用語辞典 空気感染隔離室(AIIR:airborne infection isolation room) AIIR(以前は陰圧隔離室と呼ばれていた)は、空気感染性疾患が疑われているか確定している人々を隔 離するために用いられる個室病室である。咳による飛沫核やエアロゾル化した汚染体液によって、 ヒトからヒトに感染する感染性微生物の伝播を最小限にするために、AIIR では環境因子が制御され る。AIIR では、病室内が陰圧となり(空気流はドアの隙間の下から病室に流れ込む)、1 時間に 6∼ 12 回の換気がなされ (既存施設では 1 時間に 6 回換気され、新築または改築施設では 12 回換気 される)、空気は病室から建物の外部に直接排気されるか、病室に戻る前に HEPA フィルタで濾過 されてから再循環される(MMWR 2005; 54 [RR-17])。 米国建築協会 (AIA: American Institute of Architects) 建築換気の標準を制作している専門機関のこと。 「病院および医療ケア施設のデザインおよび建築の ための 2001 年ガイドライン」は米国保健福祉省および国立保健研究所の援助をうけ、AIA、健康 のための建築学会、施設ガイドライン協会、によって制作がサポートされている。このガイドライ ン は 、 空 気 感 染 隔 離 室 (AIIR) や 防 護 環 境 を 作 る た め の 手 引 き の 主 な 情 報 源 と な っ て い る (www.aia.org/aah)。 外来ケア環境(ambulatory care setting) 一晩滞在しない患者の医療ケアを提供する施設のこと(病院をベースとした外来クリニック、病院を ベースとしないクリニックおよび開業医、救急ケアセンター、サージセンター、独立透析センター、 保健所クリニック、イメージングセンター、行動保健および物質乱用外来クリニック、理学療法お よびリハビリテーションセンター、歯科診療など) バイオエアロゾル(bioaerosol) 生物体(細菌、ウイルス、埃ダニ、真菌菌糸、真菌胞子など)の全部または一部を含んでいる粒子の 空気拡散のこと。そのようなエアロゾルは通常は、単分散および凝集した細胞、胞子、ウイルスの 混合物から構成されており、呼吸器分泌物や不活化微粒子のような他の物質によって運ばれる。感 染性エアロゾル(感染性疾患を引き起こすことが出来る生物学的因子を含んでいるエアロゾル)はヒ ト発生源(例. 咳、くしゃみ、会話、歌唱のとき、または吸引や創部洗浄のときに、気道から排出さ れる)、湿性環境発生源(例. 冷暖房空調機およびクーリングタワーからのレジオネラ)、乾燥した発 生源(例. 建築埃のアスペルギルス胞子)から作り出される。バイオエアロゾルには大きな呼吸器飛沫 も小さな飛沫核も含まれる (Cole EC. AJIC 1998;26: 453-64)。 ケア提供者(caregiver) 機関の雇用者ではなく、給与も支払われていないが、患者に医療ケアを提供しているか提供を援助 している人々(家族や友人など)であり、実施しなければならない仕事に基づいて、必要に応じた技 術訓練を受けている人々のこと。 コホーティング(cohorting) このガイドラインの文脈では、この用語は同じ感染性微生物を発症または保菌している患者を一緒 に集める行為に用いられるが、彼らのケアを一区域に制限し、感受性のある患者への接触を防ぐの が目的である(患者のコホート)。集団感染のときは、伝播の機会をさらに制限するために、医療従 事者を患者のコホートに割り当てることもある(スタッフのコホート)。 1 保菌(colonization) 身体の表面または内部での微生物の増殖であるが、検出できるような宿主免疫反応、細胞障害、臨 床症状はみられない。宿主内に微生物が存在する期間は様々であるが、潜在的な感染源になるかも しれない。多くの場合、保菌とキャリアは同意語である。 飛沫核(droplet nuclei) 5μm 未満のサイズの微粒子であり、蒸発した飛沫の残余物で、ヒトが咳、くしゃみ、叫ぶ、歌う ときに生み出される。これらの粒子は空気中に長時間浮遊でき、通常の空気流に乗って室内または それを越えて、隣接空間や排気流入区域に運ばれる。 工学的制御(engineering control) 工学技術を用いて、作業室の危険物を除去または隔離すること。AIIR、防護環境、鋭利物による損 傷を予防するために設計された器具や鋭利物容器が工学的制御の例である。 