JP 2012-505663 A 2012.3.8 (57)【要約】 本願は、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagula ns)から選択された乳酸産生菌を含有するプロバイオテ ィクス穀物組成物に関する。バチルス・コアギュランス を含むスープ用乾燥混合物も特許請求される。 10 (2) JP 2012-505663 A 2012.3.8 【特許請求の範囲】 【請求項1】 加工穀物と単離されたバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)の菌または芽 胞とを含む、組成物。 【請求項2】 パスタ、オートミール、およびグリッツからなる群より選択される、請求項1記載の組 成物。 【請求項3】 パスタが、スパゲッティ、ラザニア、卵入りパスタ(egg pasta)、シュペッツレ、ペ ンネ・リガーテ、ロティーニ、リガトーニ、およびニョッキからなる群より選択される、 10 請求項2記載の組成物。 【請求項4】 単離されたバチルス・コアギュランスが、調理済みの前記組成物の0.01重量%から10重 量%を占める、請求項1記載の組成物。 【請求項5】 単離されたバチルス・コアギュランスが、バチルス・コアギュランスhammer株アクセッ ション番号ATCC 31284である、請求項1記載の組成物。 【請求項6】 単離されたバチルス・コアギュランスが、GBI-30株(ATCC指定番号(Designation Numb er)PTA-6086)、GBI-20株(ATCC指定番号 PTA-6085)、およびGBI-40株(ATCC指定番号 20 PTA-6087)からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。 【請求項7】 単離されたバチルス・コアギュランスが芽胞の形態である、請求項1記載の組成物。 【請求項8】 バチルス・コアギュランスの芽胞が、熱い液体と接触すると活性化する、請求項7記載 の組成物。 【請求項9】 熱い液体が水またはミルクである、請求項8記載の組成物。 【請求項10】 単離されたバチルス・コアギュランスが栄養細胞の形態である、請求項1記載の組成物 30 。 【請求項11】 単離されたバチルス・コアギュランスが栄養細胞と芽胞との混合物の形態である、請求 項1記載の組成物。 【請求項12】 穀物と単離されたバチルス・コアギュランスの菌とを含む穀物組成物(grain-based co mposition)用乾燥混合物を含む、組成物。 【請求項13】 脱水された物質と単離されたバチルス・コアギュランスの菌とを含むスープ用乾燥混合 物を含む、組成物。 40 【請求項14】 以下の工程を含む、穀物組成物を作製する方法: 穀物を含有する基礎混合物および液体部分を供給する工程; 前記穀物を含有する基礎混合物と前記液体部分とを混合してバッターまたはドウを形成 する工程; 単離されたバチルス・コアギュランスの菌を前記バッターまたはドウと混ぜ合わせる工 程;ならびに 前記バッターまたはドウを加熱処理して前記穀物組成物を調理する工程。 【請求項15】 液体部分が、水およびミルクからなる群より選択される、請求項14記載の方法。 50 (3) JP 2012-505663 A 2012.3.8 【請求項16】 単離されたバチルス・コアギュランスが、バチルス・コアギュランスhammer株アクセッ ション番号ATCC 31284である、請求項14記載の方法。 【請求項17】 単離されたバチルス・コアギュランスが、GBI-30株(ATCC指定番号 PTA-6086)、GBI-2 0株(ATCC指定番号 PTA-6085)、およびGBI-40株(ATCC指定番号 PTA-6087)からなる群 より選択される、請求項14記載の方法。 【請求項18】 単離されたバチルス・コアギュランスが芽胞の形態である、請求項14記載の方法。 【請求項19】 10 単離されたバチルス・コアギュランスが栄養細胞の形態である、請求項14記載の方法。 【請求項20】 単離されたバチルス・コアギュランスが、穀物組成物の1重量%から10重量%を占める、 請求項14記載の方法。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 関連出願 本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2008年10月16日に出願され た米国特許出願第61/106,116号の恩典を主張する。 20 【0002】 発明の分野 本願は、乳酸産生菌を含有するプロバイオティクス穀物組成物(probiotic grain-base d composition)に関する。 【背景技術】 【0003】 発明の背景 胃腸の細菌叢は、胃腸管の機能および全身の生理学的健康の維持に極めて重要な多くの 役割を担う。胃腸管に生息する多くの個々の微生物種の増殖および代謝は、その多くが食 事に由来する、それらにとって利用可能な基質に主に依存する。一般的にプロバイオティ 30 クスは、宿主において恒久的にはコロニーを形成しないため、何らかの健康促進特性を持 続するためには定期的に摂取する必要がある。 【発明の概要】 【0004】 本発明は、乳酸産生菌、特にバチルス(Bacillus)種が、熱湯中において高温(例えば 、80、90、100、120、または150℃)で調製されたものなどの食品組成物中で生存能力を 維持し、かつ有益なプロバイオティクス特性を保持するという発見に基づく。本発明は、 プロバイオティクス穀物組成物について説明する。具体的には、本発明は、穀物組成物中 の、単離されたバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)菌を提供する。 【0005】 40 本発明は、調理済みまたは未調理の穀物組成物と単離されたバチルス・コアギュランス 菌または芽胞とを含む組成物を提供する。穀物は、加工される、例えば、その天然の状態 から改変される。例えば、穀物は、脱穀されるか、粉砕されるか、挽き割りにされるか、 または挽かれる。穀物は、粉の形態であるか、または穀物粉をさらに加工して作られる組 成物の形態である。穀物の例には、小麦、米、ソバ、大麦、カムート、トウモロコシ、お よびオーツ麦が含まれる。調理済み組成物の例には、パスタ、オートミール、およびグリ ッツが含まれる。適したパスタには、卵入りパスタ(egg pasta)、スパゲッティ(中実 の細い円柱形)、マカロニ(管状または中空の円柱形)、フジッリ(らせん形)、ラザニ ア(シート状)、タリアテッレ(平たいリボン状)、バーミセリ(細いスパゲッティ)、 ラビオリ(詰め物入りパスタ)、シュペッツレ、およびニョッキが含まれる。その他の適 50 (4) JP 2012-505663 A 2012.3.8 したパスタには、ペンネ・リガーテ(縦溝の入った円柱形パスタ)、ペンネ・リッシェ( 表面が滑らかな円柱形パスタ)、ロティーニ(コルク抜き形パスタ)、およびリガトーニ (管形パスタ)が含まれる。 