樋門・水門等 維持管理マニュアル - JCCA 一般社団法人建設

資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
2.樋門・水門等
維持管理マニュアル(案)
(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
公共土木施設の維持管理に関する研究委員会
河川分科会
樋門・水門等WG
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
目
次
2.1 総則
2.1.1
目的 ·················································································································· 1
2.1.2
適用範囲··········································································································· 2
2.1.3
維持管理フロー ······························································································· 3
2.1.4
用語の定義 ······································································································· 4
2.2 基礎情報の整理
2.2.1
基礎資料の調査 ······························································································· 6
2.2.2
基本諸元情報 ··································································································· 7
2.2.3
点検結果情報 ··································································································· 9
2.2.4
補修・補強・更新履歴情報 ··········································································· 10
2.2.5
被災履歴情報 ································································································· 11
2.3 点検手法
2.3.1
点検の実施方針 ····························································································· 21
2.3.2
点検方法········································································································· 27
2.3.3
点検結果の整理 ····························································································· 28
2.4 健全度評価
2.4.1
健全度の評価方法 ·························································································· 41
2.4.2
管理水準の設定方法 ······················································································ 58
2.5 補修・補強方法
2.5.1
補修・補強方法の概要 ·················································································· 65
2.5.2
各種補修工法 ································································································· 68
2.5.3
各種補強工法 ································································································· 76
2.5.4
地盤の補強工法 ····························································································· 81
2.5.5
機械設備の整備 ····························································································· 87
2.6 優先度評価
2.6.1
評価の実施方針 ··························································································· 101
2.6.2
補修・補強内容に対する重要度の評価 ······················································ 102
2.6.3
社会への影響度評価 ···················································································· 103
2.6.4
総合評価······································································································· 104
2.6.5
長期保全計画 ······························································································· 108
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
2.1 総則
本マニュアル(案)は,自治体が管理する中小規模の樋門・水門を対象に,その機
能を確保しつつ効率的・効果的な維持管理の実現を目的として,①基礎情報の整理,
②点検手法,③健全度評価,④補修・補強方法,⑤優先度評価等の実施方針を示した
ものである。
マニュアル利用者を自治体の土木担当職員と位置づけ,職員が実務において容易に
利用できるマニュアルとして作成した。
【解説】
樋門・水門設備は,洪水や高潮による堤内地への氾濫浸水の防止を図るとともに,常
時においては取水・排水のために堤内地と河川とをつなぐ施設として設置され,万一そ
の機能が失われた場合に堤内地の社会経済に及ぼす影響が大きい設備である。また,常
時はほとんど待機状態で操作されていない設備が多く,かつ機器の設置される環境も厳
しい一方,出水時には確実に機能しなければならないことから,日常の適切な維持管理
が重要である。
これまで建設されてきた樋門・水門設備の多くが,建設後30 年から40 年を迎えつつ
あり,老朽化への対応が課題となる設備も年々増加している現状にある。このことから,
維持管理費用も年々増加すると考えられ,設備の信頼性を確保しつつ効率的・効果的な
維持管理・補修の実現が急務となっている。
自治体が管理する中小規模の樋門は,維持管理・補修に要する費用を個別でみると,
補助事業に採択されない額にとどまる施設が多く,自治体単独事業として実施するには
財政上の問題もあり,事後保全で対応せざるを得ない現状にある。
しかし長期的なライフサイクルコストを考えた場合に,財政負担を軽減しつつ,効率
的・効果的な維持管理・補修を実施するためには,適切な予防保全を行う必要があり,
実務において容易に利用できるマニュアル整備が課題である。
2.1.1 目的
本マニュアル(案)においては,これら背景のもと,樋門・水門設備で実施しなけ
ればならない点検・整備・更新等の維持管理の実施方針を示すことにより,効率的・
効果的な維持管理の実現を目的とする。
なお,本マニュアル(案)に記載のない事項は,河川用ゲート設備点検・整備・更
新検討マニュアル(案)(国土交通省総合政策局建設施工企画課,河川局治水課),お
よびゲート点検・整備要領(案)(社団法人ダム・堰施設技術協会)によるものとする。
3-2-1
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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2.1.2 適用範囲
本マニュアル(案)は,河川管理施設として設置されている中小規模の樋門・水門
を対象に,施設・設備の点検・整備・更新に適用する。
本マニュアル(案)で取り扱う樋門・水門は堤防の一部を構成する構造物であり,
堰や分脈水門のように本川を横断する構造物は適用外とする。
樋門と水門は堤防を分断して設けられるかどうかによって,以下のとおり分類され
る。
2.1.2.1 水門
・水門とは,河川または水路を横断して設けら
れる制水施設であって,堤防の機能を有するも
のをいう。
・水門・樋門と堰との区別は,堤防の機能を有
しているかどうかで定まる。ゲートを全閉する
ことにより洪水時または高潮時において堤防
図 2.1.1
水門の事例
の代わりとなり得るものは,水門・樋門である。
洪水時および高潮時において,ゲートを全開または一部開放する計画であり,か
つゲートを全閉する計画のないものは,堤防の代わりとなり得ないので堰として扱
い,本マニュアル(案)の適用外とする。
2.1.2.2 樋門
・樋門(樋管を含む)とは,河川または水路を横
断して設けられる制水施設であって,堤防の機
能を有し,提体内に暗渠を挿入して設けられる
ものをいう。
・樋門と樋管の区別は,大きさ(概ね2m 以内が
樋管),構造(ヒューム管等を鉄筋コンクリート
で巻立てたものが樋管),形状(円形が樋管)等
で区別されることがあるが,本来,その機能・
設置目的に差異は無い。よって樋管も対象構造
物として樋門同様に扱い、本マニュアル(案)
の適用範囲とする。
3-2-2
図 2.1.2
樋門の事例
第3編 河川分科会
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2.1.3 維持管理フロー
本マニュアル(案)の目指す,効率的・効果的な維持管理の概要を,図2.1.3 維持
管理フロー図に示す。
本マニュアル
の対応章
スタート
基礎資料の調査
情報追記
基礎情報整理表の作成
・基本諸元情報
・点検結果情報
・補修・補強・更新履歴情報
・被災履歴情報
2. 基礎情報
の整理
点検の実施
3. 点検手法
点検記録表の作成
・土木構造物の点検
・機械設備の点検
・電気設備の点検
健全度の評価
管理水準の設定
・管理方式の設定
・ライフサイクルコスト最小化の検討
・土木構造物の健全度評価
・機械設備の健全度評価
4. 健全度評価
健全度が管理水準を下回るか
No
Yes
・部材の補修工法
補修・補強方法の検討
・構造物の補強工法
5. 補修・補強方法
・地盤の補強工法
優先度評価
・補修・補強内容に対する重要度評価
・社会への影響度評価
・総合評価
補修・補強の実施
施設の運用
将来の劣化予測
青色:通常時のサイクル
・コンクリート構造物の劣化予測
・機械設備の劣化予測
赤色:異常時のサイクル
図 2.1.3
維持管理フロー図
3-2-3
6. 優先度評価
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2.1.4 用語の定義
本マニュアル(案)において本文中で特に説明なく使われている重要な用語につい
て定義する。用語の定義については,以下の図書等を参考にした。
・ 土木機械設備の入札契約手法に関する委員会中間報告書(土木機械設備の入札契約
手法に関する委員会 平成18年2月)
・ JIS Z 8115「信頼性用語」
・ ゲート点検・整備要領(案)(社団法人 ダム・堰施設技術協会)
・ 機械設備管理指針(独立行政法人 水資源機構)
(1)
施設
治水,利水の目的で建設される水門,樋門等で,土木構造物,
建築物,機械設備,電気設備等で構成される工作物全体をいう。
(2)
設備
施設の構成要素の1つであり,装置,機器の集合体であり,単
独で施設の機能を発揮するものをいう。
(3)
装置
機器・部品の集合体であり,設備機能を発揮するために必要な
構成要素をいう。
(4)
機器
装置を構成する構造部,支承部,水密部,動力部,制動部等,
部品の集合体として特定の機能を有するものをいう。
(5)
部品
機器を構成する組立品で,スキンプレート,水密ゴム,ボルト・
ナット,軸受,ワイヤロープ等の機器の構成要素をいう。
(6)
健全度
設備の稼働および経年に伴い発生する材料の物理的劣化や,機
器の性能低下,故障率の増加等の状態をいう。
(7)
故障
設備,装置,機器,部品が,劣化,損傷等により必要な機能を
発揮できないことをいう。
(8)
予防保全
設備,装置,機器,部品が,必要な機能を発揮できる状態に維
持するための保全をいう。
(9)
事後保全
故障した設備,装置,機器,部品の機能を復旧するための保全
をいう。
(10)
管理水準
予防保全型の部材に対して,ライフサイクルコストが最小とな
る健全度レベルをいう。
3-2-4
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(11)
優先度評価
複数の構造物を対象に,その健全度と社会的影響度を総合的に
評価し,対策実施の順位付けを行うことをいう。
(12)
点検
設備の損傷ないし異常の発見,機能良否等の確認のために実施
する目視,機器等による計測,作動テストおよび記録作成まで
の一連の作業をいう。
(13)
管理運転
ゲート設備を実負荷あるいはそれに近い状態で,設備の作動確
認,装置・機器内部の防錆やなじみの確保,運転操作の習熟等
を目的に行う試運転をいう。
(14)
整備
設備の機能維持のために定期的に,または点検結果に基づき適
宜実施する清掃,給油脂,調整,修理,取替,塗装等およびそ
の記録作成までの一連の作業をいう。
(15)
修繕
設備,装置,機器,部品の故障,機能低下に伴う調整,修理等,
機器の復旧および機能保持を目的とした作業をいう。
(16)
取替
元の機能を復旧するため,故障または機能低下した機器,部品
を新品にすることを言う。
(17)
更新
故障または機能低下した設備,装置の機能を復旧するため,新
しいものに設置し直すことをいう。
(18)
補修
劣化した部材あるいは構造物の今後の劣化進行を抑制するこ
とをいう。
(19)
補強
劣化した部材あるいは構造物の耐荷性や剛性などの力学的な
性能低下を,所定の状態に回復または向上させることをいう。
(20)
管理者
施設の運転操作および保全に関する責任者をいう。
(21)
操作管理員
施設の運転操作を行うことを管理者から認められた者をいう。
【参考文献】
1) 解説・河川管理施設等構造令
財団法人国土開発技術研究センター
平成12年 3月
2) 河 川 用 ゲ ー ト 設 備 点 検 ・整 備 ・更 新 検 討 マ ニ ュ ア ル (案 ) 国 土 交 通 省 総 合 政 策 局 建 設
施工企画課・河川局治水課
平成 20 年 3 月
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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2.2 基礎情報の整理
樋門・水門の機能及び安全性と耐久性を適切に確保・維持するために必要となる基礎情
報の整理を行う。
【解説】
既設樋門・水門の設計,施工,維持管理に関する資料,地盤調査資料,補修・補強や
災害履歴等の資料を収集し,今後の樋門・水門の本体構造物,周辺堤防の維持管理に活
用することを目的とする。
本マニュアル(案)では,基本情報を下記のように分類してとりまとめるものとした。
①
基礎資料の調査
②
基本諸元情報
③
点検結果情報
④
補修・補強・更新履歴情報
⑤
被災履歴情報
2.2.1 基礎資料の調査
基礎資料の調査として,既設樋門・水門および周辺堤防の「設計資料」,「本体と
付帯構造物の維持管理に関する資料」,
「周辺堤防の挙動や環境変化に関する資料」の
収集・調査を行う。
一般に既設樋門・水門に関連する基礎資料としては,表 2.2.1 に示すようなもの
がある。
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表 2.2.1
既設樋門・水門の主な基礎資料
分類
基礎資料
備
考
① 河川管内図
地形図等
② 河川地形図(1/1000,1/2500,1/5000)
③ 航空写真(洪水時)
① 構造物台帳・維持管理台帳
② 定期点検記録(構造物調査報告書)
③ 被災履歴資料(漏水・洪水・地震等)
維持管理等
④ 補修・補強・応急対策の履歴
⑤ 堤防概略点検結果及び詳細点検結果
⑥ 水防対策資料
⑦ 構造物調査報告書(損傷等)
一 般 図 を 様 式 -1.2 に 添 付
① 樋門設計図書
し 、そ の 他 必 要 な 図 面 は ス
キャンデータで保管する。
設計関係
② 堤防・基礎地盤設計図書
堤防標準断面図を様式
-1.4 に 添 付 し 、そ の 他 図 面
はスキャンデータで保管
する。
③ 護岸等付帯構造物設計図書
① 地盤調査資料(ボーリング柱状図,地層縦横断図)
地盤関係
② 治水地形分類図
③ 地盤沈下資料(沈下計測資料,広域地盤沈下資料,
堤防縦横断測量結果)
施工関係
① 工事報告書(施工記録,工事写真,竣工図,沈下計
測等の観測データ)
