特集 病院感染対策の さらなる向上をめざして 病院感染対策をさらに向上させるための 組 織作りと今後の課題 京都府立医科大学 臨床分子病態・検査医学教室 助教授 附属病院臨床検査部 部長 藤田 直久 はじめに 院内感染 が社会問題としてマスコミで 大きく取り上げられるようになったのは、1990年 頃からである。M RS A(メチシリン耐性 黄色ブドウ球菌) による院内感染が 社会問題となり、ちょうど今 年 のS A R S(重 症 急性 呼 吸器症候群)のような 騒ぎで、マスコミ は 連日大きく報道していた。当時、保菌と感染症の区別をせずに、全 国に M RS A 患者が何千名存在しているとの新聞報道さえ 行われ、ある老人 病 院は「M RS A 感染患者が多い」 ということで、新聞の一面に大きく掲 載された。 「MR S Aによる院内 感染」 が 1) 社会的な問題となる契機となった一冊の本がある。富家 恵 美 子氏 の「 院内感染」 である。ご主人が 大 学病院で食道静脈瘤の 手術を受けられ、順調に回復していたにもかかわらず、M R S A 感 染 症を発 症され 不 幸にも亡くなられた。その原因について、 医療制度、病院組織、そして医 師、特に 研 修 医の勤 務 状況や 医学 教育に至るまで、多角的に院内感染が起こりうる要因を分 析し、教育を含めた感染対策全般の必要性を訴えている本である。医療、特 に 院 内 感 染 対 策 に 携 わる方には、1度は読ん で頂きたい本であり、さらなる院内感染対策の向上を考える基本となると思う。 院内感染対策の目的は、 「患者及び医療従事者の両者を無用な感染から守る」 ことであり、患者への感染予防と同時に、医療従事者 への感染予防対策、すなわち職業感染予防対策も充実させてゆかねばならない。職業感染防止対策の充実は今後の課題である。 感染対策に必要な組織と構成 感 染 対 策 委 員 会 と 感 染 対 策 チーム 2) である (図1) 。感 染 対策委員会の構成は、診療報 酬 感染 対 策に必要な組織とは、病 院長、看護部長、 の「院内感 染 防止対策に関する基準」3)に明確に定 薬剤部長、臨床検査部長、事務部長など病院の各部 められている。月一回の定期的開催 や 週 一 回のM R 門の管理者から構成される諮問委員会としての「院内 S A 発 生報告など、一定の基 準を満たす必要があり、 感染対策委員会」 ( In fec t ion Cont rol Commi t t e e : 診療報酬上「院内感染対策の実 施」 は病 院において I CC) と実際に感染 対策を実 施する実働部隊としての 当然なされるべき事 項となり、実 施されていなけれ 「感染対策チーム (Infection Control Team : I CT ) 」 ば 減 点となる。この規 定の中には、I C T やリンクナー 病 院 長 ICT 感染対策委員会 諮問機関 リンクナース リンクナース リンクナース リンクナース 現場 現場 現場 現場 図1 望ましい 病 院 感 染 対 策 組 織 図 2 文献 3から引用 病院感染対策をさらに向上させるための 組 織作りと今後の課題 ス等についての基 準はない。一 方、病 院 機 能 評 価 の教育にあたっており、今後、インフェクションコントロー 4)では、 (ver.4.0) 「組織的に院内感染管理が行われ ルドクターは、欧米のI C Dとは 異なる、多様 性 のある ている」 ことは明記されているが I C T / I C N / ICDと 日本 独自の 形 で 発 展してゆくので はないだろうか? いう言葉は見られず、 「 病 院 の 規 模・機 能に応じて、 必要な知識・技術をもって院 内 感 染 管 理 を 担当す る医 師 と看 護師が 任 命され、活動している」との記 感 染 対 策 実 働 部 隊としての 感 染 対 策 チ ーム (ICT) と下 部 組 織 載のみである。従って、感染対策委員会が出来上がれ IC Tは、感染対策の実践部門であり、構成は I C D、 ば、あとはその病院の状 況に応じて、IC T 等 の 実 践 ICN、看護 師、臨 床検査 技 師、薬 剤 師、事 務官から 的な組織を作り上げればよい。要するに、 「感染予防 なる混合編成であるが、実 践 部 隊 であるが 故に、実 対策が 確実に実施され、その結果院内感染の数が 務にあたっている人達を選ぶ。