V E 基本テキスト 目 次 Ⅰ まえがき ..........................................................................................................〈1〉 Ⅱ VEの定義 ....................................................................................................〈2〉 Ⅲ ジョブプラン .................................................................................................〈5〉 Ⅳ 各 論 ..............................................................................................................〈8〉 〔Ⅰ〕対象の選定 ..................................................................................................... 〈8〉 (1)方針と計画 .............................................................................................. 〈8〉 (2)対象の選定 .............................................................................................. 〈10〉 (3)プロジェクト計画 .................................................................................. 〈10〉 ¡)目標の設定 ™)チーム編成 £)動機づけ ¢)日程計画 〔Ⅱ〕機能定義 ......................................................................................................... 〈13〉 (1)情報の収集 .............................................................................................. 〈13〉 (2)機能の定義 .............................................................................................. 〈14〉 ¡)機能定義の目的 ™)機能の表現方法 £)機能に関する情報の収集 ¢)機能の種類と基本機能の定義 ∞)要求事項・制約条件の列挙と整理 §)機能への変換 ¶)上位機能の抽出および順位づけ •)機能系統図 〔Ⅲ〕機能評価 ......................................................................................................... 〈19〉 (1)機能の評価 .............................................................................................. 〈19〉 (2)機能へのコスト配分 .............................................................................. 〈20〉 (3)価値の評価 .............................................................................................. 〈20〉 〔Ⅳ〕アイデアの発想 ............................................................................................. 〈22〉 (1)アイデアの列挙 ...................................................................................... 〈23〉 (2)アイデアの確認,追加 ..........................................................................〈23〉 (3)アイデアの本質追求 .............................................................................. 〈23〉 (4)アイデアの連想,発展 ..........................................................................〈24〉 〔Ⅴ〕アイデアの具体化 ......................................................................................... 〈24〉 (1)アイデアの具体化 ..................................................................................〈24〉 ¡)概略図の作成 ™)一次評価 £)アイデアの分類 ¢)アイデアの組み合わせと総合改善案の作成 ∞)二次評価 §)図面化と詳細評価 (2)テストと証明(評価) ..........................................................................〈28〉 ¡)デザインレビュー ™)試作品によるテスト 〔Ⅵ〕提案 ................................................................................................................. 〈30〉 (1)提 案 ...................................................................................................... 〈30〉 (2)審 査 ...................................................................................................... 〈31〉 ¡)審査者の選定 ™)審査会,報告会の開催 £)審査の分類 〔Ⅶ〕実施(フォローアップ) .............................................................................〈33〉 付録・用語解説 ...................................................................................................... 〈36〉 Ⅰ. まえがき 日本にVEが導入されてから,20余年を経過し,日本バリュー・エン ジニアリング協会加盟会社も 400 社に増加してきた。この間,各企業で のVE活動のすすめ方も,経済環境の変化に対応して,変ってきてい る。すなわち,VE活動の対象が拡大され,それらの経験や実績によっ て,手法の進歩や拡大が著しい。