充填プロトコルと充填技術

JARI Research Journal 20130608
【解説】
充填プロトコルと充填技術
Fueling Protocol and Technology for Fuel Cell Vehicle
福本 紀
Hajime FUKUMOTO
1. はじめに
3. 充填プロトコル検討経緯
2015 年 に おけ る 燃 料 電池 自 動 車 (Fuel Cell
3. 1 黎明期
Vehicle 以下 FCV)の市場形成を目指し,各種の規
国内の市中における充填は,2002 年に着手され
制緩和や基準・規格整備等,必要不可欠な基盤整
た JHFC 実証プログラムを先駆けとし,35MPa
備が進められているが,なかでも,水素ステーシ
車両に対する充填作業が開始された.当時は参加
ョンにおいて安全で効率的な充填手順を規定する
車両の種類が限定され,充填頻度も小さいことか
商用充填プロトコルの策定は重要な検討課題とさ
ら,汎用的な充填手順までは検討されず,車両提
れている.
供各社が自社の車両に適正な流量を指定し,充填
筆者は,平成 17 年度から NEDO 水素社会基盤
構築事業・水素製造輸送貯蔵技術開発事業等の一
毎に作業者が手動で充填条件を設定した.(図 1 参
照)
環として高圧水素標準化活動に携わり,SAE にお
一方,米国でも同時期に CaFCP (California
ける充填プロトコル議論に参画するとともに,国
Fuel Cell Partnership)が着手された.こちらも当
内外の充填技術を調査する機会を得た.
初は各社車両毎に適正流量が指定されたようであ
本稿においては,充填プロトコル策定の経緯と
るが,汎用化を目指して外気温に応じた昇圧率選
現状を紹介し,併せて,当該充填を実現するため
択方式が採用された.CaFCP においては,有線
に開発された充填技術について概要を紹介する.
方式の車両-ディスペンサ間通信も実証され,現在
の充填プロトコルに関する基本技術の萌芽が伺わ
れる.(図 2 参照)
2. 充填プロトコルとは何か
充填プロトコルとは,車載高圧水素容器に燃料
である水素を安全に効率良く充填する条件を提示
するものである.
高圧水素容器の安全は,使用温度の制限(-40~
+85℃)と基準温度における圧力が充填圧力以下
となる過充填防止の二点により担保されることか
ら,温度と圧力両者の安全を同時に満足しなけれ
ばならない.水素ガスは圧縮時の温度上昇が著し
図1
く,圧力と温度は連成して変化することから,効
率的な急速充填は,ガス温度の急上昇を意味し,
安全を担保する充填条件の選定は工夫を要する.
一方低温状態で充填を完了した場合,基準温度に
復帰すると充填終了時よりも圧力が上昇すること
から,過充填とならないよう安全を担保すること
も重要である.
JHFC 初期の
充填方法
図2
CaFCP 初期の
充填方法
3. 2 SAE Release A
CEP(Clean Energy Project)等 欧 米に おけ る
70MPa 実 証 プ ロ グ ラ ム 開 始 に 先 立 ち , SAE
J2601 の場で適切な充填プロトコルが議論された.
GM/Opel・Daimler らは,車両-ディスペンサ間
の赤外線通信を前提とし,車載水素の温度・圧力
*1 元 一般財団法人日本自動車研究所 FC・EV 研究部
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の安全を担保する充填手順を提案した.本提案は,
本提案は,通信不調時の安全な充填を担保し,
SAE J2601 に参画する OEM(自動車メーカー)の
通信充填へ拡張性も期待出来ることから,
賛同を得て,2007 年に OEM 連名文書 Release A
GM/Opel・Daimler ら欧米 OEM の共感を得,彼
プロトコルとして発行された.