※ 入手した資料の有無は,基礎情報管理表(様式-1.1)で管理するとともに,スキャ
ニングデータ等,電子媒体で保管する。
2.2.2 基本諸元情報
当該樋門・水門の施設名,完成年月,構造などの基本諸元や地形・地盤情報をはじ
め,設計図面(竣工図面)を基礎情報整理表(様式-1.2)および(様式-1.3)に記
載する。主要な項目は以下の通りである。
(1) 施設名,施設区分,種別,完成年月,目的,水系名,河川名,管理事務所・
管理者,担当出張所,位置
・ 構造物台帳,維持管理台帳等をもとに整理する。
・ 排水機場に繋がっている場合は,必ず「…排水機場樋門(管)」とする。ま
た,全面改築を行っている場合は改築年を完成年とする。
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(2) 構造物縦断面図,平面図,横断面図
・ 設計図書,維持管理台帳,補修・補強・応急対策の履歴等(設計図面・竣工図
面)をもとに整理する。
・ 特に改築や継足しが行われている場合には,可能な限り,該当する施工時の図
面を(様式-1.3)に貼り付ける。
・ 図面作成年を必ず記載する。
(3) 設置箇所の微地形区分
・ 治水地形分類図,旧地形資料等をもとに整理する。
・ 堤防周辺での過去の漏水箇所を見ると,旧河道部のような透水性地層の存在や
落堀のような地下水位が高く緩んだ地層の存在が漏水の引き金となっている
ことが多く,漏水危険度を検討する上で微地形は重要である。
・ 設置箇所の微地形区分は治水地形分類図から記入するが,治水地形分類図が無
い場合は旧地形図等から判断して記入する。
(4) 建設時の施工状況,施工関係者
・ 工事報告書(施工記録,工事写真帳,竣工図,沈下計測等の観測データ)等を
もとに整理する。
・ 樋門周囲の空洞や緩みの発生原因には,樋門の構造形式のみでなく,建設時の
施工方法が関連していることが考えられる。特に,施工基面への栗石・砕石・
砂敷均しや埋め戻し時の転圧不足などは,建設後に水みち発生の誘因となるこ
とも考えられることから,可能な限り,建設当時の施工状況を調査する。
(5) 埋め戻し高
・ 樋門設計図書,工事報告書(施工記録,竣工図)等をもとに整理する。
・ 施工直後の底版から堤防天端までの高さを記入する。併せて,底版から現況堤
防天端までの高さを示す。
(6) 本体,門扉構造
・ 構造物台帳および樋門設計図書等をもとにして整理する。
・ 構造物形状寸法,使用材料,基礎構造,地盤改良工の諸元と範囲,付帯構造等
について整理する。
(7) 本体基礎
・ 構造物台帳,樋門設計図書,堤防・基礎地盤設計図書等をもとに整理する。
・ 基礎地盤の種類,軟弱層厚,地盤の強度等の地盤特性について整理する。
・ 底版下に空洞が発生する樋門の多くは,基礎形式に支持杭を用いている場合が
多い。これは,周辺地盤が沈下するのに対して,杭で支持された樋門本体は沈
下がほとんどないため,相対的な抜け上がりによるものである。樋門の点検に
おいて本体基礎に関する情報は最も重要である。
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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・ 樋門の改築,継ぎ足しなどが行われ基礎形式が変更されている場合は,施工さ
れた全ての基礎形式の内容を施工年と共に記入する。
(8) しゃ水矢板・設置箇所
・ 構造物台帳や樋門設計図面等をもとにして整理する。
・ しゃ水矢板の有無や設置範囲は,樋門底版下の空洞化を推定したり,その後の
調査計画を検討する際に極めて重要な情報となる。
・ しゃ水矢板の水平方向設置範囲は,昭和 48 年の「樋門・樋管設計指針(案)」
では底版幅の内側としていたが,昭和 60 年の「河川砂防技術基準(案)設計
編」では壁体側方に拡張することとされている。
・ しゃ水矢板に関する記入は構造物台帳や設計図面などから行う。箇所数は,川
表水叩き前面から川裏水叩き前面の間の設置箇所数を記入する。
(9) 取付護岸
・ 構造物台帳や樋門設計図書,図面等をもとに整理する。
(10) 位置図,ボーリング柱状図
・ 地盤調査資料(ボーリング柱状図,地層縦横断図)等をもとに整理する。
・ 位置図は縮尺 1/2500 程度の地形図とし,樋門周辺を含んだ範囲とする。
・ ボーリング柱状図は樋門設置時のものが望ましいが,データの無い場合は近傍
のデータで代用する。柱状図には,孔口標高,地層境界深度,土質名,N 値を
記入することを原則とする。
2.2.3 点検結果情報
既設樋門・水門および周辺堤防に関する既往点検結果について基礎情報整理表(様
式-1.4)に記載する。主要な項目は以下の通りである。
(1) 構造物調査記録
・ 構造物台帳・維持管理台帳,構造物調査報告書(損傷等)等から整理する。
・ 構造物調査は抜け上がり,陥没など,何らかの変状発生時に,変状原因の究明と
対策工検討を目的として行われることが多いことから,現況の樋門の変状実態を
把握するための資料として重要である。
・ 調査記録は応急対策のための点検を除き,目的,方法,および結果の概要を記入
する。目的は,実態把握・原因検討・対策工検討などを記入し,方法は,外観観
察・函内観察・連通試験・開削調査などの位置や数量を記入する。
(2) 沈下記録
・ 工事報告書,地盤沈下資料(沈下計測資料,広域地盤沈下資料,堤防縦横断測量
結果)等をもとに整理する。
・ 堤防等の完成時の施工出来形と現況調査結果を比較し,沈下状況,分布等につい
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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て整理する。
・ 地下水採取に起因する広域地盤沈下量と堤防天端沈下量を比較することにより,
築堤に起因する沈下畳とその進行状況を把握できる。
・ 沈下記録は樋門完成後の毎年の沈下量を記入するものとするが,毎年の沈下記録
が得られない場合は,観測期間と共にその間の沈下量を記入する。
(3) 水防点検記録
・ 水防対策資料等をもとに整理する。
・ 樋門周辺での,主に漏水に関する危険箇所を確認するために,通常出水期前の水
防点検結果を記入する。
(4) その他
・ 樋門周辺堤防(当該樋門を挟み数百 m の区間)に対し,
「河川堤防の構造検討の
手引き」(平成 14 年 7 月)にもとづいて作成された相対評価ランク(A,B,C,D)
を記入すると共に,平面図および縦断面図を添付する。
2.2.4 補修・補強・更新履歴情報
既設樋門・水門本体および周辺堤防の機能を評価するため,過去の復旧工事の内容,
構造物調査の内容,応急対策の経緯などを知る必要がある。
施設完成後の応急対策,工事の履歴・情報について年代順に整理表(案)に記載す
る。主要な項目は以下の通りである。
(5) 工事履歴
・ 構造物台帳,工事報告書等をもとに整理し,工事内容のわかる図面を添付するも
のとする。
・ 工事履歴の記入に際しては,特に,樋門設置前からの築堤履歴を明らかにするこ
とが,樋門の抜け上がりに直結する盛土による圧密沈下の進行を推定する上で重
要である。
・ したがって,工事履歴は樋門の工事のみでなく,周辺堤防の築堤開始からの履歴
も記入することが望ましい。ただし,応急対策工事は除くものとする。
・ 工事の内容は,樋門に対する工事と周辺堤防に対する工事とに分けて記入する。
樋門に対する工事は,グラウト充填・修復整形・護岸張り替え・矢板打設等の位
置や数量を記入し,周辺堤防に対する工事は,嵩上げ・腹付け・堤内地盛土等の
位置や数量を記入する。
(6) 応急対策記録
・ 構造物台帳・維持管理台帳,補修・補強・応急対策の履歴をもとに整理する。
・ 昭和 50 年から開始された応急対策事業においては,構造物の安全性に関する各
種の項目を順次取り上げ,対策を行ってきた。
・ さらに平成 5 年にはそれまでの項目を再度見直し,必要に応じて追加対策が行わ
3 - 2 - 10
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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れた。
・ (様式-1.4)の“被災および工事履歴”応対欄に対策記録として,A(護岸等設
置)・ B(空洞化)・ C(小口径)・ D(浸透路長)・ E (施設機能)の記号を記入す
る。
(7) 補修あるいは工事等の図面
・ 補修あるいは工事の位置・内容のわかる図面を(様式-1.4)と対比させて貼り
付ける。
・ 河川堤防の浸透に関する概略点検結果平面図,縦断面図を添付する。
2.2.5 被災履歴情報
既設樋門・水門周辺の過去の被災状況について年代順に基礎情報整理表に記載する。
主要な項目は以下の通りである。
(8) 既往外力
・ 被災履歴資料(漏水・洪水・地震等)をもとに整理する。
・ 構造物の受けた既往外力の大きさや継続時間の履歴を知ることは,将来の被災予
測の重要な参考資料となる。
・ ただし,構造物周囲の変状は進行性であることから,必ずしも既往最大外力まで
は安全であるとは言えないことに注意する必要がある。
・ ここでは,警戒水位以上の履歴を対象とし,時間的に連続して警戒水位を越えた
ときの最高水位と継続時間を水位記録から記入する。また,1 洪水で一時的に警
戒水位を下回る(いわゆる 2 山洪水)場合は,警戒水位以上の延継続時間を用い
る。
・ なお,同一年に 2 回以上の履歴がある場合も全て記入する。
(9) 被災履歴
・ 構造物台帳,被災履歴資料(漏水・洪水・地震等),構造物調査報告書等をもと
に整理する。
・ 樋門周辺の過去の被災状況については,洪水による高水・高潮・地震などの被災
原因,漏水・クラック発生・陥没等の被災内容,および被災箇所と被災の程度を
記入する。
・ なお,現樋門が改築されたものであり,旧樋門が被災を受けている場合は,その
内容を記入する。
基本情報整理表
㧔様式-1.1~1.5㧕を以降に添付する。
【参考文献】
1) 樋門等構造物周辺堤防点検要領
2) 樋門補強マニュアル(案)
3) 河川堤防の構造検討の手引き
国土交通省河川局治水課
国土交通省河川局治水課
平成 13 年 5 月
平成 13 年 12 月
財団法人国土技術開発センター
3 - 2 - 11
平成 14 年 7 月
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
基礎情報管理表
分類
(様式-1.1)
資料名称
① 河川管内図
地形図等
② 河川地形図
(1/1000,1/2500,1/5000)
③ 航空写真(洪水時)
① 構造物台帳・維持管理台帳
② 定期点検記録
(構造物調査報告書)
③ 被災履歴資料
維持管理等
(漏水・洪水・地震等)
④ 補修・補強・応急対策の履歴
⑤ 堤防概略点検結果及び詳細点検結果
⑥ 水防対策資料
⑦ 構造物調査報告書
(損傷等)
① 樋門設計図書
設計関係
② 堤防・基礎地盤設計図書
③ 護岸等付帯構造物設計図書
① 地盤調査資料
(ボーリング柱状図,地層縦横断図)
地盤関係
② 治水地形分類図
③ 地盤沈下資料
(沈下計測資料,広域地盤沈下資料,堤防縦横断測
量結果)
① 工事報告書
施工関係
(施工記録,工事写真,竣工図,沈下計測等の観測
データ)
3 - 2 - 12
チェック
備考
月
水系名
位
置
キロ程
地先
管理事務所・管理者
担当出張所
位置図(ボーリング位置も記入のこと)
施工関係者
埋め戻し高
設置箇所の微地形区分
旧河道・落掘・旧川締め切り部・その他(
湧水状況および排水方法
建設時の
施工基面の処理方法
施工状況
埋め戻し材料および方法
あり・なし
用水・排水・用排水・その他
年
樋門・水門
河川管理施設・許可工作物
排水機場との接続
目的
完成年月
種別
〈基本緒元〉
施設区分
様式-1.2
施工直後
左・右岸
)
m:現況
K
河川名
m
基礎情報整理表
門扉構造
年
:
日
標高
杭・直接・ケーソン
径
あり・なし・不明
)
あり・なし・不明
あり・なし・不明
可とう性継ぎ手の使用
コンクリートブロック張・石張・コンクリートのり枠張・その他(
m
箇所)
mm、長さ
木・RC・PC・鋼管
なし・木矢板・鋼矢板(
径・長さ
杭種別
支持型式
しゃ水
底版との結合
矢板設
置箇所 側方への拡張
本体
基礎
整理番号
ローラゲート・スライドゲート・フラップゲート・マイタゲート・スウィングゲート
底版のみ・底版と側壁
あり・なし・不明
m
mm
(高さ)(幅)(長さ)(連数)
施設名
月
RC・ヒューム管・柔構造
グラウトホールの
有無・位置
計画敷高
底版厚さ
取付 のり覆工
護岸 延長(m)
本
体
寸法(m)
構造
作成年月
河川名
(様式-1.2)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
3 - 2 - 13
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
構造物縦断面図・平面図・横断面図
様式-1.3
基礎情報整理表
(様式-1.3)
整理番号
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
3 - 2 - 14
応対
3 - 2 - 15
月 ~
月 ~
月 ~
月 ~
年
年
年
年
調査年月
月 ~
月 ~
年
年
年
年
年
年
年
年
月(
月(
月(
月(
月(
月(
D(浸透路長)・E(施設機能)
時期
月
月
年
年
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
月 ~
月 ~
月 ~
月 ~
月 ~
月 ~
年
年
年
年
年
年
(重要度)A,B
しておくこと)
(本台帳とは別に右の資料を整理
(種別)堤防高・堤防断面・法崩れすべり・漏水・水衝洗掘
月間)
月間)
月間)
月間)
月間)
月間)
調査方法
月(
月(
月(
月(
月(
月(
期間(古い順に記入)
広域地盤沈下(観測位置;
継続時間
最高水位(標高m)
年 月 日
K ~ K )が重要水防箇所の場合の種別・重要度
年
年
年
年
年
年
(標高m)
(様式-1.4)
年
月
河川名
日 整理番号
: 施設名
補修あるいは工事の内容(図面がある場合は様式-1.5に添付すること)
作成年月
水
防
点
検
記
録
・河川地形図
・ボ-リング柱状図
月
月
月
月
月
月
月
年 月 日
調査結果の概要
・構造物調査報告書
年 月 日
・漏水等被災調査報告書
・河川管内図
年
点検実施年
住民からの報告
年 月 日
・堤防概略点検結果および詳細点検結果
・水防計画書
・工事記録
・地盤沈下資料
・応対記録
A・B・C・D
年 月 日
異常個所の有無・内容
堤防の浸透に関する概略点検ランク
年
年
年
年
年
年
年
点検年月
年 月 日
完成から後に警戒水位を超えた時の水位の記録(古い順に記入)
・構造物台帳 ・治水地形分類図
沈下量(cm)
)
年 月 日
記入例(原因)洪水・高潮・地盤(内容)漏水・クラック・陥没 記入例:(補修・対策工)グラウト・修復整形・護岸張替え・矢板打設:(堤防区工事)嵩上げ・腹付け・堤内地盤土
被災原因および内容
基礎情報整理表
観測地点の警戒水位
月
月
年
年
月
月
年
年
(古い順に記入)
沈下量(cm)
調査目的
樋門を挟む区間(
月間)
月間)
月間)
月間)
月間)
月間)
1) A(護岸等設置)・B(空洞化)・C(小口径)
重要度A・指定されず
点検箇所の重要水防箇所ランク
構造物
調査記録
沈
下
記
録
期間(古い順に記入)
)
(標高m)
計画高水位
事業費
周辺堤防の沈下(観測位置;
工事
種別(○印または記号を記入)
既往外力
(樋門施工後の近傍の観測地点)
(
)での水位
被
災
お
よ
び
工
事
履
歴
被災
〈被災および工事履歴、調査記録等〉(記入しきれない場合は用紙を追加すること)
様式-1.4
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
基礎情報整理表
補修あるいは工事の位置・内容を示す図面、浸透に関する概略点検の図面その他様式-1.4に関わる図面
様式-1.5
(様式-1.5)
整理番号
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
3 - 2 - 16
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
参考-1)
基礎情報整理表
記載例
様式-1.1
基礎情報整理表(様式-1.1)
分類
基礎資料
チェック
レ
① 河川管内図
地形図等 ② 河川地形図(1/1000,1/2500,1/5000)
KANNNAI.PDF
-
③ 航空写真(洪水時)
-
① 構造物台帳・維持管理台帳
レ
② 定期点検記録(構造物調査報告書)
レ
③ 被災履歴資料(漏水・洪水・地震等)
レ
維持管理等 ④ 補修・補強・応急対策の履歴
備考
レ
⑤ 堤防概略点検結果及び詳細点検結果
-
⑥ 水防対策資料
レ
⑦ 構造物調査報告書(損傷等)
-
① 樋門設計図書
レ
設計関係 ② 堤防・基礎地盤設計図書
-
③ 護岸等付帯構造物設計図書
-
① 地盤調査資料(ボーリング柱状図,地層縦横断図)
レ
② 治水地形分類図
-
③ 地盤沈下資料(沈下計測資料,広域地盤沈下資料,
-
DAICHOU.PDF
TENKEN.PDF
HISAI.PDF
HOSHUU.PDF
SUIBOU.PDF
SEKKEIZU.PDF
BOR.PDF
地盤関係
堤防縦横断測量結果)
施工関係
① 工事報告書(施工記録,工事写真,竣工図,
沈下計測等の観測データ)
3 - 2 - 17
レ
KOUJI.PDF
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
基礎情報整理表
(様式-1.2)
作成年月
平成25年10月2日
整理番号
河川名 ●●川 : 施設名 ●●樋管
〈基本緒元〉
水系名
河川管理施設・許可工作物
施設区分
●●川
河川名
●●川
国土交通省●●事務所
樋門・水門
種別
管理事務所・管理者
●●出張所
担当出張所
平成 1 年 11 月
完成年月
●●県●●郡●●
用水・排水・用排水・その他
目的
位 地先
置 キロ程
排水機場との接続
あり・なし
左・右岸
0.6 K
+
3
m
設置箇所の微地形区分
旧河道・落掘・旧川締め切り部・その他(
)
湧水状況および排水方法
不明
建設時の
施工基面の処理方法
不明
施工状況
