衛星測位の基礎知識pdf

衛星測位の基礎知識
株式会社
トプコン
測量機器事業部
衛星測位とは
人工衛星を利用した測位システム
衛星からの電波を受信することにより地球上のどこにおいても位置を測定
することが出来るシステム
(利用範囲)
・自動車のカーナビゲーション
・船舶のナビゲーションシステム
・GPS携帯電話
・航空機のフライトナビゲーションシステム
衛星測位の多くが移動体に利用されており、測位方式は主に
単独測位又はD-GPSと呼ばれるもので、測位精度は0.5m∼
数十mであり、測量用(数mm∼数cm精度)での使用はごく一
部の限られたユーザーになってしまう
衛星測位の種類
GPS(Global Positioning System)
米軍により開発 1980年台半ばから運用開始
GLONASS
(Global Orbital Navigation Satellite System)
冷戦時代のソ連軍が開発 1980年台末に運用開始
GALILEO
欧州連合が2008年運用開始を予定しているシステム
従来は衛星測位の総称をGPSとしていたが、現在は
複数の衛星測位システムを利用する為、
GNSS(Global Navigation Satellite System)という
GNSS化のメリット
複数の衛星測位システムを使用すると
悪条件下でも受信衛星数を確保
GPS
GNSS
5030MHz
Upper L-Band
5010MHz
GPS L1
1610MHz
GPS
GalilleoE1
GalilleoE2
Galilleo
E6
1587MHz
1591MHz
1593MHz
GalilleoE4
Lower L-Band
1559MHz
1563MHz
GPS L2
GLONASS
G2
1300MHz
GPS L5
1254MHz
1258MHz
1260MHz
1261MHz
GalilleoE3
Galilleo Galilleo
E5/A
E5/B
1237MHz
1239MHz
1214MHz
1215MHz
1188MHz
1164MHz
GNSS
の周波数割り当て
GNSSの周波数割り当て
C-Band
Galilleo
C1
GLONASS
G1
GPS
GPS
衛星測位の方式
単独測位
ディファレンシャル測位(D-GPS)
衛星測位
相対測位
スタティック測位
干渉測位
キネマティック測位
リアルタイムキネマティック測位(RTK-GPS)
ネットワーク型RTK-GPS測位(VRS・FKP)
相対測位
単独測位
ディファレンシャル
測位
干渉測位
スタティック
測位
キネマティック
測位
リアルタイムキネマ
ティック測位
観測時間
リアルタイム
リアルタイム
20分∼数時間
移動体観測可能
後処理
リアルタイム
水平精度
約10m
約0.5∼2m
5mm+1ppm・D
20mm+2ppm・D
20mm+2ppm・D
観測信号
コード
コード
搬送波
搬送波
搬送波
特徴
小型・安価
中精度を簡単
高精度測位
移動体を高精度
リアルタイム測位
用途
ナビゲーション
自動車・船舶
携帯電話等
高精度
ナビゲーション
船舶・飛行機
測量作業
(基準点測量)
近年はリアルタイ
ムが主流
応用測量
移動体高精度測位
マシンコントロール
注)ネットワーク型RTK-GPSは原理的にも精度的にもRTK-GPS測位と同等
単独測位
測位の原理
受信機の位置は、複数の衛星の位置情報(軌道情報)と衛星と
受信機間の距離によって演算される。
衛星から発信した信号と受信機で受信した時間差
電波の速度×時間差=衛星∼受信機間の距離
(誤差発生の要因)
●衛星には高精度な原子時計を搭載し正確な時間を送信
●受信機は水晶時計を用いており正確ではない
受信機の時計誤差を未知数とすることにより受信機側には原子時計がなくても
受信機の水晶時計の誤差を演算で求めて原子時計と同期させている
(X1,Y1,Z1)
測位を行うためには、未知数が受信機
の位置X、Y、Zと時計誤差dtと4つのた
め最低でも同時に4個の衛星からの信号
が必要となる
(X2,Y2,Z2)
(X3,Y3,Z3)
(X4,Y4,Z4)
R2
R1
Rn= (X−Xn)2+(Y−Yn)2+(Z−Zn)2+Cdt
R3
R4
(X,Y,Z)
Xn,Yn,Zn
X ,Y ,Z
R
C
dt
:衛星の位置
:受信機の位置
:衛星と受信機の距離
:電波伝搬速度
:受信機の時計誤差
Xn,Yn,Znが宇宙空間上で誤差を持っている為、
地球上で求まる座標値(X,Y,Z)には数m∼数十m
