驚異と奇跡をめぐる 歴史小説

interview
photographs by Todd Meier
驚異と奇跡をめぐる
歴史小説
2002年に
『シェル・コレクター』
で衝撃的なデビューを飾り、
短篇を中心に着実に評価を確立してきたアンソニー・
ドーア。
このほどピュリツァー賞を受賞した
『すべての見えない光』
は、
第二次世界大戦中のフランス、
サン・マロを舞台とした感動的な大作。
創作の過程と、
作品に込められた思いを、
たっぷりと語るインタビュー。
アンソニー・
ドーア
interview with Anthony Doerr
ジル・
オーウェンズ
聞き手
interview by Jill Owens
translated by Fujii Hikaru
翻訳・藤井光
アンソニー・ドーアの新作長篇『すべての
見えない光』では、二人の物語が並行して語
られる。一人は、ドイツ占領下のフランスで
暮らす十六歳の目の見えない少女、マリー
ロール。もう一人は、孤児院で育った十八歳
のドイツ兵、ヴェルナーである。そして、呪
われた宝石〈炎の海〉
、マリー ロ
= ールの父
が娘のために作るパリとサン・マロの町の模
型、貝に覆われた秘密の小洞窟など、魔術的
ともいうべき豊かな描写が物語を彩ってい
る。
僕らが忘れている奇跡
―― この小説が生まれたきっかけを教えてくだ
さい。
ある日ニューヨークで地下鉄に乗っていた
ら、携帯電話を使っている男性がいて、通話
が切れてしまった。
彼は怒り出して、
拳で荒っ
ぽく電話を叩きました。それを見て僕は、遠
く離れた誰かと話ができるなんて奇跡だとい
うことを、僕らはすっかり忘れてしまってい
る、とノートに書きこみました。そして、ラ
ジオの不思議さを読者に思い出してもらうた
めにはどうすればいいだろうかと考えた。自
分の家にいながら、そこにはいない人の声を
聞くことができるなんて、一九二〇年代や
=
にとってのインターネットのようなものだっ
ジオが最強のテクノロジーで、ちょうど僕ら
描こうとしたんです。そしてこの物語は、ラ
三〇年代には本当に奇跡でした。そのことを
町の地下には国の認可を受けた海賊たちが邸
それでいてすばらしく美しい場所でもある。
は初めてでした。町全体が砦として築かれ、
町のように思えたんです。そんな町を見たの
ような気分だった。誰かが想像で作り上げた
ルヴィーノの『見えない都市』の都市にいる
じゃないか。そこに彼がいることになったい
があれば、押し潰されずに閉じこめられるん
地下室にいて、大きな花崗岩の壁や頭上の梁
カによる爆撃のとき、その少年が難攻不落の
設定だと閃いたんです。一九四四年のアメリ
は閉じこめられていたあの少年にぴったりの
宅を構えていて、堅固な地下室に略奪品を収
――〈炎の海〉という宝石には、実在のモデルが
あるんですか。
イエスでありノーですね。よく似たものは
ロンドン自然史博物館にあって、呪われてい
ると長いあいだ信じられていたサファイアで
す。でも基本的には、
〈炎の海〉はいろいろ
な本で読んだ話から生まれてきたものです。
侵攻がはじまったとき、
ルー
調べてみると、
ヴル美術館はほとんど警戒していなかったよ
塁壁に囲まれています。五月の夜のそよ風は
僕らは夜に町に着いて、夕食のあと外を散
歩しました。初めて訪れるサン・マロの町は、
れていたサン・マロに行ったんです。
んでした」と返すほかありませんでした。
らなかったそうです。僕は「それはすみませ
破壊され、ほとんど一から再建しなければな
すよ」と答えました。町の八八パーセントが
町は一九四四年にあなたの国に壊されたんで
なんですね」と言うと、彼は「じつは、この
次に、パリの自然史博物館のことを考えま
した。そこにはどんな宝物があったのか。本
真も残っています。
ヴルの廊下で箱に入れられようとしている写
外に避難しました。レンブラントの絵がルー
〈モナ・リザ〉は布をかぶせられて、首都の
週間しかありませんでした。レンブラントや
ていた。パリからすべてを運び出す時間は数
うです。侵攻されるはずがないと高をくくっ
すばらしかった。僕は塁壁の上にいて、周囲
当に計り知れないほど貴重な鉱物が収蔵され
遠く離れた誰かと
話ができるなんて
奇跡だということを、
僕らはすっかり
忘れてしまっている
編集者に「すごく古くからある、見事な町
めていたそうです。
きさつや、マリー ロ
= ールの身の上が決まっ
たのは、もう一年が経ったころでした。
た時代のものになるはずだと感じました。
サン・マロとの出会い
―― その後どのような経緯で、第二次世界大戦
が舞台となり、少年と少女が戦争の敵味方に分か
れたのでしょうか。
初めのころ頭にあったのは、どこかに閉じ
こめられた少年と、彼に物語を読み聞かせる
少女という断片的なイメージだけでした。ど
うして閉じ込められたのかも、どんな物語を
読み聞かせているのかもわかっていなかっ
た。闇のなかを手探りで進むようなものでし
には花崗岩造りの古い邸宅の三階の窓が見え
苦労の末に再建され、
まず町が消し去られ、
そして僕のような間抜けな旅行者が気がつか
た。そんな折に、文芸フェスティバルが開か
ました。海は暗くて、船の照明がふたつつい
ないほどになった。そう考えていると、これ
ているだけでした。
僕はすっかり魅了されました。イタロ・カ
です。
以上の興味を読者に持ってもらいたかったん
習から生まれたものです。僕は視覚的な描写
身の作家としての弱点を克服しようとする練
して読んでもらえるか試していました。
にした文章を書いて、それをリアルなものと
にかなり頼ってしまうので、他の感覚を中心
