フランスミッション報告書 - 公益財団法人 北海道科学技術総合振興センター

北海道−フランス「食・健康クラスター」ビジネス交流ミッション
報告書
北海道バイオ産業クラスター・フォーラム
クラスター・マネージャー
西村 訓弘
(三重大学大学院医学系研究科・教授)
1.ミッション団派遣の目的
平成 22 年 5 月に北海道で開催されたビジネス交流会の際に、双方の代表が署名した「今後のビ
ジネス交流促進に関する確認書」に基づきミッションを派遣する。ミッション派遣により、北海道バイ
オ産業クラスター・フォーラムとフレンチフードクラスターの更なる交流の深化を図る。
2.ミッション団派遣期間
平成23年1月23日(日)∼29日(土)
行程表
日付
場
所
1 月 23 日(日)
1 月 24 日(月)
交流内容
日本発 ⇒フランス パリ着 ⇒ディジョンへ移動
ディジョン市
・ヴィタゴラ・クラスター歓迎挨拶
(ヴィタゴラ・ク
・北海道バイオ産業クラスター挨拶
ラスターとの交
・ブルゴーニュ地方の産業に関するプレゼンテーション
流 )
・ヴィタゴラ・クラスターによるプレゼンテーション
・ブルゴーニュ大学によるプレゼンテーション
・北海道経済産業局によるプレゼンテーション
・北海道バイオ産業クラスターによるプレゼンテーション
・ワインとブドウ菌研究所(IUVV)訪問
・Pr.Noerbert latruffe によるプレゼンテーション
・INRA(国立農業研究所、発酵研究所)訪問
1 月 25 日(火)
・アキメール・クラスターによるプレゼンテーション
・北海道企業からのプレゼンテーション
・ヴィタゴラ・クラスター企業との商談
1 月 26 日(水)
・Uniliver 社訪問(マスタード工場見学)
・Lejay Lagoute 社訪問(カシス製品工場見学)
⇒レンヌへ移動
1 月 27 日(木)
レンヌ市
・ヴァロリアル・クラスターに関するプレゼンテーション
(ヴァロリアル・
・北海道経済産業局によるプレゼンテーション
クラスターとの
・北海道バイオ産業クラスターによるプレゼンテーション
交流 )
・ヴァロリアル・クラスター企業との商談
1 月 28 日(金)
フランス パリ発
1 月 29 日(土)
日本着
1
⇒ パリへ移動
3.ミッション団の概要
北海道バイオ産業クラスター・フォーラムの小砂会長を団長として、企業5社及び、西村CM、北
海道経済産業局、ノーステック財団で訪問団(下記参照)を構成する。
【ミッション団構成員】
会社名等
役
株式会社アミノアップ化学
代表取締役会長
株式会社アミノアップ化学
海外営業室長
有限会社植物育種研究所
取締役社長
岡本 大作
日生バイオ株式会社
取締役社長
松永 政司
北海道ワイン株式会社
代表取締役副社長
嶌村 公宏
北海道ワイン株式会社
営農部次長
齋藤 浩司
丸共バイオフーズ株式会社
代表取締役社長
宮本 宣之
三重大学
経済産業省北海道経済産業
局
財団法人北海道科学技術総
合振興センター
財団法人北海道科学技術総
合振興センター
職
氏
名
小砂 憲一
備
考
団長
フランシスコ
デミンゴ
大学院医学系研究科・
教授
北海道バイオ産
西村 訓弘
業クラスター・フォー
ラム CM
バイオ産業課長
多田 好克
北海道バイオ産
副理事長・専務理事
常俊 優
業クラスター・フォー
ラム事務局
北海道バイオ産
クラスター研究部・次長
阿部 仁志
業クラスター・フォー
ラム事務局
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4.訪問先及びビジネス交流相手企業の概要
○ヴィタゴラ・クラスター(Vitagora) *交流会で概要説明あり
ブルゴーニュ地方に位置するNGOスタイルの「味覚・栄養・健康クラスター」であり、政府関係者、
州議会メンバー、企業関係者、大学関係者、及び、専従の職員(7 名、現在、8 人目を採用予定)
で構成されている。クラスターを構成する会員数は 143(大学、企業等)であり、中心は中小企業で
あるが有名な食品系大企業も入っている。
「教育+研究+企業の連携 ⇒ 革新的なプロジェクト ⇒ 新たな価値の創造」をスローガンに、
これまで 64 プロジェクトを行ってきており、100 件程度を現在準備中である。戦略的な柱として、味
覚、栄養、健康を重視した食品産業の活性化であり、参加企業の新たな商品を市場に出して行く
ことを使命としている。
○ブルゴーニュ大学(l`Universite de bourgogne) *交流会で概要説明あり
ブルゴーニュ地域にある中核大学であるブルゴーニュ大学は最近、独立行政法人となり、現在は、