従って,それぞれの企業で独自のVE 活動が展開されて,ややもすると,基本のステップから離れてしまうよ うな状況も見られる。 そこで,現在,各企業で実施されているVEのステップを整理し,日 本バリュー・エンジニアリング協会としてのVEの基本ステップを整理 し,今後,VEを導入する企業も含めて,企業でのVE活動の基準をき める必要が生じた。 このテキストの作成に当っては,専門委員会を編成し,現在,各社で 使われている基本ステップを参考として,審議,決定したものである。 このテキストは,あくまでも,基本的なVE活動のステップとしてま とめたもので,各企業の進歩した最新の技法ではない。そのため,対象 も,現在,生産されている製品を対象として作成されており,開発段階 やマーケティング段階で適用する場合は,このテキストの応用展開が必 要である。 ー ー1ー ー Ⅱ. V E の定義 VEは,次のように定義する。 「最低の総コストで,必要な機能を確実に達成するため,組織的に, 製品,またはサービスの機能の研究を行う方法」 ここでいう研究とは,分析,総合,評価の研究開発の意味である。 VEの究極のねらいは,この研究を通して,顧客の立場で,製品やサ ービスの価値に関する問題を研究し,価値を高めることである。価値に はいろいろあるが,VEで対象とする価値は,それを使用して得られる 使用価値と,所有することで得られる貴重価値の2つをいい,価値の大 きさは,顧客の立場で判断される。 顧客は,製品や,サービスを得ようとする際に,その“もの”を買う のでなく,その“もの”の持っている働き(機能)を期待して買うこと になる。従って,顧客の認める価値は,その“もの”が持っている働き (機能)が一つの尺度となる。 また,顧客が物を買う場合に,その代価を支払う。大きな働きを期待 する場合には,多くの代価を支払うし,期待する働きが小さければ,支 払う代価も少ない。また,同じ働きをするならば,その代価は,安けれ ば安い程,望ましいことになる。つまり,その“もの”の働き(機能) と,それに支払う代価(顧客にとってはコスト)との比によって,価値 の大きさが測られることになる。 VEでは,その関係を,次の式で表わす。 顧客の要求する機能の達成度合 価値 (指数) = 取得して使用するための費用(コスト) または, FUNCTION(機能) VALUE (価値指数) = COST (費用) すなわち,顧客の要求する働き(機能)に対し,費用を安くするか, ー ー2ー ー あるいは,同じ費用で働き(機能)を大きくして,その価値を高めるこ とを研究するのが,VEであるといえる。 なお,費用は,製品やサービスを提供する側にとっては,価格(コス ト)であり,顧客の要求する働き(機能)を達成するために,そこに費 やされる費用(コスト)を最小にするか,同じ費用(コスト)であれば 働き(機能)を最大にもっていく努力をすることが,VE活動の目的で ある。 定義にある総コストとは,製造コストばかりでなく,その製品を使用 する際に発生する運転コストや,操作コスト,また,保守・サービスの 費用(コスト)や,部品の交換コスト,あるいは製品を納入する際の物 流コストや,寿命の尽きた製品の廃棄コストなど,製品のライフサイク ルのあらゆる場面で発生するすべての費用(コスト)をいう。従って, 単に製造コストだけで高い,安いの判断をせず,ライフサイクルでの総 コストで比較し,判断しなければならない。 一方,働き(機能)についても,前に述べたように,使用する際の働 きのほかに,顧客が,それを所有することによって得られる貴重さ,満 足感も加えられる。いわゆる,外観デザイン,美しさなどが,これに属 するもので,貴重価値として評価されるものである,ただし,この貴重 価値は,すべての顧客に同じに評価される客観的なものでなく,人によ り,環境によって変わるので,物理的に数値化するのは難かしい。 このように働き(機能)と,それに対するコストの大小によって価値 の大きさが測られるが,価値を向上する手段や,同じ働き(機能)を達 成する手段は,数多く考えられる。VEは,その働きを果たす多数の手 段の中から,最も合理的で,経済的な手段を選び出すことが仕事である。 VEは,このような考え方で進めることが大切であるが,これを企業 の中で実施するには,組織的な活動が必要である。VE活動で,価値を 評価する要素は,顧客の要求を見きわめたり,ライフサイクルの総コス トを分析するなど,社内外の,極めて広い範囲にわたる情報が必要とな ー ー3ー ー ってくる。そのため,多種の情報を持った各部門のメンバーを集めて, 組織的な活動として推進しなければならない。 このようなVEの適用範囲は,部品,製品,製造方法,物流,工事な どの直接製造コストを構成する要素や,間接業務,販売システムなどま で,広範囲にわたっている。 それぞれの対象に対する詳細な手順や手法は,異なった点もあるが, 基本的には,次に述べるジョブプランの考え方と進め方が,VEの基本 である。 ー ー4ー ー Ⅲ. ジョブプラン 研究には,一定のプロセスがある。一つのステップのアウトプットを 次のステップのインプットとしてすすめるプロセスが必要である。VE では,効率的に価値問題解決の作業をすすめる手順が必要である。これ をVEではジョブプランという。 VEは,顧客の要求する機能を明確にし,最低の総コストで,その必 要な機能を達成するための手段を,創造し,実現化する手法である。そ のために,ジョブプランは,顧客の要求を機能として把握するための分 析,把握した機能をより安いコストで果たす代替案を作り出す総合(創 造),および創造された代替案を,実行可能とするための評価の手順を, 基本的な考え方として構成されている。 これを,具体的に基本ステップで示すと,次の7ステップになる。 基 本 ス テ ッ プ 1.対象選定 分 析 詳 細 手 順 (1)方針と評価 (2)対象の選定 (3)プロジェクト計画 2.機能定義 (1)情報収集 (2)機能の定義 3.機能評価 (1)機能の評価 (2)機能へのコスト配分 (3)価値の評価 総合 評 価 4.アイデアの発想 5.アイデアの具体化 (1)アイデアの具体化 (2)テストと証明(評価) 6.提案 (1)提案 (2)審査 7.実施(フォローアップ) ー ー5ー ー 各ステップの内容を,下記に概略説明する。 1.対象選定 経営計画,収益計画から,VEの活動計画を立案し,対象を選定す る。また,対象に見合ったプロジェクト・チームを編成する。 2.機能定義 対象が選定されたら,対象品についてのあらゆる情報を集め,その情 報から,顧客の要求事項を明確にし,それを機能に変換,定義する。機 能は,顧客が要求する働きとしての最上位機能,それを達成する基本機 能,基本機能を構成する補助機能(二次的機能)に分類・整理する。 3.機能評価 顧客の要求する機能の達成が,価値があるかどうかの判定は,V=F/ Cの式で評価する。 そのためには,機能Fと,コストCを数値化することが必要である。 数値化による評価とは,機能を値打ちとしてコスト基準に置き換えた り,それぞれの構成機能を,相対的に係数化して評価することである。 その結果,V=F/Cの式によって,その機能達成に要するコストと 対比して,価値指数を求める。同時に,価値改善の目標値や,改善の着 手順位を明確にする。 4.アイデアの発想 アイデアの発想は,集団思考によって,各種の創造技法を使って,飛 躍的なアイデアを生み出す。先ず,多くのヒントを集め,それを分類整 理し,本質を追求し,さらに,連想発展させて,アイデアにまとめる。 ー ー6ー ー 5.アイデアの具体化 発想されたアイデアを洗練し,具体化された形にまとめ上げる。具体 化された代替案について,経済性,技術的可能性の面から,概略あるい は,認細な評価を加え,価値の高い改善案にまとめて行く。評価に際し ては,総コストの積算とか,技術的な可能性についてのテストや証明 を,このステップで行う。 6.