埋め戻し材料および方法
発生土(利用土、振動ローラ転圧)
施工関係者 ●●建設株式会社
埋め戻し高
施工直後 9.400 m:現況
9.056 m
支持型式 杭・直接・ケーソン
RC・ヒューム管・柔構造
本体
杭種別
(高さ)(幅)(長さ)(連数)
木・RC・PC・鋼管
基礎
径・長さ 径 450 mm、長さ 11m
3.30 2.70
35.50
1
本
500 mm
底版厚さ
なし・木矢板・鋼矢板(4箇所)
体
しゃ水 底版との結合
計画敷高 標高 6.340
m
あり・なし・不明
矢板設
あり・なし・不明
あり・なし・不明
グラウトホールの
置箇所 側方への拡張
有無・位置
底版のみ・底版と側壁
可とう性継ぎ手の使用 あり・なし・不明
門扉構造
ローラゲート・スライドゲート・フラップゲート・マイタゲート・スウィングゲート
コンクリートブロック張・石張・コンクリートのり枠張・その他( )
取付 のり覆工
護岸 延長(m)
構造
寸法(m)
位置図(ボーリング位置も記入のこと)
ボーリング位置図
様式-1.3
基礎情報整理表
47
(様式-1.3)
整理番号
構造物縦断面図・平面図・横断面図
平面図
堤防縦断図
堤防横断図
3 - 2 - 18
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
基礎情報整理表
(様式-1.4)
作成年月
平成25年10月2日 整理番号
河川名 ●●川 : 施設名 ●●樋管
47
〈被災および工事履歴、調査記録等〉(記入しきれない場合は用紙を追加すること)
時期
種別(○印または記号を記入)
被災
応対
工事
被災原因および内容
(古い順に記入)
事業費
補修あるいは工事の内容(図面がある場合は様式-1.5に添付すること)
記入例(原因)洪水・高潮・地盤(内容)漏水・クラック・陥没 記入例:(補修・対策工)グラウト・修復整形・護岸張替え・矢板打設:(堤防区工事)嵩上げ・腹付け・堤内地盤土
(原因)
B
昭和60年
3月
年
月
年
月
年
月
年
月
年
月
被
災
お
よ
び
工
事
履
歴
構造物調査、調査孔より測定
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
(内容)
(原因)
既往外力
(樋門施工後の近傍の観測地点)
(
)での水位
観測地点の警戒水位
(標高m)
(標高m)
13.558
5.20
周辺堤防の沈下(観測位置; 0.4k~0.8k
S 年 月 ~ 63年
S63年 月 ~ 4年
月(
完成から後に警戒水位を超えた時の水位の記録(古い順に記入)
年 月 日
平成10年8月30日
最高水位(標高m)
期間(古い順に記入)
キー17
点検年月
)
沈下量(cm)
8
H 1年
月 ~ 4年
月(36月間)
43.1
H4年
月 ~ 5年
月(12月間)
9.3
H5年
月 ~ 6年
月(12月間)
5.1
H6年
月 ~ 7年
月(12月間)
10.8
月(
月間)
年
月 ~
年
月(
月間)
水
防
点
検
記
録
月
年
月
年
月
年
月
年
月
年
月 ~
年
月(
月間)
H7年
月 ~ 8年
月(12月間)
1.9
年
月
月 ~
年
月(
月間)
H8年
月 ~ 11年
月(36月間)
22.9
年
月
点検箇所の重要水防箇所ランク
重要度A・指定されず
調査目的
樋門を挟む区間(
年 月 日
住民からの報告
調査結果の概要
目視調査
護岸のクラック、不同沈下あり
堤防の浸透に関する概略点検ランク
K ~ K )が重要水防箇所の場合の種別・重要度
(種別)堤防高・堤防断面・法崩れすべり・漏水・水衝洗掘
1) A(護岸等設置)・B(空洞化)・C(小口径)
D(浸透路長)・E(施設機能)
調査方法
実態把握
年 月 日
異常個所の有無・内容
年
年
昭和58年4月
年 月 日
継続時間
広域地盤沈下(観測位置;
23
年
年 月 日
7.14
月間)
月 ~
平成10年9月16日
6.85
月( 48月間)
年
調査年月
構造物
調査記録
)
沈下量(cm)
期間(古い順に記入)
沈
下
記
録
(内容)
計画高水位
(本台帳とは別に右の資料を整理
・構造物台帳 ・治水地形分類図
しておくこと)
点検実施年
A・B・C・D
(重要度)A,B
・河川地形図
・ボ-リング柱状図
・応対記録
・工事記録
・地盤沈下資料
平成 8 年
・堤防概略点検結果および詳細点検結果
・水防計画書
・構造物調査報告書
様式-1.5
基礎情報整理表
(様式-1.5)
整理番号
補修あるいは工事の位置・内容を示す図面、浸透に関する概略点検の図面その他様式-1.4に関わる図面
3 - 2 - 19
・河川管内図
・漏水等被災調査報告書
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
参考-2)
「河川堤防の構造検討の手引き
p21~22
財団法人国土技術開発センター
堤防安全性の概略評価ランク
3 - 2 - 20
平成 14 年 7 月」
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
2.3 点検手法
点検は,土木構造物,機械設備等の機能を維持し信頼性を確保することを目的に計画
的かつ確実に実施する。
【解説】
本マニュアル(案)における点検は,定期点検を基本とし,目視,動作確認等により,
土木構造物,機械設備等の損傷,異常の発見,機能良否の確認及び点検記録表の作成に
ついて示すものであり,点検結果をもとに,土木構造物,機械設備等における各部位の
健全度を評価し,その機能を維持し信頼性を確保するための対応を決定することを目的
とする。
本マニュアル(案)では,点検手法を下記のように分類してとりまとめるものとした。
① 点検の実施方針
② 点検方法
③ 点検結果の整理
2.3.1 点検の実施方針
2.3.1.1 構成部位の分類
樋門・水門は,土木構造物,機械設備,電気設備,建築設備に大分類される。この
大分類に対して健全度を評価する単位は,事業者の管理負担を軽減することを考慮し,
維持管理を行う上で最低限の施設構成を抽出した図 3.1.1 に示す構成部位とする。
なお,建築設備は治水安全面に関与しないため,本マニュアル(案)では対象外と
する。
2.3.1.2 点検部位
前項で抽出した施設の構成部位に対し,本点検における対象部位を以下のように設
定する。
(1) 土木構造物
樋門・水門の土木構造物は,大別して本体,堤防に分類され,点検部位は一般的な
部位である表 2.3.1 のように区分する。
(2) 機械・電気設備
樋門・水門の機械・電気設備は,表 2.3.2 に示すように,機械設備が扉体,戸当り,
付帯設備(管理橋・防護柵・階段等),開閉装置,電気設備が機側操作盤に分類される。
機械・電気設備の構成部位は,ゲート形式により異なるため,点検部位は一般的に
構成部位が多いローラゲートを代表として表 2.3.3 のように区分する。
なお,その他のゲート形式に関しては,ローラゲートを対象に作成した点検記録表
に対し,必要部分(対象部位)のみ点検することとする。
また,開閉装置の形式(動力伝達形式)は,一般的に機械式と油圧式があるが,本
3 - 2 - 21
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
マニュアル(案)では,中小規模の樋門・水門に多く使用されている機械式(ワイヤ
ロープ式,ラック式,スピンドル式)を対象とする。
土木構造物
機械設備
扉体・戸当り
ローラゲート
スイング・マイタ
ゲート
スライドゲート
フラップゲート
開閉装置
ワイヤロープ式
ラック式
スピンドル式
電気設備
構成部位
施設概要 (例 : 水 門 )
点検部位
門柱
操作台
本 胸壁・翼壁
体 床版
土
木
構
造
物
水叩き
継手(ゴム材)
堤 堤体
防 護岸工
スキンプレート
本体
桁
ボルト・ナット
塗装
扉
主ローラ
体 支承部
補助ローラ
水密部
機
械
設
備
水密ゴム
押え板、ボルト・ナット
シーブ
戸当たり
ラック・スピンドル棒
開 軸・継手・安全装置・ブレーキ
閉
減速機・ギヤ・軸・軸受類
装
置 モーター
エンジン
管理橋・防護柵・階段等
非常用設備
電
気
設
備
電気設備
図 2.3.1
操作盤
閉度計・センサー
施設の構成部位の分類例
3 - 2 - 22
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
表 2.3.1
区
土木構造物の点検部位一覧
分
点検部位
門柱
操作台
胸壁・翼壁
本体
床版
水叩き
継手(ゴム材)
函体
堤体
堤防
護岸工
表 2.3.2
機械・電気設備の分類
構成部位
ゲート形式
機械設備
電気設備
扉体
戸当り
付帯設備
開閉装置
機側操作盤
ローラゲート
○
○
○
△
△
スライドゲート
○
○
○
△
△
スイング・マイタゲート
○
○
○
△
△
フラップゲート
○
○
○
△
△
表 2.3.3
ゲート形式
ローラゲートの点検部位一覧
区
分
点検部位
扉体
支承部
扉体
扉体付シーブ
水密部
取外し戸当り
戸当り
埋設部
付帯設備
管理橋等
構造体
ローラゲート
動力伝達部
開閉装置
制動部
保護装置
開度計
盤
機側操作盤
計器類
押釦
表示灯
3 - 2 - 23
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
2.3.1.3 点検項目
土木構造物の点検項目は,表 2.3.1 で示した点検部位とする。
機械・電気設備の点検項目に関しては,自治体の土木担当職員が効率的に点検でき
るよう,装置区分毎に分けることとした。
本マニュアル(案)における点検項目を表 2.3.4~2.3.7 に示す。
(1) 土木構造物
表 2.3.4
区 分
土木構造物の点検項目
点検項目
備
考
門柱
操作台
胸壁・翼壁
本体
床版
水叩き
継手(ゴム材)
函体
堤防
函体(函内)
目視ができる場合
堤体
樋門・水門取付から 10m 範囲
護岸工
樋門・水門取付から 10m 範囲
3 - 2 - 24
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
(2) 機械設備(扉体・戸当り)
表 2.3.5
扉体・戸当りの点検項目
スイング
区
分
点検項目
ローラ
スライド
フラップ
備考
・マイタ
ゲート
ゲート
ゲート
ゲート
○
○
○
○
○
○
○
○
塗装
○
○
○
○
構造全体
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
ボルト,ナット
○
○
○
○
主ローラ,軸,軸受
○
○
○
○
補助ローラ,軸,軸受
○
○
×
×
シーブ,軸,軸受
○
○
×
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
×
×
○
○
×
×
○
○
×
×
○
○
×
×
○
○
×
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
清掃状態
全般
スキンプレート
扉体
主桁,補助桁
支承部
シーブ
水密ゴム
水密部
ゴム押え板
戸当り
全般
清掃状態
主ローラレール
取外し
戸当り
補助ローラレール
ボルト,ナット
底部戸当り
側部戸当り
埋設部
上部戸当り
コンクリート部
管理橋等
管理橋・防護柵・階段 工
3 - 2 - 25
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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(3) 機械設備(開閉装置)
表 2.3.6
区
分
開閉装置の点検項目
点検項目
備
考
清掃状態
全般
塗装
構造体
構造全体
動力伝達部
ギア・シーブ・軸受・
ワイヤロープ等
保護装置
制限開閉器
開度計
機械式
非常用設備
非常用発電機等
(4) 電気設備
表 2.3.7
区
全般
計器類
分
電気設備の点検項目
点検項目
備
考
盤
盤内外配線,配管
電流計
電圧計
押釦
押釦スイッチ
表示灯
表示灯
2.3.1.4 点検周期
点検は,毎年 1 回適切な時期に実施することを基本とする。
ただし,各河川・区間,施設の利用目的等により治水上の重要度が異なるため,各
施設の重要度に応じた点検周期で行うこととする。
なお,地震,出水,落雷,その他要因により,施設・設備・機器に何らかの異常が
発生した恐れがある場合に,臨時点検を必要に応じて実施する。
3 - 2 - 26
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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2.3.2 点検方法
2.3.2.1 土木構造物
土木構造物の 点検は,目視調査,簡易測量によって行う。特徴的な箇所や損傷・劣
化が見られた箇所は,スケッチ等に記録しておくとともに写真を撮っておく。
なお,函内調査においては,函内作業が可能な内空断面があり,長靴もしくは胴長
で立ち入ることが出来る程度の水深で,水位の急激な変化がなく,充分に安全が確認
できる場合は,目視調査を行う。ただし,函内に立ち入ることの出来ない場合は,函
外からの目視によって撓み等を調査する。
図 2.3.2
小口径樋管等の函外からの観察例
1)
2.3.2.2 機械・電気設備
機械・電気設備の点検は,目視調査,動作確認によって行う。特徴的な箇所や損傷
が見られた箇所は,スケッチ等に記録しておくとともに写真を撮っておく。
なお,多数の樋門・水門を調査しなければならず,また,点検者が土木担当職員で
ある可能性が高い。このため,機械・電気設備の点検は,目視及び動作確認による異
常の有無の確認を主体とする。この点検で異常が示唆された場合には,
「河川用ゲート
設備・点検・整備・更新検討マニュアル(案)」 2) に従って精査することが望ましい。
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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2.3.3 点検結果の整理
2.3.3.1 評価方針
点検は,樋門・水門の構成部位を個々の部位に区分し,区分毎に損傷の程度(健全
度)を確認する。損傷の程度(健全度)は,「板厚減少」「不具合の状況」等を目視,
動作確認等にて5,3,2段階で評価することとする。
以下に健全度評価の区分を示す。
・5 段階評価:目視点検を基本とした損傷の程度を 5 段階に分類できるもの
例)鋼製部材の塗装劣化,コンクリート構造物の劣化
・3 段階評価:目視を基本とした損傷の程度を 3 段階に分類できるもの
例)機械設備等
・2 段階評価:作動,損傷の有無の確認のみ可能なもの(損傷の程度は不可)
例)電気設備等
表 2.3.8
健全度評価区分と内容(5,3 段階)
健全度評価区分
内
容
(5 段階)
(3 段階)
a
a
健全
b
-
局所的に損傷が発生している
c
c
損傷が発生している
d
-
局所的に著しい損傷が発生している
e
e
著しい損傷が発生している
表 2.3.9
健全度評価区分と内容(2 段階)
健全度評価区分
内
(2 段階)
a
作動する(損傷なし)
e
作動不能(損傷あり)
3 - 2 - 28
容
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2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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2.3.3.2 評価内容・段階評価数
樋門・水門点検における健全度の評価は,点検項目毎に判定する。点検項目毎に不
具合の原因となる内容を整理し,その内容の損傷の程度に対応した段階評価数を設定
した。
以下に各区分における評価内容,段階評価数を示す。
(1) 土木構造物
a) 本体
樋門・水門本体は基本的に土木構造物であり,コンクリートにより構成されている。
コンクリート構造物は,予防保全型の部位であるため「損傷,劣化」について 5 段
階で評価する。
「傾倒」については,コンクリート構造物が顕著に傾倒し,樋門・水門自体の機能
が損なわれているかどうか 2 段階において評価する。
また,継手(ゴム材),函体は,「損傷,劣化,撓み,折れ曲がり」等について 3 段階
で評価する。
なお,樋門・水門本体は基本的に一体構造物であるため,径間数に関わらず最も健
全度の低い箇所に対して評価するものとする。
b) 堤防
樋門・水門を取り巻く堤体,護岸工は,
「ゆるみ,陥没,クラック,段差」について
3 段階で評価する。
なお,堤防については,河川出水や堤防上の交通状況等による損傷の可能性がある
ため,評価する際には十分留意が必要である。
(2) 機械設備(扉体・戸当り)
a) 扉体全般
扉体全般は,扉体の可動に影響を及ぼすものとして「汚れ,ごみ,流木,堆積土砂
等」について 3 段階で評価する。
塗装は,「腐食,塗装劣化」について 5 段階で評価する。
なお,多径間におよぶ施設は,径間毎の扉体を点検・評価するものとする。
また,材質は,鋼製の他にステンレス製,アルミ合金製等が使用されている場合が
ある。劣化予測を行う対象部位の判断を行う必要があるため,点検記録表備考欄に扉
体の材質を記載する。
b) 扉体
構造全体として,施設可動時に「振動,異常音」が見られるかどうか 2 段階で評価
する。スキンプレート,主桁,補助桁の部材は,鋼製を対象とし「腐食,塗装劣化」
について 5 段階で評価する。
ボルト・ナットは,「ゆるみ,損傷,脱落」について 3 段階で評価する。
なお,ステンレス製部材は,基本的に“メンテナンスフリー”を前提としているが,
実例として損傷しているものが見受けられる。これは,出水時における予期せぬ負荷
(流木やごみによる衝撃等)によるものであると考えられ,5 段階に分類評価し,予
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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防保全的に傾向管理することは困難である。したがって,スキンプレート,主桁等の
「変形,損傷」においては,3 段階で評価するものとする。
c) 支承部
主(補助)ローラ,軸,軸受は,
「回転状況,給油状態」について 3 段階で評価する。
給油状態については,点検時に可能であれば給油を行うものとする。ただし,評価
