:〜 研究報告 関節炎に,ヒアルロン酸製剤を使う 後藤 眞* もに,ゆっくり穏やかにと,急いでがっちりとの間で 穏やかな治療が効く 常に揺れている.長期にわたる疾患の治療を患者自身 日本独自のリウマチ治療薬がある.その多くは,近 のQOL,経済的損失,医療費,生理学的変化を越えた 年の欧米の即効性・攻撃性を追求するシャープな切れ 病理学的変化の予防などを総合的にみて判定すること 味とは異なり,一見,物足りなさ,切れ味の悪さにがっ は,現在の手法では難しく,どこか便宜的な手法に頼 かりする専門家や患者が少なくない.また,最近の らざるを得ない.つまり,病理学的変化を完全に予防 EBM信奉の流れに飲み込まれ,ほとんど顧みられるこ し,なおかつ副作用を全く起こさない夢のような治療 とのなくなった悲しい治療薬もある.おそらく,リウ 法でもないかぎりは,エンドポイントをどこに置くか マチ性疾患という疾患群に対する考え方のみならず, の設定により,効果,副作用の判定は大きく変化する. 健康観,病気観,人生観の根本的な文化的な違いに基 関節リウマチを含む骨・関節疾患のような,病期が数 づき,薬剤開発の設定も全く異なるためではないかと 十年にも及ぶ可能性のある疾患の最適な治療法の選択 思われる.日本社会の欧米化とともに,現代日本人も については,専門家でも常に悩んでいる.現時点では, 即効性,効率性,攻撃性,完璧性を重視するようになっ 医師と患者のリウマチ観の妥協の産物が最良のテー てきた.人生とは,病気とは,何かに対する戦闘では ラー・メイド医療となると思われる.ヒアルロン酸は, なく,穏やかに受容し,耐え,自らを変容させ,病気 そのような意味で,日本発の,穏やかだが確実に効果 に同化させ,凌ぐというワザの開発が日本文化に組み があり,なおかつほとんど副作用がない,ある意味で 込まれていたが,文化そのものの変化が起きつつある は理想的なリウマチ治療薬といえる.関節注射の苦手 と思われる.一方,歴史の変化に,常に揺り戻しがあ な内科医がもっと気軽に積極的に使用することにより, るように,病気観,治療観にも変化が起きることがあ 関節リウマチ患者のQOLを含む治療成績がさらに向 る.最近のリウマチ治療でいえば,古くさいカビの生 上することが期待される. えた薬剤として若い医師の処方集からはほぼ完全に削 除されている注射用金剤や,多面的な副作用から忌避 されがちな副腎皮質ステロイドが,近年のEBMの篩に も合格し,長期成績で骨関節破壊進行の予防に費用対 変形性膝関節症の除痛効果は 世界的に確認された 効果の面で有効であることが欧米の一流誌を飾ってい ヒアルロン酸の医療への応用のきっかけは,まず, る.治療の歴史は,治療法の進歩や病気観の変化とと ヒアルロン酸という超巨大分子のもつ粘弾性と粘稠性 への興味に由来する.1 9 41年,膝軟骨の故障から引退 * 桐蔭横浜大学医用工学部臨床工学科 0 287―3648/06/¥500/論文/JCLS を余儀なくされそうになった競走馬の膝にヒアルロン 酸を注入したところ,優勝したために大変なニュース ― ( 1295)― 7.0 3.5 平均分子量90万ヒアルロン酸投与群 (n=108) 対照群 (n=115) * :p<0.05(群間比較,ANCOVA) 6.0 5.5 5.0 4.5 4.0 * * 0 2 4 6 8 10 12 14 2.5 2.0 * 16 0.0 18 (週) 0 2 4 6 8 10 (mm) (点) 100 *** *** 62.9 73.4 68.8 *** *** 81.3 77.7 :p < 0.05, ** 40 *** *** 1 2 JOAスコア(点) * (p /mL) 100 84 80 *** 投与前 ** 18 (週) 60 20 0 16 *** * * 40 14 (文献3より引用) (文献3より引用) 80 12 図2 WOMACスコア:こわばりの改善 図1 WOMACスコア:疼痛の改善 60 * 1.5 3.5 0.0 平均分子量90万ヒアルロン酸投与群 (n=108) 対照群 (n=115) * :p<0.05(群間比較,ANCOVA) 3.0 WOMACスコア WOMACスコア 6.5 :p < 0.01, *** 3 4 VAS(mm) 20 *** 0 5 (週) PGE(p 2 /mL) *** :p < 0.001,paired t − test (投与前値との比較) 図3 疼痛抑制作用(ヒト) (文献4より引用) になった.