Ⅰ 北海道の養蜂 Ⅱ みつばちのカースト群(コロニー)の構成員

Ⅰ
北海道の養蜂
北海道には、5月から10月頃まで全国の養蜂家が道内にみつばちを移動させ、
約180戸、5,800群が活動しています。
養蜂家の戸数は全国の2%程度ですが、採蜜量は全国の17%を占めており、
北海道は四季折々に豊富な蜜源がある地域となっています。
みつばちは花粉や花蜜を花からもらう代わりに、イチゴやリンゴなど、実をつけ
る植物の花粉交配に大きく貢献しています。
私たちが食べている食料の1/3は、みつばちなど昆虫による花粉交配を必要と
しているといわれています。
もちろん農産物だけではなく、多様な植物によって構成される生態系も花粉媒介
者がいることで維持されています。
Ⅱ
みつばちのカースト群(コロニー)の構成員
名称
英名
女王蜂
QUEEN
雄蜂
DRONE
働き蜂
WORKER
イメージ
性
別
育つ巣房
羽化日数
脳
触
角
蜜
胃
ろ う 腺
卵
巣
貯 精 嚢
メス
オス
メス
王台
雄蜂巣房
働き蜂巣房
16日
23日
21日
小さい
大きい
大きい
1,600
300,000 2,400
化学受容器
化学受容器 化学受容器蜜
小さい
小さい
大きい
なし
なし
あり(4対)
発 達 ( 3 00
未 発 達 ( 2~
なし
卵巣小管)
12卵巣小管)
発達
なし
痕跡
清 掃 、育 児、
防 衛 、造 巣、
巣での役割
産卵
なし
食 糧 貯蔵 、採
餌その他
100~
全般30,000
一群当たり
1匹
2,500匹 ~60,000匹
餌
ローヤル
働き蜂から
蜜・花粉
ゼリー
もらう蜜
寿
命
1~8年
最大 60 日程度
1~6か月
ミツバチの群(コロニー)には外観の異なる3種類のみつばちがいます。女王蜂、
雄蜂、働き蜂で、これをミツバチの「カースト」と呼んでいます。
働き蜂は女王蜂と同じく雌ですが、生殖能力がなく、形態的に花で蜜や花粉を集
めるのに適しています。
女王蜂は採集行動はまったくせず、巣の中では産卵が主な仕事です。また女王物
質を分泌して、働き蜂の卵巣の発達を抑え集団の求心力となります。
働き蜂は、それ以外のいっさいの仕事をしています。
雄蜂は、繁殖期以外にはあまり現れず、未交尾の女王蜂(処女王)との交尾のた
めにだけいます。そのため巣の中の仕事はいっさいしません。餌は働き蜂からもら
えるのですが、繁殖期を過ぎると働き蜂によって追い出されることがよくあります。
みつばちの場合、染色体数からみれば、雄は半数体、雌(女王蜂と働き蜂)は二
倍体です。受精卵からは雌が、未受精卵からは雄が発生します。雌になる受精卵に
は、女王蜂になるか働き蜂になるかの違いはありません。産み付けられた場所が「王
台」であれば女王蜂になりますが、働き蜂用の六角形の巣房に産み付けられた卵か
ら孵った幼虫を、孵化後2日程度までに王台に移したり、人工的にローヤルゼリー
を与えて飼うと女王蜂になります。
Ⅲ
ミツバチの分業=働き蜂の一生
○
貯蜜係:12-18日
働き蜂は群が必要とするほとんどの仕事をしますが,この仕事の
種類は成虫になってからの日数を追って変化していきます。
おおまかに内勤と外勤とに分かれていますが、内勤の間では、育児
(ミルク分泌)、造巣(蜂ろう分泌)、貯蜜(酵素分泌)の3つが
体の生理状態の変化を伴う大きな流れとなります。
また外勤蜂が一番日齢の進んだものとなることで、働き蜂が減り
にくい分業構造となっています。
内勤のうちは24時間体制で仕事をしますが、何交替かあるよう
で、1匹あたりの労働時間は6-8時間程度という観察があります。
外勤蜂は日中は花に通い、夜間は巣の中でじっとしている(休息)
ことが多いようです。
<ミツバチの日齢分業の流れ>
○
勤蜂が集めてきたハチミツを受け取
って、巣房に貯えます
○
外門番:16-24日
掃除:羽化後-5日
他
の巣から蜜を盗みに来た蜂
(盗蜂といいます)や外敵を巣門
で見張っていて迎撃します
巣房の掃除をします。あとは休んでいるか、
仕事を探しているか...(もっと日齢が進んで
も掃除はよくする仕事の一つです)
○
外勤蜂:20日-
蜜や花粉を集めに花に通います。
また巣を冷やすための水を集めて
くるものもいます
○ 育児:3-12日
花粉を食べてミルクの分泌ができるように
なると、幼虫の世話をします。
女王蜂に餌のローヤルゼリーを与えるの
もこのころです
○ 巣作り:8-16日
蜂ろうの分泌が盛んになり巣を作ります。
また蛹になる直前の幼虫の巣房に蓋をし
ます
※
春や秋の標準的な分業の進行を示しています。
日齢は季節や、群の状態、仕事の有無(流蜜の有無,働き蜂の
構成の変化)などによって大幅にずれることがあります。
また個体差も大きく、特定の仕事を長期間し続けるものや、死
体運びなど特殊な仕事に従事するものもいます。