は給油前に行い,点検記録表備考欄に「給油済み」等のコメントを記載する。
なお,多径間におよぶ施設は径間毎の支承部を点検・評価するものとする。
d) 扉体付シーブ
シーブ等は,「回転状況,給油状態」について 3 段階で評価する。
e) 水密部
水密部の水密ゴム,ゴム抑え盤は,
「変形,損傷,劣化」について 3 段階で評価する。
また,「漏水」の有無を 2 段階で評価する。
※近年,ゴム材については,劣化傾向を把握するための研究が行われているが,実
用事例が少ないこと,劣化傾向を把握するための評価指標が多大(さらに複雑であ
る)であること,施設全体におけるゴム材の費用構成比率が小さいことから,本
マニュアル(案)においては,ゴム材の健全度を 3 段階に分類した。
f) 戸当り全般
戸当り全般は,清掃状態として「ゴミ,流木,土砂等」の有無を 3 段階で評価する。
清掃状態については,点検時に可能であれば清掃を行うものとする。ただし,評価
は清掃前に行い,点検記録表備考欄に「清掃済み」等のコメントを記載する。
g) 取外し戸当り
主(補助)ローラレールは,「腐食,塗装劣化」について 5 段階で評価し,「変形,
損傷」について 3 段階で評価する。
取付部のボルト・ナットにおいては,
「ゆるみ,損傷,脱落」について 3 段階で評価
する。
h) 埋設部
戸当り埋設部は,「腐食,塗装劣化」について 5 段階で評価し,「変形,損傷」につ
いて 3 段階で評価する。
戸当りコンクリート部においては,
「ひび割れ,剥離」および「漏水,遊離石灰」に
ついて 3 段階で評価する。
i) 管理橋等
管理橋,防護柵,階段は,「損傷,劣化」について 3 段階で評価する。
部材においては,「腐食,塗膜劣化」について 5 段階で評価する。
(3) 機械設備(開閉装置)
a) 開閉装置全般
開閉装置全般に関しては,清掃状態として「汚れ」について 3 段階で評価する。
また,塗装は,「腐食,塗装劣化」について 5 段階で評価する。
b) 開閉装置構造体
開閉装置構造体は,「変形,損傷,ボルトの脱落」について 3 段階で評価する。
3 - 2 - 30
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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また,開閉装置の作動確認として「漏油,振動,異常音,作動状況」について 2 段
階で評価する。
c) 動力伝達部
動力伝達部は,各開閉形式により「給油状態」について 2 段階で評価する。
ワイヤロープウィンチ式については,ギヤ・シーブ・軸受・ワイヤロープを評価,
ラック式についてはラックピンを評価,スピンドル式についてはスピンドルを評価す
る。
d) 保護装置
保護装置は,制限開閉器の「作動状況」について 2 段階で評価する。
e) 開度計
開度計は,「作動状況」について 2 段階で評価する。
f) 非常用設備
非常用発電機等の非常用設備は,「作動状況」について 2 段階で評価する。
(4) 電気設備
a) 機側操作盤全般
機側操作盤は,「清掃状態」について 3 段階,盤内の「乾燥状態」について 2 段階,
「塗装」について 5 段階で評価する。盤内外配線,配管は「破損」について 3 段階で
評価する。
b) 計器類
機側操作盤の計器類は,
「電流計」,
「電圧計」について正常な値を示しているかどう
かの観点より 2 段階で評価する。
c) 押釦スイッチ
押釦は,
「作動テスト」を行い,押釦スイッチが正常に機能するかどうかの観点より
2 段階で評価する。
d) 表示灯
表示灯は,
「ランプテスト」を行い,表示灯が正常に点灯するかどうかの観点より 2
段階で評価する。
3 - 2 - 31
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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表 2.3.10
構成部位
区分
各区分における評価内容・段階評価数
点検項目
内容
段階評価数
損傷,劣化
5
門柱
傾倒
2
損傷,劣化
5
操作台
傾倒
2
損傷,劣化
5
胸壁・翼壁
傾倒
2
本体
損傷,劣化
5
床版
土木構造物
段差
2
損傷,劣化
5
水叩き
段差
2
継手(ゴム材)
損傷,劣化
3
函体
撓み,折れ曲がり
3
函体(函内)
クラック,継ぎ手の開き
3
堤体
ゆるみ,陥没、クラック
3
堤防
護岸工
クラック,段差
3
汚れ
3
清掃状態
扉体全般
ごみ,流木,土砂等
3
塗装
腐食,塗装劣化
5
構造全体
振動,異常音
2
腐食,塗装劣化
5
スキンプレート
変形,損傷
3
扉体
腐食,塗装劣化
5
主桁、補助桁
変形,損傷
3
ボルト,ナット
ボルトのゆるみ,損傷,脱落
3
主ローラー,軸,軸受
回転状況,給油状態
3
支承部
補助ローラーレール
回転状況,給油状態
3
扉体付シーブ シーブ,軸,軸受
回転状況,給油状態
3
変形,損傷,劣化
3
水密ゴム
水密部
漏水
2
ゴム押さえ盤
変形,損傷
3
汚れ
3
清掃状態
戸当り全般
ごみ,流木,土砂等
3
腐食,塗装劣化
5
主ローラレール
変形,損傷
3
取外し戸当り
腐食,塗装劣化
5
補助ローラレール
変形,損傷
3
機械設備
ボルト,ナット
ボルトのゆるみ,損傷,脱落
3
腐食,塗装劣化
5
底部戸当り
変形,損傷
3
腐食,塗装劣化
5
側部戸当り
変形,損傷
3
埋設部
腐食,塗装劣化
5
上部戸当り
変形,損傷
3
ひびわれ,剥離
3
コンクリート部
漏水,遊離石灰
3
腐食,塗装劣化
5
管理橋,防護柵,階段
管理橋等
変形,損傷
3
清掃状態
汚れ
3
開閉装置全般
塗装
腐食,塗装劣化
5
変形,損傷,ボルトの脱落
3
漏油
2
開閉装置構造体 構造全体
振動,異常音
2
作動状況
2
動力伝達部
ギア・シープ・軸受・ワイヤロープ等 給油状態
2
保護装置
制限開閉器
作動状況
2
開度計
機械式
作動状況
2
非常用施設
非常用発電機等
作動状況
2
清掃状態
3
盤
乾燥状態
2
機側操作盤全般
塗装
5
盤内外配線、配管
破損
3
電気設備
電流計
電流値(定格電流値以下であること)
2
計器類
電圧計
電圧値(定格電圧の±10%以内であること)
2
押釦
押釦スイッチ
作動テスト
2
表示灯
表示灯
ランプテスト
2
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2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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2.3.3.3 点検結果の整理
点検結果は,前項で整理した点検項目,評価内容から作成した点検記録表(様式-2.1
~2.6)に記入する。
なお,点検記録表の健全度は,
「2.4 健全度評価」の 2.4.1 健全度の評価方法をもと
に判定する。
点検記録表(様式-2.1~2.6)を以降に添付する。
【参考文献】
1) 樋門等構造物周辺堤防点検要領
国土交通省河川局治水課
2) 河川用ゲート設備 点検・整備・更新検討マニュアル(案)
設施工企画課・河川局治水課
平成 20 年 3 月
3 - 2 - 33
平成 13 年 5 月
国土交通省総合政策局建
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2.4 健全度評価
樋門・水門を構成する各部位に対して点検結果をもとに健全度評価を行い,補修・
補強を実施する管理水準を設定する。
【解説】
「健全度」とは,施設の機能および経年に伴い発生する部材の物理的劣化等,施設を
構成する部位の状態を表すものである。点検結果をもとに確認・評価され,状態に応じ
て補修・補強等を実施する。なお,「管理水準」は補修・補強を実施する状態を健全度
で表すものであり,ライフサイクルコストの観点を考慮して設定する。
本マニュアル(案)では,健全度評価を下記のように分類してとりまとめるものとし
た。
① 健全度の評価方法
② 管理水準の設定方法
2.4.1 健全度の評価方法
2.4.1.1
5段階の健全度評価(例:塗装)
損傷の程度を 5 段階に分類可能な扉体のスキンプレート,主桁,戸当りの塗装等に
関する健全度評価の区分例を表に整理する。
表 2.4.1
評価
a
b
健全
局所的な
表面錆,塗装
剥離あり
塗装の健全度評価
健 全 度
c
全体的な
表面錆あり
3 - 2 - 41
d
局所的な
錆または
板厚減少あり
e
全体的な
錆または
全体的な板厚
減少あり
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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表 2.4.2
健全度
a
b
c
d
e
塗装の健全度評価区分
状態
事例
健全
局所的な表面錆,塗装剥離
あり
全体的な表面錆あり
局所的な錆または
板厚減少あり
全体的な錆または
板厚減少あり
3 - 2 - 42
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<塗装に関する健全度評価>
塗装は通常多層塗りされている。劣化は上層塗膜から進行し,初期の塗膜劣化には
鋼材の腐食を伴わないが,下層塗膜の劣化に伴い鋼材腐食が起きることが一般的であ
る。また,流木等による塗膜の損傷は,鋼材の露出により早い時期に鋼材腐食が起き
る。
したがって,塗装の健全性は,錆の発生を確認して,部分補修あるいは塗替時期を
判断することが必要である。
なお,板厚減少を伴う錆については,鋼構造部材の強度低下を招く。腐食の程度に
応じて強度検討が必要となるため,注意を要するとともに,早急な補修対策を施すこ
とが望ましい。
健全度状態に対する補修・補強の判断例を以下に示す。
判定 a:健全である。
判定 b:局所的な塗装劣化に対しては,状況の推移を観察し補修の実施を検討す
る。
判定 c:局所的な塗装劣化に表面錆を伴う場合に対しては,腐食の進行を止める
ため,なるべく早く補修塗装の実施を検討する。
判定 d:局所的な錆及び,板厚減少に対しては,早急な補修塗装の実施を検討す
る。
板厚減少が当該樋門・水門の設計余裕厚(鋼材余裕厚:通常 1 ㎜程度)
を超える場合は,専門家の調査,強度検討の実施を検討する。
判定 e:全体的な錆及び,板厚減少に対しては,早急な塗替の実施を検討する。
板厚減少が当該樋門・水門の設計余裕厚(鋼材余裕厚:通常 1 ㎜程度)
を超える場合は,専門家の調査,強度検討の実施を検討する。
3 - 2 - 43
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2.4.1.2
3段階の健全度評価(例:水密ゴム)
損傷の程度を 3 段階に分類可能な水密ゴム等に関する健全度評価の区分例を表 2.4.4
に整理する。
表 2.4.3
水密ゴムの健全評価
損
評価
a
b
なし
-
c
局所的な損
傷・劣化あり
表 2.4.4
健全度
傷
度
d
e
全体的な損傷・
-
劣化あり
水密ゴムの健全度評価区分
状態
事例
a
健全
b
-
c
局所的な損傷・劣化あり
d
-
e
全体的な損傷・劣化あり
3 - 2 - 44
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2.4.1.3
2段階の健全度評価(例:漏電継電機)
損傷の有無の把握のみとなる電機類等について,健全度評価を区分した例を表 2.4.6
に整理する。
表 2.4.5
押釦スイッチの健全度評価
損
評価
傷
度
a
b
c
d
e
作動
-
-
-
作動不能
表 2.4.6
健全度
押釦スイッチの健全度評価区分
状態
a
作動
b
-
c
-
d
-
事例
異常ランプ点灯
e
異常
3 - 2 - 45
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2.4.1.4
評価事例
(1) 樋門・水門本体
コンクリートの損傷・劣化状況を確認
顕著な傾倒の有無を確認
翼壁
評価:c
操作台
評価:a
門柱
評価:a
写真 2.4.1
操作台・門柱・翼壁事例
函体
評価:e
写真 2.4.2
函体事例
3 - 2 - 46
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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床版,水叩きは水没していることが多いため,段差等の確認は困難な場合が多い。
確認出来る場合のみ点検することとし,点検不可能な場合はその旨を調書に記録する。
堤体は陥没,クラックを確認
護岸工はクラック,段差を確認
堤体
護岸
評価:e
評価:a
写真 2.4.3
堤体,護岸事例
3 - 2 - 47
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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(2) 扉体,戸当り
扉体内部,水密部,ローラ部に流木,ごみ,土砂などの堆積物や流芥物の付着の有無
を確認する。また,可動部の可動範囲内における障害物の有無を確認する。
さらに,管理運転を実施し,振動・異音の有無,ローラの回転状況および水密状況を
確認する。
<塗装における健全度の判定>
塗装の劣化は比較的進行が遅く,機能に与える影響も少ないが,局部的な損傷部
は進行速度も速く,鋼構造物の腐食(孔食)に発展するため,十分な注意が必要で
ある。塗装の健全度評価は,下記の例を参考に判定する。
(1) 局所的なふくれ:b
(2) 全体的なふくれ:e
(3) 局所的なわれ
(4) 全体的なわれ及び錆:e
(5) 局所的なはがれ
:b
:b
(6) 全体的なはがれ及び錆:e
(7) 局所的な錆(錆の除去により
凹み, 孔食が見られる場合)
:e
3 - 2 - 48
(8) 全体的な錆(錆の除去により
凹み, 孔食が見られる場合):e
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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<扉体の変形,損傷>
扉体の変形,損傷は,流木などの衝突,かみ込みなどにより発生することが多
いが,主桁などの主要部材における大きな変形は,扉体の強度を著しく低下させ
ることがあるため,注意が必要である。
扉体の変形,損傷の健全度評価は,目視により扉体各部材に変形,損傷の有無
を確認し,下記を参考に判定する。
健全度
a:変形,損傷・腐食(孔食)なし
c:局所的な変形,損傷・腐食(孔食)あり
(ごく 軽微 なもの で, 強度的 にほ とんど 影響 を与え るこ とがな
いと想 定さ れるも のに 限定す る。 判断が でき ない場 合は “あり
(e)”とする。)
e:変形,損傷・腐食(孔食)あり
図 2.4.1
扉体の変形損傷
3 - 2 - 49
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
<水密部の変形,損傷,劣化>
水密ゴムに関しては,樋門・水門の機能を維持するため,変形,損傷,劣化に
よる漏水の発生を防止することが重要である。
水密部の変形,損傷,劣化に関する健全度評価は,目視により水密ゴムの変形
損傷の有無を確認し,下記を参考に判定する。
健全度
a:変形,損傷,劣化(変質によるひび割れなど)なし
c:局所的な変形,損傷,劣化あり
(ごく 軽微 なもの で, 水密性 (漏 水)が 問題 になら ない 程度の
場合)
e:変形,損傷,劣化あり
図 2.4.2
水密ゴムの損傷変形・劣化
水密ゴム
評価:c
写真 2.4.4
水密ゴム破損事例
3 - 2 - 50
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
<戸当りの変形,損傷>
戸当りは,扉体に作用する荷重を安全に土木構造物に伝達し,かつゲート操作
時には扉体移動のガイドとなるものであり,戸当りの変形,損傷はゲートの開閉
操作に支障をきたす恐れがある。
戸当りの変形,損傷に関する健全度評価は,目視により戸当りの変形,損傷の
有無を確認し,下記を参考に判定する。
健全度
a:変形,損傷なし
c:局所的な変形,損傷あり
(ごく軽微なもので,ゲートの開閉操作に支障のない場合)
e:変形,損傷あり
図 2.4.3
戸当りの変形,損傷
3 - 2 - 51
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
扉体,戸当り部の清掃状況を確認
特に戸当り部の清掃状況は,施設の運転に支障を及ぼすため,注意が必要
図 2.4.4
扉体の清掃状況
扉体の腐食,塗装劣化,変形,損傷,ボルトのゆるみ・脱落等を確認
特に戸当り部の清掃状況は,施設の運転に支障を及ぼすため,注意が必要
また,運転時における扉体の振動,異常音の有無も確認する
扉体
判定:c
主桁
判定:d
写真 2.4.5
写真 2.4.6
扉体(主桁)の錆び
扉体(全般)塗膜の
剥離状況事例
発生状況事例
3 - 2 - 52
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
水密ゴムの損傷状況を確認
水密ゴム
判定:c
写真 2.4.7
水密ゴムの劣化状況事例
戸当りの腐食,塗装劣化,変形,損傷状況を確認
ボルトのゆるみ,脱落,損傷などを確認
戸当り
判定:e
写真 2.4.8
戸当りの腐食状況事例
ボルト
判定:a
写真 2.4.9
3 - 2 - 53
ボルトのゆるみ,脱落,損傷状況事例
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
(3) 開閉装置
開閉装置は構成部位が多大となること,各部位の構成が複雑であることから,本点
検においては,運転上最低限必要な部位のみを点検することとし,異常が見られた場
合は,専門業者等による詳細点検を行うこととする。
また,作業の際には周辺環境および運転方法を良く確認し,安全に留意する。
点検項目および点検内容
・清掃状態…機器の運転に支障を及ぼすようなごみ,汚れ等の有無
・塗装…機器全体の塗装状態
・変形,損傷,ボルトの脱落…機器の運転に支障を及ぼすような変形
・漏油…機器の漏油
・振動,異常音…ひどい振動,発熱,うねり音
