内容物品種による危害菌の分析を行うことは 塩素系殺菌剤,酸性電解水や次亜塩素酸ソーダな 勿論,永続的に清浄環境を維持すると共に,短時 どでは,設備および人体負荷,ペットボトル容器 間での殺菌を確保しなければならない。本試験に への塩素残留などの悪影響が避けられないことに おいて紹介したデータは事例の一部に過ぎず,多 加え,著者らの別比較試験では同濃度域で微酸性 様化した製造工程への展開方法・組み合わせは無 次亜塩素酸水の殺菌効果が最も高かったことが選 数に存在すると思われる。耐性菌を産み出さない, 定した理由にもあたる。 若しくはその可能性を限りなくゼロへと近づけら 本試験結果では低酸性飲料製造に特化した製造 れる仕組み作りに,本報の考えが一助となること ラインにおいて,容器・ラインの殺菌としてオキ を期待したい。安全かつ高品質な食品製造に繋げ ソニア・ピュアスター水いずれも単独での適用が るため,工業的利用に向けた殺菌システムの構築 可能と判断する。ただし型替えなどによって低酸 を目指したい。 参 考 文 献 1)Seymur S.Block,DISINFECTION,STERILIZATION, 5)土井豊彦,食品工業別冊,45,(10),pp. 40−46(2002) and PRESERVATION 4,Lea G Febiger hiladelphia- 6)鈴 木潔,中村悌一,小久保貞之,冨田守,防菌防黴, 33,(2),pp. 63−71(2005) London, p. 176(1991) 2)M. G. C. Baldry,Journal of Applied Bioteriology 54, 7)渡 部 一 仁,PDA Journal of GMP and Validation in Japan 3,(2), (2001) pp. 417−423(1983) 3)浜本典男,食品衛生学雑誌 52,(2) ,pp. 99−105(1984) 4)勝 野仁智,茂呂昇 , 唐沢真知子 , 新谷英晴 : 防菌防黴 8)近 藤雅臣 , 渡部一仁(編),スポア実験マニュアル, 技報堂 , pp. 19−41(1995) 誌 33, 4, pp. 161−166(2005) 食品と容器 576 2013 VOL. 54 NO. 9 技術用語 解説 「容器の事典」(缶詰技術研究会編)から抜粋 品を取りまとめて扱うために施す包装。工業包装 外装 〔outer packaging〕 に対する用語」と定義されている。販売を促進す る役割と,店頭販売の利便性,作業の効率化を図 JIS Z 0108:2005の包装用語によると,「包装 貨物の内部の包装で,物品若しくは包装物品を箱, る機能が重視される。 袋,たる,缶などの容器に入れ,又は無包装のま ま結束し,記号,荷札などを施す技術,又は施し た技術。パッキングともいう」と定義されている。 なお,Z0108:1974では「物品を輸送する目的 消費者包装 〔consumer packaging〕 輸送を目的として物品に施す包装を輸送包装, をもって,その保護並びに取扱上の作業性を配慮 各種事業所(学校,病院,ホテル,食堂など)へ し,箱,袋などの容器に納め,又は結束し,必要 大量に,かつ,継続的に供給する物品を,大型の に応じてその容器に緩衝,固定,防湿,防水など 単位にまとめた包装を業務用包装というのに対し, を施す技術及びその状態をいう。一般には外装は 物品などについて消費者の手元に渡るために施 封かん,補強,表示標識を施す」と定義されていた。 す包装のことを消費者包装という(JIS Z 0108)。 コンシューマーパッケージともいう。 消費者が手にする包装ということであるので, 工業包装 〔industrial packaging〕 缶,びん,プラスチックボトル,段ボール箱,袋, トレー,カップなど様々な包装形態がある。 JIS Z 0108:2005の包装用語によると,「物品 を輸送,保管することを主目的として施す包装。 商業包装に対する用語」と定義されている。 なお,JIS 0108:1974では,「対象は各種原材料, 適正包装 〔appropriate packaging〕 半製品,部品,完成品にわたり,包装技法も,物 JIS Z 0108:2005の包装用語によると,「省資 品の性質と流通の環境に応じていろいろの方法が 源,省エネルギー及び廃棄物処理性を考慮し,合 駆使される」との説明が付加されていた。 理的で,かつ,公正な包装。輸送包装では,流通 過程での振動,衝撃,圧縮,水,温度,湿度など によって物品の価値,状態の低下を来さないよう 個装 〔individual packaging〕 な流通の実態に即応した包装。消費者包装では, JIS Z 0108:2005の包装用語によると,「物品 過剰包装・過大包装,ごまかし包装などを是正し, 個々の包装で,物品の価値を高めるため,又物品 同時に欠陥包装を排除するため,保護性,安全性, 個々を保護するために適切な材料,容器などを 単位,表示,容積,包装費などについても適性で 物品に施す技術,又は施した状態。また,商品 ある包装」と定義されている。 として表示などの情報伝達の媒体にすることも できる」と定義されている。一次包装(primary 内装 〔inner packaging〕 packaging)とも呼ばれる JIS Z 0108:2005の包装用語によると「貨物包 装の内部の包装で,物品に対する水,湿気,光, 商業包装 〔commercial packaging〕 熱,衝撃などを考慮して,適切な材料,容器など を物品に施す技術,又は施した状態]と定義され JIS Z 0108:2005の包装用語によると,「小売 ている。 を主とする商取引に,商品の一部として,又は商 食品と容器 577 2013 VOL. 54 NO. 9 業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より 「希少糖」本格デビュー:多様 での12週間連続摂取による体脂 類,介護保険施設平均3.0種類 な生理機能を持つ「レアシュ 肪低減効果と安全性が報告され で,努力している施設でも6~ ガースウィート」 ている。 7種類だった。この種類では, トウモロコシなどのでんぷん 利用者が持っている食べる機能 に対応した食事形態は困難な人 量しか存在しない希少な単糖お 由来異性化糖をさらに異性化し て製造する希少糖「D-プシコー よびその誘導体の総称で,国際 ス」や「D-アロース」などを, 不一致が原因で「食べられな 希少糖学会で定義され,各種希 RSS は 約15 % 含 み, カ ロ リ ー い」「飲み込めない」「むせる」 少糖を大量生産する道筋が香川 は通常の異性化糖より2割程度 などになっている。 大学何森 健教授によって示さ 低く,砂糖同様の味質で9割程 れた。種類は多く自然界に50種 度の甘さを有する。 (日食 2013/07/29 日付) 「希少糖」とは,自然界に微 いず もり もいる。その結果,食事形態の この問題を「食べさせ方術」 と「食べる口作り」でしっかり 性状は液糖で,従来の異性化 仕事の分担をすることで実現が 糖と同様,スポーツドリンクや 可能となる。今まで下記内容で コーラ,パン,菓子類,デザー 講演や書籍,雑誌などで普及活 で大量生産技術と多様な生理活 性の研究を通じて,うち「D- ト,アイスクリーム,麺つゆや, 動をし,多くの現場栄養士から 飲料や菓子類,加工食品,惣菜 賛同をいただいた。 プシコース」は,ノンカロリー など幅広い用途に使用できる。 〈調理の流れ〉 で砂糖の約7割程度の甘さを有 加えて,天然由来で安全・安心。 (1)1段調理~食品会社が するとともに,食後血糖値上昇 量産することで低コスト生産も 調理・加工する工程(加工食品 や内臓脂肪の抑制作用,アンチ 可能で,安価な提供も可能と =介護食品も含む)。 