No.9(PDF:6.3MB)実践現場の感染管理~ベストプラクティスを

花王 ハイジーン ソルーション
特集
実践現場の感染管理
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感染管理と医療安全
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実践現場の最善策の考え方とその手法
INDEX
◆ 巻頭言
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・1
「 花王感染管理セミナー 」を開催して・
◆ 特集ー 実践現場の感染管理〜ベストプラクティスをめざして〜
花王感染管理セミナー(2004年11月6日)より
感染管理と医療安全・
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・2
実践現場の最善策の考え方とその手法・
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・13
◆ 活動事例ー「感染管理ベストプラクティスの実践 」
花王感染管理セミナー(2004年11月6日)より
実践現場の感染管理(第一集)
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・19
〜ベストプラクティスをめざして〜の作成と活用
感染管理ベストプラクティスの・
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・22
ワードオーディットによる評価〜薬剤の混合〜
ワードオーディットから見えてきたこと・
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・23
〜ドレッシング交換の結果から〜
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ワードオーディットを実践して 〜採血の 結果から〜・
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・25
ワードオーディットと教育効果 ・
〜末梢カテーテル留置手技の結果をもとに〜
◆ 海外感染学会報告
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・26
APIC 2005レポート 参加体験記・
◆ 花王の衛生管理製品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
◆ バックナンバーのご紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
表紙のCG
医療器具と環境をイメージして
CGを作成したものです。
巻頭言
「花王感染管理セミナー」
を
開催して
花王プロフェッショナル・サービス株式会社
代表取締役社長
木村
光男
2 00 3 年 4月に厚生労働省 から「医療提供体制の改革のビジョン案」が 示され 、そこには
患者の視点の尊重、 質が高く効率的な医療の提供、 医療の基盤整備がポイントとして
あげられています。そのため、最近、医療 や 病院をとりまく環境 が 大きく変化しており、
医療関係者の皆様におかれましても、カルテ開示導入に伴う患者さんへの分かりやすい診療
説明、個人情報保護法への対応、医療過誤や院内感染等に対するリスクマネジメント、病院
機能評価など幅広い問題に取り組んでおられることと思います。
花王では「清潔で美しくすこやかな毎日をめざして」を企業コンセプトとして、従来 から
石けん、洗剤、スキンケア、医薬品原料などの製品技術を培っておりましたが、この技術を
活 かして2000年より洗 浄・消毒・滅菌の分野において手指衛生用品、器具洗浄用品、環境
衛生用品を開発して参りました。医療環境が大きく変化する中、さらに医療関係者の皆様に
お役に立つことができないかと考え、
「花王感染管理セミナー」
を開催することにいたしました。
昨年秋から
『実践現場の感染管理〜ベストプラクティスをめざして〜』
をテーマとして実施して
参りましたところ、多くの方々にご参加賜り、ご好評をいただきましたので、東京で 2 004 年
11月6日に開催いたしましたセミナーの概要を『花王 ハイジーンソルーション 9号』の特集
としてお 届けしたいと思います。
セミナーの基調講演は自治医科大学附属病院感染制御部 部長の森澤助教授に、教育講演
には同じく感染管理がご専門のヘルスケアリソース研究所の土井所長に、感染管理ベスト
プラクティスの実践における事例発表にはSOPプロジェクトのメンバー(※)
の中から5名の
方にご講演いただきました。
この 特集 が皆様の取り組みのご 参考やヒントにな れば 幸いです。
※日常頻繁に繰り返される実践を一つ一つの手順に分解し、感染管理に焦点を絞って
(例えば、医療従事者の手を
介してなど )
手順毎のリスク
(危害)
分析を行うことにより実践現場の最善(ベストプラクティス)
を導き出して、
分かりやすい図解にした冊子『実践現場の感染管理〜ベストプラクティスをめざして〜』を編集されたプロジェ
クトメンバー。
1
特集
実践現場の感染管理
。
基調講演
感染管理と医療安全
自治医科大学附属病院
部長
助教授
感染制御部
森澤 雄司 先生
今日は、
「感染管理と医療 安全」
ということで、少し
なさったと思います。 S A R S が 問 題になった頃、アメ
思い切った発言もあるかと思いますが、聞いて頂きた
リカでは天然痘によく似たサル痘という病気がはやっ
いと思います。
ていました。アフリカスナネズミというのをガーナから
自治 医 大 は 栃 木 県 にありますが 、こちらのほうで
輸入して、ペットとして飼いたいという人たちがいた
感染制御部が今年 4月にできまして、私はそちらで今
わけです。そこのペットショップの中でプレーリード
仕事をいたしております
(図 1 )
。
ッグに 移って、そのプレーリードッグを買った人に移
った。このようなよくわからない感染経路も世の中には
あります。
今 年 に なって鳥インフルエンザというものが 出てき
ました。狂牛病も感染症です。最近は、キノコも食べ
られないというようなこともあったりして、感染症は
非常に幅が広 い。このような感染症を相手に、感 染
管理をするということはなかなかむずかしいことです。
起こるべくして起こる病院感染症
図1 自治医科大学附属病院
何が問題かというと、感染 症は 博物学であるという
『パ パ の 嫌 い な 果 物 は 何 でしょう?』これ が 今日の
ことです。感染症には 3 要 素 があります。病原微生物
テーマです。途中で質問をしますので、皆さん、答を
と感染 経路と感受性 宿主、つまり患者さんです。普通
考えておいてください。
の病気は、人の体の中で起きていることが正常な機能
感染症も、いろいろとむずかしいことが多くて、非常
や行動からどれ 位ずれているかをチェックして、それを
に話題ですね。9・11同時多発テロが起こった後、炭
正常な方向に近づけるということで、医療は成り立つ
疽菌のテロがあり、西ナイル熱がはやりました。西ナ
わけですが、感染症の場合は、病原微生物というもの
イル 熱は、ニューヨークで出てきて、当初はテロでは
が必ずいる。その病原微生物によって対 応は 違うかも
ないかという噂もありましたが、いまやもうアメリカ全
しれない、またそれがどういった感染経路で患者さん
土に 広がっています。テロに対 する恐怖感から、アメ
のところへ伝播したか、も問題になります。
リカでは医療従事者は天然痘のワクチンを打ったほう
感染症というのは、化け物が飛びかかってきて、病気
がいいのではないかという話も出てきました。天然 痘
になるような印象が強い。たしかにS A R S や鳥インフル
ワクチンは、海外の例では約100万人に1人位は副作
エンザなど、わからない病気が突然飛びかかってきて、
用で 死 亡しています。もう根絶されているはずの病気
病気になっている。こんな怖いことはないわけです。しか
なのに、テロが恐くて、また 打たなくてはいけないの
し、そういうことが 起こることはあまり多くはありません。
か、そういったことが 真 剣 に 議 論される。そういった
ただし、私たちが行っている感染管理というのは、病院
世の中になってしまったということで すね。
の中でやっていかなくてはならないということがあります。
そして、S A R Sです。皆さん、これでいろいろご苦労
2
私たちの患者さんを見て頂きますと、高齢化社会も進ん
感染管理と医療安全
できましたし、新生児医療も非常に進み、極小低出生
ちなみに、病院感染症の反対語、対立する概念は、
体重児などリスクの高 い患者さんのポピュレーションと
市中感染症です。市中感染症と言っても、S A R Sなども
いうのが出てきました。手 術もかなり侵襲的な手技を
病院 の外で 流 行っていたのに、病 院 に 集 めると効 率
して患者さんを助けることができるようになりましたし、
よく患者さんが集まってきて、効率よく感染が起こって、
また抗ガン剤もどんどん新しいものが出てきています。
病院の中でアウトブレイクして病院感染症になるわけです。
そしてさらに骨髄移植、あるいは固形臓器移植というよ
うな、われわれがいままで経験したことがなかったよう
な、免疫不全状態を医療 で作っているということがあ
ります。
病院感染制御の基本
医療従事者がまず身の回りをきれいにすることです。
このような 弱った 状 態 にある患者さんのところへ、
白衣を着たまま病院の食堂に行って、食べこぼして、
ヘロヘロっとバイ菌くんみたいな弱毒菌が来ても患者
そのまま患者さんを診るとか、何日もお風呂に入ってない
さんはとてもひどいことになってしまう。バイ菌がどの
研修医とか、そういうことは 許さない。医療従事者がい
ようにしてこの 弱った患 者さんのところに行くかとい
かに衛生の観念を持ち、そしてこの後の話でいくつも
うと、だいたい医者が 手を洗っていないとか、そうい
出てきますが、手洗いですね。手の衛生状 態を保つと
ったことなのです。
いうことがとても大事です。
病院は、もともとこのような状況 の患者さんを集めて
いるところです。しかも耐性菌を持っている人も少なか
らずいる。病院感染症が起きるというのはある意味で
標準予防策、感染経路別予防策、隔離予防策
は当たり前なわけです。私たちは、その起こるべくして
テクニカルなものとしては、標準予防策、そして感染
起こる感染症をいかに起こさないようにするかという努
経路別予防策、接触、飛沫、空気というような隔離予防
力をしている。それが感染管理だということです。
策を遵守するということです。
この隔離予防策も、1996 年にアメリカで 制定されて、
病院感染症を取り巻く状況
錦の御旗みたいになっていますが、2005年秋に改訂さ
れる予定です。標準予防策も一部変わってきますが、
病院感染症を取り巻く状況は、非常に変わってきて
感染経路別予防策という言葉が、おそらく拡大予防策
います。とくに 英 語 で見るとわかりやすいのですが、
という言葉に変わってきます。標準とか、感染経路別
病院感染症は昔 nosocomial infectionや、hospital -
というふうにすると、例えばインフルエンザで飛沫感染
acquired infectionといった 言 い 方 をしていました 。
予防策をすればいい患者さんということになると、患者
しかし、最近は、Healthcare - associated infection、
さん のそば に 近 づくときだけマスクすればいいのか。
あるいはhospital-onset infectionといいます。特に
そういうわけではないですよね。患者さんを診るときに
アメリカ圏の問題ですが、医療費をいかに安く抑える
は、必ず標準予防策を実施し、その上に飛沫予防策が
かということに大きなウェイトが 置かれていて、例えば
ある。ほんとは階層構造になっているのが、わかりにくく
手術してもすぐに退院させます。ところが退院といっ
なっていました。標準拡大、標準はみんなに実施 する。
ても、自宅ではなく病院 の隣のホテルに退院している
そして感染経路別予防策をその上に上乗せするという
というようなことが実際には起こっています。本 来で
考え方を明確にするために、まだドラフトの段階ですが、
あれば入院で行っているような医療が、病院の外や外
この言葉は変わるでしょう。
来で行われている。そこで、病院感染症という概念が、
さらに追加的に、防御的環境―患者さんの環境をどの
病院の中で起きた感染症から、医療行為に関連した感
ように守るかということ―もガイドラインに 盛り込まれ
染症に広がってきているわけです。
る予定です。まだドラフトですから、来年の秋になったら
日本も包括診療が進んでくるでしょうから、今後そう
改訂されているかもしれませんが、いまのところは、骨髄
いった医療経済的なことも問題になってきます。そうな
移植の患者さん、造血幹細胞移植を行った患者さんに、
ると、私たちは病院感染症といっても、外来で行われ
造血幹細胞が定着するまでの間は、患者さんを保護的な
ている診療行為などにも手を広げていかなくてはいけ