の位置誤差を持ってしまう
精度を劣化させる要因
DOP(天空における衛星の配置)
衛星配置状況による測位精度への影響を表す数値
天空における衛星の配置が良くないと精度が劣化するこれは地上測量での
三角測量・三辺測量における関係と同じである。
DOPには次のような種類がある
GDOP=幾何学的精度低下
(geometrical dilution of precision)
PDOP=位置精度低下率
(position dilution of precision)
HDOP=水平精度低下率
(horizontal dilution of precision)
VDOP=鉛直精度低下率
(vertical dilution of precision)
TDOP=時刻精度低下率
(time dilution of precision)
RDOP=相対精度低下率
(relative dilution of precision)
単独測位の利用例
主にナビゲーションの分野で精度を必要としないもの
相対測位とは
●単独測位では以下のような誤差要因がある
1)衛星時刻誤差
2)衛星の軌道誤差
3)電波の電離層遅延補正による誤差
4)電波の対流圏遅延補正による誤差
5)電波のマルチパス干渉による誤差
6)受信機雑音による誤差
これらの誤差要因を除去し、より制度の高い測位情報を得ようと
する為には、2台以上の受信機を使用し、同時に同じ衛星信号を
受信することが必要である。 これを相対測位という
相対測位にはコードを用いた単独測位を組み合わせたディファレ
ンシャル測位と電波の搬送波そのもの波長の数を測る干渉測位
がある
ディファレンシャルの原理
2台以上の受信機で既知点と未知点で同時に単独測位を行って、共通誤差
を相殺することにより測位精度を数十cm∼数m程度までに改善するもので
ある。
単独測位とDGPSの違い、あるいは類似点は次の各項にある
・既知点と未知点間で同時に単独測位の観測を行う
・基本は単独測位であるから、最低4個の衛星が必要である
・観測所要時間は単独測位と同じ、すなわち1秒程度で充分
DGPSでは座標が既知である点の受信機によって、測定された座標の誤差
が分かる。この誤差を未知点の受信機に送って、その測定結果から差し引い
て補正することによって精度を改善する。 未知点の測位精度は、L1帯、C/A
コードによっても数m程度となる
既知点での既知点座標との誤差(補正)は、おおきく3つの方法に分かれる
これが、DGPSの運用方法の違いとなる。
ディファレンシャル測位方式 ①
●既知点の経緯度、高さ、または3次元座標の差を使用する
(特徴)
・誤差は受信機の出力から簡単に計算できる
・未知、既知地点の受信機のソフトウエアは完全に単独測位のまま
ただし、データ出力ソフトウエアの追加は必要
表示の手書きを厭わないから、それも必要もない
・未知点へ送るデータ量は少なくて済む
・既知点と未知点で、違う衛星の組み合わせで観測すると精度が低下する
・軌道情報が更新された瞬間には、既知、未知地点で新旧が混乱することが
ある
単独測位座標値
B
仮に『座標差方式』と呼びます
L
H
既知点の座標値 B0 L0 H0
誤差
△B △L △H
単独測位座標値
B1 L1 H1
補正 △B △L △H
正しい値 B2 L2
H2
ディファレンシャル測位方式 ②
●既知点と未知点で求めた座標を単純に差し引いて
相対位置を求める方式
(特徴)
・簡単な受信機の表示を読み取って簡易DGPSを行うときに便利
・既知・未知点の受信機のソフトウエアは完全に単独測位のまま
・未知点へ送るデータ量は少ない
・既知点と未知点で、違う衛星の組み合わせで観測すると精度が低下する
・既知、未知点で新旧の軌道情報が混乱することがあり得る
仮に『差引方式』と呼びます
単独測位座標値
B L H
単独測位座標値
B1 L1 H1
補正 B
L
H
相対位置 B1-B L1−L H1−H
ディファレンシャル測位方式 ③
●既知点での既知座標との差を擬似距離の誤差に引きなおす方式
(特徴)
・既知点の受信機では受信衛星全部の擬似距離を測定し、それを出力する
・既知点の測位誤差を擬似距離の誤差に引きなおす計算が必要
受信機内部、または外部にこの計算のソフトウエアが必要
・観測できた全衛星の擬似距離誤差補正値を未知点へ伝送
・未知点へ送るデータ量は多くなる
・未知点で測定した擬似距離から上の誤差補正量を差し引いて測位計算
未知点受信機に擬似距離補正計算のソフトウエアが必要