提案 改善案の作成が完了したら,提案を行う。提案内容は,洩れなく要求 事項を満足した代替案であることを示すため,裏づけ資料が必要である。 また,提案先は,事業所の責任者を含めた審査グループに対して行い, そのグループの審査を得ることが必要である。 7.実施(フォローアップ) 最終のステップは,実施までのフォロー・アップである。提案は,理 論的に正しくても,実際に活用され,収益効果に反映されなければ価値 がない。そのため,実施スケジュールを立てて管理し,それぞれの提案 を,確実に実施に移し,要求期限内に効果を生み出すことが,VE活動 としての仕上げとなる。 以上の一連のステップは,前に述べたように,現在,生産されている 製品を対象とした,基本的なステップであって,これ以外の対象にVE を適用する場合には,この基本ステップの応用展開が必要である。しか し,いずれの場合でも,常に,このジョブプランの7つのステップを基 本としなければならない。これを省略することは,真の価値改善・向上 とはならず,誤った結論や不充分な結果を招くことになりかねない。ジ ョブプランの確実な実施は,VE活動をすすめる上で,不可欠なことと 認識すべきである。 ー ー7ー ー Ⅳ. 各 論 〔Ⅰ〕 対象の選定 (1)方針と計画 企業の活動は,顧客に製品やサービスを提供して,満足感を与え,そ の代償として利益を得ている。VE活動は,この企業活動を達成するた めの手段である。すなわち,顧客の要求する製品や,サービスの価値を 改善向上して,顧客の満足感を高める活動である。 企業は,年度または半期ごとに,販売計画や生産計画,収益計画を立 案し,予算を編成する。これによって,ラインの各部門は,それぞれの 担当範囲で活動計画を策定するが,それとは別に,一つの対象に的をし ぼって,各部門を集合させた利益追求中心の活動が,VE活動である。 製造会社での経営計画は,受注予測によって,製品の開発計画や,既 存製品の生産計画が立案される。生産計画の結果,売上高および,それ に伴う収益が予測されるが,予定の収益を確保するためには,利益創造 活動が必要となる。また,機能の追加などで,製品の特徴をもたせたり 他社品との競争のために値下げされた売価で,売上げ高や,収益を確保 するためにも,製品価値の向上が必要となる。このような収益確保のた めの,原価低減に,VEは,しばしば活用され,効果をあげている。 また,受注生産の場合は,顧客からの要求によって,開発,新設計画 を,要求期限,要求価格に合わせて,立案しなければならない。 このような,収益改善計画や,開発計画に沿って,VEをいかに活用 するかの方針を設定し,それに従って,VE活動を計画しなければなら ない。 もちろん,企業の中には,VE以外にも,各種の改善活動が実施され, それなりの効果をあげている。従って,これらの改善活動との関連を明 ー ー8ー ー 確にし,その中でのVEの役割,および目標効果を明確にする必要があ る。それによって,VEの目標値や,活動範囲が定まり,対象が選定さ れることにもなる。 また,製品を対象とする場合は,中・長期の製品戦略にそって,タイ ミング良くVE活動計画を立てなければならない。VE効果を最大にす るためには,出来るだけ,開発の初期にVE活動を行うことが必要であ る。開発製品は,当初は,生産量も少く,VE効果も小さいが,将来の 大きなVE効果を生み出すもとになる。また,VE堤案を実施に移すま でには,手続きの変更や,テストなどに,ある程度の期間が必要となる ので,発売時期や,納入時期から逆算して,VEの適用時期を決定す る。 このように,VE活動では,コスト要素ばかりでなく,時間的要素が 実質的に大きな影響を与えることを忘れてはならない。 次に,VE活動を実施する場合には,かなりの投資が必要である。数 人のチームでプロジェクトを編成するための人件費や,情報収集のため の出張旅費や,サンプルの購入費,テストのための試作費,テスト費用 などが必要である。従って,この投入費用に見合った効果が期待出来る ような対象を選定しなければならない。すなわち,計画の際に,VE活 動の投資効率を考慮しなければならない。 VE投資倍率= 活動による年間の効果の合計 活動のための総費用 ただし,効果には,開発製品のように,現状の効果のみでなく,将来 発生が期待される効果を含めても良い。また,金額効果のほかに,導入 初期の企業では,教育効果や,宣伝効果も認めても良い。投資倍率の目 安として,一般には,10倍以上の効果があげられるといわれている。 ー ー9ー ー (2)対象の選定 上記のVE方針の設定,ならびにVE計画の立案は,全体的な問題点 の発見のステップである。これにより,改善すべき対象が明らかとなっ たので,次に,優先順位を決定することになる。そのためのチェックポ イントには,次のような要因がある。 a)生産面から見て ・各製品の売上高の多いもの。 ・生産台数・量の多いもの,など。 b)販売面から見て ・将来の需要増が認められるもの。 ・新規に市場に参入したもの。 ・競合品にシェアを侵されているもの,など。 c)設計面から見て ・短期間に開発したもの。 ・長期にわたって変更されていないもの。 ・複雑な機能・構造のもの。 ・無理な技術水準を要求されたもの,など。 d)製造面から見て ・原価率の高いもの。 ・工程の複雑なもの。 ・不良率の高いもの,など。 (3)プロジェクト計画 ¡)目標の設定 このようにして選定された個々の対象に対して,改善の目標を設定す る。目標には,機能,品質,価格,期限などの目標がある。それぞれに ー ー 10 ー ー ついて,要求事項を明確にし,向上・改善の目標として,定量的に設定 しなければならない。 まず,機能,品質,仕様,特性などは,現状の製品が持っている機 能,品質などにこだわらず,顧客のニーズ・市場の要望に逆のぼって, 要求された機能や,顧客の使用条件,環境条件を明確にし,機能に関す る目標として設定する。 次に,目標コストについては,売価から必要利益を差し引いて,目標 製造原価を設定する(売価−利益=原価)が,現状の売価ばかりでなく, 将来の売価の傾向や,他社製品や,競合製品の価格動向も考慮して,将 来的にも市場競争に耐え得る価格を,目標値として設定する。 また,別の方法として,機能評価の技法を使って,コスト基準を設定 し,その値を目標値とすることもある。 さらに,期限については,プロジェクトの完了期限,または改善提案 の適用時期などとして,目標が与えられる。 ™)チーム編成 VE活動の推進体制は,チーム活動が望ましい。対象品についての改 善要素は,設計,製造,資材などの生産関連部門ばかりではなく,検査 や顧客に接触している営業,サービス部門など,広範囲にわたってい る。従って,チーム編成に際しては,対象の範囲や,複雑さに応じて, 専門分野や能力を考慮して,必要人員を選出することが肝要である。特 に,改善の手掛りを発想するためには,多方面の情報を必要とするの で,異質の部門からの参画を得られれば理想的である。 なお,チームメンバーを動員する場合は,日常の仕事に支障を来たさ ないために,事前に,十分調整して,活動日程を設定しなければならない。 £)動機づけ 改善活動で重要なことは,明確な目標と,それを解決しなければなら ー ー 11 ー ー ないという,メンバー全員の意欲が不可欠である。目標は,“望ましいも の”ではなく,“ねばならないもの”である。従って,チーム員全員 が,意欲的に,問題に取り組むための動機づけを忘れてはならない。動 機づけに不可欠な要因は,①目標完遂の必要性,②定量的な目標値,③ 完了期限である。特に,目標完遂の必要性は,成果が企業収益におよぼ す影響や,幹部の関心の度合い,他社との競合状況など,活動の重要性 を認識させるのが効果的である。 ¢)日程計画 チームの編成と同時に,ジョブプランに沿って,日程計画を立てる。 製品の開発計画や,モデルチェンジには,他社の動向なども考慮した 効果的なタイミングがあり,また,顧客への納入期限も要求される。