グラウンドワーク三島「インターンシップ事業」が始動 仕事と雇用のチャンスを拡大するために、昨年、8 月からスター トした、内閣府・地域社会雇用創造事業「グラウンドワーク・イン ターンシップ」の仕組みや狙いについて、11 月 24 日、静岡市内で 行われた、渡辺豊博事務局長(都留文科大学教授)と榛葉隆行静岡 新聞社論説委員長との対談の内容を掲載します。なお、この要約は、 平成 22 年 12 月 1 日水曜日の静岡新聞朝刊に掲載されました。 質問項目 1 若者や高齢者に起業のノウハウを伝授しようとするグラウンドワーク・インターンシッ プの内容や参加者についてお聞きします。 2 参加して良かったと言う声はどうでしたか。 3 ビジネスプランにはどんなプランがあったのでしょうか。 4 ボランティアではないビジネスとしての可能性はどうでしたか。 5 「グラウンドワーク・インターンシップ」には大学を卒業しても就職できない人や中途 でリストラにあった人、定年前の解雇者でも、十分やっていけるという思いがあるん ですね。 6 英国で始まった新しい公共の取組みが日本に定着するにはどうしたらいいでしょうか。 7 2 月から第Ⅱ期が始まりますが、研修は実際にはどんなことをなさるんですか。 8 更に広がりを持たせる議論や参加者のリアクションで記憶に残っているものは。 9 地域の特性を活かして、アドバイスをするグラウンドワークの機能はさらなる発展の参 考・財産になるわけですか。 1 1 若者や高齢者に起業のノウハウを伝授しようとするグラウンドワーク・インターンシッ プの内容や参加者についてお聞きします。 (榛葉)来春、卒業予定の大学生の就職内定率は、10 月 1 日時点の国の調査ですが、平均 内定率は 57.6%と過去、最悪になりました。県内では、それに輪をかけて悪く 50%にも届 きませんでした。何十社も受けて落ちた学生の中には、もう人格を否定されたようだとい う悲痛な声もありました。人生の大きな節目の時期に、こういう生活の基本となる働く場 がないことほど、辛いことはありません。そういう状況下では、発想の転換が必要ではな いでしょうか。 政府の地域社会雇用創造事業の一環として、グラウンドワーク三島が実施しています、 このインターンシップ事業は、若い人たちや高齢者の皆さんに、起業のノウハウを伝授し ようということであり、言ってみれば、自分たちで雇用の場を作ってしまおうという発想 だと思います。多くの若い人たちや高齢者の皆さんの共感も、大変、得られるのであり、 社会的なインパクト・影響力のある事業だと思います。 今は、環境や自然の大切さに人々の目が向き、また、尐子高齢化で介護、医療などが重 要視される時代の中で、そういう分野では、工夫次第で働く場は大きく広がってくるので はないでしょうか。 グラウンドワーク三島が、三島市内で実施したインターンシップ事業には、第Ⅰ期生 443 人が参加したと聞いています。この人数は、起業への関心が、かなり高いことの表れと見 ていいのではないでしょうか。その内容や参加者の反応についてお聞ききします。 ・参加者はNPOで頑張っている中高年と学生を中心とした若年層 (渡辺)今回、内閣府の地域社会雇用創造事業の一環として、インターンシップ事業が実 施され、昨年の 8 月下旬に第 1 期が終了いたしました。これは、8 月 3 日から 2 回、他に 補講を含め、全国から公募した 443 名が、参加をしていただきました。毎回、200 人以上 の人が、三島に集結して、老若男女と言いますか、いろいろな人たちが、大いに話しあい しました。 参加者 443 人の内訳を見ますと、19 歳から 24 歳までが 146 人です。年齢幅を 30 歳くら いまで広げてみますと、200 人近く、半分近くがいわゆる若年層というか、大学生を中心に した若者です。 全国的な分布では、北海道から奄美大島まで幅広く来ています。ただし今回は、静岡県 を中心に実証的に実施しましたので、県内の人達が 200 人、半分近くを占めています。ま た、参加者のカテゴリー、所属を見てみますと、NPOやボランティアの皆様が 130 人く らいで、だいたい 3 分の 1 近くを占めています。NPOやボランティアに関わっている人 たちは、やや高齢者、中高年の人たちである一方、学生が 150 人近くもいました。 2 ・参加したNPOやボランティア、学生が抱える問題点と研修で得たもの そういった人たちがこれだけたくさん来たということは、皆、何かを求めているからで あり、一体、何を求めているのかについて考えてみます。確かに、NPOやボランティア 活動に参加している人たちは、社会貢献活動ということで、福祉、医療、防犯、防災、国 際交流、環境保全等の分野において、 「きめの細かい社会的なサービスを提供しよう、社会 のひずみをなんとか埋めて安全、安心な地域を作ろう」と一生懸命に試行錯誤しながら努 力なさっていると思います。 しかし、組織や活動のマネジメントには、やはり、多くの悩みを抱えています。例えば 「人をどうやって育て確保したらいいのか、お金をどうやって調達したらいいのか、面白 い事業計画をどうやって企画したらいいのか、日々実施している活動をどうやって安定的 に持続させていったらいいのか」などです。 頑張っているんだけども、 「先が見えない、いいことをやっている自信があり、プライド もあるんだけどもうやりきれない、疲れはててしまった」という実態があります。そうい う中で今回、この研修を受け、 「何か先が見えてきたというのか、どうやって組織を強化し 拡大していったらいいのか、どうやって組織のマネジメントを強めていったらいいのか」 など、視点を変えた具体的なノウハウを研修できたという人が非常に多かったですね。 それから学生さんでは、就職先が見つからないという厳しい話しがいっぱいありました。 卒業して 1 年、あるいは 3 年経っても、まだ仕事が見つからず未就業。 