類以上存在し,「キシリトール」 はすでに有名だ。 同大学に代表される研究機関 エイジング効果が確認。また 「D-アロース」は,抗酸化作用 (2)2段調理~施設の厨房 なってくる。 超高齢化時代の介護食展望(4) で食材や加工食品を調理する工 などの生理活性があり,医薬品 個別化 食べさせ方術・食べる 程。 や機能性食品,化粧品への応用 口作りで 開発が進められている。 (3)3段調理(食べさせ方 (日食 2013/07/29 日付) 術)~食事介助でカットやつぶ す,とろみ調整をする工程。食 そこで松谷化学工業では,同 介護食が必要な人は,脳卒中 県や同大学と知的クラスターを 後遺症(61万人),認知症(41 スタート。希少糖生産技術研究 所を設立し,D-プシコースや 万人),生活不活発病(53万人) (4)4段調理(食べる口作 の3大疾患が原因だが,その他 り=口腔内調理)~持っている D-アロースなどを含む希少糖 にパーキンソン病や糖尿病(高 食べる機能でカットやつぶす。 含有シロップ「レアシュガース 齢者の糖尿病対応が急務)など まとめる工程。義歯や口腔ケア, ウィート(RSS)」の開発に成 が報告されている。また,疾患 口腔リハビリを行い食べる機能 功した。これまでの研究成果で, やアレルギー対応など食事内容 を改善する工程。 RSS には脂肪蓄積抑制効果や が多様化し,ますます個別化が 管理栄養士がこの1段から4 糖代謝改善作用が報告され,肥 求められている。個別化を厨房 段調理全体を把握することで初 満や糖尿病予防が期待される一 の調理だけで実現させること めて多様化した要介護高齢者 方,一昨年の国際希少糖学会第 は困難だ。食事形態の種類を (個別化)に対応した食事を提 5回国際シンポジウムで,ヒト 調査した結果,病院平均4.2種 食品と容器 578 事環境 供することが可能になる。 2013 VOL. 54 NO. 9 食べる事が困難な人(特に重 蔵ケースから冷やした商品を ルクーラーを設置して「コカ・ 度)の対応は, 「食べさせ方術= 「スーパーコールド」としてテ コーラ」と「コカ・コーラ ゼ 食事介助」の田中靖代氏(ナー スト販売している。温度の違う ロ」(各300mLPET ボトル)の シングホーム気の里,施設長, 商品を揃えることで需要の掘り 2品を発売している。通常の冷 看護師),「食べさせ方術=食事 起こしを狙う。 蔵ケースでは約8℃の設定だ 常温販売は,夏場でも常温の が,専用クーラーでは2℃と低 山田律子氏(北海道医療大学, 清涼飲料を飲みたいというニー い温度で提供する。井辻社長は 教授),「食べる口作り=義歯」 ズを背景に,昨年末に九州エリ 「2℃ぐらいで飲んでもらうと の加藤武彦氏(加藤歯科,院長, アでテスト販売を実施した。そ 『コカ・コーラ』がさらにおい 歯科医師=全国訪問歯科研究会 の結果,冷蔵商品の売上げに影 塾長),「食べる口作り=口腔ケ 響なく,常温商品が売れていっ 今年はテスト販売として,約 アと口腔リハ」の黒岩恭子氏 た。 同 戦 略 を 手 掛 け る コ カ・ 1,200~1,300店 舗 で 展 開。 井 辻 (村田歯科,院長,歯科医師= コーラカスタマーマーケティン 社長は「『スーパーコールド』 クルリーナ歯ブラシの開発者) グの井辻秀剛社長は「シニアや がホットウォーマーのように定 などのハイスキルが必須だ。 女性など,これまで買っていな 番になる可能性はある」とし, 環境(特に認知症は必須)」の しくなる」と強調する。 この人々のスキルで対応する い人が購入しているのではない 「来年は本格的に取り組んでい ことで,医師から「口から食べ か」と分析。そのため,今年か きたい」と意気込みを語った。 る事はあきらめてください」と ら本格的に展開していく。 全国清涼飲料特集:EPR は軽量 言われた人でも,「口から食べ オリジナルのワイヤーラック 化につながりにくい スチール缶 る」ことが実現し寝たきり状態 を 店 舗 に 提 供 し,300mL 以 下 リサイクル協会が報告まとめる から座位や車いすの生活に移行 の小型 PET ボトルで展開する。 できる。私も多くの体験はない ア イ テ ム は「 綾 鷹 」「 爽 健 美 飲料メーカー,容器メーカー が,何人かに接して利用者の 茶」「アクエリアス」「い・ろ・ に責任をさらに負わせる拡大生 「おいしい」「ありがとう」の言 は・す」の4品を105円で提供。 産者責任(EPR)では,スチー ラックは,酒,パン,菓子,サ ル缶の軽量化につながりにくい 「口から食べる」ことを望んで プリメントなど,さまざまな場 ことが分かった。スチール缶リ おり,このスキルが求められて 所で展開している。テスト販売 サイクル協会が6月にまとめた。 いる。 と同様に,シニアと女性を中心 スチール缶の軽量化がどのよ 葉に感動した。利用者や家族は, (日食 2013/07/31 日付) しんちょく に売上げを伸ばしているという。 うな経緯で進 捗してきたかを サービスの考え方の見直しや関 また,購入者は,違う種類の商 日本製缶協会と協力して,複 係者のスキルアップなどが必要 品を2本合わせて買っていく傾 数の缶メーカーなどを調べた。 で,相当期間がかかると思われ 向があるようだ。 スチール缶の代表缶種である 現場に普及するためにはケア 常温販売の認知が広がれば, る。 200mL の軽量化の推移と,技 コ カ・ コ ー ラ シ ス テ ム,CVS 女性やシニア層の来店の増加が 術開発の歴史などを比較した。 で温度帯販売展 開 へ 常 温・ 見込めるため,「CVS のロイヤ 1968年から缶コーヒー飲料は スーパーコールドで商品提供 ルティー向上にもつなげていき 上市され,79年に接着に錫を使 たい」(井辻社長)考えだ。 わないようにしてリサイクルし (日食 2013/07/29 日付) コ カ・ コ ー ラ シ ス テ ム は, 一 方,「 ス ー パ ー コ ー ル ド 」 すず やすいようにした。84年に缶ふ CVS チ ャ ネ ル で の 温 度 帯 提 は“冷たさが違う,炭酸の刺激 たを縮小,92年に飲料缶の真空 案を開始した。常温での販売 が違う”をコピーに展開。レジ 度を下げて缶内の圧力変化を抑 と,小型クーラーを設置して冷 横 に 商 品 が16本 入 る オ リ ジ ナ 制,97年に PET 樹脂によるラ 食品と容器 579 2013 VOL. 54 NO. 9 ミネートなどで缶の重量や厚さ 齢社会に備えるため,今年度か ツ・食品機能専攻に分かれる。 を抑制した。スチール缶は容器 ら新設した食環境科学部(群馬 スポーツ・食品機能専攻は,生 包装リサイクル法から実質,外 県板倉町)で,健康寿命を伸ば 命科学の知識を基礎に,身体活 れていて,EPR でなくても技 すためのエキスパート育成に力 動に伴う食事・栄養の取り方な 術開発で軽量化を進めてきた。 を入れていく。23日に白山キャ どの専門教育を行う。 市場競争とリサイクルしやすさ ンパス(東京都文京区)で新し 同専攻は,板倉キャンパスに の中で軽量化のために研究開発 い教育方針を発表するプレス ある陸上競技部女子長距離部門 してきた実態が明らかになった。 ミーティングを行った。 とサッカー部女子部と連携する スチール缶リサイクル協会は 大熊廣一教授はプレゼンテー ことで,学部教育内の科学的根 「法の枠組みによる事業者の責 ションで,同学部が食と健康と 拠に基づいた栄養管理をスポー 任の強化で軽量化は進展する」 運動の科学を課題とし,これま ツ活動で実践している。 という説はスチール缶にはあて で生存期間の延長を目指す平均 全国清涼飲料工業会・本山和夫 はまらないと結論付けた。 