未知点で観測した衛星だけの擬似距離補正を利用する
仮に『擬似距離方式』と呼びます
測定座標誤差から観測
した全衛星の擬似距離
の誤差を逆算
擬似距離
測量用DGPSで一般的に
使用されている方式
計算機
正しい座標値
測定した
擬似距離
を補正
計算機 計算機は受信
機内蔵のもの
位置データ でもよい
ディファレンシャルの動作条件
DGPSがうまく機能する為には幾つかの重要な注意事項がある
●同時観測でなければならない⇒衛星の位置・電離層、対流圏の状態の変化
●同一衛星の組を観測する⇒単独測位の受信機はDOPの値を計算して測位
しているため、組み合わせが違うと値が変化
●軌道情報は同一のものを使用⇒2時間毎に更新される軌道情報が異なると
情報の誤差量が異なる為、相殺できない
これらの注意事項を前出の測位方式にあてはめると、次のようになる
観測の同時性
同一衛星郡
同一軌道情報
座標差方式
要注意
要注意
要注意
差引方式
要注意
要注意
要注意
問題なし
問題なし
要注意
擬似距離方式
ディファレンシャルのデータ伝送方法
DGPSでは既知点から未知点へデータを転送する必要がある
●人力による(FD等)の運搬⇒実時間性は無い
●携帯無線機の利用⇒人が測位データを読んで移動局に連絡する。
到達距離が短い
●特定省電力無線⇒無免許、デジタル伝送可能。到達距離が短い
●電話回線の利用⇒携帯電話はサービスエリアの制約がある
●専用無線回線⇒1機関での利用では制約(免許、資格)がある
●船舶用方向探知ビーコン電波への相乗り⇒各国で使用中、日本では海上
保安庁システムが稼動中
●通信衛星(MSAS)、航海衛星の利用⇒船舶用DGPSに運用中
●FM放送と相乗り⇒日本でもカーナビゲーション用に運用中
●後処理方式⇒全ての通信手段が不安定な場所では観測データのみ受信
後日、基準点データを入手して計算・算出する
測量用として使用されているのは船舶用ビーコン
電波と通信衛星が主流であるがMSASも有効
ディファレンシャルの主な用途
(一般的な使用)
D-GPS補正情報
カーナビゲーションシステム
船舶誘導システム
ディファレンシャルの主な用途
(測量分野での使用)
森林調査
GISの情報取得
深浅測量
干渉測位とは
通常、GPS測量というと、干渉測位を用いて2点間の相対的な位置関係を求
める事をいう。
日本でGPSの本格的な利用は、時刻同期と並んで測量分野における干渉測
位から始まった。
ディファレンシャル測位と同じ相対測位であるが、大きく異なる点は、干渉測位
では測位のモノサシとして衛星の送信電波の波長を使うことである。
干渉測位では衛星と受信機のアンテナ間におけるGPS電波の位相を計算し、
電波の位相としての波の整数値部分と1サイクル以下の端数を計算するが、
整数部分は正確な値を直ちに求めることは出来ないため各種の手法により推
定することになる。これを初期化(整数値バイアスの決定)という。
この整数部分の値が分かっていれば簡単に2つのGPS受信機間のベクトルを
計算することができる。
DGPS
と干渉測位の相違点
DGPSと干渉測位の相違点
DGPS
干渉測位
測位方式
単独測位を用いる
衛星までの距離を測定
解析段階で距離差を求めて処理
擬似距離
中心的なデータ
補助的なデータ
搬送波
普通は使用しない
中心的なデータ
位相角の測定
受信周波数 一般はL1帯のみ
解析計算
比較的簡単
小さいソフトウエア
L1・L2帯とも利用可能
きわめて複雑
大きなソフトウエア
実時間測位 実時間を原則とする
一部の方式で実時間可能
原則として後処理
測位精度
実用精度は1cm程度
実用精度は1m程度
干渉測位の計算過程
1)初期化(整数値バイアスの決定)
衛星から送信されている電波を連続した波とする。 受信機が最初にデータ
(波)を受信したとき、その波のどの部分であるかはわかるが(搬送波の位相
の観測)、この瞬間に衛星と受信機の全体の波の数は不明である。
この未知数が整数値バイアスである。 この整数値バイアスを解くことは処理
の最も重要な部分である。 干渉測位の原理図と式は次のようになる。
衛星から受信機までの距離Rは次の式で表される
λ・φ/2π
Nλ
波長約20cm
求める距離(基線ベクトル)
R=Nλ+ λ・φ/2π+CdT+Cdt
N:整数値バイアス
λ:波長
φ:位相
C:電波伝搬速度
dT:衛星の時計誤差
dt:受信機の時計誤差
干渉測位の計算過程
1)初期化(整数値バイアスの決定)
前記のような同じサイン波の繰り返しであえる搬送波の数をどのようにして
数えるか?