予算額、2 億 3000 万ユーロで自律的な運営を行っている。学部は 10 ある、4 種類に大きく分けら
れる。博士課程は 36 の研究ユニットがあり、1500 万ユーロが研究費の総額となっている。大学がブ
ドウ畑を持っており、ワインの製造も行っている。醸造に関する数多い学位を提供しており、ブドウ・
ワイン研究所では、ユネスコ講座としてワインの歴史等を学ぶ世界で唯一の講座を持つなどの特
徴がある。
○ワイン・ブドウ菌研究所(IUVV) *訪問先
ブルゴーニュ大学ワイン・ブドウ研究所は 1992 年に設立され、建物は 1994 年に建設された。ボ
ルドー(100 年以上の歴史)とモンペリエにある同様な研究機関とのバランスを取るためにブルゴー
ニュに施設を作ることが国の政策として進められた。ブドウ栽培、ワイン製造に関する教育・研究を
行ために、研究所とブドウ畑を持っている。教育・研究以外にも普及(成果の還元)も重要な役目と
ている。学生数は 230 人、スタッフは 22 人、研究者は 13 名、テクニシャンが 8 名、その他は事務職
員で構成される。学士号を得るコース(3 年制)と学士取得者を対象とする修士課程を設置している。
ブドウ・ワインの生産に加えて、ワイン製品の流通、販売に関する学士号も提供している。マスター
コースでは醸造学免状が取得でき、フランスでは 6 箇所のみがこの免状を提供できる。ブドウとワイ
ンに関する国際機関であり、その教育にも関与している。
○INRA(国立農業研究所、発酵研究所) *訪問先
ヨーロッパで最大規模の農業研究所であり、世界でも第 2 位の規模である。高品質、機能性を持
つ食品に関する研究、競争力があり持続可能で環境にやさしい農業の研究など、明確な目標を持
った型研究を行っている。生命科学、材料科学などの研究者 1,839 名、技術者 2,572 名、技術スタ
ッフ 4,121 名で構成されている。
○アキメール・クラスター(Aquimer) *交流会で概要説明あり
フランス北部の海岸地域にあり、NGOの形態で運営されている海産物を取り扱う産業クラスター
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である。クラスターが位置する地域にある漁港では 35 万トンの海産物を水揚げしており、クラスター
には海産物の出荷、加工等の企業が参画している。クラスターには 53 企業、17 企業団体、13 研究
所・訓練機関、6 地方自治体が参画している。メンバーから選ばれたものが理事会を構成しており、
6 名の専従職員がいる。学術技術イノベーション委員会等、種々の委員会を構成して活動を行っ
ている。それ以外には、ワーキンググループを構成して活動を行っている。1)水産資源の有効活
用と付加価値の向上のための支援、2)消費者ニーズに合わせた製品開発の推進、3)海産物の
健康に配慮した提案(低脂肪、低塩分)を中心とした活動を行うことで企業を支援している。業界は
小企業が多く、新たな事業を起こして行くためには支援が必要であり、そのためにアキメール・クラ
スターが存在している。
○ヴァロリアル・クラスター(Valorial) *交流会で概要説明有り
フランス西部地域(欧州最大の乳酸品、動物飼料の生産地域)にある食クラスターである。クラス
ターが位置する Agrocampus はフランス西部地域の最大の研究機関となっている。ヴァロリアル・ク
ラスターは、2005 年にフランス西部でのクラスター形成の呼びかけによって設立されたNGO組織
であり、地域内の企業間、研究機関での連携による地域活性化、産業活性化を図ることを目的に、
経済活性化と雇用拡大のための外国企業の投資誘導などを図っている。4分野にフォーカスして
おり、機能性食品成分、食品安全と微生物、健康食品と栄養、画期的な食品技術での研究を進め
ている。常勤職員は 6 名で、3 名が各地域を担当しており、お互いの調整を行っている。256 団体
が所属しており、中心は企業である。大企業から中小企業まで企業形態は様々。教育機関、研究
機関、経済産業機関もメンバーとなっている。9 種類のテーマ別研究会によって活動を行い、情報
交換の場となっている。研究機関等への支援を押して 180 の活動が進められており、135 プロジェ
クトが資金提供を受けている。51 プロジェクトが基礎研究であり国家予算を受けている。10 プロジェ
クトは研究インフラ整備。栄養・健康に関するプロジェクトが多くなってきている。GASTRAL プロジ
ェクト、CRB プロジェクト、Imibiomer プロジェクトが事例としてある。
(ヴィタゴラ・クラスター企業)
○Dijon Cereales *交流会で概要説明有り