環境に置かなくてはならないが、それ以外の人を特別な
ないでしょう。
環境に置く必要はない、というようになるでしょう。
3
標準予防策には、S A R S の問題から、病院の中で咳
こと。そして血栓にバイ菌が付いてしまうと、好中球が
をしている人を許さないということが出てきます。きちん
血栓を食べられない。血栓はマクロファージがだんだ
と教育をして、他の人の前で咳をしたりしない、咳を手
ん食べてくれますけど、異物が 付いている血栓というの
で押さえてそのまま患者さんを診たりしない、そのような
は、なかなか浄化されないので、いつまでたってもそ
ことが、標準予防策に追加される予定です。
こにバイ菌がいるというような状況を作ってしまいます。
こういった血管内留置カテーテルに関連した感染症
を起こさないようにするために、いろいろなガイドライ
海外のガイドライン
ンが出ています。アメリカのCDCやHICPACやいろいろ
具体的な一例として、血管内留置カテーテルの管理
な学会が合同で作ったものが 2002年に発表されてい
について考えていきましょう。CDC
(アメリカの疾病管
ます。これは日本語訳も出ていますし、インターネットの
理予防センター)
が、いま抗菌療法 の適正使用というこ
ホームページで無料で見ることもできます。
とで キャンペーンを張っています。いかに耐性菌を作ら
HICPACのガイドラインのポイントを上げていきます
ないようにするかということを訴える目的のキャンペーン
と、血管内留置カテーテルを刺入、あるいは管理する医
で すが、その中のステップ2に、無 駄 なカテーテルを
療従事者をきちんと教育する。中心静脈カテーテルを
早く抜きなさいということが書かれています。これは
挿入する際には、マキシマル・バリア・プリコーションを
医療行為に関連して起こる感染症の侵入方法 のナン
徹底 する。皮膚の消 毒 には 2 %のクロルヘキシジンを
バーワンが、とくにカテーテルのような侵襲的な処置
使う。中心静脈カテーテルの定期的刺し換えは必要な
であるということがわかっているので、そういった無駄
い。また必要に応じてリスクの高いような症例では、抗
なものは 抜きなさいということで す(図2)
。
菌カテーテルを使う、というようなことが書かれています。
医療従事者の手
国内のガイドラインと現状
ハブ・接続部の汚染
日本国内にも私も所属しております国立大学医学部
輸液の汚染
患者皮膚常在細菌叢
付属病院感染対策協議会のガイドラインがありますし、
他にもいろいろなガイドラインが出ています。HICPAC
のガイドラインのポイントを押さえながら日本のガイドラ
インを照合し、日本での現状と合わせてどうなのかとい
挿入時の汚染
図2
血行性伝播
血管内留置カテーテルによる汚染経路
私たちがどうして簡単に感染症にならないかというと、
4
うことを考えていきたいと思います。
中心静脈カテーテルと輸液製剤の混合
皮膚や粘膜がバイ菌が入らないように守っているからで
まず、中心静脈カテーテルで すが、必ず書かれてい
す。私たちは慣れているので、ラインとってと気 軽 に点
ることは、栄養管理が必要な場合は、経腸栄養を優先
滴したりするわけですが、冷静に考えて頂くと、皮膚を
しましょうということで す。これは正しいと思います。や
突き破って、血管の中に異物を入れているので す。さら
はり異物を押し込んだりするよりは、腸からとって頂く
に有無をいわせずここから何か水を流 すわけで す。こ
ということのほうがいいですね。
れはもうきわめて非生理的なことで、生体の防御機構
高カロリー輸液製剤を混ぜるときには、薬剤部の無菌
を無視していることに他ならない。私たちの医療行為と
環境で実施しなさい。作業工程の回数と事故の機会には
いうのは、実はこういったところがあります。
強い相関があるので、接続部を最低限にした一体型の
どんな素材のカテーテルでも、やはり24時間も留 置
点滴セットを使いましょう。注射薬調剤の衛生管理に関す
していますと、どうしても血栓が付いたり、その血栓の
る責任は薬剤師が負うべきだと書かれています。皆さんの
一部にバイ菌が 付いたりしてきます。血栓というのは非
ところではどうでしょうか。高カロリー輸液は必ず薬剤部
常に困ったもので、まず 1つは血液というのは非常に
のクリーンベンチで混合していますか。99年のデータです
栄養素が多いので、バイ菌にとってはよいエサだという
が、一般病棟でも20%、ICUでも15%ぐらいしか実施され
感染管理と医療安全
ていません。これはハード面の問題もありますから、おそ
汚いところに近いわけですから、感染が起こりやすい。
らく今でもそれほど変わっていないと思います。このよう
それから、マキシマル・バリア・プリコーションを実施し
な状況で、薬剤師が責任を負うとは、かわいそうです。
なさいと書かれています。予防的抗菌薬は不要である。
そしてさらに、病棟での混合薬剤数は最低限にしなさ
これは説明も不要であると思います。
い。混合する場所は、専用スペースで、無菌設備を設置し
なさいと、書かれています。つまり、普通は中央の薬剤部
で無菌環境で混ぜる。そして急に病棟で必要になった
皮膚の消毒
薬は、病棟に無菌設備があって、そこで作りなさい、とい
挿入部位の消毒には、日本には 2%クロルヘキシジン
うことです。病棟にクリーンベンチがある病院は、一般病
がありませんので、10%のポビドン・ヨードまたは 0.5 %
棟 3%、ICU4%というデータがあります。95%の病院が
クロルヘキシジン添 加のアルコールを使いなさいと書か
守れないガイドラインになんの意味があるのでしょうか。
れています。日本には 4 %のクロルヘキシジンがありま
すが、手指用消毒剤であり、クロルヘキシジン以 外に
使用するカテーテルに関する注意点
最近、シングルルーメンだけではなくて、ダブルルーメン、
界面活性剤が入っています。で すから、これを2倍に薄
めても皮膚の消毒には使えません。
また、日本には 独特 の万能壺というものもあります。
トリプルルーメンというのがあります。しかし内腔数が増
どれぐらいの管理をきちんとすればいいのでしょうか。
えれば増えるほど、感染 の率は高くなります。ですから、
アメリカには万能壺はありませんからアメリカのガイドライ
感染管理の観点からはシングルルーメンを使いなさいとい
ンには載っていません。挿入部位を消毒するのに万能
うことがガイドラインに書かれていますが、末梢ラインが
壺の中の消毒綿でいいのか、ということもきちんと考え
とれないから、中心静脈ライン管理する人もいます。その
なくてはいけないでしょう。
人を採血するために、ダブルルーメンやトリプルルーメンを
使わなくてはいけないということも実際にはあるでしょう。
抗菌カテーテルについても問題があります。アメリカ
ポビドンヨードは、酸化還元反応で 殺菌をするもの
ですから、マキシマムの殺菌力を得るために2 分ぐらい
はかかります。俗に乾くまで待つと言われていますが、
で 使われているものには、クロルヘキシジンとスルファ
2分ぐらい待つというのが本当の意味です。それにも関
ジアジン銀でコートされた抗菌カテーテルや、最近は、
わらず、よく見えないから、その上からハイポアルコール
ミノサイクリンやリファンピシン等の抗生物質を塗り込ん
で拭いたりすることがあります。消毒しているのか、消
であるカテーテルがありますが、日本にはありません。
毒していないのか、よくわからない。こういった細かい
ところも本当は見ていなくてはいけないでしょう。
カテーテルの挿入部位について
PICC、末梢静脈から挿入する中心静脈カテーテル
です。アメリカのガイドラインを見ると、鎖骨下に刺すの
局所は剃毛しない。外科手術部位もそうですけど、除
毛するときに刈るのはいいのですが、剃るのはだめです。
剃ると皮膚を傷つけますから、そこにバイ菌が付いて、微
少膿瘍ができて、感染の温床になることがあります。
と同じ位の感染の頻度で、刺すときの機械的な合併症
挿入部位の管理に関する注意もいろいろあります。挿
はこちらのほうが少ない、と書かれており、第一選 択に
入部位の消毒には、2%クロルヘキシジンがないので、ポ
なっている施設も出始めています。ところが日本では、医
ビドンヨードかクロルヘキシジン添加アルコールを使います。
療器具として認定されていますけれども、公定されてい
る価格が非常に高い。1本 1万いくらします。1本刺すた
びに、病院は赤字になるので、普及していません。安
くしようという動きもありますが、よいことだと思います。
ドレッシング
ドレッシングの部分に抗菌薬含有軟膏やポビドンヨー
カテーテルの挿入部位の第一選択は、鎖骨下がよいと
ドゲルは用いないと書かれています。ただし、血液透析
書かれています。しかし穿刺にともなう機械的な合併症は
患者さんでシャントができるまでにカテーテルで管理する
内頸のほうが少ない。内頸は、口に近かったり、あるいは
場合については、ポビドンヨードゲルを使っておいたほ
固定が悪かったりするので、感染は起こりやすいという
うが感染率が下がるというデータがあります。普通のCV
ことはわかっています。鼠径はもう論外ですね。鼠径は
カテーテルについても、最近国内からポビドンヨードゲル
5
を使ったほうが感染率が低かったと Infection Control
ボネートや塩化ビニル等の高分子と反応し、劣化が早
and Hospital Epidemiology 誌に報告されています。
くなるというようなことを 気 にされる方もいらっしゃい
このような報告もありますが、一般的には使用しないと
ますが、実際に患者さんに何か起きたというのは聞いた
いうふうに推奨されています。
ことはありません。
ドレッシングは滅菌されたものを使いましょう。これは
三方活栓はやたら目の敵にされていますが、きれい
フィルム型でも、ガーゼ型でもかまいません。フィルム型
に使えばそれでいいのではないかと思います。三方活
ドレッシングは週1回、ガーゼ 型ドレッシングは週2〜3回
栓から側管注する場合は厳重な消毒操作が必要です。
で交換しましょうと一般的なガイドラインには書かれて
どうしても接続部にデッドスペースができますから、そこ
います。そして交換するときに、清潔な手袋を着用して、
に何か残ってバイ菌が増えたらどうするのかということも
カテーテルに直接触らないようにしましょうと書かれてい
あります。ここもきれいにすると言っても、消毒自体の問
ます。滅菌ではなく清潔な手袋でいいのですが、挿入し
題があったりします。接続部分が増えると、汚染の機会
ているカテーテルに直接触らないでください。
が増えるので、できるだけ一体型を使いましょうと書か
そして、ドレッシングですが、最近は、やはり刺入部
れています。
が観察しやすい透明型のものが好まれることが多いよう
ニードルレスシステムは 感染 防御の目的では使用しな
です。刺入部が見えるという観点からすると、ポビドン
いと、いろいろなガイドラインに書かれていますが、こ
ヨードゲル等を塗ると見えなくなるということもあります。
れはわかりにくいところです。
カテーテル挿入部位の何を観察すればいいかというと、
三方活栓を使わない一体型の点滴で、側管注する
当たり前ですが、赤くないかとか、押して痛くないかと
ときには、いわゆる閉鎖型システムというのがあります。
か、膿がしみ出してないかとか、そういうことを見ます。
アメリカでも閉鎖型のほうがいいのではないかといって、
フィルム型ドレッシングは、ガーゼ 型と比べると、血液
閉鎖型になった時期があります。しかし当時の閉鎖型は、
や汗を吸収する力が弱いというようなことがよく書かれ
後から針で刺すタイプでした。そのため、針を使う機会
ています。汗をかきやすい患者さんなどは、やはりガ
が増えて、職業感染対策が問題になってきたのです。そ
ーゼのほうがいいこともありますが、実 際には日本の
ういった反省から、閉鎖型でもニードルレスシステムとい
病院は 空調が効いていますから、それほど気になるこ
うものを 作りましょうということになり、インターリンクや
とはないでしょう。
シュアプラグ等のタイプが出てきたわけです。
ですから、アメリカでは、三方 活 栓、針を使った閉
ライン
ラインに関する注意点もいくつかあります。輸液セッ
鎖型、ニードルレスという歴史があります。ところが日
本ではそのへんの意識が遅かったものですから、閉鎖
型、イコール、ニードルレスです。だけどほんとはニード
トは週1〜2 回の頻度で交換しましょうということが書か
ルレスと閉鎖型というのは違うものです。最近になって、
れています。中心静脈カテーテルの身体の中に挿入し
ようやくニードルレスのほうが感染症を起こさないので
ているほうの管は定期的に換える必要はありません。交
はないかという論文が出始めていますけれども、あまり
換頻度についてはよく質問されますが、現在の段階で
はっきりしたものではありません。
は 結 論 はまだ 得られていません。 週 1 回で いいとか、
2 週間に1回でいいとか、週に2回でいいとか、いろいろ
な報告が出ています。ガイドラインでは、いろいろな論
文を集めて来ますから、週1〜2回と書いていますけど、
はっきりしたエビデンスはまだありません。
6
インラインフィルター
輸液管理に ついてはまだあります。フィルターで す。
