カジョリーナシニアカレッジ(オーストラリア)との姉妹校交流について 神奈川県立秦野高校 校長 神戸秀巳 今回は、新たな展開を見せている秦野高校の「姉妹校をめざした交流」についてお伝え したいと思います。生徒・職員だけでなく、多くの皆様にご協力いただき、以前では考え られないほどのわくわくする状況となってまいりました。 次の文章をご覧ください。今年の夏、オーストラリアのカジョリーナシニアカレッジ (以下、CSC)への訪問&研修旅行の時に、引率教諭に託した私の手紙です。実際には、 英語での文書も一緒に添えました。なお、同窓会「広陵会」の畑野公保会長からの手紙、 地元秦野市の古谷義幸市長からの手紙も同様に署名入りでCSCにお届けいたしました。 【手紙の内容】 ※一部を省略 Casuarina Senior College の校長先生、教職員の皆様、生徒の皆様へ こんにちは。私は神奈川県立秦野高等学校の校長、神戸秀巳(かんべひでみ)です。 一昨年に始まったスカイプを通じた貴校との交流が、昨年 12 月に、一部の生徒、保護 者、教職員の皆様と秦野高等学校で直接お会いしての交流へと発展いたしました。日本を 訪れた際に秦野高等学校にお立ち寄りいただき、大変楽しい時間を共有することができま した。 その時に、「近い将来、Casuarina Senior College と秦野高等学校が姉妹校交流へと発 展できたら、校長として大変嬉しい。」と、素直な気持ちを述べました。 そして、今回、その時に参加した生徒たちを中心に、「Casuarina Senior College を訪 問したい。」という機運が盛り上がり、私たちから神奈川県教育委員会への働きかけもう まくいき、教育長から貴校への訪問を認めていただきました。 ありがたいのは、秦野高等学校は当然ですが、神奈川県教育委員会だけでなく、秦野高 等学校の同窓会である「広陵会」が非常に前向きに応援してくださることになり、さらに は地元秦野市が市民交流事業として認めてくださり、秦野市役所、秦野市長が全面的にバ ックアップしてくれることになりました。話が大きく発展しました。 秦野高等学校の歴史は古く、草創期を入れると、来年で 130 年となり、神奈川の県立 高等学校としては最も伝統があります。地元秦野市に関しても、古谷義幸市長をはじめ、 2人の副市長、教育長は全員が秦野高等学校の卒業生です。 私たちは貴校との交流を非常にありがたく、大切なものと考えています。私たちを取り 巻くPTA、同窓会、地元秦野市、神奈川県教育委員会の協力を引き続き得ながら、これ からも交流を積極的に進めてまいりたいと考えています。 今回の本校教職員と本校生徒の貴校訪問が大きな喜びと大きな成果をあげることを期待 しています。来年の秦野高等学校 90 周年の時には、貴校からビデオレターなどメッセー ジをいただき、それを関係者の皆様にご披露させていただきたいとも考えています。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 貴校の心温まる、誠実なご対応に、心から感謝申しあげます。 秦野市役所の古谷義幸市長への表敬訪問(報告時) また、手紙だけではなく、同窓会の多大なご協力により、秦野特産の福を呼ぶ「達磨凧 (だるまだこ)」や伊勢原特産の「大山こま」を持参しました。「大山こま」は展示用の 大きなサイズ以外に、実用サイズをかなりの数用意してもらい、CSCでの体育の授業の 時に皆で回し、大好評だったとのことです。 市民交流事業に認めてくれた秦野市からは、生徒が滞在する各ホームステイ先に市長の 手紙と秦野のおみやげが届けられました。こちらも大変喜ばれたとの報告を受けています。 次の英文は、カジョリーナシニアカレッジの Newsletter に掲載されたものです。私た ちは姉妹校(sister school)としての交流を望み、来年協定の締結をと考えていますが、す でに姉妹校と思っていただいているようで、大変嬉しい限りです。 昨年 12 月の秦野高校訪問、そして7~8月のCSC訪問、さらに来年また秦野高校を と1年おき(bi-annual)の訪問を予定してくださっています。我々とのパートナーシップを とても誇りに思っていただき(is very proud of)、会うのを楽しみにしていただいている (look forward to seeing)と書いてくださる気持ちを大事にしながら、神奈川県立の高校と して、秦野市やPTA、同窓会との連携を強化しながら、交流事業を着実に育てていきた いと思っています。 