【0006】 一局面において、単離されたバチルス・コアギュランスは穀物組成物の約0.01重量%か ら約50重量%を占める。任意で、単離されたバチルス・コアギュランスは穀物組成物の約0 .01重量%から約10重量%を占める。任意で、単離されたバチルス・コアギュランスは穀物 組成物の約0.01重量%から約0.1重量%を占める。 【0007】 本発明はまた、バチルス・コアギュランスを含む細菌種、例えばバチルス・コアギュラ 10 ンスのhammer、好ましくはバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 3 1284、またはバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 31284に由来す る1種類もしくはそれ以上の株(例えば、ATCC番号:GBI-20、ATCC指定番号(Designation Number)PTA-6085;GBI-30またはBC30、ATCC指定番号PTA-6086;およびGBI-40、ATCC指 定番号PTA-6087;Farmerの米国特許第6,849,256号を参照のこと)を提供する。 【0008】 任意で、単離されたバチルス・コアギュランスは芽胞の形態である。一局面において、 単離されたバチルス・コアギュランス芽胞は、熱い液体と接触すると活性化する。好まし くは、熱い液体は水またはミルクである。あるいは、単離されたバチルス・コアギュラン スは栄養細胞の形態である。別の局面において、単離されたバチルス・コアギュランスは 20 栄養細胞と芽胞との混合物の形態である。好ましくは、バチルス・コアギュランスは主と して芽胞の形態であり、例えば、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または約 100%が芽胞である。 【0009】 本発明はまた、穀物と単離されたバチルス・コアギュランス菌とを含む穀物組成物用乾 燥混合物を含む組成物も提供する。本発明はまた、脱水された物質と単離されたバチルス ・コアギュランス菌とを含むスープ用乾燥混合物を含む組成物も提供する。 【0010】 本発明はまた、穀物を含有する基礎混合物および液体部分を供給する工程;前記穀物を 含有する基礎混合物と前記液体部分とを混合してバッターまたはドウを形成する工程;単 30 離されたバチルス・コアギュランス菌を前記バッターまたはドウに混ぜ合わせる工程;な らびに前記バッターまたはドウを加熱処理して穀物組成物を調理する工程を含む、穀物組 成物を作製する方法も提供する。適した液体部分には、水およびミルクが含まれる。一局 面において、単離されたバチルス・コアギュランスは芽胞の形態である。別の局面におい て、単離されたバチルス・コアギュランスは栄養細胞の形態である。一局面では、単離さ れたバチルス・コアギュランスは穀物組成物の約0.1重量%から約50重量%を占める。好ま しくは、単離されたバチルス・コアギュランスは穀物組成物の約1重量%から約10重量%を 占める。最も好ましくは、バチルス・コアギュランス菌の量は、食品マトリックス1グラ ムあたりの細菌が約5 x 107コロニー形成単位(CFU)である。 【0011】 40 バチルス・コアギュランス菌は、本発明の穀物組成物またはスープ組成物に含まれる。 細菌種にはバチルス・コアギュランス、例えばバチルス・コアギュランスのhammer、好ま しくはバチルス・コアギュランスのhammer株アクセッション番号ATCC 31284、またはバチ ルス・コアギュランスのhammer株アクセッション番号ATCC 31284に由来する1種類もしく はそれ以上の株(例えば、ATCC番号:GBI-20、ATCC指定番号PTA-6085;GBI-30またはBC30 、ATCC指定番号PTA-6086;およびGBI-40、ATCC指定番号PTA-6087;Farmerの米国特許第6, 849,256号を参照のこと)が含まれる。 【0012】 一局面において、単離されたバチルス・コアギュランスは芽胞の形態である。本発明は 、熱した際のバチルス・コアギュランス芽胞の活性化を提供する。任意で、単離されたバ 50 (5) JP 2012-505663 A 2012.3.8 チルス・コアギュランスは栄養細胞の形態である。別の局面において、単離されたバチル ス・コアギュランスは栄養細胞と芽胞との混合物の形態である。 【0013】 本発明のバチルス・コアギュランスのHammer株は、非病原性で、米国食品医薬品局(FD A)および米国農務省(USDA)ならびに当業者により、一般にヒトの食物での使用におい て安全とみなされている(すなわち、GRAS分類)。さらに、本発明のバチルス・コアギュ ランスのHammer株は、ヒトの体温またはそれ以下の温度で発芽し、したがってプロバイオ ティクスとして有用である。Hammer株の群以外の多くのバチルス・コアギュランス株は主 に産業用途を有し、栄養面での恩恵はほとんどまたはまったくなく、かつ安全性が評価さ れていない環境汚染物を有する。さらに、バチルス・コアギュランスの他の多くの非Hamm 10 er株は、ヒトの体温を超える温度で最適に増殖し、したがってヒト体内では効率的に発芽 しない。そのような株は、ヒトが摂取するプロバイオティクスにはあまり適さないかまた はまったく適さない。 【0014】 引用した刊行物は参照により本明細書に組み入れられる。上述の一般的説明ならびに以 下の詳細な説明および実施例はいずれも、例示的および説明的でしかなく、特許請求され る本発明を制限するものではない。 【図面の簡単な説明】 【0015】 【図1】ニョッキ(ジャガイモのパスタ)中のBC30の生存率を示した棒グラフである。 20 30 【図2】卵入り生パスタのフィリング中のBC の生存率を表した棒グラフである。左の棒 :未処理のチーズフィリング入りパスタ(細菌のチーズ培養物を含む);中央の棒:BC30 で処理したチーズフィリング入りパスタ;右の棒:BC30で処理し、かつ100℃で5分間殺菌 したチーズフィリング入りパスタ。 【発明を実施するための形態】 【0016】 発明の詳細な説明 プロバイオティクス生物は、非病原性で、毒性がなく、保存中に生存能力を保持し、か つ胃および小腸の通過に耐える。例としてバチルス・コアギュランスなどの非病原性の乳 酸産生菌(すなわち「乳酸菌」)は、熱湯中で調理されたものなどの穀物組成物およびス 30 ープ組成物中で生存能力を維持し、かつ有益なプロバイオティクス特性を保持する。具体 的には、本明細書において記載されるプロバイオティクス生物、例えば、バチルス・コア ギュランス株GBI-30またはBC30、ATCC指定番号 PTA-6086は、穀物組成物およびスープ組 成物を製造および調理する下記の過酷な過程に耐える。 【0017】 プロバイオティクス乳酸産生菌 本発明の方法および組成物における使用に適したプロバイオティクス乳酸産生菌は、酸 を産生し、非病原性である。