「自分の行き場がな い、自分を表現する場がない」ということですが、実際に話を聞いてみると、これだけの 厳しい社会の中で、闘っていくというか、頑張って行くためのスキルや専門性、精神力を 身につけていないことに、気がつき始めているんじゃないかという感じがあるんです。 確かに面接をしても、ことごとく落とされ、それは社会が悪い、働く場がないという現 実的な厳しさではあるんでしょう。しかし、その人自身がその職を、その場でやっていき たいという強い意志のようなものを本当に持っているのか、あるいはそういう社会の厳し い現実に耐えて行けるだけの「社会的適応能力」を身につけているのか疑問に思います。 社会人としての専門性、スキルがまだ弱い。そういうものは大学で教えてもらえない、 あるいはそこまで問題意識を持っていないということだと思うんです。それでは、これだ けの厳しい雇用条件の中では、ますます闘っていけない。乗り越えていくための手段を教 えてくれる場も尐ないし、社会的適応能力を教えてくれる専門学校もありません。 大学を卒業してしまえば、相談に乗ってくれるシステムも制度もない。そういう意味で は、キャリアサポート的な範囲の中では対応しきれない、 「就職流民」みたいな若者が、ど んどん増加している。どうやって、社会的な専門性を身に付けたらいいのか迷っている若 者が、今回ここにきて、NPO・ボランティアの中で、それなりに頑張っている大人たち と、多様な交流を持つことによって、お互いの考え方のマッチングが図られたと思います。 「ああ、そうだ。こういう知識を持っていれば、社会の中で通用するんだ」と言うよう な刺激を受けたと思います。お互い同志が刺激を受けあった。そういう意味では、色んな 3 意味で迷っている人たちが集まって来て、それぞれにお互いの迷いや悩みを交換し、その ことでお互い同士が、強くなったというか、そういう場になったんじゃないかと思います。 2 参加して良かったと言う声はどうでしたか。 ・NPOの活動でお金を稼ぐ新しい活動のあり方を感じた (榛葉)参加して良かったという声はどうでしたか。 (渡辺)それはもう、大変な反響でした。毎回 200 人以上が集まりましたから、会場に行 くとものすごい熱気でした。その熱気の原因は、お互い同士で何かを学びあいたい、刺激 を受けあいたいという思いで、それが結合して巨大な熱気となり、質問も、活発でした。 こういうことが分からない、こういう悩みを持っているとか、現実的な質問が、多くの講 師に対して浴びせかけられていました。 そうした中で、私は、極端な言い方ですが、 「NPOで儲けよう」と呼びかけました。 「N POで稼ごうぜ」とも訴えました。今回は、ビジネスということが、主要なテーマにあり ました。ただ、NPO やボランティア組織の、ノウハウを勉強しようということだけではな く、どうやったら金儲けができるかという意識が求められているのです。そういう意識っ て正直言って、あまり持っている人って尐ないと思います。 そんな訳で、皆、 「えーっ!?」みたいな、びっくりして「NPOでどうやって稼ぐの?」 「どうやって儲けるの?」との意見が聞かれました。「否、そうじゃなくて」「助成金を書 いてお金を取ってくることも儲けること」だと力説しました。 「委託事業を取ってくること も儲けること」、「もっと頭を使って、自分たちの人的な資源とか、地域に埋もれている食 文化とか、それらの環境資源を、うまく開発・発掘すれば、それが商品になる」、 「そこに 付加価値を付け、マーケティングをしていけば売れて行く」と説明しました。 そうしたら、 「NPOは、そういうことだったら、活動領域というか職域を広げられ、雇 用の場を作っていける」との反応がありました。お互い同士が、新しい刺激を受けあった ことによって、何か目からうろこが落ちる的な刺激を受け、目の前が開けていくことがあ ります。 例えば、意外と多かったのは、実は何人か、参加者の中に、自殺未遂をくり返した人が いたんです。その原因は非常に厳しい話ですけど、さっきの雇用のことと同じです。会社 の中で自分の行き場がなくなって自殺未遂した、あるいは、突然リストラされて自分を見 失い自殺未遂をした、夫との関係で精神的に育児ノイローゼになって子どもを虐待したな どの人がいました。 そういう人が、何をするんですかと思ったら、「自分はいろんなきっかけで立ち直れた。 でもたくさんの人達が自殺願望を持っている」 「子どものいじめ(自分の子どもですよ)を している親もいることが逆に分かった」 「だからシェルターを作りたい。あるいはセーフテ ィネットを作りたい」という話がありました。ところが、そこをもう一歩、今回は「それ を仕事にしませんか」とやったので、 「そういうことが仕事になりえるんですか?」とすご 4 く驚いていました。 現代のこのような暗い社会の影の部分を背負い、見えない範囲で公益的な活動をするだ けではなく、それを表に出して、仕事にして、多くの人を助け、そのことによってある部 分、ペイを貰いながら社会のひずみを埋めていこうという、そういった新しい仕事のあり 方や新しい視点みたいなものを感じていただくことができたのではないかと考えています。 ・同じ思いを共有し生きる力を得た (榛葉)そうすると、そこで、新たな生きる力を得たということですね。 (渡辺)そうです。一人きりで考えていたり、一人きりで悶々とすると、なにか、答えが 委縮してしまい、解決のための糸口や出口が見えなくなっちゃうじゃないですか。ところ が、他人に思ったことを言ったら、 「ああ、自分も自殺未遂したのよ、2 回」っていうよう な話しをすると、急に皆、仲間になるわけです、 厳しい話ですけど。そうすると急に元気が出て、色んな発意が起こり、アイデアを言い あうわけです。 「私はこういうところが面白い」と考え始めます。他人は「こういうところ が足りない」と指摘する。 