従 って,VE活動も,それらの計画から逆算して,提案の完了時期や,プ ロジェクト終了の期限が設定される。 従って,日程計画としては,ジョブプランにもとづいて,それぞれの 作業内容,すなわち分析や,アイデア発想などの作業量を推定し,無理 のない日程編成を行う必要がある。 以上,述べたように,準備の段階で,十分な調査を行って計画を立て ても,対象品の環境が,VE活動の途中で変化する場合がある。すなわ ち,コスト目標の修正や,機能の追加,活動期限の短縮などが必要とな ることがある。そのような場合は,変化に対応した活動の転換を行わな ければならない。 ここまでの作業で,対象が選定され,それに対応した体制が作られ, 事前の準備が完了した。 ー ー 12 ー ー 〔Ⅱ〕 機能定義 (1)情報の収集 選定された対象について,チームメンバーが共通理解をするため,対 象に関連するすべての事実を,情報として集める必要がある。 情報収集に際しては,常に,何を求めようとしているのか,何を調べ ようとしているのかといった,問題意識を持って探索することが肝要で ある。また,情報は表面に現われている現象だけでなく,その裏側にあ る本質的な内容をひき出すことが大切である。 対象製品に関して収集すべき情報の種類と内容を,下表に示す。 情報の種類 顧客の使用に 関する情報 情 報 の 内 容 顧客の使用方法(使い方,使用回数,頻度,寿命,保守・ サービスなど) 顧客の使用環境(屋外・屋内,温湿度,雰囲気など) 販売面に関す る情報 需要量,市場規模,シェア,他社動向,販売方法,流通 経路など。 技術面に関す る情報 要求機能,仕様,特性,性能 不良・事故(容先,工場内,調達先) 特許・実用新案,規格・基準,法規・条例 製造面に関す る情報 生産設備,生産体制,製造工程,生産能力(場内,調達先) コストに関す る情報 材料調達から製造,輸送,据付けまでの総コスト。 競合他社製品 に関する情報 他社製品,類似製品の設計構造,製造方法 製品ポリシー に関する情報 対象製品に対する企業の戦略,方針 製造上の不具合点,問題点 容先での使用,保守・点検まで含めたライフサイクルコ スト。 情報の種類と内容 ー ー 13 ー ー なお情報収集は,対象選定や,アイデア発想,具体化のステップでも 必要な活動である。 上表に示したような各種の情報を収集して,以後のステップに反映, 活用していくが,これらの情報は,いずれも最新の情報であることが絶 対に必要である。特に,最近は,企業環境や製品の新陳代謝が激しい時 代で,常に,最新の情報によって将来の傾向を予測して,企業としての 意思決定を行わなければ,誤った結論を導くことになりかねない。従っ て,プロジェクト活動の期間中も,常に,関連する最新の情報に注意し なければならない。 (2)機能の定義 ¡)機能定義の目的 VEの特長は,顧客の要求する働きを,最低の総コストで達成するこ とである。そのため,そのものが果たしている働きを,機能として定義 する必要がある。 従来,製品や部品は,一般に使われている名称,通常,商品名とか, 設計図面に,習慣的につけられてきた品名で呼ばれてきた。この名称 は,生産活動で,古くから使われてきたり,その業界や,その企業での 特有な名称であって,生産活動や商行為に際して,相互に共通のイメー ジを呼び起こすには,極めて便利なものとなっている。しかし,同時に その名称によって,固定観念を持つことにもなる。この固定観念は,そ のものの大幅な変更や,発想の転換に対して,大きな阻害要因となって いる。 従って,VE活動では,固定観念を打破し,機能の原点に立ち返っ て,発想の転換を図るため,従来の名称の代りに,そのものが果たして いる働き,すなわち,機能でとらえることを,アプローチの最大の特長 としているのである。 実際に,製品を購入する顧客は,その製品が果たす“働き”を期待し ー ー 14 ー ー て,それに費用を払っているのであるから(貴重価値は別として),期 待する働きが発揮されれば,物の形状や構造が変っても,満足すると考 えるべきである。 そのためには,そのものを購入する顧客の目的とか,期待する働きは 何かを追求することが必要となる。すなわち,顧客の要求する目的や, 働きは何かを明確にするのが,この機能定義のステップの目的である。 ™)機能の表現方法 機能は,そのものが持っている目的や,働きである。それは,たとえ ば,電線は“電流を伝える”ものであり,ネジは“部品を固定する”働 きを果たしているといったように,名詞と動詞の2語で,簡潔に表現で きる。 一般的に,働きを説明するときには,“100Aの電流を伝える”とか, “振動に耐えて固定する”のように,名詞や動詞の他に,形容詞や,副詞 などの修飾語が用いられる。これらは,その働きの程度を表わすもの で,VEでは,制約条件として,機能とは区別する。 機能表現に使用する名詞は,できる限り,測定可能な用語を使用す る。力,熱,電力,光,音などのエネルギーや,時間,重量などの測定 可能名詞が適切である。 また,動詞は,アイデアが出易いように,普遍的な用語を選ぶ。あま り論理的な表現をせず,平易に表現し,特に,否定的な表現は避ける。 これらの働き,機能を達成する手段は,機能の表現が,誰にも理解で きて,極めて,一般的であれば,それだけ,アイデアが出易くなる。一 つの機能に対する,数多くの達成手段をアイデア発想によって集め,そ の中から,最も少ない資源,すなわち,最低のコストで達成可能な方法 を選び出すことが,価値の向上につながるのである。 ー ー 15 ー ー £)機能に関する情報の収集 情報の収集については,前章でいろいろ述べたが,ここでは,選定さ れた対象品について,機能を明確化するために,機能に関連する顧客の 要求事項や,制約条件などの情報を収集する。 顧客の要求する働きや,その製品に対する期待は,必ずしも,機能的 に表現されているわけではない。従って,各種の要求事項や,制約条件 を通して,要求されている機能を探し出すことが必要である。 現在,納入されている製品については,その製品そのものや,その図 面を集めて,それらの形状,構造,あるいは材料などから,その形状が 何を目的としているのか,どのような機能の要求から,そのような構造 となっているのか,その材料を使う目的は何かなどの追求を行う。 また,顧客の指定についても,そこに記載されている品質,特性,性 能などについて,何の目的によって,そのような要求事項や,制約条件 が指示されるのかを追求し,機能を明確化しなければならない。 一般市販品は,顧客カードとか,マーケティングカード,あるいはク レーム情報などで,顧客のニーズを吸収することが必要である。 このほか,製品により,納入先によって,それぞれ形は異なるが,以 上の図面,仕様書,顧客カード,事故情報などの,顧客の要望に関する 情報を幅広く収集して,その時々の社会の時流や,顧客ニーズに見合っ た改善の方向を見きわめるための情報収集が,このステップの目的であ る。 ¢)機能の種類と基本機能の定義 集められた情報の中から,機能として表現できるものを選び出し,そ れを最上位機能,基本機能,および補助機能(二次的機能)に分ける。 最上位機能とは,顧客がそのものに要求したり,期待している究極の 目的の機能である。すなわち,その“働き”を必要とするのは顧客であ るから,機能を定義する場合,顧客が“涼しさを得る”といった形で表 ー ー 16 ー ー わすことができる機能である。 基本機能は,最上位機能を満足するのに必要な機能で,その製品が, その機能を果たさなければ存在理由がなくなるような機能である。基本 機能は,一般的には,一つの対象に対して一つ存在するので,製品のそ れぞれの部分にも,基本機能は存在する。従って,製品全体としての基 本機能を明確に定義する必要がある。 補助機能(「二次的機能」ともいう)は,基本機能の達成を補助する 機能である。同じ基本機能を果たすのに,設計着想が違えば,補助機能 も異なったものになる。 