変形性膝関節症と治療 整形外科 日向野 雅典 脳と嚥下体操について

変形性膝関節症と治療
整形外科
脳と嚥下体操について
CTとMRIの違い
開放型病院について
お 知 ら せ
日向野 雅典
看護部
浅井 晴美
放射線科
田中 直也
地域医療連携室
青木 貴裕
〈休日診療日
その他〉
膝(ひざ)の痛み:変形性膝関節症と治療
医局長
整形外科 部長
日向野 雅典
変形性膝関節症は中年以降に起こる膝の疾患でもっとも多く、関節軟骨の磨耗、骨棘の形成、
変形、関節の動きの制限などをきたす疾患です。
症状
・関節の痛みとこわばり
・関節の張れ
・生活、活動の制限
・生活の質の低下
・関節の変形
診断
-病歴の問診
・症状
・健康状態
・活動
-関節の検査
・関節可動域の測定
・触診
・関節の変形度
-エックス線(レントゲン)撮影
・関節軟骨の磨耗のよる関節の隙間の
狭小化、骨棘の形成や変形
治療
1)保存的治療(手術をしない方法)
ⅰ)日常生活指導
正座、長時間歩行、階段昇降等痛みを生じる動作はなるべく控える。
杖などを使用して膝にかかる負担を軽くする。減量する。
ⅱ)薬物療法
消炎鎮痛剤の内服や湿布などの外用薬。
関節内注射:ヒアルロン酸の注射(関節軟骨の保護作用、鎮痛作用)。
ⅲ)理学療法
温熱療法など運動療法:大腿骨四頭筋(太ももの前面の筋肉)の強化
ⅳ)装具療法
足の底に外側が 5mm ほど高くなった足底板装具を用い、関節への負担の偏りを是正し痛み
を軽減します。また、不安定性の強い膝に対しては、支柱入りサポーターを用います。
2)手術療法
ⅰ)関節鏡
膝関節用の内視鏡を用い、膝のなかを観察・洗浄し、痛みの原因となっている滑膜や傷んだ
半月板の 1 部を切除して炎症性の痛みを和らげることが可能になります。これにより膝の腫れ
や痛みが軽減します。この手術の利点は、患者さんにかかる負担が小さく行えることです。
しかし、すり減った軟骨の再生は困難で、除痛の効果は永続的ではないといった欠点があり
ます。
ⅱ)高位脛骨骨切り術
内反(O 脚)変形で膝の内側の痛みが主な場合は、脛骨(すねの骨)の膝に近い部分で骨切術
を行い、膝の O 脚変形を矯正します。痛みが軽減され変形性関節症の進行を遅らせることが
できます。
ⅲ)人工膝関節全置換術
人工膝関節置換術は、近年、その技術も飛躍的に進歩し、日本国内で年間 5 万 5 千件以上
の手術が行われています。その一番の目的は、関節の痛みの除去です。さらに、ほとんど歩
けなかった方が歩けるようになったり、外出困難だった方が旅行できるようになったりと、
生活の質の大きな改善が望めることもメリットです。加齢とともに軟骨の損傷、変形が進み、
さらに体重の負荷などの要因も加わって変形した膝関節を、人工膝関節によって本来の状態
に戻すことを目的とした手術療法です。
人工膝関節
だいたいこつ
大腿骨コンポーネント
ベアリング
(軟骨の役目を果たす)
けいこつ
脛骨トレイ
治療に関する御質問は、整形外科外来担当医にお気軽におたずねください。
治療費については、人工関節手術を含め、全ての手術に対して健康保険が適応されます。
さらに高額医療費制度の適応にもなります。詳しくは医事課窓口にておたずねください。
脳と嚥下体操について
看護科 東3階病棟 浅井 晴美
最近テレビでも注目されることの多い「脳」
。今回は「脳」と「その病気」、そしてそれにより
引きおこされる嚥下障害を予防・改善するための「嚥下体操」についてご紹介しましょう。
脳の構造について
中枢神経・・・・・大脳 脳幹 小脳 脊髄
大脳・・・・・・・大脳半球 基底核 間脳
脳幹・・・・・・・中脳 橋 延髄
からできています。
脳の働きについて分かり易いものがあったのでここで紹介させて頂きます。
脳とコンピューター