ていました。真珠、化石、隕石。運び出せる
手触りで美しさを知る
ロールが非常に危険な
それから、マリー =
状況に身を置いていることも理由だったかも
しれません。包囲戦のとき、彼女のそばには
し た。
「人々の目を
ら、次はこう考えま
は決めていましたか
は砲弾が降り注いでいるのに、彼女は正気を
か? 僕にそれができるかどうかはわかりま
せん。マリー ロ
= ールは間違いなく、僕より
も強く、勇敢です。あの屋根裏部屋の周りに
して、参ってしまわずにいられるでしょう
以上に危うい状況があるでしょうか? それ
でも、自分の心の奥になんらかの強さを見出
数日間にわたって誰もいないわけです。それ
失った人にはその力
―― 短 篇 集
『シェル・コレクター』
の表題作
「貝を集
重さであれば、どうにかして運び出そうと博
物館は手を尽くしました。僕はそうした状況
について想像をめぐらせたんです。
そんなわけで、僕が知る限り、パリの自然
史博物館には呪われたダイヤモンドはありま
せん。すべて架空の
ものです。
が及ばないようなも
保つ方法を見つけ出したのですから。
目の見えない少女
を主人公にすること
のは何か?」そこで、
に興味を持ってもらいたいということは、は
「シェル」つながりでいえば、彼女には貝殻
奪 い、 で も 視 力 を
宝石だと思ったわけ
はありませんでした。その答えが出てしまえ
ということにはどんな意味があるのでしょうか。
める人」
の主人公も、マリー ロ
= ールと同じよう
に目が見えない人物です。語り手の目が見えない
然は、それほどまでの美を目指すのか? 僕
にとって、その問いは貝殻に凝縮されていま
ロールの両方に吹きこまれています。なぜ自
ました。それが「貝を集める人」とマリー
した。子どものころは、いつも貝を集めてい
動物の外見の美しさと手触りに惹かれてきま
じめから思っていました。僕はずっと、軟体
シェル
です。
ただ、僕は読者に、
宝石についてのドラ
ば、読者の興味はそこで終わってしまう。僕
す。目が見えないため、指で貝殻の種類を区
マチックな疑問を持たせるだけで終わりたく
はふたりの子どもたちの個性をしっかりと描
その質問はよくされますが、答えはないん
です。気がついたらそうなっていました。も
き出して「このダイヤモンドは呪われている
ともと、マリー ロ
= ールの章の一部は、僕自
のか」とか「宝石は本当にあるのか」という
=
み合ってくれていればと思います。
別して美しさを知るという設定と、うまく嚙
ように願っています。
熱意が、ささやかではあれ、読者にも伝わる
を分かち合おうとします。世界に対するその
歳のときに初めて書いた本は、軟体動物につ
僕は疑問集のノートは持っていませんが、
小さなメモ帳をいつも持ち歩いています。八
までに書いた五冊の本はどれも、そのふたつ
ながら、創作においては魂が汚れることのな
ソーンダーズのように、風刺的な作家であり
僕は現実に対して醒めた小説には興味があ
りません。マーク・トウェインやジョージ・
は、僕らの知識には空白があるという証拠で
ターネットは不正確な情報だらけです。それ
これだけ情報が手に入りやすい時代になっ
ても、まだ謎はたくさんあるはずです。イン
描きました。
いてでした。表紙にはエゾバイのスケッチを
を結びつける方法を模索するものです。マ
い、
すばらしい作家は確かにいます。
僕はもっ
僕は昔から、大学の学問で科学と芸術を分
けてしまうことに疑問を感じていました。今
リー ロ
= ールだけでなく、ヴェルナーを描く
ときも、僕は世界のこんなところに魅了され
す。最良の科学者は、僕らの未知という闇の
と敬虔なタイプの書き手なんでしょうね。醒
大きさは、知っていることを遥かに凌駕して
いると認めているものです。だからこそ、科
学はすばらしいんです。これまでに得られた
知識のすべてを問いつつ、人類の知識の及ぶ
――エントロピー、
秩序と無秩序といった概念が、
範囲を少しずつ広げていくのですから。
でしまう蚊の一生のこと。そういったものは
の思想、あるいは、一日もしないうちに死ん
ビザンチウムの歴史、カルヴァンやホッブス
界にひしめいています。
ケーブルカーの構造、
のあいだに、僕らの目を奪うようなものは世
とえば「雷が海に落ちても魚がみんな死なないの
子どものときに答えを求めていた疑問の数々、た
―― ヴェルナーのノートがすばらしいですね。
す。
しては驚異の念を源にするようにしていま
て書くことができないので、自分の作品に関
めきった気分になっているときは、魂をこめ
だ、僕はそう示そうとしたのだと思います。
空回りするだけ、自然とは無秩序なものなの
えです。自然に秩序を押し付けようとしても
の方向を決められるなんて、思い上がった考
別や優生学は確かに存在していました。進化
るのだと絶えず気づかせることです。人種差
てている」という主張を叩き込もうとしてい
手に負えないもの、くずをふるいにかけて捨
ヴェルナーの学校が
「我々
僕が試みたのは、
は人類の進化を秩序化している。
劣ったもの、
小説の中でたびたび登場しますね。
すべて存在するし、僕としてはそのすべてを
はなぜか」といったことが書かれています。あな
偉大な物理法則を
もってしても、
どの人間が生きるべきか
死ぬべきかを
決めることはできません。
ているんだよ、と言おうとしています。物語
を通じて、他の人たちにもそれと同じ思いを
持ってもらえたらと思っています。
驚異の念を源として書く
―― たしかに、
あなたの作品ではよく、
リアリズム
や科学が、
神話や想像力と混ざりあっていますね。
学ぶ時間がほしいんです。
たもノートを持っていましたか?
