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「蕗の薹(ふきのとう)」神奈川県 城山一郎
目 次
随 想 食中毒事故から学ぶもの…………………………… <穴沢義博>…
解 説 シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第36回)
乳酸菌の育種と分類……………………………… <鈴木チセ>…
解 説 シリーズ解説:食品産業における環境対策(第9回)
ビールメーカーにおける環境負荷低減対策の現状と課題
…………………………………………………… <宮林秀充>…
食の遠近画法 発掘…………………………………………… <五明紀春>…
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海外技術・マーケット情報
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持続可能で健康的な栄養源:米ぬか ……………………………………
最近の製品リコールと異物混入 …………………………………………
企業の節水取り組み ………………………………………………………
2010年に向けた7つの変化予測 …………………………………………
食品産業におけるRFID技術と応用 … ……………………………………
古代食品素材の再発見(1)…………………………………………………
異なる光バリアー特性を持つカップに包装された
サワークリームの光酸化の評価……………………………………
水分活性と食品における熱力学……………………………………………
新しい食品システムを創出するナノスケール科学………………………
冷媒の天然素材化への動き…………………………………………………
PACKAIGNG NEWS……………………………………………
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特別解説:パンが膨らむごはんのパワー ………………………<奥西智哉>…
業界トピックス:昨年の低アルコール飲料市場の動向……………………………
技術コーナー:ピロー包装容器のヒートシール部検査装置 <伊集院太一>…
業界の話題 ……………………………………………………………………………
今月の統計 ……………………………………………………………………………
技術用語解説:ラジカル消去能 …………………………………………………
最近の技術雑誌から …………………………………………………………………
野菜・果物を巡って(第十五話) 雛祭りには菜の花とうど
… ……………………………………………<吉田企世子>…
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FOOD
&
PACKAGING
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
随 想
して使用するように指導しています。
魚は切り身で発注して,2次汚染のリスクを少
食中毒事故から
学ぶもの
なくしています(調理作業員にパートが多くなり,
魚介類を処理できる人がほとんどいないこともあ
ります)。近年は減少しています。
穴 沢 義 博
黄色ブドウ球菌は増殖中にエンテロトキシンと
いう毒素を産生するため,その毒素により発症す
(㈱天柳 衛生管理室 室長)
ることが知られています。近年に発生したX乳業
日本における最近の食中毒事故として,カンピ
による1万人を超える中毒事件が有名です。
ロバクターとノロウイルスが発生件数の半分以上
HACCP(ハセップ)対応の最新設備を導入し
を占めています。そこで食中毒から学ぶことにつ
たにもかかわらず事故を起こした原因は,この菌
いて感想をまとめてみました。
によって生産された毒素でした。しかし,真の原
第1表は厚生労働省が発表している食中毒情報
因は作業員教育に問題があったと私はみています。
です。医師から保健所に届け出があった件数を集
経過は停電により温度管理ができなくなり,牛
計した表です。当初は原因菌(物質)を確定する
乳の温度が上昇し,菌の増殖を招いてしまった結
手法が確立していないことと,感染症に係わる法
果でした。さらに,その時点で,製品の廃棄をし
制の変更,新たな追加や集計方法の変更などがあ
ないで製造を続けてしまったミスも重なりました。
り,数値を単純に比較することに無理があります
HACCPでは温度管理を厳格に定め,異常が発
が傾向を見ることができます。
生した場合に,その製品をどのように処理するか
昭和50年頃までは原因菌が特定できない事例が
を決めることを手順書に定めることが求められます。
多かった中,腸炎ビブリオ(昔は病原性好塩菌と
従業員教育では,冷蔵,加熱温度に関して基準
言っていました),サルモネラ,黄色ブドウ球菌,
を定め,確認と記録をとっています。さらに,異
ふぐやキノコによる自然毒中毒が多くを占めてい
常が発生した場合の対応方法(責任者に報告,本
ました。
社を含めた人間で対応を決定)を定めています。
腸炎ビブリオについては,近海の海底の泥に潜
夏場になると,給食業務を受託している施設に
んでいることが知られています。そのため,近海
出向き,衛生点検と拭き取り検査を実施していま
の魚が汚染されることになります。
す。
食品衛生法では,カキなど生食用生鮮魚介類等
黄色ブドウ球菌も検査対象として行うと,10〜
について,製品1gあたり腸炎ビブリオ最確数
15%の施設で(+)の結果が出ます。手の傷や鼻
100以下等の成分規格が適用されているとおり,
腔内に存在しているものと考えられています。手
近海の魚介類は汚染されているのです。
洗いの徹底,手指に傷がある人の調理業務の従事
この菌は真水や熱に弱いのですが,増殖が速く,
を禁止,手袋やマスクの着用の徹底を行わせる動
適切な温度管理(5℃以下ではほとんど増殖しな
機づけを,この検査を通して行っています。
い)をしないと事故をまねくことになります。こ
食中毒の年間傾向として,冬場のウイルス,夏
の菌を100万以上摂取すると発症すると言われてい
場の細菌と言えます。そのため従業員教育は年2
ます。とくに魚介類の生ものは細心の注意が必要
回各施設を巡回して実施しますが,最近苦労して
です。また,取り扱った調理器具や手も汚染され
いるのが,ノロウイルス対策です。3年前にこの
るので消毒することと,魚介類専用の器具を指定
食中毒の疑いにて,3日間の営業停止処分を受け
食品と容器
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2010 VOL. 51 NO. 3
ました。新聞報道される事態にもなってしまう事
業です。感染症は「感染源」
「感染経路」
「感受性」
が発生した経験があります。後日判明したことは,
の3要素が成立すると発症します。
調理従業員からの検便では無検出,原因はパーテ
ノロウイルスと言えばカキと連想することが多
ィーの開催中に参加者の一人がその場で吐いたた
いです。カキは冬場に向かって産卵に備え食欲が
め,吐しゃ物による感染が広がり,一度に多くの
亢進し,餌であるプランクトンをとるために海水
人が発症したものでした。その当時はウイルスの
を大量に取り込み,濾し取るときに微量に含まれ
確定検査に時間がかかったことと,一度に大量発
るウイルスを中腸腺に蓄積していきます。それを
症したため早急な判断を求められた結果,やむを
人間が食べることにより発症するからなのです。
得ない処置と思っていますが,新聞報道されると
また,人間の腸で増殖することを考えれば,カキ
会社運営に致命的な打撃をうけることがあります。
は感染源より感染経路と言えることもできます。
今では,食中毒の判定と発表は慎重に行われるよ
冬場のカキは美味しいものですが,集団給食施
うになっています。ノロウイルスは100個程度の
設では生の二枚貝使用を禁止,従業員にも食用禁
少ない量でも摂取すると感染が成立するのが特徴
止令が出て寂しい思いをしています。最近では消
です。感染については飲食物を介して発症する食
毒薬の改良や感受性に関する研究も進んでいます。
中毒タイプと埃や吐しゃ物を介して発症する感染
このような努力により,私たちの対応がよい方向
症タイプがあります。現在は感染症タイプの事件
に向かうことを願っています。
が多く発生しているのが現状です。高齢者の場合,
年次 昭和
60 年
50 年
物質別
事件 事件
数
数
総 数
1,783 1,177
細 菌( 総 数 ) 1,059 877
サルモネラ属菌
73
82
ブドウ球菌
275 163
ボツリヌス菌
1
1
腸炎ビブリオ
667 519
病原大腸菌
22
34
腸管出血性大腸菌
その他の病原大腸菌
ウエルシュ菌
9
セレウス菌
17
エルシニア・エンテロコリチカ
0
カンピロバクター・ジェジュニ / コリ
50
ナグビブリオ
1
コレラ菌
赤痢菌
チフス菌
パラチフスA菌
その他細菌
21
1
ノロウイルス
その他のウイルス
化 学 物 質
7
3
自 然 毒(総 数)
130 102
植物性自然毒
79
70
動物性自然毒
51
32
そ の 他
不 明
587 195
急激な水分喪失による脱水,吐しゃ物の誤嚥によ
る肺炎,気管支に詰まらせる窒息の危険性が高い
ため心配していましたが,幸い死亡事故の発生は
ありませんでした。
症状は2日程度の潜伏期間をへて急激な下痢と
嘔吐が続き数日で症状が消えます(症状が消えて
も便にはウイルスがでています)。発熱は38℃程
度の微熱です。中には症状がでない,風邪のよう
な症状で治まる人もいます。発症率は幼児や高齢
者は高い(60%程度)傾向にあります。
外部で感染した人が施設内で発症したため,徐
々に蔓延することを数多く経験しています。
この場合,食中毒ではないので食事を作りなが
ら対応を迫られます。最初に発症した人の吐しゃ
物や便の処理が悪いと3〜4週間も続くことにな
ります。食事に係わる者の対応として,ウイルス
による調理室の汚染防止のため,すべての食器・
器具・残飯を消毒する必要があります(具体的に
は次亜塩素酸ナトリウム1000ppm溶液に15〜30分
浸漬)。現場の作業員に大きな負担を強いること
になりますが,安全性の確保をする上で重要な作
食品と容器
第1表 年次別病因物質別食中毒発生状況
143
平成
19 年 20 年
10 年
事件 事件 事件
数
数
数
3,010 1,289 1,369
2,620 732 778
757 126
99
85
70
58
1
1
0
839
42
17
285
36
29
16
25
17
269
11
12
39
27
34
20
8
21
1
0
0
553 416 509
1
1
1
0
3
0
3
0
0
0
0
39
5
4
123 344 303
0
4
1
14
10
27
147 113 152
114
74
91
33
39
61
1
8
17
105
78
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シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第36回)
○解説○
乳酸菌の育種と分類
す ず き ・ ち せ
東京大学大学院農学部農
芸化学科修士課程修了。
農林水産省入省,食品総
合研究所配属。カリフォ
ルニア大学ロサンゼルス
校留学。2002年度日本農
芸化学会奨励賞受賞。 2004年,
(独)農研機構・
畜産草地研究所に異動し,
現在に至る。
博士(農学)
鈴 木 チ セ
内には一人当たり100種類以上,100兆個以上(10
○ は じ め に ○
の12乗個)の細菌が住んでいる。腸内における細
乳酸菌は我々にとって非常に身近な微生物であ
菌同士の相互作用,あるいは菌と腸管の相互作用
る。自家製の漬け物,天然酵母,自家製味噌など
についてその重要性が認識されるようになり,乳
には自然に混入した乳酸菌が含まれる。ヨーグル
酸菌が持つ保健効果に期待が集まっている。整腸
ト,チーズなどの発酵乳製品,漬け物,味噌,ワ
作用だけでなく免疫賦活,アレルギーや高血圧予
イン醸造には安定した品質が得られる市販のスタ
防等,さまざまな効果が動物実験やヒト試験によ
ーターを用いていることが多い。乳酸菌が用いら
って明らかにされつつある。
れる目的は生産する乳酸などによって腐敗を防ぐ
第1図に乳酸菌の概略図を示した。乳酸菌ゲノ
ことの他,発酵によって得られる酸味,香味成分
ム(保有する遺伝子全体を指す名称)は染色体と
が好まれてきたからに他ならない。またヒトの腸
多くの場合複数のプラスミド(染色体とは別に自
そ
律的に複製する環状DNA)によっ
て構成される。伝統的な発酵食品の
多くは無菌操作によらない継代によ
ってその性質(を持つ菌株)を保持
しており,その安定性の要因は例え
ばプラスミド上にコードされる抗菌
物質(バクテリオシン;後述)の産
生能やファージ(細菌のウイルス)
耐性能であるかもしれない。あるい
はさまざまな生育環境に適応して獲
得した遺伝子を保有しているからか
もしれない。乳酸菌は数多くのトラ
第1図 乳酸菌とそのゲノム構造
食品と容器
144
2010 VOL. 51 NO. 3
乳酸菌の育種と分類
ンスポゾン(ゲノム上を転移する塩基配列)を有
酸を生成するというカテゴリーでくくられる一群
しており,それらの転移によってもその形質は変
の細菌である。乳酸菌は約20属二百数十種以上に
化する。またプラスミドの伝達や脱落によって,
分類されているが,上記の乳酸菌の定義の境界に
あるいは他の菌種からの遺伝子の水平伝搬(ある
属するような菌も発見されていて,厳密な仕分け
微生物が他種の微生物に遺伝子を伝達するプロセ
は難しいところである。細菌においては種間によ
ス)などによって新たな形質を獲得する。従って,
るサイズの差異が少ない16SリボソームDNA(以
同じ種に属するからといって同一の性質を持つと
下16SrDNA)配列を指標とする分類が採用され
は限らない。むしろ菌株による差異が大きいこと
て い る。 分 離 菌 株 の16SrDNAの 配 列 を 決 定 し
を特徴としている。
DD-BJのウェブサイトからホモロジー検索を行え
畜産草地研究所では長年にわたって乳業用乳酸
ばある程度(16SrDNAの配列だけでは決まらな
菌の研究を行っている。本稿では畜産草地研究所
い種もある)菌種の同定が可能である。
における最近の研究を例に,乳酸菌の育種と分類
畜産草地研究所の乳酸菌ライブラリーについて
(同定)について概説する。
は,重複を避けておよそ10株毎に約300株の16Sr
DNAの塩基配列を解析した結果,保存乳酸菌株
○1.乳酸菌を収集する○
は約40数菌種にわたっていた。16SrDNA配列で
筆者が所属する畜産草地研究所の乳酸菌研究は
同定できない種についてはrpoA(RNA polyme-
前身である畜産試験場発足(1916年)と同時に始
rase, α-subunit) お よ びpheS(phenylalanine
まっており,我が国における乳酸菌の分布調査や
tRNA synthetase,α-subunit )の部分配列のホ
培養法,スターター調製などの研究が行われた。
モ ロ ジ ー 検 索 に よ り 同 定 を 行 っ て い る。 ま た
1950年代に乳加工用優良菌株の検索を目的として
Lactobacillus curvatusとLactobacillus sakei6),
牛乳,乳製品,各種スターターから乳酸菌が分離
Lactobacillus plantarum, Lactobacillus paraplantarum
1−3)
,
超低温槽のない時代から研究室に
およびLactobacillus pentosus7) に関しては既報
引き継がれてきた。これらの菌株の多くは長年に
に従い種特異的PCRによって識別を行っている。
わたり試験研究や実際の発酵乳製品製造に使われ
乳業上重要なLactococcus lactisはその微生物学的
てきた。現在は農業生物資源ジーンバンクに移管
性状の違いからL. lactis subsp. lactisとL. lactis
されており,試験研究用に分譲・配布されている。
subsp. cremorisの 二 亜 種 に 分 類 さ れ る。野 村
また畜産草地研究所では1999年から2001年にか
らはL.lactisの二亜種を分別する表現形質の一つ
けて日本全国から乳製品,漬け物,サイレージ等
であるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)に着目し,
約200サンプルを収集し,約2,400株の乳酸菌を収
塩基配列を解析してL. lactisに特異的なPCRプラ
集した。この乳酸菌ライブラリーについては現在,
イマーを設計した。さらにsubsp. cremorisのGAD
菌株の同定,特性解明を進めている(後述)。
遺伝子ではフレームシフト変異によって制限酵素
・同定され
AseIの認識サイトが消失しているため,PCR産物
○2.乳酸菌を同定する○
の大きさとAseIサイトの有無によって正確かつ
かん
乳酸菌は,1)グラム陽性桿 菌または球菌,
簡便に亜種レベルまで同定する方法を開発し,
2,400
2)カタラーゼ陰性,3)胞子を作らない,4)
株のライブラリーからL.lactis菌株を選抜して特性
運動性がない,5)ブドウ糖から50%の効率で乳
解析を行った4,5)。
食品と容器
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シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
は34個のアミノ酸からなるペプチドである。Ba-
○3.良い菌株を選抜する○
cillus属とClostridium属を含むグラム陽性菌に対
乳酸菌の育種は目的に沿った良い菌株を選抜し
して効果がある保存料であり,様々な食品の細菌
てくるところから始まる。ヤクルトに使われてい
による腐敗を防ぐ。ナイシンAは欧米で保存料と
るLactobacillus caseiシ ロ タ 株 は 代 田 稔 博 士 が
しての添加が認可されていたが,2009年から我が
1930年 に 分 離 し た も の で あ る し,Lactobacillus
国においても「保存料又は合成保存料の項」に例
helveticusや酵母を含むカルピスのスターターは
示する添加物としてナイシンAが食品添加物に加
三島海雲氏がモンゴル酸乳からヒントを得て考案
わった。畑らは,タイのタケノコ漬け物から食中
8)
し1919年に発売したものである 。
プロバイオティ
毒菌であるリステリア菌やセレウス菌に抗菌作用
ク ス と し て 最 も 研 究 さ れ て い るLactobacillus
を持つバクテリオシン生産菌を分離した。この菌
rhamnosus GGは1987年に腸内環境に対する耐
の培養液はモデル実験としてカスタードクリーム
9)
性菌として分離されたものである 。
に添加したセレウス菌の増殖を防ぐことができ
木元らは畜産草地研究所保有のLactococcus属
た12)。抗菌スペクトルが広く,また至適pH域も
乳酸菌を用いてコレステロール付着能を調べ,特
広いバクテリオシン生産菌の探索により,新たな
にコレステロール付着能が優れているN7株を見
微生物制御の可能性が期待できる。
10)
出した 。またL. lactis H61株に関して,老化
○5.プラスミドを操作する○
促進モデルマウスへの経口投与によって老化の指
標となる症状が緩和されることを明らかにした11)。
遺伝子組換え技術による乳酸菌の作出は,技術
H61株は分離当初から風味の良い菌株として試験
的に可能ではあるが,外来遺伝子を含む生菌の食
研究に使われていたが,実施許諾契約により茨城
品利用には至っていない。同種の遺伝子の導入に
県内の民間企業が製品化し,地域の活性化に寄与
よって,優良形質を移入する例として,L. lactis
している。
へのファージ耐性の導入があげられる。チーズな
どの製造現場でのリスクファクターとなるファー
○4.バクテリオシン産生菌を
選抜する○
ジに関して,Lactococcus属のファージ耐性遺伝
子はプラスミド上にあるため,接合によるプラス
乳酸菌の制菌作用はその乳酸産生とバクテリオ
ミド伝達(場合によってはエレクトロポレーショ
シン産生によるところが大きく,従来バクテリオ
ン)によりファージ耐性のL. lactisが作出されて
シン生産乳酸菌は乳製品等のスターターカルチャ
いる。
ーあるいは培養上清を用いた発酵調味液として使
発酵乳製品のスターターとして汎用されている
用されてきた。バクテリオシンはアミノ酸数十か
Lactococcus属乳酸菌の場合,通常複数のプラス
らなるペプチドであり,修飾,制御,輸送および
ミドを保有しており,発酵特性を支配している遺
耐性にかかわる遺伝子がオペロンを構成している
伝子群をプラスミド上にコードしている場合が多
ことが多い。近縁種でも異なるバクテリオシンオ
い。従って特定のプラスミドを除去することによ
ペロンを保有することがあり,これらの遺伝子が
り,親株とは発酵特性の異なる菌株を得ることが
水平伝播によって獲得されたことが推測される。
でき,そのようなプラスミド変異株を発酵製品の
L. lactisが産生するバクテリオシン,ナイシン
製造に使うことによって,発酵産物の味や風味を
ぱ
食品と容器
146
はん
2010 VOL. 51 NO. 3
乳酸菌の育種と分類
変えることができ
る。プラスミド変
第1表 ゲノムプロジェクトが完了した乳酸菌(文献14)Supplementary Table 1
を改変。(ビフィズス菌,病原菌は含めない)
Species
Strains(アンダーラインは日本ヒト常在細菌叢メタ
ゲノムコンソーシアム HMGJ の成果)
Enterococcus faecalis
V583
Lactobacillus acidophilus
NCFM
ドキュアリング
Lactobacillus brevis
ATCC367
法が一般的であ
Lactobacillus casei
ATCC334, BL23
Lactobacillus delbrueckii subsp.
bulgaricus
ATCC11842, ATCC BAA-365
Lactobacillus fermentum
IFO3956
ミドだけでなく
Lactobacillus gasseri
ATCC33323
ゲノム遺伝子に
Lactobacillus helveticus
DPC4571
Lactobacillus johnsonii
NCC533, FI9785
Lactobacillus plantarum
WCFS1=NCIMB8826
Lactobacillus rhamnosus
ATCC53103, GG(=ATCC53103), Lc705
Lactobacillus reuteri
JCM 1112, DSM 20016
Lactobacillus sakei
23K
与する産業上重
Lactococcus garvieae
Lg2
要な形質を落と
Lactococcus lactis subsp. cremoris
MG1363, SK11, KF147, KF282
Lactococcus lactis subsp. lactis
IL1403
Leuconostoc citreum
KM20
い。そのため,小
Leuconostoc mesenteroides subsp.