病院 の規 模 により組 減少すれ ば 問題ない」わけである。 織 や人員の構成は異なってくるし、小さな 病 院では I C C の委員の一部がI C T として 活 動しても構 わ な 感染管理医師(ICD) と感染管理看護師(ICN) い。I C T の役 割および 活動内容について明 確 なも 欧米のように両者が 専 任であることは理想的であ のはないが、表1に I C T の 任 務 を 列 記 3)するので るが、ほとんどの病 院 では、どちらもいないか、ある 参考にして頂きたい。また、限られた人数では感染 いは一 部 の 病 院で I C N がおり、専 任あるいは 兼 任 対 策への実効性が伴わないこともあるので、各病棟 で 活 動しているのが 現 状である。今 後 基 幹 病 院 で にリンクナース(L N) を配 置 する。L Nは、感 染予防 のIC Nの専 任 化は、リスクマネジメントの観点からも 対 策 のロール・モデル( 模 範 ) となる 看 護 師 であり、 避けて 通れ ない状 況 になるのではないかと推測さ 感 染 予 防 対 策 手 技 を 教 育・実践し、病 棟 内 で 解 決 れる。なお、日本 におけるインフェクションコントロ できない感染管理に関わる問題 点をI C T へ 報 告 す ールドクターとは、ここでいうI C D( 臨 床 微 生 物 学 者 る役 割を 果たす。大 学 病 院 など大 規 模 病 院 では、 あるいは 感 染 症 専 門 家 ) とは 異なり、日本 感 染 症学 L N以外に、医 師への感染対策の徹底と集団発生時 会など感染症に関連する16学会で 組織された ICD の対 応 の窓 口として、病 棟あるいは 診 療 科 毎にリン 制度協議会により認定された医師歴5年以上の医師 クドクター (L D) を 配 置 することもある5)。 あるいは 博 士 号 を 取 得 後5年 以 上の P h . Dである。 表1 ICTの 任 務 すべ て のインフェクションコントロールドクター が、 微生物 や 病 院 疫 学 等の専門教育を受けたものでは ない。感染 症 専 門の内科 医 だ けではなく、一 般 内 科医、外 科 医、眼科 医、麻 酔 科医、学位を持つ検 査 技 師など、その 職 種 の範 囲は 広く、資 格 取 得には ● 年間計画の作成と病院長への報告 ● 年間計画の実行とアウトカム評価 ● 年間予算計画の作成と交渉 ● 最低週一回の病棟ラウンド ● 必要な対象限定サーベイランス ● サーベイランス結果の病院長、 委員会、現場への報告 病 院感染 制御に関わる活 動 実 績 が 問われる。感 染 ● アウトブレイクの防止と発生時の早期特定および制圧 症 学 会をはじめとする多くの関連学会がインフェクショ ● 現場への介入 (教育的介入、設備備品的介入) ンコントロールドクターのレベルアップのために年間10 回近い講習会を実 施し、ICDに必要な専門的知識 ● 感染対策マニュアルの作成 ● 職業感染防止と針刺し事故等への対応 ● 耐性菌・結核・疥癬などの交差感染防止 〈 サイドメモ:英 米 で の I C T は 2, 3 名〉 英国では、ICTは、感染管理看護師(ICN) と感染管理医師(ICD) の2名からなる、I C Dの多くは臨床微生物 学 者である。感染 症 専 門 医が I C Dとなることも あり、また 細 菌 検 査 室 の 技 師 がこれに加わることもあり、日本のような多人 数ではない。これは I C T が病院の重要な部門として位 置づけられ、各 IC D および I C Nが 専 任 であることによる。日本のようにボランティア的につくられた ICTとは根 本 的にそのベースが異なる。一方、米国では感染対策プログラムを実 行 する上での 中 心 的 役 割として、I C T が 構 成され、実 施 責 任を負う。感 染 管 理 専 門 家 I C P(Infection Control Professional / Practitioner ) とICCの 委員長または病 院 疫 学 者の2または3名から構成されている。I C Pは、感 染 管 理に 関 する専門的 知 識をもつ資 格で あり、必ずしも 看 護 師 に限らな い 。 