以後,馬のみならず,犬や牛の関節炎の治 判定基準JOAスコアの改善と見事な対比をみせてい 療薬としても研究が進められ,人間への応用が考えら る4). れ る よ う に な っ た.19 7 4年,Peyron & Balazs ら1), 2) 多くの独立した施設における,ウサギ,ラット,モ Helfet が,相次いで変形性膝関節症の治療にヒアルロ ルモット,イヌを用いた実験的関節炎モデルにおける ン酸が有効であることを報告した.その後,生化学工 注入された平均分子量9 0万のヒアルロン酸が,平均分 業が,鶏冠から高純度のヒアルロン酸の精製に世界で 子量2 30万のヒアルロン酸に比べ,図4,5のように 初めて成功し,ヒアルロン酸の医薬品としての使用が 確実に関節滑膜の深部にまで浸透し5),滑膜増殖を抑 可能となった. 制し,滑膜のPGE2産生をより速やかに抑制することに 以来,本邦ではヒアルロン酸製剤が変形性膝関節症 よって6,7),抗炎症効果が発揮される可能性が報告され 等の治療薬として広く用いられるようになり,最近の た (図6,7,表1) .また,平均分子量9 0万のヒアルロ 海外のRCTでも,1%ヒアルロン酸溶液を毎週1回, ン酸が,関節軟骨に最もよく吸収され,腱の癒着防止, 5週間継続する一般的なプロトコールで,最終投与の 関節拘縮の改善に効果を発揮することによって (図8), 翌週から12週にわたって,疼痛 (図1) ,こわばり (図2) , 病初期の軟骨変性を抑制する効果が強い可能性のある 3) 障害度のスコアが観察され,有意に改善している .ま ことも組織学的に確認されている8).さらに,病初期の た,変形性膝関節症の関節液マーカーとして,PGE2を 軟骨におけるMMP3,IL―1βのmRNAレベルの発現が モニタリングした池田らの研究によれば,図3にまと 抑制されることが報告され9),ヒアルロン酸の抗炎症 めて示されるように,疼痛判定のVAS,ならびに関節 効果が多面的,本質的に確認されている. 液PGE2濃度が平行して低下し,変形性膝関節症の治療 ― ( 1296)― 研 3時間 12時間 24時間 3日 究 報 告 7日 平均分子量90万 ヒアルロン酸 平均分子量230万 ヒアルロン酸 図4 滑膜への浸透性(モルモット)−OA自然発症モデルによる検討− (文献5より引用) 2,000 1,500 平均分子量90万ヒアルロン酸 平均分子量230万ヒアルロン酸 平均分子量90万ヒアルロン酸 平均分子量230万ヒアルロン酸 対照(生食) に対する 反応時間の比(%) 浸透の深さ(μm) 2,500 平均値±S. D.(n=3) * * :p<0.05(Student t−test) 1,000 * * N. S. * ** 100 50 500 0 0 図5 3時間 12時間 24時間 3日 12 24 48 平均値±S. D.(n=5) * :p<0.05,**:p<0.01 (paired t−test) 7日 滑膜への浸透の深さ(モルモット) −OA自然発症モデルによる検討− 図6 (文献5より引用) ヒアルロン酸は,変形性膝関節症に有効か, 関節リウマチに有効か 平均分子量90万のヒアルロン酸製剤 (アルツ) の適応 (時間) 疼痛抑制作用(ラット) −ブラジキニン誘発疼痛モデルにおける膝屈筋活動 反応時間による検討− (文献6より引用) ていないことだと思われ,今後の関節炎治療薬の効果 判定に問題を残している. に併存する変形性膝関節症の治療に投与し有効性を確 かめるという複雑な研究が行われた10).最終全般改善 けは,1 98 7年のアルツの変形性膝関節症への適応の認 度68. 8%,有用度70. 1%で,特に関節液貯留が10 mL 可に始まる.筆者が診療の傍ら研究に着手して最初に 未満のステージⅡ以下の比較的初期病変で有効であっ 出会ったのが,当時,世界に先駆けて日本で精製され た.当然,アルツの有効性が病勢判定のマーカーの乏 た純粋なヒアルロン酸で,いまから3 0年以上も前の話 しい変形性膝関節症の部分に効いたのか,関節リウマ になる.当時は,現在と違ってヒアルロン酸という言 チの治療として有効かを分けて検定する明確な手段は 葉を耳にすることはほとんどなく,保水性の高さから, ない.患者にとっては,あるいは臨床医にとっても, 高級な化粧品に添加されている程度であった.大した 治療によって疼痛が軽減し,関節の破壊が予防できれ 根拠もなく,関節液に多く含まれ,競走馬の関節障害 ば文句はないが,薬剤の効果判定では問題が残る.