僕にとってはすべてが面白いんです。本当
に運が良くても七十年か八十年くらいの人生
何かに心奪われて夢中になると、僕はたい
てい、それを登場人物に投影して、その思い
代が次々に変わるわけですから。
でしたね。百八十七の章があって、視点や時
た。大きな模型の家を作っているような気分
巨大なパズルに取り組むようなもので、楽
しいと同時に、とてつもない忍耐が必要でし
たか。
去と現在の間を行き来するのは、どんな作業でし
ていますね。章から章へ、二人の主人公の間、過
――この作品は、ごく短い、数多くの章から成っ
す。
を押し付けようとする試みだったと思いま
ません。ホロコーストは、その恐ろしい秩序
生きるべきか死ぬべきかを決めることはでき
偉大な物理法則をもってしても、どの人間が
と信頼する必要もありました。
れているのかは読者がわかってくれるだろう
しましたが、同時に、どの時代と場所が描か
す。僕なりに読者を導いていこうと手を尽く
それに加えて、一九四四年と、そこにいた
るまでの歳月のあいだでの行き来がありま
した。
ようにして、しょっちゅう順番を変えていま
分けて、読者がどの視点で読むのかがわかる
断しました。僕はノートカードで章を色別に
し ま し た。結 局 は、A B
- A
- B
- 、過 去 現在というリズムを破ってもいいだろうと判
いろな出来事に溢れているような気がしたり
安になったり、どちらかの人生のほうがいろ
あいだのバランスに気を使いすぎていると不
登場人物の感情に入りこんでもらうよりも、
僕の文章は濃密になりがちです。細部を積
み重ねていくのが大好きなんです。
読者には、
す。
次々にページをめくっていけるはずです。
それはよかった! 確かに分厚いですが、
空白も多いから読者には親切な本だと思いま
すきまがたくさんあると消化しやすくなる。
言語による実験をうまく取りこめそうですよね。
―― 章が長いよりも短いほうが、詩的な文章や
緊張感を作り上げていくんです。
ブ・スローンズ』まで、大長篇はそうやって
物語に移っても、Aは読者の頭のなかでまだ
短い章には、物語を中断するという効果も
あります。Aの物語をいったん止めて、Bの
1973年、オハイオ州クリーヴランド生
まれ。2002年に短篇集
『シェル・コレク
ター』でデビュー。O・ヘンリー賞、
バー
ンズ&ノーブル・ディスカバー賞、
ローマ
賞等、数々の賞を受賞。2010年刊行の
二冊目の短篇集
『メモリー・ウォール』
は
ストーリー賞を受賞した。現在、妻と
二人の息子とともにアイダホ州ボイシ
に在住。
『シェル・コレクター』および『メモ
リー・ウォール』
は、岩本正恵訳で新潮
クレスト・ブックスより刊行されている。
First published on Powells.com, April 23, 2014
http://www.powells.com/
直れるでしょう」ってね。
けど、空白がいっぱいあるから、そこで立ち
多くの読者にはちょっと叙情的すぎる文章だ
いるような感じです。
「気持ちはわかるよ、
親切心みたいなものです。読者にこう言って
はありますから、章を短くするのは僕なりの
す。それはなかなか厳しい要求だという自覚
で、内面を直感的にわかってもらいたいんで
その人物の周囲にあるものを描写すること
生きています。ディケンズから『ゲーム・オ
ロールとヴェルナーの
ときどき、マリー =
photograph by Tsubota Mitsuteru
Anthony Doerr
ただいま翻訳
今秋以降に刊行を予定している注目の作品
それぞれの翻訳者の方々にご紹介いただきまし
移民、
戦争、
介護、
結婚生活。
現実と向き合っ
書かれた、
力強い物語にご期待ください。
※タイトルはすべて仮題です。
︵二〇一六年十一月刊行予定︶
ヨーロッパの放浪民
ジプシーの家族の物
語。 フ ラ ン ス に 定 住 し
な が ら も、 疎 外 さ れ、
消費社会の圏外で暮ら
し て い る さ ま、 そ の 文
化と価値観が実話を元に語られる。
家 長 の ア ン ジ ェ リ ナ ば あ さ ん に は、
働くことを知らない5人の息子と、4
人 の 嫁、 次 々 と 生 ま れ る 孫 が あ る。 そ
の 生 涯 は、 物 質 的 に は 貧 困 そ の も の。
持っているものは、子供を孕むことの
歓びと強固な家族愛、そして破天荒な
ジプシー魂だけ。だが不思議なくらい
惨めさがない。
ある日、彼らのキャンプ地に若い女
性がやってくる。よそ者扱いされなが
らも、彼女は学校を知らない子供たち
に、 本 の 持 つ 魔 力 を 根 気 よ く 教 え る。
そしてやがて、読み書きを知ることに
よって別の世界が開けることを親たち
にも悟らせる。忍耐と寛大さがもたら
すものは美しく驚異的だ。
『貧困と恩寵』
アリス・フェルネ
Grâce et Dénuement by Alice Ferney
text by Durand Texte Letsuko
デュランテクスト冽子
ベン・ファウンテン
Billy Lynn's Long Halftime Walk
by Ben Fountain
イラク戦争の
真っ最中、テキサ
スで行われたNF
Lの試合のハーフ
タイムで派手な
ショーが繰り広げ
られ た。ビ ヨン セが 大学 や軍 のマ ーチ