疫学的に重要な病原体(epidemiologically important pathogen) 下記の 1 つ以上の特徴のある感染性微生物のこと(①容易に伝播する、②集団感染を引き起こす傾向 がある、③重篤な結末になる、④治療が困難である)。例としては、アシネトバクター属、アスペル ギルス属、バークホルデリア・セパシア、クロストリジウム・ディフィシレ、クレブシェラ属およ びエンテロバクター属、基質拡張型β-ラクタマーゼを産生しているグラム陰性桿菌[ESBL]、メチ シリン耐性黄色ぶどう球菌[MRSA]、緑膿菌、バンコマイシン耐性腸球菌[VRE]、バンコマイシン 耐性黄色ブドウ球菌[VRSA]、インフルエンザウイルス、RS ウイルス(RSV)、ロタウイルス、 SARSCoV、ノロウイルス、出血熱ウイルスが含まれる。 手指衛生(hand hygiene) 下記のいづれかに適用される一般的用語である(①通常石鹸(非抗菌性石鹸)と水による手洗い、②手 洗い消毒(消毒薬を含んだ石鹸と水)、③擦式手指消毒(水を用いない消毒製剤[殆どがアルコールベー ス]で手のすべての表面を擦る)、④手術時手指消毒(手術者が手の一過性菌を除去し、手の常在菌を 減らすために術前に実施する手洗い消毒または擦式手指消毒(559))。 医療関連感染(HAI: healthcare-associated infection) 医療が提供されている環境(急性期ケア病院、慢性ケア施設、外来クリニック、透析センター、サー ジセンター、在宅など)において、ケアされている患者に発生し、かつ医療を受けていることに関連 している感染のこと(医療が提供された時点では潜伏期でなく、感染もしていない)。外来および在 宅では、HAI は内科的または外科的介入に関係した感染に適用される。感染した地理的な場所は不 確かなことが多いので、「医療獲得」よりも「医療関連」のほうが用語として好まれる。 医療疫学者(healthcare epidemiologist) 初期段階の訓練は医学(M.D., D.O.)、修士、博士号レベルの疫学であり、さらに医療疫学の高等訓練 を受けた人のこと。通常、これらの専門家は病院、長期ケア施設(LTCF: long term care facility)、 医療ケア提供システムにおいて感染制御プログラムを指導または助言している(感染制御専門家も 参照)。 医療従事者(healthcare personnel, healthcare worker (HCW)) 医療現場で働くすべての有給および無給の人々のこと(医療分野において専門的または技術的な訓 練を受けていて医療現場で患者ケアを提供する人、または食事、ハウスキーピング、工学、メイン テナンスの職員のように医療の提供を援助するサービスをしている人など) 2 造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation (HSCT)) 血液または骨髄に由来する造血幹細胞の移植であり、ドナーのタイプ(同種または自家など)や細胞 の由来元(骨髄、末梢血、胎盤/臍帯血など)には関係しない。重症免疫抑制の期間は細胞の由来元、 化学療法の強さ、移植片対宿主疾患の有無によって異なる(MMWR 2000; 49: RR-10)。 超高性能フィルタ(high-efficiency particulate air (HEPA) filter) 特定の空気流量で、0.3μm(最も容易に浸透する粒子サイズ(most penetrating particle size)[訳 者註: HEPA フィルタの効率は粒子の大きさによって変化する。ある大きさで効率が最低となり、 貫く透過率が最大となる。これが最も容易に浸透する粒子サイズである])以上の大きさの粒子の >99.97%を除去する空気フィルタのこと。HEPA フィルタは中央空気処理システムに統合させて もよく、また病室の天井の上にポイント使用で設備してもよく、移動式ユニットとして用いてもよ い(MMWR 2003; 52: RR-10)。 在宅ケア(home care) 住居(個人住居、高齢者生活センター、補助生活施設など)に住んでいる患者に提供される広範囲の 医学、看護、リハビリテーション、ホスピスおよび社会的サービスのこと。在宅医療ケアサービス には「在宅医療助手や熟練看護師、呼吸療法士、栄養士、理学療法士、牧師、ボランティアによっ て提供されるケア」 「耐久性医療器具の供給」 「在宅輸液療法」 「理学療法、言語療法、作業療法」が 含まれる。 