まずディファレンシャル測位で衛星までの距離を精度0.5m程度までもと
める。 1波長は約20cmであることから整数値バイアスはN±2の範囲に
一気に絞り込まれる。後はコンピュータを用いてN−2∼N+2の値をそれ
ぞれ代入して受信機の位置を演算する。
一度整数値バイアスを決定した後は波の変化を追って位相が変化するご
とにN±1を行う。
このような整数値バイアスNを求めることを初期化という
干渉測位の計算過程
2)差分観測による時計誤差の消去
干渉測位の基本は基線測量の両端で受信機で測定された搬送波位相の
データを組み合わせて行路を計算し、基線を決定することである。
代表的な差分観測は、搬送波位相と、その差をとって作られる一重位相差
や二重位相差である。
干渉測位の計算過程
2)−1.一重位相差
一重位相差には、2衛星&1受信機間(受信機時計の誤差を消去)と
1衛星&2受信機間(衛星時計の誤差を消去)とにわかれる。
一重位相の計算は、原理的には一瞬の観測データだけで可能である。
2衛星、1受信機
・受信機による誤差を打ち消す
1衛星、2受信機
・衛星による誤差を打ち消す
干渉測位の計算過程
2)−2.二重位相差
搬送波位相には受信機や衛星の誤差を表す項があるので、このままでは
基線の計算に利用できない。 こうした時計の誤差を消去するために、二
重位相差が用いられる
二重位相差では、衛星時計と受信機時計双方の誤差を相殺、消去できる。
原理的には一瞬の観測データだけで可能である
2衛星、2受信機
・二重差は2つの一重さの組合せ
・全ての受信機と衛星による誤差を打ち消す
干渉測位の計算過程
2)−3.三重位相差
積分位相差ともいう。つまり二重位相差の二つの時刻での値の差をとって
いる。 そのためある程度の観測データの蓄積が必要である。 したがって
キネマティックやRTK−GPSのような移動体の干渉測位には使えない。
三重差(衛星、受信機と時刻の間
ジオイドについて
ジオイドとは地球重力の等ポテンシャル面のうち平均海面に一致します
標高の測定は従来よりこのジオイドに準拠した水準測量によって決定しています
それに比較して宇宙技術である衛星測位で出力される高さは、WGS−84という
楕円体からの高さです。 ジオイドはこの楕円体とは一致しません。
したがって、衛星測位で観測した高さは従来の水準測量とは一致しないため、ジ
オイド高補正を行う必要があります。
楕円体高(HE)=標高(H)+ジオイド高(N)
日本における標高とは、
東京湾平均海水面が基準
世界では、楕円体高が
一般的
H:標高、HE:楕円体高、N:ジオイド高
干渉測位の種類と特徴
1)スタティック測位
2)短縮スタティック測位
3)キネマティック測位
4)リアルタイムキネマティック測位(RTK−GPS)
5)ネットワーク型リアルタイムキネマティック測位(VRS/FKP)
干渉測位の種類としては上記の5種類があるが、現在では3)キネマティック
測位は手法の煩雑さや実時間性の無さ(リアルタイムでない)等の弱点があ
り近年では、殆ど使用されない手法となった。 現在では同様の理論を使用
し、リアルタイムに測位結果が表示されるリアルタイムキネマティック測位が
主流である。
測位精度の精密さではスタティック測位が群を抜き、短縮スタティック⇒リアル
タイムキネマティック測位⇒ネットワーク型リアルタイムキネマティック測位の
順になる。
1)スタティック測位
スタティック測位では2台以上の複数台の受信機を測点に設置して30分から
数時間にわたって搬送波位相を中心とする観測データを記録する。
全受信機は、当然同一の時間帯で最低4つの同一のGPS衛星の組を観測する
長時間観測であるから、アンテナは三脚、または固定架台に設置する。
一連の観測をセッションといい、記録を行うデータ間隔をエポックという。
3台以上の受信機を使用するときは、各受信機を結ぶ全ての基線を求める事が
出来る。例えば4台の時は6基線、5台のときは10基線等々である。
スタティック測位での長時間観測の目的は、観測中の衛星の天空上での位置変
化を利用して整数値バイアスを決定することにある。
各点を結ぶ全ての基線を測定できる