脳は高度なコンピューターである。記憶と情報の解析・計算を行い、さらに
自立して意思を決定する事ができる。脳の皮質がコンピューターのメモリ、白
質や深部核がチップ回路、記憶の優れている人はその皮質機能が優れ頭の回転
の早い人は白質や深部核の性能が良いと考えられる。小脳は運動的記憶を担っ
ており、ダメージを受けると意識せずに行ってきた運動記憶がなくなる。大脳
は記述的記憶(論理的
映像的記憶)を受けもち、機能を失えば記憶を失うア
ルツハイマー病等になり、チップ(白質や核)に異常が起これば情報伝達がお
かしくなり、麻痺やパーキンソン等が生じます。間脳の網様体の機能がメモリ
とチップのスイッチと考えられ、そのスイッチが入れば脳が覚醒する。その上
に意思があり、記憶や、古い大脳(大脳辺縁系)が担当する情動、高度な判断
力などは、脳の複合した様々な構造が築きあげる作用である。
脳
脳の病気について
今回紹介する脳血管障害は、別名脳卒中とも呼ばれ、頭痛や片麻痺で発症する事が多く、重
症の場合意識障害にいたります。
脳出血:脳の血管が破れ脳内やクモ膜下腔に出血した状態。
脳虚血:血管が狭くなったり、詰まったりして脳神経細胞に血液が行かなくなった
状態、この一部が脳梗塞に分類されます。
脳梗塞の種類
アテローム血栓性脳梗塞:頭蓋内・外の主幹動脈のアテローム硬化が原因。
心原性脳塞栓症:心臓内に形成された血栓による脳血管分岐直前の血管閉塞が原因。
ラクナ梗塞:高齢者や高血圧患者の基底核や大脳白質、脳幹にみられる小脳梗塞。
その他:もやもや病等。
次に嚥下障害と嚥下体操について述べさせて頂きます。
ご説明してきた脳血管障害のある患者様は、嚥下障害が起こり易く、これに嚥下反射・咳反
射の低下も加わって、口腔内の細菌や胃液が気道内に誤嚥され、肺炎(誤嚥性肺炎)を起こしや
すいのです。
嚥下に関わる神経
嚥下には4種類の脳神経が関わっています。
1・準備期 三叉神経 顔面神経 舌下神経
2・口腔期顔面 舌下神経
3・咽頭期 舌因神経 迷走神経
4・食道期 迷走神経
食物を口から食道に嚥下(飲みこむ)する際に、これらの神経がそれぞれのタイミングで運動
して働いているのです。
嚥下体操を行うとスムーズな嚥下運動を助け、誤嚥(食物が気道内に入ること)を予防するこ
とが出来ます。
嚥下体操の手順
1・最初に深呼吸 おなかに手をあてゆっくり深呼吸をうながします。
2・次に首の運動 左右や前後、次に顔を左右に向け、最後に首を一周回します。
3・肩の運動(うまく出来ない方は腕を支えるようにして行います)肩を上げて
3数えてトンと落とす、次に肩を回します。
4・舌の運動 のどの奥をなめるように動かします 左右の端をなめます 上と下の
唇をなめます。
5・発声練習 唇に力を入れながら「ぱ」と5回次に早く5回 「た」 「か」 「ら」
と順番に繰り返します。
6・最後にまた深呼吸を行います。
この体操を食前に行うことによってムセが減ったり発声がスムーズになったりします。また、
運動自体が食べるという意欲・意識に繋がるという結果も得られます。当院東3階病棟におい
て、脳血管障害で入院している患者様に嚥下体操を行っていただいたところ、当初の目的とは
別に、嚥下体操が気分転換、コミュニケーションの場となり、患者様自身も楽しみにされ笑顔
も多く見られるようになりました。今後も脳血管障害の患者様には、積極的に嚥下体操を取り
入れ、誤嚥性肺炎を防いで行けたらと考えています。
CT と MRI の違いについて
放射線科
副主任
田中
直也
今回は放射線科で取り扱うCTとMRIについて、それぞれの特徴と相違点を説明したい
と思います。
CT
MRI
特徴
撮影時間
利点
欠点
・人体にX線を当て、体を ・5∼15分程度 ・短時間で撮影で ・放射線被爆がある。