・作動状況…機器の正常な作動
・動力伝達部給油状態
…動力伝達部におけるグリースの塗布状況
・保護装置…機器が作動し所定の位置で停止するかどうか
・開度計…ゲート全閉,全開時の指針位置
a) ワイヤロープ式開閉装置
開度計
ワイヤロープ
ギヤ
軸受
ワイヤロープ
写真 2.4.10
ワイヤロープ式開閉装置
判定:e
軸受
判定:a
写真 2.4.11
軸受のグリース塗布状況
写真 2.4.12
ワイヤロープの
グリース塗布状況
3 - 2 - 54
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
シーブ
判定:a
ギヤ
判定:a
写真 2.4.13
シーブのグリース塗布状況
写真 2.4.14
ギヤのグリース塗布状況
開度計
判定:e(全閉時に開度計が
0 にならない)
写真 2.4.15
開度計の状況
3 - 2 - 55
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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b) ラック式開閉装置
ラックピン
開度計
写真 2.4.16
写真 2.4.17
開度計
塗装
判定:a
判定:b
開度計の状況
写真 2.4.18
塗装の劣化状況
漏油状況
ラックピン
判定:a(無し)
判定:e
写真 2.4.19
ラック式開閉装置
ラックピンの
写真 2.4.20
グリース塗布状況
3 - 2 - 56
漏油状況
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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(4) 機側操作盤
電源ランプが点灯していれば,機側操作盤からの電動運転が可能である。
機側操作盤の操作釦を押して樋門・水門の管理運転を行い,開閉装置の動作確認を
行う。全開・全閉・中間位置で扉体が自動停止することを確認する。なお,停止位置
は開度計で確認しておく。異常が見られた場合は専門業者等の点検を行うこととする。
点検項目および点検内容
・清掃状態…機器の運転に支障を及ぼすようなごみ,汚れ等の有無
・乾燥状態…操作盤内の漏水
・塗装…機器全体の塗装状態
・盤内外配線,配管…盤内外の配線,配管の損傷
・電流計…定格電流値以下である(事前に定格電流値の確認が必要)
・電圧計…定格電圧の±10%以内である(事前に定格電圧値の確認が必要)
・押釦スイッチ…スイッチにより正常に機器が作動する
・ランプテスト…ランプテスト釦により全ての表示灯が点灯する
計器類
写真 2.4.22
機側操作盤内の押釦
押釦スイッチ
写真 2.4.21
機側操作盤の外形
電圧計
電流計
判定:a
判定:a
写真 2.4.23
3 - 2 - 57
電流計,電圧計
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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2.4.2 管理水準の設定方法
2.4.2.1
管理水準設定の基本方針
維持管理手法は,施設の重要度や第三者被害の大きさなどに応じて,「予防保全型」
「事後保全型」「観察保全型」に分類される。
樋門・水門は多くの部品により構成され,損傷の種類も多岐にわたる。ここでは,
樋門・水門各部の損傷部位と損傷の種類に応じて,維持管理手法を設定し,それぞれ
について補修検討の目安とする健全度を設定する。
本マニュアル(案)では,基本的に機能不全の状態になる前に点検を行う考え方で
あるため,
「観察保全型」の概念はない。そのため,管理水準は,部材の特性に応じて
「予防保全型」および「事後保全型」の 2 種類に分類し設定する。
【 予防保全型 】
機能低下の進行が把握できる(劣化予測
健全度
a
が可能な)部位・部材に適用でき,損傷の
b
程度に応じて最適な補修工法・補修時期を
c
選択した上で,機能維持・回復を図る維持
d
管理手法
e
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
経過年
【 事後保全型 】
健全度
機能低下の進行の把握が難しく,その兆
候が表面化した後に,急激に機能低下して機
能不全に陥る部位・部材 に適用し,機能不全
に陥る前に適切な補修工法を選択した上で,
a
b
c
d
e
機能維持回復を図る維持管理手法
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
経過年
【 観察保全型 】
健全度
突発的または劣化・損傷の 進行や 老朽化
により機能不全に陥る施設に適用し,機能
不全に陥った時点で撤去・更新した上で機
能回復を図る維持管理手法
a
b
c
d
e
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
経過年
3 - 2 - 58
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
<適用イメージ>
樋門・水門の部位・部材毎の健全度に応じた維持修繕・更新の時期は,以下の
ように示される。
「事後保全型」は重要部位・部材において,損傷の兆候を把握した場合に補修す
ることが一般的である。
これに対して「予防保全型」は,損傷度に応じた補修工法の適用について検討し,
ライフサイクルコスト最小化の観点から最適補修時期・工法を選択して補修する
ものである。
予防保全
マニュアル(案)導入後
初期状態
健全度
現状
延命化
更新時期
最適補修時期
供用期間(年)
事後保全
初期状態
健全度
補修・更新
定期点検で確認
更新時期
供 用 期 間 (年)
図 2.4.5
健全度に応じた維持修繕・更新の時期のイメージ
3 - 2 - 59
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
2.4.2.2
管理方式の設定
各部位に対して「予防保全型」および「事後保全型」の 2 種類の管理方式を設定し,
必要な点検・対策を講じるものとする。
予防保全型では劣化の傾向を把握可能な部位を選定し,その他の部位は事後保全型
として施設管理を行っていくものとする。劣化の傾向(劣化予測)に関しては,既往
の研究結果や文献を引用し,データの蓄積に応じて修正を行うこととする。本マニュ
アル(案)では,既往の研究結果や文献をもとに劣化の傾向を把握可能な以下の部位
を対象とする。
・鋼部材
…
鋼部材の塗膜劣化
・コンクリート構造物
…
塩害,ひび割れ密度
なお,上記以外の部位については事後保全型とし,それぞれ管理水準を定めるもの
とする。
3 - 2 - 60
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
2.4.2.3
予防保全型の管理水準
予防保全型の管理水準の基本方針を以下に示す。
・樋門・水門の点検項目のうち,鋼部材の塗装,コンクリート構造物については劣化
予測が可能であり,予防保全の対象部位として選定する。
・予防保全型の管理水準は,部位の補修・補強に要するライフサイクルコストの最小
化の観点から設定する。
管理方式を予防保全型に設定する部位を以下に整理する。
表 2.4.7
施設区分
区分
予防保全型の部材
項目
内容
扉体
取り外し戸当り
機械設備
埋設部
損傷、劣化
コンクリート構造物
5
操作台
損傷、劣化
コンクリート構造物
5
損傷、劣化
コンクリート構造物
5
床版
損傷、劣化
コンクリート構造物
5
水叩き
損傷、劣化
コンクリート構造物
5
塗装
腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
スキンプレート
腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
主桁、補助桁
腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
主ローラーレール
腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
補助ローラーレール 腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
底部戸当り
腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
側部戸当り
腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
上部戸当り
腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
コンクリート部
電気設備
評価区分数
門柱
土木構造物 樋門・水門本体 胸壁・翼壁
扉体全般
劣化予測式
ひびわれ、剥離
コンクリート構造物
5
管理橋・防護柵・階段等
腐食、塗装劣化
塗膜劣化
5
機側操作盤
塗装
塗膜劣化
5
盤
3 - 2 - 61
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
<管理水準の設定方法>
予防保全型の部位に対して,ライフサイクルコストが最小となる健全度の状態
を管理水準とする。
・劣化の種類・程度(健全度)に応じて適用する補修・補強工法を設定する。
・この工法に要するコストを,各工法に応じて設定される耐用年数(健全度を
維持可能な年数)で除することにより得られる 1 年当りの単価を設定する。
・この単価が最も安価となる工法を採用した際に,適用される劣化の程度(健
全度)を最適な補修時期とする。
a
b
c
管理水準
d
e
図 2.4.6
各健全度に応じた補修工法と耐用年数の関係
補修案 3
補修案 1
補修案 2
図 2.4.7
健全度 d において実施
する補修案 2 が最も安価
ライフサイクルコストを最小とする最適補修時期の選定
3 - 2 - 62
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
2.4.2.4
事後保全型の管理水準
事後保全型の管理水準の基本方針を以下に示す。
・事後保全型の損傷度評価は 3 段階,もしくは 2 段階である。管理水準は,施設の
不具合を確認可能な水準として健全度 e ランクに設定する。
・事後保全型の管理水準は,下表に示す判定区分により対策・詳細点検実施の可否
を行う。
・健全度 a ランク以外の判定区分については,不具合の状況,当該判定区分とした
理由などを,今後の維持管理に必要な所見として記録する。
点検結果において,上記管理水準のランクに位置付けられた場合,必要に応じて専
門業者による詳細点検を実施し,対策工の必要性を検討して,今後の管理方針につい
て決定する。
表 2.4.8
対策区分
3 段階区分
a
c
e
内
対策区分と内容
容
説
明
2 段階区分
a
判定区分 a とは,少なくとも定期点検
不具合が認められないか,不
で知りうる範囲では,損傷が認められ
具合が軽微で補修を行う必
ないか損傷が軽微で補修の必要がない
要がない。
状態をいう
-
判定区分 c とは,損傷があり補修の必
要があるが,損傷の原因,規模が明確
状況に応じて補修を行う必
であり,直ちに補修するほどの緊急性
要がある。
はなく,放置しても少なくとも次回の
または,維持工事で対応する
定期点検までに構造物の安全性が著し
必要がある。
く損なわれることはないと判断できる
状態をいう
e
判定区分 e とは,損傷が相当程度進行
な ん ら か の 対 策 を 講 じ る 必 し,当該部位,部材の機能や安全率の
要 性 が あ る と 考 え ら れ る た 低下が著しく,少なくとも次回の定期
め,別途対応策を検討する。 点検までには補修等される必要がある
と判断できる状態をいう
3 - 2 - 63
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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2.5 補修・補強方法
補修・補強の工法選定にあたっては,変状の原因・変状の程度に応じた工法とする
とともに,想定される外力や環境条件の変化に対応できる工法を選定する。
【解説】
補修・補強の方法は,部材に応じた変状の原因を把握し,今後その変状が拡大するか,
さらには同様な変状発生のおそれがあるか否かを判断することが重要であり,原因と変
状特性を考慮した上で,部材の健全度ごとに最適な工法を選定する必要がある。
本マニュアル(案)では,補修・補強方法を下記のように分類してとりまとめるもの
とした。
①
補修・補強方法の概要
②
各種補修工法
③
各種補強工法
④
地盤の補強工法
⑤
機械設備の整備
樋門・水門の補修・補強方法は,地震で被害を受けた建物の震災復旧技術を除けば,
定められた設計手法やその考え方は体系化されていないのが現状であり,補修・補強は,
図2.5.1に示すフローに沿って,対象構造物ごとに変状原因を検討し,適切な補強方法を
決定する必要がある。
変状原因の検討
補修・補強方針の決定
目標性能の設定
機械設備
土 木 設 備 or 機 械 設 備
土木施設
補修・補強方法の選定
機械設備の
整備・更新検討
部材の補修・補強設計
全体構造としての評価
不要
要
補修・補強後の全体構造の性能評価
NG
判
定
OK
補修・補強工事
図 2.5.1
補修・補強設計の検討フロー
3 - 2 - 64
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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2.5.1 補修・補強方法の概要
(1) 補修・補強方法の位置づけ
補修とは,劣化した部材あるいは構造物の今後の劣化進行を抑制し,恒久性の
回 復・向上と第三者に対する影響(劣化した構造物の周囲において,剥落コンクリー
トなどが人および器物に与える障害などの影響度合い)の除去または低減を目的とし
た対策である。それに対し補強とは,部材あるいは構造物の耐荷性や剛性などの力学
的な性能低下を回復または向上させることを目的とした対策である。
図 2.5.2 は,各種補修・補強工法の関連を示すものであるが,例えば,ひび割れ補
修工法と断面修復工法のように,工法名が異なっても,その工程の中に同一の作業工
程が含まれることも多く,それぞれの補修・補強工法が様々に関連して,実際の補修・
補強が行われる。電気防食工法,巻立て工法などは,ひび割れ補修や断面修復が施さ
れた後に実施されることを意味している。
劣化した鉄筋コンクリート構造物または劣化環境にある鉄筋コンクリート構造物
ひび割れコ
ンクリート
部の U・V カ
ット
不健全コンクリート部の除去
鉄筋の防錆処理
・差替え
注入工法
ひび割れ注入
健全コンクリート部の処理(アルカリ性付与材塗布など)
充填工法
ひび割れ
被覆工法
断
面
修
復
コンクリート表面の保護被覆(下地調整,保護,仕上げ,美観)
ひび割れ補修工法
断面修復工法
電気防食工法
電着工法
表面被覆工法
鋼板・FRP 接着・巻立て工法
図 2.5.1.1
図 2.5.2
鉄筋コンクリート構造物の補修・補強工法の体系
(各種補修・補強工法の関連)
3 - 2 - 65
充填工法・再アルカリ化工法
鉄筋の錆落し
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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(2) 補修・補強工法と適用目的
補修工事は,部材または構造物の劣化要因,劣化程度に応じた適切な補修工法や材
料を選定して,実施されなければならない。現在実施されている補修工法を分類して
まとめると,図 2.5.3 のようになる。通常,これらの工法は,構造物の変状の種類,
劣化機構,劣化程度に応じて,単独もしくはいくつかの工法を併用して実施される。
ひび割れ補修工法
ひび割れ被覆工法
注入工法
充填工法
断面修復工法
補修工法
表面被覆工法
含浸材塗布工法
はく落防止工法
電気化学的補修工法
電気防食工法
脱塩工法
再アルカリ化工法
電着工法
図 2.5.3
主要な補修工法の種類
補強工法においては現在実施されている適用目的別にまとめると図 2.5.4 のように
なる。補修と同様に,補強においても,劣化要因,劣化程度に応じた適切なものであ
ることはもちろん,補強後の構造物の耐久性を考慮して工法や材料を選定することが
重要である。
構造物の補強
FRP 接着工法
接着
鋼板接着工法
帯鋼板接着工法
FRP 巻立て工法
巻立て
鋼板巻立て工法
RC,PC 巻立て工法
プレストレスの導入
外,内ケーブル工法
断面の増厚
増厚工法
部材の交換
打換え工法
図 2.5.4
構造物・部材の補強工法の例
また,各工法に対し,健全度に対する適用の範囲と各部材における適用可能な一般
的な工法を表 2.5.1 に示す。ここでは,部材に対する適用性も表記する。
3 - 2 - 66
第3編 河川分科会
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資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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表 2.5.1
構造物・部材の補修・補強工法一覧表
健全度に
対する適用
用
途
名
称
ひび割れ
注入工法
表面被覆
工法
部
材
の
補
修
充填工法
断面修復
工法
止水材に
よる
補修工法
可とう継
手による
補修工法
FRP
接着工法
製管工法
鋼板接着
工法
構
造
物
の
補
強
FRP 巻
立て工法
鋼板巻
立て工法
RC,PC 巻
立て工法
プレスト
レスの
導入工法
増厚工法
打ち換え
工法
工
法
の
概
適用部材
要
既設コンクリート部材に発生したひび
割 れ に ,低 粘 度 の 樹 脂 や 超 微 粒 子 セ メ ン
ト を 圧 入 し て ひ び 割 れ を 閉 塞 し ,コ ン ク
リート内部への有害物質の侵入を遮断
する工法。
既設コンクリート部材の表面に塗装材
料 を 用 い て 新 た な 保 護 層 を 設 け ,コ ン ク
リート内部へ腐食因子の浸透を防止し
て 耐 久 性 の 回 復 ・向 上 を 図 る 工 法 。
既設コンクリート部材のひび割れ,豆