「それじゃあ」ということで、多様な情報交換ができる。お互い 同士の知恵を出しあい、アイデアがすごく発展・拡大・強化されていくプロセスだと思い ます。事業が具体化していく、きっかけづくりには、なっていますね。 (榛葉)その場で同じ思いを共有する、ということですね。 (渡辺)そうです。全国各地の男性、女性、若い人、お年寄りが、こんなにもたくさん、 一か所に集結して、四泊五日の間、同席する研修は、日本で初めてだと思うんです。確か に、なかなか、ここに来る時間はないかもしれませんが、全国各地から三島に来るまでの 交通費や研修費、宿泊費が、 「無料」ですし、こんな出会いのチャンスは、自分では作れな いわけだから、非常に有意義に使われたらいいんじゃないかと思います。 3 ビジネスプランには、どんなプランがあったのでしょうか。 (榛葉)443 人の修了者の中から 122 人がビジネスプランを提出して、その内 17 件が実現 性の高い事業として採択されました。どんなプランがあったのでしょうか。また、将来的 に、新たなビジネスとしての可能性や実現性はどうでしょうか。 (渡辺)最終的には、17 事業が選ばれましたが、122 の事業を全部、私なりに見てみまし た。どれも非常に面白いと思いました。公募で入った人も数人いますけど、 「グラウンドワ ーク・インターンシップ」の研修を受け、先ほどの話じゃないけど、色んな元気をもらい、 心に灯と言うか、元気の火がつきました。そして、自分の故郷に帰ってもう一度、故郷を 見たら、今まで漠然としていた地域の一種の資源が、いわゆる商品として、あるいは、商 売のネタとして、はっきりと見えてきました。 「これは色んな商売の種になるな」というこ とで、ビジネスプランとして具体化してきたと思います。 5 (1)ホースセラピーを取り入れた新しい形のエコツアーをリゾート沖縄で始める。 沖縄の鹿留間(かけどま)島という小さな島で奄美大島にある島なんです。やっぱり若 い人がいなくなってしまい、島全体がものすごく元気がなくなってしまっている…そうは 言っても、やっぱりリゾート地帯ですから、お客さんは来る。しかし、そこ本来の自然を 使った商品というのがない。そこで馬を本土から持ってきて、馬を利用した一種のホース セラピーを行う、そういう形のエコツアーというか新しいツアーを起こしていこうという 人たちが生まれて来ています。 (2)お笑いを通してお年寄りや心に傷を持つ人を元気にする会社を作る。 「お笑いの福祉士」ですけど、先ほどお話した自殺を経験なさった人たち…そういう人 達をどうやって元気にさせたらいいかと考えたとき、それはお笑いだと考えました。お年 寄りも、心に傷を持った人も、腹から笑うことによって、もう一回、人間としての元気を 取り戻すことができる、元気になるためのお笑いの仕組みを自分たちで考え、お笑い福祉 士という軍団を作って、色んな施設に、あるいは高齢者の施設に行って、笑いを通して、 心を病んだ人、お年寄りや心に傷を持った人たちを元気にしていこう、そういう市民会社 を作ろうという人たちも生まれています。 (3)豊かな心を自然の中の体験から呼びもどすエコツアーを山梨で始める。 国の関係機関でエリートコースを歩んで 10 年が経ち、人生のひとつの節目を踏まえ、 「こ のままで自分はいいんだろうか」と考えた時、自然の中で自分の 2 歳になる子どもを育て たいと、豊かな心を自然の中の体験から呼びもどしたいと、そういう考え方で、山梨県の、 昔の上九一色村、今は富士が峰というところに来て、エコファームを作り、森を再生し、 有機農業をやりながらエコツアーをやる。自然に親しみながらの体験型の旅行の企画化。 参加した人たちは、お客様として、そこに来るのではなく、生活の様式を変えていくよう な、新しい観光のプログラムを作りたいという人も出てきています。 4 ボランティアではないビジネスとしての可能性はどうですか。 (榛葉)ビジネスですから、ボランティアとは違い、そこでさっき説明させていただいた 通りに、稼ぐ、生活の糧を得なくてはなりませんが、その辺の可能性はどうですか。 (渡辺)地方がなんでこんなに元気がなくなって、閉そく感に満ちているのか。東京を見 過ぎているというのか、何か大きなことを狙いすぎているのが原因じゃないかと思います。 それよりも、もっと地元を再評価する。地元には、地域固有の特性とか、文化性とか、歴 史性とか、特異の環境がある。食文化も含め、そこの地域にしかない独特な、個性的な何 かが、資源が、未活用で寝ています。それらを十分に掘り起こしていないと思います。 ・発想の転換と異業種の人たちとのネットワークを作り地域資源を見直す 例えば、山林を見たって、日本の山林は、木を植えて、現在、50~60 年経っています。 間伐も必要ですが、用材としては、商品として、ちょうど最高の時期にあるんです。今伐 採すれば、用材として使えるんですけど、「切ってもお金にならない」と言って、そのまま 6 放置されているわけです。 戦後、植林したものが、50~60 年経って、多くが、伐期(木を伐採する時期)にきてい ます。用材としては、いい時期に来ている時に、それを資源として活用できていない。し かし、ある人たちは山林組合と協働して伐期に来ている木をどんどん切って、地元材とし て付加価値を付け、地元材専門の檜の家とかを作って、しつかりと儲けている。山林組合 も儲けている、そういう事例もいっぱい出てきています。 森ひとつを見ても、専門の人から言わせると、「宝の山」だと言っているわけです。です から、そのためには、専門性とか、ビジネス性が必要になるわけで、そういう企画が、で きる経営コンサルタントじゃないけど異業種、要するにビジネスマン、そういうマーケテ ィングのことが分かっている人たち、今までNPOとか個人が付き合えないような、そう いう人達とネットワークを作り、眠れる巨大な宝の山を有効利用していく必要があります。 