平成 26 年度愛知県国民健康保険団体連合会事業報告

平成 26 年度愛知県国民健康保険団体連合会事業報告
わが国の国民健康保険制度(以下国保制度という)は、国民皆保険を支える基盤とし
て、その維持・強化が順次図られ、誰もが公平に医療を受けることができる環境を提供
することにより、国民の健康増進・疾病予防や健康寿命延伸に大きな役割を果たしてい
るところです。
しかし、近年、国保制度の加入者は非自発的失業者や高齢者で構成される割合が高く、
高齢化の進展や高度な医療の普及等による医療費の増大などで、その事業運営及び財政
運営は、大変厳しい状況に直面しております。
(医療制度改革等への対応)
平成 25 年 12 月に成立したいわゆるプログラム法に掲げられた国保制度改革の内容の
具体化に向けて、国と地方とで構成される国保基盤強化協議会において、市町村国保の
財政基盤強化の問題解決に向けた抜本的な解決策や国保の運営に関する都道府県と市町
村の役割分担のあり方等について協議されてきましたが、昨年 8 月の中間整理を経て、
本年 2 月に「国民健康保険の見直しについて(議論のとりまとめ)
」が公表されました。
一方、国の社会保障制度推進本部は、本年 1 月に「医療保険制度改革骨子」を決定し、
平成 27 年度からの 1,700 億円の低所得対策のための財政支援に加えて、平成 29 年度か
らさらに約 1,700 億円の国費を投入することになりました。
本年 3 月 3 日には、
「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一
部を改正する法律案」が閣議決定され、今国会に提案されました。
この法律案では、平成 30 年度から都道府県が市町村と国民健康保険を行い、安定的な
財政運営など国保運営に中心的な役割を担うこととし、市町村は、被保険者の資格管理、
保険料の徴収、給付の管理、保健事業の実施などを引き続き担うこととされています。
また、国の規制改革会議の健康医療ワーキンググループでは、保険者によるレセプト
の事前点検の仕組みについて手数料や費用負担を含めて協議が続けられています。
経済財政諮問会議や財政制度審議会においても社会保障政策のあり方について議論が
進められており、医療費の伸びの抑制が大きなテーマとなっています。
これらの動向は、国保連合会の業務や組織のあり方に大きな影響が考えられますので、
本会といたしましては、これらの動向を注視するとともに、本会中期経営計画に明記し
た役割や責務を十分認識し、保険者及び関係機関と連携を取りながら適確な事業運営に
努めてまいりました。
(診療報酬審査支払事業)
国保及び後期高齢者医療にかかる審査業務につきましては、審査専門スキルアップ研
修等の各種研修の実施、原審査、再審査結果の事務共助職員への速やかなフィ-ドバッ
クにより審査担当職員の資質向上に努めるとともに、高点数レセプトの点検対象を拡大
し事務共助体制の充実を図ってまいりました。
また、電子請求の特性を生かした機械チェックによる点検項目を大幅に拡充するとと
もに一次点検における医科レセプトと調剤レセプトとの突合点検を開始しシステムによ
る事務共助機能を強化してまいりました。
審査支払機関に対し審査の充実と業務の一層の効率化が求められる中、これらの取り
組みにより平成 26 年度における本会の査定率は 0.216%で、診療報酬支払基金とほぼ同
等の数値を維持しております。
一方、支払業務につきましても、複雑多様化する医療費算定に対応した請求支払シス
テムにより医療費支払業務を適正に行ない、平成 26 年度からは愛知県広域予防接種事業
の請求支払事務も行ってまいりました。
平成 26 年度の国保の取扱件数は、前年度に比べ 0.1%減の約 3,223 万件、医療費支払
額は、前年度に比べ 0.2%増の約 4,856 億円となっており、後期高齢者の取扱件数は前
年度に比べ 4.4%増の約 2,381 万件、医療費支払額は、前年度に比べ 3.3%増の約 6,836