インラインフィルターを使用する、使用しない。アメリカの
輸液ラインとカテーテルの接続部 の消毒には消毒用
ガイドラインは使用しないと書いてあります。日本のガイ
のエタノールを使用しましょうと書かれています。もちろ
ドラインは、科学技術庁が出したものなんかには、はっ
んエタノールも同じで、単包なのか、万能壺なのかとい
きりと使用しなくてはいけないと書いてあります。そのガ
う問題は出てきます。エタノールだと、酒税法で高いで
イドラインに書かれた根拠の部分を読むと、0.22マイク
すから、最近アルコールの消毒は、イソプロピルアルコ
ロのフィルターを使うと、末梢静脈カテーテルの静脈炎が
ールに変わりつつあります。イソプロピルだとポリカー
減ったという報告が書かれています。CVカテーテルにつ
感染管理と医療安全
いては、はっきり書かれていません。
が、やはり半袖というのがポイントです。手は洗います
ここはアメリカと日本では全く状況が違います。アメリカ
から。汚れるのは、だいたい 胸のあたりです。この人は
では普通薬剤部での無菌的輸液調剤の際に、自動輸液
自信があるからエプロンを着けてないようですが、守るの
混合装置があり、ファイナルフィルトレーションといって、
はここを守れ ばよくて、手の方は 洗えばいいわけです。
最終的にフィルターを通して出てきます。すでにフィルター
しかし、本当は何が違うのか。それは、この人は点滴
にかかっているのです。日本のように、病棟で調剤して
する看護師さん、血管内留置カテーテルを挿入する、もし
いるのとはだいぶ状況が違うのです。それでフィルターが
くは管理するトレーニングを受けた医療従事者であると
いるか、いらないか。これは非常にむずかしい問題です。
いうことです。アメリカにはInfusion Nurses Societ yとい
ラインも、他の血液製剤を使ったら汚染されてしまい
う輸液管理をする看護師さんの協会の認定制度があり
ます。中心静脈圧測定というのも、最近は閉鎖式の中心
ます。アメリカでは、小さい病院はもちろん違いますが、
静脈圧測定器もありますが、中心静脈がかかるので普通
大きい病院だと、I Vナーシングといって、静脈ラインを
開けて測ります。これでは、全然閉鎖式とはいえないと
取る専門の看護師さんが何人もいます。日本 のように、
いうようなこともあります。
下手な研修医が「入らない、入らない」
といいながら刺し
脂肪乳剤はバイ菌大好きですから、脂肪乳剤を使った
ら、
フィルターは必ず24時間で換えたほうがいいでしょう。
ているのとは違うのです。認定を受けたプロの人が刺し
ているのです。
そういった状況で 作られたアメリカのエビデンスを日
ガイドラインと現場
本に入れて何の役に立つのでしょう。私は何も役に立
たないと思います。全然状況が違うのです。
ここまでは、ガイドラインに書いてあることはできない
William Jarvisらが報告していますが、看護師さんに対
のではないか、という話ばかりしてきましたが、では、ど
して看護する患者さんの比率が増加していくのは、中心
うすれ ばいいのでしょう。
静脈カテーテル感染症を起こす独立したリスク因子です。
これは、アメリカの看護 師さんがこれから点滴を刺
そうとしている図です(図3)
。
日本のICUは、一応看護基準では1対1配備です。看護
師の配備で、どれくらい中心静脈カテーテルに関連した
血流感染症が増えていくかというと、看護師さんと看護
する患者さんの比が、1 対 1に比 べ 1 対 2では 60 倍増え
るのです。これはどうすればいいのでしょう
そこで、話 が戻ります。パパの嫌いな果物は何でし
ょうか? 日本の医療従事者は、ここでパパイヤと答えろ
と必ず教育されますが、パパによって違う。感染管理は
そういうことなのです。必ずこれがいい。ガイドラインに
書いてある。あの人が言っていた。そんなの病院の事情
によって違うのです。ガイドラインに書かれた、教科書に
書かれたその通りのことができるのか。それを考えること
が感染管理ですね。
図3 カテーテルを入れている様子
どこが日本と違うでしょう。まず、手袋をしている。日本で
ガイドラインとマニュアルとサーベイランス
は、残念ながら、あまり血液に対する恐怖感がないとこ
ガイドラインとマニュアルの関係というのも、日本 では
ろがあって、手袋をしないことが多い。日本の人が手袋を
非常にわかりにくいです。最近は、医療機能評価があり
しないで採血しているスライドをアメリカの人に見て頂くと、
ますから、認定病院になるためには、マニュアルが必要
聴衆が一斉にオーッと驚いていました。その後、タクシー
です。
「どうやって作ればいいのだろう?」
「あ、ガイドライン
の運転手さんは手袋をしていると大 笑いしていました。
があった。ラッキー!」
そのおいしいところをつまみ食いし
駆血帯がディスポだとか、ラフな服を着ているとか、ナース
て、マニュアルにする。それでいいのでしょうか。ガイドラ
キャップをしてないとか、いろいろ細かい違いがあります
インというのは、学会の名の下に、エビデンスといういろ
7
いろな論文を集めて、作られています。それを現場に持
っていこうと思っても、そこには現場の事情があります。そ
正しいことをやっているかどうかを見極める
の通りにはできないでしょう。けれどもマニュアルを作らな
Stephen Covey が「人々とそれを管理する人たちは、
くてはいけない。そうしないと、医療の質の保証ができ
懸命に働いている。どういうふうに懸命に働いているか。
ない。そこで Think globally, act locall y. これです。
物事がきちんとなされているかどうかということを確認す
いろいろなエビデンスや何がいいのかということを考える
るのに、とても一生懸命働いているので、やっていること
ときには、自分の施設の状況 だけ見ていてはだめです。
が正しいことかどうか、正しいことをやっているかどうかを
たしかにいろいろな論文やガイドラインがあるわけですから
きちんと見極める時間はほとんどない。
」
と言っています。
Think globally, 、それでいろいろな知識を増やして
、けれども実際にどのようにするかということは、act locally
現場では、決まったことをきちんとやらなくてはと、
時間に追われて仕事をしているわけです。そうすると、
です。その現場の事情を考えながらどのようにするかとい
自分たちがやっていることが本当に正しいかどうか考え
うのを決めなくてはいけないわけです。ガイドラインと現
る時間がないわけです。サーベイランスというのは、そ
場の事情をひっくるめて作るのがマニュアルです
(図4)
。
れを考える時間を作る行為です。ですから、自分たちが
やっていることはほんとに正しいかどうか。もちろんきち
エビデンス
エビデンス
んとやることは大事ですけれども、本当に正しいことを
エビデンス
エビデンス
エビデンス
エビデンス
Think globally,
れを分かる行為がサーベイランスであるということです。
エビデンス
ガイドライン
やっていなかったら、きちんとやっても無駄なのです。そ
サーベイランスの診断基準
現場の事情
現場の事情
現場の事情
現場の事情
ここで 言いたいのは、きちんとターゲットを絞ってサー
現場の事情
サベイランス
act locally.
マニュアル
図4 ガイドラインとマニュアル作成
ベイランスをしましょうということです。どのようなことを、
何を目的として、サーベイランスするのか、そしてそのサー
ベイランスはどのように重要なのか、ということです。サーベ
イランスも、初めの頃は 敷居が高いのですよ。χ2 検定
そして、マニュアルがきちんとできているかどうか、マニュ
がどうしたとか、やたらややこしそうなこと書いてあります。
アルによってきちんとした医療を患者さんに提供できてい
そこで、国立大学感染対策協議会で、サーベイランス
るかどうか、ということを考えるためには、いつもサーベ
・ツリーというのを作っています。診断のツリーです
(図5)
。
イランスをしていかなくてはいけない。つまり、私たちの
臨床症状
やっている医療行為は正しいかどうか、それを見ていか
あり
なくてはいけないわけです。ガイドラインとマニュアル、
実施
この2 つの間には、たしかに 相反するものがありますが、
私たちは現場で患者さんを診るわけですから、やはり
陽性
そのためには 現場にいかに役立つかということを考え
他感染巣
ていかなくてはいけないのです。私たちはその現場に
いつもいて、そして感染管理をやっているわけですから、
なし
皮膚常在菌1回
あり
なし
あり
(関連なし)
CR - BSI
カテ抜去
実施
非実施
カテ培養 抗生物質
にそれで正しいことができているかどうかというのを
陽性
陰性
チェックするシステムを作る。それが一番大事なことだ
抜去後解熱
抜去後解熱
解熱
CR - BSI
図5
8
陰性
あり
(関連あり)
しかし、その現場の事情におもねるのではなくて、本当
これがぜひ必要だということです。
非実施
他感染巣
その現場 の事情に一番詳しいという利点を生かして、
と思います。それが病院感染症 サーベイランスですね。
なし
血液培養
不変
解熱
CR - BSI
非実施
不変
カテ感染を疑って
抗生物質を変える
カテ感染を
疑っていない
投与後解熱
解熱
不変
CR - BSI
CR - BSI
国立大学医学部附属病院 感染対策協議会によるカテーテル関連血流感染症の
サベイランス診断のための
診断ツリー
感染管理と医療安全
これはサーベイランスをやるためのサーベイランス診断
患者さんがリスクにさらされたということになるわけです
で、臨床診断とは違います。サーベイランス診断というの
ね。これが分母です。のべ千日を使って、どれ位感染症
は、私達がきちんとしたことをやっているかどうかとい
が起きたかというのを見ると、だいたい1 桁になるはず
うのをチェックするために、とりあえず感染症の発症数
であるということがわかっていますから、計算式としては、
を数えなくてはいけないから、この数字で折り合いまし
器具関連感染症発生率=
(器具関連)
感染症の発症件数
ょうというのがサーベイランス診断です。だからとりあえ
/のべ器具使用日数×1,000となります。
ず 現場で決めてしまえばいい。CVカテーテルが入って熱
自治医大では、感染管理基礎データ表というのを作
が出ている人とか、CVカテーテルが入って抗生剤使った
り一応病棟の管理日誌に組み込む形で、必ずCVカテ
人とか、そういうふうに作ってしまえばいいので す。
ーテル、人工 呼吸器、尿カテを何人使っているかという
ただし、そうすると他施設との比較はできません。他
施設との比較はできないけれど、自院できちんとやって
いるかどうかというのは、簡単な定義でできるサーベイ
ランス診断の基準を作ればできます。その基準に基づ
のを全て記録してもらっています(表1)
。
病棟名
年
月
感染管理基礎データ集計表
新入院 退 院 中心静脈ライン 尿道留置カテ 人工呼吸器 手術部における HCV陽性
日 在日患者数
患者数 患者数 留置患者数 ーテル患者数 管理患者数
手術件数
患者数
いて良くなったか、悪くなったかというのを見ていけば
いいはずです。学会発表となれば、いろいろ厳しい意見
も出るかもしれませんが、患者さんのためになることを
やれば私達はいい。サーベイランス診断はそれぞれの
病院でできる診断基準を作ればいいと私は思います。
しかし、何件発生したという数字だけではだめです。
やはり本当に発生率 が下がったのかどうかで見ていか
なくてはいけません。発生件数だけで見ると、さすが
にかなり間違うことがありますので、発生率という言葉
は一応知っておいてください(図6)
。
器具関連感染症発生率
device - associated infection rate
サベイランスの調査期間、患者集団を決定する
分 子 =(部位特異的、器具関連)感染症の発症件数
分 母 = のべ器具使用日数 device -days
調査期間における対象集団の全患者が
器具に暴露された日数
器具関連 (器具関連)
感染症の発症件数
×1,000
感染症 =
のべ器具使用日数
発生率
器具使用率 =
DU ratio
のべ器具使用日数 device - days
のべ入院患者日数 patient- days
図6 感染症発生率の計算(器具関連の例)
*在院患者数と器具使用患者数の記載は毎日24時時点
(準夜勤務帯)
での状況を記載する。
*在院患者数には外泊患者を含まない。在院患者数、器具使用者数などが把握されれば、
病院感染症サベイランスのための適切な分母データとなり、発生率の解析に有用である。
*手術件数は当日に病棟から中央手術部へ送り出した症例数を記載する。
*HCV陽性患者数を把握するにより、針刺し・切創の報告効率を適切に評価することが出来る。
表1 自治医大の感染管理基礎データ表
自治医大は千床を超える病院ですから、3か月で、の
べ 8 3 , 000人
(8月〜10月)
の患者さんが入院しています。
率というぐらいですから、分子と分母があります。分子
その中で人工呼吸器を使っている人がのべ3,000日です
は、特定のサーベイランス期間に、ねらった、たとえばカ
から、一般病棟を含めて4%ぐらいの人が人工呼吸器に
テーテル に関連した血流感染症、あるいは人工呼吸器