間伐をして山をもとに戻しましょう―みたいなロマンチックな話だと今はもう持たない。 それらを具体的に資源に変えてゆく力と知恵が必要とされています。一見それは間伐され ていない放置された山林と見えるかもしれませんが、そういう人たちのマッチングによっ て、それらの資源が有効利用され、それらがうまく商売に乗れば、大きな利益を生み出し、 田舎に、山村に、尐しずつだと思いますが、雇用の場がつくられていくのです。 今、大事なのは「発想の転換」です。地域内とは、違う人たちとのネットワークづくり が重要です。そういう知恵をどこからか、学ばないと、地域の元気再生は困難です。地方 は閉塞しきつている。なんと、田舎には年寄ばかりが残ってしまい固定観念が強すぎて、 もう駄目だという諦めの気持ちが蔓延している。 しかし、外部らの人たちを含めて、若い人たちは、多角的な知識を身に着け、地元に帰 って来て、森を資源・商品として見る。そういう見かたをする知識や、よそで成功してい る事例を学び、もう一回、自分の森を見た時、これは「宝の山」だと、初めて思い始める じゃないかということです 株式会社トビムシのように、見捨てられた山林を再生して、儲かる地域ビジネスを創業 している社会的企業も生まれてきています。商売のターゲットは、主に山林組合です。普 通、見向きもされない 300 戸くらいの中山間地域に入って行き、その森の資源を東京など の巨大な消費地とうまく連携させ、用材に付加価値を付け、杉や檜を採算があう値段で売 って、何億という売り上げを実際にあげ成功しているわけです。 ゆえに、それだけの知識を、やはり貪欲に身につけておかないと、そういうことにはな っていかないと思います。 ・何か一つ始めて地域が元気になるきっかけを作る。 (榛葉)そういう利益を生む分野というのは、介護、医療…あと環境などですか。 (渡辺)農業もありますよね。 (榛葉)農業にも広がっているというか、転がっているということですか。 7 (渡辺)B級グルメじゃないけど、食文化の成功事例を見ても、静岡の場合、富士宮やき そばもそうですし、隣の山梨で昨年B-1 グランプリを取った甲府の鳥もつもそうです。何 十年も前から地域の当たり前の食文化として、ずっと皆が食べていたものが、突然に全国 区となり、何十億円もの経済効果を生みだすとは、誰も思っていなかった。そういう食の ことだけを考えてみても、あるいは森ということも考えてみても、杉花粉を出すだけで屁 の役にも立たないと思っていたものが、よく考えてみたら 60 年経ち、ちょうど伐採するに は、恰好の時期に来ていた。皆 30cm とか 50cm の素晴らしい用材なのです。 それを使わないということは、本当に、こんな巨大な無駄はないわけです。日本の国土 も 8 割以上は、森林でしょう。そのうちの 70%以上は、拡大造林と言って、天然林を切っ て植林を実施したわけです。それを有効利用しないことになると、今度は、逆に大変な自 然破壊になってしまう。 それ以外に、中心商店街の活性化にしたって、一つ面白いお店ができれば、それがお客 さんを引っ張って、さらに、色んなアイデアが生まれ、点と点で、何か新しい発意により、 中心商店街が元気になっていく、それが、また違う人を呼び込んで更に元気になって行く、 そういうきっかけづくりが、拡大して行くんじゃないかと思います。 5 「グラウンドワーク・インターンシップ」には大学を卒業しても就職できない人や途中 でリストラにあった人、定年前の解雇者でも、十分やっていけるという思いがあるん ですね。 ・誰にも可能性はある、でも専門性を身につける必要もある。 (榛葉)今、就職できずに卒業していけない人が大勢います。途中でリストラにあったり、 家族を養わなければいけないのに定年を前に解雇された人たち。そういう人たちに来たれ と、そういう人たちも十分やっていけると、そういう思いがあるんですね。 (渡辺)そうです。これは緊急雇用対策事業であり、まさに社会の現実に押しつぶされそ うな、実際にやや押しつぶされちゃっているかもしれないけれど、世を儚まないで、捨て たもんじゃないということで、何かもうちょっと自分を変えてみたいという人、あるいは 社会の中で自分が活動できる場を求めたいという気持ちのある人、そんな意識は、皆ある と私は思うんです。若かろうと、女性であろうと、お年寄であろうと、全く問題はありま せん。要するに、人材育成ですから、元気再生の可能性はいくらでもあるのです。 ただし、現実的な話しをすると、やっぱり組織を運営するとなると、NPO・ボランティ アと言ったって組織ですから、運営するためには、専門性が必要になります。資源があっ ても、ビジネスにするにしても、とにかく専門性が必要です。そういう意味で新しい知識 を、身につけないとやつていけません。実務的な知識は、大学では、なかなか身に付ける ことは難しいと思います。こんなことを言っては、失礼かもしれませんが、ハローワーク では教えてくれないし、職業訓練しても就職に結びつきません。コンピュータ操作を勉強 したって、ある分野の専門性は身につくかもしれませんが、活かす場所がないでしょう。 8 ・研修は三段論法で進む、迷える子羊よ、来たれ。 ア 三島の現場を体験する しかし今回は、色んな現場を見ながら、体験しながら、三島というものを見てもらいま す。三島が素晴らしいといっているのではなくて、自分の頭の中で考えたことや人から学 んだこと、それが(頭の中に入っていますが)本当に実現できるのかできないのかを、我々 のビジネスの現場を見て比較対照してもらい、しっかりと見直し、再確認してもらいたい んです。現場がないと、座学だけだと、イメージができない。そういうことで、座学と実 学を織り交ぜています。 イ 他のNPOに行き、OJT(実務研修)を体験する。 また検証という意味合いで、違うNPOに行ってもらい、NPOの組織強化のプログラ ムを実際に聴き取りします。