乳児の情動研究:非接触法による生理学的アプローチ 兵庫教育大学大学院 臨床・健康教育学系 松村京子 1.はじめに 人の情動の変化を客観的に捉えることは難しい。従来から情動を測定するために様々な 方法が試みられてきた。表情の観察,行動の観察,面接や質問紙による自己報告,心臓の 拍動,皮膚の電気抵抗,ホルモンの測定などである。それぞれ長所と短所がある。 最も簡単な方法は自己報告であるが,情動を意識化して言語化することは難しい。心の 底にある情動を隠して言わないこともある。特に,乳幼児では言語化が困難である。 表情や行動の観察は,乳幼児の情動を調べるときには有効である。測定もビデオカメラ だけで済むので比較的簡単である。しかし,この方法で読み取った情動は判別者の主観的 な要素を強く含む。被観察者が情動を意図的に表出しなかったり,異なる表情や行動を表 出したりすることもある。 一方,特定の情動変化にともなう心拍や皮膚電気抵抗などの生理的変化は意図的に表出 を止めることはできないので,情動変化の客観的な指標となる。ただし,多くの生理的測 定では,電極を装着しなければならないため,その影響が付加される。この影響が取り除 かれた状態,即ち,電極を装着せず,非接触で測定する方法は,情動研究の手法としては 有効である。本稿では,生理学的アプローチによる乳児の情動研究について述べる。 2.情動表出反応 まず,情動喚起のメカニズム(堀,1991[7]を参考)から,測定できる情動表出反応を見 てみよう(図1) 。 図1 情動喚起メカニズム 1 私たちは,他者の言葉や態度,あるいは音楽や映像などによって,悲しくなったり,楽 しくなったり,腹を立てたりする。これは,体外に起きた環境変化が目,耳,皮膚などの 末梢の感覚器を刺激して生じる情動変化である。また,同じ他者からの言葉であっても, 私たち自身が満腹でゆったりしているときに聞く場合と空腹のときに聞く場合とでは,情 動の生じ方が異なる。このことは,体内の状態が内臓の感覚器を介して情動喚起に影響を 及ぼすことを示している。また,体内の変化が直接情動を喚起することもある。 このように感覚器で受容された様々な信号が脳に伝わり,それらの信号が脳内で統合さ れる。そして,今までの記憶と照合・評価されて,嬉しい,悲しいなどの情動体験が生ま れる。脳内で喚起された情動体験は,顔の表情や身振り,手振り,声などの行動,即ち, 筋活動を起こす。また同時に,自律神経系や内分泌系の生体反応を引き起こす。私たちは, 相手の情動体験を直接知ることはできない。情動にともなうこれらの表出反応を測定する ことで,相手の内面にある情動体験を推測することができる。 3.情動にともなう生理的変化 (1)筋運動系 情動は筋運動を支配している体性神経を介して,さまざまな表情,態度,身振り,動作 として外に表れてくる。実際に私たちは相手の情動状態を知るために,表情,態度を観察 し,読みとっている。このような情動の変化を,顔面筋運動を指標として捉えようとする アプローチがなされている。Ekman と Friesen(1978)が開発した Facial action coding system (FACS)もその一つである。眉,上瞼,唇,頬など,44 個の顔面のアクション・ユニット の変化を観察し,表情を客観的に捉えようとした。Izard(1979) [8] は,顔面を「額・眉・鼻 根」,「目・鼻・頬」,「口・唇・あご」の 3 つに分け,各領域の概観の変化で情動を分析す る The maximally discriminative facial movement coding system (Max)を開発し,表情によ る情動測定を行っている。そして,Izard ら(1980) [9]は,Max の微視的方法に対して, 顔面を分けないで顔全体で捕らえる巨視的な方法による A system for identifying affect expressions by holistic judgments (Affex)という方法を開発している。 