通過してきたX線で画像
(1 回 5∼10
きる。
・X線を通しにくい物
を作製する。
秒 程 度 の も の を ・造影剤を使用し
の周りが見えにく
・X線を通しやすい物(空気
数回撮影する)
て、心臓・脳・
くなることがある。
など)は黒く、通しにくい
肝臓などの血流 ・造影剤による副作用
もの(骨・結石・石灰化な
を鮮明に撮影で
が起こる可能性が
ど)は白く写る。
きる。
ある。
・磁力線(磁石の力)を人 ・30∼40分程度 ・いろいろな方向 ・撮影時間が長く、音
体に当て、かえってきた
(1種類の画像
の断面像を比較
が大きい。
信号を受信し画像を作製
約5分で数種類
的簡単に撮影で ・磁石を使うのでペー
する。
撮影)
きる。
スメーカーや脳動
・水分の多い物は白く、少
・X 線では判別し
脈クリップなどが
ない物ほど黒く写る。
にくい構造物
体内にある人は撮
(頭蓋内・脊髄等)
影できないことが
をより鮮明に判
ある。(金属の種類
別できる。
による。)
頭部撮影画像
CT画像
MRI画像
上記のように、CTとMRIそれぞれの異なった特徴があるため、個々の病気によって、よ
り適切な装置を使用して撮影を行います。
(病気の種類によっては両方撮影した方がよく分かる
場合もあります。)担当の医師によく話を聞いて検査を受けていただきたいと思います。
開放型病院って?地域医療連携って?
地域医療連携室 主任 青木 貴裕
当院は、平成13年10月1日付で、開放型病院として認定されました。
開放型病院とは、名前が示すとおり、地域の先生方に病院の施設・設備を開放した病院のこと
をいいます。
「登録医」の先生方から紹介を受けた患者さまにとっても、かかりつけの先生方と開放型
病院の医師が協力して入院から退院までの一貫した診療を行うことで、今まで以上に安心して
継続的な医療を受けることが可能になることと思います。また、医療機関の連携をはかること
により、検査の重複がなくなり経済的負担も少なくなります。
当院は地域医療機関との医療連携の強化と効率的な運用を図るため、今まで通り紹介患者さ
まを受け入れるとともに、共同診療の実施及び諸検査の受入を積極的に行っております。
現在当院では、西東京市近隣の234名の診療所及びクリニックの先生方に「登録医」として
共同診療を行っていただける体制を整えております。
正面玄関横に登録医一覧を表示しておりますので参考にして下さい。
地域医療連携室の役割について
地域医療連携室では、西東京市近隣の医療機関と積極的な連携を行い、MRI や CT 等の高度
検査や近隣の医療機関で入院治療が必要と判断された患者様の当院への受け入れ窓口を主な業
務としています。診療所やクリニック等の「かかりつけ医」をお持ちの患者様におきましては、
検査、入院を希望される場合には「かかりつけ医」と相談の上、当院を御利用いただければと
存じます。
■西東京市休日診療日について
今後の当院の休日診療日は右記の通りです。
9:00∼17:00 内科、小児科、外科の診療をお受け致します。
急患については、随時受付致します。
8月 9日(日)
9月 6日(日)
9月22日(火)
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記ご覧になりたい方は事務職員までご連絡ください。
発行所 医療法人社団東光会 西東京中央総合病院
発行人 院 長 種子田 斎
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編集長 副院長 木屋 啓一
TEL 042-464-1511[代表] FAX 042-467-8922
URL http://[email protected]
発行日 2009年7月