課題 20 協力ゲーム(コア,コア,最小コア)問題文

社会情報システム
課題 20
課題 20 協力ゲーム(コア, コア,最小コア)問題文 1.
コア 1.1
コアの条件 プレイヤー1, 2, 3 がいる。全体協力N
1,2,3 が成立するには配分 x1, x2, x3 が次の条件を満た
さねばならない。この条件を満たす配分 x1, x2, x3 の集合をコアという。 全体合理性
個別合理性
提携合理性
x1 x2 x3
x1 x2 x3
x1 x2 x2 x3
x1 x3
v 1,2,3
v 1
v 2 v 3
v 1,2
v 2,3
v 1,3
1
x1, x2, x3:プレイヤー1,2,3 がそれぞれ受け取る利得 配分 v 1,2,3 :全体協力したときの利得 v i :プレイヤーi が単独行動したときの利得 v i, j :プレイヤーi と j とが部分提携行動したときの利得 全体合理性:利得はすべて配分しつくされる。 個別合理性:単独行動の利得より全体協力に参加した利得の方が大きい。 提携合理性:部分提携行動の利得より全体協力に参加した利得の方が大きい。 1.2
コアの例 1 :共同出資の配分 投資額 Y のとき利益πが次のように表わされるようなプロジェクトがある。 π
10Y
100 2
プレイヤー1,2,3 が全体協力してそれぞれ Y1
10, Y2
20, Y3
1
全体協力が成立するためのコアの条件を表しなさい。 2
比例配分がコアに含まれることを示しなさい。 30 を投資するとする。 1 全体合理性
個別合理性
提携合理性
x1 x2 x3
x1 x2 x3
x1 x2 x2 x3
x1 x3
500
0
100 200
200
400
300
3
1 社会情報システム
課題 20
2 上の不等式を解いて,X1,X2,X3 が満たすべき値の範囲を求めると次のようになる。 0
x1
100, 100
x2
200, 200
x3
300
4
一方,比例配分による解は次のようになる。 x1
500 ·
x2
500 ·
x3
500 ·
10
10
20
30
500
6
10
20
20
30
1000
6
166.67
6
10
30
20
30
1500
6
250
7
83.33
5
よってこれらは 4 式を満たすのでコアに含まれる。 ■ 1.3
コアの例 2 :1 人の売り手と 2 人の買い手 プレイヤー1 が自動車を売りたい。プレイヤー1 は自動車に 90 万円の価値があると思っている
ので 90 万円未満では売らない。買い手のプレイヤー2 は 100 万円の価値があると思っているの
で 100 万円より多くは払わない。買い手のプレイヤー3 は 120 万円の価値があると思っている
ので 120 万円より多くは払わない。取引がコアに含まれるにはどのような条件が成立すればよ
いか。 プレイヤー1 だけのとき取引はないのでv 1
0である。 プレイヤー2 だけのとき取引はないのでv 2
0である。 プレイヤー3 だけのとき取引はないのでv 3
0である。 プレイヤー1, 2 のとき,90
ヤー2 は100
p
pの利得を得る。よってv 1,2
プレイヤー1, 3 のとき,90
ヤー3 は120
100で取引され,プレイヤー1 はp
p
p
90
100
p
120で取引され,プレイヤー1 はp
pの利得を得る。よってv 1,3
プレイヤー2,3 のとき取引はないのでv 2,3
p
90
120
p
90の利得を得て,プレイ
10である。 90の利得を得て,プレイ
30である。 0である。 プレイヤー1, 2, 3 のとき,プレイヤー1, 3 のときと同じなのでv 1,2,3
30である。 よって,コアの条件は次のようになる。 全体合理性
x1 x2 x3 ●
x1 ●
個別合理性
x2 ● x3
x1 x2 ●
●
x2
x3
●
x1 x3
●
提携合理性
8
これを解くと次のようになる。 0
x1
●, 0
x2
●, 0
x3
ここからプレイヤー2 の利得配分はx2
9
●
●であることがわかる。これをもとに改めて 8 式を解
くとx1, x3について次のようになる。 2 社会情報システム
10
x1
●, 0
