Emerging Women Entrepreneurs Forum in Sendai 女性起業家フォーラム in SENDAI ~私が変わる、社会が変わる!アジア・アフリカ・中米・東北の女性起業家たち~ 平 成 2 7 年 1 1 月 2 日 東北経済産業局 産業支援課 日本は、本格的な人口減少時代に入り、活力ある持続可能な地域社会の実現に女性の活躍が不可欠です。特に 女性の起業は社会的課題の解決を動機とする傾向が強いと言われており、多くの女性が起業を通じてその個性と 能力を発揮できるよう、地域としても、支援体制の整備が求められています。 今般、自ら起業しながら女性たちの活躍を支援している女性経営者の皆さんを、アジア、アフリカ、中米、そ して東北からお招きし、起業家の活躍や支援の在り方を検討しました。 フォーラム概要 (1)日 時:平成27年9月25日(金) 13:00~16:00 (2)場 所:エル・ソーラ仙台 大研修室 AER28階 (3)主催・共催:東北経済産業局、独立行政法人国際協力機構(JICA) 後 援:株式会社日本政策金融公庫 仙台支店 協 力:日本財団、アジア女性社会起業家ネットワーク(女性の地位向上協会、一般社団法人 re:terra) 協 賛:新日本有限責任監査法人、公益財団法人せんだい男女共同参画財団、 株式会社テンナイン・コミュニケーション(通訳) プログラム 13:00-14:00 第1部 「アジア・アフリカ・中米の女性起業家によるスピーチ」 1.主催者挨拶 東北経済産業局、独立行政法人国際協力機構(JICA) 2. 「アジア・アフリカ・中米の女性起業家によるスピーチ」 (海外ゲスト) ●キン・テッ・モー氏(ミャンマー) ●オドレ・シコ氏(カメルーン) ●ルールデス・マリア・メナ・デ・ゲラ氏(エルサルバドル) 14:30-15:40 第2部 「アジア・アフリカ・中米・東北の女性起業家によるトークセッション」 ① 東北の女性起業家・支援者の活動紹介 ② トークセッション コーディネーター:一般社団法人 re:terra 代表理事 渡邉 さやか氏 コメンテーター:東北大学大学院経済学研究科・教授 福嶋 路氏 (東北ゲスト) ●株式会社ホップス 代表取締役社長 工藤 昌代氏 ●株式会社ゆいネット 代表取締役 稲葉 雅子氏 ●オルウィーヴ合同会社 代表 竹下 香織氏 ●株式会社クリフ 代表取締役 石山 純恵氏 第1部 「アジア・アフリカ・中米の女性起業家によるスピーチ」 1.主催者挨拶 ○東北経済産業局 地域経済部長 岩瀬 恵一 ・女性が輝く社会の実現は、政府の推進する日本再興戦略の最重要課題の一つ。経済のグローバル化や少子高齢 化が進む中で、我が国の企業競争力の強化を図るためには、女性、外国人、高齢者、チャレンジド(障がい者) を含め、一人一人が多様な能力を最大限発揮して価値創造に参画していただける環境整備のため、様々な施策を 投入しているところ。 ・調査によると、女性の起業は男性に比べ、1/2程度に留まっているものの、その分野を見ると、男性がこれ までの会社経験を活かした領域で起業するのに対し、女性は、サービス業が多く、特に子育て、介護・福祉、理 容・美容などの分野で起業が多いと言われています。 ・女性の活躍推進は、長年にわたり男性中心で動いてきた職場に従来にない多様な価値観をもたらし、イノベー ションの創出にもつながるものであり、女性の活躍する場が広がることで、経済社会活動のあらゆる場に変革が 起き、これまでにない形での経済成長の実現が期待されている。 ○独立行政法人国際協力機構(JICA) 社会基盤・平和構築部ジェンダー・平等・貧困削減推進室長 原 智佐 ※JICA女性起業家フォーラム資料 ・JICAが国際協力を展開している国々においては、収入を得る機会や収入の格差について依然大きな男女間 格差があり、特に北アフリカ、西アフリカ、南アジア等の男女格差がかなり大きい。女性が自らの意思で職業を 選び適切な対価を得ていくためには、引き続き様々な努力が必要。 ・ 「アフリカ開発会議」においては、アフリカの経済成長に果たす女性の役割という議論の中で、女性の起業家 支援、女性の社会進出促進支援の重要性が改めて認識されたところ。 ・JICAでは、女性のエンパワーメント、能力向上を重点分野の1つに掲げている。女性の「起業」支援につ いては、地場産業振興等をはじめ、アフリカ、中米における女性企業家セミナーも開催。