mesenteroides
ATCC8293
林らは「同じ複製
Oenococcus oeni
PSU-1=ATCC BAA311
Pediococcus pentosaceus
ATCC25745
Streptococcus thermophilus
CNRZ1066, LMD-9, LMG18311
Symbiobacterium thermophilum
IAM14863
異 株 の 作 成 に は,
変異原物質を使
用するプラスミ
る。しかし,変異
原物質は,プラス
も作用して欠質
や変異を導入す
るため,菌の生育
や,発酵性能に関
さずに改変する
ことはむずかし
起点を持つ2種
類のプラスミド
が,宿主内に共存
できない性質(プ
ラスミドの不和合性)」を利用して目的のプラス
である。
13)
ミドを選択的に除去する方法を開発した 。例え
○6.ゲノム解析から分かる
進化の過程○
ば,除去したい乳酸菌プラスミドpLABの複製起
点および複製開始因子と薬剤耐性遺伝子を組み込
んだプラスミドpJOKYO作成し,これを親株に
2009年の論文によると14),248の乳酸菌ゲノムプ
導入して薬剤存在下で継代培養すると,不和合性
ロジェクト(ビフィズス菌を含む)が進行中で,
によってpLABは脱落する。次に pLABが脱落
約50プロジェクトが完了している(第1表)。この
した菌を薬剤非存在下で継代培養することにより
原稿が掲載される頃にはさらに増えていることが
pJOKYOが自然に脱落した菌株を選抜する。得
予想される。乳酸菌ゲノムの比較解析によって,
られた菌株は親株からpLABが除去された菌株で
比較的栄養が豊富な環境で生育する乳酸菌がどの
あり,外来遺伝子を含まないので産業利用が可能
ように適応して進化してきたかが明らかになって
食品と容器
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2010 VOL. 51 NO. 3
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
きた。乳酸菌共通の祖先は桿菌共通の祖先から
平伝播が重要な役割を果たしたことも明らかであ
600〜1,200の遺伝子を失い,100以下の遺伝子を
る。一方,植物から分離されたL. lactisでは,
獲得した結果,少なくとも2,100〜2,200 遺伝子を
乳業で用いられているL. lactisでは報告されな
15)
有していたと考えられる 。乳は糖源としてのラ
かった多数の遺伝子を有していた。またキシラン
クトースとアミノ酸源としてのカゼインおよびビ
やアラビナンなど植物由来ポリマーの分解系遺伝
タミンやミネラルが豊富な富栄養な環境である。
子のセットや植物細胞壁の構成糖の変換や取り込
乳中での生育を選択したLactobacillus delbruec-
みにかかわる遺伝子セットを有していることから,
kii subsp. bulgaricusにおいては遺伝子の欠失
植物細胞壁から得られる基質に生育適応したこと
と不活性化および代謝の単純化が進化の中心的な
が示された
16)
17)
。
働きであったと推定される 。
乳中で生育するため
人類はその存在を確認する以前から乳酸菌を巧
の選択圧によって,菌はアミノ酸の生合成におい
妙に利用してきた。最近ではプロバイオティクス
ては,アミノ酸を最初から合成するための遺伝子
として積極的にその保健効果を利用しようとする
を欠失あるいは不活性化させ,代わりに複雑なタ
動きが高まっている。また生菌のみならず死菌の
ンパク質分解酵素系でカゼインを分解することに
効果も報告され,病気予防や病後の回復,あるい
よってアミノ酸を得るようになった。これらの乳
は美肌効果など,その利用の範囲は今後さらに広
に適応した進化に異種の微生物からの遺伝子の水
がることが期待される。
参 考 文 献
1)小沢康郎, 農業技術研究所報告, G5, 23(1953)
9)S.L. Gorbach, et al., Lancet, 2, 1519(1987)
2)小沢康郎, 農業技術研究所報告, G5, 33(1953)
10)H. Kimoto, et al., J. Dairy Sci., 85, 3182(2002)
3)小沢康郎・矢野信礼, 農業技術研究所報告, G5, 41
11) H. Kimoto-Nira, et al., Br. J. Nutr., 98, 1178
(1953)
(2007)
4)M. Nomura, et al., J. Appl. Microbiol., 101, 396
12)T. Hata, et al., J. Food Prot., 72, 524(2009)
(2006)
13)M. Kobayashi, et al., Biosci. Biotechnol. Biochem.,
5)M. Nomura, et al., Appl. Environ. Microbiol., 68,
71, 2647(2007)
2209(2002)
14)P. Horvath, et al., Int. J. Food. Microbiol., 131,
6)S. Torriani, et al., Appl. Environ. Microbiol., 67,
62(2009)
3450(2001)
15)K. Makarova, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.,
7)F. Berthier and S.D. Ehrlich, Int. J. Syst. Bacte-
103, 15611(2006)
riol., 49, 997(1999)
16)M. van de Guchte, et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
8)山本道之, 乳酸菌飲料, 発酵乳の科学-乳酸菌の機能
U. S. A., 103, 9274(2006)
と保険効果, 細野明義編.アイ・ケーコーポレーショ
17)R.J. Siezen, et al., Appl. Environ. Microbiol., 74,
ン:川崎市. p. 60(2002)
食品と容器
424(2008)
148
2010 VOL. 51 NO. 3
シリーズ解説:食品産業における環境対策(第9回)
□解説□
ビールメーカーにおける
環境負荷低減対策の現状と課題
みやばやし・ひでみつ
早稲田大学理工学
部工業経営学科を
卒 業。 キ リ ン ビ ー
ル株式会社に入社。
包装専士を修得。
現在,CSR推進部
酒類品質保証センタ
ー(CSR:Corporate
Social Responsibility)
宮 林 秀 充
る第1号として,
『エコ・ファーストの約束』を環
□1.はじめに□
境省と交わし,地球環境の保全活動に一層強化し
キリンビールは,『お客様本位・品質本位』を
て取り組んでいます。
原点に,品質を追求した商品をお客様に提供する
そこで,本テーマでは,当社の環境負荷の低減
と共に,自然の恵みを糧にして事業を営む企業と
対策として,容器包装の3Rの推進活動をご紹介
して,持続可能な社会の実現にむけて,環境方針
致します。
を定めて次の地球環境の保全活動を環境目標とし
□2.ビール容器の現状□
て取り組んでいます。
(1)低炭素社会にむけて
(1)ビール容器の種類と用途
地球温暖化を防ぐために,生産や物流で発生す
当社が提供しているビール系アルコール飲料の
るCO2排出量の削減,省エネルギーの推進,環
主な容器には,缶,ガラスびん,樽の3種類があ
境負荷を低減する新エネルギーの導入など。
ります(写真1)。缶は家庭での需要が多く,樽は
(2)循環型社会にむけて
料飲店での需要が多く,ガラスびんは家庭と料飲
限りある資源を有効利用するために,容器包装
店の両方に需要があります。
の3R(リデュース:発生抑制,リユース:再使
缶と一部のガラスびんは,ワンウェイ容器とし
用,リサイクル:再生利用)の推進,廃棄物の削
て飲用後にリサイクル原料として再利用されます。
減など。
多くのガラスびんと樽は,リターナブル容器とし
(3)自然共生社会にむけて
て飲用後に当社のビール工場に回収され,洗浄さ
人と自然が共生する社会のために,水の再利用
れ,検査で合格した容器が製品として再利用され
化,水質保全の推進など。
ています。
また,キリンビールは,環境省が環境先進企業
(2)ビール容器の構成比率
による環境保全活動をさらに推進していくために
当社は1907年に創立しましたが,その前身であ
創設した『エコ・ファースト制度』の製造業におけ
るジャパン・ブルワリー・カンパニーが,三菱の
食品と容器
たる
149
2010 VOL. 51 NO. 3
シリーズ解説:食品産業における環境対策
2010年2月10日
(写真1) ビール容器の種類
写真1 ビール容器の種類
□3.缶の環境負荷の低減対策□
ぶた
(1)缶蓋と缶胴の軽量化
缶ビールが,ブリキ缶からアルミ缶に替わった
ふた
37年前の缶は『209径缶』と呼ぶ,蓋 の直径が69.8
mmの缶でした。重量は,蓋が5.3g,胴体が15.2
gありました。その後,蓋の直径を小口径化し,
また胴体を薄肉化し,軽量化を繰り返してアルミ
の使用量を削減してきました(写真2)。
第1図 容器別の販売実績
荘田平五郎の発案で霊獣『麒麟』をラベルに採用
現在,当社は『204径缶』と呼ぶ,蓋の直径が
して,1888年(明治21年)5月に『キリンビール』
62.25mmの缶を採用しています。重量は蓋が3.1
を発売したという記録があります。このように,
g,胴体が12.1gで,『209径缶』と比べて約26%
家庭用のビールが販売され始めた当時のビール容
も軽量化されました。この結果,年間約2.6万ト
器はガラスびんでした。
ンのアルミ材料の省資源化を達成することができ
その後,1960年にブリキ缶ビールが登場し,
ました。
1973年にプルタブ付のアルミ缶ビールが登場しま
また,『204径缶』にしたことで,アルミ缶地金
した。缶製品の需要は増加の一途をたどり,今日
の製造工程において,東京都が全家庭で消費する
では,家庭で飲用されるビール容器のほとんどが
電力の約3.8日分に相当するエネルギーを節約す
缶になりました。
ることができました。
当社の2008年度販売実績より容器別の構成比を
さらには,昨今まで『206径缶』を使用してきた
見ると,缶が76.8%,樽が13%,ガラスびんが
他社ビールメーカーが,当社が先行使用した『204
図 1 容器別の販売実績
(写真2) 缶蓋の直径の変遷
(図2) アルミ缶の重さの推移
10.2%です(第1図)。ガラスびんの製品は,家庭
径缶』を採用した際に,業界内での規格共通化に
だけでなく料飲店でも利用されますので,家庭で
よるCO2排出量の低減を推進するため,導入の
は缶の製品が圧倒的に多く飲用されていることが
ための技術サポートを実施しました。
分かります。
(2)ラミネート缶
そこで,はじめに缶について環境負荷の低減対
缶ビールのアルミ缶の多くは,缶の胴体と底部
策をご紹介します。
が一体となっている『DI(Drawing and Ironing)
缶』が用いられています。DI缶の胴体は,アル
ミコイルから円盤形に打ち抜かれたアルミ板をカ
(写真3) アルミ缶リサイクル協会ホームページ <アルミ缶を知ろう>アルミ缶の出来るまで
より引用
食品と容器
150
2010 VOL. 51 NO. 3
図 1 容器別の販売実績
ビールメーカーにおける環境負荷低減対策の現状と課題
209径缶
206径缶
204径缶
㩷㩷
写真2 缶蓋の直径の変遷
(写真2) 缶蓋の直径の変遷
(図2) アルミ缶の重さの推移
第2図 アルミ缶の重さの推移
写真3 アルミ缶リサイクル協会ホームページ <アルミ缶を知ろう>アルミ缶の出来るまで より引用
ップ形状に絞り(Drawing),胴体の形状にしご
き(Ironing)
,引き延ばして成形されます。この
(写真3) アルミ缶リサイクル協会ホームページ
<アルミ缶を知ろう>アルミ缶の出来るまで
より引用
成形工程では,アルミ板を金型で絞り,しごくた
めに,潤滑剤が用いられます。そのため,成形工
程の後は,潤滑剤を除去するために薬剤で洗浄し,
その薬剤を除去するために水洗いします。その後,
胴体の金属表面にコーティングして,デザインの
写真4 『キリン クラシックラガー』(左)と
『淡麗グリーンラベル』(右)
印刷をして,胴体が出来上がります。(写真3)
ところで,アルミ缶の材料となるアルミ板の表
面にあらかじめフィルムをラミネートすると,成
缶に採用し,環境負荷の低減に努めています(写
形工程での潤滑剤の使用が不要となり,成形工程
真4)。
後の洗浄も不要となります。また,金属表面はラ
(3)6缶パック
ミネートで保護されているためにコーティングも
スーパーマーケットなどの店頭では,缶ビール
不要となります。そのため,洗浄やコーティング
を6缶1パックにして販売されることが多くなり
で使用するエネルギーの消費に伴うCO2発生量
ました(写真5)。1パックに包装する包材として,
が削減されます。
シュリンクフィルムが使用されていたことがあり
『ラミネート缶』はこのような方法で製造した
ましたが,現在は板紙が主流です。
アルミ缶で,当社では,『キリン クラシックラガ
この板紙の原料には,間伐材から得られたパル
ー』,『淡麗グリーンラベル』等の350㎖,500㎖
プが使用されていますが,さらに使用量を減らす
食品と容器
151
2010 VOL. 51 NO. 3
シリーズ解説:食品産業における環境対策
の四角形でしたが,当社は,段ボールカートンの
四隅の角を面取りして八角形にした『コーナーカ
ットカートン』を開発し,ビール系アルコール飲
料 や チ ュ ー ハ イ な ど の250㎖・350㎖・500㎖ の
全商品に導入しています(写真6)。
この四隅の角を面取りしたことで,段ボール原
紙の使用量が約2%削減され,環境負荷を低減す
ることができました。さらに,積載した時の垂直
荷重強度が強くなり,パレットに積載された状態
から取り出す時に取り出しやすくなり,
手に持って
㩷㩷
運搬する時は四隅が角張っていないので持ちやす
写真5 6缶パック
く,コーナーカットした部分の印字により識別性
が向上するなど,お客様にとっての使いやすさも
向上しました。
(5)リサイクル推進活動
アルミ地金を製造するエネルギーは,ボーキサ
イトを原料として全く新しく製造する場合と比べ,
アルミ缶をリサイクルして原料とする場合はたっ
た3%で済みます。
現在,アルミ缶は約93%がリサイクルされ,そ
写真6 従来の四角形カートン(左上)と当社が開発
したコーナーカットカートン(右下)
の63%はアルミ缶の原料として再利用されていま
ために6缶の製品を保持する強度を保ちながら,
当社は,
『キリン一番搾り生ビール』,『キリンの
板紙の厚みを薄くしたり,また使用面積を少なく
どごし<生>』,『キリン円熟』等のアルミ缶には,
したりするなどの改良を加えて,環境負荷の低減
回収したアルミ缶の再生比率が高いアルミ地金を
に努めています。
用いた缶を採用しています。
さらに,
最初の1缶を取り出しやすくするように
また,当社は,アルミ缶リサイクル協会に加入
板紙の天面の一部を切り欠いて,缶の蓋に指をか
するとともに,アルミ缶の回収会社の新菱アルミ
ける部分を設けたり,ミシン目を開封した後の切
テクノ株式会社に回収袋などの支援を行い,リサ
断部の尖った角で手を傷めないようにミシン目の
イクルを推進しています。
す。
とが
向きを変更したり,ミシン目の切断部に丸みを設
□4.びんの環境負荷低減対策□
けるなど,お客様の声を反映した改良も加えてい
ます。
(4)コーナーカットカートン
(1)びんのリサイクル(再使用と再生利用)
当社は,当社専用のリターナブルびんを使用し
こん
缶ビールは,段ボールカートンに梱包されて出
ています。市場から回収されたリターナブルびん
荷されます。従来の段ボールカートンは,直方体
は,ビール工場へ戻ると,洗壜機で洗浄し,空壜
食品と容器
びん
152
2010 VOL. 51 NO. 3
ビールメーカーにおける環境負荷低減対策の現状と課題
検査機で汚れやキズ,ヒビがないか厳重にチェッ
して再生利用されます(写真8)。
クし,合格したびんに再びビールを詰めて,製品
(2)ビールびんの軽量化
として再使用されています。
『ビール用軽量リターナブル大びん』は,ガラ
ビールのリターナブルびんの回収率はほぼ100%
スの肉厚を薄くすると共に,独自技術により外表
で,丁寧に扱われたリターナブルびんの平均寿命
面にセラミックスコーティングを施して,強度を
は約8年,回数にすると約24回再使用されます。
強くしたビールびんです(写真9)。重量1本あた
一方,小さなキズや細かなヒビが入ったびん,
り,従来の605gから475gとなり,130g(21%)
古くなってリターナブルびんとして使用できなく
軽量化を実現しました。これにより,1ケース
なったびん,一度だけ使用されるワンウェイびん
(20本入り)あたり約2.6kg軽くなりました。
は,粉砕されて『カレット』(写真7)となり,ガ
ビールびんは再使用できるリターナブルびんで
ラスびんの原料として再生利用されます。カレッ
あり,元来,環境負荷の少ない容器として注目さ
トの利用率は高く(第3図,第4図),ガラスびん
メーカーの工場でけい砂,ソーダ灰,石灰石など
の原料と共に溶解され,再びリターナブルびんな
写真7 カレット
どに生まれ変わります。
ガラスびんの原料として再生利用し難い色ガラ
スのカレットは,タイル,ブロックなどの建築材
料や道路舗装材などの『その他の用途』の原料と
㧔౮⌀㧣㧕ࠞ࡟࠶࠻ 㧔౮⌀㧤㧕ߘߩઁߩ↪ㅜ
(図3)ガラスびん生産量とカレット利用率の推移
第3図 ガラスびん生産量とカレット利用率の推移
25万トン
(23%)
12万トン
(12%)
84万トン
(77%)
88万トン
(88%)
(図4)カレットの用途
第4図 カレットの用途
写真8 その他の用途
食品と容器
153
2010 VOL. 51 NO. 3
ガラスびん生産量とカレット利用率の推移
(図4)カレットの用途
シリーズ解説:食品産業における環境対策
を実現しました。
製造工場から販売店まで10℃以下の低温管理を
行っているチルドビールは,飲用後の空びんがビ
ール工場まで返却されることが見込めないため,
従来びん
(左)
と軽量びん
(右)
の全体と断面図
ワンウェイびんが使用されます。当社は,軽量ワ
ンウェイびんを開発し,同容量のリターナブル小
びんが351gであるのに対して,170gまで軽量化
を達成しました。
軽量びんは,びんの資源や製造にかかわるエネ
ルギーを節約し,エネルギー消費に伴うCO2排
(写真9) 従来びん(左)と軽量びん(右)
写真9 従来びん(左)と軽量びん(右)
出量を抑制すると共に,
物流に伴い発生するCO2
排出量の削減にも役立っています。
□5.他の容器の環境負荷低減対策□
(1)紙容器
『ピュアブルー』,『麒麟本格焼酎タルチョ』な
どの紙パック製品について,表面を覆うシュリン
クフィルムが飲用時にゴミとなるため廃止しまし
㧔౮⌀㧝㧜㧕ࡇࡘࠕࡉ࡞࡯㧔Ꮐ㧕ߣ㣼㤅ᧄᩰ὾㈪࠲࡞࠴࡚㧔ฝ㧕
た(写真10)。フィルムを廃止した紙パック製品
写真10 ピュアブルー(左)と麒麟本格焼酎タルチョ
(右) ざん
には,いたずら防止のため,改竄防止機能付きの
(写真10)ピュアブルー(左)と麒麟本格焼酎タルチョ(右)
キャップを使用しています。
(2)薄膜コーティングボトル
容器リサイクル法のもと,リターナブルびん以
写真11 ピュアブルー
700㎖
外の茶色,緑色,および無色透明の白色ガラスび
んは,ガラス製品の原料としてリサイクルされて
いますが,それ以外の色ガラスは,色調整が困難
なためにガラス製品には用いられず,建築材料や
道路舗装材料などに使用されます。
そこで無色透明のガラスびんの表面に,有機系
㧔౮⌀㧝㧝㧕ࡇࡘࠕࡉ࡞࡯㧣㧜㧜㨙㨘
れています。
『ビール用軽量リターナブル大びん』
着色剤で超薄膜コーティングして着色したガラス
は,原料や製造,輸送に伴うエネルギーがさらに
びんを『麒麟麦焼酎ピュアブルー700㎖』に採用
節約できるため,CO2排出量の削減(▲15%)
しています(写真11)。この技術で着色したガラ
に貢献しています。当社は,1993年に導入開始し,
スびんは再資源としてリサイクルすると,無色透
2003年6月に100%切替えました。
明ガラスに復元できます。
また,リターナブル小びんについても同様に,
ただし,本製品のように着色したガラスびんと,
従来の小びん(390g)より10%軽量化し,351g
元々の色びんとの区別が付き難いため,自治体な
食品と容器
154
2010 VOL. 51 NO. 3
ビールメーカーにおける環境負荷低減対策の現状と課題
どが回収する際は色びんとして回収されています。
で,4社合計で年間約5万枚の未回収パレットの
しかし,ガラスびんメーカーや当社の製造工場で
回収促進を図りました。これは4社が毎年新たに
回収した本製品の着色びんは,ガラスびんメーカ
投入するパレット枚数の13%にあたり,年間で約
ーで無色透明のカレットとして再生利用していま
1,600tのCO2排出量の削減になります。
す。
□6.今後の課題□
(3)ビール4社共通パレット
キリンビールは,国内ビールメーカー3社(ア
容器の製造から使用・輸送・廃棄・リサイクル
サヒビール,サッポロビール,サントリー)およ
に至るすべての工程で環境負荷は発生します。当
びビール酒造組合とともに,環境負荷の低減に向
社では,商品の品質の保護と安全性を確保した上
けて,2008年12月より,ビール工場などから商品
で,より環境負荷の少ない容器の開発に努めてい
を出荷する際に使用する『パレット』の回収促進
ます。そして,持続可能な循環型社会の構築に向
の取り組みを開始しました。
けて,3Rを推進しています。
パレットは,得意先への商品配送後に回収し,
当社は,「省資源」をテーマに,地球温暖化防止
繰り返し使用するものですが,流通過程における
に向けたCO2排出量の削減や容器包装の3R,
滞留や紛失,および流通外への流出などが発生し
用水削減など,環境経営先進企業としての活動を
ます。しかし,商品出荷に必要な新たなパレット
強化し,2012年までの目標として国内におけるキ
を追加投入すると,パレット製造に伴うCO2排
リングループの製造・物流・オフィスのCO2排
出量の増加に繋がります。
出量を1990年比で60%削減することを目標に掲げ
そこで,物流パレットの回収促進業務を共同で
ています。
つな
取り組み,パレットの適正な使用を推進すること
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水 の 話
水は地球上のすべての物質と深い関わりをもち,生物の生命活動や人間の生活,文化,産業に重要な役割を演じ
ています。本誌ではこの水の科学的知見から応用までをあらゆる角度から取り上げ,専門の方々に解説していただ
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《内容》
水の科学〔1〕水と生命の誕生と進化/〔2〕水の不思議:水と水溶液/〔3〕水の新たな利用法(機能水)とそ
の評価 水と食品〔1〕食品中の水の状態/〔2〕食品加工と水/〔3〕微生物と水/〔4〕調理と水の関わり/
〔5〕お茶類と水 水と生活・文化〔1〕日本人と水利用,健全な水循環を目指して/〔2〕水道水の安全性とおい
しさ/〔3〕容器入り飲用水の国際規格:食文化と商売の観点から(1)
(2)/〔4〕おいしい水とまずい水(水質
・成分との関係)/〔5〕水道水とミネラルウオーターはどう違う?
−その境界をめぐって− 水と産業〔1〕清
涼飲料と水/〔2〕醸造と水/〔3〕水の新しい利用:精密洗浄用機能水と超臨界水/〔4〕海洋深層水/〔5〕紫
外線殺菌装置の現況 水と健康〔1〕体液とそのはたらき/〔2〕体液の代謝調節とその異常/〔3〕スポーツと
水/〔4〕肌と水
缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
食品と容器
155
2010 VOL. 51 NO. 3
食の遠近画法
○
塙保己一(1746-1821)。江戸期の全盲の国学
発 掘
ご
者。かねて筆者は,わが国が生んだ大学者でこの
みょう
とし
方に比肩する人はあるまい,と思っている。三重
はる
五 明 紀 春
苦のヘレンケラーが敬慕してやまなかったという
(女子栄養大学教授)
話も有名である。
シュリーマン(独,1822-1890)が,ギリシャ
その瀟洒な記念館(埼玉県児玉町)を訪ねたこ
神話の都市トロイアを発掘したことは誰でも知っ
とがある。「目開きでもなかなか。しかし,塙先
ている(『古代への情熱 シュリーマン自伝』
生がもし目開きだったら俗事に紛れて『群書類
(岩波文庫))。貧しい牧師の子から身を起こし,
従』はなかったでしょうなあ」の館長の説明に妙
築いた巨万の富を遺跡発掘事業に投じて,考古学
に納得しながら,ショウケースにずらりと並んだ
に革命をもたらした立志伝中の人物であることも
和綴じ本にあらためて筆者は息を呑んだ。
お馴染みである。
七百年に渡る歴代文書を分類整理集大成,目録
その自伝を貫く雄大なロマンチズムは,多分に
1巻を加えて全666巻。捗猟,発掘した文献は数
粉飾されているものであるとの批評は,シュリー
千巻に上るという。研究者には必須文献,いわば
マンの偉業を決して損なうものでなく,世間によ
歴史文書のデータベースである。「狂気の大仕
くある毀誉褒貶の類にすぎない,と筆者は思いた
事」と筆者の目には映った。読んでもらっては片
い。何よりホメーロス叙事詩を子供の頃読んだ感
端から頭に入れてしまう巨大な記憶容量のスーパ
動を,生涯抱き続けたことだけは間違いないであ
ーコンピューターというほかない。
ろうから。その純粋な感動を現実のものとするた
塙保己一の生家に程近い墓にも参った。狭い墓
めに,辛苦して築き上げた全財産を傾ける情熱は,
域の隅に二抱えもある樫の大木が聳え,すぐ傍に
残念ながら筆者にはかなり遠い話である。が故に,
牛舎があり,辺りは鼻をつまみたくなるほどの臭
シュリーマンの「古代への情熱」は,われわれを
いが立ち込めていた。『和学院殿心眼智光大居
惹きつけて止まないのである。
士』とあって,ふと石塔の背後を見ると,小さな
その情熱は,シュリーマンを,単に「掘る」だ
自然石が慎ましく佇んでいるのが目に入った。ま
けでなく,古代史の勉強に駆り立てたことも有名
るで塙保己一を見守るかのようなその碑には『雨
である。あらゆる文献を丸暗記する勉強法で,ド
富検校』の風化した文字が浮かび上がった。
イツ語のほか,英,仏,蘭,西,伊,ギリシア,
館長の朗々とした声が蘇った。「雨富検校なか
ラテン,露,アラビア,トルコなど十数カ国語に
りせば,学聖塙保己一,世になかったでありまし
精通したと言われる。この異常なまでの学習は
ょう。按摩鍼灸すべて駄目。まるで才能なし。こ
「人が情熱を持って事に当たる」ことがいかなる
れじゃ困る。何しろ盲目ですからな。哀れな若者
結果をもたらすかをよく示しているように思われ
は前途に絶望。入水自殺を図ろうと。だが,心眼
る。衒学趣味の到底及ぶところではない。古代都
神の如し。盲目の師は盲目の弟子の比類なき資質
市トロイアの実在を信じて疑わない,というシュ
を見抜いた。迷うことなく当代一の学者の門を叩
リーマンにあって可能だったと言えるだろう。
かせた。これぞ国学者賀茂真淵先生。ご存知です
このシュリーマンが,幕末の日本を訪れていた
わな」
ことも驚きである。(『シュリーマン旅行記 清
館長が小さな声で付け加えた。「当節,学校の
国・日本』講談社学術文庫)当時の日本の文化・
先生たち,生徒のどこを見とるんですかなあ。目
風俗を「発掘」,賞賛している。
は開いてるようだが」
食品と容器
156
2010 VOL. 51 NO. 3
○
○
発見と発掘は似て非なるところがある。発掘に
しかし,発掘が真の発見に至るには,それにま
とって,発見は必要条件であるが,十分条件では
とわりついている泥や埃を払い落としたり,拭っ
ない。泥と汗と血が染み込んだ発見が発掘である。
たりしなければならない。発掘した遺跡や遺品は
発見は「気づき」だけで為されることもあるが,
専門家の手により入念に手入れされ,そのあるべ
発掘対象は常に「地層」の下に埋もれている。そ
き姿に復元されて初めて価値ある発見として登録
の「地層」を掘り起こすことによって初めて対象
される。あるいは本来の輝きを放つ。
は姿を現わす。発掘には発見にはない特有のコス
このことは埋蔵文化財にかぎらない。人材の発
トがかかる,と言っても良いであろう。
掘においては特に顕著である。発掘された人材は
日常的に,人は至る所で発掘作業にいそしんで
磨き上げられなければならない。あたかも原石を
いるようにも見える。生きるということは,ある
磨いて宝石にして本来の輝きを放たしめるに似て
いは不断の発掘作業なのかもしれない。
いる。あらゆる分野でスカウトと称する目利きが
昨今の学生たちの就活も発掘作業以外の何もの
全国あるいは世界を飛び回っている。スカウトの