寿命が社会的に重視されてきた 会長が就任会見 「変化こそチ 1970年 代 に 噴 出 し た 大 気 汚 が,これからは生きがいのある ャンス」 染,水質汚濁などの公害問題を 人生を送る健康寿命の延伸に力 (日食 2013/08/12 日付) 解決するために汚染者負担原則 を入れ,そのための人材育成を 全国清涼飲料工業会(全清飲) (PPP)という考えが世界的にも 担うと抱負を述べた。 の新会長に就任した,アサヒ飲 主流になった。廃棄物処理も同 大熊教授は「グローバル人材 料の本山和夫社長は5日,全清 様に考えられ,消費者が排出す 育成として,今後は留学生も受 飲で就任会見を行い,「菊地史 る廃棄物については,税によっ け入れていきたい。キャリアデ 朗前会長が取り組んできたこと て自治体が代行するのが主流だ。 ザインについても,工場見学や を継承して,全力で取り組んで 80年代末からリサイクルが叫ば 実習などを活用し,自ら外へ出 いきたい」と意気込みを語った。 れるようになり,EPR を制度 て道を開こうとするチャレンジ 本山会長は「消費者が求める に導入という考え方が強くなっ 精神を持った人材を育成してい 価値が時代とともに変化してい ていた。容器包装リサイクル法 きたい」とした。 る中,各社が消費者の変化をと 同学部学部長の林清教授は らえ,積極的なマーケティング 飲料容器のリサイクル推進団 「今まで食と健康というと,高 を展開していることで,飲料業 体なども参加する連絡会が,消 齢者や生活習慣病に関する事柄 界の成長を支えている」と業界 費者団体,学識経験者をまじえ が主で,若い人の健康に関する について説明。また,「少子高 た容器包装3R 制度研究会を設 パラメーターはほとんどなかっ 齢化や来年の消費税増税によ 置,同研究会は12年6月に報告 た。しかし,実際は元気な人ほ り,消費の低迷も懸念されてい をまとめたが,EPR の適用を ど食や健康への関心が高い。ス るが,変化があるからこそ,そ 広げて企業の負担を増やせば ポーツをする若者や健康志向の こにはチャンスがたくさんある 「容器の軽量化につながる」「変 人を対象とする研究が,これか と思う」とし,「消費者とのコ わらない」など多様な意見が網 らの健康寿命をのばすことにつ ミュニケーションを繰り返す中 羅されている。 ながる」と語った。 で,変化をいち早くキャッチし, には EPR の考え方が入っている。 東洋大学,健康寿命をのばすエ 食環境科学部は生命科学部食 従来にないオリジナリティーあ キスパート育成 新設の食環境 環境科学科が改組されたもので, る価値を創出して,新しい提案 科学部で 食環境科学科と健康栄養学科で につなげていけば,必ず需要は 構成され,うち食環境科学科は 創造できる」と考えを示した。 フードサイエンス専攻とスポー 全清飲の活動について,本山 (日食 2013/07/31 日付) 東洋大学は,来たるべき超高 食品と容器 580 2013 VOL. 54 NO. 9 今回の世界中の都市から抽出 の普及には,風味の低下を抑え と調和した業界発展を目指し, した5,000人の消費者を対象に る工夫が重要であると言える。 業界の信頼を高めるべく,積極 した調査の結果では,消費者の DSM では,3月に開催され 的な事業展開をしていく」と強 50%が1日当たり5g 以下の塩 た「世界減塩週間」で,酵母エ 調した。また,消費税増税につ を摂取していると回答している キス(天然のイースト菌の抽出 いては「全清飲として,組合会 が,実際の消費量研究調査では, 物)と加工フレーバーのさまざ 員各社とともに,円滑かつ適正 1日の推奨摂取量の約3倍を摂 まな減塩ツールを発表した。こ に転嫁されるように取り組んで 取している結果が出ており,消 のツールを利用することで,減 いく」と述べた。 費者の意識と実際の消費量に大 塩しても味や食感を失うことな DSM が塩分に関する消費者意 きな隔たりがあることが判明し く本来の風味を維持することが 識調査 意識と消費量“大きな た。 でき,最大50%の減塩を可能に 会長は「業界全体として,公益 隔たり”判明 また,調査では,健康意識と する。 食事の関連性についての意識調 一方,米国では,61%以上の DSM 社は9日,世界中の都 査も行った。その結果,80%も 人が1日当たり推奨摂取量の2 市に住む消費者を対象とした塩 の人々が,もし健康を増進でき 倍である10g 以上の塩を摂取し 分の過剰摂取に関する消費者意 るのならば,家庭での食事の風 ていると考えており,他の国の 識調査の結果を発表した。現 味を減らすことになってもいい 人々より最も多く摂取している 在,成人の1日の食塩摂取量の と回答した。一方,前述の健康 と感じている結果となった。ま 世界平均は約10gとされており, を挙げた人のうち約25%が,味 た,ナイジェリアの消費者は, WHO の推奨する1日の最大摂 や便利さ,価格面から加工食品 65%が1日当たり5g 以下の塩 取量の5g の2倍,米国心臓学 や調理済み食品を購入するとし を摂取していると報告し,最も 会が推奨する3.8gの約3倍と, ている。 少ない量を摂取していると感じ (日食 2013/08/16 日付) 大きく上回っている。しかし, ヘルスフォーカス・インター ている。 調査の結果,推奨されている5 ナショナルが09年に行った調査 欧米でも塩分の過剰摂取は顕 g以下の摂取に抑えていると感 でも,より健康な食べ物を食べ 著で,欧州委員会が発表した12 じている人が,50%にも上るこ るために自分の好きな食べ物を 年の報告書によるとでは,欧州 とが判明した。 避けるという人は,消費者の3 の男性,女性が一般的に毎日 人に1人(34%)にとどまると 6g から18gの塩を摂取してい いう結果が出ている。 る。また,メーカーの努力によ 世界中での塩の消費に関する 研究で,推奨される1日当たり の摂取量の2~3倍もの塩を多 これらの結果は,消費者は健 り減塩製品が普及している米国 くの人が取りがちであるとされ 康を意識し食事に気を遣うもの でも,塩分の摂取は01年から10 ている。 の,調理済み食品の購入におい 年まで2年ごとに1日当たり 日本でも,厚生労働省による ては薄い味の食品は避ける傾向 63 mg も増加し,同期間内に摂 推奨摂取量が,成人男性10g, にあることを示している。減塩 取量が7.9%も増加しているこ 成人女性8g であるにもかかわ に当てはめると,家庭内では風 とが,ボストンで開催されたア らず,実際には,成人男性が平 味が低下しても減塩した料理を メリカン・ソサエティ・オブ・ 均12g,成人女性が平均10.3g 作るが,調理済み食品を購入す ニュートリション・エクスペリ を摂取しており,基準を達成し る場合には,減塩による風味の メンタル・バイオロジィ会議で ている割合は31.8%にとどまっ 低下がネックとなって減塩製品 発表された。 ている(平成19年国民健康・栄 を購入しないという可能性が浮 養調査)。 かび上がる。つまり,減塩製品 食品と容器 581 2013 VOL. 54 NO. 9 今月の統計 (千億円) (百万トン) 30 14 25 12 2002年 2007年 20 *その他は2000年から統計値なし 2002年 10 推定2012年 2007年 8 推定2012年 15 6 10 4 *その他 木製品 ガラス製品 金属製品 第2図 包装資材・容器の原材料別出荷数量 延伸フラットヤーン計 1% その他 紙管 3% 製品 プラスチック 第1図 包装資材・容器の原材料別出荷金額 製品 紙・ 板紙 その他 金属製品 木製品 0 ガラス製品 0 製品 プラスチック 2 製品 紙・ 板紙 5 1% 包装紙・製袋原紙計 13% 紙袋計 紙器計 22% 発泡製品計 9% ラミネート軟質製品計 8% フィルム・シート計 押出成形品計 1% 8% 40% 射出成形容器・コンテナ類計 合計 24,470 億円 合計 16,260 18% 段ボール箱 億円 ブロー成形容器計 54% 23% 第3図 紙・板紙製品の出荷金額明細(2012年推定) 第4図 プラスチック製品の出荷金額明細(2012年推定) 紙・板紙製品は前年比ほぼ横ばい,その他の製品は前年を若干下回った。 