第4回思春期保健シンポジウム「10代の性と生」の報告。

Vol.9
平成23年8月号
発 行:八千代市思春期保健ネットワーク会議事務局
問い合わせ:八千代市 母子保健課 ☎047-486-7250
第4回思春期保健シンポジウム「10代の性と生」の報告。
4回目となった思春期保健ネットワーク
会議主催の「思春期保健シンポジウム」が、
平成23年3月6日(日)八千代市総合生涯
学習プラザで開催され、小中学生の保護者を
中心に92名の参加がありました。今年のシ
ンポジウムのテーマは~私達、大人が子ども
たちにできること~
前半は、東京医療保健大学准教授渡會睦子
氏をお招きし、
「性教育それは生きるための
心を学ぶ教育」をテーマに講演をいただき、
後半はフロアの方からも意見をいただきな
がら活発な意見交換が行われました。
▲後半の意見交換は、保護者代表として父親・母親の
立場からの発言をいただき、フロアからのも意見交換
も活発に行われました。
※2~3 面に関係記事
《思春期保健ネットワーク会議の活動》
▲会場内にブースを設置し、思春期保健ネットワーク
会議の紹介のほか、助産師会や健康教育推進校八千代
台東第二小学校で使用している教材展示、習志野健康
福祉センターによる性感染症予防に関する情報、家庭
教育学級の紹介等の展示をしました。
7 月 20 日、平成 23 年度第1回目の思春期保
健ネットワーク会議を行いました。委員の交代
もあり、新たなメンバーには、小中学校の先生
も加わりました。今年度の活動予定については
4 面に掲載しましたのでご覧ください。
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講演「性教育、それは生きるための心を学ぶ教育」
~子どもたちの人生を守るために大人が伝えたいこと~
東京医療保健大学准教授 渡會睦子氏
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人を大切にする=自分を大切にすると
いうこと
家庭での性教育
性教育は生きるための心を学ぶ教育=い
のちの教育です。私は子ども達に、性教育を
するときに以下のように伝えています。
「自分を大切にすることが大切です。自分
を大切にできなければ、人を大切にできない。
今の自分を大切にできなければ、今や、将来
の大切な人を守ることはできない。今の自分
を大切にしないと、将来、家庭を持ちたいと
思った時に赤ちゃんができない体になって
しまうこともある。将来のチャンスをつかめ
るように選択肢を残しておいてほしい」と。
家庭での性教育は生ま
れた時から始まっていま
す。父母が家庭で話し合
う男女の姿を見せる。コミュニケーションで
問題解決をしていく姿を見せることも性教
育と言えます。例えばアルコール依存の父親
とそれに耐える母親を見て育つと、子どもは
無意識のうちに女性は耐えるものと学習し
てしまい、同じような男性を選ぶ傾向が起き
ます。それを子ども自身に気付かせ、よりよ
い選択をすることをサポートするのが「生き
るための心の教育。いのちの教育」です。
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山形県での PNY の取り組み
平成 10 年頃山形県の 10 代の人工妊娠中絶
率は全国ワースト 3 位。なんとかしなければ
と考え、性問題対策を考える団体 PNY(ピ
ニー)を立ち上げ、 NGO・NPO、医療関係
者・行政、PTA 等様々な立場のメンバーと、
夜回りなど多くの活動をしてきました。また、
教育委員会と実施した教員向け調査の結果、
性教育を実施しなかった理由に、小学校教諭
は「まだ早いと思う」
、中学校教諭は「どう
指導したらよいか分からない」という意見が
多く、この結果を受け、小学生から高校生ま
で継続的系統的に教育できるような、CD-
ROM教材を作ることにしました。これは授
業を実施する教員が加工して使用できるも
のです。これを使用して山形で性教育を実施
した結果、
10 代の人工妊娠中絶率が全国ワー
スト 3 位から 43 位へ改善しました。
限られた子どもだけの教育では、学年が上が
り学校が変わり教育を受けていない子ども
からの影響を受けるので、地域全体が変わる
必要があります。
また、調査結果から、知識を与えることも必
要ですが、意識を変えることが大事というこ
とも明らかになりました。
2
中学生の心の教育
中学生の頃、こんなことはありませんでし
たか?「人が自分をどう見ているか仕方がな
い」
「親と話をしたくない」
「人には言えない
悩みがあった」
「急にイライラした」
「意地悪
したくなった」
「友達に腹が立った」・・・これ
らはすべて正常の反応。正常の発達です。で
も、自分だけではなく友達も思春期なので同
じ様な反応が出ることでトラブルが起こり、
簡単に自殺をしてしまうことも起こってし
まう時期でもあります。この反応は 2 年位で
おさまります。今は思春期だからこんな気持
ちになるんだと客観的に見られることが大
切です。そういうことを思春期の子ども達に
伝えています。
そして、青年期の課題を乗り越えずに赤ち
ゃんができたら、命が無駄になるか生まれて
きても不幸になる子どもを育てることにな
りかねないこと。青年期の課題である経済的
自立、精神的自立、生活上の自立、性的自立
を乗り越えない限り性行為は早くないか
な?自分で考えてみてと話しています。
そうすると子ども達は、将来、赤ちゃんが
本当に欲しいと思った時の自分の人生が準
備できるように今の自分を大事にしようと
感じてくれるようです。
意見交換 「私達、大人が子どもたちにできること」
コーディネーター:八千代市思春期保健ネットワーク会議会長 婦人科医 栁堀厚
登壇者:東京医療保健大学准教授 渡會睦子氏
保護者代表 (父親代表)樋口充紀氏・
(母親代表)野澤広美氏
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わかりにくい部分はあるが、同じように叱っ
ている(フロア父親より)
第二次性徴の時期は個人差だけでなく、男
女差もあり、そのことを子どもに伝えていく
ことが必要。親世代は性教育を受けてきてい
ない人も多いので、難しい面もあるが、中学
生頃の男の子の悩みについては是非父親の
立場から子どもに伝えて欲しい(渡會先生)
八千代市の親のアンケート結果の報告
意見交換の冒頭で、
昨年 8 月に行われた
「日
本 PTA 全国研究大会千葉大会」に向けて、八
千代市の小中学生を持つ親に実施したアン
ケート結果を樋口氏が報告。内容は 10 代が
回答した調査結果を見ての親の意見を把握
したもの。幾つか例をあげると、
「10 代は性
関係を持つことに対して容認意見が多い」と
いう調査結果に、親世代とのギャップを感じ
たという意見が多かったという報告や、
「家
族との会話の頻度が少ないほど、性経験率や
性行為を肯定する割合が高い」という結果に
対し、家族との会話を増やしたいという意見
が多くあったことが報告されました。
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フロアからも具体的な質問や意見が出さ
れました。渡會先生からは、
「自分のテリト
リーを持ちたい時期に、親に全て監視されて
いる環境は精神衛生上良くない。ただし、家
族のコミュニケーションの場も必要。居間で
の勉強が良いとも言われている。子どもが個
室を欲しいと言ってきた時に親子で一緒に
考えられれば良いのではないか」と。
親子のコミュニケーションはどのよう
にとっているの?