でもない。泥まみれ,血まみれとは言わなくとも
腕次第で弱小チームが一夜で強豪チームに変身す
少なくとも汗まみれで,生涯を託すに足る仕事を
ることは珍しくない。しかしスカウトの本領は原
発掘しているのである。採用側も事情は同じであ
石の発掘にあり,すでに宝石として輝いている人
る。人材発掘のために企業の人事担当者はキャン
材を引き抜くことではない。
パスに相談ブースを並べるのである。
S氏は食品スカウトである。地方に眠ったまま
土地勘のない厚い地層の下に眠っている将来の
の無名の食品を掘り出してこれに磨きをかけて中
仕事,将来の人材との遭遇は,インターネット検
央表舞台に紹介,販路を確保する仕事である。命
索などではとても及ばない重労働といえる。求人
名し包装し商標を登録するだけでなく,その食品
・求職ともにトロイアの遺跡を求めてツルハシを
に必要な改良を加えることも指導する。花嫁の父
振るうのと本質的に同じである。その作業が水泡
親よろしく一切合財支度を整えるのである。当然,
に帰すかどうかは別にして,古代都市を夢見るシ
その目はわが娘を見る如く厳しくかつ愛情に溢れ
ュリーマンの視線と双方異なるところはない。
ている。
しばしば滑稽な悲劇をもたらす婚活も,発掘作
田舎に潜む花嫁候補を求めて目の回る忙しさだ。
業の最たるものであろう。そのリスクは就活より
日本列島には無数の花嫁候補たちが人目に触れる
はるかに高いようにも見える。時に血まみれの惨
こともなくあたら婚期を逸している,とS氏の目
劇が人々を震撼させることも珍しくない。まさに
に映る。居ても立ってもいられない熱い思いが,
「未知との遭遇」である。こんな危ない橋を,イ
S氏を駆り立てる日が続く。放っておけばそれら
ンターネットで手軽に渡ろうとする人たちが後を
の花嫁候補食品は立ち枯れて厚い地層の下に埋も
絶たないから不思議である。
れ忘れられていってしまうからだ。作り方も食べ
泥をかぶり,汗と涙を流す覚悟なしに,良き伴
方も知っている者はいなくなってしまう。いくら
侶を得ることは難しい。男性から見た女性,女性
目利きのS氏でもこうなったらお手上げである。
から見た男性は,それぞれに分厚い地層に覆われ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ているから,一朝一夕,代償なしにゴールに達す
S氏は株式会社鈴乃家(埼玉県)社長鈴木俊雄氏。同社
ると考える方が了見違いである。「百年の不作」
と筆者の大学は
「食を通じた地域興し」
で産学連携を結ん
の確率は低くはない。従い,未婚男女の急増とい
でいる。
う仕儀となっているのであろう。
食品と容器
157
2010 VOL. 51 NO. 3
持続可能で健康的な栄養源:米ぬか
The world of Food Ingredients(Neth.)41(’09・9)
文献 №5524
世界金融危機は食品業界にも大きな影を落とし,
において低コストでより価値の高いものを作るこ
食品の研究・開発は岐路に立たされている。この
とが求められている。
空前の経済状況により,世界の食品産業は需要の
米ぬかの活用
激減に直面して過剰な在庫を抱える結果となり,
ほんの数年前まで,コメの副産物,すなわち米
一時は前途洋々とみられた植物由来の燃料油(エ
ぬかは廃棄物と考えるのが普通であったが,これ
タノール)製造プラントもわずか数カ月の間に多
を安定化させる新技術が登場し,米ぬかの再利用
くが操業を停止してしまった。
が大きく増えている。全粒米から取り出した米ぬ
栄養の不足はいまや貧しい途上国の域を越えて,
かを安定化させるという技術で,栄養飲料,シリ
先進国にまで拡がりつつある。国連食糧農業機関
アル,サプリメント,食肉加工品等,その用途は
の推計では2009年1月以来,米国人の10人に1人,
多岐にわたる。
約3,200万人が食料支援を受けており,2000年に
非遺伝子組み換えの米から取り出した「ぬか」
比べ実に1,700万人の増加となっているという。
はまったく加工助剤を使わず,わずかにハチミツ
正確なところは分からないが,10億人の人々が
様の香りと味がするため香料としても利用可能で
飢えに苦しんでいる一方で,同じく10億人の人々
ある。安定化した米ぬかから得られる主な成分と
が肥満という問題を抱えるという異常な状況が生
してはタンパク質,脂質,繊維質があるが,精米
まれている。
時に発生するリパーゼ酵素の作用で使用に適さな
食品業界でも,エクステンダーと呼ばれる大豆
くなるため2007年まではあまり付加価値の高い食
などの増量剤はいまやより安価なものに置き換え
品には使われていなかった。新しい技術では米ぬ
られるようになってきており,競争の激しいこの
かを短時間120~130℃に加熱することでこれを安
業界にあって,製品組成の研究には健康,栄養面
定化させ,これまでのような欠点を解消したわけ
である。
持続可能な供給源
コメは世界人口の少なくとも6割の人々の主食
となっており,年間で約7,000万トンの米ぬかが得
られ,安価(大豆殻の3割程度)で環境負荷も少
ないことから,いまや持続可能な食料チェーンに
組み入れることができるようになってきた。品質
が重視される食品加工産業においても安価なこと
から比較的短期間に普及し,先進国,途上国のい
ずれにおいても持続可能な素材として考えられる
ようになってきている。
経済性の志向
写真1 コメは世界人口の60%が好む主要産物,
安価で健康的な栄養素の持続可能な供給源である
食品と容器
酪農品や食肉加工品などの消費の増加と経済の
158
2010 VOL. 51 NO. 3
落ち込みとは相反する関係にあるものの,食肉の
定性が増すという。
市場の動向はいまも上向き基調にあり,今後も成
繊維質摂取の重要性
長の可能性がある。ただ,一方でフードサービス
安定化米ぬかに含まれる可溶性繊維と不溶性繊
業界や小売業界にとっていまは消費者の買い控え
維の比率は5:1で,消化が良く,摂取量の10%
という事態に直面している時期でもある。また,
は小腸で加水分解,80%は大腸で発酵,残りは排
もうひとつ重要なことは消費者の嗜好が年代によ
泄される。
し
せつ
って微妙に異なることで,団塊世代が魚介類を好
現代の食生活では繊維質の摂取量が少なくなっ
むのに対し,ポストベビーブーマー世代は肉,団
ており,通常一日あたり25~30gの摂取が望まし
塊ジュニア世代はチキンや自然食品を好むといっ
いが,15g程度にまで落ち込んでいるケースもあ
た具合で,特に団塊ジュニアは嗜好の変化が激し
る。健康上,可溶性繊維質と不溶性繊維質は一定
く,ブランドに対するローヤリティーがほとんど
のバランスで摂取する必要がある。繊維質の摂取
ない。
は(食物の)消化器官の通過時間を正常にする働
不況の時代にあって消費者の行動の変化を読み
きがあり,不溶性の繊維質は器官内をそのまま通
取ることは難しく,食品業者にとっては受難の時
過するのに対し,可溶性繊維質は膨張して腸内を
であるが,コストを抑え,なおかつ消費者の期待
ゆっくり通過するので胆嚢から小腸に出される胆
に沿う商品を作ろうと多くのメーカーが取り組ん
汁酸をトラップして脂肪の消化を助け,血中コレ
でいる。コストの高い大豆原料の使用を減らした
ステロールを抑える効果がある。
り,使用をやめたりしているのもその一例である。
不溶性の食物繊維は炭水化物の形で自然界に豊
食肉加工メーカーにとって高騰した大豆原料の
富に存在し,植物性食品の繊維質の約60%を占め
使用をなんとかしなければならないというのは長
ている。主成分はセルロースで,水に溶け,酸と
い間の課題で,安定化した米ぬかを使用すること
アルカリを希釈する働きがある。
でそのコストを下げることが期待されている。
機能的なコメ繊維質
機能性食品
繊維質の多い食品は満腹感を増し,少ないカロ
安定化米ぬかの製造で世界をリードするNutracea
リーで多くの栄養をとることができる。つまり,
社は米国,ブラジル,中国,インドネシアで工場
不溶性繊維質を沢山とれば腸の働きを正常化し,
を展開しているが,毎年7,000万トンの米ぬかを確
可溶性繊維質を多くとればヘルシーな脂質とグル
保し機能性食品の原料にすることができると推定
コースを正常なレベルに保つことができるのであ
している。
る。
FDAでは繊維質の摂取量を1回あたり最低5g
そのクリーンで化学薬品などを用いない加工処
とするのがよいとしている。また,可溶性繊維質
理により米ぬかの持つ栄養的メリットは損なわれ
と不溶性繊維質の望ましい割合を2:1から3:1
ることなく,また安定化米ぬかは非アレルギー性
程度としている。安定化米ぬかの場合,その割合
でトランス脂肪やコレステロールを含まないなど
は5:1で食品メーカーにとっては悪くない値で,
の特長から同社は急速に業容を拡大している。安
牛乳や大豆のタンパク質と組み合わせて使うとよ
定化米ぬかに含まれる天然多糖,ベータグルカン
り相乗的な効果が得られる。ナチュラルなコメ繊
は冷蔵保存によりデンプン/タンパクゲルの劣化
維は,将来的には酵素技術の発展によって大腸で
を遅くするとの説もあり,このためホットドッグ
の良性バクテリアによる消化にも有効な素材とな
など乳化処理肉製品の歩留まりが良くなるという。
るだろう。
また,食肉の加熱乳化処理中,安定化米ぬかのタ
遠からず安定化米ぬかは,人体内の細胞損傷や
ンパク質と油が微粒子分散の作用をして静電気反
その他諸々の化学反応を抑えるような健康増進植
発が減少するためタンパクポリマー間の接触が密
物性栄養源とみなされるようになることは間違い
になりゲルネットワークの形成を助けることで安
ないところである。 (大池静男)
食品と容器
のう
159
2010 VOL. 51 NO. 3
最近の製品リコールと異物混入
Food Processing(U.S.A.)33(’09・9)
文献 №5525
最近の製品リコールは工場の床や排水路,屋根,
さらに,細菌細胞は8時間後より48時間後の方が
その他の構造体にかかわる問題を提起している。
多くなっていて,細菌が増殖していることが分か
食品安全に対する注意は主として設備や製造加工
った。
工程に払われているが,最近の事件は頭上や足元
地下埋設管について
にも注意すべきだということを示唆している。
昔,食品工場から屋外への埋設管は鋳鉄製が最
2008年,衛生管理の不備や過失によってPeanut
高の技術であった。弾力性のあるステンレススチ
Corp of America社がリコールを起こしたが,法
ールやPVCにグレードアップするコストは投資価
廷証言や工場をチェックした検査官の引証から,
値として理解されていなかった。古い工場の地下
Atlanta Journal-Constitutionは屋根の雨漏りが
排水管の一部を掘削したところ,管が半分しか残
原因だと指摘した。同社は2008年8月に屋根の修
っていなかったことがある。洗浄に使用する洗剤
繕に6万ドル使っており,屋根の雨漏りが,サル
が管を腐食させ,排水管に流した排水は管の中を
モネラ菌の増殖に必要な「水」の供給源になった
流れず地中に漏れていた。
と思われる。雨が降ったとき雨水が工場内に入り,
今日,優れた設計は排水路が微生物の住み家に
既存のサルモネラ菌を増殖させたか,サルモネラ
ならないよう,新しい工場はステンレス製の排水
菌が工場内に入った。という一部評論家の推論を
路とトラップを使って排水をPVCやcPVC,
ポリプ
報じたものであるが,
2006−2007年のConAgra社の
ロピレン製の管に流し込んでいる。そして,改修
ピーナツバターのリコールでも屋根の雨漏りが容
する場合は『目に見えない小悪魔は潜んでいない
疑の一つになっている。「乾燥した加工環境に水
と考えずに,地肌の露出部や構造鋼,プレカスト
を与えることは,火に油を注ぐに等しい」とジョ
コンクリートのシェルはすべて取り除いた方が長
ージア大学の食品安全センター所長のM.DOYLE氏
い目で見ると,より安全でコスト効率がよい』と
はJournal-Constitutionで述べている。
いう建築設計会社に対して,ほとんどの食品加工
また,床排水路に洗い流せばよいという考えは
業者は同意見である。
問題である。食品安全協会員であるカンザス州立
小さい厄介者は必ずしも地下にいるとは限らず,
大学の最近の研究で,食品加工施設の床洗浄や特
金属のドア枠や窓の敷居のくぼみに隠れている可
に床排水路からリステリア菌が加工ライン上へ簡
能性がある。隙間の存在と高圧洗浄の組み合わせ
単に移動することが分かった。加工施設の床排水
が湿気を残し,細菌コロニーの発生につながる。
路は細菌の隠れ場所になるため,高圧洗浄や掃除
ある食品工場から窓の細部仕様の提示を求められ
の対象になっているが,洗浄によって発生する霧
たHixson Architecture & Engineering社は「傾斜
しぶきが床面より数フィート高い加工食品の表面
したグラスファイバーの窓枠に金属パネルを取り
に細菌を移行させることが分かった。床の高圧洗
付けるネジと締め具をうまく隠す方法を提案する
浄後,研究チームは床排水路の上部1,2,5フィ
ためにメーカー数社から部品を取り寄せることに
ートの所でリステリア菌を見つけた。床排水路に
なった」と同社の副社長兼上級設計者のM.FOLLMER
最も近い1フィートの所が最も汚染が大きかった。
氏は言う。
食品と容器
160
2010 VOL. 51 NO. 3
イノベーションが必ずしもコスト効率が良いと
を 6,500万ドルかけて改修中であるが,拡張はド
は限らないとFOLLMER氏は指摘し,床などの表面塗
ライヤーの更新,処理設備の改善,冷却設備の改
装に使う抗菌性添加剤に対して,「多くの用例は
善,ボイラーシステムの更新,工場インフラ設備
見ていない。抗菌剤はアクセスや掃除が難しい場
の改善であり,アップグレードはプラットホーム
所に有効であり,細菌で汚染されやすいコンベヤ
のコンクリートの割れ目補修,ウオーターフリー
ーや食品の接触面に使用される。しかし,毎日清
ゾーン,人の通路の管制,洗浄できるよう壁と天
潔にしていればさらに予防手段になる」と言う。
井の隙間の補修,暖房・換気・空調(HVAC)の
「悪魔は細かい所にいる」とHixson社の建設管
空気の流れの正負制御である。
理者C.ALLEN氏は言う。「業界は食品安全の観点
「食品加工施設の屋外設計は屋内で製造される
から絶えず改良しているが,私が工場の現場で見
食品の安全や清潔に影響する」
とCEOのM.SHAMBAUGH
かけるものは実際にはほとんど新しくない。秘訣
氏は言う。同氏は毎日潜在リスクを探して建物の
は正しい解決策を知ることと,効果的に実行する
周りを歩き,従業員や来訪者通路の状況,植物・
ことである。既存の工場で働いている場合,これ
造園,屋根材やげっ歯動物の侵入,病原菌を持っ
は大きい課題である。工場は,平滑で,排水と洗
た害虫の侵入等について考える。同氏は「異種通
浄ができて,冷たくて乾燥した表面を維持しなけ
路が交差しないよう敷地の境界から通行区分を設
ればいけない。これは非常に基本的なことで肝心
けるべきである。植物は細菌を媒介する昆虫や小
なことである。もしこれを怠れば,食品安全上の
鳥を誘引するので,建物や歩道から最低 100フィ
問題を抱えることになる」と同氏は言う。
ート離すべきである。適切な屋根材を選択すれば,
眼が良ければ古い工場をいつまでも新しく維持
凍結・融解によるクラックや砂利の剥落,HVAC
させることができる。例えば,インディアナ州の
排気口の油による被膜の劣化など,重大な汚染問
Shambaugh & Son社は,
1912年に建設した酪農工場
題が回避できる」と言う。 (合田芳宏)
けつ
はく
FHCの2009年中間報告書は,
節水例として,
配送
車の洗車やトイレの洗浄に雨水を使用,
清掃作業は
企業の節水取り組み
水を使わずドライで行う,水の再生と再使用,蛇口
の取り替え,
使用量や排水量をモニターする水量計
の設置,社員教育の推進を取り上げている。
Food Manufacture(U.K.)47(’
09・10)
文献 № 5530
「企業の用排水費の30%は簡単な水管理技術に
よって低減可能である」とEnvirowise社の水ビジ
節水対策をアドバイスしているEnvirowise社は,
ネスマネジャーのK.DAVIS女史はいう。例えば,
イングランドとウェールズの食品・飲料産業は1
トイレの可変放水メカニズムには約20 £のコスト
日に4億3千万ℓの水を使用しているが,簡単に
がかかるが,1回の放水当たり4ℓ節水でき,1
コストをかけずに約20−30%の用排水費を節減で
週間たらずで採算がとれる。また,Dairy Crest社
きると見ている。用水費を節減し,より持続可能
は節水に57,000 £投資したが,年間200,000 £の経
な生産を行うために,約40社の食品・飲料企業が
費節減が見込まれている。同社のHanworth工場の
2007年基準で2020年までに水の使用を20%低減す
水使用量が同等の工場に比べて多いことが分かり,
ることに同意するFederation House Commitment
調査の結果,ボトル洗浄機の水使用量が設計より
(FHC)に署名した。FHCはEnvirowise社とFood
著しく多く,ジェットノズルの孔径が摩耗して大
and Drink Federation(FDF)が共同で開発した
きくなりウォッシャーの水量が多くなっていた。
イニシアチブであり,企業の水使用効率の改善を
ジェットバーとジェットノズルを全部取り替えた
支援している。
結果,工場の水使用量が16%減った。(合田芳宏)
食品と容器
161
2010 VOL. 51 NO. 3
2010年に向けた7つの変化予測
Food Processing(U.S.A.)20(’09・10)
文献 №5531
Food Processing(U.S.A.)誌は,同誌の編集委
ーをもつピラミッドに書き換えられた。これは個
員,投稿者,読者,ウエブサイトの訪問者に対し,
別化が必要であることを示し,
このためMyPyramid
2010年以降の最も大きな出来事の変化を予想して
と呼ばれた(第1図 )。
もらった。広範囲の意見が得られたが,いくつか
最後の2010年のガイドラインは,あいまいな事
が統合され,次の7項目にまとめられている。
象を正すことである。ナトリウムは,大衆の意見
1.2010年の新しい食事ガイドラインの制定
として問題視され,多くのオブサーバーが1日当
今 ま で の「 食 事 ガ イ ド ラ イ ン:dietary guide-
たりの最高摂取量を低減すべきとしており,おそ
lines」はアメリカ人の健康に対して,それほど重
らく現在の2,300㎎から1,500㎎になるであろうと
要な意味は持っていなかった。
みている。
“Dietary Guidelines for Americans”
は1980年よ
食事ガイドライン諮問委員会は2008年の10月よ
りアメリカ保健福祉省
(Health and Human Service
り会合が行われている。予定されていた第4回と
:HHS)
と農務省
(USDA)
から5年ごとに公表され
第5回は公表される計画にはなっていないが,今
ており,2010年は新版が公表される。これらの目
年(2010年)の初めには完了させる必要がある。
的は,良好な食事が健康を増進させ,多くの生活
春までに,
委員会はUSDAとHHSの事務局にレポー
習慣病のリスクを低減させるためのアドバイスと,
トを提出し,同事務局が最初のレポートを公表
連邦の食品および栄養教育プログラムの基礎とし
し,大衆が利用できるようになるだろう。
て用いられることである。
2010年の夏,
USDAとHHSは委員会の勧告を検討
1995年のガイドラインは,
USDAがその3年前に
し,“Dietary Guidelines Policy Document”とし
考案した
“Food Guide Pyramid”
に多くの注目が集
てできあがった解説書を公表する予定である。そ
められた。これは広い底辺部に穀物(パン,シリ
して秋には,USDAとHHSは共同で,最終的な
アル,パスタなど)を強調して置き,狭い先端部
Dietary Guidelines for Americansを公表すると
に油脂や菓子類をひかえて使用するように示され
予測される。
ている。1995年のもうひとつの顕著な出来事は,
2.食品の安全に関する法令が変わる
脂肪,カロリー,その他の栄養成分が記載された
食品安全法の改革は政府機関の重要な優先事項
栄養表示ラ
であり,重要な変更が検討され,実行されようと
ベル
(Nutrition
している。リストのトップは,FDAの徹底点検で
Facts Label)
あ る。
FDAの 食 品 安 全 強 化 法
(Food Safety
である。
Enhancement Act)のための包括的な食品安全
2005年の
法は米国下院を通過した。
Dietary Guide-
最も重要な変更は,FDAにリコールを命令でき
linesは水平な
る権限が与えられることである。ほとんどの消費
バーの代わり
者は,政府機関が危険なものをリコールする権限
に,斜めのバ
を持たないで,食品の安全性についての責任を持
第1図 MyPyramid
食品と容器
162
2010 VOL. 51 NO. 3
つことは信じにくいとみている。
照されたい。
下院の法案は,強制的なHACCPプラン,食品の
4.中国の台頭
安全と食品の防衛プラン,
FDAの強制的な製品トレ
品質に関する課題と世界の経済後退が,米中間
ースシステム,検査時の記録の増加,リスクベー
の食品,食品素材,農産物の貿易で見られたが,
ス計画に応じた検査頻度の増加,危険度の高い設
両国の長年の関係は否定できない。今でも,両国
備や食品汚染の存在が示される最終製品のテスト
の関係はすべてにおいて重要である。
結果の強制的な報告なども要求するであろう。
2000年以来,アメリカの中国への輸出は341%
下院の提案には,各設備の保有,食品加工や製
増加しており,中国はアメリカ製品にとって最も
造に対し500ドル(1企業で最高175,000ドル)の
成長の著しい輸出市場である。中国はすでに3番
課税や再検査やリコールに対して課税することも
目に大きなアメリカの輸出市場で,その額は 700
含まれる。
億ドルになる。
3.小売業の形態の変化
今後10年で,中国は世界の半分以上の国内総生
今後10年の間に,どのような形態の店で食品が
産を示すだろうし,タンパク質の消費は世界の半
売られるであろうか。
分を示すようになるだろう。中国はアメリカに対
20年前,アメリカ人が家庭でとる食品の90%近
する主要なサプライヤーとして,そしてアメリカ
くは,伝統的な食料雑貨店で購入されていた。現
製品の消費者としての役割が増えるだろう。
在,そのシェアは69%に下降した。アメリカで最
OBAMA大統領は中国首脳と共同で作業する2つの
も大きな食品の小売業者はWalmartであり,
3番目
重要な内閣レベルの公開討論の場を続けていくで
がCostco Wholesale Corp.で,伝統的な食料雑貨
あろう。そのひとつは,貿易問題を取り扱う商業
商のKrogerは2番目を維持している。
と貿易に関する共同委員会である。もうひとつは,
非伝統的な食品販売店は,one-stop shopping
二国間の「戦略的および経済的対話(Strategic
(一カ所で何でもそろうショッピング形態)と低
and Economic Dialogue:S&ED)」である。これは,
価格で消費者を誘い,市場のシェアを獲得してき
米中間の最高の公式な対話である。
S&EDの結果の
た。
ひとつに,
アメリカFDAの海外事務所が北京,
上海,
“supercenters”
“hypermarkets”
,
“club
,
stores”,
広州に設立されることが同意されたことがあげら
“dollar stores”
“limited-assortment
,
stores(低
れる。
価格で余分な装飾・包装を省略,実用性を優先さ
せた実用本位の店)”のようなまっ
たく新しい言葉が食品の小売に導入
された。消費者は欲しいものがどこ
にあるかを知っているので,混乱は
見られない。
しかしながら,全体的には,食料
スーパーマーケット
スーパーセンター
ディスカウントストア
クラブストア
ドラッグストア
雑貨店が王座を維持している。スー
1ドルショップ
パーマーケットは,44%の食品購入
リミテッドアソートメントストア
者が「ほとんど毎日」,31%が「か
オーガニックストア
なり頻繁に」利用している。スーパ
エスニック/特殊
ーセンターは2番目に利用され,
コンビニエンスストア
「ほとんど毎日」が18%,「かなり
かなり頻繁に
ほとんど毎日
頻繁に」が21%となっている。その
第2図 食料雑貨をどこで購入するか
他の販売形態の利用率は第2図を参
食品と容器
163
2010 VOL. 51 NO. 3
5.倫理的(ethical)な食品の製造
何をすればよいのか?」。そして,おそらくより
1960年代や70年代,それ以前からも環境保全主
重要なことは,「過去の出来事が将来にどのよう
義はあったが,グリーン(環境保護)への動きは,
に影響するのか?」であろう。
2006年,前米副大統領A.GORE氏のドキュメンタリ
厳しい価格競争により,プライベート商品がま
ー「不都合な真実(Inconvenient Truth)」により,
すます有利になるであろうし,小売店は実際にカ
より緊急な課題となってきた。専門家も地球規模
テゴリー内の商品管理上の最小単位(SKU:Stock
での温暖化を議論しているものの,地球を救うた
Keeping Unit)の数を減らしている。例えば,あ
めに必要なビジネス,優良企業のPRの利用,製品
る食料雑貨店は茶のブランド数を約20点から5点
のマーケティングやコスト削減の実施はだれも議
に劇的に減らす計画があると言う。この動きは時
論していない。
に「SKUの合理化」として引用される。
Walmartは2008年,同社のサプライヤーに対し,
これにより,小売店への運搬コストの低減,ス
パッケージスコアカードを提出することを要求し,
トック切れの可能性の低減,小売店が売り主に対
同年7月,包括的な持続可能性に対する努力をし
する圧力を強化するなどが可能となる。結局,商
ていることを報告している。同社は,新しいイニ
品数を少なくすることは,投資や運搬コストが少
シャチブを次の4つの一般的分野に分けている。
なくなることを意味する。
エネルギーと気候,包材の効率,天然資源,人と
経済は回復するだろうし,人々が特殊な製品や
共同体の4つである。
ブランドに自由に出費できるレベルまで戻るであ
過剰包装は明らかなターゲットであるが,温室
ろう。しかしながら,景気後退は,毎週食料雑貨
効果ガスの放出,水の使用量,エネルギー削減も
店を訪れる消費者に影響を残しそうである。
同様な関心がもたれている。明らかに,これらの
7.2020年のビジョン
関心事項は“reduce,reuse,recycle:3R”を超え
2020年の消費者の視点と企業の回答の代表的な
るものである。これらの関心事項のすべては「倫
例を示す。
理的な製造」や「企業の責任」といった用語に集
消費者の視点1:顧客の融合は分野を飛び越え
約されはじめている。この動きは,一時的な不景
るであろう。
気のため,進展はやや遅いものの,景気の回復に
対する企業の答え:従来の顧客の区分戦略は劇
よって落ち着くと見られる。
的に変化するだろう。
多くの食品や飲料企業は,「持続可能な発展」
消費者の視点2:消費者は,さらに責任,情報,
や「企業の責任」を標題にして経営をしている。
規制を要求するようになるだろうし,それを手
そして,消費者(少なくても,この調査における)
に入れるだろう。
は,他の製品よりも「倫理的な」製品を選ぶだろ
対する企業の答え:顧客との共同創案は,単な
うと言う。
る製品開発へのフィードバックだけでなく,ビ
6.ビジネス実行の新しい方法
ジネスの実行にはめ込まれるようになるだろう。
経済情勢が人々の購入習慣を劇的に変えること
その他5項目について,消費者の意見とそれに
は疑う余地がない。食品や飲料企業には2つの疑
対する企業の答えが示されている。
問がある。「消費者の購入習慣の変化に対して,
食品と容器
(十時正義)
164
2010 VOL. 51 NO. 3
食品産業におけるRFID技術と応用
Journal of Food Science(U.S.A.)R101-R106(’09・10)
文献 №5526
RFID(Radio Frequency IDentification,電波
ストインタイム商品発送システムとして活用して
による識別)は,電波を利用した認証技術であり,
いる。2003年6月に上位100社に対して2005年1月
バーコードに代わる技術として注目されている。
までに出荷ケース・出荷パレットにRFIDタグを
使用する電波には,低周波(9〜135KHz),高周
使用するよう求めた。タグには電子商品コードが
波(13.553〜15.567MHz), ア マ チ ュ ア 無 線 バ ン
記録されており,配送センターへの入庫と,店舗