なんでこの団体はうまくいっているのか、どんな問題がある のか、あるいは、どうしてこんなに管理運営されているのか、リーダーに話しを聞きなが ら、更に自分のビジネスプランを具現化・実現化させていく、OJTを用意しています。 ウ 地元に帰って地域資源を再確認する。 他の NPO での実務研修を終わったら、今度は、自分の故郷、現場に戻っていただき、故 郷をもう一回見直す。地域資源をもう一回、再確認しながら、どういう形で地域資源を活 かしていくのか、自分の活動の範囲の中で活かしていけるかを考えるのです。 そんな、三段論法みたいな研修になっています。 (榛葉)それが、 「グラウンドワーク・インターンシップ」の概要ですか。 (渡辺)そうです。それが、この「グラウンドワーク・インターシップ」の最大の特徴で す。そこにかかる経費は、旅費にしたって宿泊費にしたって、無料です。インターンシッ プの受入団体にも 4 万円、お払いします。堂々と他の NPO に行ってもらい、いろいろな知 恵を聞き取りして、自分の活動の参考にしてもらえばいいと思います。 (榛葉)やる気のある人には、絶好の研修になりますね。 (渡辺)そうです。なにかに迷っている人は、基本的には、参加する気持ちにならないと 思うんですけど、私は、起業を考えている人を含めて、いろいろな人々に参加してもらい たいと思います。やる気のある人は来るでしょうから、 「迷える子羊よ、来たれ」と言いた いですね。人生に迷っているのか、生き方に迷っているのか、色々あると思うんですけど、 全部、オッケーです。 ここに来てもらい、色んな体験と経歴を持った人たちと話しあうことによって、なんで 自分が迷っているのか、なんでこんな単純なことで迷っていたのかと気がつくのではない かと考えています。そういう自分の「立ち位置」みたいなものが、だんだん分かってくる ことから不安が解消されるのだと思います。 9 6 英国で始まった新しい公共の取組みが日本に定着するにはどうしたらいいでしょうか (榛葉)この「グラウンドワーク・インターシップ」事業の底流には、今の政府が導入し ようとしている「新しい公共」の考え方があります。これは厳しい財政事情のために機動 力をなかなか発揮できなくなってきた行政に代わって、公共サービスを行おうという仕組 みであり、それをNPOなどに担うってもらおうというものです。英国で始まったこの取 組みが、日本に定着するにはどうしたらいいのでしょうか。 ・自分の身は自分で守る活動を地域の仲間と起こすことが新しい公共への一歩です。 (渡辺)そうですね。やっぱり自分の身は自分で守らざるを得ないという時期に来ている との認識が大事です。自分の身というのは、自分の生活とか地域経済とか、あるいは地域 の環境とかも入っていると思います。何でも、自分でやるしかないんです。 しかし、一人でやるには限界がある、一人で行政に頼らないでできますかと言うと、な かなか急にはできません。やっぱりそう思っている仲間と一緒にやる。最低、二、三人と やればいいのです。それと、地域でやることです。地域で生きていますから、地域でやる と一番疲れない。地域を元気にしないと、日本も元気にはなりません。 そう言う意味合いでは、出会いというか、うまくやっている人たちや組織になるべく近 づいて、友達になって、そういう人たちから刺激を受け、苦労話やうまくいっている話を 盗ませていただく。そして早く、新しい組織を作って、具体的なことを始めていく。公益 的な活動でもいいし、社会的企業としての活動でもいいのです。 今後、ますます、行政からはお金が出てきませんから、自立していくには自分たちでお 金を稼ぐ。そして活動を持続させて行くためには、ビジネスプランやアクションプランを 作る。それを作れないと組織や活動を発展させていけないと思うんです。 そういう意味合いでは、今回の研修を受け、そのノウハウを蓄積すれば、自分が乗っか る車というか、土台、ボードが、まずは、整備されると思うんです。その上でいろいろな 挑戦をしていってもらいたい。これらが有機的に結合されてくると小さな仕事が創出され ます。 まず自分一人が、雇用されればいいわけです。自分が食べていければ、その延長線上で 成功すれば、次の人が雇用できます。そういう形で、一人から雇用が拡大していく。こう したことが、環境や福祉、国際交流など、多様な分野に広がっていった時に、真の、地域 主権と言うか、市民主権として支えていく自立のための「社会システム」が生まれてきま す。これらが生まれてきたら、これこそが、 「新しい公共」だと思うんです。 ・イギリスではサッチャー、ブレアの時代に地域の人々の活動を国が支え、そして、今や NPO、ボランティアの中間労働市場では 700 万人が働いている―それが今回の事業で目 指す社会システムです。 その点、日本においては、国がこれらの NPO や社会的企業の活動に対して、補助金を 5 10 割や 6 割出すという制度設計が出てきていない。新しい公共という言葉だけであって、国 が、具体的に、NPO や社会的企業の役割とか力とか、そういうものを評価して、国の税金 を投入して、行政のパートナーとして尊重し、支えるという社会システム、行政システム、 生活システムが、日本にはないんです。 ところがイギリスにおける新しい公共とは、サッチャー時代、ブレア時代を含めて、こ の 25 年間、ひたすら、それを社会的に評価して、 「中間労働市場」という形で、そこに膨 大な補助金を投入してきた、歴史の積み重ねです。この 25 年で 30 万団体もNPOが増え、 自立し、そして今は、その延長線上で、5 年程前から、社会的企業という企業でもない、行 政でもない、NPOでもない、もう一つの社会的企業というのが生まれている。 普通、企業は、利益を株主に分配する責任を担っています。その点、社会的企業は、も ちろん株主に分配するわけですが、その何パーセントかを、社会にサービスとして還元す る責任も担っています。 