しかし,筋運動系の反応は,意思によってコントロールできるため,情動変化がおきて いても表情や動作を変化させないこともある。また,情動表出行動は,成育環境による影 響が大きく,個人,年齢,民族,教育などによって異なる。一般に,年齢が高くなるほど, 教育の程度が高いほど,そして,東洋民族では,情動は筋運動としては表出されにくくな る。 ところが,乳児について言えば,大脳皮質の発達が十分でないため,表情や行動を自分 の意志に反してコントロールするとは考えられない。乳児が空腹,便や尿による不快感, 痛みなどの苦痛を訴える場合には,泣くことを抑えることはできない。したがって,乳児 の場合,筋運動系で表出される情動は,乳児の情動体験そのものを示していると考えられ る。ただし,乳児では,喚起される情動体験が原初的情動に限られたものであり,筋運動 系の能力も未発達であるため,複雑な表情を表出することはできない。 乳児期の筋運動系の表出で,唯一注意しなければならないことは,養育者を求める行動 である。これは,直接的な情動喚起によるものではない場合がある。乳児は泣くことによ って養育者に不快感を知らせ,養育者にそれを取り除いてもらうように情動行動を表出す 2 る。乳児の情動行動が刺激となって養育者にはたらきかけ,乳児の情動を平静化させる行 動を促す。最初から乳児が意図的に行っているのではないが,やがて乳児はこの仕組みを 理解するようになる。養育者に向かってしきりに泣き,微笑みを表出するようになり,親 の行動を利用して情動のコントロールを図るようになる。乳児は明らかに自分の泣きに対 して他者からの反応を期待しているような行動を示すようになり,養育者を求めて泣きの 表出を行う。これは情動喚起と同時に起こる筋運動系の変化とは異なる。 (2)自律神経系 情動喚起にともなって自律神経系にも様々な反応が起こる。例えば,驚きの情動では, 瞳孔が開いて大きくなる。恐れや緊張状態では,立毛筋の活動によって鳥肌が立ったり, 精神性の発汗が起きたり,皮膚血管が収縮して顔面蒼白になったりする。また,心臓の拍 動数が増加し,気管支が拡張する。一方で,胃や腸の運動が抑制され,副腎からアドレナ リンが分泌される。これらは全て交感神経系の活動が促進した結果,生じる変化である。 恐ろしいものに出会ったとき,恐怖の主観的情動体験と同時に,闘争するか逃走するかと いった選択を迫られる。このように情動が生体の準備体勢を整えるために,動機づけとし て作用していることが分かる。実際に情動のこの働きがあることによって動物は生き延び てきたのである。 このような自律神経系の反応は,意志によってコントロールできない。したがって,情 動変化を客観的に捉えることができる。その中で,被験者に負担がかからない非接触の測 定が可能な指標としては,サーモグラフで測定する顔面皮膚温がある。自律神経系の皮膚 血管運動が皮膚温に反映するので,それを指標として情動を捉えるのである。これについ ては後で再度,触れる。 (3)内分泌系・免疫系 情動にともなう内分泌系の変化としては, 副腎皮質から分泌される糖質コルチコイド (コ ルチゾール)分泌がある。古くからストレスホルモンとして知られてきたものである。視 床下部で産生される CRH(corticotropin releasing hormone)が脳下垂体に作用して ACTH (adrenocorticotropic hormone)が分泌され,それが副腎皮質に作用してコルチゾールが分 泌される。 コルチゾールは,情動状態を反映する生化学的指標と考えられている。血液からではな く,唾液からコルチゾールを測定することができるようになったことが,情動研究にとっ ては重要である。コルチゾールは副腎皮質から分泌され,血液を介して,唾液腺に運ばれ る。唾液に含まれる微量のコルチゾールは酵素免疫測定法(ELISA)か高速液体クロマト グラフィーで測定できる。これで,被験者に苦痛を与えることなく,客観的に情動変化を 把握することができるようになった。 唾液中のコルチゾールは,副腎皮質での分泌から少し遅れて増加する。