2004年度春学期定期試験解答

府川
「2004 年度春学期定期試験
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英語学概論」の解答と解説
Ⅰ 次の文のうちで、内容が授業で習ったことを基に判断して正しいと思うものに○、間違っているものに×をつけなさ
い。[37.5点]
3, 6, 7, 10, 15, 19, 22 が○で、あとは×。
Ⅱ (i) 次の表現が用法として容認できるものに○、*や??や?がつく容認できないものに×をつけなさい。[15点]
3, 5, 9 が○で、あとは×。
Ⅲ 設問に答えなさい。
(1) 次の文の統語構造を樹型図(tree diagram)もしくは表示付き括弧づけ(labeled bracketing)で表しなさい。
S
/\
/
\
NP
VP1
|
/ \
Mary
/
VP2
PP1
/ \
|
/
\
VP3
PP2
\ on his shoulder
V
NP
|
|
put
in her room
|
/\
/
\
her head
(2) 上の文のうちでとくに動詞句(VP)について、構成素であるかどうかをテストする方法を2つ用いて、なぜそのよう
な構造になるのか示しなさい。[6点]
① Mary put her head on his shoulder and Bill { did so, too /*did so on her shoulder }.
② a. Jim said that Mary would put her head on his shoulder and put her shoulder on his head she did.
b.*Jim said that Mary would put her head on his shoulder and put her shoulder she did on his head.
③ a. Jim said that Mary would put her head on his shoulder and so did Jim.
b.*Jim said that Mary would put her head on his shoulder and so did Jim on Jane’s shoulder.
(3) ‘John put his hand on her shoulder and she did so on Bill’s shoulder.’と言えないのはどうしてか。[4点]
put が置き場所を表す前置詞句(PP)を必ず取らなければならないため、上の(1)の樹型図で言えば、VP3 だけを do so
で置き換えることができないため。
Ⅳ
(1)〜(3)それぞれの中から最低1問ずつ選び、合計5問答えなさい。[6点×5=30点]
(1)
A. COM.pu.TA.tion などのように、なぜ英語の語には第2強勢があるのか。
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英語の特徴である強弱強弱という強勢拍リズム(強勢音節と無強勢音節とが小動き繰り返す構造を作る出そうと
する傾向)を保つため。
B. The kettle is boiling. の文強勢はどこに来るのか。また、なぜそこに来るのか説明しなさい。
kettle に来る。やかんはお湯を沸かすための物であるため、boiling の表す意味が予測でき、大事な情報でないため。[文
強勢は大事な意味をもつ部分が担う。「やかん」は湯を沸かすためにものなので、kettle にストレスを置けば is boiling の部
分はやかんの用途から予測される。ということは boiling が大事な情報を表していないということだからそこには文強勢が来
ないということになる。]
C. 次の文が容認できない理由を説明しなさい。
*John is able and fun to go out with.
2つの述語は統語的機能が異なる。それを and で並列するからだめになる。
[able は主語の能力を表し、後に続く不定詞の意味上の主語となる。
fun の場合は John is fun to go out with のように用いられてもそれは To go out with John is fun と同じ意味に
なることからわかるように、John は不定詞の中の with の目的語。したがって、不定詞との関連で主語と目的語
のように文法的機能の異なるものを and で結ぶことができないため容認されなくなる。]
D. unlockable の構造を意味が分かるように樹型図(tree diagram)で示しなさい。
A
/\
/
\
pref.
A
|
/ \
un
/
\
V
A
|
|
lock
able
(施錠不可能)
A
/ \
/
/
\
V
A
/\
|
able
\
pref.
V
|
|
un
lock
(解錠可能)
E. ‘Who did you see { *that / a } picture of___?’の容認性がなぜそのようになるのか説明しなさい。
写真を見るときはその写っている中身を見るので、中身を問題とする疑問文を作ることができる。コメントする場
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合、そのコメントの対象は物とも中身とも言えないのでその中間の?となる。
(2)
A. ‘breakwater’は内心複合語(endocentric compound)か外心複合語(excocentric compound)か、その理由とともに答
えなさい。
外心複合語。
breakwater(防波堤)は「water の一種である」と言うことはできず、ましてや、breakwater は break の一種でもないから。
B ‘want to buy a watch with a second hand.’にはメタファーとメトニミーのどちらが使われているのか解説しなさ
い。
類似性の観点から second hand(秒針)を hand(手)にたとえているからメタファーが使われていると言える。
B. ‘I’ll see to the theater tickets’の下線部が‘take care of; be responsible’の意味になるのはどうしてなのか、意味の
拡張の観点から説明しなさい。
「辞書に見られる’SEE’の定義」および『メタファー思考』から抜粋した、「見るのメタファー」を参照のこと。
E. ‘We'll discuss it over lunch’の下線部の意味はどうしてそのような意味に拡張されたのか説明しなさい。
OVER と題した配布プリントを参照のこと。
[結局、over の持つ「(全体を)覆う」という意味が拡張されたもの
とみなされる。]
(3)
A. ‘crown(王冠)’が「山頂」「王位」「政府」「歯冠」などの意味を持つのはどうしてか。
山頂←頭←王冠→国王→王位→(君主国の)主権→政府→歯冠
↓
絶頂
B. 「子供新聞」と言えて「子供たち新聞」と言えない理由を形態論(morphology)の観点から説明しなさい。
「語の内部には統語的な要素が入らない」という制約があるため、shoes shop や fruits salad が s が入っていて言えないと
同じように、「たち」という複数屈折を表す要素が入っている「子供たち新聞」は容認されない。
C. 文の数は無限であるが、それを保証する装置を英語から具体例を4つ挙げて示しなさい。
(1) とても、とても、とても、とても、・・・・・・美しい少女が朝もやの中に立っていた。
(2) a. I saw an
ugly, ugly, ugly, ugly, . . . . . , ugly man
sleeping in the subway.
b. This is the dog that chased the cat that chased the mouse that ate the cheese that lay in the house
that . . . . . .
c. I think that John thinks that Mary thinks that . . . . .
.
d. John is an intelligent, sensitive, tall, dark handsome man.
e. I like the girl in jeans with long hair at the back of the roon on the stage that . . . . . .
.
f. John met Ann this morning, and ran into George on Ginza Street, and had lunch with him,
and . . . . .
.
D. ‘Which book did he read to his son at night?’が、その基となる文からどのようにして派生(derive)されるか説明し
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なさい。
基になる構造(基底構造)
He PAST read which book to his son at night?
から、wh 移動によって which book が文頭に移動する。また、T-to-C 移動によって PAST が主語の前(C)の位置に
移動し、do 挿入によって do+PAST が did として具現化される。
E. ‘over’と‘on the other side of ’の違いを例を挙げて説明しなさい。
OVER と題した配布プリント参照。
Ⅴ 日本語に訳しなさい。[5点]
The structure in (2) differs from (1) in including a syntactic unit called verb phrase that consists of V and O to
the exclusion of S.
(2)の構造は(1)と違っているが、その違いは、(2)が S を排除した V と O から成る動詞句と呼ばれる統語単位を含んで
いるところである。
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