各製品における構成比は概ね前年と変わらず。 金属製押出チュ-ブ 1% アルミニウムはく 薬びん 20% 9% スチール製品計 44% 飲料用びん計 48% 化粧品用容器 合計 9,355 6% 合計 1,262 億円 億円 食品用アルミニウム缶計 46% 食料用・調味料用容器 25% 第6図 ガラス製品の出荷金額明細(2012年推定) 第5図 金属製品の出荷金額明細(2012年推定) 食品と容器 582 2013 VOL. 54 NO. 9 今月の統計 第1表 包装資材・容器の原材料別出荷金額 2002年 億円 構成比 原材料別 2007年 億円 構成比 (公益社団法人 日本包装技術協会調) 2012年推定 構成比 前年比 5年前比 10年前比 億円 紙 ・ 板 紙 製 品 23,947.4 42.6% 25,167.5 40.4% 24,469.6 43.2% 99.8% 97.2% 102.2% プラスチック 製品 14,250.7 25.3 18,919.5 30.4 16,259.7 28.8% 97.9 85.9 114.1 金 品 10,912.6 19.4 10,625.6 17.1 9,354.8 16.6% 97.7 88.0 85.7 製 品 1,662.2 3.0 1,377.4 2.2 1,261.7 2.2% 97.8 91.6 75.9 属 製 ガ ラ ス 木 製 品 1,840.4 3.3 1,638.2 2.6 1,287.5 2.3% 99.8 78.6 70.0 そ の 他 3,621.1 6.4 4,586.3 7.4 3,820.4 6.8% 86.9 83.3 105.5 総 合 計 56,234.4 100.0 62,314.5 100.0 56,453.7 100.0% 97.8 90.6 100.4 2007年~2008年にかけて出荷金額合計がピークであったため 5年前比は大きく落ち込み,ほぼ10年前の水準に戻った。 第2表 包装資材・容器の原材料別出荷数量 2002年 (公益社団法人 日本包装技術協会調) 2007年 原材料別 千トン 紙 ・ 板 紙 製 品 12,541.9 59.9% 12,715.1 61.0% 11,429.1 62.2% 97.3% 89.9% 91.1% プラスチック 製品 3,753.4 17.9 4,022.9 19.3 3,467.1 18.9% 98.2 86.2 92.4 金 品 2,160.1 10.3 1,939.0 9.3 1,599.5 8.7% 98.3 82.5 74.0 製 品 1,684.6 8.0 1,426.8 6.8 1,285.5 7.0% 96.3 90.1 76.3 品 799.5 3.8 733.5 3.5 596.5 3.2% 99.8 81.3 74.6 他 - - - - - - - - - 100.0% 97.6 88.2 87.8 属 製 ガ ラ ス 木 * 総 製 そ の 合 計 20,939.5 構成比 100.0 千トン 2012年推定 構成比 20,837.3 100.0 千トン 構成比 18,377.7 前年比 5年前比 10年前比 * そ の 他 は 2000年 か ら 統 計 値 な し 第3表 平均気温,降水量,日照時間 平均気温(℃) 降水量(mm) 平年比 前年比 平年差 前年差 2012年 8月 9月 10月 11月 12月 2013年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 下旬 月間 8月 上旬 中旬 29.1 26.2 19.4 12.7 7.3 5.5 6.2 12.1 15.2 19.8 22.9 26.9 27.3 29.0 30.4 +1.7 +2.4 +0.9 -0.6 -1.4 -0.6 -0.3 +2.7 +0.6 +0.9 +0.8 -0.1 +1.5 +1.3 +2.9 注)平年値は1981年~2010年の月,旬平均値 食品と容器 +1.6 +1.1 -0.1 -2.2 -0.2 +0.7 +0.8 +3.3 +0.7 +0.2 +1.5 -0.5 +0.9 +0.7 +1.3 (%) 25.0 214.5 154.5 154.0 69.0 70.0 30.0 44.5 99.5 56.0 159.0 53.0 115.5 11.0 10.0 15 102 78 166 135 134 53 38 80 41 95 113 75 19 21 (8月中旬まで・東京) 日照時間(h) 前年比 平年比 (%) 10 91 129 137 116 140 32 31 84 24 86 1325 89 71 125 (%) 236.0 * 164.4 156.6 153.3 166.9 212.5 173.7 190.1 196.0 227.1 123.9 42.2 163.4 62.9 91.2 135 140 117 105 95 113 104 117 112 132 101 68 114 107 160 (%) 140 99 111 107 89 116 117 127 121 116 99 59 90 95 153 *:暫定値 ☆2012年8月号から新平年値を使用(気象庁調査) 583 2013 VOL. 54 NO. 9 最近の技術雑誌から 〔解説〕特集1―害虫駆除で快適なお店づくり― 鈴庄則之:食と健康,57(8)8~16( ‘13) 国 内 編 〔解説〕特別企画―目でみる食中毒発生状況・平成24 年― 食と健康,57(8)23~26( ‘13) 分 析 ・ 測 定 〔解説〕特集―先端技術の可能性― ジャパンフードサイエンス,52(8)46~50( ‘13) ○多角度可変自動測定分光光度計「Agilent Cary 7000 UV-Vis-NIR」………アジレント・テクノロジー(株) ○細胞外フラックスアナライザー XFeシリーズ/―細 胞のエネルギー代謝経路を無侵襲・経時的にプロ ファイリング―…………………プライムテック(株) 〔解説〕特集2―これからの日本食品衛生協会― 食と健康,57(8)52~59( ‘13) 〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術/埼玉県F市に おける弁当の食中毒事件(その2)― 笹本 史・食品機械装置,50(8)54~59( ‘13) 微 生 物・酵 素 添 加 物 ・ 副材料 〔解説〕特集―乳酸菌 食品工業,56(16)44~68( ‘13.8/30) ○ Lactobacillus helveticus 発酵乳の脳機能改善作用 ………………………………………………大澤一仁 ○最近の乳酸菌研究とトレイルエスワン® の特徴 ………………………………………………畠 修一 ○乳酸菌における不飽和脂肪酸飽和化代謝の解析と脂肪 酸変換への応用…………………岸野重信・小川 順 ○乳酸菌 KT-11による抗インフルエンザ効果 ……………………渡邉 樹・飛田啓輔・黒崎晃彦 ○雪印メグミルクの≪日本乳酸菌学会2013年度大会≫に おける研究発表(5題) 〔解説〕特集―着色料の新展開― フードケミカル,29(7)17~89( ‘13) ○着色料の動向(総論)……………………………西山浩司 ○ヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン)の一般食 