Young と NolenHoeksema(2001)[29]は,面接による唾液中コルチゾール濃度の変化を,5 分毎に唾液を採 取して調べている。面接開始から 20 分後にコルチゾール濃度はほぼ最大値に達し,面接 終了 20 分後から低下を始めている。即ち,唾液中のコルチゾールは,この約 20 分の時間 の遅れを考慮して評価する必要がある。 コルチゾールでもう一つ,留意しないといけないことは,コルチゾール分泌がサーカデ ィアンリズムを示すことである。コルチゾール濃度は早朝が最も高く,日中は減少する。 3 したがって,サーカディアンリズムの影響がない,同時間帯での測定が原則である。 唾液中のコルチゾールを測定して,情動変化を調べた研究として,Buchanan ら(1999) [4] の研究がある。被験者にユーモラスなビデオを視聴させ,「快」情動を,スピーチ課題を 課すことによって「不快」情動を喚起させた。その結果,ユーモラスビデオの条件ではベー スラインからコルチゾールが減少,スピーチ課題の条件ではコルチゾール増加が認められ た。 また,Smyth ら(1998)[24]は,1 日に 6 回,情動状態と唾液を採取し,コルチゾール濃 度を測定している。その結果,コルチゾール濃度は「快」情動が強いほど低下し,「不快」情 動が強いほど増加することを報告している。 その他,同様に唾液から定量できる情動変化の生化学的指標としては,ネガティブな情 動では内分泌系のクロモグラニン,ポジティブな情動では免疫系のイムノグロブリン A (IgA)がある。唾液中の IgA は,コルチゾールやクロモグラニンとは逆に,ポジティブ な情動で増加するので,組み合わせて測定するとよりよい手法となる。例えば,日常の「快」 情動時に分泌増加,「不快」情動時に分泌減少が見られることが報告されている(Stone et al., 1987)[28]。唾液 IgA とクロモグラニンは,ELISA で測定する。 4.乳児の情動発達 乳児期にはどのような情動が喚起するのであろうか? 新生児は未分化な興奮を示すだけ(Bridges, 1932) [3]とされてきたが,近年の詳細な行 動観察の結果,新生児にも苦痛,興味,「快」の情動があると考えられている。Sroufe(1995) [25] によれば,新生児にも,身体的拘束や不快による苦痛,驚き,痛み,凝視,内因性の 微笑が見られる。そして,2 ヶ月で外界への関心による「快」,3 ヶ月で欲求不満反応,4 ヶ月で驚き,大喜び,活発な笑い,7 ヶ月で怒り,喜び,9 ヶ月で人見知りなどの恐れ,12 ヶ月で腹立たしさ,不機嫌,不安,恐れ,得意の情動が見られる。 Lewis(2000)[12]も,誕生時には,満足,興味,苦痛が備わっていて,約 1 年の間に, 喜び,興味−驚き,悲しみ,嫌悪,怒り,恐れといった情動が認められると提唱している。 そして,自己の発達と関連付けて,1歳半頃,自己意識が発達し,内省が可能になってく ると,てれ,羨望,共感の情動が現れ始める。そしてさらに,2歳半から3歳頃,自己評 価や社会的ルールなどを内在化してくると,当惑,誇り,恥,罪悪感が出現してくる。こ のようにして,情動は3歳までに出そろう。 5.顔面皮膚温を指標としたアプローチ 情動を客観的に把握しようする試みとして,映像などを用いて情動を喚起させ,情動変 化にともなう心拍,呼吸,血圧,皮膚電気反射,発汗などの測定が行われている。しかし, これらの測定は,生体に電極をつけた状態で行われるため,被験者に心理的なストレスを 与えることになる。特に,乳幼児では,装置を装着させること自体,非常に困難である。 乳幼児では,体に接触しないで情動変化を捉える測定方法が最適である。赤外線サーモグ ラフは,非接触の自然な状態で情動性末梢血管運動による顔面皮膚温の変化を測定するこ とができるため,情動変化の測定には適切である。 Bremner (1994) [2] も,乳児の表情を中心とした情動研究における客観性欠如の一つの解 4 決策としてサーモグラフをあげて,Mizukami ら(1987) [15] の母子分離時の乳児の情動研究 を紹介している。