x3
課題 20
10
● 90
つまり,プレイヤー1 は●万円
x1
体合理性の式よりプレイヤー3 の利得はx3
●万円で売却してx1の利得を得る。このとき,全
30
x1 0
x3
20 となる。 売却価額がプレイヤー1 の評価値 90 万円以上でなく 100 万円以上となるのは,プレイヤー2
が 100 万円までなら買おうとするからである。 1.4
コアの例 3 :破産ゲーム 資産家が亡くなった。残った資産は 4 億円である。これに対し債権者 1, 2, 3 がいて,資産家
にそれぞれ 1 億円,2 億円,3 億円貸していた。これを回収したい。残った資産をどのように配
分したらよいだろうか。 回収する分を利得と考える。また,ある債権者の利得は最悪の場合を想定して,残りの他の債
権者の提携行動の利得を資産から先取りした残額だとする。 全体協力の下では回収額は,v 1,2,3
4である。 債権者 1 の単独の利得は,債権者 2, 3 の提携による先取りの残りだが残りはない。v 1
債権者 2 の単独の利得は,債権者 1, 3 の提携による先取りの残りである。v 2
0。 債権者 3 の単独の利得は,債権者 1, 2 の提携による先取りの残りである。v 3
1。 債権者 1,2 の利得は,債権者 3 の先取りの残りである。v 1,2
1。 債権者 2,3 の利得は,債権者 1 の先取りの残りである。v 2,3
3。 債権者 1,3 の利得は,債権者 2 の先取りの残りである。v 1,3
2。 0。 よって,コアの条件は次のようになる。 全体合理性
x1 x2 x3 ●
x1 ●
個別合理性
x2 ● x3
x1 x2 ●
●
x2
x3
●
x1 x3
●
提携合理性
11
これを解くと次のようになる。 0
x1
●, 0
x2
●, 1
x3
12
●
これだけでは解は一意に決まらない。仮に残った資産を債権額で比例配分すると次のようになる。
4
1
● x1 4 ·
13
1 2 3 6
2
8
x2 4 ·
● 14
1 2 3 6
12
3
● x3 4 ·
15
6
1 2 3
よってこれらは 12 式を満たすのでコアに含まれる。 3 ■ 社会情報システム
2.
課題 20
コアがない場合と コア コアがない例 4 :多数決ゲーム 2.1
3人のプレイヤーが 100 万円を分けようとしている。2人以上の賛同が得られればその分け
方が実行される。いかに分ければよいだろうか。 全体協力なら 100 万円である。また任意の2人の提携の利得も 100 万円である。一方単独の場
合の利得は 0 万円である。コアの条件は次のようになる。 x1 x2 x3
x1 x2 x3
x1 x2 x2 x3
x1 x3
全体合理性
個別合理性
提携合理性
100
0
0 1
100
100
100
16
0
17
これを解くと次のようになる。 0
x1
0, 0
x2
0, 0
x3
これは全体合理性を満たさない。つまり解はない コアはない 。 そこでコアの条件を緩めることを考える。 x1 x2 x3
x1 x2 x3
x1 x2 x2 x3
x1 x3
全体合理性
個別合理性
提携合理性
100
0 ε
0 ε 1 ε
100 ε
100 ε
100 ε
18
これを解くと次のようになる。 ε
x1
ε, ε
x2
ε, ε
x3
ε
19
これを辺々足すと, 3ε
x1
x2
x3
3ε 100 3ε 100
100
ε かつ 3
3
3ε 20
21
ε 100
3
ε
22
である。よって, 100
ε 3
のとき,条件を緩めたコアは空集合ではない コアがある 。このときのコアをεコアという。特
に最小のε,つまり 100
ε
3
23
のときのεコアを最小コアという。このとき 19 式は, 100
3
x1
100
, 3
100
3
x2
100
,
3
100
3
となる。さらに,全体合理性の条件から, 4 x3
100
3
24
社会情報システム
x1
x2
x3
100
3
課題 20
25
となる。 すなわち,コアが存在しない場合でも条件を緩めればεコアが存在する。その場合,最も小さ
な緩め方 min ε の下で最小コアが存在する。 以上 5