億円となっております。
(国保総合システム及びレセプト電子化への対応)
平成 23 年 10 月から導入した、国保総合システムでは、平成 27 年 4 月からのレセプト
の原則電子請求化に対応した、レセプト管理システムの活用により、レセプトの電子保
管等を可能にしております。
また、平成 26 年度においては、平成 27 年 1 月法改正の高額療養費及び高額介護合算
療養費の算定基準の見直し、難病及び小児慢性疾病に係る新たな医療費助成に伴うシス
テム改修を行いました。
その他業務においても、本会では外付けシステムの改修や運用の見直し改善を図ると
ともに、国保中央会に対して不具合対策と品質強化を働きかけるなど、安定稼働に向け
て努めてまいりました。
また、現在、国保中央会にて開発が進められている平成 30 年稼働予定の次期国保総合
システムへの円滑な移行・導入・運用に向けて各種調査を開始しました。
当年度においては、各種機能(本会独自開発機能を含む)の使用状況及び次期国保総
合システムに向けた業務要件の調査を行いました。
(介護福祉事業等)
介護保険制度は、高齢者を支える制度として地域住民に広く浸透し、欠くことのでき
ない制度となっておりますが、介護サービス利用者の増大により介護給付費は質量とも
に年々増加しております。
本会では、年々増加する取扱件数の中、平成 24 年 4 月に施行された介護予防・日常生
活支援総合事業を含め順次業務内容を拡大し、審査支払事務の適正かつ円滑な業務遂行
に努めております。
また、介護保険の請求に関し、現行の ISDN 回線、磁気媒体による請求に加え平成 26
年 11 月からインターネットを利用した請求を開始しており本会において引き続きシス
テムの安定稼働に向け努めております。
平成 26 年度の介護給付費の取扱件数は前年度に比べ 6.6%増の約 706 万件、介護給付
費支払額は前年度に比べ 5.3%増の約 4,048 億円となっております。
苦情・相談業務につきましては、平成 26 年度における苦情申立、相談等の総件数は前
年度に比べ 2.6%減の 643 件となっております。サービスの質に対する相談内容は、複
雑化しておりますが、県、保険者と連携を取りながら、適切な業務遂行に努めてまいり
ました。
障害者総合支援事業では、平成 26 年 4 月から実施した重度訪問介護の対象拡大を含む
障害介護給付費および障害児給付費等の支払業務についても的確に実施してまいりまし
た。
平成 26 年度における障害介護給付費の取扱件数は前年度に比べ 11.7%増の約 61 万件、
障害介護給付費支払額は前年度に比べ 9.6%増の約 828 億円となっており、障害児給付
費の取扱件数は前年度に比べ 27.9%増の約 16 万件、障害児給付費支払額は前年度に比
べ 24.7%増の約 110 億円となっております。
さらに、各都道府県国保連合会の介護保険及び障害者総合支援に関する業務処理サー
バーを共同運用センターに集約し効率化及び共有化を図るための一拠点集約化システム
を平成 26 年 5 月から稼働しており、本会独自処理を含め円滑な運用に努めております。
また、平成 27 年 4 月からの介護保険制度改正等で安定した運用を図れるよう本会独自
の外付けシステム(事業所台帳業務支援システム等)の構築を検討するなど準備を進め
てまいりました。
(保健事業及び特定健康診査・特定保健指導事業)
市町村の保健活動を推進するため、健康体操普及事業・健康相談事業等への講師派遣
や生活習慣予防事業・健康づくりリーダー育成事業の支援を幅広く実施してまいりまし
た。また、各事業において、アンケートや聴き取り調査を実施するなど、保険者ニーズ
の把握に努め、保健事業のより効果的な実施に向けた改善に努めてまいりました。
さらに、健康づくりの啓発事業といたしまして、健康づくりポスターコンクールを実
施いたしました。
特定健診・特定保健指導につきましては、保険者において、平成 25 年度から 29 年度