3 I C T のラウンド 医 療 事 情、文化 や 生 活 環 境 、生活スタイルも異な I C T のラウンドは、目的と 必 要 に 応じて、人員構 るため、すべ てのガイドラインをそのまま日本に取 成や間隔を決 める。例えば、バンコマイシンの適正 り入れることには 注 意しなけれ ば ならない。E BM 使用についてのラウンドをするのであれ ば 医 師と薬 (科学的根拠に基づいた医学) により、これらのガイド 剤 師だけでも可能であるし、血液培養陽性患者に対 ラインは作 成されているが、翻 訳だけではなく、必 する抗菌剤適正使用のラウンドであれば、前述の医 要に応じてオリジナルおよびその引 用 文 献 にも目 師・薬剤師に細 菌 検 査室の技師を加えて実施する、 を向けて頂きたい。時 に、都合 の良い 部 分 だけを またこの場合には最低でも週 一 回はラウンドをおこ 引用していることもある。また、日本 の文 化 や 生 活 なわないと対 応 が 遅くなり、ラウンドによる効果 が 環 境に即した 形 でこれらのガイドラインを導入し、実 上がらない。また 感 染 予 防 対 策 の実 施 率あるいは 践 的なマニュアル へと作りかえてゆく必 要がある。 感 染 予 防マニュアルの遵守率をチェックするのであ ガイドラインにも、必 ず 個 々の 病 院 の 状 況 に 合 わ れ ば、I C D、I C N や 看 護 師に 加え、通常 病棟 に出 せてガイドラインを 参 考 にマニュアル 作 成 すること 向く機 会 のない 臨 床 検 査 技 師 や 事 務 官を伴って、 が 明 記されている。 ラウンドする。事務官や検査 技 師に 病 院の生の現 場 を見てもらい、知識を深め、感 染 対 策 への動機付け ガイドラインから標準手順書(マニュアル) の作成へ をねらっている。予め感染対策上遵守すべき項目の ガイドラインは、単なる手引きであり、それぞれの チェ ックシート(東京都健康局 http://www.kenkou. 施設の医 療 現場で 行われる感染 予防対策の実施に metro.tokyo. jp/ian/shidou/kandl.html 作成を あたっては、その手技・手順は具体的なものでなけれ 参考にする)を作 成し、病 棟 の数に応じて、月一回 ば ならない。感 染 対 策 の 手 技・手順が標準化され 程 度 順 番 に 各 病 棟を回り、チェック項目に 従 い 調 ていないと、各自の基 準で 対 策 が 行 わ れ ることとな 査し、調査結果を病棟にフィードバックし、是正する。 る。 「感 染 対 策 が有効に実 施されているか」 を客観的 この時、悪 いところばかりを 指 摘 する のではなく、 に評価 できない。したがって、標準作業書を作成す 良い 部 分も 結 果 報 告 の中に 組 み入れ、I C T のイメ ることが必要となる。例えば、手指消 毒 でも「 速 乾 ージが「小姑 の集団」にならないようにしたい。また 性 手 指 消 毒 薬 で 手 指 消 毒 をおこなう」ではなく、 時には、病 棟 の 現 状を知ってもらうた めに 病 院 長 ① 速乾性手指消毒薬3mLを手のひらにこぼ れない や 事務長を 連 れ 出し、一 緒 にラウンドしてもらうの ように取り、②手のひら、手 の甲、指の間、指先、親 も良い かもし れ ない。なお、I C T のメンバーが 多く 指の回り、手首にまんべんなく擦り込み、③乾 燥 する なると 機 動 性 が低下してくるので、集団発生あるい までじゅうぶん(約30秒程度) に 擦り合わせる」 とい は迅速な対応が必要な感 染 症 発生の場合に備えて、 う具体的な手技を書く。 「手指消毒をおこなった」 と すぐに 集まれ、すぐに 行動がおこせるような緊急対 いうが、果たして全員がこれと同じ手 技を実 施して 応時 のコア・メンバーをあらかじめ決めておく必要が いるとは 限らない。この様な標準作業書は、後述 す ある。また、院内感染に時間外はないので、休日・夜 るオーディットの 作 成と深く関連している。 間でも対 応 で きるように することも 必 要 で ある。 マニュアル の 遵 守 を 評 価 する(オー ディット) マニュアルの 作 成と遵 守 各 国のガイド ラインから 我 が 国 独自の ガイド ライン やマニュアル へ 4 現場でマニュアルどおりに対 策 が 実 施されている かを確認するための方 法として、オーディットがある。 