ディジョン・セレアル(Dijon Cereales)は、4,000 人の農業者が加盟する農業協同組合形式の会
社である。ブルゴーニュ地方を中心に 100 万トンの穀物(半分は小麦、残りの 20%がアブラナ、
30%がホップ)を取り扱っており、生産工場も持っている(加工品対応もしている)。小麦粉プラス・
プロジェクトとして、健康に良いパン、肥満にならないパンを開発するプロジェクトなども行っている。
農業者が理事会メンバーを選び、理事会が会長を選ぶ。下記の 5 種類の業務を行っている。
1)穀物の出荷、農業生産資材の共同購入
2)製粉業を行っており、200km以内のパン屋が顧客である。
3)ガーデニング製品、販売店チェーン「ガム・ベール」を通して一般消費者向けに販売している。
4)牧草農家との連携で家畜用の餌を作っている
5)野菜生産:乾燥オニオンではフランスでも有数(スープ用)、65%を輸出している。
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その他、運送業も行っており、100 台ほどのトラックを所有している。組合としての売り上げは 4 億 5
千万ユーロであり、パリのインディゴという、全体組合に所属している。ユーロ・ジェルモ社(日清製
粉と提携している会社で日清製粉が 15%出資している)との協力を行っており、ジョイントベンチャ
ーをつくり、中国向けの出荷会社を作っている。有機小麦(オーガニック小麦)を作る事業も行って
おり、日本でも発売を開始している。既にアジア、日本とも関係があり、さらに発展させることを希望
している。
○Uniliver *工場見学先
2000 年にユニリバー社が買収したアモラ・マイユ社を訪問した。同工場は、他の地域にあったマ
スタード工場などを統合し、マスタード、ピクルス、マヨネーズ、ビネガーなどの食品加工品を大量
生産する工場として機能している。加工品原料となる農作物はブルゴーニュ地域に限らず欧州並
びに世界中から取り寄せ、集中的な加工製造を行う工場として、大規模なラインを有する工場であ
った。
○Lejay Lagoute(見学先) *工場見学先
カシスを原料としたカシス リキュールを開発し、製造・販売することを発祥とする企業であり、多種
多様な果物を原料とするリキュールを製造・販売し、世界中に販売している。訪問時には、日本向
けの製品製造が開始されたところであり、日本語の表示ラベルがある新製品が大量に製造されて
いた。
○FITS International/ WITAXOS *商談先
事業化支援のコンサルタントであり、フランス及び欧州内での健康表示食品についての情報提
供及び欧州でのライセンス取得に向けたコンサルティングを行っている。
(アキメール・クラスター企業)
○Copalis *商談先
コパリス(Copalis)は、アキメール・クラスターに所属する水産物を取り扱う協同組合である。規模
は比較的大きく、ペットフードや化粧品素材、特に水産加工残滓からコラーゲン等の製造を行って
いる。鮭白子核酸を製造しており、他にコラーゲン、エラスチン、加水分解タンパク、DHA、EPA、コ
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ンドロイチンなど、海洋資源を年間 3 万 5 千トン利用して化粧品用素材などに利用している。
(ヴァロリアル・クラスター企業)
○Germipopa *商談先
種子ジャガイモの育種、マイクロチューバー技術を提供する企業であり、以前は日本でも販売し
ていた。
○Vegenov *商談先
花粉培養の技術を保有する企業であり、キャノーラで実績があり、タマネギでも確立している。ま
た、農薬もしくはその他の化学薬剤の原料候補となる天然物を探している。
○Agrival *商談先
アーティチョーク、トマト、ブロッコリーなど、約 50 種類の野菜を栽培しており、野菜成分を健康食
品として乾燥粉末も製造している。 企業規模が小さく(従業員数 15 名)、農協のサンポールドレオ
ンに昨年買収された。サプリメント素材、化粧品素材の受託研究、受託製造ができる。
○Natraveris *商談先
食品の機能性エビデンス、表示規制に関するコンサルティングを行っている企業であり、法律、
科学のエキスパート人材を抱えて、企業の欧州進出をサポートするコンサルタント業務を行ってい
る。市場調査等も対応可能である。健康強調表示食品製品の配合から製品の有効性に関する書
類の整備、販売許認可の申請等が可能である。
○Agronor *商談先
肥料、農薬、栽培に関する技術について情報を有している企業である。