本発明は既知の細菌種に限定されるものではないが、細菌の 目的および目標が記載される限りにおいて、本明細書中に記載したような同定された多く の適した細菌が存在する。酸を産生する性質は、本発明のプロバイオティクス乳酸産生菌 40 の有効性において重要である。 【0018】 本発明は、バチルス・コアギュランスなどの芽胞形成バチルス種などの乳酸産生菌の使 用を提供する。好ましくは、本発明の芽胞形成バチルス種はバチルス・コアギュランスの Hammerである。 【0019】 例示的な方法および組成物は、バチルス・コアギュランスをプロバイオティクスとして 用いて、本明細書に記載されている。精製されたおよび/または単離されたバチルス・コ アギュランスは、穀物組成物またはスープ組成物中のプロバイオティクスとして特に有用 である。プロバイオティクスであるバチルス・コアギュランスは、非病原性であり、米国 50 (6) JP 2012-505663 A 2012.3.8 食品医薬品局(FDA)および米国農務省(USDA)ならびに当業者により一般に安全とみな されている(すなわち、GRAS分類)。 【0020】 バチルス・コアギュランスは、発酵条件でL(+)乳酸(右旋性)を産生する非病原性グラ ム陽性芽胞形成細菌である。それは、栄養培地に播種した熱処理土壌試料などの天然源か ら単離されてきた(Bergey's Manual off Systemic Bacteriology, Vol. 2, Sneath, P.H .A., et al., eds., Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 1986)。精製されたバチルス ・コアギュランス株は、エンドヌクレアーゼ(例えば、米国特許第5,200,336号);アミ ラーゼ(米国特許第4,980,180号);ラクターゼ(米国特許第4,323,651号);およびシク ロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(米国特許第5,102,800号)を含む酵 10 素の供給源として役立ってきた。バチルス・コアギュランスは、乳酸の産生に用いられて きた(米国特許第5,079,164号)。バチルス・コアギュランスの1つの株(ラクトバチルス ・スポロゲネス(L. sporogenes)と称される;Sakaguti & Nakayama(ATCC 31284))は 、他の乳酸産生菌および納豆菌(B. natto)と組み合わされて、蒸した大豆から発酵食品 を作り出してきた(米国特許第4,110,477号)。 【0021】 細菌種には、バチルス・コアギュランス、例えばバチルス・コアギュランスのhammer、 好ましくはバチルス・コアギュランスのhammer株アクセッション番号ATCC 31284、または バチルス・コアギュランスのhammer株アクセッション番号ATCC 31284から派生する1種類 もしくはそれ以上の株(例えば、ATCC番号:GBI-20、ATCC指定番号PTA-6085;GBI-30、AT 20 CC指定番号PTA-6086;およびGBI-40、ATCC指定番号PTA-6087;Farmerの米国特許第 6,849 ,256号を参照のこと)が含まれる。 【0022】 バチルス・コアギュランスは、以前は誤ってラクトバチルス(Lactobacillus)属と特 徴付けられ、ラクトバチルス・スポロゲネス(Lactobacillus sporogenes)と名付けられ ていた(Nakamura et al., 1988.Int. J. Syst.Bacteriol.38:63-73を参照のこと)。し かし、バチルス・コアギュランスは芽胞を生成し、かつ代謝によってL(+)-乳酸を排出す ることから、当初の分類は誤りであった。これらの特徴はいずれも、バチルス・コアギュ ランスの有用性の鍵となる特性を提供する。これらの発達上および代謝上の特徴から、こ の細菌は乳酸バチルス属と分類された。加えて、古典的なラクトバチルス種は、胆汁、特 30 にヒト胆汁の過酷なpH環境(すなわち、酸性環境)では不安定であるために消化管のコロ ニー形成に適していないということが一般には認識されていない。対照的に、バチルス・ コアギュランスは、胆汁環境にある胃腸管で生存しコロニー形成することができ、この低 pH範囲でも増殖することができる。 【0023】 バチルス・コアギュランスのプロバイオティクス活性 細菌性病原体、真菌性病原体、病原性酵母の多くの種が、胃腸の正常な生化学機能の混 乱、胃腸組織の壊死、および栄養の生体吸収の混乱、ならびに類似の状態を含むがこれら に限定されない様々な胃腸障害を引き起こす能力を有することは、臨床において十分に報 告されている。プロバイオティクス生物を含む本発明に記載の組成物は、これらの病原体 40 を阻害する。したがって、本発明の組成物は、上記の病原体による感染に関連する状態の 予防的または治療的処置において有用である。 【0024】 一局面において、バチルス・コアギュランス株は栄養細胞の形態で組成物に含まれる。 別の局面において、バチルス・コアギュランス株は芽胞の形態で組成物に含まれる。本発 明はまた、バチルス・コアギュランス株を粉末、乾燥細胞塊、安定化ペースト、または安 定化ゲルの形態で組成物中に含むことを提供する。 【0025】 バチルス芽胞は、耐熱性および耐圧性であり、かつ乾燥粉末として保存できるため、本 明細書に記載した様々な穀物組成物またはスープ組成物などの製品への調製およびそのよ 50 (7) JP 2012-505663 A 2012.3.8 うな製品の製造に特に有用である。バチルス種は本発明によく適しており、特に、熱およ びその他の条件に比較的耐性である芽胞形成能を有する種は、製品(product formulatio n)、例えば穀物組成物およびスープ組成物における保存(貯蔵期間)において理想的で ある。本明細書に記載のバチルス・コアギュランス(例えば、バチルス・コアギュランス 株GBI-30またはBC30、ATCC指定番号PTA-6086)の保存安定性により、本発明の製品は冷蔵 庫に閉じ込められるものではなく、室温で保存してもよい。 【0026】 本発明のバチルス・コアギュランスは、約12日間から約2年間、約1ヶ月間から約18ヶ月 間、約3ヶ月間から約1年間、または約6ヶ月間から約9ヶ月間の保存(貯蔵期間)に耐える 10 。 【0027】 抗菌プロバイオティクス活性 本明細書に記載のプロバイオティクス生物、例えばバチルス・コアギュランス株GBI-30 またはBC30、ATCC指定番号PTA-6086は、胃腸の健康を向上させ、かつ免疫系を支える。様 々な細菌性病原体を阻害するバチルス・コアギュランスの能力は、インビトロアッセイを 用いて定量的に確認された。このアッセイは、規格化された細菌性病原菌スクリーニング (米国食品医薬品庁(FDA)により開発された)の一部分であり、固体支持体ディスク上 で市販されている(DIFCO(登録商標)、BACTROL(登録商標)抗菌ディスク)。