らはシミュレーション技術を駆使して,初期条件
Release A における通信充填の考え方は,以下
のとおりである.(図 3 参照)
に 対 応 す る昇 圧 率 ・目標 停 止 圧 力を 算 出 し,
Lookup Table として逆提案された.(図 5 参照)
1) ステーション側で目標圧力(P_target)を計算
2) 圧力が P_target に到達するまで,Release A
3. 4 SAE TIR-J2601 の考え方
先に述べた経緯を経て,Lookup Table を根幹
で規定する昇圧率で充填
3) 圧力が P_target に到達した場合,低昇圧率に
切替え充填を継続し,車両側停止信号(Abort
とする充填プロトコルが議論された結果,2010
年 3 月に TIR-J2601 として発行された.
本節では,TIR-J2601 における安全担保(安全余
信号)により充填終了
裕)に関わる想定について整理しておきたい.
3. 4. 1 非通信充填時の安全担保
ディスペンサで感知出来る温度情報は外気温で
あることから,外気温から容器内ガス温度への補
正方法が議論され,充填実績を解析することによ
り,外気温が高い場合の補正量(Hot Soak)と低い
場合の補正量(Cold Soak)が決定された.
またシミュレーション結果から Lookup Table
の諸元を決定するにあたっては,安全余裕を見込
むために,SOC=90%に到達した場合に充填を停
止することとされた.
図 3 Release A プロトコルによる充填手順
3. 3 Lookup Table 概念の誕生 SAE TIR-J2601
通信ありきとして 70MPa 充填プロトコル開発
3. 4. 2 プレクール区分
を進めた欧米に対し,国内議論においては,通信
TIR-J2601 議論においては,表 1 に示すプレク
を必須要件とすることに違和感が示され,また通
ール温度区分が提案され,議論の結果,当面の
信不調時も想定した非通信充填時の安全を担保す
70MPa 用 途 デ ィ ス ペ ン サ と し て , Type
るプロトコル策定が必要という意見が主流となっ
A(-40℃)・Type B(-20℃)を想定することとされた.
た.
このような議論を通じ,ディスペンサ側で入手
表1
可能な情報(外気温・初期圧力等)により,適正な
区分
公称温度
温度範囲
充填条件を参照出来る充填マップの概念(図 4 参
Type A
-40℃
-40℃ ~ -33℃
照)が創出され,2007 年 11 月 SAE J2601 会議に
Type B
-20℃
-22.5℃ ~ -17.5℃
提案した.
Type C
0℃
-2.5℃ ~ +2.5℃
Type D
なし
-
TIR-J2601 議論におけるプレクール区分
3. 4. 3 昇圧率一定制御
図 4 充填マップの概念
(日本提案)
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図 5 Lookup Table
(SAE 作成)
TIR-J2601 における充填圧力は,図 6 中の一点
鎖線のように制御され,充填開始時に瞬時高圧を
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付加してリークチェックを行い,充填開始後は,
4. 充填技術の整理(海外技術調査)
ガス温度上昇に影響する昇圧率を一定に制御する
これまで,TIR-J2601 検討経緯を中心に,充填
ことを基本とする.図 6 中破線のように圧力公差
プロトコルの想定(要求事項)を述べてきたが,プ
範囲(Pressure corridor)が規定されており,充填
ロトコルを実現する充填技術はどのような状況で
中の圧力(図 6 中曲線)がこの公差範囲を逸脱した
あったかを振り返りたい.
場合には充填を中止しなければならない.
4. 1 差圧充填法
先述のとおり,国内における充填実証は JHFC
プログラムにより,35MPa 充填を中心として開
発が進められたが,その根幹技術は,充填圧力よ
圧力
りも高圧の蓄圧器に水素ガスを貯蔵しておき,車
載容器との差圧を利用して充填する差圧充填法で
あった.本充填法は,高圧大容量の蓄圧器を要す
るものの,比較的小容量の圧縮機を用いて蓄圧出
来ることが特徴である.
JHFC プログラムで新規に建設された 35MPa
充填時間
図6
仕様の水素ステーションにおいては圧縮水素ガス
TIR-J2601 における圧力制御概念図
貯蔵方式が主流であり,液体水素貯蔵方式を採用
3. 4. 4 安全検証試験
した有明ステーションのような一部例外を除き,
前記の議論を通じて,
日米欧関係者の合意を得,
全て差圧充填法が採用された.