このステップでは,最上位機能と,基本機能を定義する。 ∞)要求事項・制約条件の列挙と整理 基本機能が定義されたら,補助機能や,各機能の程度を表わす品質 や,性能などの要求事項や,制約条件を整理する。 前述の機能に関する情報収集で得た,各種の情報には,必要な機能を 達成する際に,その程度,すなわち,寸法や容量,能力の大きさなどの 要求事項がある。また,公害や安全性に関する社会的制約条件や,法規, 条例などの規約,規定もある。さらに,基本機能を達成する方式に,顧 客の要求として決定されている部分があれば,前述の補助機能が,要求 事項として挙げられる場合もある。 これらの必要な要求事項,制約条件を列挙し,整理するのが,このス テップの作業である。 これら要求事項や,制約条件の整理の際に,抜け落ちや,誤りがない か,必要以上に付加されていないかなども,チェックすることが必要で ある。このような整理によって,最終的に,不可欠の要求事項,制約条 件を決定する。 ー ー 17 ー ー §)機能への変換(機能の定義) 前項で整理された要求事項や制約条件,品質性能について,それを必 要とする目的を追求して,機能的な表現に変換する。機能に変換する目 的は,抽象化することによって,自由な思考の拡大を可能にして,より 価値の高いアイデアの発想を促すためである。品質や性能も,目的を達 成するための条件であって,それらの裏側には,その条件を提示した要 望,目的がある。その目的を追求して,機能として表現するのが,この ステップである。 具体的には,各項目に対して,“それは何をさせようとしているのか” の質問を行って,その目的を明らかにして,機能を定義する。 ¶)上位機能の抽出および順位づけ 定義された各機能は,目的・手段の関係で結び合って,機能のネット ワークを形成している。従って,各機能間の目的・手段の関係を明確に して,基本機能を定義すると同時に,各機能間の相関を明らかにする。 これを機能系統図(FASTダイヤグラム)という。 目的・手段の関係を明らかにするには,それぞれの機能を手段と考え て,その機能を必要とした目的となっている機能を明らかにする。“そ の機能(手段)は何故必要か”の質問をすることによって,目的の機能 を選び出すことができる。 一つの目的の機能を果たすのに,二つ以上の手段を必要とする場合も ある。この場合に,二つの機能は,並列の関係である。目的の機能を選 び出す場合は,その手段の直接の目的となっている機能を選ぶことが大 切である。 このような方法で,すべての機能間の関係を明確にすれば,基本機能 を直接の目的とする上位の手段の機能から,目的・手段の関位で結ばれ た機能の系統図が完成される。 ー ー 18 ー ー •)機能系統図 機能系統図は,左側に基本機能を置き,右方へ目的→手段の順に書き ならべて行く。 機能1 機能2 機能3 目的 手段 機能4 手段 目的 手段 目的 機能5 手段 機能系統図を作成する目的は,チーム全員が対象品の機能的な構成を 十分理解し,イメージを統一することにある。従って,作成する際には 全員が参画して,納得のゆくまで討議し,共同で作成する。改善の方向 づけや問題点の発見は,作成する過程で明確化される。不足機能や不要 機能の発見にも,留意する必要がある。 〔Ⅲ〕 機能評価 このステップの目的は,最終的に,価値の評価を行うことである。価 値を評価し,改善の方向づけ,順位づけを行うためのものである。 (1)機能の評価 VEにおける価値の評価は,V=F/Cで表わす。Vを価値指数といい, F(機能)と,C(コスト)の対比で評価される。 コストCは,金額値で定量的に表わされているが,機能Fは,名詞と 動詞で表現されているので,そのままでは数値化されていない。 機能を数値化するには,その機能の値打ち(Worth)を金額で見積っ て,コストで表わす方法と,相対的に,お客の重要度,または物理的な 重要度で,重みづけて数値化する方法などがある。前者は,単独で評価 ー ー 19 ー ー できるが,値打ちのきめ方によって数値が左右される欠点がある。後者 は,相対的な評価はできるが,単独では評価ができないなど,一長一短 がある。従って,対象に応じて適切な方法を選ぶことが必要であり,ま た,メンバー全員の合意によって,数値を決定することが肝要である。 前者の機能の値打ちを金額で見積って評価値を求めるには,対象の機 能と,同じ働きをする最も安い代替品を探し,そのコストを評価値とす る。ただし,この場合は,代替品の探し方で,評価値に差ができること になる。 後者の相対的な評価方法は,対象品を構成している機能相互間の相対 評価を行って数値化し,最終的に,基本機能に対する構成機能の重要度 の大きさが評価値となる。 (2)機能へのコスト配分 前のステップで機能が数値化されたら,各機能ごとの現状コストを明 確にする。製品のコストは,材料費,加工費,経費などで区分されてい るが,これを詳細に分解し,それぞれの機能を果たすために使用されて いる材料費や,加工費を明確にして,機能ごとに配分して計算する。 ただし,コスト配分には,明確な区分けができない場合がある。一つ の部品が,2つ以上の機能にまたがっている場合があるからである。こ の場合は,両者への寄与度を考えて,その比率でコストを配分すること である。 このようにして,機能ごとのコストCがきまれば,前項の機能の評価 値Fと対比して,各機能ごとの価値V=F/Cを評価することができる。 (3)価値の評価 以上の手順によって,機能FもコストCも,共に数値化された。これ らの数値によって,価値Vも指数として評価することができる。 価値の指数は,V=F/Cによって算出するが,機能の評価方法によ ー ー 20 ー ー って,算出方法も異なる。 機能の値打ちを,代替品のコストで表わした場合は,価値指数Vは, FとCの比で,そのまま表示する。 機能を相対的に評価して,係数で表わした場合は,Cも,全体コスト に対する百分比の係数に換算して,V=F/Cの値を算出する。 これによって,それぞれの機能ごとの価値指数が算出され,価値の大 きさが明らかになる。従って,価値指数が1より小さい場合や,他に比 べて小さい場合は,それだけ改善の余地や,必要性が大きいことを示し ている。 この章の最初にも述べたように,価値を評価する目的は, a)価値の大きさが小さいこと,すなわち,価値が低いことを明らか にして,改善の余地が大きいことや,必要性の高いことをメンバー が認識し,動機づけとすることができる。価値指数が1より小さい 場合は,すべて改善の対象となる。 b)複数の機能分野に対して,価値の低い順に改善作業の着手順位を 決定する。それぞれの機能は,相互に関連を持っているので,大幅 に改善を必要とする機能分野から着手しないと,最終的に,全体の 目標達成が困難となる場合が多いので,着手順位の設定も重要な意 味がある。 c)それぞれの機能分野ごとに,価値を高める目標値,または,コス トを低減する目標値を定量的に定めることができる。すなわち,価 値の大きさを1とすることが目標となるので,逆算して,コスト低 減の目標値が明確になる。 機能の値打ちをコストで表わした場合は,“C−F”がそのまま, コスト低減の目標値となる。相対評価の係数で表わした場合は,製 品全体の目標コストに,それぞれの機能評価係数を乗じた値が,そ の機能分野のコスト目標になり,現状コストとの差が,低減目標と なる。 ー ー 21 ー ー 〔Ⅳ〕 アイデアの発想 このステップの目的は,前ステップの機能評価できめられた着手順位 に従って,機能を一つ一つ取り上げ,機能をキーワードにしてアイデア を発想し,現状の手段方法に変えて,より安いコストで,同じ機能を果 たす手段・方法を発見することである。 アイデアを発想する手法としては,種々の方法が開発され,活用され ているが,「必要は発明の母」といわれるように,欲望とか,必要性が, 創造活動の基本である。