ング バン ドと とも に行 進し、 歌い 踊っ
たの であ る。目 的は アメ リカ 軍を 支援
し、 戦 争 へ の 支 持 を 高 め る こ と。 こ の
実話 をも とに、 ハー フタ イム ショ ーに
駆り 出さ れた 純朴 な兵 士ビ リー・ リン
を描 いた のが 本作 だ。悲 惨な 戦闘 に巻
き込 まれ、 親友 の死 も目 の当 たり にし
なが ら、英 雄扱 いさ れて 連れ 戻さ れた
ビリ ーた ち。ア メリ カで は各 地の イベ
ント に引 きず り回 され、 国威 発揚 に利
用さ れる。 彼ら を出 迎え るア メリ カ側
の金 け主義がいかに戦場の兵士たち
の現 実と かけ 離れ てい るか。 それ が皮
肉のたっぷりときいたユーモアで扱わ
れ、戦 争自 体の バカ らし さを さら け出
して いる。 権力 者と メデ ィア の壮 大な
どんちゃん騒ぎを分析する作者の鋭利
︵二〇一七年一月刊行予定︶
な目が秀逸だ。
『ビリー・リンの
ハーフタイムショー』
text by Kamioka Nobuo
上岡伸雄
8
ア キ ー ル と は、 2
014年にイギリス
のノリッチ文芸フェ
ス で 知 り 合 っ た。 彼
に誘われて街を散歩
す る こ と に な り、 書
店に入って刊行され
た ば か り の こ の 本 を 買 った。アキール
は 照 れ く さ そ う に 笑 っ た。 読 後、 余 韻
が ず っ と 残 っ た。 ア メ リカに移住した
イ ン ド 人 家 族 の 物 語。 語り手の兄は高
校 入 学 前 に プ ー ル 事 故 で 脳 を 損 傷 し、
植 物 状 態 と な る。 変 わ り果てた兄の介
護に追われて心身ともに疲弊していく
家 族。 ほ ぼ 作 者 の 実 体 験 だ。 シ ン プ ル
で淡々とした文章から、痛みと優しさ、
大 き な 哀 し み が 心 に 染 み こ ん で く る。
﹁完成するまでに 年半かかったんだ﹂
と ア キ ー ル は 言 っ た。 文字通り骨身を
削 っ て 書 か れ た こ の 小 説は、2015
年 に、 第 2 回 フ ォ リ オ 文 学 賞、 2 0 1
6 年 に は、 国 際 I M P ACダブリン文
学 賞 を 立 て 続 け に 受 賞 した。この素晴
らしい作品を日本の読者に届けられる
ことがとても嬉しい。︵二〇一七年三月刊行予定︶
『ファミリー・ライフ』
フ
アキール・シャルマ
Family Life by Akhil Sharma
小野正嗣
text by Ono Masatsugu
12
︵二〇一七年春刊行予定︶
ニューヨークの秋の
宵、ある若者が散歩を
始める。マンハッタン
を彷徨い歩き、建物や
風景に目を凝らし、人
の話に耳を傾け、何か
を思索する。考えるこ
とといえば、グスタフ・マーラーから、
白 い 鯨、 奴 隷 の 歴 史 や、 祖 国 ナ イ ジ ェ
リ ア ま で、 実 に 様 々 だ。 こ の 孤 独 な 散
歩者はブリュッセルでも通りを歩き回
り、街を見て、話を聞き、そして考える。
本 書 は 都 市 を 舞 台 に し た 散 歩 小 説 だ。
同時に移民の物語でもある。読み進め
れば、街の記憶とともに移民の歴史が
浮かび上がる。彼らの孤独な声も聞こ
えてくる。
イギリスの書店でこの小説と出会っ
た 時、 店 員 さ ん に﹁ 写 真 み た い な 小 説
だ よ ﹂ と 言 わ れ た。 そ の 通 り だ っ た。
写真家でもあるテジュ・コールの情景
描 写 は、 映 像 的 で あ り 繊 細 だ。 静 か で
美 し い 散 歩 小 説。 P E N / ヘ ミ ン グ
ウェイ賞、
ローゼンタール基金賞受賞。
『オープン・シティ』
テジュ・コール
Open City by Teju Cole
小磯洋光
text by Koiso Hiromitsu
ローレン・グロフ
Fates and Furies by Lauren Groff
︵二〇一七年夏刊行予定︶
いにしえの騎士のよ
う な 名 を 持 ち、 シ ェ イ
クスピアをこよなく愛
する俳優志望の若者
が、 同 じ 大 学 の 学 生 で
モデルもしている孤高
の少女と出会って電撃
的 に 結 ば れ る。 彼 ら の 結 婚 を、 夫 と 妻
のそれぞれの視点で追った作品 で、後
半 に は 様 々 な ど ん で ん 返 し が ⋮⋮。 独
特のエロチシズムが漂う作品で、 それ
自体がテーマではないが、死の 影 も随
所に漂う。
また、深刻なはずの場面に笑 い が仕
組まれていたり、意外な箇所に 胸 を突
くような深い悲しみを伝える一節が潜
んでいたり、喜劇と悲劇が表裏 一 体と
なったこの作品の物語世界では、 聖と
俗もまた混淆しているのだ。ス ケ ール
の大きい作品で、翻訳しながら 作 者の
熱 量 の 高 さ を ひ し ひ し と 感 じ て い る。
この作家の短 は村上春樹さんの訳で
すでに出ているが、長 は初め て の邦
訳。全米図書賞最終候補作。
『運命と怒り』
光野多惠子
text by Mitsuno Taeko
9
*VTPUN:VVU
;VTTP2PUU\ULU
5LSQpU[PLUYPZ[L`Z
WOV[VNYHWO
>:6@1\ZZP=PLYPTHH
2016年
10月
来日予定!