し に有効である,臍帯に最も豊富に存在する,高い保水 かし,本質的な問題は典型例ではともかく,変形性膝 性,超高分子,粘弾性,粘稠性などという性質から, 関節症と関節リウマチの違いとは何かが未だ判然とし きっと抗炎症効果があるはずだと推測して,研究に着 症が変形性膝関節症だけであった当時,関節リウマチ 関節リウマチの膝関節痛治療の試み 筆者による関節リウマチへのアルツの投与のきっか ― ( 1297)― 正常 図7 対照 平均分子量90万 (PBS) ヒアルロン酸 (注:矢印で示した細胞が空胞変性) 平均分子量230万 ヒアルロン酸 滑膜炎症抑制作用(イヌ) −前十字靭帯切断OAモデルによる滑膜細胞の空胞変性抑制像の検討− (文献7より引用) 表1 滑膜炎症抑制作用(イヌ) −前十字靭帯切断OAモデルによる検討− 正常群 (n=6) 対照群(PBS) (n=12) 平均分子量90万 ヒアルロン酸 (n=6) 平均分子量230万 ヒアルロン酸 (n=6) 09 . ±00 . 15 . ±01 . ** 12 . ±01 . 16 . ±01 . ** PGE2濃度 398 . ±50 . (pg/mL) 8 98 . ±1 95 . * 750 . ±187 . 952 . ±106 . ** 空胞変性 細胞数(%) N.D. 184 . ±33 . 厚さ (μm) 132 . ±08 . 310 . ±12 . ** Hsp72の 発現強度 − ± 関節液量 (mL) 関節液 滑膜 平均値±S.D. 42 . ±29 . # 77 . ±37 . 243 . ±16 . **## 2 64 . ±15 . ** ++ + * :p<00 . 5,**:p<00 .1 (正常群との比較) :p<00 . 5,##:p<00 .1 (対照群との比較)(TUKEYの多重比較) (文献7より引用) # 関節可動域 (屈曲角度−伸展角度) (度) 80 平均値±S.D. (n=5〜8) 対照群に対する有意差 * :p<0.05,**:p<0.01 (t−test) * ** 60 ** 40 20 0 対照 (生食) 図8 20 50 87 110 157 ヒアルロン酸分子量(×104) 至適分子量の検討(ウサギ) −ギプス固定関節モデルにおける可動域に及ぼす影響− (文献8より引用) ― ( 1298)― 研 究 報 告 50 ** ** ** 3 ** * 30 20 1 10 0 4 12(週) 8 * :p<0.05,**:p<0.005 図9 0.4 40 n=8 関節リウマチ患者におけるヒアルロン酸ナトリウム * 0.2 2.0 * 1.0 0 関節内注入後の疼痛スコアの改善効果 4 * :p<0.05 (文献11より引用) 0.3 3.0 粘度(ηsp ) * ヒアルロン酸濃度(m /dL) 曳糸性(mm) 50 m歩行時の疼痛スコア 5 0.1 12 (週) 8 n=8 *** 80 ** *** * 疼痛スコア 炎症スコア 5 60 4 3 40 2 20 1 0 投与前 投与後 投与前 投与後 投与前 投与後 投与前 投与後 疼痛スコア 炎症スコア VASスコア 関節液中 PGE2濃度 平均値±S.E.(n=25) 0 600 VASスコア(mm) 6 400 200 0 関節液中PGE2濃度(p /mL) 図10 関節リウマチ患者におけるヒアルロン酸ナトリウム 関節内注入後の関節液性状の変化 (文献11より引用) * :p<0.05,**:p<0.001,***:p<0.0001 (Wilcoxonの順位和検定) 図11 関節リウマチ患者における膝関節痛に対する臨床効果 (文献12より引用) 手した.純粋なヒアルロン酸が,関節リウマチにこそ いことには,最終全般改善度により5 0%以上の改善を 効くはずだと思い,自分の少数例の関節リウマチの患 認めたものを有効例とし,それ以下を無効例として比 者に投与し,検討を加えたところ,予想したとおりの 較すると,患者背景すなわち,年齢,性,罹病期間, 効果を得た11).つまり,アルツを毎週1回,連続5週 体重,ステージ,クラス,米国リウマチ学会 (ACR)診 膝関節内注射を行うと,図9のように,注射開始後12 断基準,併用薬には全く差が認められなかった.しか 週間にわたって患者の歩行時の疼痛が有意に低下し, し,有効例の関節液中でのPGE2,コンドロイチン4硫 貯留関節液のヒアルロン酸濃度の増加,曳糸性の増加, 酸,コンドロイチン6硫酸濃度の有意な低下改善が認 粘稠度の増加が有意に認められた(図10) .さらに多施 められ,ヒアルロン酸の抗炎症効果とともに,軟骨破 設共同研究により,全身性の炎症パラメーターである 壊の予防効果も推測された (図12) . 赤血球沈降速度やCRP,末梢血中のPGE2量には有意な 変化はなかったが,局所の疼痛,炎症,VAS,関節液 中のPGE2濃度は,5回のアルツ関節注射後有意に低 下,改善し(図11) ,3 0%の症例では,その後1年以上 にわたって関節液貯留が認められなかった12).