オーディット (a u d i t ) とは、会計監査あるいは 審 査と いうことであり、実 際に行 わ れている手 技 がマニュ 米 国を中心に 数多くの 院 内 感 染 管理に関するガ アルに則って実施されて いるかをチェックし、問題 イドラインが 作 成され 、翻 訳されている。国により となる箇所を 指 摘し、改善しようというものである。 病院感染対策をさらに向上させるための 組 織作りと今後の課題 い わゆる チェックリストであり、定 期 的 に 実 施 する。 れ、これらの4感 染 症 を対 象にターゲットサーベイラ 各項目毎にそれぞれ のオーディットがあるが、その1例 ンスが 実 施されている。また、厚 生 労 働 省によるサ を 表2に 示 す。 ーベイランスもある。サーベイランスには目的 があり、 実 施 する人々に 動 機 付けがあり、かつ 継 続 実 施でき ることが 重 要であり、それができないと意 味をなさ サーベイランスは 何をすればよいのか? ない。サーベイランス実 施において、 「 継 続 は力なり」 サーベイランスが必要であることは、皆が理解し にどんな指 標 が 必 要なのか? 何を目的に実 施するか? ている。自分 の病 院 で M R S Aの感 染 症患者が何人 を明 確 にしておかないと、巷 で 流 行っているという 存 在しているのか?、血流 感 染 症 の 発 生率は どの 理 由 で 飛 び つくと 継 続 できない(もっとも、診 療 報 程 度か?、菌血症の患者からはどんな細菌が 検 出さ 酬 で 点 数 加 算 が あれば 別 であるが …、今はそれが れているのか?など、サーベイランスの 種 類 は 数多く ない ) 。 ある。現 在 、血流 感 染 、肺炎、尿路感 染 症、創 部感 サーベイランスは、感 染対 策の効果をみたり、集団 染などが日本 の病 院 で 広く実 施され、病 院 間の比 発生を感 知するうえで重要であるが、通常サーベイラ 較も可 能 である。院内 感染 の大 半 がこの感 染 症 の ンスの結果は、 リアルタイムではなく、多少の時間的な どれかに入るからであり、感 染した 場合 の重篤化す 遅 れ がある。従って、集団発生を少数の段階で発見す るリスクも高い。米 国のNNIS(Nat ional Nosocomial るには、時間的な 遅 れが 生じる。病棟では現場の医 In f ec t ion Sur veillance) に倣って 実 施されている 師や看護師、病 院全 体でおこる食中毒などは検査室 J N IS( Japan Nosocomial Infection Surveillance) が、早期に集団発生を発見することもある。 である。サーベイランスを始める際には、自分 の病 院 によるサーベイランスが、日本では 全 国 規模で 実施さ 表2 オーディットの1例 8:手指衛生 基 準:手指は、交差感染の危険性を減らすために、 利用可能な手洗い場で、洗浄剤を使用し正しく洗う チェック項目 はい いいえ どちらでもない 1 液体石鹸が外来・病棟内のすべての手洗いシンクに 設 置されてある 2 ペーパータオルが外来・病棟内のすべての手洗いシンクに設置されてある 3 爪ブラシは手洗 いシンクに置いていない 4 手洗いシンクに容易に 行ける 5 水とお湯との混合栓が外来・病棟内のすべての手洗い場に設置されてある 6 速乾性手指消毒剤が少なくとも一カ所には配置されている 7 手洗い方 法を訓練されたスタッフが 正しい手洗いを実 施しているかを 観 察する 8 手洗いシンクに使用後の器具は置いていない 9 手洗い方法を訓練されていないスタッフが、正しい手洗い手技で手洗い を実施しているかを観察する 10 手洗いや患者のケア時に、腕時計や宝石付きの指輪をしていない 正しい手洗い方法を示すポスターが最低1カ所 に手洗 いシンクに掲示 11 されている 12 手袋を外した後には手洗いを実施している 13 正しい手洗い方 法 が 新規採用者の教育プログラムに入っている 文献6から引用、一部改変 5 感 染 対 策 に は 優 先 順 位をつける 感 染 対 策 に 携 わる専門 家 の 標 準 化 ICDあるいはインフェクションコントロールドクター 感 染 管 理 に 関する知 識 が 増えれ ば増えるほど、 現 時 点 で は 個々の能 力 や 知 識には大きな 格差が 自分の病 院 内の不 備が目立ち、気 になる。