つながっている。このような数字を出して頂ければ、これ
を使っている患者さんの肺炎、末 梢静脈を刺している人
を分母にしていろいろなサーベイランスが各病 棟ででき
の静脈炎などです。
ます。たとえばこれだけわかっていれば、血
(液)
培
(養)
分母は、そのねらった器具ののべ使用日数です。例
陽性が何人いた、そのなかでCVカテーテルは何人入っ
えば今日、尿 路カテーテルが入っている人がこの病棟に
ていたというように見ていけば、血流感染者の発生率が
3人いましたと。次の日4 人でした。その次 3人でしたと
だいたいわかる、というようなこともわかってきています。
いうことになると、この3日間では3+4 + 3で、のべ 10人
サーベイランスをやらなくても、こういった器具につな
の人にカテーテルが入っていた。のべ 10カテーテル日、
がっている人が誰かということを毎日チェックして頂くこと
9
で、誰が感染に弱いのか、誰のケアをとくに注意しなく
てはいけないのかということのチェックになります。
サーベイランスは品質改善の第一歩
アメリカのNNIS( National Nosocomial Infections
Surveillance System)
に参加している病院だと、のべ
Define the relevant process
Measure the system, reliable measures
Analyze the results and gaps between current and desired states
Improve processes and validate
Control and monitor the new system
Number
Champions, Master Black belts,
Black belts, Green belts
6 sigma
3.4 DPMO
千日当たり、CVの発生率は5件ぐらいだそうですけど、
こんな数字を知っていても何の役にも立たない。自分の
施設がどうか、それが問題です。サーベイランスという
のは、数字を出すことに目的があるのではまったくあり
Good
Quality of Care
図7
Poor
正規分布と6シグマの考え方
どんなものも、いわゆるベルカーブ、正規分布するだ
ません。サーベイランスというのは、必ず何か良さそうな、
ろうということをまず考えてください。ひょっとすると、病
この医療行為をもっと改善できるのではないかという改
院感染症というのは、この右のたて線が品質管理限界
善案があって、その改善を実際にやってみて、それによ
の下限で、これより品質が悪いような医療をすると病院
ってほんとに結果が良くなったかどうか。アウトカムが良
感染症が起きる、そういうことかもしれない。そうであれ
くなったかどうかというデータを集めて、そしてそれを
ば、私たちが目指すべきなのは、平均点を上げて、標準
解析して、その解析の結果、このやり方が良かったから、
偏差、ばらつきを小さくして、全体のベルカーブをよい方
このやり方にしましょう。このやり方、今ひとつだったか
へ寄せていくことです。
ら、もっと新しいのにアジャストしましょう。あるいは何か
日本では、これまで病院感染症とか、医療事故が起き
良さそうに見えたけど、やってみたらだめだったからやめ
てしまうと、その人を辞めさせたりはずしたりする。事故を
ましょう。そういうふうに考えていく。この間に、医療の質
起こした人を抜いていったところで、全体の質改善にはつ
の保証と、そして医療費がどれくらいかかるかというこ
ながらない。そうではなくて、どうしてそういうことが起
とが計算できれば、非常にいいなということです。
きたのかとか、どういった数値目標にすればいいのか、そう
数えてみなければ、やり方を変えたほうがいいかどう
いったことを議論し合いながら、全体の分布をよい方に寄
かということはわかりません。Peter Drucker は「本当に
せていくようなシステムを作っていかないと、いつまでた
改善したい人、すなわち体系的に目的を持って改善をし
っても、医療安全というのは達成されないと思います。
たい人というのは、どこに機会があるのか、改善の機会
もちろん、正規分布曲線というのは、下につきません
がどこにあるのか、ということからまず解 析 すべきであ
から、この品質管理限界下限の下のところというのは、
る。本当に品質改善を行う人というのは、実はどこにリス
どんなにやっても絶対ゼロにはならないところです。普通
クがあるかということではなくて、どこに改善の機会が
の品質管理というのは 3シグマというふうに言われていま
あるかということにフォーカスを当てて、非常に保守的で
す。これは一定の所から標準偏差の3 倍ぐらいのところ
ある。
」
と言っています。さらに「もちろん新しいことを始
で不良品が出るというような品質管理で、100万回機会
めるのには、それ相応のリスクがありますが、品質改善、
があると、100万回の機会で、66,811個、6%から7%位
医療改善を行わずに、いつまでも昨日にしがみついてい
の不良品が出るということです。
ることの方がもっと危ない。
」
とも言っています。
実 際、病 院 感 染 症というのは、急性期病院で調べ
私が病院感染制御の話をするに至った一番大きなき
ますと、だいたい5%から10% 位と言われています。と
っかけは、2 0 0 2 年にナッシュビルで行われたAPICで
いうことは、私たちの品質管理は 恐らくまだ 3シグマで
聞いた話です。APICというのは、アメリカの感染管理
す。6シグマというのは、この特定のところから標準偏差
の専門家の集まりで、基本的に看護師さんたちで運営
の6 倍ぐらいのところからが 不良品であるというような
をされている大きな団体です。
品質管理をしましょうというものです。これはアメリカで
そこで、Georgia P. Dashさんの会長講演で、患者の
すと、モトローラとか、ジェネラル・エレクトロニクス、日本
安全を守るためには、6シグマの考え方が大事だという
ですと、ソニーとか、マツダとか、そういった企 業が 取
話を聞きました
(図7)
。
り入れたことで 有名になった品質管理の処方ですが、
6シグマで不良品が出るということになりますと、100万
10
感染管理と医療安全
件当たり3.4 件の不良品しか出ない。病院感染症でこ
調査の結果をお話しします。1970年代にアメリカでは大
れを達成するのは 非常にむずかしいと思いますが、待
きなS ENIC スタディという研究がありまして、病床250
機的な手術の麻酔科の事故は、10万件当たり1件以下
床当たり1人感染管理を専任で行っている人を置けば、
と言われていますから、5.7シグマ位。ほぼこのレベル
病院感染症は 減るということが報告されています。この
に達しています。そうであるならば、われわれは 感染管理
NNISに参加している病院で、250床当たり1人いる病
でこれを目指さなくてはいけないということです。
院が96%です。中央値は115床当たり1人です。レンジ
やり方はいろいろ書 いてあります。病院全体でいろ
いろなシステム作って、そのプロジェクトリーダーを決めて、
を見ると、21 床当たり1人とかから始まるのですが、一
番恵まれない病院でも382 床当たり1人です。
プロジェクトリーダーに教育をして、そのプロジェクトリー
日本国内で、複数の人が専任で感染管理をやっている
ダーに下から順にグリーンベルト、ブラックベルト、マスタ
病院というのは非常に少ない。認定の専門コースを取られ
ーブラックベルト、チャンピオンというふうな称号を与えた
た方ですら、専任でなかったりするというような状況が日
チームを作りましょうという話ですけど、緑帯、黒帯、師
本にはある。
ちなみに、専任者の実際に働いている時間の
範代でしょ。これは、もともとトヨタのシステムです。そう
内容を調べたところ、サーベイランスを含む病院感染対
いった日本からできたもので、なんとか 帯というような
策に週40時間のうちの68%を費やしているという結果が
考え方まで 残しているようなシステムを、アメリカでは、
出ています。残りのうち、20数%は職業感染対策に費や
企業から医療に広がろうとしているのに、どうして私た
されており、ほぼ専任であることは間違いありません。
ちはこれを知らないのでしょうか。
医療過誤にも、うっかりミスったのか、やるのを忘れた
のか、初めから全然あさってのことをやっていたのかとい
背景を示すために、入院の100床当たりの医療従事
者の数を比較してみますと、
日本は平均が医者12名、看
護師42名です
(図8)
。
う間違いもあるわけですよ。誰が間違ったかというアクティ
Healthcare Workers per 100 Inpatient Beds
ブなエラーだけではなくて、そのエラーを許すような病院
250
のシステムですね。そういったことまでチェックしていかな
200
いと、医療事故というのは減りません。もちろんヒヤリ・
150
ハットとか、インシデントリポートで、いろいろな情報を共有
100
して、そしてその情報によって医療を改善するということも
50
大事ですが、それだけではなくて、もっと細かいところま
0
で品質を改善するということをやっていかなくてはいけな
い。そのための第一歩がサーベイランスだと思うのです。
197
Nurses
Physicians +
Surgeons
93
64
36
US
図8
Germany
42
12
Japan
OECD, Health Data
1998
入院100床当たりの医療従事者数の比較
Emor y 大 学の Dr. William Jar v is は、2002年の
アメリカは、平均値で 100床当たり医者60名、看護師
A PICの集会で言いました。誰が失敗したとか、そう
が197名と日本の5倍います。ただし、これはちょっと数字
いうようなことばかり言っているのは、叱責の文化であ
のトリックがありまして、実際には人口当たりの医療従事者
る。いじめである。そうではなくて、みんなでどうして
数はそんなに変わらない。日本のほうが人口当たりのベ
そのエラーが起きたのか。そのエラーを許したシステムは
ッド数が多いからです。多少そういった事情はありますが、
何なのかというのを考えるのが安全文化であると。
しかし同じようなシステムを同じように導入して、同じよ
うにやるというのは無理だということは、これでご理解
職種、施設をこえたネットワークで、
日本のシステムにあった感染管理を作り上げよう
頂けるかと思います。これはAPICの写真です(図9)
。
アメリカにはNNIS( National Nosocomial Infect ion
Sur veillance)
というシステムがあり、国家プロジェクト
として病院感染症がどれくらい起きているかというサー
ベイランスを実施していて、いま全米の50州で 315病院
が参加しています。
1999 年のNNISに参加していた285病院のアンケート
図9
APIC(2002)の風景
11
感染管理と医療安全
感染管理をやっている看護師さんたちは非常にアクティ
ブで、アメリカでは、そういった 専門性に対する敬意が
ありますから、医療器具の購入について決定権がありま
ださい」
というふうにメールをいただきました。みんなで
頑張ってやりましょう。
感染管理というのは、1人でできることではありません。
す。そうすると、看護師さんたちが集まるAPICには、こん
サーベイランスを中心に、誰かが音頭を取らなくてはいけ
なに企業展示が出展され、見本をくれとか、もっと安く
ないのですが、1人でできるわけがありません。250床当た
したら買ってやるとか、いろいろな話をずっとしているの
り1人いても今の日本の状況ではたぶん無理です。そして、
です。私はこれを見て非常に悲しくなりました。どうす
現状では、250床当たり1人にすらなっていない。そうである
れば日本がこんな状況になるのだろうかと思いました。
ならば、みんなで 仲良くやらないとしょうがない。横断的
しかし、アメリカがすべていいというわけでもありません。
に感染制御チームをもう作られている病院はおわかりだ
これは、NNISに参加している病院のICUで薬剤耐性菌
と思いますが、これまでは他の職種の事情がわからなかっ
がどれ位いるかというデータです(図10)。
た。互いに、情報交換する場が非常に限られていました。
実はアメリカでは黄色ブドウ球菌のうち、メチシリン耐性
しかし、ICTを作ったり、感染管理をやることによって、他
菌つまりMRSAが1994 年から98 年には、ICUでも40%
の職種の事情がお互いにわかるようになってきました。た
位でした。日本は、ご存じのように、一 般病棟でも7割か
ぶん成功したICPの方たちはそういうふうに感じていると
ら8割は M RSAです。しかし、アメリカも、99年に50%を
思いますが、そうすれば、感染管理だけではなくて、医療
超え、現在は60%をにらんで 推移しているという状況で
の質全体の向上につながることは間違いないと思います。
す
(図10 Methicillin /
)
。
やはり感染管理にこ
れだけ人を割いても、抗生物質の過度の使用や ICUから
の非常に早い退院などの問題があれば、当然減らない
ということです。
まず 数えましょう!