1)スタティック測位
異機種での組み合わせ測量
通常は全測点に同一メーカーの同一機種を配置し、その機種付属の基線
解析ソフトウエアで処理することが望ましいとされています。
これが最も正統的で確実、簡単なGPS測量の方法です。 しかし近年のよ
うにGPSが普及してくると同一機種と言う訳にもいきません。
また、電子基準点等のデータをインターネットからダウンロードして使用する
場合もあります。
このような場合、観測データを測量機機種によらない共通フォーマットに直す
必要があります。
共通フォーマットにはRINEX形式(receiver independent exchange format)
が広く使われています。
ただし、RINEXフォーマットはスタティックのみに使用され他の測位方式では
使用できません。
解析ソフトウエアも、測量機メーカーが供給するものとは別に共通基線解析
ソフトウエアに相当するものがありますが、これは学術用基線解析ソフトウエ
アと呼ばれ、超長基線の精密解析に使用し一般的には使用しません。
2)短縮スタティック測位
短縮スタティック測位の観測方法はスタティック測位とほぼ同じで、観測時間が
5∼20分間位で済むことが利点である。 複数の受信機を結ぶ全基線を測量
出来ることもスタティック測位と同じである。
スタティック測位では最低所要数の4衛星が時間経過とともに天空を移動する
ことだけを頼りに整数値バイアスを決定している。 短縮スタティック測位におけ
る整数値バイアスの決定は、できるだけ沢山の衛星を用いて効率的にバイアス
を決定しようとするものである。 短縮スタティック測位では、擬似距離・L2帯・
Pコード等使えるデータを総動員してバイアスを決定する。
メーカーの解析ソフトウエアによっては、L1波のみでの短縮スタティックが行える
ものもある。 ただし、この場合の衛星数は最低5個となる
スタティック測位と原理はほぼ同じ
2)短縮スタティック測位
異機種での組み合わせ測量
短縮スタティック測位では、必ずしもRINEX形式のフォーマットが使われると
は限りません。
前項で述べたように、測量機メーカーによっては、2周波のフルスペックのデ
−タを必要とする場合の基線解析ソフトウエアに1週波受信機のデータを変
換して渡しても計算は出来ません。
メーカーによって内容が微妙に異なる為、解析に使用するデータによっては
別機種のハードウエアでは所要のデータが出ないということもあり、受信機
の構造もメーカーによって異なる場合もある。
つまり、短縮スタティック測位の解析は、異機種での混在使用では必ず計算
が可能であるとは限りません。
3)キネマティック測位
基準局と移動局との最低2台以上での観測になります。
基準局は座標が既知である点に固定し、移動局は移動しながら順次搬送波
位相積算値データを取得し、後処理で基準局と移動局のデータを用いて測位
計算を行う。
GPS測位では、整数値バイアスを別にすれば、原理的には一瞬の測定値で
測位が可能である。キネマティック測位では整数値バイアスを事前に決定して
おけば、1エポックごとにその瞬間の位置を知ることができる。
バイアス決定の方法としてはアンテナスワップ方式とOTF(on the fly)方式が
あるが、現在はOTF方式が主流である。
重要な要件は、全測点の測量が終了するまで、基準局、移動局の両受信機と
もども、衛星の受信を継続していることが必要である。測点での観測中はもと
より、移動局が移動している間も受信を継続していなければならない。
ベクトルを後処
理計算
3)キネマティック測位
アンテナスワップ方式とOTF方式について
両者ともキネマティック測位の初期化作業で整数値バイアスを決定する方法
である。
アンテナスワップ方式とは、基準局と基準局の近傍に臨時点を設け、固定・
移動の両受信機を基準・臨時点間で交互に入れ替え観測するものである。
アンテナをスワップして観測することにより、二重位相差の計算を行い、受
信機の時計誤差を消去する。 また、1衛星による受信期間の一重位相差
で1次元の基線を解析する。 基準点(A)と臨時点(B)で測量しているから