女性起業家から支援ニ ーズを調査すると、ロールモデル、起業家同士の情報交換の場、リーダーシップや経営ノウハウ、商品アイディ ア、融資スキーム、市場に関する情報提供という意見が挙げられ、日本の女性起業家の課題と共通するものと考 える。 2. 「アジア・アフリカ・中米の女性起業家によるスピーチ」 ○コーディネーター re:terra 代表理事 渡邉 さやか氏 http://www.reterra.org/ ・re:terra は、東北の陸前高田とアジアのカンボジアを拠点に事業を展開。昨年から、「アジア女性社会起業家 ネットワーク」を立ち上げ、メコン5か国、ASEAN10か国にネットワークを広げている。 ・東北でフォーラムを開催することにより、東北の人に開発途上国のすばらしい女性起業家の活躍を知っていた だく機会となり、また、東北地域のイメージが震災時の映像から更新されていない海外の方には、現在の東北の 状況や東北の女性起業家を知っていただく機会となる。 ●キン・テッ・モー氏(ミャンマー) ・1999年、メディアマネジメントの会社を設立。その他、旅行業、チャリティ活動として女性の自立支援、 若者のメンタリング活動等を実施。 ・文化や伝統によっては女性の起業に好意的でない国もあることからすると、ミャンマーは女性が起業するに当 たっての壁、敷居は高くない。 ・女性は忍耐強さと柔軟性を持ち合わせ、スタートアップ企業や小さな企業ということになると女性の方が多い というデータもある。女性は、サービス業、中でも美容や観光の分野、小売業で起業する傾向があると言える。 女性は常に家庭の中などで、家族などにサービスを提供しているという状況にあるため、サービス産業に関わる 傾向が強いのだと思う。 ・起業して、ワークショップ、研修、奨学金支援等をしているが、一番重要なことは、相談に乗る、メンタリン グを行うということである。 ・起業家として、特に最初の5年くらいは、要求の厳しいカスタマーやサプライヤーなどに非常に苦労したが、 今では大変感謝している。そこから様々な教訓を得ることができた。自分の会社の何が問題なのかということを 諦めずに考え、分析して変化を起こすということを繰り返し、問題点を少しずつ改善してきた。 ・モットーは、 「Never give up」と 「Nobody is perfect」(成功しているような人でも必ず失敗している)という こと。 ・起業支援で重要と考えていることは、政府、国際機関が色々支援をしてくれているが、コミュニティを巻き込 んで、コラボレーションしていくことであり、やがてそれが地域活性化につながる。 ・女性の起業家を増やすためには、女性の頭の中から変えていかなければならない。実際にビジネスをすること によって家族のサポートにもつながる。自分が強くなければできないことであり、自分が強くないと家族もコミ ュニティも助けることができない。世界を変えるということは、女性に経済的な力を与えるということによって 変えていく必要がある。 ●オドレ・シコ氏(カメルーン) ・学生時代、機械工学を専攻、現在、従業員30名の機器メンテナンス業のほか、ビューティサロンを経営し、 10名ほど雇用している。 ・カメルーンで若者のメンタリング、相談支援を提供している。その中から成長して独立をした者もいる。 ・女性にとって厳しい分野であっても、進出が不可能ではないということを伝えたい。サービス業に限らず、社 会経済分野、鉱工業など産業的な様々な分野に進出すべき。 ・女性の成功の鍵は、女性の能力の中でまだ眠っているようなもの、もしくは、まだ女性が参入していないよう な産業に女性の力を入れていくということが重要と考える。チャンスがあるところというのは、産業として完全 に確立していないところであり、男性であれば重々承知していることである。 ・起業が困難ということについては、世界中どこでも同じような状況であると思っている。自分自身がタフであ るということ、それから、出身地を愛しているということは起業する上で重要な要素と考える。 ・今まで豊かであった産業にしがみつかず、これから将来、次の世代に向けて起業や起業支援をしていくという ことが大事。 ●ルールデス・マリア・メナ・デ・ゲラ氏(エルサルバドル) ・プロダクトデザイナーとして、ハンドメイド製品のデザイン製造を手掛ける。製品は9つの国、40店舗で販 売されている。 ・私が焦点を当てているのは、女性に対して安定した仕事を提供することによりエンパワーメントを行う、女性 に力を与えるということ。 ・大学で工芸デザインを学び、工芸の世界の職人たちのコミュニティを知り、デザイナーと職人はお互い補完関 係で結ばれているということに気付き、職人たちのコミュニティとともに仕事を始めることにした。 ・子供ができてから、柔軟な融通の利く仕事をしたいと思うようになった。家族のために自分を犠牲にすること なく、それでいて経済的に自立しているということも諦めたくないと思った。この時に、他の同じような状況の 女性とともにコミュニティをつくろうと思った。田舎に住んでいる女性は、機会がなく、仕事を得たいとなると 一番近い都市まで行かなければならない状況であり、持続可能な仕事を得ることがどれほど厳しいかということ に気付いた。この気付きにより、この現実を「完全」に変えることはできないけれども、自分の知識や経験、才 能を使って少しずつ変化を起こせるのではないかと考えた。 ・ハンドメイド製品のデザイン及び製品製造の会社を立ち上げ、5つの原理に基づいたものづくりを行っている。 ①ハンドメイド:伝統的な手法、技術を保存し守るという意味がある。②環境に配慮した製品:デザインをする にあたり、人間と環境に配慮する。③女性のエンパワーメントとなること。④フェアトレードを行うこと、⑤イ ノベーション:イノベーションにより、伝統を引き継ぎつつ本当に必要とされるものを生み出す。 ・私が感じていることは、 「自分が変われば全てが変わる」ということ。外側の状況を変えることはできないけ れども、自分の中身を変えることにより、色々な力を得ることができると考えている。いつでもすばらしいこと ができるということではないが、それでも愛を持って意識を高く持つことにより、小さなことから始めるという ことはできると思う。 ○コーディネーター re:terra 代表理事 渡邉 さやか氏 ・お三方の起業の動機や、起業している自分との共通点なども見えた。一歩踏み出すことや、絶対に諦めないと いうメッセージもありましたが、やはりそこから始まるということだと思う。本日の副題「私が変わる、社会が 変わる!アジア・アフリカ・中米×東北の女性起業家たち」にもあるように、本日のフォーラムが世界を変える きっかけとなればすばらしいこと。 第2部 「アジア・アフリカ・中米・東北の女性起業家によるトークセッション」 ①東北の女性起業家・支援者の活動紹介 ●株式会社ホップス 工藤 昌代氏 http://www.hops.co.jp/company/ ・1996年に起業、今年で20年目になる。若い頃から何かしたいと思いながらも具体的なものはなく、10 年間色々な経験をした後に会社を退社、起業した。 ・現在は正社員9名のスタッフのうち6名が女性スタッフ。女性の発言力や女性ならではのパワーを感じる。 ・会社の「3つの柱」を立てるということを常に頭に入れて経営してきた。一つ目は、今の柱となる「IT を活用 した様々な WEB ソリューションを提供」すること。インターネット技術を利用して顧客の抱える問題や課題を解 決するもので、WEB エンジニアと WEB デザイナーがそれぞれの問題に解決する体制。 二つ目は、10年前から、 「東北の逸品」を紹介して販売する WEB サイト「まがりや.net」を立ち上げ、生産者 や作家と消費者をつなげることによる販路拡大事業。自社で取材から掲載までを行い、ハンドメイドや食品など 東北の素晴らしいものを紹介。現在99社576アイテムの商品を販売。三つ目は、地元の百貨店のインショッ プで実店舗を立ち上げ、ネットでは販売しきれないもの、一点ものなどを提供している。 ・スタッフ一同、念頭に置いている共通認識は、「自分たちができる技術で地域貢献する」ということ。根幹に ある思いは、地域に貢献して何か誰かのために役立つという意識に持ち、それをきちんと事業化すること。 ・起業家の支援としては、自分の活動又は経験を直接伝えながら支援している。販路拡大や IT を活用したネッ トワークの構築などをお手伝いしている。 ●株式会社ゆいネット 稲葉 雅子氏 http://www.55yui.net/ ・医療関係コンピューター販売会社の仙台営業所で勤務後退職。数か月転職活動を行い、うまくマッチングしな かったこともあり、働く場所は自分でつくるという考えから仙台で起業。 ・2000年に(有)ゆいネット(現・(株))を立ち上げ、人材教育、職業訓練、現在は起業家支援の講座等を行う ほか、女性向け情報発信誌「Actaleia」の作成も手掛ける。また、2011年に(株)たびむすびという旅行会 社を設立。人材教育をしていた経験上、人材教育においては「現地へ出向き実際に当事者の話を聞く」というこ とが非常に有効であると考えた中で、旅行と教育のコラボレーションから旅行業の会社を立ち上げた。 ・現在の起業家支援は、非常に小さい規模で開業したい人のための勉強会を行い「何か始めたいけれども、何を やったらよいかわからない」というところから、 「事業計画」の作成までを実施。 「自分がやりたかったことはビ ジネスではなくて趣味だった」と思われてそこで終わる方もいれば、 「もっとビジネスプランを作成してみたい」 という方もおり、ブラッシュアップの講座も開催。そのほか、先輩起業家が実際に仕事をしている現場を見に行 く「先輩起業家視察ツアー」や「スキルアップ講座」を実施している。 ・飲食店を始めたいという方が非常に多いが、実際に練習をする場所がないことから、練習をするための店舗も つくった。マーケティングを意識した試食会を行ってから実際にお店をオープンした方もいる。講座だけでなく、 実際に店を開くまでの過程を色々な形で支援していきたい。オープン後は、当社の広報誌を使ったPR等も行っ ている。 ・女性の方は、最初は小さく起業するという方が多いと感じる。しかし、一方で始められないという方もいるわ けで、まずは小さく始めてみるということを皆さんに伝えていきたい。 ●オルウィーヴ合同会社 竹下 香織氏 http://venusclub99.com/ ・自分らしく輝く女性で東北をいっぱいにしたいという思いを形にするため、女性と社会をつないで課題解決を する事業を行うため、 「ヴィーナスクラブ」というプラットフォーム型の女性会員制団体を立ち上げた。 ・現在行っている事業は、会員のコンサルティング、女性活躍の推進に関する企業研修、メディア、ソーシャル ネットワークなどにより企業広報の代行事務、企業マッチング、マーケティング調査、イベント企画運営等。そ のほか、秋田県の「女性再チャレンジ支援事業」で起業や再就業を支援するセミナーやイベントを開催。 ・金融機関退社後に転職したが、仕事と健康を失った経験から、女性の生き方や働き方について関心を持つよう になった。2013年に「ヴィーナスクラブ」を立ち上げ、運営会社が必要ということから、必要に迫られて、 1年半前に「オルウィーブ合同会社」を立ち上げた。設立してから、社会に求められていることを感じていると ころ。 ・ 「ヴィーナスクラブ」は「つながる・広がる」をコンセプトに、20代から70代まで約400名の会員が登 録。自営業の方から会社員や主婦等多くの方が集う。秋田県のほかに仙台支部を立ち上げた。同クラブでは、コ ワーキングスペースを運営、交流会を開催するほか、会員の起業等の相談窓口として「ヴィーナスコンシェルジ ュ」という事業も実施。秋田市と連携した創業支援事業者となっており、事業を始めたい方からの相談が多い。 昨年度は150件ほどの相談があり、そのうち14名の女性起業家が誕生した。事業のコンセプトづくりや販路 拡大のほか、様々な相談に応じている。 ・一歩踏み出すお手伝いをさせていただいている。秋田では起業したいという女性が声を上げられないで悩んで いることも多いので、そういう方の背中を押してあげられるような支援を地道に続けている。 ●株式会社クリフ 代表取締役 石山 純恵氏 http://c-r-f.jp ・クリフという会社名の由来は、 「崖の下から這い上がろう」という強い意味を込めている。2009年に起業。 過去に起業していたが、仕事をし過ぎていたので、生涯起業はしないと考えて辞めていた。サラリーマンになろ うと、民間起業を8~9社受けたが、子どもが2人いて40過ぎているとどんなスキルがあってもなかなか働け ないということに気付き、自分の居場所は自分でつくるしかないと、福島駅西口インキュベートルーム(福島県起 業支援室)で起業した。何をしたらいいのか分からない状況だったが、 「コミュニケーション」をキーワードとし た事業をしたいと思い、会社や保育園などで英語教育等を行った。そこから派生して管理職研修、コンサルティ ング業などに発展していった。当社の事業の柱は翻訳業務。