Japanese Sister School Visit Last December Casuarina Senior College students and staff visited our newly established Japanese sister school Hadano High School. Last week Casuarina Senior College had the pleasure of hosting the students and staff from Hadano on their vist to Darwin. (中略) The partnership between Hadano High School and Casuarina Senior College is one the College is very proud of and we look forward to seeing the Hadano High students and staff on the bi-annual visit to Hadano in 2016. オーストラリア研修報告より(一部を紹介) ◆研修日程 出発 7月31日 成田空港 帰着 8月 7日 羽田空港 ◆カジョリーナ高校について ・カジョリーナとは木の名前(もくまおう) ・生徒数が 1,000 人程度の公立高校 ・アボリジニの生徒、白人の生徒、アジア系の生徒が入り混じるマルチカルチャー ・教員も、オーストラリアだけでなくアジアやヨーロッパ出身者も ・普通科だけでなく、職業訓練コースや医療・健康科学コースもある総合高校 ・生徒も買える CSC ロゴ入りグッズ…ジャンパー、ポロシャツ、ボールペン、水筒 ◆CSCのあるノーザンテリトリー州・ダーウィンについて ・エアーズロック、カカドゥ国立公園など自然の雄大さと厳しさの両方が見られる州 ・ダーウィンは州都で熱帯地域 ・今回の季節は乾季にあたり、とても過ごしやすい気候 ・1942 年の日本軍による空爆と、1974 年のサイクロンによる2度の壊滅的打撃 ◆授業参加 ●1日目 PE(体育、卓球) 卓球の授業が行われていました。本校卓球部2名が対戦!? Art(美術) visual art と photography(写真)の授業を見学。 Drama(演劇) 1か月後のコンクールに向けてのリハーサルを鑑賞。役になりきり、本格的でした。 Mathematics(数学) 12 年生の数学で、一番ハイレベル。本校の2年生が、前に出て問題に挑戦! モーニング・ティー(午前休憩) 生徒たちが準備してくれました。 PE(体育、ロッククライミング) 体育館のクライミングの設備を使い、ラダーとクライミングを体験。 ◎持参した大山こまを紹介。特訓の成果を披露!なんとかうまくいきました。すると、 反響がものすごい。次々に手を伸ばす CSC 生徒たち。 Physics/Chemistry(物理と化学) 物理の授業は、おもちゃの車をいろんな場所で走らせ、記録し、持ち寄った結果から 速度を求める計算を一緒に解いていました。 化学のクラスでは、マグネシウムを溶かしたりして実験を行っていました。薬品を扱 うので、生徒全員が、白衣とメガネ、ゴム手袋をつけて実験室へ。 理科棟は、2棟あり、理科教育に力を入れているとのことでした。 English as a foreign language(外国語としての英語教育) 英語を母語としない生徒のクラス。「とにかく授業に出て勉強することが大事。自分 がどういう風に生きていきたいか見つけることが大事。」 放課後はカジョリーナスクエアへ。 我々は、カジョリーナスクエアという大きなショッピングモールで買い物。本日は全 員で学校泊。Nightcliff で夕日を見ながらピザ。 ●2日目 早朝より Farewell breakfast オーストラリアの伝統的・典型的な朝食(ソーセージ、ハム、目玉焼き)。生徒会が 朝7時から準備をしてくれました。校長先生から、最後のご挨拶がありました。 日本語クラス2コマ 10 年生のみの予定が、他の学年の生徒も急きょ全員が加わりました。 まずは、秦野高校生徒による、日本紹介発表。テーマは、「日本の動物」「日本の行事」 「日本の高校生活」「日本の建物」「日本の物価」です。 秦高生徒は、海苔、白米(パック)、ちらし寿司のもと、寿司酢、簀巻きなどを用意し、 巻き寿司を作り、ふるまいました。寿司は、いまや万国共通の交流ツールです。ワサビ もよく知っており、魚を食べるのが大好き、と教員も生徒も言っていました。 日本語は選択授業の一つで、わりとリラックスして受講できる授業とのこと。どの授業 でも寝ている生徒はいませんでした。 ◆その他 ・「ビジネス」の授業では、実際に授業期間に仕事を起こしてみることもある。 ・大学進学率 30%。そのうち5~6名が医学部進学。残りは専門学校や就職。 ・各クラスの最大人数は 27 名。 ・16 歳で車の免許取得可能。校内に生徒用駐車場あり。 ・カウンセラー常勤。学校に来られない生徒のサポートを行っている。 ・学校専門警察官がいて、何か起こったときの対処だけでなく、法律上の指導もある。 ・各授業にお邪魔すると、先生方が必ず声をかけてくれました。 ・最後の夕食会では、先生方、ホストファミリー、校長先生のご家族も一緒でした。 生徒の感想より ※一部を抜粋 ・うちの親は、学校でもしホームステイの機会があったら、参加した方がいいと言ってい ました。だから今回の件のプリントを出した時も、特に何も言わなかった私に、「行かな くていいの?」とチャンスをくれました。そのおかげで、いつかは行こうと思っていた遠 い存在のオーストラリアで、すごく大切な時間を送れました。感謝、感謝です。 ・英語は授業も苦にならないし、テストの結果も他の教科より良かったけど、自分の英語 が他の国で通じるか自信がなかったし、実際思うようにしゃべることができませんでした。 だけどこの経験のおかげで、今まで英語を勉強してきて良かったと思えたし、これからの 授業をもっと意味のあるものにできると思います。 そして、初めてのホームステイはすごく充実したものになりました。