ド(430〜440MHz), 超 高 周 波(860〜930MHz),
への発送追跡に使われている。現在,Wal-Martは,
電子レンジ周波(2.45〜5.8GHz)の5つの周波帯
上位300社に対してすべての出荷ケース・出荷パ
があり,高速道路料金支払,迅速チェックアウト
レットにRFIDタグを使用するよう求めている。
用商品ラベル,在庫追跡,家畜標識,自動車盗難
英国電信電話会社はRFID技術を活用したオンラ
防止イモビライザー等の多くの分野で使用されて
インの食品トレーサビリティーシステムを発表し
おり,食品産業でも利用されはじめた。
ている。このシステムは,BT foodnetと呼称され
RFIDのタグには,タグリーダーからの電波をエ
ており,食品を追跡できるほか,回収コストを削
ネルギー源として動作する受動タグ(通信距離は
減できる。
短く,長くて数m)と電池を内蔵し自ら電波を発
フランスのeProvenance社は,高級ワインの品
信する能動タグ(通信距離10〜100m)の2種類が
質と由来が追跡可能なRFID技術を活用した追跡
あり,電磁波の伝達方法には電磁誘導方式と電波
システムを構築した。本システムは3要素から構
方式の2種類がある。
成されている。ワインのケース内部に設置されて
食品産業におけるRFID技術
いる13.56MHzのセミアクティブRFIDでは,製造
サプライチェーン・マネジメント
企業と輸送会社が1日に3回,ケース温度をモニ
食品産業において,サプライチェーン・マネジ
ターできる。第2の要素は,ビン底に貼り付けら
メント,流通温度管理,食の安全確保等の多くの
れた13.56MHzの受動型RFIDであり,追跡と在庫
分野でRFID技術が利用できる。サプライチェー
管理に使用する。第3の要素は各ボトルの偽装防
ン・マネジメントにおいては,食品の流通,在庫
止シールであり,2つのRFIDタグの固有番号を
を追跡するのにRFIDタグが使われており,バー
含む固有コードが見えないインクで印刷されてい
コードと比較し,①タグが見えてなくても読み取
る。これらの3要素がオンラインベースで関連づ
れる,②読み取り空間が広い,③多数のRFIDと
けられている。
同時に通信できる,④多くの情報を書き込める等
英国のUnilever社では,倉庫での商品移動,取
のメリットがある。
り扱い,追跡にRFID技術を使っている。英国の
RFID技術は倉庫から店舗までの自動商品発送シ
United biscuits社では原料移動のほか,ビスケッ
ステムに利用できる。店舗のRFIDシステムは,
トやケーキの重量測定,混合,焼成にRFID技術
在庫が少なくなると倉庫管理システムに自動的に
を活用している。
警告を送信し,
正確な在庫管理ができる。
Wal-Mart
RFID技術は,チーズ製造企業で高精度な供給
は,RFIDを活用した最初の大企業であり,ジャ
チェーンとともにチーズを追跡するために使われ
食品と容器
は
165
2010 VOL. 51 NO. 3
ている。この追跡システムでは,トラブルの際に
り,病原菌がコーティング物質と結合すると,手
は迅速な製品回収ができる。また,消費者は,
持ちのRFID読み取り機に信号を発信する。
WEBサイトにコードを入力すれば,商品の完全履
他の応用
歴が分かる。
RFID技術は追熟型果物の輸送・販売監視にも
温度監視
適している。
Vergara社他ではリンゴの熟度を監視
米国のInfratab社のFreshtimeTMというRFIDタ
するメタルオキサイドセンサーを取り付けたプロ
グでは,食品のシェルフライフがモニターできる。
トタイプを開発した。
タグは温度を感知し,その情報を送信しシェルフ
異なった応用に適した適切なRFID技術
ライフを決めている。タグには電池が含まれてお
RFID技術は食品産業の多くの分野で利用できる
り,緑,黄,赤で表示でき(例えば,緑が新鮮で,
が,その際,食品組成や包装資材,包装環境に配
赤は危険),−25〜70℃で使用できる。
慮する必要がある。例えば,新鮮な商品等の高湿
オーストラリアのIdentec Solutions社の温度デ
度の商品では水分がRFID信号を吸収することに
ータロガーは,13,000点の温度情報を保存でき,
配慮する必要がある。水分による妨害は,電子レ
100m離れた場所から読み取ることができ,加工
ンジ波長帯でより顕著となるため,低周波(9〜
工程や冷却工程中の食品の内部温度を監視したり
135KHz)のRFIDを使用する必要がある。金属は
記録することができる。電池寿命は6年で,−40
信号を反射することから,金属製の缶詰食品では
〜80℃で使用でき,温度精度は0.25℃,1分から
タグは金属から遠ざけることが必要である。最近,
18時間の間隔でデータを蓄積できる。
英国のQinetiQ社は金属や溶液でも作動するUHF
スイスのIDS Microchip社のIDS-SL13Aは,受動
波長帯のタグを開発した。これは,金属箔包装食品,
型/ セ ミ 受 動 型 のRFIDデ ー タ ロ ガ ー で あ り,
缶詰,液状食品のブレークスルーとなる技術であ
RFID読み取り機から発信された電波ばかりでな
る。
く,1.5Vあるいは3Vの薄膜状の1個の電池で作
RFID技術の実行上の挑戦
動する。この装置は,最大精度0.5℃で,−40〜
技術的挑戦
110℃で使用できる。
RFIDの技術的な問題の一つは,小売り環境で
食品安全
の信頼性の低さである。水分含量が高い人体によ
肉,果物,酪農品が輸送・保存中に安全な温度
る妨害があることから,人体の近くで超高周波を
帯であったかどうかを保証するためにRFIDシス
読み取ることは困難である。多量の液体を含んだ
テムが使用できる。ドイツのKSW Microtech社の
り金属箔の製品に貼り付けられたタグでは,液体
VarioSens®は,温度データロガーとしてばかりで
は信号を吸収するし,金属は信号を反射すること
なく流通追跡ツールとしても使用できる。このロ
から,簡単に読み取れない。その他,以下の問題
ガーは−20〜50℃で使用できる。米国のSealed air
点が指摘されている。
はく
TM
社のTurbotag は商品の温度履歴を監視できる。
読み取り範囲:RFIDシステムの使用範囲は,大
TM
米国のevidencia社のThermAssureRF は,新し
半の低周波数で1m,高周波数でも3〜4mであ
いRFIDデータロガーであり,温度監視とともに
る。離れたところから高精度で読み取り可能な装
トラッキング(追跡)とトレーシング(遡及)が
置は,RFID技術の普及につながるであろう。
でき,HACCPにも適合している。このタグは,
読み取り精度:RFIDでは,タグが見えている
ワイン,農産物,海産物,肉,家禽,医薬品,化
必要はないが,リーダーのアンテナと直交してい
粧品等を取り扱う企業で利用されている。
るタグの情報は正確に読み取れない。タグ付き商
米国Auburn大学の食品安全プロジェクトでは,
品が多く存在しランダムにおかれていると,その
RFIDに病原菌と結合できるファージやウイルス
うちのいくつかは読み取れないが,読み取り機の
の微細構造をコーティングすることを目指してお
位置を変えたり,指向性の低いアンテナを使用す
そ
きん
食品と容器
166
2010 VOL. 51 NO. 3
ることにより解決できる。大半のRFID読み取り
自動追跡と購入履歴情報の点が消費者プライバシ
装置は,他の読み取り装置が存在すると正常に作
ーにおいて問題となっているが,商品の販売時点
動しない。RFIDが普及するに従い,読み取り装
でタグを無能化するスイッチが有効である。許可
置同士の相互干渉が問題となるであろう。マサチ
されていない者がタグをスキャンし,搬送日時や
ューセッツ工科大学のAutoIDセンターではこの問
在庫の詳細情報を得ることが可能なことから,セ
題を解決するために,時間差を利用してタグを読
キュリティー面でも問題がある。RFID技術を有
み取る時間分割多重アクセスを開発した。
効に活用するためには,企業や政府がこうした問
統一されていない標準
題に取り組む必要がある。
周波数割当ては各国毎に規制していることから,
将来の傾向
RFIDの割り当て周波数が異なっている。例えば,
より短波長の近赤外線を使用したRFID開発では,
超高周波帯では,ヨーロッパは868MHzであるが,
①従来のバーコードと同程度の速度での完全な読
米国は915MHzである。
周波数が異なり他国で使用
み取り,②RFIDタグ読み取り機の信頼性向上,
できないことが,障壁となっている。サプライチ
③RFID収集データから有益情報抽出と意志決定
ェーン等の特定の分野ではRFID技術は標準化さ
支援ツールへの統合を目指している。また,100
れつつある。国際規格ISO18000では,世界中で使
%読み取りのためには,ケースやパレットにタグ
用されている6つの周波帯でのタグと読み取り機
を適切に設置するとともに,パレットの適切な空
の通信プロトコルを定めている。
間配置が必要であり,現状のRFIDタグリーダー
コスト
では80〜95%の信頼性である。しかしながら,す
RFID技術においてはコストが主要な問題である。
べてのタグから情報を集めるためには,読み取り
データ保存が可能な受動タグは多量生産すれば5
機の信頼性は100%である必要がある。さらに,
〜10セントであるが,バーコードは1セント以下
タグを貼り付ける代わりに直接印刷できる安価な
であることから,依然として高コストである。高
タグ(1セント以下)も研究されている。
価な物品に使用される能動タグは,高いものでは
結論
100ドルであり,タグが高いことが普及の妨げと
RFID技術の主要な問題点は,小売り環境での
なっている。バーコード,RFIDタグ,文字情報を
信頼性の低さ,読み取り空間,読み取り精度,統
1つのラベルに印刷することも,低コスト化につ
一されていない基準,コスト,リサイクルである。
ながるであろう。
また,消費者プライバシーとセキュリティーも障
リサイクル問題
壁となっている。
RFIDに使われている接着剤,コンピューターチ
多くの問題を抱えているが,RFIDは,サプライ
ップ,アンテナ金属,導電インクは,紙,ガラス,
チェーン・マネジメント,温度監視,安全性確保
プラスチック,金属のリサイクルに影響を及ぼす。
といった食品産業のさまざまな分野に利用しうる
アンテナに使用されている銅がリサイクル鉄に混
有望な技術であり,商品在庫切れ防止,食品変敗
ざると,鉄が軟化する。プラスチックのリサイク
を防止する在庫管理が可能となり,効率向上,生
ルにおいては,PETやHDPE樹脂の金属汚染が問
産性向上につながる。センサーとRFIDを融合し
題である。他の接着剤の使用,アンテナの金属を
たものは,温度や品質を監視できる。基準の統一
変える等の対処が必要である。
化や低コスト化により,本技術は食品産業に広く
プライバシーとセキュリティー問題
活用されるであろう。
RFIDのパブリックアクセプタンスにおいては,
食品と容器
167
(林 清)
2010 VOL. 51 NO. 3
古代食品素材の再発見(1)
Food Technology(U.S.A.)43(’09・10)
文献 №5533
古いものが新しいものとして見直されることは
事実があると筆者には思われる。以下二つの例を
よくある。この逆説が特に食品素材に当てはまる
見てみよう。
ことは,何世紀にもわたって繰り返される物語が
糖尿病患者が摂取抑制を迫られる炭水化物とは,
証明しているし,これからも物語は続いていくの
しばしば精製粉を意味する。一方で全粒粉は健康
だろう。肥満や糖尿病が問題となっている現代に
に良いとして,体重管理など他分野にも応用され
おいて,「古い」食材が新しい解決策のきっかけ
る。また多くの健康効能を有する難消化性デンプ
となったり,現代人の食生活に関する考え方や食
ンが開発され,糖尿病につながりやすいとされる
品製造における対疾病戦略を変える一助となった
パスタ,パン,菓子なども,味や機能に問題なく
りすることもある。
患者が食べられるようになってきた。
こうした古代の食材は経済的利点も大きい。使
塩の歴史も興味深い。塩化ナトリウム摂取抑制
い始める時点で安価であり,食品製造において費
の流れにあっても,塩が味と機能に果たす役割は
用を低く抑えることができる。また利用技術の発
重要で,食材として必要不可欠といえる。海産塩
達により,昔に比べて機能性や味が改良されてい
は精製度が低く,低ナトリウムの代替塩として有
る。時を経て現代のニーズに合いやすい外観を備
望視される。混合塩ならナトリウムの基本的機能
えてもいる。
を損なわずに含有量を25−50%削減できる。穀物
食材の利用方法は革命的というより進化的なも
と同様に塩もニーズに応じて進化している。
ので,食品製造に組み入れられる方向はいくつか
食品にかかわる開発者は歴史家,製造者,発見
の要因から形成される。この傾向が「古代食材」
者として「古代食材」を使い,歴史を旅すること
に顕著である理由として,長年身近にあることの
ができる。本稿では全粒粉,ベリー類,茶,香辛
他,どんな食材も生来善悪どちらでもないという
料,塩,酢,アーモンド,チーズ,砂糖,卵,キ
ノコなど古来の食材を検証している。
時の穀物
穀物は神から授けられたものと,かつて世界中
で信じられていた。10,500年以上も昔,中東の人
よく
々は肥沃地帯を耕し,主に小麦や大麦の生産を始
きび
めた。それから千年後,中国で米や黍の栽培が始
まった。同じ頃アメリカ大陸中部では,主にトウ
モロコシが栽培されていた。
近年全粒粉がもてはやされるようになってから,
新しく味の良い,
しかし知名度の低い穀類が登場し
写真1 古い食材を理解することで,進化を続
ける食品製造の歴史に新たな一章を書き加える
ことができるかもしれない
食品と容器
てきた。Datamonitor社によると,2007年には世界
中で500種類以上のquinoa,spelt,kamut,amaranth,chiaなど「古代の穀物」を示す名を冠した食
168
2010 VOL. 51 NO. 3
品,飲料が市場導入された。これらは何千年も前
はコレステロール値抑制・血中グルコース/イン
に好まれたものであり,2004年比で実に5倍とな
シュリン調整・体重管理に効果があるとされる。
った。加工度の低い食品や古代穀物の健康効能に
Oat Ingredients社のOatwell®は溶解/非溶解性食
関心を持つ消費者が増えたことの現れといえよう。
物繊維が豊富で整腸作用があり,栄養バー,朝食
グルテンを除いたものもあり,景気低迷などどこ
シリアル,パスタ,クラッカー,クッキー,ビス
吹く風の勢いである。
ケットに使用する。
ConAgra Mills社のブレンド粉や全粒粉にヒマワ
Grain Millers社等はオーツ麦食物繊維の効能に
リ/亜麻の種を混ぜた製品は,その名もAncient
ついて研究を進めており,オーツ麦,小麦,大麦,
Grainsとして2007年に発売された。原料確保の困
ライ麦などの全粒粉を製造,小麦粉やフレーク,
難さなどから西欧諸国ではあまり使用されない特
ぬか(brans),食物繊維と混ぜることもできる。
殊穀物を安定的かつ信頼に足る形で,高品質で提
古代穀物には食品の舌触りを向上させる働きが
供するとの定評を得た同社は,食物繊維など植物
あり,21st Century Grain Processing社はGranola
栄養素に富む古代穀物が食生活改善に役立つこと
Oat Clusters,High-Protein Coated Grain Clus-
の宣伝に余念がない。
ters,Coconut Almond Granola Clustersなどの製
本年(2009年)のIFT食品展でAncient Grainsシ
品を提供している。
リーズは,栄養素に富み,味の良い9種類の穀物
英国Puratos社は,このほど25%減塩したパン用
を使ったパスタ料理Lobster Mac.とタピオカデン
ミックスシリーズを発売した。Puravita Ancient
プ ン と の ブ レ ン ド 粉Eagle Mills®Gluten-Free
Grainsは良質のビタミン,ミネラル,食物繊維に
All-Purpose Multigrain Flourを 展 示 し た。 後 者
富むquinoa,teff,amaranth,黍入りで,Puravita
を使ってグルテンフリーのパンやマフィンのほか,
Acaiは抗酸化性の高い南米産アサイーベリー入り
トルティーヤ,スナック菓子,コーティング剤,
で風味の良いパンができる。
Puravita Whole Grain
押し出し成形シリアルなどを作ることができる。
は50g中16gが全粒粉であり,ビタミンBが豊富で,
セリアック病患者などグルテン摂取障害のある消
Puravita Omega-3は脳の発達に役立つ脂肪酸が豊
費者のため開発され,全粒粉の栄養学的効能とし
富である。
て最適な機能性を提供する。官能検査では同製品
特筆すべきはchiaとquinoaで,SK Food Ingredi-
の味,舌触り,見た目共に良く,これまでのグル
ents社は,このほど白と黒のchia種子をオーガニ
テンフリー製品にはなかった品質と評価された。
ック,非遺伝子組換え製品に加えた。古代マヤ・
Briess Malt & Ingredients社の新発売ブレンド
アステカの人々はchiaを兵士の体力増進食とし,
粉を使えば雑穀を焼き/押し出し製品に簡単に取
現代人は1990年代のChia Pet市場導入でその存在
り入れられる。BriessBlendTM Whole Grain Fine
を知った。chia種子はflax種子と同等のオメガ3
は小麦,玄米,オーツ麦,大麦,ライ麦入りで薄
脂肪酸を含み,タンパク質,カルシウム,食物繊
焼きクラッカー,トルティーヤ,スナック菓子な
維が豊富で消化もよい。風味は薄くベーカリー製
TM
品,シリアル,菓子,スナック菓子などに使うこ
どに向く。BriessBlend
Multigrainは粒子が大
きめで軟質赤色小麦,ライ麦,ライ小麦,丸麦入
とができる。
りで,ベーカリー製品,クラッカー,スナック菓
Indian Harvest社はこのほどRed QuinoaとFarro
子などに入れると歯触りが残る。2種類とも短時
を使った菜食主義者用“slider”シリーズを発表し
間調理用原料を使い,浸漬や下ごしらえは不要で
た。前者は南米産,White Quinoaブームに便乗し
ある。ニーズに応じてブレンド調製もできる。
た形である。土の香りが強くカリッとした歯触り,
オーツ麦はブレンド粉ブームの走りであり,か
色が鮮やかで8種の必須アミノ酸をバランス良く
つ2000年以上人類を養ってきた。他の雑穀やジャ
含む。朝食シリアル,パスタ,スープ,スナック
ガイモに押されて衰退したこともあるが,今日で
菓子などに使われる。後者はイタリア原産の小麦
食品と容器
169
2010 VOL. 51 NO. 3
に近く,ややナッツ臭があり,スペルト小麦の子
塩と混ぜれば臭気を抑え,消費者にも受け入れら
孫と考えられる。
れる。性質が塩化ナトリウムに似ており,低塩加
塩の変遷
工過程でイオンの力を強める。またカリウムを多
B.C.6000年頃,古代エジプト人は塩を葬儀に用
く含むとの表示ができる利点がある」
とMorton Salt
いた。聖書には「地の塩であれ」など,多く引用
社は言う。
されている。現代の食品製造にも塩は欠かせない。
同社は減塩の先頭に立ち,加工畜肉/家禽肉,
世界中の料理人が愛用の塩を色,舌触り,味の決
パン,チーズ,漬物などへの応用研究を進めてい
め手とし,海産塩の人気は外食産業からメーカー
ると言う。1970年代にはMorton®Lite SaltTM Mix-
へと浸透しつつある。
tureを発売,他にUSP/FCC Potassium Chlorideや
機能の面で塩の果たす役割は他の追随を許さな
Potassium Chloride, Food Grade with a Conditi-
い。塩辛い味を付けるだけでなく,風味の調整役
onerがあり,後者は炭酸マグネシウムを含む。
として望ましくない味を抑え,バランスを整える。
Cargill Salt社はPremierTMを塩化カリウムに加
畜肉,家禽肉,チーズ,海産物や醤油,胡椒の保
える手法で食品メーカーへの攻勢を強めている。
存料ともなり,またチーズ,ドライソーセージ,
顆粒状,無臭,白色の結晶塩は水分活性が低く三
パン,漬物,ザウアークラウト,オリーブなどの発
リン酸カルシウムを含み,塩化ナトリウムの代替
酵管理にも一役買っている。ドウ(パン生地)の
品の有力候補である。ハム/ベーコン処理のほか
グルテンを強化する働きがあり,パンに適した構
チーズ,飲料,ブレンド香辛料,パン,マーガリ
造をつくる。加工肉のタンパク質を抽出して結着
ン,冷凍パン生地などに向く。
力,エマルションの安定化,保水力を高める。ユ
SaltWise®も同社の製品で加工肉,惣菜,スー
ダヤ教信者向け肉の処理やスポーツ飲料,乳幼児
プ,ソース,ドレッシング,スナック菓子の塩辛
食にも使われる。
さを維持しながら25−50%減塩を実現した。また
現代産業社会においては,塩が安価であること
Alberger®Brand Flake Saltはトッピングによる
も手伝ってか塩分の摂りすぎが問題となっている。
減塩を目指している。
アメリカ人は平均して1日4,000mgの塩化ナトリ
Wixon社のKCLeanTM Saltは50%減ナトリウムで
ウムを(内77%は加工/調理済み食品から)摂取
「塩化ナトリウムと塩化カリウムを結合,当社特
しており,これは農務省推奨の値の2倍に近い。
許技術により苦い金属的な後味を取り除いた」と
塩分の摂りすぎは高血圧や心臓病などに関連があ
同社は言う。食塩の代替品として食品加工,製肉,
るとされる。
スナック菓子業者や健康関連研究所,外食産業向
一方で低/無/減塩の表示を付けた食品が2005
けに販売されている。
年比で2008年に 115%増え,減塩表示の新製品は
食塩は「次のトランス脂肪酸」と呼ばれること
2007年に286種,2009年には584種に達した。
がある。理由の第一は食塩の機能に代わる素材が
最近のヒット商品はCampbell社のトマトスープ
無に等しいこと,第二は減ナトリウムの動きがあ
で,従来の味を保ちながらナトリウム32%減に成
るとはいえ,依然としてナトリウムが含まれてい
功した。1897年の発売以来レシピは今日までほと
ること,第三に加工度が低く,粒子の粗さからナ
んど変わっていない。同社は減塩を販売戦略の上
トリウム含有量も抑えられる海産塩の人気が高ま
位に置き,
4年をかけて90種以上のスープとV8ジュ
っていることが挙げられる。「スープ,スナック
ース,11 Pepperidge Farm 100% Natural Breads,
菓子,ナッツ,肉,惣菜メーカーは海産塩への切
Prego Heart Smart Italian Saucesを改良した。
り替えを始めた。将来は精製塩を使わなくなるこ
「塩の代替品の研究を進めても,せいぜい塩化
とも考えられる」とSaltWorks社は言う。
きん
しょう
こしょう
カリウムが候補に上がる程度。塩化カリウムに塩
(力丸みほ)
辛さはあるが,金属臭が強く食品使用に適さない。
食品と容器
170
(次号に続く)
2010 VOL. 51 NO. 3
異なる光バリアー特性を持つカップに包装された
サワークリームの光酸化の評価
Journal of Food Science(U.S.A.)S345(’09・10)
文献 №5527
はじめに
に存在するporphyrinsや葉緑素も感光性の指標物
一般に,乳製品は光に影響されやすく,製造中
質としての重要な役割を持つことが分っている。
や食料品店での陳列時に光にさらされると,タン
最近の研究で,バターの中に少なくとも6つの
パク質,脂質およびビタミンの分解を引き起こし,
異なる感光性を与える物質があると推定されている。
オフフレーバーや色変化の原因となる。光劣化に
Riboflavin,protoporphyrin IX,hematoporphyrin,
よる乳製品のオフフレーバーは,日光では数時間
葉緑素の誘導体,2つの未確認のtetrapyrrolesで,
で生じる。十分な光バリアー性を持たない容器に
これらの感光性物質は,可視光スペクトルが作用
入れた生鮮ミルクは1日でオフフレーバーが検出
し,光酸化がUV−青色光領域の中の光によってだ
されることもある。劣化に対して乳製品を保護す
けでなく,緑−赤色光領域の光によっても生じる
る最も実用的な方法は,あらゆる光の暴露を防ぐ
ことが分かった。この研究の目的は異なった光バ
ことである。しかし,黒あるいは不透明な包装は
リアー性のカップに充填されたサワークリームの
マーケティングの観点から望ましくない。
光酸化を官能評価などで調査することである。
最近までノルウェーで販売されていたサワーク
材料と方法
リーム用として一般的に使用されていた容器は,
サワークリームの生産と包装
ポリスチレンシートを熱成形して作られた白色カ
実験に使用したのは低脂肪サワークリームで,
ップである。カップの着色には酸化チタン(Ti02)
主な成分は,2.79%のタンパク質,3.4%の炭水化
が用いられ,白色にすることで紫外光を遮断し,
物,18%の脂肪と76%の水分である。熱成形され
約80%の可視光をカットできる。以前,カップは
た次の3種類の300g入りの無地のカップに充填し
アルミリッドでシールされていたが,現在は環境
た。
問題により白の顔料入りのポリマーに置き換えら
(1)チ タン酸化物を包材に入れた白のPSカップ
れている。そのため,光はすべてのカップ表面か
(平均壁厚:300μm)
ら透過することになった。
(2)中間層に酸化アルミニウムを入れた中程度のバ
乳製品の光酸化を検出する方法には,官能試験,
リアーを持つ白のPSカップ
(平均壁厚:300μm)
過酸化物値,ガスクロマトグラフィーおよび蛍光
(3)中間層の酸化アルミニウムに加え,カーボン
分光分析法などがある。乳製品の酸化を測定する
ブラックを入れた高バリアーの白のPSカップ
には,官能試験が最も適切で感度が良い方法であ
(平均壁厚:330μm)
る。前面蛍光分光分析法は非破壊で,チーズ,サ
サワークリームを充填した後,ポリエステルリ
ワークリーム,バターの光酸化に関して官能検査
ッドでシールし,発酵させるために22℃で保存し
と非常に良い相関関係が得られている。蛍光分光
た。18時間発酵させた後,4℃に24時間保管した。
分析法による乳製品の光酸化の評価は,光感受性
実験装置
物質の破壊を測定するものである。
サワークリームカップを特殊キャビネット中に
Riboflavinは,乳製品の主な感光性の指標とな
入れ,ノルウェーの食品雑貨店で用いられる標準
る物質であると長い間考えられてきた。また天然
的な蛍光灯を垂直に取り付け,サンプルを蛍光灯
食品と容器
171
2010 VOL. 51 NO. 3
から10cmの所に置き36時間露光させた。それぞれ
るにおいとフレーバーは,経験的にフルーティー
のカップの側面に約5×7cmの面積で蛍光灯の光
な新鮮なにおいと甘みであると解釈されている。
2
が当たるようにした。蛍光灯の照度は2.27W/m ,
日光によるにおいとオフフレーバーはタンパク質
5610ルクスである。
の酸化により起こり,日光にさらされた乳製品の
光透過率と放射照度測定および蛍光測定
特徴ある特性である。腐ったようなにおいとフレ
カップの光透過率と光の照射度を測定後,蛍光
ーバーは,すべて不快臭(草,乾草,ステアリン,
スペクトルをサワークリームサンプルで直接測定
ペンキ臭)に含められた。
した。試料はサワークリームの露光エリアからス
統計的な分析
プーンを用いて採取した。試料はサンプルキュベ
分散分析は,
PROC GLMを使って実行され,
評価
ットに入れ,そこに測定のための直径5cmのフラ
者とカップの影響だけでなく評価者×カップの相
ットな露光部分を設けた。蛍光スペクトルの410
互作用はランダム要因としてモデル化された。
〜750nmの波長範囲を測定した。励起光は300Wの
結果と考察
キセノンライトで発生させ,10nmのバンド幅の干
光透過
渉フィルターを通した。分析の前にはいかなる種
第1図は,カップを通過した光の透過率を示し
類の前処理もせず,コントロールは暗所に置いた
ている。いずれも 400nm以下の光は透過しなく,
カップを用いた。
これは白い顔料のUV遮断効果によるものである。
官能試験
また,白カップが他のカップに比べ比較的多くの
サワークリームの評価は,官能検査の訓練を受
光が透過するのを示している。中間層にカーボン
けた10人の選ばれたパネラーにより,専用の官能
ブラックを入れた高バリアーカップは,ほとんど
試験室で行われた。
光が透過していない。
試料はそれぞれの3種類のカップの光があたっ
照度
た部位から採取され,13〜15℃で実施された。
第2図にカップを透過した照度を示す。これは
試料は2回ランダムに出され,水とクラッカー