興味深 関節リウマチ・モデル関節炎への ヒアルロン酸投与成績 ラット・Ⅱ型コラーゲン関節炎の進展に関わるヒア ― ( 1299)― ** 600 * 60 ** 400 40 200 20 0 PGE2濃度 平均値±S.E. C4S濃度 C4S(nmol/mL) C6S(nmol/mL) PGE2(p /mL) 投与前 投与後 C6S濃度 * :p<0.05,**:p<0.01(Wilcoxonの順位和検定) 図12 ヒアルロン酸有効例の関節リウマチ患者における関節液中PGE2, コンドロイチン4硫酸(C4S) ,コンドロイチン6硫酸(C6S) 濃度 の推移 (文献12より引用) 織 評価項目 6項目 滑 膜 大腿骨滑車溝 膝蓋骨 大腿骨外側顆 水腫 炎症性細胞浸潤 滑膜細胞増殖 肉芽組織形成 線維化 関節腔内滲出物 各々3項目 パンヌス形成 軟骨破壊 骨破壊 病理組織学的スコア 【観察組織および評価項目】 組 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 * 対照(生食) (n=10) 平均分子量90万 ヒアルロン酸 (n=10) 平均分子量190万 ヒアルロン酸 (n=9) * 滑膜 大腿骨滑車溝 平均値± S.E. 対照群に対する有意差 膝蓋骨 大腿骨外側顆 * :p<0.05(Mann−Whitney’s U test) 各項目を0点から4点(5段階)で評価し, 合計点数を病理組織学的スコアとする. 図13 抗炎症作用(ラット)−コラーゲン関節炎モデルによる病理組織学的検討− (文献13より引用) ルロン酸の分子サイズ(9 0万vs1 9 0万)による抑制効果 あるため,薬理的効果の検定が通常の薬物とは同様の に違いがあるかどうか,病理組織学的に検討されたが, 基準では扱いにくい.また,多関節疾患でありながら, 関節炎の発症率,関節炎スコア,病理組織学的スコア 同時に全身性疾患である関節リウマチへの治療効果判 (滑膜の水腫,炎症性細胞浸潤,滑膜細胞増殖,肉芽組 定のエンド・ポイントをどこに設定するかによって, 織形成,線維化,関節腔内滲出物,パンヌス形成,軟 薬剤の有効性も変化し得る.ヒアルロン酸製剤の関節 骨破壊,骨破壊)のいずれもが有意な抑制を認め (図13) , 注射における薬効は,抗炎症効果 (滑膜炎抑制,軟骨破 分子サイズの差による有意差を認めなかった13). 壊抑制) と生理学的効果 (潤滑・荷重軽減作用) の2つ に大きく分けられる.平均分子量9 0万のアルツは,粘 関節炎治療における 関節内投与ヒアルロン酸の分子サイズは どれほど重要か 弾性,粘稠性の点では平均分子量1 90万のスベニール に劣る.しかし,滑膜,軟骨への浸透による抗炎症効 果,軟骨変性抑制効果では,平均分子量9 0万のヒアル ロン酸であるアルツが優位である(図14) .膝関節1つ 関節腔内注射用ヒアルロン酸製剤の市場は,平均分 を取り上げたとき,活動期には,主として炎症性疾患 子量9 0万のヒアルロン酸:アルツと平均分子量1 90万 であり,鎮静期には変形性膝関節症的疾患であること のヒアルロン酸:スベニールで,分子サイズの差を効 を考慮に入れるならば,抗炎症効果の強いヒアルロン 果の差として競っている.しかし,ヒアルロン酸は, 酸製剤アルツを用い,炎症の鎮静化を図ることで,よ 物質としては比較的単純でありながら,超巨大分子で り細やかな関節リウマチのコントロールに結びつくこ ― ( 1300)― 研 平均分子量230万 ヒアルロン酸 究 報 告 平均分子量90万 ヒアルロン酸 滑膜細胞 拡散 関節腔 滑膜組織 図14 分子量の異なる2つのヒアルロン酸の滑膜組織への浸透性(模式図) (文献14より引用) ヒアルロン酸 組織に浸透 軟 骨 代謝の改善 変性の抑制 滑 膜 炎症の抑制 疼痛の抑制 ヒアルロン酸の生合成促進 関節機能の改善 図15 平均分子量90万のヒアルロン酸の関節組織に対する作用 とになる.平均分子量9 0万のヒアルロン酸関節内投与 チ患者のQOL改善に有用であり,リウマチ治療に携わ における作用機序をまとめると図15となろう. るものは,内科医といえども使用に習熟すべきだと思 われる. タイト・コントロールが最も重要 最近の論文では,関節リウマチの治療のみならず, 高血圧治療でも,使用する薬剤選択よりも疾患のこま めなしっかりとしたコントロールに尽きるといわれて いるため,EBMに基づいているとして漫然と治療する ことは避けなければならない.現在,関節破壊を抑制 すると盛んに喧伝されている生物学的製剤が,全身状 態にどれほど有用性があろうとも,膝関節などの大関 節の骨破壊予防には無力である.