私たちは、アメリカのように感染管理ができないから
また腸球菌のうちのバンコマイシン耐性についても、
アメリ
というようなことで、恥じる必要はまったくありません。
カのICUでは、3割位はVR Eです
(図10中 Vancomycin
医療従事者の数が違いますし、元々のシステムが違うわ
/enterococci)
。
もう珍しいことではなくなっています。日本
けですから、同じことをまねしようとするのは無駄です。
ではVR Eはまだ200 件ぐらいしか出ていないはずです。
けれども、きちんと数字に基づいて、本来品質管理とい
システムの遅れはたしかに30年超えていますけれ
うのは日本のお家芸だったわけですから、それをきちん
ど、素質ではもう10 年か、20年は簡単に追いつけます
と医療の業界に持ち込んで、いかに患者安全を保つか
ので、あと10 年頑 張れ ば、アメリカ並みの感染管理は
ということを考えていきましょう。
できるはずです。私がアメリカでパトリシア・リンチさん
今日のメッセージは、まず数えましょうということです。数
に、
「ぜ ひ日本でもそういった人的資源が限られている
えることによって品質保証をしましょう。これから後半で、具
ので、みんなでネットワークを作って、いろいろな情報交
体的ないろいろな施設の話、土井さんの話も含めて、建
換をしながら、助け合いながらやっていきたい」
と言った
設的にどうしていけばいいかということを皆さんと一緒に
ら、
「極端に限られた人的資源であっても、頑張ってく
考えていきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。
図10 NNIS参加病院のICUにおける病原菌の薬剤耐性の割合
12
教育講演
実践現場の最善策の考え方と
その手法
特定非営利活動法人 日本感染管理支援協会 理事長
ヘルスケアリソース研究所 所長
土井 英史 先生
森澤先生のお話も受けまして、感染管理を進めてい
い。話を一本通しておく。それが戦略です。そうでなけれ
くために自分たちは今日々の現場で何ができるのか、ど
ば、でてきたデータを見せても、何それ?で終わってしまい
のようにしていけばよいのかということを考えてみたい
ます。私たちの6カ月は何だったのか、になりかねません。
と思います。各論的な話は、事例発表でしてくれますの
昨日までアメリカのI C P の方に 3人ほど来ていただき
で、おおよその流れ、考え方をお話します。
サーベイランスプログラムをしていました。彼女らのやり方
さて、これからの医療は、いかに患者さんをひきつけて、
だけでなく、考え方がとてもいいと思っているのです。
うま
かつ損失を抑える医療機関をつくっていくか、を求めら
くコミュニケーションをとって進めています。周囲を巻き込
れていると思います。そのためには、何が必要でしょうか。
んでいます。私だけが知っている、ではだめです。組織
まず、一番よいのは口コミでしょうか。患者さんの評判。
として動いているという認識を持たなければなりません。
これは、質でしょうか。口コミというのはとても重要です
何の感染率を知らなければいけないのか。たとえば、
けれども、はたして実際の質を反映しているのか。もち
手術患者には 感染が多い、また、手術の有無に関わらず
ろんゼロではないでしょう。おそらく、皆さんが中におられ
I CUには感 染がある。そこで詳しく見てみると、どうもカ
て一番ご存じだと思います。このようなことも考えてい
テーテルの入っている人、傷のある人に多いようだ、とう
く必要があるかもしれません。
いうことから、ターゲットサーベイランスが出てきました。
医療関連感染 Healthcare - associated infection、
ターゲットサーベイランスは、病院機能評価でも、バー
森澤先生も言われていましたが、いろいろな領域の感染
ジョン4 .0 以降、評価項目としてあげられています。病院
を見ていかなければならないということから、このような
機能評価は、標準予防策の実施など、私たち感染管理
呼び方になってきました。これも質の指標になっています。
をやっている人間にとっては追い風となっていますね。
病院には、患者さんが治療や検査などを行うために来ら
では、このターゲットサーベイランス、皆さん実施してい
れます。そして、何か管を入れるとか、手術をするとか、
ますか。実際には、できていない施設も多いのではない
何かをされます。病院関連感染は、その結果、アウトカム
かと思うのです。テキストを読めば読むほど難しい。で
の一つです。アウトカムは測らなくてはなりません。森澤
すから先程、森澤先生が非常にわかりやすく言ってくだ
先生も言われていたように、結果を知って、そして改善
さったのは、大賛成です。皆さんのところでも、そういうよ
していくために動かなければならない。数字だけ集める
うな形で始めていただきたいと思います。
のではいけないということですね。皆さんも、日夜苦労さ
れていることと思います。
実施するには、専門的知識が少し足りないということ
もあるでしょう。人的資源がないとか、サンプル数が少な
私は日本看護協会神戸研修センターの感染管理の
いということもあるかもしれません。しかし、サンプル数が
ショートプログラムの手伝いにいっていますが、参加さ
少なかったら長期間見ればよいともいえます。できてい
れた方は、とても燃えてやる気になられて帰られる。でも、
ない理由はもっと他にあるかもしれませんが、今日参加さ
しばらくすると、何かあったのですか、位のレベルになっ
れている方は、しなければいけないという考えは持って
ています。忘れるのも早い。つまり、できない環境もある
いますよね。
でも、実際には難しい。
これは、問題ですね。
のかもしれません。
感染対策の担当者として活動を行うときは、病院の
工程管理と質の改善
経営陣にきちんと言っておかなければなりません。個人
の趣味でやっているのではない。病院 の質を改善する
医療機関は、有害事象を予防して抑制するための対策
ためにやるのでしょう。ですから、勝 手にやってはいけな
を実施する、つまりセーフティマネジメント、そして質を
13
高めなさいと、いろいろな本に書かれています。そのため
えてみることができます。もちろん、人が関与するとエラ
に、エビデンス、エビデンスともう呪文のように言われて
ーは出ます。エラーは必ず起こるということも踏まえて、
います。もちろん私たちも、当然あれば使いますよね。非
やっていくことも必要です。
常に役に立つものの一つが米国CDCのガイドラインです。
エビデンスに基づいたインフェクションコントロールと
いうことで、日本はいまアメリカの影響をとても受けてい
感染対策委員会には二面性が必要
ます。何かCDCが印籠のような感じです。このCDCガイド
与えられた環境は決まっています。もちろん自分たち
ライン、森澤先生も言われていましたが、全部できるの
の環境を改善していくのは、感染管理では感染対策委
でしょうか。例えば、コストの問題でよくつまずきますよ
員会です。感染対策委員会には二面性が必要です。院
ね。もちろん、うちはもう全部取り入れていますという病
内で問題点のリスクアセスメントをして、ここには何をお
院があれば、それはそれでいい。でも、私もいろいろなと
いても先にお金をかけてもらわなければ困ります、とい
ころに呼んでいただいて見るかぎり、おそらくできないと
うことを病院の経営陣に言っていかなければならない。
ころも多いでしょう。
これが一面です。
米国は、使い捨て社会です。ヨーロッパはリユーザブ
しかし、現場をみれば、病棟で輸液を混合している
ルします。そのためには、構造や材質をよく考えて物を
など、そういうようなところもある。こちらの面をどのよう
購入し、使います。アメリカは捨てるからそんなことは考
に考えていくのか。与えられた環境の中で、かつ資源は
えない。そのあたりの背景がまったく違います。私たちは、
限られています。よその病院のことをうらやましがっても
世界中を見ることによって、1 個しかないと思っていた選
仕方ないでしょう。その中で、できることはないでしょうか。
択肢がいろいろあることに気付きます。そして病院で考
たとえば何かの手順を踏んで処置をしているところに、
えるのです。よその病院のことは気にせずに。現場で困
このタイミングに手の衛生を入れてみたら、もう少し精度
っている人同士ネットワークを作って、情報交換をするこ
が上がるのではないか。具体的な事例はあとで出ます。
も
とはもちろん必要です。しかし、よその病院でやっている
ちろん、無駄な動きはしてはいけませんが、物品購入は
ことを聞くのはいいのですが、そのまま持ち込んでよい
すぐには難しくても、手順を見直すことは現場でできます。
のか、そこはよく考えなければいけません。
そこを、もう一度考えてみませんか、ということが今日の
CDCのガイドラインどおりにはできない。お金もない。
提案です。
しかし、臨床は日々動いています。甘えていてはいけない。
何かできることがあるのではないか、と考えなければ
いけません。
私たちは、リスクを、感染率を落としていかなければ
ならない。感染率の低減は質の改善です。本来日本が
手順書、プロセスを書いたものです。皆さんのところ
一番得意なことです。アメリカへ行くと、質のことは日本
でも、バルーンを入れる方法など、看護手順も含めて手
が一番得意技でしょう、と言われます。なぜか医療には、
順書がありますよね。束ねてあるのはマニュアルです。そ
聖域的な壁があるようです。もっといろいろな職種や産
の見直しはされていますか。実は入職時に見たままです、
業の方と交わりを持った方がいい。
ということはありませんか。それで、実際の作業は、買
たとえば、電化製品の品質。いまパソコンやビデオ、
ってきた本を見てやっていますでは、おかしいですよね。
デジカメを買っても、なぜほとんど壊れないのでしょうか。
その手順書を見直す。そしてその手順がよいということ
その品質管理は、たとえば同じ行程を繰り返し実施し
がきちんとわかっているならば、みんなでその遵守率を
ていくことによって、生まれる結果は同じだろうという
上げる。これは現場でできます。何もないからうちはでき
考え方に基づいています。そして、各行程の精度を向上
ませんと言うのではなくて、いや、ここはもう一度見直し
させればいいのではないか。ここはあまり専門家でない
てみよう、ここは必要ない、そうしていけば、業務改善が
ので、詳しくはお話しできませんが、おそらく、そういうこ
できるかもしれない、ということです。
とだと思うのです。
そこで、いま医療現場でやっている、たとえば 輸液の
準備、そのときの精度は1個ずつどうか、ということを考
14
プロセスサーベイランス
−結果の前提には必ずプロセスがある−
教科書的には、たとえばAPICのガイドラインには、
ターゲットサーベイランスのことはもちろん書いてあります。
先日APIC から出た新しいサーベイランスの本には、プロ
実践現場の最善策の考え方とその手法
セスのサーベイランスのことも書かれていました。
ら、褒めましょう。褒めるのは人前で、これは原則です。
プロセス、過程ですね、これを過小評価してはいけな
人は褒められれば、協力してくれます。怒る人はいません。
い。結果の前には必ずプロセスがあるから、そのプロセス
そうやって巻き込んでいくのです。目的を達成したいの
の内容を見直して、みんなができるようなものにしていく。
なら、いかにうまく人を巻き込むかです。
そうすると、人ですから患者さんの免疫力などの影響もあ
りますが、自ずと出てくる結果はほぼ同じでしょう。
つまり、プロセスが、感染結果、いわゆるアウトカムと
皆さんは、1年間に感染管理に関してどれだけの時間
を使えますか。その時間を冷静に考えてもらったら、あ
れもこれもとできないはずです。あれもこれもと、無秩序
密接に関連している。このプロセスをしっかりモニターし
に無計画で行くと、まったく目標が達成されません。
なさい、ということです。サーベイランスには、監視という
1年間振り返ってみて、何やっていたのだろう?というこ
意味がありますが、監視するだけではないでしょう。もち
とになりかねません。そういうことのないように、周りの
ろん介入していって、改善していくことです。このプロセス
人を動かしていただきたいと思います。
の遵守率を上げましょう。そして結果となる感染率を下
げましょうと書かれています。
手順書作成のポイント
病院として、組織としてターゲットサーベイランスは必
ず必要ですが、プロセスもきちんとサーベイランスしてい
く必要があると思います。
プロセスサーベイランスの手法については、黄金律は
まだありません。皆さんのところでお考えになった手法
でまったく問題ないと思います。今回は、SOPプロジェク
トメンバーの方といろいろ討議して、こんなふうにしてい
院内スタッフを巻き込むことが重要
ったらどうかという、あくまでも参考例として話をします。
サーベイランスの実施には、人的資源の問題がありま
皆さんのところでも、そのプロセスを変えるために、どの
す。だから、リンクナースやいろいろな人を巻き込むことが
ようにしてやっていこうかということを模索してください。
必要です。イギリスでは、今はリンクナースとは言いませ
まず手順書を作成します。プロセスを示したものです。全
ん。リンクプラクティショナーと呼んでいます。ナースだけ
体的なことではなくて、たとえば輸液準備など、ある1作
ではできないと言っていました。ベッド数あたりのナース
業だけを抜き取って作成します。このとき考慮してほしい
の人数が少ないので、現場の方を活用しようとするのです。
ことが何点かあります。
(添付資料スライド1)
現場に行って、感染のことに興味持っている人がいた
手順書(実践現場)
視覚的にとらえやすいものを使用
感染管理のリスクアセスメントを実施
薬剤の混合
飛沫感染防止のため
私語禁止 マスク着用
又は
手指衛生
穿刺部の消毒
薬剤の混合
〈スライド 1〉
15
1点は、いま使われているマニュアルが、現場で最善
督して、そして検査することが重要です。つまり、チェック
策でしょうか、という点です。つまり、見直して、必要である