板 ,空 洞 ,剥 離 な ど の 小 規 模 な 断 面 欠 損
部 に 樹 脂 や モ ル タ ル を 充 填 し て ,耐 久 性
の 回 復 ・向 上 を 図 る 工 法 。
既設コンクリート部材の劣化や損傷を
受 け た 部 分 を 除 去 し た 後 に ,既 設 コ ン ク
リートとの一体性に優れた材料を用い
て,部材を現断面に復旧する工法。
開口部に特殊防水シートをエポキシ系
接 着 剤 に よ り 設 置 し て ,土 砂 吸 出 し 防 止 ,
止水を図る工法。
継 手 等 の 開 口 や 損 傷 に 対 し て ,変 形 能 力
の 大 き い 可 と う 継 手 を 設 置 し ,土 砂 の 吸
出し防止,止水を図る工法。
既 設 コ ン ク リ ー ト 部 材 に 炭 素 繊 維 ,ア ラ
ミ ド 繊 維 ,ガ ラ ス 繊 維 な ど の 補 強 繊 維 を
コンクリートに接着させる工法。
硬 質 塩 化 ビ ニ ル 製 の 帯 板 を ,補 修 対 象 函
渠 の 内 側 に 密 着 さ せ な が ら 挿 入 し ,結 合
材を使ってスパイラル状に製管する工
法。
既設コンクリート部材に鋼板をアンカ
ー ボ ル ト で 固 定 し ,コ ン ク リ ー ト と 鋼 板
との間隙にエポキシ樹脂等を注入する
こ と で 一 体 化 さ せ ,曲 げ や せ ん 断 な ど の
耐 荷 力 の 回 復 ・向 上 を 図 る 工 法 。
細幅鋼板を必要量だけ一定の間隔で接
着( 帯 鋼 板 接 着 工 法 )し ,そ の 目 的 に 応
じて独立して補強する方法もある。
柱などの既設コンクリート部材に炭素
繊 維 ,ア ラ ミ ド 繊 維 ,ガ ラ ス 繊 維 な ど の
連 続 繊 維 シ ー ト を 巻 立 て て ,被 覆 す る 工
法。
柱などの既設コンクリート部材の周囲
に 鋼 板 を 巻 立 て ,そ の 間 隙 に コ ン ク リ ー
トやモルタルを充填して,耐荷力の回
復 ・向 上 を 図 る 工 法 。
柱などの既設コンクリート部材の周囲
に 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト を 打 ち 足 し て ,一 体
化 さ せ ,耐 荷 力 の 回 復 ・向 上 を 図 る 工 法 ,
コンクリートにプレストレスを導入す
る方法もある。
梁やスラブなどの既設コンクリート部
材に外ケーブルや内ケーブルを用いて
プ レ ス ト レ ス を 与 え ,部 材 と し て の 耐 荷
力 の 回 復 ・向 上 を 図 る 工 法 。
梁やスラブなどの既設コンクリート部
材にコンクリートやモルタルなどを打
ち 足 し て 抵 抗 断 面 を 増 加 さ せ ,耐 荷 力 の
回 復 ・向 上 を 図 る 工 法 。
劣化や損傷を受けた既設コンクリート
部材を取壊して新しくする方法。
損傷に
対する適用
ひ 断 目
び 面 地
割 欠 開
れ 損 き
b
c
d
梁
柱
ス
ラ
ブ
壁
継
手
○
◎
-
◎
◎
◎
◎
-
◎
-
-
◎
○
-
◎
◎
◎
◎
-
◎
-
-
◎
◎
-
◎
◎
◎
◎
-
◎
-
-
○
○
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
◎
○
-
○
◎
-
-
-
-
◎
○
○
◎
-
○
◎
-
-
-
-
◎
-
-
◎
◎
◎
○
◎
○
◎
○
-
-
◎
-
○
○
○
-
-
◎
◎
-
○
◎
-
○
◎
◎
◎
○
◎
○
-
○
◎
-
○
◎
-
-
◎
-
-
-
○
◎
-
○
◎
◎
-
◎
-
-
-
○
◎
-
-
-
◎
-
◎
-
-
-
-
◎
-
-
-
◎
◎
○
○
-
◎
-
○
-
-
○
◎
○
-
◎
-
-
○
◎
○
-
◎
◎
○
○
◎
◎
◎
○
◎
○
注)◎:実績が比較的多いもの
○:適用が可能と考えられるもの
-:適用が困難と考えられるもの
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
2.5.2 各種補修工法
(1) ひび割れ注入工法
ひび割れ補修は要因やひび割れ幅に対し,最適な修復工法を選定する必要がある。
ひび割れ注入工法とは,ひび割れ部の表面に注入用のパイプや治具を設置し,ひび
割れ部をシールして注入器具を使い,ひび割れ内部に補修材料を注入する補修工法で
ある。また,ひび割れ幅によって粘性の異なる材料を選択することができ,表2.5.2
に示すとおりひび割れ幅に関係なく適用可能である。
表 2.5.2
ひび割れ幅の変動に応じた補修工法
1)
一般に,補修材料は,ひび割れの変動の有無によって選定する。ひび割れの変動が
大きい場合には,ひび割れの挙動に追従可能な軟質系のエポキシ樹脂やシーリング材
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第3編 河川分科会
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資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
などを選定する必要がある。また,ひび割れ部分が濡れているような箇所では,無機
系注入材などを選定する。表 2.5.3 は,各補修工法に適用可能な補修材料の組み合わ
せである。一般的に補修材料はエポキシ樹脂が主流である。
表 2.5.3
補修材料の種類と適用可能な補修工法
ひ び 割 れ 幅 (mm)
図 2.5.5
ひび割れ注入工法概要図
1)
パ イ プ 間 隔 (mm)
2)
(2) 表面被覆工法
表面被覆工法は,ひび割れに沿ってコンクリート表面に被覆を設ける方法で,通常
0.2mm 以下のひび割れ幅の小さい補修に用いられる。また,原因が中性化などの場合
のように劣化が顕在化した後でも,ある程度その効果が期待できるものと,塩害や凍
害など,劣化が顕在化した時点では効果が期待できない場合がある。このため適用に
際しては,構造物に要求される性能などを考慮して工法を選定する必要がある。表面
被覆工法の概要を以下に示す。
①
ひび割れの上面に塗膜を構成し,防水性,耐久性を向上させる目的で用いる工
法である。
②
FRP接着工法は,コンクリート構造物の曲げ耐力やせん断耐力,じん性を向上
させる目的で開発された補修・補強工法であるが,利用方法の一つとしてひび
割れの補修としても適用可能である。
③
樋門函体内部のひび割れは,地盤の沈下や側方変位等の外力の影響を受けてい
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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ることが多く,FRP接着工法はこの対策工として有効である。
④
施工内容は,表面のはつり(骨材が見える程度)を行いプライマー塗布後に炭
素繊維シートで被覆する工法である。
被覆材
被覆材
絶縁材
ひび割れ
ひび割れ
a)通常の場合
図 2.5.6
表 2.5.4
b)ひび割れが大きい場合
表面被覆工法概要図
2)
表面被覆工法の補修目的と補修材料
補修目的
2)
防水性
耐久性
ひび割れ
耐荷性
の向上
の向上
制御
の向上
塗膜弾性防水材
◎
○
×
×
浸透性防水剤
○
△
×
×
ポリマーセメントモルタル
○
△
×
×
セメントフィラー
○
△
×
×
炭素繊維シート
◎
◎
◎
◎
アラミド繊維シート
○
○
◎
◎
ガラス繊維シート
○
○
△
△
補修材料
FRP接 着
(3) 充填工法
充填工法は,0.5mm 以上の比較的大きな幅のひび割れの補修に適する工法で,ひび
割れに沿ってコンクリートをカットし,その部分に補修材を充填する方法である。
補修工法として,損衝部における鉄筋の腐食の有無により充填工法が異なる。鉄筋
が腐食していない場合は,図 2.5.7 に示すようにひび割れに沿って約 10mm の幅でコ
ンクリートを U または V 形にカットした後,このカットした部分にシーリング材・可
とう性エポキシ樹脂およびポリマーセメントモルタルなどを充填し,ひび割れを補修
する。U 形にカットする場合は,ひび割れを挟んで両側にカッターで溝を切った後,
その間のコンクリートをはつり取る方法で実施される。これに対して V 形にカットす
る方法としては,最近では円錐状のダイヤモンドビットを電動ドリルの先に付けてひ
び割れに沿って削る方法が考案されている。V 形にカットする方法は簡便であるが,
ポリマーセメントモルタルを充填する場合には,充填したモルタルの剥離・剥落を生
じやすいので U 形カットを採用する方が望ましい。
3 - 2 - 70
第3編 河川分科会
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充填材
充填材
ひび割れ
図 2.5.7
ひび割れ
鉄筋が腐食していない場合の充填工法
2)
また,鉄筋が腐食している場合においては,図 2.5.8 に示すように鉄筋の発錆腐食
している部分を十分に処理できる程度にコンクリートをはつり取り,鉄筋の錆落とし
を行い,鉄筋の防錆処理,コンクリートへのプライマーの塗布を行った後にポリマー
セメントモルタルやエポキシ樹脂モルタルなどの材料を充填する方法で行う。
図 2.5.8
鉄筋が腐食している場合の充填工法
3)
充填工法による補修では,補修目的に応じた充填材料を選定することおよびカット
部の処理が重要となる。充填材料は,補修目的が防水性の確保,耐久性の確保,ある
いはその両方かなどの条件を考慮して選定する必要がある。
補修目的が防水性の確保であり,ひび割れの変動がない場合の充填材料としてはセ
メントでもよい。しかし,防水性以外に凍結融解作用や化学的な作用に対する耐久性
も確保する目的の場合には,セメントのような無機系の材料では限界がある。このよ
うな場合には,ひび割れ部の動きに追随できる耐久性の高いポリマー系や樹脂系の材
料を使うのがよい。
3 - 2 - 71
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(4) 断面修復工法
一般的に剥離,うき,剥落,鉄筋露出等における補修方法は断面修復工が主流であ
る。劣化の程度によれば,全面的な断面修復,ボックス本体の打換え等の補強方法も
考えられるが,工事費用や作業性,施設周辺の環境等を考えた場合,もっともポピュ
ラーな工法である。
断面修復工において明らかにしておくべきことは,劣化の原因は何か(断面修復の方
法や材料を決定する),補修を行う部分に水分はないか(修復材料を決定する),補修箇
所が上向きではないか(上向きの場合,充填材が垂れ下がることを考慮しなければなら
ない),施工中の欠損状態が構造物の安全性を損なわないか等が挙げられる。
断面修復を行う上でのポイントは,補修箇所が再劣化しないように,コンクリート
の除去面の処理を正常に行うことである。具体的には除去した面を清掃し,プライマ
ーを塗布して接着面の付着性を確保する。将来,補修した箇所に不具合が発生した場
合にも補修部が剥落しないように,充填部と既設コンクリート部とをアンカーで固定
したり,補修箇所の表面部に連続繊維シートを貼り付けて補修したりする方法もある。
また,鉄筋の防錆処理も必要である。
以下に,断面修復工に使用する材料と施工方法および充填方法の一例を示す。
表 2.5.5
結合材
材料
ポルトランドセメ
ントモルタル
ポルトランドセメ
ントコンクリート
断面修復工に使用する材料と施工方法
適用対象
大断面
無 収 縮 コンクリ
ート
エポキシ
樹脂
アクリル
樹脂
小断面
○
○
無収縮モルタル
ポリマー
セメント
施工方法
○
セメント
ポリマーセメント
モルタル
ポリマーセメント
コンクリート
○
○
○
○
3)
○
(範囲が広い)
○
エポキシ樹脂
○
エポキシ樹脂
モルタル
○
メチルメタクリレ
ートモルタル
○
3 - 2 - 72
充填工法
型枠の有無
コテ塗り,ドライパッキング法
無
ポンプ圧入
吹き付け
コテ塗り,ドライパッキング法
ポンプ圧入
吹き付け
ポンプ圧入
吹き付け
コテ塗り,ドライパッキング法
有
無
無
有
無
有
無
無
吹き付け
無
ポンプ圧入
吹き付け
注入
注入(プレパックドコンクリート)
コテ塗り
注入(プレパックドコンクリート)
有
無
無
有
無
有
コテ塗り
無
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図 2.5.9
補修材料の充填方法
3)
(5) 止水材による補修工法
目地部の目違いや,函体内継手開口に対する補修工法は,土砂吸出しや漏水の防止
を図ることから止水材による補修工法を選定する必要がある。以下に補修工法の概要
を示す。
① 特殊防水シート+エポキシ系接着剤を使用する補修工法である。
② 函体内の開口部に特殊防水シートをエポキシ系接着剤により設置して土砂吸
出し防止,止水を図る方法である。
③ 開口部にモルタルを充填し,前面にエポキシ系接着剤を塗布する。その後特殊
防水シートを釘等で固定し2層目のエポキシ系接着剤により活着させる。
④ ボックスカルバートや農業用水路の目地補修の実績が多い。
⑤ 防水シートはフレキシブルであり,多少の目違い,折れ角にも対応は可能であ
る。
⑥ 将来的な変状に対しては,数mm程度まで対応可能である。
⑦ 接着性を向上させるため,躯体の下地処理(チッピング・ケレン)が必要である。
⑧ 防水シート自体が,高い耐久性・耐候性を持っている。
3 - 2 - 73
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図 2.5.10
特殊防水シート+エポキシ系接着剤概要図
(6) 可とう継手による補修工法
可とう継手による補修工法として対象となるのは,函体や翼壁に函体横断クラック
が生じた場合と,構造目地の目地開きとなる。前者は函体の縦方向に耐荷力を超える
外力が作用したことを意味することが多い。この場合,函体を横断クラック部で切断
し継手を増設して函体の縦方向の断面力を低減する可とう継手増設工法が有効である。
また,後者は既存の目地部に可とう継手を設置することが有効である。
可とう継手自体は非常に安全性も高いが,施工性に劣ることが多く経済性にも不利
なため適用には十分な検討が必要である。
以下に補修工法の概要を示す。
①
函体内の損傷部や胸壁~翼壁間の継手等の開口や損傷に対して,変形能力の大
きい可とう継手を設置し,土砂の吸出し防止,止水を図る方法であり非常に効
果が高い。
②
基準(樋門補強マニュアル(案))に明記された樋門継手補修工法であり,多く
の施工実績がある。
③
段差があると設置できないため,目違い,折れ角がある場合,はつりもしくは
増しコンし,水平状態にする必要がある。
④
将来的な沈下および変位に対して追従するため,現地盤がまだ沈下変位を起こ
す可能性がある箇所に対して有効である。
⑤
躯体表面は接着性を得るため,躯体の下地処理(チッピング・ケレン)をする必
要がある。
3 - 2 - 74
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⑥
設置の手間がかかり施工性は悪い。
⑦
施工費は非常に高価である。
図 2.5.11
可とう継ぎ手増設工法概要図
3 - 2 - 75
4)
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2.5.3 各種補強工法
(1) FRP 接着工法
FRP 接着工法は,補強材料(炭素繊維,アラミド繊維,ガラス繊維等の連続繊維)
が引張強度より大きく軽量で薄いため,函体内面の補強を行う場合にも内空断面の減
少を最小限に抑えること,水に接する場合でも腐食の恐れがないなどの利点がある。
(2) 製管工法
製管工法は函体高さが低く補修作業が困難な箇所での補強工法である。既存の函内
に新たに更生管を構築していく方法であり,流下断面積は減少するものの更生後の流
下能力は粗度係数が優れることから設計流量以上となる。
以下に製管工法の概要を示す。
① 一般的にはライニング類の補修工法が多く用いられる。
② 製管工法は,既存の断面と新しく更生した管渠が複合して機能を維持する。
③ 同工法は硬質塩化ビニル製の帯板を,補修対象管渠の内側に密着させながら挿
入し,結合材を使ってスパイラル状に製管する。その後,帯板と既設管の間隙
には,高強度の裏込め材を充填し,既設管と裏込め材および帯板による一体構
造の複合管を形成する。
図 2.5.12
図 2.5.13
管渠更生工法(製管工法)概要図
管渠更生工法(自立式反転工法)概要図
3 - 2 - 76
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(3) 鋼板接着工法
鋼板接着工法とは,コンクリート部材の主として引張応力作用面に鋼板を取付,鋼
板とコンクリートの空げきに注入用接着剤を圧入し,コンクリートと接着させて既設
部材と一体化させることにより,必要な性能の向上を図る工法である。
主として,コンクリート部材の引張応力面に鋼板を接着させ,鋼板に引張材として
の効果を期待するもので,曲げおよびせん断力補強に適用できる。また,コンクリー
ト面と鋼板との隙間に注入用接着剤を圧入することで,ひび割れ中にも注入剤が浸入
し,ひび割れ開閉を拘束する効果も期待される。なお,一般的に注入剤としては,エ
ポキシ樹脂接着剤が用いられている。工法の断面図を図 2.5.14 に示す。
図 2.5.14
鋼板接着工法
5)
鋼板接着工法は,従来,鋼橋 RC 床版の補修方法として広く用いられていたが,最
近では,コンクリート橋の橋軸方向の正曲げに対する補強方法として,一般に短冊状
の鋼板を接着して補強が行われている。また,箱桁等の側面に鋼板を接着することに
より,せん断補強に対する効果も期待できる。
(4) FRP 巻立て工法
FRP 巻立て工法とは,コンクリート部材の,主として引張応力や斜め引張応力作用
面に,連続繊維を 1 方向あるいは 2 方向に配置してシート状にした補強材,あるいは
現場で含浸接着剤を含浸・硬化させた FRP の連続繊維シートを接着して,既設部材と
一体化させることにより,必要な性能の向上を図る工法である。
材質の繊維シートには,炭素繊維,アラミド繊維などがあるが,現状で実績が多く
品質が安定している高強度,高弾性の炭素繊維の使用が望ましい。
以下に FRP 巻立て工法の概要を示す。
① 繊維シートは,軽量であり,現場成形が容易であるため,作業空間が限定され
る場所での作業が容易である。
