大規模障害者収容施設コロニー成立の歴史的背景

15
原著
大規模障害者収容施設コロニー成立の歴史的背景
相
澤
譲
治
神戸学院大学 総合リハビリテーション学部
社会リハビリテーション学科
[要約]大規模障害者収容施設コロニー成立の歴史的背景を経済的要因、政治的要因をふまえて考察す
る。また、世界的にはノーマライゼーション理念が浸透する
∼
年代にわが国においてコロニー
を設立せざるをえなかった要因を重度障害児・者とその家族の実態とも併せて論じる。戦後、障害者に
対する法律は社会更生できる障害者を対象として成立している。そのため、重度心身障害児・者のため
の施設はなく、家族(主に母親)が在宅で介護せざるをえない状況であった。そこで、重度心身障害児・
者を対象とした大規模収容施設であるコロニーが設立されるようになったのである。先行研究は、障害
者福祉の研究者とコロニーに関与した実践者の論文を考察している。
キーワード:コロニー
Ⅰ
障害者
親亡き後
れていったのか。その歴史的要因を本人及び家族
問題意識
コロニーの多くは
の状況をふまえて論じる。
年代∼
年代になって
主に自治体によって設立されている。国立コロ
まず、コロニー自体の意味を各社会福祉辞(事)
典で確認することにする。
ニーや地域コロニー(運営は事業団)である。世
「心身障害者のための総合社会福祉施設で、長
界的視野でいえば
年代は障害者福祉施設を中
期入所(場合によって終身保護)を可能として
心にノーマライゼーション思想の影響を受けてコ
広大な敷地内に病院や訓練施設などの諸サービ
ロニー解体ないし廃止の方向がなされている時代
ス機能を有して総合的な生活共同体をなしてい
である。できるかぎり地域社会においてあたりま
る施設群をいう(以下、略)」[
えの生活をしていくことがノーマライゼーション
「心身に障害をもつ人々を長期もしくは終身に
の理念である。
バンク−ミケルセン
(デンマーク)、
わたって保護するために設立された大規模な総
ニィリエ(スウェーデン)
、ヴェルフェンスベル
合福祉施設群(以下、略)」[
]。
]。
ガー(アメリカ)等によるノーマライゼーション
「一般的に、他の土地に永住目的で集団移住し、
理念とその具体化への浸透は障害者福祉領域のみ
新たに形成された社会・地域をいい、
『植民』ま
でなく社会福祉全体へと影響を与えている。
「共
たは『植民地』等と訳される。社会福祉分野で
生」でなく、
「隔離」を基本とするコロニーがな
は、障害者の権利保障は国家・社会の義務とす
ぜこの時代に主に自治体によって建設(設立)さ
る理念の下、劣悪な状況下にあった障害者の救