VE活動では,原価を低減するとか,収益を改 善するとか,価値を向上するという改善の必要性を感じなければ,創造 を生み出すことはできない。 創造のためには,現状にこだわらず,何物にもとらわれない気持ち で,先入観や固定観念を排除して,アイデアを出すことが必要である。 また,このような考え方だけでは,アイデアとしての具体化は不可能 で,ヒントや手掛かりをまとめ上げ,具体化,実現化することも必要で ある。 このような創造活動は,改善しなければならないという意欲と,各種 の創造技法の訓練によって醸成されるものである。 アイデア発想の方法には,個人の能力に頼る個人思考と,集団の情報 の量を活用する集団思考がある。また,自由に発展させる自由連想と, 一定の目標を追求していく強制連想の方法がある。 VE活動は,チーム活動で,メンバーの自由な発想を期待するので, 集団思考による自由連想が基本となっている。また,使用するアイデア 発想技法は,種々の方法を,時と場合によって使い分ける。 一般的に,VE活動で実際に使用され,効果を上げている発想の手順 を,次に示す。 (1)アイデアの列挙 (2)アイデアの確認,追加 ー ー 22 ー ー (3)アイデアの本質追求 (4)アイデアの連想,発展 以下に具体的な進め方を説明する。 (1)アイデアの列挙 対象の機能に対して,自由なアイデアを求めるため,ブレーンストー ミング法で,多くのアイデアを集める。 ブレーンストーミングには,次の四つの規則があり,参加者全員に事 前に,これを知らしめておく。 (¡)良い悪いの批判をしない (™)自由奔放なアイデアを歓迎する (£)量をできるだけ多く集める (¢)他人のアイデアに便乗する また,ブレーンストーミングの成否は,リーダーの役割りに負うとこ ろが大きい。リーダーは,参加者がアイデアを出し易いような雰囲気づ くりや,適当な刺激を与えて,発言を活発にする配慮が必要である。 (2)アイデアの確認,追加 ブレーンストーミングで出されたアイデアは,単なる思いつきや,抽 象的なものが多いので,一つ一つ見直しを行って,より具体的なものに 修正し,追加のアイデアも加える。 (3)アイデアの本質追求 出されたアイデアを,実際に役立つ具体案に仕立て上げるには,その ままの形で具体化したのでは,飛躍的な改善には結びつかない。出され たアイデアを分類整理して,類似のものをグループにまとめる。このア イデアのグループの共通の方向,すなわち,改善のねらいとする本質的 な考え方を抽き出して,具体化への方向づけを行う。 ー ー 23 ー ー グルーピングのために,アイデアをカードに書き移し,カードを類似 したものごとに集める。グループごとに,そのグループのアイデアがい おうとしている方向,たとえば,形状とか,方式,材料,製法などの変 更内容を抽き出し,グループのタイトルとする。決められたタイトルか ら,具体化や連想発展が行われるので,表現は普遍的な言葉で表わして おく。 (4)アイデアの連想,発展 タイトルによって全員の方向を統一し,アイデアを追加しながら具体 化を進める。 具体化への方法が思い浮かばない場合は,タイトルを種に,類比,連 想によってアイデアを追加する。 連想をうながすために,物の形から直接連想する方法や,言葉から連 想するものなどがある。いずれも,現状にこだわらず,異質の製品や植 物や,動物の世界にヒントを求めるといった,発想の転換を行うことが 大切である。 アイデアの発想方法は,多数の権威者により開発され,活用されてい るので,対象や発想の段暗に応じて,適切な技法を採用すると良い。 〔Ⅴ〕 アイデアの具体化 (1)アイデアの具体化 前章で発想されたアイデアは,具体的なものもあるが,殆んどは,改 善のヒントであり,抽象的なものが多い。これらを,具体的な形に作り 上げ,経済性や技術的な評価が可能な形にまとめ上げなければならな い。具体的な形にする段階でも,さらに,多くのアイデアを追加するこ とも必要になる。また,抽象的なヒントの段階では,実現可能と思われ ー ー 24 ー ー たアイデアやヒントでも,具体化する際の詳細な検討で,理論的に不可 能になる場合もある。逆に,一見,実現不可能に見えたヒントが,具体 化の際の追加アイデアで,飛躍的な改善案にまとまる場合もある。従っ て,折角出された数多くのアイデアを,そのままの形で評価して,大切 なアイデアの芽を摘み取ってしまうことのないように,さらに,発展さ せ大きな効果に結びつけようとする気持ちで,具体化の作業に入ること が大切である。 ¡)概略図(ポンチ絵)の作成 頭の中にイメージとして存在する改善のヒントは,立体的なポンチ絵 に画いたり,図象で表わすことによって,他のメンバーに理解させ,連 想を呼び起こして,より良いアイデアに発展させることができる。ただ し,すべてのヒントを絵や図面にする必要はない。文章で十分表現でき るものは,そのままで評価する。 ™)一次評価 前項で具体化されたアイデアは,次の二面から,概略評価を行う。 経済性評価:現状と比較して,コスト低減の可能性があるか。 比較する現状製品がない場合は,割りつけられた目標額 を達成できるかどうかで評価する。 技術的評価:現在の技術レベルで,実現の可能性があるか。 この段階の一次評価は,アイデアをふるい落すのが目的ではなく,明 らかにコストが高いとか,技術的に不可能なものだけを除き,それ以外 は,残すように心がける。 ここで注意すべきことは,個々に評価すると,コスト高になるアイデ アも,機能ブロックや製品全体として,他のアイデアと組み合わせた 時,合計でコストが安くなる場合もあるので,組み合わせ評価も必要な ことである。 ー ー 25 ー ー 次に,内容の具体性が乏しく,技術的にも,経済的にも評価が難しい アイデアは,さらに,具体化を進めて,評価可能の形に煮詰めていく。 簡単な構造や電子回路などは,この時点で試作やテストを行って,基本 的な可否の評価を行う。 判定基準は,下記のレベルが簡便である。 経済性について……コストが明らかに下がるもの……………………○ 今の段階では不明のもの…………………………△ コストが明らかに高くなるもの…………………× 技術面について……実現可能性が大きいもの……‥…………………○ 判定が難しいもの…………………………………△ 現在の技術レベルでは,実現不可能のもの……× 経済性,技術面共に,○の判定が出るものは少なく,また,コスト効 果も極めて少ない場合が多い。むしろ,△印の判定の中に,今後の具体 化の如何によっては,大きな効果に結びつく種がひそんでいる。また, 予想効果額の大きいと思われるアイデアは,この段階から注目し,可能 性を追求することが大切である。 £)アイデアの分類 一次評価を行って選び出されたアイデアは,分類整理して系統的に並 べることにより,アイデアの追加や,連想によるアイデアの発展に結び つけることができる。 分類の方法は,対象によって種々考えられるが,一例として下記に示 す。 第一段階:機能定義で作成した機能系統図の系統ごとに整理分類す る。 第二段階:各対象機能ごとに,次の三つのレベルに分けて整理する。 ①構想,方式等,基本的な考え方に関するアイデア。 ②構造,形状,特性,仕様等,具体的な方法に関するアイ ー ー 26 ー ー デア。 ③製法,寸法,公差等の製造レベル,部品レベルのアイデ ア。 ¢)アイデアの組み合わせと総合改善案の作成 分類整理されたアイデアを,種々組み合わせて,それぞれのブロック ごとに,最適な組み合わせ案を,遂次固めて行き,最終的に,全体の改 善案を作成する。 組み合わせる方法としては,上位の構想,方式のレベルでの組み合わ せから進め,それぞれの方式ごとに,最適の構造,製法,部品などの組 み合わせを考える。 この組み合わせで,複数の改善案を作成する。 ∞)二次評価 作成された改善案について,二次評価を行って経済性,技術面の可能 性を確認し,それぞれの改善案を比較する。 二次評価では,判定基準も精度を高めていく必要がある。 経済性評価:具体化された内容から,材料費,加工費を積算する。