するだけではいけない。そのチェックを何に生かすのか、
ならば 改 定しなければいけません。その手順は 3 年前に
そこを考えてやっていくと、改善が見えてくると思います。
つくったものだから見なくていい、といわれているような
日本は外部監査 が 来るときだけピリピリしています。
ものはありませんか。そんなマニュアルが存在すること
医療廃棄物のフタを見てください。日頃は開いているのに
がおかしい。改定があるなら、先にやってください。もち
医療監視の時だけ閉まる病院があります。あれは普通閉
ろん1人ではできません。いろいろな人を巻き込まないと
まっているものです。そんな子供だましのようなことをし
できません。
てはいけません。もうきっちりやっていきましょう。
そしてもう一点は、テーマを何にするかということです。
そこで、自分たちで、チェックリストを用いて監査をかけ
皆さんのところにはマニュアルがたくさんあるでしょう。ど
るのです。チェックリストは皆さんの病院にある手順書、
れから始 めましょうか、というときにリスクをアセスメント
いわゆるマニュアルに 沿ったチェックリストを作ってく
しましょう。早く対策をとっておかないと、死につながった
ださい。よその病院のチェックリストを持ってきても違う
り大きなコストがかかってしまうものなどは優先順位が
かもしれません。
高いでしょう。
何か問題のあることがわかっても、リスクアセスメントし
部門別、個人別でチェックをかけてもかまいません。
たとえば、今回も発表がありますが、同じ人がずっとチェ
てみてあまり高くなければ、介入を後にする場合もあるで
ックすれば、客観的データとして使えるかもしれません。
しょう。今の方法も、みんな歴史があってやってきている
イギリスでは、リンクナースの人がチェックしています。リ
わけですから、いきなり、学会等で聞いてきたからといっ
ンクナースの方にまかせたら燃えるかもしれません。燃
て、要らん!と言えば、その人たちを否定したことになり
え尽きないようにフォローはしてあげてください。
ます。それは、受け入れが悪い。だから、まず外堀を埋め
そして、数値化しましょう。手順ごとにイエス・ノー、
る。その間に皆さんは、危険因子が高いものから先にや
イエス・ノーでチェックしていき、イエスだけ足して、全手
っていきましょう。つまり、優先順位主導型のアプローチ
順数で割れば、割合がでてきます。
が最善です。今日発表していただくテーマも、それぞれの
病院で優先順位の高かったものです。
次に、現場の人たちに教えるときに、視覚的に捉えや
すいものを使いましょうという点です。白い紙に黒い字で
チェック前に、2 つ決めておいてほしいことがあります。
まず、目標を決めましょう。一番いいのは達成率100パー
セントですが、達成感がないと疲れます。もちろん 30パ
ーセントはないでしょう。
書いていても読まないでしょう。まず視覚的に訴えやすい
例えば、自分のところで 80%と決めれば、ある個人や
形です。文字から絵に変えていくような形はどうでしょ
部署が70%しかできていなかった、ここを80%以上にな
うか。このときに、どこに感染管理上の問題があるのかと
んとか持ち上げましょうと、次の行動の目標が設定でき
いうことについては、いろいろ異議があるところかもしれ
ます。
ません。このプロジェクトでは、回避可能な外因性の経路
そして、目標を切ってしまった部署、あるいは 個人に
の遮断にポイントを絞った形で考えてみましたが、皆さん
対して、再教育プログラムを構築しておきましょう。チェッ
のところで 考えて、変わるかもしれません。病院資源や
クして、あとの動き、アクションをせずに、ただまとめた
背景に合わせて考えるものですから、絶対これでないと
だけではその時間が無駄のようなものです。できていな
いけないというのはありません。
いならどう動くのか、そこをぜひ考えてください。
教育は、目標設定を切った部門や個人に絞って実施
オーディットのポイント
−チェックリストによる監査−
では実際の監査はどのようにすればよいのでしょうか。
16
しましょう。院内全体で勉強会 や講演会をすると、その
人たちが来ない可能性があります。目標を切った部署に
対して乗り込んでいくのです。待っていてはいけません。
今回、事例発表をしていただく方々は、この発表に合わ
プロセスオーディット、手順書の内部監査をかけましょう。
せて、教育後短い 期間でもう1 回 チェックしています。
オーディット、見張る、監視です。プロセスを監督して、検
海外では1年に1回とか、それ位でやっています。だから、
査します。事例発表では、ワードオーディットと言っていま
絶対こうでないといけないということもないですし、皆さ
すが、言葉はどちらでもかまいません。過程をもう1回監
んのところで決めてください。
実践現場の最善策の考え方とその手法
に入っていかなくてはいけないのです。皆さんが詰所
オーディット後の介入
に入っていったら、みんな波が去ったように姿を消す
まず一度、自分のところの施設のチェックリストを使
ラウンドでは、意味はないでしょう。そんなことになら
って、守っているかどうかチェックしてみてください。現状
ないように、できていなかった人たちに、ピンポイント
把握です。おそらく、守られていません。どうして守らな
で、たとえば手の衛生について介入する。ひとつの作戦
いのでしょうか。教育が足らないのでしょうか。あるいは、
として、わかりやすいでしょう。目標を切っていた部署
個人的な理由でしょうか。そういうところも測っていかない
や個 人を上げてあげれば、病 院全体 のグレードが上
とわからないと思います。
がります。
このチェックリストには、感染管理のポイントとその理
由、エビデンスが書かれています。
「この手の衛 生は飛
手順の再認識が できる
ばさずに必ずしてださい。理由はこういうエビデンスです。
」
と、教育ツールとしても使えるでしょう
(冊子)
。
手順、プロセス、用語の整理をしなくてはならないか
過去にもチェックリストはやりました。でも、効果的では
もしれませんが、それを再認識 することができます。慣
なかった、という経験があるかもしれません。おそらく、そ
れてくると人は、仕事の効率化と言って手順を省略しま
れは戦略的に 失敗したのでしょう。そこから出てきたも
す。1 から10まである手順を踏んでほしいのに、2、4、
のを何に使うかを、あまり考えずにチェックした可能性が
6、8、10。1、3、5、7はどこへ 行った?ということにな
あります。何かするときは、何かに使わなければいけませ
るでしょう。でも、感染対策に必要な手順のところは省
ん。やるだけやって、自分だけ満足していたらいけません。
いてもらっては困ります。
サーベイランスも、そのデータを何かに使うからやるのです。
いまから輸液を詰めましょうというときに、開始から終
意味のない培養はやめておいたほうがいいわけでしょう。
了まで、酒精綿で拭いたりとか、手をきれいにしたりと
部門ごとの内部監査で、この病院は目標80%と決めて
か、いろんな行程が入りますでしょう。そのときに、結果
行いました。そうすると、残念ながら80%を切っている
は最終的に出てきますけど、各々の行程の精度を上げ
病棟が3つ見つかったのです。3つの病棟へ行って、ある
る必要があります。「手を洗ってからです」や「アルコール
いは来てもらって教育をもう1回し直します。
綿がまだ万能ビンですか」など。
(添付資料スライド2)
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
A C
行程どおりやっているかどうかは、チェックリストで
わかります。基本的に出てくる結果は、精度は、人間だ
部門毎の内部監査
から100%とは言いません。しかし、ある程度の精度が保
たれるはずです。ちょっと抜けている、ここ、おかしくな
いで すか?と思ったときに、明らかに精度は落ちている
と思います。
(添付資料スライド3)
開始
E
G
I
K
M
O
Q
S
U
W Y
A1 A3 A5
部門
〈スライド 2〉
過
程
たとえば、一 律に手の衛生が必要ですと言っても、み
んなもう知っているのです。そんなことはわかっていると
思いながら、やっていないのです。だから、実 際はどうかと
いうところをいろんな切り口でやっていってもいいのでは
ないでしょうか。
感染管理は角の立つ仕事です。だから、パーソナリ
終了
工程
〃
〃
〃
〃
〃
精度
○
○
○
○
○
○
精度
○
×
○
○
×
○
結果
精度
精度
〈スライド3〉
ティが 重要です。皆さんがいま、 ニコニコしている、そ
このあたりを、しっかり私たちが見て、それをもう1回思
の笑顔が重要です。お困りのことないですか、と現場
い出していただく。ここには手の衛生が必要だった、と
17
実践現場の最善策の考え方とその手法
いうようなことに気づいてもらうということです。
ちゃんの一歩です。赤ちゃんも一歩踏み 出さないと百歩
絶対的なものではないので、施設間でちょっとした違
歩けない。最初やられる方は少しパワーが要ります。皆
いがあってもいいのです。このあとの事例発表 を 聞い
さんを見ていると、熱気ムンムンで、そのパワーがある
ていただいて、疑問に思う手順もあるかもしれません。
と思います。
しかし、それはそれで、みんな自分の病院の中の最善
限られたこの資源、違った背景の中で、自分たちでで
策をとろうと思って、動いているわけで す。感染対策
きるベストプラクティスというのでしょうか、最高 のも
委員会等で、提案しても今すぐには変えられない環
のを、私たちは患者さんに提供しましょう。
境や導入できない物品がある時に、埋めるための方法
答えは一つではないと思います。森澤先生も言われ
で す。
ていましたが、考えはグローバルに、行動はローカルに。
あくまでも参考例として、それぞれの病院に持ち帰られ
本当にこれが大事だと思います。やはり、いろんな情報
て、背景も違えば、使用している物品も違うし、人も違う
源でグローバルにものは見ておかなくてはいけない。
ので、自分のところで、考えてみてください。将来的には
でも、本当に現場でやることは、地道なことです。それ
きちんとしたターゲットサーベイランスをぶつけてこない
が重要なのです。
といけないと思いますが、一度プロセスをしっかり管理
してみませんかと、ということです。
あとは各論で詳しい話を聞いていただきたいと思い
ます。どうもご静聴ありがとうございました。
感染管理を、あきらめないで 進めていきましょう。赤
● 冊子 ―
『実践現場の感染管理
〜ベストプラクティスをめざして〜』について
病院感染予防対策の基本である手指衛生の遵守率を上げたいという現場の切実な思いから始まったSOP
プロジェクトは、その成果を「実践現場の感染管理 〜ベストプラクティスをめざして〜」とういう冊子にまとめました。
イラストを使った見やすい手順書を作るという当初の目的から、製造業の品質管理の考え方・手法を参考にしながら、
取り組みやすい業務改善ツール作りへと発展しました。手順書、チェックリスト、危害リストで構成され、誰でも
簡単に実施でき、知らず知らずのうちに、感染予防対策の改善へとつながっていくように工夫されていると思います。
手順書
チェックリスト
危害リスト
18
活 動事例
感染管理ベストプラクティスの実践
左 2 人 目 より ―
槙山さん
小坂さん
出原さん
梶原さん
吉田さん
「 花王感染管理セ ミ ナ ー 」
実践現場の感染管理(第1集)
― ベストプラクティスをめざして ― の作成と活用
近畿大学医学部附属病院
はじめに
師 長 ICT
吉田 理香
作成にいたるまで
病院の感染対策として最も重要なことは、医療従事者の手洗いと
現場では、実際にどのように看護処置が行われていて、手指衛生は
手指消毒であるということは誰でもが知っていることです。しかし、
いつ実施しているのかディスカッションし、感染管理上では、どのタイ
どうして実践できないのでしょうか。CDCガイドラインでいわれてい
ミングで手指衛生を実施する必要があるのか考えました。ガイドラ
るスタンダードプリコーションをそのまま全て遵守しようとすると、1日
インを自施 設 のマニュアルに 当てはめようとするため、多くの施設
8時間業務において1看護師当り100〜200回の手洗いや速乾性擦式
で 無理が生じているのではないか、実践現場の現状を理解した上
アルコール製剤を使用しなければいけないというデータもあります。
で、誤解や無駄をなくし、看護処置における感染リスクを下げるには
時間にすると1回30秒としても手指衛生に要する時間は、50分〜1時
どうすればよいのかなど多くの意見が出されました。この現状を改善
間40分という計算になります。これに前後の動作時間を加えると1日
するためには、わかりやすく、活用できる教育的な資料を作成する
の内いったい何時間、手指衛生に費やさないといけないのでしょうか。
必要があります。内容については、手指衛生がポイントとなること、
これは、実践につながらない大きな要因の一つと考えられます。
感染リスクが高く日常多い処置について考えること、根拠は最新の
今回、土井英史先生のお声かけにより、関西の各病院から感染管
ガイドラインに基づくものであること、経験年数の浅いスタッフでも
理に携わる臨床現場の看護師が集まり、看護処置において手指衛生
直ぐに 役 立てることができるようにビジュアル的なもので手指衛生
が遵守されない現状をふまえ、どうすれば改善していけるのか話し合
のポイントがわかりやすいことを要点とした看護処置標準作業手順書
いました。そこで、根拠に基づき視覚的にわかりやすい標準作業手順
を作成することになりました。
書を作成しました。自施設 で試用した結果、十分活用できるもので
あると思いますので報告します。
目
的
1 医寮・看護行為の手順(工程)
の中で、感染管理のためにここだけ
は絶対に守るべきポイント
(クリティカルポイント)
を明確にした、
わかりやすい作業手順書を作成する。
2 実践で使えるものをめざす。
3 感染管理の基本をおさえながら、より実践的な内容にし、ベストプ