このアッ セイを実施するために、標準的な手順を用いて、まずポテトデキストロースプレート(DI FCO(登録商標))を調製した。続いてこのプレートに細菌を個々に播種し(およそ1.5 x 6 10 20 CFU)、コンフルエントな細菌床を形成するように試験した。 【0028】 続いて、ブロスまたは緩衝液10μl中のバチルス・コアギュランスおよそ1.8 x 106 CFU を、プレート1枚あたり直径およそ8mmの試験位置1つを有するポテトデキストロースプレ ートの中央に直接配置することにより、バチルス・コアギュランスによる微生物(例えば 、胃腸病原体)の阻害を確認した。各アッセイにおいて、最低3つの試験位置を用いた。 陰性対照は10μlの量の無菌食塩水からなり、一方、陽性対照は1μlの量のグルタルアル デヒドからなった。続いてこのプレートを、30℃でおよそ18時間インキュベートし、この 期間において阻害された領域を測定した。本明細書に示されているように、「優れた阻害 」とはこの領域が直径10mm以上であったことを意味し、「良好な阻害」とはこの領域が直 30 径2mm超10mm未満であったことを意味する。 【0029】 予測されたように、「阻害」なしは、食塩水の陰性対照において見られ、優れた「阻害 」(3回の試験の平均が直径およそ16.2mm)はグルタルアルデヒドの陽性対照において見 られた。試験した腸内微生物に関して、バチルス・コアギュランスによる以下の阻害が見 出された:(i)クロストリジウム(Clostridium)種−優れた阻害、(ii)大腸菌(Esch erichia coli)−優れた阻害、(iii)クロストリジウム種−優れた阻害、阻害領域が一 貫して直径15mm超。同様に、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および黄色ブドウ球菌( Staphylococcus aureus)といった日和見病原体についても優れた阻害が見られた。バチ ルス・コアギュランスによって活性が阻害された腸内病原菌には、黄色ブドウ球菌、表皮 40 ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes )、緑膿菌、大腸菌(腸管出血性種)、多数のクロストリジウム種(例えば、ウェルシュ 菌(Clostridium perfingens)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、破傷風菌(C lostridium tributrycum)、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes )等)、ガードネレラ・バギナリス(Gardnereia vaginails)、プロピオニバクテリウム ・アクネス(Proponbacterium aenes)、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hyd rophia)、アスペルギウス(Aspergillus)種、プロテウス(Proteus)種、およびクレブ シエラ(Klebsiella)種が含まれるが、これらに限定されない。 【0030】 マイクロカプセル化 50 (8) JP 2012-505663 A 2012.3.8 一局面において、乳酸産生菌は、穀物組成物に加えられる前に、当該技術分野において 周知の任意のマイクロカプセル化工程を用いてマイクロカプセルコーティング中に組み込 まれる。単離されたバチルス・コアギュランスは、この細菌を周囲環境から保護するため に、他の材料中に包装またはカプセル化される。本発明のカプセルの大きさは、1/1000 m mから7 mmの範囲である。マイクロカプセルの内部の成分は、カプセル壁の機械的破壊、 カプセル壁の溶解、カプセル壁の融解、およびカプセル壁を通した拡散を含む様々な方法 で、シェルから放出される。したがって、マイクロカプセル化により、本発明の穀物組成 物の加熱工程の間、単離されたバチルス・コアギュランスに対するさらなる保護が提供さ れる。マイクロカプセル化の物理的方法には、パンコーティング、エアサスペンションコ ーティング、遠心押し出し、振動ノズル、および噴霧乾燥が含まれる。マイクロカプセル 10 化の化学的方法には、界面重合、インサイチュー重合、およびマトリックス重合が含まれ る。 【0031】 あるいは、乳酸産生菌は、マイクロカプセル化せずに穀物組成物に加えられる。 【0032】 プロバイオティクス穀物組成物およびスープ組成物 本発明は、乳酸産生菌、特にバチルス種が、熱湯中で調製されたものなどの穀物組成物 およびスープ組成物中で生存能力を維持し、かつ有益なプロバイオティクス特性を保持す るという驚くべき発見を対象とする。組成物は、乾燥物質と液体、例えば水またはミルク とを混ぜ合わせることにより調製される。一局面において、組成物は、乾燥物質と液体と 20 を混ぜ合わせ、生じた混合物を加熱することにより調製される。任意で、この混合物は熱 、炎、またはマイクロ波の適用を用いて加熱される(加熱処理される)。穀物組成物また はスープ組成物は熱湯中でボイルされる:例えば、コンロの上でボイルされるか、容器中 に熱湯を加えるか、または穀物組成物またはスープ組成物を水と共に電子レンジで加熱す る。好ましくは、熱湯(約100℃)を、穀物組成物とバチルス・コアギュランス菌との混 合物に加える。 【0033】 一局面において、少なくとも約5%∼25%の細菌が、加熱後に生存可能である。例えば、 少なくとも約25%∼50%、少なくとも約50%∼75%、または少なくとも約75%∼99%の細菌が、 加熱後に生存可能である。推奨一日許容量(RDA、または推奨一日摂取量(RDI)は約1 x 30 9 10 細菌であるので(EUガイドラインによる)、穀物組成物またはスープ組成物は、加熱 後に少なくとも約1 x 109 の生菌を含むことが好ましい。別の局面において、穀物組成物 またはスープ組成物は、加熱後に少なくとも約1 x 106から1 x 107;少なくとも約1 x 10 7 から1 x 108;または少なくとも約1 x 108から1 x 109の生菌を含む。 【0034】 プロバイオティクス生物の種および形態に依存して細菌が栄養細胞もしくは芽胞または その両方として存在することから、本組成物は、多くの構成で調製される。当該細胞/芽 胞は、穀物組成物またはスープ組成物に用いられるのに適した様々な組成物中で調製され る。一局面において、細菌は芽胞および栄養細胞の混合物として存在する。別の局面にお いて、細菌は少なくとも90%が芽胞として、例えば、95%、98%、または99%が芽胞として存 40 在する。本発明の穀物組成物またはスープ組成物に加えられる前に、任意で、バチルス・ コアギュランス細胞は、芽胞形成を誘導する栄養源を含まないかまたはその量が制限され ている液体中で培養される。別の局面において、本発明の穀物組成物またはスープ組成物 に加える前に、ヒートガン噴霧乾燥により約50%、約75%、約90%、約95%、または約99%の 栄養細胞を死滅させる。 