型 ・冶工具費の償却や,設備投資についての採算計算も, 評価に含めて総コストを積算する。 技術的評価:実現化の難易度,および実現化に要する期間について評 価する。実現化に要する期間の判定方法。 (例) 第一案:6カ月以内に実現可能。殆んど実現可能と思わ れるが,確認が必要。 第二案:1年以内に実現可能。試作テストの結果によっ て判定を要する。 第三案:実現に1年以上必要。試作テストに長時間を要 ー ー 27 ー ー する。基本的な開発が必要など。 第三案のように,実現に長期間を要するアイデアは,プロジェクトか ら切り離して,開発部門へ依頼し,将来の開発品として期待する。 以上の評価により,最適の改善案を選び,認細評価を行う。 §)図面化と詳細評価 ここでの図面化は,設計図面としての正式なものでなくても良いが, 詳細コスト算出,および技術的な可能性の判断ができる程度に,具体化 されていなければならない。 (詳細評価の基準) 経済性評価:実際に製造するのと同様に,コストを詳細に積算し,V E目標額が達成されているかを確認する。 技術的評価:要求事項,制約条件,その他の品質,性能などが満たさ れているか,また,要求期限内に実現が可能かを確認す る。 これらの評価で目標が達成されない場合は,前項に戻り,他の代替案 を選び直すか,アイデア発想のステップに戻って,改善案を作成し直 す。 (2)テストと証明(評価) 以上の評価で,目標達成可能な改善案が作成されたことになるが,机 上で十分な評価を受けたとしても,実際に,製品が使用された時に,品 質上の問題が発生する場合が皆無とはいえない。このような問題を起こ さないためにも,たとえ,従来品の改善の場合でも,新製品と同様に, 価値の改善・向上がなされたかどうかを,デザインレビューや試作品の テストによって確認することが必要である。 ー ー 28 ー ー ¡)デザインレビュー 前に述べた詳細評価とは,全く別の観点で,基本に立ち返って,種々 な角度から,実際の使用時に起る可能性のある問題点の評価を行う。す なわち,積極的なあら探しを行う。評価するメンバーには,プロジェク トに関係のない,その道の専門家を依頼する。プロジェクトのメンバー は,自分達の生み出した案については,先入観があり,冷静な判断がし 難いものである。 経済性についてのレビューも重要である。品質面と違って,事故につ ながることがないので,しばしば軽視されることが多いが,収益面での 大きな事故であると認識して,十分な見直しが必要である。プロジェク トの評価段階で使用した,コスト積算の元資料のチェックや,加工々数 や,調達価格などが,量産した場合にも保証されるかどうかの確認が不 可欠である。 ™)試作品によるテスト 改善案は,机上で十分な評価を受けても,実際の製品のテストを省略 して,前述のような事故につながるケースがある。従って,部分的には, 具体化段階で試作モデルのテストを行っても,最終的に,全体の試作品 を製作し,テストを実施する。 テストは,提案前に完了するのが望ましいが,寿命試験など,長期を 要する項目は,後で述べる提案内容に明示して,フォローアップの一環 として行えば良い。 テスト用の試作品の製作に際しては,できる限り量産時と同様な条件 で製作し,条件の相違による品質の差が起きないように,注意が必要で ある。 テスト条件,項目の設定については,顧客の要求事項,制約条件にも とづいて,実際の使用状態の等価な条件,項目を洩れなく設定しなけれ ばならない。 ー ー 29 ー ー しかし,不必要に苛酷な条件を設定すると,過剰品質になったり,価 値の改善に逆行することになるので,注意が必要である。テスト項目に ついても,従来の慣例的な項目にこだわらず,必要最低限にとどめなけ ればならない。 試作品の製作やテストは,遅延しがちなものである。従って,必要な 期限を定めて,製作日程やテスト・スケジュールを立て,フォローしな ければならない。テスト期間を短縮するため,過去の実績データや購入 先の業者のテストデータを活用すると良い。 コストについても,試作品を製作する際に,購入価格や加工工数が, 予定した値になっているかどうかの確認を行う。 テスト完了後は,結果の報告書を提案に盛り込む。 〔Ⅵ〕 提 案 (1)提案 以上で完成された改善案は,価値向上を保証し実施面で不具合のない ことを保証するための,裏づけ資料を添付して提案され,審査される。 VE活動の結果は,ラインに対して提案される。ラインは,その改善 案を実施する責任と,権限を持っている。プロジェクト活動は,ライン との合意の上で,必要な時期に展開され,目標もラインの要求する形で 設定されており,ライン活動の一部として活用されている。VE活動 は,スタッフ活動であり,改善案を作成し,提案することが責任ではあ るが,生産活動に対しては,権限も責任もない。従って,ラインに対し て提案するまでが,プロジェクトチームの役目である。そのため,VE 活動の成果を有効に高めるには,採否の意思決定をするラインの責任者 が,その内容を理解し,安心して採用に踏み切るために必要な説明や, 十分な裏づけのある説得性に富む資料が必要となる。 ー ー 30 ー ー 提案には,一定の提案用紙を作成しておくと便利である。提案は,改 善前後の比較が,審査する人人に,明確に理解できるような内容を盛り 込むことが大切である。従って,各部分ごとに,個々の改善案と,それ らを組み合わせた部分組立品や,全体の組み立て品についても,改善前 後の変更内容を明示する。 提案用紙を作成する場合には,次の項目を盛り込む必要がある。 ① 対象の品名や機能 ② 提案の理由,改善の経緯やそのポイント ③ 効果金額,改善案の予想コスト ④ 必要なテスト項目および条件など その他,前に述べたような裏づけ資料を添付する。 提案に際して注意すべきことは, a 改善には変更が伴うものであり, 変更には不安がつきまとって,拒否反応が起き易い。b 改善案の利点を 強調するあまり,従来品の欠点を指摘し過ぎると,かえって,感情的に 拒否反応を助長するということである。従って,提案に当っては,心理 面の配慮が必要である。 また,改善内容は,対象品以外にも適用可能な場合がある。そのため に,提案内容には,機能を表示し,改善のポイントを明らかにして,他 の製品への適用をしやすくすることが必要である。 他への拡大効果が見込める場合は,提案の際の効果の算出に加算し て,審査の参考とする。 (2)審査 提案の採否を決定するため,審査が行われるが,審査に際しては,次 のことに注意する。 ¡)審査者の選定 審査するメンバーとしては,該当する各部門の責任者を選定する。ま ー ー 31 ー ー た,審査の際は,いかなる提案も,審査メンバー全員の合議によって, 採否を決定する。 審査に際しては,納入後の事故や使用上の不具合などが発生しないよ うに,冷静に判断しなければならない。 ™)審査会,報告会の開催 前述のように,審査は複数のメンバーによる合同審査が必要なので, 全員出席のもとに,審査会を開催する。できれば,最高責任者の出席を 得て,総括的な意思決定を行う。 VE導入初期の企業では,VEの思想の浸透,VE事例の他製品への 適用拡大,VE活動のメリットのPRなどを兼ねて,多数の関係者を集 めた報告会を開催すると良い。 £)審査の分類 審査の結果は,次の三種類に分類し,それぞれ記号化して置く。 ①採用(即実施可能)…………………………A案 ②条件つき採用…………………………………B案 ③不採用(将来実施可能)……………………C案 ① A案 即実施可能とはいっても,設計図面の変更,購入先の変更など,手続 きを変更する時間が必要である。また,この判定は,対象部分につい て,個別に評価,審査した結果の判定であるから,全体の変更スケジュ ールの中で,それぞれの提案の実施期日を考慮しなければならない。 ② B案 改善案のテストは,原則的には完了しているが,提案時までに終了し なかった寿命テストのような確認試験の完了後,その結果により採否を 決定するという,条件つきの採用もある。