その他、行政からの事業も受託している。今は、 「ふ くしまの今を語る人県外派遣事業」で全国を回っている。2013年女性起業家大賞の最優秀賞をいただいてか らは、色々なところでお話をする機会がある。 ・キーワードは「スピード力」 。スピード感を持ってやる。私のなかでは24時間、36時間というふうにタイ ムを切って色んな反応する。また、情報を収集する力と、収集したものを活かす力、捨てる力が重要。機会はど こにでも落ちていて、それを活かすも殺すも自分のアンテナ次第であり、その力を養う支援をしたい。 ・被害者意識を全て捨てること。変えるのは自分しかいない。自分が変われば周りも変わるということ。当社に 言えることでもあるが、今までになかったサービス産業、ニッチ産業、それをお金にするシステムをつくること が鍵。お金を作れるシステムをつくれる人たちを増やしていきたい。 ・パートさんを併せた社員13人中12人が女性社員。社員には、いっぱいジャンケンをすればするほど勝つ確 立は高まるのだから、どんどんジャンケンすること、負ける時もあるが勝つときもあるということを言っている。 do-do-do!。 ○学童保育事業も福島市内で3カ所開設した。子育てをしながら仕事をしたり起業したりという方のお手伝いを している。地域のために、福島のために、日本のためにということなのですが、今は、起業して、人を雇い、税 金を納めていくことが、地域のためになると考え焦点を当てている。 ②トークセッション 2011年東日本大震災前と後の女性の起業に対する意識の変化、また、2008年ミャンマーにおけるサイ クロン被災時の女性起業家支援という観点から- ※トークセッション時の意見羅列 ・ちょっとでもモノが残っていればそれを販売につなげるとか、販路の拡大をするためには自ら動くというよう なやり方で女性が動いていたと思う。その精神が震災の前は無かったけど、震災の後に強くなったのかというと、 素質的には一緒であり、それを表現する場面が震災後に訪れたといえるのかもしれない。 ・震災の前の年ぐらいから、宮城県というか仙台では、将来カフェを開きたいという女性が非常に多く、震災の 前の年に「カフェを開きたい人のための心の準備セミナー」というものを開いた。そのころは、自分がやりたい ことをカフェという形でやりたいという人が多かったが、震災後2011年は、自分のためにというよりも、誰 かのために何かをしたいけれども、その何かをしたいという手段が起業だという人が非常に多くて、何をやった らいいかわからないけれども起業したいという人が多かった。2012年は、被災地の方々が、そろそろ自分た ちも応援されるばかりではなく、自分たちも何かやりたいということで、起業セミナーに参加し始めた。東松島 とか南三陸とか気仙沼等の被災地から起業家セミナーに通ってくる方々もいた。2013年になると少し平常に 戻り、そろそろ、また自分のために何かやりたいという人が増えたが、少し観点が変わった点は、家族と共に何 かやりたいとか、姉妹で何かやりたいとか、友達で何かやりたいという考え方で起業したいという方が増えてき たように感じた。震災があって、考え方が少し変わってきたと思う。 ・2008年にサイクロンがきて、ミャンマーの南部が全部影響を受けた。非常に強風、暴風雨だったため、人々 はこの状況から逃げ出すことができず、100万人以上の人々が被害を受けた。問題は、人々が経済的にだけで はなく、心理的、精神的にダメージを受けてしまったということ。単にビジネスが、企業がやられてしまったと いうことであれば、それを復興するということができると思うが、人々が精神的にまいってしまいっている状況 で、再び立ち上がってもらうためにはどうしたらいいのかとても難しかった。 ・心のケアを行い、それに加えて通常のニーズを満たすことに努めた。例えば、避難所、水などのインフラ、電 気も支援した。ミャンマーは政府が電気の配電(電気網)を持っていないので、ソーラーパネルを設置し各企業に 電力を供給した。よって、サイクロンの後にインフラの改善が進むことになる。また、サイクロンをきっかけに、 色々なコネクションが生まれて、民間企業の間でのつながりが強くなったと感じている。国際機関とのコンタク ト、民間企業のコンタクト、政府とのコンタクトもできた。 ・興味深いのは、サイクロンにより、インフラの改善がされたことや、国際機関などをはじめ、今までネットワ ークがなかったところにネットワークや様々なつながりが生まれたこと。 「つながり」というキーワードで、女性のみならず、起業家は点(単独)だとなかなか声を発しきない場合もあ るが、そのような場合におけるネットワーク等の役割とは- ※トークセッション時の意見羅列 ・行政がやっている中間支援機関はあるが、なかなかそこにあがれない女性や、何かチャンレンジしたくて、サ ポートを受けたいと相談に行っても、なかなか行政のサポートでは自分の思いを遂げられない人が多いように感 じる。女性の起業は、社会の問題や自分の身近なところに問題を見いだして、それを事業にしたいという人が多 い。そのような人たちが自分のモヤモヤした思いを中間支援組織に持って行き、 「事業計画書の提出」と言われ ても、どうしたらいいか分からないということもある。 ・ファッション業や美容業などは、女性の感覚としてしかわからない部分も多く、男性にはわからない部分も多 い。事業として収益を上げられないのではないかと言われる場合もある。「中間支援に行くまでの橋渡し」をす る、次の一歩を踏み出せるようにサポートの役割も必要。 ・事業計画に落として、経済的にも意義のあることとして、国の支援を受けるためには、きちんとプレゼンをし て認められなければならない。 ・女性が女性を助けるということがとても重要だと思う。きちんとサポートチェーンがあるということが重要で あり、メンタル面についても支援が必要。 震災後の起業家活動について、及び他の地域への東北の経験の移転について コメンテーターの福嶋先生から- コメンテーター:東北大学大学院経済学研究科・教授 福嶋 路氏 ・一般論として、被災の後に、起業が増えるということはよくある話。一般的に、大災害の後、起業活動が活発 になる傾向がある。理由としては、利他的な、生死をかけるような経験をした時には、誰かのために何かをして あげたいというようなマインドになることがある。あるいは、経済的な理由もある。外部からお金がたくさん入 ってくる、周辺の様々な人が、今までできなかったことをやってみたいと起業に乗り出すこともある。また、色 んな地域から色んな人がやってくる。今回の大震災の後にも、あまり見たこともなかったような、シリコンバレ ーのベンチャーキャピタルがやってきて、講演をするなど、その話を聞いて沸き立つ、私もやってみようという 気になる場合もある。今までの人間関係から、つながりが世界に広がったりする。被災地に色んな人が出入りす ることが刺激になっているといった理由だと言われている。 ・女性起業家に限定した話ではないが、被災の後に、起業が増えた事例として、2005年に米国ルイジアナ州 ニューオーリンズを襲った「ハリケーン・カトリーナ」の被災後が挙げられる。被災後に貧困層が他の州に逃げ て、逆に他地域からニューオーリンズに「やる気のある人、起業家を目指すような人たち」が来たということが 要因となり起業家意識が高まったという事例もある。 もうひとつ、ニューオーリンズでは、以前から、「アイディア・ビレッジ」というNPOがあり、実は以前から 起業家支援を細々とやっていたが、「ハリケーン・カトリーナ」後に起業家支援等の受け皿となった。そこが中 心となって、起業家教育をしたり、メンターをしたり、地域の大学のMBAの学生をニューオーリンズの起業家 にマッチングしたりして、様々なコンサル活動等を行った。 震災の後に起業が増えるのは、そして起業の成功確率が上がるのは、外から色々なもの、経営資源の流入がある からだと言える。 ・私たちは、次に起こるであろう被災地に「知識」を移転する必要があり、同時に「伝えていく」責任がある。 -その他の意見- ・一歩踏み出せた人と、踏み出せない人の違いについて。男性は失敗しても何度もトライする傾向にある。女性 はよくよく考え慎重にトライするから失敗が少ないということかもしれない。 ・今日のこの場の話(事例)は、一歩踏み出した人の話。 ・男性は男性ならではの「しがらみ」や「苦労」だと思っている部分もあるはず。どっちがどうという話ではな い。 ・男性も女性も一緒にやる。受け入れながらやることが重要。 ・起業家は、自分のやりたいことをやるわけで、それだけ大変なのは当然のこと。 ・女性の能力は内に秘めている。
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