TIR-J2601 規格発行の運びとなった.ステーショ
ンにおける実運用に先立ち,SAE は Powertech
4. 2 千住ステーション 70MPa 増強工事
に委託し安全検証試験を実施する一方,国内にお
FCV への水素搭載方式として,70MPa 圧縮水
いては,JARI において急速充填試験を実施し,
素が主流になる趨勢を鑑み,日本においては,
いずれの充填条件においても,ガス温度は 85℃を
2008 年に既存の千住ステーション(35MPa)を
超過しないこと,SOC は 100%を超過しないこと
70MPa 対応とする増強工事が着手され,本工事
を確認し安全を検証した(図 7 参照).本結果は,
着手に先立ち,JARI が主催する高圧水素標準化
充填に関する国内自主基準(JPEC S003)発行時に
WG に当該工事を主導する ENAA が参画し,自動
引用され,JPEC S003 をベースとする例示基準発
車メーカー委員らと 5kg/3 分の充填目標を設定し
行に貢献した.
た.
国内初の 70MPa 充填ステーション導入は難航
し,2008 年 9 月に行われた第一次工事試運転で
は,ガス流量が著しく不足することが判明した.
その後関係者の努力により,配管径の増強や蓄圧
器増設等,第二次・第三次の増強工事を追加実施
し,2010 年 1 月に当初目標達成を確認すること
を得た.
4. 3 海外技術調査(圧縮機直接充填・プレクール)
SAE J2601 議論において,欧米は一定昇圧制御
を基本とするプロトコル議論を受け入れているも
図7
TIR-J2601 Lookup Table 安全検証試験結果
JARI Research Journal
のの,流量確保に苦労する千住ステーションの実
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情を鑑み,70MPa 一定昇圧を実現する技術が存
在し得るのか疑問を生じた.2009 年 3 月に開催
された SAE 会議において,GM/Opel 担当者から,
図 8 に示す充填実績を紹介され,Linde ATZ 社(ウ
ィーン)の供与技術である旨を教示されたことか
ものの,その運用方法は未確認であり,(低圧縮
比・大吐出量)と(高圧縮比・小吐出量)という圧縮
条件を 1 台の圧縮機で兼用する方法や,市販カー
ドルの転用が可能な 30MPa 級中間バッファの採
用等,ここで紹介された運用方法には,目から鱗
が剥がれる思いであった.
ら,訪問調査を企画した.
図8
GM/Opel による 70MPa 充填例示
図 10
Linde ATZ における圧縮機直接充填法概念図
図 9 は,筆者が Linde ATZ 社を訪問した際に持
参した,
自己の理解を整理したスライドであるが,
差圧充填法の概念が抜けず,非常に混沌としてい
たことが思い出される.
図 11 Ionic Compressor 模式図(JHFC 調査報告より)
表 2 は,Dr. Robert Adler から聞き取った差圧
充填法と圧縮機直接充填法の得失を整理したもの
である.
図9
圧縮機直接充填法は,高圧蓄圧器と車載容器の
Linde ATZ 社に持参した説明資料
差圧(位置エネルギー)を大容量圧縮機(動エネルギ
4. 4 圧縮機直接充填法と Ionic Compressor
2009 年 8 月 31 日に初めて Linde ATZ 社を訪問
し,Dr. Robert Adler と面談した際,着席早々に
紹介され感嘆したのが図 10 の概念図である.
ー)により代替する充填法と理解出来た.また
Linde との意見交換においては,比較的充填頻度
の少ない FCV 普及初期のコスト低減に適した充
填法と説明された.
水素ガスは,一旦中間圧(30MPa)に昇圧した状
態で貯蔵しておき,車両へ充填する際には,低圧
縮比(30MPa→87.5MPa)・大吐出量の圧縮を行う
表 2 差圧充填法と圧縮機直接充填法の得失比較
70MPa 充填時
差圧充填
圧縮機直接充填
電力消費
22kw/時
(ピーク)90kw/時
蓄圧器
90MPa(高価)
30MPa(安価)
ことにより,3 分充填を可能にするものである.