どの領域のスペクトル光が透過するかを示してい
はテストの間に口の中の味覚を洗浄するために用
る。白カップは7カ所でスペクトルのピークがあ
いられた。においと味の強度が評価され,味覚の
り,光が透過するスペクトル領域であることを示
評価は,1(最も低い強度)〜9(最も高い強度)
している。
中バリアーカップは545nmと613nmに比
に等級分けされた。
較的大きいピークと588nmと713nmに小さいピー
評価された官能特性は,総合的なにおいの強度
クがあるが,
高バリアーカップは幾つかのわずかな
(酸み,日光臭,不快臭)と総合的なフレーバー
ピークがあるだけである。これは,このカップがほ
(酸み,苦み,日光,不快)であった。酸みのあ
とんど光を透過しないことを意味する。
白カップ
白カップ
放射照度(W/m2)
透過率(%)
中光バリアー
高光バリアー
高光バリアー
波長(nm)
波長(nm)
第1図 種々のサワークリームカップの光透過率
食品と容器
中光バリアー
第2図 種々のサワークリームカップの放射照度
172
2010 VOL. 51 NO. 3
前面蛍光測定
露光したサワークリー
ムの蛍光スペクトルを測
定した。
暗所に保管されたサワ
ークリームのスペクトル
と露光前のスペクトルは
第1表 異なる光バリアーのカップに包装されたサワークリームの官能評価
サンプル
不快臭
の強度
白カップ
7.79a
中程度の光バリアー 6.62b
高光バリアー
6.10b
暗所保管
6.33b
におい
日光臭 不快臭 オ フ フ レ ー
バーの強度
4.28a
6.92a
7.90a
3.93b
3.81b
7.24ab
2.40c
1.70b
6.63b
c
b
2.35
1.20
6.58b
フレーバー
苦み
日光 不快な
フレーバー
1.13b
4.91a
4.43a
7.77a
2.55b
4.27a
4.53a
4.31b
4.94a
3.48b
2.68b
1.51c
a
b
b
5.42
3.39
2.52
1.17c
酸み
コントロールサンプルは暗所保管,1=強度最低 9=強度最高,値の肩付き文字が同じものは有意差(p>0.05)がないことを示す
同レベルであり,高バリアーカップに保存された
おり,酸みフレーバーは低く,不快臭は高バリア
サワークリームもこれらのピークと一致する。中
ーカップや暗所保存カップに比べ高いスコアであ
バリアーカップのピークはいくらか下がり,白カ
った。中程度のバリアーを持つカップのサワーク
ップはすべての光感受性物質で明確に下がった。
リームは,白カップほどの不快臭はなかったが,
410〜500nmの領域に蛍光強度の微増があり,これ
高バリアーカップと比べると酸化は進んでいた。
は蛍光に酸化された製品の構造に起因する。
包材を通過する光の測定と光感受性物質の吸収
官能試験
から得られる組み合わせ情報は非常に有用である。
第1表に官能検査の結果を示す。白カップに保
この情報から,ほとんどの光感受性物質が光酸化
存したサワークリームは,36時間の露光後で非常
を引き起こすことが説明でき,包材から光が透過
に不快なにおいがするようになった。このにおい
する領域を最小限にすることで,種々の食品の光
の評価は9段階で 7.8だった。このサンプルの酸
酸化を防ぐことができる
み(望ましい特性)は非常に低かった。
包装材料における,光バリアーの効果
高バリアーカップは,パネラーが暗所に保管し
この実験により,光バリアーとしてカーボンブ
たカップのサワークリームと区別がつかない程,
ラック層を入れることで,光暴露によるサワーク
良好な保護性を示した。中バリアーカップに保存
リームの劣化を保護することができることが示さ
されたサワークリームは,白カップと高バリアー
れた。酸化アルミを中間層に使用した場合は,サ
カップの中間のレベルであった。中バリアーカッ
ワークリームの光酸化を防止するには不十分であ
プの不快なフレーバーは,白カップと高バリアー
ることが示された。
カップの間で有意差が見られた(P<0.05)。官能
光バリアーは,例えば容器の製造の前に包材の
評価によるフレーバーは高バリアーカップのみが
ポリマーに顔料を入れたり,ラミネートフィルム
サワークリームの十分な保護性を示した。
の一層を金属蒸着したりすることでも得られる。
チーズやバターによる以前の研究でも,官能分
また,パッケージの外面に光を防ぐインクやラベ
析と蛍光測定の間で良好な相関があることが示さ
ルを用いることでも得られる。
れており,この実験においても官能分析と蛍光測
結論
定の間で高い相関があることが示された。
現実的なタイプの光源で36時間露光した高バリ
光吸収の臨界領域を同定する情報の組み合わせ
アーカップに入ったサワークリームのみが,光酸
サワークリーム中に存在する光感受性物質は可
化に対し十分な保護性があった。この実験では,
視領域の光を吸収する。さらに,葉緑素に似た化
光バリアー材としてカーボンブラック層を包材に
合物や1〜2個の未確定tetrapyrrolsなども可視
組み込むことにより,サワークリームの劣化を防
領域の光を吸収する。
ぐことができた。
官能評価では中程度の光バリアーのカップは,
光が透過する領域を最小にすることで,種々の
かなり高い日光臭やフレーバーのスコアを持って
食品の光酸化を防げることが分かった。
(田嶋一雄)
食品と容器
173
2010 VOL. 51 NO. 3
水分活性と食品における熱力学
Food Technology(U.S.A.)73(’09・10)
文献 №5534
水分活性は重要な熱力学的な概念であり,食品
生産管理には重要であるが,精確に水分含量を測
の保存性や物性などに大きな影響を及ぼす。水分
定するには一晩乾燥させるのが標準的な方法であ
活性が一定値の条件下では,微生物の毒素産生や
る。その他の方法に,カールフィッシャー滴定,
発育が困難であるため,食品を低い水分活性下に
NIRやNMRを用いたものがある。
置くことは,危機管理上非常に重要である。
食品により水分含量は幅広く異なり,同一の食
水分活性(water activity)という言葉は,水溶
品であっても,水分の分布が異なる場合もある。
性成分,イオンおよび不溶性成分を含む水系の化
水分含量は通常,重量を基に示されるが,水分活
学的ポテンシャルも意味する。水分活性とはある
性はモル分率を基に示される。モル分率とは全物
系に存在する水の性質を意味するということがで
質のモル数に対するある物質のモル数の割合を示
きる。既存の水分活性に関する研究については,
したものである。ある物質の1モルとは原子重量
グリセリンや糖類のような保湿剤に関するいくつ
と同じ物質量である。原子重量は炭素12の質量を
かの論文があるが,これらは保湿剤がある系の水
12として定義し,水の分子量は18である。1モル
分活性に及ぼす影響を述べるに留まっており,例
の物質は,アボガドロ数として知られる6.02252×
えば,糖類の水分活性に及ぼす影響を知ろうとす
1023個の分子から成る。モル分率の計算は,既知
る場合,意味をなさない。また,水分活性につい
の純物質が溶質の場合は簡単であるが,分子量が
て,これを一定の系に含まれる水の物理的状態や
大きい物質の混合溶液である場合やイオンが存在
存在状態をイメージすることにより説明しようと
する場合はより困難になる。また,食塩のような
しているが,実際のところ,複雑な系においてこ
イオンになる物質の場合,溶液中での解離の程度
れらを知ることは非常に困難であり,実験手法の
は異なる。それぞれの個別のイオンは1つの物質
ほとんどは実証的なものであるため重要ではない。
として挙動し,相互作用をする。このことが,モ
すなわち,現在行われている食品の水分活性の
ル分率に基づいた溶液特性の論理的な予測を困難
研究は,実証的な手法であり,熱力学的な観点か
にしている。一方でこの概念が溶液の特性を理解
らの本質的な水分活性の研究が望まれる。また,
することのひとつの手助けとなっている。とくに,
水分活性の概念を理解するうえで,最も重要な点
ある溶液の水分活性は,溶液中のモル分率と同じ
は,水分活性は水分含量と密接な関係はあるが,
であることを知ることは重要である。水の分子量
これとは全く別に,水分活性とは平衡特性である
は,食品を構成する他の物質と比較して小さく,
ということである。
同じ質量であっても分子の数そのものが多いため,
水分含量
モル分率は水分含量が低くても大きい。例えば,
水分含量は真空下で乾燥し,
重量減少から求める
加工された肉は水分含量が10%と非常に少ないが,
のが一般的である。市販の水分測定機は,天秤の
その水分活性は0.4もある。
上にヒートランプやマイクロウェーブが装着され
平衡特性
ており,数グラムの試料を載せてわずか10分程度
ある系において,すべての物質の化学ポテンシ
で水分含量を比較的正確に測定できる。これらは
ャルが同じであれば平衡が存在する。例えば,乾
食品と容器
174
2010 VOL. 51 NO. 3
いた食品が湿度の高い場所に置かれた場合,食品
水分活性において,脱水過程における水分含量が,
は空気中から水分を得,閉鎖空間であれば空気は
吸水過程における水分含量よりも高いことを意味
水分を失う。これと逆に,食品から乾燥した空気
している。同じサンプルの脱水,吸水を繰り返す
へ水分が奪われることもある。ほとんどの人は,
とヒステリシスは減少する。複数回繰り返すこと
これらの現象を物理学や熱力学の裏付けなしに経
により物質の性状,例えば結晶性が変化するため
験している。
かも知れない。また,大きなサンプルの場合,内
「平衡」の概念を理解することは,水分活性を
部の水分が脱水されにくいといったように物質移
直接簡便に測定することにつながる。気相は液相
動が関与しているかも知れない。多くの場合,脱
や固相と平衡状態にある場合,液相や固相と比較
水曲線と吸水曲線の平均値で用は足りる。温度は,
して,より理想的な挙動を示す。気相においては,
水分収着等温曲線には比較的影響しない。
化学ポテンシャルや水分活性は単にモル分率であ
水分活性の応用
り,また,モル分率は一定温度下における各物質
腐敗菌や毒産生細菌は,ある水分活性以下にお
の分圧比である。気相においては物質間の距離が
いては成長しない。例外的に0.6以下でも成長す
大きく相互間の影響が小さいため,気相における
る微生物も存在するが,一般に水分活性が0.85以
現象は液相や固相におけるそれよりも理解しやす
下では,その食品は十分安全だとみなされる。ほ
い。さらに,気相中の水は相対湿度として知られ,
とんどの病原体は水分活性が0.95以下の環境下で
百分率で示される。
防ぐことができる。ドライフルーツ,ジャム,ゼ
空気中に含まれている水が結露する温度は露点
リー,魚の塩干品,および熟成したチーズのよう
(dew points)と言われ,水分を含む空気の相対湿
な半固形食品は水分活性が0.60から0.85の間にあ
度と相関がある。露点はよく天気予報などで紹介
る。水分含量を低減させることは,食品の保存性
されている不快指数の指標でもある。露点が低け
を向上させるための一つの手段であり,ブランチ
れば相対湿度が低いことを意味する。露点,相対
ングや保存料を添加することと併せて用いられる。
湿度,水分活性を測定するのに,冷却された鏡を
食品の腐敗を防ぐためのこれらの方法は,缶詰の
用いた機械もある。
ような過酷な処理を行って保存性を付与すること
閉鎖系のチャンバー内で,食品の相対湿度と水
よりも,呈味や風味に及ぼす影響は少ない。保湿
分含量を同時に測定する機械がある。一定温度で,
剤は比較的分子量が小さい物質で,水分が抜けて
水分活性に対する水分含量の値をプロットすると
しまうと柔らかな食感が失われてしまう食品に用
等温(isotherm)曲線が得られる。食品のために経
いられる。保湿剤の例として,グリセリン,プロ
験的に求められた等温曲線は,Handbook of Food
ピレングリコール,ソルビトール,コーンシロッ
Isotherms(M.R.OKOS)など多くの例がある。
プ等がある。袋詰めにされたドライフルーツとシ
その他の技術として,ガラス製ベル型容器のよ
リアルの詰め合わせにおいては,異なる水分活性
うな閉鎖容器に,既知の物質と一緒に食品サンプ
の物質の間で水分が移行するため,ドライフルー
ルを入れて水分活性を知る方法がある。硫酸や飽
ツはさらに乾燥し,固くなるのに対してシリアル
和食塩水などがこの目的で使用される。一定時間
は柔らかくなる。このような保存中の変化を和ら
経過後,サンプル,大気,標準物質は,その温度
げるための解決策としては,フルーツにシリアル
においてすべて平衡状態にあるため水分活性を知
の粉を添加し,フルーツは半乾燥状態のものでは
ることができる。水分収着等温曲線は,吸水過程
なく,ドライフルーツを用いることが挙げられる。
と脱水過程ではやや異なることが観察されている。
高温高圧処理等の,ある意味で物理的な食品への
この現象は,ヒステリシスと呼ばれている。概し
保存性付与法よりも水分活性の概念をよく理解し,
て,脱水過程における曲線は,吸水過程における
これを上手に利用することの方が食品をおいしく
曲線よりも上の位置にあるが,このことは同一の
保存する上で優位である。 (大迫一史)
食品と容器
175
2010 VOL. 51 NO. 3
新しい食品システムを創出するナノスケール科学
Food Technology(U.S.A.)36(’09・9)
文献 №5520
ナノスケール科学は,食品の安定化,生物活性
共糖酸(polylactic-co-glycolic acid),キトサン
成分の付与から,新規抗菌活性を有する食品包装
を含む種々の可食ポリマーがある。ビタミンE,
の創出まで,新規の食品開発や既存食品の改良を
itraconazole(抗菌物質),着色剤としてのβカ
通じて,食品産業に大きな利益をもたらす可能性
ロチンを含む重合ナノ粒子について,合成方法,
を有している。未だ開発初期ではあるが,商品化
成分,大きさ,形態など,各種ナノ粒子の性質を
に近いものもわずかにあり,技術に潜在する安全
説明した。
性の問題やその規制に関して関心が払われている。
食品中の「ナノ」
IFT第4回国際食品ナノ科学カンファレンス
(2009
J.M.AGUILERA 教授(P.Universidada Catolica de
年6月6日,アナハイム)では「食品ナノスケー
Chile)は,自然,無添加の食品原料において,
ルサイエンスと技術−研究室から食卓へ」会議が
ナノ科学と見なせる自然現象を紹介した。デンプ
開催された。その概要を紹介する。
ン粒中のアミロースとアミロペクチンの配置のよ
明らかになってきた利用方法
うな食品消化や食品構造形成プロセスはその一例
食品の栄養成分および機能性成分のデリバリー
であり,雌牛の乳房がナノスケールレベルでタン
システムに関するセッションでは,化学薬品,生
パク質と脂肪を合成し集めて排出するナノ装置で
物薬品,微生物薬品など易分解性物質を生体内の
あること,ホモゲナイズや微細粉砕など食品のミ
特定部位にデリバリーするシステムが報告された。
クロ構造的変化を生じるプロセスではナノスケー
J.WEISS教授(ドイツ,Hohenheim大学)は,リ
ル粒子が形成すると予想されることを報告した。
コペンやカロテノイド等生理活性物質のデリバリ
ナノテクノロジー規制
ーを目的として食用固体脂質ナノ粒子(solid lipid
A.McCARTHY氏(食品安全・応用栄養センター)
nanoparticles:SLNs)食品ナノエマルジョンの制
は,食品ナノテクノロジーのU.S.規制(最新版)
御結晶化による製造,50〜500nmサイズ)につい
について説明し,ナノ材料の安全性を評価するこ
て報告した。サイズには核形成や結晶成長過程が
とを表明した。現在FDAはナノテクノロジーに定
影響し,結晶成長は最初の液滴のサイズと液滴を
義付けをしておらず,現在の評価は,サイズに加
安定化する界面膜成分によって決まる。SLNsの
えて同一性と毒性への影響に基づいている。FDA
主な利点は,有機溶媒を用いないで大規模生産が
は製品安全性ガイダンスを作成中であり,この技
可能,機能性成分の高濃度達成が可能,長期間安
術の発展のためには,産業界とFDAとの密接な協
定,スプレー後乾燥による粉状化が可能なことで
力が必要であることを強調した。
ある。
IFTとナノ科学
他 の セ ッ シ ョ ン で,C.SABLIOV助 教(Louisiana
B.MAGNUSON氏(Cantox Health Sciences Interna-
State大学)が,機能成分の制御された放出および
tional,IFTナノサイエンスアドバイザリーパネル
標的へのデリバリーを可能にするための重合ナノ
メンバー)は,ワークショップなどの啓蒙活動,
粒子について報告した。重合ナノ粒子はポリマー
政府部局の種々の声明,IFTジャーナル発刊など,
と界面活性剤から作られ,アルギン酸,ポリ乳酸
IFTによる食品ナノサイエンスイニシアティブに
食品と容器
176
2010 VOL. 51 NO. 3
ついて報告した。
の改善が報告された。
多様な利用方法
B.NORWOOD氏(nanoAgri Systems Inc.会長)は
現在と未来の商品化に関するセッションでは,
食品包装の抗微生物コート化システムの構築の取
3つのテクノロジー(添加物と生理活性成分を体
り組みについて報告した。包装材をコートする
内の標的部位にデリバリーするためのNutraLease
openair techniqueを基に果物・野菜産業を狙っ
テクノロジー,食品強化のためのナノ構造鉄成分,
た技術で,システムには抗微生物溶液をナノサイ
食品包装のための抗微生物コーティング)を中心
ズ液滴に変換するNanomiser装置を含み,できた
に議論された。
液滴は炎で燃焼され蒸気になり,包装材をコート
NutraLeaseは,エルサレムHebrew大学とFrutarom
する。サルモネラ,リステリア,大腸菌において
とのジョイントベンチャーである。N.GARTI教授
増殖遅延効果が確認され,最近この機械の携帯版
(Hebrew大学)は,栄養成分や生理活性物質のデ
も開発された。
リバリーを目的とした,ナノサイズ自己集合溶液
非食品産業からの教訓
ビ ヒ ク ル(nanosized,self-assembled liquid vehi-
A.C HAKA氏(National Institute of Standards
cles:NSSL)から構成されるNutraLeaseテクノロジ
and Technology(NIST)
)
は,
非食品分野の経験を
ーを紹介した。NSSLは水に溶けやすく希釈が容
学ぶことで,食品分野も大きな利益を得ることが
易な新規ナノベースエマルジョンである。オメガ
可能であることを説明した。医学/薬学,エレク
−3脂肪酸,カロテノイド(リコペン,ルテイン,
トロニクス,宇宙科学,自動車,化学,林学の分
アスタキサンチン),CoQ10,フィトステロール,
野が紹介され,直面する課題はすべての産業およ
イソフラボン等を含む種々のビヒクルが開発され,
びそれらの境界分野を共通化するものであり,世
特許化されている。NSSLは相分離や濁りを生じ
界的かつ相互訓練を含む協調的な努力の必要性が
ないため透明な飲料の製造に適し,NSSLを基本
報告された。
にした製品は現在世界的に商売されている。
同氏は食品産業もNIST Cross-Industry Alliance
食品強化はミクロ栄養欠乏を解決でき,鉄強化
に加わることを奨励し,標準化機関としてのNIST
は鉄欠乏併発症を解決するために使われているが,
の役割を説明した。NISTは製品やサービスにお
鉄源は溶解性が低いため容易には生体では利用さ
ける新標準,認証標準物質,測定技術/metrology
れず,また生物が利用しやすい硫酸鉄材料は,食
を開発しており,金(10,30,60nm)やポリスチ
品に色や味に好ましくない変化を与え質的な問題
レン(60nm)等の標準物質は既に開発済みである。
を生じる。
結論として,このナノサイエンス会議では,ナ
F.H ILTY 氏(the Swiss Federal Institute of
ノテクノロジーが食品産業に大きな利益をもたら
Technology(ETH))は,ナノサイズ鉄化合物を用
しうることが明らかにされた。特に製品の安全性
いれば,in vitroおよび動物実験において生物利
の確認と規制にかかわる環境が整備されれば,技
用能を改善でき,さらに食品の望ましくない質的
術がもたらす最高の利益を享受できると期待され
変化を最小限にできることを報告した。サイズの
る。食品産業界は,先行する他の分野から真摯に
縮小は火炎溶射熱分解(flame spray pyrolysis)
学びかつ協力し,さらに研究者,規制関係者,製
を用いて可能である。
造業者間で密接に協力することが必要である。
亜鉛等,他のナノサイズ化合物でも生物利用能
(矢部希見子)
食品と容器
し
177
2010 VOL. 51 NO. 3
冷媒の天然素材化への動き
Food Processing(U.S.A.)49(’09・10)
文献 №5532
食品・飲料業界で冷媒として広く使われてきた
アンモニアと二酸化炭素
ハイドロクロロフルオロカーボン
(hydrochloroflu-
天然素材冷媒への転換を積極的に進めるNestlé
orocarbons:HCFCs)
は2009年末でその姿を消すこと
社では90年代以来R-22に替えて二酸化炭素(CO2)
となっている。90年代に姿を消したクロロフルオ
の使用に特に力点を置いているが,いまのところ
ロカーボン(chlorofluorocarbons:CFCs)と同様,
天然冷媒としてはアンモニアが最も効率的な素材
HCFCsはオゾン層を破壊し,地球温暖化の原因
であり,これを減らすためにはより高圧の画期的
にもなるとして1987年のモントリオール議定書,
なCO2システムが必要だが,まだそのようなシス
1997年の京都議定書でも槍玉に挙げられてきた。
テムは現れていないという。
既に90年代以来,大手企業においてはR-22と呼
最も一般的なのはアンモニアとCO2の併用シス
ばれるHCFCsは使用が停止されている。
食品・飲料
テムで種々あるが,冷却の心臓部はアンモニアを
最大手のNestlé社では,いまのところまだ禁止と
使っており,CO2はシステム内を循環して各工程
はなっていない空調用のハイドロフルオロカーボ
の熱を拾い,その熱をアンモニアで取り去るとい
ン
(HFCs)まで含め,すべての合成冷媒の使用を中
うシステムとなっている。Nestlé社では,コーヒ
止し,天然素材冷媒への転換を進めている。こう
ー濃縮液,調理食品,アイスクリーム等,用途に
した天然素材への転換の動きは業界のコールドサ
よってさまざまなアンモニア−CO2併用システムを
プライチェーンの上流から下流まであまねく広が
使っ ている。
りつつあり,Coca-Cola社,PepsiCo社,Unilever社,
新しい循環システム
Carlsberg社,McDonald's社といった名だたる企
従来のポンプ式循環システムは,冷媒を蒸発コ
業もこれを後押ししている。
イルに送るためにシステムの基点となるエンジン
合成冷媒の欠点
ルームから500〜800フィートにも達する長い配管
R-22は当初,アンモニア冷媒が問題となったと
が必要で,またこの長い配管内を通って冷媒と蒸
きにこれと同等の性能を持つとして各社が採用し
気を基点まで戻すための余分なエネルギーが必要
たものだが,大気中に漏れ出すと相当の温暖化効
であったが,
JBT Food-Tech社が開発したローボリ
果をもたらしてしまう。コスト的にもアンモニア
ュームシステム(LVS)は,途中で冷媒を窯に集め,
の1ドル/1ポンドに対し,ざっと10ドル/1ポ
蒸気だけを元に戻すので,追加的設備が不要でそ
ンドまで上昇し,今後もさらに上がる見通しとな
の分エネルギー必要量も減らすことができる。
っている。
同システムは2001年の発売以来大きく伸び,現
合成冷媒の退潮につれて天然素材冷媒のコスト
在では同社冷却機販売の60%を占めるまでになっ
メリット,エネルギー効率メリットが相対的に増
ている。これは同システムが従来型の冷却システ
してくるわけだが,ユーザー,サプライヤーの双
ムにも組み込むことが可能であることにもよって
方とも長期的な視点に立った切替え戦略を持って
いる。また,新規に同システムを設置する場合で
おく必要があるだろう。
も,そのコストは従来型のシステムと同等かそれ
以下で,エネルギーコストの削減だけでも大きな
食品と容器
178
2010 VOL. 51 NO. 3
メリットを得ることができるという。例えば,あ
る食品工場が既存の4工程からなる冷却システム
をLVSを使って5工程にアップグレードしたとし
て,1日あたりのエネルギー削減は569ドルにな
るという(写真1)。
今後のHCFCs規制スケジュール
HCFCs禁止の最終期限は2030年1月1日とされ
ているが,その動きは2010年1月1日から始まる。
2007年9月版のモントリオール議定書で提唱さ
れているタイムスケジュールは以下の通りとなっ
ている。
・2010年:75%の削減。2010年1月1日以前に作
られた装置向けを除き,R-22(HCFC-22)およ
びHCFC-142bは生産も輸入もしない。
・2015年:90%の削減。2010年1月1日以前に作
写真1 JTB社のコンパクトなLVSシステム
られた装置の冷媒に用いるものを除き,いかな
142bは生産も輸入もしない。
るHCFCsの生産も輸入もしない
・2030年:100%削減
・2020年:99.5%の削減。HCFC-22およびHCFC-
(大池静男)
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食品加工における微生物・酵素の利用
<伝統食品編>
食品製造と微生物の関りは微生物の存在を認識するよりもはるか以前に始まる。近年,これらの技術はバイオ先
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編>として,微生物を利用した伝統的な発酵食品について専門の方々に解説をしていただいた。ご希望の方は下記
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B5版/本文183ページ 定価2,000円(消費税込み,送料別)
《内容》監修に当たって,Ⅰ 総論:発酵と微生物(日本大学生物資源科学部教授 農学博士 春見隆文)/Ⅱ 醸造食品:しょうゆ概論,しょうゆトピックス(㈶日本醤油技術センター技術第1部部長 田上秀男)/味噌という
発酵食品(新潟県味噌工業協同組合連合会顧問 農学博士 今井誠一)/味噌の機能性(新潟県農業総合研究所食
品センター主任研究員 渡辺 聡)/納豆-最近の研究-(共立女子大学家政学部食品加工学研究室助手 三星沙
織・同家政学部教授 農学博士 木内 幹)/漬物(発酵漬物)
(東京都立食品技術センター副参事研究員 農学
博士 宮尾茂雄)/Ⅲ 酪農製品:発酵乳・乳酸菌飲料(明治乳業株式会社食品開発研究所 野路久展・河合良尚)
/チーズ(チーズの多様性と乳酸菌由来酵素)
(日本獣医生命科学大学応用生命科学部教授 博士(農学) 阿久澤
良造)/バター(発酵バター)概論(小岩井乳業株式会社小岩井工場乳製品製造部部長 杉田忠彦)/Ⅳ 酒精飲料:
ビール小史(1),ビール小史(2)ビール・発泡酒・第3のビール(キリンビール株式会社醸造研究所 川崎正人)
/清酒 概論,清酒の機能性(日本酒造組合中央会理事 農学博士 蓮尾徹夫)/焼酎(1)歴史,製法,焼酎(2)
焼酎の世界(鹿児島大学農学部生物資源化学科焼酎学講座教授 鮫島吉廣)/ワインの科学(1)ワイン造りの基
礎知識,ワインの科学(2)ブドウ栽培とワイン造り(山梨大学大学院医学工学総合研究部ワイン科学研究センタ
ー教授 農学博士 高柳 勉)/蒸留酒と微生物(1)ウイスキー・ブランデーの基礎知識と微生物,蒸留酒と微
生物(2)蒸留酒の貯蔵・熟成・ブレンダー,蒸留酒と微生物(3)酒の世界(蒸留酒)と微生物・その楽しみ方(サ
ントリー株式会社品質保証本部品質保証推進部部長 冨岡伸一)/Ⅴ パン類:製パン技術とパン酵母(㈳日本パ
ン技術研究所常務理事所長 博士(農学) 井上好文)/冷凍生地製パン法と冷凍耐性パン酵母(
(独)農業・食品産
業技術総合研究機構食品総合研究所微生物利用領域酵母ユニット長 博士(農学) 島 純)/米粉を利用した製
パン技術(
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所食品素材科学研究領域糖質素材ユニット 主任研
究員 興座宏一)
缶詰技術研究会
食品と容器
電話 03(3663)7251 ファックス 03(3663)7253
179
2010 VOL. 51 NO. 3
今回のPACKAGING NEWSはBeverage World
金 賞
Pinky Vodka(写真2)
(U.S.A)誌が選定した2009年のGlobal Packaging
Design賞を受賞した飲料容器を紹介する。