○Quimper Cornouille Development *商談先
カンペール(Quimper)市に事務所がある企業誘致・地域開発公社である。
○MANE *商談先
2400 名のグループ企業に属する社員 50 名の会社であり、香水や香料の製造を行っている。2年
前から酵素分解副産物抽出物を健康食品に適用する研究を行っている。情報交換のみ。グルー
プ本体は、インドネシアに工場を持ち、南フランスに本社がある。香料が主たる事業であり、海産物、
植物、動物起源のものを酵素分解し、抽出を行うことで香料を作っている。
○Val de Rance *商談先
ブルターニュ地方のリンゴのみを利用してサイダー(シードル)を製造している。オーガニック・ス
パークリング・ジュースも製造している。現在、日本へは関東、関西地区のみに輸出しているが、北
海道には実績が無いので取扱い先について感心がある。リンゴの搾りかすはペクチン製造企業へ
の販売及び家畜飼料として利用している。
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○UBS(University of Bretagne-Sud) *商談先
ブルターニュ(Bretagne)地方にある新しい大学であり、農作物生産技術、評価技術について研究
が行われている。日本の企業、大学等の研究交流を求めている。
○UFAB *商談先
UFAB は卵、豚、穀物などを含む有機農作物を製造、販売している。
○Laboratoire Goermar *商談先
GOEMAR は、持続可能な農業のための技術開発に注力しており、植物の栄養と植物保護の分
野での製品をブルターニュで開発している。米国を含む 45 カ国に展開しており、日本企業との連
携も求めている。
5.交流事業の実施内容
1)Dijon Cereales 本部にて行った交流会(1 月 23 日午前)
○Pierre GUEZ・ヴィタゴラ理事長(Dijon Céréales 社長)からの挨拶
日本から最初のクラスター関係者として北海道バイオ産業クラスターを迎え、F2Cを通して交流
ができてうれしい。昨年 3 月にヴィタゴラを北海道から訪問した。5 月にはフランスからの訪問を北
海道に送った。こういった交流ができてきており、それを受けての今回の訪問に感謝している旨の
挨拶があった。
○ミッション団小砂会長からの挨拶
今回の北海道からのミッション団受け入れについての感謝と、本事業をきっかけとした今後の交
流の発展に期待する旨の挨拶があった。
交流会で挨拶する小砂ミッション団会長(左)と Pierre GUEZ・ヴィタゴラ理事長(右)
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○日本からの訪問者の自己紹介
○ブルゴーニュ地方の経済に関する説明(ディジョン経済開発公社ADR:Alexis Giloppe 氏)
ディジョン経済開発公社ADRは 2005 年に設立され、ブルゴーニュ州の開発公社であり、国との
交流がベースであるが、地域とも交流し、企業との交流を行っている。理事会は半分が企業、半分
が政治家で構成される。ミッションは、1)他の地方海外企業からの投資の受け入れ、2)地域内の
パートナーシップ及び各自治体レベルでのコーディネーション、3)戦略的な取り組みへのフォロー
アップ、の3つである。これらに加え、投資支援等、いろいろな国からの受け入れを得ていることに
ついても説明があった。
○ヴィタゴラ・クラスターについての説明(Geoffroy Trinh 氏)
ヴィタゴラ・クラスターの概要と最近の取り組みについて説明があった。
○ブルゴーニュ大学の紹介(Fabric Meriaudeau副学長・国際関係担当が説明)
ブルゴーニュ大学の概要、外国大学等との連携についての考え方などについて説明があった。
○北海道バイオ産業クラスターの説明(多田好克・北海道経済産業局バイオ産業課長)
北海道バイオ産業クラスターの概要と特徴的な取り組み、施設等について説明があった。
○ノーステック財団の説明(常俊優・財団法人北海道科学技術総合振興センター副理事長・専務
理事)
北海道バイオ産業クラスターの概要と特徴的な取り組み等について説明があった。
ノーステック財団(常俊専務理事)及び北海道バイオ産業クラスター(多田課長)の説明
○ディジョン・セレアル(Dijon Cereales)の説明(Pierre GUEZ 社長)
ビデオを用いてディジョン・セレアルの事業内容についてセクションごとに説明があった。
2)ブドウ・ワイン研究所にて(1 月 24 日午後)
○アレキサンドル教授からの説明