整数値バイアスによってB点に沢山の答えが出る。 一次元と仮定している
からこれらの解は直線状に並ぶはずである。 アンテナを入れ替えた後の
観測でもA側受信機を基準にして計算するので、B側の多重解ができる。
この繰り返しを行うことで、前後の観測による基線解で一致するものを探せ
ばよいことになる。 こうして2点間の整数値バイアスを決定する。
OTFは、短縮スタティック測位による整数値バイアス決定の延長線上にある
とも言える。 OTFでは衛星から得られるあらゆる情報を総動員してバイアス
決定速度を上げるというやり方をする。 そのためにはL2帯も必要となる。
したがって、OTFを使うには2周波受信機を使う必要がある。
4)リアルタイムキネマティック測位(RTK)
キネマティック測位は、後処理計算によって測位結果が出るが、これを実時間
化したものがリアルタイムキネマティック測位(real time kinematic)である。
RTK測位では基準点での測定データを無線で移動局受信機に送り、そこで解
析処理を行って直ちに結果を受信機の表示に示すものである。
整数値バイアスの決定はOTFを使用し、高機能マイクロプロセッサーを受信機
に内蔵させ、効率の良いソフトウエアを用いることによって、測量を行って数秒
後には結果が表示される。
リアルタイムに処理を行っている為、サイクルスリップが発生しても直ぐに異常
として解り、見落とす事が無い。
無線・携帯電話等
4)リアルタイムキネマティック測位(RTK)
データ転送の問題点
データ伝送の無線技術的には簡単な問題であるが、電波管理などの法律
の規制のため、実際には最も対処が難しい。現在、データ転送手段として
下記のような手法が一般的に用いられている。
免許・申請
特定省電力無線
無
小エリア無線
申請のみ
業務用無線
要免許
利点
弱点
機器が安価
通信エリアが狭い
通信エリアが比較的
広い
混信の心配
機器が高価
通信エリアが広い
免許が必要 固定局の
移動が簡単に出来ない
通信費が高い
携帯電話
無
通信エリアが比較的
広い
パケット通信
無
通信エリアが比較的 高速通信が可能
広い(携帯電話と同等) 通信費が比較的安い
5)ネットワーク型RTK-GPS測位(VRS/FKP)
ネットワーク型RTK−GPS測位は、基本的にはRTK測位と同様の測位計算
を行うものであるが、RTK測位が実基準点を使用するのに替わり、現地に仮
想基準点を設定するところに違いがある。
RTKでは基準点での測定データを無線で移動局受信機に送り、そこで解析処
理を行って直ちに結果を受信機の表示するが、ネットワーク型RTK−GPSで
は国土交通省国土地理院が作成した電子基準点データから配信業者が仮想
点における観測データを作成し、携帯電話若しくはパケット通信を利用して移
動局へ送り、RTK同様の計算処理を行う。 整数値バイアスの決定はOTFを
使用する。
携帯電話やパケット通信のサービスエリア外で作業を行う場合は、キネマティッ
ク測位同様に観測データを受信し、配信業者から仮想点データをファイルで受
け取り、後処理計算で測位を行うことも可能である。
干渉測位方式における整数値バイアス決定方法
スタティック測位
衛星位置の時間変化
短縮スタティック測位
衛星の空間分布
キネマティック測位
アンテナスワップ
OTF
基線の反転
RTK−GPS測位
OTF
衛星の空間分布とすべての信号
L1帯・L2帯の2周波数観測
ネットワーク型
RTK-GPS測位
OTF
衛星の空間分布とすべての信号
L1帯・L2帯の2周波数観測
衛星の空間分布とすべての信号
L1帯・L2帯の2周波数観測
干渉測位方式の主な用途
1.スタティック測位・短縮スタティック測位
電子基準点
基本基準点の新設・改測
地滑り観測
公共基準点の新設
干渉測位方式の主な用途
2.リアルタイムキネマティック測位・ネットワーク型RTK−GPS
工事測量
除雪作業
一般測量
基準点∼応用測量
マシンコントロール
参考文献
社)日本測量協会発行
月刊「測量」別冊
GPSフロンティア
社)日本測量協会発行
新・GPS測量の基礎(土屋 淳・辻 宏道
著)