品への利用……………………………………浅井志穂 ○アカダイコン色素の飲料への利用……………内田 実 ○クチナシ果実から得られる着色料と食品への利用用途 ………………………………………………上原秀章 ○水分散性を向上させたルテインの食品への利用 ………………………………………………小関 誠 ○ベニコウジ色素の利用・用途…………………藤原和広 ○着色料市場トピック2013…………………………編集部 ○注目の着色料関連製品・技術・装置……………編集部 ○着色料および着色料製剤一覧……………………編集部 栄 養 ・ 健 康 〔解説〕特集―新開発の機能性食品/健やかな健康を維 持する機能性食品― 酒井重男:食品と科学,55(8)69~83( ‘13) 〔解説〕クッキングルーム/食べ物の香りをつくる 角田 一:日本調理科学会誌,46(4)60~63( ‘13,8) 水 産 ・ 畜 産 〔解説〕特別企画―ハード面&ソフト面からアレルゲン 対策を確立する/食物アレルゲンコントロールプロ グラムの重要性― 津田訓範・伊藤壽康:月刊 HACCP,19(8)33~ 41( ‘13) 食 品 衛 〔解説〕特集1―健康維持に欠かせない食肉及び食肉加 工品の機能― 古賀南加子:日本食肉加工情報,757(7)2~7( ‘13) 〔解説〕特集2―高齢者への肉食の勧め!― 西村敏英:日本食肉加工情報,757(7)8~11( ‘13) 生 〔解説〕特集―食品安全の確保は「個人衛生の管理」か ら!― 月刊 HACCP,19(8)19~31( ‘13) ○マクドナルドにおける人由来危害の予防方法 ………………………………………………草野 篤 ○白洋舎が FOOMA JAPAN(国際食品工業展)で「ユ ニフォームの衛生管理の必要性」を中心に展示 …………………………………………………編集部 食品と容器 〔解説〕連載食品のおいしさと改質/第2回 大豆加工 食品のおいしさと栄養 山﨑勝利:食品工業,56(15)58~65( ‘13.8/15) 飲 料 ・ 醸 造 〔解説〕特集―新しい方向を打ち出す飲料市場を探る― 食品工業,56(15)33~54( ‘13.8/15) 584 2013 VOL. 54 NO. 9 最近の技術雑誌から ○清涼飲料市場と全国清涼飲料工業会の活動…岩尾英之 ○清涼飲料の技術動向……………………………村山涼二 ○サントリーミネラルウォーターレポート~飲用だけで なく料理用や,災害時の備えとしても活用されてい るミネラルウォーター ○『D -リボース』の疲労軽減効果について~健康で気 力・体力の充実した毎日を送りたい方へ~ …………………(株)タイショーテクノス 開発部 〔解説〕 “地域密着でキラリと光る企業”納豆一筋『あ づま食品株式会社』 田形睆作:New Food Industry,55(8)75~82( ‘13) 〔解説〕加熱調理と熱物性 杉山久仁子:日本調理科学会誌,46(4)51~55( ‘13.8) 市場調査 ・ 流 通 〔解説〕13年のスポーツD,市場の盛り返しに期待/ スポーツシーンから新たな需要広がる 稲野結子:酒類食品統計月報,55(5)18~21( ‘13.7) 〔解説〕特集―食品産業の海外市場展開を考える― 食品と開発,48(8)4~16(‘13) ○世界の食品輸入規制の現状…………………長谷川直行 ○タイ・ベトナム・ミャンマーにおける食品市場環境 ………………………………………………中村昌宏 ○食習慣の観点から見たインド市場参入の可能性 ………………………………………………繁田奈歩 ○食品企業のアジア進出をめぐるリスク………横山 歩 〔解説〕9年ぶりの年間出荷増に挑むビール類/鍵は景 気回復と夏場の活況 酒類食品統計月報,55(5)22~26( ‘13.7) 〔解説〕 【2012(平成24)年度】酒類・食品企業の3月 期決算と次期見通し/営業増益は15業種中8業種に とどまる 酒類食品統計月報,55(5)70~84( ‘13.7) 〔解説〕市場動向Ⅰ―たん白・ペプチド素材の市場動向― 編集部:食品と開発,48(8)17~26( ‘13) 〔解説〕市場動向Ⅱ―食品加工のための乳化剤の市場動 向― 編集部:食品と開発,48(8)28~34( ‘13) 〔解説〕特集―飲料缶― Beverage Japan,36(7)30~54( ‘13.8) ○成長するアルミ缶,安定するスチール缶 ○過去最高の需要量を記録したアルミ缶 ○転換期を迎えた缶入りノンアルコール飲料 ○過去最大の生産量をうかがうボトル缶 ○缶のリサイクルと軽量化 ○主要製缶メーカーの動向 ○飲料缶向けの検査機器 〔解説〕市場動向Ⅲ―ω3の市場動向― 編集部:食品と開発,48(8)37~44( ‘13) 〔解説〕市場動向Ⅳ―差別化素材として急伸長するクリ ルオイル― 編集部:食品と開発,48(8)45~48( ‘13) 〔解説〕特別企画―2013年上半期ビール系飲料市場/ 市場の縮小傾向が続くも底入れの兆し― Beverage Japan,36(7)60~65( ‘13.7) 食 品 一 〔解説〕特集―平成24年缶詰生産・輸出入・関連諸統 計― 缶詰時報,92(8)2~28( ‘13) ○2012年の缶びん詰,レトルト食品生産動向 …………………………………………日本缶詰協会 ○2012年の魚肉ソーセージ生産動向 ○ JAPANESE PRODUCTION AND IMPORT-EXPORT TRADE OF CANNED FOODS IN 2012 ○ EXPLANATORY NOTES 般 〔解説〕アンダルシアの風~スペインの裏と表の食事情 第40回/ハーブティーがブーム? スペインの お茶事情 田中富子:食品工業,56(15)86~88(‘13.8/15) 〔解説〕教材研究/地域に密着した食育活動について 白尾美佳:日本調理科学会誌,46(4)56~59( ‘13.8) 管 技 術 〔解説〕特集3―食の安全衛生を高める技術最前線― 食品包装,57(8)33~42( ‘13) ○グローバル時代の連帯対応が急務/表示を含めた「包 装」での取り組み強化と工夫も必要に……米虫節夫 ○衛生的な物流機器導入のすすめ/食品包装業界に適し た新型パレット&保管台……………………西田耕平 食 品 加 工・保 蔵 〔解説〕特集―かまぼこの新展開/かまぼこを巡る話題 /新たな展開に向けて― 福永健治:食品と科学,55(8)57~68(‘13) 食品と容器 理 585 2013 VOL. 54 NO. 9 最近の技術雑誌から ○日本のカビ問題を解決した欧州発“奇跡”の塗料 ……………………………………………斎藤美也子 ○静電気防止用エアシャワーを新提案/ローコストで高 性能,食品包装メーカーで需要拡大……シーズシー ○簡易式の長靴洗浄器に高まる評判/消毒液とブラシで 簡便にクリーンアップ………………………シーテク ○大阪で“準無人化”の新精米工場が稼働/最新設備で “異物混入ゼロ化”も前進… ………………東洋ライス ○岡山和気ヤクルト工場が着工/より高品質な乳製品の 生産体制を構築へ………………………ヤクルト本社 ○新技術導入で家庭用冷食を強化/千葉県船橋市に来年 3月完工予定で着工…………………ニチレイフーズ 機 〔解説〕特集2―未来を彩る食品包装― 食品包装,57(8)27~32( ‘13) ○“大好き”で“たいせつ”な想いを歌に/創立50周年 記念ソングが誕生,歌うは小学1年生! ………………… 公益社団法人 日本包装技術協会 ○精肉向けノントレー包装機などを積極提案/大阪開催 のプライベートフェアで“次の一手”に手ごたえ実 感………………………………………………寺岡精工 ○飲料充塡実習施設の稼働が間近に/「何度も失敗して 学ぶ」のスタンスから実習設備が充実 ………………………………東洋食品工業短期大学 〔解説〕特集―輸送包装の環境対応― 