【0035】 本明細書に記載の穀物組成物は、当業者に公知の様々な穀物から作られる。適した穀物 には、米、小麦、トウモロコシ、大麦、ライ麦、オーツ麦、ソバ、ソルガム、ミレット、 ライコムギ、フォニオ、およびキノアが含まれる。本発明の穀物組成物を作るのに用いら れるその他の種類の穀物には、テフ、ワイルドライス、およびデュラムが含まれる。 50 (9) JP 2012-505663 A 2012.3.8 【0036】 穀物組成物の例には、パスタ、オートミール、グリッツ、シリアル等が含まれる。本発 明はプロバイオティクス強化パスタ(例えば、単離されたバチルス・コアギュランスとパ スタ)を提供する。パスタ(イタリア語で「ドウ」)は、イタリア版の麺類の総称であり 、粉、水、および/または卵のドウから作られる食品である。パスタは、食べる前に湯/熱 湯中で調理される。本明細書に記載のプロバイオティクス生物、例えばバチルス・コアギ ュランス株GBI-30またはBC30(ATCC指定番号PTA-6086)は、穀物組成物およびスープ組成 物の過酷な製造過程および調理過程に比類なく耐える。一局面において、パスタは主材料 であり、ソースまたは調味料と共に供される。パスタの一般的な種類には、管状パスタ、 まっすぐな円管状パスタ、リボン状パスタ、極小パスタ、詰め物入りパスタ、および不規 10 則な形のパスタが含まれる。パスタの例には、スパゲッティ(中実の細い円柱形)、マカ ロニ(管状または中空の円柱形)、フジッリ(らせん形)、ラザニア(シート状)、タリ アテッレ(平たいリボン状)、バーミセリ(細いスパゲッティ)、およびラビオリ(詰め 物入りパスタ)が含まれる。その他の適したパスタには、ペンネ(円柱形パスタ)、ロテ ィーニ(コルク抜き形パスタ)、およびリガトーニ(管形パスタ)が含まれる。イタリア では、ペンネは2つの種類:「ペンネ・リッシェ」(滑らか)および「ペンネ・リガーテ 」(縦溝)で作られ、後者は各麺上にうねを有する。他の2つの麺、すなわちニョッキお よびシュペッツレは、イタリアにおいて伝統的であるためパスタと見なされることもある が、それらの「本来の」分布(およびおそらくそれらの起源)はイタリアの外であり、こ れらの麺は、典型的なパスタよりもダンプリングとより多くの共通点を有する。パスタの 20 2つの基本的な様式は、乾燥パスタと生パスタである。乾燥パスタは、調理されるとより 硬く稠密な質感を有し、塊の入った、肉の入った、または油分の多いソースに合う。生パ スタは、より柔らかく、より吸収性の質感を有し、バターの多いもしくはクリーミーなソ ース、または繊細な風味のソースに合う。パスタに用いられる材料にもバリエーションが ある。パスタの保存可能な期間は、パスタが卵で作られているか否か、および乾燥パスタ か生パスタかによって数日間から数年間まで様々である。 【0037】 パスタのドウを作るには、単純な粉と水の混合物から、卵、スパイスとチーズ、あるい はイカスミをドウに加えることを必要とするものまで、多くの材料が用いられる。任意で 、パスタは、例えばチーズ、野菜、果物、および/または肉の詰め物を含んでもよい。一 30 局面において、乾燥パスタはデュラム小麦またはセモリナ粉から作られる。デュラム粉は 黄色の色合いを有する。あるいは、乾燥パスタは、より柔らかな製品を生じる他の種類の 粉(穀粉など)から作られる。特定の種類のパスタはまた、他の穀物および/または粉を 作るための他の製粉法を用いてよい。ピッツォッケリなどのいくつかのパスタの種類は、 ソバ粉から作られる。様々な種類の生パスタは卵を含む(卵パスタ)。ニョッキはしばし ばパスタ料理と見なされるが、材料が極めて異なる(主に粉砕したジャガイモ)。 【0038】 単離されたバチルス・コアギュランスを有するオートミールの形態のプロバイオティク ス穀物組成物もまた提供される。オートミールは挽き割りオーツ麦製品(すなわち、オー トミール、コーンミール、ピースミール(peasemeal)等)または当該製品から作られた 40 ポリッジ(オートミールシリアルとも呼ばれる)である。米国およびカナダなどの地域で は、「オートミール」は、挽き割りオーツ麦から作られた他の製品、例えば、切り刻んだ オーツ麦、粉砕したオーツ麦、および押しオーツ麦を指すこともある。挽き割りオーツ麦 は、オートミールを作るために粗挽きにされるか、スチールカットオーツ(steel-cut oa t)を作るために小片に切り刻まれるか、押しオーツ麦を作るために蒸されて圧延される 。押しオーツ麦(旧式のオーツ麦)の場合、挽き割りオーツ麦を蒸し、ローラーで加圧し 、そして乾燥させる。押しオーツ麦は調理に約15分間かかる。すぐ調理できる押しオーツ 麦(「クイックオーツ」)は、蒸して圧延する前に小片に切り刻まれる。「インスタント 」オートミールはあらかじめ調理され乾燥されている。任意で、オートミールは甘味料お よび香味用添加物を含む。適した甘味料および香味用添加物には、塩、白砂糖、ブラウン 50 (10) JP 2012-505663 A 2012.3.8 シュガー、ステビア、シナモン、蜂蜜、ジャム、糖蜜、メープルシロップ、バター、チョ コレート、醤油、豆乳、ミルク、酢、コンデンスミルクまたはエバミルク、およびクリー ムが含まれる。イチゴ、ブルーベリー、リンゴ、モモ、マンゴー、バナナ、レーズン、乾 燥チェリー、乾燥クランベリー、ピーカン、クルミ、およびピーナツバターを含む様々な 種類の果物およびナッツもまたしばしば加えられる。オートミールは、ポリッジを作るた め、オートミールクッキーおよびオートケーキのように材料として、または多くのオート ブランパンのトッピングおよびカボックチーズのコーティングのようにアクセントとして 用いられる。オートミールは、チリコンカンの缶詰などの一部の食品の増粘剤として用い られる。オートミールはまた、一部のアルコール飲料、化粧品、石鹸、外用薬品にも用い られ、および動物飼料製品に添加されることもある。 10 【0039】 別の局面において、本発明のプロバイオティクス組成物は、単離されたバチルス・コア ギュランスを有するグリッツである。グリッツは、アメリカ合衆国南部で一般的な、アメ リカインディアンのトウモロコシ食品であり、粗挽きトウモロコシからなる。伝統的には 、グリッツ用のトウモロコシは石臼で挽く。できたものはふるいに通され、より細かい部 分はコーンミールに、より粗い部分はグリッツになる。 【0040】 単離されたバチルス・コアギュランスを、湯を必要とするスープ中に含む、プロバイオ ティクスインスタントスープもまた提供される。スープは、肉および野菜などの材料を風 味が抽出されるまでブイヨンまたは湯/熱湯に混ぜ合わせ、ブロスを形成することにより 20 作られる食品である。伝統的には、スープは、澄んだスープと濃いスープという大きく2 つの群に分類される。濃いスープは、使用される増粘剤の種類によって分類される。ピュ ーレはデンプンでとろみをつけた野菜スープであり;ビスクは裏ごしした甲殻類から作ら れ、クリームでとろみがつけられ;クリームスープはベシャメルソースでとろみがつけら れ;ブルーテは卵、バター、およびクリームでとろみがつけられる。