免疫不全患者(immunocompromised patient) 先天的または後天的な免疫不全(HIV 感染、先天的免疫不全症候群など)、慢性疾患(糖尿病、癌、肺 気腫、心不全、ICU ケア、栄養失調、他の疾患の経過中の免疫抑制治療[照射、細胞傷害性化学療法、 移植片抗拒絶薬、コルチコステロイド、免疫システムの特定の成分に対するモノクロナール抗体]) によって免疫機構に欠陥のある患者のこと。免疫不全患者の感受性が増加している感染症のタイプ は免疫抑制の程度および影響を受けている免疫システムの特定の成分によって決定される。同種 HSCT の患者や慢性 GVHD の患者は HAI に最も脆弱であると考えられる。免疫不全状態はまた、 特定の感染症(結核など)の診断をさらに困難なものにし、同じ感染症に罹患している正常免疫シス テムの人々よりも重症な臨床状態になる。 感染(infection) 微生物が防御機能を回避または乗り越えて宿主組織内で増殖および侵入し、宿主に伝播した状態の こと。感染に対する宿主の反応には臨床症状が含まれるが、不顕性のこともある。宿主組織を傷害 する微生物の直接的な病原性や細胞性反応または抗体反応の働きによって疾患の症状発現は修飾さ れる。 感染制御および予防の専門家(Infection control and prevention professional (ICP)) 初期段階の訓練は看護、医療工学技術、微生物、疫学のいづれかであり、さらに感染制御について 特別な訓練を受けた人のこと。責務には「感染症データと傾向の収集、分析、医療提供者へのフィ ードバック」 「感染リスク評価、予防と制御の戦略のコンサルテーション」「教育および訓練活動の 実施」 「根拠に基づいた感染制御業務または規制認可局によって規定された感染制御業務の実行」 「患 者の結末を改善するための疫学的原則の適用」「改築および建築プロジェクトの企画への参加(建築 埃の適切な封じ込めを確認するなど)」 「新しい製品や処置の成果の評価」 「感染予防に関連する雇用 者の健康サービスの監督」 「防御態勢計画の実施」 「大規模な感染制御問題が発生したときの医療現 場内の連絡、地域および州の健康局との連絡、地域内での連絡」 「研究への参加」が含まれる。感染 制御の認定(CIC: certification in infection control)は感染制御および疫学の認可委員会を通じて 3 可能である。 感染制御および予防プログラム(infection control and prevention program) 医療現場を患者および医療従事者にとって安全なところにするために、医療関連感染の予防のため の推奨手技を HCW が実施・遵守しているかを確認するための一連の活動を含む総合プログラムの こと。医療施設認定合同審査会(JCAHO: Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations)は認定のために下記の 5 つの感染制御プログラムの要素を求めている(①サーベイ ランス:感染や保菌についての患者および医療従事者のモニタリング、②調査:感染の問題や好ま しくない傾向の同定と解析、③予防:感染性微生物の伝播を予防するため、および器具や処置が関 連した感染のリスクを減らすための処置の実施、④制御:集団感染の調査と処置、⑤報告:州およ び連邦の法律や規則(www.jcaho.org)によって求められている外部機関への情報の提供)。感染制 御プログラムのスタッフは施設管理母体の許可を得て、医療施設の感染制御の方針を決定する最終 的な権限を持つ。 長期ケア施設(long-term care facility (LTCF)) セルフケアが継続的にできない人々の生物精神社会的必要性に合うようにデザインされた一群の住 居および外来施設のこと。これらには、熟練看護施設、慢性疾患病院、ナーシングホーム、孤児お よびグループホーム、成長障害施設、住居的ケア施設、補助生活施設、退職者ホーム、成人デイケ アー施設、リハビリテーションセンター、長期精神病院が含まれる。 マスク(mask) 鼻と口を覆うために使用されるものに総合して用いる言葉であり、処置用マスクおよび外科用マス クの両者が含まれる (www.fda.gov/cdrh/ode/guidance/094.html#4)。 多剤耐性微生物(multidrug-resistant organism (MDRO)) 一般的に、1 つ以上のクラスの抗菌薬に耐性であるが、通常は 1 つまたは 2 つの抗菌薬製品を除き、 全ての抗菌薬に耐性な細菌のこと(MRSA、VRE、基質拡張型β-ラクタマーゼを産生しているグラ ム陰性桿菌[ESBL]または本来的に耐性のグラム陰性桿菌)。 