ここで使用されているのが,図 11 に示す Linde
ATZ 社が開発した Ionic Compressor であり,
JHFC の海外調査でその存在は報告されてはいた
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4. 5 プレクール技術
ステーションを構成する機器類と充填制御の概念
Linde ATZ 社訪問時に受けたもう一つのインパ
を整理したものである.
クトは,図 12 に示すプレクール技術であった.
-40℃冷却を可能とする冷媒は,熱交換器内で水素
ガスを冷却すると同時に,プレクーラからディス
ペンサまでを二重配管とし,水素配管の外側に冷
媒を循環させることにより外気温の影響を遮断し
て常に安定したプレクール温度を維持する構造が
実現されていた.
図 14
Ionic Compressor 制御体系(Linde ATZ 社)
貯蔵された水素ガスは図中左方向から Ionic
Compressor に供給され,アイドル時にはバッフ
ァタンクを昇圧し,車両への充填時には,水分分
図 12 プレクール配管模式図(Linde ATZ 社)
離器を介して流量調整弁を経由し,プレクーラを
図 13 は二重管構造の模式図とその実装写真で
経て車両に供給される.図中の PRR(Pressure
あるが,国内では見かけたことのない 1 インチ配
Ramp Regulator)が Linde ATZ の技術であり,
管とそれを取り巻く 2 インチ径のベローズを見せ
Ionic Compressor 出口ならびにディスペンサ出
られ,ここまで徹底するのかとゲルマン民族の徹
口の圧力を検知して Ionic Compressor の吐出量
底ぶりに感動したことが鮮明に思い出される.
と流量調整弁を制御し,昇圧率一定制御を可能と
している.
この際,プレクール水素配管系を二重配管とし
て温度の安定を図るのは前述のとおりである.
5. SAE J2601(2013)発行に向けた課題
2010 年 3 月に TIR-2601 が発行され,日米欧の
OEM・ステーション供給者の賛同を得て,業界世
界標準規格の地位を確立したが,その一方で,イ
ンフラ側関係者から,現行 TIR-J2601 規格の前提
条件は充填設備への要求が厳し過ぎる等の不都合
が指摘され,2015 年の FCV 商用化時を想定し,
より実践的で効率的な充填プロトコルとして正規
規格を発行するべく,改訂作業に着手された.
図 13 プレクール配管二重構造(Linde ATZ 社)
以下に現在検討されている主要な改訂内容を記
4. 6 Ionic Compressor による充填制御
述し,本稿のまとめとしたい.
Ionic Compressor・プレクール等,Linde ATZ
社が開発した要素技術を紹介したが,ステーショ
5. 1 温度管理部位
ンにおける制御体系を述べて本項のまとめとした
現行 TIR-J2601 ではノズル先端部のガス温度
い.図 14 は,Linde ATZ 社再訪時に聞き取った
を基準温度と想定しているが,現実にはノズル先
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端温度を測定することは不可能であることから,
TIR-J2601 には,図 17 上段に示すとおり,
欧米関係者を中心として,温度管理部位をディス
A(-40℃),B(-20℃),C(0℃)の三種類のプレクー
ペンサ出側部とすることが提案された.(図 15 参
ル区分が規定されているが,区分間には空隙が存
照)
在し,例えば,ガス温度が-33℃~-22.5℃の場合
には参照するプレクール区分が存在しない.
このような不都合を解消するため,日本から
-30℃プレクール区分を追加することを提案した.
提案当初,欧米 OEM をからは,プレクール区分
の細分化に反対する意見もあったものの,プレク
ール区分の連続性や充填効率の適正化等の利点が
認識され,J2601(2013)発行時には,当区分を設
定することに合意された.