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父親は娘の話を自分の思春期の時の経験
も伝えながらよく聞いている。
(野澤氏)共
通の趣味を持つ。夫婦の会話を絶やさないよ
うにしている(樋口氏)等それぞれの体験談
が出されました。渡會先生からは、書籍を引
用し、東大の合格者は、3 歳頃から家族の中
で役割を担っている子が多い。家事をしなが
らコミュニケーションを取るということも
大切では!という提案がされました。
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個室の与え方は?
大人ができること
世間には間違った情報も流れており、子ど
も達に正しい情報を渡さなければ、正しい判
断はできない。その為に学校や PTA、行政な
どが一致した正しい情報を伝えることが必
要です。思春期は親の意見から大人の価値観
を学ぶ時期。この時期に仲良し親子になると
その機会を失ってしまう。今は子どもとたく
さんぶつかっていくことも必要と、渡會先生
のまとめで意見交換は終了しました。
男の子と女の子の接し方の違い
男女の差別はしていません。女の子の方が
・具体的なケースと他の人の悩みの点などが共有で
アンケート結果
きた。PTA の活動について本件について深く考え
させられた。
≪感想≫
・分かりやすく、参加者それぞれの心に残る言葉が
沢山あった。
明日からの親子関係・夫婦関係に勇気が持てそう。
・はっきりと、性教育が心の教育であり、その心の
教育が人の命や将来に大きく関わっていることが
分かった。命の大切さを学ばせていただいた。
・率直な考え、気持ちが聞けた。共に考えることの
できる内容。今後の方向性が見えてきた。
3
● 思春期保健ネットワーク会議とは:
「八千代市健康まちづくりプラン」の重点取り組みで
ある「思春期の性と生」の取り組みを推進することを目的に、平成 18 年 8 月に発足した組織
です。メンバーは、PTA・医師・助産師・教育委員会・小中高校養護教諭・健康教育推進校教
諭・社会教育分野職員・保健師等で構成されています。
● 思春期保健ネットワーク会議発足の背景:性に関する多くの情報が社会に氾濫し、性の
商品化が進む中で、子どもたちの性に関する意識が変化してきています。思春期の子どもたち
が、自分の性と生を大切にしなくなってきている結果、
「10 代の望まない妊娠」や「性感染症」
が増加している現状を打開するため、家庭・地域・学校が連携したネットワークを構築し、八
千代の子どもたちを守っていきたいという思いで、この思春期保健ネットワーク会議が発足し
ました。
● 思春期保健ネットワーク会議が考える性教育とは:性教育を単なる「性知識の伝達」だ
けに終わらせることなく、広く「人間教育」として捉えています。八千代市の子どもたちが、
自己を肯定し、仲間やパートナーを大切にし、思いやりを持った素敵な大人に成長してくれる
こと…これが私達思春期保健ネットワーク会議の目指す性教育です。
≪今年度の活動予定≫
7 月 20 日に今年度初の思春期保健ネットワーク会議が開催されました。メンバーも、交代があり
ましたが、5年目になるこの活動も、今までの活動からもう1歩進め、どの子どもも等しく、性と
生の教育が受けられる教育の充実に力を入れていくことが確認されました。具体的な活動の予定は
以下の通りです。メンバーだけでなく、みんなで進める活動ですので、ご協力をお願いします。
* 八千代市オリジナル教材の検討
昨年度、市内小中学校に実施したアンケートでも希望の多かった、中学生を対象とした八千代
市オリジナルの教育教材の作成を検討していきます。八千代市の子ども達すべてが、正しい性と
生の教育を受けられることを目指します。
* 性と生の教育教材貸出し・外部講師リストの更新
平成 21 年に作成し、市内小中学校に配布した「教育教材貸出し・外部講師リスト」を更新し
ます。相談窓口についても、保護者や子どもに紹介できるよう情報をまとめて行く予定です。
* 乳幼児からの清潔教育
母子保健課で乳幼児期に実施している赤ちゃん広場などの相談事業を通して、
乳幼児期からの
清潔教育(身体のケア)を行うことを、検討していきます。
* その他
毎年恒例で実施している、思春期保健シンポジウムの開催及び
年 2 回のニュースレターの発行を継続して実施します。
また、市 PTA 連絡協議会主催の研修に思春期保健ネットワー
ク会議も共催し、一緒に活動を進めます。
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