ラクティスを示す。
内容と形式
1
2
3
4
5
6
7
気道分泌物の吸引(開放式)
末梢カテーテル留置
薬剤の混合
尿路カテーテル留置・管理
採血
ドレッシング交換(創傷部)
器材の洗浄・消毒・滅菌
以上の7項目について考えました。
形式は、はじめはポスターかA4サイズのものをパウチにする程度の
ものを考えていましたが、話し合った条件を満たそうと思うと1看護処
置についても多くのページ数が必要となり、冊子という形になりました。
19
ビジュアル的なものとして、写真やビデオなどの意見もありまし
私と主任とリンクナースが、各個人のスタッフに対し、実際の現場を
たが、様々な施設を対象に考えるとイラストがわかりやすく、感染
チェックしました。項目別にできていれば○、できていなければ×を
管理上最重要ポイントのところに
付け数値化し、スタッフにもわかるように提示しました。
というマークを付けてより分かり
易くしました
(図1)
。イラストは、視覚的な理解を得るのに有効であり、
結果は、チェックリストを使用しワードオーディットを実施したこと
新採用者、研修医、看護学生、医学生の教育や啓蒙に効果的です。
で現状把握ができました。日頃から教育はしていましたが、実際は
そして、イラスト手順書に対応するチェックリストを作成しました。
できていないところがありました。具体的に、できていない課題が明
チェックリストには、手順、感染管理のポイント、チェック欄、その
確になり、この課題を重点的に勉強会を実施しました。チェックされ
手順や感染管理のポイントが必要な理由の4項目を記載し、感染管
ていると思うと監視効果 がはたらいて、普段とは異なって実施して
理上最重要ポイント
については、チェック欄自体を黄色とするこ
いる場合があり、実際の状態を捉え、個々人のチェックをするのは
とで、更に強調した内容になりました
(表1)
。チェックリストは、ワー
思ったより大変でした。結果は数値化しグラフ化できるため、具体
ドオーディット(内部監査)
に使用できるため、チェックを受ける側だ
的にどこができていないのかがより印象に残り、改善に向けての行
けではなくチェックをする側もその理由を読むことで再確認すること
動 がとりやすいと感じました。また、スタッフのなかでも、できて
ができます。
いるところとできていないところに共通性があったり、設備・物品配
また、自分の業務の振り返りとして自己監査にも活用できます。
イラストとチェックリストは、別々にも使用できます。
置にも問題があることが浮かび上がりました。この冊子は、勉強会
や研修会などで使用すれば、新人教育にはもちろん、再教育にも効
危害リストは、イラスト、チェックリストと同じ流れに記載されて
います
(表2)
。手順、潜在的危害、感染管理重要度、重要度の判断
根拠、CDCガイドライン、エビデンスに基づいた感染制御、危害の
果的ではないかと思います。
まとめ
発生要因、防止措置の項目を設け、リンクナースや感染管理担当者
この冊子は、教育を受ける方は改善すべき行動がどこなのかが
がその手順を実施しなかった場合の危険性や防止方法が理解できる
具体 的にわかります。指導する方は個別に指導するポイントや 優先
内容になっています。
順位がわかります。看護管理者は構造・設備・物品配置の問題点が
活
明確になります。課題を数値化しグラフ化することで、スタッフの
用
意識に変化がみられ、実際の行動に移しやすいと思います。また、
この冊子を実際に活用してみました。私の病棟は、外科病棟48床
改善に向けての行動が継続できているかも測定し確認することがで
で、対象疾患は、肝胆膵臓疾患、下部消化管疾患、乳腺疾患です。
きます。I CTとしては、各セクションごとに実施すれば、全体の中で
平均在院日数は14.0日、稼働率は89.4%、手術件数は60〜70件/月、
の比較ができると思います。このように『実践現場の感染管理
(第1集)
看護師24名、医師25名
(研修医を含む)
です。
〜ベストプラクティスをめざして〜』は、多くの方法で教育すること
今回、病棟の看護処置の中で、薬剤の混合が問題ではないかと
ができますので、大いに活用されることを期待しています。
焦点をしぼり、チェックリストを使用しチェックしてみました。方法は、
図1 「 薬剤の混合」手順 書
20
― 感染管理ベストプラックティスの実施
図2 チェックリスト
図3 危害リスト
21
感染管理ベストプラクティスのワードオーディットによる評価
― 薬剤の混合 ―
箕面市立病院
師 長 ICT
梶原 加代子
教育群に使用したイラストは薬剤混合の手順
(工程)
を視覚的にわかり
はじめに
私の施設では
「薬剤の混合」
を担当しファイルを作成した。このファ
やすく示したものである。イラストの中でも感染管理上最も重要な手順
イルを5 施設で使用してワードオーディットと教育をおこなったことで
(工程)
である調製台の清拭、薬剤混合直前の手指衛生、穿刺部の消毒
教育的効果が 得られたので報告する。
には注意マークをつけている。教育群と非教育群に使用したチェックリ
ストは、
イラストに対応し各手順ごとにできたかどうかチェックができる
方
ものである。
法
1
このイラストとチェックリストを使用し、それぞれの施設で監査役の
対象
担当者を決めてワードオーディットを行った。
教育群はA、B、C、D、Eの5施設の52名の看護師を対象とした。
非教育群はA、Bの2病院の32名の看護師を対象とした。
結
果
ワードオーディットの教育群実施割合を施設別平均値でみると、
2
調査期間
教育後の方が5 施設全てにおいて実施割合が高くなっている
(図1)
。
2 0 0 4 年 7月から2 0 0 4 年 11月
ワードオーディットによる教育前後の手順別実施割合は、教育後の
方が高くなっている
(図 2)
。
3
方法
教育前後で変化が大きく現れたのは「
教育群は、チェックリストを用いてワードオーディットを行った後に
イラストとチェックリストを用いて院内教育を行い、さらに約1ヶ月後
「 穿刺部の消毒」
、
「
手指衛生」
、
「 手指衛生」
、
調製台清拭」、
「
手指衛生」
、
「
薬剤の
混合」の6 つの手順である。その他の手順は変 化が小さかった。
ワードオーディットによる個人別実施割合の変化を手順毎にみると、
に再度ワードオーディットを行った。
非教育群は、院内教育は行わず、ワードオーディットのみを約1ヶ月間
教育群は手指衛生、物品準備以外は教育後に実施できるようになっ
隔で2回行った。
た人が多い
(図3)
。これに対して非教育群では1ヶ月後に実施するよう
になった人も多いが、逆に1ヶ月後に実施しなくなった人もいた
(図4 )
。
教育前
教育後
平均値±SD
n=52
100
90
80
実
施
項
目
割
合
70
60
50
40
30
︵
20
%
︶ 10
0
A
B
C
D
E
教育前
○ から×になった人
n=23
人数
14
12
12
10
手
指
衛
生
穿の 薬
刺消 剤
部毒 混
合
針 すに
廃 み投
棄 や与
か
×から○ になった 人
○ から×になった人
n=32
人 8
数 6
8
6
4
4
2
2
0
0
手
指
衛
生
調清 手
製拭 指
台
衛
生
カ確
ル認
テ
物
品
準
備
2確
人認
で
手
指
衛
生
穿の
刺消
部毒
薬
剤
混
合
手順
図3 手順別前後の比較(教育群)
22
物 2確
品 人認
準 で
備
図2 ワードオーディットによる教育前後の手順別実施割合
14
10
人
数
調清 手 カ確
製拭 指 ル認
台
衛 テ
生
手順
図1 ワードオーディットの教育群実施割合(施設別平均値)
×から○ になった 人
n=52
手
指
衛
生
全施設
施設
16
教育後
100
90
80
実 70
施
者 60
割 50
合 40
︵
30
%
︶ 20
10
0
針
廃
棄
すに
み投
や与
か
手
指
衛
生
調清 手
製拭 指
台
衛
生
カ確
ル認
テ
物
品
準
備
2確
人認
で
手
指
衛
生
穿の
刺消
部毒
薬
剤
混
合
手順
図4 手順別前後の比較(非教育群)
針
廃
棄
すに
み投
や与
か
― 感染管理ベストプラックティスの実施
考
察
していたため、大きな変化として現れなかったのであろう。
ワードオーディットの教育群実施割合の施設別平均値が、教育後
の方が 5施設全てにおいて高くなったのは、教育を追加することで「な
ぜ必要なのか?」という実 施 の根 拠 が 理解され実施できるようにな
また、非教育群のワードオーディットでも十分教育的な効果はあり、
監査すること自体に教育的効果があったと考える。
しかし、教育群ではほとんどなかったが、非教育群では「
生」
、
「 手指衛生」
、
「
変化が大きく現れた6つの手順についても、同様の理由が考えられる。
合」
、
「 針廃棄」
の項目で、手順の実施が教育前後で 逆転現象が起
変化が大きく現れた6つの手順には、イラストの中で感染管理上最
こっていた。これは従来から手順が曖昧であったためと考える。今後
も重要な手順として注意マークをつけた「
調製台の清拭」
、
「
手指
衛生」
、
「 穿刺部の消毒」
も含まれている。また、対象看護師から
「イ
ラストがわかりやすく、チェックリストで理由がよくわかった」という
感想が聞かれたことなどから、イラストとチェックリストがわかりやすい
内容となっていたことがより効果的であったと考える。
2人で確認」
、
「
薬剤の混
は教育群のように、手 順一つ一つの必要性が 理解される教育を行
っていく必要がある。
結
論
薬剤の混合に対するチェックリストを用いたワードオーディットによる
ワードオーディットによる教育前後の手順別実施割合で、変化が小
さかった「 カルテ確認」
、
「
カルテ準備」
、
「
手指衛
ったと考える。ワードオーディットによる教育前後の手順別実施割合の
針廃棄」
、
「 すみやかに投与」
などは、
教育前でも実施割合が高かった。安全管理などの観点から薬剤の
調製に関して、すでに各施設で従来から指 導されており、十分浸透
教育は、
1 手順遵守率を向上させた。
2 特に感染管理上の重要な手順の実施を行うことによるリスク対策
に効果的であった。
ワードオーディットから見えてきたこと
―ドレッシング交換の結果から―
中井記念病院
はじめに
師長代行主任
感染管理副委員長
出原 雅代
用いて行った教育の効果とこれからの課題について報告します。
私がドレッシング交換のワードオーディットを行ったきっかけは下部の
消化器疾患にSSI(外科手術部位感染症)
の頻度が高い傾向にあるの
教育方法(冊子を用いて)
ではないかと感じたことです。SSI対策としては、サーベイランスの実施、
・ICTで考え方を説明
予防的抗菌薬投与の適正化、標準予防策の徹底、術後創処置時の手
・病棟会でイラストと重要ポイントを中心に根拠を説明
指衛生の推進などICTとして可能なところから推進しています。今回その
・教育期間を1ヶ月間と設定
取り組みの一つとして当院のドレッシング交換の現状を把握し、改善点
・教育前後をチェックリストを用いてワードオーディットを実施
を見出すことが必要と考えました。共同で作成させていただいた冊子を
図1 ドレッシング交換の手順書
23
APIC 2005レポート
参加体験記
財)宮城厚生協会 坂総合病院 副看護部長 感染対策室室長
感染管理認定看護師
残間 由美子
はじめに
2005 年 6月19日から23日まで、ボルチモアで開催された第 32 回 A P I C( Association for Professionals in Infection Control and
Epidemiology ; 米国感染管理専門家協会 )年 次総会に参加してきました。今 年 のテーマは、CHAR T I NG T HE COURSE
OF INFECTION CONTROLです。入国審査で困らない程度の英語力の自分が、国際学会へ参加する日がくるとは、数年前までは
考えられないことでした。参加が現実のものになったのは、HAICS(Healthcare Associated Infect ion Control Suppor t)
研究会
が「同時通訳付きでAPICに参加」
というICNのためのプログラムを企画してくださり、日本感染管理ネットワークが 協賛して「AP IC
2005 FOR ICNツアー」
が 実 現したからで す。このツアーに参加したのは20数名でしたが、他には日本の感染管理のスペシャリストの
方々や、企業の方も多数参加されていました。日本からは過去最高の参加人数だったそうです。全体 の参加者総数は3500人と
報告されました。
開催地ボルチモアについて
日本の建築家もよく見学にくるそうです。
メリーランド州の港町ボルチモアは、日本とほぼ 同じ緯度
昔は治安があまり良くないところだったようですが、土地を
にあり、気候は四季があって、日本の関西地方に似ている
安く提供するなどの政策が効を奏して、すみやすい街 づく
そうです。東北人の私には日差しがまぶしい感じでした。街
りが行われてきているそうです。
並みは、古い建物と近代的な建物が 混在しつつ調和して
いて、不思議な雰囲気をかもし出しています。港を囲んでい
る建築物が、海に向かっていく船をイメージしてデザイン
されていたり、 街 中にいろいろな 模 様 のついたカニのモ
ニュメントが置いてありました。
コンサートのようなオープニングセレモニー
オープニングは、音楽とライトと歓声と拍手で、まるで
コンサート会場にきたような雰囲気で 楽しく過ごすことが
できました。APIC会長の挨拶や開催地のAPIC支部の役員
の紹介、インターナショナル会員の紹介が次々とドラマチック
に演出され、開催に尽力された人と参加した人が、お互い
をたたえあい、開放的で友好的な感じでした。友好的な感じ
は、講演会場を出た後でも同じで、そばを通る人がみんな
笑 顔 で 挨 拶をしてくれ 、3日目には 笑 顔 で He l lo! H i!が
返せるようになりました。
ボルチモアの港
街中いたるところにあるカニのモニュメント
26
オープニング
NNISシステムでなくなる?