スープおよびブロス のとろみ付けに一般的に用いられるその他の材料には、米、小麦粉、および穀物がある。 ラーメンを含む東洋式のスープ混合物は、調理に湯しか必要としない、安価で即席の昼食 として市販されている。スープの様々な種類には、トマトスープ、マッシュルーム入りク リームスープ、チキンヌードルスープ、野菜入りビーフスープ、ミネストローネスープ、 リーキポテトスープ、レンズ豆のスープ、魚のスープ、味噌汁、エンドウ豆のスープ、フ 30 ルーツスープ、クラムチャウダー、ガンボ、およびビスクが含まれる。野菜スープ、チキ ンベースのスープ、ポテトスープ、パスタスープ、およびチーズスープなどの多くのスー プは、湯を加えれば供することができる乾燥混合物の形態でも利用可能である。乾燥スー プ混合物は、脱水した物質、例えば、脱水した鶏肉および牛肉などの肉、脱水した野菜、 脱水したハーブ、脱水したスパイス、脱水した麺などを含む。乾燥スープの素(例えば、 ラーメン)の小袋は典型的には水を含まない。インスタントスープは、まず水を加え、続 いて製品を短時間(通常3∼5分間)加熱するか、または乾燥スープ混合物に湯を直接加え ることにより調理される。インスタントスープは、例えば小袋またはカップ中に保存する ことができる乾燥粉末の状態で貯蔵することもできる。噴霧乾燥粉末の形態のバチルス・ コアギュランス菌は、乾燥スープ混合物粉末を湯に加える前またはその後に加えられる。 40 【0041】 一局面において、噴霧乾燥粉末の形態のバチルス・コアギュランス菌は、本明細書に記 載のプロバイオティクス穀物組成物の内部または表面上に含まれる。好ましくは、単離さ れたバチルス・コアギュランスは芽胞の形態である。単離されたバチルス・コアギュラン スは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が純粋な芽胞 である。あるいは、単離されたバチルス・コアギュランスは栄養細胞の形態である。一局 面において、単離されたバチルス・コアギュランスは少なくとも85%、少なくとも90%、少 なくとも95%、または少なくとも99%が純粋な栄養細胞である。別の局面において、単離さ れたバチルス・コアギュランスは栄養細胞と芽胞との混合物の形態である。バチルス・コ アギュランス混合物は、芽胞90%、栄養細胞10%;芽胞75%、栄養細胞25%;芽胞60%、栄養 50 (11) JP 2012-505663 A 2012.3.8 細胞40%;芽胞50%、栄養細胞50%;栄養細胞60%、芽胞40%;栄養細胞75%、芽胞25%;また は栄養細胞90%、芽胞10%である。 【0042】 バチルス属および/またはバチルス・コアギュランスの単離された活性物質は、例えば 、粉末を添加すること、穀物組成物または乾燥スープ混合物組成物上へプロバイオティク スを噴霧乾燥すること、または該組成物をプロバイオティクスを含む溶液中へ浸漬するこ とを含む、様々な公知の方法のいずれかを用いて添加される。任意で、バチルス菌はドウ に加えられ、製品へと乾燥される(例えば、パスタ)。あるいは、バチルス菌は、湯でボ イルされる前に乾燥混合物製品(例えば、オートミールまたはスープ)と混ぜ合わされる 。別の局面において、噴霧乾燥粉末の形態のバチルス・コアギュランス菌は、穀物組成物 10 またはスープ組成物そのものに直接加えられる。さらに別の局面において、噴霧乾燥粉末 の形態のバチルス・コアギュランス菌を加えたマルトデキストリンが、穀物組成物または スープ組成物そのものに直接加えられる。任意で、噴霧乾燥粉末の形態のバチルス・コア ギュランス菌約5 x 107 CFU(食品マトリクス1グラムあたり)が、マルトデキストリンと 共に、食品組成物そのものに直接加えられる。 【0043】 細菌組成物を穀物組成物またはスープ組成物に配置するための様々な方法のうちの任意 のものを用いることができる。しかしながら、好ましい方法には、前記組成物を低湿度チ ャンバ内で、液体組成物を含む微粒化した混合物に曝露し、続いて該チャンバをおよそ80 ∼110°Fに曝露して液体を乾燥させ、それにより穀物組成物または乾燥スープ混合物組成 20 物の材料に当該成分を浸透させる、「噴霧乾燥」法が含まれる。 【0044】 典型的な濃度は、食品マトリクス1 gあたり生菌または芽胞が1 x 107から1 x 1012 CFU ; 1 x 108から1 x 1011 CFU;または1 x 109から1 x 1010 CFUである。乾燥の後、食品は 即使用することができる、または滅菌包装、例えば、3オンスの包装、6オンスの包装、9 オンスの包装、12オンスの包装、15オンスの包装、18オンスの包装、または24オンスの包 装の中に保存することができる。 【0045】 活性成分(すなわち、生菌または細胞外成分)は、プロバイオティクス穀物組成物また はスープ組成物の約0.01重量%から約10重量%;約0.01重量%から約1重量%;または約0.05 30 重量%から約0.1重量%を占める。任意で、単離されたバチルス・コアギュランスは重量で プロバイオティクス組成物の約1 mgから約10 g;約10 mgから約1 g;または約25 mgから 約75 mgを占める。最も好ましくは、バチルス・コアギュランス菌の量は、食品マトリク ス1グラムあたりの細菌が約5 x 107コロニー形成単位(CFU)である。 【0046】 一局面において、細菌の量は、プロバイオティクス組成物1グラムあたりの細菌が約104 から1014コロニー形成単位(CFU)であり(すなわち、栄養細胞および/または細菌芽胞) 、好ましくは食品マトリクス1 gあたりl05から1013 CFUである。あるいは、濃度は、食品 マトリクス1 gあたり108から1013 CFU; 109から1012 CFU;または1010から1011 CFUである 。一局面において、細菌の量は、食品マトリクス1グラムあたり約1 x 106 CFUである。穀 40 物組成物またはスープ組成物中の実際の量は、食品組成物中に分散させる組成物の量およ び分散経路によって様々である。 【0047】 一局面において、本発明は、穀物組成物または乾燥スープ混合物組成物を、摂取前に室 温にて滅菌包装中で保存することを提供する。あるいは、組成物は即時に摂取される。 【0048】 別の局面において、組成物は、単離されたバチルス・コアギュランス芽胞を少なくとも 85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%含む。 【0049】 限定ではなく一例として、バチルス・コアギュランス芽胞を含有する混合物の温度が、 50 (12) JP 2012-505663 A 2012.3.8 芽胞の発芽に必要な所望の熱ショック温度(すなわち80℃で5分間)に上昇する限りにお いて、バチルス・コアギュランス芽胞は、湯に溶解されるか湯と混合された任意の種類の 乾燥または凍結乾燥した製品と混ぜ合わせてもよい。