包装技術,51(8)3~30( ‘13) ○新印刷技術(レーザーマーキング)について……北村潤一郎 ○ガス機器の Reduce(材料使用削減・軽量化・コンパ クト輸送・梱包作業性)包装………………服部哲也 ○飲料・冷菓原料(内装袋仕様)などの輸送用環境対応 型・耐水性200L ファイバードラムの開発について ………………………………………………有吉正一 ○暖房便座の「包装材50% off」省エネ包装……桐野賢太郎 ○超寿命型重量物包装「ウレタン樹脂フィルム・コンテ ナ」の開発…………………………………宮崎恵之助 械 ・ 設 備 〔解説〕特集4―食と包装の検査装置― 食品包装,57(8)43~47( ‘13) ○高速・高精度実びん外観検査装置/コンパクト,最高 1080BPM の検査能力… ………キリンテクノシステム ○大活躍の異物検査コンベヤー/ LED(RGB)使用, 食材を下から照射しチェック ……………………サムテック・イノベーションズ ○エッジの微小な欠けも確実に検知/高精度で錠剤を良 否判定,毎時35万錠処理 …………………………ライオンエンジニアリング ○さらに高性能・低価格な毛髪混入検査装置/デスク トップスーパーコンピュータ採用で実現 …………………………………ワイエムシステムズ 容 環 問 題 〔解説〕特集―食品工場における省エネ対策― 食品機械装置,50(8)60~69( ‘13) ○極寒冷地における排熱回収を利用したヒートポンプシ ステム…………………………………………及川晃良 ○嫌気性微生物を用いた省エネルギー型排水処理プロセ ス………………………………………………徳富孝明 器 ・包 装 〔解説〕特集1―飲料&液体包装2013年・夏!Part Ⅱ― 食品包装,57(8)17~26( ‘13) ○“空気”が高める自立袋の新たな可能性/持ちやすさ や注ぎやすさ向上に酒造業界が高い評価を ………………………………………………凸版印刷 ○形状が複雑な PET ボトルにも対応/非磁性体素材向 け厚さ測定器の新バージョンを展開,多分野へ ……………………………………………オリンパス ○500mL 飲料ボトルを毎時最大9000本生産/グローバ ル仕様の全貌は今年10月の「K2013」で明らかに …………………………日精エー・エス・ビー機械 ○環境配慮重視の板紙マルチ/トップとボトム改良で包 材面積が13%もコンパクトに ………レンゴー・リバーウッド・パッケージング ○飲料容器を引き立てるラベルのチカラ!/進化した最 先端の設計モジュールマシンにも大きな期待が ……………………………………… drinktec 2013 ○乳飲料ボトルのインラインブロー成形機/充塡から キャッピングまで含む一体型ソリューションを発表 ……………………………………………セラック社 食品と容器 境 〔解説〕温暖化対策バイオプラスチック容器の採用拡大 堀内康夫:食品機械装置,50(8)70~76( ‘13) 〔解説〕特集―食品排水処理の技術動向― ジャパンフードサイエンス,52(8)16~45( ‘13) ○廃棄物処理・リサイクル事業補助金制度が本格始動/ 廃棄物・廃液の処理と減圧蒸発濃縮装置による廃液 の減量・回収……………………山本一郎・石畠康寛 ○排水処理の省エネ・省廃棄物・創エネを実現する嫌気 性生物処理装置/-排水処理設備が再生可能エネル ギーの供給源に-……………………………小川晋平 ○排水処理システム『ゴルゴシステムズ』………佐原邦宏 ○新時代の微生物処理,循環型社会実現のために/超小 型微生物処理装置「エコユニバース・フロント」/ ―汚泥ゼロ化&浄化力増強,魚が喜び群れる稼働放 流水―…………………………………………齊籐正明 ○エンザイム汚泥削減システム…………………鈴木邦威 ○各社の排水処理関連技術 586 2013 VOL. 54 NO. 9 最近の技術雑誌から L. M. Ohr…………………………………………91~103 海 外 編 ○「食品安全と品質関係」プレビュー Food Safety Content Abounds at IFT’s 2013 邦文の題名は内容に従って付けてありま すので,原題と異なる場合があります。 Annual Meeting ご興味のある雑誌・記事がございました らいつでも閲覧できますので,当会宛ご 連絡ください。 N. H. Mermelstein…………………………… 104~116 ○「製造プロセス関係」プレビュー 2013 Processing and Engineering Highlight J. P. Clark……………………………………… 117~120 ○「パッケージング関係」プレビュー Poster Presenters Focus on Packaging’s Future : Fruit Processing (DEU) Vol.23 May/Jun.(2013) Active, Edible, Bio-Based, and Holistic A. L. Brody… ………………………………… 121~124 ○ニッチ市場を狙う Targeting the Niche Market Prepared Foods (USA) Vol.182 Jun. (2013) V. Borngraber and W. Augel… ……………… 86~90 ○オメガ3についての一考察 ○特定の健康効能を有するフルーツ Only the Beginning for Omega-3s Some Fruits with Specific Healthy Appeal W. A. Roberts, Jr.… …………………………… 21~23 J. Brito et al.… ……………………………… 103~107 ○アメリカにおけるナトリウム削減政策 Sodium Reduction Update Food Engineering & Ingredients (BEL) Vol.38 May/Jun. (2013) W. A. Roberts, Jr.… …………………………… 25~27 ○グルテンフリーマーケットの多様性 ○ニュートリゲノミクス:将来の栄養学か誇大宣伝か Gorging on Gluten-Free Nutrigenomics : The Future of Human Nutrition W. A. Roberts, Jr.… …………………………… 31~36 or the Next Wave of Biohype? ○心臓の健康に有効な成分 ……………………………………… 9~11 Heart of the Matter ○果物と野菜の鮮度保持プロセス M. Anthony, Ph. D.… …………………… NS3~ NS12 Keeping It Fresh………………………………… 16~19 ○グリセミック値が低く健康に良い成分 ○加工食品の減塩戦略 Ingredients for GI Health Salt Reduction Strategies for Processed Food K. Shelke, Ph. D.… …………………… NS15~ NS23 …………………………………… 23~26 ○キッチンとバーの融合による新しい飲料の提案 ○抗菌包装に利用される精油と天然化合物 Liquid Art Essential Oil and Other Natural Compounds in J. Merino and D. Feder… …………………… 79~89 Antimicrobial Packaging ○おいしくて栄養価の高いキッズ食品の提案 …………………………………… 29~31 Good to Grow On K.