北の国の人々の
秘められた情熱
トンミ・キンヌネン
『四人の交差点』
古市真由美訳 2016年9月刊行予定
フィンランドで記録的ベストセラーとなった
ある一家の三代にわたる物語。
古市真由美・文
[L_[I`-\Y\PJOP4H`\TP
百年ほど前のフィンランド北東部。マリアは、
ロシアとスウェーデンに挟まれて、そのどちら
村で最初の助産師として多くの赤子を取り上げ、
とも違う言語を持ち、独自の文化を育んできた
自分の娘も女手ひとつで育て上げる強い女性だ。
フィンランドで、いま最も旬な作家のひとりだ。
そんな母とは違う生き方を望む娘ラハヤは、写
初めて本書を読んだとき、なんとフィンラン
真技師として自活しながら、母が持たなかった
ド的な物語だろう、と思った。登場人物はみな、
ものを手に入れようともがく。歳月が流れ、ラ
あふれるほどの心の痛みを抱えているのに、そ
ハヤの息子の妻となったカーリナは、意固地な
れを口には出そうとしない。鍵をかけた部屋に
姑に苦しめられる。一方、ラハヤの夫オンニが、
閉じこもるように、ひとり黙って耐えようとす
焦がれるように求めた幸せとは。三つの世代、
る。しかし秘められたその思いは、ときに激し
四人のたどる道が交錯するとき、その交差点に
く燃え上がりもするのだ。彼らの深い心の傷も、
ひとつの物語が立ち現れる。
情熱も、物語の空気が温かく包み込んでいる。
本書は著者トンミ・キンヌネンのデビュー作
物語の中でひとつの家系が世代交替していく
だが、フィンランドでは発表直後から大きな反
百年のあいだに、馬車が自動車に替わり、大き
響を呼び、ベストセラー・ランキングのトップ
な戦争が起き、冷蔵庫やテレビが家にやってく
に躍り出て、のちに舞台化もされた。現在まで
る。深い森に覆われた北国の歴史が、物語の背
に日本を含め十五か国に版権が売れ、海外での
景を川のように流れていく。時の流れの中、四
評価も高い。著者は十代の若者に国語(フィン
人がそれぞれ部屋の奥に隠したものは――ドア
ランド語)と文学を教える現役の教師でもある。
の向こうの眺めに、読者は息を呑むだろう。
パリ左岸の
ピアノ工房
停電の夜に
朗読者
ジュンパ・ラヒリ
T・E・カーハート
小川高義訳
ベルンハルト・シュリンク
パリの 小 さな 工 房 で、
若き職人が魔法のよう
に再生する名器の数々
……。眠っていた音楽
とピアノへの愛が甦る
傑作ノンフィクション。
ろうそくの灯りの下、秘
密の話を――。ピュリ
ツァー賞ほか独占! イ
ンド系女性作家による
驚異のデビュー短篇集。
もはや古典的名作。
十五歳の少年ミヒャエ
ルが経験した切ない初
恋。母親のような年の
女性ハンナを失踪させ
た秘密とは――。衝撃
の世界的ベストセラー。
松永美穂訳
村松潔訳
2000 円 590027-4
1900 円 590019-9
1800 円 590018-2
Shincho Crest Books
Catalog
1998_2016
北はスウェーデンから南はジンバブエまで。
新潮クレスト・ブックスがお届けする世界各地の文学
78タイトルをご紹介します。
(価格は税別です)
ソーネチカ
ウォーターランド
灰色の輝ける
贈り物
リュドミラ・ウリツカヤ 沼野恭子訳
グレアム・スウィフト
アリステア・マクラウド
真野泰訳
カナダ、ケープ・ブレト
ン島の苛酷な自然の中
で、漁師、坑夫を生業
とし、一族としての思
いを 胸 に 生きる人 々。
奇跡のような名短篇集。
土を踏みしめていたはず
の足元に、ひたひたと寄
せる水の記憶―。ブッ
カー賞作家によるもっと
も危険なもっとも愛すべ
き最高傑作。
中野恵津子訳
1600 円 590033-5
本の虫で、容貌のぱっ
としないソーネチカ。最
愛の夫の秘密を知った
とき彼女は……。神の
恩寵に包まれた女性の
静謐な一生の物語。
1900 円 590032-8
その名にちなんで
ジュンパ・ラヒリ
小川高義訳
2200 円 590040-3
長く口にせずにきた思
い。愛しい人を遠く焦が
れる切なさ。名手ラヒリ
が精緻に描く人生の機
微。ふかぶかと胸にしみ
る待望の初長篇。
1900 円 590037-3
2600 円 590029-8
冬の犬
シェル・コレクター
アリステア・マクラウド
アンソニー・ドーア
中野恵津子訳
岩本正恵訳
カナダ東端の島で、犬、
馬、鷲ら動物とともに、
祖先の声に耳を澄ませ
ながら人生の時を刻む
人々。生の厳しさと美
しさを湛えた八篇。
孤島で貝を拾い、静か
に暮らす盲目の老貝類
学者を襲った奇妙な騒
動 を 描く表 題 作 ほか、
O・ヘンリー賞受賞作を
含む鮮やかな全八篇。
1800 円 590035-9
彼方なる歌に
耳を澄ませよ
奇跡も語る者が
いなければ
中野恵津子訳
真野泰訳
アリステア・マクラウド
2200 円 590045-8
18 世紀末、スコットラ
ンドからカナダ東端の
島に渡った赤毛の男が
いた―。カナダの「静
かな巨人」が描く、愛
すべき一族の物語。
2200 円 590043-4
沼野恭子訳
奇跡は起こった。密や
かに。誰にも知られな
いまま。斬新な文体と
恐るべき完成度で無名
の人々の生と死を結晶
させた現代の聖物語。
憂鬱症のペンギンと暮ら
す小説家ヴィクトル。新
聞の死亡記事を書く仕
事をきっかけに、身辺に
不可解な出来事が次々
に起こって……。
2000 円 590041-0
マーカス・デュ・ソートイ
フィリップ・
グランベール
冨永星訳
野崎歓訳
1600 円 590051-9
アンドレイ・クルコフ
ジョン・マグレガー 素数の音楽
ある秘密
孤独な少年の夢想が残
酷な過去を掘り起こす。
禁断の恋。懊悩。そし
てホロコースト。 一 九
五〇年代のパリを舞台
にした自伝的長篇。
ペンギンの憂鬱
2400 円 590049-6
イラクサ
神秘的な謎に満ちた数、
素数。その不思議な美
と今も続く天才たちの
挑戦とは。小川洋子さ
ん絶賛のスリリングなノ
ンフィクション!