点を上げ ていました。
同時通訳付き演題の中でも、ICNとして特筆すべき演題
は、Transformation of NNIS t o NHSN でした。今後は
NNIS( National Nosocomial Infections Surveillance)
日本人のためのAPICサポートプログラム(サマリーセッション)
このツアーでは、カンファレンス終了後すぐサマリーセッション
システムからWe bベースのNHSN( Nat ional Healthcare
が企画されていて、日本の感染管理に役立つような演題を
Sa fet y Net work)
に統合されるということでした。N HSNは、
選んで、日本語で紹介してくれました。毎 回ゲストも招 待
CDCの3つのサーベイランスシステムを 統 合させたもので、
されていて、パトリシア・リンチ先生がゲストでお見えになられ
その3つとは、急性期の重症ケアや外科患者における病院
たときは、事情が違っても感染管理の本質をみるようにとい
感染(NNIS)
と透析外来患者における血流感染(DSN)
、血液
うメッセージがあり、感動で 震えました。「忙しいの」
という
媒介病原体暴露や結核などの暴露による感染(NaSH)
です。
先生を引き止めて、一緒に写真に納まっていただきました。
NHSNの導入計画は、すでに2004年11月から訓練と登録が
日本ではお会いしたことがなかった、自治医科大学の森澤
始まっていて、2005年 5月からデータ収集がスタートしていると
先生、大阪大学の牧本先生、国立感染症研究所の森兼先生、
いうことでした。今後の日本の感染管理にも影響を与えるこ
聖路加国際病院の操先生など著明な先生方が和訳を担当
とになると思います。
してくださり、かつ日本の感染管理と米国の感染管理の違い
などについて、情報を共有できたことは大変有意義でした。
日本でこの経験はできないなとちょっと得した気分でした。
院内感染の報告義務が州法になった!!
院内感染 の情報公開は、米国ではホットな話題になって
いるということで、シンポジウムがあり、その内容もまた興
味をひくものでした。
(これはあとで述べる操先生のサマリー
セッションからのパクリで すが…)
。 院内感染 の発生率を公
開することが、州法になってきているそうです。イリノイ州が
最初で、2004 年11月から、SSIやUTIの報告が始まり、急激
な動きになっているといいます。APIC主催のカンファレンス
では、人的資源の問題やデータの質保証、患者の背景の
違い、発生率の比較の問題などがあるので、合意は難しいし、
APICとしてすすめるものではないとしていました。しかし、列
車は動き出している、にげられない、反対するのではなくよ
パトリシア・リンチ 先 生と( 筆 者は向かって 右 )
り良い方向へ…とポジティブ思考でまとめられていました。
おわりに
アウトカムだけでなくプロセスもみる
あっという間の 6日間 でした。 体 の 大きい人 ば かりで、
この中で、アウトカムだけなくプロセスもみたらいいので
自分 がすごくスリムにみえて、 痩せたかも??と 誤 解して
はないか?と考えられてきているようでした。手洗いが何%
帰ってきました。来年はフロリダ州のタンパで6月11日から
できているのか、防護具の使用はどうかなどのよく行われて
15日まで開催されます。来年もまた行きたいなー。
いることについて、公開するということです。プロセスメジャー
という表現をしていました。
質の高い、より良いケアを行っているところを選ぶことが
できるという点が良い点と評 価していましたが、否定的な
側面としては、重症の患者の人は、結果が 悪くでるので診
られなくなる、救 急 外 来 の 抗 菌 薬 使 用 量が上がるなどの
27
病院・介護施設でお使いいただく 花王の衛生管理製品
汚染区域
一般区域
清潔区域
高度
清潔区域
準清潔区域
器材の滅菌
手指の衛生
花王滅菌バッグ
花王滅菌バッグ
プラズマ用
● 花王滅菌バッグ
ポケットパウチ
●
花王ソフティ
薬用ハンドウォッシュ10
● 花王ソフティハンドクリーン
● 花王ソフティハンドローション
● 花王ソフティ薬用クリーム
●
●
医療用医薬品
外用殺菌消毒
「花王」
アルコールラビング液0.2W/V%
●
「花王」
メディカルハイター液6W/V%
●
器材の洗浄
バイオテクト55
● バイオテクト66
● バイオテクト88
●
消毒用エタノール
●
消プロ
(ハチ)
70
●
塩化ベンザル
コニウム液10%
●
排泄ケア
●
ネグミン液
●
クロヘキスクラブ液
4%
おしりの清潔とスキンケア
● サニーナ薬用スプレー状おしりふき
● サニーナ薬用泡状おしりふき
手術前室
手術室
中央滅菌材料室
トイレ
ICU
入浴ケア
ナースステーション
病室
トイレ衛生
●
花王ポータブルトイレ用
泡状消臭剤
●
スプレー
トイレクリーナー
浴室
肌にやさしい入浴介護用シリーズ
● 花王ソフティ
ヘッド&ボディシャンプー
● 花王ソフティ
リンスインシャンプー
● 花王ソフティ
薬用ボディシャンプー
入浴時のスキンケアに
● 花王ソフティ
上がり湯ローション
入浴後のスキンケアに
● 花王ソフティ
薬用ミルクローション
リハビリ室
薬局
検査室
内視鏡
ロビー
検査準備室
CT
トイレ
受付
採血室
超音波
X線
環境衛生
病院用ハイター
花王ソフティ病院・施設用
消臭スプレー
● 抗菌ワンダー
● 鮮やかビック
● 花王ソフター
● かんたんマイペット
● ワンダフルコンク
● マジックリン
● バスマジックリン
● クイックルワイパー
●
透析室
●
外来診察室
医療用医薬品
内視鏡・器具の殺菌消毒
●
●
28
ステリゾール液20%
ステリゾールS液3%・15%
バックナンバーのご紹介
創刊号 No.1 2002年 6月発行
No.2
2002年 10月発行
「花王ハイジーン ソルーション」発 刊にあたって
「花王ハイジーン ソルーション」発刊によせて
特集
医療用器械・器具の洗浄と
感染予防
特集
CDCの新しいガイドラインと
花王ハイジーンシステムについて
医療現場における器械・器具の洗浄
ーより効果的な洗浄方法を構築する
ための留意点ー
手指衛生のためのCDCガイドライン
花王が提案する手指衛生管理システム
ー手洗い・手指消毒・ハンドケアー
医療用器械・器具洗浄剤の科学
医療現場における器械・器具の洗浄例
手指皮膚とハンドケアの科学
手指洗浄剤の科学
● 手指殺菌・消毒剤の科学
● 手荒れと手指衛生の科学
● 花王製品の性能・技術紹介
● 花王製品の使用症例報告
● 花王提案の手指衛生管理システム
●
●
●
No.3
2003年 2月発行
●
一次処理工程における酵素洗浄剤の使用
医療現場における超音波洗浄と
ウオッシャーディスインフェクター
花王提案の医療用器械・器具洗浄システム
No.4
2003年 6月発行
特集
褥瘡ハイジーンケア
特集
感染対策の院内教育
褥瘡対策のポイントとスキンケア
院内教育の現状と将来
器械・器具の洗浄・消毒・滅菌の教育
環境の清掃・消毒の教育
洗浄剤・消毒剤適正使用の教育
感染対策の院内教育の活動事例
褥瘡と感染症
褥瘡対策チームの活動例
東芝病院
NTT東日本関東病院
● 国立療養所中部病院
●
●
さいたま市立病院
帝京大学医学部附属病院
● 東芝病院
●
●
トピックス
海外感染対策事情
レジオネラ対策
●
●
米国の感染対策最新事情
トピックス
●
No.5
2003年 10月発行
No.6
セラチア感染対策
2004年 3月発行
巻頭言 褥瘡対策チームの一員として
1年間院内回診をして感じたこと
巻頭言
病院感染対策に思うこと
特集 病院感染対策のさらなる
向上をめざして
特集
最近の消毒法あれこれ
病院感染対策をさらに向上させるため
の組織作りと今後の課題
病院感染対策の活動事例
●
●
生体消毒法
器材・環境消毒法
特定医療法人 富田浜病院
昭和大学附属烏山病院
最新の研究から
消毒薬抵抗菌の問題点とその対策
●
海外感染対策事情
サイエンスプラザ
ヨーロッパの感染対策最新事情
●
話題ー臨床検査室の役割
●
洗浄と界面活性剤の話
●
微生物検査が外部委託という制約された
環境下での病院感染防止対策
トピックス
最新の研究から
最新のSARSの疫学および
消毒に関する情報
●
ハンドケア剤が手指殺菌洗浄剤や
手指消毒剤の殺菌効果に及ぼす影響
●
サイエンスプラザ
セラミドの話
●
トピックス
インフルエンザ 対 策
●
No.7
2004年 7月発行
No.8
2005年 1月発行
巻頭言 ICNとして病院 感 染対 策に思うこと
巻頭言 最近 の病院感染対策に思うこと
特集 病院感染対策と次亜塩素酸ナトリウム
特集 手指衛生とスキンケア
「感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き」
の要約
「感 染 症法に基づく消 毒・滅 菌の手 引き」に
おける次亜塩 素 酸ナトリウムの位置づけ
医療 現 場における次亜塩素酸ナトリウムの
特 性と有用性
花王の次亜塩素酸ナトリウム製品
海外感染学会報告
●
第2回アジア太平洋感染制御学会国際大会に参加して
最新の研究から
●
院内の清潔ケアにおける固形石鹸の共用の
現状と看護師の意識
サイエンスプラザ
●
殺菌と界面活性剤の話
手指衛生 _ 手指衛生に使用する
アルコール製剤と洗浄剤
スキンケア _ 手指衛生による手荒れとスキンケア
最新の事例報告
手 洗い実施のための感染 制御チーム
(ICT)
の取り組み
●
サイエンスプラザ
アルコールと殺菌の話
●
製品紹介
アルコールラビング剤
●
花王の衛生管理製品
花王の衛生管理製品
バックナンバーをご希望の方は、弊社病医院担当又は右記までお申し出ください。
電話 03- 5630 - 9283 / FAX 03 - 5630 - 7130
29
Kao Hygiene Solution No.9 花王ハイジーン ソルーション9号
発行日:2005 年 9月25日
編集・発行:
東 京 〒131- 8501 東京都墨田区文花 2 -1- 3
TEL 03(5630)9283
E-mail:ipv@ kao.co.jp
URL :http://www.kao.co.jp/pro/HOSPITAL/hosindex.html