また,個別には良いが,他の 部分との組み合わせ試験によって採否を決定する場合もある。あるい ー ー 32 ー ー は,顧客の承認を必要とする場合もある。これらは,すべて,条件つき 採用の判定となる。 ③ C案 すべて,提案は,物理的には,要求事項や制約条件を満足して提案さ れるが,企業の方針や顧客の制約,あるいは投資計画,内外作方針など により,今回は不採用となる場合がある。その場合は,次回の開発計 画,あるいは他の顧客に対して採用することを考えて,提案を保管して 次回に活用する。 審査の結果は,以上のように分類されるが,採用された提案で,目標 を達成しなければならない。従って,条件つきで採用の判定となった提 案については,フォローアップが必要である。 結果的に不採用となった場合は,その理由を明確に把握し,不採用の 原因を排除した代替案を,再度,アイデアの具体化のステップに戻っ て,再作成する。それによって,不採用によるコスト目標や,機能目標 の不足分を補てんすることが必要である。 審査が完了したら,それぞれの提案ごとに,判定結果を明示して,関 係部署に送付し,実施に移すための準備を行う。 改善作業をラインヘ移管した段階で,プロジェクトチームは解散す る。 なお,提案には,社内従業員や取引先からのVE提案などがあるが, このテキストでは,プロジェクト活動の一環としての提案についてのみ 述べてある。 〔Ⅶ〕 実施(フォローアップ) 改善提案が,審査の結果採用され,実施することが決定したら,計画 通り実行され,収益,または原価に確実に反映され,実績効果が出たか どうかを確認するのが,フォローアップの作業である。 ー ー 33 ー ー VEプロジェクトは,事業所の方針として計画されたものであり,そ こで作成された改善案は,関連部門の責任者の意思決定がなされて,実 施が決定したものである。従って,本来は,提案に至るまでが,VEプ ロジェクトとしての役割りであり,実施するのは,ラインの責任ではあ るが,VEプロジェクトの目的は,単なる原価低減でなく,実質的には, 価値向上による収益の改善である。従って,最終的に収益が改善され た実績が出るまで,VEプロジェクトの責任と考えて,フォローする 必要がある。 フォローアップは,対象項目ごとに,日程,フォロー担当者をきめる 必要がある。プロジェクトの終了時までに,未完了のテスト項目を含め て,改善案の実施時期,変更作業の担当者,およびフォロー担当者をき める。これをフォローアップの一覧表などにまとめておき,定期的にフ ォローする。 フォローアップのポイントを,下記に列挙する。 ① 変更実施に際して,問題点が発生したら,直ちに対策会議を開い て,その問題点を解消し,全体の進行を妨げないよう処理する。 ② フォローアップ会議を定期的に開催して,全体の進行状況を把握 し,幹部に報告する。 ③ 問題点が発生した場合は,再度,プロジェクトチームのメンバー を召集して,対策を検討する。内容によっては,新たに,プロジェ クトチームを編成して,代替案の作成を早急に行うなどの処置が必 要である。 ④ フォローアップは,項目の処理が目的ではなく,コストが予定値 に達することが目的である。金額的に不足が発生した時も,問題と 考えて,なんらかの対策を考えるか,他の項目で補うなどの処置が 大切である。 ⑤ 量産製品での試作品の原価は,生産台数も少なく,製作方法も異 るので,量産時との差異は大きい。そのため,提案時に試作品を作 ー ー 34 ー ー っても,そのコストは実績ではなく,予想値である。従って,量産 に移って安定した原価実績が出るまで,フォローアップを継続す る。 ⑥ 受注生産の場合は,生産の過程で遂次発生する実績原価を,その 都度,把握し,予想したコストとの差異を調べ,予定外に発生した コストの吸収を考えなければならない。 変更作業が完了し,目標に見合った実績原価内で,品質,性能が確保 され,安定した生産が継続されれば,フォローアップを完了とし,VE プロジェクトの全作業が終了したことになる。 ー ー 35 ー ー 用語解説 VE:Value Engineeringの略。VEと同義語として,VA(Value Analysys), V I( Value Improvement), V M ( Value Management)など,多種類の言葉が使われているが,このテキス トでは,同じような意味として扱い,VEに統一してある。 価値:価値には使用価値,コスト価値,交換価値,貴重価値などがある。 VEでは,そのうち, ・使用価値(Use Value):そのものがもつ役割り,働きで判断 される価値。 ・貴重価値(Esteem Value):そのものを所有することによっ て得られる満足感で判断される価値。 の二つが対象となっている。 ライフサイクル:製品が生まれてから,廃棄されるまでの寿命。製造業 者が,製品を開発し,材料を調達し,製品を製作し,顧客が使用 して,そのものの寿命が尽きて廃棄されるまでの期間のこと。 代替案:現状に対する代替の案で,改善案として評価されない段階での 案。 改善案:代替案の中で,改善効果が確認された案。 要求事項 顧客や社会的,技術的要求や制約などを,要求事項,制約条 { 制約条件 件の二つの用語に統一した。要求事項は,主として,顧客の 機能的要求をいい,制約条件には,法規,条例などの社会的制約 や,顧客の使用環境によるものや,メーカー側の自衛的,技術的 な制約条件などが含まれる。 品質,性能など:機能以外の品質,仕様,特性,性能などの用語は,特 に,公認されている定義がないので,本文中での使い方は,それ らを含めた形で“品質,性能など”と表現した。 ー ー 36 ー ー FASTダイヤグラム: バイザウェイ氏の開発した,Functional Ana1ysys System Techniqueの こ と。本 文 で い う 機 能 系 統 図 は , FASTの手法にこだわらず,機能を目的・手段の関係で結んだ 系統図で,FASTと区別した。 不足機能:余剰機能とか冗長機能なども使用されているが,すべて不要 機能に統一した。 不足機能:欠落機能などの言葉もあるが,すべて不足機能に統一した。 なお,用語の定義については,今後も検討が必要であるが,本書で使 用した主な用語については,以上に述べた定義に統一してある。 ー ー 37 ー ー −−専門分科会委員−− 本書は,つぎの専門分科会委員の討議と分担により作成されました。 主 査 山路陽三(株式会社日立製作所) メンバー 鈴木長生(日本ビクター株式会社) 武井健治(富士通株式会社) 小川政夫(東京芝浦電気株式会社) 岩崎武俊(フジタ工業株式会社) 鈴木正美(ヂーゼル機器株式会社) 松前 寛(萱場工業株式会社) 河原 康(松下電器産業株式会社) 平田 章(シャープ株式会社) 大沢幸男(積水化学工業株式会社) 山田道信(東洋工業株式会社) 大羽敏雄(三菱自動車工業株式会社) 監 修 玉井正寿(学校法人産業能率大学) ー ー 38 ー ー VE基本テキスト 発 行 1982年3月31日(初 版) 1982年7月27日(第2版) 1982年10月6日(第3版) 1983年4月15日(第4版) 1984年6月1日(第5版) 1985年8月26日(第6版) 1987年6月1日(第7版) 1989年5月8日(第8版) 1992年12月1日(第9版) 1997年5月10日(第10版) 編 集 研究開発委員会・VE普及開発委員会 合同専門分科会(主査・山路陽三) 発行所 社団法人 日本バリュー・エンジニアリング協会 〒154- 0012 東京都世田谷区駒沢1−4−15 TEL 0 3( 5 4 3 0)4 4 8 8番 印刷所 渡辺印刷株式会社 東京都目黒区中根2−7−1 TEL 0 3( 3 7 1 8)2 1 6 1番 無断転載・複製を禁じます
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