院内感染(nosocomial infection) 2 つのギリシャ語「nosos」(病気)および「komeion」(世話をする)に由来する言葉であり、急性 期ケア施設(病院)に入院中または入院した結果として発生し、かつ入院時は潜伏期間ではなかった 感染のことを言う。 個人防護具(personal protective equipment (PPE)) 粘膜、皮膚、衣類が感染性微生物に接触するのを防ぐために、単独または組み合わせて用いる様々 なバリアのこと。PPE には手袋、マスク、レスピレータ、ゴーグル、フェースシールド、ガウンが 含まれる。 処置用マスク(procedure mask) 一般的な患者ケアで用いることを目的とした、鼻と口を覆うもの。これらのマスクは、ヒモやゴム ヒモよりむしろ、耳輪を用いて顔につけられるのが一般的である。外科マスクとは異なり、処置用 マスクは米国食品医薬品局(FDA)によって規制されていない。 防護環境(protective environment) 廊下に比較して陽圧の空気流(空気が病室から隣接の外部空間に流れ出る)が設定されている特別な 4 患者ケア区域であり、通常は病院内に設置されている。超高性能濾過空気(HEPA)、1 時間当たり の頻回の換気回数(12 回以上)、室内への空気の漏れを最小にすること、の組み合わせによって、重 症免疫不全の患者(同種造血幹細胞移植[HSCT]を受けた患者など)を安全に収容できる環境を作り 出し、環境からの胞子の曝露の危険性を減らすことができる。その他の要素には、室内装飾品やカ ーペットなどの替わりにゴシゴシ磨ける表面のものを使用すること、埃の蓄積を避けるために掃除 すること、新鮮な花や鉢植え植物を禁止することがある。 準実験的研究(quasi-experimental study) 介入を評価するものの、研究デザインとして無作為化を用いない研究のこと。これらの研究はまた、 非無作為化介入前後研究デザインとも言われる。これらは介入と結果の間の因果関係を明らかにす ることを目的としているが、無作為化比較試験によって得られる寄与有益性に関する信頼レベルに は到達できない。病院や公衆衛生の現場では、無作為化比較試験は倫理上、実用上、緊急上の問題 ゆえに、実施できないことが多い。それ故、通常は準実験的研究が用いられている。しかし、介入 が統計学上、有効のようにみえたとしても、その結果については代替の説明が可能かもしれないと いう疑問が持ち上がることはある。無作為化比較試験を実施することが兵站学的に不可能であった り、倫理的に出来ない場合には、このような研究デザインが用いられる(集団感染のときなど)。準 実験的研究のデザインの分類には、結果の妥当性に寄与するかもしれない特徴的デザインの階層が ある(Harris et al. CID 2004:38: 1586)。 在宅ケア環境(residential care setting) 人々が住んでいて、最小限の医療ケアが提供され、居住者の心理・社会的に必要なものが提供され ている施設のこと。 レスピレータ(respirator) 医療従事者が 5μm 未満の大きさの空気感染性微生物に吸入曝露することを防ぐために装着する個 人防護具のこと。これらには結核菌、天然痘ウイルス、SARS-CoV の患者の感染性飛沫核や環境 真菌(アスペルギルス属など)の胞子のような感染性微粒子を含んでいる埃粒子が含まれる。CDC の 米国労働安全衛生研究所(NIOSH: National Institute for Occupational Safety and Health)は医 療現場で使用されるレスピレータを認定している(www.cdc.gov/niosh/topics/respirators/)。 使い捨ての N95 微粒子(空気清浄用)レスピレータは医療従事者によって最も頻繁に用いられてい るタイプである。他のレスピレータには N-99 および N-100 微粒子レスピレータ、高性能フィル ター装備の電動ファン付き空気清浄レスピレータ(PAPR: powered air-purifying respirator)、 電動ファンのないフルフェース弾力性陰圧レスピレータが含まれる。NIOSH 認可のレスピレータの リストは www.cdc.gov/niosh/npptl/respirators/disp_part/particlist.html で見つけることが 出来る。