② 耐食性に優れるため,海洋環境などのコンクリート構造物の補強にも適用でき
る。
③ 補強効果として,ひび割れ拘束効果,耐荷性能の向上効果が期待でき,積層数
の調節により適正補強量を選定することができる。
④ 一定間隔をもって格子状に貼り付けることにより,ひび割れの伸展観察が可能
3 - 2 - 77
第3編 河川分科会
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となり,部材内の滞水も免れる。
⑤ 断面剛性の増加が小さいため,剛性の向上対策には向いていない。
⑥ 変状が著しい場合の補強効果については,別途検討が必要である。
図 2.5.15
FRP 巻立て工法の断面例
5)
(5) 鋼板巻立て工法
鋼板巻立て工法は,既設コンクリート部材の周囲に補強材を配置し,既設部材との
一体化により,必要な性能の向上を図る工法である。
補強材の種類などにより,鋼板巻立て工法,連続繊維シート巻立て工法,RC 巻立
て工法,モルタル吹付け工法,プレスキャストパネル巻立て工法等に種分けされ,使
用される部材・部位,必要な性能,施工条件等により,適切な工法を選定する必要があ
る。なお,一般に巻立て工法は,耐震補強対策として用いられることが多い。
(6) RC・PC 巻立て工法
RC 巻立て工法は,橋脚の周囲に鉄筋コンクリートを打足し,耐力向上を図る工法
であり,一般的に経済性および将来的な維持管理に有利な工法である。また,PC 巻立
て工法は,降伏点強度の高い PC 鋼材を帯鉄筋として配置し,じん性の向上を図ると
ともに,緊張によって既設部材と補強部の一体を図る工法である。補強部の巻立て材
料に,工場で製作されたプレキャストパネルを用いることで現場の省力化および高品
質化が図れる工法である。
既存鉄筋コンクリート
主鉄筋
帯鉄筋
巻立て鉄筋コンクリート
図 2.5.16
3 - 2 - 78
RC 巻立て工法概要図
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(7) プレストレス導入工法
プレストレス導入工法とは,緊張材をコンクリートの外部もしくは内面に配置し,
定着部あるいは偏向部を介して部材に緊張力を与えることにより,必要な性能の向上
を図る工法である。
図 2.5.17
外ケーブル工法の概念図
5)
外ケーブル工法は,コンクリート橋での採用例がありプレストレスを導入すること
により,コンクリート橋の曲げおよびせん断補強を目的とする補強方法である。
以下にプレストレス導入工法の概要を示す。
① 補強効果が力学的に明確である。
② 偏向部をせん断補強部に設定し,外ケーブルの鉛直分力を考慮することにより,
設計せん断力を軽減できる。
③ 補強後の維持・管理が比較的容易。
④ 基本的に交通規制を必要としない。
⑤ コンクリートの強度不足や劣化に対しては,効果を期待できない。
⑥ 外ケーブルによりプレストレスを導入しても,剛性は向上しない。
図 2.5.18
補強概要図
3 - 2 - 79
5)
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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(8) 増厚工法
増厚工法は,損傷が生じた部材に新たにコンクリートを一体化させて打設し,床版
を増厚することによって,曲げ耐力や押抜きせん断耐力の向上を図る工法である。頂
版上面を増厚する場合は,主に曲げ耐力の向上を目的として実施するものであり,付
随的にせん断耐荷性能が向上するが,せん断抵抗を失った床版へ適用する場合は,床
版の部分打ち換え工法を採用するなど別途検討が必要である。
図 2.5.19
増厚工法概要図
(9) 打ち換え工法
打ち換え工法とは,部材そのものを撤去し,新たに部材を設置するものであり,部
分的な改築工法である。
3 - 2 - 80
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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2.5.4 地盤の補強工法
地盤の補強工法の選定にあたっては,対策工の目的,既設樋門への影響,周辺環境
に及ぼす影響,工期および経済性などを考慮し,最も現地条件に適合した工法を選定
する。
主な地盤補強対策の分類を図 2.5.20 に示す。
静的締固め
生石灰パイル工法
特殊生石灰パイル工法
地盤の補強
特殊袋体圧密工法
コンパクショングラウチング工法
オーガー式強制圧密工法
補強材設置
高耐力マイクロパイル工法
グランドアンカー工法
固化
注入固化工法
浸透固化処理工法
機械攪拌混合工法
高圧噴射攪拌混合工法
プラスチックドレーン
障害物対応型ドレーン工法
締切(遮断)
鋼矢板工法
図 2.5.20
地盤の補強対策の分類
3 - 2 - 81
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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(1) 地盤の沈下・変位に対する補強
既設樋門の沈下対策は,沈下が生じた後で沈下を復元するものではないので,函体
直下および周辺地盤に対する改良をおこなう必要がある。既設樋門への悪影響が比較
的少ない工法としては以下の工法があり,現況条件に応じて設定する。
・静的締め固め工法
・固化工法
3 - 2 - 82
第3編 河川分科会
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・補強材工法
図 2.5.21
既設樋門の地盤の沈下対策の概念図
4)
(2) 空洞化対策
空洞化対策は,セメントミルクや可塑性モルタルを注入する工法が一般的である。
また,施設の設置状況等により対策が困難である場合には,更新も主要工法として検
討する。
なお,空洞化の規模を目視確認することは困難であることから,工法選定にあたっ
ては地中レーダー探査等をおこない対策工の基礎資料とする。
a) 注入固化工法
セメントモルタル,セメントベントナイト,流動化処理土をグラウトにより充填す
る方法がある。
b) 締切(遮断)工法
浸透路長不足によって漏水が発生する場合の対策として,既設の遮水矢板を可とう
継手を介して側方に拡張することによって浸透路長を確保する方法である。また,そ
れが難しい場合には,堤防天端から函体を取り囲むようにコンクリートあるいはセメ
ント系改良体による遮水壁を築造する方法がある。
3 - 2 - 83
第3編 河川分科会
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資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
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c) グラウトホール
函体の底版下に発生した空洞に対してグラウトによって空洞を充填することがで
きる。グラウトは,底版上から注入すれば効果的であるから,底版にグラウトホール
を設置しておくのがよい。グラウトホールの設置間隔は,5m 程度で止水矢板の位置,
グラウトの能力に応じて決定する。また,このグラウトホールを利用して,底版下地
盤に空洞測定用沈下板を設けることで空洞の発生を観測することができる。
図 2.5.22
写真 2.5.1
グラウトホールの例
6)
底版のグラウトホール
3 - 2 - 84
第3編 河川分科会
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(3) 地盤の液状化対策
地盤の補強工法の選定にあたっては,対策工の目的,既設樋門への影響,周辺環境
に及ぼす影響,工期および経済性などを考慮し,目的とする効果が確実に得られ,現
地条件に適合した工法を選定する。
・静的締固め工法
・固化工法
・プラスチックドレーン工法
・締切工法
図 2.5.23
既設樋門の地盤の液状化対策の概念図
3 - 2 - 85
4)
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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表 2.5.6
既設樋門の地盤の補強工法の特徴と留意点
3 - 2 - 86
4)
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2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
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2.5.5 機械設備の整備
機械設備については,本来は設備の機能維持として年点検時において定期整備を実
施するため,点検と整備は一連の流れとなる。ここで,整備とは設備の機能維持のた
めに定期的( 定期整備) に,または点検や診断結果に基づき適宜実施する清掃,給油脂,
調整,修理,取替等( 保全整備) およびその記録作成までの一連の作業をいう。
しかし,今回対象とする樋門・水門については,必ずしも専門技術者による定期整
備が実施されるとは限らない。このため,点検により異常が認められた場合(管理水
準を下回った場合)には,マニュアルに準じる年点検などを別途実施し,その際に専
門技術者による整備を施すことを基本とする。
図 2.5.24
点検から整備の流れイメージ
7)
整備は,設備の機能維持のためにあらかじめ時期を定めて実施する定期整備と,点
検・診断結果等に基づき実施する保全整備に区分して実施されるが,ここでは上述の
とおり,定期整備,保全整備ともに点検結果をもとに必要箇所に対して実施するもの
とする。
3 - 2 - 87
第3編 河川分科会
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表 2.5.7
項
目
定期整備
整備の区分
内
容
設備の損傷,異常予防のため予め定期的な期間に実施する整備作
業のこと(清掃,給油脂,定期取替,分解整備,塗替塗装等)。
定期取替
予防保全(時間計画保全)であり,一定時間毎に機器・部品を取替え
る整備作業をいう。経年劣化の進行を確認し難いが設備機能にと
っと致命的な電気・電子機器・部品に適用されることが多い。
分解整備
機器の分解を伴う整備のこと。分解点検と同時に実施する。
塗替塗装
防錆および美観を目的に塗装の劣化に伴い実施する。全面塗装,
部分塗替,局部補修(タッチアップ)のうち,点検の結果も考慮し適
切な内容にて実施する。
保全整備
点検の判定結果および診断結果に基づき,設備の損傷ないし異常
の発見,機能低下等が確認された場合,設備の機能保持および復
帰させるために行う調整,修理,取替作業等のこと。
(1) 整備に当っての留意点
整備にあたっての留意点としては,下記が挙げられる。
① 塗装塗替時に点検・整備をすることで,仮設機材の供用を図る等,経費の節減
を図ることができる。
② 建屋の無い場合もあるため,設置環境などの相違により,腐食や油脂等の劣化
の進行が早まっている恐れがある。
③ 小規模なゲートで,扉体や開閉装置を工場に持ち込んで整備を実施する場合,
実施時期の選定(通常は,非出水期),扉体取外し後の堤防開口部の仮締切(仮ゲ
ートの設置など)など,取外し中の安全確保を十分に図る。
(2) 定期整備の周期
定期整備としての塗装塗替,分解整備,油脂取替の実施周期の目安を,表 2.5.8, 表
2.5.9 に示す。同表はあくまで目安であるため,設備毎の使用条件,環境条件により
大きく異なることに留意する必要がある。
3 - 2 - 88
第3編 河川分科会
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表 2.5.8
定期整備周期例(塗替塗装,分解整備) 7)
表 2.5.9
定期整備周期例(作動油・潤滑油取替)
7)
なお,分解点検・整備については,複数回にわたり実施するより,新品に取替・更
新した方が経済的に有利な場合もあるので,データの蓄積を図り,評価する必要があ
る。
3 - 2 - 89
第3編 河川分科会
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(3) 取替・更新について
取替・更新は,整備による機能維持あるいは機能復旧ができなくなったと判断され
る設備,装置,機器に対して実施する。
取替・更新は,対象設備の重要性等に応じて適切な時期に計画的かつ経済的に実施
することが重要で,設備のライフサイクルコストを考慮し,長期的視点に立つ必要が
ある。
また,取替・更新を実施する時期は,現実的には数十年以上を経過していることか
ら,土木設備の劣化などの可能性もあるため,設備全体に対して総合的に評価する必
要がある。
なお,取替・更新の最小実施単位は,機器単位,装置単位,設備単位に分けられ,
機能の適合性(機能的耐用限界,社会的耐用限界)や経済性などを考慮して決定される。
表 2.5.10
項
取替・更新の種類
目
機器の取替
内
容
ゲート設備の一部分を構成する機器が経年劣化等により,安定した機
能,性能を得ることができなくなり,寿命と判断されたものを新しいも
のに置き換えること。
装置の更新
開閉装置一式,扉体一式,戸当り一式等を更新することをいい,機器単
位の取替では対応しきれない場合,もしくは装置単位とした方が経済的
に有利な場合に実施する。
設備の更新
社会的耐用限界や社会的適用限界により,施設の機能が低下した場合に
設備全体の更新を行う。これは,機械的な要件というより,施設の機能
の問題なので,土木設備などを含めた全体として評価する必要がある。
3 - 2 - 90
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表 2.5.11
標準的な取替・更新年数
3 - 2 - 91
7)
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(4) 標準的な取替・更新年数に関わる留意事項
表 2.5.11 において,白色部の年数を「主たる管理年数」(基本とすべき管理年数)
と位置付ける。以下にその理由および留意事項を示す。
a) 扉体関係
・ 扉体構造部,ローラ本体,シーブ本体等は,外観目視による傾向管理が可能で
あることから,平均取替・更新年数を主たる管理年数とする。
・ ローラ軸受等は直接目視できないことから,信頼性による年数を主たる管理年
数とし,詳細点検・診断等実施の目安とする。診断等の結果に従い継続使用も
しくは取替時期を判断する。
b) 開閉装置関係
・ 絶縁抵抗による傾向管理が可能な電動機および外観目視による傾向管理が可能
な開放歯車,機械台シーブについては,平均取替・更新年数を主たる管理年数
とする。
・ 減速機,切換装置,軸受,軸継手等は,内部が直接目視できないことから信頼
性による年数を主たる管理年数とし詳細点検・診断等実施の目安とする。診断
等の結果に従い継続使用もしくは取替時期を判断する。
・ ワイヤロープは目視可能だが,接水・非接水を繰り返す過酷な環境下にあるこ
とから,信頼性による年数を主たる管理年数とする。ただし,継続使用可能な
ものは引き続き延命化を図らなければならない。
・ 油圧シリンダ,油圧ユニット,ラック式開閉装置,スピンドル開閉装置につい
ても,ユニット式であり内部が目視できないことから,信頼性による年数を主
たる管理年数とし,詳細点検・診断等実施の目安とする。診断等の結果に従い
継続使用もしくは取替時期を判断する。
c) 制御機器関係
・ 制限開閉装置,開度計は,作動部分がケースに覆われており内部が見えないこ
とから,信頼性による年数を主たる管理年数とし,詳細点検・診断等実施の目
安とする。診断等の結果に従い継続使用もしくは取替時期を判断する。
・ 機側操作盤は,基本的に傾向管理ができないことから,信頼性による年数を主
たる管理年数とする。
・ 水密ゴムは,流下物の衝突等,突発的に生じる損傷等により取替えられている
事例が多く予防保全は適切でないこと,また設備の機能・目的にもよるが,一
般的な河川用ゲートにおける用途において設備機能に対し致命的となるケース
は少ないと考えられること,かつ状態を監視できる設備が多いことから取替・
更新年数を設定していない。ただし,目視による確認ができないケースでかつ
厳格な水密性を要求される設備においては,目安として 24 年とする。
・ リミットスイッチの解析値,およびリレー類,開閉器類,スイッチ類の解析値
については,開閉装置もしくは機側操作盤の更新実績年数の傾向が見られるこ
3 - 2 - 92
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とから参考値とする。リミットスイッチ,リレー類,開閉器類,スイッチ類は
致命的部品ではあるが,高価な部品ではなく,取替が容易かつ予備品として確
保が容易であり,予備品として保有し即時対応が可能な体制を実現することに
より,事後保全対応とすることも可能である。予備品としての備蓄量は,機側
操作盤の更新年数を考慮する等,全体システムとのバランスを考慮した数量の
確保が望ましい。
【参考文献】
1) コンクリートのひび割れがわかる本
2) 樋門補強マニュアル(案)
セメントジャーナル社
国土技術研究センター
3) これから始めるコンクリート補修講座
平成 13 年 10 月
日経BP社
4) 樋門補強マニュアル(案)国土技術研究センター
平成 13 年 10 月
5) コンクリート診断技術’12[基礎編] 日本コンクリート工学会
6) 柔構造樋門設計の手引き
7) 河川用ゲート設備
平成 10 年 11 月
点検・整備・更新検討マニュアル(案)
3 - 2 - 93
平成 20 年 3 月
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参考-1)
損傷・劣化要因に対する補修・補強工法
ここでは損傷・劣化要因に対する補修・補強工法の選定について以下に示す。
「コンクリート診断技術'12[基礎編]」p.239~p.246
a)
中性化に対する補修・補強工法の選定
中性化により性能低下した構造物に対する補修・補強は,期待する効果や劣化程度
に応じて表-1 に示される工法の中から選定されるのが一般的である。
表-1
中性化に対する補修・補強工法の選定
3 - 2 - 94