図 15 管理温度測定部位
5. 3 Fallback 充填法
図 16 急速充填試験設定
国内ステーション供給者からは,ガス流量の大
ガス温度規定部位変更は妥当な想定であるが,
小により冷却効率が変動することから,充填途中
Breakaway・ホース・ノズル等,ディスペンサ~
にガス温度が公差を外れ,充填中断が頻発する懸
ノズル先端間の機材によるガス温度変化をどのよ
念が示された.
この課題解決のために,図 18 に概念図を示す
うに補正するかが技術的課題となった.
シミュレーションにより充填機材の熱容量影響
Fallback 充填法が創出された.本法は,例えば,
を評価するとともに,図 16 に示すように急速充
プレクール温度が T40 公差から外れ T30 区分と
填試験を実施して検証し,日本からも当該機材を
なった場合には,T30 で設定される昇圧率による
無償供与し協力した.
充填終了点を算出し,公差外れ点と充填終了点を
結ぶ昇圧率を再計算して充填を継続する方法であ
5. 2
る.
-30℃プレクール区分
日本国内にて TIR-J2601 要求を検討した際,ス
テーション供給者からプレクールガス温度の管理
公差が狭く,公差を外れた場合には充填中断とな
ることが問題である旨コメントされた.
図 18
Fallback 充填法概念図
欧米 OEM からは,Fallback 切替により,温度
超過等の危険が生じないか懸念が示されたが,
JARI において急速充填試験を実施し,安全検証
図 17 プレクール区分の検討
データを開示することにより本手法採用の合意を
得た.
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本機材を製品化し 2 基を地下に装備した実証ス
5. 4 SAE J2601-2013 発行に向けて
5.1 節から 5.3 節に記した改訂議論を踏まえ,
2013 年 2 月に Lookup Table を試算したところ,
テーションが Sachsendamm(ベルリン)に建設さ
れ,2011 年から Shell により運用されている.
目標である 25℃外気温における充填時間は 5 分
程度と算出され,当初目標の 3 分に比較して大幅
6. 2 パッケージ型ステーション事例
図 20 は,Cuxhavener(ハンブルグ)にある Total
な緩速充填となることが判明した.
3 月に開催された SAE 会議においては,充填時
間短縮の努力目標が確認されるとともに,4 月以
ガソリンスタンドに併設された,Linde 社製パッ
ケージ型水素ステーションの一例である.
降 Lookup Table 作成に着手し,6 月を目処に最
液体駆動方式の利点を活かし,非常にコンパク
終ドラフトを確定して J2601 正規規格を発行す
トにまとめられた IC90 型 Ionic Compressor を中
る目標日程が設定された.
心に,プレクーラ,85MPa 蓄圧器(50L×18 本),
昇圧制御ユニット,補機類を 3m 立法の筐体内に
収納していることが特徴である.
6. 海外における充填技術の動向
以上,J2601 充填プロトコルを俯瞰し,現実の
工場出荷時には,天井に冷却系チラーを搭載し
ステーションにおいて実現する充填技術の検討状
た状態で搬出されるため,現地工事は,電源類の
況を整理したが,本稿を終えるにあたり,海外の
配線と中間圧(30MPa)水素貯蔵を準備するだけで
充填技術動向に触れたい.
良い.従来工法に比較し,大幅に現地施工期間を
短縮出来ることが特徴のようである.
6. 1 液水加圧充填法
FCV 大量普及期には,輸送効率等の観点から液
体水素による輸送・貯蔵が優位と考えられており,
車両への充填手段として,Cryo Pump(液体水素
直接加圧)が検討されている.
図 19 は,ミュンヘン郊外にある Linde 事業所
で見学した Cryo Pump の試作機であり,1.7kg/
分の吐出能力を有する.
図 20 パッケージ型ステーションユニット例(IC90)
7. 謝辞
本稿に記述した SAE J2601 プロトコルに関す
る検討ならびに海外技術調査は,NEDO 水素社会
基盤構築事業・水素製造輸送貯蔵技術開発事業の
一環として実施したことを記し謝意を表する.
図 19
Cryo Pump (Linde 社)
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