-Thomas Ayoob… ……………………………91~100 Food Technology (USA) Vol.67 Jun. (2013) 2013年 (7/13-16) IFT 年次総会とフードエクスポの Food Processing (USA) Vol.74 Jun. (2013) プレビュー ○冷凍食品の市場状況 ○「IFT 総会とフードエクスポ」プレビュー Frozen Foods On Thin Ice ? The Premier Food Science Event D. Phillips………………………………………… 33~39 M. E. Kuhn… …………………………………… 24~38 ○消費者はヘルシースナックの変化に好意的 ○「原料と処方関係」プレビュー A New Attitude Toward Snacks Feast on Formulation Inspiration R. Gillespie… ……………………………… WF3~ WF7 K. Nachay………………………………………… 39~89 ○食品研究者が学ぶスーパーフルーツの新しい波 ○「栄養補助食品関係」プレビュー Superfruits Need Not Be Exotic Wellness Will Turn Up the Heat in Chicago 食品と容器 R. Gillespie… …………………………… WF11~ WF14 587 2013 VOL. 54 NO. 9 最近の技術雑誌から J.Cioletti… ……………………………………… ・10~12 ○フレキシブル生産と高生産性のバランスが重要 Turn- on- a- Dime Manufacturing ○棚で自己主張している最新の飲料容器 K. T. Higgins… ………………………………… 61~66 Show and Tell A. Kaplan………………………………………… 22~24 Food Engineering (USA) Vol.85 Jun. (2013) Packaging Digest (USA) Vol.50 Jun. (2013) ○第36回食品・飲料プラントの建設調査 ○工場管理をタブレットで 36th Annual Plant Construction Survey : The Trend Toward Tablets Processors Push for ROI John. Henry……………………………………… 14~16 W. Labs…………………………………………… 50~58 ○2013年デュポン賞を受賞した新製品 ○食品オートメーション&製造会議リポート Rising to Meet Global Challenges Innovatiing Risk Assessment and World-Class K. B. Connolly…………………………………… 22~25 Best Practices M. Knights… …………………………………… 85~91 Beverage Industry (USA) Vol.104 Jun. (2013) ○原材料がもたらすリスクを最小限に抑制 ○飲料会社の2012年セールストップ100 Minimize Risk from Raw Materials The Top 100 Beverage Companies W. Labs…………………………………………… 93~99 …………………………………… 24~30 ○ビールのルネサンス促進 Food Manufacture (GBR) Vol.88 Jun. (2013) Furthering the Beer Renaissance ○カカオ豆不足がかかえる諸問題 ……………………………………… 32~35 Has Bean, or Has Been ? ○無香料の水飲料に花のエキスで機能付加 M. Knott… ……………………………………… 23~24 Flower Power… ……………………………………… ・38 ○食品工場のオートメーションとエネルギー管理 ○次世代の飲料自動販売機 In Your Cotrol The Next Generation of Vending R. Pendrous……………………………………… 35~36 …………………………………… 40~42 ○QRコードの活用が進まない英国事情 The Canmaker (GBR) Vol.26 Jun. (2013) Cracking Codes P. Gander………………………………………… 44~45 ○ Cannex で見た各国の技術革新 Eye Catching Developments Packaging World (USA) Vol.20 Jun. (2013) J. Nuttingl………………………………………… 28~31 ○販売拡大に AR(拡張現実)を利用 ○ Cannex で見たアメリカの検査機器の革新 Translating Augmented Reality into Augmented Measurable Success Sales D. Searle… ……………………………………… 31~34 I. Schofield… …………………………………… 64~67 Journal of Food Science (USA) Vol.78 Jun. (2013) ○外科手術キットに ID 管理システムを導入 ○低線量の電子線照射が牛挽肉のパティと生の枝肉片の Surgical Kits ‘Empower’ Medline 品質に及ぼす影響 J. Butschli………………………………………… 40~43 Effect of Low-Dose Electron Beam Irradiation on ○パッケージを通してミレニアル世代に到達 Quality of Ground Beef Patties and Raw, Intact Reaching Millennials through Packaging Carcass Muscle Pieces J. Karsh…………………………………………… 68~71 R. Villamor et al.… ………………………S911~ S919 Beverage World (USA) Vol.132 Jun. (2013) ○血糖症,インスリン血症および心血管リスク因子に対 するレーズン摂取の効果 ○清涼飲料のトレンドと新商品 Raisin Consumption by Humans: Effects on Non- Alcohol Trends & Innovation Glycemia and Insulinemia and Cardiovascular J. Cirillo…………………………………………… 6~8 Risk Factors ○アルコール飲料のトレンドと新商品 J. Anderson et al.… ……………………… A11~ A17 Alcohol Trends & Innovation 食品と容器 588 2013 VOL. 54 NO. 9 ジャーにお目にかかる機会があったので,野菜の 野菜・果物を巡って (第五十七話) 購入状況を伺った。価格がやや高くなっていると のこと。もっともイギリスでは多くの野菜を輸入 しており,食堂で購入する野菜もスペイン,フラ ンス,エジプトなどからの輸入品が多いと伺った。 イギリスの野菜見聞と 日本の状況 イギリス産の野菜はグリーンハウスによるものが 主で高価であるため,利用しにくいとのこと。 イギリスの田園地帯に行くと,広大な小麦畑や とうもろこし畑を目にするが,野菜畑を見ること よし だ き よ はほとんどない。家庭菜園規模に狭い野菜畑が目 こ 吉 田 企 世 子 にとまる程度である。