たったの3日とい う時間だったはずなのに、最後がこんなにおしくなるとは思いもしませんでした。この研 修で出会うまでは赤の他人だったのにここまで仲良くなれたんだから、言語が違うとかは あまり関係ないんだなと感じています。もちろん、ちゃんと理解しあうためには、もっと 英語力を身に付けないといけないんでしょうが。 ・ホームステイ先の家族や学校の友だちもたくさん私に話しかけてくれました。オースト ラリアはとても友好的な人ばかりで、笑顔が絶えませんでした。 私がその時気づいたことは、外国でも笑顔は通じるということです。たとえ国が違った としても、話す言語が違ったとしても、話している時や遊んでいる時に、笑顔であること によって、そこに「外国」という壁はなくなるのだなと感じました。とても感動しました。 もう一つ気づいたことがあります。それは、「優しさ」です。本当に小さなことかも知 れないけど、体調を気遣ってくれたり、どこかに入るときに私たちを優先してくれたり、 日本と変わらない「優しさ」や「気遣い」を感じさせられました。改めて、日本の良さに も気づくことができました。 ・自分は英語についてたくさん学びたいと思っていたのですが、このような機会があると 知った時、参加したいけどなぜか不安で、参加をためらっていました。両親や祖父母が背 中を押してくれたおかげで、参加を決意しました。オーストラリアに行くまでの過程での 集まりや準備が忙しかったけれど、研修旅行が終わった時、全て楽しかったから頑張って 良かったと思いました。 ・姉妹校のカジョリーナ高校の生徒さんは日本語を勉強している人がいて、日本語でいく つか質問してもらって、とても日本語が上手で、しかもその質問が漢字で書かれていたこ とに驚きました。私も負けていられないなと強く思いました。 今回の研修の反省点は、積極的に自ら話しかけてもっと英会話をすれば良かったという ことです。向こうでたくさん友だちができたし、様々なところを観光できて、とても楽し かったです。また機会があれば、もう一度チャレンジして行きたいです。 ・最初は、自分がすごく人見知りだからホームステイもすごく不安だったし、学校の人と 話せないだろうなと思っていました。 でも、オーストラリアでのファミリーはすごく親切で簡単な英語をなるべく使うように してくれて、それから自分が話す英語をすごく一生懸命理解しようとしてくれて、頑張っ て話してコミュニケーションをとりたいと、日を追うほど思うようになりました。 行く前と行った後で大きく変わったことは、自分から積極的に話すようになったことで す。思ったより伝わることもあるし、伝わった時の嬉しさは半端じゃなかったです。 今回の経験で本当にたくさんの人の優しさに触れることができたし、もっと自分も頑張 らなくちゃと思いました。とりあえず、CSCのみんなが日本に来るまでに絶対英語うま くなりたいです!! ・体育クラスでは、ロッククライミングをしました。体育館の壁にあるのが驚きです。ほ とんど悲鳴を上げるばかりでしたが、助けてもらいながら上まで登りきることができまし た。石と石の間が広く、足が届かないことがよくあったので、あぁこれが外国人サイズと しみじみ思いました。 EFLクラスでは、2対2で話をしました。初歩的な会話でしたが、1対1の時よりも 難易度が上がったような感じがしました。聞き返した時に、もう一度言ってくれたり、簡 単な文に言い直したりしてくれて、とても嬉しかったです。普段の授業では味わえない貴 重な体験でした。 最後に、この研修に参加して本当に良かったです。貴重な体験をすることができたし、 何より楽しかったです。また、自分の英語力の無さを痛感することができたし、これから の英語の勉強へのさらなる意欲がわきました。そして来年が楽しみです。 ・1日に飛行機に3回乗ったことも、朝から海でハンバーガー食べたことも、何気ない日 常がすごくいい思い出になりました。1週間でたくさんのことを経験して、すごく濃い1 週間になったなと思いました。絶対にまたダーウィンに行って、ホストファミリーや関わ った全ての人たちに会いたいです。 ・“We will miss you.” 私はこの言葉を忘れません。 私がホームステイをする機会が来るとは思いもしませんでした。何より英語が苦手な私 にとって難しいことだと思っていました。きっかけを作ってくれたのは父親で、理由を聞 いてみると「こういう機会はあまりないから。」でした。自分も若い頃行きたかったのか もしれません。この頃はまだ5月で、あと2ヶ月あるから英語も何とかなると思っていた のですが、何とかなるわけがなく、そのままオーストラリアへ出発しました。2回目の飛 行機の中で必死に単語を頭に詰めていたのもいい思い出です。 オーストラリアに着いて、よし覚えたことを話そう!と思っても、すぐ忘れちゃったり 思い出せなかったりして、役に立ったのは4年間の学習で積み上げたものでした。私がし ゃべった英語はカタコトで、文法を間違えていたり、発音が違ったりしていたと思うんで すけど、すごい親身になって聞いてくれて、わからなかったら何回も話してくれて、だん だんと会話をするのが楽しくなっていったし、自分から積極的に話すようになりました。 平成 27 年9月
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