この研究は,サーモグラフを使った最初の乳児の情動研究である。母親 が突然いなくなると,乳児にどのような心理的影響が及ぶのか,サーモグラフで 2 4 ヶ [15] 月児の顔面皮膚温を測定し,母子分離の影響を検討している(Mizukami ら, 1987 [16] Mizukami ら,1990 [10] ; 小林, 1996 ; )。その結果,母親が退室して乳児が一人になると, 乳児の額の皮膚温は低下した。交換神経活動が高まり,顔面皮膚血管の収縮が起きている ことが分かる。乳児の情動変化に起因すると考えられる。 我々は,「快」と「不快」情動の典型的な表出行動である「笑い」と「泣き」にともなう乳 児の顔面皮膚温をサーモグラフで測定し, 乳児の月齢による変化の特徴を明らかにした (中 西ら, 2002a[19]; 2002b[20]; 松村,2003[14]) 。2 10 ヶ月の健常児 11 名を対象とし,乳児の「笑 い」「泣き」の表出時の顔面皮膚温を赤外線サーモグラフ(NEC 三栄)で測定した。測定 は,人工気候室(室温 25℃,湿度 55%)内で行った。乳児をベビーチェアーか母親の膝 に座らせ,あやし遊びの中で「笑い」 ,「泣き」の誘発を行った。その間,1 2時間,乳 児の顔面皮膚温を毎秒 1 画像として連続記録した。同時に,乳児の表情と大人の行動を箱 型隠しカメラで撮影し,4 画面合成装置を介して,録画した。意図的にあるいは自然に誘 発された乳児の「笑い」,「泣き」が出現する場面を抽出し,そのときの顔面各部位の皮膚 温変化を調べた。額,頬,鼻の各部位の皮膚温を分析した結果,鼻部皮膚温の変化が最も 著しいことが明らかになった。これは,顔面では鼻部に動静脈吻合が存在し(Bergersen, 1993)[1],交感神経支配による皮膚血管運動が顕著であるためと考えられる。そこで,鼻 部皮膚温を指標として変化をみることとした。2 膚温の変化は見られなかった。4 められた。8 3 ヶ月児では,「笑い」表出時に鼻部皮 6 ヶ月児では,「笑い」表出時に鼻部皮膚温の低下が認 10 ヶ月児でも同様であった。大人においても「笑い」表出時に鼻部皮膚温の 低下が見られた。この鼻部皮膚温の低下は交感神経系の活動促進にともなう皮膚血管の収 縮に起因すると考えられる。このことから,乳児の交感神経活動が亢進し,乳児が興奮状 態にあることを示しており,喜びの情動が喚起されていることを示唆している。 先に述べた「喜び」情動の乳児期の発達を考えると,これらの結果は内因性の微笑から 外因性の微笑へと変化していく経過と対応している。Sroufe(1995) [25] によれば,生後 4 ヶ月で大笑いが始まる。この頃からそれ以前よりも強い「快」情動喚起が始まることを報 告している。 一方,「不快」情動である「泣き」表出時には,このような顕著な鼻部皮膚温の変化は認 められなかった。泣き出す前の情動変化を測定できていないのかもしれない。「泣き」状 態の乳児では,全身の筋活動が高まり,代謝が増加し,それにともなう皮膚血流量が増加, 皮膚温上昇につながる。 ここで,乳児の皮膚血管運動の発達について考えてみよう。皮膚血管運動は情動変化に よるものだけでない。環境温の変化によっても起こる。これは生命の維持にとって欠かせ ない反応で,絶えず行われている自律性の運動である。私たちの体内で起きている様々な 生化学反応には,深部体温が 37℃に保たれていることが不可欠である。皮膚血管運動は, 皮膚血管の収縮の程度を変えることで血流量を変化させ,皮膚表面からの体内の熱の放散 をコントロールし,体温を維持するのに機能している。 乳児においても皮膚血管運動は働いているのであろうか? 5 生後間もない新生児においても,体温調節のための皮膚血管運動は起きる(中山・松村, 1986[21]; 1989[22])。しかし,成人と比べると,その能力は十分ではなく,調節可能な範囲 は狭い。 このように新生児は既に皮膚血管運動の能力を有している。ところが,我々の実験結果 において,2 3 ヶ月児に「快」情動にともなう鼻部皮膚温低下がみられていない。