なんとか 存 在 す るため、今 後 I C D 講 習 会を通して、一定の 変えようと考え、行動 するが、これがなかなかうまく 教育を実施し、格差是正を行う必要がある。 いかない。各方面からの抵 抗 勢力に 出会い、精神 IC N 的にも肉体的にも疲弊し、いやになってくる。例え 日本 看 護 協 会 が 認 定 看 護 師 制 度 を 実 施しており、 ば、集中 治 療 室 や 手術室の靴 の履き替えや 粘 着 マ 標準化はかなりの程 度 で 実 施 できているものと思 ットをなくそうと一 生懸 命 努力したことはないだろ われる。 うか? よく考えると、院 内 感 染 とはかなり遠い部分 I CT にこれらの問題(問題といえるかどうかもわからない ) 現 在 I C T の行 動内 容は 明 確 になっておらず、今後 は 存 在しており、これに大きなエネルギーを費やし その役 割と内 容 を 明 確 に することにより、より実 ていることに気づく。これらは 院 内 感 染 対 策 上 、履 際 的 で 専 門的な活動が可能となると思わ れる。 き 替えがあろうとなかろうと大きな 問 題 で は ない。 もっと患者あるいは 医 療 従事 者 にとって感 染リスク 微生物検査における外部委託と院内検査 の高い部分に目を向け、そこにエネルギーを 投入す 微生物検査、特に細菌検査は機械化の困難な、 る方 が 効 率 的である。 手作業による検 査 技 師 の 熟 練 の 必 要 な 部 門 であ したがって、指 摘された 問題点には、必ず 優 先 る。近 年外 部 委 託 への 傾向がますます強くなって 順 位をつけて対 応 することにし、緊急性、リスクの きているが、本来まじめに細 菌 検 査を実 施 すれば 程度や実施可能性について考 慮 する。例えば、職員 赤 字 になる。診 療 報酬 が 実 際 の 仕 事 内 容 にとも 全員の麻 疹、水 痘、風 疹 、ムンプスの予 防 接 種 実 なっていない 。もし、細 菌検査で 赤 字にならない 施 を 提 案しても、莫 大 な予算が必要であり、また 既 外 部委 託検 査があれ ば、別の部門で 赤 字 部分を 往 歴 のある職員には 不 要であり、4つの感 染 症のう 補 填 するか、それとも細菌 検査の手順を省いてい ちどれを 優 先 的に実 施 するか、その際 の 予算 措 置 るかのどちらかである。後 者 の 場 合 は 最 悪である。 はどうするのか? など検討しなければならない部分 起 炎 菌 が 見 つからない、耐 性 菌も検出 できない が多くあり、すぐに実行とはいかない。 危 険 性 さえ生 ずる。外 部 委 託 する際 には 十 分 注 意して 頂きたい、 「安 かろう悪 かろう」である。院内 今 後 の問 題 感染対策業務の専任化 で 細 菌 検 査 を 実 施 するメリットは 大きく、すぐに グラム染 色 や 抗 酸 菌 染 色 が 可能である。培 養 検 査も同 定 検 査 結 果 が出る前に、コロニーからある 急性期を 取り扱う病院 、500床程度以上の病院 程度起炎菌を推測し、中間報告が可能であり、臨 には、少なくともI C Nが1名必要である。現在、日本 床 現 場と密に連 絡をとることで、適 切な 治 療が迅 看 護 協 会 認 定 の 感 染 管 理 看 護 師 の 育 成がおこな 速に 実 施 でき、不 要 な 治 療 をしなくて良いことに われているが、必要 数にはまだ 遠 い。しかしながら、 もなる。 認 定 をうけた 看 護 師 の 感 染 管 理 に 関する能 力 は 高く、知 識 のみならず 実 践 的 能 力をも持ち合わせ 6 病院間地域連携による感染管理 ており、不 足 数を補うために 促 成 栽 培 による感 染 各病院に専任のICNや ICDを配置できれば理想 看 護 師 育 成 は 質 の 低下、ひいては 院内感染対策全 的であるが、現時点では不可能である。中小の病院 体 の質 低 下につながるらないように、個人的には希 は各地域の中隔病院で働く専任のICNやICDと契 望する。 約し、個々の病 院 の 感 染 管 理 の指導監督を委託す 病院感染対策をさらに向上させるための 組 織作りと今後の課題 ることも、今 後 視 野 において 考える必 要 がある。