「何なの? これNPOなの? なんかよくわからない」というような企業が、ものす ごい勢いで生まれています。そこに、国の資金が流れている。お金を貸している。担保し ている。それから利子を補給して、補助金まで出しているという会社が、イギリスには 5 万 5 千社。そこで働いている人が 70 万人もいるわけです。 NPO全体で言えば、もう 700 万人が、女性や若者や高齢者も、NPO、ボランティア の世界で、 「中間労働市場」ということで働いているわけです。これがイギリスの新しい公 共の、私がイメージし、今回の事業で目指している社会システムのあり方です。 11 ・社会の新しい中間労働市場としてのNPOの役割と可能性を今回の事業を通して訴えて ゆく、セーフティネットの形成に繋がってゆく。 しかし、日本では、NPO に対する税制の優遇程度の視点で考えており、社会のサービス を、今後どうやって持続させていつたらよいのかという社会システムの話になっていない。 そして、地域住民や市民が、あまりNPOのことを知らず、評価も低い。ここが、これか らの大きな課題でもあります。今回のこの事業で、2400 名が、三島や他の NPO、さらに、 自己研さんを含めて 29 日間、勉強する。 そして、そのうち 100 人が自立し、起業化していく。社会的企業化です。そして実績を つくり、雇用を生みだしていく。尐なくとも最低 100 人の雇用が生まれれば私はいいと思 っています。1 企業 2 人なら 200 人、10 人雇っていれば 1000 人の雇用が生まれる。それ がもっと大きくなっていけば、何万人もの雇用になるわけです。 ですから、社会の新しい「中間労働市場」としてのNPOの役割と可能性を、今回のこ の事業を通して社会に訴えていかないと、日本には雇用の場がなくなってしまう、永遠に なくなる、どんどんなくなります。 そのために、雇用の場を自分たちで作ってゆく。求められるサービスは、もういっぱい ある。お年寄りは増えてくるし、行政は金を出せなくなるし、在宅介護にしたって維持が 難しくなります。そういう意味合いでは、このシステムは、商売としても、可能性が高い。 これは日本が乱れて行くというか、不幸になって行く裏返しなんです。しかし、このシス テムがきちっとできれば、この不幸は自らの努力によって、ビジネスプランが生まれます。 必ずしも、イギリスがいいとは言いませんが、しかし、行政が尐し小さくなって、行政 がやっていた分のお金が、「中間労働市場」、NPOに流れて来て、そこに新しい雇用が生 まれ始め、起業化していけば。NPOだって基本的には事業者ですから、そういう市民会 社が創業されれば、 「人間重視の社会」ができます。 (榛葉)新たな人間的なセーフティネットに繋がっていくのですね。 (渡辺)そうです。日本の高齢者対策や環境対策や精神的な意味も含めた防犯対策、全て の必要とされている社会的サービスの、新たなセーフティネットになると思うんです。包 括的なセーフティネットになりえます。その一つのモデルというか、実証実験というか、 それを今やっているんじゃないかと思います。だから是非、参加していただきたいんです。 7 第Ⅱ期と第Ⅲ期が始まりますが、研修は実際、どんなことをされるんですか。 ・三島で4泊5日の集合研修、ビジネス性を持つ現場モデルを見たり、NPOのマネジ メントやイギリスの状況について話を聞いたり、夜は町に出て語り合い元気をもらう。 (榛葉)これから、第Ⅱ期と第Ⅲ期が、始まりますが。 (渡辺)2 月 7 日からは、いよいよ第Ⅱ期が始まります。200 人ずつ、4 回、800 人募集し ます。また、第Ⅲ期は、1200 人募集するんですが、私はとしては、まず第Ⅱ期に是非とも、 多くの方々に来ていただきたいと思います。 12 グラウンドワーク三島の現場に来てもらい、現場の匂いというか、それらを実感してい ただきたい。夜は、一杯飲みに行けば、一緒にやっているボランティアの人たちとも交流 できます。 実は一番、評判が良かったのは、この「飲み会」でした。グループを作り、毎夜、違う 人たちで街に出て、飲み会を繰り返していました。私も一夜に 3、4 箇所も回って、男芸者 のように、いろいろとお話をさせてもらいました。 ちょっと言い方が変ですが、自殺未遂してリストカットした跡が残る人とも、お酒を飲 みながら青春を語るというか、人生を語るというか…“一体、この集まりは何なんだ”と 思う位です。人から元気を貰うのが、一番元気になれるのではないかと思います。そうい う場が、また作れると思いますから、是非、第Ⅱ期にも、多くの方々に来ていただきたい と思います。 (榛葉)研修は実際、どのようなことをされるんですか。 (渡辺)まず、集合研修として、三島に、4 泊 5 日で来てもらいます。まず、最初にやって もらうことは、グラウンドワーク三島の現場モデルを見ながら、体験してもらいます。 (榛葉)例えば、源兵衛川とか、そば畑とか、松毛川とかですか。 (渡辺)そうです。そういうところに行ってもらって、実際に運営している人たちと話を してもらう。そこにはビジネス性もある。源兵衛川ではエコツアーをやっているし、耕作 放棄地ではそばや小麦を作り、そばは「三島そば」として売っています。 また、長く空き店舗だった場所を「三島街中カフェ」にして、中心商店街の活性化に役 に立っている。耕作放棄地や空き店舗を活用することによって、また、ゴミが放置されて いた源兵衛川を綺麗にすることによって、今では、1 日に何百人もの人が来て、それなりに 利益を生みだしているわけです。 現在、グラウンドワーク三島の多様な活動は、環境再生が、地域再生に、そして、農業 再生、さらに、「コミュニティ・ビジネス」へと広がっています。それらの現場に出向き、 店の管理運営をしている人やエコツアーのインストラクターの皆さんと実際に話をしても らう、聴き取り調査みたいなものですね、そういうことをやっています。 