世界の果ての
ビートルズ
アリス・マンロー 小竹由美子訳
Shincho Crest Books
Catalog
1998_2016
ミカエル・ニエミ
岩本正恵訳
2400 円 590053-3
一瞬が永遠に変わるさ
ま。長い年月を見通す
まなざし。長篇小説を
凝縮したかのような味
わいの、
「短篇の女王」
による九つの物語。
1900 円 590052-6
海に帰る日
千年の祈り
林檎の木の下で
村松潔訳
篠森ゆりこ訳
小竹由美子訳
ジョン・バンヴィル
1900 円 590061-8
海に消えた少女の記憶
が、今もわたしを翻弄
する。荒々しく美しい、
あの海のように。アイル
ランド随一の文章家の
ブッカー賞受賞作。
イーユン・
リー 1900 円 590060-1
長い祈りに支えられた父
娘の縁。人生の黄昏に
ある男女の情愛……。オ
コナー賞、ヘミングウェ
イ賞ほか総なめの驚異の
デビュー短篇集。
アリス・マンロー 2400 円
590058-8
スコットランドの寒村か
ら新大陸カナダへ―。
三世紀の時を貫く作家
自身の一族の物語。落
ちついた声、天才的な筆
捌き。12 の自伝的短篇。
密会
ペット・サウンズ
土曜日
中野恵津子訳
村上春樹訳
小山太一訳
ウィリアム・トレヴァー 1900 円 590065-6
笑えるほど最果ての村
で、僕は育った。凍て
つく川。薄明かりの森。
そして手づくりの僕のギ
ター! スウェーデンの
傑作長篇小説。
早朝のオフィス、カフェ
の片隅の定席、離婚し
た彼女の部屋。秘めた
二 人の 愛の 決 断とは。
「英語圏最高の短篇作
家」による十二篇。
ジム・フジーリ
1600 円 590064-9
恋愛への憧れ、父との
確執、麻薬、肥満……。
ビーチ・ボーイズの最
高傑作『ペット・サウ
ンズ』は、壮絶な戦い
の記録でもあった。
イアン・マキューアン
2200 円 590063-2
ロンドン、 午 前 四 時。
未明の空に火を噴く飛
行 機。テロか? それ
とも? 名匠の優美極
まる筆 致 で 描 か れる、
脳外科医の不穏な一日。
帰郷者
記憶に残って
いること
ベルンハルト・シュリンク
松永美穂訳
見知らぬ場所
ジュンパ・ラヒリ
アリス・マンロー他
小川高義訳
世界最高の短篇小説を
この一冊に。マンロー、
トレヴァー、ラヒリ、マ
クラウド、イーユン・リー
……創刊から 10 年間の
全短篇集から厳選。
父と母の、子供たちの、
恋人たちの歳月。
『停電
の夜に』以来九年ぶり、
世界待望の最新短篇集。
フランク・オコナー国際
短篇賞受賞!
堀江敏幸編
2200 円 590072-4
帰郷した兵士が見たもの
は、なつかしい妻と、そ
の後ろにいる見知らぬ男
だった。
『朗読者』の著
者が積年の思いを注ぎ
込んだ傑作長篇。
1900 円 590070-0
初夜
2300 円 590068-7
通訳ダニエル・
シュタイン上・下
イアン・マキューアン
村松潔訳
最終目的地
ピーター・キャメロン
リュドミラ・ウリツカヤ
岩本正恵訳
ゲシュタポでナチスの通
訳をしながらユダヤ人
脱走計画を成功させた
男。後にカトリック神父
となりイスラエルに渡る
その激動の生涯。
ウルグアイの邸宅で繰り
広げられる愛の 物 語。
英国古典小説の味わい
をもつ滑稽でエレガント
な傑作長篇。アイヴォ
リー監督により映画化。
前田和泉訳
1700 円 590079-3
ずっと二人で歩いてい
けたかもしれない。あ
の夜の出来事さえなけ
れば。遠い日の愛の記
憶を克明かつ繊細に描
く、異色の恋愛小説。
上 2000 円 下 2200 円 590077-9,78-6
サラの鍵
夜と灯りと
タチアナ・ド・ロネ
クレメンス・マイヤー パリの女性記者と、ナチ
に連行された少女。六十
年の時を越え、二つの人
生が交錯する―累計
三 百 万 部 の ベ スト セ
ラー。映画化原作。
人々の心を覆う深い闇
と、そこに灯るささやか
な光。旧東ドイツ出身
の新鋭による初短篇集。
ライプツィヒ・ブック
フェア文学賞受賞。
2400 円 590075-5
シンメトリー
の地図帳
マーカス・デュ・ソートイ
杵渕博樹訳
高見浩訳
冨永星訳
2300 円 590083-0
1900 円 590082-3
黙禱の時間
ジークフリート・レンツ
松永美穂訳
1600 円 590086-1
ギムナジウムで開かれ
た追悼式。遺影を見つ
める少年に甦る、美し
い教師とのひと夏の想
い出。巨匠による、海
に彩られた純愛小説。
2500 円 590081-6
いちばんここに
似合う人
奪い尽くされ、
焼き尽くされ
岸本佐知子訳
藤井光訳
ミランダ・ジュライ
1900 円 590085-4
数学史上の知られざる
偉業「シンメトリーの地
図帳」完成とは。天才
たちの息遣いとともに
描かれる、美しき数学
ノンフィクション。
孤独な魂たちが束の間
放つ生の火花を、切な
く鮮やかに写し取った
十六の物語。映画監督
としても活躍する著者
のオコナー賞受賞作。
ウェルズ・タワー 1900 円 590084-7
夏休みを過ごす少女か
ら、暴虐を尽くすヴァイ
キングまで。多彩な声
と視点で荒涼たる日常
を浮き彫りにする、恐
るべき初短篇集。
小説のように
無限
ジュノ
・ディアス
小竹由美子訳
村松潔訳
オタク青年オスカーの
悲恋の陰には、一族が
背負った呪いがあった。
全米批評家協会賞・ピュ
リツァー賞をダブル受賞
した傑作長篇。
夫を子連れの女に奪わ
れた音楽教師。今は幸
福に暮らす彼女の前に
過去を思わせる小説が
現れて―。
「短篇の女