研究所についての歴史、内容を説明があった。研究についての説明では、2 つのグループが品
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種に関する研究を実施しており、一つグループは、ブドウの農薬を減らすために、植物の自然防御
に関する研究を行っている。自然防御では、ブドウが持つ自然防御能力を高めるために、海草な
どから精製した多糖類をブドウの木の葉、実等に散布し、自己防御に関わる物質であるフィトアレ
キシン(寄生菌が植物体に侵入したときに植物細胞が合成する抗菌性物質であり、カビからブドウ
を守るもの)の生産を促進することを利用している。キチナーゼ(カビの内壁を壊すもの)を利用す
ることでブドウの木の表皮に刺激を与えて膜を強くする機能についても研究を行っている。第二の
グループでは、気候変動によるブドウに対する影響を調べている。醸造については 3 種類の研究
を行っており、第 1 には、消費者からのワインに対する期待を調べることで「消費者が感じる良い味
覚」について調べている。長く寝かしたワインが持つ志向性への良い効果とは何かを調べている。
欧州での嗜好とアジアでの嗜好は異なるなど、多様性を検討している。白ワインには無機質な味覚
があるがそれは何かを調べている。第 2 の研究では、物理化学的な相互作用について調べている。
ワインと樽、コルクとの相互作用、外部の酸素がワインの中に入ってくる機構、コルクを通した酸素
透過について調べている。また、ワインの芳香の揮発性に影響を与えることがその後のワインの味
覚に影響を与えること、微生物がワイン醸造に与える影響、ワインの劣化に対するブレタノミセス
(微生物:酵母の一種)の影響などについて調べていることなどについて説明があった。
ブドウ・ワイン研究所の入り口にて
説明を行うアレキサンドル教授
○ラスプール教授(Pr. Norbert Latruffe)からの説明
ラスプール教授はフランス国立医療研究センターの勤務であり、食品の生化学、食品と健康との
関係を主な研究テーマとしている。食品に使われるさまざまな構成要素の研究と、ポリフェノールを
保護し、効果を発揮させるための研究を主に行っている。医療研究センターは 250 名が所属し、11
チームの研究グループで構成されている。ラスプール教授の研究グループは大学の生化学部門
の建物にあるが、医学部内、農学部内にいる研究チームもある。ラスプール教授が所属するチー
ムは第 10 チームと名づけられており、4 名の教授がいる。研究内容は、ポリフェノールの健康への
影響であり、分子ターゲットの同定も行っており、食品中の微量構成物による健康への効果、リスク
について栄養学価値についてより知識を高めることを目指しているとのことであった。有効成分に
ついては毒性試験、血液データなどについて前臨床試験を実施し、臨床試験を行うとともに、遺伝
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子レベルでの影響、制御機能について調べている。数千種類(5000 から 8000 種類)のポリフェノー
ルを対象として研究を行っており、これらの健康への有効性を、感染症の予防、循環器系への効
果などに着目して分子レベルで調べていることについて詳細な説明があった。
説明を行うラスプール教授
3)ヴィタゴラ本部でのミーティング(1 月 25 日)
○アキメール・クラスターの説明
アキメール・クラスターの概要と過去に行った取り組み並びに現在進行形の取り組みについて詳
細な説明があった。
○日本企業からのプレゼンテーション
ミッション団に参加した企業から事業概要等について各社が説明を行い、活発な質疑応答が行
われた。
ミッション団企業からのプレゼンテーションの様子
○クラスター間での会議(北海道バイオ産業クラスター・フォーラム、ヴィタゴラ・クラスター間)
北海道バイオ産業クラスター・フォーラム(小砂会長、多田課長、常俊副理事長・専務理事、阿部
次長、西村CM)、ノーステック財団、ヴィタゴラ・クラスター(Mr. Geoffroy TRINH、Mr. Christophe
10
BREUILLET)の間で、今後の連携について話し合いを行った。
これまでの交流によって両クラスター間の信頼関係を十分に構築することができ、今後は具体的
な連携を行うことを確認した。連携して取り組む課題は、中長期的視野に立つ課題と短期的に成
果が得られる課題に分けることで合意した。中長期的課題については、お互いが実施している事
業内容(研究開発内容)リストを交換し合い、リストを基にしたミーティングを行うことで「共通の課題