「Pinkyのユニークな香水型ボトル容器は店の
本年の大きな変化は,新しくSpecial Jury Award
棚で非常に目立つ」とブランドのマーケティング
for Conceptual Design賞を導入したことである。
担当者は言う。この製品は2008年以来,世界の免
これはパテント申請中の刷新的なパッケージで,
税ショップでNo.2の売り上げをもつスーパープレ
シンプルなコンセプトをもち,しかも多くの意味
ミアムウォッカとなった。
を考えさせるものである。
Bimber Vodka(写真3)
Best in Show
Bimber Vodkaのマーケット担当者は,
このボト
2009 Grand Marnier Limited Edition Bottle
ルとパッケージは「現在,他市場に見られないよ
& Gift Box(写真1)
うだ」と言う。ラベルは本物のスズで作られ,パ
1880年 にL.A.MARNIER-LAPOSTOLLEに よ っ て 創 設
ッケージボックスはディナーパーティーで主催者
されたGrand MarnierはHouse of Grand Marnierの
の印象を与えるのに好適である。
旗艦リカーである。プレミアムのオレンジリカー
銀 賞
はエキゾチックなビターオレンジと最高級コニャ
Propel Fittness Water Line(写真4)
ッ ク の ブ レ ン ド 品 で あ る。MARNIER-LAPOSTOLLEフ
Pepsi社は同社のPropelフィットネスウオーター
ァミリーの6世代に渡って受け継がれたもので,
ブランドを,軽量で環境に優しい新しいボトルで
このボトルでは,象徴的な赤いリボンとワックス
新発売した。現在33%プラスチックを削減し,30
シールが取り除かれ,その場所は光沢のある赤い
%ラベル材を削減し,かなりのコスト削減とブラ
ラッカーでコートされている。
ンドの価値を強化した。
2009年の限定販売分は150本で,
“Joie de vivre”
新しいスリムなダイナミックな流れるようなデ
(フランス語で生きる喜びの意)のフランス魂が
ザインとスポーツグリップは,ブランドのメッセ
埋め込まれている。刷新的なギフトパッケージは
ージである“Life Propelled and Enhancing Your
ブランドの新しい広告キャンペーンで人を引き付
Life”を強力に伝える。
けている。
新しいパッケージは,世界的に使われている従
来の熱間充填システム同様に,主にアメリカで製
写真1
食品と容器
写真2
写真3
180
写真4
写真5
2010 VOL. 51 NO. 3
Bot Enhanced Water
(写真7)
Bot Beverage社は
2009年,Enhanced
Water分野で新しい製
品 を 追 加 し た。Bot
Enhanced waterの容器
写真6
デザインは,名前のよ
うに(botはBottleの俗
語),クリーン,モダ
写真8
ーン,シンプル,しか
も奇抜でカラフルなア
ニメ風のグラフィック
である。
銅賞4点は省略する。
Special Jury Awards
機能性
Cordina mar-Go-rita
写真7
(写真8)
造するために開発された新しい常温充填技術で製
このパッケージは従
造することもできる。
来の容器に比べ,冷凍,
Diet Rubyy Energy Drink(写真5)
冷蔵,氷の上など多用
Diet Rubyyボトルは,会議室からビーチで見ら
途に用いることができ
れるような洗練されたデザインとなった。再封可
る。さらに,販売担当
能なアルミニウムボトルはWerner Design Werksに
者は,パッケージは製造において75%エネルギー
よってデザインされ,その目的は優雅でより高価
消費が少なく,86%省スペースなので環境に優し
なスピリッツボトルの横に並べても,バーの後の
いと言う。
棚で目立つことである。Diet Rubyyの白色の艶
環境保護性
消し仕上げは,繊細さとタトゥーアートのような
Aquapax(写真9)
際立った優雅さをもつ。
本ブランドのパッケージは,昨年(2008年)賞
Mellow Day and Mellow Night(写真6)
を 獲 得 し た あ と 再 デ ザ イ ン さ れ た。創 始 者 の
Mellow Day and Mellow Nightは最近出現した
N.TOMLINSONは8面体のTetra Pakカートンを選定
「やすらぎと睡眠促進剤(Relaxation Sleep Aid)」
した。1または2台のトラックで 100万個のカー
分野をターゲットにしようとしている。
Mellow Day
トン用包材が輸送可能である。同じ容量のあらか
は金属蒸着箔を用い,輝きと最小限のラベルデザ
じめ成形されたガラスやプラスチック容器では約
インを強調している。Mellow Nightは深い,暗色
50台のトラックが必要である。
写真9
のフルシュリンクラベルを用い,自然な睡眠のメ
Beverage World(U.S.A.)44(’09・10)
ッセージを伝えている。
文献No.5544 (十時正義)
食品と容器
181
2010 VOL. 51 NO. 3
特別解説
パンが膨らむごはんのパワー
お く に し・ と も や
京都大学農学部卒業。
2000年 農 林 水 産 省
食品総合研究所入所,
北陸研究センター主
任 研 究 員 を 経 て, 2009年 よ り( 独 ) 農
業・食品産業技術総
合研究機構食品総合
研究所穀類利用ユニ
ット長。農学博士
奥 西 智 哉
の減少の原因はごはん食が忌避されているからで
はじめに
めん
はなく,パンや麺といった選択肢が増えることに
わが国の食料自給率は40%を下回り,他の先進
よるシェアの低下に過ぎない。このような食生活
国と比しても低い水準で推移している。食料安全
の多様化は,社会が豊かになったことの証である。
保障上の観点から食料自給率の向上は必要であり,
私たちは米を食べる時,生米ではなく加熱してご
その有効な手段の一つとしては米の消費拡大が挙
はんにする。炊飯によりさまざまな変化(でんぷ
げられる。主要食料のひとつであるパンは主原料
んの糊化,酵素分解による糖の発生)を受けおい
の小麦粉のほとんどを輸入に頼っている。これを
しくなるからである。本稿では,ごはんを製パン
国内生産している米に置換することができれば,
材料のひとつとして用いたパン(「ごはんパン」)
自給率を向上させることができる。
について筆者の報告データを中心に解説する。
米をパン材料として用いるときの最大の問題点
「ごはんパン」の研究
は,米のタンパクはグルテンを作らないというこ
ひ
かゆ
とである。生米でも,炊飯しても,米粉に挽いて
実は,炊飯米1)あるいは粥状の米2)を生地に加
も,この事実は変わりない。生地(ドウ)を捏ね
えるパンは巷間にわずかだが散見される。しかし
ている間に小麦のたんぱく質がグルテンに変わり,
ながら,大きな広がりを見せていない。これは市
生地に粘りを与えパンの膨らみを維持する。パン
井の大手あるいはリテールベーカリーではいずれ
の膨らみとおいしさ(もちろん限度はあるが)は
も商品開発主体で,得られた開発データをほとん
比例しているので,米の割合が増加するにしたが
ど公表していない。それ故,パンの品質あるいは
ってドウからグルテンが減少し,製パン条件・パ
製法に関する科学的データが積み上がっていない
ン品質が悪くなる。このようにグルテンが含まれ
ことが一因だと思われる。そこで小麦粉の一部を
ていないので米を製パン材料として用いる場合,
ごはんで置換したパン(「ごはんパン」)をホーム
低い置換比率(20%程度)にとどめるか,あるい
ベーカリーで試作した。「ごはんパン」は予想に
はグルテンや増粘多糖類の添加が必要であり,こ
反し,グルテン等の添加無しでも小麦粉パンと同
れまで小麦粉を米粉に高比率で置換したタイプの
等以上のパンの膨らみを示し(第1図),品質も高
米粉パンでは,これらの添加剤なしに品質の高い
いものであった。これについては既報3)に詳しい
おいしいパンをつくることは困難であった。
が概要を以下にまとめる。
さて,日本人のほぼすべての人が毎日一度は炊
「ごはんパン」は,官能試験の外観(すだち・
飯米(ごはん)を食べている。つまり,米消費量
色相)や香りは,小麦粉パンと同等で,試食評価
こ
食品と容器
こう
182
2010 VOL. 51 NO. 3
(硬さ・味・もちもち感・しっとり感・甘み)は
評価が高かった(第2図)。新しく官能評価項目と
して加えられたもちもち感・しっとり感および甘
味は,これらの特徴がごはん自体にもあることか
らごはん率と相関が高く(しっとり感R=0.939,
甘味R=0.976),比例関係にあった。米粉パンに
比べて「ごはんパン」はしっとり感,もちもち感
第1図 材料別パンの膨らみ度合い
a:小麦粉パン,b:20%米粉パン,c:20%ごはんパン
といった米を利用したパンでよく見られる特徴が
表れやすかった。手に持ったときの評価(触感)
では,おおむね良好な結果を得たが,ごはんの粘
力を発揮する4)。
りに由来する触感がべとべとするとして好まない,
原料米のアミロース含量と「ごはんパン」の膨
とする評価もあり,単純にごはん率に従うわけで
らみは負の相関5) があるので,成分による好適
はなかった。クラスト(パンの表面)の焼色はご
品種の選定も可能である。
はん率が上がるのに従って濃くなった。炊飯過程
実用機製パンでの
「ごはんパン」の特徴
において増加する還元糖およびアミノ酸がごはん
には通常パン生地(ドウ)形成中の発生量に匹敵
するくらい含んでいることからメイラード反応等
平成21年11月に(独)農研機構食品総合研究所
で焼色変化を起こしたと考えられる。
の成果展示会がつくば市で行われた。研究成果紹
ごはんによる製パン品質向上は,ごはん単独で
介とともに「ごはんパン」の試食用頒布を行った。
の混合時だけでなく,米粉との共存下でもその能
頒布用パンの製造は(有)中川製パン所(新潟県
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䃂☨☳䊌䊮
䋨ዊ㤈☳䊌䊮䈫䈱Ყセ䋩
第2図 パンの官能評価結果
食品と容器
183
2010 VOL. 51 NO. 3
佐渡市)において2キロ仕込の縦型ミキサーで行
米を小麦の代替とした商品開発ではコストの面で
った(第3図)。丸パンを製造したが,ホームベー
不利が大きいので定着しにくい,だから新規食品
カリー製パンで見られた特徴が現れていた。つま
を創造するつもりで米の特徴を前面に出すべき,
り,グルテン等の添加なしでも小麦粉パン並みに
と一般には言われる。
「ごはんパン」の最大のメリ
膨らみがあり,甘みがあった。また,焼色もしっ
ットは品質の良い,しかも米パンの特徴が出しや
かりしたものであり,米粉使用のときに見られる
すいパンを製造できることである。さらにグルテ
「ボケる」ということがなかった。さらに,頒布
ンを使用しない,あるいは使用量を減らす,とい
は製パン翌日であったが,老化による品質劣化も
った特性を持つが,このことはコスト低減につな
見られず,しっとりした食感が特徴的であった。
がる。原材料に関しては一般的な製パン材料の他
製パン機材は小麦粉パンで通常使用されるものと
にごはんの調達が必要だが,5合のごはんで20%
まったく同じであり,製パン方法も特殊な過程は
ごはん率の食パンが約20斤できるので多くは家庭
入っていない。ただし,ミキシング条件を弱くす
用炊飯器で対応可能であるし,外食あるいは学校
る必要がある。通常,ミキシング終了はグルテン
給食用に米飯を供給する者からの調達も可能と思
形成の具合で判断するが,小麦粉パンと同様の判
われる。一方,ごはんは水分を多量に含むので,
断基準では,製パン翌日の品質劣化が大きくパサ
保管時の腐敗リスクが極端に上がること,また,
ついたものになった。適切な製パン条件の詳細な
ごはん輸送コストが上がることは大きなデメリッ
検討は今後の課題である。
トである。炊飯現場と製パン現場が距離的あるい
は時間的に近いことが望ましい。以上から「ごは
商業展開で想定される
メリット・デメリット
んパン」は地産地消に対応したリテールベーカリ
ー程度までの比較的狭い商圏が適していると思わ
小麦粉製品の分野に米を利用する場合,単純に
れる(第4図)。
都市部においても,例えば複合商業施設内にお
いてレストランで食材として供されなかった未使
用の炊飯米をベーカリーでの原材料として用いれ
ば,原材料コストだけでなく,廃棄ロスおよび廃
棄にかかるコストを削減することができるので,
エコノミーかつエコロジーである。
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第3図 製パン所での製パン風景(上段)と
焼成後のパン(下段)
食品と容器
ᄢ㊂䊶ᐢၞ
䋨⥄⛎₸ะ਄䋩
第4図 「ごはんパン」の原料およびパンの特徴と 想定される利用シーン(米粉パンと比較して)
184
2010 VOL. 51 NO. 3
み・しっとり感がごはん率によるので品質を落と
今後の課題
さずに砂糖あるいは油脂量を控えることも考えら
「ごはんパン」の品質向上要因は解明されつつ
れる。カロリー計算の面から,学校給食献立の幅
あるが,より詳細が明らかになれば,製パンに適
がどれくらい広げることが可能かも栄養の観点か
した炊飯方法あるいは製パン方法の提案により,
らの検討課題のひとつであろう。
品質の向上あるいは低コスト化を図ることができ
おわりに
る。また,パンの膨らみが非常によく,ごはん自
体は材料ミキシング中にドウに練りこまれて,原
日本の食料自給率は40%を下回っているので
型をほぼとどめない。副材料の導入余地は大きい
なんとかしないといけない。最近,こういう背景
と思われ,例えば,地域固有の食材を副材料とし
で米を使ったパン類を目にすることが多くなって
て用いた特色のあるパンの開発も行いやすい。こ
きている。平成20年に農林水産省が決定した「21
ういった副材料の共存下での製パン性への影響あ
世紀新農政2008〜食料事情の変化に対応した食料
るいは製パン法の開発は改めて検討する必要があ
の安定供給体制の確立に向けて〜」では米を「ご
る。国産の小麦粉は製パン性に劣るが,ごはんの
はん」としてだけではなく,「米粉」としてパン,
好製パン特性でどれくらい改善するかということ
麺類等に活用する取り組みを本格化し,米利用の
も自給率の観点から魅力的な検討である。
新たな可能性を追求することになっている。筆者
最近,学校給食用の米粉パンが多く見られるが,
も平成21年度から農林水産省で始まったプロジェ
米粉のみにグルテンを加えるパンであることがほ
クト研究「米粉利用を加速化する基盤技術の開発」
とんどである。グルテンは自給率および地産地消
中の「米粉の加工適性評価」ユニットに参画し,
にまったく貢献していない。米粉100%パンにごは
米粉の品質管理に利用できる品質評価指標や広域
んを用いることによりグルテン率を下げることは
流通に適した米粉パン製造技術開発についての課
コスト面も含めて有効と思われる。パンの甘さは
題のとりまとめを行っている。今後,米粉パンと
砂糖量で,しっとり感は油脂量で調整することが
「ごはんパン」が相互に関連づいて研究が加速的
多いが,「ごはんパン」の場合,その特徴である甘
に進むことを願っている。
参 考 文 献
1)大橋雄二,
「 パン及びその製造方法」,特開平04-104
ristics of bread prepared from wheat flours blended
754(1992)
with various kinds of newly developed rice flours.,
2)小畑紘一・滝川純生,「食品の製造法」,特許昭64-
J. Food Sci., 74(3): 121-130(2009)
6756(1989)
5)奥西智哉・岩下恵子,
「ホームベーカリで作るごはん
3)奥西智哉,「炊飯米を生地に添加したパンの官能評
パンの米品種特性」,食科工学会講演要旨集,141
価」,食科工,56(7): 424-428(2009)
(2009)
4)S.Nakamura, K.Suzuki, K.Ohtsubo, Characte-
食品と容器
185
2010 VOL. 51 NO. 3
業
界
ト
ピ
ッ
ク
ス
◇昨年の低アルコール飲料市場の動向
造が4%増の871万箱と3社がプラスとなった。
2009年,年間(1〜12月)の低アルコール飲
4社合計では3%増の6,492万箱だが,市場全体
料のパッケージ商品市場は推計で前年比7%増の
に 占 め る シ ェ ア は85.7 % と 昨 年 よ り2.7ポ イ ン
約7,600万 箱(350㎖ ×24本 換 算 ) 規 模 に 達 し
ト低下した。分野別ではカクテル類は28%減だ
たとみられる。糖類ゼロや糖質オフ,カロリーオ
ったものの,チューハイ類は10%増だった。
フといった「健康・機能系」商品が大幅増となっ
健康・機能系市場は昨年より2割以上増加し
たことに加え,大手スーパーなどが発売するPB
2,500万箱規模,市場の約3分の1を占めるまで
(プライベートブランド)商品の浸透が寄与した。
拡大したとみられる。ブランド別では〈−196
分野別でみると,チューハイ類は13%の2ケ
℃〉が,昨年発売の「ストロングゼロ」430万箱
タ増となり,市場占有率は85%に上昇した。増
の 底 上 げ で 大 幅 増,〈 氷 結ZERO〉 も47 % 増 の
加したチューハイ類に多い「健康・機能系」商品
336万箱となったことが大きかった。アサヒ〈す
が底上げした形。一方,カクテル類は14%減で
らっと〉も寄与した。
2年連続の減少となった。PB商品でも何種か発
チャネル別販売動向では,構成比はスーパーの
売されたものの,トップブランドのアサヒ〈カク
み上昇し,他のチャネルは低下した。販売チャネ
テルパートナー〉が2ケタ減となったのをはじめ,
ル 別 構 成 比 は ス ー パ ー は49.5 % と5.0ポ イ ン ト
サントリー〈カクテルカロリ。〉など主要ブラン
上 昇。 数 量 で は3,800万 箱 弱(350㎖ ×24本 換
ドが軒並み前年割れとなったことが響いた。
算 ) と な り 前 年 比21 % 増 と な っ た。CVSは3.5
PB商品は昨年も低価格を武器に伸長が続いた。
ポイントの低下。景気低迷下,スーパーや酒DS
市場規模は900万箱弱になったとみられる。昨
に比べて割高な店頭価格が影響しているようだ。
年も新たに〈セブンプレミアム〉などのブランド
数 量 は1,800万 箱 強 で10 % 減。 酒DSは0.7ポ
から発売された上,「健康・機能系商品」やアル
イ ン ト 低 下 し 構 成 比 は12.0 %。 数 量 は900万 箱
分8%以上の「高アル」商品などラインアップも
程度で前年並み。一般店やその他業態ではホーム
拡充されており,今年も堅調な動きとなりそうだ。
センターやドラッグストアなどが数量を伸ばし,
NB商品のブランド別動向では,トップブラン
構成比は14.7%と0.6ポイント低下したものの,
ドのキリン〈氷結〉はスタンダード商品の減少が
数量は1,100万箱強で昨年をわずかながら上回っ
響き6%減の2,011万箱となった。その他の上位
た。
既存ブランドもサントリー〈カロリ。〉19%減,
フレーバー別構成比では「レモン」が4.6ポイ
アサヒ〈カクテルパートナー〉24%減など,36
ント上昇し40.2%となった。アル分8%以上の
%増のサントリー〈−196℃〉を除き軒並み減
「高アル」商品や「健康・機能系」商品,アル分
少した。目立ったのは宝酒造〈焼酎ハイボール〉
3%商品など幅広いカテゴリーから発売されたこ
で,36%増と健闘した。昨年発売された商品で
とが影響したとみられ,昨年からの定番「レモ
はアサヒ〈すらっと〉が355万箱で最多,サン
ン」への回帰が続いているもようだ。「グレープ
トリー〈ほろよい〉が202万箱で続いた。7月
フ ル ー ツ 」 の 構 成 比 は3.2ポ イ ン ト 低 下 の15.3
発売のキリン〈コーラショック〉は約6カ月間で
%,「その他」は1.3ポイント低下の44.5%だっ
174万箱を記録した。
た。
主要4社(キリン,サントリー,アサヒ,宝
容 器 別 の 構 成 比 は350㎖ が67.5 %( 前 年65.9
酒造)の動向をみると,キリンが2%減の2,363
%),500㎖ が24.1 %( 同22.6 %) と い ず れ も
万 箱 と な っ た も の の, サ ン ト リ ー が11 % 増 の
上昇し,合計で9割強を占めた。
2,119万 箱, ア サ ヒ が 1 % 増 の1,138万 箱, 宝 酒
食品と容器
(醸造産業新聞社 編集部)
186
2010 VOL. 51 NO. 3
技術コーナー
ᬌᩏㇱ䋨⿒ᄖ✢䉶䊮䉰䋩
検査部(赤外線センサー)
リジェクト
䍶䍚䍼䍈䍖䍢
ピロー包装容器の
ヒートシール部検査装置
サン付きコンベア
䉰䊮ઃ䈐䉮䊮䊔䉝
ㅴⴕᣇะ
進行方向
第1図 ヒートシール検査用試作機
は人件費の増大,検査精度のあいまいさなど問題
はじめに
点も多く抱えており,このため高精度で低価格な
近年,多くの食品はプラスチック製(PE,PP,
検査装置の開発が求められている。
PETなど)のカップ・パウチ容器に充填され,注
そこで大和製罐㈱では,プラスチック容器のヒ
入口をシール剤でヒートシールした製品が数多く
ートシール部検査方法について研究開発を進め,
販売されている。このような容器は消費者にとっ
赤外線センサーを利用したヒートシール検査装置
て簡便かつ安価に入手でき好評を得ている。
を開発した。今回は多種多様な容器の中でピロー
また,食の安全・安心について消費者の関心が
包装容器を対象としたヒートシール検査装置を紹
一層高まってきている状況のなか,各食品メーカ
介する。
ーは安価で高品質な製品を消費者へ提供するため,
検査装置の構成
食品材料の安全性や衛生面を考慮しながら製造工
程の合理化・自動化を進め,不良製品が発生しな
第1図は本検査装置の試作機である。検査装置
いよう,工程管理,衛生管理に十分配慮し製造を
は,赤外線センサーと判定回路からなる検出部と,
行っている。
製品を一定方向に整列し搬送するサン(桟)付き
しかし,出荷した製品の中にはクレームとなる
ベルトを利用したコンベヤーから構成される。
不良製品が発生する。このような不良製品で特に
第2図は赤外線センサーと容器の配置図であり
問題となっている欠陥の一つが密封不良である。
試作機を真上から見た図である。検出部には,ピ
密封不良の発生原因は,充填機による充填密封時
ロー包装容器のヒートシール部に噛み込んでいる
に充填ノズルからの液垂れや液はね等により内容
内容物の有無を判別するために透過型の赤外線セ
物がヒートシール部に付着し挟まって生じる場合が
ンサーが設置されている。容器は同一方向に整列
か
多く,特に内容物に固形物,繊維
䉰䊮
サン
質を含む場合は発生率が高い。
各食品メーカーはこれら不良製
ኈེ
容
器
品が市場に出ないよう製品チェッ
クを行っているが,有効な検査装
置が存在しないため,そのほとん
䊍䊷䊃䉲䊷䊦ㇱ
ヒートシール部
どが人手による目視検品に頼って
いる。しかし人手による検品作業
食品と容器
⿒ᄖ✢䉶䊮䉰
赤外線センサー
第2図 赤外線センサーと容器の配置図
187
2010 VOL. 51 NO. 3
೙ᓮᯏེ䋨䌐䌌䌃䋩
制御機器(PLC)
䉝䊅䊨䉫ၮ᧼
アナログ基盤
赤外線
⿒ᄖ✢
セ䉶䊮䉰
ンサー
ᛩశེ
投光器
㔚⏛ᑯ
電磁弁
䉰䊮
䊌䉡䉼
䉧䉟䊄
䍶䍚䍼䍈䍖䍢䍧䍛䍼䍷
䉰䊮ઃ䈐䊔䊦䊃䉮䊮䊔䉝
サン付きベルトコンベヤー
ฃశེ
受光器
䊧䊮䉵
レンズ
䊐䉜䉟䊋ー
䌍
䉣䊮䉮䊷䉻
エンコーダ
第3図 検出部構成図
されヒートシール部が赤外線センサーを通過する
ことが判断できる。
ことで検査を行う。第2図は赤外線センサーが片
さらに赤外線センサーは水に対し吸収率の高い
側2カ所に設置したパターンだが,容器のヒート
近赤外線を採用している。このため水分を含むさ
シール部の幅や検査範囲に応じて赤外線センサー
まざまな食品に対し有効でかつ精度の高い検査が
の個数と配置を決定する。容器の両側のヒートシ
可能となっている。
ール部を検査する場合は赤外線センサーをコンベ
第3図は検出部の構成図である。赤外線を照射
ヤーの進行方向に対し両側に取り付けることがで
する投光器,透過した赤外線を受けるレンズ・フ
き,製品のヒートシール部に合わせた対応をとる
ァイバーを含めた受光器,受光器からの電気信号
ことができる。
を平滑化し電圧0−10Vを出力するアナログ基板,
搬送コンベヤーは,一定間隔にサンが取り付け
アナログ基板からの信号を入力する制御機器
られ,このサンとサンの間に製品を配置し一定方
(PLC)で構成されている。制御機器にはあらかじ
向に揃えながら検出部へ搬送する。検出部を通過
め閾値(しきいち)を設定し,入力された信号と
し不良と判定された製品は,
リジェクト装置でコン
閾値を比較し良否判定を行う。閾値は製品の製造
ベヤー上から除去される。
状況に応じ自由に設定を変更できる。不良と判定
装置設計がコンパクトであるため省スペースで
された製品はエンコーダと制御機器でタイミング
の設置が可能であり,既存ラインへの組み込みも
を取り,リジェクト装置で除去する。
そろ
柔軟に対応が可能である。
検査装置の評価
検出部の特徴と構成
検査装置の評価サンプルとして,フィルム(材質
製品のヒートシール不良の判別は赤外線の透過
はPP)の上に純水を2μℓ滴下したサンプルを作
量の差を利用している。ヒートシール部に内容物
製した。第4図にサンプルと検査装置に通した測
の噛み込みがない場合,赤外線は包材に対しわず
定データを示す。測定データはサンプルを赤外線
かな吸収・反射・拡散を生じるが,そのほとんど
センサーの投光器と受光器の間に一定速度で通過
は透過するため透過量は大きくほとんど変化を示
させたときの結果である。赤外線センサーはフィ
さない。一方,ヒートシール部に内容物を噛み込
ルム部分では透過量が大きくほぼ100%であるが,
んでいる場合,赤外線は内容物に吸収・遮光され
水に対し強い吸収特性をもつ近赤外領域のレーザ
るため透過量は減少する。この差を読み取ること
ー光を使用しているため,微少な水の部分で透過
でヒートシール部に何らかの異物が付着している
量が30%程度減少していることが分かる。
食品と容器
188
2010 VOL. 51 NO. 3
エンコーダ
エンコーダ
図3.検出部構成図
図3.検出部構成図
良品レベル(100%)
良品レベル(100%)
0V
良品レベル(100%)
良品レベル(100%)
0V
0V
純水付着
純水付着サンプル
サンプル
0V
内容物噛み込み
内容物噛み込み サンプル
サンプル
図4.純水2μl付着サンプルと測定データ
図4.純水2μl付着サンプルと測定データ
第4図 純水2μℓ付着サンプルと測定データ
図5.固形入りスープ噛み込みサンプルと測定データ
図5.固形入りスープ噛み込みサンプルと測定データ
第5図 固形入りスープ噛み込みサンプルと測定データ
次に,固形入りで粘度の高いスープを内容物と
は良く透過し内容物等水分に対しては強い吸収特
し,ピロー包装容器のヒートシール部に固形物を
性をもつため透過量の差が大きく判別しやすい。
噛み込んだサンプルを作製した。第5図にサンプ
②について
ルと検査装置に通した測定データを示す。本サン
目視では判別し難い小さく透明な噛み込み品の
プルは固形物をヒートシール時に押し潰し広範囲
検査が可能。また検品要員によってあいまいであ
に薄く噛み込ませたものだが,測定データでは透
った検査精度を統一できる。
過量が30%程度減少していることが分かる。
③〜⑤について
以上より,ヒートシール部に何らかの異物が存
比較的安価で装置製作が見込めるため導入時は
在すれば赤外線の透過量に変化が生じるため,こ
検品要員の省人化や製造コストの削減が見込める。
の原理を検査装置に組み込むことでヒートシール
また赤外線センサーの透過量で検査のレベル調整
部に異常がある製品を判別することが可能である。
を行うため設定が容易,かつ装置のメンテナンス
が容易。
まとめ
今後の展開
本検査装置はピロー包装容器などの製品のヒー
トシール不良検知において有効な判別方法である
本検査装置は,充填機で充填密封・切断・排出
ことを紹介した。本検査装置を利用することで期
された製品を検査機のサン付きベルトコンベヤー
待できるメリットを以下に列挙する。
へ一定方向に揃えた状態で搬送する装置が必要に
①ヒートシール部に噛み込んだ内容物(異物)を
なるため,製品の整列・搬送システムを含めた開
効率良く判別
発を進める。
主にピロー包装・パウチ容器を製造販売する食
②製品検査の精度向上につながり,全製品を一定
条件で検査することが可能
品加工メーカー向けに紹介していく計画である。
また今回はピロー包装容器を対象としたヒート
③製品検査の時間短縮,コスト削減,検品要員の
省人化
シール検査装置の紹介であったが,本技術はプラ
スチックカップ容器のヒートシール検査への応用
④赤外線センサーによる検査システムのため設定