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b)
塩害に対する補修・補強工法の選定
塩害により性能低下した構造物に対する補修・補強は期待する効果や劣化状態に
応じて表-2 に示される工法の中から選定されるのが一般的である。
表-2
塩害に対する補修・補強工法の選定
3 - 2 - 95
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c)
アルカリシリカに対する補修・補強工法の選定
アルカリシリカ反応により性能低下した構造物に対する補修・補強は期待する効
果や劣化状態に応じて表-3 に示される工法の中から選定されるのが一般的である。
表-3
アルカリシリカ反応に対する補修・補強工法の選定
3 - 2 - 96
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d)
凍害に対する補修・補強工法の選定
凍害により性能低下した構造物に対する補修・補強は期待する効果や劣化状態に
応じて表-4 に示される工法の中から選定されるのが一般的である。
表-4
凍害に対する補修・補強工法の選定
3 - 2 - 97
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e)
化学的腐食に対する補修・補強工法の選定
化学的腐食により性能低下した構造物に対する補修・補強は期待する効果や劣化
状態に応じて表-5 に示される工法の中から選定されるのが一般的である。
表-5
化学的腐食に対する補修・補強工法の選定
3 - 2 - 98
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f)
疲労に対する補修工法の選定
疲労には,床版と梁部材によって劣化過程が異なる。疲労の場合には,劣化過程
を明確に判定することが難しいことから,補修・補強に期待する効果によって,床
版では表-6 に,梁部材では表-7 に示す工法が適用対象となる。
表-6
表-7
床版の疲労に対する補修工法例と期待する効果
梁の疲労に対する補修・補強工法例と期待する効果
3 - 2 - 99
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g)
風化・老化に対する補修工法の選定
風化・老化として取り扱われるのは,コンクリート構造物に生じる劣化機構として
挙げられる「中性化」,「塩害」,「アルカリシリカ反応」,「凍害」,「化学的腐食」,「疲
労」および「火災」によって生じた劣化現象ではなく,これらに比べて弱い劣化作用
により一般環境において長期の経年に伴い徐々に生じた劣化現象である。なお,風
化・老化として扱われるような緩慢に進行する劣化の場合には,当該構造物は重大な
損傷には至らず,構造的な影響を及ぼすことはないので「補強」の必要はほとんどな
い。
表-8
風化・老化に対する補修工法例と期待する効果
3 - 2 - 100
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2.6 優先度評価
樋門・水門の維持管理を効率的・計画的に実施するため,当施設の設備区分ごとに
設置条件を加味した健全度評価,補修・補強内容に対する重要度評価,社会への影響
度評価などから総合的に判断し,対策実施の優先度を評価し,長期保全計画の策定に
寄与できるようにする。
【解説】
優先度は,健全度評価,補修・補強内容に対する重要度評価,社会への影響度評価の
結果をマトリクスにより総合的に評価する。また,機械設備については,設置からの経
過年数と取替・更新年数も考慮し,整備実施に優先度を評価する。なお,優先度評価は,
地域の特徴などがあることから,相対評価の指標としての利用を想定している。
また,樋門の機能の維持を図るためには,本来は予防保全による維持管理を実施する
のが望ましい。しかし,公共事業の予算制約により,必ずしも理想的な維持管理を実施
することは困難である。このため,施設の優先度評価を基に,予防保全型,事後保全型,
観察保全型に維持管理水準を分けて維持管理費の平準化( 分散化) を図る長期保全計画
の策定を行えるようにする。
健全度
維持管理水準
施設の重要度や影響度
で維持管理方針を設定
a
予防保全型
重要度大、影響度大
(最重要部材、大規模施設)
b
補修の実施
事後保全型
c
重要度中、影響度中
(主要部材、中規模施設)
補修の実施
d
観察保全型
e
重要度小、影響度小
(付帯部材、小規模施設)
補修の実施
供用年数
図 2.6.1
予防保全型の維持管理方法のイメージ
2.6.1 評価の実施方針
評価指標として,大別して以下の3つを対象とする。なお,地域の実状により,ラン
クの増加や評価指標の修正は可能とする。なお,健全度評価は「2.4.1健全度の評価方
法」を参照のこと。
① 健全度評価
② 補修・補強内容に対する重要度評価
③ 社会への影響度評価
3 - 2 - 101
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2.6.2 補修・補強内容に対する重要度の評価
補修・補強内容に対する重要度については,主に以下に着目して配点法により評価
するものとし,点数の高いものが,より重要度が高いと判断するものとする。なお,
配点には,地域の実状を配慮した配点とする。
① 樋門・水門を構成する部材としての重要度(構成要素として致命的であるかどうか,
利用頻度)
② 利用頻度
③ 復旧の難易度( 復旧に要する時間,施工のしやすさ,代替機能の可能性等)
◎樋門・水門の部材間での重要性
樋門・水門の果たすべき役割として重要な制水機能を維持する点に着目して,各部材
の重要度・優先度についての具体案を以下に示す。
部材間での重要性については,制水機能を果たす部材,操作時の安全性に係わる部
材,その他の付帯的な部材といった観点で,重要性の高い順に,①直接的に制水機能
を果たす部材,②間接的に制水機能を果たす部材,③操作管理人の安全性を確保する
部材,④堤防または堤脚の保護を目的とする部材の4段階に区分した 1) 。
① 直接的に制水機能を果たす部材
本体(函体・胸壁),門扉
② 間接的に制水機能を果たす部材
巻き上げ機,門柱・操作台
③ 操作管理人の安全性を確保する部材
付帯設備(管理橋,防護柵,階段など)
④ 堤防または堤脚の保護を目的とする部材
呑口翼壁,吐口翼壁,護岸
3 - 2 - 102
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表 2.6.1
優先
順位
部材の目的
①
直接的に制水機能を
果たす部材
樋門・水門の各部材の重要性
部材
優先順位付け理由
本体(函体)
本体(胸壁)
平常時~洪水時までの間は,門扉が閉まるまでは堤体
内を安全に通水させるために必要な部材
門扉
②
③
④
間接的に制水機能を
果たす部材
操作管理人の安全性を
確保する部材
堤防または堤脚の保護を
目的とする部材
1)
実際に流水の逆流を防止する部材
巻き上げ機
門柱・操作台
管理橋
門扉の開閉を行うために必要な部材
門扉を安全に降ろすために必要な部材
洪水時に操作管理人の安全性を確保し,制水機能を発
揮するために間接的に関係のある重要な部材
防護柵
呑口翼壁
吐口翼壁
樋門という横断構造物が堤防に設置されることで,洪
水時に堤防の弱点とならないよう堤防または堤脚の保
護を目的とする部材
2.6.3 社会への影響度評価
主に下記に示す指標に基づき評価を行うものとする。
① 水害が発生した場合の被害規模に係る指標:人口,土地利用状況など
② 水害が発生した場合の氾濫規模に係る指標:河道諸元,堤内地の地形など
これらをマトリクスにして影響度を評価するものとするが,地域の実状を考慮して
評価指標を変更するものとする。
図 2.6.2
マトリクス評価指標の例
3 - 2 - 103
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表 2.6.2
社会への影響度評価
社会への影響度
内
容
レベルA:高
国土保全上,または国民経済上,特に重要な施設
レベルB:中
国土保全上,または国民経済上,公共の利害に重
要な関係のある施設
レベルC:低
その他の施設
社会への影響度評価の指標として,被害規模に係わる指標と氾濫規模に係わる指標
の具体案を以下に示す。
2.6.3.1
被害規模に係わる指標:DID 地区(人口集中地区),想定氾濫区域など
水害等による被害規模の大きさに係わる指標として,樋門・水門がDID地区(人口
集中地区)に位置しているかどうかや想定氾濫区域内の人口,資産額,公共施設数,
重要交通網,浸水戸数,市街地面積,農地浸水面積などを指標とする。
◎被害規模に係わる指標
・人口集中度合
・・・
・氾濫想定区域内・・・
DID地区(密集),人家連担(多い)など
資産額,公共施設数,重要交通網,浸水戸数,
市街地面積,農地浸水面積などの大小
2.6.3.2
氾濫規模に係わる指標:重要水防箇所,被災履歴,河川形態
水害等による氾濫規模の大きさに係わる指標として,樋門・水門が重要水防箇所や
被災履歴箇所などに位置しているかどうかや河川形態(流域面積や堤防形状)による
危険度などを指標とする。
◎氾濫規模に係わる指標
・重要水防箇所・・・
堤防高,堤防断面など
・被災履歴箇所・・・
浸水頻度や近年における被災実績など
・河川形態
流域面積や河川形態(天井川,築堤,掘込,山付)など
・・・
2.6.4 総合評価
3つの評価指標( ①健全度評価,②補修・補強内容に対する重要度の評価,③社会へ
の影響度評価) を基に,対策実施の優先度を評価する。
評価の重要度としては,
「健全度評価」と「社会への影響度」,
「補修・補強内容に対
する重要度評価」を組合せて評価を行うものとする。なお,ここでの評価は,相対的
な評価( 順位付けの評価) という位置付けとする。
3 - 2 - 104
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優先度評価
① 健全度評価
② 補修・補強内容に対する重要度の評価
部材毎にひび割れや損傷,劣化などを指
標として健全度を5段階(a,b,c,d,e)
に評価する。
樋門・水門を構成する部材の重要度や利
用頻度,復旧の難易度を踏まえて重要度を
評価する。
・健全度の配点
健全度評価(a,b,c,d,e)に対して優
先度に対する重みづけの配点を行う。
・重要度の配点
重要度に応じて優先度に対する重みづけ
の配点を行う。
①健全度と②補修・補強内容に対する
重要度によるマトリクス評価
①健全度と②補修・補強内容に対する重
要度を組み合わせた評価により,各対象物
の優先度に対する重みづけの配点を行う。
③ 社会への影響度評価
被害規模や氾濫規模に係わる指標を抽出
し,地域毎に設定された基準や条件を踏ま
えて社会への影響度を評価する。
・重要度の配点
社会への影響度に応じて優先度に対する
重みづけの配点を行う。
①+②と③によるマトリクス評価
①健全度と②補修・補強内容に対する重
要度を組み合わた評価にさらに③社会への
影響度評価を組み合わせた評価を行って,
総合的な評価を行い,配点の大きさにより
相対的な順位づけを行って対策実施の優先
度を評価する。
図 2.6.3
優先度評価フロー
3 - 2 - 105
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[事例]
3種類の施設[A,B,C]の優先度評価方法についての一例を以下に示す。
まず,①健全度と②補修・補強内容に対する重要度の評価に重み付けを行い,マト
リクス評価を行う。
例えば,健全度評価および補修・補強内容に対する重要度の評価結果を表2.6.3に示
すとおりとする。
これらの各項目について,健全度評価の配点を表2.6.4,補修・補修内容に対する重
要度の評価の配点を表2.6.5に示すような設定とすると,健全度と補修・補強内容に対
する重要度を組み合わせた評価は表2.6.6に示すように,C施設,A施設,B施設の順
に重要度が高くなる。
表 2.6.3
項目
健全度評価および補修・補強内容に対する重要度の評価結果
A施設
B施設
C施設
①健全度
②重要度
①健全度
②重要度
①健全度
②重要度
函体
門扉
巻き上げ機
a
a
a
極大
極大
大
a
a
a
極大
極大
大
a
c
a
極大
極大
大
門柱・操作台
管理橋
防護柵
b
c
c
大
中
中
c
a
c
大
中
中
a
d
a
大
中
中
2
c
3
d
5
e
ひび割れ
ひび割れ
ひび割れ
小
中
中
大
局所的
表面
-
局所的
中
中
大
小
表 2.6.4
マトリクス評価
対象物
函体,門扉
門柱・操作台
管理橋
巻き上げ機
防護柵
健全度評価の配点表
配点
健全度
損傷・劣化
0
a
なし
1.5
b
ひび割れ
幅
間隔
塗装劣化
錆
板厚
-
-
なし
-
-
小
大
局所的
-
-
変形・損傷・劣化
なし
-
表 2.6.5
大
中
あり
局所的
減少
-
鉄筋
露出
あり
全体的
減少
全体的
補修・補強内容に対する重要度の配点表
配点
5
3
1.5
1
重要度
極大
大
中
小
部材の目的
直接的に制水機能
を果たす部材
間接的に制水機能
を果たす部材
操作管理人の
安全性を
確保する部材
堤防・堤脚の保護を
目的とする部材
主な部材
本体(函体)
本体(胸壁)
門柱
巻き上げ機
門柱・操作台
管理橋
防護柵
呑口翼壁
吐口翼壁
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
表 2.6.6
項目
函体
健全度と補修・補修内容に対する重要度のマトリクス評価
A施設
B施設
C施設
①健全度 ②重要度 ①×② ①健全度 ②重要度 ①×② ①健全度 ②重要度 ①×②
0
5
0
0
5
0
0
5
0
門扉
巻き上げ機
門柱・操作台
管理橋
防護柵
0
0
1.5
2
2
5
3
3
1.5
1.5
0
0
4.5
3
3
合計
0
0
2
0
2
5
3
3
1.5
1.5
0
0
6
0
3
10.5
2
0
0
3
0
5
3
3
1.5
1.5
10
0
0
4.5
0
9
14.5
次に,③社会への影響度評価を行う。
例えば,社会への影響度評価結果を表2.6.7に示すとおりとする。
これらの各項目について,社会への影響度評価の配点を表2.6.8に示すような設定と
すると,社会への影響度評価は表2.6.9に示すように,A施設,C施設,B施設の順に
重要度が高くなる。
表 2.6.7
マトリクス評価
被害規模
氾濫規模
社会への影響評価に対する重要度の評価結果
項目
A施設
B施設
C施設
人口密度
資産額
位置条件
DID地区
極大
重要防災箇所
人家連担
中
被災履歴
人家連担
大
被災履歴
河川形態
流域面積
築堤
大
掘込
中
築堤
中
表 2.6.8
マトリクス評価
被害規模
氾濫規模
配点
人口密度
資産額
位置条件
1
農地・荒地
小
-
1.5
人家点在
中
被災履歴
3
人家連担
大
重要水防箇所
5
DID地区
極大
-
河川形態
流域面積
山付
小
掘込
中
築堤
大
天井川
極大
表 2.6.9
項目
社会への影響評価の配点表
社会への影響度評価のマトリクス評価
A施設
B施設
C施設
①被害規模
②氾濫規模
①被害規模
②氾濫規模
①被害規模
②氾濫規模
人口密度
5
-
3
-
3
-
資産額
位置条件
河川形態
流域面積
小計
5
-
-
-
10
-
3
3
3
9
1.5
-
-
-
4.5
-
1.5
1.5
1.5
4.5
3
-
-
-
6
-
1.5
3
1.5
6
合計(①+②)
19
9
3 - 2 - 107
12
第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
最後に,
「①健全度評価+②補修・補修内容に対する重要度の評価」と「③社会への
影響度評価」を総合的に評価した結果を表2.6.10に示すような設定とすると,総合評
価はA施設,C施設,B施設の順に重要となる。
表 2.6.10
総合評価
優先度評価項目
③社会への影響度評価
A施設
10.5
19
B施設
9
9
C施設
14.5
12
総合評価(①+②)×③
199.5
81
174
①健全度評価+②補修・補強内容に対する重要度評価
2.6.5 長期保全計画
上記の指標を基に,予防保全として計画的に維持管理を実施することが望ましいが,
公共事業費が限られていることから,維持管理費用の平準化を視野に長期保全計画を
策定する必要がある。
長期保全計画の具体例を以下に示す。
[事例]
3種類の施設[A,B,C]の更新費用の平準化について
A,B,Cの3種類の施設について,予防保全対策を行わず,それぞれの対策時期に
補修整備を行った場合の補修費の分布と,コスト発生時期を分散させた集中緩和後の
補修費を図2.6.4に示した。
図より,全体の維持管理費用について,C箇所の補修対策時期を中心に前後に振り
分けて全体的にコストを平準化させて,対策時期・コストの集中緩和と対象施設全体
の延命化を図る。
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第3編 河川分科会
2.樋門・水門等 維持管理マニュアル(案)
資料№12-1 公共土木施設の維持管理に
関する研究委員会 報告書
予防保全対策をせず、それぞれの対策時期を基準とした補修費の分布
40000
A箇所
35000
B箇所
C箇所
30000
更新費用(万円)
この費用の集中緩和⇒後年次に配分
25000
20000
15000
10000
5000
0
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60
平成
集中緩和後の補修費の推移
40000
A箇所
35000
全体の費用は、C箇所の補修対策時期を中心に前倒して全体的に金額が平準化、対策時
期・コストの集中緩和と対象施設全体の延命を図る。
B箇所
30000
更新費用(万円)
C箇所
25000
20000
15000
10000
5000
0
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60
平成
図 2.6.4
予防保全対策による維持管理費用平準化の具体例
【参考文献】
1) 樋門のアセットマネジメントに関する報告書 平成 20 年 7 月
(公共土木施設長寿命化検討委員会樋門部会)
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