バチルス・コアギュランス芽胞は、 調製時に、製品の製造者または消費者のいずれかによって、乾燥または凍結乾燥した製品 と混ぜ合わせてもよい。これらの乾燥または凍結乾燥した製品には、乾燥スープ混合物、 パスタ、オートミール、グリッツなどが含まれるがこれらに限定されない。続いて、穀物 組成物またはスープ組成物は熱湯中でボイルされる;例えば、コンロの上でボイルされる か、容器中に熱湯を加えるか、または穀物組成物またはスープ組成物を水と共に電子レン ジで加熱する。 【0050】 10 一局面において、バチルス・コアギュランス芽胞は保存(貯蔵期間)に耐える。すなわ ち、約12日間から約2年間;約1ヶ月間から約18ヶ月間;約3ヶ月間から約1年間;または約 6ヶ月間から約9ヶ月間、生理学的条件(例えば、消化)において生存能力または発芽能力 を保持する。 【実施例】 【0051】 実施例1:バチルス・コアギュランス培養物の調製 バチルス・コアギュランスのHammer菌(ATCCアクセッション番号31284)を、標準的な エアリフト発酵容器を用いて30℃で、ペプトン5 g、肉エキス3 g、MnSO4 10∼30 mg、お よび蒸留水1,000 mlを含有するpH 7.0に調整した栄養ブロス中に播種し、約108から109細 20 胞/mlの細胞密度まで増殖させた。芽胞形成が許容可能なMnSO4の範囲は1 mg/lから1 g/l である。栄養細胞は45℃まで活発に繁殖でき、芽胞は90℃まで安定である。発酵後、バチ ルス・コアギュランス菌の細胞または芽胞を標準的な方法(例えば、濾過、遠心分離)を 用いて収集し、収集した細胞および芽胞を凍結乾燥、噴霧乾燥、風乾、または凍結するこ とができる。本明細書において記載するように、細胞培養物由来の上清を収集し、バチル ス・コアギュランスから分泌された細胞外物質として使用する。 【0052】 上記培養物からの典型的な収率は、乾燥前の1グラムあたりの生芽胞が約109から1010個 、より典型的には、細胞/芽胞が約1000億個から1500億個の範囲である。芽胞は、乾燥後 、室温で10年間まで保存した場合に少なくとも90%の生存率を保ち、したがって、バチル 30 ス・コアギュランスのHammerの芽胞を含有する組成物の室温での有効な貯蔵期間は約10年 間である。 【0053】 実施例2:バチルス・コアギュランス芽胞の調製 乾燥バチルス・コアギュランス芽胞の培養物を以下のように調製した。1000万個の芽胞 を、ポテトデキストロースエキス24 g、鶏肉組織および魚組織の酵素消化物10 g、FOS 5 g、およびMnSO4 10 gを含有する1リットルの培養物に播種した。この培養物を、高酸素環 境下37℃で72時間維持し、培養物1グラムあたり約1500億個の細胞を有する培養物を作製 した。その後、この培養物を濾過して培養液を取り除き、細菌ペレットを水に再懸濁して 凍結乾燥した。続いて、凍結乾燥した粉末を、標準的な優良医薬品製造基準(GMP)を用 40 いて挽いて微粉末にした。 【0054】 実施例3:バチルス・コアギュランス芽胞は胃環境内で生存する 本研究は、胃を通過する際のバチルス・コアギュランス芽胞の生存率を決定するために 実施した。バチルス・コアギュランス芽胞の試料を、生存率を得るために様々な長さの時 間で擬似胃環境に供した。まず、未処理の(raw material)バチルス・コアギュランスの 均質な試料少なくとも12グラムを調製した。3N HCl(250 mlの溶媒容器6個へ150 mlずつ )を用いてpH 1の食塩水を調製し、滅菌した。pH 2およびpH 3のさらなる食塩水を同様に 調製し、pH調整した食塩水150 mlをそれぞれ含有する滅菌した250 ml容器6個を得た。生 理食塩水150 mlをそれぞれ含有する滅菌した250 mlの溶媒容器6個を調製し、滅菌した。 50 (13) JP 2012-505663 A 2012.3.8 リン酸緩衝液(約400 ml)をpH 7.2で調製した。pH 7.2のリン酸緩衝液9 mlをそれぞれ含 有する試験管(24本)を調製し、滅菌した。生理食塩水9 mlをそれぞれ含有する試験管( 120本)を調製した。GYE(グルコース-酵母抽出物)寒天培地を調製して滅菌し、水浴中 で45℃まで冷却した。未処理の試料(24個)を、それぞれ約500ミリグラム(理論上、芽 胞100億個に相当)秤量した。この試料を37℃で溶媒容器に入れ、半分を20分間、もう半 分を120分間インキュベートした。それぞれ20分間および120分間のインキュベーションの 後、試料を均一にかき混ぜ、1 mlをpH 7.2の滅菌リン酸緩衝液9 ml中へピペットで移した 。各時点からの12個の試料全てを、滅菌リン酸緩衝液を含有する試験管に入れた後、各試 料について試験管6本を使用するまで段階希釈を行った。最終的な2本の試験管についての 最終希釈液は3 x 107 および3 x 108 であり、これはそれぞれほぼ300 CFUおよび30 CFU と計数された。各試料からの最終的な2本の試験管を、70℃の水浴に30分間置いた。30分 後、それらを直ちに45℃まで冷却した。試験管1本あたり3つの滅菌ペトリ皿を用意した。 熱処理した試験管からの1.0 mlを各ペトリ皿に加え、続いて溶融した滅菌GYE寒天培地(4 5℃で)15 mlを各ペトリ皿に注ぎ、十分に混合した。凝固したら、ペトリ皿を逆さにして 40℃で48時間インキュベートした。個々のコロニーを計数した。結果を、以下の表1に示 すようにグラムあたりのCFUで表した。1.0E+10 = 1 x 1010。 【0055】 10 (14) JP 2012-505663 A 2012.3.8 【表1】 10 20 30 40 【0056】 実施例4:バチルス・コアギュランスはニョッキ(ジャガイモのパスタ)中で生存能力を 保持する 以下の研究の目的は、調理および殺菌後のニョッキ(ジャガイモのパスタ)中のGBI-30 50 (15) JP 2012-505663 A 2012.3.8 (バチルス・コアギュランス-30;BC30)の生存率を決定することであった。BC30を、食 品マトリックス1 gあたり5 x 107 CFUの量でニョッキ(ジャガイモのパスタ)中に混合し 、噴霧乾燥し、100℃で1分30秒間湯の中でボイルした。続いてジャガイモのパスタを95℃ で1時間20分殺菌した。殺菌の後、ジャガイモのパスタを家庭での調理を模して100℃で1 分30秒間調理した。パスタを4℃で30日間保存し(貯蔵期間は60日間)、およそ80℃で約5 分間熱ショックを与え、GYE寒天培地に置いた。結果は、食品マトリクス1グラムあたりお よそ1.3 x 107 CFUのバチルス・コアギュランスが、約30日間の保存後も生き延びたこと を示した。熱ショック(サーミゼーション(thermiz))の後も同様の結果が観察され、 これは、調理過程の後にパスタが主にバチルス・コアギュランス芽胞を含み、栄養細胞は ほとんど含まないことを示唆している。ジャガイモのパスタを調整雰囲気中で包装した。 10 組成物の水分活性(Aw)は、およそ0.95%であった。