ま ワクチンとしてB 型 肝 炎ワクチンがある。当 然 針 刺し た、慢性期患者を収容する施 設 でも同 様 にすれば、 事 故 による感 染 予 防 対 策上必 要 であることは 言う 個々の病 院 に 専 任 者をおかずにすみ、不十分な知 までもないが、医療従事者に対し、有料 無 料を 問わ 識 で の 無 用 な 感 染 対 策 をせずにすむこととなり、 ず、実 施していない病院がいまだに存在することは、 対費用効果もよい。 病 院 長をはじめとする病 院管理者 の責任放棄に他 ならない。労働安全衛生法上の安 全 配慮義務違 反 第三者 による評 価と診 療 報 酬 への組み込み になる可能 性も十分考えられる 7)。 現 在、院 内 感 染 対 策 管 理 は 実 施していて 当然 針 刺し 事 故 防 止 における、針 廃 棄 容 器 と 安 全 であるが、病 院 間でその 実 施 内 容と質には 大きな 器材の導入は必要不可欠である。しばしば、後者が 開きがあり、感 染 対 策 を 確 実 に 実 施 することによ 強調されすぎる傾向はあるが、針廃棄容器と安全器 るインセンティブが ない のが 現 状 である。今後、病 材 はどちらも必 要 であり、両 者 があってはじめて、 院 機 能 評価などの外部評価に関連して、診 療 報 酬 針 刺し事 故 は 減少する。これらは発生する要因が に差をつけてゆく必要がある。 異なるからであり、通常の注 射 針 は 針 廃 棄 容 器 で 防 止できるが、翼 状 針 や 留 置 針 は、その使用状 況 職業感染対策の充実 (救急 室など)によっては 安 全器材が必要となる。 職業感染(Occupational infection) は、欧米では 新規採用時の麻疹、水 痘、流行 性耳下腺 炎、風 感 染 症における医療 従事者 の保 護と患者の安全の 疹 などの既 往 歴 聴 取 や 抗 体チェック、あるいはワク 確 保 から極めて 重 要 視されているが、日本において チン接 種 は 今 後 必 要となる職 業 感 染 防 止 対 策 の はまだまだ不十分である。新規採用時に実施すべき ひとつである。 最 後 に 院 内 感 染 対 策 が 本 格 的 に 実 施 されるようになって、まだ10数 年 を 経 た ば かりである。I C Nについては、日本 ではまだ 4年、英 国では50年 近くが 経 過しており、その差 は 歴 然としているが、確 実 にその 差 は 縮まっている。院 内 感 染 対 策 先 進 国を見 習いながら、日本 独自の感 染対策 を造りあげることが 要 求 さ れ ている。フローレンス・ナイチンゲールは「病 院 は 決 して 患 者 に 害 を 与えてはならない」という言 葉 を 残しており、院 内 感 染 防 止 を 含 めた 病 院 のあるべき姿 を 端 的に 表 現し ている。 引用文献 1 )富家恵美子:院内感染。河出書房新社、1990 年 2 )小林寛伊、吉 倉 廣、荒川 宜 親:厚生労働省医薬局安全対策課 編 集 協力「エビデンスに基づいた感染制御」。メヂカルフレンド社 2002年 3 )社会保険・老人保健診療報酬「医科点数表の解釈」平成14年4月版。社会保険研究所、2002年 4 )病院機能評価 総合版新評価項目解説集。財団法人日本医療機能評価機構、2002年 5 )Ayliffe GAJ, Babb JR, Taylor LJ: Hospital-acquired infection- Principles and Prevention 3rd edition. But t ewor th - Heinemann, UK. 1999 6 )Infection Control Nurses Association(UK ): Community infection control audit pack 2nd edition, 2000 7 )増田聖子:環境の改善・社会的側面からみた「針刺し」の法的責任。 セーフティマネイジメントのための針刺し対策A t o Z 。木戸内清編集。 インフェクションコントロール 2 0 0 2 年 増 刊、メディカ出版。2002年 7
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