次は、「座学」です。私がNPOの組織運営について話をします。「NPOとは何か、N POのマネジメントについてです。人をどうやって教育して育てるのか、どうやって金を ふんだくって来るのか、助成金の書類をどうやって書いたらいいのか、行政とどう付き合 ったらいいのか、それから企業にどうやって寄付を貰いに行ったらいいのか、その他プレ ゼンテーションの仕方」など、非常に具体的な話をします。テキストも無料となっており、 内容も濃いものです。私が、全体としてはき、延べ 5 時間くらい喋ります。 あとは、イギリスの話です。先ほどの社会的企業も含め、イギリスの社会事情が、どう なっているのか、イギリスから英国グラウンドワーク連合体のトラストの所長であるロビ ン・ヘンショウ氏などに来てもらい、イギリスの今日的話題を話してもらいます。 13 ・ビジネスプランを持ち寄り、2 日間にわたってケーススタディを行う。 それから、そのプロセスを通じながら、各人のビジネスプランを作って持ってきて貰っ ているんです。個々のNPOの組織や活動の強化を含めて、活動をビジネスとして見た時 にどのような可能性があるのか、可能性があることを前提にプランを作ってもらいます。 そして、そのプランについて、グループ分けして、経営コンサルタントや中小企業診断 士とかが、入って 2 日間にわたってケーススタディをやります。 「自分はこういうことをし たい」 「こうやってお金を出して、こう利益を出したい」ということを 10 人のグループで 発表するわけです。 「何を言っているんだ」、 「そんな甘いことができるか」、「そんなことできるはずがない だろう」、「じゃあ、どうしたらいいんだ」 、「こういうことしたらどうだ」、「こういうこと と、こういうことに気をつけなさい」と指摘を受けます。お互い同士が言いあい、互いに 批判し合うわけです。それを 2 日間やるわけです。これがものすごい、面白いと言うか、 精神的にも知識的にも、ボロボロにされるわけです。 8 更に広がりを持たせる議論―参加者のリアクションで記憶に残っているものは (榛葉)実際に参加された方のリアクションで、ご記憶に残っているものはなんですか。 ・無人駅のレストラン―トイレが綺麗じゃないと客は来ない (渡辺)例えば、無人駅にレストランを作る話です。そしたら面白いじゃないですか。 「J Rに言ったら、全部ただで貸せる」と。 「可能性がものすごく高い」と言うんです。そした ら別の人が「何を言っているんだ」と。 「便所が汚い。便所を綺麗にしなければ、いくら美 味しい料理が食べられるレストランを作ったって、お客は来ないよ」と。こうやられちゃ うわけです。 「じゃあ、便所はどうしたらいいんですか」と聞くと、 「それはバイオトイレだ」と。 「バ イオトイレはいくらするんですか」と。 「500 万円だ」と。「お店が 100 万円しかなくて、 バイオトイレが 500 万円でどうするの」と言うような話になっていくわけです。 「それじゃ あ、携帯用のバイオトイレを用意する」みたいな。そういう色んなアイデアを話して貰い ます。 ・いじめを受けた子どもや自殺者のシェルターの持続性をどう担保するのか。 それから先ほど言った子どものいじめ。 「自分の子どもを殺しそうになったが、はっと気 がついて止めた」と。そして今は「子どものシェルターを作りたい」と。今、インターネ ットで 300 人の悩んでいるお母さんたちとのネットワークを持っていて、これはどんどん 増えるけど「一銭にもならない。 どうしたらいいのか。要望はものすごく来る。でもこっちが大変なばかりで、もうめい っぱいやっているのに、持続性が担保されない。どうしたらビジネスとして、お金を生み 出す仕組みを作ることができるんですか」と。 14 それからさっきのリストカットの話しですけど、それもやはり「自殺者防止のシェルタ ーを作りたい。セーフティネットを作りたい」と。僕もその場にいたんですけど「どうや ってクライアントを集めるのか」と聞いたら、 「自殺願望の人は一発で分かる」と。道を歩 いていると「ああ、この人は、自殺願望だと分かるんです」 。元消防士で、駅で立っている と、 「この人は自殺願望がある、あの人もそう」と、わかるといいます。 9 地域の特性を活かした形でのアドバイスするグラウンドワークの機能は財産になるわ けです。 ・今まで総合的に相談に乗ってくれるところがなかった。 (渡辺)そうです。自殺願望の人はそんなにいないけど、「そうは言ったって、これはこう いう風にしたらいい」とか、 「やっぱりまずカウンセリング。専門家を入れて、専門家と連 携しながらやらなけりゃ駄目だ」とか、 「ちゃんとマニュアル化して、プライバシーを守れ る仕組みを作らなきゃいけない」とか、だから「カウンセリングの専門家とか弁護士を入 れコンプライアンスをちゃんとしないといけない。ただ“いらっしゃい”というだけでは 危険が高い」とか。細かい話だけどお金は出すらしいんです。困っているから。 カウンセリングしてくれるから。自分が出すんじゃないです。親が出したり周辺の人が お金を出す。お金が稼げるんです。場所もあるんです。でもシステムがない。そういう話 しになっていくんです。今までにこんなこと、どこに行ったら相談できますか。 (榛葉)難しいですよね。 (渡辺)現実的には、なかなか相談に行く場はないと思います。総合的に相談に乗ってく れるところがありません。 ある女性の方ですが、NPOをやっている人がいて、「なんでやるんですか」と聞いたら 突然、泣き出しちゃって。 「私はずっと相談しようかと思っていました」と。でもいきなり 僕に聞かれたので(今までの辛いことを思い出したらしく)泣きだした。昔からある大き な材木屋さんなんですが、経営がうまくいかなくなってお父さんが自殺し、その後を弟が 引き継いだんですが、弟も自殺して、後を継ぐ人がもういない、自分しかいない。