王」による十の物語。
オスカー・ワオの
短く凄まじい人生
アリス・マンロー ジョン・バンヴィル
都甲幸治・久保尚美訳
2400 円 590089-2
2400 円 590088-5
2200 円 590087-8
死に行く父と、見守る
家族。そして彼らを眺
める、いたずら好きの
神。慈愛と思索とユー
モアに満ちた、ブッカー
賞作家の傑作長篇。
メモリー・ウォール
ソーラー
週末
岩本正恵訳
村松潔訳
松永美穂訳
アンソニー・ドーア
2000 円 590092-2
記憶再生装置を手に入
れた認知症の老女。ダ
ムに 沈 む 山 村の人 々。
戦地でツルに出会う米
兵。記憶をめぐる静謐
で雄大な六つの物語。
イアン・マキューアン
2300 円 590091-5
太陽光発電でひと儲け
を企む狡猾で好色な
ノーベル賞科学者。だ
が懲りない彼の人生にも
暗雲が ―。現代社会
を笑いのめす最新長篇。
女が噓をつくとき
残念な日々
沼野恭子訳
ディミトリ・
フェルフルスト
リュドミラ・ウリツカヤ
ベルンハルト・シュリンク
1900 円 590090-8
ロスト・シティ・
レディオ
ダニエル・アラルコン
長山さき訳
1800 円 590095-3
夏の別荘で、波瀾万丈
の生い立ちを語るアイ
リーン。ところがその話
は ほとんど 噓 で ……。
噓をつく女たちの哀しく
も微笑ましい人生。
1900 円 590094-6
藤井光訳
2100 円 590093-9
ある朝ラジオ局を訪れ
た少年の手には、無数
の行方不明者たちのリ
ストが握られていた。ペ
ルー系アメリカ人作家に
よるデビュー長篇。
祖母の手帖
手紙
タイガーズ・ワイフ
中嶋浩郎訳
奈倉有里訳
藤井光訳
サルデーニャの祖母が
愛した「帰還兵」
。イタ
リアの新鋭による、ひた
むきで官能的な愛の物
語。美しい器楽曲を思
わせる小さな本。
テア・オブレヒト
ミハイル・シーシキン
ミレーナ・アグス
1600 円 590098-4
貧しく、下品で、誇り
高い。のんだくれの父
一族との少年時代。心
を つ か んで 離 さな い、
ベルギーの俊英による
自伝的連作短篇集!
テロリストが二十年ぶり
に出所した週末。旧友
たちの 胸 に 甦 る、 恋、
確執、
未来への祈り。
『朗
読者』の著者が描くも
う一つの「戦争」
。
2400 円 590097-7
アンネ・フランクに
ついて語るときに
僕たちの語ること
戦争に行った若者と残
された少女。ふたりは
百年の時を隔ててめぐ
り 会 う。 死 を 超 え て、
時空を超えて綴られた、
瑞々しい愛の手紙。
2200 円 590096-0
「不死身の男」と「トラ
の嫁」
。二つの物語が、
祖父の人生の謎を浮き
彫りにする ―。本屋
大賞翻訳小説部門第一
位。驚異のデビュー作。
夏の噓
終わりの感覚
松永美穂訳
土屋政雄訳
ベルンハルト・シュリンク
ジュリアン・バーンズ
ネイサン・イングランダー 小竹由美子訳
1900 円 590101-1
コミカルな語りに深い倫
理性。人間の普遍を描
きだす啓示のような物
語。フランク・オコナー
国際短篇賞受賞作。
2000 円 590100-4
美しい子ども
ジュンパ・ラヒリ他
松家仁之編
1900 円 590104-2
シリーズ創刊 15 周年を
記念して、全 101 篇か
ら選んだ傑作短篇アン
ソロジー。ラヒリ、ミラ
ンダ・ジュライ、 マン
ロー、シュリンクほか。
避暑地で出会った男女。
癌を患う大学教授。作
家とその夫。小さな噓
をきっかけに秘められ
た思いが溢れ出す。著
者十年ぶりの短篇集。
1700 円 590099-1
こうしてお前は
彼女にフラれる
イースタリー
のエレジー
都甲幸治・久保尚美訳
小川高義訳
どうしていつも、うまく
いかないのか? 浮気
男ユニオールとたくさん
の女たちが繰り広げる、
おかしくも切ない九つ
の愛の物語。
繊細な情感。とぼけた
味わい。さまざまな階
層のジンバブエの人々
の日常をモザイクさなが
らに描きだした類まれ
なデビュー短篇集。
ペティナ・ガッパ
ジュノ
・ディアス
1900 円 590103-5
精緻、深遠、洗練。四
度目の候補にしてブッ
カー賞受賞。英国を代
表する作家の、時間と
記憶をめぐる優美でサ
スペンスフルな中篇。
1900 円 590102-8
もう一度
ディア・ライフ
いにしえの光
栩木玲子訳
小竹由美子訳
村松潔 訳
トム・マッカーシー
2100 円
590107-3
謎の事故で記憶を失い、
巨額の示談金を得た
男。 失 われた自 分は、
莫大な金で取り戻せる
のか? 絶賛と論争を
呼んだ痛快な異色作。
アリス・マンロー
2300 円
590106-6
2013 年ノーベル文学賞
を受賞した短篇小説家
が、透徹した眼差しと
眩いほどの名人技で描
きだす平凡な人々の途
方もない人生の深淵。
ジョン・バンヴィル 2100 円
590105-9
大いなる不満
遁走状態
藤井光 訳
柴田元幸訳
セス・フリード
Shincho Crest Books
Catalog
1998_2016
1800 円
590109-7
姿を消した人気女優と
後を追う老俳優の、奇
妙な逃避行。いくつか
の曖昧な記憶が不意に
新しい像を結ぶ。ブッ
カー賞作家の最新作。
なぜか毎年繰り返され
る、死者続出のピクニッ
ク。平均寿命一億分の
四秒の微小生物。不条
理と笑いに満ちた圧倒
的デビュー短篇集。
ブライアン・エヴンソン
2100 円
590108-0
前妻と前々妻に追われ
る元夫。勝手に喋る舌
を止められない男。明