やメンテナンスが容易
も考えられるため,さまざまなプラスチック容器
に対応可能な検査システムの開発を進める予定で
⑤検出部が赤外線センサーで構成されるため装置
コストが安価
ある。 ※特許出願中
①について
近赤外領域のレーザー光をもつ赤外線センサー
(大和製罐株式会社 総合研究所
を採用しており,プラスチックフィルムに対して
食品と容器
第3研究室 伊集院太一)
189
2010 VOL. 51 NO. 3
業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
業界の話題
共同印刷,剥離性に優れた包装フィルム「セパシ
設コーナーで一般公開され,大変好評を博した。
ート」提供開始 環境対応,高度な安全性,新価値創造などに対応
(日食 2010/01/25 日付)
共同印刷はこのほど,食品包装向けに剥離(は
した容器・包装を紹介する。
くり)性に優れた機能フィルム「セパシート」の
◆ジャパンスター賞
提供を開始した。開封性に優れ,内容物がフィル
■経済産業省 製造産業局長賞
ムに付着しにくいため,作業効率の改善や食品ロ
「い・ろ・は・す(天然水) 国内最軽量(12g)
スの削減に効果を発揮する。すでに大手メーカー
PETボトル [ecoるボトル しぼる]
」
に納入されており,使い勝手の良さが高く評価さ
●受賞者=日本コカ・コーラ
れている。当面は業務加工用食材向けに販売し,
清涼飲料用PETボトルにおいてボトル形状を工
ニーズがあれば,家庭用商品向けの展開も視野に
夫することで強度を維持し,大幅な軽量化(国内
入れる。
最軽量12g)を実現した。高速の現行製造ライン
「セパシート」は粘性食品の身離れに優れた包
でも搬送できるライン適性を有し,流通時にもつ
装フィルム。パン・菓子の原料として使われるフ
ぶれず,自動販売機での販売も可能。飲用後に簡
ラワーペーストやあんこ,マーガリン,ジャムな
単にしぼってつぶせるので分別排出しやすく,空
ど粘性の高い食品でも身離れが良い。作業者は使
PETボトル保管時のスペース確保にも貢献する。
用時にへらで内容物を剥がし取る必要がなく,手
■日本マーケティング協会会長賞
間と時間を省ける。最後まできれいに使い切るこ
「リニューアルジョア容器」
とができるため,コスト削減のメリットもある。
●受賞者=ヤクルト本社,四国化工機
フィルムでの供給が基本だが,顧客の要望によっ
リニューアルジョアの容器は,キャップと容器
てはパッケージに加工しての提供も可能。1∼10
が同一素材であるため分別廃棄が不要であり,ス
kgまでの重量に対応できる。
トロー突き刺し性や,キャップ開封性に優れ,脱
アルミによって環境負荷を軽減できるオールプラ
Hard&Soft新春特集:2009日本パッケージング
スチック製の新型容器。
コンテスト入賞作品に見る食品包装
■日本包装技術協会会長賞
(日食 2010/01/29 日付)
「日本初・植物由来の生分解性樹脂ボトルを使
優れたパッケージと,その技術を開発普及する
用したギフトセット」
ことを目的として,毎年実施される日本包装技術
●受賞者=日清オイリオグループ,日本クラウ
協会主催の「2009日本パッケージングコンテス
ンコルク,フジシール,吉野工業所,レンゴー ト」は,国内の包装分野における最高水準を決定
“植物のチカラ”の可能性を追求し,環境に配慮
するコンテストで,審査は材料,設計,技術,デ
した工夫を凝らした,天然原料100%のプレミア
ザイン,アイデア,環境対応,適正包装などあら
ムオイルの詰め合わせ,日清ナチュメイドギフト。
ゆる機能を中心に厳正に行われ,食品包装,菓子
容器には植物由来の生分解性容器(エコメイトボ
包装,飲料包装,電気・機器包装など,16の各部
トル)を採用し,ラベルにはリサイクル原料を配
門から年間の優秀作品を選定し表彰される。第31
合したシュリンクラベルを使用した。キャップも
回を迎えた今回の応募作品数は300件を超え,その
分別可能にするなど,環境への負荷軽減に努めた。
中から108件の入賞作品(ジャパンスター賞12件,
◆グッドパッケージング賞
グッドパッケージング賞96件)が選ばれた。これ
■テクニカル包装賞
らの入賞作品は09年9月30日から3日間,開催さ
「AMP容器
(AMP=Active Microwave Package)
」
れた「暮らしの包装商品展2009」で表彰式と,特
●受賞者=味の素冷凍食品,東罐興業,グラフ
食品と容器
190
2010 VOL. 51 NO. 3
業界の話題
ィック・パッケージング・インターナショナル
高品質な野菜を計画的に栽培し,短期間で効率
冷凍食品の電子レンジ加熱時に均一加熱ができ
的に安定供給できる「植物工場」への参入支援ビ
る容器。レンジ調理後に「真ん中がまだ冷たい」
ジネスが脚光を浴びている。近年,農家・農業生
の不満の声を解消し,食品本来のおいしさを楽し
産法人以外にも,異業種から本格参入を検討する
める容器とした。カールフランジを設けているた
企業や団体が急増。光・空調・水など環境制御に
めレンジから素手で取り出すことができ,子ども
関する技術や栽培装置の開発,技術指導へのニー
から老人まで安心して使うことができる。
ズが高まっている。国の補助金・支援制度も整い
■テクニカル包装賞
つつあり,関連企業にとっては追い風だ。すでに
「マルチディンプル」 ディスペンパック
国内では50以上の植物工場が稼働している。今後
●受賞者=ディスペンパックジャパン
さらなる拡大が期待される植物工場への参入を支
片手で簡単に絞りだせるというディスペンパッ
援する動きを紹介する。
ク本来の機能を有しながら,固形物を多く含む調
◆農業ベンチャーや大手ゼネコン,新規参入を
理用ソースやプレザーブスタイルのジャムなどに
支える
対応したマルチディンプル容器を開発した。折っ
新たな価値を創出するビジネスとして注目され
た時,開口部がワイドに開くので,固形物が取り
る植物工場だが,近年,異業種からの参入が増え
出しやすくなっている。
てきた。それに伴い,農業ベンチャーや大手ゼネ
■テクニカル包装賞(適正包装賞)
コンなどが活発に新規参入をサポートする。栽培
人にうれしい,地球にやさしい段ボールカート
設備や環境制御システムの開発だけではなく,栽
ン「快適開封カートン」
培指導や販売支援などの総合コンサルティングを
●受賞者=アサヒビール
行う企業も目立つ。
紙の使用量削減を目的にライナーの坪量を減ら
04年に設立された農業ベンチャーのみらいは,
す一方,紙のグレードを上げることで物性強度を
植物工場に関するノウハウの提供ビジネスを展開
維持した。同時に快適ライナーカット加工の採用
する。完全人工光型の植物工場に特化し,顧客に
で,ライナーカットを最後まで確実にきれいな波
は栽培に必要なハード(プラント建設など)とソ
形にカットすることができ,
開封に要する力を6割
フト(研修,データ管理,種子,肥料)をユニッ
削減した。また,段ボールの端縁面加工方法を工
トで提供。栽培ノウハウの蓄積を顧客にフィード
夫し,開封時の安全性を10倍向上させた。
バックする。プラントの販売だけでなくリースも
■テクニカル包装賞(包装アイデア賞)
行い,テスト用の小型植物工場やデモ設置用プラ
「ハウス食品 できたてづくり」
ントの要請にも対応する。
●受賞者=ハウス食品,大日本印刷
同社の植物工場は外食チェーンの大戸屋や南極
卵を加え電子レンジ加熱するだけで手作りの風
の昭和基地に設置され,砂漠の多い中東諸国から
味・触感が楽しめる調味ソース。パウチは真っす
引き合いがあるなど注目されている。
ぐ開封でき,溶き卵を加える・混ぜる動作をスム
環境エンジニアリングを手掛けるエスペックミ
ーズに行える。外箱はワンアクションでパウチを
ックは通常の植物工場に加え,室内栽培用ミニ野
支える調理器具として組み立てることができ,新
菜工場「プラントセラー」を展開する。店舗内や
価値を提供する。
オフィスで簡単に野菜が栽培できる。収穫するだ
けではなく,見たり育てたりする楽しみを味わえ
Hard&Soft新春特集:植物工場 参入支援ビジネ
る。同施設はこだわりの野菜を使用するレストラ
スに脚光 (日食 2010/01/29 日付)
ンや,ぐるなびが取り組む植物工場普及拡大事業
食品と容器
191
2010 VOL. 51 NO. 3
業界の話題
に導入されている。
の販売も視野に入れる。初年度の販売目標は1億
そのほか,輸送用コンテナ内に人工光源や空調
円,5年後40億円を目指す。
設備を装備したコンテナ式植物工場や,人工光型
◆国内に50工場 高い生産性が魅力
苗生産システムなどの販売も行う。
植物工場とは,植物の生育に必要な環境を照明
○海外展開視野に
や空調,養液供給などで人工的に制御し,季節を
参入支援ニーズの高まりを受け,大手ゼネコン
問わず継続的に生産できる栽培施設。モニタリン
や商社も動き出した。
グを基礎として,高度な環境制御や育成予測を行
大成建設は工場運営や栽培装置の研究開発を検
うことで,野菜などの周年・計画生産が可能で高
討する企業や団体へのコンサルティング業務を強
い生産性が魅力だ。国内には約50工場が稼働する。
化するため,薄型LED照明を用いた完全密閉型
植物工場は,閉鎖された環境で蛍光灯やLED
の試作設備を発売する。植物工場ビジネスに参入
ランプを使う「完全人工光型」と,温室などの半
を希望する企業に向け,大規模な設備投資の前に,
閉鎖的環境で太陽光を利用する「太陽光利用型
試験プラントでのデータ蓄積やサンプル野菜の試
(太陽光・人工光併用型を含む)」に分けられる。
作用として提供する。
生育可能な品種はレタス,グリーンリーフ,水菜,
薄型LED照明はスタンレー電気と共同開発し
クレソン,バジルなどの葉菜類が中心だ。
た。同社の持つ配光・薄型化技術を活用。従来比
経産省・農水省の調査では,太陽光・人工光併
1.5倍の生産効率を実現した。植物工場運営や周
用型を含めた国内の植物工場は現在約50 ヵ所。太
辺市場への参入を検討する顧客に向けて提案を進
陽光・人工光併用型は2000年以前に設置されたも
めている。
のが約7割を占める。完全人工光型は06年以降に
昭和電工は植物の育成に最適な波長光を発する
設置された施設が約4割あり,新しい施設が多い
4元系赤色LEDを開発,販売を開始した。植物
のが特徴だ。
に照射すると光合成反応の効率が高まり,成長が
完全人工光型植物工場は,季節や天候に左右さ
大きく促進される。従来品に比べて光源から発す
れることなく均一な品質の植物を生産できる。外
る熱量が少なく,育成環境の向上にも貢献する。
部環境の変化で収穫量が増減しないため,安定し
09年5月には経産省の完全制御型植物工場モデル
た計画栽培が可能。栽培条件を制御すれば,植物
施設の光源に採用されるなど注目されている。
の持つカルシウムやビタミンCなど特定の成分含
大手商社の丸紅は,肥料や水分の保持に優れた
有量を増やすこともできる。光量や肥料を調整す
有機人工土壌「ヴェルデナイト」を用いた土耕式
ることで生育スピードのコントロールも可能だ。
植物工場の販売事業に参入した。水耕式の植物工
必要な時期に必要な種類の野菜を計画的に供給で
場では難しかったナスなどの果菜類,ゴボウや大
きる利点もある。
根などの根菜類の栽培ができる。大阪支社内には
設置する地域や土地を選ばないため,倉庫の空
ハーブやミニ根菜を量産するショールームも開設
きスペースやオフィスにも設置可能。多段式の立
した。
体栽培を行えば,露地栽培に比べて単位面積当た
ヴェルデナイトは一般的な培土の約10倍の肥料
りの生産性は極めて高くなる。
・水分保持能力がありながら,重量は10分の1以
完全に閉鎖された空間で栽培を行うため,外部
下という軽量の有機人工土壌。土壌菌を活用する
からの異物混入のリスクがない。露地栽培では防
ことで季節を問わず,無農薬・有機肥料のみで野
ぐことができない動物のふん尿や病害虫による被
菜を栽培できるシステムだ。シンガポールなど農
害を受けないため,農薬を使用する必要もない。
地確保が困難な国で,野菜の安定生産拠点として
作業環境は快適で基本は軽作業のみで済む。作
食品と容器
192
2010 VOL. 51 NO. 3
業界の話題
業者への負担が少なく,労働集約型の生産が可能
ゾーンに植物工場が登場する。7月には植物工場
だ。
に特化した専門展示会「GPEC(施設園芸・植物
収穫された野菜は,天候不良による色ムラ・病
工場展)」が初めて開催される。栽培施設・資材・
変がない。土や泥による汚れがなく無農薬のため
機器を展示の中心に据え,種苗・育苗システム,
洗浄の必要もない。茎の一部を切り取ればすべて
収穫・選別・運搬・包装,情報関連機器システム
の葉部が食べられるため,ロスを大幅に削減でき
などが展示される予定だ。
る。
一方,
(1)設置・運用コストが高い(2)栽培品
DHA・EPA入り魚肉ソーセージ,認知症予防に
種が少ない(3)販路確保など,課題も多い。千葉
効果 在宅健常者で初の検証
大学大学院園芸学研究科の丸尾達准教授は「植物
(日食 2010/02/15 日付)
工場専用の品種の開発が必要不可欠。量産体制を
島根大学医学部,島根県立大学短期大学部出雲
整え業務・加工用として展開すれば,マーケット
キャンパス,医療法人仁寿会加籐病院は,DHA
は大きくなる」と話す。
(ドコサヘキサエン酸),EPA(エイコサペンタ
◆国が後押し 10年は展示会も充実
エン酸)がアルツハイマー型の認知症に予防効果
植物工場の普及・拡大に向けて,国も積極的に
があることを検証した。DHA,EPAが含まれる
参入企業を支援する。植物工場の展開により
(1)
魚肉ソーセージを1年間毎日2本摂取したところ,
経験や勘だけに頼らない科学に基づく農業(2)マ
認知機能の低下の抑制が示唆されたと2日に発表
ーケットインの農業生産(3)地域の雇用と所得の
した。健常な在宅高齢者で効果が検証できたのは
確保(4)新たな立地を活用した農業生産(5)植
初めてとのこと。今後は食品を利用した高齢者医
物工場を活用した新たな産業の創造--などが期待
療への応用,予防医学から波及効果が期待できる
される。施設園芸のさらなる発展と地域経済の活
という。
性化を見据え,
11年度末までに設置数を現在の3倍
報告では,島根県内の65歳以上(平均73歳)の
にし,コストを3割縮減する目標を掲げている。
高齢者108人を対象にDHA850mg,EPA200mgが
経済産業省では植物工場に応用する基盤技術の
含まれるマルハニチロ食品の「リサーラ」を被験
開発やPR活動をサポート。モデル施設の設置事
食品とするグループと,オリーブ油を添加した魚
業やセミナーの開催などを積極的に行う。農林水
肉ソーセージを食べるグループに分け,対象者に
産省は施設園芸の高度化を推進し,産地の収益力
1年程度摂取させた。DHA,EPA入りのグルー
向上に向けて植物工場の普及・拡大の取組みを支
プでは,五角形を模写させるテストや指運動,短
援。園芸用施設の導入や植物工場における低コス
期記憶を試すテストで認知機能の低下の抑制を示
ト安定生産技術の確立,人材育成,環境整備の取
す結果が出たという。
組みなどに対して補助金を支出する。
今回の検証は島根大学医学部の橋本道男准教授,
2010年は植物工場関連の展示会も充実している。
島根県立大学短期大学部出雲キャンパスの山下一
6月8∼11の4日間,東京・有明の東京ビッグ
也副学長らによるもの。実験は08年11月から始め
サイトで開催される食品ビジネスに関する情報が
て1年間の結果を解析したもので,さらに1年継
集結するアジア最大級の食のトレードショー
続する。経過はアルツハイマー病国際会議2010で
「FOOMA JAPAN(国際食品工業展)」には,企画
食品と容器
も発表する。
193
2010 VOL. 51 NO. 3
今月の統計
(財)日本炭酸飲料検査協会調べ
(千㎘)
2,000
1,500
PETボトル
1,000
ワンウェイビン
リターナブルビン
500
缶
0
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
炭酸飲料の容器別JAS実績(年別推移)
(千㎘)
1,000
800
1999
2004
600
2009
400
200
0
コーラ
フレーバー系
透明飲料
果汁入り
クリームソーダ
炭酸栄養飲料
その他
炭酸飲料のフレーバー別JAS実績(5年,10年前対比)
(万トン)
16
(財)全国調味料・
野菜飲料検査協会
調べ
14
12
10
8
にんじんミックスジュース
6
にんじんジュース
トマト ミックスジュース
4
トマト ジュース
2
0
1999
2000
2001 2002
2003
2004
2005 2006
2007
2008 2009
トマトジュース・にんじんジュース等のJAS実績
食品と容器
194
2010 VOL. 51 NO. 3
今月の統計
(億食)
60
(社)日本即席食品工業協会調べ
生タイプめん
50
40
即席カップめん
30
20
袋めん
10
0
昭
和
33
35 37
39 41 43
45 47
49
51 53
55 57
59
61 63
平
成
2
4
6
8
10
12
14 16
18 20
即席めん類等の生産数量の推移(4~3月)
2009年 (1 ~ 1 2 月 )炭 酸 飲 料 JA S 実 績 の 前 年 比 ・構 成 比 (容 量 ベ ー ス )
容 器 別 (% )
合計
缶
リター ナ ブ ル ビ ン ワン ウェイビ ン
前年比
87
88
100
92
構成比
100.0
32.9
3.2
2.9
前年構成比
100.0
32.7
2.8
2.7
PETボ トル
86
61.0
61.8
2009年 (1 ~ 12月 )トマ トジ ュ ー ス ・に ん じ ん ジ ュ ー ス 等 の JA S 実 績 の 前 年 比 ・構 成 比 (容 量 ベ ー ス )
容 器 別 (% )
トマ トミッ ク ス ジ ュ ー ス に ん じ ん ジ ュ ー ス
トマ トジ ュ ー ス
合計
前年比
99
103
94
に ん じん ミックスジ ュ ー ス
84
70
構成比
100.0
64.0
33.8
1.7
0.4
前年構成比
100.0
61.7
35.7
2.1
0.6
2008年 (4 ~ 3 月 )即 席 め ん 類 等 の 生 産 量 の 前 年 比 ・構 成 比 (個 数 ベ ー ス )
種 類 別 (% )
合 計
袋 め ん
即 席 カ ッ プ め ん
生 タ イ プ め ん
前 年 比
98
96
99
104
構 成 比
100.0
35.5
61.1
3.4
前 年 構 成 比
100.0
36.4
60.4
3.2
平 均 気 温,降 水 量, 日 照 時 間
平 均 気 温 (℃)
平年差
前年差
2009年 2月 平均
7.8
+1.7
+2.3
3月 平均
10.0
+1.1
-0.7
4月 平均
15.7
+1.3
+1.0
5月 平均
20.1
+1.4
+1.6
6月 平均
22.5
+0.7
+1.2
7月 平均
26.3
+0.9
-0.7
8月 平均
26.6
-0.5
-0.2
9月 平均
23.0
-0.5
-1.4
10月 平均
19.0
+0.8
-0.4
11月 平均
13.5
+0.5
+0.4
12月 平均
9.0
+0.6
-0.8
2010年 1月 下旬
8.6
+3.2
+1.1
平均
7.0
+1.2
+0.2
2月 上旬
5.6
+0.1
-1.9
中旬
4.3
-1.9
-5.0
注)平年値は1971年~2000年の月,旬平均値
食品と容器
46.5
98.5
162.5
242.0
226.0
78.5
242.0
53.0
276.5
151.5
82.5
0.0
9.0
33.5
32.0
195
(2月中旬・東京)
降 水 量 (mm)
平年比(%) 前年比(%)
77
82
86
82
125
68
189
95
137
100
49
164
156
62
25
33
170
135
164
205
208
117
0
0
19
6
216
-137
173
日
131.2
162.9
226.7
154.6
98.8
103.5
136.1
136.5
153.3
124.0
181.0
73.8
221.9
60.5
20.8
照 時 間 (h)
平年比(%) 前年比(%)
81
61
102
87
137
151
85
113
82
92
70
61
77
105
121
110
118
109
88
87
106
95
111
227
123
127
101
98
38
41
2010 VOL. 51 NO. 3
〜〜〜〜 技術用語解説 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ラジカル消去能
(Radical scavenging capacity)
1.フリーラジカル
がんや動脈硬化,心臓病などの生活習慣病や老化促進
に,活性酸素種による生体組織の酸化が密接に関与して
いることが明らかとなりつつある。
活性酸素種は,酸素を含む反応性の高い化合物の総称
ものと考えられている4)。
1)ラジカル捕捉段階:フリーラジカルに抗酸化物質が
水素原子を与え,
抗酸化物質がもとのフリーラジカ
ルよりも反応性の低い安定フリーラジカルを形成す
る段階。
2)ラジカル終結段階:安定フリーラジカルが非ラジカ
ル化合物となりラジカルが消去する段階。
であり,ラジカルと非ラジカルがある。脂質関連物質を
3.分析法
含む広義の意味においての活性酸素のうち,前者として
ラジカル消去能を含む抗酸化能をin vitroで測定する
は,反応性の高いものからヒドロキシラジカル(・OH),
アルコキシラジカル
(LO・)
,
ペルオキシラジカル
(LOO・)
,
ヒドロペルオキシラジカル(HOO・),一酸化窒素(NO・),
ー
二酸化窒素(NO2・),スーパーオキシドアニオン(O2
・)
などがある。後者の非ラジカルグループには一重項酸素
(1O2),オゾン(O3),過酸化水素(H2O2),脂質ヒドロペ
ルオキシド(LOOH)などがある1)。
一般に電子は2個で対をなしている状態で,原子軌道
あるいは分子軌道に安定に収容されているが,対になら
ずに一つだけ軌道に存在する場合(不対電子)がある。こ
れがフリーラジカルできわめて反応性が高い。酸素分子
は不対電子が2個存在するのでビラジカルと言われてい
る。体内に取り込まれた酸素は4電子還元を受けて水に
ー
なる。その過程で1電子還元によりO2
・,2電子還元に
よってH2O2,3電子還元によって・OHが生成する。さ
らに生体内で発生したフリーラジカルは,高度不飽和脂
肪酸のラジカル反応に関与し,脂質ヒドロキシペルオキ
シド(LOOH)を生じる2)。
方法は,
HAT
(hydrogen atom transfer水素原子供与)
反応,
あるいはET
(electron transfer電子供与)反応の2つのタ
イ プ に 大 別 さ れ る。HAT反 応 に 基 づ く 測 定 法 で は,
ORAC
(oxygen radical absorbance capacity)
法,
TRAP
(total
radical trapping antioxidant parameter)
法が,
ET反応に基づ
く 測 定 法 では,
DPPH
(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)
法,
TEAC
(Trolox equivalence antioxidant capacity)
法などが代
表的である5)。
こ の う ちORAC法 の 公 定 法 化 がAOU(Antioxidant
Unit)研究会により検討されているが,DPPH法は,非常
に簡便な方法であるため抗酸化活性を有する作物のスク
リーニングに広く用いられてきた。筆者らもDPPH法に
より,種々の宮崎県産農産物の可食部,非可食部150試
料の抗酸化活性を測定した結果,茎葉利用カンショ(す
いおう)葉,サトイモ(泉南中野早生)果皮,マンゴー
(アーウィン)果皮,茶(やぶきた)葉,シソ科ハーブ
類のブラックペパーミント,スペアミント,スィートバ
ジル,レモンバーム,ローズマリー,ステビアの葉およ
2.ラジカル消去能
これらの活性酸素種は,生体防御において積極的に利
用される反面,一方では,高い反応性を有するために,
生体内たんぱく質,脂質やDNAなどの生体成分を酸化
して,たんぱく質の変性,脂質の過酸化,遺伝子の損傷
を引き起こし,種々の疾病の発症に関与していると考え
られている。このような酸化傷害から自己を防御するた
めに,生体内では,H2O2はカタラーゼにより不活性化
され,LOOHはグルタチオンペルオキシダーゼにより分
ー
解され,O2
・はスーパーオキシドディスムターゼによ
り不均化されることが知られている3)。
このような生体内防御機構の他に,活性酸素種はアス
コルビン酸,トコフェロール,カロテノイド,種々のポ
びブルーベリー葉が高いラジカル消去能を示した6)。
文 献
1)藤田 直,活性酸素,過酸化脂質,フリーラジカルの
生成と消去機構,薬誌,122,203-218(2002)。
2)寺尾純二,
食品・生体における脂質過酸化物の生成と
作用機構,農化,64,1819-1826(1990)。
3)二木鋭雄,
活性酸素・フリーラジカルに対する防御シ
ステム,化学と生物,37,554-561(1999)。
4)阿部尚樹,
微生物由来抗酸化物質のラジカル捕捉メカ
ニズム,化学と生物,38,5-7(2000)。
5)渡辺 純,沖 智之,竹林 純,山崎光司,津志田藤二
郎,食品の抗酸化能測定法の統一化を目指して,
化学
と生物,47,237-243(2009)。
リフェノール類等によって消去されることから,植物由
6)柚木崎千鶴子,
小村美穂,
アショク・クマル・サーカ
来抗酸化成分が,活性酸素が関与する種々の疾患の予防
ー,岡部玲二,県内産農産物の抗酸化活性,宮崎県工
に有効ではないかと期待されている。
業技術センター・宮崎県食品開発センター研究報告,
抗酸化成分の作用メカニズムの一つとしてラジカル阻
止があげられる。この過程は,以下のような段階を経る
食品と容器
48,91-98(2003)。
(宮崎県食品開発センター 食品開発部 柚木崎千鶴子)
日本食品科学工学会誌 Vol.56 No.10(2009)より転載
196
2010 VOL. 51 NO. 3
最近の技術雑誌から
国
ਈ
内
຿
編
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ɜព៥ɝ特集 ―世界の最新食品安全事情と微生物検査―
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ɜព៥ɝ特集1―消費者に食の安全を提供する!!/自主
衛生管理の認証(認定)制度―
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ɜព៥ɝ特集―計装・流量・レベル計測機器―
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ɜព៥ɝ特集2―食品の対面販売における衛生管理―
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ɜព៥ɝ特集―食品抗酸化物質の評価と応用―
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ɜព៥ɝ醤油業界,今年は大手の巻き返しなるか/高付
加価値でカバーする体制の構築が急務
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ɜព៥ɝ新商品開発を軸に市場拡大狙うソース類/レギ
ュラー品の低価格化に歯止めを
᧘ᯕᯨ‫ق‬Ꮞឞಏ‫ܫ‬ᶬ¶²ᶨ²³ᶩµ´᷾¶´ᶨ'²±¯²ᶩᶮ
ɜព៥ɝポリフェノールによるアルツハイマー病予防の
可能性
増田裕一・入江一浩:FFI
ジャーナル,215(1)53
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ɜព៥ɝ特集1―加工デンプン生産・応用の最前線―
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ɜព៥ɝ特集―プロバイオティクス機能研究の新展開―
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ɜព៥ɝ食肉および食肉製品の非加熱技術による微生物
制御に関する研究
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食品と容器
ɜព៥ɝ特集―高機能甘味料の近況―
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197
2010 VOL. 51 NO. 3
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝ2010年酒類・食品産業の展望/消費者との“共
鳴”獲得が必須 2010年の酒類・食品産業/デフレ
克服へすべきことは?