数年前,列車でイギリス国 内を旅した折に,どのあたりであったか記憶して (女子栄養大学名誉教授) ないが,大きなガラスハウスが並んでいるところ を一度だけ見たことがあった。 今年も3週間ほどイギリスで過ごしてきた。例 日本は農産物の自給率40%と低いとはいうもの 年より暑い夏であったが,湿度が高くないので, 日本の夏とはかなり異なり,爽やかであった。し の,野菜は80%弱を自給しているので,国産野菜 かし,ある日の夜明けには驚くような雷鳴を耳に を利用するのが一般的である。しかし,輸入量も し,イギリスでこのように大きな雷に出くわすと 徐々に増加している。輸入品の方が安価であるの は予想外であったので,少々不安も感じたが,明 は,イギリスの場合と同様である。日本もかつて け方には晴天となり,まるで,うそのような天気 のような露地栽培野菜の生産は少なくなり,施設 の変化である。イギリスの天候は一日の中に四季 栽培が増加しているのが現状である。この場合に があるといわれるが,長く滞在すると,それを実 は栽培条件をコントロールできるので,品質の安 感する。 定な野菜が得られ,また労働条件も軽減されるの で女性や若い後継者にも受け入れられている。高 朝夕は気温が低く,肌寒く感じる日もあるが, 日中は太陽が出ると,強い日差しとなり,かと思 齢化が進んでいる農村に新しい活力が加わること うと急に雨が降り出し,しばらくすると太陽が顔 は必要なことである。 を出す。初めて渡英した折には雨の中を傘もささ TPP 対応もあって,国では農業の規模拡大化 ずに歩いている人が多いのに驚いたが,この天候 を課題に計画しているが,一方では小規模で丁寧 を経験するとその状況も理解できる。イギリスの につくる農産物も必要である。特に中山間地域の 友人によると近頃は傘をさす人がやや多くなって 多い日本では地理的条件に合った特色ある農産物 きたとのこと。たしかに以前とは少々変わってき の生産が必要であろう。それに対応した丁寧な農 たように感じた。 業を営む日本人の国民性が持続されていると推察 している。 一般にイギリス人は先ず,天候の話題から会話 がはじまるとのこと,このように変化に富んだ天 先日,山間の田舎町に出かけた折に農家の主婦 候によるものなのか。天候に関する表現も豊富で グループが経営する産直の販売店でトマト,とう ある。 もろこし,えだまめなどを購入した。その味の良 好なこと,久しぶりに美味しい野菜を堪能し感激 雨の少ない夏であったので,野菜の生育にも影 した。これらはすべて小さな規模で栽培された野 響したようである。 菜である。このような美味しい野菜の味を日本の 2週間ほどサマースクールに出席したが,その 子供たちの舌に伝えたいと願っている。 折には寮生活であったので,大きなキャフェテリ 小規模で品質の優れた農産物生産に取り組む農 ア で 3 食 の 食 事 を と っ た。 そ の 食 堂 の マ ネ ー 食品と容器 589 2013 VOL. 54 NO. 9 その頃,ある企業の植物工場を見学したことが 家が生き残れる条件を考慮してほしいのである。 ある。衛生的に管理されているので,白衣を着用, 20年ほど前になるが,トマトを実験試料として 研究していた折,栽培をお願いした石川県松任市 帽子をかぶり,専用の長靴をはいて,工場内に入 の農家は,周辺は露地栽培で野菜が生産される地 り,フリーレタスの栽培状況を目の当たりにした 域であり,石川県でも代表的な農村地帯であっ 時には,まさに植物工場であることを実感した。 た。しかし,その後,10年ほどして伺った折りに 収穫したレタスは水洗いすると汚染されるので, は,畑の面積が縮小されて,ほとんどがハウス栽 そのまま食ベて下さいとのことだったので,再び 培になっており,かつて農道であった道は舗装さ 驚いたことである。香味はやや淡泊に感じたので, れた車道となり,あまりの変化に驚いたことであ それが限界なのであろうとその折には判断した。 る。ところが,最近の情報ではその辺り一帯の農 近年は蛍光灯や LED 光源の性能が向上し,価 家の土地は大きなスーパーマーケットに買収され 格も安価になったため,栽培システムを変えるこ たとのこと。お世話になった農家は自家用の野菜 とにより,施設面積当たりの栽培密度が格段に高 を庭先で作る程度で,農家でなくなるとのことで まったようである。したがって,生産コストが低 ある。日本農業の縮図を見る感じがして,これで 下し,それにより普及が加速したようである。そ よいのであろうか,納得できない心境である。 れでもやや高価ではあるが,消費者の立場も様々 なので,重宝に活用されるのであろう。専門家に 栽培に特技をもつ生産者を必要としない農業も よると将来に向けて食味はどのようにでもコント 拡大化している。 近年植物工場が注目され,太陽光を全く利用し ロールできるという。そうなるであろうか。野菜 ないで人工光のみで栽培する人工光型植物工場の の繊細な食味にどこまで対処できるのであろうか 建設が拡大し,植物工場産野菜も珍しいものでは 楽しみでもある。 ロンドンでは1週間ほどイギリス人の知人宅に なくなってきた。 人工光型植物工場は1980年代から開発・普及が 滞在したが,夕食には野菜をたっぷり用いた副菜 始まったのであるが,開発当初は,光源が高圧ナ がつくので有り難かった。ブロッコリー,カリフ トリウムランプで生産コストが高く,野菜の価格 ラワー,いんげん,グリンピースなどであったが, も高かったため,一部のデパートや高級スーパー 必ずじゃがいも料理が添えられた。しかし,これ に販売チャンネルが限定され,購買層も経済的に が一般的なイギリス家庭の夕食とはいえないよう 余裕のある立場の方々にかぎられていたようであ である。若い主婦の場合は日本と同じように市販 る。 品を活用することが多くなっているらしい。 編 集 後 記 ●急に思い立ち,今話題の富士山へGO!もちろん5合 目まで,バスの日帰り旅行,モモとブドウとワインにつ られて猛暑の中行って参りました。未登山,もっぱら眺 めて満足してきた山。でも近づくにつれ,雲も晴れさす がに雄大でしばし圧倒されたが,人,人,人の山。 ●ところで普通は6年ごとの世界遺産の更新検査が,こ の富士山は3年とのガイドの説明。道路脇には空き缶や くずが散見され,さもありなんと感じる次第。日本人は 自分の周りや見える所はきれいにするが,その他の所は まだまだ? ドイツでは都市も田舎も本当にきれいでい たく感激した記憶。家々の窓の真っ赤なゼラニウムが特 に印象的。これを機会に皆で少しづつ努力し公共感覚を アップしたいもの。そして,世界基準に少しでも近づき, “大人の国”になっていくことができれば,この世界遺 産登録も無駄ではないかも。 (輝) 食品と容器 FOOD & PACKAGING 発行所 缶 第54巻 第 9号 平成25年9月 1 日発行 詰 技 術 研 究 会 〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町 1−8−4 TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 定 価 FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3 1部 800円 Eメール:[email protected] 年間 8,000円 郵便振替 0 0 1 5 0 − 0 − 4 2 2 1 5 (消費税・送料込) 井 俊 夫 編 集 人 荒 発 行 人 −禁無断転載− 田 嶋 一 乱丁・落丁本はお取り替えいたします。 590 雄 印 刷 所 大和サービス株式会社 2013 VOL. 54 NO. 9
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