晰に語られる十九の悪
夢。ホラーも純文学も
超える驚異の短篇集。
ハイウェイと
ゴミ溜め
低地
ジュンパ・ラヒリ
小川高義訳
ジュノ・ディアス
江口研一訳
2500 円
590110-3
マリアが
語り遺したこと
インド民主化運動のな
か殺された弟。その身
重の妻をアメリカに連
れ帰った兄。愛と失意
が織り成す波乱の家族
史。待望の長篇小説。
1900 円
590004-5
光の子供
甘美なる作戦
吉田洋之訳
村松潔訳
エリック・フォトリノ
コルム・トビーン
『オスカー・ワオの短く
凄まじい人生』の著者
による伝説的デビュー
作。全米最優秀短篇に
選出された「イスラエ
ル」ほか全十篇。
イアン・マキューアン
栩木伸明訳
1600 円
590113-4
母マリアによるもう一つ
のイエス伝。
「聖母」で
はなく人の子の母として
のマリアが語る、美しく
果敢な独白小説。ブッ
カ―賞候補作。
1800 円
590112-7
突然
ノックの音が
私の母は誰なのか――。
パリを舞台に、映画と
現実を往来するある男
の愛の彷徨。ル・モン
ド 紙 元 編 集 長 による
《フェミナ賞受賞作》
。
2300 円
590111-0
MI5 の美人スパイと若
き小説家。二人の愛は
幻だったのか? 自伝
的で小説論的。ブッカー
賞作家による野心あふ
れる恋愛小説。
風の丘
善き女の愛
カルミネ・アバーテ
アリス・マンロー
エトガル・ケレット
関口英子訳
小竹由美子訳
しゃべる金魚。神様の
本音。ままならぬセック
ス。そして突然のテロ
――。イスラエルの人気
作家の掌篇集。オコナー
賞最終候補作。
古代遺跡の夢。ファシ
ズムとの戦い。一族の
秘密。イタリア最南端、
風の強い丘に暮らす家
族四代の物語。カンピ
エッロ賞受賞。
誰にも覚えのある家族
間の出来事を見事なド
ラマとして描きだす、マ
ンローの金字塔的短篇
集。1998 年度全米批評
家協会賞受賞作。
母袋夏生訳
1900 円
590116-5
2100 円
590115-8
2400 円
590114-1
あなたを
選んでくれるもの
子供時代
岸本佐知子訳
沼野恭子訳
ミランダ・ジュライ
2300 円
590119-6
映画の脚本執筆に行き
詰まった著者は、フリー
ペーパーに売買広告を
出す人々を訪ねる。カ
ラー写真満載、心を打
つインタビュー集。
1800 円
590118-9
中庭のあるアパートに
住む子供たちが出会っ
た奇跡。
「キャベツの奇跡」
「折り紙の勝利」
等、
祝福
されたかけがえのない
瞬間に心打たれる 6 篇。
べつの言葉で
柳原孝敦訳
中嶋浩郎訳
セサル・アイラ
1700 円
590121-9
ハンス =ヨアヒム・
シェートリヒ 松永美穂訳
絵 ウラジーミル・リュバロフ
文学会議
小説家でマッド・サイエ
ンティストの〈私〉は文
学会議に出席する文豪
のクローン作製を企む
が。アルゼンチンの奇
才が放つ衝撃作!
ヴォルテール、
ただいま参上!
リュドミラ・ウリツカヤ
1600 円
590117-2
尊敬と反発、女性関係
に金銭トラブル。ヴォ
ルテールとフリードリヒ
大王の知られざる素顔
を描く、笑いと驚きの
新しい歴史小説。
ジュンパ・ラヒリ
1600 円
590120-2
夜、
僕らは
輪になって歩く
「私にとってイタリア語
は救いだった」―夫
と息子たちとともにロー
マに 移 住した作 家が
綴ったイタリア語による
初エッセイ。
未成年
Shincho Crest Books
Catalog
1998_2016
イアン・マキューアン
ダニエル・アラルコン
村松潔訳
内戦終結後に再結成さ
れた伝説の小劇団。十
数年ぶりの公演旅行は、
ある噓をきっかけに思
わぬ方向へ。ペルー系
作家による話題作。
輸血を拒む少年と彼を
救おうとする女性裁判
官。運命や信仰をめぐ
る激しい葛藤、恋にも
似た思い。ブッカー賞
作家による最新長篇。
藤井光訳
2200 円
590123-3
1900 円
590122-6
あの素晴らしき
七年
屋根裏の
仏さま
秋元孝文訳
岩本正恵・小竹由美子訳
1700 円
590126-4
1700 円
590125-7
【最新刊】
20 世紀初頭、
「写真花
嫁」としてアメリカに
渡った少女たち。その
ささやきが圧倒的な声
になって立ち上がる全
米図書賞候補作。
奈倉有里訳
1800 円
590124-0
自分のお葬式が愛で満
たされるように願う亡
命ロシア人画家アーリ
クの最期の贈り物とは
―不思議な祝祭感と
幸福感が溢れる物語。
すべての
見えない光
誰もいない
ホテルで
煉瓦を運ぶ
小竹由美子訳
ペーター・シュタム
藤井光訳
松永美穂訳
アレクサンダー・
マクラウド
ドイツの若い技術兵と、
フランスの盲目の少女
の心を繫いだのは、ラ
ジオから流れる懐かし
い声だった─。ピュリ
ツァー賞受賞作。
森の中の宿で。リノベー
ションされた工場跡地
で。音楽フェスの夜に。
心をとらえ、運命を動
かす瞬間。スイス人作
家による短篇集。
その後の人生を一変さ
せ る 決 定 的 瞬 間 を、
瑞々しい筆致で描き出
す。故アリステア・マク
ラウドの息子による鮮
烈なデビュー短篇集。
アンソニー・
ドーア
2700 円
590129-5
リュドミラ・ウリツカヤ
ジュリー・オオツカ
エトガル・ケレット
愛しい息子の誕生から
ホロコーストを生き延び
た父の死までの、悲嘆
と哄笑と祈りに満ちた
七年。イスラエル作家
の自伝的エッセイ集。
陽気なお葬式
1700 円
590128-8
1900 円
590127-1