(One target)」を選定し、世界的な事業展開の視点に立った取り組みをそれぞれが分担しながら
実施することを目指すこととした。短期的課題としては、例えば本ミッションで可能性が見出された
「有限会社植物育種研究所のタマネギ種をブルゴーニュ地域で試験的に栽培を試みることでの連
携」など、直ぐにも取り掛かれる課題を見出し、両者間で検討することとした。
以上の検討に際して、両クラスター間で課題リストを交換し、リストを基にした検討を行うことを確
認した。
○ヴィタゴラ・クラスター企業との商談
ヴィタゴラ・クラスターに参加する企業、並びにアキメール・クラスターに参加する企業と本ミッショ
ン団に参加した企業間で個別の面談形式で意見交換を行った。
4)ヴァロリアル・クラスター(Valonial)との交流会(1 月 27 日午前・午後)
○ヴァロリアル・クラスターからの説明
フランス西部地域(欧州最大の食糧生産地域であり、乳酸品、動物飼料の最大の生産地)のクラ
スターであるヴァロリアル・クラスターから、クラスター概要について説明があった。また、研究機関
等が行う 180 の活動を支援しており、135 プロジェクが公的な資金提供を受けており、栄養・健康に
関するプロジェクトが多くなってきている。代表的な取り組みとして GASTRAL プロジェクト、CRB プ
ロジェクト、Imibiomer プロジェクトを事例として詳細な説明があった。
○北海道バイオ産業クラスターの説明(多田好克・北海道経済産業局バイオ産業課長)
北海道バイオ産業クラスターの概要と特徴的な取り組み、施設等について説明があった。
○ノーステック財団の説明(常俊優・財団法人北海道科学技術総合振興センター副理事長・専務
理事)
北海道バイオ産業クラスターの概要と特徴的な取り組み等について説明があった。
○ヴァロリアル・クラスター企業との商談
ヴァロリアル・クラスターに参加する企業、並びにアキメール・クラスターに参加する企業と本ミッシ
ョン団に参加した企業間で個別の面談形式で意見交換を行った。
7)今後の国際交流事業推進方法や販路拡大・技術交流の可能性等
食の機能性表示についてのフランスにおける状況は、昨年の訪問時(2010 年 3 月)からは大きな
変化が感じられた。昨年の訪問時には、「食の機能性評価」に関する説明が多く、食の機能性表示
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が食の付加価値を上げるという考え方が期待を持って語られていた。これに対して、今回の訪問時
には、「食の機能性表示」を行うには、「薬」に近い評価が必要であり、「食」と「薬」が明確に分けら
れて語られていた。このような状況の変化をもたらした最大の原因は、フランス政府(正確には、E
U本部)の「食の機能性表示」に関する指針が、未だに明確に提示されておらず、当事者における
過剰な反応が背景にあるように感じた。
最近でも、100 件程度の「食の機能性表示」に関する申し入れがEU圏であったが、その中で承
認されたものが数件程度という実態とのことで、「食」に「機能性」を表示して販売することへの困難
さの現状が、今回の訪問時の現地企業、クラスター関係者へのヒアリングから感じ取れた。
しかしながら、今後の予測としては、フランス政府から「食の機能性表示」に関連した指針が明ら
かにされることが期待されており、その時期に期待を寄せながら、各食品企業が「食の機能性につ
いてのエビデンス形成」を目指して、大学等の研究機関と共同研究を行っていることも確認された。
以上のような状況分析から、北海道の機能性食品・化粧品を製造販売している企業がEU圏へ進
出する場合には、EU圏における法制度整備の動向を的確に把握しながら準備しておくことが重要
になると考えられる。即ち、今回、交流を持った「フランス・食クラスター」の関係者と密接な関係を
維持し、的確な情報を得ながらEU進出に必要となる「エビデンス・データ収集」などで連携(技術
交流)を行って行くことが重要であると思う。
フランスを含むEU圏は、食に関する規制が厳格な地域であり、このような地域への進出には、的
確な水先案内人となる現地のパートナーが必須である。このためのヴィタゴラ・クラスターをはじめと
するフレンチ・クラスターと協働した機能性食品等の開発など技術交流を継続的に実施し、その延
長として、「機が熟した段階」で進出を図り、フレンチ・クラスター関係者(及び所属企業)の協力を
得ながら販路拡大を行って行く戦略が手堅いように思う。
以上
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