家も全 部、売ってしまおうと思ったんだけど、やっぱりお父さんの意思や弟の意思を継ぎたいと、 彼女が引き継いだんです。 しかし、材木では食えないから、地域の色んな産品、お茶の加工したものなどを扱うお 店を出してやっているんです。それが尐しずつ成功し始め、それをもっと広げたい。そし て、地域を元気にさせたい。そういう人もいました。今まで、経営コンサルタントとか、 色んな人に相談しに行ったけど、コンサルタントは経営のことしか教えてくれない。 「どこのNPOとネットワークを組んだらいいですか」と聞くと「そんなの自分で調べ なさい」ということになっちゃう。だから私は、地域の人たちを紹介しました。そしたら、 この間、電話がかかって来て、 「ジャンボさん、ありがとうございました。その人たちと連 携して、お互いの商品を交換し、また尐し面白いことになりそうです」と言うんです。何 15 というか、点が線になるというか、広がる可能性もあるんです。 しかし、その経験からは、こういうことについて、地域単位というか、地域の特性を活 かした形でアドバイスする機能が、社会のどこにもないというのが分かったんです。だか ら、今回やっていることは、巨大な「相談コーナー」ですね。 ・中間支援するグラウンドワークが間に入り、顔と顔をくっつけるとものごとが進む。 (渡辺)皆ある程度、努力なさっている、経営的な能力もある。でも何と言うか、結びつ きがあまりできていません。 (榛葉)しかし、県には、専門の何とか振興室とかがあるんじゃないんですか。 (渡辺)ちょっと相談しに行ってみてください。現実的な能力が実感できますから。 (榛葉)そういう役目を充分に果たしていないわけですか。 (渡辺)そう、難しいと思います。私が、県の NPO 推進室長を担当していた時の話ですが、 県内のあっちこっちの NPO に行ってネットワークを作っていましたから、どんな相談が来 ても、円滑に紹介できるような体制を作っていたわけです。今だって、そういうネットワ ークがあると思いますが、地域の特性を活かした形でのアドバイスは、県だけでは、なか なか難しいと思います。 (記者)NPO のリストはあるのですか。 (渡辺)リストはあります。しかし、やはり顔と顔をくっつけてやらないと、的確な指導 や助言は難しいですね。中間支援型のグラウンドワーク的な NPO が間に入って、こっちの 人をあっちへ繋いでいければうまく行きます。急に、ものごとが、進みますよ。 (榛葉)NPO もピンからキリみたいなものがあって、なかには問題を抱えた人たちが、NPO を名乗っているものもある。そうすると、いきなり「やりませんか」と言っても、やっぱ り警戒されちゃうわけです。やっぱりそこに、渡辺豊博さんみたいな方がいて「こういう 人がこういうように言っているんだけど、相談に乗ってやってよ」と、接着剤の役目を果 たしてゆかないと、現実的にはうまくいきませんね。 ・インターンシップに参加した人たちのネットワークの機能はグラウンドワークの財産に なる、そして、それが企業になる可能性がある。 (渡辺)そうです。だから今回、4 泊 5 日で三島に来てもらい、全員が同じイメージを体験 するわけです。今回、地域社会雇用創造事業で採択されたのは、11 団体ありますが、同じ 内容という仕組みを工夫しているのは、私たちだけではないかと考えています。 三島に来て見ると、統一した研修内容で対応しているから、ここでは 2400 人の巨大なネ ットワークができるわけです。コンピュータ上でも、参加者によるボードを作ろうとして います。今、400 数十人ですけど、これが 2 千何百人になったら、膨大な情報が入ってきま す。「困った」と言えば、 「じゃあ、こっちに成功した人がいる」と、紹介できるじゃない ですか。これは数が増えれば増えるほど、この仕組みは面白くなる。それがグラウンドワ 16 ークの機能、特性です。 (榛葉)財産になるわけですね。 (渡辺)ものすごい財産になるわけです。うちは、それを起業化しようと思っています。 北海道の人と沖縄の人が一緒に飲んで、沖縄の人が「飛行機で北海道の雪を送ってくれな いか」と北海道の人に言う。北海道の人が雪を送り奄美大島で雪まつりをやれば、雪の中 でパイナップルが食えるわけです。こんな話しは、今までのNPOには全く考えつかなか ったわけです。でも、NPOの人が、この研修に参加し、交流ネットワークを駆使すれば、 各段に営業、活動範囲は拡大するわけです。 10 まとめ (榛葉)今回、多様な側面から、 「グラウンドワーク・インターンシップ事業」について、 お話を聞くことができました。本研修が、ここ静岡県を情報発信基地として全国に普及・ 拡大されていくことは、 「NPO 先進県」を目指す本県にとっても、有意義な事業であると 評価するとともに、県内を含めて、行政や企業、大学などの積極的な支援を期待するもの です。 また、静岡県や各市町村の職員や民間企業でも新規採用予定者と職員、さらには、定年 を控える中高年者などの積極的な参加も必要とされていると思います。目標の 2400 人の研 修生が集まるよう、今後とも、頑張ってください。 (渡辺)今後とも、本研修の意義・意味を多くの人々に、より広く啓発しながら、参加者 の確保を強化していきます。全国各地の皆様、この機会をとらえて、地域や普段の生活圏、 人生の迷いや苦しみなどから脱却して、富士山の裾野「水の都・三島」に集結してくださ い。 日常性からの一時の乖離により、多様な出会いと新たな知識の習得、感動的な人たちと の心の交流が生まれます。三島でお会いできることを期待しております。本日は、榛葉さ んとの対談の機会を持つことができ、感謝申し上げます。 ありがとうございました。 17
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