図1のデータは、事前ボイル、殺菌、 および調理の後、ジャガイモのパスタ中のBC30の量が食品マトリクス1 gあたり3 x 106 C FUであったことを示し、これは、ニョッキ100 g中のプロバイオティクスのおおよその一 日量は約1.3 x 109 CFUまたは100% RDA(EUガイドラインにおける所要量は、生菌10億個 )であることを示唆している。 【0057】 実施例5:バチルス・コアギュランスは卵入り生パスタ中で生存能力を保持する この研究は、殺菌後の卵入り生パスタ中のGBI-30(バチルス・コアギュランス-30;BC3 0 )の生存率を決定するために実施した。BC30を、チーズ、野菜、および肉の詰め物の入 った卵入り生パスタに、食品マトリックス1 gあたり5 x 107 CFUの量で混合した。続いて 20 、卵入り生パスタを噴霧乾燥し、100℃でおよそ5分間殺菌した。卵入り生パスタの貯蔵期 間は50日間であった。パスタを調整雰囲気中で包装した。組成物の水分活性(Aw)は、お よそ0.92∼0.97%であった。図2に図示した結果は、およそ2 x 107 CFUのBC30が、上記の 殺菌後も生き延びたことを示し、これは、バチルス・コアギュランスが卵入り生パスタ中 で生存能力を保持することを示している。 【0058】 実施例6:加熱活性化したバチルス・コアギュランスの生存 オートミール中のGBI-30(バチルス・コアギュランス-30;BC30)の、電子レンジによ る加熱に耐える能力を決定した。表2は、およそ82%のBC30が単独で1分50秒間の電子レン ジ加熱に耐えたことを示す。表2に示すように、オートミール中の当初のバチルス・コア 30 ギュランスのおよそ79%が、1分50秒間の電子レンジ加熱後に生き延び、これは、バチルス ・コアギュランスが調理後のオートミール中で生存能力を保持することを示唆している。 表2は、様々な条件下での加熱処理後のBC30の生存を示す。 【0059】 【表2】 40 A:BC30 1 g+水10 ml、75℃で30分間、45℃に冷却、段階希釈、総プレート計数。 B:BC30 1 g+水250 ml、1分50秒間電子レンジ加熱、段階希釈、総プレート計数。 C:BC30 1 g+オートミール1食分(35.6 g)+水250 ml、1分50秒間電子レンジ加熱、段 階希釈、総プレート計数。 【0060】 実施例7:Turtle Islandの乾燥スープ混合物中のバチルス・コアギュランス 本発明のプロバイオティクスであるバチルス・コアギュランスを、表3に示した量でTur tle Islandの乾燥スープ混合物に加えた。表3は、乾燥スープ混合物1食あたりのBC30のコ ロニー形成単位(CFU)の数を示している表である。 【0061】 50 (16) JP 2012-505663 A 2012.3.8 【表3】 【0062】 実施例8:デュラム小麦のセモリナのパスタ中のバチルス・コアギュランスは生存能力を 保持する 以下の研究の目的は、調理後のデュラム小麦のセモリナのパスタ中のGBI-30(バチルス 30 ・コアギュランス-30;BC )の生存率を決定することであった。BC 8 のセモリナのパスタに、1食あたり4 x 10 30 (BC 10 30 を、デュラム小麦 CFU(食品マトリクス1 gあたり約7 x 106 CFU 約30 mg);1食の量は約56グラム)の量で混合した。組成物を37∼38℃で押し出 し、続いて50℃で20時間乾燥させた。表4は、乾燥パスタの製造後および当該乾燥パスタ を約8分間ボイルすることで調理した後のBC30の生存を示す。表4に示す結果は、およそ55 %のBC30が製造過程に耐え、およそ30%のBC30が調理過程に耐えることを示し、これは、バ チルス・コアギュランスBC30がデュラム小麦のセモリナのパスタ中で生存能力を保持する ことを示している。 【0063】 【表4】 20 (17) 【図1】 【図2】 JP 2012-505663 A 2012.3.8 (18) JP 2012-505663 A 2012.3.8 【国際調査報告】 10 20 30 40 (19) JP 2012-505663 A 2012.3.8 10 20 30 40 (20) JP 2012-505663 A 2012.3.8 10 20 30 40 (21) JP 2012-505663 A 2012.3.8 10 20 30 40 (22) JP 2012-505663 A 2012.3.8 10 20 30 40 (23) JP 2012-505663 A 2012.3.8 フロントページの続き (51)Int.Cl. A23L FI 1/30 (2006.01) A23L テーマコード(参考) 1/30 Z (81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM), EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,S K,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR, BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,I S,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE 10 ,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW (74)代理人 100142929 弁理士 井上 隆一 (74)代理人 100148699 弁理士 佐藤 利光 (74)代理人 100128048 弁理士 新見 浩一 (74)代理人 100129506 弁理士 小林 智彦 20 (74)代理人 100130845 弁理士 渡邉 伸一 (74)代理人 100114340 弁理士 大関 雅人 (74)代理人 100114889 弁理士 五十嵐 義弘 (74)代理人 100121072 弁理士 川本 和弥 (72)発明者 ファーマー ショーン アメリカ合衆国 フロリダ州 マイアミ ビーチ ロイヤル パーム アベニュー 4491 30 (72)発明者 レフコヴィッツ アンドリュー アール. アメリカ合衆国 オハイオ州 ユニバーシティ ハイツ チャーチル ロード 4419 (72)発明者 ブッシュ マイケル アメリカ合衆国 オハイオ州 ブレックスビル スウィートウォーター ドライブ 4782 (72)発明者 マスケ デイビッド アメリカ合衆国 オハイオ州 シャグリン フォールズ オーバーン ロード 17210 Fターム(参考) 4B018 LB02 MD85 ME14 MF02 4B025 LB02 LB04 LG03 LG53 LG56 LP10 4B036 LF01 LH45 LK06 4B046 LA06 LB04 LC06 LG43 LG48 LP01 40
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