までの第 2 期実施計画の達成に向け、本会においては、健診等に係る費用決済及びデー
タ管理を含む共同処理、受診率向上対策として受診勧奨はがき送付や電話勧奨事業や啓
発キャンペーン事業、保健師・栄養士等を対象にしたスキルアップ研修を実施するなど、
保険者の円滑な事業運営を積極的に支援するとともに、医療費や特定健診結果データを
分析活用し、地域の特性や課題を把握するなど、効果的な保健事業の実施に向け支援し
てまいりました。
国保中央会が開発した国保データベース(KDB)システムでは、国保連合会が保有する
医療・健診・介護の各種データを利用し、個人の健康状態の把握や同規模保険者との比
較が可能となっている。加えて経年的なデータを活用することで個人の健康状態の変化
がわかるとともに、疾病別医療費や介護給付費の推移から対策の効果を判断する材料と
もなり、地域の健康状態が把握できるシステムとなっております。
また、本会が独自に開発したシステム AI Cube(アイキューブ)を合わせて活用し、
保険者が策定するデータヘルス計画に役立てていただいております。
支援・評価委員会においては、保険者が行う保健事業の目的や目標の達成に向けた過
程や活動状況を評価し、保健事業が PDCA サイクルに沿って効果的・効率的に展開するこ
とができるよう支援してまいりました。
(保険者事務共同事業等)
保険者事務共同電算処理事業では、国保保険者共通の事務であるレセプトの資格点検、
レセプト管理システムの運用管理及び各種統計資料等の作成及び、後発医薬品差額通知
等の作成、高額医療費・高額介護合算の支給額計算処理、退職適用適正化処理等につい
ての共同処理を行うなど、保険者業務の効率化に努めてまいりました。
高額医療費共同事業及び保険財政共同安定化事業につきましては、事業の円滑な運営
を図るため適正な処理に努めてまいりました。また保険財政共同事業安定化事業につき
ましては、平成 27 年度から事業対象がすべての医療費に拡大されることになっており、
市町村の国保会計に占める割合が高く影響も大きいため、正確な推計に努めてまいりま
した。
第三者行為(交通事故)損害賠償求償事務共同処理事業につきましては、国民健康保
険、後期高齢者医療及び介護保険に係る求償事務や、保険者の求償事務担当者を支援す
るため本会職員を派遣し、また求償事務の知識を深めるための専門講座と資質の向上を
図るための研修会を開催するなど、保険者事務の軽減と医療費等の適正化を図るため、
積極的に努めてまいりました。
後期高齢者医療広域連合の業務につきましても、レセプトの資格点検・二次点検業務、
レセプト管理システムの運用管理、過誤・再審査処理業務等を受託し実施するなど、後
期高齢者医療広域連合の事務負担軽減に貢献してまいりました。
(情報セキュリティ体制の充実)
本会では、事業運営にあたり個人情報を含む非常に機密性の高い情報を扱っており、
それらの情報資産を様々な脅威から保護することは本会に課せられた極めて重要な社会
的責務であるとの認識のもと、平成 24 年 8 月から準備を進め、平成 25 年 12 月に情報セ
キュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO27001」認証を取得い
たしました。
平成 26 年度は、新しい規格である ISO27001:2013(2013 年版)への移行審査及び維
持審査を受け、認証の継続に努めてまいりました。
(被保険者資格喪失後の受診により発生する返還金の保険者間での調整について)
平成 26 年 12 月に厚生労働省から各医療保険者に対して、被保険者資格喪失後の受診
により発生する返還金の調整について、医療機関等を介さず、保険者間で調整する仕組
みを恒久的に導入するよう通知されたことにより、国保連合会を介在し国保間及び被用
者保険との調整が可能となりました。
本会も本年 1 月から処理を開始し、被保険者等の負担の軽減及び旧保険者等における
速やかな債権の回収を考慮し、保険者間の調整を実施してまいりました。