レスピレータは完全な呼吸防御プログラムとともに用いられなければならないが、これは 米国労働省の労働安全衛生局(OSHA: Occupational Safety and Health Administration)が求め ていることであり、フィットテスト、訓練、レスピレータの適切な選択、検診、レスピレータの維 持が含まれている。 呼吸器衛生/咳エチケット(respiratory hygiene/cough etiquette) 医療ケアにおいて飛沫または空気感染による呼吸器病原体の伝播を最小限にするためにデザインさ れた方法の組み合わせのこと。呼吸器衛生/咳エチケットの構成成分には、①咳やくしゃみするとき には口や鼻を覆う、②呼吸器分泌物を含んだ使用済みのティッシュを手が触れずに済む容器に迅速 に捨てる、③周辺環境の汚染を減らすために咳をしている人々に外科用マスクを提供する、④咳を するときには、顔を他の人からそらし、空間的間隔(>3 フィート[約 1m])を維持する、が含まれる。 これらの処置は呼吸器感染の症状のあるすべての患者および同伴する家族や友人をターゲットとし 5 ており、医療ケア環境に最初に訪れた時点で開始する(救急部の受付/振り分け、外来クリニック、 医 療 提 供 オ フ ィ ス な ど ) 。 (Srinivasin A ICHE 2004; 25: 1020; www.cdc.gov/flu/professionals/infectioncontrol/resphygiene.htm). 安全文化/風土(safety culture/climate) 仕事環境において期待される安全に関する労働者の認識の共有と管理のこと。病院の安全風土には 下記の 6 つの機関的な要素が含まれる(①安全プログラムのための上級管理サポート、②安全な業務 に対する職場バリアがないこと、③職場の清潔と整頓、④スタッフ間での摩擦が少ない良好なコミ ュニケーション、⑤監督者が安全に関して頻回のフィードバック/訓練を行うこと、⑥PPE および 工学的制御が利用できること(620))。 感染源制御(source control) 身体の排出口または限られた空間で感染性微生物を封じ込める過程のこと。この用語は呼吸器感染 によって伝播する感染性微生物の封じ込めに最も頻繁に用いられるが、他の伝播経路にも適用でき る(排膿創、小水疱性または水疱性の皮膚病変など)。 「咳を覆うこと」とマスクを装着することを個 人に奨励している呼吸器衛生/咳エチケットは感染源制御である。局所排気のための囲み設備(喀痰 誘導やエアロゾル薬の投与のためのブースなど)は感染源制御の他の例である。 標準予防策(Standard Precaution) 診断が疑われるとか確定しているとかに関係なく、また推定感染状態に関係なく、すべての患者に 適用される一群の感染予防行為のこと。標準予防策は普遍的予防策(780)と生体物質隔離(1102) を組み合わせて拡張したものである。標準予防策は、汗を除くすべての血液、体液、分泌物、排泄 物、創のある皮膚、粘膜には伝播しうる感染性微生物が含まれているかもしれないという原則に基 づいている。標準予防策には手指衛生が含まれるが、予想される曝露に基づいて、手袋、ガウン、 マスク、眼防御、フェースシールドを使用することも含まれる。また、感染性体液に汚染されてい るかもしれない患者環境にある器具や物は感染性微生物の伝播を防ぐ方法で取り扱われなければな らない(取り扱いには手袋を装着する、厳しく汚染された器具は封じ込める、再使用される器具は他 の患者に使用される前に消毒や滅菌するなど)。 外科用マスク(surgical mask) 外科患者および手術室の職員を微生物伝播や体液から守るために外科処置の間、手術室の職員が口 と鼻を覆う器材のこと。外科マスクは医療従事者が大きな感染性飛沫(>5μm)に接触するのを防ぐ ためにも用いられる。2003 年 5 月 15 日、米国食品医薬品局によって発行された手引きの草案に よると、外科用マスクの使用に関連する健康への危険性を軽減するために、外科用マスクは耐水性、 細菌濾過効果、差圧(換気)、可燃性についての標準化された検査手順を用いて評価される。これら の仕様書は外科処置、レーザー処置、隔離処置、歯科処置、内科処置の商標のあるマスクに用いら れる (www.fda.gov/cdrh/ode/guidance/094.html#4)。外科用マスクは小粒子や飛沫核の吸 い込みを防がないので、特定の空気感染性微生物(結核菌など)に対する防御に推奨されている微粒 子レスピレータと混乱してはならない。 6
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