こうした現実から, 副作用がほとんどないヒアルロン酸製剤の関節注射は, 直接的には全身への有意な効果は認められないが,局 所の疼痛改善,関節破壊の予防,ひいては関節リウマ 文 献 1)Peyron JG, Balazs EA:Preliminary clinical assessment of Na―hyaluronate injection into human arthritic 6. joints. Pathol Biol 197 4;22:7 31―73 2)Helfet AJ:Management of osteoarthritis of the knee joint. Disorders of the Knee(Helfet AJ,ed),JB Lippin4. cott Co, Philadelphia, 19 74:pp.1 75―19 3)Day R, et al:A double blind, randomized, multicenter, parallel group study of the effectiveness and tolerance of intraarticular hyaluronan in osteoarthritis of the 2. knee. J Rheumatol 2 0 04;31:77 5―78 4)池田和男ほか:ヒアルロン酸関節腔内注入による関節 液マーカーの変動と臨床効果―特にプロスタグラン ― ( 1301)― ディンE2濃度からみた抗炎症効果について―.東女医 大誌 1 99 8;68:22―36. 5)Asari A: Medical Application of Hyaluronan Chem3. istry and Biology of Hyaluronan 2004;457―47 6)山下 泉ほか:ブラジキニンを用いたラット膝関節疼 痛モデルにおけるプロスタグランジンE2とヒアルロン 3. 酸ナトリウムの影響. 日整会誌 1995;69:7 35―74 7)Asari A, et al:Molecular weight―dependent effects of hyaluronate on the arthritic synovium. Arch Histol Cytol 19 98;61:125―135. 8)並木 脩:ウサギ固定関節に対する分子量の異なるヒ アルロン酸ナトリウムの影響.関節外科 1996;1 5: 17 9. 1 17 3―1 9)Takahashi K, et al:The effects of hyaluronan on ma(MMP―3), interleukin―1β torix metalloproteinase―3 , and tissue inhibitor of metalloproteinase―1 (IL―1β) gene expression during the development of (TIMP―1) osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage 1 99 9;7:182― 1 90. 1 0)三浦隆行ほか:変形性膝関節症を合併する慢性関節リ ウマチに対する高分子量ヒアルロン酸ナトリウム(ア ルツ) の関節腔内注射療法.医学と薬学 1 9 93;2 9: 71. 106 1―10 11)Goto M, et al:Biochemical analysis of rheumatoid synovial fluid after serial intra―articular injection of high molecular weight sodium hyaluronate. Int J Clin 6. Pharm Res 199 3;13:1 61―16 12)Goto M, et al:Intra―articular injection of hyaluronate 01D) improves joint pain and synovial fluid (SI―66 prostaglandin E2 levels in rheumatoid arthritis:A multicenter clinical trial. Clin Exp Rheumatol 200 1;1 9: 3. 3 77―38 13)田澤洋一ほか:ヒアルロン酸製剤のDAラット・Ⅱ型 コラーゲン関節炎進展に対する抑制効果.薬理と治療 8. 200 5;33:4 81―48 1 4)浅利 晃:ヒアルロン酸の関注療法.日臨整外医会誌 200 3;28:51―55. ― ( 1302)―
© Copyright 2024 Paperzz