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ɜព៥ɝ特集2―期待の新食材“米粉”最前線―
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ɜព៥ɝ2008年度小売業世界ランキング250社(米ST
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ɜព៥ɝ市場全体が横ばいに転じる中 戦略の見直し迫
られる加工米飯メーカー/消費不況が・・・基礎食品に
も波及?!
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ɜព៥ɝ特集―輸入食品プロモーション動向―
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ɜព៥ɝ世界の水産資源を取巻く状況/水産業からシー
フードビジネスへの変革
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ɜព៥ɝ巨大ハラールマーケットと,その成長に力を入
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Rupert Sutton© Exigo MarketingªᶺBeverage Japanᶬ
Ɖ´´¸ ¸·᷾¸¸ᶨ'²±¯³ᶩᶮ
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ɜព៥ɝ消費量から観るアルコール離れの現実/09年の
中京酒類市場を振り返る
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ɜព៥ɝ「エコナ」ショックで一気に減速/出直し健康
オイルの今後/食用油多様化の中で存在価値の証明
へ
Ᏼ‫׹‬ᯨ‫ق‬ᶬ33ᶨºᶩ²º᷾³¶ᶨ'²±¯³ᶩᶮ
ɜព៥ɝ2008年世界主要国のビール消費量/アジアが最
大の消費市場に
᧘ᯕᯨ‫ق‬Ꮞឞಏ‫ܫ‬ᶬ¶²ᶨ²³ᶩ·±᷾·²ᶨ'²±¯²ᶩᶮ
ɜព៥ɝビール系飲料大手3社/2010年の事業方針発表,
持続的成長への課題を語る
Beverage JapanᶬƉ´´¸ ³³ᶬ³µᶨ'²±¯³ᶩᶮ
ɜព៥ɝビール系飲料市場2010/持続的成長のために新
たな戦略を模索−新ジャンルと海外戦略に活路−
Beverage JapanᶬƉ´´¸ ·¸᷾¸µᶨ'²±¯³ᶩᶮ
ɜព៥ɝ第58回技術大会の概要
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௴࿁݈ী̡ဲഇ
ɜព៥ɝ特集―食品の高圧処理技術―
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を探る─
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ɜព៥ɝ特集―飲料製品開発の動向―
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198
2010 VOL. 51 NO. 3
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝソフトスチーム技術を利用した高品位食品加工
技術
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²¸᷾³³ᶨ'²±ᶩᶮ
ɜព៥ɝ特集─包装の表示機能と技術─
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ɜព៥ɝ新風吹き込む自販機の電子マネー対応/本格的
キャッシュレス時代が到来
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ɜព៥ɝ特集─飲料製造の最新技術・機器─
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ɜព៥ɝ特集―電子レンジ用容器の近況―
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〔解説〕特集―カーボンフットプリントにおける国内外
の現状と今後の展望(「フード・フォラム・つくば」
より)―
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ɜព៥ɝ年間特集―食品の品質保証技術―
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ɜព៥ɝ特集1―変革時代の食品包装を考えるpartⅡ―
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食品と容器
ɜព៥ɝ容器詰加熱殺菌食品の原料原産地表示に関する
業界自主ガイドライン
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199
2010 VOL. 51 NO. 3
最近の技術雑誌から
Food Processing(U.S.A.)Vol.70 Nov.(2009)
海
外
編
○2009年、最も好まれた新製品
Our Favorite Products of the Year
D.Toops et al. ……………………… 20〜22, 24, 26〜27
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
○Naturalに関する考察
What is Natural?
D.Feder……………………………………………29〜33
Beverage Industry(U.S.A.)Vol.100 Nov.(2009)
○ダイズ油とナタネ油を用いた健康な食品の開発
○伸長する乳飲料および代替飲料市場
Soybean,Canola Pace Specialty Oils
Dairy Drinks and Alternatives Provide
D.Toops………………………………… 34, 36, 38〜39
Beneficial Options
○最近のアクティブパッケージ
S.Scott… …………………………………… 16, 18〜19
Active Packaging:Where the Action Is
○世界最大のPETボトルリサイクル施設
K.B.Connolly………………………………… 41〜42, 44
Recycling Shows Packaging's Sustainable Value
○健康志向と天然着色料の開発
Food & Beverage Packaging(U.S.A.)Vol.73
Nov./Dec.(2009)
Colors with a Natural Appeal
○環境に優しいボトルドウオーター
E.Fuhrman… ……………………………… 46, 48〜51
The Greening of Bottled Water
E.Fuhrman… ……………………………………42〜44
R.Lingle…………………………………………
32〜34
The Canmaker(U.K.)Vol.22 Nov.(2009)
○最近の搬送コンベアーの進歩
○2009年のCan of the Year賞を受賞した金属容器
Speed,Safety,Sanitation
Water Feature
Compel Conveyor Considerations
J.Nutting… ………………………………………32〜34
R.Lingle……………………………………………38〜40
○リシーラブルEOEと商品化のための充填テスト
○Ball社の3つのリシール缶 Under Pressure
For Reclosability,Keep Your Eye on Ball
J.Nuttin… …………………………………………36〜38
… …………………………………………44
○2008年、ヨーロッパの缶飲料市場
Cereal Foods World(U.S.A.)Vol.54
Nov./Dec.(2009)
Toughing it Out
J.Nutting… …………………………………………
41
○シリアルベース素材の開発現状と将来
Packaging Digest(U.S.A.)Vol.46 Nov.(2009)
Unearthing Development Opportunities Within
○パッケージに浸透した“green"
the Cereal Category
Green is Ingrained in Packaging
P.Molina … ………………………………… 256〜259
J.Kalkowski… ……………………………… 22, 24〜27
○酵母が生産するCO2の測定
○クラフト社の新しい軽量飲料容器
Measuring Yeast CO2 Production with the
Sustainable Standout
Risograph
L.Casey… …………………………………………28〜31
G.E.Rattin et al. ………………………………261〜265
○オートムギ素材の機能−食品技術に対する好機と
Prepared Foods(U.S.A.)Vol.178 Nov.(2009)
課題
○ステビア甘味料の品質
Functional Oat Ingregients−Opportunities
Stevia Sweeteners:Quality Matters
E.Mannie… …………………………………………
食品と容器
and Challenges for Food Technology
61
P.Lehtinen et al. … ………………………
200
267〜271
2010 VOL. 51 NO. 3
最近の技術雑誌から
Journal of Food Science(U.S.A.)Vol.74
Nov./Dec.(2009)
○EUのヘルスクレームに関する法令
○機能食品の構成要素としての葉酸
Between Desperation and Hope
Folate:A Functional Food Constituent
F.Meyer………………………………………
R.Iyer and S.K.Tomar … ……………… R114〜R122
○固形物入り乳飲料の新しいコンセプト
○リンゴ皮の抽出物のフェノール化合物組成と抗酸化
Experience Added Value−Bit by Bit
特性
H.Thevis … ……………………………………288〜289
The EU Regulation on Health Claims− 284〜286
Phenolic Profiles and Antioxidant Properties
of Apple Skin Extracts
Prepared Foods(U.S.A.)Vol.178 Dec.(2009)
G.M.Huber and H.P.V.Rupasinghe… … C693〜C700
○肥満防止に適切な食品
○リンゴの品種と真空調理がテクスチャー劣化に与え
Obesity:Politics to Products
る影響
C.D.O'Donnell … ………… 15〜16, 18, 21〜22, 25〜26
Impact of Vacuum Cooking Process on the
○機能性飲料と味およびフレーバーの課題克服
Texture Degradation of Selected Apple
Overcoming Flavor and Taste Challenges
Cultivars
T.Keller………………………………… 29〜30, 33〜34
E.Bourles et al. … ……………………… E512〜E518
○ヨーグルトパウダーの探索
○MA包装された調理済みシーフード食品の微生物的
Exploring Yogurt Powder
および官能品質の評価
S.Gerdes…………………………………………
Microbiological and Sensorial Quality
○生涯を通じた知覚機能をもつDHA
Assessment of Ready-to-Cook Seafood Products
DHA for Lifelong Cognitive Function
Packaged under Modified Atmosphere
E.Mannie … ……………………………………………77
B.Speranza et al. ………………………… M473〜M478
○超臨界炭酸ガスによるフレーバーの抽出
○種々の栄養素供給システムで水耕栽培されたニンジ
Flavor Extraction with SFE-CO2
ンの栄養素と物理的および官能特性の評価
E.Mannie… …………………………………………
69〜70
78
Nutritional,Physical, and Sensory Evaluation
of Hydroponic Carrots (Daucus carota L.) from
Food Technology(U.S.A.)Vol.63 Dec.(2009)
Different Nutrient Delivery Systems
○食品および飲料の甘味と味の調和
P.N.Gichuhi et al.………………………… S403〜S412
Harmonizing Sweetness & Taste
G.Horn… ……………………… 20〜22, 25〜26, 29
Fruit Processing(DEU)Vol.19 Nov./Dec.(2009)
○ピーナツの健康効能 ○果汁産業における刷新的なろ過技術
BECOPAD−Innovative Depth Filtration in the
Peanuts:Bioactive Food in a Shell
A.V.A.Resurreccion et al.……………………
Fruit Juice Industry
M.Meyer and R.Junker ………………………266〜269
Adopting Fruitful Strategies
○トルコの果汁産業
The Turkish Fruit Juice Industry
E.Akdag………………………………………
30〜36
○食品へ果実と野菜を取り込む戦略
D.E.Pszczola …………………………… 57〜58, 61〜68
○美容と機能性食品
270〜274
○PETボトルのコンベアーでの接触摩擦を防ぐコー
ティング技術
PET Blockades at the Conveyor?
A Functional Fountain of Youth
R.Lamers ………………………………………276〜277
Advances in Sample Preparation
○環境保護性、経済性、利便性で復活する金属容器
Sustainable,Economic and Convenient:
N.H.Mermelstein… ………………………………76〜79
The Can is Back!
Poring Over Membrane Processing Applications
W.Jung… ……………………………………
食品と容器
L.M.Ohr……………………………………… 71〜72, 74
○分析用サンプル調製の進歩
○膜ろ過処理の応用
278〜281
J.P.Clark … ………………………………… 80〜81, 84
201
2010 VOL. 51 NO. 3
最近の技術雑誌から
Food Engineering(U.S.A.)Vol.81 Dec.(2009)
The Canmaker(U.K.)Vol.22 Dec.(2009)
○メンテナンスの信頼性
○最近の3ピース缶検査法
Maintenance Reliability:
Complete Package
End of the Run-to-Fail Mentality
D.Searle……………………………………………32〜34
W.Labs …………………………… 55〜56, 58, 60〜62
○中国の飲料缶市場
○最近の飲料製造とパッケージ
Chinese Snapshot
The Devils in Drinks' Details
P.Rogers…………………………………………
36〜39
K.T.Higgins ……………………… 63〜64, 66, 68〜69
Beverage Industry(U.S.A.)Vol.100 Dec.(2009)
The World of Food Ingredients(Neth.)
Dec./Jan.(2010)
○2009年,アメリカのコーヒーおよびRTDコーヒー市場
○2010年を勝ち抜くトップ10トレンド
Spilling the Beans
Key Trends to Win in 2010
S.Scott … ………………………………… 12, 14, 16
L.A.Williams ………………………………………13〜16
○消費者の健康志向に応えた飲料の将来
○2009年の最も刷新的な製品トップ10
Consumers Question Functionality
Ten of the Best
S.Scott… …………………………………… 24, 26〜27
N.Tremellen……………………………………
○Pack Expoに見るパッケージングの刷新
○大きな可能性をもつナノテクノロジー
Pack Expo Attracts a Crowd
… …………………………………
27〜28
Small Size, Big Potential
42〜45
A.Smith and K.Groves … ………………… 35〜36, 38
○骨と関節の健康を増進する飲料の開発
○FDAのGRAS認定についての議論
Building Bone Strength and Mobility to Last
Inside GRAS
E.Fuhrman … ………………………………
R.Carvajal………………………………………
48〜52
39〜41
○肌の若さを維持する食品と飲料
Food Manufacture(U.K.)Vol.84 Dec.(2009)
Feeding the Exterior
○EU規制と消費者トレンドが乳製品に与える影響
D.Berry……………………………………… 56, 58, 60
Fat Chance
H.Brown ………………………………………
Food Processing(U.S.A.)Vol.71 Jan.(2010)
39〜40
○最近の食品加工技術
○アメリカの食品および飲料産業の2010年の展望
Feel the Pulse
H.Brown ………………………………………
Look into the Future
47〜48
D.Toops and D.Fusaro… …… 20〜22, 24, 26〜28
○食品工場に適したポンプとバルブ
○2010年,フレーバーのトレンド
A Flow Profile
J.Dunn … ………………………………………
Flavor Trends 2010:Make Mine Plain
69〜70
D.Feder…………………………………………
31〜34
○2010年,アメリカの食品製造業の傾向調査
Packaging Digest(U.S.A.)Vol.46 Dec.(2009)
The Glass Is Half Full
○自動化によるサステナビリティの達成
B.Sperber …………………………………………39〜41
Achieving Sustainability with Flexible
Automation
The Canmaker(U.K.)Vol.23 Jan.(2010)
………………………………… 28〜29
○2020年に向けた製缶の将来展望
2020 Vision
Wellness Foods(U.S.A.)Dec.(2009)
D.Searle ………………………………………
○健康食品、2010年に向けた新しい傾向
○2009年の製缶市場と今後の予測
The Next Wave(s)
Lifestyle Changes to Offer Opportunities
Wellness Foods Staff …………… WF-2,WF-4〜WF-5
食品と容器
24〜25
A.Stupay… …………………………………… 28〜29
202
2010 VOL. 51 NO. 3
添えられ,一段と華やかになる。そして白酒と美
野菜・果物を巡って
味しい食事が用意されるので更に嬉しいのである。
蛤の潮汁には菜の花が加わると味にポイントが
出て美味しくなるが,何よりも鮮やかな緑の葉に
(第十五話)
雛祭りには菜の花とうど
ひかえめな黄色い花をつけたその色合いから春の
訪れを感じるのである。菜の花は冬から春にかけ
て店頭に並ぶが,春の菜の花の方がほろ苦味があ
り,味に深みが出る。
子供時代の思い出に残る菜の花は野菜として食
べるというより一面に広がった菜の花畑の景色で
ある。小学唱歌の「菜の花畑に入日うすれ・・・」
そのものの情景で美しかった。田園地方に育った
ので,小学校まで片道4kmの道を毎日徒歩で通
学した。当時,自転車はあったが,通学にそれを
使用することは許されなかったのである。春にな
吉田 企世子
ると学校帰りの道々,菜の花畑,蓮華草畑で花を
(女子栄養大学名誉教授)
つんだり,花飾りを作ったりと楽しんだことは素
朴ではあるが幸せな思い出となっている。
現在食用とされている菜の花は短期間で花芽が
雛祭りになると散らし寿司に蛤の潮汁をつくり
できるように品種改良された品種のなばなである。
たくなる。蛤には菜の花とうどを添えると美味し
芯つみ菜ともよばれアブラナ科の植物である。千
く,良く合う。料理のレパートリーの貧困さから
葉,京都が主産地となっている。食品成分表には
か,例年この組み合わせが主体となってしまう。
和種なばなと西洋なばなの2種が掲載されている
かつて学生時代に調理実習で得た体験が脳裏にや
が,いずれもビタミンやミネラル含量が多く,特
きついているのかもしれない。
にカロテン,葉酸,ビタミンCが多く,優れた緑
子供時代の雛祭りには母親がお寿司を作ってく
黄色野菜である。しかし,両者には多少の違いが
れたことは記憶にあるが,吸い物には何が入って
みられ,洋種の方がカロテンは多いが,葉酸,ビ
いたのか。お寿司の美味しさは記憶にあっても汁
タミンC含量は和種の方が多い。葉酸はビタミン
物には関心が無かったのであろう。いずれにして
B群の一種で現在注目されているビタミンであり,
も雛祭りが近づくと嬉しくうきうきしたことであ
食品から摂取しにくいビタミンとされているが,
る。我が家のお雛様は大きな長持ちの中に納まっ
その含量が多い点では注目されてよい野菜である。
ていた。内裏雛の鼻は鼠にかじられた後があるの
厚労省では日本国民の健康の維持・増進,生活
を可哀想と思いつつ飾った記憶がある。
習慣病の予防を目的に,エネルギー及び各栄養素
雛祭りは,女の子が美しく幸せに成長するよう
の摂取量の基準を示し「食事摂取基準」として発
にと願う祭りであるとのこと。子供が健康で美し
表している。従来使用されていたのは2005年に
く成長し,幸せであることを願うのは親としての
発表されたものであるが,2010年4月から2015
心理であろう。この美しくというのは外観だけで
年3月までの5年間使用する「日本人の食事摂取
はなく心が美しい人間に育って欲しいと願っての
基準」が新たに発表されている。
ことである。
それによると成人では葉酸の推奨量は240μg
雛祭りは「桃の節句」とも呼ばれているが,桃
/日となっている。和種なばな100g中の含量は
の花が美しい季節なので,雛壇の片側に桃の花が
340μgで大変多い。しかし,葉酸は水溶性ビタ
食品と容器
203
2010 VOL. 51 NO. 3
ミンなので,茹でると190μgとなり56%程度の
されていることに驚いた。日光を完全に遮断した
損失が生ずる。それでも他の食品と比較すると多
状態での栽培である。当然野生のうどの風味には
い方である。西洋なばなの含量は240μgである
及ばないが,その栽培技術は見事である。
が,茹でた後も殆ど同じであるとのこと。これは,
「うど(独活)の大木」という諺はよく耳にする
なばなの組織の違いによるのであろうと推察され
ことである。うどは生長すると茎が2mほどにも
る。
なるとのこと。そうなると若芽の時のように食用
ついでに,食事摂取基準には推定平均必要量,
にはならず,さりとて用材としては柔らか過ぎて
推奨量,目安量,耐容上限量及び目標量が示され
役に立たない。そのことから身体ばかり大きくて,
ている。推奨量とはある対象団において測定され
ものの役に立たない人を表現しているのである。
た必要量の分布に基づき,母集団に属する殆どの
また時に,丈夫そうに見えて病気がちな人のたと
人(97〜98%)が充足している量である。
えに用いられるようである。
推奨量が算定できない栄養素については目安量
含有する栄養素として目立つものはないが,特
が示されている。耐容上限量とは,これを超えて
有の風味を楽しむ野菜であろう。しかし,抗酸化
摂取すると潜在的な健康障害のリスクが高まると
成分であるポリフェノールが多く,その機能性に
考えられている値である。健康食品や特定保健用
は注目してよいのである。ポリフェノールが多い
食品などを利用する場合には考慮されなければな
ために剥皮するなど細胞組織が破壊されると直ち
らないであろう。目標量は生活習慣病の一次予防
に酸化作用が生じて褐変してしまう。調理の際に
を目的として示されている値である。
注意を要する点である。
蛤にうどの歯ごたえと風味を組み合わせて楽し
何歳になってもお雛様を見るのは嬉しいので,
むのも春ならではの味わいである。蛤の美味しい
遠方まで出掛けている。名古屋の徳川美術館に展
時期に野生に自生するうどを取り入れたのが本来
示される尾張徳川家三代のお雛様は華やかな美し
の形なのであろう。現在は軟化栽培されたものが
さが印象的であった。19代義親夫人の市松人形も
主体である。休眠期間の短い早生の寒うど,長く
よかった。毎年2月から4月までの展示である。
て晩生の春うどの二系統があり,それぞれの特徴
また,酒田市の本間家のお雛様も見事であった。
を利用した促成・抑制栽培が行われているようで
江戸時代,北前船によって運ばれたものや,婚礼
ある。主産地は群馬,茨城,愛知県,東京都など
の道具として持ってきたものなど京雛や江戸雛な
である。数年前に,東京郊外の農家で栽培状況を
どがよく保存されている。現在は本間美術館とな
見学したが,4m以上もある深い穴室の中で生育
って収蔵されている。
先2月,鳥羽一郎の故郷,鳥羽市
様は鎮座されています。ホテルから間近に小さな島々が
のホテルに1泊し,伊勢神宮にお参
見えました。「海の匂いのお母さん」という鳥羽一郎の
りしてきました。日本の大元の神様,
歌を思い浮かべながら,この地を後にしました。 (嘉)
あまてらすおおみかみ
とようけ
天 照 大 神 と 衣 食 住 の 神 様, 豊 受
だいじんぐう
大 神宮が鎮座されており,この地を
食 品 と 容 器 第 51 巻 第 3号
歩くだけで心身ともに洗われます。
FOOD & PACKAGING 平成22年3月 1 日発行
順序通り,初めに外宮(豊受大神宮),翌日に内宮(天
発行所 缶
照大神)をお参りし,神楽の儀によるお祓いも受けまし
た。日曜日でもあり大変な混みようで,お正月の初詣の
ようでした。神楽のお祓いを受ける方も大勢いらっしゃ
り,行列ができて,順番待ちに時間がかかるほどでした。
お願い事が好きな人が多いのか,純な心で神仏を崇拝す
−禁無断転載−
る人が多いのか,因みに私は後者です。
編 集 人 発 行 人 印刷所
飯
十
塚
時
秀
正
夫
義
大和サービス株式会社
乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
鳥羽市と同様に,海の幸,山の幸に恵まれた伊勢に神
食品と容器
定 価
1部 800円
年間 8,000円
(送 料 共)
詰 技 術 研 究 会
〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町1−8−4
TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1
FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
Eメール:[email protected]
郵便振替 0 0 1 5 0 −0− 4 2 2 1 5
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