即ち, この時期には,情動喚起による交感神経系の亢進が起きていないことが示唆される。 さて,サーモグラフを用いた成人の情動変化を観察した最近の研究も紹介しておきたい。 アメリカで行われた研究で,嘘をつくことで喚起される心の動揺をサーモグラフで捉えよ うとした研究がある(Holden, 2001)[6] 。従来,ポリグラフで行っていた,嘘発見法に代 わる新しい手法の可能性を探っている。Pavlidis ら(2002)[23]も,擬似犯罪を行わせた被 験者に罪を犯していないと嘘をつかせた時の顔面皮膚温をサーモグラフで測定している。 嘘をついて心理的動揺があると目の周囲温が上昇することを報告している。その基礎研究 として,「驚き」情動が喚起されたときに,頬の皮膚温が低下し,目の周囲温が上昇する (Levine ら, 2001)[11]。一方,チューインガムを噛んで顔面の筋肉が活動した時には下顎 の皮膚温が上昇し, 「驚き」情動喚起時とは異なることを報告している。これらの研究は, 空港やビルの警備を目指して行われている(Pavlidis et al., 2002)[23]。 我々も乳児の「泣き」場面の映像を見せたときの成人の顔面皮膚温の変化を調べた(村 島・松村, 2001[17]; 2002[18])(図2)。この被験者は映像を視聴中,表情を変えることはな かったが,サーモグラフで捉えた鼻部皮膚温では明らかに心理的動揺を示している。この ことは表情・行動分析では捉えることができなかった情動変化をサーモグラフによって検 出することができる可能性を示すものである。今後,サーモグラフが乳幼児,成人を問わ ず情動研究に有効な手法となると期待される。 刺激前 泣き刺激 刺激後2分 図2 乳児の「泣き」に対する鼻部皮膚温変化 6 6.唾液中のコルチゾールを指標としたアプローチ 乳児の情動研究における非接触法によるアプローチとして,唾液中のコルチゾール 等の測定があげられる。この手法を使って乳児の情動変化を調べた研究が最近多く報 告されている。 例えば,Lewis と Ramsay(1995)[13]は,2,4,6 ヶ月児の唾液から診察と予防注射 によるコルチゾール値への影響を調べ,2 ヶ月児でさえも診察時にはコルチゾールは 増加し,注射を受けるとさらに増加したことを報告している。 Gunnar(1992)[5]は 9 ヶ月児で仮眠による唾液中コルチゾールの低下が起きること, 母親との分離によってコルチゾール値は上昇するが,応答性の良いベビーシッターが いればその上昇は抑えられることを報告している。 Spangler と Grossmann(1993) [26]はストレンジ・シチュエーション法によるアタッ チメントのタイプと乳児のストレス度を 12 ヶ月児で調べている。その結果,安定型 の乳児ではコルチゾールの上昇は見られなかった。また,Spangler ら(1994)[27]は, 応答性の異なる母親のもとで遊んでいる子どものストレス反応を,3,6,9 ヶ月児で 調べている。3 ヶ月児において既に,応答性の良い母親がいるところで遊んでいる乳 児ではコルチゾール値が低下している。 このように,2,3 ヶ月児においても,唾液中のコルチゾールを測定することによ って,乳児の情動状態を把握することができる。今後,さらに多くの研究が進められ ると思われる。 以上,非接触法による生理学的アプローチで行われている乳児の情動研究について 述べてきた。自律神経系や内分泌系の指標は客観的であり,情動が喚起の有無,情動 の程度を調べるためには適した手法といえる。しかし,生理的反応がどのような情動 と対応しているのかまでは分からない。筋運動系の測定が同時に行われることによっ て情動の種類を特定しやすくなる。したがって,これらを同時に測定することによっ て,乳児の情動研究が進むことが期待できる。 引用文献 [1]Bergersen, T. 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